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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】工具交換装置
(51)【国際特許分類】
   B23Q 3/155 20060101AFI20240116BHJP
   B23Q 11/00 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
B23Q3/155 G
B23Q11/00 K
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020033283
(22)【出願日】2020-02-28
(65)【公開番号】P2021133472
(43)【公開日】2021-09-13
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】390008235
【氏名又は名称】ファナック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100077665
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 剛宏
(74)【代理人】
【識別番号】100116676
【弁理士】
【氏名又は名称】宮寺 利幸
(74)【代理人】
【識別番号】100191134
【弁理士】
【氏名又は名称】千馬 隆之
(74)【代理人】
【識別番号】100136548
【弁理士】
【氏名又は名称】仲宗根 康晴
(74)【代理人】
【識別番号】100136641
【弁理士】
【氏名又は名称】坂井 志郎
(74)【代理人】
【識別番号】100180448
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 亨祐
(72)【発明者】
【氏名】石山 尚弥
【審査官】増山 慎也
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-132555(JP,A)
【文献】特開2000-192903(JP,A)
【文献】実公昭47-013028(JP,Y1)
【文献】特開昭58-090436(JP,A)
【文献】特開2013-142460(JP,A)
【文献】実公昭49-009824(JP,Y1)
【文献】実開昭59-024236(JP,U)
【文献】特開平05-305542(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23Q 3/155、157
B23Q 11/00、08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の内部空間が形成される筐体と、
工具を把持するための把持部を有し、第2の内部空間が形成される、アームと、
前記把持部に把持される工具を押圧するためのロック部材と、
前記アームに接続されるアーム軸と、
前記第1の内部空間内に配置され、前記アーム軸を回転または昇降させるカム機構と、
前記第2の内部空間内に配置され、前記ロック部材を動かすロック機構と、を備え、
前記筐体は、前記第1の内部空間を外部と連通させる第1の連通孔を有し、
前記アーム軸は、前記第1の内部空間と前記第2の内部空間を連通させる第2の連通孔を有し、
前記第1の連通孔は、大気が流通し、
前記第2の連通孔は、潤滑材が流通する、工具交換装置。
【請求項2】
請求項1に記載の工具交換装置であって、
前記第2の連通孔は、
前記アーム軸の軸方向に沿って形成される軸方向孔と、
前記軸方向孔および前記第2の内部空間と連通し、前記アーム軸の側面に開口する、第1の貫通孔と、を有し、
前記工具交換装置は、前記第1の貫通孔を開閉する開閉部材をさらに備える、工具交換装置。
【請求項3】
請求項に記載の工具交換装置であって、
前記開閉部材は、前記軸方向孔内に回転可能に挿入される、有底の筒状部材を有し、
前記筒状部材には、その内外を貫通する第2の貫通孔が形成され、
