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  • 特許-汚泥脱水方法及び汚泥脱水構造 図1
  • 特許-汚泥脱水方法及び汚泥脱水構造 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】汚泥脱水方法及び汚泥脱水構造
(51)【国際特許分類】
   C02F 11/121 20190101AFI20240116BHJP
   B01D 29/11 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
C02F11/121 ZAB
B01D29/10 510D
B01D29/10 510E
B01D29/10 530D
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020032337
(22)【出願日】2020-02-10
(65)【公開番号】P2021126641
(43)【公開日】2021-09-02
【審査請求日】2023-02-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520068928
【氏名又は名称】鈴木 訓
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 訓
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-132515(JP,A)
【文献】特開昭51-107655(JP,A)
【文献】特開2013-208609(JP,A)
【文献】特開昭62-079821(JP,A)
【文献】実開昭58-145464(JP,U)
【文献】独国特許出願公開第102006052669(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D24/00-37/04
C02F11/00-11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下水道施設並びにし尿処理施設、及び産業廃水処理施設より排出される汚泥を脱水し脱水ケーキを得る脱水装置において、複数の出口を設けた山型分配器を装置入口部に設置し、同分配器の下方から上方へとスラリーを移動させるとともに、複数の筒状スクリーンを内蔵した脱水管を用い、重力、圧密、毛細管現象、摩擦熱、圧縮熱にて汚泥の含水率を低減することを特徴とする汚泥脱水装置
【請求項2】
前記山型分配器を装置入口部に設置し、複数設置した脱水管への汚泥供給圧力が自動的に平衡状態となることを特徴とする請求項1に記載の汚泥脱水装置
【請求項3】
前記山型分配器を装置入口部に設置し、複数の脱水管入口から出口に向かって含水率が確実に下がっていく特性を利用し、汚泥出口部に水分量を計測するセンサーを設置し、汚泥含水率を一定に保つよう、汚泥送り込み量を自動調整できることを特徴とする請求項1に記載の汚泥脱水装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、上下水道施設並びにし尿処理施設、及び産業廃水処理施設より排出される懸濁物質が含まれた液体(スラリー)から、汚泥を脱水する汚泥脱水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
懸濁物質が含まれた液体(スラリー)から、固液分離を経て水分量を減らしたものを脱水汚泥、または脱水ケーキと呼ぶ。
【0003】
従来の汚泥脱水方法として、無機凝集剤や高分子凝集剤を添加し、懸濁物質を凝集及び粗大粒子化したものを、加圧ろ過、真空ろ過、遠心脱水等、多くの動力機械を用いて脱水することが多い。
【0004】
上記の機械式脱水方法のうち、一般的には、ろ布を使用し、圧搾により個液分離を行っている、ベルトプレス、フィルタープレスなどが含水率を低くできるとされている。
【0005】
ここで、ろ布を使用した脱水方法では、汚泥の送り込みのほか圧搾にも動力を必要とし、さらに、ろ布の洗浄のために相当量の水や薬品を使用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
固液分離には様々な方法が存在するが、実装置として使用されている物には、多くの構成機器及び可動機構部がある。このことから、装置の導入費用、運転維持管理費用がかかる。また、細かな運転調整操作が必要となり、管理が煩雑になり多大な労力を必要とする。
