IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オルト−クリニカル ダイアグノスティックス インコーポレイテッドの特許一覧

<>
  • 特許-分析物を検出するための方法 図1
  • 特許-分析物を検出するための方法 図2
  • 特許-分析物を検出するための方法 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】分析物を検出するための方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/543 20060101AFI20240116BHJP
   C12Q 1/28 20060101ALI20240116BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20240116BHJP
【FI】
G01N33/543 545S
C12Q1/28
C12P21/08
【請求項の数】 26
(21)【出願番号】P 2019548666
(86)(22)【出願日】2018-03-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-04-02
(86)【国際出願番号】 US2018020554
(87)【国際公開番号】W WO2018164940
(87)【国際公開日】2018-09-13
【審査請求日】2021-01-04
(31)【優先権主張番号】62/468,114
(32)【優先日】2017-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518267573
【氏名又は名称】オルト-クリニカル ダイアグノスティックス インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】オグボンナ、ゴッドウィン
(72)【発明者】
【氏名】ジャクソン、シャリ
(72)【発明者】
【氏名】マンガン、ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】パーセルズ、ジョディ
【審査官】小澤 理
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第01852186(EP,A1)
【文献】特表2005-521032(JP,A)
【文献】特開2009-053195(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0065811(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/543
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
密閉されたスリーブ又はストローの形態をとる固相を提供する工程であって、前記固相は2つ以上の容器を含み、前記2つ以上の容器のそれぞれは該容器に固定された第1の捕捉抗体と第2の捕捉抗体とを備え、前記第1の捕捉抗体は第1の分析物と結合し、前記第2の捕捉抗体は第2の分析物と結合し、前記第1の分析物と前記第2の分析物とは異なる、工程と、
サンプルを提供する工程であって、前記サンプルの一部は前記2つ以上の容器のそれぞれに提供される、工程と、
前記2つ以上の容器の一方に、前記第1の分析物に特異的な第1の検出抗体を提供し前記2つ以上の容器の他方に、前記第2の分析物に特異的な第2の検出抗体を提供する工程であって、検出可能なシグナルを生成する検出可能な標識が前記第1の検出抗体と前記第2の検出抗体とにコンジュゲートされており、第1の容器内の前記サンプルの一部は前記第1の検出抗体に接触し、第2の容器内の前記サンプルの一部は前記第2の検出抗体に接触し、前記第1の検出抗体と前記第2の検出抗体は同じ検出可能なシグナルを生成する、工程と、
前記サンプル中の前記第1の分析物と前記第2の分析物とを検出する工程と、
を含む、分析物を検出するための方法。
【請求項2】
前記2つ以上の容器は、テーパー型容器である、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の捕捉抗体と、前記第2の捕捉抗体と、前記第1の検出抗体と、前記第2の検出抗体とは、モノクローナル抗体である、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記2つ以上の容器のそれぞれにおいて検出される分析物の量を定量化する工程を更に含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記2つ以上の容器のそれぞれに発光基質と電子移動剤とを分注することを更に含み、前記発光基質は、前記第1の容器と前記第2の容器とのそれぞれにおいて、検出可能なシグナルを生成する、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の検出抗体及び前記第2の検出抗体は、それぞれホースラディッシュペルオキダーゼとコンジュゲートする、
ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記サンプル中の前記第1の分析物と前記サンプル中の前記第2の分析物とのそれぞれの量を検出する前記工程の前に、前記第1の検出抗体と共に前記第1の容器内の前記サンプルの一部と、前記第2の検出抗体と共に前記第2の容器内の前記サンプルの一部とを、少なくとも5分間、インキュベートする工程を更に含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記サンプル内の前記第1の分析物の量と前記サンプル内の前記第2の分析物の量は、連続して検出される、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記サンプルと、前記第1の分析物に特異的な前記第1の検出抗体と、前記第2の分析物に特異的な前記第2の検出抗体とは、前記固相に同時に提供される、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記固相は、自動化免疫診断装置で使用されるために構成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記定量化する工程は、各容器について分析物の検出された量を得ることと、単一の数値を提供することとを含む、
ことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項12】
前記第1の容器と前記第2の容器とのそれぞれにおける前記検出可能なシグナルは、光である、
ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の容器と前記第2の容器とのそれぞれにおける前記検出可能なシグナルは、同じ波長の光である、
ことを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記サンプル中の前記第1の分析物の量は、前記第1の容器で検出される光の量に正比例する、
ことを特徴とする請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記サンプル中の前記第2の分析物の量は、前記第2の容器において検出される光の量に正比例する、
ことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記発光基質は、前記第1の容器内の前記ホースラディッシュペルオキダーゼとコンジュゲートされた前記第1の検出抗体と接触することで、又は前記第2の容器内の前記ホースラディッシュペルオキダーゼとコンジュゲートされた前記第2の検出抗体と接触することで、酸化される、
ことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項17】
前記発光基質は、ルミノール誘導体と過酸塩とを含む、
ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項18】
前記電子移動剤は、置換アセトアニリドである、
ことを特徴とする請求項5に記載の方法。
【請求項19】
前記インキュベートは、8分間継続する、
ことを特徴とする請求項7に記載の方法。
【請求項20】
前記サンプルは、体液サンプルである、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記体液サンプルは、尿である、
ことを特徴とする請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記サンプルの前記一部は、自動化免疫診断装置によって、前記2つ以上の容器のそれぞれに提供される、
ことを特徴とする請求項10に記載の方法。
【請求項23】
前記自動化免疫診断装置は、前記第1の容器内の前記サンプルの一部に前記第1の検出抗体を提供し、前記第2の容器内の前記サンプルの一部に前記第2の検出抗体を提供する、
ことを特徴とする請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記検出は、前記自動化免疫診断装置による、前記サンプル中の前記第1の分析物のそれぞれの量の測定と、前記サンプル中の前記第2の分析物の量の検出と、を含む、
ことを特徴とする請求項23に記載の方法。
【請求項25】
それぞれの分析物を検出する前記工程は、前記固相を自動化免疫診断装置に提供することを含み、前記自動化免疫診断装置は、前記第1の容器内の前記サンプル中の前記第1の分析物を検出し、前記第2の容器内の前記サンプル中の前記第2の分析物を検出する、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項26】
前記自動化免疫診断装置は、蛍光計を含み、前記蛍光計は、前記第1の分析物と前記第2の分析物のそれぞれを連続して検出する、
ことを特徴とする請求項25に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2017年3月7日に出願された米国仮出願62/468,114号からの優先権の利益を主張し、その全体の内容を参照によって本明細書に組み込む。
【0002】
本開示は、サンプル中の分析物を検出及び測定するための方法に関連する。本開示は、少なくとも2つの異なる分析物に向けられ、固定化された抗体を備える容器を含む固相を作製することにも関連する。本開示の方法は、例えば、サンプル中の分析物の検出と分析物の測定とに使用することができる。
【背景技術】
【0003】
サンプル中の特定の分析物の存在と量とを決定するためのイムノアッセイのような現在の定量的方法とアッセイとは、固相あたり単一の抗原(分析物)の認識に限られている。一般に、そのような定量的方法は、マイクロウェルを含むプレート又は固定化された1つの特異的抗体だけを有するメンブレンのような固相の使用に限られる。特許文献1、特許文献2を参照。一般的に、そのようなアッセイで使用される抗体は、サンプル内の抗原と結合することで検出可能となる(又は検出不能)ように標識されている(例えば、蛍光、放射性、発光、二次抗体)。従って、サンプル中の複数の分析物を定量的に検出するためには、現在、アッセイは、別々の固相部品の使用を採用しており、固相部品は、それぞれ、固相部品の上に固定化された1つの特定の分析物に対して特異的な単一の抗体を有する。
【0004】
複数の分析物を検出するために単一の固相を利用する従前の試みは、ラテラルフローアッセイを使用する方向にあった(例えば、特許文献1、特許文献2及び特許文献3参照)。ラテラルフローアッセイは、試験サンプルが、メンブレンのような吸水性又は非吸水性の多孔質の固相に沿ってクロマトグラフィ方式で流れることを必要とする。典型的なラテラルフローアッセイのサンプルは、第1の位置(つまり適用ゾーン)で固相に適用され、サンプルは、第1の分析物に対して特異的な第1の抗体を有する第2の別の位置(第1の試験ゾーン)に到達するまで、固相を通過する。そして、第1の試験ゾーンを解析して、サンプル中の第1の分析物の存在又は量を決定する。そして、サンプルは、別の分析物に対して特異的な別の抗体を含む固相上の第3の別の位置(第2の試験ゾーン)まで流れなければならない。そして、ラテラルフローアッセイでは、第2の試験ゾーンが解析され、サンプル中の分析物の存在及び量が決定される。ラテラルフローアッセイでは、分析物の存在の決定には、固相上のそれぞれ分離した位置(試験ゾーン)での検出可能な信号が必要であり、それを蛍光計のような機器によって読み取る。しかしながら、各ゾーンで検出される各分析物の量を解読するためには、異なる波長の光、異なる蛍光染料ラベル、又は異なる標識化二次抗体のような個別のラベルが一般的に使用される。そのため、ラテラルフロー検出アッセイは、高価で、技術的に複雑であり、操作者に基づくエラーが発生しやすい。
【0005】
固相分析物イムノアッセイは、多くの場合に、サンプル中に複数の分析物が存在することを「検出する」ことが可能であるが、定性的な方法でのみ可能である。いくつかの例では、固相分析物イムノアッセイは、複数の分析物が固定化された固相を含み、定量的であることができるが、これらは競合アッセイに限定される。例えば、固相分析物イムノアッセイにおいて、抗体ではなく分析物が固相に結合する。結合した分析物は、対象の分析物に特異的な標識化抗体と結合するために、サンプル中に存在する分析物と競合する。これらのアッセイにおいて、サンプル(及びそれに結合した抗体)は、洗浄工程で除去され、検出可能な抗体(つまり、対照)に全て結合した固定化された分析物を含む固相の信号と比較し、シグナルが失われることとなる。従って、サンプル中の分析物の存在は、対照と比較した場合の減少シグナルから推定される。上記のように、単一の固相を使用した複数の分析物の検出は、差別的に標識化された抗体を必要とし、サンプルの適用及び再適用と特定の抗体とが固相に対して必要となる。そのような適用によって必要とされる複数の標識化抗体の適用と続く洗浄工程とは、競合固相アッセイを、非効率的、労働集約型及び高価なものとする。更に、競合アッセイは、対象の分析物の代わりにサンプル中に存在する「免疫反応性」ポリペプチド種に結合する非複合標識化抗体の影響を受けやすく、それゆえ偽陽性となりやすい。
【0006】
固相に付着された複数の抗体を備える固相の使用による複数の分析物を検出するための固相イムノアッセイは、通常、定性的である。例えば、サンプルを複数の抗体を組み込んだ固相に提供する場合、対象の異なる抗原に対し特異的であるそれぞれ抗体がサンプルに接触し、もしサンプルが目的の抗原のいずれかを含む場合、シグナルが生成される。しかし、異なる明確な標識及び各明確な標識を検出する手段なしに、このアッセイは、サンプル中に存在する対象の多数の抗原を解読することは不可能である。更に、そのようなアッセイで得られるシグナルは、全ての異なる結合抗原によって生成するシグナルの複合である。従って、現在の方法は、それぞれの対象とする分析物のための別々の固相を使用することなく、対象とする特定の抗原がサンプル中にどの程度存在するかを定量的に決定することができない。
【0007】
上記の観点から、分析される各分析物に固有の別々の固相部品を生産するための要件により、多分析物アッセイは不正確で、高価で、技術的に複雑で、時間のかかるものとなる。それゆえ、単一の固相を使用し、サンプル中における複数の分析物を定量的に検出可能とする方法には、需要が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許出願公開第2016/0289308号明細書
【文献】米国特許出願公開第2016/0297893号明細書
【文献】米国特許出願公開第2010/061377号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書で提供される方法は、複数の容器(receptacle)を含む単一の固相を使用する。各容器は、その上に固定された少なくとも2つの抗体(捕捉抗体)を有する。各捕捉抗体は、抗原(分析物)を認識し、少なくとも2つの捕捉抗体は、少なくとも2つの異なる対象となる抗原(分析物)を認識する。それゆえ、本明細書で提供される方法は、単一の固相を使用し、複数の分析物を検出することを容易にする。複数の分析物を検出するために単一の固相の使用することで、対象の各特定の分析物を検出するための別々の固相を製造することに関連するコストが不要となる。サンプル中の複数の分析物を検出するために単一の固相を使用することで、必要な消耗品(例えば、試薬及び緩衝液)が少なくなり、自動化されたアッセイ機器内の内部空間をより効率的に使用することができる。本開示の方法は、既知の実験手順を簡易化すること及びサンプル中の複数の分析物を検出するために必要な成分の量を減少することによって、ユーザエラーの潜在性を限定することで、効率も改善する。加えて、本方法は、同じ検出可能な標識を有する標識化された検出抗体を使用する。これは、異なる検出可能な標識の必要性と、複数のシグナルを定量的に検出するための手段とが減ることによって、複数の分析物の検出を更に簡易化する。
【0010】
第1の態様において、本開示は、サンプル中の対象の分析物の存在を検出するための方法を提供する。本方法は、サンプル中に、少なくとも2つの異なる対象の分析物が存在すれば、それと結合する(捕捉する)抗体で、それぞれコーティングされた容器を含む固相を提供することを含む。各容器は、その表面に固定化された2つ以上の異なる捕捉抗体を含み、それにより少なくとも2つの固定化された抗体が、それぞれ異なる分析物を認識する(つまり、少なくとも2つの固定化された抗体は、少なくとも2つの異なる分析物を認識する)。
【0011】
いくつかの実施形態において、分析物は、対象のエピトープ又はアミノ酸配列を含む任意のポリペプチドである。ある実施形態において、ポリペプチド(タンパク質)分析物は、細胞から分離される、合成により生成される、又は組換えにより生成されることができる。1つの実施形態において、分析物は、細胞により生成されたタンパク質、又はそのフラグメントである。ある実施形態において、分析物は、細胞膜の最外表面に存在するタンパク質である。1つの実施形態において、細胞膜の最外表面に存在するタンパク質は、抗体にアクセス可能な抗原又はエピトープを有する。更に他の実施形態において、分析物は、細胞によって分泌されたタンパク質又はそのフラグメントである。
【0012】
ある例示的な実施形態において、分析物は、インシュリン様成長因子結合タンパク質7(IGFBP7)、その誘導体、アナログ又はホモログである。他の例示的な実施形態において、分析物は、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害剤、その誘導体、アナログ又はホモログである。ある実施形態において、分析物は、メタロプロテアーゼ組織阻害剤(TIMP)である。
【0013】