前記筒状部材を回転することで、前記第1の貫通孔と前記第2の貫通孔の連通、非連通が切り換わる、工具交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、工具交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工作機械の主軸上の工具を交換する工具交換装置が開発されている。工具交換装置は、工具を把持するアーム、および把持された工具をロック、アンロックするロック機構を備える。
【0003】
ロック機構は、アーム内に設置される。ロック機構は、外力によって動作するリンクと、外力の非印加時にリンクを復帰させる弾性部材(例えば、バネ)を有することが多い。このロック機構の動作時に、アーム内の容積が変化し、外気を吸引する可能性がある(例えば、工具のロック時に、ロック機構の構成要素がアーム外に突き出す方向に動くことで、アーム内の容積が増え、負圧が生じる)。
【0004】
ここで、工作機械の動作時に霧状の切削液(ミスト)が発生することが多い。このミストは、アームの付近で浮遊したり、アームに付着したりする。このため、ロック機構の動作時に、外気と共に、ミストがアーム内に入る可能性がある。アーム内のミストは、ロック機構の潤滑不良、ひいてはその破損の原因となり得る。すなわち、アーム内への外来物(例えば、ミスト)の侵入は好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-043466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、アーム内への外来物の侵入低減を図った工具交換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
実施形態に係る工具交換装置は、第1の内部空間が形成される筐体と、工具を把持するための把持部を有し、第2の内部空間が形成される、アームと、前記把持部に把持される工具を押圧するためのロック部材と、前記アームに接続されるアーム軸と、前記第1の内部空間内に配置され、前記アーム軸を回転または昇降させるカム機構と、前記第2の内部空間内に配置され、前記ロック部材を動かすロック機構と、を備える。前記筐体は、前記第1の内部空間を外部と連通させる第1の連通孔を有し、前記アーム軸は、前記第1の内部空間と前記第2の内部空間を連通させる第2の連通孔を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、アーム内への外来物の侵入低減を図った工具交換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態に係る工具交換装置を表す図である。
図2】実施形態に係るアームの斜視図である。
図3】アーム軸とアームを分離した状態を表す分解斜視図である。
図4図1のIV-IVでアーム軸とアームを切断した断面図であり、アーム軸とアームの接続状態を表す。
【発明を実施するための形態】
【0010】
実施形態に係る工具交換装置について、図面を参照しながら以下、詳細に説明する。図1は、実施形態に係る工具交換装置10を表す。工具交換装置10は、筐体11、モータ13、減速機構14、カム17、リンク18、アーム軸21、筒状体22、回転係合部23、昇降係合部26、およびアーム30を有する。このうち、カム17、リンク18、回転係合部23、昇降係合部26は、アーム軸21を昇降、回転させるカム機構を構成する。
【0011】
筐体11は、内部空間11a(第1の内部空間)および連通孔11b(第1の連通孔)を有する。カム機構の潤滑性を保持するために、内部空間11aは液状の潤滑材Lが入っている。この結果、内部空間11aは、潤滑材Lによって満たされる潤滑材領域と、その上方の大気(気化した潤滑材Lの成分を含んでもよい)によって満たされる大気領域に区分できる。但し、これらの領域の境界は、注入あるいは消費した潤滑材Lの量によって変動する。連通孔11bは、大気領域に開口し、内部空間11a(大気領域)を外部(大気)と連通させ、大気を流通させる。
【0012】
モータ13は、筐体11の外部に取り付けられ、筐体11内に回転力を供給する。減速機構14は、モータ13から出力される回転数を適宜な値まで減速する。なお、減速機構14の一例として、ウォームギア、ウォームホイルの組み合わせを用いることができるが、これに限定されず、種々の減速機構(例えば、ギア)を用いることができる。
【0013】
