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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】印刷装置
(51)【国際特許分類】
   B65H 31/00 20060101AFI20240116BHJP
   B65H 31/02 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
B65H31/00 Z
B65H31/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020039275
(22)【出願日】2020-03-06
(65)【公開番号】P2021138519
(43)【公開日】2021-09-16
【審査請求日】2022-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000005049
【氏名又は名称】シャープ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100168217
【弁理士】
【氏名又は名称】大村 和史
(72)【発明者】
【氏名】金光 大樹
(72)【発明者】
【氏名】大石 真嗣
【審査官】羽鳥 公一
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-086965(JP,U)
【文献】特開2013-234058(JP,A)
【文献】特開平03-293257(JP,A)
【文献】特開平07-333818(JP,A)
【文献】実開昭60-072443(JP,U)
【文献】実開昭61-065570(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65H 5/00
B65H 5/04
B65H 5/08-5/20
B65H 5/24-5/38
B65H 9/00-9/20
B65H 13/00-15/02
B65H 29/52
B65H 31/00-31/40
G03B 27/02-27/30
G03G 15/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録紙に画像を印刷する印刷ユニット、
前記印刷ユニットの前面に形成され、印刷済みの記録紙を排出する排紙部、
前記排紙部の下方であって、当該排紙部よりも前面側に配置される積載トレイ、および
前記排紙部の下方に設けられ、前面側に向かって下り勾配となる傾斜部を備え、
前記積載トレイの後壁は、前記傾斜部の下方に設けられ、下方に向かうにしたがって背面側に向かって下り勾配となるように形成され、
前記積載トレイの前壁は、前記傾斜部を下方に延伸した仮想線の後方から、当該仮想線よりも前方まで、前面側に向かって上り勾配となるように形成され、
前記前壁の前面側の少なくとも一部は、他の部分よりも水平方向に対する傾斜角度が大きくなる、印刷装置。
【請求項2】
前記前壁は、水平方向に対して所定角度で傾斜する第1傾斜面と、当該第1傾斜面よりも上方に配置され、当該第1傾斜面よりも水平方向に対する傾斜角度が大きい第2傾斜面とを含み、
前記第2傾斜面は、前記仮想線よりも前面側に位置する、請求項1に記載の印刷装置。
【請求項3】
前記前壁に設けられ、前記第1傾斜面から上方に突出する突出部をさらに備え、
前記第2傾斜面は、前記突出部の前記傾斜部側に形成される、請求項2記載の印刷装置。
【請求項4】
前記突出部は、前記前壁における記録紙の幅方向の一部の領域に形成され、
前記第1傾斜面は、前記突出部が形成される領域を除いて、前記前壁の前端部まで延びる、請求項3記載の印刷装置。
【請求項5】
前記排紙部と前記傾斜部との間に設けられ、前記排紙部から排出された記録紙を前記積載トレイへ案内する排紙ガイドをさらに備え、
前記積載トレイは、前記排紙部に対して左右方向において一方側に偏倚する位置に配置され、
前記排紙ガイドは、前記記録紙の幅方向の端部を案内するための、前記左右方向の他方側の第1側壁および前記左右方向の前記一方側の第2側壁を含み、
前記突出部は、前記第1側壁から記録紙の幅方向の長さの分離れた所定位置よりも前記第1側壁側から、当該所定位置を超えて前記第2側壁側に至るまで形成される、請求項3または4記載の印刷装置。
【請求項6】
前記第2傾斜面の上端部から前記前壁の後端部までの距離は、前記排紙部から排紙される最小の記録紙の排紙方向の長さよりも短い、請求項2から5までのいずれかに記載の印刷装置。
【請求項7】
前記前壁は、前面側に向かうに従って水平方向に対する傾斜角度が大きくなるように湾曲する、請求項1記載の印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、印刷装置に関し、特にたとえば、画像が印刷された印刷済みの記録紙が積載される積載トレイが、記録紙排出部の前面側でかつ下方側に配置される、印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の背景技術の一例が特許文献1に開示される。背景技術の画像処理装置は、内部に昇華型プリンタが配置される装置本体と、装置本体の前面に軸支されて開閉可能に設けられる蓋体とを備え、蓋体の前面には、硬貨が返却される硬貨返却口と、昇華型プリンタで印刷され、排紙トレイ(積載トレイ)に排紙された印刷済みの記録用紙を取り出すための記録用紙排紙口(記録用紙取出口)とが設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-234058号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
背景技術のように、ロール紙から繰り出された記録紙に画像を印刷する印刷ユニット(所謂ロール紙プリンタ)においては、印刷済みの記録紙のカール量は、ロール紙の芯の部分に近づくに従って大きくなるという特性がある。また、記録紙のロール方向における長さが大きいほど、カール量は大きくなる。このため、印刷済みの記録紙には、カール量の大きいものと、カール量の小さいものとが含まれる。
【0005】
したがって、図16に示すように、カール量の大きい記録紙の上端部は、積載トレイの載置面(積載面)の反対側に反る。このため、カール量の大きい記録紙を取り出すために指を差し込む方向Cは、カールしていないまたはカール量の小さい記録紙を取り出すために指を差し込む方向NCよりも上方になり、記録紙が取り出しにくくなるという問題がある。
