(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】スピーカユニット
(51)【国際特許分類】
H04R 1/02 20060101AFI20240116BHJP
H04R 1/28 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
H04R1/02 101F
H04R1/02 102B
H04R1/02 105B
H04R1/28 310C
(21)【出願番号】P 2020017439
(22)【出願日】2020-02-04
【審査請求日】2022-11-30
(73)【特許権者】
【識別番号】000237592
【氏名又は名称】株式会社デンソーテン
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中島 裕一
(72)【発明者】
【氏名】浜田 一彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 啓一郎
(72)【発明者】
【氏名】後藤 渚
【審査官】菊池 智紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-352592(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0020290(US,A1)
【文献】特開2016-127404(JP,A)
【文献】特開2009-094677(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/00-1/46,9/00-9/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力される音が視聴される第1の空間から壁材によって区切られた第2の空間に少なくとも一部が設けられたスピーカユニットであって、
第1のスピーカ(10A)と、
第2のスピーカ(10B)と、
前記第1のスピーカ
の背面と前記第2のスピーカの背面とを対向させた状態で結合するスピーカ結合部(20)と、
前記第1のスピーカと前記壁材の第1の開口とを結合させるための第1のスペーサ部(50)と、
前記第2のスピーカと前記壁材の第2の開口とを結合させるための第2のスペーサ部(50)と、
を一体的に連結し
、
前記第1のスペーサ部(50)と前記第2のスペーサ部(50)とを結合する結合部材(61)を備えたスピーカユニット。
【請求項2】
前記スピーカ結合部(20)を通す穴を有し、弾性を有する結合部緩衝材(41)を介して
前記穴に通した前記スピーカ結合部(20)を保持するステー部材(30)を更に備えた請求項
1に記載のスピーカユニット。
【請求項3】
前記第1のスペーサ部(50)及び前記第2のスペーサ部(50)を囲んで設けられ、前記第1のスピーカ(10A)及び前記第2のスピーカ(10B)の背面側空間を形成するカバー(70)を更に備え、カバーには前記背面側空間を前記第1の空間とは異なる他の空間へ連通するためのダクト部が設けられている、請求項1
又は2に記載のスピーカユニット。
【請求項4】
前記第1のスペーサ部(50)が第1のスピーカ緩衝材(42)を介して前記第1の開口に接続され、
前記第2のスペーサ部(50)が第2のスピーカ緩衝材(42)を介して前記第2の開口に接続された
請求項1から
3の何れか1項に記載のスピーカユニット。
【請求項5】
前記第1のスペーサ部(50)が、前記第1の開口に挿通され、
前記第2のスペーサ部(50)が、前記第2の開口に挿通されることによって接続された、請求項
4に記載のスピーカユニット。
【請求項6】
前記壁材は、車両の内装材または建物の壁材である請求項1~
5の何れか1項に記載のスピーカユニット。
【請求項7】
前記壁材は車両または建物の室内の前記第1の空間側へ張り出した突出部を備え、前記第1及び第2の開口は前記突出部の対向する面に設けられた請求項
4に記載のスピーカユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スピーカユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