カム17は、減速機構14を介して、モータ13によって回転軸Oを中心に回転される。この例では、回転軸Oはモータ13の軸と直交しているが、並行であってもよい。カム17は、略円柱形状を有し、その端面に溝17aが、その周側面に溝17b(図示せず)が形成されている。溝17aは、区間A1~A4に区分できる。溝17aは、区間A1、A3では略円弧形状であり、区間A2、A4では略直線形状を有する。溝17bは、溝17aの区間A1~A4と対応する区間B1~B4に区分される。溝17bは、区間B2、B4ではカム17の周に略平行であり、区間B1、B2ではカム17の周に対して傾く。
【0014】
リンク18は、リンク本体18a、支点18b、突起部18c、突起部18dを有する。リンク本体18aは、全体として、棒形状あるいは細長い板形状を有する。支点18bは、リンク本体18aの一端に配置され、回転可能に筐体11と固定される。すなわち、リンク18は、この支点18bを中心に回転できる。突起部18cは、カム17の溝17aに挿入(係合)される。突起部18dは、リンク本体18aの他端に配置され、昇降係合部26に係合する。
【0015】
アーム軸21は、略円柱形状であり、軸方向孔21a、貫通孔21b、貫通孔21c(第1の貫通孔)を有する。軸方向孔21aは、アーム軸21の軸方向に延びる。貫通孔21b、21cは、軸方向孔21aの上部、下部に配置され、軸方向孔21aと側面間を貫通する。軸方向孔21a、貫通孔21b、21cは、筐体11の内部空間11a(第1の内部空間)と後述するアーム30の内部空間31b(第2の内部空間)間を繋ぎ、潤滑材Lが流通する潤滑材Lの流路(第2の連通孔)として機能する。アーム軸21の上部に筒状体22、回転係合部23が、下部に昇降係合部26(ガイドリング)が配置される。
【0016】
筒状体22の上端は、筐体11に対して軸回転可能に支持される。筒状体22は、略筒形状を有し、その内部にアーム軸21の上部を保持する。アーム軸21は、筒状体22に対して一体的に回転し、かつ相対的昇降が可能に係合する。
【0017】
回転係合部23は、断面が凹形状の略リング形状を有し、筒状体22の下端近傍の外周に固定され、筒状体22と共に回転可能である。回転係合部23は、溝17bに係合する係合突起部23aを有する。
【0018】
昇降係合部26は、略リング形状を有し、アーム軸21の外周に固定され、リンク18の突起部18dに係合する。
【0019】
ここで、モータ13が動作したときのアーム軸21の動きを説明する。次に示すように、モータ13が動作するとアーム軸21は、昇降と回転を交互に行う。
【0020】
まず、リンク18の突起部18cは、カム17の溝17aの区間A1と区間A4の境界付近に配置され、回転係合部23の係合突起部23aは溝17bの区間B1と区間B4の境界付近に配置されるとする。モータ13が動作し、カム17が回転することで、リンク18の突起部18cは、溝17aの区間A1、A2、A3、A4を順に移動し、回転係合部23の係合突起部23aは溝17bの区間B1、B2、B3、B4を順に移動するものとする。
【0021】
突起部18cが溝17aの区間A1内を移動し、係合突起部23aが溝17bの区間B1内を移動するとき、アーム軸21は、昇降せず回転する。これは次のように説明できる。すなわち、溝17bは、区間B1でカム17の周に対して傾く。このため、係合突起部23aは、区間B1を移動するときにカム17の軸方向に動き、回転係合部23を回転させる。回転係合部23が回転すると、筒状体22、ひいてはアーム軸21が回転する。一方、溝17aは、区間A1では回転軸Oを中心とする略円弧形状である。このため、突起部18cは、区間A1内を移動するときに、回転軸Oからの距離が一定に保たれるため、実質的に昇降せず、リンク18が回動することもない。この結果、リンク18の突起部18d、ひいては昇降係合部26、アーム軸21が昇降することはない。
【0022】
突起部18cが溝17aの区間A2内を移動し、係合突起部23aが溝17bの区間B2内を移動するとき、アーム軸21は、回転せず昇降する。これは次のように説明できる。すなわち、突起部18cは、区間A2を移動するときに、回転軸Oからの距離が変化することで、昇降(ここでは降下)し、リンク18が回動する。この結果、リンク18の突起部18d、ひいては昇降係合部26、アーム軸21が昇降する。一方、溝17bは、区間B2でカム17の周に平行である。このため、係合突起部23aは、区間B2を移動するときにカム17の軸方向に動かず、回転係合部23を回転させることもない。回転係合部23が回転しないため、筒状体22、アーム軸21も回転しない。
