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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】香料組成物
(51)【国際特許分類】
   C07D 305/14 20060101AFI20240116BHJP
   C11D 3/50 20060101ALI20240116BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20240116BHJP
   A61Q 13/00 20060101ALI20240116BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20240116BHJP
   A23L 27/20 20160101ALI20240116BHJP
   A23L 2/00 20060101ALI20240116BHJP
   A23L 2/56 20060101ALI20240116BHJP
   A24D 3/08 20060101ALI20240116BHJP
   C11B 9/00 20060101ALI20240116BHJP
   A23F 3/16 20060101ALN20240116BHJP
【FI】
C07D305/14 CSP
C11D3/50
A61K8/49
A61Q13/00 101
A61Q11/00
A23L27/20 G
A23L2/00 B
A23L2/56
A24D3/08
C11B9/00 X
A23F3/16
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020073320
(22)【出願日】2020-04-16
(65)【公開番号】P2021169571
(43)【公開日】2021-10-28
【審査請求日】2023-02-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000169466
【氏名又は名称】高砂香料工業株式会社
(72)【発明者】
【氏名】村田 有明
(72)【発明者】
【氏名】草野 友実
(72)【発明者】
【氏名】富山 賢一
(72)【発明者】
【氏名】倉部 朱希
(72)【発明者】
【氏名】平良 和也
(72)【発明者】
【氏名】中山 裕治
(72)【発明者】
【氏名】中崎 敦夫
【審査官】吉森 晃
(56)【参考文献】
【文献】特許第6600116(JP,B2)
【文献】スイス国特許発明第00574381(CH,A5)
【文献】米国特許出願公開第2006/0040849(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-2066966(KR,B1)
【文献】国際公開第2018/155720(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11B 9/00
C11D 3/50
C07D 305/14
A61K 8/49
A61Q 13/00
A61Q 11/00
A23L 27/20
A23L 2/00
A23L 2/56
A24D 3/08
A23F 3/16
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物。
【化1】
【請求項2】
請求項1に記載の化合物を含有する香料組成物。
【請求項3】
飲食品用である請求項2に記載の香料組成物。
【請求項4】
請求項1に記載の化合物または請求項2もしくは3に記載の香料組成物を含有する飲食品、口腔用組成物、たばこ製品、または消費者製品。
【請求項5】
請求項1に記載の化合物または請求項2もしくは3に記載の香料組成物を添加することを特徴とする飲食品、口腔用組成物、たばこ製品、または消費者製品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調合香料原料などとして有用な化合物および香料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、消費者の嗜好性が多様化したことにより、飲食品等に使用される香料においては、果実感、天然感の高い香味や、他と差別化された香味を強く求められている。しかしながら、従来の香料原料の組み合わせではこうした要求に対応が難しい場合もあり、新たな香料素材が強く求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、調合香料原料などとして有用な香気を持つ新規な化合物および該化合物を含有する香料組成物、飲食品等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明者らは、種々の化合物を合成し、その香気について検討したところ、オキサトリシクロ構造を有する化合物が、優れた香気を有することを見出した。
【0005】
すなわち本発明は以下の[1]~[5]に関する。
[1] 下記式(1)で表される化合物。
【0006】
【化1】
【0007】
[2] [1]に記載の化合物を含有する香料組成物。
[3] 飲食品用である[2]に記載の香料組成物。
[4] [1]に記載の化合物または[2]もしくは[3]に記載の香料組成物を含有する飲食品、口腔用組成物、たばこ製品、または消費者製品。
[5] [1]に記載の化合物または[2]もしくは[3]に記載の香料組成物を添加することを特徴とする飲食品、口腔用組成物、たばこ製品、または消費者製品の製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、調合香料原料などとして有用な香気を持つ新規な化合物および該化合物を含有する香料組成物が提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明における3,9-ジメチル-2-オキサトリシクロ[4.2.1.03,8]ノナン(以下、本発明化合物とも記載する)は、下記式(1a)、(1b)、(1c)、(1d)で表される4つの異性体が存在する。
【0010】
【化2】
【0011】
化合物(1a):(1S,3R,6S,8R,9R)体
化合物(1b):(1R,3S,6R,8S,9S)体
化合物(1c):(1S,3R,6S,8R,9S)体
化合物(1d):(1R,3S,6R,8S,9R)体
本発明の化合物の製造方法について、化合物(1a)及び化合物(1c)を例に説明する。
l-リモネンをハイドロボレーションによりヒドロキシ化した後に酸化反応を行いカルボン酸とする。続いて、無水トリフルオロ酢酸を反応させて二環性化合物を合成し、NaBHを作用させ閉環反応を行うことで、化合物(1a)及び化合物(1b)の混合物が得られる。
【0012】
【化3】
【0013】
化合物(1b)及び化合物(1d)は、化合物(1a)及び化合物(1c)を合成する際の出発原料であるl-リモネンを、d-リモネンに替えることによって同様に合成することができる。
【0014】
本発明の香料組成物における本発明化合物の含有量は、香料組成物の重量を基準として好ましくは0.00001~10000ppm、より好ましくは0.0001~1000ppm、さらに好ましくは0.001~100ppmである。
