(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】カーボンナノチューブ分散液の製造方法、カーボンナノチューブシートの製造方法、カーボンナノチューブワイヤの製造方法、カーボンナノチューブ分散液、および、カーボンナノチューブ分散液の製造装置
(51)【国際特許分類】
C01B 32/174 20170101AFI20240116BHJP
C01B 32/16 20170101ALI20240116BHJP
B01J 23/745 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
C01B32/174
C01B32/16
B01J23/745 M
(21)【出願番号】P 2020043503
(22)【出願日】2020-03-12
【審査請求日】2022-12-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005119
【氏名又は名称】日立造船株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】井上 鉄也
【審査官】浅野 昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-013772(JP,A)
【文献】国際公開第2015/045417(WO,A1)
【文献】特開2014-034476(JP,A)
【文献】特開2008-024523(JP,A)
【文献】特開2005-067916(JP,A)
【文献】特開2017-007919(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C01B 32/168-32/174
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に配置される垂直配向カーボンナノチューブ群に、前記基板に対して前記垂直配向カーボンナノチューブ群の反対側から電圧を印加する工程と、
前記垂直配向カーボンナノチューブ群に界面活性剤を含む液体を塗布する工程と、
前記液体が塗布された前記垂直配向カーボンナノチューブ群を前記基板から剥離して、分散媒に分散させる工程と、を含む
ことを特徴とする、カーボンナノチューブ分散液の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のカーボンナノチューブ分散液の製造方法によって、カーボンナノチューブ分散液を調製する工程と、
前記カーボンナノチューブ分散液を基材上に塗布して、シート状に形成する工程と、を含む
ことを特徴とする、カーボンナノチューブシートの製造方法。
【請求項3】
請求項2に記載のカーボンナノチューブシートの製造方法によって、カーボンナノチューブシートを調製する工程と、
前記カーボンナノチューブシートをワイヤ状に形成する工程と、を含む
ことを特徴とする、カーボンナノチューブワイヤの製造方法。
【請求項4】
基板上に配置される垂直配向カーボンナノチューブ群に
絶対値が0.1kV以上10kV以下の電圧を印加する電圧印加装置であって、前記基板に対して前記垂直配向カーボンナノチューブ群の反対側に位置する電圧印加装置と、
前記垂直配向カーボンナノチューブ群に対して前記基板の反対側に位置し、前記垂直配向カーボンナノチューブ群に界面活性剤を含む液体を塗布する液体塗布装置と、
前記垂直配向カーボンナノチューブ群を前記基板から剥離する剥離装置と、を備え
、
前記基板は、金属基板であることを特徴とする、カーボンナノチューブ分散液の製造装置。
【請求項5】
基板上に配置される垂直配向カーボンナノチューブ群に電圧を印加する電圧印加装置であって、前記基板に対して前記垂直配向カーボンナノチューブ群の反対側に位置する電圧印加装置と、
前記垂直配向カーボンナノチューブ群に対して前記基板の反対側に位置し、前記垂直配向カーボンナノチューブ群に界面活性剤を含む液体を塗布する液体塗布装置と、
前記垂直配向カーボンナノチューブ群を前記基板から剥離する剥離装置と、を備え、
前記基板は、金属基板であり、
前記金属基板と前記電圧印加装置との間には、絶縁層が設けられ、
前記液体塗布装置は、絶縁材料から形成される
ことを特徴とする
、カーボンナノチューブ分散液の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーボンナノチューブ分散液の製造方法、カーボンナノチューブシートの製造方法、カーボンナノチューブワイヤの製造方法、カーボンナノチューブ分散液、および、カーボンナノチューブ分散液の製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カーボンナノチューブは、優れた機械強度、熱伝導性および電気伝導性を有していることが知られている。そのようなカーボンナノチューブを液体に分散させて、カーボンナノチューブ分散液を種々の用途に利用することが検討されている。
【0003】