【0023】
以下、同様に、突起部18cが溝17aの区間A3内を移動し、係合突起部23aが溝17bの区間B3内を移動するとき、アーム軸21は昇降せず回転する。また、突起部18cが溝17aの区間A4内を移動し、係合突起部23aが溝17bの区間B4内を移動するとき、アーム軸21は回転せず昇降(ここでは、上昇)する。このように、モータ13を動かすと、アーム軸21は、回転、降下、回転、上昇を順に行う。
【0024】
次に、アーム30の詳細を説明する。図2は、アーム軸21に固定されたアーム30の斜視図である。図3は、アーム軸21とアーム30を分離した状態を表す分解斜視図である。図4は、図1のIV-IVでアーム軸21とアーム30を切断した断面図であり、アーム軸21とアーム30の接続状態を表す。
【0025】
アーム30は、アーム軸21の下端部に接続され、アーム軸21と共に、昇降、回転する。アーム30は、略直方体形状をなし、アーム本体31、把持部32、ロック部材33、ロックシャフト34、リンク35、押圧部材36、弾性部材37を有する。アーム30は、いわゆるダブルアームであり、一対の把持部32、一対のロック部材33を有する。
【0026】
アーム本体31は、貫通孔31a、内部空間31b(第2の内部空間)、流路31cを有する。貫通孔31aは、略円柱形状を有し、アーム軸21が挿入、固定される。
【0027】
内部空間31bは、押圧部材36、弾性部材37を配置するための空間である。内部空間31bは、潤滑材Lによって満たされ、ロックシャフト34、リンク35、押圧部材36、弾性部材37等の円滑な動作を図っている。内部空間31bの上側は、上下に可動の押圧部材36によって封止される。
【0028】
流路31cは、アーム軸21の貫通孔21cとアーム本体31の内部空間31bを連通させ、筐体11の内部空間11aからアーム本体31の内部空間31bへの潤滑材Lの供給を可能とする。流路31cの一端側は内部空間31bと接続される。流路31cの他端側はアーム本体31の貫通孔31a内に開口する開口31dを有する。すなわち、アーム本体31の内部空間31bは、流路31c、開口31dを経由して、アーム軸21の貫通孔21c(さらには、軸方向孔21a、貫通孔21b、内部空間11a)と連通する。
【0029】
但し、図3図4に示すように、アーム軸21の軸方向孔21aの下端が開放され、ここに開閉部材41が挿入され、貫通孔21cを開閉する。なお、この詳細は後述する。
【0030】
把持部32は、工具を把持する。ロック部材33は、把持部32に把持された工具をロックする。ロック部材33は、ロックシャフト34、リンク35によって、押圧部材36に接続される。
【0031】
ロックシャフト34の一端は、ロック部材33に接続される。ロックシャフト34の他端は、リンク35の一端と回転可能に接続される。
【0032】
リンク35は、回転軸O1~O3によって他部材と回転可能に接続される。回転軸O1は、リンク35の中央に配置され、リンク35をアーム本体31と回転可能に接続する。回転軸O2は、リンク35の一端側に配置され、リンク35を押圧部材36と回転可能に接続する。回転軸O3は、リンク35の他端側に配置され、リンク35をロックシャフト34の一端と回転可能に接続する。
【0033】
押圧部材36は、封止部361、突出部362、本体部363に区分され、押圧されて下方に変位する。封止部361は、内部空間31bを封止し、内部空間31bから潤滑材Lが漏れることを防止する。突出部362は、アーム本体31から突出する。突出部362を上方から押圧することで、押圧部材36は、下方に変位する。本体部363は、回転軸O2によって、リンク35と接続される。弾性部材37は、押圧部材36を上方に付勢する。
【0034】
リンク35、押圧部材36、弾性部材37は、次のように、ロック部材33を動かす。
【0035】
