(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】セグメント解体組立装置、トンネル掘削機およびセグメント解体組立方法
(51)【国際特許分類】
E21D 11/40 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
E21D11/40 B
(21)【出願番号】P 2020090027
(22)【出願日】2020-05-22
【審査請求日】2022-11-25
(73)【特許権者】
【識別番号】521478094
【氏名又は名称】地中空間開発株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】横山 満久
【審査官】湯本 照基
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-077736(JP,A)
【文献】特開昭59-210198(JP,A)
【文献】特開2016-089371(JP,A)
【文献】特開平08-144698(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21D 11/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セグメントの解体および組立の少なくとも一方を行うセグメント解体組立装置であって、
前記セグメントの把持部と、
トンネル延長方向に延びる第1旋回中心軸線回りに、前記把持部を旋回させる第1旋回部と、
前記第1旋回中心軸線から前記把持部までの距離が変わるように、前記トンネル延長方向に対して略直角に交差する交差方向に、前記把持部を移動させる第1移動部と、
前記第1旋回部とは別個に設けられ、前記第1旋回中心軸線とは異なるとともに前記トンネル延長方向に延びる第2旋回中心軸線回りに、前記把持部を旋回させる第2旋回部と、
前記第1移動部とは別個に設けられ、前記第2旋回中心軸線から前記把持部までの距離が変わるように、前記交差方向に、前記把持部を移動させる第2移動部と、を備え
、
前記第1旋回部は、前記第1旋回中心軸線周りに回動する回動部材を含み、
前記回動部材の前記トンネル延長方向における両端は、前記第2移動部により支持されている、セグメント解体組立装置。
【請求項2】
前記把持部、前記第1移動部および前記第1旋回部が一体的に設けられる把持機構をさらに備え、
前記第2旋回中心軸線は、前記交差方向において、前記第1旋回中心軸線よりも前記把持機構から離間した位置に配置され、
前記第2旋回部は、前記把持機構を前記第2旋回中心軸線回りに旋回させることによって、前記第1旋回部よりも大きな旋回半径により前記把持部を前記第2旋回中心軸線回りに旋回させるように構成されている、請求項1に記載のセグメント解体組立装置。
【請求項3】
前記把持機構、前記第2移動部および前記第2旋回部を含む装置本体を支持する支持部をさらに備え、
前記第2旋回部は、前記交差方向において、前記支持部に対する前記第2旋回中心軸線の位置が固定された状態で、前記支持部に支持されており、
前記装置本体は、
前記交差方向において、前記第2旋回部により、前記第2旋回中心軸線を基準として前記把持部を旋回させるように構成されるとともに、
前記交差方向において、前記第2移動部により、前記第2旋回中心軸線を基準として前記第2旋回中心軸線から前記把持部までの距離が変化するように前記把持部を移動させるように構成されている、請求項2に記載のセグメント解体組立装置。
【請求項4】
前記支持部は、前記トンネル延長方向に延びるレール部材を含み、
前記装置本体は、前記レール部材に沿って、前記トンネル延長方向に移動可能に構成されている、請求項3に記載のセグメント解体組立装置。
【請求項5】
前記支持部は、前記トンネル延長方向に延びるレール部材を含み、
前記第2移動部は、前記レール部材に沿って走行する一対の走行装置と、各々の一端が前記一対の走行装置に接続されるとともに、各々の他端により前記把持機構を支持する一対のリンク部材とを含み、
前記第2移動部は、
前記一対の走行装置を前記レール部材に沿って互いに近づけるように走行させることによって、前記交差方向において、前記一対のリンク部材を介して前記レール部材から前記把持機構を遠ざけるように構成されるとともに、
前記一対の走行装置を前記レール部材に沿って互いに遠ざけるように走行させることによって、前記交差方向において、前記一対のリンク部材を介して前記レール部材に前記把持機構を近づけるように構成されている、請求項3または4に記載のセグメント解体組立装置。
【請求項6】
カッタヘッドを含む掘削機本体と、
前記掘削機本体に設置され、セグメントの解体および組立の少なくとも一方を行うセグメント解体組立装置とを備え、
前記セグメント解体組立装置は、
前記セグメントの把持部と、
トンネル延長方向に延びる第1旋回中心軸線回りに、前記把持部を旋回させる第1旋回部と、
前記第1旋回中心軸線から前記把持部までの距離が変わるように、前記トンネル延長方向に対して略直角に交差する交差方向に、前記把持部を移動させる第1移動部と、
前記第1旋回部とは別個に設けられ、前記第1旋回中心軸線とは異なるとともに前記トンネル延長方向に延びる第2旋回中心軸線回りに、前記把持部を旋回させる第2旋回部と、
前記第1移動部とは別個に設けられ、前記第2旋回中心軸線から前記把持部までの距離が変わるように、前記交差方向に、前記把持部を移動させる第2移動部と、を含
み、
前記第1旋回部は、前記第1旋回中心軸線周りに回動する回動部材を含み、
前記回動部材の前記トンネル延長方向における両端は、前記第2移動部により支持されている、トンネル掘削機。
【請求項7】
セグメントの解体および組立の少なくとも一方を行うセグメント解体組立方法であって、
把持部によって前記セグメントを把持するセグメント把持工程と
、
トンネル延長方向に延びる第1旋回中心軸線回りに
回動する回動部材を含む第1旋回部によって、前記第1旋回中心軸線周りに前記把持部を旋回させる第1旋回工程と、
第1移動部により、前記第1旋回中心軸線から前記把持部までの距離が変わるように、前記トンネル延長方向に対して略直角に交差する交差方向に、前記把持部を移動させる第1移動工程と、
前記第1旋回部とは別個に設けられた第2旋回部により、前記第1旋回中心軸線とは異なるとともに前記トンネル延長方向に延びる第2旋回中心軸線回りに、前記把持部を旋回させる第2旋回工程と、
前記第1移動部とは別個に設けられ
