(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】蓄電デバイスの取付構造
(51)【国際特許分類】
H01G 9/08 20060101AFI20240116BHJP
H01M 10/643 20140101ALI20240116BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20240116BHJP
H01M 10/6551 20140101ALI20240116BHJP
H01G 2/08 20060101ALN20240116BHJP
【FI】
H01G9/08 D
H01M10/643
H01M10/613
H01M10/6551
H01G2/08 A
(21)【出願番号】P 2020089964
(22)【出願日】2020-05-22
【審査請求日】2022-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000004606
【氏名又は名称】ニチコン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001841
【氏名又は名称】弁理士法人ATEN
(72)【発明者】
【氏名】根橋 聡智
【審査官】金子 秀彦
(56)【参考文献】
【文献】実公昭50-036670(JP,Y1)
【文献】特開2005-353894(JP,A)
【文献】実開昭60-160533(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01G 9/08
H01M 50/20
H01M 10/643
H01M 10/613
H01M 10/6551
H01G 2/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電デバイスを取付対象に取り付けるための取付構造であって、
前記蓄電デバイスのケースと一体に設けられており、かつ、前記蓄電デバイスの底部に立設されており、前記取付対象に設けられた取付孔に挿通されるスタッドボルトと、
絶縁性を有しており、かつ、前記取付対象を挟んで前記蓄電デバイスとは反対側に配置され、前記スタッドボルトが前記取付対象とは反対側に突き出るように挿通される貫通孔が形成されたパッドと、
ネジ部が形成されており、前記蓄電デバイスの底部との間で前記取付対象および前記パッドを挟むように前記スタッドボルトに取り付けられる締付部材と、を備えており、
前記パッドは、
前記取付
対象と接触する部分と前記取付孔と対向する部分とを有しており、前記締付部材と接触する本体部と、
前記本体部の前記締付部材側に設けられており、前記取付対象から離れる方向に延びる環状の外縁部と、
前記本体部の取付孔と対向する部分に設けられ、前記蓄電デバイス側に突出し、かつ、前記貫通孔を囲む突起と、を有していることを特徴とする蓄電デバイスの取付構造。
【請求項2】
前記パッドは、前記スタッドボルトの軸方向と直交する方向に関して離隔した2つの前記突起を有しており、
前記2つの突起の間に配置され、かつ、前記蓄電デバイスの底部に接触する環状弾性体をさらに備えていることを特徴とする請求項1に記載の蓄電デバイスの取付構造。
【請求項3】
前記突起は、前記蓄電デバイスの底部に接触することを特徴とする請求項1に記載の蓄電デバイスの取付構造。
【請求項4】
前記パッドは、前記貫通孔を中心に放射状に設けられており、前記本体部と前記外縁部とを繋ぐ複数のガセットを有していることを特徴とする請求項1~3のいずれか1項に記載の蓄電デバイスの取付構造。
【請求項5】
前記締付部材は、フィンを有していていることを特徴とする請求項1~4のいずれか1項に記載の蓄電デバイスの取付構造。
【請求項6】
前記締付部材は、金属製であることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載の蓄電デバイスの取付構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蓄電デバイスを取付対象に取り付ける取付構造に関する。
【背景技術】
【0002】