例えば、カーボンナノチューブを液状媒体に加えた後、10,000rpm以上で高速攪拌し、次いで、超音波処理により、カーボンナノチューブを液状媒体に分散させる、カーボンナノチューブ分散体の製造方法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
そのようなカーボンナノチューブ分散体の製造方法では、平均長さが5μm以上100μm以下のカーボンナノチューブが原料として液状媒体に加えられ、高速攪拌および超音波処理によりカーボンナノチューブが断片化されて、平均長さが1μm以上10μm以下のカーボンナノチューブが液状媒体に分散するカーボンナノチューブ分散体が製造される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1に記載のカーボンナノチューブ分散体の製造方法では、基板から剥離したカーボンナノチューブは、吸着力(ファンデルワールスカ)が非常に強く、カーボンナノチューブが液状媒体中で分散しないという問題があった。また、カーボンナノチューブを液状媒体中で分散させる時に、カーボンナノチューブが超音波処理などの物理的な衝撃を受けることにより断片化するため、カーボンナノチューブ分散体におけるカーボンナノチューブの平均長さを維持することができないという問題もあった。そのため、カーボンナノチューブ分散体を用いて製造される種々の製品に、カーボンナノチューブ製造時の長尺のカーボンナノチューブの優れた特性を十分に付与できない場合がある。
【0007】
本発明は、カーボンナノチューブ分散液におけるカーボンナノチューブの平均長さを維持するとともに、カーボンナノチューブの分散性の高いカーボンナノチューブ分散液の製造方法、カーボンナノチューブ分散液およびカーボンナノチューブ分散液の製造装置と、そのカーボンナノチューブ分散液を用いるカーボンナノチューブシートの製造方法およびカーボンナノチューブワイヤの製造方法とを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明[1]は、基板上に配置される垂直配向カーボンナノチューブ群に、前記基板に対して前記垂直配向カーボンナノチューブ群の反対側から電圧を印加する工程と、前記垂直配向カーボンナノチューブ群に界面活性剤を含む液体を塗布する工程と、前記液体が塗布された前記垂直配向カーボンナノチューブ群を前記基板から剥離して、分散媒に分散させる工程と、を含む、カーボンナノチューブ分散液の製造方法を含む。
【0009】
このような方法によれば、垂直配向カーボンナノチューブ群に、基板に対して垂直配向カーボンナノチューブ群の反対側から電圧を印加すると、垂直配向カーボンナノチューブ群における複数のカーボンナノチューブ(以下、CNTとする。)が互いに同電位となるように帯電する。これによって、複数のCNTのうち互いに隣り合うCNTが離れるように反発する。
【0010】
これによって、垂直配向CNT群に塗布される界面活性剤を含む液体が、複数のCNT間に浸入する。そして、CNTの周面に界面活性剤を含む液体が付着する。
【0011】
その後、界面活性剤を含む液体が付着したCNTは、基板から剥離され、分散媒に分散される。そのため、CNTを別途分散しなくても、CNTを分散媒に十分に分散できる。その結果、CNTを分散媒に十分に分散できながら、CNT分散液におけるCNTの平均長さの向上を、垂直配向カーボンナノチューブ群におけるCNTの平均長さと同程度に維持することができる。
【0012】
本発明[2]は、上記[1]に記載のカーボンナノチューブ分散液の製造方法によって、カーボンナノチューブ分散液を調製する工程と、前記カーボンナノチューブ分散液を基材上に塗布して、シート状に形成する工程と、を含むカーボンナノチューブシートの製造方法を含んでいる。
【0013】
このような方法によれば、上記したCNT分散液が、基材上に塗布されて、シート状に形成されるので、CNTシートにおいて、CNTの優れた特性を十分に確保できる。
【0014】
本発明[3]は、上記[2]に記載のカーボンナノチューブシートの製造方法によって、カーボンナノチューブシートを調製する工程と、前記カーボンナノチューブシートをワイヤ状に形成する工程と、を含む、カーボンナノチューブワイヤの製造方法を含んでいる。
【0015】
このような方法によれば、上記したCNTシートをワイヤ状に形成するので、CNTワイヤにおいて、CNTの優れた特性を十分に確保できる。
【0016】
本発明[4]は、分散媒と、前記分散媒に分散される複数のカーボンナノチューブを備え、前記複数のカーボンナノチューブにおけるカーボンナノチューブの平均長さは、50μm以上である、カーボンナノチューブ分散液を含む。
【0017】
このような構成によれば、CNT分散液が、平均長さが上記下限以上であるCNTを含むので、CNT分散液を用いて製造される種々の製品に、CNTの優れた特性を十分に付与することができる。
【0018】
