(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】建具
(51)【国際特許分類】
E05C 9/02 20060101AFI20240116BHJP
E05C 1/14 20060101ALI20240116BHJP
E05B 65/06 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
E05C9/02
E05C1/14 C
E05B65/06 D
(21)【出願番号】P 2020051681
(22)【出願日】2020-03-23
【審査請求日】2022-11-28
(73)【特許権者】
【識別番号】390005267
【氏名又は名称】YKK AP株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木子 節
(72)【発明者】
【氏名】谷口 雅洋
【審査官】河本 明彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-142235(JP,A)
【文献】特開平09-041775(JP,A)
【文献】実開昭59-113455(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2016/0108650(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E05C 1/00-21/02
E05B 59/00-59/06
E05B 63/14,65/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
枠体及び障子を備え、
前記枠体及び前記障子の一方には、ユニット本体を介して複数のロックユニットが設けられ、前記枠体及び前記障子の他方には、前記複数のロックユニットに対応して複数のロックピンが設けられ、
前記障子が閉じた状態で前記ロックユニットがロック状態となることで前記ユニット本体に対する前記ロックピンの移動を阻止して前記障子を閉じた状態に維持する一方、前記障子に設けたハンドルが常態位置から開き操作された場合には前記ロックユニットのロック状態が解除されることで前記ユニット本体に対する前記ロックピンの移動を許容するようにした建具であって、
前記ハンドルの開き操作に連動する状態で前記障子に作動部材が配設され、
前記複数のロックユニットには、それぞれアンロック位置に配置された場合にロック状態を解除するトリガが配設され、
前記作動部材には、前記障子が閉じた状態において前記ハンドルが開き操作された際に前記トリガをアンロック位置に移動させるリリース部材が前記複数のロックユニットに対応して複数設けられ、
前記複数のロックユニットは、前記ユニット本体に対して前記トリガが上下に移動可能に配設され、前記トリガのアンロック位置が前記ユニット本体の上方部に構成されたものであり、
前記作動部材は、前記障子に対して上下に移動可能、かつ前記ハンドルが常態位置に配置されている場合に待機位置に配設されるものであり、前記ハンドルが開き操作された場合に待機位置から上方に向けて移動することにより、前記リリース部材を介して複数のトリガを上方に移動させることを特徴とする建具。
【請求項2】
枠体及び障子を備え、
前記枠体及び前記障子の一方には、ユニット本体を介して複数のロックユニットが設けられ、前記枠体及び前記障子の他方には、前記複数のロックユニットに対応して複数のロックピンが設けられ、
前記障子が閉じた状態で前記ロックユニットがロック状態となることで前記ユニット本体に対する前記ロックピンの移動を阻止して前記障子を閉じた状態に維持する一方、前記障子に設けたハンドルが常態位置から開き操作された場合には前記ロックユニットのロック状態が解除されることで前記ユニット本体に対する前記ロックピンの移動を許容するようにした建具であって、
前記ハンドルの開き操作に連動する状態で前記障子に作動部材が配設され、
前記複数のロックユニットには、それぞれアンロック位置に配置された場合にロック状態を解除するトリガが配設され、
前記作動部材には、前記障子が閉じた状態において前記ハンドルが開き操作された際に前記トリガをアンロック位置に移動させるリリース部材が前記複数のロックユニットに対応して複数設けられ、
前記複数のロックユニットは、
前記ユニット本体に対して回転可能に配設され、非噛合位置に配置された場合に前記ユニット本体に対する前記ロックピンの進入を許容する一方、前記ロックピンが進入した状態で噛合位置に配置された場合に前記ロックピンの逸脱移動を阻止する鎌部材と、
前記鎌部材を噛合位置に維持するように付勢するロックバネと、
前記鎌部材が非噛合位置に配置された場合に前記鎌部材に係合することで前記ロックバネの付勢力に抗して前記鎌部材を非噛合位置に維持する一方、前記ユニット本体に進入するロックピンが当接した場合に前記鎌部材との係合状態が解除され、前記鎌部材の噛合位置への回転を許容する開放維持部材と
を備えたことを特徴とする建具。
【請求項3】
前記トリガは、前記ロックユニットがロック状態にある場合とロック状態が解除された場合とで前記ユニット本体に対する配置位置が互いに異なり、かつ少なくとも一部が前記ユニット本体の外部に常時露出するように設けたものであり、
前記リリース部材は、前記障子が閉じた状態で前記ロックユニットがロック状態にあり、かつ前記ハンドルが常態位置にある場合、前記ユニット本体の外部に露出する前記トリガに対してアンロック位置に向けて押圧可能となる位置に配置されることを特徴とする
