(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】移送配管の復旧方法
(51)【国際特許分類】
F16L 1/024 20060101AFI20240116BHJP
B23K 9/00 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
F16L1/024
B23K9/00 501P
B23K9/00 501S
(21)【出願番号】P 2020100101
(22)【出願日】2020-06-09
【審査請求日】2022-10-25
(73)【特許権者】
【識別番号】507250427
【氏名又は名称】日立GEニュークリア・エナジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】小川 航生
(72)【発明者】
【氏名】田坂 陽季
【審査官】渡邉 聡
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-065648(JP,A)
【文献】特開2006-125590(JP,A)
【文献】特開平07-190249(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L 1/024
B23K 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の移送管と、
第2の移送管と、
前記第1の移送管と前記第2の移送管との端部間の長さよりも小さい長さを有し、かつ前記第1の移送管と前記第2の移送管の端部間にある第3の移送管と、
前記第1の移送管と第3の移送管の外周に設けられた第1の補修管と、
前記第2の移送管と第3の移送管の外周に設けられた第2の補修管とを有する移送配管の
復旧方法において、
前記第3の移送管と前記第1の補修管および前記第2補修管との溶接部を擦り落とすとともに前記第3の移送管を切断し、前記第1の補修管と前記第2の補修管との間から前記第3の移送管を取り除く第1の工程と、
前記第1の補修管と前記第2の補修管との端部間の長さよりも小さい長さをそれぞれ有し、かつ、それぞれの長さの合計が前記第1の補修管と前記第2の補修管との端部間の長さよりも大きい第4の移送管および第5の移送管を用意し、前記第4の移送管を
、前記第4の移送管と前記第2の補修管との端部間の長さが前記第5の移送管の長さよりも大きくなるまで前記第1の補修管に挿入し、
前記第5の移送管を、
前記第4の移送管と前記第2の補修管との端部間に配置して前記第2の補修管に挿入する第2の工程と、
前記第4の移送管と前記第5の移送管とを
溶接により接続する第3の工程と、
前記第4の移送管を前記第1の補修管
に溶接し、前記第5の移送管を前記第2の補修管
に溶接する第4の工程とを有する
ことを特徴とする移送配管の
復旧方法。
【請求項2】
請求項1に記載の移送配管の
復旧方法において、
前記移送配管は、原子力プラント内に配設されている
ことを特徴とする移送配管の
復旧方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、切断した移送配管を溶接して復旧する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラントのパラメータを監視、制御する計測計器類はプラント内に数多く接続されており、これらの計測機器は計測上設置位置に大きな制約がある。
【0003】
このため、前記計測計器を大型機器等の搬入ルート上に設置することを余儀無くされ、毎定検毎に当該計測機器を一時的に撤去するために、計測機器に接続された配管を切断し、計測機器復旧の際に配管の切断箇所を再接続する必要がある。
【0004】
上記における復旧工事は、一般的にソケット継手を用いた再接続、フランジ接続、ユニオン継手接続、等の既存の市販製品を用いた接続方法等がある。
【0005】
前記既存の市販製品を用いた接続方法の他、下記特許文献1の要約書に「更生対象の移送管内にライニング間を挿入し、第1の円筒部材を移送管の先端部に設置するとともに、突出させたライニング管に対して外装する。ライニング管を加熱し、移送管の内面及び第1の円筒部材の内面を被覆させるよう拡径させる。ライニング管の先端分を切断除去し、第1の円筒部材をライニング管から引き抜く。次いで、第2の円筒部材5をライニング管の先端部に装着して固定する。その後、ライニング管の先端部から接続先の管の後端部にかけて継手部材を取り付け、移送管と隣接する管を継手部材を介して接続する。」と記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
