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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】ワイパ機構
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/165 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
B41J2/165 303
B41J2/165 305
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020016169
(22)【出願日】2020-02-03
(65)【公開番号】P2021122976
(43)【公開日】2021-08-30
【審査請求日】2023-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000250502
【氏名又は名称】理想科学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110004185
【氏名又は名称】インフォート弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100074099
【弁理士】
【氏名又は名称】大菅 義之
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(72)【発明者】
【氏名】樋口 幸雄
【審査官】小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-194963(JP,A)
【文献】特開2014-172344(JP,A)
【文献】特開平03-262646(JP,A)
【文献】特開2018-030268(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0109302(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101219601(CN,A)
【文献】特開2013-139102(JP,A)
【文献】特開2008-168471(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドのノズル面をワイプする第1ワイパと、
前記第1ワイパの進行方向における前方側において、当該進行方向に直交する幅方向に前記第1ワイパからずれて配置され、当該第1ワイパと並行して移動する第2ワイパと、
を備え、
前記第1ワイパと前記第2ワイパは、前記進行方向において、一部のみがオーバーラップして配置され
前記第2ワイパは、前記第1ワイパによってワイプされたインクを側面において伝わせる
ことを特徴とするワイパ機構。
【請求項2】
前記オーバーラップしている領域は、前記進行方向において、前記ノズル面におけるノズルとは重ならない
ことを特徴とする請求項1記載のワイパ機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットヘッドのノズル面をワイプするワイパを備えるワイパ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、インクジェットヘッドのノズル面をクリーニングするのにワイパ(ワイパブレード)を使用することがある。このようなワイパにおいて、毛細管現象でインクを吸収し得る間隔でワイパの進行方向に並ぶ可撓性の複数枚のブレードで形成されているワイパが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2001-199076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、ワイパは、インクを吸収せず掻きとるゴム材で構成されるものや、インクを吸収し拭きとるスポンジなどの多孔質材で構成されるものがある。
【0005】
多孔質材で構成されたワイパは、インクを吸収するため拭き残すことなくノズル面をクリーニングしやすいが、インクを吸収するため消耗品として用いられたり、或いは、吸収したインクを絞り取る機構などが必要になったりするなどのデメリットがある。
【0006】
ゴム材で構成されたワイパは、繰り返しのワイプ(ワイピング)に適している。しかし、ゴム材は、インクをほとんど吸収しない。インクジェットヘッドのヘッドのノズル面に接触するワイパの先端付近はR形状に弾性変形するため、ワイプされたインクが湾曲領域に堆積してしまう。そうすると、堆積したインクがインクジェットヘッドの側面に付着し残ったり、或いは、払拭しきれずにノズル面に拭き残りが発生したりするなどの払拭不良が発生し、ひいては、インクジェットヘッドの吐出不良、残ったインクへの用紙接触による画像汚れ等の懸念がある。