【0007】
装置ごとに処理能力が決まっているため、処理量の増加、減少に対し、自動運転のみでの対応が困難という問題がある。
【0008】
また、スラリー性状は常に変化しており、含水率低減のためには薬品注入量調整、スラリー送り込み量の調整をこまめに行う必要がある。脱水ケーキの含水率が高いと、以降のケーキ処理に係る装置への機械負荷及び費用が増える。
【0009】
本発明は、種々のスラリーのうち、特に汚泥処理のこのような課題を解決するために、前記山型分配器を装置入口部に設置し、機器点数及び可動機構部を少なくし、かつ汚泥処理量の変動に対しての管理、対応を省力化、省エネ化するとともに、含水率が十分に低減された脱水ケーキを得ることができる汚泥脱水装置を提供することを目的とする。
【0010】
臭気を発する汚泥を脱水する場合、従来の脱水方法では、装置の開口部が多く、また、密閉構造とすることが困難であるとともに、装置周辺より吸引した臭気を、別途設置した脱臭装置により脱臭しなければならないため、脱臭装置の容量も大きくなる。
【0011】
以下に、課題を解決するための手段として複数の態様を説明する。これら態様は、必要に応じて任意に組み合せることができる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、前記山型分配器を装置入口部に設置し、圧送された汚泥を受ける分配器、脱水管との組み合わせに大別され、これらの材質、スクリーン形状及び、長さ、直径などを変更することにより種々の汚泥性状に対し、汚泥供給圧力が自動的に平衡状態となることにより、複数設置した脱水管各々の含水率が均一かつ十分に低減できる構造としたことを特徴としている。
【0013】
また、本発明による構造は、動力を使用する機器を従来に比べ大幅に減らすことにより、省エネルギー化が可能になる。
【0014】
前記の目的を達成するために、前記山型分配器を経て複数設置した脱水管入口より供給された汚泥は、重力、圧密、毛細管現象、摩擦熱、圧縮熱、ろ過、通気乾燥、蒸散による陰圧ポンプ効果を利用し、汚泥が下部から上部に向かうことにより脱水効果を高め、複数設置した脱水管各々の含水率を均一かつ十分に低減する構造を備えたことを特徴とする。
【0015】
スクリーンの材質は、金属、樹脂、繊維のほか、吸水性または透水性のあるものとし、脱水管構成部を含めた汚泥接触部分は、平滑のほか、螺旋、綾織りなどの独自パターンを持たせることができる。
【0016】
スクリーン及び外筒は垂直方向のみではなく、横方向、斜め方向、螺旋方向など、直線以外の形状についても制限しない。
【0017】
汚泥の性状並びに、目標含水率により、脱水管の材質、寸法を変更できることを特徴とする。
【0018】
汚泥の送り込みは、汚泥の性状により、間欠または連続にて行う。
【0019】
前記山型分配器から複数の脱水管に送り込まれた汚泥は、前記山型分配器の独自形状かつ圧力の自動平衡効果によって圧力の低い脱水管へ優先的に流れることにより、複数設置した脱水管全体の圧力が平衡状態になる構造を特徴としている。
【0020】
複数設置した脱水管の圧力平衡構造により、各系統への汚泥送り込み圧力が均一に保たれ、汚泥の脱水効率を平準化する。
【0021】
本発明による汚泥脱水装置は、複数系列を同時に稼動、又は必要系統のみを容易に停止させ、装置の処理能力変更に柔軟に対応することを可能とする。
【0022】
脱水管内部並びに、周囲に通気することにより、脱水の促進並びに臭気の回収手段とすることができる。
【0023】
また、本発明による汚泥脱水装置は、空間容積の最小化と密閉構造を容易に得られるため、拡散臭気への対策を構築しやすい。
【0024】
脱水管の配置については、前記山型分配器より上方へ設置し、汚泥を下方から上方へ流動させることを特徴とする。
【0025】
複数設置した脱水管のうち、一系統の内部及び出口部に水分センサーを設けることにより、汚泥供給圧力が自動的に平衡状態となる特性から、各々の脱水管の目標含水率に対する汚泥打ち込み量の自動調整手段を構築できる。
【発明の効果】
【0026】
このように本発明による汚泥脱水装置は、従来の汚泥脱水方法と比較し、少ない機器点数によって十分に含水率を低減させるとともに、汚泥供給量、汚泥性質による負荷変動にも容易に対応できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の一実施形態に係る汚泥脱水方法及び汚泥脱水構造を示す概略フローシートである。