スピーカ装置は、例えば、振動板(コーン等)、ボイスコイル、マグネット等を有するスピーカユニットがエンクロージャ(筐体)の所定面に取り付けられた構造を有する。このようなスピーカ装置では、スピーカユニットの駆動に伴う振動が、エンクロージャに伝わり、エンクロージャ自体やエンクロージャの周囲のものを震わせて不要な音を発生させる場合がある。このため、特許文献1及び非特許文献1のスピーカ装置では、二つのスピーカの背面同士をシャフトで接続して振動を打ち消すようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般にスピーカユニットから効率よく音響を出力するためには、スピーカユニットの背面側に十分な容積を持った空間が必要である。例えば特許文献1では車両のトランクルームの空間を利用することで、十分な背面空間を確保している。しかしながら、特許文献1ではスピーカユニットの取り付け部分の形状が複雑になり、車両の他の空間を背面空間として利用してスピーカユニットを搭載することが難しいという課題があった。
【0005】
本発明は、例えば、車両のセンターコンソール等、壁材で区切られた空間にスピーカユニットを設置する場合に、当該空間(以下、設置空間とも称す)をスピーカの背面空間として利用でき、かつ容易に取り付けることができるスピーカユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明に係るスピーカユニットは、
出力される音が視聴される第1の空間から壁材によって区切られた第2の空間に少なくとも一部が設けられたスピーカユニットであって、
第1のスピーカ(10A)と、
第2のスピーカ(10B)と、
前記第1のスピーカと前記第2のスピーカの背面とを対向させた状態で結合するスピーカ結合部(20)と、
前記第1のスピーカと前記壁材の第1の開口とを結合させるための第1のスペーサ部(50)と、
前記第2のスピーカと前記壁材の第2の開口とを結合させるための第2のスペーサ部(50)と、
を一体的に連結した。
【0007】
また、上記課題を解決するために、本発明は、
前記スピーカユニットと、
一端が前記第2の空間内の設置面に接続され、他端に接続される前記ステー部材を介して前記スピーカユニットを支持する支持部材と、
前記第1のスペーサと前記第1の孔部の内壁面との間の隙間、及び前記第2のスペーサ
と前記第2の孔部の内壁面との間の隙間を埋めるように設けられる開口側緩衝材と、
を備えるスピーカユニットの取付構造であってもよい。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、例えば、車両のセンターコンソール等、壁材で区切られた空間にスピーカユニットを設置する場合に、当該設置空間をスピーカの背面空間として利用でき、かつ容易に取り付けることができるスピーカユニットを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】第一実施形態に係るスピーカユニットを車両のセンタコンソール内に搭載した場合の外観図、
【
図2】
図1におけるスピーカユニットの取付構造を示す模式横断面図、
【
図3】第1のスピーカおよび第2のスピーカの一例を示す図、
【
図4】スピーカユニットを第1のスピーカ側から見た図、
【
図9】変形例1に係るスピーカユニットの分解斜視図、
【
図10】変形例2に係るスピーカユニットをスピーカの正面側から見た図、
【
図11】変形例2に係るスピーカユニットの分解斜視図、
【
図12】変形例2に係るスピーカユニットの斜視図、
【
図13】変形例3に係るスピーカユニットの構成を示す模式横断面図、
【
図14】変形例3に係るスピーカユニットを第1のスピーカ側から見た図、
【
図15】第二実施形態に係るスピーカユニットの構成を示す模式横断面図、
【
図16】第二実施形態に係るスピーカユニットの一部分解斜視部、
【
図17】変形例4に係るスピーカ結合部の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
〈第一実施形態〉
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、第一実施形態に係るスピーカユニット100を車両のセンタコンソール内に搭載した場合の外観図、
図2は、
図1におけるスピーカユニットの取付構造を示す模式横断面図である。
図2において、X軸は車幅方向、Y軸は高さ方向、Z軸は車両の前後方向を示している。なお、以降の図においても、X軸、Y軸、及びZ軸は
図2と同じ方向を示す。これらの方向は説明の便宜上示すものであり、本実施形態のスピーカユニットは、
図2の方向に限定されるものではない。
【0011】
本実施形態では、