【0007】
上述の複数枚のブレードで形成されているワイパは、ワイパの進行方向前方のブレードに堆積したインクがインクジェットヘッドの側面に付着して残るなどの払拭不良が発生する。そのため、インクジェットヘッドの吐出不良、残ったインクへの用紙接触による画像汚れ等の懸念がある。
【0008】
本発明の目的は、インクの払拭性能を向上させることができるワイパ機構を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
1つの態様では、ワイパ機構は、インクジェットヘッドのノズル面をワイプする第1ワイパと、前記第1ワイパの進行方向における前方側において、当該進行方向に直交する幅方向に前記第1ワイパからずれて配置され、当該第1ワイパと並行して移動する第2ワイパと、を備え、前記第1ワイパと前記第2ワイパは、前記進行方向において、一部のみがオーバーラップして配置されている。
【発明の効果】
【0010】
前記態様によれば、インクの払拭性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】一実施の形態におけるインクジェット印刷装置を示す構成図である。
図2】一実施の形態におけるインクジェット印刷装置を示す制御構成図である。
図3】一実施の形態に係るワイパ機構を示す平面図である。
図4図3のIV-IV断面を、ヘッドモジュールを省略して示す斜視図である。
図5図3のV-V断面図である。
図6】一実施の形態に係るワイプ位置にあるワイパ機構を示す正面図である。
図7】一実施の形態におけるワイプ時の第1ワイパ及び第2ワイパを示す斜視図である。
図8】一実施の形態におけるワイプ時の第1ワイパ及び第2ワイパを示す正面図である。
図9】一実施の形態におけるワイプ時の第1ワイパ及び第2ワイパを示す左側面図である。
図10】一実施の形態におけるワイプ時のパージインクの流れを説明するための拡大斜視図(その1)である。
図11】一実施の形態におけるワイプ時のパージインクの流れを説明するための拡大斜視図(その2)である。
図12】一実施の形態におけるワイプ時のパージインクの流れを説明するための拡大正面図である。
図13】一実施の形態におけるマスクプレートの底面に付着したパージインクを説明するための拡大正面図である。
図14】一実施の形態における第1ワイパと第2ワイパとのギャップを説明するための左側面図(その1)である。
図15】一実施の形態における第1ワイパと第2ワイパとのギャップを説明するための左側面図(その2)である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態に係るワイパ機構及びワイパについて、図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、一実施の形態におけるインクジェット印刷装置100を示す構成図である。
【0014】
図2は、インクジェット印刷装置100を示す制御構成図である。
【0015】
なお、図1、及び後述する図3図15に示す前後、上下、及び左右の各方向は、被印刷媒体の一例である用紙Pの搬送方向を右方向とした場合の一例にすぎないが、例えば、前後方向及び左右方向が水平方向であり、上下方向が鉛直方向である。
【0016】
図1に示すように、インクジェット印刷装置100は、ワイパ機構1と、印刷部110と、吸着搬送部120と、外部給紙部130と、内部給紙部141~143と、搬送ローラ対151~155と、レジストローラ対156とを備える。また、図2に示すように、インクジェット印刷装置100は、制御部161と、記憶部162と、操作パネル部163と、スキャナ164と、排紙部165とを備える。なお、図1には、外部給紙部130及び内部給紙部141~143から印刷部110へ続く搬送経路を太い実線で示す。
【0017】
印刷部110は、例えば2つのインクジェットヘッド111,112を有する。図3に示すように、インクジェットヘッド111,112のそれぞれは、用紙Pの搬送方向(右方向)に直交する主走査方向(前後方向)に沿って千鳥状に配置された6つ(複数)のヘッドモジュール111a,112aを有する。すなわち、インクジェットヘッド111,112において、前後方向に沿って配列された6個ずつのヘッドモジュール111a,112aが、それぞれ左右方向における位置を交互にずらして配置されている。一例ではあるが、一方のインクジェットヘッド111の6つのヘッドモジュール111aは、2色(例えば、ブラック(K)及びシアン(C))のインクを吐出し、他方のインクジェットヘッド112の6つのヘッドモジュール112aは、インクジェットヘッド111とは異なる2色(例えば、マゼンタ(M)及びイエロー(Y))のインクを吐出する。
【0018】
