(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】制電性着用品及び制電性防寒衣服
(51)【国際特許分類】
A41D 13/008 20060101AFI20240116BHJP
A41D 31/00 20190101ALI20240116BHJP
A41D 31/06 20190101ALI20240116BHJP
A41D 31/26 20190101ALI20240116BHJP
D03D 15/47 20210101ALI20240116BHJP
D03D 15/533 20210101ALI20240116BHJP
【FI】
A41D13/008
A41D31/00 503M
A41D31/06 100
A41D31/26 100
D03D15/47
D03D15/533
(21)【出願番号】P 2020061192
(22)【出願日】2020-03-30
【審査請求日】2022-10-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000001096
【氏名又は名称】倉敷紡績株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000040
【氏名又は名称】弁理士法人池内アンドパートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】森分 隆裕
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 友隆
(72)【発明者】
【氏名】小澤 一郎
【審査官】冨江 耕太郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平9-143805(JP,A)
【文献】実開昭56-48521(JP,U)
【文献】特開2012-67430(JP,A)
【文献】実開昭54-31509(JP,U)
【文献】国際公開第2018/051983(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D13/00-13/12、31/00-31/32
D03D1/00-27/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
表地と裏地の間に長繊維中綿を含む制電性着用品であって、
前記表地と裏地の少なくとも一方の生地、及び長繊維中綿には導電性繊維を含
み、
前記長繊維中綿は、少なくとも2種類の長繊維A及び長繊維Bを含み、前記長繊維Aは前記長繊維Bに比べて相対的に短く、前記長繊維A及び前記長繊維Bは一体化されて詰め物用糸とされており、
前記導電性繊維は長繊維Aに含み、
前記詰め物用糸30本当たり、前記長繊維Aに前記導電性繊維を含む詰め物用糸は3~12本の割合で含まれていることを特徴とする制電性着用品。
【請求項2】
制電性着用品は、JIS T8118:2001(静電気帯電防止作業服に関する帯電防止性試験)に準じた測定において、帯電電荷量が0.4μC/着以下である請求項1に記載の制電性着用品。
【請求項3】
前記表地と裏地の少なくとも一方の生地を構成する経糸及び緯糸の少なくとも一方には、導電性繊維が部分的に配置されている請求項1又は2に記載の制電性着用品。
【請求項4】
前記長繊維Aは、導電性繊維を10質量%以上100質量%以下含む請求項
1に記載の制電性着用品。
【請求項5】
前記
詰め物用糸の質量は0.01~3g/mの範囲である請求項1に記載の制電性着用品。
【請求項6】
前記長繊維Bは、長繊維Aに比べて1.1~100倍長い請求項
1に記載の制電性着用品。
【請求項7】
前記長繊維A及び長繊維Bは、交絡加工、エアージェット加工、巻き付け加工及び長繊維Aに対して長繊維Bを噴射させる加工から選ばれる少なくとも一つの加工により一体化されている請求項
1に記載の制電性着用品。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の制電性着用品を含む制電性防寒衣服であって、