請求項1または請求項2に記載の建具。
【請求項4】
前記ロックユニットは、前記鎌部材が噛合位置に配置された状態で前記鎌部材に係合した場合に前記鎌部材の非噛合位置への移動を規制するロック部材を備え、
前記トリガは、前記ロック部材に設けられ、アンロック位置に向けて移動された場合に前記ロック部材を介して前記鎌部材を移動させ、前記ロックバネの付勢力に抗して前記鎌部材を非噛合位置に移動させることを特徴とする
請求項2に記載の建具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠装置及び建具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
建具に設けられる錠装置としては、例えば枠体に設けられたロックピンと、障子に設けられたロックユニットとを備えるものがある。ロックユニットには、アンロック位置に配置された場合にロック状態を解除するトリガが配設され、さらに障子のハンドルがトリガに連結されている。この錠装置では、枠体に対して障子を閉じると、ロックユニットにロックピンが進入した状態でロックユニットがロック状態となる。ロックユニットがロック状態になると、ロックユニットに対するロックピンの移動が阻止されることになり、枠体に対して障子が閉じた状態に維持される。上述の状態から障子のハンドルを開き操作すると、トリガがアンロック位置に配置されることでロックユニットがアンロック状態となる。これにより、ロックユニットに対するロックピンの移動が許容され、枠体に対して障子を開くことが可能となる(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、建具には、枠体と障子との間を確実に閉じた状態に維持するために複数の錠装置が必要となる場合がある。例えば、風の強い地域に設けられる建具にあっては、枠体と障子との間に複数の錠装置を設けることで、障子が不用意に開く事態を防止することが可能となる。また、比較的大型の建具についても、障子を確実に閉じた状態に維持するには、枠体と障子との間に複数の錠装置を設けることが好ましい。
しかしながら、複数の錠装置が設けられた建具では、すべてのトリガをアンロック位置に移動させなければ障子を開くことができない。このため、障子を開く場合には、多数のハンドルを開き操作する必要があり、障子の開放操作が煩雑化する懸念がある。
【0005】
本発明は、上記実情に鑑みて、建具に複数設けた場合にも障子の開放操作が煩雑化する事態を防止することのできる錠装置及び建具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明に係る建具は、枠体及び障子を備え、前記枠体及び前記障子の一方には、ユニット本体を介して複数のロックユニットが設けられ、前記枠体及び前記障子の他方には、前記複数のロックユニットに対応して複数のロックピンが設けられ、前記障子が閉じた状態で前記ロックユニットがロック状態となることで前記ユニット本体に対する前記ロックピンの移動を阻止して前記障子を閉じた状態に維持する一方、前記障子に設けたハンドルが常態位置から開き操作された場合には前記ロックユニットのロック状態が解除されることで前記ユニット本体に対する前記ロックピンの移動を許容するようにした建具であって、前記ハンドルの開き操作に連動する状態で前記障子に作動部材が配設され、前記複数のロックユニットには、それぞれアンロック位置に配置された場合にロック状態を解除するトリガが配設され、前記作動部材には、前記障子が閉じた状態において前記ハンドルが開き操作された際に前記トリガをアンロック位置に移動させるリリース部材が前記複数のロックユニットに対応して複数設けられ、前記複数のロックユニットは、前記ユニット本体に対して前記トリガが上下に移動可能に配設され、前記トリガのアンロック位置が前記ユニット本体の上方部に構成されたものであり、前記作動部材は、前記障子に対して上下に移動可能、かつ前記ハンドルが常態位置に配置されている場合に待機位置に配設されるものであり、前記ハンドルが開き操作された場合に待機位置から上方に向けて移動することにより、前記リリース部材を介して複数のトリガを上方に移動させることを特徴とする。
また、本発明に係る建具は、枠体及び障子を備え、前記枠体及び前記障子の一方には、ユニット本体を介して複数のロックユニットが設けられ、前記枠体及び前記障子の他方には、前記複数のロックユニットに対応して複数のロックピンが設けられ、前記障子が閉じた状態で前記ロックユニットがロック状態となることで前記ユニット本体に対する前記ロックピンの移動を阻止して前記障子を閉じた状態に維持する一方、前記障子に設けたハンドルが常態位置から開き操作された場合には前記ロックユニットのロック状態が解除されることで前記ユニット本体に対する前記ロックピンの移動を許容するようにした建具であって、前記ハンドルの開き操作に連動する状態で前記障子に作動部材が配設され、前記複数のロックユニットには、それぞれアンロック位置に配置された場合にロック状態を解除するトリガが配設され、前記作動部材には、前記障子が閉じた状態において前記ハンドルが開き操作された際に前記トリガをアンロック位置に移動させるリリース部材が前記複数のロックユニットに対応して複数設けられ、前記複数のロックユニットは、前記ユニット本