吸着搬送部120は、印刷部110に対向するように配置されている。搬送部120は、例えば用紙Pを吸着しながら、搬送ベルトによって用紙Pを搬送する。なお、吸着搬送部120は、図1に示す印刷位置と、この印刷位置よりも下方の図6に示すワイプ位置と、このワイプ位置よりも下方の図示しない待機位置とに移動可能であるとよい。また、図1に示す印刷時におけるワイパ機構1は、印刷部110の下方から退避した位置にある。
【0019】
外部給紙部130及び内部給紙部141~143は、給紙トレイ131,141a,142a,143aと、スクレーパローラ132,141b,142b,143bと、ピックアップローラ133,141c,142c,143cとを有する。
【0020】
給紙トレイ131,141a,142a,143aには、複数の用紙Pが積載される。
【0021】
スクレーパローラ132,141b,142b,143bは、給紙トレイ131,141a,142a,143aに積載された複数の用紙Pのうち最上位に位置する用紙Pを繰り出して搬送する繰り出しローラである。
【0022】
ピックアップローラ133,141c,142c,143cは、スクレーパローラ132,141b,142b,143bによって繰り出された用紙Pを搬送する。
【0023】
搬送ローラ対151~155は、内部給紙部141~143からレジストローラ対156までの間の搬送経路に配置されている。
【0024】
レジストローラ対156には、外部給紙部130及び内部給紙部141~143から搬送される用紙Pが突き当てられる。これにより、用紙Pの斜行が修正される。
【0025】
図2に示す制御部161は、インクジェット印刷装置100全体の動作を制御する演算処理装置として機能するプロセッサ(例えばCPU:Central Processing Unit)を有し、ワイパ駆動部40、印刷部110、吸着搬送部120等のインクジェット印刷装置100の各部の動作を制御する。
【0026】
記憶部162は、例えば、所定の制御プログラムが予め記録されている読み出し専用半導体メモリであるROM(Read Only Memory)、プロセッサが各種の制御プログラムを実行する際に必要に応じて作業用記憶領域として使用される随時書き込み読み出し可能な半導体メモリであるRAM(Random Access Memory)、ハードディスク装置などである。
【0027】
操作パネル部163は、各種操作を行うための操作キー、タッチパネルや、各種情報を表示するディスプレイなどを有することでインクジェット印刷装置100の入力部及び表示部の一例として機能する。
【0028】
スキャナ164は、原稿から画像データを読み取る。
【0029】
排紙部165は、印刷部110によって印刷が行われた用紙Pが積載される排紙トレイと、この排紙トレイに用紙Pを排出する排出ローラとを有する。
【0030】
図3は、ワイパ機構1を示す平面図である。
【0031】
図4は、図3のIV-IV断面を、ヘッドモジュール111a,112aを省略して示す斜視図である。
【0032】
図5は、図3のV-V断面図である。
【0033】
図6は、ワイプ位置にあるワイパ機構1を示す正面図である。
【0034】
図7図9は、ワイプ時の第1ワイパ11及び第2ワイパ12を示す斜視図、正面図、及び左側面図である。
【0035】
図3図9及び後述する図10図15に示す前後、上下、及び左右の各方向は、ワイパ機構1が図6に示すように印刷部110と吸着搬送部120との間のワイプ位置にある状態の方向である。
【0036】
図3に示すワイパ機構1は、ワイパユニット10と、2つのガイド部20と、インク受け部30と、ワイパ駆動部40とを備える。
【0037】
ワイパユニット10は、例えば4つずつの第1ワイパ11及び第2ワイパ12と、これらの第1ワイパ11及び第2ワイパ12を支持するワイパ支持部材13とを有する。
【0038】
上述のように、2つのインクジェットヘッド111,112のヘッドモジュール111a,112aは、千鳥状に配置されていることによって左右方向に計4列に並んでいる。そのため、1組の第1ワイパ11及び第2ワイパ12が1列(3個)のヘッドモジュール111a,112aをワイプするために、第1ワイパ11及び第2ワイパ12が計4組配置されている。
【0039】
第1ワイパ11及び第2ワイパ12は、図5に示すように上方である延出方向D2に延出する。第1ワイパ11及び第2ワイパ12は、例えばワイパブレードである。また、第1ワイパ11及び第2ワイパ12は、図7及び図9に示すようにヘッドモジュール111a,112a(ノズル面112a-1又はマスクプレート112a-2)との当接により弾性変形する弾性体である。第1ワイパ11及び第2ワイパ12は、ゴムなどの材料からなるとよい。
【0040】
