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  • 特許-耐食性部材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】耐食性部材
(51)【国際特許分類】
   C04B 35/505 20060101AFI20240116BHJP
   C04B 35/111 20060101ALI20240116BHJP
   C23C 16/44 20060101ALI20240116BHJP
   H01L 21/31 20060101ALI20240116BHJP
   H01L 21/3065 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
C04B35/505
C04B35/111
C23C16/44 B
H01L21/31 C
H01L21/302 101G
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020042136
(22)【出願日】2020-03-11
(65)【公開番号】P2020164406
(43)【公開日】2020-10-08
【審査請求日】2022-12-13
(31)【優先権主張番号】P 2019057748
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 敬輔
(72)【発明者】
【氏名】▲浅▼野 友幸
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-180637(JP,A)
【文献】特開2011-049551(JP,A)
【文献】国際公開第2013/065666(WO,A1)
【文献】特開2009-263187(JP,A)
【文献】特開2001-322866(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 35/505
C04B 35/111
C23C 16/44
H01L 21/31
H01L 21/3065
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
腐食性ガスに曝される部分を有する耐食性部材であって、
前記腐食性ガスに曝される部分がセラミックス焼結体からなり、
前記セラミックス焼結体の表面は、輪郭曲線要素の平均長さ(Rsm)が25μm以下、輪郭曲線要素の平均長さ(Rsm)と算術平均粗さ(Ra)との比(Rsm/Ra)が4000以下であり、
前記セラミックス焼結体の表面の最大高さ(Rz)は0.2μm以下であることを特徴とする耐食性部材。
【請求項2】
前記セラミックス焼結体の表面の算術平均粗さ(Ra)は0.02μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の耐食性部材。
【請求項3】
前記セラミックス焼結体は、アルミナ、イットリア、及びイットリウム・アルミニウム・ガーネットから選択される少なくとも一種を主成分とすることを特徴とする請求項1又は2に記載の耐食性部材。
【請求項4】
前記腐食性ガスに曝される部分は、少なくともガスノズルのノズル孔を形成する部分であることを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載の耐食性部材。
【請求項5】
前記輪郭曲線要素の平均長さ(Rsm)が5μm以上であって、前記比(Rsm/Ra)が250以上であることを特徴とする請求項1からの何れか1項に記載の耐食性部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、耐食性部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、半導体製造装置において、基板の表面に化学気相成長法(CVD法)で薄膜を形成する際や、エッチングによって薄膜の微細加工を行う際などには、基板を収容する反応容器にプラズマガスを導入する。このプラズマガスを導入するための部材であるガスノズルなどは、プラズマ化されたフッ化物ガスなどのハロゲンガスに対する耐食性が良好であることが必要である。
【0003】
例えば、特許文献1には、ハロゲン系腐食性ガスに曝される表面を気孔率3%以下のイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)焼結体により形成すると共に、その表面の中心線平均粗さ(Ra)を1μm以下とすることにより、腐食を少なくする技術が開示されている。