、前記回動部材の前記トンネル延長方向における両端を支持する第2移動部により、前記第2旋回中心軸線から前記把持部までの距離が変わるように、前記交差方向に、前記把持部を移動させる第2移動工程と、を備える、セグメント解体組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セグメントの解体および組立の少なくとも一方を行うセグメント解体組立装置、トンネル掘削機およびセグメント解体組立方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、セグメントを組み立てるセグメント解体組立装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1には、セグメントを組み立てるエレクタ装置が開示されている。エレクタ装置は、トンネルの中心軸線回りにエレクタ装置本体を旋回させる旋回機構と、トンネルの中心軸線(旋回機構の旋回中心軸線)からの距離が変わるように、セグメントの把持部を直線状に移動させる一対のジャッキとを備えている。なお、エレクタ装置は、把持部の向きを修正するために、一対のジャッキのストロークを異ならせることにより、把持部を僅かに旋回させることが可能に構成されている。すなわち、エレクタ装置は、旋回機構と一対のジャッキとにより2段階で把持部の旋回を行うとともに、一対のジャッキにより、旋回機構の旋回中心軸線から把持部までの距離が変わるように、1段階で把持部を移動させるように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、上記特許文献1には明記されていないが、従来より、セグメントを組み立てる際に、柔軟にセグメントの向きおよび配置を変更可能なエレクタ装置が求められている。特に、円形形状ではない異形断面となるようにトンネルの拡幅を行う際などのセグメントの組立においては、トンネル延長方向において、徐々にトンネルの断面形状が変化することがある。このため、より柔軟に、把持部に把持されているセグメントの向きおよび配置を変更可能なエレクタ装置が求められている。旋回機構によりセグメントの旋回を行い、一対のジャッキによりセグメントの直線移動およびセグメントの向きの修正を行う上記特許文献1のエレクタ装置は、把持部を2段階で旋回させることができるとともに、把持部を1段階で移動させることが可能に構成されている。しかしながら、上記特許文献1のエレクタ装置を、上記のような、異形断面となるトンネルの拡幅作業などに適用しようとした場合、把持部に把持されているセグメントの向きおよび配置を十分に(柔軟に)変更できるものではないと考えられる。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、把持部に把持されているセグメントの向きおよび配置をより柔軟に変更することが可能なセグメント解体組立装置、トンネル掘削機およびセグメント解体組立方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、この発明のセグメント解体組立装置は、セグメントの解体および組立の少なくとも一方を行うセグメント解体組立装置であって、セグメントの把持部と、トンネル延長方向に延びる第1旋回中心軸線回りに、把持部を旋回させる第1旋回部と、第1旋回中心軸線から把持部までの距離が変わるように、トンネル延長方向に対して略直角に交差する交差方向に、把持部を移動させる第1移動部と、第1旋回部とは別個に設けられ、第1旋回中心軸線とは異なるとともにトンネル延長方向に延びる第2旋回中心軸線回りに、把持部を旋回させる第2旋回部と、第1移動部とは別個に設けられ、第2旋回中心軸線から把持部までの距離が変わるように、交差方向に、把持部を移動させる第2移動部と、を備え、第1旋回部は、第1旋回中心軸線周りに回動する回動部材を含み、回動部材のトンネル延長方向における両端は、第2移動部により支持されている。なお、上記「セグメント解体組立装置」の中の「解体組立」とは、「セグメント解体組立装置」がセグメントの解体および組立の少なくとも一方を行う装置であるという意味である。
【0008】
この発明のセグメント解体組立装置では、上記のように、トンネル延長方向に延びる第1旋回中心軸線回りに、把持部を旋回させる第1旋回部と、第1旋回中心軸線から把持部までの距離が変わるように、トンネル延長方向に対して略直角に交差する交差方向に、把持部を移動させる第1移動部と、第1旋回部とは別個に設けられ、第1旋回中心軸線とは異なるとともにトンネル延長方向に延びる第2旋回中心軸線回りに、把持部を旋回させる第2旋回部と、第1移動部とは別個に設けられ、第2旋回中心軸線から把持部までの距離が変わるように、交差方向に、把持部を移動させる第2移動部とを備える。これによって、互いに異なる第1旋回部および第2旋回部により、2つの異なる旋回中心軸線回りに把持部を旋回させることができるとともに、互いに異なる第1移動部および第2移動部により、2つの旋回中心軸線から各々の距離が変わるように把持部を移動させることができる。すなわち、2段階で把持部を旋回させることができるとともに、2段階で把持部を移動させることができる。このため、旋回機構と一対のジャッキとにより2段階で把持部の旋回を行うとともに、一対のジャッキにより、旋回機構の旋回中心軸線から把持部までの距離が変わるように、1段階で把持部を移動させる従来構成と比較して、把持部に把持されているセグメントの向きおよび配置をより柔軟に変更することができる。
【0009】
上記セグメント解体組立装置において、好ましくは、把持部、第1移動部および第1旋回部が一体的に設けられる把持機構をさらに備え、第2旋回中心軸線は、交差方向において、第1旋回中心軸線よりも把持機構から離間した位置に配置され、第2旋回部は、把持機構を第2旋回中心軸線回りに旋回させることによって、第1旋回部よりも大きな旋回半径により把持部を第2旋回中心軸線回りに旋回させるように構成されている。このように構成すれば、互いに異なる2つ旋回半径により把持部を旋回させることができるので、トンネル内壁の近傍では比較的小さく把持部を旋回させるとともに、トンネル内壁から比較的離間した位置では比較的大きく把持部を旋回させるなど、状況に応じてより柔軟に把持部の旋回半径を変えることができる。
【0010】
この場合、好ましくは、把持機構、第2移動部および第2旋回部を含む装置本体を支持する支持部をさらに備え、第2旋回部は、交差方向において、支持部に対する第2旋回中心軸線の位置が固定された状態で、支持部に支持されており、装置本体は、交差方向において、第2旋回部により、第2旋回中心軸線を基準として把持部を旋回させるように構成されるとともに、交差方向において、第2旋回部により、第2旋回中心軸線を基準として第2旋回中心軸線から把持部までの距離が変化するように把持部を移動させるように構成されている。このように構成すれば、装置本体を設置する段階で、組み立てるセグメントの位置を考慮して、把持部の旋回および移動の基準を設定することにより、確実にセグメントを組み立てることができる。
【0011】