図1に示すように、スピーカユニット100を車両のセンタコンソール内に設置した例を示す。センタコンソールは、オーディオや、ナビゲーション装置、エアコンの操作部等の機器が設けられ、これらの機器を壁材(以下、内装材とも称す)101で覆い、車室側に突出した突出部を構成している。内装材101は、各機器の周囲を覆うことで、機器側の内部構造や配線等を車室側のユーザから隠し、主に美観を整えるための仕切り部材である。内装材101は、スピーカユニット100から出力される音が視聴される車室(第1の空間)と、スピーカユニット100が設置されたセンタコンソール内の空間(第2の空間)とを区切る。
【0012】
内装材101は、車両重量が過度に増加しないように、例えば、合成樹脂を薄板状に成型した部材が用いられる。また、内装材101は、車両の衝突時、ユーザに被害を与えにくいように、適度な柔軟性を有していてもよい。
【0013】
スピーカユニット100は、
図2に示すように、一対のスピーカ10A,10Bと、これらのスピーカ10A,10B同士を結合するスピーカ結合部20と、各スピーカ10A,10Bのフレーム11A,11Bに配設されたスピーカ緩衝材42とを有している。
【0014】
一対のスピーカ10A,10Bのうち、一方が第1のスピーカ10A、他方が第2のスピーカ10Bである。第1のスピーカ10Aは、第1の振動板12Aと、第1の振動板12Aを振動させる第1の磁気回路13Aと、第1の振動板12A及び第1の磁気回路13Aを保持する第1のフレームとを有している。第2のスピーカ10Bは、第2の振動板12Bと、第2の振動板12Bを振動させる第2の磁気回路13Bと、第2の振動板12B及び第2の磁気回路13Bを保持する第2のフレーム11Bとを有している。
【0015】
第1のスピーカ10Aおよび第2のスピーカ10Bは、同一の構成であることが望ましいが、口径や形状等が異なるものであってもよい。なお本実施形態では磁器回路とボイスコイルを備える動電型スピーカを例に説明するが、スピーカの形式はこれに限られない。例えば固定電極と振動板との間に高電圧の音響信号を印可して静電気力で振動板を振動させる静電型スピーカであってもよいし、圧電素子や磁歪素子を備えたアクチュエータで振動板を振動させる圧電型・磁歪型スピーカであってもよい。その場合、例えば静電型スピーカでは二つのスピーカの固定電極同士、圧電型・磁歪型スピーカではアクチュエータの背面同士を向かい合わせて結合すればよい。
【0016】
図3は、第1のスピーカ10Aおよび第2のスピーカ10Bの一例を示す図である。なお、本実施形態では、第1のスピーカ10Aと第2のスピーカ10Bとを同一の構成としているため、これらを区別せずに説明する場合には、スピーカ10とも称す。また、第1又は第2の区別をせずにスピーカ10の各部を説明する場合、フレーム11、振動板12、磁気回路13と称す。
【0017】
スピーカ10において、振動板12を備えた側をスピーカの前面(正面)、磁気回路13を備えた側をスピーカ10の後面(背面)と称す。
図3の振動板12は、コーン型であり、少なくとも外縁部がフレーム11に取り付けられ、コーンの頂点側、即ち後面側に駆動コイル(ボイスコイル)14が取り付けられている。駆動コイル14の両端は、不図示のリード線を介してスピーカ10の入力端子と電気的に接続され、オーディオ信号(電気信号)が入力される。
【0018】
フレーム11の後面には磁性材料によって形成されたプレート15が取り付けられている。プレート15は厚みの薄い略円環状に形成されている。
【0019】
プレート15の後面には円環状に形成されたマグネット16が配置され、マグネット16の後面にはヨーク17が取り付けられている。ヨーク17は円板状のベース面部171とベース面部171の中心部から前方へ突出されたセンターポール部172とが一体に形成されて成り、センターポール部172は、例えば、円柱状に形成されている。ヨーク17はベース面部171の前面がマグネット16の後面に取り付けられている。
【0020】
フレーム11、プレート15、マグネット16、ヨーク17は、正面視におけるそれぞれの中心を一致させた状態で結合されている。ヨーク17は、センターポール部172の前面がプレート15の前面と同一面内に位置され、プレート15とセンターポール部172の間の空間が磁気ギャップ18として形成されている。
【0021】
センターポール部172の前端側には、駆動コイル14が外嵌され、前後方向、即ち、センターポール部172の軸方向へ変動可能(移動可能)な状態で配置されている。駆動
コイル14は、少なくとも一部が磁気ギャップ18に位置し、オーディオ信号が入力されると、オーディオ信号による電流と磁気ギャップ18の磁束との相互作用(ローレンツ力)によって振動する。この駆動コイル14の振動に伴って振動板12が振動し、振動板12が周囲の空気を振動させることでオーディオ信号に応じた音を発生させる。このため駆動コイル14及び振動板12がフレーム11に対して駆動される反作用等によってフレーム11及び磁気回路13に振動が伝わる。