【0004】
また、特許文献2には、ガスノズルが、イットリアやスピネルなどの焼結体からなり、ガス排出口が形成された一端面における輪郭曲線要素の平均長さ(Rsm)を焼結体における平均結晶粒径の5倍以上とすることにより、耐食性の向上を図る技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開平10-236871号公報
【文献】国際公開2013/065666号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記特許文献1,2に開示された技術においても、耐食性は十分なものではなく、短寿命であった。特に、局所的な表面粗さの悪化のために、短寿命となっていた。
【0007】
本発明は、かかる事情に鑑みてなされたものであり、寿命の向上を図ることが可能な耐食性部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の耐食性部材は、腐食性ガスに曝される部分を有する耐食性部材であって、前記腐食性ガスに曝される部分がセラミックス焼結体からなり、前記セラミックス焼結体の表面は、輪郭曲線要素の平均長さ(Rsm)が25μm以下、輪郭曲線要素の平均長さ(Rsm)と算術平均粗さ(Ra)との比(Rsm/Ra)が4000以下であることを特徴とする。
【0009】
本発明の耐食性部材によれば、そのセラミックス焼結体の表面は、輪郭曲線要素の平均長さ(Rsm)が、上記特許文献2に開示された試料の輪郭曲線要素の平均長さ(Rsm)の最小値である30μmよりも小さい。輪郭曲線要素の平均長さ(Rsm)が小さいということは、隣接する凹部の間隔が小さいことを意味する。これにより、表面状態の急激な悪化が抑制されるので、耐食性部材の寿命の増大を図ることが可能となる。
【0010】
また、耐食性部材のセラミックス焼結体の表面は、輪郭曲線要素の平均長さ(Rsm)と算術平均粗さ(Ra)との比(Rsm/Ra)が4000以下である。これにより、長寿命の確保を図ることが可能となる。表面の凹部の平均的な大きさ(激しさ)は算術平均粗さ(Ra)によって推測することができるので、表面粗さの悪化の進行度合いは比(Rsm/Ra)によって推測することができると考えられるからである。
【0011】
本発明の耐食性部材において、前記セラミックス焼結体の表面の算術平均粗さ(Ra)は0.02μm以下であることが好ましい。
【0012】
この場合、長寿命の確保を図ることが可能となる。これは、セラミックス焼結体の表面の凹部の平均的な大きさ(激しさ)が、算術平均粗さ(Ra)から推測することができると考えられるからである。
【0013】
本発明の耐食性部材において、前記セラミックス焼結体の表面の最大高さ(Rz)は0.2μm以下である。
【0014】
これにより、長寿命の確保を図ることが可能となる。これは、セラミックス焼結体の表面の凹部の局所的な大きさ(激しさ)が、最大高さ(Rz)から推測することができると考えられるからである。
【0015】
本発明の耐食性部材において、例えば、前記セラミックス焼結体は、アルミナ、イットリア、及びイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)から選択される少なくとも一種を主成分とする。
【0016】
また、本発明の耐食性部材において、例えば、前記腐食性ガスに曝される部分は、少なくともガスノズルのノズル孔を形成する部分である。
【0017】
また、本発明の耐食性部材において、前記輪郭曲線要素の平均長さ(Rsm)が5μm以上であることが好ましい。さらに、本発明の耐食性部材において、前記比(Rsm/Ra)が250以上であることが好ましい。
【0018】
輪郭曲線要素の平均長さ(Rsm)が5μm未満である場合、又は、比(Rsm/Ra)が250未満である場合、研磨加工に要する時間又は費用が過大になるおそれがあるためである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の実施形態に係る耐食性部材を有するガスノズルを備えたプラズマ装置を示す大略断面図。
図2】プラズマ装置の他の形態を示す大略断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施形態に係る耐食性部材10について図面を参照して、説明する。なお、図1においては、耐食性部材10の構成を明確化するため、各構成要素はデフォルメされており、実際の比率を表すものではない。