上記装置本体を支持する支持部をさらに備える構成において、好ましくは、支持部は、トンネル延長方向に延びるレール部材を含み、装置本体は、レール部材に沿って、トンネル延長方向に移動可能に構成されている。このように構成すれば、レール部材によって、装置本体を移動させる専用の装置を用いることなく、装置本体をトンネル延長方向に移動させることができる。
【0012】
上記装置本体を支持する支持部をさらに備える構成において、好ましくは、支持部は、トンネル延長方向に延びるレール部材を含み、第2移動部は、レール部材に沿って走行する一対の走行装置と、各々の一端が一対の走行装置に接続されるとともに、各々の他端により把持機構を支持する一対のリンク部材とを含み、第2移動部は、一対の走行装置をレール部材に沿って互いに近づけるように走行させることによって、交差方向において、一対のリンク部材を介してレール部材から把持機構を遠ざけるように構成されるとともに、一対の走行装置をレール部材に沿って互いに遠ざけるように走行させることによって、交差方向において、一対のリンク部材を介してレール部材に把持機構を近づけるように構成されている。このように構成すれば、一対の構成であるリンク部材および走行装置により把持機構を安定して支持することができる。また、一対の走行装置を互いに近接および離間させるだけで、容易に、把持機構を移動させることができる。
【0013】
この発明のトンネル掘削機は、カッタヘッドを含む掘削機本体と、掘削機本体に設置され、セグメントの解体および組立の少なくとも一方を行うセグメント解体組立装置とを備え、セグメント解体組立装置は、セグメントの把持部と、トンネル延長方向に延びる第1旋回中心軸線回りに、把持部を旋回させる第1旋回部と、第1旋回中心軸線から把持部までの距離が変わるように、トンネル延長方向に対して略直角に交差する交差方向に、把持部を移動させる第1移動部と、第1旋回部とは別個に設けられ、第1旋回中心軸線とは異なるとともにトンネル延長方向に延びる第2旋回中心軸線回りに、把持部を旋回させる第2旋回部と、第1移動部とは別個に設けられ、第2旋回中心軸線から把持部までの距離が変わるように、交差方向に、把持部を移動させる第2移動部と、を含み、第1旋回部は、第1旋回中心軸線周りに回動する回動部材を含み、回動部材のトンネル延長方向における両端は、第2移動部により支持されている。
【0014】
この発明のトンネル掘削機では、上記のように、トンネル延長方向に延びる第1旋回中心軸線回りに、把持部を旋回させる第1旋回部と、第1旋回中心軸線から把持部までの距離が変わるように、トンネル延長方向に対して略直角に交差する交差方向に、把持部を移動させる第1移動部と、第1旋回部とは別個に設けられ、第1旋回中心軸線とは異なるとともにトンネル延長方向に延びる第2旋回中心軸線回りに、把持部を旋回させる第2旋回部と、第1移動部とは別個に設けられ、第2旋回中心軸線から把持部までの距離が変わるように、交差方向に、把持部を移動させる第2移動部とを設ける。これによって、互いに異なる第1旋回部および第2旋回部により、2つの異なる旋回中心軸線回りに把持部を旋回させることができるとともに、互いに異なる第1移動部および第2移動部により、2つの旋回中心軸線から各々の距離が変わるように把持部を移動させることができる。すなわち、2段階で把持部を旋回させることができるとともに、2段階で把持部を移動させることができる。このため、旋回機構と一対のジャッキとにより2段階で把持部の旋回を行うとともに、一対のジャッキにより、旋回機構の旋回中心軸線から把持部までの距離が変わるように、1段階で把持部を移動させる従来構成と比較して、把持部に把持されているセグメントの向きおよび配置をより柔軟に変更することが可能なトンネル掘削機を提供することができる。
【0015】
この発明のセグメント解体組立方法は、セグメントの解体および組立の少なくとも一方を行うセグメント解体組立方法であって、把持部によってセグメントを把持するセグメント把持工程と、トンネル延長方向に延びる第1旋回中心軸線回りに回動する回動部材を含む第1旋回部によって、第1旋回中心軸線周りに把持部を旋回させる第1旋回工程と、第1移動部により、第1旋回中心軸線から把持部までの距離が変わるように、トンネル延長方向に対して略直角に交差する交差方向に、把持部を移動させる第1移動工程と、第1旋回部とは別個に設けられた第2旋回部により、第1旋回中心軸線とは異なるとともにトンネル延長方向に延びる第2旋回中心軸線回りに、把持部を旋回させる第2旋回工程と、第1移動部とは別個に設けられ、回動部材のトンネル延長方向における両端を支持する第2移動部により、第2旋回中心軸線から把持部までの距離が変わるように、交差方向に、把持部を移動させる第2移動工程と、を備える。なお、上記「セグメント解体組立方法」の中の「解体組立」とは、「セグメント解体組立方法」がセグメントの解体および組立の少なくとも一方を行う方法であるという意味である。
【0016】
この発明のセグメント解体組立方法では、上記のように、トンネル延長方向に延びる第1旋回中心軸線回りに、把持部を旋回させる第1旋回工程と、第1旋回中心軸線から把持部までの距離が変わるように、トンネル延長方向に対して略直角に交差する交差方向に把持部を移動させる第1移動工程と、第1旋回中心軸線とは異なるとともにトンネル延長方向に延びる第2旋回中心軸線回りに、把持部を旋回させる第2旋回工程と、第2旋回中心軸線から把持部までの距離が変わるように、交差方向に把持部を移動させる第2移動工程と、を設ける。これによって、互いに異なる第1旋回部および第2旋回部により、2つの異なる旋回中心軸線回りに把持部を旋回させることができるとともに、互いに異なる第1移動部および第2移動部により、2つの旋回中心軸線から各々の距離が変わるように把持部を移動させることができる。すなわち、2段階で把持部を旋回させることができるとともに、2段階で把持部を移動させることができる。このため、旋回機構と一対のジャッキとにより2段階で把持部の旋回を行うとともに、一対のジャッキにより、旋回機構の旋回中心軸線から把持部までの距離が変わるように、1段階で把持部を移動させる従来構成と比較して、把持部に把持されているセグメントの向きおよび配置をより柔軟に変更することが可能なセグメント解体組立方法を提供することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、上記のように、把持部に把持されているセグメントの向きおよび配置をより柔軟に変更することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】実施形態によるセグメント解体組立装置の全体構成を示した側面図である。
【
図3】実施形態によるセグメント解体組立装置の装置本体を示した側面図である。
【
図4】
図1の91-91線に沿った断面図であり、実施形態によるセグメント解体組立装置の第1旋回部による旋回および第2旋回部による旋回について説明するための図である。
【