体に対して回転可能に配設され、非噛合位置に配置された場合に前記ユニット本体に対する前記ロックピンの進入を許容する一方、前記ロックピンが進入した状態で噛合位置に配置された場合に前記ロックピンの逸脱移動を阻止する鎌部材と、前記鎌部材を噛合位置に維持するように付勢するロックバネと、前記鎌部材が非噛合位置に配置された場合に前記鎌部材に係合することで前記ロックバネの付勢力に抗して前記鎌部材を非噛合位置に維持する一方、前記ユニット本体に進入するロックピンが当接した場合に前記鎌部材との係合状態が解除され、前記鎌部材の噛合位置への回転を許容する開放維持部材とを備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ハンドルの開き操作によって作動部材を連動させ、作動部材に設けたリリース部材を介してロックユニットのトリガをアンロック位置に移動させるようにしている。従って、建具に複数のロックユニットを設けた場合にも共通の作動部材に対して複数のロックユニットのそれぞれに対応したリリース部材を設ければ、1つのハンドルを開き操作することで複数のロックユニットのトリガを同時にアンロック位置に配置することが可能となり、煩雑な開放操作を要することなく障子を開くことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施の形態である錠装置を適用した建具を室内側から見た図である。
【
図2】
図1に示した建具の要部を示すもので、(a)は枠体に対して障子が閉じた状態の要部拡大横断面図、(b)は枠体に対して障子が開いた状態の要部拡大横断面図である。
【
図3】
図1に示した建具に設けられるハンドルを示すもので、(a)は常態位置にある場合のハンドルを示す要部拡大縦断面図、(b)は開き操作された場合のハンドルを示す要部拡大縦断面図である。
【
図4】
図1に示した建具においてハンドルと作動部材との連結状態を示すもので、(a)は連結された状態を室外側から見た斜視図、(b)はその分解斜視図である。
【
図5】
図1に示した建具においてハンドルと作動部材との連結状態を示すもので、(a)は連結された状態を室内側から見た斜視図、(b)はその分解斜視図である。
【
図6】
図1に示した建具に適用するロックユニットを示すもので、(a)は室内側から見た斜視図、(b)は室外側から見た斜視図である。
【
図7】
図6に示したロックユニットのロック状態を示すもので、(a)はユニット本体の内部を示す図、(b)はユニット本体の外部を示す図である。
【
図8】
図6に示したロックユニットのアンロック状態を示すもので、(a)はユニット本体の内部を示す図、(b)はユニット本体の外部を示す図である。
【
図9】
図1に示した建具においてハンドル、作動部材及びロックユニットの関係を示すもので、(a)はハンドルが常態位置にある場合の図、(b)はハンドルが開き操作された場合の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る錠装置及び建具の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、以下においては便宜上、見込み方向及び見付け方向という用語を用いて説明を行う。見込み方向とは、図中の矢印Aで示すように、建具の奥行きに沿った方向である。見込み方向に沿った面については見込み面と称する場合がある。見付け方向とは、後述する上枠や上框等のように水平方向に沿って延在するものの場合、見込み方向に直交した上下に沿う方向である。縦枠や縦框等のように上下方向に沿って延在するものの場合には、見込み方向に直交した水平に沿う方向を見付け方向という。見付け方向に沿った面については、見付け面と称する場合がある。
【0010】
図1及び
図2は、本発明の実施の形態である錠装置を適用した建具を示すものである。ここで例示する建具は、枠体10及び障子20を備え、枠体10に対して障子20を室外に向けて開くことができるように構成した縦すべり出し窓と称されるものである。枠体10は、上枠11、下枠12、左右の縦枠13,14を四周枠組みすることによって構成したものである。障子20は、矩形状を成す面材21の四周に上框22、下框23、左右の縦框24,25を装着することによって構成したものである。枠体10を構成する枠11,12,13,14及び障子20を構成する框22,23,24,25としては、
図2の縦枠13及び縦框24に代表して示すように、それぞれアルミニウム合金等の金属の押し出し形材から成る室外側の外側部分13A,24Aと、樹脂の押し出し形材から成る室内側の内側部分13B,24Bとを有した複合タイプのものを例示している。しかしながら、枠や框としては、必ずしも複合タイプのものに限らず、金属単体から成るものや樹脂単体から成るものであっても構わない。図示の例では、
図1において右側に位置する縦框24が戸先となり、この戸先となる縦框24が枠体10に対して室外に向けて突出するように建具が構成してある。この建具には、障子20の戸先となる縦框24にハンドル30、作動部材40及び複数のロックピン50が設けてある一方、枠体10において戸先の縦框24に対応する縦枠13に複数のロックユニット60が設けてある。
【0011】
ハンドル30は、
図2及び