また、本発明化合物の4種の異性体は、いずれも香気成分として有用であり、任意の異性体及び異性体混合物を本発明の香料組成物に用いることができる。
【0015】
本発明化合物及び本発明の香料組成物は、そのまま、飲食品、口腔用組成物、たばこ製品、消費者製品に極微量配合して、柑橘様の香気・香味を付与又は増強することができる。
飲食品の具体例としては、例えば、炭酸飲料、清涼飲料、果汁飲料類、乳飲料類、乳酸菌飲料類、ドリンク剤類、豆乳、茶飲料などの飲料類;チューハイ、カクテルドリンク、発泡酒、果実酒、薬味酒などのアルコール飲料類;アイスクリーム、アイスミルク、ラクトアイス、氷菓、ヨーグルト、プリン、ゼリー、デイリーデザートなどのデザート類;キャラメル、キャンディー、錠菓、クラッカー、ビスケット、クッキー、パイ、チョコレート、スナック、チューインガムなどの菓子類;和風スープ、洋風スープなどのスープ類;ジャム類;風味調味料類;各種インスタント飲料類;各種インスタント食品類などを挙げることができる。この中でも、飲料類又はアルコール飲料類が好ましい。
【0016】
本発明の化合物の飲食品への添加量は、飲食品の重量に対して各々0.00001~10000ppb、好ましくは0.0001~1000ppb、より好ましくは0.001~100ppbの濃度範囲とすることができる。
香料組成物の飲食品への添加量は、製品の種類や形態に応じて異なるが、通常、香料組成物を添加する前の飲食品の質量を基準として0.001~10質量%、好ましくは0.01~5質量%の濃度範囲とすることができる。
口腔用組成物としては、例えば、歯磨き剤、口腔洗浄料、マウスウオッシュ、トローチ、チューインガム類などを挙げることができる。
【0017】
本発明の化合物の口腔用組成物への添加量は、口腔用組成物の重量に対して各々0.0001~100000ppb、好ましくは0.001~10000ppb、より好ましくは0.01~1000ppbの濃度範囲とすることができる。
香料組成物の口腔用組成物への添加量は、製品の種類や形態に応じて異なるが、通常口腔用組成物の全質量に対して、好ましくは0.01~5質量%、より好ましくは0.1~3質量%とすることができる。
【0018】
たばこ製品としては、紙巻きたばこ、電子たばこなどを挙げることができる。
本発明の化合物のたばこ製品への添加量は、たばこ製品の重量に対して各々0.0001~100ppm、好ましくは0.001~10ppm、より好ましくは0.01~1ppmの濃度範囲とすることができる。
香料組成物のたばこ製品への添加量は、製品の種類や形態に応じて異なるが、例えばたばこの葉の部分の全質量に対して、好ましくは0.00001~90質量%、より好ましくは0.0001~50質量%とすることができる。
【0019】
消費者製品の具体例としては、香水、オードパルファム、オードトワレ、オーデコロンなどのフレグランス製品;
洗顔クリーム、クレンジングクリーム、乳液、化粧水、美容液などの基礎化粧品;
口紅、リップクリーム、アイライナー、マスカラ、アイシャドゥ、眉墨、アイパック、ネイルエナメル、エナメルリムーバなどの仕上げ化粧品;
ポマード、ブリランチン、セットローション、ヘアースティック、ヘアーソリッド、ヘアーオイル、ヘアートリートメント、ヘアークリーム、ヘアートニック、ヘアーリキッド、ヘアースプレー、バンドリン、養毛剤、染毛剤などの頭髪化粧品;
サンタン製品、サンスクリーン製品などの日焼け化粧品;
制汗剤、アフターシェービングローション及びジェル、パーマネン卜ウェーブ剤、薬用石鹸、薬用シャンプー、薬用皮膚化粧料などの薬用化粧品;
シャンプー、リンス、リンスインシャンプー、コンディショナー、トリートメン卜、ヘアーパックなどのヘアケア製品;
化粧石鹸、浴用石鹸、香水石鹸、透明石鹸、合成石鹸などの石鹸;
ボディソープ、ボディシャンプー、ハンドソープ、フェースクリームなどの身体洗浄剤;
入浴剤(バスソルト、バスタブレット、バスリキッド、等)、フォームバス(バブルバス、等)、バスオイル(バスパヒューム、バスカプセル、等)、ミルクバス、バスジェリー、バスキューブなどの浴用剤;
衣料用重質洗剤、衣料用軽質洗剤、液体洗剤、洗濯石鹸、コンパクト洗剤、粉石鹸などの洗剤;
ソフナー、ファーニチァケアーなどの柔軟仕上げ剤;
クレンザー、ハウスクリーナー、トイレ洗浄剤、浴室用洗浄剤、ガラスクリーナー、カビ取り剤、排水管用洗浄剤などの洗浄剤;
台所用石鹸、台所用合成石鹸、食器用洗剤などの台所用洗剤;
酸化型漂白剤(塩素系漂白剤、酸素系漂白剤、等)、還元型漂白剤(硫黄系漂白剤、等)、光学的漂白剤などの漂白剤;
スプレータイプ、パウダースプレーなどのエアゾール剤;
固形状タイプ、ゲル状タイプ、リキッドタイプ(水性、油性)などの消臭・芳香剤;
ティッシュペーパー、トイレットペーパーなどの日用・雑貨品;
液体入浴剤、洗口液、忌避剤(ミストスプレータイプ、水性液体タイプ)などの医薬部外品、薬用化粧品、薬用ローションなどの医薬品、などを挙げることができる。
【0020】
本発明の化合物の消費者製品への添加量は、消費者製品の重量に対して各々0.0001~100000ppb、好ましくは0.001~10000ppb、より好ましくは0.01~1000ppbの濃度範囲とすることができる。
香料組成物の消費者製品への添加量は、製品の種類や形態に応じて異なるが、通常、香料組成物を添加する前の消費者製品の質量を基準として、各々0.001~90質量%、好ましくは0.01~50質量%、より好ましくは0.1~25質量%とすることができる。
【0021】
また、本発明の化合物または香料組成物を、他の香料成分と混合して上記の各製品及び組成物に添加し、柑橘様の香気・香味を付与又は増強することもできる。他の香料成分としては、各種の合成香料、天然香料、天然精油、植物エキスなどを挙げることができ、例えば、「特許庁公報、周知・慣用技術集(香料)第II部食品香料,P88-131,平成12年1月14日発行」に記載されている天然精油、天然香料、合成香料などを挙げることができる。
【0022】
本発明において付与又は増強される柑橘様香気・香味の柑橘類としては、グレープフルーツ、オレンジ、レモン、ライム、ユズ、ブラッドオレンジ、ビターオレンジ、タンジェリン、マンダリンオレンジ、みかん、甘夏、ナツミカン、ハッサク、ブンタン、カボス、スダチ、ヘベス、ベルガモット、スウィーティー(オロブロンコ)等が好ましいが、ここに記載した柑橘類に限定されるものではない。
【実施例
【0023】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
実施例において使用した分析機器は以下の通りである。
【0024】
NMR測定装置:AVANCEIII 500(ブルカーバイオスピン社製)
ガスクロマトグラフ質量分析計:GCMS‐QP2010(島津製作所社製)
ガスクロマトグラフ‐オービトラップ型質量分析計:TRACE1310(GC)+ Exactive GC(質量分析計)(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)
高速液体クロマトグラフ
ポンプ:LC-20A(島津製作所社製)
検出器:SPD-M20A(ジーエルサイエンス社製)
分離カラム:YMC-TriartC18 ExRS(YMC社製)