【0006】
それゆえに、この発明の主たる目的は、新規な、印刷装置を提供することである。
【0007】
この発明の他の目的は、記録紙のカール量にかかわらず、積載トレイからの記録紙の取出し性を向上させることができる、印刷装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、記録紙に画像を印刷する印刷ユニット、印刷ユニットの前面に形成され、印刷済みの記録紙を排出する排紙部、排紙部の下方であって、当該排紙部よりも前面側に配置される積載トレイ、および排紙部の下方に設けられ、前面側に向かって下り勾配となる傾斜部を備え、積載トレイの後壁は、傾斜部の下方に設けられ、下方に向かうにしたがって背面側に向かって下り勾配となるように形成され、積載トレイの前壁は、傾斜部を下方に延伸した仮想線の後方から、当該仮想線よりも前方まで、前面側に向かって上り勾配となるように形成され、前壁の前面側の少なくとも一部は、他の部分よりも水平方向に対する傾斜角度が大きくなる、印刷装置である。
【0009】
第2の発明は、第1の発明に従属する印刷装置であって、前壁は、水平方向に対して所定角度で傾斜する第1傾斜面と、当該第1傾斜面よりも上方に配置され、当該第1傾斜面よりも水平方向に対する傾斜角度が大きい第2傾斜面とを含み、第2傾斜面は、仮想線よりも前面側に位置する。
【0010】
第3の発明は、第2の発明に従属する印刷装置であって、前壁に設けられ、第1傾斜面から上方に突出する突出部をさらに備え、前記第2傾斜面は、は、突出部の傾斜部側に形成される。
【0011】
第4の発明は、第3の発明に従属する印刷装置であって、突出部は、前壁における記録紙の幅方向の一部の領域に形成され、第1傾斜面は、突出部が形成される領域を除いて、前壁の前端部まで延びる。
【0012】
第5の発明は、第3または第4の発明に従属する印刷装置であって、排紙部と傾斜部との間に設けられ、排紙部から排出された記録紙を積載トレイへ案内する排紙ガイドをさらに備え、積載トレイは、排紙部に対して左右方向において一方側に偏倚する位置に配置され、排紙ガイドは、記録紙の幅方向の端部を案内するための、左右方向の他方側の第1側壁および左右方向の一方側の第2側壁を含み、突出部は、第1側壁から記録紙の幅方向の長さの分離れた所定位置よりも第1側壁側から、当該所定位置を超えて第2側壁側に至るまで形成される。
【0013】
第6の発明は、第2の発明から第5の発明までのいずれかに従属する印刷装置であって、第2傾斜面の上端部から前壁の後端部までの距離は、排紙部から排紙される最小の記録紙の排紙方向の長さよりも短い。
【0014】
第7の発明は、第1の発明に従属する印刷装置であって、前壁は、前面側に向かうに従って水平方向に対する傾斜角度が大きくなるように湾曲する。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、記録紙のカール量にかかわらず、積載トレイからの記録紙の取出し性を向上させることができる。
【0016】
この発明の上述の目的,その他の目的,特徴および利点は、図面を参照して行う以下の実施例の詳細な説明から一層明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1はこの発明の一実施例である画像形成システムの外観構成を概略的に示す正面図である。
図2図2図1に示す情報処理装置の外観構成を概略的に示す斜視図である。
図3図3は排紙部、排紙ガイドおよび貨幣処理部の構成を概略的に示す斜視図である。
図4図4は排紙ガイドの構成を概略的に示す斜視図である。
図5図5は排紙部および排紙ガイドの構成を概略的に示す断面図である。
図6図6は排紙部および排紙ガイドの構成を概略的に示す平面図である。
図7図7は排紙ガイドおよび積載トレイの構成を概略的に示す斜視図である。
図8図8はプリント取出口および積載トレイの構成を概略的に示す斜視図である。
図9図9は排紙ガイドおよび積載トレイの構成を概略的に示す断面図である。
図10図10は積載トレイに形成されるカール収容空間を概略的に示す断面図である。
図11図11は積載トレイの寸法および形状を示す平面図である。
図12図12は積載トレイの寸法および形状を示す正面図である。
図13図13は積載トレイに記録紙が積載された状態を示す断面図である。
図14図14は積載トレイに記録紙が積載された状態を示す斜視図である。
図15図15は第2実施例における積載トレイの構成を概略的に示す斜視図である。
図16図16は従来技術の積載トレイの構成を概略的に示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1実施例]
図1を参照して、この発明の第1実施例である画像形成システム100は、情報処理装置10および画像形成装置70を含む。
【0019】
情報処理装置10は、スーパーマーケット、レストランまたはコンビニエンスストアなどの店舗、並びに駅、バスターミナル、空港、役所または図書館などの公共施設に配置されるマルチメディアキオスク(MMK)端末である。この情報処理装置10は、配置される場所に応じて各種情報または所定の商品若しくはサービスを利用者(ユーザ)に提供する。たとえば、情報処理装置10は、写真等を印刷(プリント)するサービスをユーザに提供することができる。したがって、情報処理装置10は、印刷装置(プリンタ)であるともいえる。また、詳細は後述するが、情報処理装置10は、画像形成装置70と協働して、コピー、ファクス(FAX)、スキャンおよび印刷などの所定のサービスをユーザに提供することもできる。
【0020】
なお、この明細書では、ユーザの立ち位置に対向する面、つまり後述するディスプレイ14の表示面が設けられる側の面を前面(正面)として情報処理装置10およびその構成部材の前後方向(奥行方向)を規定し、情報処理装置10およびその構成部材の左右方向(横方向)は、ユーザから情報処理装置10を見た状態を基準として規定する。これらのことは、画像形成装置70についても同様である。
【0021】