押圧部材36(突出部362)を押圧すると、押圧部材36は下方に変位し、リンク35の回転軸O2を下げる。リンク35は、回転軸O1を中心に回転し、回転軸O3(ロックシャフト34、ロック部材33)をアーム軸21に向かう方向に動かす。この結果、ロック部材33は、把持部32に把持された工具のロックを解除する(アンロック)。
【0036】
この押圧部材36への押圧を停止すると、弾性部材37の付勢力によって、押圧部材36は上方へと復帰し、ロック部材33は、把持部32に把持された工具をロックする。
【0037】
押圧部材36への押圧の付加、停止によって、工具のアンロック、ロックが行われる。リンク35、弾性部材37は、ロック部材33を動かすロック機構として機能する。
【0038】
ロック機構の動作時には、内部空間31bを封止する押圧部材36(封止部361)が上下に変位し、内部空間31bの容積(ひいては内圧)が変動する。例えば、工具のロック時に、弾性部材37の付勢力によって、押圧部材36とロックシャフト34の双方がアーム30外に突き出す方向に動くことで、内部空間31bの容積が増え、アーム30内(内部空間31b)に負圧が生じる。このような容積(内圧)の変化は、ロックシャフト34とアーム本体31間の隙間等を介する、内部空間31bへの外気の流入の原因となり得る。この結果、外来物(ミスト等)がアーム30の内部空間31bに入り、ロック機構の潤滑不良、ひいてはその破損を招くおそれがある。
【0039】
しかし、本実施形態では、アーム30の内部空間31bは、連通孔11b(エア抜きダクト)を有する筐体11の内部空間11aと連通している。このため、内部空間31bの容積変化は、筐体11側で吸収される。
【0040】
すなわち、内部空間31bの容積変化に伴い、筐体11の内部空間11aからアーム30の内部空間31bへと潤滑材Lが流入、流出する。この結果、内部空間31bには、常にその容積に見合った量の潤滑材Lが配置され、内部空間31bの容積が変化しても、内部空間31bに外気等が流入することはなくなる。
【0041】
このとき、内部空間31bの容積変化は、内部空間11a内の潤滑材Lの量の増減をもたらすが、この増減は連通孔11bから内部空間11aへの大気の吸排気によって、吸収される。
【0042】
仮にこの大気にミストが含まれたとしても、この大気の吸排気の量は、内部空間11aの大きさ(潤滑材Lの量)を考えると微少であり、カム機構への影響は極めて小さい。また、大気に含まれるミスト等を除去するフィルタを連通孔11bに設置することで、この影響をさらに低減することができる。これに替え、またはこれと共に、連通孔11bから加工室(工具交換装置10等が設置される部屋)の外まで延びる配管を用いて、ミスト等の侵入を防いでもよい。
【0043】
このように、筐体11の内部空間11aとアーム30の内部空間31bをアーム軸21の軸方向孔21a、貫通孔21b、21cによって連通させ、潤滑材Lが流通可能である。この結果、内部空間31bへの外気等の流入を防止でき、かつカム17等を潤滑する潤滑材Lをアーム30にも供給できる。このように、内部空間31bへの外来物の侵入を防止し、かつ内部空間31bに潤滑材Lを供給することで、ロック部材33のロック機構(リンク35、弾性部材37)の長寿命化を図ることができる。
【0044】
図3図4に示すように、アーム軸21の下端に、開閉部材41、カバー42が配置される。
【0045】
開閉部材41は、全体として、有底の筒形状をなし、開閉部本体411、蓋部412を有し、アーム軸21の貫通孔21c(第1の貫通孔)を開閉する。開閉部本体411は、略円筒形状であり、軸方向孔41aおよび一対の貫通孔41b(第2の貫通孔)を有する。貫通孔41bは、開閉部本体411の内周(軸方向孔41a)と外周を貫通する。開閉部本体411は、その外周がアーム軸21の内周と対応し、アーム軸21の内周内に挿入される。蓋部412は、略円柱形状を有し、アーム軸21の下端を封止する。
【0046】
通常は、一対の貫通孔41bは、アーム軸21の一対の貫通孔21cと向き合うように配置される。この場合、アーム軸21の軸方向孔21aと貫通孔21cは、開閉部本体411の軸方向孔41a、貫通孔41bを通じて繋がる。一方、開閉部材41をアーム軸21に対して回転し、アーム軸21の貫通孔21cと開閉部本体411の貫通孔41bが向き合わない状態にすることができる。このとき、アーム軸21の軸方向孔21aと貫通孔21c間は、開閉部本体411の外周面によって塞がれる。