前記表地と裏地の少なくとも一方の生地、及び長繊維中綿には導電性繊維を含むことを特徴とする制電性防寒衣服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長繊維で構成される中綿を含む制電性着用品及び制電性防寒衣服に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から作業服には帯電防止のため導電性繊維を入れることがよく知られている。制電性(帯電防止性)作業服は、半導体、電子部品などを取り扱う作業に必要であり、また可燃性ガスを取り扱う作業には必須である。特許文献1には、織物からなる導電性テープを織物表面に積層することが提案されている。特許文献2には縫い糸に導電性繊維を使用することが提案されている。特許文献3には導電性ポリエステル繊維を使用し、第四級アンモニウム塩などを含む重合体で表面処理した作業服が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3790305号公報
【文献】特開2015-030934号公報
【文献】特開2006-176896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の制電性(帯電防止性)着用品は、表地1枚で構成されているものがほとんどであり、寒い時期に着用するには問題があり、寒い時期に着用する制電性(帯電防止性)着用品が求められていた。
本発明は、上記問題を解決するため、寒い時期に温かく着用でき、かつ制電性(帯電防止性)も高い着用品及び防寒衣服を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の制電性着用品は、 表地と裏地の間に長繊維中綿を含む制電性着用品であって、
前記表地と裏地の少なくとも一方の生地、及び長繊維中綿には導電性繊維を含み、
前記長繊維中綿は、少なくとも2種類の長繊維A及び長繊維Bを含み、前記長繊維Aは前記長繊維Bに比べて相対的に短く、前記長繊維A及び前記長繊維Bは一体化されて詰め物用糸とされており、
前記導電性繊維は長繊維Aに含み、
前記詰め物用糸30本当たり、前記長繊維Aに前記導電性繊維を含む詰め物用糸は3~12本の割合で含まれていることを特徴とする。
【0006】
本発明の制電性防寒衣服は、表地と裏地の間に長繊維中綿を含む制電性防寒衣服であって、前記表地と裏地の少なくとも一方の生地、及び長繊維中綿には導電性繊維を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明は、前記表地と裏地の少なくとも一方の生地、及び長繊維中綿には導電性繊維を含むことにより、寒い時期に温かく着用でき、かつ制電性(帯電防止性)も高い防寒着用品及び防寒衣服を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は本発明の一実施例における交絡糸の側面図である。
【
図2】
図2は本発明の一実施例における長繊維エアー交絡糸の製造方法の模式的説明図である。
【
図3】
図3は本発明の一実施例における制電性防寒着用品の生地サンプルの写真である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、表地と裏地の間に長繊維中綿を含む制電性防寒着用品である。表地と裏地の少なくとも一方の生地、及び長繊維中綿には導電性繊維を含む。また本発明の制電性防寒衣服は、表地と裏地の間に長繊維中綿を含む制電性防寒衣服であって、前記表地と裏地の少なくとも一方の生地、及び長繊維中綿には導電性繊維を含む。これにより制電性(帯電防止性)の高い防寒着用品となる。制電性着用品は、JIS T8118:2001(静電気帯電防止作業服に関する帯電防止性試験)に準じた測定において、帯電電荷量は0.4μC/着以下が好ましく、より好ましくは0.23μC/着以下である。
【0010】
表地と裏地の少なくとも一方の生地を構成する経糸及び緯糸の少なくとも一方には、導電性繊維が部分的に配置されているのが好ましい。部分的に配置とは、経糸及び緯糸の少なくとも一方の例えば1インチ(25.4mm)あたり1~10本の糸として配置されているのが好ましい。なお、表地と裏地の間に長繊維中綿を含む場合は、表地と裏地の両方に導電性繊維を含むのが最も好ましい。導電性繊維は、金属繊維、炭素繊維、金属粒子や炭素粒子を練りこんだ繊維、導電性高分子を用いた繊維などがある。例えばKBセーレン社製“ベルトロン”(登録商標)制電糸、クラレ社製“クラカーボ”(登録商標)制電糸などがある。
【0011】
本発明の中綿(詰め物用糸ともいう)は、少なくとも2種類の長繊維A及び長繊維Bで構成される。長繊維A及び長繊維B以外の繊維を加えることは任意であるが、中綿を100質量%としたとき長繊維A及び長繊維B合計で70質量%以上が好ましく、より好ましくは80質量%以上である。長繊維A及び長繊維Bは一体化されている。ここで一体化とは、繊維同士が絡み合ったり巻き付いた状態をいう。長繊維Aは長繊維Bに比べて相対的に短い。長繊維Aと長繊維Bとの長さの差を設けることでかさ高性を出すことができる。