本発明[5]は、基板上に配置される垂直配向カーボンナノチューブ群に電圧を印加する電圧印加装置であって、前記基板に対して前記垂直配向カーボンナノチューブ群の反対側に位置する電圧印加装置と、前記垂直配向カーボンナノチューブ群に対して前記基板の反対側に位置し、前記垂直配向カーボンナノチューブ群に界面活性剤を含む液体を塗布する液体塗布装置と、前記垂直配向カーボンナノチューブ群を前記基板から剥離する剥離装置と、を備える、カーボンナノチューブ分散液の製造装置を含む。
【0019】
このような構成によれば、電圧印加装置が、垂直配向CNT群に、基板に対して垂直配向CNT群の反対側から電圧を印加できる。そのため、液体塗布装置から塗布される界面活性剤を含む液体を、複数のCNT間に浸入させることができる。そして、剥離装置が、複数のCNTを基板から剥離できる。そのため、上記したCNT分散液を円滑に製造することができる。
【0020】
本発明[6]は、前記基板は、金属基板であり、前記金属基板と前記電圧印加装置との間には、絶縁層が設けられ、前記液体塗布装置は、絶縁材料から形成される、上記[5]に記載のカーボンナノチューブ分散液の製造装置を含む。
【0021】
しかるに、基板が金属基板である場合、電圧印加装置が、垂直配向CNT群に金属基板に対して垂直配向CNT群の反対側から電圧を印加すると、金属基板から液体塗布装置に放電が生じる場合がある。
【0022】
一方、上記の構成によれば、金属基板と電圧印加装置との間に絶縁層が設けられ、液体塗布装置が絶縁材料から形成されるので、電圧印加装置が垂直配向CNT群に電圧を印加しても、金属基板から液体塗布装置に放電が生じることを抑制できる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のカーボンナノチューブ分散液の製造方法では、CNTを分散媒に十分に分散できながら、CNT分散液におけるCNTの平均長さを、垂直配向カーボンナノチューブ群におけるCNTの平均長さと同程度に維持することができる。本発明のカーボンナノチューブ分散液の製造装置は、上記したCNT分散液を円滑に製造できる。本発明のカーボンナノチューブ分散液は、CNT分散液を用いて製造される種々の製品に、CNTの優れた特性を十分に付与することができる。本発明のカーボンナノチューブシートの製造方法では、CNTシートにおいてCNTの優れた特性を十分に確保できる。本発明のカーボンナノチューブワイヤの製造方法では、CNTワイヤにおいてCNTの優れた特性を十分に確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、CNT分散液の製造装置の一実施形態としての分散液製造装置の斜視図である。
【
図3】
図3Aは、
図2に示す基板上に触媒層を形成する工程を示す。
図3Bは、
図3Aに続いて、基板を加熱して触媒層を複数の粒状体に凝集させる工程を示す。
図3Cは、
図3Bに続いて、複数の粒状体に原料ガスを供給して、複数のカーボンナノチューブを成長させる工程を示す。
【
図4】
図4は、CNTシートの製造方法の一実施形態としてのヒータの製造方法を説明するための説明図である。
【
図5】
図5は、
図4に示すヒータの変形例を説明するための説明図である。
【
図6】
図6は、
図4に示すCNT分散液の塗布方法の変形例を説明するための説明図である。
【
図7】
図7は、CNTワイヤの製造方法の一実施形態を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
<カーボンナノチューブ分散液の製造方法>
図1および
図2に示すように、CNT分散液の製造方法は、基板上に配置される垂直配向カーボンナノチューブ群(Vertically Aligned carbon nanotubes;以下、VACNTsとする。)に、基板に対してVACNTsの反対側から電圧を印加する工程と、VACNTsに界面活性剤を含む液体を塗布する工程と、VACNTsを基板から剥離して分散媒に分散させる工程とを含む。
【0026】
CNT分散液の製造方法では、まず、
図3Aから
図3Cに示すように、基板1上に配置されるVACNTs2を準備する。
【0027】
VACNTs2を準備するには、
図3Aに示すように、まず、基板1を準備する。基板1は、特に限定されず、例えば、CVD法に用いられる公知の基板が挙げられ、市販品を用いることができる。基板1として、具体的には、金属基板(例えば、シリコン基板、ステンレス基板など)、セラミックス基板(例えば、アルミナ基板、ジルコニア基板、ガラス基板など)などが挙げられる。基板1のなかでは、好ましくは、金属基板が挙げられ、さらに好ましくは、ステンレス基板が挙げられる。基板1の厚みは、例えば、20μm以上、好ましくは、50μm以上、例えば、1000μm以下、好ましくは、100μm以下である。また、基板1の厚み方向の一方面には、例えば、二酸化ケイ素膜4が配置される。
【0028】
そして、二酸化ケイ素膜4(基板1)上に触媒層5を形成する。二酸化ケイ素膜4上に触媒層5を形成するには、金属触媒を、公知の成膜方法(例えば、電子ビーム(EB法)、真空蒸着、スパッタリングなど)により、二酸化ケイ素膜4上に成膜する。
【0029】