【0021】
耐食性部材10は、ここでは、半導体製造工程又は液晶製造工程において、半導体ウエハやガラス基板などの基板Wに薄膜を形成するための成膜装置、又は、基板Wに微細加工を施すためのエッチング装置などのプラズマ装置100に使用されるガスノズル10である。
【0022】
例えば、成膜装置においては、腐食性ガスを含む原料ガスをガスノズル10を用いて反応容器20内に導入し、この原料ガスをプラズマ化させるプラズマCVD(Chemical Vapor Deposition:化学気相成長)法により、基板W上に薄膜を形成することがある。また、エッチング装置においては、原料ガスとしてハロゲン系腐食性ガスをガスノズル10を用いて反応容器20内に導入し、この腐食性ガスをプラズマ化してエッチングガスとすることにより、基板Wに微細加工を施すことがある。
【0023】
ガスノズル10には、図示しないガス供給部から腐食性ガスなどのガスが供給されるガス供給口11、反応容器20内にガスを排出するガス排出口12、及びガス供給口11とガス排出口12とを連通するノズル孔13とを有している。
【0024】
本発明の実施形態に係る耐食性部材10は、腐食性ガスに曝される部分を有する部材であり、ここでは、ガスノズル10のうち腐食性ガスに曝される部分、例えば、ノズル孔13を含む部分、反応容器20内に露出する部分のうちの少なくとも一部を構成する部材である。ただし、耐食性部材10は、ガスノズル10の全体を構成するものであってもよい。また、耐食性部材は、例えば、図2を参照して、反応容器20を構成する容器本体21及び蓋部22のうち、ガスノズル10を含む蓋部22又はその一部であってもよい。
【0025】
そして、耐食性部材10のうち少なくとも腐食性ガスに曝される部分は、セラミックス焼結体からなっている。セラミックス焼結体は、例えば、アルミナ、イットリア、及びイットリウム・アルミニウム・ガーネット(YAG)から選択される少なくとも一種を主成分とする。
【0026】
耐食性部材10のセラミックス焼結体の表面は、輪郭曲線要素の平均長さ(Rsm)が25μm以下であり、さらに好ましくは15μm以下である。このように、輪郭曲線要素の平均長さ(Rsm)が、上記特許文献2に開示された試料の輪郭曲線要素の平均長さ(Rsm)の最小値である30μmよりも小さい。輪郭曲線要素の平均長さ(Rsm)が小さいということは、隣接する凹部の間隔が小さいことを意味する。これにより、表面状態の急激な悪化が抑制されるので、耐食性部材10の寿命の増大を図ることが可能となる。
なお、輪郭曲線要素の平均長さ(Rsm)は5μm以上であることが好ましい。これは、 輪郭曲線要素の平均長さ(Rsm)が5μm未満である場合、研磨加工に要する時間又は費用が過大になるおそれがあるためである。
【0027】
プラズマ化した腐食性ガスがセラミック焼結体の表面に触れるとき、その表面の凹凸部が特にアタックされやすく、パーティクルの発生源となりやすい。セラミック焼結体の表面における輪郭曲線要素の平均長さ(Rsm)が大きいということは、隣接する凹部の間隔が大きい(凹部の数が低減されている)ことを意味する。これにより、少ない凹部にプラズマアタックが集中して起こることによって局所的に表面状態が悪化し、耐食性部材10の寿命が短くなると考えられる。
【0028】
一方、本発明では、セラミックス焼結体の表面に存在する凹部の間隔が小さいので、腐食性ガスによる凹部からの粒子の脱落が局所的に集中せず平均的に生じることに起因して耐食性部材10の寿命の増大を図ることが可能になっていると考えられる。
【0029】
さらに、耐食性部材10のセラミックス焼結体の表面は、輪郭曲線要素の平均長さ(Rsm)と算術平均粗さ(Ra)との比(Rsm/Ra)が4000以下である。これにより、後述する実施例及び比較例から分かるように、長寿命の確保を図ることが可能となる。これは、表面の凹部の平均的な大きさ(激しさ)は算術平均粗さ(Ra)によって推測することができるので、表面粗さの悪化の進行度合いは比(Rsm/Ra)によって推測することができると推察されるからである。なお、比(Rsm/Ra)が250以上であることが好ましい。これは、比(Rsm/Ra)が250未満である場合、研磨加工に要する時間又は費用が過大になるおそれがあるためである。
【0030】