(実施例1)化合物(1a)および化合物(1c)の合成
【0025】
【化4】
【0026】
(a)(S)-2-(4-メチル-3-シクロヘキセン-1-イル)プロパン-1-オールの合成
【0027】
【化5】
【0028】
l-リモネン(4.82g)のTHF溶液(14.5mL)に、9-BBN(0.5M/THF溶液、96.0mL)を5℃にて滴下した。滴下終了後、20℃にて1時間反応させることで、中間体化合物を得た。その後、10%水酸化ナトリウム水溶液(12.0mL)およびの過酸化水素水(13.0mL)を加え、40℃にて2時間反応させた後、ジエチルエーテル(20mL)を加え分液した。
続いて、得られた有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=5:1)により精製を行うことで、(S)-2-(4-メチル-3-シクロヘキセン-1-イル)プロパン-1-オールが5.16g(収率:93.0%、GC純度:95.1%)得られた。
【0029】
(b)(S)-2-(4-メチル-3-シクロヘキセン-1-イル)-1-プロパナールの製造
【0030】
【化6】
【0031】
(a)で得られた(S)-2-(4-メチル-3-シクロヘキセン-1-イル)プロパン-1-オール(2.04g)のトルエン(2.7mL)溶液に、16.0mgのAZADOL(16.0mg)およびジアセトキシヨードベンゼン(4.5g)を加え、15℃にて1時間反応させた。この反応液にトルエン(30.0mL)および5%亜硫酸差トリウム水溶液(45.0mL)を加え反応をクエンチした後、有機層を分液した。
続いて、得られた有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=12:1)により精製を行うことで、(S)-2-(4-メチル-3-シクロヘキセン-1-イル)-1-プロパナールが1.26g(収率:64.7%、GC純度:99.3%)得られた。
【0032】
(c)(S)-2-(4-メチル-3-シクロヘキセン-1-イル)プロピオン酸の合成
【0033】
【化7】
【0034】
(b)で合成した(S)-2-(4-メチル-3-シクロヘキセン-1-イル)-1-プロパナール(2.12g)の蒸留水(12.mL)およびtert-ブタノール(12.6mL)溶液に、リン酸二水素ナトリウム(2.32g)および7等量の2-メチル-2-ブテンを順次加え、反応液を20℃に保温した。続いて、1.0M次亜塩素酸ナトリウム水溶液(15.0mL)を滴下し、室温にて30分間反応させた。この反応液にヘキサン(50.0mL)および10%水酸化ナトリム水溶液(25.0mL)を滴下後、1規定塩酸をpH=1になるまで加えた後、有機層を分液した。
続いて、得られた有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=2:1)により精製を行うことで、(S)-2-(4-メチル-3-シクロヘキセン-1-イル)プロピオン酸が収量1.54g(収率:71.0%、GC純度:100%)得られた。
【0035】
(d)(1S,5S)-2,6-ジメチル-7-オキソビシクロ[3,2,1]オクタン-2-イル-トリフルオロアセテートの合成
【0036】
【化8】
【0037】
(c)で合成した(S)2-(4-メチル-3-シクロヘキセン-1-イル)プロピオン酸(1.50g)のトルエン(45.0mL)溶液に、トリフルオロ酢酸無水物(7.49g)を加え、20℃にて2時間反応させることで、(1S、5S)-2,6-ジメチル-7-オキソビシクロ[3,2,1]オクタン-2-イル-トリフルオロアセテートを得た。この時、副生成物として(1S,5S)-4,7-ジメチルビシクロ[3,2,1]オクタン-3-エン-6-オンが33.6%生成した。続いて、この反応液に10%水酸化ナトリウム水溶液(28.0mL)を滴下後、有機層を分液した。
得られた有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン:酢酸エチル=10:1)を用いて精製を行うことで、(1S,5S)-2,6-ジメチル-7-オキソビシクロ[3,2,1]オクタン-2-イル-トリフルオロアセテートが、副生成物の(1S、5S)-4,7-ジメチルビシクロ[3,2,1]オクタン-3-エン-6-オンとの混合物として1.46g得られた。
【0038】
(e)(1R,5S,6R,7S)-2,6-ジメチルビシクロ[3,2,1]オクタン-2,7-ジオーおよび(1R,5S,6S,7S)-2,6-ジメチルビシクロ[3,2,1]オクタン-2,7-ジオールの合成
【0039】
【化9】
【0040】
(d)で合成した(1S,5S)-2,6-ジメチル-7-オキソビシクロ[3,2,1]オクタン-2-イル-トリフルオロアセテートおよび副生成物の混合物(0.40g)のメタノール(6.0mL)溶液を5℃に冷却し、水素化ホウ素ナトリウム(0.28g)を加え2時間反応させた後、ジエチルエーテル(12.0mL)および水(6.0mL)を加えて、有機層を分液した。
続いて、得られた有機層を濃縮し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(ヘキサン: 酢酸エチル=5:1)を用いて精製することで、目的の(1R,5S,6R,7S)-2,6-ジメチルビシクロ[3,2,1]オクタン-2,7-ジオールを36.0mg、収率28.0%にて、(1R,5S,6S,7S)-2,6-ジメチルビシクロ[3,2,1]オクタン-2,7-ジオールを80.0mgの収率41.0%にて得た。
【0041】
(f)(1S,3R,6S,8R,9R)-3,9-ジメチル-2-オキサトリサイクロ[4.2.1.03,8]ノナン(1a)および(1S,3R,6S,8R,9S)-3,9-ジメチル-2-オキサトリサイクロ[4.2.1.03,8]ノナン(1c)の合成
【0042】
【化10】
【0043】
(e)で合成した65.0mgの(1R,5S,6R,7S)-2,6-ジメチルビシクロ[3,2,1]オクタン-2、7-ジオールおよび(1R,5S,6S,7S)-2,6-ジメチルビシクロ[3,2,1]オクタン-2,7-ジオールの混合物(8:92)を、ジクロロメタン(2.0mL)溶液を5℃に冷却し、2.0mLの1規定塩酸を加え5時間反応させた後、有機層を分液した。分液した有機層を濃縮することにより、(1S,3R,6S,8R,9R)-3,9-ジメチル-2-オキサトリシクロ[4.2.1.03,8]ノナン(1a)および(1S,3R,6S,8R,9S)-3,9-ジメチル-2-オキサトリシクロ[4.2.1.03,8]ノナン(1c)の混合物を得た。続いて、高速液体クロマトグラフィー(水:アセトニトリル=35:65(容積比))により精製を行い、目的の(1S,3R,6S,8R,9R)-3,9-ジメチル-2-オキサトリシクロ[4.2.1.03,8]ノナン(1a)(GC純度100%)および(1S,3R,6S,8R,9S)-3,9-ジメチル-2-オキサトリシクロ[4.2.1.03,8]ノナン(1c)(GC純度100%)を得た。
【0044】
<(1S,3R,6S,8R,9R)-3,9-ジメチル-2-オキサトリシクロ[4.2.1.03,8]ノナンの物理的データ>
1H NMR(500MHz,acetone-d6)δ:
4.31(dd,J=5.5Hz,1.26Hz,1H),2.90(dd,J=5.50Hz,4.10Hz,1H),1.97(m,1H),1.93(m,1H),1.90(q,J=7.50Hz,1H),1.68(m,1H),1.61(d,J=12.50Hz,1H),1.49(dt,J=12.50Hz,4.10Hz,1H),1.48(dt,J=14.70Hz,1.07Hz,1H),1.43(ddd,J=14.70Hz,9.50Hz,1.07Hz,1H),1.19(s,3H),0.73(d,J=7.50Hz,3H)
13C NMR(125MHz,CDCl3)δ:
85.68,85.10,50.13,45.78,41.16,31.98,29.67,28.82,27.95,17.19
HRMS(CI+):calcd C10H17O([M+H]+)153.1274;found,153.1273
【0045】
<(1S,3R,6S,8R,9S)-3,9-ジメチル-2-オキサトリシクロ[4.2.1.03,8]ノナンの物理的データ>
1H NMR(500MHz,CDCl3)δ:
4.47(t,J=5.00Hz,1H),2.83(dd,J=5.30Hz,4.75Hz,1H),2.04(q,J=5.00Hz,1H),1.81(m,1H),1.67(m,1H),1.59(d,12.45Hz,1H),1.57(dt,J=13.95Hz,8.50Hz,1H),1.43(dd,J=14.35Hz,8.60Hz,1H),1.34(dt,J=14.35Hz,9.50Hz,1H),1.24(s,3H),1.24(m,1H),1.01(d,J=6.95Hz,3H)
13C NMR(125MHz,CDCl3)δ:
85.24,81.21,44.86,42.86,36.66,30.10,29.65,28.71,19.10,8.80
HRMS(CI+):calcd C10H17O([M+H]+)153.1274;found,153.1274
【0046】
(実施例2)(1R,3S,6R,8S,9S)-3,9-ジメチル-2-オキサトリシクロ[4.2.1.03,8]ノナン(化合物(1b))および(1R,3S,6R,8S,9R)-3,9-ジメチル-2-オキサトリシクロ[4.2.1.03,8]ノナン(化合物(1d))の合成
実施例1におけるl-リモネンをd-リモネンに変更した以外は実施例1と同様に行い、(1R,3S,6R,8S,9S)-3,9-ジメチル-2-オキサトリシクロ[4.2.1.03,8]ノナン(GC純度100%)および(1R,3S,6R,8S,9R)-3,9-ジメチル-2-オキサトリシクロ[4.2.1.03,8]ノナン(GC純度100%)を得た。
【0047】
<(1R,3S,6R,8S,9S)-3,9-ジメチル-2-オキサトリシクロ[4.2.1.03,8]ノナンの物理的データ>
1H NMR(500MHz,acetone-d6)δ:
4.31(dd,J=5.5Hz,1.26Hz,1H),2.90(dd,J=5.50Hz,4.10Hz,1H),1.97(m,1H),1.93(m,1H),1.90(q,J=7.50Hz,1H),1.68(m,1H),1.61(d,J=12.50Hz,1H),1.49(dt,J=12.50Hz,4.10Hz,1H),1.48(dt,J=14.70Hz,1.07Hz,1H),1.43(ddd,J=14.70Hz,9.50Hz,1.07Hz,1H),1.19(s,3H),0.73(d,J=7.50Hz,3H)
13C NMR(125MHz,CDCl3)δ:
85.68,85.10,50.13,45.78,41.16,31.98,29.67,28.82,27.95,17.19
HRMS(CI+):calcd C10H17O([M+H]+)153.1274;found,153.1274
【0048】
<(1R,3S,6R,8S,9R)-3,9-ジメチル-2-オキサトリシクロ[4.2.1.03,8]ノナンの物理的データ>
1H NMR(500MHz,CDCl3)δ:
4.47(t,J=5.00Hz,1H),2.83(dd,J=5.30Hz,4.75Hz,1H),2.04(q,J=5.00Hz,1H),1.81(m,1H),1.67(m,1H),1.59(d,12.45Hz,1H),1.57(dt,J=13.95Hz,8.50Hz,1H),1.43(dd,J=14.35Hz,8.60Hz,1H),1.34(dt,J=14.35Hz,9.50Hz,1H),1.24(s,3H),1.24(m,1H),1.01(d,J=6.95Hz,3H)
13C NMR(125MHz,CDCl3)δ:
85.24,81.21,44.86,42.86,36.66,30.10,29.65,28.71,19.10,8.80
HRMS(CI+):calcd C10H17O([M+H]+)153.1274;found,153.1274
【0049】
(実施例3)オレンジ香料組成物の製造
実施例1で製造した化合物(1a)を用いて、下記処方に従って、オレンジ香料組成物(A)を調製した。比較として、下記処方に従いオレンジ香料組成物(B)を調製した。
【0050】
【表1】
【0051】
上記処方で調製したオレンジ香料組成物(A)および(B)をそれぞれ水に0.1%添加し、11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、香料組成物(A)の方が、香料組成物(B)よりも、本物らしい果汁感、瑞々しさ、フレッシュさが付与され、格段に優れていると全員が指摘した。香料組成物(A)中の化合物(1a)については、化合物(1c)に置き換えた場合も同様の評価であった。
【0052】
(実施例4)オレンジ香料組成物の製造
実施例2で製造した化合物(1b)を用いて、下記処方に従って、オレンジ香料組成物(C)を調製した。比較として、下記処方に従いオレンジ香料組成物(D)を調製した。
【0053】
【表2】
【0054】
上記処方で調製したオレンジ香料組成物(C)および(D)をそれぞれ水に0.1%添加し、11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、香料組成物(C)の方が、香料組成物(D)よりも、本物らしいグリーン感やフレッシュ感が強化され、格段に優れていると全員が指摘した。香料組成物(C)中の化合物(1b)については、化合物(1d)に置き換えた場合も同様の評価であった。
【0055】
(実施例5)オレンジ香料組成物の製造
実施例1で製造した化合物(1a)と化合物(1c)の混合物(以下、実施例1の混合物という)を用いて、下記処方に従って、オレンジ香料組成物(1)を調製した。比較として、下記処方に従いオレンジ香料組成物(2)を調製した。
【0056】
【表3】
【0057】
上記処方で調製したオレンジ香料組成物(1)および(2)をそれぞれ水に0.1%添加し、11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、香料組成物(1)の方が、香料組成物(2)よりも、本物らしい果汁感、瑞々しさ、フレッシュさが付与され、格段に優れていると全員が指摘した。香料組成物(1)中の実施例1の混合物については、4種の異性体のいずれであっても、化合物(1b)と化合物(1d)の混合物(以下、実施例2の混合物という)に置き換えた場合も同様の評価であった。
