(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】燃焼装置
(51)【国際特許分類】
F23D 14/48 20060101AFI20240116BHJP
F23D 14/72 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
F23D14/48 A
F23D14/72
(21)【出願番号】P 2020108044
(22)【出願日】2020-06-23
【審査請求日】2023-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】大稲 高裕
(72)【発明者】
【氏名】吉村 公博
【審査官】小川 悟史
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-020509(JP,A)
【文献】実開昭62-180218(JP,U)
【文献】特開2017-116209(JP,A)
【文献】特開2004-197971(JP,A)
【文献】特開2003-065507(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0074978(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F23D 14/48
F23D 14/72
F23K 5/00
F23N 1/00
F23N 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃焼筐と、燃焼筐内の下部に並設した複数のバーナと、これらバーナに燃料ガスを供給するマニホールドと、燃焼筐内の上部に配置した、バーナからの燃焼ガスにより加熱される熱交換器と、熱交換器を通過した燃焼ガスを吸引するファンとを備え、ファンの吸引力により各バーナに燃焼用空気が供給されるようにした燃焼装置であって、
マニホールドは、各バーナの混合管部の流入口に向けて燃料ガスを噴出するノズルが複数のバーナに対応して複数突設されたマニホールド本体と、マニホールド本体との間に燃料ガスの分配室を画成するカバーとで構成される
と共に、燃焼筐に固定される固定部と、燃焼筐よりも下方に位置する燃料ガスの流入部とを有するものにおいて、
マニホールド本体は、板材料のプレス加工により形成されるものであり、各ノズルの突出高さは、1回のプレス加工で絞り成形可能な高さに設定され
、更に、マニホールドに、固定部と流入部とが接近する上下方向の力がかかることでせん断応力が集中して作用する応力集中部となる切欠きが形成されることを特徴とする燃焼装置。
【請求項2】
請求項
1記載の燃焼装置であって、前記複数のバーナの並設方向を横方向として、前記固定部は、前記マニホールドの少なくとも横方向両側の端部に設けられ、前記切欠きは、マニホールドの横方向中央部よりも横方向両側の端部に近い位置に設けられることを特徴とする燃焼装置。
【請求項3】
請求項
2記載の燃焼装置であって、前記固定部は、前記マニホールドの横方向両側の端部のみに設けられ、前記流入部は、マニホールドの横方向中央部に設けられることを特徴とする燃焼装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃焼筐と、燃焼筐内の下部に並設した複数のバーナと、複数のバーナに燃料ガスを供給するマニホールドと、燃焼筐内の上部に配置した、バーナからの燃焼ガスにより加熱される熱交換器とを備える燃焼装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の燃焼装置では、一般的に、燃焼筐のバーナ設置部の下に給気室を設けて、この給気室にファンを接続している。そして、ファンからの空気が給気室を介して複数のバーナに燃焼用空気として供給されるようにしている(例えば、特許文献1参照)。尚、給気室の前部には、各バーナの混合管部の流入口が連通する、上方に立ち上がる一次空気室が設けられている。そして、一次空気室の前面を密閉するようにマニホールドを取付けている。
【0003】