いくつかの実施形態において、本開示における分析物は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ又はそれ以上の異なるタンパク質又はポリペプチドを含む。特定の実施形態において、本開示における分析物は、2つの異なるポリペプチド又はタンパク質を含む。1つの実施形態において、本開示の方法は、サンプル中のTIMP2及びIGFP7の存在及び/又は量を検出するために採用される。
【0014】
いくつかの実施形態において、固相の容器に固定化された抗体は、少なくとも2つの異なる抗原又はエピトープ(分析物)を認識する。本方法のある実施形態において、固相容器は、その表面に固定された2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上の異なる抗体を含む。特定の実施形態において、捕捉抗体は、対象の2つの異なる分析物と結合する。他の実施形態において、固相のそれぞれの容器に固定された捕捉抗体は、TIMP2及びIGFP7に対して特異的である。いくつかの実施形態において、抗体は、TIMP2及びIGFBP7に対して特異的なモノクロナール抗体である。ある実施形態において、固相のそれぞれの容器に固定された捕捉抗体は、TIMP2及びIGFBP7に対して特異的なマウスモノクロナール抗体である。特定の実施形態において、TIMP2に対して特異的な捕捉抗体は、マウスモノクロナール抗体6E2.1であり、IGFBP7に対して特異的な捕捉抗体は、マウスモノクロナール抗体1D6である。
【0015】
ある実施形態において、捕捉抗体は、容器の表面に直接又は間接的に固定することができる。例えば、捕捉抗体は、捕捉抗体の一部と固相の表面の官能基との間の化学結合を介して固相に直接共有結合することができる。代わりに、捕捉抗体は、抗体をリンカーに共有結合させてリンカーを固相に共有結合させることにより、固相に間接的に共有結合することができる。いくつかの実施形態において、捕捉抗体は、容器への抗体の非共有結合的な会合又は吸着を通じて、非共有結合的に固相に直接結合する。
【0016】
いくつかの実施形態において、固相の容器の表面をコーティングし、捕捉抗体の付着を促進することができる。他の実施形態において、容器は、容器の材料に取り込まれる官能基を含む。ある実施形態において、容器の表面は、アビジンでコーティングされ、捕捉抗体はビオチンにコンジュゲートされるか、又はその逆もある。ある実施形態において、ポリスチレンを用いたコーティング後に、捕捉抗体は、吸着によって容器の表面に固定される。
【0017】
いくつかの実施形態において、本方法で用いられる固相は、ポリスチレンから構成される。ある実施形態において、固相の容器は、ポリスチレンから構成される。特定の実施形態において、固相の容器は、白いポリスチレンから構成される。
【0018】
固相は様々な形態をとることができ、例えば、メンブレン、チップ、ストロー、スリーブ、スライド、カラム、中空、固体、半固体、ゲル、ファイバー、及びマトリクスを含む。
【0019】
いくつかの実施形態において、固相は、2つ以上の密閉されたストロー又はスリーブ中に容器を含む。容器の非限定的な例は、カップ、ウェル、チューブ、キャピラリ、バイアル及び、溶液、サンプル又はサンプルの一部を保持可能な任意の他のベッセル、溝、又は凹みを含む。容器は、少なくとも2つの容器を含むストロー、スリーブ、ストリップ、プレート、スライド等の一部のような固相に含まれることができる。いくつかの実施形態において、固相は、密閉されたストロー又はスリーブ中に2つ以上の容器を含む。1つの実施形態において、本方法で使用されるための固相は、垂直な側壁を備える容器を含み、側壁は上から下に向かって先細っており、容器の底部の幅が容器の上部の幅よりも小さい。
【0020】
本方法のいくつかの実施形態において、固相は複数の容器を含む。ある実施形態において、固相は、少なくとも2個の容器、少なくとも3個の容器、少なくとも4個の容器、少なくとも5個の容器、少なくとも6個の容器、少なくとも7個の容器、少なくとも8個の容器、少なくとも9個の容器、少なくとも10個の容器、少なくとも15個の容器、少なくとも20個の容器、少なくとも25個又はそれ以上の容器を含む。実施形態において、本方法で使用される固相は、少なくとも2個の容器を含む。他の実施形態において、固相は、少なくとも2個のテーパー型容器を含む。
【0021】
本方法は、サンプル又はサンプルの一部を各容器に提供することを更に含み、それによりサンプルは、各容器に固定化された捕捉抗体に接触する。サンプルが、固定された捕捉抗体によって認識される分析物(例えば、対象のタンパク質又はそのフラグメント)を含有する場合、サンプル中の分析物は、容器内に存在する特定の抗体に結合する。
【0022】
ある実施形態において、サンプルは、対象者から得てもよく、又は他の材料から得てもよい。いくつかの例において、サンプルは、その中のある分析物の存在を決定する目的のために生成される。特定の実施形態において、本方法における使用のためのサンプルは、対象者、例えば患者から得られる体液サンプルである。いくつかの実施形態において、本開示のサンプルは、血液、涙、血清、血漿、脳脊髄液、尿、唾液、痰及び胸水を含む。特定の実施形態において、サンプルは、対象者、例えば人から得られる尿サンプルである。いくつかの例において、本方法は、単一のサンプルの複数の部分を使用する。
【0023】
ある実施形態において、サンプルは尿であり、各容器に提供される尿の量は、5μL~100μL、10μL~100μL、20μL~100μL、30μL~100μL、又は40μL~100μLである。他の実施形態において、各容器に提供される尿の量は、20μL~80μL、25L~80μL、30L~80μL、35L~80μL、又は40L~80μLである。更に他の実施形態において、各容器に提供される尿サンプルの量は、約20μL、25μL、30μL、35μL、40μL、45μL、50μL、55μL、60μL、65μL、70μL、75μL、80μL又はそれ以上である。いくつかの実施形態において、各容器に提供される尿サンプルの量は、正確に20μL、25μL、30μL、35μL、40μL、45μL、50μL、55μL、60μL、65μL、70μL、75μL、80μLである。特定の実施形態において、各容器に提供される尿サンプルの量は、20μL又は35μLである。ある実施形態において、各容器に提供される尿サンプルの量は、80μLである。
【0024】
サンプル又はその一部の容器への投与は、個人によって、又自動化免疫診断装置のような自動化された装置によって実施されることができる。本方法が全体的に又は部分的に実施される実施形態において、自動化免疫診断装置によって、サンプルは最初に指定されたリザーバに提供され、その後サンプルの一部は、自動化免疫診断装置に設けられた固相の容器又は複数の容器に分注される。1つの実施形態において、本開示の方法は、自動化免疫診断装置である以下の、オルト・クリニカル・ダイアグノスティックス社製ビトロス(登録商標)ECiQ、オルト・クリニカル・ダイアグノスティックス社製ビトロス(登録商標)3600、オルト・クリニカル・ダイアグノスティックス社製ビトロス(登録商標)5600の1つにおいて実施される。
【0025】
いくつかの実施形態において、サンプルは各容器に提供され、一定期間インキュベートされ、サンプル中に存在する対象の分析物が固相の各容器に存在する対応する捕捉抗体に結合することを促進させる。
【0026】
本開示の方法は、検出可能な要素(検出抗体)を含む抗体を各容器に提供することも含む。各容器に提供される検出抗体は、対象の分析物の1つに対して特異的である。より具体的には、本方法は、対象の第1の分析物を認識する検出抗体の量を、固相の第1の容器に提供することと、対象の異なる分析物を認識する別の検出抗体の量を、固相の別の容器に別に提供することとを含む。各ウェルに提供される検出抗体は、全て同じ検出可能なシグナルを生成する。本方法のこの態様は、ユーザが異なる検出可能な標識を備える検出抗体を得ることの必要性、同様に複数の異なるシグナルを検出する手段の必要性を減ずることによって、複数の分析物の検出を簡易化する。
【0027】
本方法のいくつかの実施形態において、検出抗体は、モノクロナール抗体、ポリクロナール抗体、それらのフラグメント、又はそれらの任意の組み合わせである。特定の実施形態において、本開示の検出抗体は、全てモノクロナール抗体であり、対象の異なる分析物をそれぞれが認識する。他の実施形態において、本開示の検出抗体は、全てポリクロナール抗体であり、それぞれが対象の異なる分析物を認識する。更に別の実施形態において、本開示の検出抗体は、モノクロナール抗体とポリクロナール抗体との組み合わせであり、それぞれが対象の異なる分析物に対して特異的である。
【0028】
本方法のいくつかの実施形態において、検出抗体は、それぞれTIMP2及びIGFP7に対して特異的である。ある実施形態において、本開示の検出抗体は、それぞれTIMP2及びIGFBP7に対して特異的なモノクロナール抗体である。特定の実施形態において、TIMP2に対して特異的な検出抗体は、ウサギモノクロナール抗体40H2-40K3であり、IGFBP7に対して特異的な検出抗体は、マウスモノクロナール抗体6D2.1である。
【0029】
1つの実施形態において、検出抗体に結合される検出可能な標識は、直接検出可能である。ある実施形態において、直接検出可能な標識は、蛍光部分(染料)、電気化学標識、電気化学発光標識、金属キレート、又はコロイダル金属粒子である。
【0030】
他の実施形態において、検出可能な標識は、分子のような間接的に検出可能な標識であり、分子は化学反応又は酵素反応を受けた後に、又は自身が検出可能なシグナルを提供する分子によって結合された後に検出可能となる。いくつかの実施形態において、検出可能な標識は、ホースラディッシュペルオキダーゼ(HRP)又はアルカリホスファターゼのような酵素である。
【0031】
いくつかの実施形態において、検出可能な標識は、検出抗体に付着される。特定の実施形態において、検出可能な標識は、検出抗体にコンジュゲートされる。ある実施形態において、検出可能な標識は、それぞれ検出抗体にコンジュゲートされる染料又は酵素である。本方法の1つの実施形態において、ホースラディッシュペルオキダーゼが、それぞれの特異的検出抗体とのコンジュゲートとして使用される。
【0032】
検出抗体は、容器内に直接分注されてもよいし、検出抗体の所望の濃度を含む溶液に事前に混合され、そのような事前に混合された溶液のアリコートとして提供されてもよい。
【0033】
いくつかの実施形態において、各容器へ提供される検出抗体の量は、約0.02μgから約1.2μgである。1つの実施形態において、各容器に提供される検出抗体の量は、0.02μgから1.2μgである。特定の実施形態において、各容器に提供される検出抗体は、0.075μg又は1.2μgである。
【0034】
検出抗体又は検出抗体を含む溶液の投与は、個人によって、又は自動化免疫診断装置のような自動化装置によって実行されることができる。検出抗体を分注する及び固相に接触させるための方法は、手動によるピペット、及び/又はロボット化若しくは自動化された分注機構、又は容器内に所望の量の検出抗体を配置することを含むことができる。本方法が全体的に又は部分的に自動化免疫診断装置によって実行される実施形態において、検出抗体は最初に指定されたリザーバに提供され、続いて検出抗体のアリコートを、自動化免疫診断装置に提供された固相の容器又は複数の容器へ分注する。
【0035】
1つの実施形態において、本開示の方法は、以下の自動化免疫診断装置である、オルト・クリニカル・ダイアグノスティックス社製ビトロス(登録商標)ECiQ、オルト・クリニカル・ダイアグノスティックス社製ビトロス(登録商標)3600、オルト・クリニカル・ダイアグノスティックス社製ビトロス(登録商標)5600の1つで実行される。
【0036】
いくつかの実施形態において、検出抗体は容器に分注され、最大40分間インキュベートされる。特定の実施形態において、検出抗体は容器に分注され、約4、5、6、7、8、9又は10分間インキュベートされる。他の実施形態において、検出抗体は、容器内で8分間インキュベートされる。
【0037】
ある実施形態において、サンプルと検出抗体との混合物の容器への投与の前に、サンプルを検出抗体と事前に混合する。1つの実施形態において、サンプルと検出抗体との混合物は、1~60分、1~50分、1~40分、1~30分、1~20分、又は1~10分(両端を含む)インキュベートされる。他の実施形態において、サンプルと検出抗体との混合物は、1~8分(両端を含む)インキュベートされる。
【0038】
検出可能なシグナルは、固相の各容器中に存在する検出抗体によって生成される。検出可能なシグナルは、例えば、励起光源トランスデューサを使用する蛍光計によって、生成されることができ、蛍光計は、固相から空間的に分離されており、励起光を解析される各ウェルに向け、検出可能な波長の光をウェル内で生成し、該光を光学検出器により測定できる。
【0039】
更に他の実施形態において、容器中に存在する検出抗体に結合された分析物の存在又は量を決定するために、抗体ベースのバイオセンサを採用することができる。
【0040】
特定の実施形態において、各検出抗体は、ホースラディッシュペルオキダーゼのような同じ検出可能な標識にコンジュゲートされ、例えば、HRP酵素が発光基質を酸化して検出可能なシグナル(光)を放出するように、発光基質のような基質を各ウェルに提供することによって、検出可能なシグナルが生成される。
【0041】
特定の実施形態において、発光基質(例えば、ルミノール、その誘導体及び過酸塩)に、置換アセトアニリドのような電子移動剤(エンハンサー)が提供され、基質によって放出される光シグナルを増幅すると共に容器からの信号の放出を延長する。いくつかの実施形態において、発光基質は、エンハンサー溶液を含む溶液内に提供される。他の実施形態において、発光基質は、第1の溶液で容器に提供され、エンハンサーは第2の溶液で容器に提供される。
【0042】
ある実施形態において、発光基質及び電子移動剤は、容器に提供され、約1~20分、1~15分、1~10分、1~9分、1~8分、1~7分、1~6分、1~5分、1~4分、1~3分、1~2分、又は1分未満の間、インキュベートされる。特定の実施形態において、発光基質及び電子移動剤は容器に提供され、4~5分間インキュベートされる。
【0043】
本明細書で提供される方法は、対象の各分析物の存在を検出することを更に含む。一般に、検出ステップは、サンプルが提供された各容器から生成するシグナルの量を測定することによって実施される。
【0044】
本方法は、高感度であり他の分析物からの干渉が最小限である単一の固相を使用した2つ以上の異なる分析物の同時又は連続する検出のために展開されることができる。一般に、固相にサンプルを適用した後に、直接的又は間接的に検出抗体から生成されるシグナルは、視覚的に検出することができる、又は、反射率計、蛍光計又は透過光度計のような装置(分析機器)によって得ることができる。
【0045】
いくつかの実施形態において、シグナルが生成される及び検出される(サンプル中の分析物の存在を示す)と、その後、シグナルは測定及び定量化される。特定の実施形態において、各容器において測定されたシグナルの量は、定量化され、単一の数値として提供される。他の実施形態において、各容器において測定されたシグナルの量は、サンプル中に存在する分析物の量と相関する。
【0046】
いくつかの実施形態において、検出された1つ又は複数のシグナルは、本方法における対照サンプルの使用後に生成されたシグナルと比較されることができる。そのような比較は、サンプルにおいて検出される分析物の量の定量化を容易とする。一例において、修正された4又は5パラメータの対数ロジスティックソフトウェアプログラム、例えばオルト・クリニカル・ダイアグノスティックス社製アッセイ・データ・ディスク(ビトロス(登録商標)3600免疫診断システム、ビトロス(登録商標)5600統合システムに搭載)、又は磁気カード(ビトロス(登録商標)ECiQ装置上の)を用いて、定量化測定のため、較正曲線をフィットさせる。
【0047】
ある実施形態において、サンプル中に存在する対象の全ての分析物の総量を定量化する単一の値を提供することができる。1つの実施形態において、第1の容器において検出された第1の分析物の量は、第2の容器において検出された第2の分析物の量と掛け合わされ、その後、総数は1000で割られる。
【0048】
本開示のある態様において、本明細書に記載の方法を実施するためのキットが提供される。好適なキットは、記載の方法を実施するための説明書と共に、本開示の方法を実施するために十分な試薬を備える。アッセイキットの一部として提供される可能性のある追加の任意の要素は、本明細書に記載されている。
【0049】
ある実施形態において、本方法を実施するための試薬が、キット内に提供される。キットの試薬は、以下の、固相、抗体、緩衝溶液、発光基質、電子移動剤、及び本開示の方法を実施するための説明書のうちの1つ以上を含む。
【0050】
キットは、少なくとも2つの捕捉抗体でコーティングされた複数の容器を有する固相を含む。特定の実施形態において、キットに提供される固相の各容器は、容器に固定された少なくとも2つの異なる捕捉抗体を有し、それにより、少なくとも2つの異なる捕捉抗体のそれぞれは異なる抗原又はエピトープ(分析物)を認識する。
【0051】
ある実施形態において、キットに提供される固相は、ビトロス(登録商標)マイクロウェルのような複数のテーパー型容器を含む。別の実施形態において、少なくとも20のビトロス(登録商標)マイクロウェルのストロー又はスリーブを含む固相が提供される。別の実施形態において、少なくとも25のビトロス(登録商標)マイクロウェルのストロー又はスリーブを含む固相が提供される。特定の実施形態において、固相は、密閉されたストロー内に25のビトロス(登録商標)マイクロウェルを含む。
【0052】
1つの実施形態において、本開示のキットは、それぞれが、少なくとも10のテーパー型容器のストロー又はスリーブ含む4つの固相を含む。別の実施形態において、本開示のキットは、それぞれが、少なくとも20のテーパー型容器のストロー又はスリーブを含む4つの固相を含む。更に別の実施形態において、本開示のキットは、それぞれが、少なくとも25のテーパー型容器のストロー又はスリーブを含む4つの固相を含む。1つの実施形態において、本開示のキットは、それぞれが25のビトロス(登録商標)マイクロウェルのストロー又はスリーブを含む4つの固相を含む。
【0053】
いくつかの実施形態において、キットは少なくとも2つの異なる検出抗体を含み、それにより少なくとも2つの異なる検出抗体のそれぞれは、対象の異なる分析物を認識する。いくつかの実施形態において、少なくとも2つの異なる検出抗体のそれぞれは、同じである検出可能な標識、又は同じ検出可能なシグナルを生成する検出可能な標識を含む。
【0054】