図5】実施形態によるセグメント解体組立装置の第2移動部による移動について説明するための図である。
【
図6】実施形態によるセグメント解体組立装置によるセグメントの解体作業について説明するための図である。
【
図7】実施形態によるセグメント解体組立装置によるセグメントの組立作業について説明するための図である。
【
図8】変形例によるセグメント解体組立装置を備えるトンネル掘削機の全体構成を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
[実施形態]
図1~
図5を参照して、本発明の一実施形態によるセグメント解体組立装置100について説明する。
【0021】
(セグメント解体組立装置の全体構成)
図1および
図2に示すセグメント解体組立装置100は、トンネル掘削機(図示せず)により掘削された掘削済みトンネルの拡幅作業に用いられる装置である。たとえば、セグメント解体組立装置100は、既設のセグメントSの解体作業、および、解体作業後の拡幅のためのセグメントSの組立作業に用いられる装置である。なお、セグメント解体組立装置100は、セグメントSの解体作業のみ、または、セグメントSの解体作業後の拡幅のための組立作業のみに用いられる装置であってもよい。なお、セグメント解体組立装置100は、カッタヘッドなどのトンネルを延伸するための構成を備えてはいない。
【0022】
一例ではあるが、本実施形態では、セグメント解体組立装置100を用いて、円形状にセグメントSが組み立てられた既設のトンネルを、部分的に異形断面のトンネルに拡幅するケースについて説明する(
図7参照)。この場合、セグメント解体組立装置100を用いた拡幅作業は、トンネルの左右方向の一方(Y1方向)側で行うものとする。
【0023】
詳細には、本実施形態では、セグメント解体組立装置100を用いて、左右方向(Y方向)に並んだ2つの円形状のトンネルを接続するために、一方のトンネル内にセグメント解体組立装置100を設置して、一方のトンネル内壁を徐々に拡幅していき、他方のトンネル(図示せず)に接続する作業について説明する。
【0024】
なお、拡幅作業時に組み立てられるセグメントSのリングの形状は、比較的複雑な異形断面形状となる。ここでは、「異形断面形状」を、「トンネル延長方向(X方向)に直交するトンネルの断面が非円形形状」の意味で用いる。
【0025】
本実施形態のセグメント解体組立装置100は、このような比較的複雑な異形断面形状のトンネル内壁であっても、組立作業時において、トンネル延長方向(X方向)から見て、設置前のセグメントS(後述する把持部G)の向きおよび配置を柔軟に変更して、セグメントSをトンネル内壁に設置することが可能なように構成されている。詳細については後述する。
【0026】
各図では、トンネル延長方向(トンネルが延びている方向)をX方向により示し、X方向のうちの一方をX1方向により示し、X方向のうちの他方をX2方向により示す。
【0027】
各図では、上下方向をZ方向により示し、Z方向のうち上方をZ1方向により示し、Z方向のうち下方をZ2方向により示す。上下方向(Z方向)は、トンネル延長方向(X方向)に対して略直角に交差する方向である。
【0028】
各図では、左右方向をY方向により示し、拡幅作業を行う側であるY方向のうちの一方をY1方向により示し、Y方向のうちの他方をY2方向により示す。左右方向(Y方向)は、トンネル延長方向(X方向)に対して略直角に交差する方向である。
【0029】
図3および
図4では、後述する第1旋回中心軸線α1回りにおける把持部Gの旋回方向の一方をR10により示し、他方をR11により示す。また、
図3および
図4では、後述する第2旋回中心軸線α2回りにおける把持部Gの旋回方向の一方をR20により示し、他方をR21により示す。
【0030】
なお、本実施形態では、トンネル延長方向(トンネルが延びている方向)(X方向)に対して略直角に交差する方向のすべてを「交差方向」として説明する。
【0031】
セグメント解体組立装置100は、レール部材Rと、梁部材Bと、セグメントSの把持部Gを含む装置本体101とを備えている。なお、レール部材Rは、特許請求の範囲の「支持部」の一例である。
【0032】
(セグメント解体組立装置のレール部材および梁部材の構成)
図1および
図2に示すように、レール部材Rは、トンネル延長方向(X方向)に直線状に延びている。レール部材Rは、装置本体101を支持して、装置本体101のトンネル延長方向(X方向)への移動をガイドするように構成されている。すなわち、装置本体101は、セグメントSの組立作業の進行に伴いレール部材Rに沿ってトンネル延長方向(X方向)に移動可能に構成されている。一例ではあるが、レール部材Rは、H形状の鋼材より形成され、Z方向に平行に並ぶように2つ設けられている。なお、レール部材Rは、トンネルの中心軸線γからY1方向にずれた位置に配置されている。
【0033】
なお、レール部材Rの機能(役割)には、装置本体101をトンネル延長方向(X方向)に移動させる機能に加えて、後述する一対の走行装置40の間の距離を変化させてセグメントSの把持部Gをトンネル内壁に接近させ、または、トンネル内壁から離間させる機能がある。つまり、レール部材Rの機能には、装置本体101をトンネル延長方向(X方向)に移動させる機能に加えて、交差方向において、後述する第2旋回中心軸線α2から把持部Gまでの距離が変化するように、把持部Gを移動させる機能がある。詳細については後述する。
【0034】
梁部材Bは、レール部材Rをトンネル内壁に固定する基礎である。梁部材Bは、レール部材Rのトンネル延長方向(X方向)の両端にそれぞれ設けられている。梁部材Bは、交差方向(Z方向)に延びており、両端がトンネルの内壁に固定されている。
【0035】
(セグメント解体組立装置の装置本体の構成)
装置本体101は、把持部Gと、第1旋回部1と、第1移動部2と、第1旋回部1とは別個に設けられた第2旋回部3と、第1移動部2とは別個に設けられた第2移動部4とを備えている。なお、把持部G、第1旋回部1および第1移動部2は、互いに一体的に設けられ、把持機構G1を構成している。
【0036】
第1旋回部1、第1移動部2、第2旋回部3および第2移動部4は、トンネル延長方向(X方向)から見て、セグメントSの把持部Gの向きおよび配置を柔軟に変更するための構成である。すなわち、第1旋回部1、第1移動部2、第2旋回部3および第2移動部4は、所定のセグメントSのリングに囲まれる領域において、セグメントSの把持部Gの向きおよび配置を柔軟に変更するための構成である。
【0037】
図3に示すように、第1旋回部1は、比較的小さな旋回半径r1により把持部Gを第1旋回中心軸線α1回りに旋回させるように構成されている。一方、第2旋回部3は、比較的大きな旋回半径r2(旋回半径r1よりも大きな旋回半径)により把持部Gを第2旋回中心軸線α2回りに旋回させるように構成されている。第1旋回中心軸線α1および第2旋回中心軸線α2は、ともに、トンネル延長方向(X方向)に延びている。すなわち、第1旋回中心軸線α1と、第2旋回中心軸線α2とは、平行である。