図4に示すように、第2ワイパ12は、第1ワイパ11よりも進行方向D1における前方側で、且つ、第1ワイパ11の進行方向D1と第1ワイパ11の延出方向D2とに直交する幅方向D3の右側に第1ワイパ11からずれて、配置されている。第1ワイパ11と第2ワイパ12とは、進行方向D1において、一部(図8に示す幅方向D3におけるオーバーラップ長さL)のみがオーバーラップして配置されている。このようにオーバーラップして配置されている領域は、進行方向D1において、ノズル面112a-1におけるノズル112a-1a(ノズル列)とは重ならない。
【0041】
また、詳しくは後述するが、第2ワイパ12は、第1ワイパ11の進行方向D1における前方側において、第1ワイパ11と並行して移動し、この第1ワイパ11によってワイプされた後述する図10図12に示すパージインクPI(インクの一例)を伝わせる。
【0042】
また、図7に示すように、第2ワイパ12は、ヘッドモジュール112a(インクジェットヘッド111,112)のうちノズル面112a-1よりも下方の面の一例であるマスクプレート112a-2の底面をワイプする。また、マスクプレート112a-2が省略される態様などでは第2ワイパ12もノズル面112a-1をワイプしてもよい。また、第1ワイパ11がワイプを行うノズル面112a-1と、第2ワイパ12がワイプを行う面(例えば、マスクプレート112a-2の底面)とに段差がなくてもよい。また、第2ワイパ12は、第1ワイパ11の幅方向D3における右側に配置されているが、幅方向D3における左右両側に配置されていてもよい。
【0043】
第1ワイパ11は、ノズル面112a-1(ヘッドモジュール112aのノズル面112a-1のみ図7図9に図示)をワイプする。第2ワイパ12は、例えば用紙Pのノズル面112a-1に対する接触を防止するためのマスクプレート112a-2(ヘッドモジュール112aのマスクプレート112a-2のみ図7図9に図示)の底面をワイプする。このマスクプレート112a-2は、ノズル面112a-1の一部(例えば、ノズル112a-1aの吐出制御を行うMEMS(Micro Electro Mechanical Systems))を覆う部分とヘッドモジュール112aの側面を覆う部分とが直交する例えば後方から見てL字状の板金である。なお、ノズル面112a-1には、例えば撥インク膜がコーティングされている。また、マスクプレート112a-2は、ノズル面112a-1よりも濡れ性が高い。
【0044】
図7及び図9に示すように、第1ワイパ11は、ワイプ時に先端側(上端側)の一部が湾曲した状態でノズル面112a-1をワイプし、第2ワイパ12は、ワイプ時に先端側(上端側)の一部が湾曲した状態でマスクプレート112a-2の底面をワイプする。また、第1ワイパ11及び第2ワイパ12の進行方向D1における下流側の面であるワイプ面11a,12aは、例えば、図8に示すように矩形状を呈する。
【0045】
図4に示すように、ワイパ支持部材13には、4つずつの第1ワイパ11及び第2ワイパ12が取り付けられている。第2ワイパ12は、例えば、第2ワイパ12をワイパ支持部材13に固定する固定部12cのワイパ支持部材13への挿入度合いなどによって、進行方向D1における位置を調整可能にワイパ支持部材13に固定されているとよい。なお、固定部12cは、第1ワイパ11と第2ワイパ12との進行方向D1におけるギャップを調整するギャップ調整部の一例である。このギャップ調整部としては、第1ワイパ11及び第2ワイパ12のうち少なくとも一方の位置を移動させることによって第1ワイパ11と第2ワイパ12との進行方向D1におけるギャップを調整すればよい。
【0046】
また、図3及び図5に示すように、ワイパ支持部材13には、例えば、左右一対のネジ孔13a,13aが前後方向に貫通して設けられている。
【0047】
2つのガイド部20のそれぞれは、前後方向に延びる例えばネジ軸であり、ワイパ支持部材13のネジ孔13a,13aを貫通するように配置されている。そのため、ガイド部20が回転することによって、ワイパユニット10が前後方向に移動可能となる。
【0048】
インク受け部30は、ヘッドモジュール111a,112aのノズル面112a-1から紙粉や埃などとともに落下するインクを受ける。このように落下するインクは、第1ワイパ11及び第2ワイパ12のワイプによって落下するパージインクPIを含む。
【0049】
インク受け部30内のインクは、ワイパ機構1が図1に示す退避位置において傾くことにより、図3に示すインク受け部30の排出部30bから、図示はしないが、廃液経路を経て廃液収容部へ流れるとよい。インク受け部30は、例えば、上方に開口する直方体形状を呈する。そのため、インク受け部30の内部底面がインク受け面30aとなる。なお、インク受け部30は、ガイド部20の前端を回転可能に支持する。
【0050】
ワイパ駆動部40は、例えば2つのモータ41を有する。
【0051】