<市販製品のうちソケット継手を用いた場合の課題>
市販製品のうちソケット継手を用いた復旧方法では、切断して二つに分かれた復旧対象の既設の移送管の端部にソケット継手をそれぞれ接続し、接続した2つのソケット継手の間を連通する新たな配管を接続することによるものであるが、市販のソケット継手は配管をソケット継手内部に挿入する形状となっており、連通する新たな配管は2つのソケット継手間の寸法よりも長くする必要がある。
【0008】
上記のため、連通する新たな配管をソケット継手間に挿入する際に、ソケット継手間の寸法を一時的に広げる作業が生じてしまい、既設配管の曲げ部分やサポート点に一時的に設計上考慮していない外的な応力が生じてしまう他、サポートの一時的な撤去等により配管復旧のための工数が増えてしまうケースがある。
【0009】
<市販製品のうちフランジ接続、ユニオン接続等を用いた場合の課題>
移送管が内包する流体が人体、環境に有害なものが含まれている場合等、リークポテンシャルが問題視される系統等では品質の管理が容易で信頼性の高い溶接工法が求められる。このため、溶接を行わない相互接続は認められないケースでは対応が出来ない場合がある。
【0010】
<特許文献1に記載の手法を用いた場合の課題>
特許文献1に記載されている手法は接着剤を用いた接続となっているが、接着剤を溶接と読み替えた場合、前記市販製品を用いた課題は解決できる。
【0011】
しかし、容易に復旧作業が行えるのは初回のみであり、2回目以降の切断、復旧作業では前回復旧を行った部分とは別の箇所を用いる必要があり、回数を重ねる毎に復旧作業の工数、難易度が上がると考えられる。また、別の箇所で復旧工事を行わない場合は市販製品のうちソケット継手を用いた場合と同様の課題が残り、技術背景に記載した毎定検毎の切断、復旧には必ずしも対応ができるとは言えないと考えられる。
【0012】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、同一箇所で再度切断した移送配管を作業性良く再溶接することが可能な移送配管の再溶接方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明は、第1の移送管と、第2の移送管と、前記第1の移送管と前記第2の移送管との端部間の長さよりも小さい長さを有し、かつ前記第1の移送管と前記第2の移送管の端部間にある第3の移送管と、前記第1の移送管と第3の移送管の外周に設けられた第1の補修管と、前記第2の移送管と第3の移送管の外周に設けられた第2の補修管とを有する移送配管の復旧方法において、前記第3の移送管と前記第1の補修管および前記第2補修管との溶接部を擦り落とすとともに前記第3の移送管を切断し、前記第1の補修管と前記第2の補修管との間から前記第3の移送管を取り除く第1の工程と、前記第1の補修管と前記第2の補修管との端部間の長さよりも小さい長さをそれぞれ有し、かつ、それぞれの長さの合計が前記第1の補修管と前記第2の補修管との端部間の長さよりも大きい第4の移送管および第5の移送管を用意し、前記第4の移送管を、前記第4の移送管と前記第2の補修管との端部間の長さが前記第5の移送管の長さよりも大きくなるまで前記第1の補修管に挿入し、前記第5の移送管を、前記第5の移送管を前記第4の移送管と前記第2の補修管との端部間に配置して前記第2の補修管に挿入する第2の工程と、前記第4の移送管と前記第5の移送管とを溶接により接続する第3の工程と、前記第4の移送管を前記第1の補修管に溶接し、前記第5の移送管を前記第2の補修管に溶接する第4の工程とを有するものとする。
【0015】
以上のように構成した本発明によれば、移送配管を同一箇所で再度切断した後、第1の補修管に第4の移送管を挿入し、第2の補修管に第5の移送管の他端を挿入し、第4の移送管と第5の移送管とを接続して第3の移送管を形成することにより、第1の移送管および第2の移送管に外的応力をかけることなく、第3の移送管の一端を第1の補修管に差込み溶接し、かつ第3の移送管の他端を第2の補修管に差込み溶接することができる。これにより、移送配管を切断、復旧する作業を同一箇所で複数回にわたって容易に行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る移送配管の復旧方法によれば、移送配管を切断、復旧する作業を同一箇所で複数回にわたって容易に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の実施形態に係る移送配管の再溶接方法を実施した後の移送配管の概略構成図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る移送配管の再溶接方法を実施する前の移送配管の概略構成図である。
