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  • 特許-ワイヤハーネス配索治具 図1
  • 特許-ワイヤハーネス配索治具 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】ワイヤハーネス配索治具
(51)【国際特許分類】
   H01B 13/012 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
H01B13/012 D
H01B13/012 B
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020104570
(22)【出願日】2020-06-17
(65)【公開番号】P2021197313
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】市丸 春樹
【審査官】岩井 一央
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-213129(JP,A)
【文献】特開平08-002504(JP,A)
【文献】特開2004-250223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 13/012
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
配索板上で複数の電線を配索し、それら複数の電線の必要箇所に対し、テープロールから先端を引き出しながらテープを巻き付けて、所定形状のワイヤハーネスを製作するワイヤハーネス配索治具において、
前記配索板上に、前記テープロールを保持して加温するテープ加温手段を設け
前記テープ加温手段は、
該テープ加温手段に前記テープロールが装着された際に、前記配索板上に装備されたワイヤハーネス固定治具の駆動に関与する信号を発生するスイッチを備えている、
ことを特徴とするワイヤハーネス配索治具。
【請求項2】
前記スイッチの信号に応じて前記ワイヤハーネス固定治具にワイヤハーネス固定解除指令を与える制御手段を備える、
ことを特徴とする請求項に記載のワイヤハーネス配索治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配索板上で配索した電線束の必要箇所にテープ巻きを施して所定形状のワイヤハーネスを製作するワイヤハーネス配索治具に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤハーネスの生産工場では、作業員が、配索板上で配索した電線束の必要箇所に手作業でテープ巻きを施している。具体的には、作業員は、配索板上で電線を所定の経路に沿って配索する。そして、配索した電線束の必要箇所に対して、テープロールからテープの先端を引き出しながら巻き付けて電線束を結束し、所定形状のワイヤハーネスを作成している。
【0003】
ところで、ワイヤハーネスの製作に用いるテープは、片面に強い粘着力を持たせたものであるため、テープロールから先端を引き出しながら電線に巻き付ける作業に大きな力を要する。そのため、ワイヤハーネス配索治具の近くに加熱容器を設置し、その加熱容器の中にロール状にテープを巻いたテープロールを入れて、テープを温めることによって、テープの引き出し時の粘着力を弱めて、巻き付け作業時の作業性を向上させることが行われている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平8-2504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来のように配索治具の近くに加熱容器を設置し、その中にテープを入れて加温するようにした場合、頻繁にテープを使うたびに、配索治具とは別に設置した加熱容器にテープを移動させる必要があり、作業効率が低下する問題がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、作業効率を向上させながら、テープ巻き作業を行うことのできるワイヤハーネス配索治具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前述した目的を達成するために、本発明に係るワイヤハーネス配索治具は、下記(1)~()を特徴としている。
(1) 配索板上で複数の電線を配索し、それら複数の電線の必要箇所に対し、テープロールから先端を引き出しながらテープを巻き付けて、所定形状のワイヤハーネスを製作するワイヤハーネス配索治具において、
前記配索板上に、前記テープロールを保持して加温するテープ加温手段を設け
前記テープ加温手段は、
該テープ加温手段に前記テープロールが装着された際に、前記配索板上に装備されたワイヤハーネス固定治具の駆動に関与する信号を発生するスイッチを備えている、
ことを特徴とするワイヤハーネス配索治具。
【0009】