いくつかの実施形態において、検出抗体はモノクロナール抗体、ポリクロナール抗体、それらのフラグメント又はそれらの任意の組み合わせである。特定の実施形態において、検出抗体は、全てモノクロナール抗体であり、対象の異なる分析物をそれぞれ認識する。他の実施形態において、検出抗体は、全てポリクロナール抗体であり、対象の分析物をそれぞれ認識する。更に別の実施形態において、提供される検出抗体は、モノクロナール抗体とポリクロナール抗体との組み合わせを含み、その各々が対象の異なる分析物に対して特異的である。
【0055】
いくつかの実施形態において、キットは、それぞれTIMP2及びIGFP7に対して特異的な抗体を含む。ある実施形態において、本開示の検出抗体は、それぞれTIMP2及びIGFBP7に対して特異的なモノクロナール抗体である。特定の実施形態において、TIMP2に対して特異的な検出抗体は、モノクロナール抗体40H2-40K3であり、IGFBP7に対して特異的な検出抗体は、モノクロナール抗体6D2.1である。
【0056】
特定の実施形態において、キットは、少なくとも2つの異なる検出抗体を含み、該検出抗体は、対象の異なる分析物をそれぞれ認識し、検出可能な標識にコンジュゲートされる。1つの実施形態において、キットは、少なくとも2つの異なる検出抗体を含み、該検出抗体は、対象の異なる分析物をそれぞれ認識し、ホースラディッシュペルオキダーゼ(HRP)にそれぞれコンジュゲートされる。
【0057】
本開示のいくつかの実施形態において、キットは、発光基質のような基質を含む。本方法及びキットにおいて使用される発光基質は、そのエンハンサーとして、当業者に知られている。そのため、酵素、基質及びエンハンサーの特定の1つ又は複数の組み合わせは、限定することを意図しない。ある実施形態において、キットに提供される発光基質は、ルミノール又はその誘導体及び過酸塩である。いくつかの実施形態において、キットは、置換アセトアニリドのような電子移動剤(エンハンサー)を含み、電子移動剤は、検出可能な標識から生成されるシグナルを増幅することができる。
【0058】
いくつかの実施形態において、本開示のキットは、対象の特定の分析物を既知の量で含む参照溶液(較正溶液)を含む。1つの実施形態において、参照溶液は、対象の少なくとも2つの分析物を既知の量、又は複数の既知の量で含むことができる。別の実施形態において、そのようなキットによって検出される対応する各分析物に対して、参照溶液を提供することができる。
【0059】
ある実施形態において、本開示のキットは、1つ以上の溶液又はバッファを含む。例えば。キットは、以下のリン酸緩衝液、検出抗体溶液(例えば、TIMP2検出抗体コンジュゲート溶液、IGFBP7検出抗体コンジュゲート溶液)、及び水(例えば、脱イオン又は滅菌)のうち1つ以上を含有してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0060】
図1】本開示の例示的な固相容器の概略図である。示されている固相は、固相に固定化(結合)された2つの異なる捕捉抗体を有する容器を含む。それぞれの捕捉抗体は、異なる分析物、つまり抗原(分析物1、分析物2)に対して特異的であり、そのいずれもがサンプル中に存在することもしないこともある。概略図は、サンプルが容器に提供される場合の、サンプル中に存在する特定の抗体に結合する捕捉抗体の能力を示し、更に本方法を使用する本開示の検出抗体を更に導入した後の、捕捉抗体-分析物-検出抗体複合体の形成を示す。
図2】サンプル中の複数の分析物を検出するための本方法の例示的実施形態の概略図である。概略図は、サンプル中の第1及び第2の分析物を検出するための方法を示し、該方法は、各容器の表面に固定された2つの異なる捕捉抗体をそれぞれが有する少なくとも2つの容器を保持する固相を提供することを含む。示される方法は、サンプルが各容器へ提供された場合に、検出可能な標識が結合された特異的な検出抗体も提供されることを示す。示されている各検出抗体に結合されたラベルは同じであるが、容器1に提供される検出抗体は、第1の分析物だけを認識するが、容器2に提供される検出抗体は、第1の分析物とは異なる第2の分析物を認識する。サンプル中に存在する各分析物の量は、各ウェルに存在する検出抗体によって生成される検出可能なシグナルを測定することによって検出される。これにより、サンプル中の対象の2つの分析物のそれぞれの測定量を定量化することができる。ここで、サンプル中に存在する第1の分析物の量は、容器1で検出されるシグナルの量に正比例し、サンプル中に存在する第2の分析物の量は、第2の容器で検出されるシグナルの量に正比例する。
図3】サンプル中の複数の分析物を検出するための本方法の第2の例示的な実施形態の概略図である。示されている方法は、テーパー型容器(容器1、容器2)を有する固相を使用する2つの分析物(TIMP2、IGFBP7)の検出を示し、各容器は、その内表面上に固定化されたTIMP2に対して特異的な捕捉抗体と、IGFBP7に対して特異的な捕捉抗体と、を有する。サンプルは、容器1に注がれ、TIMP2-ホースラディッシュペルオキダーゼ(HRP)-コンジュゲート検出抗体が、容器1に注がれる。サンプルは、容器2に注がれ、IGFBP7-HRP-コンジュゲート検出抗体が、容器2に注がれる。容器1及び容器2の中身は、37℃でインキュベートされ、各容器は洗浄される。概略図は、本方法の実施形態も示し、それにより、各容器内で捕捉抗体-分析物-検出抗体の複合体が形成された後に、シグナル試薬が各容器に提供され、ウェル内の検出可能なシグナルの放出が促進される。ここで、発光基質とシグナルエンハンサーを含むシグナル試薬が、各容器に添加され、光の放出(発光)が各容器から検出され、照度計を使用して各容器からの光の放出量を測定する。各容器で検出される光シグナル量は、サンプル中に存在するTIMP2及びIGFBP7の濃度に正比例する。
【発明を実施するための形態】
【0061】
本明細書で提供される方法は、複数の容器であって、該容器のそれぞれが該容器に固定化された少なくとも2つの抗体を有する、容器を含む単一の固相を使用する。抗体、つまり捕捉抗体が、対象の少なくとも2つの異なる分析物を認識する。それゆえ、本明細書で提供される方法は、単一の固相を使用した複数の分析物の検出と測定とを容易にする。複数の分析物を検出するために単一の固相を使用することで、対象の各特定の分析物を定量的に検出するために別々の固相を生成することに関連するコストが不要となる。本開示の方法は、アッセイを簡易化することと、サンプル中の複数の分析物を検出するために必要な成分の量を低減することとにより、ユーザのエラーの潜在性を限定することで、効率も改善する。加えて、本方法は、同じ検出可能なシグナルを有する標識化された検出抗体を使用する。これは、異なる検出可能な標識の必要性と、複数のシグナルを検出する手段とを低減することによって、複数の分析物の定量的な検出を更に簡易化する。
【0062】
第1の態様において、本開示は、サンプル中の対象の分析物の存在を検出するための方法を提供する。本方法は、それぞれが抗体でコーティングされた複数の容器を含む固相を提供することを含み、サンプル又はサンプルの一部と接触した際に、サンプル中に、抗体が存在すすれが、それが対象の分析物と結合する(捕捉する)。各容器は、その表面に固定された少なくとも2つの異なる抗体を含み、それにより、少なくとも2つの固定化された抗体は、異なる分析物を認識する。サンプルは、各容器に提供され、その結果、サンプル又はサンプルの一部は、各容器に固定化された捕捉抗体と接触するようになる。サンプルが、固定化された抗体によって認識される分析物(例えば、対象のタンパク質、又はそのフラグメント、又は対象のレセプタ)を含む場合、サンプル中の分析物は、容器中に存在する対応する捕捉抗体に結合する。本開示の方法は、検出可能な標識(検出抗体)を含む抗体を、各容器に提供することも含む。各容器に提供される検出抗体は、対象の分析物の1つに対して特異的である。しかし、提供される各特定の検出抗体は、同じ検出可能なシグナルを生成する。本明細書で提供される方法は、対象の各分析物の存在を検出することも含む。
【0063】
本明細書で用いられている用語「分析物」又は「複数の分析物」は、抗体によって認識可能な任意の分子(例えば、抗原、他の抗体又はそれらの一部)である。いくつかの実施形態において、分析物はポリペプチドである。本明細書でも用いられている「ポリペプチド」は、隣接するアミノ酸残基のカルボキシル基とアミノ基との間のペプチド結合によって互いに結合されたアミノ酸の単一のポリマー鎖である。用語「タンパク質」は、ポリペプチドを含む。用語「タンパク質」は、ベータシート、リンカー及びアルファヘリックスのような複数のドメインを有するポリペプチドを説明するために使用されてもよい。従って、用語「タンパク質」は、四次構造、三次構造を有するポリペプチド、及び少なくとも1つのポリペプチドから構成される他の複雑な高分子を含むことも意味する。タンパク質が互いに物理的に結合する複数のポリペプチドで構成される場合、本明細書で使用される「タンパク質」という用語は、物理的に結合し、別個のユニットとして一緒に機能する複数のポリペプチドを指す。分析物が他の抗体である場合の実施形態において、分析物-抗体は、捕捉抗体とは異なる任意の抗体であり、捕捉抗体に結合することが可能である。
【0064】
本方法の実施形態において、分析物は、対象のエピトープ又はアミノ酸配列を含む任意のポリペプチドである。そのようなポリペプチドは、体液または固体サンプル内に存在することができる。いくつかの例において、分析物は、生物(例えば、哺乳類、バクテリア、ウイルス)に存在する、生物内に存在する、又は生物によって生成されるポリペプチド又は抗体である。いくつかの実施形態において、分析物は、細胞に存在する、細胞内に存在する、又は細胞によって生成されるポリペプチド又は抗体である。更に他の実施形態において、分析物は、当業者には既知の方法を使用して合成により生成された、又は組み換えにより生成されたポリペプチド又は抗体である。
【0065】
例えば、分析物は、Merrifield, J. Am. Chem. Soc. (1963) 85 pp. 2149-2154により最初に記載されたポリペプチドの製造のための固相合成技術を使用して調製されてもよい。他のポリペプチド合成技術は、M. Bodanszky, et al. Peptide Synthesis, John Wiley & Sons, 2d Ed., (1976)と、当業者が容易に利用可能な他の参考文献と、において見ることができる。ポリペプチド合成技術の要約は、J. Stuart and J. D. Young, Solid Phase Peptide Synthesis, Pierce Chemical Company, Rockford, Ill., (1984)においても見ることができる。The Proteins, Vol. II. 3d Ed., Neurath, H. et al., Eds., pp. 105-237, Academic Press, New York, N.Y. (1976)で説明されているように、分析物は溶液法によっても合成することができる。異なるペプチド合成において使用される適切な保護基は、上記のテキストと同様にJ. F. W. McOmie, Protective Groups in Organic Chemistry, Plenum Press, New York, N.Y. (1973)においても説明されている。本開示の分析物は、タンパク質又はポリペプチドのより大きな部分から化学的又は酵素的切断をすることによって準備されることができる。
【0066】
いくつかの実施形態において、本方法の分析物は、細胞によって生成されたタンパク質若しくは抗体又はそれらのフラグメントである。ある実施形態において、分析物は、細胞膜の最外表面に存在するタンパク質である。1つの実施形態において、細胞膜の最外表面に存在するタンパク質は、抗体にアクセス可能な抗原又はエピトープを有する。更に他の実施形態において、分析物は、細胞によって分泌されたタンパク質又はそのフラグメントである。
【0067】
サンプル中の複数の抗原を捕捉及び検出するために複数の抗体を固定化することによる本明細書で開示されている形式/アプローチは、逆の形式に設計されることができる。そのため、サンプル中の検出されるべき分析物が抗体又はそのフラグメントであるある実施形態においては、それぞれが複数の抗原(例えば、ペプチド)でコーティングされた容器を含む固相が、提供されることができ、該抗原は、サンプル又はその一部と接触した場合に、サンプル中に対象の抗体(つまり、分析物)が存在すれば、それと結合する(捕捉する)。例えば、各容器は、その表面に結合された少なくとも2つの異なる抗原又はペプチドを含み、それにより少なくとも2つの固定された抗原は、それぞれ異なる抗体分析物を認識する。サンプルは各容器に提供され、その結果、サンプル又はサンプルの一部が各容器に固定化された抗原と接触するようになる。サンプルが、固定化された抗原によって認識される分析物(例えば、対象の抗体、又はそのフラグメント)を含有する場合、サンプル中の抗体は、容器内に存在する対応する捕捉剤(つまり、抗原)と結合する。そのような方法は、検出可能な標識(検出抗体)を含む抗体を、各容器に提供することも含む。各容器に提供される検出抗体は、対象の分析物(抗原)又はその一部の1つに対して特異的である。しかしながら、提供される各特異的な検出抗体は、同じ検出可能なシグナルを生成する。
【0068】
付加的に、本開示のペプチド(分析物)は、当業者に知られている組換え技術によって準備されてもよい。例えば、Current Protocols in Molecular Cloning Ausubel et al., 1995, John Wiley & Sons, New York)、Sambrook et al., 1989, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New York、及びColigan et al. (1994) Current Protocols in Immunology, John Wiley & Sons Inc., New York, N.Y.を参照。当業者は、多種多様な発現系のいずれかを使用して、組換えペプチドを提供することができることを理解する。使用される正確な宿主細胞は、本方法にとって重要ではない。しかしながら、例として、本開示の分析物は、原核生物の宿主(例えば、E.コリ(Coli))内で、真核性の宿主(例えば、S.セレビシエ(cerevisiae)内で又はCOS1、CHO、NIH3T3及JEG3細胞のような哺乳類の細胞内で、又は例えばS.フルギペルダ(frugiperda)のような節足動物の細胞内で生成されることができる。
【0069】
ある例示的な実施形態において、分析物は、インスリン様成長因子結合タンパク質7(IGFBP7)、その誘導体、アナログ又はホモログである。ある実施形態において、IGFBP7は、例えばアクセッション番号NP_001240764.1、AAH66339、AAR89912又はAAP35300に記載のインスリン様成長因子結合タンパク質7の前駆体から誘導された任意のポリペプチドである。他の実施形態において、分析物は、抗体から認識されうるエピトープを含むIGFBP7タンパク質の任意のポリペプチドフラグメントである。
【0070】
他の例示的な実施形態において、分析物は、マトリックメタロプロテアーゼの阻害剤、その誘導体、アナログ又はホモログである。ある実施形態において、分析物は、メタロプロテアーゼの組織阻害剤(TIMP)である。ある実施形態において、TIMP分析物は、例えば、アクセッション番号NP_003246.1、NP_035724.2、DAA18186.1又はNP_068824.1に記載のメタロプロテアーゼ阻害剤2(TIMP2)から誘導される任意のポリペプチドである。他の実施形態において、分析物は、抗体により認識可能なエピトープを含むTIMP2タンパク質の任意のポリペプチドフラグメントである。
【0071】
「ホモログ」の用語は、例えばヒト、ラット、マウス、ウサギ、ウシ、イヌ又はトリのアミノ酸配列において実質的に相同である別の脊椎動物種の対応するポリペプチドを意味する。「アナログ」の用語は、1つ以上のアミノ酸だけが異なるポリペプチドを包含することを意味する。1つ又は複数のアミノ酸置換、1つ又は複数の付加、又は1つ又は複数の欠失を含み、抗体がポリペプチドを認識する能力を無効にしないポリペプチド等である。
【0072】
いくつかの実施形態において、本開示の分析物は、少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6又はそれ以上の異なるタンパク質又はポリペプチドである。特定の実施形態において、本開示の分析物は、少なくとも2つの異なるポリペプチド又はタンパク質を含む。1つの実施形態において、本開示の分析物は、正確に2つの異なるポリペプチド又はタンパク質を含む。別の実施形態において、本開示の方法は、サンプル中のTIMP2及びIGFBP7(分析物)の存在又は量を検出するために採用される。
【0073】
他の実施形態において、本方法によって検出されるべき分析物は、以下のポリペプチド、前立腺特異抗原(PSA)、PSAと複合体を形成する分子(例えば、α-アンチキモトリプシン、α-プロテアーゼ阻害剤(API)又はαマクログロブリン)、アミロイド-βペプチド(Aβ、βAP、AβP、又はβ/A4)、β-アミロイド前駆体タンパク質(APP)、タウ微小管タンパク質、ホスホ-タウ(例えば、アミノ酸181でリン酸化されたタウタンパク質)、それらのアイソフォーム、それらのホモログ、それらの変異体又はそれらの一部の非限定的なリストから選択される。いくつかの実施形態において、本開示の方法は、以下の分析物の対、PSA及び複合化PSAと、Aβ(又は変異体又はその一部)及びタウと、タウ及びホスホ-タウ、の存在及び量を検出するために採用される。
【0074】
対象の分析物が決定されると、各分析物に特異的な抗体が、本開示の方法で使用するために選択される。
【0075】
本明細書で使用されている「抗体」という用語は、特定の抗原又はエピトープに結合する能力を有する、1つ又は複数の免疫グロブリン遺伝子又はその誘導体によってコードされる免疫グロブリン分子を指す。例えば、Fundamental Immunology, 3rd Edition, W.E. Paul, ed., Raven Press, N.Y. (1993)、Wilson et al., J. Immunol. Methods (1994) 175:267-273を参照。一例として、抗体の抗原結合機能は、全長の抗体のフラグメントによって、つまり「抗原結合フラグメント」又は「抗原結合部分」によって実行され得ることが示されているため、免疫グロブリン分子の重鎖及び軽鎖の様々な領域は、抗原と相互作用する及び結合する結合ドメイン(抗原結合部分)を含有する。「抗体」の用語に含まれうる抗原結合部分又は抗原結合フラグメントの例は、(i)Fabフラグメント、VL、VH、CL及びCHIドメインからなる一価フラグメント、(ii)F(ab’)2フラグメント、ヒンジ領域でジスルフィド架橋によって連結された2つのFabフラグメントを備える二価フラグメント、(iii)VH及びCHIドメインからなるFdフラグメント、(iv)抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFvフラグメント、(v)VHドメインからなるdAbフラグメント(Ward et al., Nature (1989) 341 pp. 544-546を参照)、及び(vi)分離された相補性決定領域(CDR)を含むが、これらに限るものではない。完全な抗体分子と同様に、抗原結合部分は、単一特異性又は多数特異性(例えば二重特異性)であってもよい。単鎖抗体も「抗体」の用語に含まれる。抗体の用語は、モノクロナール抗体及びポリクロナール抗体も含む。