【0038】
なお、第2旋回中心軸線α2は、交差方向において、第1旋回中心軸線α1よりも把持部G(把持機構G1)から離間した位置に配置されている。
【0039】
また、第1移動部2は、第1旋回中心軸線α1から把持部Gまでの距離が変わるように、トンネル延長方向(X方向)に対して略直角に交差する交差方向に、把持部Gを比較的小さく移動させるように構成されている。一方、第2移動部4は、第2旋回中心軸線α2から把持部Gまでの距離が変わるように、交差方向に、把持部Gを比較的大きく(第1移動部2よりも大きく)移動させるように構成されている。
【0040】
以下、セグメント解体組立装置100の装置本体101の各部の詳細な構成について説明する。
【0041】
〈把持部の構成〉
把持部Gは、トンネル内壁に組み立てる際や、セグメントを解体する際に、セグメントSを直接把持するように構成されている。把持部Gには、トンネル内壁にセグメントSを組み付ける段階で、把持しているセグメントSの向きを微調整するための機構が設けられている。
【0042】
把持部Gは、トンネル延長方向(X方向)に延びる第1旋回中心軸線α1、および、トンネル延長方向(X方向)に延びる第2旋回中心軸線α2から交差方向にずれた位置に配置されている。
【0043】
〈第1旋回部の構成〉
第1旋回部1は、1つの回動部材10と、回動部材10を第1旋回中心軸線α1回りに回動させるためのトルク(回転力)を発生させる電動機11(油圧式または電動式)とを含んでいる。
【0044】
回動部材10は、第2移動部4の後述する平板形状の旋回支持部42により第1旋回中心軸線α1回りに回動可能に支持されている。
【0045】
回動部材10には、トンネル延長方向(X方向)の両端に、それぞれ、第2移動部4の後述する平板形状の旋回支持部42に嵌合する円形状の軸部10aが設けられている。軸部10aは、トンネル延長方向(X方向)に延びている。第1旋回部1は、トンネル延長方向(X方向)に延びる円柱形状(円筒形状などでもよい)に形成されている。
【0046】
回動部材10には、トンネル延長方向(X方向)の中心に第1移動部2が直接固定されている。第1移動部2には、把持部Gが直接固定されている。したがって、回動部材10には、第1移動部2を介して、間接的に把持部Gが固定されている。
【0047】
なお、第2移動部4の後述する平板形状の旋回支持部42に把持部Gが干渉することがないように、トンネル延長方向(X方向)において、把持部Gは、回動部材10の軸部10aを除いた部分よりも小さく形成されている。
【0048】
電動機11(油圧式または電動式)は、第2移動部4の後述する平板形状の旋回支持部42、または、円柱形状の回動部材10に固定されており、第2移動部4の後述する平板形状の旋回支持部42に対して、回動部材10を第1旋回中心軸線α1回りに回動させるように構成されている。その結果、電動機11(第1旋回部1)は、第1旋回中心軸線α1回りに、把持部Gを旋回させるように構成されている。
【0049】
第1旋回部1は、主に、セグメントSをトンネル内壁に組み付ける段階や、トンネル内壁から既設のセグメントSを解体する段階における旋回に用いられる。
【0050】
すなわち、第1旋回部1は、比較的小さく把持部G(セグメントS)を旋回させる必要がある際に用いられる。なお、第1旋回部1により把持部Gが旋回されたとしても、第1旋回中心軸線α1から把持部Gまでの距離が変わることはない。
【0051】
〈第1移動部の構成〉
図3に示す第1移動部2は、把持部Gを直接支持するジャッキ(油圧式または電動式)により構成されている。第1移動部2は、把持部Gを交差方向に直線状に移動させるように構成されている。すなわち、第1移動部2は、交差方向に延びている。
【0052】
第1移動部2は、第1旋回中心軸線α1から把持部Gまでの距離が大きくなるように把持部Gを移動させることにより、第1旋回部1による第1旋回中心軸線α1回りの旋回半径r1を大きくするように構成されている。
【0053】
また、第1移動部2は、第1旋回中心軸線α1から把持部Gまでの距離が小さくなるように把持部Gを移動させることにより、第1旋回部1による第1旋回中心軸線α1回りの旋回半径r1を小さくするように構成されている。
【0054】
第1移動部2は、主に、セグメントSをトンネル内壁に組み付ける段階や、トンネル内壁から既設のセグメントSを解体する段階における移動に用いられる。
【0055】
すなわち、第1移動部2は、比較的小さくセグメントSを移動させる必要がある際に用いられる。なお、第1移動部2により把持部Gが移動された場合には、第1旋回中心軸線α1から把持部Gまでの距離が変わる。
【0056】
〈第2旋回部の構成〉
第2旋回部3は、一対の回動部材30と、一対の回動部材30を第2旋回中心軸線α2回りに回動させるためのトルク(回転力)を発生させる一対の電動機31(油圧式または電動式)とを含んでいる。
【0057】
なお、第2旋回部3(回動部材30および電動機31)は、トンネル延長方向(X方向)において、把持部G(把持機構G1)の両側に設けられる一対の構成である。このため、以下の説明では一方側の第2旋回部3の構成についてのみ説明する。
【0058】
図4に示すように、回動部材30は、第2移動部4の後述する走行装置40に設けられた旋回支持部40b(円形状の軸部分)により第2旋回中心軸線α2回りに回動可能に支持されている。なお、旋回支持部40bは、トンネル延長方向(X方向)に延びる円形状の軸部分である。
【0059】
回動部材30は、交差方向に延びる平板形状に形成されている。回動部材30には、トンネル延長方向(X方向)に貫通する貫通穴が中心に設けられており、旋回支持部40bが嵌合している。
【0060】
回動部材30は、第2移動部4の後述するリンク部材41、および、第2移動部4の後述する平板形状の旋回支持部42を介して、把持機構G1(把持部G)を支持している。
【0061】
電動機31は、平板形状の回動部材30に固定されており、第2移動部4の後述する走行装置40に設けられた旋回支持部40b(円形状の軸部分)に対して、回動部材30を第2旋回中心軸線α2回りに回動させるように構成されている。その結果、電動機31(第2旋回部3)は、第2旋回中心軸線α2回りに、把持部G(把持機構G1)を旋回させるように構成されている。
【0062】
ここで、第2旋回部3は、交差方向において、レール部材Rに対する第2旋回中心軸線α2の位置が固定された状態で、走行装置40を介してレール部材Rに支持されている。したがって、第2旋回部3(装置本体101)は、交差方向において、第2旋回中心軸線α2を基準として、第2旋回中心軸線α2から把持部Gまでの距離が変化するように把持部Gを旋回させるように構成されている。