図1および図2に示すように、情報処理装置10は、操作部であるタッチパネル12付きのディスプレイ14、記憶媒体接続部16、紙片用プリンタ18、符号読取部20、近距離通信部22、貨幣処理部24、および写真印刷部26を含む装置本体28を備える。また、装置本体28の前面には、前ドア(前扉)30が設けられる。たとえば、前ドア30は、ヒンジなどを用いて装置本体28に開閉可能に取り付けられる。
【0022】
タッチパネル12付きのディスプレイ14は、装置本体28(情報処理装置10)の上面を形成する上部パネル28aに設けられる。ただし、上部パネル28aの上面(装置本体28の上面)は、後方(情報処理装置10の背面側)から前方(情報処理装置10の前面側)に向かって下り勾配となる傾斜面となっており、タッチパネル12付きのディスプレイ14は、上部パネル28aの前後方向の略中央に回動可能に設けられる。
【0023】
タッチパネル12は、汎用のタッチパネルであり、静電容量方式、電磁誘導方式、抵抗膜方式、赤外線方式など、任意の方式のものを用いることができる。この第1実施例では、タッチパネル12としては、静電容量方式のタッチパネルが用いられ、ディスプレイ14の表示面上にタッチパネル12が設けられる。ただし、タッチパネル12とディスプレイ14とが一体的に形成されたタッチパネルディスプレイが用いられてもよい。ディスプレイ14としては、たとえばLCDまたはEL(Electro-Luminescence)ディスプレイなどを用いることができる。
【0024】
記憶媒体接続部16は、各種の記憶媒体を装着するための装着部を含む。記憶媒体接続部16に接続可能な記憶媒体は、光ディスク(たとえばCD-R、DVD-RおよびBD-Rなど)および持ち運びが可能な可搬型の不揮発性メモリ(たとえばUSBメモリ、SDメモリカードおよびメモリースティックなどのフラッシュメモリ)などがある。本実施例では、記憶媒体接続部16は、光ディスク接続部(光学ドライブ)およびメモリ接続部(メモリスロット部)を含み、光ディスクは、光ディスク接続部に装着され、可搬型の不揮発性メモリは、メモリ接続部に装着される。
【0025】
紙片用プリンタ18は、たとえばサーマルプリンタ(感熱式プリンタ)またはドットインパクトプリンタであり、レシート、ジャーナルまたはクーポン券などの画像が印刷された紙片を発行する。具体的には、紙片用プリンタ18は、ロール紙上に各種の文字列、画像、コードパターン(バーコードなど)などを印刷し、印刷済の紙片を排紙部(排紙口)18aから排出(排紙)する。
【0026】
符号読取部20は、たとえばレーザスキャナまたはカメラなどを含み、商品、商品の包装、カード、レシートなどに付された符号またはユーザ端末(携帯端末)の画面に表示された符号などを読み取ることができる。符号読取部20で読み取ることができる符号には、バーコード(1次元バーコード)または2次元コード(たとえばQRコード(登録商標)、マイクロQRコード、DataMATRIX、MaxiCODEおよびVeriCODEなど)などがある。
【0027】
近距離通信部22は、たとえば、ISO/IEC18092等の通信規格(いわゆるNFC(Near Field Communication))に従って、通信対象との間で無線による非接触のデータ通信を行うものである。たとえば、近距離通信部22は、Felica(登録商標)等の通信規格に従って、ICカード、携帯端末(フィーチャーフォン、スマートフォンおよびタブレットPC等)、身分証、会員証または社員証などの通信対象との間で無線による非接触のデータ通信を行う。近距離通信部22の通信可能距離は、数cm~数m程度である。たとえば、近距離通信部22は、通信対象に対して、通信対象に記憶されたデータの読み出しを指示する信号(読出し命令)を送信する。通信対象は、読出し命令に対する応答としてデータを近距離通信部22に送信する。また、近距離通信部22は、通信対象に書き込むデータ(書き込みデータ)とともに書き込みを指示する信号(書き込み命令)を送信する。通信対象は、書き込み命令に従って、受信した書き込みデータを記憶部に書き込む(記憶する)。
【0028】
また、近距離通信部22がデータ通信を行う通信対象には、所謂電子マネー媒体が含まれる。電子マネー媒体とは、ICカードおよび携帯端末等であって、少なくとも電子マネーの残高(電子マネー残高)についてのデータを含む電子マネーによる決済(電子決済)に係るデータ(電子マネーデータ)を記憶する記憶部を備える媒体のことである。この場合、近距離通信部22は、電子マネー媒体に対して、電子マネー媒体に記憶された電子マネーデータの読み出しを指示する読出し命令を送信する。電子マネー媒体は、読出し命令に対する応答として電子マネーデータを近距離通信部22に送信する。また、近距離通信部22は、電子マネー媒体に書き込む書き込みデータとともに書き込みを指示する書き込み命令を送信する。電子マネー媒体は、書き込み命令に従って、受信した書き込みデータを記憶部に記憶する。このように、近距離通信部22は、電子マネー読取部としても機能する。
【0029】
貨幣処理部(釣銭機)24は、貨幣投入部24aおよび硬貨返却口24bを含む。なお、貨幣投入部24aおよび硬貨返却口24bを含む貨幣処理部24の構成部品は、前ドア30に取り付けられる。貨幣投入部24aは、硬貨投入口、紙幣投入口および釣銭返却レバー等を含み、前ドア30の上端部に配置される。一方、硬貨返却口24bは、貨幣投入部24aよりも下方であって、貨幣投入部24aに対して所定の間隔を隔てて配置される。
【0030】
硬貨投入口から投入された硬貨および紙幣投入口から投入された紙幣は、それぞれ種類毎に分類され、釣銭機本体に収容される。詳しくは、釣銭機本体に設けられる貨幣格納部に収容される。貨幣格納部は、硬貨用の格納部および紙幣用の格納部を含む。硬貨または紙幣が投入されると、硬貨用の格納部に収容された硬貨の種類および枚数と、紙幣用の格納部に収容された紙幣の種類および枚数とに応じて、投入金額が算出される。情報処理装置10において所定のサービス等が実行されると、そのサービス等の内容に応じた費用(サービス等の提供に係る料金)が投入金額から減算され、投入金額から料金を差し引いて残った金額(残額)が算出される。また、釣銭返却レバーが操作されると、残額に応じて、硬貨または紙幣が返却される。ただし、硬貨は、硬貨返却口24bから返却され、紙幣は、紙幣投入口から返却される。
【0031】
ただし、貨幣処理部24における貨幣での決済に代えて、またはこれに加えて、電子決済が行われることがある。たとえば、サービス等が選択された後に、情報処理装置10のディスプレイ14に複数の電子マネーのブランド(種類)を表示して、ユーザに決済用の電子マネーを選択させ、決済用の電子マネーを利用して決済を行い、決済が完了されることでサービス等が提供される。