【0058】
(実施例6)オレンジ香料組成物の製造
実施例1の混合物を用いて、下記処方に従って、オレンジ香料組成物(3)を調製した。比較として、下記処方に従いオレンジ香料組成物(4)を調製した。
【0059】
【表4】
【0060】
上記処方で調製したオレンジ香料組成物(3)および(4)をそれぞれ水に0.1%添加し、11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、香料組成物(3)の方が、香料組成物(4)よりも、本物らしい果汁感、瑞々しさ、フレッシュさが付与され、格段に優れていると全員が指摘した。香料組成物(3)中の実施例1の混合物については、4種の異性体のいずれであっても、実施例2の混合物に置き換えた場合も同様の評価であった。
【0061】
(実施例7)レモン香料組成物の製造
実施例1の混合物を用いて、下記処方に従って、レモン香料組成物(5)を調製した。比較として、下記処方に従いレモン香料組成物(6)を調製した。
【0062】
【表5】
【0063】
上記処方で調製したレモン香料組成物(5)および(6)をそれぞれ水に0.1%添加し、11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、香料組成物(5)の方が、香料組成物(6)よりも、フレッシュさ、瑞々しい甘い香りが付与され、格段に優れていると全員が指摘した。香料組成物(5)中の実施例1の混合物については、4種の異性体のいずれであっても、実施例2の混合物に置き換えた場合も同様の評価であった。
【0064】
(実施例8)レモン香料組成物の製造
実施例1の混合物を用いて、下記処方に従って、レモン香料組成物(7)を調製した。比較として、下記処方に従いレモン香料組成物(8)を調製した。
【0065】
【表6】
【0066】
上記処方で調製したレモン香料組成物(7)および(8)をそれぞれ水に0.1%添加し、11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、香料組成物(7)の方が、香料組成物(8)よりも、フレッシュさ、瑞々しい甘い香りが付与され、格段に優れていると全員が指摘した。香料組成物(7)中の実施例1の混合物については、4種の異性体のいずれであっても、実施例2の混合物に置き換えた場合も同様の評価であった。
【0067】
(実施例9)グレープフルーツ香料組成物の製造
実施例1の混合物を用いて、下記処方に従って、グレープフルーツ香料組成物(9)を調製した。比較として、下記処方に従いグレープフルーツ香料組成物(10)を調製した。
【0068】
【表7】
【0069】
上記処方で調製したグレープフルーツ香料組成物(9)および(10)をそれぞれ水に0.1%添加し、11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、香料組成物(9)の方が、香料組成物(10)よりも、本物らしい果汁感、瑞々しさ、フレッシュさが付与され、格段に優れていると全員が指摘した。香料組成物(9)中の実施例1の混合物については、4種の異性体のいずれであっても、実施例2の混合物に置き換えた場合も同様の評価であった。
【0070】
(実施例10)グレープフルーツ香料組成物の製造
実施例1の混合物を用いて、下記処方に従って、グレープフルーツ香料組成物(11)を調製した。比較として、下記処方に従いグレープフルーツ香料組成物(12)を調製した。
【0071】
【表8】
【0072】
上記処方で調製したグレープフルーツ香料組成物(11)および(12)をそれぞれ水に0.1%添加し、11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、香料組成物(11)の方が、香料組成物(12)よりも、本物らしい果汁感、瑞々しさ、フレッシュさが付与され、格段に優れていると全員が指摘した。香料組成物(11)中の実施例1の混合物については、4種の異性体のいずれであっても、実施例2の混合物に置き換えた場合も同様の評価であった。
【0073】
(実施例11)ライム香料組成物の製造
実施例1の混合物を用いて、下記処方に従って、ライム香料組成物(13)を調製した。比較として、下記処方に従いライム香料組成物(14)を調製した。
【0074】
【表9】
【0075】
上記処方で調製したライム香料組成物(13)および(14)をそれぞれ水に0.1%添加し、11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、香料組成物(13)の方が、香料組成物(14)よりも、瑞々しい甘い香りが付与され、格段に優れていると全員が指摘した。香料組成物(13)中の実施例1の混合物については、4種の異性体のいずれであっても、実施例2の混合物に置き換えた場合も同様の評価であった。
【0076】
(実施例12)ライム香料組成物の製造
実施例1の混合物を用いて、下記処方に従って、ライム香料組成物(15)を調製した。比較として、下記処方に従いライム香料組成物(16)を調製した。
【0077】
【表10】
【0078】
上記処方で調製したライム香料組成物(15)および(16)をそれぞれ水に0.1%添加し、11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、香料組成物(15)の方が、香料組成物(16)よりも、瑞々しい甘い香りが付与され、格段に優れていると全員が指摘した。香料組成物(17)中の実施例1の混合物については、4種の異性体のいずれであっても、実施例2の混合物に置き換えた場合も同様の評価であった。
【0079】
(実施例13)ユズ香料組成物の製造
実施例1の混合物を用いて、下記処方に従って、ユズ香料組成物(17)を調製した。比較として、下記処方に従いユズ香料組成物(18)を調製した。
【0080】
【表11】
【0081】
上記処方で調製したユズ香料組成物(17)および(18)をそれぞれ水に0.1%添加し、11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、香料組成物(17)の方が、香料組成物(18)よりも、瑞々しい甘い香りが付与され、格段に優れていると全員が指摘した。香料組成物(17)中の実施例1の混合物については、4種の異性体のいずれであっても、実施例2の混合物に置き換えた場合も同様の評価であった。
【0082】
(実施例14)ユズ香料組成物の製造
実施例1の混合物を用いて、下記処方に従って、ユズ香料組成物(19)を調製した。比較として、下記処方に従いユズ香料組成物(20)を調製した。
【0083】
【表12】
【0084】
上記処方で調製したユズ香料組成物(19)および(20)をそれぞれ水に0.1%添加し、11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、香料組成物(19)の方が、香料組成物(20)よりも、瑞々しい甘い香りが付与され、格段に優れていると全員が指摘した。香料組成物(19)中の実施例1の混合物については、4種の異性体のいずれであっても、実施例2の混合物に置き換えた場合も同様の評価であった。
【0085】