【0063】
第2旋回部3は、主に、組み立てのためにセグメントSをトンネル内壁の近くに運ぶ段階や、トンネル内壁から解体したセグメントSをセグメント搬出装置(図示せず)まで運ぶ段階における旋回に用いられる。
【0064】
すなわち、第2旋回部3は、第1旋回部1と比較して、大きい旋回半径により把持部G(セグメントS)を旋回させる必要がある際に用いられる。なお、第2旋回部3により把持部Gが旋回されたとしても、第2旋回中心軸線α2から把持部Gまでの距離が変わることはない。
【0065】
〈第2移動部の構成〉
図5に示すように、第2移動部4は、一対の走行装置40と、一対のリンク部材41と、平板形状の一対の旋回支持部42とを含んでいる。平板形状の旋回支持部42は、第1旋回部1の円柱形状の回動部材10を第1旋回中心軸線α1回りに回動可能に支持している。
【0066】
なお、第2移動部4(走行装置40、電動機31および旋回支持部42)は、トンネル延長方向(X方向)において、把持部G(把持機構G1)の両側に設けられる一対の構成である。
【0067】
走行装置40は、トンネル延長方向(X方向)に直線状に延びるレール部材Rに沿って走行するように構成されている。
【0068】
走行装置40には、レール部材Rに沿って走行するための複数の走行輪40aと、旋回支持部40bとが設けられている。なお、走行装置を移動させる他の一例として、レール部材上にラック・チェーンを設置して、ピニオンを有する走行装置をラック・チェーンに組み付けるとともに、所定の駆動源によりチェーンを介してピニオンを回転させることによって、走行装置をトンネル延長方向(X方向)に移動させてもよい。
【0069】
旋回支持部40bは、トンネル延長方向(X方向)に延びる円形状の軸部分である。旋回支持部40bは、第2旋回部3の平板形状の回動部材30を、第2旋回中心軸線α2回りに回動可能に支持している。なお、走行装置40がレール部材Rに沿って走行したとしても、旋回支持部40bの交差方向の位置は変わることがない。すなわち、走行装置40がレール部材Rに沿って走行したとしても、第2旋回中心軸線α2の位置は変わることがない。
【0070】
リンク部材41は、互いに平行に配置される複数(4つ)の梁部材によって構成されている。リンク部材41は、直線状に延びる梁部材である。一対のリンク部材41は、各々の一端41a(レール部材R側の端部)が一対の走行装置40に接続されるとともに、各々の他端41b(把持部G側の端部)により把持機構G1を支持している。
【0071】
詳細には、リンク部材41は、第2旋回部3の平板形状の回動部材30を介して走行装置40に一端41aが接続されている。なお、リンク部材41は、一端41aにおいて、回動中心軸線β1回りに回動可能な状態で、回動部材30に対して直接接続されている。回動中心軸線β1は、「トンネル延長方向(X方向)」、および、「第1旋回中心軸線α1と第2旋回中心軸線α2とが並ぶ方向」の両方に直交する方向に延びている。
【0072】
また、リンク部材41は、第2移動部4の平板形状の旋回支持部42を介して回動部材10に他端41bが接続されている。なお、リンク部材41は、他端41bにおいて、回動中心軸線β2回りに回動可能な状態で、旋回支持部42に対して直接接続されている。回動中心軸線β2は、「トンネル延長方向(X方向)」、および、「第1旋回中心軸線α1と第2旋回中心軸線α2とが並ぶ方向」の両方に直交する方向に延びている。すなわち、回動中心軸線β1と、回動中心軸線β2とは、平行である。
【0073】
第2移動部4は、一対の走行装置40をレール部材Rに沿って互いに近づけるように走行させることによって、交差方向において、一対のリンク部材41を介してレール部材R(第2旋回中心軸線α2)から把持機構G1(把持部G)を遠ざけるように構成されている。
【0074】
詳細には、第2移動部4は、一対の走行装置40を互いに近づけることによって、リンク部材41とレール部材Rとのなす角度が徐々に大きくなるように、リンク部材41を移動させる。
【0075】
すなわち、第2移動部4は、リンク部材41をレール部材Rに対して「平行に近い状態」から「直角に近い状態」にまで姿勢が変化するように、リンク部材41を移動させる。つまり、第2移動部4は、リンク部材41をレール部材Rに対して「横に寝かせた状態」から「起立させた状態」にまで姿勢が変化するように、リンク部材41を移動させる。
【0076】
これによって、第2移動部4は、一対のリンク部材41により把持機構G1(把持部G)を押し出すようにして、レール部材Rから把持機構G1を遠ざけるように構成されている。その結果、第2移動部4は、第2旋回中心軸線α2から把持機構G1(把持部G)までの距離を大きくするように構成されている。すなわち、第2移動部4は、第2旋回中心軸線α2から把持部Gまでの距離が大きくなるように把持部Gを移動させることにより、第2旋回部3による第2旋回中心軸線α2回りの旋回半径r2(
図3参照)を大きくするように構成されている。
【0077】
また、第2移動部4は、一対の走行装置40をレール部材Rに沿って互いに遠ざけるように走行させることによって、交差方向において、一対のリンク部材41を介してレール部材R(第2旋回中心軸線α2)に把持機構G1(把持部G)を近づけるように構成されている。
【0078】
詳細には、第2移動部4は、一対の走行装置40を互いに遠ざけることによって、リンク部材41とレール部材Rとのなす角度が徐々に小さくなるように、リンク部材41を移動させる。
【0079】
すなわち、第2移動部4は、リンク部材41をレール部材Rに対して「直角に近い状態」から「平行に近い状態」にまで姿勢が変化するように、リンク部材41を移動させる。つまり、第2移動部4は、リンク部材41をレール部材Rに対して「起立させた状態」から「横に寝かせた状態」にまで姿勢が変化するように、リンク部材41を移動させる。
【0080】
これによって、第2移動部4は、一対のリンク部材41により把持機構G1(把持部G)を引き戻すようにして、レール部材Rに把持機構G1を近づけるように構成されている。その結果、第2移動部4は、第2旋回中心軸線α2から把持機構G1(把持部G)までの距離を小さくするように構成されている。すなわち、第2移動部4は、第2旋回中心軸線α2から把持部G(把持機構G1)までの距離が小さくなるように把持部G(把持機構G1)を移動させることにより、第2旋回部3による第2旋回中心軸線α2回りの旋回半径r2(
図3参照)を小さくするように構成されている。
【0081】
なお、第2移動部4は、第2旋回中心軸線α2から把持機構G1(把持部G)までの距離を変化させる際に、一方の走行装置40を移動させることなく固定して、他方の走行装置40のみをレール部材Rに沿って移動させてもよい。
【0082】