【0022】
また、
図2に示すように、第1の磁気回路13Aの背面には、シャフト21Aが固設され、第2の磁気回路13Bの背面には、シャフト21Bが固設されている。シャフト21A,21Bは、例えば金属の丸棒であり、一端が磁気回路13の背面に、螺合、溶接、ロウ付け、圧入等によって固定され、他端が長ナット22によって連結されている。即ち、シャフト21A,21B、及び長ナット22は、第1のスピーカ10Aと第2のスピーカ10Bとを結合する結合部20を構成している。
【0023】
図4は、スピーカユニット100を第1のスピーカ10A側から見た図、
図5は、スピーカユニット100の斜視図、
図6は、スピーカユニット100の部分分解図である。なお、
図4~
図6では、センタコンソールの内装材101を省略して示している。
【0024】
第1及び第2のスピーカ10A,10Bにおける第1及び第2のフレーム11A,11Bの背面には、それぞれ円環状のスピーカ緩衝材42が接合されている。更に、スピーカ緩衝材42の背面には、スペーサ部50が接合されている。スピーカ緩衝材42は、弾性を有し、第1及び第2のフレーム11A,11Bが振動した場合でも、第1及び第2のフレーム11A,11Bと接している面の近傍が部分的に弾性変形することで、この振動がスペーサ部50に伝わることを抑制している。このようにスピーカ緩衝材42は、第1及び第2のフレーム11A,11Bを保持し、且つ第1及び第2のフレーム11A,11Bから伝わる振動を減衰させる弾性を有した部材であり、例えば、ポリオレフィンフォーム(PEF)等の発泡体やシリコーン樹脂等で形成される。
【0025】
なお、第1のスピーカ10Aと接合するスピーカ緩衝材42を第1のスピーカ緩衝材、第2のスピーカ10Bと接合するスピーカ緩衝材42を第2のスピーカ緩衝材とも称す。また、第1のスピーカ緩衝材42と接合するスペーサ部50を第1のスペーサ部、第2のスピーカ緩衝材42と接合するスペーサ部50を第2のスペーサ部とも称す。
【0026】
スペーサ部50は、スピーカ10のフレーム11及びスピーカ緩衝材42とほぼ同じ外径の筒状部52と、筒状部52と接合し、筒状部52よりも径方向へ張り出した鍔部51とから構成されている。
【0027】
X軸方向において第1及び第2のスペーサ部50,50の間には、2つのステー30,30が設けられている。ステー30は、ほぼ円板状の部材であり、中央にシャフト21A,21Bを通す穴31を有するハブ(轂)32と、ステー30の外周部を成すリム33と、リム33及びハブ32を繋ぐスポーク34とから構成されている。
【0028】
ステー30の穴31に通されたシャフト21A,21Bには、円筒状の結合部緩衝材41が外嵌され、ステー30は、結合部緩衝材41を介してシャフト21A,21Bを保持している。
【0029】
結合部緩衝材41は、弾性を有し、シャフト21A,21Bが振動した場合でも、シャフト21A,21Bと接している面の近傍が部分的に弾性変形することで、この振動がステー30に伝わることを抑制している。このように結合部緩衝材41は、シャフト21A,21Bを保持し、且つシャフト21A,21Bから伝わる振動を減衰させる弾性を有し
た部材であり、例えば、ポリオレフィンフォーム(PEF)等の発泡体や、シリコーン樹脂等で形成される。
【0030】
第1及び第2のスペーサ部50,50及び2つのステー30,30は、締結部(結合部材)61によって結合されている。本実施形態の締結部61は、第1及び第2のスペーサ部50,50及び2つのステー30,30の周縁部を貫通するボルトと、このボルトに対して第1及び第2のスペーサ部50,50及び2つのステー30,30の各部を固定するナットとから構成されている。
【0031】
図7は、スピーカ結合部20の構成を示す図である。
図7(A)に示すように、第1及び第2のシャフト21A,21Bは、第1及び第2の磁気回路13A,13Bと反対側の端部(後部)にネジ山が形成されている。第1のシャフト21Aのネジ山と第2のシャフト21Bのネジ山とは、逆向き形成されている。このため、
図7(B)に示すように、第1及び第2のシャフト21A,21Bの後端211A,211Bが長ナット22の両端から螺入され、長ナット22が回転されると、第1及び第2のシャフト21A,21Bが互いに近づく又は遠ざかることにより、スピーカ間の距離LAが調整される。即ち、第1及び第2のシャフト21A,21Bと長ナット22は、ターンバックルを構成する。