【0012】
本発明の中綿の導電性繊維は長繊維Aのみに含まれることが好ましい。長繊維Aは長繊維Bに比べて相対的に短く、帯電防止に効果がある。長繊維Aは導電性繊維を10質量%以上100質量%以下含むことが好ましい。具体的には、長繊維Aは導電性繊維100質量%使い、又は導電性繊維を10質量%以上100質量%未満含むことが好ましい。特に好ましくは15質量%以上50質量%以下である。前記の範囲であれば帯電防止機能を発揮できる。導電性繊維を10質量%以上100質量%未満とする場合は、導電性繊維糸と通常の糸(例えば下記の長繊維Bとして使用するポリエステル糸など)を引き揃え、交絡、合糸などの方法で一体化する。導電性繊維は、金属繊維、炭素繊維、金属粒子や炭素粒子を練りこんだ繊維、導電性高分子を用いた繊維などがある。例えばKBセーレン社製制電糸、クラレ社製制電糸などがある。また、長繊維Aは長繊維Bに比べて相対的に短いことから、長繊維Aに導電性繊維糸を含ませると導電性繊維糸の使用量を少なくでき、コストを安くできる。一方、長繊維Bに導電性繊維糸を含ませると、かさ高性は低くなる傾向となる。長繊維A及び長繊維Bを含む中綿の中における導電性繊維の割合は、0.5~5質量%程度が好ましい。この範囲であれば帯電防止機能を発揮できる。さらに、得られた中綿を5~50本程度の束状として用いられることがある。この場合、5~50本すべての中綿の長繊維Aに導電性繊維を用いなくともよく、長繊維Aに導電性繊維を含む中綿を、例えば30本の束であれば3~12本程度、すなわち束状本数における5~40%程度の本数用いればよい。この場合、中綿を複数本用いた束状体における導電性繊維の割合は、0.05~0.9質量%程度が良い。
【0013】
長繊維A及び長繊維Bは、ポリエステル、ナイロン、ポリプロピレン、アクリルなどの中実糸(普通糸)が使用できるが、ポリエチレンテレフタレート(PET)中空糸を用いることもできる。ポリエチレンテレフタレート中空糸は断熱効果により温かく、かつPETはコシがあり、かさ高性を高く維持できる。中空率は30%が好ましい。
【0014】
中綿の単位長さ当たりの質量は0.01~3g/mが好ましく、0.02~1.5g/mがさらに好ましい。この範囲であると、詰め物加工にする際の取り扱いに便利である。
【0015】
長繊維Bは、長繊維Aに比べて1.1~100倍長いことが好ましく、より好ましくは2~100倍であり、さらに好ましくは4~60倍である。この範囲であると、長繊維Bが長い分だけループ繊維になり、かさ高くできる。
【0016】
長繊維A及び長繊維Bは、交絡加工、エアージェット加工、巻き付け加工及び長繊維Aに対して長繊維Bを噴射させる加工から選ばれる少なくとも一つの加工により一体化されているのが好ましい。交絡加工は長繊維Aと長繊維Bの走行方向に対して垂直方向に圧空を噴射するエアー交絡機による加工である。エアージェット加工はいわゆるタスラン加工であり、長繊維Aと長繊維Bに対して進行方向に圧空を押し込む加工である。巻き付け加工は長繊維Aに対して長繊維Bを巻き付け、一体化する加工である。長繊維Aに対して長繊維Bを噴射させる加工は、長繊維Aに長繊維Bを噴射させ絡めさせる加工である。
【0017】
中綿は、平滑剤が固定されていることが好ましい。生産性が向上するためである。平滑剤としてはシリコーン樹脂、フッ素樹脂等がある。一例としてシリコーン樹脂を挙げると、中綿に、シリコーン樹脂を付与し、キュアリングにより熱固定するのが好ましい。シリコーン樹脂の好ましい付着量は、中綿に対して0.1~10質量%の範囲である。さらに、硬さ調整のためアクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、エポキシ系樹脂等を併用しても良い。
【0018】
長繊維A及び長繊維Bの単繊維繊度は0.1~300decitex、かつトータル繊度が10~600decitexの範囲が好ましい。更に好ましくは単繊維繊度が1.0~50decitex、かつトータル繊度が20~250decitexの範囲である。繊度が前記の範囲であれば、へたりにくく、かつ風合いも良好である。
【0019】
本発明の中綿は、表地と裏地の間に配列して充填され、中綿の幅方向に縫製された複数本のキルト糸により表地と裏地に固定されているのが好ましい。これにより、固定箇所の間で中綿の長さは変化することはなく、長繊維AとBは一体化しているので、洗濯を繰り返しても中綿の動きは制限され、片寄りが少なく、かさも高い衣服製品となる。なお、本発明の中綿は、長繊維詰め物用糸とともに、その他長繊維詰め物を用いてもよく、その他長繊維詰め物と本発明の長繊維詰め物用糸とを混合して、複数本のキルト糸により側地と固定してもよい。また、他の羽毛、人工羽毛、短繊維綿と併用してもよい。