そして、耐食性部材10のセラミックス焼結体の表面は、算術平均粗さ(Ra)が0.02μm以下、さらに好ましくは0.01μm以下であることが好ましい。算術平均粗さ(Ra)が大きくなると、プラズマ化した腐食性ガスのエッチングにより脱落する脱落片の大きさが大きくなる可能性が考えられるので、好ましくない。
【0031】
さらに、耐食性部材10のセラミックス焼結体の表面は、最大高さ(Rz)が0.2μm以下であ、0.1μm以下であることがさらに好ましい。これにより、プラズマ化した腐食性ガスによる局所的なエッチングを抑制することができ、長寿命の確保を図ることが可能となる。これは、表面の凹部の局所的な大きさ(激しさ)は最大高さ(Rz)によって推測することができるからである。
【0032】
なお、耐食性部材10のセラミックス焼結体の表面を、上記した輪郭曲線要素の平均長さ(Rsm)、比(Rsm/Ra)、算術平均粗さ(Ra)及び最大高さ(Rz)の範囲内とするには、例えば、前記表面を水や油などの液体にダイヤモンドなどの砥粒を混合した遊離砥粒を用いて、砥粒の粒度、荷重、盤の種類、研磨時間を調整し、ラッピング、ポリッシングなどを行えばよい。
【0033】
なお、本発明は、上述した実施形態に具体的に記載した耐食性部材10に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載した範囲内であれば適宜変更することができる。
【0034】
以下、本発明の実施例及び比較例を具体的に挙げ、本発明を詳細に説明する。
【実施例
【0035】
(実施例1~5)
まず、純度99.9%のイットリア粉末(信越化学工業株式会社製)を57重量%、純度99.99%のアルミナ粉末(住友化学株式会社製)を43重量%、バインダーとしてのPVA系バインダーを2重量%、分散剤としての水溶性アクリル酸系分散剤を0.3重量%及び可塑剤としてのグリセリンを0.5重量%、イオン交換水と共にポットに投入し、ボールミルにより湿式混合を行い、スラリーを形成した。なお、本実施例では添加していないが、焼結助剤としてのSiOを0.15重量%以上10重量%以下の範囲で加えてもよい。
【0036】
このスラリーをスプレードライヤーにて乾燥及び造粒して、冷間等方圧加圧法(CIP)成形にて成形体を作製した。そして、円柱状に加工し、さらにその中心軸に直径3mmの貫通孔を形成した(貫通孔の形成は、後述の仕上げ加工時に行ってもよい)。そして、400℃以上600℃以下の温度範囲で脱脂を行い、1500℃以上1800℃以下の温度範囲で酸化雰囲気で常圧焼成及び熱間等方圧加圧法(HIP)処理を行いYAG焼結体を得た。そして、このYAG焼結体を直径50mm、高さ50mmの円柱状に仕上げ加工した。なお、マイクロスコープを用いて観察したところ、YAG焼結体の平均粒子径は5μmであった。また、YAG焼結体の嵩密度は4.5g/cm以上であった。
【0037】
さらに、このYAG焼結体のガス排出口12が開口する一方の円形状の面を銅製のラップ盤上に配置し、平均粒子径6μmのダイヤモンドスラリー砥粒を用いて研磨し、さらに錫製のラップ盤上に配置し、平均粒子径2μmのダイヤモンドスラリー砥粒を用いて研磨し、さらにシリカ砥粒を用いてポリッシュ加工を行った。加工条件は荷重をかけた状態でそれぞれ1時間以上研磨を行った。
【0038】
そして、この面に対して、算術平均粗さ(Ra)、輪郭曲線要素の平均長さ(Rsm)及び最大高さ粗さ(Rz)を測定した。測定はJISB0601:2001に準拠して、ミツトヨ社製の接触式の表面粗さ計であるSV-C4100を用いて測定した。具体的には、測定速度0.20mm/s、測定長さ0.4mm、カットオフ波長0.08mmの測定条件で測定を行った。
【0039】
本実施例においては、中心から、中心角度120°の扇形状を想定し、中心部、外周部、その中間部を3点ずつ、計9点を測定した。測定結果を表1に示した。表1において、円筒形の半径をrとしたとき、No.1は中心からr×0.2の円上の部分の3点の最大値、No.2は中心からr×0.5の円上の3点の最大値、No.3は中心からr×0.8の円上の3点のそれぞれ測定値の最大値を記載している。なお、実施例1~5は、全て上記のように同様にYAG焼結体を作製し、計測面を同様に研磨したものである。
【0040】
(比較例1)
比較例1においては、実施例1~5と同様に円柱形状のYAG焼結体を作製した。そして、このYAG焼結体の一方の円形状の面を表1の値となるように研磨加工を行った。加工条件は砥粒の種類、粒径、盤の種類、荷重、研磨時間などで調整した。