【0032】
前述したように、第1及び第2のスペーサ部50は、締結部61によって固定され、第1のスペーサ部50と第2のスペーサ部50との間隔が保持されている。このため、長ナット22を締め込み、スピーカ間の距離LAを短くしていくと、第1及び第2のフレーム11A,11Bの後面が、スピーカ緩衝材42を介してスペーサ部50に押し当てられ、密着する。このとき、長ナット22は最大限締め付けられるのではなく、第1及び第2のフレーム11A,11Bがスピーカ緩衝材42に密着し、且つスピーカ緩衝材42の弾性によって第1及び第2のスピーカ10A,10Bの変位が許容される適度な当接状態となるように、長ナット22の締め付けが調節される。このように本実施形態では、第1のスピーカ10Aと、第2のスピーカ10Bと、スピーカ結合部20と、第1のスペーサ部50と、第2のスペーサ部50とを締結部61によって一体的に連結している。
【0033】
また、スピーカ結合部20は、
図7(C)のように、第1及び第2のシャフト21A,21Bに螺合させたロックナット23を備え、長ナット22に対してロックナット23を締め付けて固定するようにしてもよい。また、
図7(D)のように、長ナット22を締め込み、第1及び第2のフレーム11A,11Bの後端211A,211Bと突き当てた場合に、第1及び第2のスピーカ10A,10Bが適度な当接状態となるように構成されてもよい。
【0034】
また、
図4、
図5に示すように、ステー30の外周面には、支持部材65が接続される。支持部材65は、一端がステー30に接続され、他端がセンタコンソール内の他の部材、例えば車両の床を構成するフレーム材に接続されることでスピーカユニット100を支持する。これによりスピーカユニット100は、第1のスペーサ部50が、内装材101において第1の開口を形成する第1の孔部102Aを貫通し、第2のスペーサ部50が内装材101において第2の開口を形成する第2の孔部を貫通した状態で設置される。即ち、支持部材65を他の部材に取り付けた際、スピーカユニット100が、この状態となるように、当該他の部材の所定位置に支持部材65の取り付け部(受部)が設けられている。
【0035】
このように支持部材65によってスピーカユニット100が支持された状態で、第1のスペーサ部50と第1の孔部102A(
図2)の内壁面との間の隙間、及び前記第2のスペーサ部50と第2の孔部102Bの内壁面との間の隙間を埋めるように開口側緩衝材43が設けられている。
【0036】
開口側緩衝材43は、弾性を有し、スペーサ部50が振動した場合でも、スペーサ部50と接している面の近傍が部分的に弾性変形することで、内装材101の開口部とスペーサ部50との間の隙間をふさぎ密閉する。このように開口側緩衝材43は、弾性を有した部材であり、例えば、ゴム、シリコーン樹脂等の合成樹脂、ポリエチレンフォーム、ポリウレタンフォーム、ポリオレフィンフォーム(PEF)等の発泡体で形成される。
【0037】
〈実施形態の作用効果〉
上述のように、本実施形態のスピーカユニット100は、第1及び第2のスピーカ10A,10Bがスペーサ部50,50及び開口側緩衝材43を介して内装材101に隙間なく取り付けられるので、内装材101をスピーカユニット100の筐体として機能させることができる。例えばスピーカユニット100を内装材101とは別に、筐体内に収めたスピーカ装置として構成すると、10L程度の容積を持つ大きな筐体が必要になり、この筐体に収めた状態でスピーカユニット100をセンタコンソール内に配置しようとしても、筐体がセンタコンソール内の他の部材と干渉してしまい、配置が難しい。これに対し本実施形態では、内装材101をスピーカユニット100の筐体とし、別途筐体を設けるのではなく、センタコンソール内の空間全体を筐体内の空間として用いることができるため、コンパクトに構成できる。
【0038】
本実施形態のスピーカユニット100は、例えば、ローパスフィルタを通した低周波数帯域のオーディオ信号が入力され、主に低音を出力するサブウーファである。ここで第1及び第2のスピーカ10A,10Bの供給される信号は、同一の信号であって、各スピーカ10A,10Bから同時に同じ音を発生させることが好ましい。本実施形態の第1及び第2のスピーカ10A,10Bは、互いに背面を対向させて配置されているため、同一のオーディオ信号が入力された場合、相反する方向に振動することになり、背面の磁気回路13A,13Bを結合させたスピーカ結合部20によって互いの振動が相殺される。これにより第1及び第2のスピーカ10A,10Bから生じる不要な振動を抑えている。
【0039】