【0032】
また、電子決済では、情報処理装置10において利用可能な電子マネーに対応する電子マネー媒体が近距離通信部22にかざされると、近距離通信部22によって電子マネー媒体に含まれる電子マネーデータが読み取られる。このとき、電子マネーデータに含まれる電子マネー残高が読み取られる。そして、提供されるサービス等の内容に応じた費用が電子マネー残高から減算される。
【0033】
写真印刷部26は、たとえば昇華型プリンタまたはインクジェットプリンタ(特に染料インクを用いるインクジェットプリンタ)であり、光沢紙等の写真用の用紙(写真用紙)またはラベル・シール用の用紙(シール紙)上に画像を印刷する。シール紙は、画像が印刷される面(印刷面)の裏面に、粘着剤(のり)が塗布された粘着層が形成され、この裏面には、容易に剥がせる剥離紙(台紙または裏紙)が接着されている。
【0034】
また、写真印刷部26は、上下方向に積み重ねられた第1印刷ユニット260と第2印刷ユニット262とを含む。本実施例では、第1印刷ユニット260が下側(下段)に配置され、第2印刷ユニット262が上側(上段)に配置される。さらに、本実施例では、第1印刷ユニット260は、写真用紙上に画像を印刷する所謂写真プリンタであり、第2印刷ユニット262は、シール紙上に画像を印刷する所謂シールプリンタである。
【0035】
また、第1印刷ユニット260および第2印刷ユニット262には、写真用紙またはシール紙(以下、まとめて「記録紙」ということがある。)がロール状に巻かれた状態(所謂ロール紙の状態)でセットされている。第1印刷ユニット260および第2印刷ユニット262では、記録紙供給装置(図示せず)によって繰り出されるロールの記録紙の一部を任意の大きさで切断し、切断された記録紙に画像が印刷(形成)される。
【0036】
ここで、写真印刷部26で記録紙に画像を形成するための画像データとしては、記憶媒体接続部16に接続された記憶媒体に記憶された画像データ、またはサーバ等の外部コンピュータから送信された画像データ等が利用される。また、写真印刷部26で印刷される記録紙のサイズは、L判サイズ(89mm×127mm)、スクエア(正方形)サイズ(127mm×127mm)または2L判サイズ(178mm×127mm)などである。
【0037】
写真印刷部26(第1印刷ユニット260または第2印刷ユニット262)で印刷された記録紙は、装置本体28(前ドア30)の内部に形成された排紙通路Rを通って積載トレイ(写真用の排紙トレイ)32(図3図7等参照)に排出される。前ドア30には、積載トレイ32と、積載トレイ32に積載された記録紙を取り出すためのプリント取出口26aが設けられ、プリント取出口26aには、開閉可能な蓋体26bが設けられる。なお、排紙通路Rおよび積載トレイ32の具体的な構成は後述する。
【0038】
図1に戻って、画像形成装置(第1画像形成装置に相当)70は、印刷(プリント)機能、複写機能、スキャナ機能およびファクシミリ機能などを有する複合機(MFP:Multifunction Peripheral)である。
【0039】
画像形成装置70は、画像読取部72、画像形成部74、給紙部76および排紙トレイ78を含む装置本体80を備える。ただし、画像形成装置70は、情報処理装置10の近傍に設置される。本実施例では、画像形成装置70は、情報処理装置10の右側に隣接して設けられる。
【0040】
画像読取部72は、透明材によって形成される原稿載置台を備え、装置本体80に内蔵される。原稿載置台の上方には、ヒンジ等を介して原稿押えカバー72aが開閉自在に取り付けられる。
【0041】
また、画像読取部72は、光源、複数のミラー、結像レンズおよびラインセンサ等を備える。この画像読取部72は、原稿表面を光源によって露光し、原稿表面から反射した反射光を複数のミラーによって結像レンズに導く。そして、結像レンズによって反射光をラインセンサの受光素子に結像させる。ラインセンサでは、受光素子に結像した反射光の輝度または色度が検出され、原稿表面の画像に基づく読取画像データが生成される。ラインセンサとしては、CCD(Charge Coupled Device)またはCIS(Contact Image Sensor)等が用いられる。
【0042】
画像形成部74は、装置本体80に内蔵され、画像読取部72の下方に設けられる。この画像形成部74は、感光体ドラム、帯電装置、露光装置、現像装置、転写装置および定着装置などを備える電子写真方式の画像形成部である。また、画像形成部74は、カラーのプリント機能を備えており、Y(イエロー)、M(マゼンタ)、C(シアン)、K(ブラック)の各色について、感光体ドラム、帯電装置および現像装置等を含む画像形成ステーションが構成される。たとえば、画像形成部74は、給紙部76等から搬送される所定の記録媒体(用紙)上に電子写真方式によって画像を形成し、画像形成済みの用紙を画像読取部72および画像形成部74の間に設けられる排紙トレイ78に排出する。
【0043】
ただし、用紙上に画像を形成するための印刷画像データとしては、画像読取部72で読み取った読取画像データ、情報処理装置10から送信された画像データ、または外部コンピュータから送信された画像データ等が利用される。なお、画像形成部74は、電子写真方式の画像形成部に限定されない。たとえば、画像形成部74は、たとえばインクジェット式の画像形成部であっても良い。
【0044】
また、図示は省略するが、情報処理装置10の装置本体28には、制御部、主記憶部および通信モジュール等が内蔵される。さらに、画像形成装置70の装置本体80にも同様に、制御部、主記憶部および通信モジュール等が内蔵される。情報処理装置10の制御部および画像形成装置70の制御部のそれぞれは、CPUおよびメモリ等を含む。情報処理装置10の制御部は、情報処理装置10の各部位に制御信号を送信し、情報処理装置10に種々の動作を実行させ、画像形成装置70の制御部は、画像形成装置70の各部位に制御信号を送信し、画像形成装置70に種々の動作を実行させる。ただし、本実施例では、情報処理装置10の制御部は、画像形成システム100の主制御部として機能し、画像形成装置70の制御部は、画像形成システム100の副制御部として機能する。すなわち、主制御部を備える情報処理装置10が画像形成システム100の主制御装置(マスター装置)として機能する。