また、第2移動部4は、一対の走行装置40を、互いに等しい速度で、レール部材Rに沿って同じ方向に移動させることによって、装置本体101の全体を、姿勢を変えることなくトンネル延長方向(X方向)に移動させるように構成されている。
【0083】
ここで、第2移動部4は、交差方向において、レール部材Rに対する第2旋回中心軸線α2の位置が固定された状態で、走行装置40を介してレール部材Rに支持されている。したがって、第2移動部4(装置本体101)は、交差方向において、第2旋回中心軸線α2を基準として、第2旋回中心軸線α2から把持部Gまでの距離が変化するように把持部Gを移動させるように構成されている。
【0084】
第2移動部4は、主に、組み立てのためにセグメントSをトンネル内壁の近くに運ぶ段階や、トンネル内壁から解体したセグメントSをセグメント搬出装置(図示せず)まで運ぶ段階における移動に用いられる。
【0085】
すなわち、第2移動部4は、第1移動部2と比較して、大きくセグメントSを移動させる必要がある際に用いられる。なお、第2移動部4により把持部Gが移動された場合には、第2旋回中心軸線α2から把持部Gまでの距離が変わる。
【0086】
(セグメントの解体動作)
図6(A)および(B)を参照して、セグメントSの解体動作について説明する。セグメントSの解体は、原則、上方側から下方側に向けて順に行われる。
【0087】
はじめに、
図6(A)に示すように、第1移動部2を伸ばした状態で、把持部GによりセグメントSを把持する。
【0088】
次に、
図6(B)に示すように、第1移動部2を縮めて把持部Gを直線状に移動させることによって、把持部Gにより把持されたセグメントSをトンネル内壁から離間させる。そして、セグメントSを搬出した後、第2旋回部3により把持部Gを旋回させて、他のセグメントSの解体を行う。
【0089】
(セグメントの組立動作)
図7(A)~(D)を参照して、セグメントSの組立動作について説明する。セグメントSの組立は、原則、下方側から上方側に向けて順に積み上げる形で行われる。なお、
図7(A)~(D)の各図において二点鎖線で示すセグメントSや把持部Gは、
図7(A)~(D)の各工程の移動後におけるセグメントSや把持部Gを示している。
【0090】
はじめに、
図7(A)に示すように、セグメント把持工程として、把持部GによりセグメントSを把持する。
【0091】
次に、
図7(A)に示すように、第1旋回工程として、セグメントSの組付位置を向くように、第2旋回部3により把持部Gを旋回させて、把持部Gの向きを変える。
【0092】
次に、
図7(B)に示すように、第1移動工程として、第2移動部4により、一対の走行装置40を互いに近づけることによって、一対のリンク部材41を介して第2旋回中心軸線α2から把持部Gまでの距離が大きくなるように、把持部Gを移動させる。その結果、第2移動部4により、セグメントSの組付位置の近傍に、セグメントSを移動させる。なお、第2移動部4による把持部Gの移動を、上記第2旋回部3による把持部Gの旋回よりも先に行ってもよい。
【0093】
次に、
図7(C)に示すように、第2旋回工程として、第1旋回部1により、把持部Gを旋回させて、セグメントSの向きを微調整する。すなわち、セグメントSの向きを、組付位置に設置された際のセグメントSの向きと同じにする。
【0094】
次に、
図7(D)に示すように、第2移動工程として、ジャッキにより構成される第1移動部2により、第1旋回中心軸線α1から把持部Gまでの距離が大きくなるように、把持部Gを移動させて、セグメントSを組付位置まで移動させて、セグメントSを組み立てる。すなわち、トンネル内壁に向けてセグメントSを移動させて、セグメントSを組み付ける。
【0095】
(実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0096】
本実施形態では、上記のように、トンネル延長方向に延びる第1旋回中心軸線α1回りに、把持部Gを旋回させる第1旋回部1と、第1旋回中心軸線α1から把持部Gまでの距離が変わるように、トンネル延長方向に対して略直角に交差する交差方向に、把持部Gを移動させる第1移動部2と、第1旋回部1とは別個に設けられ、第1旋回中心軸線α1とは異なるとともにトンネル延長方向に延びる第2旋回中心軸線α2回りに、把持部Gを旋回させる第2旋回部3と、第1移動部2とは別個に設けられ、第2旋回中心軸線α2から把持部Gまでの距離が変わるように、交差方向に、把持部Gを移動させる第2移動部4とを備える。これによって、互いに異なる第1旋回部1および第2旋回部3により、2つの異なる旋回中心軸線回りに把持部Gを旋回させることができるとともに、互いに異なる第1移動部2および第2移動部4により、2つの旋回中心軸線から各々の距離が変わるように把持部Gを移動させることができる。すなわち、2段階で把持部Gを旋回させることができるとともに、2段階で把持部Gを移動させることができる。このため、旋回機構と一対のジャッキとにより2段階で把持部の旋回を行うとともに、一対のジャッキにより、旋回機構の旋回中心軸線から把持部までの距離が変わるように、1段階で把持部を移動させる従来構成と比較して、把持部Gに把持されているセグメントSの向きおよび配置をより柔軟に変更することができる。なお、上記「セグメント解体組立装置100」の中の「解体組立」とは、「セグメント解体組立装置100」がセグメントの解体および組立の少なくとも一方を行う装置であるという意味である。
【0097】
本実施形態では、上記のように、把持部G、第1移動部2および第1旋回部1が一体的に設けられる把持機構G1をさらに備え、第2旋回中心軸線α2は、交差方向において、第1旋回中心軸線α1よりも把持機構G1から離間した位置に配置され、第2旋回部3は、把持機構G1を第2旋回中心軸線α2回りに旋回させることによって、第1旋回部1よりも大きな旋回半径により把持部Gを第2旋回中心軸線α2回りに旋回させるように構成されている。これによって、互いに異なる2つ旋回半径により把持部Gを旋回させることができるので、トンネル内壁の近傍では比較的小さく把持部Gを旋回させるとともに、トンネル内壁から比較的離間した位置では比較的大きく把持部Gを旋回させるなど、状況に応じてより柔軟に把持部Gの旋回半径を変えることができる。
【0098】
本実施形態では、上記のように、把持機構G1、第2移動部4および第2旋回部3を含む装置本体101を支持する支持部(レール部材R)をさらに備え、第2旋回部3は、交差方向において、支持部に対する第2旋回中心軸線α2の位置が固定された状態で、支持部に支持されており、装置本体101は、交差方向において、第2旋回部3により、第2旋回中心軸線α2を基準として把持部Gを旋回させるように構成されるとともに、交差方向において、第2移動部4により、第2旋回中心軸線α2を基準として第2旋回中心軸線α2から把持部Gまでの距離が変化するように把持部Gを移動させるように構成されている。これによって、装置本体101を設置する段階で、組み立てるセグメントSの位置を考慮して、把持部Gの旋回および移動の基準を設定することにより、確実にセグメントSを組み立てることができる。