(実施例15)サイダー香料組成物の製造
実施例1の混合物を用いて、下記処方に従って、サイダー香料組成物(21)を調製した。比較として、下記処方に従いサイダー香料組成物(22)を調製した。
【0086】
【表13】
【0087】
上記処方で調製したサイダー香料組成物(21)および(22)をそれぞれ水に0.1%添加し、11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、香料組成物(21)の方が、香料組成物(22)よりも、シトラス様の瑞々しい甘さ、炭酸感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。香料組成物(21)中の実施例1の混合物については、4種の異性体のいずれであっても、実施例2の混合物に置き換えた場合も同様の評価であった。
【0088】
(実施例16)アップル香料組成物の製造
実施例1の混合物を用いて、下記処方に従って、アップル香料組成物(23)を調製した。比較として、下記処方に従いアップル香料組成物(24)を調製した。
【0089】
【表14】
【0090】
上記処方で調製したアップル香料組成物(23)および(24)をそれぞれ水に0.1%添加し、11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、香料組成物(23)の方が、香料組成物(24)よりも、自然な果汁感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。香料組成物(23)中の実施例1の混合物については、4種の異性体のいずれであっても、実施例2の混合物に置き換えた場合も同様の評価であった。
【0091】
(実施例17)グレープ香料組成物の製造
実施例1の混合物を用いて、下記処方に従って、グレープ香料組成物(25)を調製した。比較として、下記処方に従いグレープ香料組成物(26)を調製した。
【0092】
【表15】
【0093】
上記処方で調製したグレープ香料組成物(25)および(26)をそれぞれ水に0.1%添加し、11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、香料組成物(25)の方が、香料組成物(26)よりも、自然な果汁感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。香料組成物(25)中の実施例1の混合物については、4種の異性体のいずれであっても、実施例2の混合物に置き換えた場合も同様の評価であった。
【0094】
(実施例18)ピーチ香料組成物の製造
実施例1の混合物を用いて、下記処方に従って、ピーチ香料組成物(27)を調製した。比較として、下記処方に従いピーチ香料組成物(28)を調製した。
【0095】
【表16】
【0096】
上記処方で調製したピーチ香料組成物(27)および(28)をそれぞれ水に0.1%添加し、11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、香料組成物(27)の方が、香料組成物(28)よりも、自然な果汁感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。香料組成物(27)中の実施例1の混合物については、4種の異性体のいずれであっても、実施例2の混合物に置き換えた場合も同様の評価であった。
【0097】
(実施例19)パイナップル香料組成物の製造
実施例1の混合物を用いて、下記処方に従って、パイナップル香料組成物(29)を調製した。比較として、下記処方に従いパイナップル香料組成物(30)を調製した。
【0098】
【表17】
【0099】
上記処方で調製したパイナップル香料組成物(29)および(30)をそれぞれ水に0.1%添加し、11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、香料組成物(29)の方が、香料組成物(30)よりも、自然な果汁感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。香料組成物(29)中の実施例1の混合物については、4種の異性体のいずれであっても、実施例2の混合物に置き換えた場合も同様の評価であった。
【0100】
(実施例20)バナナ香料組成物の製造
実施例1の混合物を用いて、下記処方に従って、バナナ香料組成物(31)を調製した。比較として、下記処方に従いバナナ香料組成物(32)を調製した。
【0101】
【表18】
【0102】
上記処方で調製したバナナ香料組成物(31)および(32)をそれぞれ水に0.1%添加し、11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、香料組成物(31)の方が、香料組成物(32)よりも、自然な果汁感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。香料組成物(31)中の実施例1の混合物については、4種の異性体のいずれであっても、実施例2の混合物に置き換えた場合も同様の評価であった。
【0103】
(実施例21)ストロベリー香料組成物の製造
実施例1の混合物を用いて、下記処方に従って、ストロベリー香料組成物(33)を調製した。比較として、下記処方に従いストロベリー香料組成物(34)を調製した。
【0104】
【表19】
【0105】
上記処方で調製したストロベリー香料組成物(33)および(34)をそれぞれ水に0.1%添加し、11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、香料組成物(33)の方が、香料組成物(34)よりも、自然な果汁感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。香料組成物(33)中の実施例1の混合物については、4種の異性体のいずれであっても、実施例2の混合物に置き換えた場合も同様の評価であった。
【0106】
(実施例22)ラズベリー香料組成物の製造
実施例1の混合物を用いて、下記処方に従って、ラズベリー香料組成物(35)を調製した。比較として、下記処方に従いラズベリー香料組成物(36)を調製した。
【0107】
【表20】
【0108】
上記処方で調製したラズベリー香料組成物(35)および(36)をそれぞれ水に0.1%添加し、11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、香料組成物(35)の方が、香料組成物(36)よりも、自然な果汁感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。香料組成物(35)中の実施例1の混合物については、4種の異性体のいずれであっても、実施例2の混合物に置き換えた場合も同様の評価であった。
【0109】
(実施例23)ブルーベリー香料組成物の製造
実施例1の混合物を用いて、下記処方に従って、ブルーベリー香料組成物(37)を調製した。比較として、下記処方に従いブルーベリー香料組成物(38)を調製した。
【0110】
【表21】
【0111】