【0020】
本発明の中綿は、表地と裏地の間に充填して着用品とする。着用品は手袋、ネックウォーマー、肌着、ジャケット等の上衣、パンツ、ベスト、スカート等の下衣、つなぎ服、保温服等が好ましい。中綿の充填量は、タテ10cm×ヨコ10cmあたり70~110g/m2が好ましい。これにより温かさを保持できる。
【0021】
本発明の制電性着用品の表地及び裏地は、通常の着用品に使用されている生地を使用できる。例えば、綿糸100%の紡績糸、ポリエステル繊維100%の紡績糸、又は綿(コットン)とポリエステル繊維との混紡糸を含む布帛であるのが好ましい。綿(コットン)とポリエステル繊維との混紡糸の場合は、綿10~90質量%、ポリエステル繊維90~10質量%の割合で混紡できる。布帛は織物又は編物が好ましい。とくに織物が好ましい。これにより洗濯が可能であり、繰り返し使用できる。
【0022】
本発明に適用できる織物としては、平織、斜文織(綾織)、朱子織、変化平織、変化斜文織、変化朱子織、変わり織、紋織、片重ね織、二重組織、多重組織、経パイル織、緯パイル織、絡み織等がある。編み物としては、丸編、緯編、経編、パイル編等を含み、平編、天竺編、フライス編(リブ編,ゴム編,畔編)、スムース編(両面編)、ゴム編、パール編、デンビー組織、コード組織、アトラス組織、鎖編組織、挿入組織等がある。このうち綾織物が好ましい。
【0023】
表地に使用する織物又は編物の単位面積当たりの質量(目付)は50~500g/m2が好ましく、さらに好ましくは100~450g/m2であり、とくに好ましくは140~400g/m2である。裏地の目付は50~170g/m2程度が好ましい。
【0024】
以下図面を用いて説明する。各図面において、同一符号は同一部分を示す。また以下においては、中綿は一例として交絡糸の場合を説明する。
図1は本発明の一実施例における長繊維交絡糸の側面図である。この長繊維交絡糸1は、芯糸2(長繊維A)と花糸3(長繊維B)の構成繊維が互いに絡まっており、花糸3(長繊維B)が開繊されて部分的にループ状繊維を形成している。
【0025】
図2はエアー交絡糸の製造方法を示す模式的説明図である。巻き糸体4から芯糸4a(長繊維A)と巻き糸体15から芯糸15a(長繊維Aの制電糸)を引き出し、巻き糸体5から花糸5a(長繊維B)を引き出し、2個のフィードローラ6、7と糸ガイド8を通過させてエアー交絡装置10に供給する。エアー交絡装置10に圧力空気11を供給すると、糸道9内の繊維は開繊されたり旋回されることにより、互いに交絡する。12は混繊交絡糸である。芯糸の供給速度は10~200m/分、花糸の供給速度は20~10000m/分、巻き取り速度10~200m/分、空気圧力0.01~1.0MPaの交絡ノズルで混繊交絡処理を施した後、デリベリローラ13とワインダーローラ14を通過後の糸を巻き糸体20に巻き取る。この方法は、糸の巻き取り速度を20~1500m/分と高速化でき、生産性が高いところに利点がある。
【0026】
得られた交絡糸は、シリコーン樹脂を付与する。シリコーン樹脂としては、分子末端がハイドロジェン基(-OH)、ビニル基(-CH=CH2)等を有する反応性シリコーン処理剤を使用するのが好ましい。例えば、松本油脂製薬社製“TERON E 530”バルキーシリコーン、“TERON E 731”、“TERON E 722”等のソフトシリコーンを使用できる。付与量は、乾燥重量で中綿に対し0.1~10質量%付与するのが好ましい。次に熱処理工程において、140~190℃で1~10分間熱処理し、シリコーン樹脂をキュアリングする。
【実施例】
【0027】
以下実施例により、本発明をさらに具体的に説明する。なお本発明は下記の実施例に限定されるものではない。
各物性の測定方法について説明する。
<帯電電荷量測定試験>
帯電電荷量測定試験は、制電性着用品サンプルを、JIS T8118:2001(静電気帯電防止作業服に関する帯電防止性試験、タンブラー法)に準じて測定した。この試験は、試料サンプル生地をドラム内に入れ、46rpmで15分間回転させる。ドラム内面には摩擦布としてアクリル繊維製織物を内張としたものと、ナイロン繊維織物を内張としたものの2つがあり、それぞれの帯電電荷量測定試験をする。試験室の環境条件は、温度20℃、相対湿度40%RHであり、JIS L0217 103法(家庭洗濯5回繰り返した後、注水すすぎ20分タンブル乾燥)後に測定した。