図3に示すように、ハンドル本体31及び操作部材32を備え、ハンドル本体31を介して縦框24の室内に臨む見付け面24aにおいて面材収容溝24bに対応する部分に取り付けてある。面材収容溝24bは、面材21の縁部を収容するための凹所であり、室外側の外側部分24A及び室内側の内側部分24Bの内周側となる部分からそれぞれ内周側に向けて互いに対向する支持ヒレ部24cを設けることによって構成してある。面材収容溝24bの内底壁24dは、外側部分24Aに設けてある。操作部材32は、ハンドル本体31に対して上下に沿った操作軸心を中心に回転可能、かつ上下方向への相対移動が規制された状態でハンドル本体31に支持してある。
【0012】
ハンドル30のハンドル本体31には、スライダ33及びリターンバネ34が設けてある。スライダ33は、ハンドル本体31に対して上下に沿って移動可能となるように支持したもので、従動傾斜面33a及び連係フック33bを備えている。従動傾斜面33aは、スライダ33の下端に設けた下方に向く平坦面であり、室内側に向けて漸次高くなるように傾斜している。連係フック33bは、スライダ33から室外に向けて突出した後に下方に向けて屈曲したもので、ハンドル本体31及び内側部分24Bの支持ヒレ部24cを通過して面材収容溝24bの内部に突出している。リターンバネ34は、ハンドル本体31とスライダ33との間に介在させた圧縮コイルバネであり、ハンドル本体31に対してスライダ33を常時下方に付勢している。
【0013】
ハンドル30の操作部材32には、上昇駆動部32aが設けてある。上昇駆動部32aは、スライダ33に向けて突出し、ハンドル本体31に対して操作部材32が回転した場合にスライダ33に対して近接/離隔するように配設したもので、先端部に駆動傾斜面32bを有している。駆動傾斜面32bは、室外に向けて漸次下方となるように傾斜した平坦面である。この駆動傾斜面32bは、
図2(a)に示すように、上昇駆動部32aがスライダ33からもっとも離隔した位置に配置された場合にもっとも下方となる縁部が、スライダ33の従動傾斜面33aにおいてもっとも上方となる縁部よりも下方に位置し、かつ
図2(b)に示すように、上昇駆動部32aがスライダ33に向けて近接した場合に従動傾斜面33aに当接するように構成してある。すなわち、このハンドル30は、操作部材32に操作力を加えていない場合、
図2(a)に示すように、リターンバネ34によってスライダ33がもっとも下方となる位置に維持されるため、互いに当接する従動傾斜面33a及び駆動傾斜面32bの傾斜作用により、上昇駆動部32aがスライダ33からもっとも離隔した位置に配置された状態に維持される(ハンドル30の常態位置)。この常態位置からハンドル本体31に対して操作部材32を室外に向けて回転させると(ハンドル30の開き操作)、
図2(b)に示すように、上昇駆動部32aがスライダ33に近接するように移動し、互いに当接する従動傾斜面33a及び駆動傾斜面32bの傾斜作用によりリターンバネ34の付勢力に抗してスライダ33が上方に移動する。この状態から操作部材32の操作力を除去すると、
図2(a)に示すように、リターンバネ34の付勢力によってスライダ33が下方に移動し、互いに当接する従動傾斜面33a及び駆動傾斜面32bの傾斜作用により上昇駆動部32aがスライダ33から離隔するように移動することによって操作部材32が常態位置に復帰する。
【0014】
作動部材40は、
図2~
図5に示すように、上下方向に沿って延在する断面が矩形の長尺部材であり、上下に移動可能となる状態で縦框24の外周側となる見込み面24eに配設してある。この作動部材40には、ハンドル30の取り付け位置に対応する部分に連係孔41が設けてある。連係孔41は、見付け方向に貫通する上下に沿った略矩形状の長孔である。この連係孔41には、連係部材42の連係片42aが嵌合している。連係部材42は、ハンドル30に設けたスライダ33の移動を作動部材40に伝達するものである。本実施の形態では、縦框24の面材収容溝24bにおいて内側部分24Bの支持ヒレ部24cに沿って配設される見付け延在部42bと、見付け延在部42bの外周側となる縁部から室外側に向けて屈曲し、面材収容溝24bにおいて内底壁24dに沿って配設される見込み延在部42cと、見込み延在部42cの室外側となる縁部の中央部分から見付け方向に沿って外周側に延在した連係片42aとを有して連係部材42が構成してある。連係片42aは、縦框24に設けた図示せぬ切欠部を介して縦框24の外周側となる見込み面24eから外部に突出しており、突出端部が作動部材40の連係孔41に嵌合している。連係部材42の見付け延在部42bには、中央部分に連係用の切欠部42dが設けてあり、切欠部42dを介してスライダ33の連係フック33bが連係してある。この連係部材42は、ハンドル本体31に連結された操作ガイド43を介して上下に沿って移動可能に支持してある。操作ガイド43は、連係部材42の見付け延在部42bに沿って延在する見付けガイド部43aと、見付けガイド部43aの外周側縁部から室外に向けて延在することにより連係部材42の見込み延在部42cに沿って延在した見込みガイド部43bとを有したもので、見付けガイド部43aを介してハンドル本体31に取り付けてある。見込みガイド部43bには、上下にスライドガイドピン44が設けてある。スライドガイドピン44は、見込み延在部42cに形成した長孔42eに挿通されるもので、操作ガイド43に対して連係部材42を上下に沿って移動可能に支持している。
【0015】