【0045】
さらに、情報処理装置10の主記憶部および画像形成装置70の主記憶部のそれぞれは、ROMまたはHDD等を含み、情報処理装置10の制御部および画像形成装置70の制御部のそれぞれが画像形成システム100の各部位の動作を制御するための制御プログラム、各種情報についてのデフォルト値および各種の画面についての表示画像データ等を適宜記憶する。情報処理装置10の通信モジュールおよび画像形成装置70の通信モジュールのそれぞれは、インターネットなどのネットワークに接続するための通信回路を含む。この通信回路は、有線通信回路または無線通信回路であり、制御部からの指示に従って、ネットワークを介して、外部コンピュータ(外部端末)と通信する。なお、情報処理装置10と画像形成装置70とは、それぞれの通信モジュールを介して、互いに通信可能である。
【0046】
次に、図3図7を参照して、写真印刷部26、積載トレイ32および排紙通路Rの構成について説明する。
【0047】
図3~5に示すように、第1印刷ユニット260は、印刷済みの記録紙(第1記録紙)を排出する第1排紙部260aを側面部に有する。また、第2印刷ユニット262も同様に、印刷済みの記録紙(第2記録紙)を排出する第2排紙部262aを側面部に有する。これら第1排紙部260aおよび第2排紙部262aは、横長の矩形枠状に形成され、同じ方向を向くように配置される。この実施例では、第1排紙部260aおよび第2排紙部262aのそれぞれは、第1印刷ユニット260および第2印刷ユニット262のそれぞれの前面に配置される。
【0048】
次に、積載トレイ32の位置について説明する。図3および図5に示すように、積載トレイ32は、第1排紙部260aおよび第2排紙部262aから排出された記録紙(第1記録紙および第2記録紙)を受け止めて積載(収容)しておく部位であり、第1排紙部260aおよび第2排紙部262aの下方に設けられる。また、積載トレイ32の上部空間は、硬貨返却口24bの右隣りに横並びで配置されるプリント取出口26aに連通しており、積載トレイ32に積載された記録紙は、この上部空間を介してプリント取出口26aから取り出すことが可能である。このように、プリント取出口26aが硬貨返却口24bと横並びで配置されることによって、硬貨返却口24bの下側にプリント取出口26aを配置することと比較して、記録紙の取り忘れを低減できる。また、情報処理装置10が載置される床面からプリント取出口26aまでの距離L1(図5参照)を大きくして、プリント取出口26aをできるだけ高い場所に配置することができ、ユーザが腰をかがめる量が少なくなり、記録紙の取り出しが容易となる(記録紙の取出性が向上する)。
【0049】
ただし、図5および図6に示すように、積載トレイ32は、第1排紙部260aおよび第2排紙部262aに対して左右方向(第1排紙部260aおよび第2排紙部262aの排紙方向と直交する方向、言い換えると第1排紙部260aおよび第2排紙部262aから排出され、落下する記録紙の幅方向)および前後方向(落下する際の記録紙の厚み方向)において異なる(オフセットされた)位置に配置される。なお、記録紙の幅方向は、排紙通路Rによってガイドされる記録紙の移動方向と交差する方向ということもできる。
【0050】
本実施例では、図5に示すように、積載トレイ32は、前後方向においては第1排紙部260aおよび第2排紙部262aよりも前面側(前寄りの位置)に配置される。このようにするのは、第1印刷ユニット260および第2印刷ユニット262は、貨幣処理部24を避けるために貨幣処理部24の前後方向の厚み分、前ドア30の前面から背面側に所定距離離れて配置する必要があり、その一方で、積載トレイ32に積載された記録紙を取り出しやすくするために、積載トレイ32はできるだけ前面側に(前ドア30の前面との距離に近づくように)配置する必要があるからである。
【0051】
また、図6に示すように、積載トレイ32は、左右方向においては第1排紙部260aおよび第2排紙部262aよりも右側(右寄りの位置)に配置される。第1印刷ユニット260および第2印刷ユニット262は、左右方向において装置本体28(前ドア30)の略中央に配置されており、第1印刷ユニット260および第2印刷ユニット262の左右方向の中心位置PCは、装置本体28の左右方向の中心位置と略同じである。一方、積載トレイ32の左右方向の中心位置TCは、印刷ユニット(装置本体28)の中心位置PCよりも右側に位置する。このようにするのは、貨幣処理部24と写真印刷部26とが左右方向において重なる(オーバーラップする)ように配置されているので、貨幣処理部24の構造物を避ける位置に積載トレイ32を配置する必要があることに加え、積載トレイ32に対応するプリント取出口26aと硬貨返却口24bとを横並びで配置するためである。
【0052】
図3図7に示すように、積載トレイ32の上方には、上下開口の矩形筒状に形成される排紙ガイド34が設けられる。排紙ガイド34は、第1排紙部260aおよび第2排紙部262aから排出された記録紙を積載トレイ32に導く(ガイドする)ための排紙通路(ガイド経路)Rを形成するものである。排紙ガイド34の下端(下部開口)は、積載トレイ32の上部開口に連通しており、第1排紙部260a又は第2排紙部262aから排紙された記録紙は、排紙ガイド34内に形成される排紙通路Rを起立姿勢で落下移動することで、積載トレイ32に導かれる。
【0053】
この排紙ガイド34は、排紙通路Rを落下する記録紙の幅方向側縁を挟むようにして記録紙の幅方向の端部(左右の端部)を案内する第1側壁40および第2側壁42、排紙通路Rを落下する記録紙の表裏面を挟むようにして記録紙の表面または裏面を案内する第1案内壁44および第2案内壁46を備える。
【0054】
第1側壁40は、排紙ガイド34の左壁を構成し、第2側壁42は、排紙ガイド34の右壁を構成する。したがって、第1側壁40は、記録紙の左端部を案内し、第2側壁42は、記録紙の右端部を案内する。上述したように、積載トレイ32は、左右方向においては第1排紙部260aおよび第2排紙部262aよりも右側(右寄り)に配置されるので、第1側壁40は、左右方向において積載トレイ32から遠い側(積載トレイ32の反対側)の側壁であり、第2側壁42は、左右方向において積載トレイ32に近い側(積載トレイ32側)の側壁である。
【0055】