【
図3】本発明の実施形態に係る移送配管の再溶接方法の第1の工程を示した図である。
【
図4】本発明の実施形態に係る切断配管の再溶接方法の第2の工程を示した図である。
【
図5】本発明の実施形態に係る移送配管の再溶接方法の第3の工程を示した図である。
【
図6】本発明の実施形態に係る移送配管の再溶接方法の第4の工程を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態に係る移送配管の再溶接方法について、図面を用いて説明する。なお、各図において、同一構成部品には同符号を使用し、重複した説明は適宜省略するものとする。
【0019】
図1は、本実施形態に係る移送配管の再溶接方法を実施した後の移送配管の概略構成図である。移送配管100は、液体、気体、またはこれらの混合体を移送するための配管であり、各種プラント(本実施形態では原子力プラント)内に配設される。移送配管100は、第1の移送管100aと、第2の移送管100b、第1の補修管101aと、第2の補修管101bと、第3の移送管200とで構成されている。
【0020】
移送管100a,100b,200の外径は等しく、補修管101a,101bの内径は移送管100a,100b,200の外径よりも大きい。第3の移送管200の長さVは、移送管100a,100bの端部間の長さWよりも小さく、補修管101a,101bの端部間の長さXよりも大きい。第3の移送管200は、第4の移送管200aと第5の移送管200bとを突合せ溶接したものであり、移送管200a,200bの長さVa,Vbは補修管101a,101bの端部間の長さXよりも小さい。第1の移送管100aの一端および第3の移送管200の一端は第1の補修管101aに差込み溶接され、第2の移送管100bの一端および第3の移送管200の他端は第2の補修管101bに差込み溶接されている。
【0021】
補修管101a,101bの有効挿入深さYa,Ybは、補修管101a,101bの端部間の長さXの半分以上とすることが望ましい。ここでいう補修管101aの有効挿入深さYaとは、補修管101aの長さから補修管101aに挿入されている移送管100aの挿入長さを差し引いた長さを指す。同様に、補修管101bの有効挿入深さYbとは、補修管101bの長さから補修管101bに挿入されている移送管100bの挿入長さを差し引いた長さを指す。
<切断、復旧を行う既設移送配管の説明>
図2は、本実施形態に係る移送配管の再溶接方法を実施する前の既設の移送配管の概略構成図である。
図2に示す既設の移送配管100は、一度切断、復旧が行われており、第1の移送管100aと、第2の移送管100b、第1の補修管101aと、第2の補修管101bと、第3の移送管102とで構成されている。移送管100a,100b,102の外径は等しく、補修管101a,101bの内径は移送管100a,100b,102の外径よりも大きい。第1の移送管100aの一端および第3の移送管102の一端は第1の補修管101aに差込み溶接され、第2の移送管100bの一端および第3の移送管102の他端は第2の補修管101bに差込み溶接されている。
<既設移送配管の切断、復旧工法の説明>
図3に示すように、第1の補修管101aと第3の移送管102の溶接部103a、および第2の補修管101bと第3の移送管102の溶接部103bを擦り落として第3の移送管102を切断し、補修管101a,101bの間から第3の移送管102を撤去する。
【0022】
図4に示すように、第4の移送管200aを第1の補修管101aに差し込み、第5の移送管200bを第2の補修管101bに差し込む。
図4に示す例では、第4の移送管200aの長さVaが第1の補修管101aの有効挿入深さYaよりも大きいため、第4の移送管200aの端部が第1の補修管101aの端部から突出している。この場合、第5の移送管200bの長さVbは、第4の移送管200aと第2の補修管101bの端部間の長さよりも小さくする必要がある。
【0023】