【0076】
それゆえ、いくつかの実施形態において、本開示の抗体は、モノクロナール、ポリクロナール、それらのフラグメント及びそれらの任意の組み合わせであり得る。特定の実施形態において、本開示の抗体は、全てモノクロナール抗体であり、対象の分析物をそれぞれが認識する。他の実施形態において、本開示の抗体は、全てポリクロナール抗体であり、対象の分析物をそれぞれが認識する。更に別の実施形態において、本開示の抗体は、モノクロナール抗体及びポリクロナール抗体の組み合わせであり、それぞれが対象の異なる分析物に対して特異的である。
【0077】
いくつかの実施形態において、本開示の抗体は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6又はそれ以上の異なる抗体を含む。本方法のある実施形態において、固相は、異なる分析物を認識する2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上の異なる抗体を含む。いくつかの実施形態において、固相は、2つの異なる分析物だけに特異的な2以上の異なる抗体を含む。特定の実施形態において、固相は、それぞれが2つの異なる抗原又はエピトープ(分析物)を認識する2つの異なる抗体を含む。
【0078】
別の実施形態において、本開示の抗体は、TIMP2及びIGFP7に対してそれぞれ特異的である。いくつかの実施形態において、本開示の抗体は、TIMP2及びIGFBP7に対してそれぞれ特異的なモノクロナール抗体である。他の実施形態において、抗体はマウスモノクロナール抗体、ヒトモノクロナール抗体、又はウサギモノクロナール抗体である。ある実施形態において、抗体は、TIMP2及びIGFBP7に対して特異的なマウス又はウサギモノクロナール抗体である。特定の実施形態において、TIMP2に対して特異的な抗体は、マウスモノクロナール抗体6E2.1であり、IGFB7に対して特異的な抗体は、マウスモノクロナール抗体1D6である。
【0079】
他の実施形態では、本方法で使用する抗体は、以下の抗体、タウを特異的に認識する任意のモノクロナール又はポリクロナール抗体(例えば、HT7及びAT270モノクロナール抗体、正常に及び異常にリン酸化されたタウを認識する抗体(例えばAlz50(Ghanbari et al., 1990)、HT7(Mercken et al., 1992)、及びAT120(Vandermeeren et al., 1993))、PSAを認識する任意の抗体又はその結合パートナー(例えば、2E9、2H11及び5A10、これらは米国特許第5,501,983号明細書に記載されおり、参照によって、その全体の内容を本明細書に取り込むものとする)、Aβ又はその一部と結合する任意の抗体、これらは米国特許第7,700,309号明細書に記載されており、参照によってその全体の内容を本明細書に取り込むものとする、及び、当業者にとって既知の他の抗体、例えば、これらは米国特許第9,174,097号明細書に開示されており、参照によってその全体の内容を本明細書に取り込むものとする、の非限定的なリストから選択される。
【0080】
一般に、本方法で使用される抗体は、それらが認識する分析物に関わらず、(i)捕捉抗体と(ii)検出抗体との2つのカテゴリに分けられる。本明細書において使用される「捕捉抗体」又は「複数の捕捉抗体」の用語は、固相の容器の一部又は表面に付着(固定)され得る抗体であり、分析物上又は分析物内に存在する対応するエピトープに接触した場合、対象の分析物を結合する(捕捉する)ことができる。例えば、検出抗体は固相の容器に付着されており、それにより、抗体の抗原結合部分は、抗原が存在すれば、それに結合できるような方法で容器内に提示される。
【0081】
本明細書で使用される「検出抗体」又は「複数の検出抗体」の用語は、分析物上に又は分析物内に存在するエピトープに接触した場合に対象の分析物を結合することができ、及び検出可能な標識が付着される(例えば、コンジュゲート又は連結される)抗体を意味する。「検出可能な標識」又は「検出要素」は、本明細書において交換可能に使用され、直接検出可能な(例えば、蛍光部分、電気化学標識、電気化学発光標識、金属キレート、コロイド金属粒子)任意の分子又は複数の分子を意味すると共に、検出可能な反応生成物(例えば、ホースラディッシュペルオキダーゼ、アルカリホスファターゼ等のような酵素)の生成によって間接的に検出され得る任意の1又は複数の分子、検出抗体に特異的に結合する分子の認識によって検出できる1又は複数の分子、例えば、検出抗体に結合する標識抗体、ビオチン、ジゴキシゲニン、マルトース、オリゴヒスチジン、2,4-ジニトロベンゼン、フェニルヒ酸塩(phenylarsenate)、核酸(例えば、ssDNA、dsDNA)等、を意味する。特定の例において、検出可能な標識は、ホースラディッシュペルオキダーゼである。
【0082】
本方法において使用される捕捉抗体は、固相の容器の表面上に提供される。ある実施形態において、本開示の捕捉抗体の第1の部分は、容器の表面に付着され、その結果、抗体の抗原結合部分が、抗体に対して提示された抗原に接触できるように、捕捉抗体の抗原結合部分が配置される。
【0083】
捕捉抗体は、当業者に知られている多くの方法で、固相上に又は固相内に存在する容器に付着させることができる。例えば、捕捉抗体は、共有結合的に、又は非共有結合的に容器に結合させることができる。ある例において、捕捉抗体は、直接的又は間接的のいずれかで容器の表面に付着させることができる。例えば、捕捉抗体の一部と固相容器の表面上の官能基との間の化学結合を通じ、捕捉抗体を共有結合的に直接容器に結合させることができる。代わりに、抗体をリンカーに共有結合させ、リンカーを固相容器に共有結合させることによって、捕捉抗体を共有結合的に固相容器へ間接的に結合させることができる。いくつかの例において、抗体の固相容器への非共有結合的な会合又は吸着を通じ、捕捉抗体は、非共有結合的に固相容器へ直接的に結合する。他の例において、捕捉抗体がリンカー又は他の中間剤に共有結合し、当該リンカー又は他の中間剤が固相容器との非共有結合を形成することによって、捕捉抗体は、非共有結合的に固相容器へ間接的に結合する。全ての場合において、捕捉抗体と容器との会合は、抗体の抗原結合部分を露出し、捕捉抗体の特異性に影響を与えず又は制限しないような方法で、つまり、抗体に提示された場合に、対象の分析物を結合するという捕捉抗体の性能を低下しないような方法で、捕捉抗体を固相容器又はその一部へ固定すべきである。
【0084】
抗体を固相容器へ共有結合的に付着させるために有用な様々な化学反応は、当業者にはよく知られている。容器への捕捉抗体の共有結合的な付着にとって有用な官能基の実例は、アルキル、Si-OH、カルボキシ、カルボニル、ヒドロキシル、アミド、アミン、アミノ、エーテル、エステル、エポキシド、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、スルフヒドリル、ジスルフィド、オキシド、ジアゾ、ヨード、スルホン、又は化学若しくは潜在的な化学反応性を有する同様の基を含む。特定の実施形態において、本開示の捕捉抗体は、吸着によって容器へ直接的に固定される。
【0085】
例えば、容器への吸着又はコーティングにより、又は、自体が容器に非共有結合的に結合する又は固定されるリンカー若しくは結合剤への共有結合又は非共有結合的な会合により、抗体は、固相容器へ非共有結合的に会合することができる。固相へ抗体の結合に有用なリンカー又は結合剤の実例は、タンパク質、有機ポリマー(例えば、PEG及びその誘導体)、及び小分子を含む。本開示の抗体を固相へ固定するために有用なリンカーのより具体的な例は、ヒト血清アルブミン(HAS)、ウシ血清アルブミン(BSA)、ストレプトアビジン、アビジン、ビオチン、PEG、及び抗体又は抗体のフラグメントを含む。
【0086】
1つの非限定的な実施例において、捕捉抗体は、HSA又はBSAのような結合剤に共有結合的にコンジュゲートさせることができ、そして結果として得られるコンジュゲートを容器のコーティングに使用することができる。別の実施形態において、抗体は、ストレプトアビジン、ビオチン、又はアビジンのうちの1つと共有結合的にコンジュゲートさせることができ、そして、コンジュゲートされた抗体を、容器に固定化された異なるストレプトアビジン、ビオチン又はアビジン分子に結合させることができる。
【0087】
いくつかの実施形態において、固相容器の表面を、容器への捕捉抗体の安定した付着(固定)を容易とするため、改変することができる。一般に、当業者は、容器表面への抗体の固定化を容易とするような方法で容器を改変するため、通常の方法を使用することができる。以下は、適用可能な改変の非限定的な例である。
【0088】
抗体の付着を容易とするため、固相容器の表面をコーティングすることができる。一般に、コーティングは、抗体の一部と相補的な物である。容器の表面は、例えば、トリアルコキシアミノシランを用いて表面をシリル化することによってアミド化することができる。シラン処理容器は、ホモ二価性及びヘテロ二価性リンカーを用いて誘導体化することもできる。容器がヒロドキシ、アミノ(例えば、アルキルアミン)、カルボキシル基、N-ヒドロキシ-スクシンイミジルエステル、光活性化可能な基、スルフヒドリル、ケトン、又は他の反応に利用可能な官能基を含むように、容器表面を誘導体化することができる。固相の容器への非共有結合的な抗体の付着に有用な分子の実例は、これに限るものではないが、例えばブドウ球菌プロテインA又はプロテインGのような、抗体を結合できる薬剤を含む。
【0089】
他の実施形態において、固相容器は、容器の材料に組み込まれる官能基を含む。容器へ抗体を共有結合的に付着させるために有用な官能基の実例は、アルキル、Si-OH、カルボキシ、カルボニル、ヒドロキシル、アミド、アミン、アミノ、エーテル、エステル、エポキシド、シアネート、イソシアネート、チオシアネート、スルフヒドリル、ジスルフィド、オキシド、ジアゾ、ヨード、スルホン、又は化学反応性又は潜在的な化学反応性を有する類似の基を含む。
【0090】
図1に示されているような例示的な実施形態において、捕捉抗体は、固相容器の表面に吸着により固定されている。より具体的には、複数の容器を有する固相は、それぞれポリスチレンでコーティングされ、照射される。
【0091】
固相に提供される放射線の量が捕捉抗体の吸着を最大とするように、照射の適切な量は、当業者が決定することができる。ある実施形態において、固相の容器は、1.0MRad~3.5MRad(両端を含む)まで照射されることができる。他の実施形態において、容器は、約1.0MRad、約1.5MRad、約2.0MRad、約2.5MRad、約3.0MRad、又は約3.5MRadまで照射される。特定の実施形態において、容器は、約1MRadまで照射された。約1MRadまで照射された容器は、モノクロナール捕捉抗体を照射表面へ固定する改善された能力を表した。
【0092】
捕捉抗体コーティング溶液は、例えば、リン酸塩、塩化ナトリウム及び緩衝液を、抗体の変性を防ぐために最適化されたpH(例えば、約5.5~9.0のpH、より具体的には約6.0~7.0のpH)で含み、並びに少なくとも2つの異なる捕捉抗体は、各容器の内表面が抗体コーティング溶液と接触するように、固相の各容器内に分注される。次に、固相容器は、溶液内の捕捉抗体の吸着を促進するためにインキュベートされる。そして、固相容器は、付着しなかった抗体を容器から除去するために洗浄される。洗浄は、1、2、3、4回以上実施することができる。しかしながら、洗浄量を最小限とすることは、固相を生成する時間及びコストを低減する。いくつかの実施形態において、全ての余剰の抗体を容器から除去するためには、固相の2回の洗浄で十分である。例えば、トリス/HCL、スクロース、NaCl及び血清アルブミンを含むポストコーティング溶液は、各容器の抗体がコーティングされた表面にポストコーティング溶液が接触するように、各容器に分注される。ポストコーティング溶液とのインキュベーション後に、吸引などによってポストコーティング溶液は除去し、容器を乾燥させ、将来の使用のために保管する。図1に示すように、前述の処理の結果、複数の捕捉抗体が固相容器の表面に固定化され、その結果、抗原結合領域が露出した状態で抗体が配向される。
【0093】
本明細書で使用される「固相」という用語は、2つ以上の容器が組み込まれ得る任意の固体又は半固体材料を指す。例として、固相は、容器が取り付けられ、そこから分注できる材料を提供する。好適な固相材料は、当技術分野で知られている。固相内の材料又は材料の組み合わせが、容器の取り付け又は組み込みを阻害する、又は本明細書で提供される方法のステップを妨げない限りにおいて、固相は、これに限るものではないが、天然又は合成ポリマー、樹脂、金属、シリケート、又はそれらの組み合わせを含む、単一の材料又は様々な材料から構成されることができる。
【0094】
固相として適した材料の非網羅的なリストは、アガロース、カルボキシメチルセルロースのようなセルロース、セファデックス(登録商標)のようなデキストラン、ポリアクリルアミド、ポリスチレン、ポリエチレングリコール、レジン、シリケート、ジビニルベンゼン、メタクリレート、ポリメタクリレート、ガラス、セラミック、紙、金属、メタロイド、ポリアクリロイルモルフォリス(polyacryloylmorpholidse)、ポリアミド、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ(4-メチルブテン)、ポリ(エチレンテレフタレート)、レーヨン、ナイロン、ポリ(ビニルブチレート)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、シリコーン、ポリホルムアルデヒド、セルロースアセテート、ニトロセルロース、又は前述のいずれかの2つ以上の組み合わせを含む。
【0095】
いくつかの実施形態において、本方法において使用される固相は、ポリスチレンから構成される。
【0096】
固相は、様々な形を有することができ、例えば、メンブレン、チップ、プレート、ストロー、スリーブ、スライド、カラム、中空、固体、半固体、ビーズのような粒子を含む孔又は凹み、ゲル、光ファイバー材料を含むファイバー、及びマトリクスを含むことができる。ある実施形態において、固相は、複数の容器を含む、チップ、プレート、ストロー、スリーブ、スライド、カラム、又はマトリクスを含む。ある実施形態において、固相は、少なくとも2つの容器を含むストロー又はスリーブを備える。
【0097】
「容器」又は「複数の容器」の用語は、大量の溶液、サンプル又は他の材料を受け入れて収容できる固相のサブセットを定義するために使用される。容器の非限定的な例は、カップ、ウェル、チューブ、キャピラリ、バイアル及び他のベッセル、溝、又は溶液、サンプル又はその一部を受け入れられる窪み、を含む。容器は、ストロー、スリーブ、ストリップ、プレート、スライド、カラム、マトリクス等の一部のような固相内に含まれることができる。具体的に、複数の容器は、自動化免疫診断装置で使用可能である、カップ又はウェルを含むストロー又はストリップ、マルチウェルプレート、マイクロウェルプレート等のような固相内又は固相上に含まれることができる。
【0098】
1つの実施形態において、本方法において使用される固相は、容器の下部が容器の上部の幅よりも狭い幅を有するように、頂点から底に向かって先細る垂直な側壁を備える容器を含む。例えば、テーパー型容器は、円錐形又はカップ形である。図2に示すようなテーパー型容器は、例えば、インキュベーション期間及び本方法全体で使用される材料(例えば、溶液、抗体、サンプル)の量を減少させることによって、本方法の効率を改善する。特定の実施形態において、本方法で用いられる固相は、複数のビトロス(登録商標)マイクロウェルを含む。
【0099】
いくつかの実施形態において、固相は複数の容器を含む。ある実施形態において、固相は、少なくとも2個の容器、少なくとも3個の容器、少なくとも4個の容器、少なくとも5個の容器、少なくとも6個の容器、少なくとも7個の容器、少なくとも8個の容器、少なくとも9個の容器、少なくとも10個の容器、少なくとも15個の容器、少なくとも20個の容器、少なくとも25個又はそれ以上の容器を含む。実施形態において、本方法で使用される固相は、少なくとも2つの容器を含む。実施形態において、固相は少なくとも2つのテーパー型容器を含む。更に別の実施形態において、固相は、少なくとも2つのビトロス(登録商標)マイクロウェルのストロー又はスリーブを含む。
【0100】
本方法のある実施形態において、固相は、2~100個の容器、2~90個の容器、2~80個の容器、2~70個の容器、2~50個の容器、2~60個の容器、2~50個の容器、2~40個の容器、2~30個の容器、2~20個の容器、2~10個(両端を含む)の容器を含む。いくつかの実施形態において、固相は、2~100個、2~75個、2~50個、2~25個、2~15個、2~10個又は2~5個の容器を含む。他の実施形態において、固相は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又は100個の容器を含む。1つの実施形態において、固相は25個のテーパー型容器を含む。特定の実施形態において、固相は、ストロー又はスリーブ内に25個の容器を含む。特定の実施形態において、固相は、密閉されたストロー内に25個のビトロス(登録商標)マイクロウェルを含む。
【0101】
本明細書に記載のように、本方法によって検出される分析物の数に応じて、2つ以上の捕捉抗体が固相担体の各容器表面に結合される。ある実施形態において、固相の各容器は、それに固定された少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ又はそれ以上の異なる捕捉抗体を有する。本方法のある実施形態において、固相の各容器は、それに固定された2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上の異なる捕捉抗体を有する。特定の実施形態において、固相の各容器は、それに固定された少なくとも2つの異なる捕捉抗体を有し、それにより、少なくとも2つの異なる捕捉抗体は、異なる抗原又はエピトープ(分析物)を認識する。実施形態において、図1及び2に例示されているように、固相の各容器は、その表面に固定された2つの正確に異なる型の捕捉抗体を有し、それにより、捕捉抗体の各型は異なる分析物を認識する。