第1案内壁44は、排紙ガイド34の後壁を構成し、第1排紙部260aおよび第2排紙部262aと対向して上下方向に延びるように設けられる。第2案内壁46は、排紙ガイド34の前壁を構成する。ここで、第1案内壁44は、第2案内壁46と所定間隔L2(図5および図6参照)で対向するように設けられ、第2案内壁46よりも第1排紙部260aおよび第2排紙部262a側に配置される。第2案内壁46の用紙案内面には、左右方向(つまり記録紙の幅方向)に所定間隔で並び、上下方向に延びる複数の案内リブ(突条)が形成される。これらの案内リブは、第1案内壁44に設けてもよい。
【0056】
第1案内壁44と第2案内壁46と間の間隔(つまり記録紙の厚み方向における排紙通路Rの大きさ)L2は、写真印刷部26に適用される最大サイズの記録紙(たとえば2L判サイズ)が最大量カールした場合でも通過できる程度の大きさに設定される。一方で、第1案内壁44と第2案内壁46と間の間隔L2を大きくし過ぎると、情報処理装置10(装置本体28)の前後方向の大型化を招くという問題がある。このため、本実施例では、第1案内壁44と第2案内壁46と間の間隔L2は、想定される最大カール量の2L判サイズの記録紙が通過でき、かつ、情報処理装置10が必要以上に大きくならない程度の大きさに設定されており、たとえば80mmである。
【0057】
また、第1案内壁44には、第1排紙部260aと対向する位置に横長矩形状の開口が形成されており、この開口が第1排紙部260aから排出された記録紙を受け入れる第1受入口36となる。さらに、排紙ガイド34の上部開口は、第2排紙部262aから排出された記録紙を受け入れるための第2受入口38となる。
【0058】
また、図7図9に示すように、排紙通路(ガイド経路)Rには、第1排紙部260aおよび第2排紙部262aに対してオフセット配置された積載トレイ32に、記録紙をスムーズに導くための、第1傾斜部48、第2傾斜部50、対向傾斜部54および拡大傾斜部56が設けられる。第1傾斜部48、第2傾斜部50、対向傾斜部54および拡大傾斜部56のそれぞれは、少なくとも第1受入口36よりも下方に設けられる。
【0059】
第1傾斜部48は、第1側壁40の下方に設けられ、下方に向かうに従って積載トレイ32側(積載トレイ32の中心TC側)または第2側壁42側に寄るように、すなわち積載トレイ32側に向かって下り勾配となるように傾斜する。本実施例では、第1傾斜部48は、下方に向かうに従って右側に寄るように右下がりに傾斜する。ただし、第1傾斜部48は、前後方向には傾斜していない。なお、第1傾斜部48の傾斜角度は、水平方向に対して60°~70°である。
【0060】
対向傾斜部54は、第2側壁42の下方に設けられ、第1傾斜部48との間隔を維持するように、下方に向かうに従って第1側壁40(第1傾斜部48)の反対側に向かうように(第1傾斜部48と同じ傾斜方向で)傾斜する。すなわち、対向傾斜部54は、下方に向かうに従って右側に寄るように右下がりに傾斜する。なお、対向傾斜部54は、前後方向には傾斜していない。ここで、第1傾斜部48と対向傾斜部54との間隔は、L判サイズの対角線の長さPW(155mm)よりも所定距離だけ大きくなるように設定される(図12参照)。すなわち、第1傾斜部48と対向傾斜部54との間には、L判サイズの対角線の長さPWに加えて所定の隙間が設定される。なお、L判サイズの対角線の長さPWに加える隙間の寸法は、第1傾斜部48の傾斜角度が水平方向に対して65°の場合、10mm下がる毎に4.6mm積載トレイ32側(第2側壁42側)に突出するので、その半分以下(たとえば2.1mm)に設定される。この対向傾斜部54を設けることによって、第1傾斜部48が第2側壁42側(右側)にせり出してくる部分に記録紙が詰まることを抑制ないし防止できる。
【0061】
第2傾斜部50は、第1案内壁44の下方に設けられ、下方に向かうに従って積載トレイ32側に寄るように、すなわち積載トレイ32側に向かって下り勾配となるように傾斜する。本実施例では、第2傾斜部50は、第1排紙部260aおよび第2排紙部262aと積載トレイ32との間に設けられ、下方に向かうに従って前面側に寄るように前下がりに傾斜する。ただし、第2傾斜部50は、左右方向には傾斜していない。なお、第2傾斜部50の傾斜角度は、水平方向に対して60°~70°である。
【0062】
拡大傾斜部56は、第2案内壁46に設けられ、第2傾斜部50との間隔を維持するように、下方に向かうに従って第2案内壁46(第2傾斜部50)の反対側に向かうように(第2傾斜部50と同じ傾斜方向で)傾斜する(図9参照)。すなわち、拡大傾斜部56は、下方に向かうに従って前面側に寄るように前下がりに傾斜する。なお、第2傾斜部50と拡大傾斜部56との間隔は、適用される最大サイズの記録紙が最大量カールした場合でも通過できるように、少なくとも第1案内壁44と第2案内壁46と間の間隔L2よりも狭くならないように(望ましくはL2以上の大きさになるように)設定される。このため、第2傾斜部50が第2案内壁46側(前面側)にせり出してくる部分に記録紙が詰まることを抑制ないし防止できる。
【0063】
以上のように、記録紙を積載トレイ32に導くための排紙通路Rは、第1傾斜部48および対向傾斜部54によって右側、すなわち積載トレイ32の中心(TC)に向かうように屈曲している。また、排紙通路Rは、第2傾斜部50および拡大傾斜部56によって前面側、すなわち積載トレイ32に向かうように屈曲している。
【0064】
次に、図7図12を参照して、積載トレイ32の具体的な構成について説明する。図7に示すように、積載トレイ32は、上側に解放された上部空間を有する有底矩形筒状に形成される。
【0065】
この積載トレイ32は、記録紙の表裏面を挟むように設けられる前壁320および後壁322と、記録紙の幅方向側縁を挟むように設けられる左側壁324および右側壁326とを備える。前壁320、後壁322、左側壁324および右側壁326に囲まれる(規定される)空間(積載空間)に記録紙が積載される。
【0066】
図7および図8に示すように、左側壁324および右側壁326は、それぞれ上下方向に延びるように設けられる。詳しくは、左側壁324および右側壁326は、略垂直面であり、左側壁324と右側壁326とは、略平行である。
【0067】