上記の構成を有する作動部材40は、ハンドル30の操作部材32が常態位置にある場合、縦框24に対して待機位置に配置されている。この状態からハンドル30の操作部材32を開き操作すると、スライダ33の上方への移動が連係部材42を介して作動部材40に伝達され、縦框24に対して作動部材40が上方に移動することになる。ハンドル30の操作力を除去すると、スライダ33の下方への移動に伴って作動部材40が下方に移動し、待機位置に復帰する。
【0016】
ロックピン50は、それぞれ縦框24の外周側となる見込み面24eにおいて作動部材40よりも室内側となる部分に縦框24の長手に沿って互いに並設したもので、見込み面24eから外周側に向けて突出している。本実施の形態では、突出端部に太径の頭部50aを有したロックピン50が、スライドガイド51を介して縦框24に取り付けてある。スライドガイド51は、縦框24に対する作動部材40の上下に沿った移動をガイドするもので、縦框24の見込み面から作動部材40の側面及び外表面を覆うように屈曲したクランク形状を成している。ロックピン50は、それぞれのスライドガイド51において縦框24に取り付けられる部分に設けてある。
図2からも明らかなように、本実施の形態の縦框24には、室外側となる縁部にカバーヒレ部24fが設けてある。このカバーヒレ部24fは、ロックピン50よりも外周側に突出しており、障子20を閉じた状態において室外側からロックピン50や作動部材40が直接視認される事態を防止することが可能である。
【0017】
ロックユニット60は、縦框24のロックピン50を介して枠体10に対する障子20の開閉制御を行うもので、ロックピンと同様、縦枠13の長手に沿って互いに並設してある。
図2、
図6~
図8に示すように、それぞれのロックユニット60は、ユニット本体61を備えている。ユニット本体61は、略矩形状を成す基板部61aの上下両端部に取付板部61bを有して構成したものである。取付板部61bは、基板部61aの上下両縁部からそれぞれほぼ直角となるように同一方向に屈曲した後、互いに離隔する向きに向けてほぼ直角に屈曲したL字状を成すものである。このユニット本体61は、基板部61aが縦框24に向けて突出する状態で取付板部61bを介して縦枠13の内周側となる見込み面13aに取り付けてある。縦枠13の見込み面13aからの基板部61aの突出寸法は、障子20を閉じた場合にロックピン50の突出端部が基板部61aと縦枠13の見込み面13aとの間に位置するように設定してある。ユニット本体61の基板部61aには、ピン進入溝62及びトリガ挿通溝63が形成してある。ピン進入溝62は、基板部61aのほぼ中央となる部分から室外側に向けて見込み方向に延在し、基板部61aの室外側に位置する縁部に開口するものである。トリガ挿通溝63は、後述するロック部材64の回転軸心を曲率中心とした円弧状を成し、かつ両端が閉塞した切欠であり、ピン進入溝62よりも上方となる部分に形成してある。本実施の形態では、室外側に向かうに従って漸次下方となるように湾曲したトリガ挿通溝63が形成してある。ユニット本体61の基板部61aにおいて縦枠13に対向する部分には、鎌部材65、ロック部材64、開放維持部材66が設けてある。
【0018】
鎌部材65は、円筒状を成す支持筒部65aと、支持筒部65aの外周面から延在したロック腕部65b及びリリース腕部65cと、支持筒部65aの端面に設けた係合部65dとを一体に成形したもので、ユニット本体61の基板部61aにおいてピン進入溝62よりも室内側、かつ上方となる部分に設けた鎌支軸65eを支持筒部65aに挿通させることにより、鎌支軸65eの軸心を中心として回転可能に配設してある。ロック腕部65bは、支持筒部65aの外周面から径方向に突出した後、突出端部がほぼ直角に屈曲したものである。より具体的に説明すると、ロック腕部65bは、
図7に示すように、鎌支軸65eから室外側に向けてほぼ水平に延在させた場合、基板部61aのピン進入溝62よりも上方に配置され、屈曲した先端部がピン進入溝62の開口端部を横断するように構成してある(鎌部材65の噛合位置)。
図8に示すように、ロック腕部65bの先端部を上方に向けて回転させた場合には、ピン進入溝62の開口端部を開放することが可能である(鎌部材65の非噛合位置)。リリース腕部65cは、
図7に示すように、鎌部材65が噛合位置に配置された場合、支持筒部65aの外周面において鎌支軸65eよりもわずかに室外側となる部分から上方に向けて突出した後に屈曲し、上方に向けて漸次室外側となるように傾斜している。リリース腕部65cの先端部は、鎌部材65が噛合位置に配置された場合、基板部61aに形成したトリガ挿通溝63の上方部を覆うように構成してある。係合部65dは、支持筒部65aにおいて縦枠13に対向する端面から縦枠13に向けて突出するように形成したもので、鎌部材65が噛合位置に向けて回転した場合に先端となる端部に噛合歯65fを有している。
【0019】
ロック部材64は、外形が長円形の平板状を成すもので、一方の端部に設けたロック支軸64aを介して基板部61aに回転可能に支持してある。ロック支軸64aは、円弧状を成すトリガ挿通溝63の曲率中心となる位置に設けたもので、トリガ挿通溝63の下端に対して鉛直上方に位置している。ロック部材64の他方の端部には、トリガ67が設けてある。トリガ67は、断面が円形のピン状を成すもので、その先端部がトリガ挿通溝63からユニット本体61の基板部61aを貫通して外部に突出している。このロック部材64は、