キャパシタ、コンデンサ、蓄電池などの蓄電デバイスは、必要に応じて複数の蓄電デバイスを筐体などの取付対象に取り付けてユニット化して用いられる。特許文献1には、円筒形コンデンサを取付板(取付対象)に取り付けるための取付構造として、円筒形コンデンサの円筒部を締め付けて固定する取付金具が開示されている。取付金具の底部中心にはスタッドネジが設けられており、このスタッドネジにより取付金具の底部を取付板に固定することで、円筒形コンデンサを取付板に取り付ける。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の取付構造では、スタッドネジ自体は強固な締結が可能である一方、取付金具自体は一般的な金具程度の強度しか有さない。したがって、円筒形コンデンサの底部は取付板と充分な接触面圧を得られず、円筒形コンデンサから取付板への熱伝達性が低い。他方、蓄電デバイスの金属ケースと一体に設けられた一般的なスタッドボルトは、金具の強度を勘案する必要はないが、金属ケースと内部素子とが接触または金属ケースと内部素子が電解液を介して電気的に接続されてマイナス極電位となる、または金属ケースと内部素子との間の絶縁性は低いので、スタッドボルトと取付対象との間の絶縁を維持する必要がある。
【0005】
本発明の目的は、蓄電デバイスと取付対象との絶縁を維持しつつ、放熱性に優れた蓄電デバイスの取付構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の蓄電デバイスの取付構造は、蓄電デバイスを取付対象に取り付けるための取付構造であって、前記蓄電デバイスのケースと一体に設けられており、かつ、前記蓄電デバイスの底部に立設されており、前記取付対象に設けられた取付孔に挿通されるスタッドボルトと、絶縁性を有しており、かつ、前記取付対象を挟んで前記蓄電デバイスとは反対側に配置され、前記スタッドボルトが前記取付対象とは反対側に突き出るように挿通される貫通孔が形成されたパッドと、ネジ部が形成されており、前記蓄電デバイスの底部との間で前記取付対象および前記パッドを挟むように前記スタッドボルトに取り付けられる締付部材と、を備えている。そして、前記パッドは、前記取付部材と接触する部分と前記取付孔と対向する部分とを有しており、前記締付部材と接触する本体部と、前記本体部の前記締付部材側に設けられており、前記取付対象から離れる方向に延びる環状の外縁部と、前記本体部の取付孔と対向する部分に設けられ、前記蓄電デバイス側に突出し、かつ、前記貫通孔を囲む突起と、を有している。
【0007】
この構成によると、パッドに形成された貫通孔に挿通されたスタッドボルトは、取付対象を挟んで蓄電デバイスとは反対側に突き出る。したがって、スタッドボルトを直接的に、または、締付部材を介して、外気に露出させることができる。よって、放熱性を高めることができる。また、外縁部により、パッド周辺における取付対象の面に沿う方向の気流が乱され、締付部材の周辺に空気が巻き込まれる。したがって、放熱性をさらに高めることができる。また、スタッドボルトは、蓄電デバイスのケースとともに陰極と電気的に接続、または、低い絶縁性を有する状態になっている。絶縁性を有するパッドに設けられた突起によってスタッドボルトと取付対象とが接触するのを防ぐことができ、さらに、外縁部により、締付部材から取付対象までの沿面距離を長くすることができるので、スタッドボルトと取付対象との間を確実に絶縁することができる。よって、蓄電デバイスと取付対象との絶縁を維持することができる。
【0008】
また、上述の蓄電デバイスの取付構造において、前記パッドは、前記スタッドボルトの軸方向と直交する方向に関して離隔した2つの前記突起を有しており、前記2つの突起の間に配置され、かつ、前記蓄電デバイスの底部に接触する環状弾性体をさらに備えている。
【0009】
この構成によると、環状弾性体によりスタッドボルトと取付対象との間の空間を塞ぐことができるので、スタッドボルトと取付対象との間を確実に絶縁することができる。
【0010】
さらに、上述の蓄電デバイスの取付構造において、前記突起は、前記蓄電デバイスの底部に接触する。
【0011】
この構成によると、突起によりスタッドボルトと取付対象との間の空間を塞ぐことができるので、スタッドボルトと取付対象との間を確実に絶縁することができる。