また、図9に示すように、後壁322は、第2傾斜部50の下方に設けられ、下方に向かうに従って背面側に寄るように、すなわち背面側に向かって下り勾配となるように傾斜する。つまり、後壁322の下端部は、後壁322の上端部よりも背面側に入り込む。このように、後壁322は、第2傾斜部50に対して前後方向における傾斜する向きが反対である。なお、本実施例では、後壁322は、第2傾斜部50に連続するように設けられる。したがって、第2傾斜部50と後壁322とが連続する部分(交差する部分)においては、側面から見た場合に、折れ曲がるような形状となる。
【0068】
図7図9に示すように、前壁320は、上方に向かうに従って前方に傾斜するように設けられる。すなわち、前壁320は、前面側に向かって上り勾配となるように傾斜する。なお、前壁320の傾斜方向は、後壁322の傾斜方向と同じである。したがって、積載トレイ32全体として、上方に向かうに従って前面側(プリント取出口26a)に寄るような形状となっている。
【0069】
また、図9に示すように、前壁320は、第2傾斜部50を下方に延伸した仮想線VLの後方から、仮想線VLよりも前方まで延びる。なお、仮想線VLの前方とは、仮想線VLと前壁320とが交差する部分よりも前方のことであり、仮想線VLの後方とは、仮想線VLと前壁320とが交差する部分よりも後方のことである。すなわち、前壁320の後端部(前壁320と後壁322とが交差する積載トレイ32の底部)320aは、仮想線VLよりも背面側(後方)に位置し、前壁320の前端部(積載トレイ32の前端部)320bは、仮想線VLよりも前面側(前方)に位置する。つまり、前壁320は、積載トレイ32の底部から仮想線VLを跨ぐ(超える)位置まで前面側に延出されるともいえる。更に言い換えると、積載トレイ32の前壁320は、前記第2傾斜部50を下方に延伸した仮想線VLと交差するように形成され、前面側に向かって登り勾配となるように傾斜する。
【0070】
さらに、前壁320の上側(前面側)の少なくとも一部は、その他の部分、たとえば前壁320の下側(背面側)の部分よりも水平方向に対する傾斜角度が大きくなる。すなわち、前壁320の上側の少なくとも一部が、他の部分よりも上り勾配の角度が急になっている。ただし、前壁320の上側(前面側)とは、仮想線VLよりも上側(前面側)の部分のことであり、前壁320の下側(背面側)とは、仮想線VLよりも下側(背面側)の部分のことである。すなわち、前壁320の内面は、仮想線VLよりも前面側の所定位置において上方に折れ曲がるような形状となっている。
【0071】
本実施例では、前壁320の上側の一部が、下端部を含む他の部分よりも水平方向に対する傾斜角度が大きくなる。詳しくは、前壁320(の内面、すなわち積載される記録紙側面)は、水平方向に対して所定の傾斜角度α1で傾斜する第1傾斜面320cと、第1傾斜面320cよりも上方に配置され、第1傾斜面320c(傾斜角度α1)よりも水平方向に対する傾斜角度が大きい傾斜角度α2で傾斜する第2傾斜面328aを含む。たとえば、第1傾斜面320cの傾斜角度α1は、水平方向に対して20°~40°であり、第2傾斜面328aの傾斜角度α2は、水平方向に対して70°~85°である。
【0072】
ここで、第2傾斜面328aは、仮想線VLよりも前面側に位置する。より詳しくは、前壁320には、第1傾斜面320cから上方に突出する突出部328が設けられており、第2傾斜面328aは、突出部328の後壁322側に形成されている。つまり、突出部328は、仮想線VLよりも前面側に位置し、突出部328の背面側(後壁322側の表面)、言い換えると第2傾斜部50側に第2傾斜面328aを有する。このため、前壁320は、第1傾斜面320cと第2傾斜面328aとが交差する部分で傾斜角度が変化する(前壁320は、屈曲部を有する)。
【0073】
したがって、前壁320の内面は、突出部328(第2傾斜面328a)の上端部328bと前壁320の後端部320aとで規定される仮想平面に対し、下方に凹むように形成され、左右方向に延びる断面略V字状の凹部が形成されたような形状となっている。したがって、突出部328の上端部328bと前壁320の後端部320aとの間に、下方に凹む第1空間CAが生じる(図10参照)。
【0074】
また、突出部328の上端部328bから、前壁320(第1傾斜面320c)の後端部320aまでの距離(最短距離)L3は、写真印刷部26で印刷される最小の記録紙の排紙方向の長さよりも小さくなるように設定される。本実施例では、写真印刷部26で印刷される最小の記録紙はL判サイズであるので、突出部328の上端部328bから、前壁320の後端部320aまでの距離L3は、89mm未満になるように設定される。
【0075】
図11および図12に示すように、突出部328は、前壁320における左右方向(記録紙の幅方向)の一部の領域に形成される。具体的には、突出部328は、前壁320における左右方向の中央部に形成される。第1傾斜面320cは、突出部328が形成される領域を除いて、少なくとも突出部328の上端部328bよりも前面側まで延びる。たとえば、第1傾斜面320cは、突出部328が形成される領域を除いて、前壁320の前端部320bまで延びる。したがって、突出部328が形成される領域と、突出部328が形成されない領域(突出部328の右方の領域および突出部328の左方の領域)との間には段差が生じる。
【0076】
また、突出部328は、排紙ガイド34の第1側壁40および第2側壁42のうち、左右方向において積載トレイ32から遠い側の第1側壁40から、記録紙Sの幅方向の長さPWの分だけ離れた所定位置P1よりも第1側壁40側(左側)から、所定位置P1を超えて第1側壁40の反対側(右側)に至るまで形成される。
【0077】
具体的には、突出部328における第1側壁40側の端部(左端部)328cと、第1側壁40との記録紙Sの幅方向の距離L4は、記録紙Sの幅方向の長さPWよりも短い。また、第1傾斜部48は、下方に向かうに従って右下がりに傾斜するので、第1傾斜部48の下端部48bと、突出部328の左端部328cとの記録紙Sの幅方向の距離L5は、記録紙Sの幅方向の長さPWよりも短く、上記距離L4よりもさらに短い。
【0078】
なお、突出部328は、前壁320の第1側壁40側(第1排紙部260aおよび第2排紙部262aに近い側、本実施例では左側)を除いた部分、すなわち、所定位置P1よりも第1側壁40側から第1側壁40の反対側の側壁(右側壁326)に至るまで形成されていてもよい。