【0102】
他の実施形態において、本方法において使用される捕捉抗体は、以下の抗体、タウを特異的に認識する任意のモノクロナール又はポリクロナール抗体(例えば、HT7及びAT270モノクロナール抗体、正常に及び異常にリン酸化されたタウを認識する抗体(例えばAlz50(Ghanbari et al., 1990)、HT7(Mercken et al., 1992)、及びAT120(Vandermeeren et al., 1993))、PSAを認識する任意の抗体又はその結合パートナー(例えば、2E9、2H11及び5A10、これらは米国特許第5,501,983号明細書に記載されおり、参照によって、その全体の内容を本明細書に取り込むものとする)、Aβ又はその一部と結合する任意の抗体、これらは米国特許第7,700,309号明細書に記載されており、参照によってその全体の内容を本明細書に取り込むものとする、及び、当業者にとって既知の他の抗体、例えば、これらは米国特許第9,174,097号明細書に開示されており、参照によってその全体の内容を本明細書に取り込むものとする、の非限定的なリストから選択される。
【0103】
いくつかの実施形態において、固相に固定される少なくとも1つの捕捉抗体は、モノクロナール抗体、ポリクロナール抗体、又はそれらのフラグメントである。いくつかの実施形態において、固相に固定化される捕捉抗体は、ポリクロナール抗体又はそのフラグメントである。他の実施形態において、捕捉抗体はモノクロナール抗体である。
【0104】
図1に示される例示的な実施形態において、各容器は、第1の分析物を認識する複数の捕捉抗体と、第2の分析物を認識する複数の捕捉抗体とを有する。図3に示すような特定の実施形態において、各容器は、TIMP2分析物を認識する少なくとも1つの捕捉抗体と、IGFBP7分析物を結合する少なくとも1つの捕捉抗体とを有し、これらは容器の表面に固定されている。ある実施形態において、TIMP2及びIGFBP7捕捉抗体は、モノクロナール抗体又はそのフラグメントである。ある実施形態において、固相の各容器に固定された捕捉抗体は、TIMP2及びIGFBP7に対して特異的なマウスモノクロナール抗体である。特定の実施形態において、TIMP2に対して特異的な捕捉抗体は、マウスモノクロナール抗体6E2.1であり、IGFBP7に対して特異的な捕捉抗体は、マウスモノクロナール抗体1D6である。
【0105】
本方法のある実施形態において、サンプル又はその一部は、中に複数の容器を含む固相に提供され、固相の各容器は、異なる分析物にそれぞれ結合することが可能な少なくとも2つの捕捉抗体を含む。
【0106】
分析物の数又は対象の分析物を得るための方法に関わらず、分析物はサンプルに提供される、又はサンプル内に含まれ、固相に容易に適用することができる。ある実施形態において、サンプルは対象者から得られてもよく、他の材料から得られてもよい。本明細書で使用される「対象者」という用語は、ヒト又は非ヒト生物を指す。従って、本明細書に記載の方法は、ヒト及び様々な分野の両方に適用可能である。更に、対象者は好ましくは生きている生物であるが、本明細書に記載の方法は、死後分析にも使用してもよい。ヒトである対象は、「患者」であることができ、本明細書で使用される患者は、疾患又は状態について医療を受けている、又は受ける可能性のある生きているヒトを指す。
【0107】
いくつかの例において、サンプルは、その中に特定の分析物が存在することを決定する目的のために作成される。例えば、サンプルは、対象の分析物を含む、又は含まないことが知られている細胞培養物、体液又は組織から得てもよい。他の例において、サンプルは、合成または組換えによって生成されたペプチドを、保存及び分注が容易な溶液に加えることによって作成される。
【0108】
特定の実施形態において、本方法で使用されるサンプルは、患者のような対象者から得られる体液サンプルである。いくつかの実施形態において、本開示のサンプルは、血液、涙、血清、血漿、脳脊髄液、尿、唾液、痰及び胸水を含む。当業者は、あるサンプルが、例えば分画又は精製の処理後に容易に分析されることを理解するだろう。例えば、対象者から得られた全血の血清及び/又は血漿成分への分画である。従って、サンプルをそのまま使用することも、分析物を検出するための最終的なサンプルとなるように処理することも可能である。例えば、サンプルは、液化、濃縮、乾燥、希釈、凍結乾燥、抽出、分画、クロマトグラフィ処理、精製、酸性化、還元、分解、酵素処理、又は当業者に知られた対象の分析物を放出するための方法で処理することができる。所望の場合、サンプルは、例えば個人又は製造プロセスに由来するサンプルの組み合わせ(プール)とすることができる。
【0109】
サンプルは、液体、固体、エマルジョン又はゲルのような様々な物理状態にあることができる。サンプルは、サンプルの完全性を保つため、通常の注意で処理することができる。処理は、特定の生物学的酵素の阻害剤のような、適切な緩衝液及び/又は阻害剤の使用を含むことができる。当業者は、対象の分析物及びサンプルの性質を考慮して、適切な条件を決定することができる。
【0110】
特定の実施形態において、分析されるサンプルは、対象者から得られた尿サンプルである。ある実施形態において、分析されるサンプルは、対象者から得られたヒト尿サンプルである。
【0111】
いくつかの実施形態において、本方法は、単一のサンプルの複数の部分を使用する。例えば、サンプル(例えば、血液、尿又は他の体液)を、最初の量として対象から得る。そして、最初のサンプル体積を1つ以上のアリコートへと分離することができ、それにより、それぞれ個別のアリコートを、本明細書に開示された方法を使用し、処理、処置、保存及び/又は分析することができる。
【0112】
本方法で使用されるサンプルの種類に関わらず、サンプルが各容器表面に固定された捕捉抗体と接触するようになるように、サンプルの量は固相の各容器へ提供される。図2に示すように、固相の容器1及び2は、各容器に付着(固定化)された第1の捕捉抗体と第2の捕捉抗体とを含む。図2に例示される方法は、各捕捉抗体が、他の捕捉抗体と比較した場合に対象の異なる分析物を認識し、結合することも示す(例えば、分析物1及び分析物2)。次に、図2は、サンプルの一部が各容器に投与され、それにより、対象の分析物を含む(又は含まない)サンプルが、各容器の表面に存在する対応する捕捉抗体と接触するようになり、サンプル中に存在する抗原(分析物)が特定の捕捉抗体に結合することを示す。
【0113】
当業者は、各容器に提供されるサンプルの適切な量を容易に決定することができる。特定の実施形態において、各容器に分注されるサンプルの量は、異なっていても同じでもよい。各容器に入れるサンプルの量は、サンプルの種類、対象の分析物の種類、容器の種類及び形、採用される検出方法及び/又は使用する抗体の種類のような、様々な要因によって決定される。
【0114】
例えば、容器に提供される液体サンプルの量は、サンプルの1~10mL、1~5mL、1~4mL、1~3mL、1~2mL、又は2mL未満である。いくつかの実施形態において、液体サンプルの量は、サンプルの1~100μL、1~50μL、1~40μL、1~30μL、1~20μL、1~10μL、1~5μL以下である。ある実施形態において、各容器に提供されるサンプルの量は、5μL~100μL、10μL~100μL、20μL~100μL、30μL~100μL、又は40μL~100μLである。他の実施形態において、各容器に提供されるサンプルの量は、10μL~80μL、20μL~80μL、25μL~80μL、30μL~80μL、35μL~80μL、又は40μL~80μLである。特定の実施形態において、容器に提供されるサンプルの量は、10μL~80μL(両端を含む)である。
【0115】
更に他の実施形態において、各容器に提供される液体サンプルの量は、約10μL、20μL、25μL、30μL、35μL、40μL、45μL、50μL、55μL、60μL、65μL、70μL、75μL、80μL又はそれ以上である。いくつかの実施形態において、各容器に提供されるサンプルの量は、正確に20μL、25μL、30μL、35μL、40μL、45μL、50μL、55μL、60μL、65μL、70μL、75μL、又は80μLである。特定の実施形態において、各容器に提供される液体サンプルの量は、20μL又は35μLである。1つの実施形態において、各容器に提供されるサンプルの量は80μLである。
【0116】
いくつかの実施形態において、各容器に提供される液体サンプルの量は、約1μL、2μL、3μL、4μL、5μL、6μL、7μL、8μL、9μL、10μL、11μL、12μL、13μL、14μL、15μL、16μL、17μL、18μL、19μL、20μL、21μL、22μL、23μL、24μL、25μL、26μL、27μL、28μL、29μL、30μL、31μL、32μL、33μL、34μL、35μL、36μL、37μL、38μL、39μL、40μL、41μL、42μL、43μL、44μL、45μL、46μL、47μL、48μL、49μL、50μL、51μL、52μL、53μL、54μL、55μL、56μL、57μL、58μL、59μL、60μL、61μL、62μL、63μL、64μL、65μL、66μL、67μL、68μL、69μL、70μL、71μL、72μL、73μL、74μL、75μL、76μL、77μL、78μL、79μL、80μL又はそれ以上である。
【0117】
ある実施形態において、サンプルは尿(例えば、ヒトの尿)であり、各容器に提供される尿の量は、5μL~100μL、10μL~100μL、20μL~100μL、30μL~100μL、又は40μL~100μLである。他の実施形態において、各容器に提供される尿の量は、20μL~80μL、25μL~80μL、30μL~80μL、35μL~80μL、又は40μL~80μLである。更に他の実施形態において、各容器に提供される尿サンプルの量は、約20μL、25μL、30μL、35μL、40μL、45μL、50μL、55μL、60μL、65μL、70μL、75μL、80μL又はそれ以上である。いくつかの実施形態において、各容器に提供される尿サンプルの量は、正確に20μL、25μL、30μL、35μL、40μL、45μL、50μL、55μL、60μL、65μL、70μL、75μL、又は80μLである。特定の実施形態において、各容器に提供される尿サンプルの量は、20μL又は35μLである。1つの実施形態において、各容器に提供される尿サンプルの量は80μLである。
【0118】
サンプル又はサンプルの一部は、当業者に知られている任意の手段で容器へ投与することができる。サンプルを投与する方法の非限定的な例は、例えば、サンプル又はサンプルの一部を容器へ注入する、スプレーする又は注ぐことによって分注することを含む。固相にサンプルを分注する及び接触させるための方法は、手動によるピペット、洗浄、ロボット化又は自動化された分注機構、又は当業者に知られている他の方法を含む。サンプルの完全性を保つための滅菌技術または他の方法の使用のようなサンプルを投与する方法における通常のケアは、当業者によって理解されている。
【0119】
サンプル又はサンプルの一部の投与は、個人によって、又は自動化された装置、例えば自動化免疫診断装置によって実施することができる。全体又は一部が自動化免疫診断装置によって本方法が実施される実施形態において、サンプルは指定されたリザーバに最初に提供され、続いてサンプルの一部が、自動化免疫診断装置に提供されていた固相の1つの容器又は複数の容器に分注される。本方法において使用するために好適な自動化免疫診断装置は、当技術分野で知られている。例えば、ある自動化免疫診断装置は、米国特許第7,312,084号、6,143,576号、6,113,855号、6,019,944号、5,985,579号、5,947,124号、5,939,272号、5,922,615号、5,885,527号、5,851,776号、5,824,799号、5,679,526号、5,525,524号、及び5,480,792号明細書、及びThe Immunoassay Handbook, David Wild, ed. Stockton Press, New York, 1994に記載されており、いずれも引用によってその全体を本明細書に取り込むものとする。
【0120】
特定の実施形態において、自動化免疫診断装置は、オルト・クリニカル・ダイアグノスティックス社製ビトロス(登録商標)ECiQ、オルト・クリニカル・ダイアグノスティックス社製ビトロス(登録商標)3600、オルト・クリニカル・ダイアグノスティックス社製ビトロス(登録商標)5600、ベックマン社製ACCESS(登録商標)、アボット社製AXSYM(登録商標)、ロシェ社製ELECSYS(登録商標)、デイド・ベーリング社製STRATUS(登録商標)の装置である。
【0121】
1つの実施形態において、本開示の方法は、以下の自動化免疫診断装置、オルト・クリニカル・ダイアグノスティックス社製ビトロス(登録商標)ECiQ、オルト・クリニカル・ダイアグノスティックス社製ビトロス(登録商標)3600、又はオルト・クリニカル・ダイアグノスティックス社製ビトロス(登録商標)5600の1つで実施することができる。
【0122】
サンプルは、固相容器に単独で、又は検出抗体を含む混合物で提供されてもよい。
【0123】
サンプルが容器に提供される種類、形、量又は方法に関わらず、サンプル又はサンプルの一部は、容器の表面に固定化された捕捉抗体が、サンプル中に存在する可能性のある任意の対応する分析物と結合することを可能とするために、容器内でインキュベートされる。具体的に、図2に示すように、対象の分析物を含むサンプルが各容器へ一端提供されると、各容器は、対象の第1の分析物(分析物1)に結合された第1の捕捉抗体と、異なる対象の分析物(分析物2)と結合された第2の捕捉抗体とを含み、各容器に付着された複数の捕捉抗体-分析物複合体を生成する。例において、対象の分析物の1つの種類だけが提供されたサンプル中に存在する場合、その特定の分析物の捕捉抗体はサンプルに結合しない。
【0124】
いくつかの実施形態において、サンプルは容器へ提供され、サンプル中に存在する任意の対象の分析物が各容器に存在する対応する捕捉抗体に結合することを促進するために、一定時間インキュベートされる。当業者は、インキュベートする時間を容易に決定することができ、サンプルの種類、対象の分析物の種類、容器の種類及び形、採用される検出方法及び/又は使用する抗体の種類のような様々な要因に基づいて変えることができる。
【0125】
ある実施形態において、サンプルは、検出抗体の不存在下で、容器内で、約1~60分、1~50分、1~40分、1~30分、1~20分、1~15分、1~10分、1~5分、1~4分、1~3分、1~2分又は1分未満、インキュベートされる。1つの実施形態において、サンプルは、検出抗体の不存在下で容器に分注され、1~5分間(両端を含む)インキュベートされる。他の実施形態において、サンプルは、容器内で、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、又は60分間インキュベートされる。別の実施形態において、サンプルは検出抗体の不存在下で容器へ分注され、1、2、3、4、又は5分間インキュベートされる。
【0126】
ある実施形態において、サンプルは検出抗体と共に容器内へ分注され、混合物は約1~60分、1~50分、1~40分、1~30分、1~20分、1~15分、1~10分、1~8分、1~5分、1~4分、1~3分、1~2分又は1分未満、インキュベートされる。1つの実施形態において、サンプルと検出抗体との混合物は、容器に分注され、1~10分間(両端を含む)インキュベートされる。別の実施形態において、サンプルと検出抗体との混合物は、容器に分注され、1~8分間(両端を含む)インキュベートされる。他の実施形態において、検出抗体と混合されたサンプルは、容器内で、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、又は60分間インキュベートされる。更に他の実施形態において、サンプルと検出抗体との混合物は容器へ分注され、1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10分間インキュベートされる。特定の実施形態において、容器に分注されたサンプルと検出抗体との混合物は、8分間インキュベートされる。
る。
【0127】
本開示の方法は、固相の各容器へ検出抗体を別に提供することも含む。より具体的には。本方法は、対象の第1の分析物を認識する一定量の検出抗体を固相の第1の容器に提供することと、対象の異なる分析物を認識する一定量の別の検出抗体を固相の別の容器に提供することを含む。固相の各容器に提供される検出抗体は、サンプル内に存在する(又はしない)対象の分析物の1つだけに対応し、同じ検出可能なシグナルを生成する検出可能な標識をそれぞれ含む。
【0128】
図2に示すように、固相の容器1及び2は、それぞれの容器に付着された(固定化された)第1の捕捉抗体と第2の捕捉抗体とを含む。各捕捉抗体は、他の捕捉抗体(例えば、分析物1及び分析物2)と比較した場合に、対象の異なる分析物を認識し、結合する。サンプルが、各容器へ投与されると、サンプルが各容器の表面に存在する捕捉抗体に接触するようになり、サンプル中に抗原(分析物)が存在すれば、それは、それに特異的な対応する捕捉抗体と結合する。これにより、各容器に固定された複数の捕捉抗体-分析物の複合体を生成する。1種類の対象の分析物だけが、提供されたサンプル中に存在する場合の例において、存在しないが分析対象である分析物のための捕捉抗体は、サンプルに結合しない。次に、各容器は、対象の分析物の1つだけに、つまり分析物1又は分析物2のいずれかに特異的な一定量の検出抗体が提供される。これにより、各容器に固定された複数の抗原-分析物-検出抗体の複合体が生成され、それにより1つだけの特異的な分析物が、各ウェル内で検出可能に標識化される(例えば、分析物1又は分析物2)。例えば、図2に示すように、容器1は、捕捉抗体-分析物1-検出抗体の複合体だけを含み、第2の容器は、捕捉抗体-分析物2-検出抗体の複合体だけを含む。
【0129】
本方法のいくつかの実施形態において、検出抗体は、モノクロナール抗体、ポリクロナール抗体、それらのフラグメント、又はそれらの任意の組み合わせである。特定の実施形態において、本開示の検出抗体は全て、それぞれ対象の分析物を認識するモノクロナール抗体である。他の実施形態において、本開示の検出抗体は全て、それぞれ対象の分析物を認識するポリクロナール抗体である。更に別の実施形態において、本開示の検出抗体は、それぞれが対象の異なる分析物に特異的なモノクロナール抗体及びポリクロナール抗体の組み合わせである。