このもので、マニホールドは、各バーナの混合管部の流入口に向けて燃料ガスを噴出するノズルが複数のバーナに対応して複数突設されたマニホールド本体と、マニホールド本体との間に燃料ガスの分配室を画成するカバーとで構成されている。マニホールド本体は、一次空気室の前面を密閉する蓋板としても機能するため、平面度を確保する必要がある。そこで、従来は、マニホールド本体を、ダイキャスト品として、平面度を確保している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、燃焼装置には、熱交換器を通過した燃焼ガスを吸引するファンを設けて、ファンの吸引力により各バーナに燃焼用空気が供給されるようにしたものもある。このような排気吸引方式の燃焼装置では、上述した一次空気室の前面をマニホールド本体で密閉する必要がない。そのため、マニホールド本体の平面度を確保する必要もない。
【0006】
本発明は、以上の点に鑑み、排気吸引方式の燃焼装置であって、マニホールド本体をダイキャスト品にしないことで、コストダウンを図ることができるようにしたものを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、燃焼筐と、燃焼筐内の下部に並設した複数のバーナと、これらバーナに燃料ガスを供給するマニホールドと、燃焼筐内の上部に配置した、バーナからの燃焼ガスにより加熱される熱交換器と、熱交換器を通過した燃焼ガスを吸引するファンとを備え、ファンの吸引力により各バーナに燃焼用空気が供給されるようにした燃焼装置であって、マニホールドは、各バーナの混合管部の流入口に向けて燃料ガスを噴出するノズルが複数のバーナに対応して複数突設されたマニホールド本体と、マニホールド本体との間に燃料ガスの分配室を画成するカバーとで構成されると共に、燃焼筐に固定される固定部と、燃焼筐よりも下方に位置する燃料ガスの流入部とを有するものにおいて、マニホールド本体は、板材料のプレス加工により形成されるものであり、各ノズルの突出高さは、1回のプレス加工で絞り成形可能な高さに設定され、更に、マニホールドに、固定部と流入部とが接近する上下方向の力がかかることでせん断応力が集中して作用する応力集中部となる切欠きが形成されることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、マニホールド本体を板材料のプレス加工で形成することにより、マニホールド本体をダイキャスト品とする従来例のものに比しコストダウンを図ることができる。更に、本発明では、ノズルの突出高さを1回のプレス加工で絞り成形可能な高さに設定することで、プレス加工の回数を減らすことができ、コストを可及的に低減することができる。
【0009】
尚、マニホールド本体を板材料のプレス加工で形成すると、マニホールド本体の平面度を確保することは困難になる。然し、本発明の対象は排気吸引方式の燃焼装置であるため、マニホールド本体の平面度を確保できなくても、不具合は生じない。
【0010】
ところで、燃焼装置の流通過程において、荷扱いが悪くて、燃焼装置が落下してしまうことがある。落下によって装置内部の損傷を生じても、装置外面に露出する部材が頑丈で変形しない場合には、燃焼装置をそのまま使用してしまう虞がある。
【0011】
ここで、燃焼装置が落下すると、マニホールドに、固定部と流入部とが接近する上下方向の力(衝撃力)がかかる。本発明では、上記の如く、マニホールドに、固定部と流入部とが接近する上下方向の力がかかることでせん断応力が集中して作用する応力集中部となる切欠きを形成しているため、燃焼装置が落下した場合、マニホールドが切欠きで変形、破断しやすくなる。そのため、燃焼装置をそのまま使用しないよう注意を促すことができる。
【0012】
更に、複数のバーナの並設方向を横方向として、固定部は、マニホールドの少なくとも横方向両側の端部に設けられ、切欠きは、マニホールドの横方向中央部よりも横方向両端部に近い位置に設けられることが望ましい。これによれば、燃焼装置の落下で固定部に加わる下向きの力により切欠き部に応力集中を生じやすくなり、落下時の切欠き部の変形、破断の確実性が増す。
【0013】
更に、固定部がマニホールドの横方向両側の端部のみに設けられ、流入部がマニホールドの横方向中央部に設けられていれば、より好ましい。これによれば、燃焼装置の落下で切欠き部に応力集中を一層生じやすくなり、落下時の切欠き部の変形、破断の確実性が一層増す。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図3】実施形態の燃焼装置のマニホールドを分離した状態の斜め下方から見た斜視図。
【