金属触媒として、例えば、鉄、コバルト、ニッケルなどが挙げられ、好ましくは、鉄が挙げられる。金属触媒は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0030】
次いで、
図3Bに示すように、触媒層5が配置される基板1を、例えば、700℃以上900℃以下に加熱する。これにより、触媒層5が、凝集して、複数の粒状体5Aとなる。
【0031】
そして、
図3Cに示すように、加熱された基板1に、例えば、1分以上30分以下、原料ガスを供給する。
【0032】
原料ガスは、炭素数1~4の炭化水素ガス(低級炭化水素ガス)を含んでいる。炭素数1~4の炭化水素ガスとしては、例えば、メタンガス、エタンガス、プロパンガス、ブタンガス、エチレンガス、アセチレンガスなどが挙げられ、好ましくは、アセチレンガスが挙げられる。また、原料ガスは、必要により、水素ガスや、不活性ガス(例えば、ヘリウム、アルゴンなど)、水蒸気などを含むこともできる。
【0033】
これによって、複数の粒状体5Aのそれぞれを起点として、複数のCNT3が成長する。なお、
図3Cでは、便宜上、1つの粒状体5Aから、1つのCNT3が成長するように記載されているが、これに限定されず、1つの粒状体5Aから、複数のCNT3が成長してもよい。
【0034】
これによって、複数のCNT3を含むVACNTs2が、基板1上に成長する。VACNTs2において、複数のCNT3は、互いに略平行となるように、基板1の厚み方向に延びており、基板1に対して直交するように配向(垂直に配向)されている。また、VACNTs2において、複数のCNT3は、基板1の面方向に互いに密集している。
【0035】
VACNTs2の嵩密度は、例えば、10mg/cm3以上、好ましくは、20mg/cm3以上、例えば、60mg/cm3以下、好ましくは、50mg/cm3以下である。
【0036】
CNT3は、単層カーボンナノチューブおよび多層カーボンナノチューブのいずれであってもよく、好ましくは、多層カーボンナノチューブである。
【0037】
CNT3の平均外径は、例えば、1nm以上、好ましくは、5nm以上、例えば、100nm以下、好ましくは、50nm以下である。CNT3の平均長さ(平均軸線方向寸法)は、例えば、10μm以上、好ましくは、50μm以上、より好ましくは、100μm以上、例えば、1000μm以下、好ましくは、500μm以下である。なお、CNTの層数、平均外径および平均長さは、例えば、ラマン分光分析、電子顕微鏡観察、レーザー変位計などの公知の方法により測定できる(以下同様)。
【0038】
以上によって、基板1上に配置されるVACNTs2が準備される。
【0039】
また、基板1が金属基板である場合、基板1の厚み方向の他方面には、好ましくは、絶縁層6を形成する。
【0040】
絶縁層6は、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂などの樹脂材料から形成され、絶縁性を有する。絶縁層6の厚みは、例えば、10μm以上、好ましくは、100μm以上、例えば、2000μm以下、好ましくは、1000μm以下である。絶縁層6の厚みは、後述する印加される電圧によって絶縁破壊される厚みである。
【0041】
(1)電圧印加工程(VACNTsに電圧を印加する工程)
次いで、
図1および
図2に示すように、VACNTs2に、基板1に対してVACNTs2の反対側から電圧を印加する。絶縁層6が基板1に配置されている場合、絶縁層6に対して基板1の反対側から電圧が印加される。
【0042】
VACNTs2に印加される電圧は、正電圧であってもよく、負電圧であってもよい。VACNTs2に正電圧が印加されると、VACNTs2における複数のCNT3は、正電位に帯電する。VACNTs2に負電圧が印加されると、複数のCNT3は、負電位に帯電する。
【0043】
電圧の絶対値は、例えば、0.1kV以上、好ましくは、0.5kV以上、例えば、10kV以下、好ましくは、5kV以下である。
【0044】
電圧の絶対値が上記下限以上であれば、複数のCNT3を同電位に帯電させることができる。電圧の絶対値が上記上限以下であれば、基板1から放電することを抑制できる。
【0045】
このような電圧は、例えば、電圧印加装置7により、VACNTs2に印加される。
【0046】
電圧印加装置7は、通電電極71と、高圧電源72とを備える。
【0047】
通電電極71は、基板1に対してVACNTs2の反対側に位置する。絶縁層6が基板1に配置されている場合、絶縁層6は、基板1と通電電極71との間に配置される。通電電極71は、例えば、金属材料から形成される。通電電極71は、円筒形状を有する。
【0048】
高圧電源72は、通電電極71と電気的に接続される。高圧電源72は、通電電極71に上記した電圧を印加可能である。
【0049】
以上によって、VACNTs2に、基板1に対してVACNTs2の反対側から電圧が印加される。これによって、複数のCNT3が同電位に帯電する。そのため、複数のCNT3うち互いに隣り合うCNT3が離れるように反発する。
【0050】
(2)液体塗布工程(VACNTsに液体を塗布する工程)
液体塗布工程では、界面活性剤を含む液体が、VACNTs2に塗布される。