【0130】
本方法のいくつかの実施形態において、検出抗体は、それぞれTIMP2及びIGFP7に対して特異的である。ある実施形態において、本開示の検出抗体は、それぞれTIMP2及びIGFP7に対して特異的なモノクロナール抗体である。ある実施形態において、固相の容器へ提供される検出抗体は、ウサギモノクロナール40H2-40K3のような、TIMP2に対して特異的なモノクロナール抗体であり、固相の別の容器へ提供される検出抗体は、6D2.1のような、IGFBP7に対して特異的なマウスモノクロナール抗体である。
【0131】
他の実施形態において、本方法で用いられるための検出抗体は、以下の検出抗体、タウを特異的に認識する任意のモノクロナール又はポリクロナール抗体(例えば、HT7及びAT270モノクロナール抗体、正常に及び異常にリン酸化されたタウを認識する抗体(例えばAlz50(Ghanbari et al., 1990)、HT7(Mercken et al., 1992)、及びAT120(Vandermeeren et al., 1993))、PSAを認識する任意の抗体又はその結合パートナー(例えば、2E9、2H11及び5A10、これらは米国特許第5,501,983号明細書に記載されおり、参照によって、その全体の内容を本明細書に取り込むものとする)、Aβ又はその一部と結合する任意の抗体、これらは米国特許第7,700,309号明細書に記載されており、参照によってその全体の内容を本明細書に取り込むものとする、及び、当業者にとって既知の他の抗体、例えば、これらは米国特許第9,174,097号明細書に開示されており、参照によってその全体の内容を本明細書に取り込むものとする、の非限定的なリストから選択される。
【0132】
本明細書に記載されるように、本方法で使用される検出抗体は、同じ検出可能な標識、又は同じ検出可能なシグナルを生成する検出可能な標識を含む。本方法のこの態様は、ユーザが異なる検出可能な標識を有する検出抗体、及び複数の異なるシグナルを検出する手段を得る必要性を低減することによって、複数の分析物の検出を簡易化する。
【0133】
検出可能な標識は、そのような標識を抗体にコンジュゲートするための手段として、当業者には知られている。いくつかの実施形態において、検出抗体に関連する検出可能な標識は、直接検出可能である。ある実施形態において、直接検出可能な標識は、蛍光部分(染料)、電気化学標識、電気化学発光標識、金属キレート、又はコロイダル金属粒子である。他の実施形態において、検出可能な標識は、間接的に検出可能な標識であり、例えば化学反応又は酵素反応を受けた後に、又はそれ自身が検出可能な信号を提供する分子によって結合された後に検出可能となる分子である。いくつかの実施形態において、検出可能な標識は、ホースラディッシュペルオキダーゼ又はアルカリホスファターゼのような酵素であり、これらは、基質(例えば、化学発光基質(5-アミノ-2,3-ジヒドロフタラジン-1,4-ジオン(ルミノール)のような発光基質、発色基質(例えば、3,3’,5,5’-テトラメチルベンジジン(TMB)、3,3’-ジアミノベンジジン(DAB)、2,2’-アジノービス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸(ABTS))に接触可能であり、検出可能なシグナルを提供するために基質を酸化可能である。
【0134】
いくつかの実施形態において、検出可能な標識は、検出抗体に付着されている。特定の実施形態において、検出可能な標識は、検出抗体にコンジュゲートされている。ある実施形態において、検出可能な標識は、各検出抗体にコンジュゲートされる染料又は酵素である。本方法の1つの実施形態において、ホースラディッシュペルオキダーゼ(HRP)が、と各特異的な検出抗体とのコンジュゲートとして使用される。そのようなコンジュゲートの調製は、様々な既知の技術を使用して達成することができる。例えば、Yoshitake et al, Eur.J.Biochem., 101, 395, 1979による、及びKondo et alの米国特許第5,106,732号明細書において記載されている方法、両方の内容全体を参照によって本明細書に取り込むものとする。図3に示すように、本開示の検出抗体は、異なる分析物(TIMP2及びIGFP7)に対して特異的であり、それぞれがホースラディッシュペルオキダーゼ酵素(検出可能な標識)にコンジュゲートされる。次に、HRP酵素は、各ウェルにおいて、基質と反応(例えば酸化)して検出可能なシグナル(例えば、光、発光)を提供する発光基質のような基質と接触することができる。
【0135】
本方法で使用される検出抗体にかかわらず、一定量の各検出抗体が、固相の各容器へ提供され、その結果、検出抗体の抗原結合部分が、サンプルの部分中の、対応する捕捉抗体によって結合された対応する抗原(存在する場合)と接触するようになる。
【0136】
当業者は、各容器へ提供する検出抗体の適切な量を容易に決定することができる。特定の実施形態において、各容器へ分注される検出抗体の量は、異なっていても、同じであってもよい。各容器内に置かれる検出抗体の量の決定は、サンプルの種類、対象の分析物の種類、容器の種類及び形、採用される検出方法及び/又は使用する検出抗体の種類のような様々な要因に依存する。
【0137】
検出抗体は、容器へ直接分注されてもよく、又は検出抗体を所望の濃度を含む溶液内で事前に混合されもよく、そのような事前に混合された溶液のアリコートとして提供されてもよい。抗体のストック溶液を希釈する方法は、当業者には知られている。
【0138】
いくつかの実施形態において、各容器へ提供される検出抗体の量は、約0.02μgから約1.2μgである。1つの実施形態において、各容器へ提供される検出抗体の量は、0.02μgから1.2μgである。特定の実施形態において、各容器へ提供される検出抗体の量は、0.02μg、0.025μg、0.03μg、0.035μg、0.04μg、0.045μg、0.05μg、0.055μg、0.06μg、0.065μg、0.07μg、0.075μg、0.08μg、0.085μg、0.09μg、0.095μg、0.1μg、0.15μg、0.2μg、0.25μg、0.3μg、0.35μg、0.4μg、0.45μg、0.5μg、0.55μg、0.6μg、0.65μg、0.7μg、0.75μg、0.8μg、0.85μg、0.9μg、0.95μg、1.0μg、1.05μg、1.1μg、1.15μg、1.2μg、1.25μg又はそれ以上である。特定の実施形態において、各容器へ提供される検出抗体の量は、0.075μg又は1.2μgである。
【0139】
他の実施形態において、容器へ提供される検出抗体の量は、容器あたりの検出抗体は、1~10μg/mL、1~5μg/mL、1~4μg/mL、1~3μg/mL、1~2μg/mL以下である。ある実施形態において、検出抗体の量は、約0.5μg/mLから約2.0μg/mLである。特定の実施形態において、検出抗体の量は、容器あたり0.5μg/mL又は2.0μg/mLである。
【0140】
検出抗体は、当業者に知られている任意の手段によって容器へ投与することができる。検出抗体を投与する非限定的な例は、例えば、検出抗体を容器へ注入する、スプレーする又は注ぐことによる分注を含む。無菌技術又は汚染を防ぐための他の方法の使用のような、検出抗体の投与方法における通常のケアは、当業者によって理解されている。
【0141】
検出抗体又は検出抗体を含む溶液の投与は、個人により又は自動化免疫診断装置のような自動化装置によって実施されることができる。検出抗体を分注して固相に接触させる方法は、手動によるピペット又は所望の量の検出抗体を容器内に置く、及び/又はロボットまたは自動化分注機構の方法によることを含むことができる。
【0142】
全部又は一部を自動化免疫診断装置により本方法を実施する場合の実施形態において、検出抗体は指定されたリザーバに最初に提供され、続いて検出抗体のアリコートが、自動化免疫診断装置に提供されていた固相の1つの容器又は複数の容器に分注される。本方法において使用するために好適な自動化免疫診断装置は、当技術分野で知られている。例えば、ある自動化免疫診断装置は、米国特許第7,312,084号、6,143,576号、6,113,855号、6,019,944号、5,985,579号、5,947,124号、5,939,272号、5,922,615号、5,885,527号、5,851,776号、5,824,799号、5,679,526号、5,525,524号、及び5,480,792号明細書、及びThe Immunoassay Handbook, David Wild, ed. Stockton Press, New York, 1994に記載されており、いずれも引用によってその全体を本明細書に取り込むものとする。
【0143】
特定の実施形態において、自動化免疫診断装置は、オルト・クリニカル・ダイアグノスティックス社製ビトロス(登録商標)ECiQ、オルト・クリニカル・ダイアグノスティックス社製ビトロス(登録商標)3600、オルト・クリニカル・ダイアグノスティックス社製ビトロス(登録商標)5600、ベックマン社製ACCESS(登録商標)、アボット社製AXSYM(登録商標)、ロシェ社製ELECSYS(登録商標)、又はデイド・ベーリング社製STRATUS(登録商標)の装置である。
【0144】
ある実施形態において、本開示の方法は、以下の自動化免疫診断装置、オルト・クリニカル・ダイアグノスティックス社製ビトロス(登録商標)ECiQ、オルト・クリニカル・ダイアグノスティックス社製ビトロス(登録商標)3600、又はオルト・クリニカル・ダイアグノスティックス社製ビトロス(登録商標)5600のうちの1つにおいて実施される。
【0145】
検出抗体が容器へ提供される種類、量又は方法に関わらず、検出抗体は容器内でインキュベートされる。インキュベーションにより、検出抗体の抗原結合部分を認識し、検出抗体の抗原結合部分をサンプル中の対応する抗原(分析物)へ結合させることができる。検出抗体がサンプル中の対象の分析物と結合することで、容器内に捕捉抗体-分析物-検出抗体の複合体が形成される。当業者は、インキュベーション時間を容易に決定することができ、サンプルの種類、抗体の種類、対象の分析物の種類、容器の種類及び形、及び/又は採用される検出方法のような様々な要因に基づいてインキュベーション時間を変化させることができる。
【0146】
インキュベーションは、1秒を超える任意の時間行うことができる。1つの実施形態において、検出抗体は、容器内に分注され、少なくとも1分、少なくとも2分、少なくとも3分、少なくとも4分、少なくとも5分、少なくとも6分、少なくとも7分、少なくとも8分、少なくとも9分、少なくとも10分又はそれ以上の間、インキュベートされる。特定の実施形態において、検出抗体は容器へ提供され、少なくとも5分間インキュベートされる。特定の実施形態において、検出抗体は容器へ提供され、少なくとも8分間インキュベートされる。
【0147】
ある実施形態において、検出抗体は容器へ提供され、約1~40分間、1~30分間、1~20分間、1~15分間、1~10分間、1~9分間、1~8分間、1~7分間、1~6分間、1~5分間、1~4分間、1~3分間、1~2分間、又は1分未満の間、インキュベートされる。いくつかの実施形態において、検出抗体は容器へ提供され、5~10分間、6~10分間、7~10分間、8~10分間、又は9~10分間、インキュベートされる。他の実施形態において、検出抗体は容器へ提供され、4~9分間、4~8分間、4~7分間、4~6分間、又は4~5分間、インキュベートされる。他の実施形態において、検出抗体は容器へ提供され、5~9分間、5~8分間、5~7分間、又は5~6分間、インキュベートされる。他の実施形態において、検出抗体は容器へ提供され、6~9分間、6~8分間、又は6~7分間、インキュベートされる。更に他の実施形態において、検出抗体は容器へ提供され、7~9分間、又は7~8分間、インキュベートされる。
【0148】
ある実施形態において、検出抗体は、溶液として容器へ分注され、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40分間、インキュベートされる。特定の実施形態において、検出抗体は、容器へ分注され、4、5、6、7、8、9又は10分間インキュベートされる。他の実施形態において、検出抗体は容器内で8分間インキュベートされる。
【0149】
ある実施形態において、サンプルと検出抗体との混合物を容器へ投与する前に、サンプルは検出抗体と事前に混合される。そのような実施形態において、サンプルと検出抗体とは混合されて、混合物又はその一部を容器へ投与する前に、約1~40分間、1~30分間、1~20分間、1~15分間、1~10分間、1~8分間、1~5分間、1~4分間、1~3分間、1~2分間、又は1分未満の間、インキュベートされる。1つの実施形態において、サンプルと検出抗体との混合物は、1~10分間(両端を含む)インキュベートされる。別の実施形態において、サンプルと検出抗体との混合物は、1~8分間(両端を含む)インキュベートされる。更に他の実施形態において、サンプルと検出抗体との混合物は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、又は40分間、インキュベートされる。インキュベーション期間は、当業者によって容易に決定されることができ、様々な要因に基づいて変化し得る。そのように、より長い又はより短いインキュベーション期間が考えられる。
【0150】
検出可能な標識からの検出可能なシグナルの生成は、当業界において既知の様々な光学的、音響的及び電気化学的方法を使用して実施されることができる。検出モードの例は、蛍光、放射化学検出、反射率、吸光度、アンペロメトリー、伝導度、インピーダンス、干渉分光法、偏光解析法等を含む。
【0151】
いくつかの実施形態において、検出可能なシグナルは、励起光源トランスデューサを採用する蛍光計により生成され、蛍光計は空間的に固相から分離されており、励起光を解析される各ウェルに向け、光学検出器で測定され得る検出可能な波長の光をウェル内で生成する。
【0152】
更に他の実施形態において、容器内に存在する検出抗体に結合した分析物の存在又は量を決定するために、抗体ベースのバイオセンサを採用することもできる。
【0153】
1つの実施形態において、各検出抗体にコンジュゲートされた検出可能な標識は、ペルオキシターゼ酵素のような酵素である。ある実施形態において、各検出抗体にコンジュゲートされた検出可能な標識は、ホースラディッシュペルオキダーゼ(HRP)又は好適なそのアイソザイムである。ホースラディッシュペルオキダーゼの好適なアイソザイムは、例えばシグマケミカル社から入手可能な利用可能なタイプVI及びタイプIXを含む。HRP酵素が発行基質を酸化し、検出可能なシグナル(光)を放出するように、例えば発光基質のような基質を各ウェルへ提供することによって検出可能なシグナルが生成される。
【0154】
HRP酵素と使用するための発光基質は、そのエンハンサーとして当業者に知られている。本実施例で使用するための発光基質の非限定的な例は、ルミノール(すなわち、2,3-ジヒドロ-1,4-フタラジンジオン)又は、水性溶媒中の置換ルミノール及び過ホウ酸塩を含み、これらは米国特許第5,846,756号及び第5,705,357号明細書に記載されており、その全体の内容を参照により本明細書に取り込む。
【0155】
他の実施形態において、検出抗体とエメラルドエンハンサー(Tropix)を備えるAMPPD化学発光基質とにコンジュゲートされたアルカリホスファターゼを、検出可能なシグナルを発生させるために使用し、これらはC. Vigo-Pelfrey et al. J Neurochem (1994) 61:1965-1968に記載されており、その全体の内容を参照により本明細書に明示的に組み込む。そのため、酵素、基質及びエンハンサーの特定の組み合わせは、限定することを意図しない。
【0156】
図3に示す例示的な実施形態のような、ある実施形態において、発光基質(例えば、ルミノール、その誘導体及び過酸塩)には、置換アセトアニリドのような電子移動剤(エンハンサー)が提供され、基質から放出される光信号を増幅すると共に、容器からのシグナルの放出を延長する。
【0157】
本方法において、酵素(例えば、過酸化水素(過ホウ酸塩に由来する))からペルオキシターゼを介したルミノールへの電子の移動を促進することができる任意のエンハンサーを使用することができる。例えば、ルミノールと過酸化水素との間の反応が、好適なエンハンサーの存在下でペルオキシターゼにより引き起こされる場合、エンハンサーは、酵素による酸化速度を増加させる。本方法において使用されるエンハンサーの非限定的な例は、米国特許第4,842,997号明細書及び米国特許第5,279,940号明細書に記載のものを含み、各々の全体の内容を参照によって本明細書に取り込む。好適なエンハンサーは、4-ヨードフェノール、4-ブロモフェノール、4-クロロフェノール、4-フェニルフェノール、2-クロロ-4-フェニルフェノール、6-ヒドロキシベンゾチアゾール、4-4-(2-メチル)チアゾリルフェノール、4-2-(4-メチル)チアゾリルフェノール、4-(2-ベンゾチアゾリル)フェノール、3-(10-フェノチアジル)-n-プロピルスルホネート及び3-クロロ,4-ヒドロキシルアセトアニリドを含む。
【0158】
発光基質及び電子移動剤のインキュベーションは、基質の酸化と発光シグナルの増幅とを促進する。インキュベーションは、1秒を超える任意の時間、行うことができる。インキュベーション時間は、当業者により容易に決定することができ、様々な要因に基づいて変更することができる。それにより、より長い又はより短いインキュベーション期間が考えられる。
【0159】
ある実施形態において、発光基質及び電子移動剤は、容器内に分注され、少なくとも1分間、少なくとも2分間、少なくとも3分間、少なくとも4分間、少なくとも5分間、少なくとも6分間、少なくとも7分間、少なくとも8分間、少なくとも9分間、少なくとも10分間又はそれ以上、インキュベートされる。特定の実施形態において、発光基質及び電子移動剤は容器へ提供され、少なくとも4分間インキュベートされる。特定の実施形態において、発光基質及び電子移動剤は容器へ提供され、少なくとも5分間インキュベートされる。
【0160】
ある実施形態において、発光基質及び電子移動剤は容器へ提供され、約1~20分間、1~15分間、1~10分間、1~9分間、1~8分間、1~7分間、1~6分間、1~5分間、1~4分間、1~3分間、1~2分間、又は1分未満、インキュベートされる。他の実施形態において、検出抗体は容器へ提供され、4~9分間、4~8分間、4~7分間、4~6分間又は4~5分間、インキュベートされる。いくつかの実施形態において、発光基質及び電子移動剤は容器へ提供され、3~9分間、3~8分間、3~7分間、3~6分間、又は3~5分間、インキュベートされる。他の実施形態において、発光基質及び電子移動剤は容器へ提供され、2~6分間、2~5分間、2~4分間、又は2~3分間、インキュベートされる。特定の実施形態において、発光基質及び電子移動剤は容器へ提供され、4~5分間インキュベートされる。