モータ41は、ワイパユニット10(第1ワイパ11及び第2ワイパ12)を駆動する駆動手段(アクチュエータ)の一例であり、例えば、ガイド部20に接着によって結合されている。モータ41は、ガイド部20を回転させることによって、上述のようにワイパユニット10を前後に移動させる。なお、単一のモータ41が、例えば駆動ベルトを回転させることによって、この駆動ベルト内のプーリを介して2つのガイド部20を回転させてもよい。或いは、単一のモータ41及び単一のガイド部20のみが配置され、この単一のガイド部20がワイパユニット10を前後方向に移動させてもよい。
【0052】
以下、第1ワイパ11によるノズル面112a-1のワイプ、及び第2ワイパ12によるマスクプレート112a-2の底面のワイプについて説明する。
【0053】
図10及び図11は、ワイプ時のパージインクPIの流れを説明するための拡大斜視図である。
【0054】
図12は、ワイプ時のパージインクPIの流れを説明するための拡大正面図である。
【0055】
図13は、マスクプレート112a-2の底面に付着したパージインクPIを説明するための拡大正面図である。
【0056】
図14及び図15は、第1ワイパ11と第2ワイパ12とのギャップG1,G2を説明するための左側面図である。
【0057】
第1ワイパ11及び第2ワイパ12がワイプを行う前に、まず、図6に示すように、吸着搬送部120が図1に示す印刷位置よりも下方に移動し、ワイパ機構1が印刷部110と吸着搬送部120との間に移動する。また、ヘッドモジュール111a,112aは、図10及び図12に示すようにパージインクPIを吐出する。これにより、図7に示す複数のノズル112a-1aから吐出されたパージインクPIが複数箇所に集まって点在する。
【0058】
そして、第1ワイパ11及び第2ワイパ12は、延出方向D2においてヘッドモジュール111a,112aのノズル面112a-1及びマスクプレート112a-2の底面よりも先端が上方にオーバーラップした状態で進行方向D1に移動する。そのため、第1ワイパ11及び第2ワイパ12は、先端側が進行方向D1の後方に反り返って湾曲した状態で進行方向D1に移動しながらワイプを行う。
【0059】
これにより、第1ワイパ11によってワイプされたパージインクPIは、図10及び図11に示すように、第1ワイパ11のワイプ面11a及び第2ワイパ12の側面12b(左側面)を伝って、紙粉や埃などとともに、上述のインク受け部30のインク受け面30aに重力方向に落下する。
【0060】
ここで、図13に示すように、マスクプレート112a-2の底面にパージインクPIが付着することがあっても、マスクプレート112a-2の底面が、ノズル面112a-1よりも濡れ性が高く、且つ下方に位置するため、パージインクPIは、マスクプレート112a-2の底面からノズル面112a-1に戻りにくい。
【0061】
ところで、第1ワイパ11によってワイプされたパージインクPIが第2ワイパ12の側面12bを伝うためには、例えば、図4及び図5に示す第2ワイパ12の固定部12cを用いて、図14に示すように、第1ワイパ11と第2ワイパ12とのギャップG1が毛管力でパージインクPIが落下しやすく調整されているとよい。一例としては、第1ワイパ11及び第2ワイパ12の進行方向D1における厚さが0.5mmで、ギャップG1が2,3mmである。
【0062】
図15に示すように、第1ワイパ11と第2ワイパ12とのギャップG2が大きすぎると、第1ワイパ11によってワイプされたパージインクPIが第2ワイパ12の側面12bを伝わない。一方、第1ワイパ11と第2ワイパ12とが接触するように配置されていると、第1ワイパ11の幅方向D3において、ノズル面112a-1に対する当接圧が不均一になる。
【0063】
第1ワイパ11と第2ワイパ12とのギャップG1,G2は、パージインクPIの物性(例えば、粘度や濡れ性)、パージ量(例えば、インクの物性の経時変化による排出性変化)などや、第1ワイパ11及び第2ワイパ12の材質などに応じて調整されるとよい。なお、第1ワイパ11によってワイプされたパージインクPIが第2ワイパ12の側面12bに伝いやすいように、第1ワイパ11のうち第2ワイパ12側の右端部が第1ワイパ11の左端部よりも進行方向D1における後方に位置するように第1ワイパ11が傾斜していてもよい。
【0064】
第1ワイパ11及び第2ワイパ12がすべてのヘッドモジュール111a,112a(ノズル面112a-1及びマスクプレート112a-2)をワイプした後には、ヘッドモジュール111a,112aがピエゾ素子を駆動させて各ノズル121a-1aからインクを吐出させるフラッシング動作により、ノズル121a-1aでのインクの混色を改善することが可能である。その後、図6に示す吸着搬送部120が下方に移動し、ワイパ機構1が図1に示す退避位置に移動する。この退避位置においては、ワイパユニット10が進行方向D1の後方に戻っていることが望ましい。吸着搬送部120は、印刷が行われる場合には印刷部110に近接する位置まで上昇し、印刷が行われない場合には更に下方の待機位置へ移動する。