) 前記スイッチの信号に応じて前記ワイヤハーネス固定治具にワイヤハーネス固定解除指令を与える制御手段を備える、
ことを特徴とする上記()に記載のワイヤハーネス配索治具。
【0010】
上記(1)の構成のワイヤハーネス配索治具によれば、配索板上にテープロールを保持して加温するテープ加温手段を設けたので、配索板上において手軽にテープを加温することができ、テープの引き出し時の粘着力を弱めて、巻き付け作業の容易化を図ることができる。また、頻繁にテープを使う場合でも、テープロールの置き場所が配索板上であるため、テープロールの移動や取り扱い作業性が向上する。
更に、上記()の構成のワイヤハーネス配索治具によれば、使用したテープロールをテープ加温手段に戻すたびに、テープ加温手段に設けたスイッチが信号を発生する。そして、その信号に基づいて、配索板上に装備したワイヤハーネス固定治具の動作状態を切り換えることができる。
上記()の構成のワイヤハーネス配索治具によれば、前記スイッチの信号に応じて、ワイヤハーネス固定治具にワイヤハーネス固定解除指令を与えるので、使用したテープロールをテープ加温手段に戻すだけで自動的にワイヤハーネスの固定を解除することができる。つまり、配索作業を終了してテープロールをテープ加温手段に戻すだけで、作成したワイヤハーネスを配索板から自由に取り出すことができるようになる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、配索板上にテープロールを保持して加温するテープ加温手段を設けたので、作業効率を向上させながら、テープ巻き作業を行うことができる。
【0012】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、本発明の実施形態に係るワイヤハーネス配索治具の全体概要を示す図である。
図2図2は、本発明の実施形態に係るワイヤハーネス配索治具におけるテープ加温手段の拡大斜視図である。
図3図3は、テープ加温手段のロール支持部にテープロールを装着する際のテープロールとスイッチとガイドの関係を示す側断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0015】
図1は、本発明の実施形態に係るワイヤハーネス配索治具の全体概要を示す図である。また、図2は、本発明の実施形態に係るワイヤハーネス配索治具におけるテープ加温手段の拡大斜視図、図3は、同テープ加温手段のロール支持部にテープロールを装着する際のテープロールとスイッチとガイドの関係を示す側断面図である。
【0016】
図1に示すように、本実施形態のワイヤハーネス配索治具は、電線を所定の経路に沿って配索するための平板状の配索板1を有している。この配索板1は、作業板面を垂直より多少斜めに傾けた姿勢で設置されており、作業者が立ち姿勢で対面できるようになっている。
【0017】
配索板1上には、複数のワイヤハーネス固定治具として、Y字状のフォーク2やコネクタ支持部3が設けられている。ワイヤハーネスWを構成する複数本の電線は、例えば、端部にコネクタ5が取り付けられた状態で配索板1の上に作業者の手作業によって載せられ、コネクタ支持部3で電線端部のコネクタ5を支持したり、フォーク2で電線中間部を支持したりしながら、所定の経路に沿って配索される。そして、電線の配索がほぼ終わった終盤の工程で、必要箇所にテープTが巻き付けられてワイヤハーネスWが完成する。
【0018】
なお、コネクタ支持部3は、図示しないアクチュエータによって、コネクタ5を支持する状態とコネクタ5の支持を開放する状態に切り換えられるようになっている。また、フォーク2についても、出来上がったワイヤハーネスを取り外しやすいように、図示しないアクチュエータによって傾倒できるようにすることも可能である。
【0019】
ここで用いられるテープTは、図2に示すように、片面に粘着剤が設けられたテープTを環状芯材Sの外周に巻き付けたテープロールTRの形態で提供され、テープロールTRから先端を引き出しながら電線束に巻き付けられていく。そこで、そのテープロールTRの置き場として、配索板1上のワイヤハーネスの配索に支障にならない箇所に、円筒状のロール支持部12を有するテープ加温手段10が設けられている。
【0020】
このテープ加温手段10は、サーモスタットなどで一定温度にコントロールされる加熱板11にロール支持部12を突設したもので、ロール支持部12は水平よりやや斜め上に向けて突き出している。そして、ロール支持部12の外周にテープロールTRの内周(環状芯材Sの内周)を嵌め込んで、テープロールTRをテープ加温手段10に装着することで、テープロールTRを保持しながら、加熱板11によってテープTを適度な温度に加温できるようになっている。
【0021】