【0012】
加えて、上述の蓄電デバイスの取付構造において、前記パッドは、前記貫通孔を中心に放射状に設けられており、前記本体部と前記外縁部とを繋ぐ複数のガセットを有している。
【0013】
この構成によると、ガセットにより本体部の変形を抑制することができ、締付部材をワッシャーのように受けることができる。よって、スタッドボルトの推奨締め付けトルクで蓄電デバイスの底部を直接取付対象に締結することができる。これにより、蓄電デバイスの底面と取付対象との間の接触面圧が大きくなり、放熱性がいっそう高くなる。
【0014】
また、上述の蓄電デバイスの取付構造において、前記締付部材は、フィンを有している。
【0015】
この構成によると、締付部材が、スタッドボルトから直接熱を受け取って、フィンにより効率的に外気に放熱することができる。したがって、放熱性をより高めることができる。
【0016】
また、上述の蓄電デバイスの取付構造において、前記締付部材は、金属製である。
【0017】
この構成によると、スタッドボルトから締付部材への熱伝達性を高めることができるので、放熱性をより高めることができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、蓄電デバイスと取付対象との絶縁を維持しつつ、放熱性に優れた蓄電デバイスの取付構造を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態にかかる取付構造により電解コンデンサが取付対象に取り付けられた状態を示す図である。
【
図2】
図1に示す電解コンデンサの概略断面図である。
【
図3】
図1に示す電解コンデンサを取付対象に取り付ける取付構造の分解斜視図である。
【
図5】
図3のパッドを示す斜視図であり、(a)は上方からの斜視図、(b)は下方からの斜視図である。
【
図6】
図3のパッドを示す図であり、(a)は上面図、(b)は側面図、(c)は下面図である。
【
図7】取付構造の周辺における流跡線を示す図である。
【
図8】第1の変形例にかかる取付構造の概略断面図である。
【
図9】第2の変形例にかかる取付構造の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の好適な一実施の形態について、図面を参照しつつ説明する。
【0021】
本実施形態にかかる取付構造1は、電解コンデンサ2(蓄電デバイス)を取付対象10に取り付けるためのものである。本実施形態においては、
図1に示すように、取付対象10の上方を向く水平面である取付面10aに対して電解コンデンサ2が取り付けられることとする。
【0022】
図1~
図3に示すように、電解コンデンサ2は、略円柱状を有しており、その軸方向の一方側の端部に一対の端子部21が設けられている。電解コンデンサ2の端子部21が設けられている側とは反対側の端部には、スタッドボルト22が立設されている。電解コンデンサ2は、スタッドボルト22を取付対象10に設けられた円形の取付孔10cに挿通し、スタッドボルト22が設けられている側の端部を取付対象10の取付面10aと接触させた状態で、取付対象10に取り付けられる。以降の説明において、電解コンデンサ2のスタッドボルト22が設けられている側の端部を「底部」と称する。
【0023】
電解コンデンサ2は、アルミニウム電解コンデンサである。電解コンデンサ2は、
図2に示すように、アルミニウム箔からなる陽極箔および陰極箔をセパレータを介して巻回したコンデンサ素子23と、コンデンサ素子23を収納した有底筒状のアルミニウム製のケース24と、ケース24の開放端を封口する合成樹脂製の封口体25と、絶縁性材料で形成されケース24の外面を被覆するスリーブ26と、を主に備えている。コンデンサ素子23には、駆動用電解液が含浸される。コンデンサ素子23とケース24との間が電解液で濡れることで、ケース24と陰極は電気的に接続される。一対の端子部21は、陽極箔および陰極箔からそれぞれ引き出されており、封口体25に形成された貫通孔25aを介してケース24の内部から外部に引き出されている。
【0024】