図4】実施形態の燃焼装置が具備するマニホールドの斜め後方から見た斜視図。
【
図5】実施形態の燃焼装置が具備するマニホールドのマニホールド本体とカバーとを分離した状態の斜め前方から見た斜視図。
【
図6】
図4のVI-VI線で切断したノズル部分の拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1、
図2を参照して、本発明の実施形態の燃焼装置は、燃焼筐1と、燃焼筐1内の下部に並設した複数のバーナ2と、これらバーナ2に燃料ガスを供給するマニホールド3と、燃焼筐1内の上部に配置した、バーナ2からの燃焼ガスにより加熱される熱交換器4とを備えている。
【0016】
バーナ2の並設方向を横方向として、各バーナ2は、横方向に直交する水平方向である前後方向に細長い炎口部を上端に有する偏平バーナである。各バーナ2の下部には、混合管部21が設けられている。混合管部21の前端には、前方に開口する流入口22が設けられている。そして、マニホールド3の後述する各ノズル31から噴出する燃料ガスが各バーナ2の流入口22に流入すると共に、一次空気が流入口22に流入して、混合管部21で燃料ガスと一次空気との混合気が生成され、この混合気がバーナ2の炎口部から噴出して燃焼するようにしている。
【0017】
図3も参照して、燃焼筐1の底板11の前部には、上方に立上る段差部111が形成されている。この段差部111には、各バーナ2の混合管部21の流入口22に臨む開口112が開設されている。本実施形態では、6個のバーナ2が並設されるため、開口112が横方向に6個並設されている。尚、底板11には、各バーナ2の下縁を横方向両側から挟む、上方への窪み113が複数形成されている。また、燃焼筐1の前板12には、バーナ2に点火するための点火電極51と、バーナ2の火炎検知のためのフレームロッド52とを有する電極部品5が装着されている。
【0018】
熱交換器4は、横方向に積層した多数の吸熱フィン41と、これら吸熱フィン41を貫通する複数の吸熱パイプ42とを有するフィンアンドチューブ型熱交換器で構成されている。これら吸熱パイプ42は、燃焼筐1の上部外面のU字状に湾曲した複数の接続管43により直列に接続されている。そして、上流端の吸熱パイプ42に給水管44を接続し、下流端の吸熱パイプ42に出湯管45を接続している。
【0019】
燃焼筐1の上端には、排気フード6を介してファン7が接続されている。ファン7には、ファンモータ71が付設されている。熱交換器4を通過した燃焼ガスは、ファン7に吸引され、ファン7の出口72に接続される図示省略した排気筒を介して燃焼ガスが外部に排出される。また、
図3に示す如く、燃焼筐1の底板11には、多数の小孔114が形成されている。そして、ファン7の吸引力により各バーナ2に燃焼用空気が供給される。即ち、各開口112を介して流入口22から吸引される空気が各バーナ2に燃焼用の一次空気として供給されると共に、小孔114から吸引される空気が各バーナ2に燃焼用の二次空気として供給される。
【0020】
燃焼筐1の横方向両側の側板13の下部前端には、底板11の段差部111よりも前方に突出する舌片部131が設けられている。そして、マニホールド3を、横方向両側の端部に設けられた固定部34において、舌片部131にネジ34aで固定している。
【0021】
図4乃至
図6を参照して、マニホールド3は、各バーナ2の混合管部21の流入口22に向けて燃料ガスを噴出するノズル31が複数のバーナ2に対応して複数(本実施形態では6個)突設されたマニホールド本体3aと、マニホールド本体3aとの間に燃料ガスの分配室32を画成するカバー3bとで構成されている。カバー3bは、その周縁部において、マニホールド本体3aにシーム溶接されている。マニホールド3は、更に、燃焼筐1よりも下方に位置する燃料ガスの流入部たる流入口33を有している。上述した固定部34及び流入口33は、マニホールド本体3aに設けられている。流入口33には、これに接続したバルブユニット8を介して燃料ガスが流入する。そして、流入口33から流入した燃料ガスは、分配室32を介して各ノズル31に分配されて、各ノズル31から各バーナ2の混合管部21の流入口22に向けて噴出する。
【0022】