【0079】
図13および図14は、積載トレイ32に記録紙が積載された状態を示す。第1排紙部260aまたは第2排紙部262aから排出された記録紙は、排紙通路Rを下方に向かって落下し、積載トレイ32に到達する。図13および図14に示すように、積載トレイ32に到達した記録紙は、この前壁320の上面(内面)に表面(印刷面)が寄り掛かるように下向きに積載される。ただし、記録紙の表面は、ロール紙の状態では外側の面である。このため、記録紙がカールする場合、記録紙は、写真印刷部26における排紙方向(積載トレイ32に積載された状態では前後方向)の中央部が下方に向かって膨出する形状となる。
【0080】
図13に示すように、積載トレイ32に記録紙が積載された状態では、カールの有無にかかわらず、記録紙の先端部(排紙ガイド34における記録紙案内方向の先頭部)は、前壁320の後端部320a(第1傾斜面320cの後端部)に支持され、記録紙の後端部は、突出部328の上端部328bに支持される。すなわち、記録紙は、前壁320の後端部320aと、突出部328の上端部328bとによって前後の2点で支持される状態となる。
【0081】
ただし、上述したように、突出部328の上端部328bから、前壁320の後端部320aまでの距離L3は、写真印刷部26で印刷される最小の記録紙の排紙方向の長さよりも小さくなるので、仮に最小の記録紙が積載された場合であっても、記録紙の上端部(前端部)は突出部328の上端部328bから突出した状態となる。
【0082】
また、記録紙の前後方向の中央部は、カールの有無にかかわらず、前壁320から離間した(浮いた)状態となる。上述したように、前壁320は、前方かつ下方に凹んだ形状部を有しており、それによって生じる第1空間CAは、カールした記録紙の形状(前後方向の中央部が下方に向かって膨出する形状)に沿うように形成されている。したがって、積載トレイ32にカールした記録紙が積載された場合には、下方に向かって膨出する記録紙の中央部が、第1空間CAに入り込むような状態となる。すなわち、第1空間CAが、記録紙のカールした部分を吸収するカール吸収空間として機能する。
【0083】
このため、積載トレイ32にカールした記録紙が積載された場合であっても、記録紙のカールした部分が前壁320の内面に形成された第1空間CAに吸収されるので、カールすることによって記録紙が後壁322に近づく量を抑制し、積載トレイ32に積載できる枚数が減少することを防止できる。また、記録紙のカールの有無およびカールした場合のカール量にかかわらず、カール量の大きい記録紙を取り出すために指を差し込む方向Cと、カールしていないまたはカール量の小さい記録紙を取り出すために指を差し込む方向NCとが略同じになる。すなわち、記録紙のカールの有無およびカールした場合のカール量にかかわらず、指を差し込む方向が一定(同じ)になるので、積載トレイ32からの記録紙の取出し性を向上させることができる。
【0084】
また、記録紙の上端側(排紙ガイド34における記録紙案内方向の後方側)は、第1傾斜面320cよりも上方に位置する突出部328の上端部328bに支持されている。すなわち、記録紙の上端側は、第1傾斜面320cよりも上方に突出する突出部328に支持されている。このため、突出部328が形成されない領域(第1傾斜面320cと記録紙の間)には、第2空間60が形成される。この第2空間60に指を差し込むことによって、記録紙を容易に取り出すことができる。(図7図14参照)
なお、上述したように、前壁320の突出部328が形成される領域と、突出部328が形成されない領域(突出部328の右方の領域および突出部328の左方の領域)との間に設けられた段差、すなわち突出部328と第1傾斜面320cとの段差によって、積載トレイ32に積載された記録紙と第1傾斜面320cとの間に、第2空間60が形成される場合は、第2空間60に親指を差し込むことで記録紙の両面を掴むことができるので、突出部328(第2傾斜面328a)の上端部328bから、前壁320(第1傾斜面320c)の後端部320aまでの距離(最短距離)L3を、写真印刷部26で印刷される最小の記録紙の排紙方向の長さよりも長くなるようにしてもよい。更に、第2傾斜面328aの上端部328b、すなわち突出部328の第2傾斜部50側の端部は、印刷済みの記録紙が当接する場所であるので、印刷された記録紙を傷つけないようにするために、端部を曲面形状(R形状)とすることが望ましい。
【0085】
この第1実施例の情報処理装置10であれば、上述したように、記録紙のカール量にかかわらず、積載トレイ32からの記録紙の取出し性を向上させることができる。
[第2実施例]
第2実施例では、前壁320の形状が一部異なる以外は第1実施例と同じであるため、第1実施例と異なる内容について説明し、重複した説明については省略することにする。
【0086】
図15に示すように、第2実施例では、前壁320の内面は、前面側に向かうに従って水平方向に対する傾斜角度が大きくなるように(上向きに)湾曲する。詳しくは、前壁320の内面は、前壁320の上端部と前壁320の後端部320aとで規定される仮想平面に対し、下方に凹むように形成され、左右方向に延びる断面略円弧状の凹部が形成されたような形状となっている。すなわち、前壁320の内面は、下方に凹むので、カールした記録紙の形状(前後方向の中央部が下方に向かって膨出する形状)に沿うように形成される。
【0087】
したがって、前壁320の内面の湾曲部分が、記録紙のカールした部分を吸収するカール吸収空間として機能する。このため、第1実施例と同様に、カールすることによって記録紙が後壁322に近づく量を抑制し、積載トレイ32に積載できる枚数が減少することを防止できる。また、積載トレイ32からの記録紙の取出し性を向上させることができる。
【0088】
なお、上述の実施例で挙げた具体的な構成等は一例であり、実際の製品に応じて適宜変更することが可能である。
【符号の説明】
【0089】
100…画像形成システム
10 …情報処理装置
28 …筐体
30 …前ドア
32 …積載トレイ
320…前壁
320c…第1傾斜面
328…突出部
328a…第2傾斜面
34 …排紙ガイド
40 …第1側壁
42 …第2側壁
44 …第1案内壁
46 …第2案内壁
50 …第2傾斜部
R …排紙通路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16