スタッドボルト22は、ケース24と一体に設けられている。すなわち、スタッドボルト22は、ケース24と同一のアルミニウム製であり、ケース24と一体的に製造されており、スタッドボルト22は、ケース24とともに陰極と電気的に接続されることになる。スタッドボルト22は、電解コンデンサ2の軸方向に沿って延びている。スタッドボルト22は、電解コンデンサ2の底部における中心に設けられている。
【0025】
取付構造1は、
図3および
図4に示すように、電解コンデンサ2に設けられたスタッドボルト22、樹脂などの絶縁性材料で形成されたパッド3、電解コンデンサ2の底部とパッド3との間に配置されるブチルゴム、エチレンプロピレンターポリマー、シリコーンなどのエラストマーや金属などの環状弾性体4およびネジ部51が形成された鉄などの金属製のナット(締付部材)5を主に備えている。
【0026】
続いて、
図5(a)、(b)および
図6(a)~(b)をさらに参照しつつ、パッド3の構成について説明する。パッド3は、取付対象10を挟んで電解コンデンサ2とは反対側、すなわち電解コンデンサ2を取付対象の上方に配置した場合、取付対象10の下方に配置される。パッド3には、スタッドボルト22が挿通される貫通孔3aが形成されている。
図4に示すように、パッド3の貫通孔3aに挿通されたスタッドボルト22は、取付対象10とは反対側、すなわち下方側に突き抜ける。
【0027】
パッド3は、樹脂、セラミックスなどの絶縁体からなり、
図4に示すように、取付対象10に設けられた取付孔10cの径よりも大径の略円板状の本体部31と、本体部31の上面から電解コンデンサ2側(上側)にそれぞれ突出した2つの突起32a、32bと、本体部31の下面から取付対象10から離れる方向(下方)に延びる環状の外縁部33と、本体部31と外縁部33とを繋ぐガセット34と、を主に有している。
【0028】
本体部31の中心には、上述の貫通孔3aが形成されている。本体部31の上面における外周縁部は、取付対象10の取付面10aとは反対の裏面10bと接触する。本体部31の上面における取付対象10の裏面10bと接触する部分以外の部分は、取付孔10cと対向する(取付孔10cの内部空間に面する)。本体部31の下面における貫通孔3aの縁部は、ナット5と接触する。
【0029】
2つの突起32a、32bは、本体部31の上面における取付対象10の取付孔10cと対向する部分に設けられており、貫通孔3aを囲んでいる。
図6(a)に示すように、2つの突起32a、32bの外縁は、いずれも上面視で円形形状を有している。2つの突起32a、32bは、いずれも同心の環状であり、径が互いに異なる。すなわち、2つの突起32a、32bは、スタッドボルト22の軸方向と直交する方向に関して離隔している。2つの突起32a、32bは、突起32aの径が突起32bの径よりも大きい。また、突起32a、32bの径は、いずれも取付孔10cよりも小径である。
【0030】
本体部31の上面から突起32a、32bの先端までの長さは、いずれも取付対象10の厚みよりも小さい。すなわち、本実施形態においては、突起32a、32bの先端は、電解コンデンサ2の底部と接触しない。
【0031】
外縁部33は、本体部31の下面(ナット5側)における外周縁部から下方に延びている。外縁部33は、本体部31における外周縁部の全周にわたって設けられている。
【0032】
ガセット34は、
図5(b)および
図6(c)に示すように、本体部31の下面と外縁部33における内側の側壁とを繋ぐ。複数のガセット34は、貫通孔3aを中心に放射状に設けられている。
【0033】
環状弾性体4は、本体部31の上面から突出する2つの突起32a、32bの間に配置される。すなわち、環状弾性体4の環径は、突起32aの径より小さく、突起32bの径より大きく、取付対象10の取付孔10c内に位置する。環状弾性体4の線径または厚みは、取付対象10の厚みよりも若干大きく、電解コンデンサ2の底部に接触する。環状弾性体4は、ナット5によってパッド3が締め付けられると、取付孔10c内において、電解コンデンサ2の底部とパッド3の本体部31とに挟まれて全周にわたって弾性変形する。これにより、環状弾性体4は、電解コンデンサ2の底部に密着する。環状弾性体4は、接着剤などによりパッド3にあらかじめ接着されていてもよいし、電解コンデンサ2を取り付ける際に、パッド3の2つの突起32a、32bの間に配置してもよい。