【0065】
以上説明した本実施の形態では、ワイパ機構1は、インクジェットヘッド111,112(ヘッドモジュール111a,112a)のノズル面112a-1をワイプする第1ワイパ11と、第1ワイパ11の進行方向D1における前方側において、この進行方向D1に直交する幅方向D3に第1ワイパ11からずれて配置され、第1ワイパ11と並行して移動する第2ワイパ12と、を備える。
【0066】
これにより、第1ワイパ11によってワイプされたパージインクPIが第1ワイパ11に堆積しても、パージインクPIを第2ワイパ12の例えば側面12bに伝わせてインク受け部30に落下させることができる。そのため、第1ワイパ11に堆積したインクが、インクジェットヘッド111,112(ヘッドモジュール111a,112a)の側面に付着して残ったり、或いは、払拭しきれずにノズル面112a-1に拭き残りが発生したりすることを抑制することができる。よって、本実施の形態によれば、インク(例えばパージインクPI)の払拭性能を向上させることができる。
【0067】
また、本実施の形態では、ワイパ機構1は、第1ワイパ11の進行方向D1における前方側において幅方向D3に第1ワイパ11からずれて配置され、第1ワイパ11と並行して移動する第2ワイパ12を有し、第1ワイパ11と第2ワイパ12は、第1ワイパ11の進行方向D1において、一部のみがオーバーラップして配置されているので、第1ワイパ11の端部と第2ワイパ12の端部の間において毛管力を働かせ、パージインクPIを下方へ誘導しやすくすることができる。
【0068】
また、本実施の形態では、オーバーラップしている領域は、第1ワイパ11の進行方向D1において、ノズル面112a-1におけるノズル112a-1aとは重ならない領域で配置されている。これにより、ノズル112a-1aにパージインクPIが残るのを抑制することができる。したがって、より一層、払拭性能を向上させることができる。
【0069】
なお、本発明は、上述の実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階でその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化することができる。また、上述の実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成することができる。例えば、実施の形態に示される全構成要素を適宜組み合わせても良い。このような、発明の趣旨を逸脱しない範囲内において種々の変形や応用が可能であることはもちろんである。以下に、本願の出願当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
【0070】
[付記1]
インクジェットヘッドのノズル面をワイプする第1ワイパと、
前記第1ワイパの進行方向における前方側において、当該進行方向に直交する幅方向に前記第1ワイパからずれて配置され、当該第1ワイパと並行して移動する第2ワイパと、を備え、
前記第1ワイパと前記第2ワイパは、前記進行方向において、一部のみがオーバーラップして配置されている
ことを特徴とするワイパ機構。
【0071】
[付記2]
前記オーバーラップしている領域は、前記進行方向において、前記ノズル面におけるノズルとは重ならない
ことを特徴とする付記1記載のワイパ機構。
【符号の説明】
【0072】
1 ワイパ機構
10 ワイパユニット
11 第1ワイパ
11a ワイプ面
12 第2ワイパ
12a ワイプ面
12b 側面
12c 固定部
13 ワイパ支持部材
13a ネジ孔
20 ガイド部
30 インク受け部
30a インク受け面
30b 排出部
40 ワイパ駆動部
41 モータ
100 インクジェット印刷装置
110 印刷部
111,112 インクジェットヘッド
111a,112a ヘッドモジュール
112a-1 ノズル面
112a-1a ノズル
112a-2 マスクプレート
120 吸着搬送部
130 外部給紙部
131 給紙トレイ
132 スクレーパローラ
133 ピックアップローラ
141,142,143 内部給紙部
141a,142a,143a 給紙トレイ
141b,142b,143b スクレーパローラ
141c,142c,143c ピックアップローラ
151~155 搬送ローラ対
156 レジストローラ対
161 制御部
162 記憶部
163 操作パネル部
164 スキャナ
165 排紙部
D1 進行方向
D2 延出方向
D3 幅方向
G1,G2 隙間
L オーバーラップ長さ
P 用紙
PI パージインク
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