図7に示すように、鎌部材65が噛合位置に配置された状態でトリガ67がトリガ挿通溝63の下端に配置された場合、他方の端部がロック腕部65bの上面に当接し、鎌部材65の非噛合位置への回転を阻止することが可能である。この状態から、
図8に示すように、トリガ67がトリガ挿通溝63に沿って上方に移動するようにロック部材64を回転させると、ロック部材64の他方の端部がリリース腕部65cに当接し、以降、鎌部材65を非噛合位置に向けて回転させながらロック部材64が回転することになる。トリガ67がトリガ挿通溝63の上方部に配置された状態(トリガ67のアンロック位置)においては、鎌部材65が非噛合位置に配置されることになる。このトリガ67の上下に沿った移動距離は、ハンドル30の操作部材32を開き操作した際の作動部材40の上方への移動距離とほぼ等しくなるように設定してある。
【0020】
図からも明らかなように、これら鎌部材65及びロック部材64には、ロックバネ68が装着してある。ロックバネ68は、鎌部材65が噛合位置に維持されるように付勢するとともに、ロック部材64に設けたトリガ67がトリガ挿通溝63の下端に維持されるように付勢するものである(トリガ67のロック位置)。より具体的に説明すると、ロックバネ68は、基板部61aにおいてロック支軸64aよりも室内側となる部分に設けたバネ支軸68aから一方の端部68bがロック支軸64aを介してロック部材64に係合するように延在している。ロックバネ68の他方の端部68cは、バネ支軸68aから鎌支軸65eを介して鎌部材65のロック腕部65bに係合するように延在している。
【0021】
開放維持部材66は、ユニット本体61に設けた第1昇降ガイドピン70及び第2昇降ガイドピン71を介して基板部61aの下方部に配設したもので、ユニット本体61に対して上下に移動可能である。第1昇降ガイドピン70は、基板部61aから縦枠13に向けて突出するように設けたもので、開放維持部材66に設けた上下に沿って長孔状となるガイド溝66aを貫通している。第2昇降ガイドピン71は、下方の取付板部61bから上方に向けて突出したもので、その上端部が開放維持部材66に設けた摺動孔(図示せず)に摺動可能に嵌合している。この開放維持部材66には、係合突部66b及び押圧傾斜面66cが設けてある。係合突部66bは、開放維持部材66の上端において鎌部材65の係合部65dに対応する部分から上方に突出したものである。この係合突部66bは、
図8に示すように、鎌部材65が非噛合位置に配置された状態で開放維持部材66がユニット本体61に対して上方に配置された場合に支持筒部65aの端面に対向した状態となる。この状態から、
図7に示すように、鎌部材65が噛合位置に向けて回転すると、係合部65dの噛合歯65fに当接することによって鎌部材65の噛合位置への回転が阻止されることになる。すなわち、鎌部材65が非噛合位置に配置された状態で開放維持部材66が上方に移動すると、係合部65dが係合突部66bに係合することにより、
図8に占め枢要に、ロックバネ68の付勢力に抗して鎌部材65が非噛合位置に維持されることになる。図示の例では、係合突部66bが階段状に構成してあり、鎌部材65を非噛合位置と噛合位置との間の複数の位置に維持することが可能である。押圧傾斜面66cは、開放維持部材66の室外側に位置する上隅部に形成した斜面であり、室外に向けて漸次下方となるように傾斜している。この押圧傾斜面66cは、開放維持部材66が下方に配置された場合に基板部61aのピン進入溝62へ進入したロックピン50よりも下方に位置する一方、開放維持部材66が上方に配置された場合にピン進入溝62に突出し、ピン進入溝62に進入するロックピン50に当接するように構成してある。この開放維持部材66とユニット本体61との間には、開放維持部材66を上方に付勢する開放維持バネ72が第2昇降ガイドピン71を巻回するように設けてある。
上記の構成を有するロックユニット60は、枠体10に対して障子20を閉じた場合に障子20に設けたそれぞれのロックピン50が、基板部61aに形成したピン進入溝62に進入することができる状態でユニット本体61を介して縦枠13に取り付けてある。
【0022】
さらにこの建具では、
図2、
図4、
図5、
図9に示すように、障子20に設けた作動部材40に、ロックユニット60の数に対応してリリース部材80が設けてある。リリース部材80は、障子20を閉じた状態において、それぞれのロックユニット60の鎌部材65が噛合位置に配置され、トリガ67がトリガ挿通溝63の下端に位置している場合、ユニット本体61から突出するトリガ67の下方に配置され、作動部材40が上方に移動した場合にトリガ67をアンロック位置に向けて上方に押圧するものである。リリース部材80においてトリガ67に当接する部分には、室内側に向けて漸次低くなる湾曲凹面80aが構成してある。
【0023】
以下、上述した建具において障子20を開閉する際の動作について説明し、併せて本願発明の特徴部分について詳述する。いま、枠体10に対して障子20が開いた状態にあり、
図8に示すように、ロックユニット60の鎌部材65が非噛合位置に配置され、上方に位置した開放維持部材66の係合突部66bに係合部65dが係合することにより、ロックバネ68の付勢力に抗して鎌部材65が非噛合位置に維持されているものとする。
【0024】
この状態から枠体10に対して障子20を閉じる方向に移動させると、ユニット本体61のピン進入溝62に進入するロックピン50が開放維持部材66の押圧傾斜面66cに当接する。これにより、ユニット本体61に対して開放維持部材66が下方に移動することにより、鎌部材65の係合部65dと開放維持部材66の係合突部66bとの係合状態が解除され、