【0034】
環状弾性体4は、スタッドボルト22と取付対象10(取付孔10cの内壁)との間の空間を塞ぐ。すなわち、
図4に示すように、環状弾性体4により、取付孔10cの内部空間は、スタッドボルト22側の内側空間と、取付対象10側の外側空間とに区切られ、スタッドボルト22と取付対象10とは絶縁される。
【0035】
ナット5は、パッド3の貫通孔3aに挿通されたスタッドボルト22における下方側に突き抜けた部分に取り付けられる。ナット5は、電解コンデンサ2の底部との間で取付対象10およびパッド3の本体部31を挟むようにスタッドボルト22に取り付けられる。金属製のナット5は、電解コンデンサ2のケース24(
図2参照)およびスタッドボルト22とともに陰極と電気的に接続されるが、パッド3の外縁部33によって十分な沿面距離が形成され絶縁される。
【0036】
ここで、
図7に示す流跡線から分かるように、パッド3の周辺における取付対象10の裏面10bに沿う方向の気流は、外縁部33により乱される。外縁部33により気流が乱されることで、ナット5の周辺に空気が巻き込まれる。これにより、ナット5からの放熱が促進される。
【0037】
以上のように、本実施形態の電解コンデンサ2の取付構造1は、電解コンデンサ2のケース24と一体に設けられており、かつ、電解コンデンサ2の底部に立設されており、取付対象10に設けられた取付孔10cに挿通されるスタッドボルト22と、絶縁性を有しており、かつ、取付対象10を挟んで電解コンデンサ2とは反対側に配置され、スタッドボルト22が取付対象10とは反対側に突き出るように挿通される貫通孔3aが形成されたパッド3と、ネジ部51が形成されており、電解コンデンサ2の底部との間で取付対象10およびパッド3を挟むようにスタッドボルト22に取り付けられる金属製のナット5と、を備えている。パッド3は、貫通孔3aが形成されており、かつ、取付対象10と接触する部分と取付孔10cと対向する部分とを有しており、ナット5と接触する本体部31と、本体部31のナット5側に設けられており、取付対象10から離れる方向に延びる環状の外縁部33と、本体部31の取付孔10cと対向する部分に設けられ、電解コンデンサ2側に突出し、かつ、貫通孔3aを囲む環状の突起32a、32bと、突起32a、32bの間に配置される環状弾性体4を有している。
【0038】
上述の構成によると、パッド3に形成された貫通孔3aに挿通されたスタッドボルト22は、取付対象10とは反対側に突き出る。したがって、スタッドボルト22を直接的に、または、金属製のナット5を介して、外気に露出させることができる。よって、放熱性を高めることができる。また、外縁部33により、パッド周辺における取付対象10の面に沿う方向の気流が乱され、ナット5の周辺に空気が巻き込まれる。したがって、放熱性をさらに高めることができる。また、スタッドボルト22およびナット5は、ケース24とともに陰極と電気的に接続されている。絶縁性を有するパッド3に設けられた環状の突起32a、32bによってスタッドボルト22と取付対象10とが接触するのを防ぐことができるので、スタッドボルト22と取付対象10との間を絶縁することができる。さらに、外縁部33により、ナット5から取付対象10までの沿面距離(
図4に示す矢印参照)を長くすることができるので、ナット5と取付対象10との間を確実に絶縁することができる。よって、電解コンデンサ2と取付対象10との絶縁を維持できる。
【0039】
本実施形態の電解コンデンサ2の取付構造1では、パッド3は、スタッドボルト22の軸方向と直交する方向に関して離隔した2つの突起32a、32bを有している。環状弾性体4は、2つの突起32a、32bの間に配置され、かつ、電解コンデンサ2の底部に接触するとともに突起32a、32bに接触する。したがって、環状弾性体4によりスタッドボルト22と取付対象10との間の空間を塞ぐことができるので、スタッドボルト22と取付対象10との間を確実に絶縁することができる。
【0040】