ここで、ロール支持部12には、テープロールTRが装着された際にONとなるスイッチ13が設けられている。スイッチ13の本体は、ロール支持部12の根元の上面側に隠れるように装備されており、スイッチ13の操作片13aが、ロール支持部12の外周より外部(上部)に突出している。また、スイッチ13と反対側のロール支持部12の下面側には、テープロールTRが装着された際に、テープロールTRの内周部を下方に誘導し、スイッチ13の操作片13aの上方への付勢力に抗して、該操作片13aを押し下げるための傾斜状のガイド15が設けられている。この構成により、ロール支持部12にテープロールTRが装着された際に、テープロールTRの内周部で確実にスイッチ13の操作片13aを押し下げ、スイッチ13にON信号を発生させることができる。
【0022】
このスイッチ13の信号は制御手段100に入力されている。制御手段100は、コネクタ支持部3のアクチュエータを制御する機能を有するもので、スイッチ13のON信号に応じてアクチュエータを駆動制御し、コネクタ支持部3を、コネクタ5を支持する状態から支持を開放する状態に切り換える。例えば、コネクタ支持部3は、コネクタ5のハウジングに係合するロック機構を有しており、スイッチ13のON信号に応じてこのロック機構の係合が解除され、コネクタ5がコネクタ支持部3から容易に取り外せる状態となる。つまり、制御手段100は、コネクタ支持部3に対してワイヤハーネス固定解除指令を与え、コネクタ5に対する支持を解除(開放)する。また、フォーク2に傾動機構が備わっている場合には、ワイヤハーネスWを取り外しやすいように、スイッチ13のON信号に基づいてフォーク2を傾動させることも可能である。
【0023】
以上の説明のように、本実施形態のワイヤハーネス配索治具によれば、配索板1上にテープロールTRを保持して加温するテープ加温手段10を設けているので、配索板1上において手軽にテープTを加温することができる。したがって、テープTの引き出し時の粘着力を弱めて、巻き付け作業の容易化を図ることができる。また、頻繁にテープTを使う場合でも、テープロールTRの置き場所が配索板1上であるため、テープロールTRの移動や取り扱い作業性が向上する。
【0024】
また、使用したテープロールTRをテープ加温手段10に戻すたびに、テープ加温手段10に設けたスイッチ13がON信号を発生し、そのON信号に基づいて、配索板1上に装備したコネクタ支持部3(ワイヤハーネス固定治具)の動作状態を切り換えることができる。即ち、スイッチ13のON信号に応じて、制御手段100が、コネクタ支持部3を開放状態に切り換える。したがって、配索作業を終了して、使用したテープロールTRをテープ加温手段10に戻すだけで、作業者は直ぐに、作成したワイヤハーネスWを配索板1から自由に取り外して次の工程に送ることができるようになる。
【0025】
なお、テープTを巻きが終わった後にまだ別の作業がある場合には、テープロールTRを手に持ったまま、あるいは、配索板1上の別の箇所に設けた保持部などにテープロールTRを一旦置く。ロール支持部12の先端側(スイッチ13の操作片13aに届かない位置)に余裕がある場合には、その位置にテープロールTRを仮置きしてもよい。そして、当該別の作業が終わった段階で、テープロールTRをテープ加温手段10に戻すようにすればよい。
【0026】
また、上記実施形態では、スイッチ13のON信号に基づいて、コネクタ支持部3を開放側(コネクタ5の支持を解除する側)に駆動するようにした場合を示したが、スイッチ13のON信号を、コネクタ支持部3の開放動作に限らず、その他のコネクタ固定治具の動作制御に関連付けて利用することも可能である。
【0027】
ここで、上述した本発明の実施形態に係るコネクタ及びワイヤハーネスの特徴をそれぞれ以下[1]~[3]に簡潔に纏めて列記する。
[1] 配索板(1)上で複数の電線を配索し、それら複数の電線の必要箇所に対し、テープロール(TR)から先端を引き出しながらテープ(T)を巻き付けて、所定形状のワイヤハーネス(W)を製作するワイヤハーネス配索治具において、
前記配索板(1)上に、前記テープロールを保持して加温するテープ加温手段(10)を設けた、
ことを特徴とするワイヤハーネス配索治具。
【0028】
[2] 前記テープ加温手段(10)は、
該テープ加温手段(10)に前記テープロール(TR)が装着された際に、前記配索板上に装備されたワイヤハーネス固定治具(フォーク2、コネクタ支持部3)の駆動に関与する信号を発生するスイッチ(13)を備えている、
ことを特徴とする上記[1]に記載のワイヤハーネス配索治具。
【0029】
[3] 前記スイッチ(13)の信号に応じて前記ワイヤハーネス固定治具(フォーク2、コネクタ支持部3)にワイヤハーネス固定解除指令を与える制御手段(100)を備える、
ことを特徴とする上記[2]に記載のワイヤハーネス配索治具。
【符号の説明】
【0030】
1 配索板
2 フォーク(ワイヤハーネス固定治具)
3 コネクタ支持部(ワイヤハーネス固定治具)
5 コネクタ
10 テープ加温手段
11 加熱板
12 ロール支持部
13 スイッチ
13a 操作片
15 ガイド
100 制御手段
T テープ
TR テープロール
W ワイヤハーネス
S 環状芯材
図1
図2
図3