【0047】
このように、開閉部材41を回転することで、貫通孔21c(第1の貫通孔)と貫通孔41b(第2の貫通孔)の連通、非連通が切り換わり、アーム軸21の貫通孔21cを開閉できる。
【0048】
カバー42は、蓋部412を覆うが、蓋部412の底面を露出する開口42aを備える。このため、アーム軸21にアーム30の全ての部材を取り付けた状態で、カバー42の開口42aから蓋部412の底面にアクセスして、開閉部材41を回転し、アーム軸21の貫通孔21cを開閉できる。例えば、蓋部412の底面に溝を形成し、所定の工具(例えば、ドライバ)をこの溝に係合して、回転できる。
【0049】
開閉部材41は、アーム軸21からアーム30を取り外す際に利用できる。既述のように、通常はアーム軸21の貫通孔21cは開かれている。この状態で、アーム軸21からアーム30を取り外すと、筐体11内の潤滑材Lが貫通孔21cから漏れ出す可能性がある。すなわち、アーム軸21からアーム30を取り外す前に、開閉部材41を回転させて貫通孔21cを閉じ、アーム30の取り外し時(組み立て、保守時)の潤滑材Lの漏れを防止できる。貫通孔21cを閉じたら、カバー42を取り外し、さらにアーム軸21からアーム30を取り外す。
【0050】
〔実施形態から得られる技術的思想〕
上記各実施形態から把握しうる技術的思想について、以下に記載する。
【0051】
〔1〕実施形態に係る工具交換装置(10)は、第1の内部空間(11a)が形成される筐体(11)と、工具を把持するための把持部(32)を有し、第2の内部空間(31b)が形成される、アーム(30)と、前記把持部(32)に把持される工具を押圧するためのロック部材(33)と、前記アーム(30)に接続されるアーム軸(21)と、前記第1の内部空間(11a)内に配置され、前記アーム軸(21)を回転または昇降させるカム機構(カム17、リンク18、回転係合部23、昇降係合部26)と、前記第2の内部空間(31b)内に配置され、前記ロック部材(33)を動かすロック機構(リンク35、弾性部材37)と、を備える。前記筐体(11)は、前記第1の内部空間(11a)を外部と連通させる第1の連通孔(11b)を有し、前記アーム軸(21)は、前記第1の内部空間(11a)と前記第2の内部空間(31b)を連通させる第2の連通孔(軸方向孔21a)を有する。これにより、第1の内部空間(11a)と前記第2の内部空間(31b)を連通させることで、前記第2の内部空間(31b)への外来物の侵入を防止し、ロック機構の長寿命化を図ることができる。
【0052】
〔2〕前記第1の連通孔(11b)は、大気が流通し、前記第2の連通孔(軸方向孔21a)は、潤滑材(L)が流通する。これにより、第1の内部空間(11a)内での潤滑材(L)の量の増減を吸収できる。
【0053】
〔3〕前記第2の連通孔(軸方向孔21a)は、前記アーム軸(21)の軸方向に沿って形成される軸方向孔(21a)と、前記軸方向孔(21a)と連通し、前記アーム軸(21)の側面に開口する、第1の貫通孔(21c)と、を有する。前記工具交換装置(10)は、前記第1の貫通孔(21c)を開閉する開閉部材(41)をさらに備える。これにより、開閉部材(41)によって第1の貫通孔(21c)を閉じ、アーム(30)の取り外し時の潤滑材(L)の漏れを防止できる。
【0054】
〔4〕前記開閉部材(41)は、前記軸方向孔(21a)内に回転可能に挿入される、有底の筒状部材(41)を有し、前記筒状部材(41)には、その内外を貫通する第2の貫通孔(41b)が形成され、前記筒状部材(41)を回転することで、前記第1の貫通孔(21c)と前記第2の貫通孔(41b)の連通、非連通が切り換わる。これにより、第1の貫通孔(21c)の開閉が容易となる。
【符号の説明】
【0055】
10…工具交換装置 11…筐体
11a、31b…内部空間 11b…連通孔
13…モータ 14…減速機構
17…カム 18、35…リンク
21…アーム軸 21a…軸方向孔
21b、21c、31a、41b…貫通孔 22…筒状体
23…回転係合部 26…昇降係合部
30…アーム 31…アーム本体
31c…流路 31d、42a…開口
32…把持部 33…ロック部材
34…ロックシャフト 36…押圧部材
37…弾性部材 41…開閉部材
41a…軸方向孔 42…カバー
図1
図2
図3
図4