本実施形態の電解コンデンサ2の取付構造1では、パッド3は、貫通孔3aを中心に放射状に設けられており、本体部31と外縁部33とを繋ぐ複数のガセット34を有している。したがって、ガセット34により本体部31の変形を抑制することができ、金属製のナット5をワッシャーのように受けることができる。よって、スタッドボルト22の推奨締め付けトルクで電解コンデンサ2の底部を直接取付対象10に締結することができる。これにより、電解コンデンサ2の底面と取付対象10との間の接触面圧が大きくなり、放熱性がいっそう高くなる。
【0041】
以上、本発明の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでない。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0042】
上述の実施形態では、パッド3に設けられ、電解コンデンサ2側に突出した環状の2つの突起32a、32bの間に、電解コンデンサ2の底部と接触する環状弾性体4が配置されている場合について説明したが、これには限定されない。すなわち、環状弾性体4は配置されていなくてもよい。環状弾性体4が配置されていない場合は、突起32a、32bはいずれか一方のみ設けられていればよい。
【0043】
また、
図8に示すように、上述の実施形態の第1の変形例にかかる取付構造101においては、パッド103における本体部131の上面に、電解コンデンサ2の底部に接触する環状の突起132が設けられている。本体部131の上面から突起132の先端までの長さは、取付対象10の厚みより若干長い。したがって、突起132の先端が電解コンデンサ2の底部と接触する。そして、ナット5を締め付けることで、突起132が全周にわたって弾性変形して電解コンデンサ2の底部と密着する。よって、かかる取付構造101においては、突起132によってスタッドボルト22と取付対象10との間の空間を塞ぐことができ、上述の実施形態と同様に、スタッドボルト22と取付対象10との間を確実に絶縁することができる。
【0044】
上述の実施形態では、ナット5を用いる場合について説明したが、これには限定されない。すなわち、
図9に示すように、上述の実施形態の第2の変形例にかかる取付構造201においては、ナット5に替えて、フィン252を有する締付部材205を備えている。締付部材205は、円筒状の筒部255の内周面にネジ部251が形成されている。フィン252は、筒部255の外周面に設けられている。フィン252は、鉄やアルミニウムなどの金属製である。フィン252は、軸方向および軸方向に垂直な方向の両方に平行な面を有する平板状であり、筒部255の周方向に複数設けられている。かかる取付構造201においては、締付部材205が、スタッドボルト22から直接熱を受け取って、フィン252により効率的に外気に放熱することができる。したがって、放熱性をより高めることができる。
【0045】
上述の実施形態では、パッド3が、本体部31と外縁部33とを繋ぐ複数のガセット34を有している場合について説明したが、ガセット34はなくてもよい。
【0046】
上述の実施形態においては、2つの突起32a、32bの外縁が上面視で円形形状を有している場合について説明したが、これには限定しない。突起32a、32bは、貫通孔3aを囲むものであればよく、上面視で四角形状などの多角形形状を有していてもよい。
【0047】
上述の実施形態においては、取付対象10の上方を向く水平面に対して電解コンデンサ2が取り付けられる場合について説明したが、これには限定されない。すなわち、例えば電解コンデンサ2は垂直面に取り付けられてもよい。
【0048】
上述の実施形態においては、略円柱状を有する電解コンデンサ2を取付対象10に取り付けるための取付構造1について説明したが、本発明は、コンデンサや蓄電池を含む蓄電デバイス全般に適用することができる。蓄電デバイスの形状は、円柱状に限定されるものではなく、例えば角柱状など断面形状が多角形となるような柱状であってもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 取付構造
2 電解コンデンサ(蓄電デバイス)
3 パッド
3a 貫通孔
4 環状弾性体
5 ナット(締付部材)
10 取付対象
10c 取付孔
22 スタッドボルト
24 ケース
31 本体部
32a、32b 突起
33 外縁部
34 ガセット
51 ネジ部
252 フィン