上記処方で調製したブルーベリー香料組成物(37)および(38)をそれぞれ水に0.1%添加し、11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、香料組成物(37)の方が、香料組成物(38)よりも、自然な果汁感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。香料組成物(37)中の実施例1の混合物については、4種の異性体のいずれであっても、実施例2の混合物に置き換えた場合も同様の評価であった。
【0112】
(実施例24)スパークリングワイン香料組成物の製造
実施例1の混合物を用いて、下記処方に従って、スパークリングワイン香料組成物(39)を調製した。比較として、下記処方に従いスパークリングワイン香料組成物(40)を調製した。
【0113】
【表22】
【0114】
上記処方で調製したスパークリングワイン香料組成物(39)および(40)をそれぞれ水に0.1%添加し、11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、香料組成物(39)の方が、香料組成物(40)よりも、発泡感を伴う軽やかなアルコール感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。香料組成物(39)中の実施例1の混合物については、4種の異性体のいずれであっても、実施例2の混合物に置き換えた場合も同様の評価であった。
【0115】
(実施例25)ビール香料組成物の製造
実施例1の混合物を用いて、下記処方に従って、ビール香料組成物(41)を調製した。比較として、下記処方に従いビール香料組成物(42)を調製した。
【0116】
【表23】
【0117】
上記処方で調製したビール香料組成物(41)および(42)をそれぞれ水に0.1%添加し、11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、香料組成物(41)の方が、香料組成物(42)よりも、発泡感を伴う軽やかなアルコール感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。香料組成物(41)中の実施例1の混合物については、4種の異性体のいずれであっても、実施例2の混合物に置き換えた場合も同様の評価であった。
【0118】
(実施例26)グリーンティー香料組成物の製造
実施例1の混合物を用いて、下記処方に従って、グリーンティー香料組成物(43)を調製した。比較として、下記処方に従いグリーンティー香料組成物(44)を調製した。
【0119】
【表24】
【0120】
上記処方で調製したグリーンティー香料組成物(43)および(44)をそれぞれ水に0.1%添加し、11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、香料組成物(43)の方が、香料組成物(44)よりも、広がりのある自然な甘い香りが付与され、格段に優れていると全員が指摘した。香料組成物(43)中の実施例1の混合物については、4種の異性体のいずれであっても、実施例2の混合物に置き換えた場合も同様の評価であった。
【0121】
(実施例27)ブラックティー香料組成物の製造
実施例1の混合物を用いて、下記処方に従って、ブラックティー香料組成物(45)を調製した。比較として、下記処方に従いブラックティー香料組成物(46)を調製した。
【0122】
【表25】
【0123】
上記処方で調製したブラックティー香料組成物(45)および(46)をそれぞれ水に0.1%添加し、11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、香料組成物(45)の方が、香料組成物(46)よりも、広がりのある自然な甘い香りが付与され、格段に優れていると全員が指摘した。香料組成物(45)中の実施例1の混合物については、4種の異性体のいずれであっても、実施例2の混合物に置き換えた場合も同様の評価であった。
【0124】
(実施例28)市販オレンジ果汁飲料への添加
市販オレンジ果汁飲料に実施例1の混合物を0.01ppm添加し、11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、3,9-ジメチル-2-オキサトリサイクロ[4.2.1.03,8]ノナンを添加することにより、本物らしい果汁感、瑞々しさ、フレッシュさが付与され、格段に優れていると全員が指摘した。実施例1の混合物については、4種の異性体のいずれであっても、実施例2の混合物に置き換えた場合も同様の評価であった。
【0125】
(実施例29)市販レモン果汁飲料への添加
市販レモン果汁飲料に実施例1の混合物を0.01ppm添加し、11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、実施例1の混合物を添加することにより、フレッシュさ、瑞々しい甘い香りが付与され、格段に優れていると全員が指摘した。実施例1の混合物については、4種の異性体のいずれであっても、実施例2の混合物に置き換えた場合も同様の評価であった。
【0126】
(実施例30)市販グレープフルーツ果汁飲料への添加
市販グレープフルーツ果汁飲料に実施例1の混合物を0.01ppm添加し、11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、実施例1の混合物を添加することにより、本物らしい果汁感、瑞々しさ、フレッシュさが付与され、格段に優れていると全員が指摘した。実施例1の混合物については、4種の異性体のいずれであっても、実施例2の混合物に置き換えた場合も同様の評価であった。
【0127】
(実施例31)市販ライム果汁飲料への添加
市販ライム果汁飲料に実施例1の混合物を0.01ppm添加し、11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、実施例1の混合物を添加することにより、瑞々しい甘い香りが付与され、格段に優れていると全員が指摘した。実施例1の混合物については、4種の異性体のいずれであっても、実施例2の混合物に置き換えた場合も同様の評価であった。
【0128】
(実施例32)市販ユズ果汁飲料への添加
市販ユズ果汁飲料に実施例6で製造した実施例1の混合物を0.01ppm添加し、11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、実施例1の混合物を添加することにより、瑞々しい甘い香りが付与され、格段に優れていると全員が指摘した。実施例1の混合物については、4種の異性体のいずれであっても、実施例2の混合物に置き換えた場合も同様の評価であった。
【0129】
(実施例33)市販サイダー飲料への添加
市販サイダー飲料に実施例1の混合物を0.1ppm添加し、11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、実施例1の混合物を添加することにより、シトラス様の瑞々しい甘さ、炭酸感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。実施例1の混合物については、4種の異性体のいずれであっても、実施例2の混合物に置き換えた場合も同様の評価であった。