【0041】
そして、この面に対して、算術平均粗さ(Ra)、輪郭曲線要素の平均長さ(Rsm)及び最大高さ粗さ(Rz)を実施例1~5と同様に測定した。結果を表1に示した。なお、比較例1,2では、No.2に相当する箇所のみ測定した。
【0042】
(比較例2)
比較例2においては、実施例1~5と同様に円柱形状のYAG焼結体を作製した。そして、このYAG焼結体の一方の円形状の面を表1の値となるように研磨加工を行った。加工条件は砥粒の種類、粒径、盤の種類、荷重、研磨時間などで調整した。
【0043】
そして、この面に対して、算術平均粗さ(Ra)、輪郭曲線要素の平均長さ(Rsm)及び最大高さ粗さ(Rz)を実施例1~5と同様に測定した。結果を表1に示した。
【0044】
【表1】
【0045】
実施例1~5、比較例1,2のYAG焼結体について、平行平板型RIE(反応性イオンエッチング)装置を用いてCF4プラズマ中で10時間エッチングの試験を行った。実施例1~5、比較例1,2のYAG焼結体の表面状態を確認したところ、比較例1,2のYAG焼結体では局所的に表面状態の悪い部分が確認された。これは、少ない凹部にプラズマアタックが集中したことにより、局所的にダメージが受けたものと考えられる。一方、実施例1~5では、表面に存在する凹部の間隔が小さいので、プラズマアタックが局所的に集中せず平均的に生じ、比較的大きな粒子の脱落を抑制できたと考えられ、表面状態の局所的な悪化は発生しなかった。
【0046】
(実施例6,7)
酸化アルミニウムの焼結体を以下のようにして作製した。純度99.7%のアルミナ粉末(昭和電工株式会社製)に、バインダーとしてPVA系バインダーを2.0重量%、分散剤として水溶性アクリル酸系分散剤を0.15重量%、硝酸マグネシウムを0.6重量%、可塑剤としてグリセリンを0.5重量%、イオン交換水と共にポットに投入し、ボールミルにより湿式混合を行い、スラリーを形成した。
【0047】
このスラリーをスプレードライヤーにて乾燥及び造粒して、冷間等方圧加圧法(CIP)成形にて成形体を作製した。そして、円柱状に加工し、さらにその中心軸に直径3mmの貫通孔を形成した。そして、1500℃以上1700℃以下の温度範囲で大気雰囲気で常圧焼成をして酸化アルミニウム焼結体を得た。そして、この酸化アルミニウム焼結体を直径50mm、高さ50mmの円柱状に仕上げ加工した。なお、マイクロスコープを用いて観察したところ、酸化アルミニウム焼結体の平均粒子径は4μmであった。また、嵩密度は3.9g/cmであった。
【0048】
実施例1~5と同様に、酸化アルミニウム焼結体の一方の円形状の面を研磨加工し、この面に対して、算術平均粗さ(Ra)、輪郭曲線要素の平均長さ(Rsm)及び最大高さ粗さ(Rz)を測定した。その結果を表2に示した。
【0049】
【表2】
【0050】
(実施例8,9)
酸化イットリウムの焼結体を以下のようにして作製した。純度99.9%のイットリア粉末(信越化学工業株式会社製)に、バインダーとしてPVA系バインダーを2.0重量%、分散剤として水溶性アクリル酸系分散剤を0.2重量%、可塑剤としてグリセリンを0.5重量%、イオン交換水と共にポットに投入し、ボールミルにより湿式混合を行い、スラリーを形成した。
【0051】
このスラリーをスプレードライヤーにて乾燥及び造粒して、冷間等方圧加圧法(CIP)成形にて成形体を作成した。そして、円柱状に加工し、さらにその中心軸に直径3mmの貫通孔を形成した。そして、1600℃以上1800℃以下の範囲で酸化雰囲気で常圧焼成をして酸化イットリウム焼結体を得た。そして、この酸化イットリウム焼結体を直径50mm、高さ50mmの円柱状に仕上げ加工した。なお、マイクロスコープを用いて観察したところ、酸化イットリウム焼結体の平均粒子径は4μmであった。また、嵩密度は5.0g/cmであった。
【0052】
実施例1~5と同様に、酸化イットリウム焼結体の一方の円形状の面を研磨加工し、この面に対して、算術平均粗さ(Ra)、輪郭曲線要素の平均長さ(Rsm)及び最大高さ粗さ(Rz)を測定した。その結果を表3に示した。
【0053】
【表3】
【0054】
実施例6,7及び実施例8,9においてもエッチングの試験では表面状態の局所的な悪化は発生しなかった。
【符号の説明】
【0055】
10…ガスノズル、耐食性部材、 11…ガス供給口、 12…ガス排出口、 13…ノズル孔、 20…反応容器、 21…容器本体、 22…蓋部、 100…プラズマ装置。
図1
図2