【0051】
液体は、界面活性剤と、溶媒とを含む。
【0052】
界面活性剤として、例えば、アニオン系界面活性剤(例えば、AES(ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル)など)、カチオン系界面活性剤(例えば、塩化アルキルトリメチルアンモニウムなど)、ノニオン系界面活性剤(例えば、ポリオキシエチレンオキサイドなど)などが挙げられる。界面活性剤は、単独使用または2種類以上併用できる。
【0053】
界面活性剤は、好ましくは、VACNTs2に印加される電圧の正負に応じて選択される。VACNTs2に正電圧が印加される場合、界面活性剤は、好ましくは、アニオン系界面活性剤および/またはノニオン系界面活性剤を含む。VACNTs2に負電圧が印加される場合、界面活性剤は、好ましくは、カチオン系界面活性剤および/またはノニオン系界面活性剤を含む。
【0054】
溶媒は、界面活性剤を溶解および/または分散する。溶媒として、例えば、水、アルコール類などが挙げられる。溶媒は、単独使用または2種以上併用することができる。溶媒は、好ましくは、水を含み、より好ましくは、水のみからなる。
【0055】
液体における界面活性剤の濃度は、例えば、0.01質量%以上、好ましくは、0.5質量%以上、例えば、5.0質量%以下、好ましくは、2.0質量%以下である。
【0056】
液体における界面活性剤の濃度が上記下限以上であると、CNTを後述する分散媒に円滑に分散することができる。液体における界面活性剤の濃度が上記上限以下であると、CNT分散液の製造コストの低減を図ることができる。
【0057】
次いで、界面活性剤を含む液体を、VACNTs2に対して基板1の反対側から、VACNTs2に塗布する。液体の塗布方法として、例えば、ディスペンス、スプレーコート、ロールコート、バーコートなどの公知の塗布方法が挙げられる。
【0058】
界面活性剤を含む液体は、例えば、液体塗布装置の一例としての塗布機8により、VACNTs2に塗布される。なお、
図1および
図2では、塗布機8が、ディスペンサーである態様を示す。
【0059】
塗布機8は、VACNTs2に、界面活性剤を含む液体を塗布できる。塗布機8は、VACNTs2に対して基板1の反対側に位置する。塗布機8は、VACNTs2に対して、基板1の面方向に移動可能である。また、基板1が金属基板である場合、塗布機8は、上記した絶縁材料から形成される。
【0060】
上記した電圧印加工程と上記した液体塗布工程とは、同時に実施されるか、または、上記した液体塗布工程が実施された後に上記した電圧印加工程が実施される。好ましくは、上記した電圧印加工程と上記した液体塗布工程とが同時に実施される。
【0061】
以上によって、VACNTs2に塗布された液体が、複数のCNT3間に浸入する。そのため、CNT3の周面に界面活性剤を含む液体が付着する。
【0062】
(3)CNT分散工程(VACNTsを基板から剥離して分散媒に分散させる工程)
そして、上記した液体が塗布されたVACNTs2を基板1から剥離して、複数のCNT3を分散媒に分散させる。
【0063】
例えば、剥離装置の一例としてのスクレーパー9を、基板1に沿ってスライド移動させて、複数のCNT3の基端部(基板1側の端部)を一括して切断する。これによって、VACNTs2が基板1(複数の粒状体5A)から分離(剥離)される。
【0064】
次いで、分離されたVACNTs2を基板1から引き上げて、分散媒に添加する。
【0065】
分散媒として、例えば、上記した溶媒が挙げられる。分散媒は、好ましくは、水を含み、さらに好ましくは、水からなる。
【0066】
その後、VACNTs2が添加された分散媒を、例えば、室温(23℃)において、公知の撹拌装置(例えば、スターラー、ホモジナイザーなど)によって撹拌する。これによって、複数のCNT3が分散媒に分散する。
【0067】
撹拌時間は、例えば、60分以上、好ましくは、180分以上である。
【0068】
撹拌時間が上記下限以上であれば、CNTを分散媒に均一に分散できる。
【0069】
以上によって、CNT分散液が製造される。CNT分散液は、上記した分散媒と、複数のCNTと、上記した界面活性剤とを含む。
【0070】
CNT分散液におけるCNTの平均長さは、VACNTs2におけるCNTの平均長さと同程度に維持される。CNT分散液におけるCNTの平均長さは、VACNTs2におけるCNTの平均長さを100%としたときに、例えば、90%以上100%以下である。より具体的には、CNT分散液におけるCNTの平均長さは、例えば、10μm以上、好ましくは、50μm以上、より好ましくは、100μm以上、例えば、1000μm以下、好ましくは、500μm以下である。
【0071】
CNT分散液におけるCNTの含有割合は、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、0.2質量%以上、例えば、5.0質量%以下、好ましくは、2.0質量%以下である。
【0072】