また、本実施形態のスピーカユニット100は、第1及び第2のスピーカ10A,10Bとスピーカ結合部20とがそれぞれ、第1及び第2のスペーサ部50とステー30に、スピーカ緩衝材42と結合部緩衝材41を介して保持されている。このため、第1及び第2のスピーカ10A,10Bから生じる不要な振動が、第1及び第2のスペーサ部50及びステー30に伝わることを抑えている。これによりスピーカユニット100を内装材101に取り付けた場合でも、スペーサ部50又はステー30を介して内装材101に伝わる振動を抑えて、内装材101の音鳴りを抑制できる。
【0040】
更に、本実施形態におけるスピーカユニット100は、第1及び第2のスピーカ10A,10B、スピーカ結合部20、第1及び第2のスペーサ部50が、一つのユニットとして一体的に構成されているため、内装材101の第1及び第2の孔部102A、102Bを設けられすれば、車両のどのような場所でもスピーカユニット100を容易に取り付けることができる。
【0041】
〈変形例1〉
図8は、変形例1に係るスピーカユニット100Aの斜視図、
図9は、変形例1に係るスピーカユニット100Aの分解斜視図である。
【0042】
本例は、前述の第1実施形態と比べて、第1及び第2のスピーカ10A,10Bの背面側の空間を覆うカバー70を備えた点が異なっている。その他の構成は、第1実施形態と同じであるため、同一の要素には同符号を付すなどして、再度の説明を省略する。
【0043】
カバー70は、
図8、
図9に示すように、スペーサ部50やステー30の外周面に沿って、第1及び第2のスピーカ10A,10Bの背面側の空間を覆う円筒状の部材である。即ち、カバー70は、背面側空間をスピーカユニット100Aの外部空間に対して隔てる部材である。
【0044】
カバー70は、円筒をX軸方向に横断し、上下に分割した形状の下カバー71と上カバー72とから構成されている。下カバー71は、スピーカユニット100Aの下側からスペーサ部50やステー30の外周面に組み付けられ、ネジ等でスペーサ部50やステー30に固定される。同様に、上カバー72は、スピーカユニット100Aの上側からスペーサ部50やステー30の外周面に組み付けられ、ネジ等でスペーサ部50やステー30に固定される。また、支持部材65が上カバー72の外側から上カバー72を介してステー30に取り付けられる。
【0045】
なお、本例のスピーカユニット100Aは、前述の第一実施形態と同様に、スペーサ部50が内装材101の孔部102A、102Bを貫通して配置され、開口側緩衝材43を介して内装材101に取り付けられている。このため、内装材101が、スピーカユニット100Aのエンクロージャとして機能するので、カバー70は、従来のスピーカ装置におけるエンクロージャのように強固に構成されなくてもよい。例えば、カバー70は、第1及び第2のスピーカ10A,10Bの背面側の空間を密閉せず、所定の大きさの開口を設けるようにしてもよい、その場合、開口の大きさとカバー内部の空間の容積で決まる共鳴周波数をスピーカユニット110Aの再生帯域外にするなど、音響特性を調整するように構成されてもよい。
【0046】
このように本変形例によれば、内装材101で区切られた空間の密閉度がエンクロージャとして十分でない場合であっても、カバー70がエンクロージャの機能を補うことで、内装材101をエンクロージャとして利用できるようにする。
【0047】
〈変形例2〉
図10は、変形例2に係るスピーカユニット100Bをスピーカ10Aの正面側から見た図、
図11は、変形例2に係るスピーカユニット100Bの分解斜視図、
図12は、変形例2に係るスピーカユニット100Bの斜視図である。
【0048】
本例は、前述の第1実施形態と比べて、第1及び第2のスピーカ10A,10Bの背面側の空間を覆うカバー70を備え、このカバー内の空間と外部とを連通するダクト部を備えた点が異なっている。その他の構成は、第1実施形態と同じであるため、同一の要素には同符号を付すなどして、再度の説明を省略する。
【0049】
本変形例のスペーサ部50は、鍔部51の外周の一部を径方向に突出させた突出部55を有している。また、ステー30の外周の一部を径方向に突出させた突出部35を有している。
【0050】
カバー70は、
図11、
図12に示すように、スペーサ部50やステー30の外周面に沿って、第1及び第2のスピーカ10A,10Bの背面側の空間を覆う概ね円筒状の部材である。即ち、カバー70は、背面側空間をスピーカユニット100Bの外部空間に対して隔てる部材である。
【0051】