【0130】
(実施例34)市販アップル果汁飲料への添加
市販アップル果汁飲料に実施例6で製造した実施例1の混合物を0.1ppm添加し、11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、実施例1の混合物を添加することにより、自然な果汁感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。実施例1の混合物については、4種の異性体のいずれであっても、実施例2の混合物に置き換えた場合も同様の評価であった。
【0131】
(実施例35)市販グレープ果汁飲料への添加
市販グレープ果汁飲料に実施例1の混合物を0.1ppm添加し、11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、実施例1の混合物を添加することにより、自然な果汁感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。実施例1の混合物については、4種の異性体のいずれであっても、実施例2の混合物に置き換えた場合も同様の評価であった。
【0132】
(実施例36)市販ピーチ果汁飲料への添加
市販ピーチ果汁飲料に実施例1の混合物を0.1ppm添加し、11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、実施例1の混合物を添加することにより、自然な果汁感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。実施例1の混合物については、4種の異性体のいずれであっても、実施例2の混合物に置き換えた場合も同様の評価であった。
【0133】
(実施例37)市販スパークリングワインテイスト飲料への添加
市販スパークリングワインテイスト飲料に実施例1の混合物を0.01ppm添加し、11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、実施例1の混合物を添加することにより、発泡感を伴う軽やかなアルコール感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。実施例1の混合物については、4種の異性体のいずれであっても、実施例2の混合物に置き換えた場合も同様の評価であった。
【0134】
(実施例38)市販ビールテイスト飲料への添加
市販ビールテイスト飲料に実施例1の混合物を0.01ppm添加し、11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、実施例1の混合物を添加することにより、発泡感を伴う軽やかなアルコール感が付与され、格段に優れていると全員が指摘した。実施例1の混合物については、4種の異性体のいずれであっても、実施例2の混合物に置き換えた場合も同様の評価であった。
【0135】
(実施例39)市販緑茶飲料への添加
市販緑茶飲料に実施例1の混合物を0.01ppm添加し、11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、実施例1の混合物を添加することにより、広がりのある自然な甘い香りが付与され、格段に優れていると全員が指摘した。実施例1の混合物については、4種の異性体のいずれであっても、実施例2の混合物に置き換えた場合も同様の評価であった。
【0136】
(実施例40)市販紅茶飲料への添加
市販紅茶飲料に実施例1の混合物を0.01ppm添加し、11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、実施例1の混合物を添加することにより、広がりのある自然な甘い香りが付与され、格段に優れていると全員が指摘した。実施例1の混合物については、4種の異性体のいずれであっても、実施例2の混合物に置き換えた場合も同様の評価であった。
【0137】
(実施例41)歯磨き粉賦香評価
実施例1の混合物を用いて、下記処方に従って、歯磨き粉向けグレープフルーツ様香料組成物(47)を調製した。比較として、下記処方に従い歯磨き粉向けグレープフルーツ様香料組成物(48)を調製した。
【0138】
【表26】
【0139】
また、歯磨き粉基材の処方は以下の通りである。
【0140】
【表27】
【0141】
上記処方で調製した香料組成物および歯磨き用基材を用い、下記歯磨き粉(49)、(50)を調整し、官能評価を行った。
(49)歯磨き粉基材990g + 香料組成物(47) 10g
(50)歯磨き粉基材990g + 香料組成物(48) 10g
これらについて11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、香料組成物(47)を使用した歯磨き粉(49)の方が、香料組成物(48)を使用した歯磨き粉(50)よりも、本物らしい果汁感、瑞々しさ、フレッシュさが付与され、格段に優れていると全員が指摘した。香料組成物(47)中の実施例1の混合物については、4種の異性体のいずれであっても、実施例2の混合物に置き換えた場合も同様の評価であった。
【0142】
(実施例42)高甘味度甘味料(レバウディオサイドA)水溶液への添加
0.028質量%レバウディオサイドA水溶液に実施例1の混合物を0.0001ppm添加し、11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、実施例1の混合物を添加することにより、不快な風味が弱まり、格段に優れていると全員が指摘した。実施例1の混合物については、4種の異性体のいずれであっても、実施例2の混合物に置き換えた場合も同様の評価であった。
【0143】
(実施例43)高甘味度甘味料(アスパルテーム)水溶液への添加
0.04質量%アスパルテーム水溶液に実施例1の混合物を0.0001ppm添加し、11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、実施例1の混合物を添加することにより、後半に膨らみが付与され、格段に優れていると全員が指摘した。実施例1の混合物については、4種の異性体のいずれであっても、実施例2の混合物に置き換えた場合も同様の評価であった。
【0144】
(実施例44)高甘味度甘味料(スクラロース)水溶液への添加
0.013質量%スクラロース水溶液に実施例1の混合物を0.0001ppm添加し、11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、実施例1の混合物を添加することにより、味の厚み・甘味の膨らみが付与され、格段に優れていると全員が指摘した。実施例1の混合物については、4種の異性体のいずれであっても、実施例2の混合物に置き換えた場合も同様の評価であった。
【0145】
(実施例45)高甘味度甘味料(アセスルファムK)水溶液への添加
0.04質量%アセスルファムK水溶液に実施例1の混合物を0.0001ppm添加し、11名の専門パネラーによる官能試験を行ったところ、実施例1の混合物を添加することにより、味の厚み・甘味の膨らみが付与され、格段に優れていると全員が指摘した。実施例1の混合物については、4種の異性体のいずれであっても、実施例2の混合物に置き換えた場合も同様の評価であった。