図7に示すように、ロックバネ68の付勢力によって鎌部材65が噛合位置に移動するとともに、ロック部材64の他方の端部がロック腕部65bの上面に当接した状態となる。この結果、ロック腕部65bの屈曲した先端部がピン進入溝62の開口端部を横断するように配置された状態に維持され、ピン進入溝62からのロックピン50の逸脱方向への移動が阻止されるため、枠体10に対して障子20が閉じた状態に維持される。
図2(a)に示すように、枠体10に対して障子20が閉じた状態においては、縦枠13に設けたシール部材90が介在物を挟むことなく縦框24のカバーヒレ部24fに圧接され、かつ縦枠13の内側部分24Bに一体に成形したシール部91が介在物を挟むことなく縦框24の室内に臨む見付け面24aに圧接されるため、縦枠13と縦框24との間に水密性や気密性の問題を招来するおそれがない。
【0025】
一方、上述の状態からハンドル30の操作部材32を開き操作すると、
図9に示すように、作動部材40が上方に移動することにより、複数のリリース部材80が上方に移動し、それぞれのロックユニット60に設けたトリガ67がトリガ挿通溝63に沿って同時にアンロック位置に向けて上方に移動することになる。トリガ67がアンロック位置に配置されると、回転するロック部材64がロック腕部65bの上面から退避するとともにリリース腕部65cに当接することにより、ロックバネ68の付勢力に抗して鎌部材65が非噛合位置に移動する。従って、ピン進入溝62の開口端部が開放され、ロックピン50の逸脱方向への移動が許容されるため、枠体10に対して障子20を開放することが可能となる。このとき、ピン進入溝62からロックピン50が逸脱すると、開放維持部材66が開放維持バネ72の付勢力によって上方に移動するため、鎌部材65の係合部65dが再び開放維持部材66の係合突部66bに係合し、鎌部材65が非噛合位置に維持される。従って、開いた障子20を再び閉じれば、ロックピン50が基板部61aのピン進入溝62に進入することにより、先と同様、鎌部材65が噛合位置となるため、ロック操作を行うことなく枠体10と障子20との間をロックされた状態に維持することが可能となる。
【0026】
このように、上記建具によれば、枠体10に対して障子20を閉じれば、何らのロック操作を行うことなく障子20に設けた複数のロックピン50が対応するロックユニット60に進入した状態に維持されることになる。従って、例えば、建具が風の強い地域に設けられた場合、あるいは、建具の寸法が大きい場合であっても、煩雑な操作を要することなく障子20を確実に閉じた状態に維持することが可能となり、障子20が不用意に開く事態を招来するおそれがなくなる。一方、障子20が閉じた状態から障子20に設けた唯一のハンドル30を開き操作すれば、すべてのロックユニット60においてロック状態が同時に解除されるため(アンロック状態)、煩雑な操作を要することなく障子20を開くことが可能となる。
【0027】
なお、上述した実施の形態では、縦すべり出し窓を例示しているが、本発明はこれに限定されず、枠体に対して障子が開閉されるものであれば縦すべり出し窓に限定されない。この場合、枠体に対して障子が突出するように開放するものである必要もない。また、上述した実施の形態では、枠体にロックユニットを設ける一方、障子にロックピンを設けるようにしているが、枠体にロックピンを設け、障子にロックユニットを設けるようにしても良い。この場合においても、ハンドル及び作動部材は障子に配設されることになる。さらに、ロックユニット、ロックピン、作動部材及びハンドルを設ける位置についても縦枠や縦框等の上下に沿って延在するものに限定されず、戸先となる部材に設ければ良い。例えば下框が戸先となる横すべり出し窓であれば、ロックユニット、ロックピン、作動部材及びハンドルを下枠や下框等の左右に沿って延在するものに設けても良い。この場合、作動部材やトリガの移動方向についても左右方向(下枠や下框の長手方向)となるように構成することが好ましい。またさらに、上述した実施の形態では、枠体及び障子の間に複数組のロックユニット及びロックピンを設けるようにしているが、ロックユニット及びロックピンは、枠体及び障子の間に1組あれば十分である。
【0028】
以上のように本発明に係る錠装置は、ユニット本体を介して枠体及び障子の一方に設けられるロックユニットと、前記枠体及び前記障子の他方に設けられるロックピンとを備え、前記障子が閉じた状態で前記ロックユニットがロック状態となることで前記ユニット本体に対する前記ロックピンの移動を阻止して前記障子を閉じた状態に維持する一方、前記障子に設けたハンドルが常態位置から開き操作された場合には前記ロックユニットのロック状態が解除されることで前記ユニット本体に対する前記ロックピンの移動を許容する錠装置であって、前記ハンドルの開き操作に連動する状態で前記障子に配設される作動部材を備え、前記ロックユニットには、アンロック位置に配置された場合にロック状態を解除するトリガが配設され、前記作動部材には、前記障子が閉じた状態において前記ハンドルが開き操作された際に前記トリガをアンロック位置に移動させるリリース部材が設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、ハンドルの開き操作によって作動部材を連動させ、作動部材に設けたリリース部材を介してロックユニットのトリガをアンロック位置に移動させるようにしている。従って、建具に複数のロックユニットを設けた場合にも共通の作動部材に対して複数のロックユニットのそれぞれに対応したリリース部材を設ければ、1つのハンドルを開き操作することで複数のロックユニットのトリガを同時にアンロック位置に配置することが可能となり、煩雑な開放操作を要することなく障子を開くことが可能となる。