カバー70は、下カバー73Aと上カバー74Aから構成されている。下カバー73Aは、スピーカユニット100Bの下側からスペーサ部50とステー30の外周面及び突出部55,35の下面に組み付けられ、ネジ等でスペーサ部50又はステー30に固定される。同様に、上カバー74Aは、スピーカユニット100Bの上側からスペーサ部50と
ステー30の外周面及び突出部55,35の上面に組み付けられ、ネジ等でスペーサ部50又はステー30に固定される。また、支持部材65は上カバー74Aの外側から上カバー74Aを介してステー30に取り付けられる。これによりカバー70は、第1及び第2のスピーカ10A,10Bの背面側の空間をスピーカユニット100Bの設置空間に対して区切っている。本例では、カバー70の一部に、ダクト部75を設け、背面側の空間と設置空間と隔成された他の空間とを連通させている。
【0052】
ここで、他の空間とは、例えば車両のダッシュボード内部の空間であったり、エアコンのダクト、ロッカーパネルやサイドシル等の骨格部材の内部空間、トランク、さらには車両の外部空間など、車室に対して壁面で区切られた空間であればよい。車両の内装材101は、スピーカユニット100Aを設置するためだけに設計されるものではないため、内装材101で区切られた空間の容積や密閉度がエンクロージャとして十分でない場合がある。この場合でも本変形例によれば、カバー70内の圧力をダクト部75を介して内装材101で区切られた空間以外の空間へ逃がすことにより、等価的に十分な背面容積を確保できる。
【0053】
〈変形例3〉
図13は、変形例3に係るスピーカユニット100Cの構成を示す模式横断面図、
図14は、変形例3に係るスピーカユニット100Cをスピーカ10Aの正面側から見た図である。
【0054】
本例は、前述の変形例2と比べて、第1及び第2のスピーカ10A,10Bの背面側の空間をこれらスピーカ10A,10Bとほぼ同じ外径で覆った点が異なっている。その他の構成は、変形例2と同じであるため、同一の要素には同符号を付すなどして、再度の説明を省略する。
【0055】
本変形例の鍔部151及びステー30Aは、X軸方向に見た際の外径を突出部55,35以外の部分で第1及び第2のスピーカ10A,10Bとほぼ同一にしている。このため締結部(結合部材)61で鍔部51A、ステー30Aを締結する位置をスペーサ部50の筒状部52よりも中心側に設けている。
【0056】
カバー70は、下カバー73Aと上カバー74Aから構成されている。下カバー73Aは、スピーカユニット100Cの下側から鍔部51Aとステー30Aの外周面及び突出部55,35の下面に組み付けられ、ネジ等で鍔部51A又はステー30Aに固定される。同様に、上カバー74Aは、スピーカユニット100Cの上側からスペーサ部50とステー30の外周面及び突出部55,35の上面に組み付けられ、ネジ等で鍔部51A又はステー30Aに固定される。
【0057】
このように本変形例では、カバー70で覆う第1及び第2のスピーカ10A,10Bの背面側の空間120の外径をこれらスピーカ10A,10Bの外径とほぼ同じにしたため、変形例2と同じスピーカ10A,10Bを用いた場合に、変形例2と比べて背面側の空間120が小さくなり、コンパクトに構成できる。このようにカバー70で覆う空間120を小さく構成しても、ダクト部75を介して当該空間120内の圧力をスピーカユニット100Cの設置空間に逃がすことができるので、適切な音響特性を得ることができる。
【0058】
〈第二実施形態〉
図15は、第二実施形態に係るスピーカユニット100Dの構成を示す模式横断面図、
図16は、第二実施形態に係るスピーカユニット100Dの一部分解斜視部である。
【0059】
本例は、前述の第一実施形態と比べて、スペーサ部50Aを第1及び第2のスピーカ1
0A,10Bの正面側に設けた点が異なっている。その他の構成は、第一実施形態と同じであるため、同一の要素には同符号を付すなどして、再度の説明を省略する。
【0060】
各スピーカ10A,10Bのフレーム11A,11Bの前面には、円環状に形成されたスピーカ緩衝材42が配置され、スピーカ緩衝材42の前面には、円環状に形成されたスペーサ部50Aが配置されている。
【0061】
スペーサ部50Aは、外径がスピーカ10A,10Bよりも大きく、ステー30とほぼ同じに形成されている。
図16に示すように円環状の部材であり、第1及び第2のスピーカ10に設けられた振動板12の直径とほぼ同じ開口53を有している。また、スペーサ部50の開口53は、スピーカ10A,10Bから出力される音を通すように、外径が振動板12A,12Bとほぼ同じ又はわずかに大きく形成されている。
【0062】