図5に示すように、第1の補修管101aに差し込んだ第4の移送管200aの端部と、第2の補修管101bに差し込んだ第5の移送管200bの端部とを突合せ溶接し、第3の移送管200を形成する。なお、移送管200a,200bの各端部は市販のソケット継手を用いて接続しても良い。
【0024】
図6に示すように、第3の移送管200の一端を第1の補修管101aに差込み溶接し、第3の移送管200の他端を第2の補修管101bに差込み溶接する。以上の工程により、移送配管100の復旧が完了する。
【0025】
本実施形態では、移送配管100の一部を切除して移送配管100を第1の移送管100aと第2の移送管100bとに分割し、第1の移送管100aと第2の移送管100bとの端部間の長さXよりも小さい長さを有し、かつ第1の移送管100aおよび第2の移送管100bと同じ外径を有する第3の移送管102を第1の移送管100aと第2の移送管100bとの間に配置し、前記外径よりも大きい内径を有する第1の補修管101aに、第1の移送管100aの一端と第3の移送管102の一端とを差込み溶接し、前記外径よりも大きい内径を有する第2の補修管101bに、第2の移送管100bの一端と第3の移送管102の他端とを差込み溶接して接続した移送配管の再溶接方法において、第1の補修管101aと第2の補修管101bとの間から第3の移送管102を取り除く第1の工程と、第1の補修管101aと第2の補修管101bとの端部間の長さXよりも小さい長さVaを有する第4の移送管200aを第1の補修管101aに挿入し、第1の補修管101aと第2の補修管101bとの端部間の長さXよりも小さい長さVbを有する第5の移送管200bを第2の補修管101bに挿入する第2の工程と、第4の移送管200aと第5の移送管200bとを接続して第3の移送管200を形成する第3の工程と、第4の移送管200aを第1の補修管101aに差込み溶接し、第5の移送管200bを第2の補修管101bに差込み溶接する第4の工程とを有する。
【0026】
そして、本実施形態に係る移送配管の再溶接方法を実施した移送配管100は、移送配管100の一部を切除して分割された第1の移送管100aおよび第2の移送管100bと、第1の移送管100aと第2の移送管100bとの端部間の長さWよりも小さい長さVを有し、第1の移送管100aおよび第2の移送管100bと同じ外径を有し、第1の移送管100aと第2の移送管100bとの間に配置された第3の移送管200と、前記外径よりも大きい内径を有し、第1の移送管100aの一端と第3の移送管200の一端とが差込み溶接された第1の補修管101aと、前記外径よりも大きい内径を有し、第2の移送管100bの一端と第3の移送管200の他端とが差込み溶接されたる第2の補修管101bとを備え、第3の移送管200は、第1の補修管101aと第2の補修管101bとの端部間の長さXよりも小さい長さVaを有する第4の移送管200aと、第1の補修管101aと第2の補修管101bとの端部間の長さXよりも小さい長さVbを有する第5の移送管200bとを接続して形成されている。
【0027】
以上のように構成した本実施形態によれば、移送配管100を同一箇所で再度切断した後、第1の補修管101aに第4の移送管200aを挿入し、第2の補修管101bに第5の移送管200bの他端を挿入し、第4の移送管200aと第5の移送管200bとを接続して第3の移送管200を形成することにより、第1の移送管100aおよび第2の移送管100bに外的応力をかけることなく、第3の移送管200の一端を第1の補修管101aに差込み溶接し、かつ第3の移送管200の他端を第2の補修管101bに差込み溶接することができる。これにより、移送配管100を切断、復旧する作業を同一箇所で複数回にわたって容易に行うことが可能となる。
【0028】
また、本実施形態に係る移送配管100は、原子力プラント内に配設されている。これにより、原子力プラント内で移送配管100を切断、復旧する作業を同一箇所で複数回にわたって容易に行うことが可能となる。
【0029】
以上、本発明の実施形態について詳述したが、本発明は、上記した実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、上記した実施形態は、本発明を分かり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0030】
100…移送配管、100a…第1の移送管、100b…第2の移送管、101a…第1の補修管、101b…第2の補修管、102…第3の移送管、103a,103b…溶接部、200…第3の移送管、200a…第4の移送管、200b…第5の移送管。