【0099】
本実施形態では、上記のように、支持部は、トンネル延長方向に延びるレール部材Rを含み、装置本体101は、レール部材Rに沿って、トンネル延長方向に移動可能に構成されている。このように構成すれば、レール部材Rによって、装置本体101を移動させる専用の装置を用いることなく、装置本体101をトンネル延長方向に移動させることができる。
【0100】
本実施形態では、上記のように、支持部は、トンネル延長方向に延びるレール部材Rを含み、第2移動部4は、レール部材Rに沿って走行する一対の走行装置40と、各々の一端41aが一対の走行装置40に接続されるとともに、各々の他端41bにより把持機構G1を支持する一対のリンク部材41とを含み、第2移動部4は、一対の走行装置40をレール部材Rに沿って互いに近づけるように走行させることによって、交差方向において、一対のリンク部材41を介してレール部材Rから把持機構G1を遠ざけるように構成されるとともに、一対の走行装置40をレール部材Rに沿って互いに遠ざけるように走行させることによって、交差方向において、一対のリンク部材41を介してレール部材Rに把持機構G1を近づけるように構成されている。これによって、一対の構成であるリンク部材41および走行装置40により把持機構G1を安定して支持することができる。また、一対の走行装置40を互いに近接および離間させるだけで、容易に、把持機構G1を移動させることができる。
【0101】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態および変形例は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0102】
たとえば、上記実施形態では、トンネル掘削機によるトンネル掘削後に、セグメント解体組立装置をセグメントの組み立ておよび解体を行う専用の装置として構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、
図8に示す変形例のように、セグメント解体組立装置100をトンネル掘削機200の構成の一部としてもよい。このようなトンネル掘削機200は、カッタヘッド201aを含む掘削機本体201と、掘削機本体201に設置されるセグメント解体組立装置100とを備える。
【0103】
また、上記実施形態では、トンネル延長方向から見て、レール部材を、トンネルの中心軸線γ(
図2参照)からずれた位置に配置した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、
図8に示す変形例のように、レール部材200Rを、トンネルの中心軸線γ上に配置してもよい。
【0104】
また、上記実施形態では、トンネル延長方向から見て、走行装置を、向きを変えることなくトンネル延長方向に移動するように構成して、トンネルの左右方向の一方(Y1方向)を拡幅する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、
図8に示す変形例のように、走行装置240および把持部Gをトンネル延長方向に延びるレール部材200Rの回りに回動可能なように構成してもよい。これによって、トンネルの左右方向の他方(Y2方向)やトンネルの上方(Z1方向)など、トンネル延長方向から見て、上記実施形態よりも、より大きな範囲を拡幅することが可能になる。この場合、
図8に示すように、交差方向において第2旋回中心軸線α2とレール部材200Rの中心(トンネルの中心軸線γ)とを(略)一致させてもよい。
【0105】
また、上記実施形態では、第2移動部を、一対の走行装置と、一対のリンク部材とを含むように構成して、一対の走行装置を近接および離間させることによって、一対のリンク部材、第2旋回中心軸線から把持部までの距離が変わるように、把持部を移動させた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、把持部を支持する多段リンク機構によって、第2旋回中心軸線から把持部までの距離が変わるように、把持部を移動させてよい。この他、把持部が一端に設置された1つのジャッキ、または、複数のジャッキ(多段のジャッキ)によって、第2旋回中心軸線から把持部までの距離が変わるように、把持部を移動させてもよい。さらに、ジャッキによって、把持部が一端に設置された梁部材を、レール部材に対して寝かせた姿勢(X方向に延びる姿勢)と、レール部材に対して起立させた姿勢(X方向と交差する方向に延びる姿勢)との間で移動させることによって、第2旋回中心軸線から把持部までの距離が変わるように、把持部を移動させてもよい。
【0106】
また、上記実施形態では、第2移動部を、ジャッキにより構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、第2移動部を、マジックハンド機構により構成してもよい。
【0107】
また、上記実施形態では、トンネル内に1つのセグメント解体組立装置を設置した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、トンネル内に複数のセグメント解体組立装置を設置してもよい。
【0108】
また、上記実施形態では、把持部が、常に、第1旋回中心軸線からずれた位置に配置されている例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、把持部が、第1旋回中心軸線上に配置されてもよい。この場合、把持部が、第1旋回中心軸線回りに回動する。
【0109】
また、上記実施形態では、電動機を駆動源として把持部を旋回させた例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、ジャッキなどの電動機以外の構成を駆動源として把持部を旋回させてもよい。
【0110】
また、上記実施形態では、走行装置を走行輪によりレール部材上を走行するように構成した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば、走行装置を磁力などによりレール部材上をスライド移動するように構成してもよい。
【符号の説明】
【0111】
1 第1旋回部
2 第1移動部
3 第2旋回部
4 第2移動部
40 走行装置
41 リンク部材
41a (リンク部材の)一端
41b (リンク部材の)他端
100 セグメント解体組立装置
101 装置本体
200 トンネル掘削機
201 掘削機本体
201a カッタヘッド
G 把持部
G1 把持機構
R レール部材(支持部)
S セグメント
α1 第1旋回中心軸線
α2 第2旋回中心軸線