<かさ高性の測定方法>
羽毛の品質基準の1つにかさ高性がある。羽毛はJIS羽毛試験方法(JIS L 1903-1998 羽毛製品に用いられる充填材料用羽毛の試験方法)に準拠した方法で中綿材(詰め物用糸)のかさ高性を測定した。内径29cm、高さ50cmのシリンダー容器に30gの中綿材を入れ、120gの荷重用円盤(おもり)を2分間のせた後の中綿材の高さを測定する。おもりの3カ所を1mm単位まで測定する。弾力のある良質の中綿材ほどこの値が大きい。この際に、10本以上の中綿材(詰め物用糸)を束ねて長さ50cmにカットして30gを採取し、採取した束状の中綿材(詰め物用糸)を手で解しながら測定器にパラパラと30g入れ、測定器に入り切らない場合は溢れた中綿材(詰め物用糸)を、手で軽く押して溢れないように入れた。
【0028】
(実施例1)
<中綿>
芯糸として、導電性繊維であるKBセーレン社製制電糸、繊度22decitex、フィラメント数3本及びポリエチレンテレフタレートフィラメント糸、繊度33decitex、フィラメント数18本を使用し、花糸としてポリエチレンテレフタレート(PET)中空フィラメント糸(中空率35%)、繊度39decitex、フィラメント数12本を使用し、表1に示す条件で詰め物用糸を作製した。芯糸中の導電性繊維は約40質量%であった。この導電性繊維を含む詰め物用糸3本と、導電性繊維を含まない詰め物用糸12本を束ねた。詰め物用糸全体における導電性繊維の割合は0.2質量%であった。詰め物用糸の質量は3.5g/mであった。
以下、導電性繊維は制電糸、33T/24Fと表示し、ポリエチレンテレフタレート(PET)中空フィラメント糸、繊度39decitex ,フィラメント数12本はPET中空糸39T/12Fのように表示することもある。
次にシリコーン樹脂付与工程において、シリコーン樹脂を付与した。シリコーン樹脂付与工程では、上記詰め物用糸を15本束状にして行
った。なお、後述する比較例1の詰め物用糸
は導電性繊維を含めない詰め物用糸とした。
シリコーン樹脂としては、松本油脂製薬社製“テロン E-530”、10質量%、架橋剤として同社製“マーポテロン E-722” 、0.5質量%を加えた水溶液を使用し、付与量は乾燥重量で詰め綿に対し3.0wt%散布した。次に熱処理工程において、140~190℃で1~13分間熱処理し、シリコーン樹脂を熱キュアリング固定した。
<制電性着用品の生地サンプルの作成>
表地及び裏地としてポリエステル65質量%、コットン35質量%の混紡紡績糸(メートル番手34番、単糸使い)を使用し、経糸密度128.5本/インチ、緯糸密度75本/インチ、導電糸(クラレトレーディング社製、商品名"クラカーボ ")は経糸2インチ間に3本配置し、綾織り組織(2/1)、単位面積当たりの質量(目付)165g/m
2の織物とした。この織物をタテ50cm,ヨコ50cmの正方形にカットし、幅方向の2つの辺を縫製し、内側は一方向に12本のキルティングを入れた。このキルティング内に中綿を入れた。充填量はトータル24.6gであった。その後、中綿の両端を表地、裏地とともに縫製した。
図3は本実施例の制電性着用品の生地サンプルの写真である。
この生地サンプルの帯電電荷量は、アクリル繊維製織物を摩擦布としたとき0.20μC/着(マイクロクーロン)、ナイロン繊維製織物を摩擦布としたとき0.13μC/着(マイクロクーロン)であった。
【0029】
(比較例1)
中綿にも表地及び裏地にも導電性繊維を使用しなかった以外は実施例1と同様に着用品の生地サンプルを作成した。
【0030】
(比較例2)
中綿を使用しない以外は実施例1と同様に着用品生地のサンプルを作成した。
以上の条件と結果をまとめて表1~2に示す。
【0031】
【0032】
【0033】
表2から明らかなとおり、実施例1は比較例1及び2に比べて帯電電荷量が低く、制電性(帯電防止性)が高い着用品であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明の制電性着用品は、手袋、ネックウォーマー、肌着、ジャケット等の上衣、ズボン、スカート、パンツ等の下衣、ベスト、インナー、つなぎ服、保温服等に好適である。
【符号の説明】
【0035】
1 長繊維交絡糸
2,4a 芯糸
3,5a 花糸
4,5,15,20 巻き糸体
6,7 フィードローラ
8 糸ガイド
9 交絡機の糸道
10 エアー交絡装置
11 圧力空気
12 混繊交絡糸
13 デリベリローラ
14 ワインダーローラ
15a 芯糸(長繊維Aの制電糸)
20 巻き糸体