図2】脱水管の拡大構造図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明に係る汚泥脱水装置の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0029】
図1は本発明の一実施形態に係る汚泥脱水装置の概略フローシート、図2は脱水管の拡大構造図である。本実施形態に係る脱水装置Aは、ここでは汚泥(スラリー)を処理する装置となっており、例えば水処理プラント内の汚泥処理棟等に配置されている。この脱水装置Aは、脱水管1、分配器2を備えている。脱水管1は、スラリーが通過し固液分離を行う部分であり、ここでは両端が開放された略円筒状の外形を呈している。
【0030】
外筒4は、スクリーン3の側面に空間を開けて設けられておりこの空間は空間Sとされている。外筒4は、スクリーン3を覆って当該スクリーン3との間に空気層を作る物であり、上端が閉塞または一部開口したされた略円筒状を呈している。
【0031】
前記山型分配器2は、前段より打ち込まれた汚泥(スラリー)を複数設置された脱水管1に振り分ける構造をもったものである。内部滞留が起こらないよう、凹凸などの無い平滑な作りとなっている。
【0032】
汚泥(スラリー)は、ポンプ等の動力により前記山型分配器2へ、連続または間欠にて圧送される。このとき汚泥(スラリー)とともに、空気を圧送することにより、通期乾燥の効果が増加する。
【0033】
前記山型分配器2へ圧送された汚泥(スラリー)は、切換弁6を通り、各々の脱水管1へ供給され、脱水管1に内包された、スクリーン3内部を上部へ移動しながら、脱水が行われる。
【0034】
スクリーン3内部を上部へ移動している汚泥(スラリー)には、重力、圧密、毛細管現象にて、水分が下方及び側方へ移動し、スクリーン3から外筒側へ排出されるとともに、摩擦熱、圧縮熱等の加熱作用により水分を減少していく。
【0035】
スクリーン3の材質及び構造は、金属、樹脂、繊維のほか、吸水性または透水性のあるものから適宜選定し、汚泥接触部分は、平滑のほか、螺旋、綾織りなどの独自パターンを持たせて脱水作用を向上させることができる。
【0036】
スクリーン3外部から染み出した水分は、外筒4との間の空間Sの間を流れ、下方へ移動する。空間Sに通気し、スクリーン3外部の乾燥を促すことで、更なる脱水能力の向上を図ることができる。
【0037】
脱水装置Aへの供給汚泥(スラリー)には、その性状及び液体中の特定成分補足のために、薬剤の添加をしてもよい。
【0038】
また、スクリーン3の材質を選定することにより、特定成分の回収に用いてもよい。
【0039】
前記山型分配器2へ圧送された汚泥(スラリー)は、脱水管1へと供給されるが、複数本ある脱水管1へ供給圧力には少なからず、ばらつきが発生する。本実施形態の場合、脱水管1への供給圧力に差が発生した場合、圧力の最も低い脱水管1へ自動的に供給を繰り返すため、各々の脱水管1への切換弁6の調整なしに、圧力の平衡が保たれる。
【0040】
処理量の大幅な減少や、機器の点検・修理時など、脱水管1への切換弁6を閉止することにより、脱水処理の調整並びに未停止状態でのメンテナンスを行うことができる。
【0041】
脱水管1上部より排出される、脱水汚泥(脱水ケーキ)は、脱水管1下部より供給される汚泥(スラリー)より、含水率が下がっている。そのため、脱水管1上部に水分センサー5を設置し、排出脱水汚泥(脱水ケーキ)の水分量を測ることにより、目標とする水分量となるよう、装置への汚泥(スラリー)打ち込み量、もしくは脱水管1内移動速度を制御するなど、自動化が可能になる。
【0042】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されない。例えば、上記実施形態では、対象を懸濁物質が含まれた液体(スラリー)からの汚泥脱水を特に好適としているが、塵埃を含んだ液体としてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1・・・脱水管、2・・・山型分配器、3・・・スクリーン、4・・・外筒、5・・・水分センサー、6・・・切換弁、7・・・供給弁、S・・・空間、A・・・脱水装置
図1
図2