第1及び第2のスペーサ部50A,50A及び2つのステー30,30は、締結部61によって締結されている。締結部61は、第1及び第2のスペーサ部50A,50A及び2つのステー30,30の周縁部にボルトを貫通させ、このボルトに対して第1及び第2のスペーサ部50,50及び2つのステー30,30の各部をナットで固定している。このとき締結部61は、第1及び第2のスペーサ部50,50をスピーカ10A,10Bのフレーム11A,11Bに対してスピーカ緩衝材42・42を介して圧接させている。なお、締結部61は、スピーカ10A,10Bがスペーサ部50,50に対して動かないように固定するのではなく、スピーカ10A,10Bからの音が漏れないようにスピーカ10A,10Bとスペーサ部50,50とを密着させ、且つスペーサ部50,50に対するスピーカ10A,10B変位が許容される適度な当接状態となるように、スペーサ部50,50の間隔を定めている。
【0063】
スピーカユニット100Dは、支持部材65によって、センタコンソール内の他の部材(車両の床を構成するフレーム材等)に取り付けられる。これによりスピーカユニット100Dは、第1及び第2のスペーサ部50A・50Aを、内装材101に設けられた第1及び第2の孔部102A、102Bに向けた状態で設置される。
【0064】
そして、第1のスペーサ部50Aと内装材101との間の隙間を埋めるように、円環状の開口側緩衝材43が設けられている。
【0065】
これにより第1及び第2のスピーカ10A,10Bが内装材101に対して隙間なく取り付けられるので、内装材101をスピーカユニット100Dの筐体として機能させることができる。これにより、本実施形態においても、前述の第一実施形態と同様にセンタコンソール内の空間をスピーカの背面空間として利用でき、取り付けを容易にすることができる。
【0066】
〈変形例4〉
図17は、変形例4に係るスピーカ結合部の構成を示す図である。前述の第二実施形態スピーカ結合部20は、第1のシャフト21Aと第2のシャフト21Bとを長ナット22で結合したが、これに限らず、第1のシャフト21Aの後端と第2のシャフト21Bの後端とを突き合わせることで、第1及び第2のスピーカ10A,10Bを結合してもよい。なお、この他の構成は、前述の第二実施形態と同じである。
【0067】
本変形例では、
図17(A)に示すように、第1のシャフト21Aは、後端にその中心軸を一致させた円柱状の嵌合凸部212Aを備え、第2のシャフト21Bは、後端にその中心軸を一致させた円柱状の嵌合凹部212Bを備えている。
【0068】
スピーカユニット100Dの組み立て時、第1のシャフト21Aは、
図17(B)に示すように、後端の嵌合凸部212Aを第2のシャフト21Bの嵌合凹部212Bに嵌め合わされる。上述のように第1及び第2のスピーカ10A,10Bは、第1及び第2のスペーサ部50A・50Aによって圧接されているため、第1のシャフト21Aの後端と第2のシャフト21Bの後端とが突き合わされる。これにより本変形例の第1及び第2のスピーカ10A,10Bは、背面の磁気回路13A,13Bが結合され、互いの振動が打ち消される。
【0069】
本変形例によれば、長ナットのような締結部材を用いずに、第1及び第2のスピーカ10A,10Bを結合でき、構成を簡素化できる。
【0070】
なお、上記の実施形態及び変形例では、スピーカユニットを車両のセンタコンソール内内に設置した例を示したが、これに限らず、スピーカユニットは、ロッカーパネルやサイドシル等の骨格部材や、エアコンのダクト、トランク等、車室に対して壁面で区切られた空間に設けられてもよい。また、スピーカユニットは、車両に限らず、建物の天井裏やクローゼット等、スピーカユニットから出力される音を聴取するユーザが存在する空間に対して、壁材で区切られた空間に設けられてもよい。これにより、建物においても、壁材で区切られた空間をスピーカユニットのエンクロージャとして有効に用い、且つ壁在の音鳴りを抑制できる。
【符号の説明】
【0071】
10A :第1のスピーカ
10B :第2のスピーカ
11A :第1のフレーム
11B :第2のフレーム
12A :第1の振動板
12B :第2の振動板
13A :第1の磁気回路
13B :第2の磁気回路
14 :駆動コイル
15 :プレート
16 :マグネット
17 :ヨーク
18 :磁気ギャップ
20 :スピーカ結合部
30,30A:ステー
41 :結合部緩衝材
42 :スピーカ緩衝材
43 :開口側緩衝材
50 :スペーサ部
61 :締結部
65 :支持部材
70 :カバー
100,100A,100B,100C,100D:スピーカユニット
101 :内装材