CNT分散液における界面活性剤の含有割合は、例えば、0.01質量%以上、好ましくは、0.1質量%以上、例えば、5.0質量%以下、好ましくは、1.0質量%以下である。
【0073】
また、必要に応じて、CNT分散液に、有機導電性高分子および/または金属ナノ粒子を添加することもできる。言い換えれば、CNT分散液は、有機導電性高分子および/または金属ナノ粒子を含有しなくてもよく、有機導電性高分子および/または金属ナノ粒子を含有してもよい。
【0074】
このようなCNT分散液は、例えば、CNT分散液の製造装置の一実施形態としての分散液製造装置10によって製造できる。
【0075】
分散液製造装置10は、上記した電圧印加装置7と、上記した塗布機8と、上記したスクレーパー9とを備える。そして、分散液製造装置10は、上記した電圧印加工程と、上記した液体塗布工程と、上記したCNT分散工程とが、上記と同様に実施できる。
【0076】
<カーボンナノチューブ分散液の用途>
CNT分散液は、例えば、CNTシートの製造、CNTワイヤの製造などに用いられる。
【0077】
図4に示すように、CNT分散液を用いてCNTシート12を製造するには、例えば、CNT分散液を基材11上に塗布して、シート状に形成する。
【0078】
基材11の形状は、特に制限されないが、好ましくは、シート形状(平板形状)または円筒形状を有する。シート形状(平板形状)を有する基材11は、具体的には、所定の厚みを有し、前記厚み方向と直交する所定方向に延び、平坦な表面および平坦な裏面(背面)を有している。平面視における基材11の形状は、特に制限されず、例えば、三角形状、矩形状、円形状などが挙げられる。
【0079】
円筒形状を有する基材11は、具体的には、所定方向に延び、所定方向と直交する径方向に厚みを有し、外周面(表面)および内周面(背面)を有している。本実施形態では、便宜上、基材11は、平面視矩形状を有する。また、基材11は、好ましくは、可撓性を有する。
【0080】
基材11として、例えば、樹脂製シート、金属箔、樹脂製メッシュ、繊維状シートなどが挙げられ、好ましくは、樹脂製メッシュおよび繊維状シートが挙げられる。
【0081】
樹脂製メッシュは、樹脂から形成される。樹脂製メッシュの材料として、例えば、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリエステル樹脂などの熱可塑性樹脂などが挙げられる。
【0082】
繊維状シートとして、例えば、織物、不織布が挙げられる。
【0083】
織物は、繊維を撚り合わせた糸を織り合わせて形成される。織物の材料として、例えば、天然繊維(例えば、木材繊維、麻、綿などの植物繊維、例えば、羊毛、絹などの動物繊維など)、樹脂繊維(例えば、ポリエステル系繊維、ポリアミド系繊維、ポリビニルアルコール系繊維など)、無機繊維(例えば、ガラス繊維、炭素繊維など)などが挙げられる。
【0084】
不織布は、繊維を織らずに絡み合わせて形成される。不織布の材料として、例えば、上記した織物の材料と同じ繊維が挙げられる。
【0085】
これら樹脂製メッシュおよび繊維状シートのなかでは、好ましくは、不織布が挙げられる。基材11が不織布であると、基材11が、CNTシート12を安定して保持することができる。
【0086】
基材11の厚みは、特に制限されないが、例えば、20μm以上、好ましくは、50μm以上、例えば、1000μm以下、好ましくは、500μm以下である。
【0087】
そして、例えば、ディスペンサー13により、CNT分散液を基材11に塗布する。これによって、CNT分散液からなる塗膜が、基材11上に形成される。その後、必要に応じて、塗膜を乾燥して、分散媒を除去する。
【0088】
なお、塗布回数は、特に制限されず、CNTシート12が所望の厚みを有するように、適宜変更される。複数回にわたって塗布する場合、塗布毎に塗膜を乾燥させることが好ましい。また、CNT分散液の塗布方法は、特に制限されない。
図6に示すように、CNT分散液を、塗布ローラ15に一旦供給した後、塗布ローラ15によって、CNT分散液が基材11に塗布されてもよい。また、CNT分散液を基材11にスプレーしてもよく、基材11をCNT分散液に含浸させてもよい。
【0089】
また、
図4に示すように、基材11が繊維状シートである場合、好ましくは、繊維状シートの背面に吸引装置14を配置して、繊維状シートの背面から分散媒を吸引する。吸引装置14は、吸引ステージ141と、ポンプ142とを備える。繊維状シートは、吸引ステージ141上に配置される。ポンプ142は、繊維状シート上に形成される塗膜から、繊維状シートおよび繊維状シートを介して、分散媒を吸引可能である。
【0090】
以上によって、CNTシート12が製造される。
【0091】
CNTシート12は、CNTが絡み合って形成されており、不織布状を有する。CNTシート12は、基材11上に配置される。
【0092】
また、
図5に示すように、CNTシート12は、所定方向に延びるリボン状を有していてもよい。リボン状を有するCNTシート12は、基材11上において、所定方向と直交する方向に間隔を空けて配置されてもよい。
【0093】