ここで、本実施形態の如く、熱交換器4を通過した燃焼ガスを吸引するファン7を備える排気吸引式燃焼装置では、上述した通りマニホールド本体3aの平面度を確保する必要がない。そこで、本実施形態では、マニホールド本体3aを、ステンレス鋼板等の板材料のプレス加工により形成している。これにより、マニホールド本体3aをダイキャスト品とする従来例のものに比しコストダウンを図ることができる。尚、本実施形態において、カバー3bは、マニホールド本体3aの素材よりも薄い板材料のプレス加工で形成されている。
【0023】
更に、本実施形態では、ノズル31の突出高さH(
図6参照)を1回のプレス加工で絞り成形可能な高さに設定している。例えば、マニホールド本体3aの素材である板材料が板厚1.2mmのステンレス鋼板(SUS304)である場合、ノズル31の突出高さHが4mmであれば、ノズル31を1回のプレス加工で絞り成形できる。そして、ノズル31を1回のプレス加工で絞り成形することにより、コストを可及的に低減することができる。
【0024】
ここで、各ノズル31は、
図6に示す如く、分配室32から燃料ガスが流入する内部空間311aを有する筒状のノズル本体311と、燃料ガスの流入側であるノズル本体311の基端とは反対側に位置する端壁部312とを備えている。端壁部312には、ノズル本体311の内部空間311aに流入した燃料ガスが噴出するノズル孔313が形成されている。ノズル31の突出高さHを、1回のプレス加工で絞り成形可能な比較的小さな値にすると、ノズル本体311の内部空間311aで燃焼ガスの流れが十分に整流されず、燃焼性能が安定しなくなったり、所謂笛吹き音が発生するといった不具合を生じやすくなる。そこで、本実施形態では、ノズル本体311の内部空間311a側に位置するノズル孔313の基部に、ノズル本体311の内部空間311aに向けて次第に拡径するテーパー部313aを設けている。これによれば、ノズル本体311の内部空間311aで燃料ガスの流れが十分に整流されなくても、ノズル孔313のテーパー部313aによって燃料ガスの流れが整えられ、燃焼性能が安定すると共に笛吹き音の発生も抑制できる。
【0025】
ところで、燃焼装置の流通過程において、荷扱いが悪くて、燃焼装置が落下してしまうことがある。落下によって装置内部の損傷を生じても、装置外面に露出する部材が頑丈で変形しない場合には、燃焼装置をそのまま使用してしまう虞がある。
【0026】
ここで、燃焼装置が落下すると、マニホールド3に、固定部34と流入口33とが接近する上下方向の力(衝撃力)がかかる。そこで、本実施形態では、マニホールド3に、固定部34と流入口33とが接近する上下方向の力がかかることでせん断応力が集中して作用する応力集中部となる切欠き35を形成している。これによれば、燃焼装置が落下した場合、マニホールド3が切欠き35で変形、破断しやすくなり、燃焼装置をそのまま使用しないよう注意を促すことができる。
【0027】
尚、固定部34をマニホールド3の少なくとも横方向両側の端部に設ける場合は、切欠き35をマニホールド3の横方向中央部よりも横方向両側の端部に近い位置に設けることが望ましい。これによれば、燃焼装置の落下で固定部34に加わる下向きの力により切欠き35に応力集中を生じやすくなり、落下時の切欠き35の変形、破断の確実性が増す。特に、本実施形態において、固定部34は、マニホールド本体3aの横方向両側の端部のみに設けられ、また、流入口33は、マニホールド本体3aの横方向中央部に設けられている。そして、マニホールド本体3aの横方向中央部よりも横方向両端部に近い位置に、上下一対の切欠き35を形成している。これによれば、燃焼装置の落下で切欠き35に応力集中を一層生じやすくなり、落下時の切欠き35の変形、破断の確実性が一層増す。
【0028】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、上記実施形態では、マニホールド本体3aに設けられた固定部34がカバー3bから横方向外方に張り出しているが、カバー3bの横方向両側の端部に、マニホールド本体3aに設けられた固定部34に重なる固定部を設けることも可能である。この場合、マニホールド本体3aとカバー3bとの両者に、横方向両側の端部近傍に位置させて、切欠き35を形成すればよい。
【符号の説明】
【0029】
1…燃焼筐、2…バーナ、21…混合管部、22…流入口、3…マニホールド、3a…マニホールド本体、3b…カバー、31…ノズル、32…分配室、33…流入口(流入部)、34…固定部、35…切欠き、4…熱交換器、7…ファン。