【0029】
また本発明は、上述した錠装置において、前記トリガは、前記ロックユニットがロック状態にある場合とロック状態が解除された場合とで前記ユニット本体に対する配置位置が互いに異なり、かつ少なくとも一部が前記ユニット本体の外部に常時露出するように設けたものであり、前記リリース部材は、前記障子が閉じた状態で前記ロックユニットがロック状態にあり、かつ前記ハンドルが常態位置にある場合、前記ユニット本体の外部に露出するトリガに対してアンロック位置に向けて押圧可能となる位置に配置されることを特徴としている。
この発明によれば、ユニット本体の外部においてトリガとリリース部材とを位置決めすることができるため、取付作業を容易化することができる。
【0030】
また本発明は、上述した錠装置において、前記ロックユニットは、前記ユニット本体に対して前記トリガが上下に移動可能に配設され、前記トリガのアンロック位置が前記ユニット本体の上方部に構成されたものであり、前記作動部材は、前記障子に対して上下に移動可能、かつ前記ハンドルが常態位置に配置されている場合に待機位置に配設されるものであり、前記ハンドルが開き操作された場合に前記待機位置から上方に向けて移動することにより、前記リリース部材を介して前記トリガを上方に移動させることを特徴としている。
この発明によれば、ハンドルが操作されていない場合には作動部材を自重によって待機位置に維持させることができ、不用意に障子が開く事態を防止することが可能となる。
【0031】
また本発明は、上述した錠装置において、前記ロックユニットは、前記ユニット本体に対して回転可能に配設され、非噛合位置に配置された場合に前記ユニット本体に対する前記ロックピンの進入を許容する一方、前記ロックピンが進入した状態で噛合位置に配置された場合に前記ロックピンの逸脱移動を阻止する鎌部材と、前記鎌部材を噛合位置に維持するように付勢するロックバネと、前記鎌部材が非噛合位置に配置された場合に前記鎌部材に係合することで前記ロックバネの付勢力に抗して前記鎌部材を非噛合位置に維持する一方、前記ユニット本体に進入するロックピンが当接した場合に前記鎌部材との係合状態が解除され、前記鎌部材の噛合位置への回転を許容する開放維持部材とを備えたことを特徴としている。
この発明によれば、障子を閉じた場合にはロックピンがユニット本体に進入することで鎌部材が噛合位置に配置されるため、ロック操作を行うことなく障子を閉じた状態に維持することができる。
【0032】
また、本発明は、上述した錠装置において、前記ロックユニットは、前記鎌部材が前記噛合位置に配置された状態で前記鎌部材に係合した場合に前記鎌部材の前記非噛合位置への移動を規制するロック部材を備え、前記トリガは、前記ロック部材に設けられ、前記アンロック位置に向けて移動された場合に前記ロック部材を介して前記鎌部材を移動させ、前記ロックバネの付勢力に抗して前記鎌部材を前記非噛合位置に移動させることを特徴としている。
この発明によれば、リリース部材によってトリガがアンロック位置に移動されると、ロック部材が鎌部材を移動させることでロック状態が解除され、開放維持部材によってその状態が維持される。
【0033】
また本発明に係る建具は、上述したロックピンが前記枠体及び前記障子のいずれか一方に設けられ、かつ前記ロックユニットが前記枠体及び前記障子のいずれか他方に設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、ハンドルの開き操作によって作動部材を連動させ、作動部材に設けたリリース部材を介してロックユニットのトリガをアンロック位置に移動させるようにしている。従って、建具に複数のロックユニットを設けた場合にも共通の作動部材に対して複数のロックユニットのそれぞれに対応したリリース部材を設ければ、1つのハンドルを開き操作することで複数のロックユニットのトリガを同時にアンロック位置に配置することが可能となり、煩雑な開放操作を要することなく障子を開くことが可能となる。
【0034】
また本発明は、上述した建具において、前記ロックユニットが、前記枠体及び前記障子のいずれか他方に複数並設され、これら複数のロックユニットに対応して前記作動部材に前記リリース部材が複数設けられていることを特徴としている。
この発明によれば、ハンドルを開き操作すると、作動部材に設けたリリース部材が複数のロックユニットのそれぞれに設けたトリガを同時にアンロック位置に移動させることになり、煩雑な操作を要することなく障子を開くことが可能となる。但し、トリガは同時にアンロック位置に移動する必要はなく、ハンドルの開き操作が終わった時点ですべてのトリガがアンロック位置に移動していれば良い。
【符号の説明】
【0035】
10 枠体、13 縦枠、20 障子、24 縦框、30 ハンドル、40 作動部材、50 ロックピン、60 ロックユニット、61 ユニット本体、64 ロック部材、65 鎌部材、66 開放維持部材、67 トリガ、68 ロックバネ、80 リリース部材