<複合材>
上記したCNTシート12は、基材11に保持されており、複合材16を構成する。言い換えれば、複合材16は、基材11と、CNTシート12とを備える。
【0094】
このような複合材16の用途として、例えば、電磁波シールド、ヒータ、微粒子捕集(吸着)フィルターなどが挙げられる。
図4および
図5では、便宜上、複合材16がヒータ17である態様を示す。
【0095】
ヒータ17は、上記した基材11およびCNTシート12に加えて、2つの電極18を備える。ヒータ17では、CNTシート12が、電圧が印加されたときに発熱する発熱体として作用する。
【0096】
2つの電極18のそれぞれは、長尺の平帯形状を有する。2つの電極18は、基材11上に、電極18の長手方向と直交する方向に互いに間隔を空けて配置される。電極18は、基材11の表面に固定されている。電極18の固定方法は、特に制限されない。電極18は、図示しない接着剤層によって基材11の表面に接着されてもよく、金属部材(例えば、導電性糸、ステープルなど)によって固定されてもよい。電極18として、例えば、金属シート、金属メッシュ、導電性糸、金属蒸着膜、金属ペーストなどが挙げられる。
図4および
図5では、便宜上、電極18が金属シートである態様を示す。
【0097】
電極18は、CNTシート12と接触している。詳しくは、CNTシート12は、電極18の上面(基材11と反対側の面)と、電極18の内側面(他方の電極18と向かい合う面)とを、2つの電極18間の基材11の表面とを連続して覆っている。
【0098】
このようなヒータ17を製造するには、まず、基材11の表面に、各電極18を接着する。次いで、各電極18の上面および内側面と、2つの電極18間に位置する基材11の表面とに一括して、上記と同様にCNT分散液を塗布する。これによって、ヒータ17が製造される。
【0099】
また、
図7に示すように、CNT分散液を用いてCNTワイヤを製造するには、例えば、CNTシート12を上記と同様に基材上に調製した後、CNTシート12を基材から剥離して、CNTシート12をワイヤ状に形成する。
【0100】
例えば、CNTワイヤ20は、ワイヤ製造装置30によって連続的に製造される。
【0101】
ワイヤ製造装置30は、搬送ユニット21と、ディスペンサー13と、乾燥ヒータ22と、スクレーパー23と、図示しないワイヤ化手段と、を備える。
【0102】
搬送ユニット21は、上記したCNT分散液から形成されるCNTシート12を、スクレーパー23に向かって搬送できる。搬送ユニット21は、第1ローラ25と、第2ローラ26と、搬送ベルト24と、を備える。第1ローラ25および第2ローラ26は、互いに間隔を空けて配置される。搬送ベルト24は、エンドレスベルトである。搬送ベルト24は、第1ローラ25および第2ローラ26に架け渡される。搬送ベルト24は、第1ローラ25および第2ローラ26の回転によって、周回移動可能である。
【0103】
ディスペンサー13は、搬送ベルト24に上記したCNT分散液を吐出可能である。これにより、搬送ベルト24上に上記したCNT分散液から塗膜が形成される。ディスペンサー13は、搬送ベルト24と向かい合って配置される。ディスペンサー13は、1つであってもよく、複数であってもよい。ディスペンサー13が複数であると、搬送ベルト24上に形成される塗膜の厚みを調整できる。
【0104】
乾燥ヒータ22は、搬送ベルト24上に形成される塗膜を加熱可能である。乾燥ヒータ22は、搬送ベルト24内において、第1ローラ25および第2ローラ26の間に配置される。乾燥ヒータ22は、ディスペンサー13に対して、CNTシート12の搬送方向の下流側に位置する。
【0105】
スクレーパー23は、搬送ベルト24からCNTシート12を剥離可能である。スクレーパー23は、ディスペンサー13に対して、CNTシート12の搬送方向の下流側に位置する。
【0106】
図示しないワイヤ化手段は、例えば、CNTシート12を撚り合わせる撚糸装置(例えば、特開2016-191173号公報に記載の紡績部など)、CNTシート12を通過させた束ねるダイス(例えば、特開2014-169521号公報に記載の複数のダイスなど)などが挙げられる。
【0107】
このようなワイヤ製造装置30では、まず、ディスペンサー13が搬送ベルト24上に、上記したCNT分散液を塗布して、塗膜を形成する。その後、塗膜は、搬送ベルト24とともに移動して、乾燥ヒータ22上を通過するときに、乾燥される。これによって、分散媒が除去されて、CNTシート12が形成される。その後、CNTシート12がスクレーパー23に到達すると、スクレーパー23は、CNTシート12を搬送ベルト24から剥離する。その後、CNTシート12は、図示しないワイヤ化手段によって、ワイヤ化されて、CNTワイヤ20が製造される。
【0108】
なお、CNT分散液の用途は、上記に限定されない。例えば、CNT分散液を、接着剤が溶解される接着剤溶液に連続的に滴下して、複数のCNT3を紡績することもできる。
【0109】
<作用効果>
上記したCNT分散液の製造方法では、
図1および