【0161】
いくつかの実施形態において、発光基質及び電子移動剤は容器内に分注され、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15分間インキュベートされる。特定の実施形態において、発光基質及び電子移動剤は容器内に分注され、3、4、5又は6分間インキュベートされる。他の実施形態において、発光基質及び電子移動剤は、各容器内で4分間インキュベートされる。ある実施形態において、発光基質及び電子移動剤は各容器内で5分間インキュベートされる。
【0162】
インキュベーションの温度は、当業者により容易に決定されることができ、様々な要因に基づき変化し得る。ある非限定的な例において、発光基質及び電子移動剤は容器内に分注され、32℃と37℃との間、33℃と37℃との間、34℃と37℃との間、35℃と37℃との間、又は36℃と37℃との間(両端を含む)の温度でインキュベートされる。特定の実施形態において、発光基質及び電子移動剤は容器内に分注され、約37℃の温度でインキュベートされる。1つの実施形態において、発光基質及び電子移動剤は容器内に分注され、37℃の温度でインキュベートされる。
【0163】
本方法のある実施形態において、発光基質及び電子移動剤は容器内に分注され、37℃の温度で約5分間インキュベートされる。本方法の別の実施形態において、発光基質及び電子移動剤は容器内に分注され、37℃で4~5分間インキュベートされる。
【0164】
本方法は、他の分析物からの干渉を最小限に抑え且つ高感度で単一の固相を使用して、2つ以上の異なる分析物の同時又は連続的な検出へと展開できる。一般に、固相へサンプルを適用した後に、直接的又は間接的に検出抗体から生成されるシグナルが、当業者に既知の任意の手段によって検出され得る。自動化方法を含む検出方法は、当業者にはよく知られている。例えば、シグナルは視覚的に検出されることができ、又は反射率計、蛍光光度計、透過光度計等の装置(解析機器)により得ることができる。
【0165】
ある非限定的な実施形態において、これに限るものではないが、オルト・クリニカル・ダイアグノスティックス社製ビトロス(登録商標)3600、オルト・クリニカル・ダイアグノスティックス社製ビトロス(登録商標)ECiQ、オルト・クリニカル・ダイアグノスティックス社製ビトロス(登録商標)5600、ベックマン社製ACCESS(登録商標)、アボット社製AXSYM(登録商標)、ロシェ社製ELECSYS(登録商標)、デイド・ベーリング社製STRATUS(登録商標)システムを含むロボット機器(つまり、自動化免疫診断装置)が、検出可能なシグナルを測定するために本方法と併用される。しかしながら、本方法で使用される特定のシグナルを検出可能な任意の自動化免疫診断装置を使用することができる。ほんの一例として、任意の蛍光計を、蛍光標識を検出するために使用することができ、任意の蛍光計は、光の波長を放出する標識を検出することができ、光を吸収する標識を検出するため、反射率計を使用することができる。
【0166】
ある実施形態において、複数の分析物が連続して検出される。ここで、第1の容器で生成される検出可能なシグナルが測定され、分析される各容器が測定されるまで、別の容器により生成される検出可能なシグナルが測定される。異なる容器からのシグナルの存在を連続して検出することにより、効率が向上し、複数のウェルから生成されるシグナルを同時に検出するために求められるであろう複数の蛍光計、照度計又は反射率計が不要となる。更に、連続して分析物を検出することで、重複する波長(スペクトル)又は吸収(色)を有する検出可能なシグナルを放出する検出可能な標識を使用することができる。
【0167】
例えば、各容器が固相から移動された後、第1の容器が所定の時間インキュベートされ、例えば反射率計、照度計、電位計を含む読み取りステーションに渡され、読み取られる。一旦、測定結果が記録されると、容器は廃棄されることができる。次に、第2の容器が読み取りステーションに渡され、読み取られる。第2の測定結果が記録され、第2の容器は固相から廃棄される。
【0168】
いくつかの実施形態において、シグナルが生成され、検出されると(サンプル中に分析物が存在することを示す)、シグナルが測定され、定量化される。特定の実施形態において、各容器におけるシグナルの量の測定値は、定量化され、単一の値として提供される。例えば、国際公開第2011/073741号に記載されているような、当業者に知られている複数の測定値を組み合わせて単一の定量化値を提供するための任意のソフトウェア又は方法を、本方法の定量化工程において使用することができる。
【0169】
1つの非限定的な例において、定量的な測定のため、例えば、オルト・クリニカル・ダイアゴニクス社製アッセイ・データ・ディスク(ビトロス(登録商標)3600免疫診断システム、ビトロス(登録商標)5600統合システムに搭載)又は磁気カード(ビトロス(登録商標)ECiQ装置上)の修正された4パラメータ又は5パラメータ対数ソフトウエアプログラムを使用して、較正曲線がフィットされる。ここで、各容器からの検出可能なシグナルを測定するために使用される装置に存在するキャリブレータからのシグナルレベルは、プログラムから提供されるマスター曲線を調整し、ソフトウェアは、較正曲線に各ウェルから得られたシグナルを適用することによって各ウェルにおける分析物の濃度を決定する。
【0170】
ある実施形態において、サンプル中に存在する全ての分析物の総量を定量化する単一の値を提供することができる。例えば、本方法が対象の2つの異なる分析物の存在を検出するために展開される例において、第1の容器における第1の分析物の検出量と、第2の容器内の第2の分析物の検出量とを掛け合わせ、全体量を1000で割る。従って、サンプル中に存在する第1及び第2の分析物の量のための単一の数値を得るために、以下の式を使用することができる。
数値=([分析物1]×[分析物2])/1000
単位=(ng/mL)/1000
【0171】
ある実施形態において、各容器内で測定されるシグナルの量は、サンプル内に存在する分析物の量に相関する。
【0172】
ある実施形態において、検出される1又は複数のシグナルは、本方法における対照サンプルの使用後に生成されるシグナルと比較することができる。そのような比較は、サンプル中で検出された分析物の量の定量化を促進することができる。1つの実施形態において、各容器により生成されるシグナルの量は、サンプル中に存在する特定の分析物の濃度に正比例する。「サンドイッチアッセイ」における場合にそうなるだろう。
【0173】
別の実施形態において、各容器により生成されるシグナルの量は、サンプル内の対照の特定の分析物の濃度に反比例する。競合イムノアッセイの場合と同様であろう。
【0174】
ある実施形態において、本方法は、イムノアッセイにおいて実施される。様々な特定のアッセイ形式が本方法の実施において有用であり、酵素イムノアッセイ、サンドイッチアッセイ、競合結合アッセイ、直接結合アッセイ及び他の当業者に既知のもののようなイムノケミカルアッセイを含む。
【0175】
図1~3に示すような特定の実施形態において、本方法は、「サンドイッチアッセイ」を含み、それにより対象の1又は複数の分析物(例えば、サンプル中に存在する抗原)は、少なくとも第1の捕捉抗体と第2の検出抗体とで、同時に又は連続的に複合体化される。例えば、特定の実施形態において、捕捉抗体は固相の表面に固定化されている。次に、サンプルが固相に提供され、その結果、対象の同じ分析物に対して特異的な第2の(検出)抗体が、サンプル中の対応する抗原に結合し、捕捉抗体-分析物-検出抗体の複合体、つまりサンドイッチを形成する。サンドイッチの1つの抗体が検出可能な標識(例えば、ペルオキシターゼ、蛍光染料又は放射性標識にコンジュゲートされる)を含む、又は付加的な特定の結合反応を通じて(例えば、アビジン-ビオチン複合体を通じて)そのように標識化できる場合、サンプル中に存在する抗原(分析物)の量を決定することができる。
【0176】
他の実施形態は、競合結合アッセイを含み、対象の特定の分析物が、分析物の検出抗体及び分析物の別のリガンドと競合する。例えば、競合イムノアッセイ形式において、サンプル内の抗原は、アッセイ試薬として提供される標識化された抗原を有する検出抗体に結合するために、固相へ提供される分析物又は抗原と競合し得る。
【0177】
(キット)
本開示のある態様において、本明細書に記載の方法を実施するためのキットが提供される。好適なキットは、記載の方法を実施するための説明書と共に本開示の方法を実施するために十分な試薬を含む。アッセイの一部として提供され得る付加的な任意の要素は、本明細書に記載されている。
【0178】
ある実施形態において、本方法を実施するための試薬が、キット内に提供される。キットの試薬は、以下の、固相、抗体、緩衝溶液、発光基質、電子移動剤、及び本開示の方法を実施するための説明書のうちの1つ以上を含む。
【0179】
いくつかの実施形態において、キットは、少なくとも2つの捕捉抗体でコーティングされた複数の容器を有する固相を含む。特定の実施形態において、キットに提供される固相の各容器は、容器に固定化された少なくとも2つの異なる捕捉抗体を有し、それにより少なくとも2つの異なる捕捉抗体はそれぞれ、異なる抗原又はエピトープ(分析物)を認識する。
【0180】
本明細書に記載のように、固相は、検出される分析物の数により、固相の各容器に固定化された2つ以上の捕捉抗体を含むことができる。ある実施形態において、固相の各容器は、容器に固定化された少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、少なくとも5つ、少なくとも6つ又はそれ以上の異なる捕捉抗体を有する。ある実施形態において、固相の各容器は、容器に固定化された2、3、4、5、6、7、8、9、10又はそれ以上の異なる捕捉抗体を有する。
【0181】
ある実施形態において、固相の各容器に固定化された捕捉抗体は、TIMP2及びIGFBP7に対して特異的なマウスモノクロナール抗体である。特定の実施形態において、TIMP2に対して特異的な捕捉抗体はマウスモノクロナール抗体6E2.1であり、IGFBP7に対して特異的な捕捉抗体は、マウスモノクロナール抗体1D6である。
【0182】
他の実施形態において、キットは、容器の表面に固定化された少なくとも2つの捕捉抗体を有する固相を含み、該捕捉抗体は、以下の抗体、タウを特異的に認識する任意のモノクロナール又はポリクロナール抗体(例えば、HT7及びAT270モノクロナール抗体、正常に及び異常にリン酸化されたタウを認識する抗体(例えばAlz50(Ghanbari et al., 1990)、HT7(Mercken et al., 1992)、及びAT120(Vandermeeren et al., 1993))、PSAを認識する任意の抗体又はその結合パートナー(例えば、2E9、2H11及び5A10、これらは米国特許第5,501,983号明細書に記載されおり、参照によって、その全体の内容を本明細書に取り込むものとする)、Aβ又はその一部と結合する任意の抗体、これらは米国特許第7,700,309号明細書に記載されており、参照によってその全体の内容を本明細書に取り込むものとする、及び、当業者にとって既知の他の抗体、例えば、これらは米国特許第9,174,097号明細書に開示されており、参照によってその全体の内容を本明細書に取り込むものとする、の非限定的なリストから選択される。
【0183】
本方法のある実施形態において、キットは、ストロー、スリーブ、ストリップ、プレート、スライド等の一部として複数の容器から構成される固相を含む。具体的に、固相は、自動化免疫診断装置で使用可能な、カップ又はウェルのストロー又はストリップ、マルチウェルプレート又はマイクロウェルプレート等を含む。1つの実施形態において、キットに提供される固相は、ビトロス(登録商標)マイクロウェルのような、複数のテーパー型の容器を含む。
【0184】
いくつかの実施形態において、キットに提供される固相は、少なくとも2個の容器、少なくとも10個の容器、少なくとも15個の容器、少なくとも20個の容器、少なくとも25個又はそれ以上の容器を含む。実施形態において、少なくとも2個のビトロス(登録商標)マイクロウェルのストロー又はスリーブを含む固相が提供される。別の実施形態において、少なくとも20個のビトロス(登録商標)マイクロウェルのストロー又はスリーブを含む固相が、提供される。別の実施形態において、少なくとも25個のビトロス(登録商標)マイクロウェルのストロー又はスリーブを含む固相が、提供される。
【0185】
ある実施形態において、キットに提供される固相は、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、31、32、33、34、35、36、37、38、39、40、41、42、43、44、45、46、47、48、49、50、51、52、53、54、55、56、57、58、59、60、61、62、63、64、65、66、67、68、69、70、71、72、73、74、75、76、77、78、79、80、81、82、83、84、85、86、87、88、89、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、又は100個の容器を含む。いくつかの実施形態において、固相は、2~100、2~75、2~50、2~25、2~15、2~10又は2~5個の容器を含む。1つの実施形態において、固相は、25個のー型容器を含む。特定の実施形態において、固相は、ストローまたはスリーブ内に25個の容器を含む。特定の実施形態において、固相は、密封されたストロー内に25個のビトロス(登録商標)マイクロウェルを含む。
【0186】
ある実施形態において、本開示のキットは1を超える固相を含む。例えば、キットは、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9又は10個の固相を含んでもよく、固相はそれぞれ少なくとも2個の容器を含む。ある実施形態において、キットは、2~10、2~9、2~8、2~7、2~6、2~5、2~4又は2~3個の固相を含み、固相は少なくとも2個の容器を含む。1つの実施形態において、キットは、3~6、3~5又は3~4個の固相を含み、固相はそれぞれ少なくとも2個の容器を含む。特定の実施形態において、キットは4個の固相を含み、固相はそれぞれ少なくとも2個の容器を含む。
【0187】
1つの実施形態において、本開示のキットは、少なくとも10個のテーパー型容器のストロー又はスリーブをそれぞれ含む4個の固相を含む。別の実施形態において、本開示のキットは、4個の固相を含み、固相は少なくとも20個のテーパー型容器のストロー又はスリーブをそれぞれ含む。更に別の実施形態において、本開示のキットは4個の固相を含み、固相は25個のテーパー型容器のストロー又はスリーブをそれぞれ含む。1つの実施形態において、本開示のキットは、4個の固相を含み、固相は25個のビトロス(登録商標)マイクロウェルのストロー又はスリーブをそれぞれ含む。
【0188】
いくつかの実施形態において、キットは少なくとも2つの異なる検出抗体を含み、それにより少なくとも2つの異なる検出抗体は、それぞれ、対象の異なる分析物を認識する。いくつかの実施形態において、少なくとも2つの異なる検出抗体のそれぞれは検出可能な標識を含み、各標識は、同じである又は同じ検出可能なシグナルを生成する。
【0189】
いくつかの実施形態において、検出抗体はモノクロナール抗体、ポリクロナール抗体、それらのフラグメント又はそれらの任意の組み合わせである。特定の実施形態において、検出抗体は全てモノクロナール抗体であり、対象の異なる分析物をそれぞれ認識する。他の実施形態において、検出抗体は全てポリクロナール抗体であり、対象の分析物をそれぞれ認識する。更に別の実施形態において、提供される検出抗体は、モノクロナール抗体とポリクロナール抗体との組み合わせを含み、それぞれが対象の異なる分析物に対して特異的である。
【0190】
いくつかの実施形態において、キットは、TIMP2及びIGFP7分析物に対して特異的な抗体を含む。ある実施形態において、本開示の検出抗体は、TIMP2及びIGFBP7に対してそれぞれ特異的なモノクロナール抗体である。特定の実施形態において、TIMP2に対して特異的な検出抗体は、ウサギモノクロナール抗体40H2-40K3であり、IGFBP7に対して特異的な検出抗体は、マウスモノクロナール抗体6E2.1である。
【0191】
特定の実施形態において、キットは少なくとも2つの異なる検出抗体を含み、それぞれが対象の異なる分析物を認識し、ホースラディッシュペルオキダーゼ(HRP)のような酵素にコンジュゲートされる。他の実施形態において、提供される検出抗体は、以下の検出抗体、タウを特異的に認識する任意のモノクロナール又はポリクロナール抗体(例えば、HT7及びAT270モノクロナール抗体、正常に及び異常にリン酸化されたタウを認識する抗体(例えばAlz50(Ghanbari et al., 1990)、HT7(Mercken et al., 1992)、及びAT120(Vandermeeren et al., 1993))、PSAを認識する任意の抗体又はその結合パートナー(例えば、2E9、2H11及び5A10、これらは米国特許第5,501,983号明細書に記載されおり、参照によって、その全体の内容を本明細書に取り込むものとする)、Aβ又はその一部と結合する任意の抗体、これらは米国特許第7,700,309号明細書に記載されており、参照によってその全体の内容を本明細書に取り込むものとする、及び、当業者にとって既知の他の抗体、例えば、これらは米国特許第9,174,097号明細書に開示されており、参照によってその全体の内容を本明細書に取り込むものとする、の非限定的なリストから選択される。
【0192】
本開示のいくつかの実施形態において、キットは、発光基質を含む。本方法及びキットで使用される発光基質は、そのエンハンサーとして当業者に知られている。そのため、酵素、基質及びエンハンサーの特定の1つ又は複数の組み合わせは、限定することを意図しない。ある実施形態において、キットに提供される発光基質は、ルミノール、又はその誘導体及び過酸塩である。いくつかの実施形態において、キットは、検出可能な標識から生成されるシグナルを増幅することができる置換アセトアニリドのような、電子移動剤(エンハンサー)を含む。
【0193】
いくつかの実施形態において、本開示のキットは、対象の特定の分析物を既知の量で含む参照溶液(較正溶液)を含む。1つの実施形態において、参照溶液は、少なくとも2つの対象の分析物を1つ既知の量又は複数の既知の量で含むことができる。別の実施形態において、参照溶液は、そのようなキットによって検出される対応する各分析物のために、提供されることができる。本明細書に記載のように、サンプル中の分析物の測定値を更に定量化するための較正曲線を形成するために、参照溶液を使用することができる。
【0194】
ある実施形態において、本開示のキットは、1つ以上の溶液又は緩衝液を含む。例えば、キットは、以下の、リン酸緩衝溶液、検出抗体溶液(例えば、TIMP2検出抗体溶液、IGFBP7検出抗体溶液)及び水(例えば、脱イオン又は滅菌)のうちの1つ以上を含有することができる。
【0195】
一般に、本開示のキットに提供される説明書は、本開示の方法を含む。本明細書の記載の方法は、一般に、対象の分析物を含む又は含むことが疑われるサンプルを、固相に固定化され、分析物に対して特異的に結合する第1の捕捉抗体に接触させることを含む。サンプルは、固相に固定化された捕捉抗体-分析物-検出抗体の複合体を形成するための検出剤を含む検出抗体にも接触する。次に、検出抗体からシグナルが生成され、シグナルは、サンプル中の分析物が捕捉及び検出抗体と結合することによって形成される複合体の存在又は量を示す。そして、シグナルが測定される。ある非限定的な例において、本開示の方法は、クロマトグラフィ、質量分析、及びタンパク質検出アッセイを含む。1つのそのような例において、これに限るものではないが、オルト・クリニカル・ダイアグノスティックス社製ビトロス(登録商標)ECiQ、オルト・クリニカル・ダイアグノスティックス社製ビトロス(登録商標)3600、オルト・クリニカル・ダイアグノスティックス社製ビトロス(登録商標)5600、ベックマン社製ACCESS(登録商標)、アボット社製AXSYM(登録商標)、ロシェ社製ELECSYS(登録商標)、デイド・ベーリング社製STRATUS(登録商標)のシステムを含むロボット機器(つまり、自動化免疫診断装置)が、本方法と組み合わせて使用可能な自動化免疫診断装置の1つである。しかしながら、任意の適切な自動化免疫診断装置を、検出可能なシグナルを測定するために使用してもよい。
【0196】
本開示の広い範囲を示す数値範囲及びパラメータは近似値であるにも関わらず、特定の実施例に記載の数値は可能な限り正確に報告されている。しかしながら、任意の数値は、それぞれのテスト測定で見つかった標準偏差から必然的に生ずる特定の誤差を本質的に含む。更には、本明細書に開示されている全ての範囲は、そこに組み込まれる任意の及び全ての部分範囲を包含すると理解されるべきである。例えば、「1~10」と示された範囲は、最小値1と最大値10との間の(両端を含む)任意の及び全ての部分範囲、つまり、最小値1以上、例えば1~6.1で始まり、最大値10以下、例えば5.5~10で終わる全ての部分範囲を含むと解釈されるべきである。
【0197】
更に、「本明細書に取り込む」とされる言及は、その全体が組み込まれていると理解されるべきである。
【0198】
(実施例)
実施例1:材料及び方法
(容器の形成)
本開示の容器(例えば、ウェル)は、以下の2日間の抗体の直接コーティングプロセスにより生成される。コーティングの前に、容器(例えば、白色ポリスチレンでコーティングされたウェル)は、ウェル間の差を最小限とするために1MRadまで照射される。0.96mMのKHPOに加え、150mMのNaCl緩衝液中の2.04mMのKHPOから構成される30mMのリン酸緩衝液と、サンセットイエロー染料(7.5mg/Kg溶液)とをpH6.3±0.2で含む捕捉抗体コーティング溶液を調製する。TIMP2捕捉MAb 6E2.1及びIGFBP7捕捉MAb 1D6マウス抗体が、それぞれ最終濃度が3μg/mLとなるように加えられる。各ウェルに、3μg/mLの捕捉抗体コーティング溶液を200μL加える。次に、容器を、18~22℃で一晩(例えば、16~32時間)インキュベートする。捕捉抗体コーティング溶液と共に一晩インキュベートした後、pH8.5で0.1M Tris/HClを含むTRIS洗浄緩衝液を用いて、容器を2回洗浄する。洗浄緩衝液を吸引した後、容器をTSBB(5%スクロース、0.45%塩化ナトリウム及び0.1%BSAを含む、pH8.5の0.1M Tris/HCl)でコーティングする。全ての溶液を各容器から吸引し、最後の吸引後、容器を乾燥させる。洗浄、コーティング及び最後の吸引工程は、追加のインキュベーション工程がないインラインプロセスである。コーティングされた容器を含むプレートは、使用されるまで乾燥剤を含む保管容器(例えば、プラスチックの箱)内に18~22℃で保管される。容器は、4つのストロー内に密封された100個のコーティングウェル(ストローあたり25個のウェル)として提供される。各容器は、TIMP2捕捉抗体及びIGFBP7捕捉抗体の両方でコーティングされる。
【0199】
(検出コンジュゲート試薬の調製)
TIMP2-HRP検出コンジュゲート及びIGFBP7-HRP検出コンジュゲートを、TIMP2検出MAb40H2-40K3と、IGFBP7検出MAb 6D2.1と、ホースラディッシュペルオキダーゼ(HRP)とから、当技術分野で知られている標準的なコンジュゲート方法を用いて調製する。TIMP2-HRPコンジュゲート試薬は、フェリシアン化カリウム(0.001%)、Tween(登録商標)20(0.5%)、ProClinTM950(0.5%)、アニリノナフタレン-1-スルホネート(ANS)(0.04%)及びウシ血清アルブミン(BSA)(3.0%)も含むpH6.5の110mMリン酸緩衝溶液と、0.0005g/KgのTIMP2抗体コンジュゲートである。IGFBP7-HRPコンジュゲート試薬は、フェリシアン化カリウム(0.001%)、Tween(登録商標)20(0.5%)、ProClinTM950(0.5%)、アニリノナフタレン-1-スルホネート(ANS)(0.04%)及びウシ血清アルブミン(BSA)(3.0%)も含むpH6.5の100mMのNaCl溶液を含む110mMのリン酸緩衝液と、0.002g/KgのIGFBP7-HRPコンジュゲートである。
【0200】
(分析物の検出)
サンプル中に存在する例示的な分析物の量を得るため、2つのアッセイを連続して実行する。第1のコーティングされた容器が固相から提供され、患者のサンプルを第1の容器へ分注し、続いて、ホースラディッシュペルオキダーゼとコンジュゲートした第1の分析物(例えば、TIMP2 HRPコンジュゲート)に結合する第1の検出抗体を含む検出抗体溶液試薬を、患者のサンプルを含む第1の容器内に分注する。次に、第2のコーティングされた容器が固相から提供され、患者のサンプルが第2の容器へ分注され、続いて、ホースラディッシュペルオキダーゼとコンジュゲートした第2の分析物(例えば、IGFBP7 HRPコンジュゲート)に結合する第2の検出抗体を含む検出抗体溶液を、患者のサンプルを含む第2の容器内に分注する。第1のウェルと第2のウェルとの両方を、37℃で8分間インキュベートし、各ウェルの表面に固定化された捕捉抗体-分析物-検出抗体複合体の形成を促進する。続いて、各容器を洗浄及び吸引して、余剰の検出抗体溶液を除去する。発光基質(ルミノール誘導体及び過酸塩)と、米国特許第5,846,756号明細書に記載のような電子移動剤を含む溶液とを含むシグナル試薬を、各ウェルに加える。各検出試薬にコンジュゲートされた検出試薬(HRP)、は、ルミノール誘導体の酸化を触媒し、ウェルから放出される光を生成する。シグナル試薬中に存在する電子移動剤(置換アセトアニリド)は、ルミノール誘導体から生成される光のレベルを増加し、ウェルからの光の放出を延長する。光の放出は、各ウェルで測定される。各容器を照度計(ビトロス(登録商標)3600免疫診断システム又はビトロス(登録商標)統合システム)の近くに配置し、その結果、照度計は各容器から放出される光の量を読み取ることができる。
【0201】
本発明の効率により、両方の例示的な分析物であるTIMP2及びIGFBP7の測定された量が、表1に示すように自動化免疫診断装置(つまり、ビトロス(登録商標)3600免疫診断システム又はビトロス(登録商標)5600統合システム)を使用して、16分で得られる。
【0202】
表1:例示的な方法の条件、及び複数の自動化免疫診断装置により得られた第1の検出結果の時間
【表1】
【0203】
(定量化)
各ウェルから放出された光の量は、各容器内のサンプル中に存在する分析物の濃度に正比例する。特定の方法によって、2つの測定されたシグナルに由来する単一の値を得ることが望ましいこともある。この実施例において、単一の数値を得るために、第1のウェルにおける第1の分析物の検出量は、第2のウェルにおける第2の分析物の検出量と掛け合わされ、総量は1000で割られる。例えば、サンプル中に存在する第1及び第2の分析物の量について単一の数値を得るために、以下の計算式を使用することができる。
数値=([分析物1]×[分析物2])/1000
単位=(ng/mL)/1000
【0204】
実施例2:サンプル中における2つの別々の分析物の量の決定
図1~3に示すように、本開示の方法を使用して、尿サンプル中に存在する2つの別々の分析物(TIMP-2及びIGFBP-7)の存在を検出するために、イムノアッセイ技術を使用する。ここで、各ウェルの表面に固定化され、分析物であるTIMP2又はIGFBP7に対して特異的なマウスモノクロナール抗体(捕捉抗体)を有するウェルを含む固相が提供された。
【0205】
対象から得られた35μLの尿(サンプル)を、ホースラディッシュペルオキダーゼで標識化された抗TIMP2ウサギモノクロナール検出抗体コンジュゲートと共に固相の第1のウェルに分注した。37℃、8分間のインキュベートの間、サンプル中に存在する分析物は、TIMP2検出抗体と結合し、ウェル内で分析物-検出抗体複合体を形成する。これらの複合体は、ウェルの表面に固定化されたマウスモノクロナール抗TIMP2捕捉抗体により捕捉される。
【0206】
対象から得られた20μLの尿は、ホースラディッシュペルオキダーゼで標識化された抗IGFBP7マウスモノクロナール検出抗体コンジュゲートと共に、固相の別のウェルに分注される。混合物は、37℃で8分間インキュベートされ、ウェル表面に固定化されたマウスモノクロナール抗IGFBP7捕捉抗体により捕捉される、分析物-検出抗体複合体を形成する。
【0207】
インキュベーション後、結合していない材料を洗浄によって除去し、各ウェル内に残存する溶液をよく吸引する。
【0208】
ホースラディッシュペルオキダーゼがコンジュゲートにより各検出抗体へ結合した量は、発光検出によって測定される。図3に示すように、発光基質(ルミノール誘導体及び過酸塩)を含むシグナル試薬100μLと、電子移動剤(置換アセトアニリド)を含むエンハンサー溶液100μLとが、各ウェルに加えられ、ウェルは4~5分間インキュベートされる。各検出抗体にコンジュゲートされたホースラディッシュペルオキダーゼは、基質(ルミノール誘導体)の酸化を触媒し、検出可能な波長の光(発光)を各ウェル内で生成する。加えて、シグナル試薬混合物中に存在する電子移動剤は、基質によって生成される光のレベルを増加させ、光の放出を延長する。第1及び第2のウェルは、それぞれ、同じ波長の光シグナルを放出し、照度計により連続して測定される。
【0209】
各ウェルからの発光シグナルの測定は、自動化免疫診断装置(例えば、ビトロス(登録商標)3600免疫診断システム)の中に存在するように照度計の近くに第1のウェルを配置することによって実行される。次に、照度計は、第1のウェルの発光シグナルを読む。次に、第2のウェルが照度計の近くに配置され、続いて、照度計が第2のウェルから放出される発光シグナルを読むことができる。定量化アッセイにおいて、検査されるサンプル内に分析物が存在するか否かを示すために、存在する場合は照度計又は自動化免疫診断装置によって陽性又はシグナルが提供され、存在しない場合は提供されない。
【0210】
実施例3:分析物の定量化
測定の定量化のため、製造業者が提供するような(オルト・クリニカル・ダイアゴニクス社製、アッセイ・データ・ディスク(ビトロス(登録商標)3600免疫診断システム、ビトロス(登録商標)5600統合システムに搭載))又は磁気カード(ビトロス(登録商標)ECiQ装置)のような、修正された4又は5パラメータ対数ロジスティックプログラムを使用して、較正曲線をフィッティングする。ここで、シグナルレベルは、プログラムによって提供されるマスター曲線を調整するキャリブレータを形成し、ソフトウェアは、各ウェルから得られた発光シグナルを較正曲線に適用することにより、各ウェル内の分析物の濃度を決定する。
【0211】
光の放出量は、サンプル中に存在する抗原(分析物)に結合するホースラディッシュペルオキダーゼがコンジュゲートした検出抗体の量に正比例する。従って、各ウェルから測定される光の量は、各サンプル中に存在する分析物の濃度に比例する(つまり尿サンプル1ミリリットルあたりの分析物のナノグラムである)。
【0212】
各分析物の測定量は、単一の数値として算出することもできる。ここで、第1のウェル内の第1の分析物の検出量は、第2のウェル内の第2の分析物の検出量と掛け合わせられ、次に総量が、1000で割られる。例えば、サンプル中に存在する第1及び第2の分析物の量についての単一の数値を得るために、以下の計算式を使用することができる。
数値=([TIMP-2]×[IGFBP-7])/1000
単位=(ng/mL)/1000
【0213】
[付記]
[付記1]
2つの容器を備える固相を提供する工程であって、前記2つの容器のそれぞれは該容器に固定された第1の捕捉抗体と第2の捕捉抗体とを備え、前記第1の捕捉抗体は第1の分析物と結合し、前記第2の捕捉抗体は第2の分析物と結合し、前記第1の分析物と前記第2の分析物とは異なる、工程と、
サンプルを提供する工程であって、前記サンプルの一部は前記2つの容器のそれぞれに提供される、工程と、
前記固相に、前記第1の分析物に特異的な第1の検出抗体と、前記第2の分析物に特異的な第2の検出抗体とを提供する工程であって、前記第1の容器内の前記サンプルの一部は前記第1の検出抗体に接触し、前記第2の容器内の前記サンプルの一部は前記第2の検出抗体に接触し、前記第1の検出抗体と前記第2の検出抗体は同じ検出可能なシグナルを生成する、工程と、
前記サンプル中の前記第1の分析物と前記第2の分析物とを検出する工程と、
を含む、分析物を検出するための方法。
【0214】
[付記2]
前記2つの容器は、テーパー型容器である、
ことを特徴とする付記1に記載の方法。
【0215】
[付記3]
前記2つの容器のそれぞれにおいて検出される分析物の量を定量化する工程を更に含む、
ことを特徴とする付記1に記載の方法。
【0216】
[付記4]
前記定量化する工程は、各容器について分析物の検出された量を得ることと、単一の数値を提供することとを含む、
ことを特徴とする付記3に記載の方法。
【0217】
[付記5]
前記2つの容器のそれぞれに発光基質と電子移動剤とを分注することを更に含み、前記発光基質は、前記第1の容器と前記第2の容器とのそれぞれにおいて、検出可能なシグナルを生成する、
ことを特徴とする付記1に記載の方法。
【0218】
[付記6]
前記第1の容器と前記第2の容器とのそれぞれにおける前記検出可能なシグナルは、光である、
ことを特徴とする付記5に記載の方法。
【0219】
[付記7]
前記第1の容器と前記第2の容器とのそれぞれにおける前記検出可能なシグナルは、光の同じ波長である、
ことを特徴とする付記6に記載の方法。
【0220】
[付記8]
前記サンプル中の前記第1の分析物の量は、前記第1の容器で検出される光の量に正比例する、
ことを特徴とする付記7に記載の方法。
【0221】
[付記9]
前記サンプル中の前記第2の分析物の量は、前記第2の容器において検出される光の量に正比例する、
ことを特徴とする付記8に記載の方法。
【0222】
[付記10]
前記発光基質は、前記第1の容器内の前記検出抗体と接触することで、又は前記第2の容器内の前記検出抗体と接触することで、酸化される、
ことを特徴とする付記5に記載の方法。
【0223】
[付記11]
前記発光基質は、ルミノール誘導体と過酸塩とを含む、
ことを特徴とする付記5に記載の方法。
【0224】
[付記12]
前記電子移動剤は、置換アセトアニリドである、
ことを特徴とする付記5に記載の方法。
【0225】
[付記13]
前記第1の検出抗体及び前記第2の検出抗体は、それぞれホースラディッシュペルオキダーゼとコンジュゲートする、
ことを特徴とする付記1に記載の方法。
【0226】
[付記14]
前記サンプル中の前記第1の分析物と前記サンプル中の前記第2の分析物とのそれぞれの量を検出する前記工程の前に、前記第1の検出抗体と共に前記第1の容器内の前記サンプルの一部と、前記第2の検出抗体と共に前記第2の容器内の前記サンプルの一部とを、少なくとも5分間、インキュベートする工程を更に含む、
ことを特徴とする付記1に記載の方法。
【0227】
[付記15]
前記インキュベートは、8分間継続する、
ことを特徴とする付記14に記載の方法。
【0228】
[付記16]
前記サンプル内の前記第1の分析物の量と前記サンプル内の前記第2の分析物の量は、連続して検出される、
ことを特徴とする付記1に記載の方法。
【0229】
[付記17]
前記サンプルと、前記第1の分析物に特異的な前記第1の検出抗体と、前記第2の分析物に特異的な前記第2の検出抗体とは、前記固相に同時に提供される、
ことを特徴とする付記1に記載の方法。
【0230】
[付記18]
前記サンプルは、体液サンプルである、
ことを特徴とする付記1に記載の方法。
【0231】
[付記19]
前記体液サンプルは、尿である、
ことを特徴とする付記18に記載の方法。
【0232】
[付記20]
前記第1の捕捉抗体と、前記第2の捕捉抗体と、前記第1の検出抗体と、前記第2の検出抗体とは、モノクロナール抗体である、
ことを特徴とする付記1に記載の方法。
【0233】
[付記21]
前記固相は、自動化免疫診断装置で使用されるために構成される、
ことを特徴とする付記1に記載の方法。
【0234】
[付記22]
前記サンプルの前記一部は、自動化免疫診断装置によって、前記2つの容器のそれぞれに提供される、
ことを特徴とする付記21に記載の方法。
【0235】
[付記23]
前記自動化免疫診断装置は、前記第1の容器内の前記サンプルの一部に前記第1の検出抗体を提供し、前記第2の容器内の前記サンプルの一部に前記第2の検出抗体を提供する、
ことを特徴とする付記22に記載の方法。
【0236】
[付記24]
前記検出は、前記自動免疫診断装置による、前記サンプル中の前記第1の分析物のそれぞれの量の測定と、前記サンプル中の前記第2の分析物の量の検出と、を含む、
ことを特徴とする付記23に記載の方法。
【0237】
[付記25]
それぞれの分析物を検出する前記工程は、前記固相を自動免疫診断装置に提供することを含み、前記自動免疫診断装置は、前記第1の容器内の前記サンプル中の前記第1の分析物を検出し、前記第2の容器内の前記サンプル中の前記第2の分析物を検出する、
ことを特徴とする付記1に記載の方法。
【0238】
[付記26]
前記自動免疫診断装置は、蛍光計を含み、前記蛍光計は、前記第1の分析物と前記第2の分析物のそれぞれを連続して検出する、
ことを特徴とする付記25に記載の方法。
図1
図2
図3