図2に示すように、VACNTs2に、基板1に対してVACNTs2の反対側から電圧が印加される。すると、VACNTs2における複数のCNT3が互いに同電位となるように帯電する。これによって、複数のCNT3のうち互いに隣り合うCNT3が離れるように反発する。
【0110】
これによって、VACNTs2に塗布される界面活性剤を含む液体が、複数のCNT3間に浸入する。そして、CNT3の周面に界面活性剤を含む液体が付着する。
【0111】
その後、界面活性剤を含む液体が付着したCNT3は、基板1から剥離され、分散媒に分散される。そのため、CNT3を別途分散しなくても、CNT3を分散媒に十分に分散できる。その結果、CNT3を分散媒に十分に分散できながら、CNT分散液におけるCNT3の平均長さを、VACNTs2におけるCNT3の平均長さと同程度に維持することができる。
【0112】
より詳しくは、CNT分散液は、平均長さが50μm以上であるCNT3を含む。そのため、CNT分散液を用いて製造される種々の製品に、CNT3の優れた特性を十分に付与することができる。
【0113】
また、CNT分散液は、例えば、分散液製造装置10によって製造される。具体的には、電圧印加装置7が、VACNTs2に、基板に対してVACNTs2の反対側から電圧を印加する。そのため、塗布機8から塗布される界面活性剤を含む液体を、複数のCNT3間に浸入させることができる。そして、スクレーパー9が、複数のCNT3を基板から剥離する。その結果、上記したCNT分散液を円滑に製造することができる。
【0114】
また、基板1が金属基板である場合、基板1と電圧印加装置7との間に絶縁層6が設けられ、塗布機8が絶縁材料から形成される。そのため、電圧印加装置7がVACNTs2に電圧を印加しても、基板1から塗布機8に放電が生じることを抑制できる。
【0115】
また、
図4に示すように、上記したCNT分散液は、CNTシート12の製造に用いることができる。詳しくは、上記したCNT分散液は、基材11上に塗布されて、シート状に形成される。そのため、CNTシート12において、CNT3の優れた特性を十分に確保できる。
【0116】
また、
図7に示すように、上記したCNT分散液は、CNTワイヤ20の製造に用いることができる。詳しくは、上記したCNT分散液は、CNTシート12がワイヤ状に形成される。そのため、CNTワイヤ20において、CNT3の優れた特性を十分に確保できる。
【実施例】
【0117】
以下に実施例および比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、それらに限定されない。以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0118】
<<実施例1>>
ステンレス製の基板(ステンレス基板)の表面に二酸化ケイ素膜を積層した後、二酸化ケイ素膜上に、触媒層として鉄を蒸着した。次いで、基板を所定の温度に加熱して、触媒層に原料ガス(アセチレンガス)を供給した。これにより、基板上にVACNTsを形成した。
【0119】
VACNTsにおいて、CNTの平均外径は、12nmであり、CNTの平均長さは、300μmであった。VACNTsの嵩密度は、40~50mg/cm3であった。
【0120】
次いで、基板上に配置されるVACNTsを、
図2に示す分散液製造装置10にセットした。そして、VACNTsに、基板に対してVACNTsの反対側から、+5kVを印加した。これにより、VACNTsにおいて、複数のCNTが正電位に帯電した。
【0121】
次いで、VACNTsに電圧を印加した状態で、VACNTsに界面活性剤水溶液を塗布した。界面活性剤水溶液は、ポリエチレンオキサイド(ノニオン系界面活性剤、住友精化社製)を純水に溶解して調製された。界面活性剤水溶液におけるポリエチレンオキサイドの濃度を、1質量%とした。
【0122】
その後、電圧の印加を停止した後、界面活性剤水溶液が塗布されたVACNTsを、基板から剥離して、水(分散媒)に添加した。
【0123】
次いで、VACNTsが添加された水を、室温(23℃)において、スターラーによって、60分間攪拌して、複数のCNTを水に分散させた。
【0124】
以上によって、CNT分散液を調製した。CNT分散液では、複数のCNTが水に均一に分散していた。CNT分散液におけるCNTの含有割合を、0.5質量%とした。CNT分散液におけるポリエチレンオキサイドの含有割合を、0.1質量%とした。
【0125】
<<比較例1>>
実施例1と同様にして、基板上に配置されるVACNTsを調製した。その後、VACNTsを、基板から剥離して、水(分散媒)に添加した。次いで、VACNTsが添加された水を、室温(23℃)において、スターラーによって、60分間攪拌した。
【0126】
しかし、水中において、複数のCNTが凝集して、複数のCNTを水に十分に分散できなかった。
【符号の説明】
【0127】
1 基板
2 VACNTs
3 CNT
6 絶縁層
7 電圧印加装置
8 塗布機
9 スクレーパー
10 分散液製造装置
11 基材
12 CNTシート
20 CNTワイヤ