IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三星電子株式会社の特許一覧

特許7420667エリプソメータ及び半導体装置の検査装置
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】エリプソメータ及び半導体装置の検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 21/21 20060101AFI20240116BHJP
   G01J 4/04 20060101ALI20240116BHJP
   H01L 21/66 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
G01N21/21 Z
G01J4/04 Z
H01L21/66 J
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2020115685
(22)【出願日】2020-07-03
(65)【公開番号】P2022013258
(43)【公開日】2022-01-18
【審査請求日】2023-05-08
(73)【特許権者】
【識別番号】390019839
【氏名又は名称】三星電子株式会社
【氏名又は名称原語表記】Samsung Electronics Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】129,Samsung-ro,Yeongtong-gu,Suwon-si,Gyeonggi-do,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(72)【発明者】
【氏名】日高 康弘
【審査官】三宅 克馬
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-124202(JP,A)
【文献】特開平7-159131(JP,A)
【文献】特開2017-72526(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/21
G01J 4/04
H01L 21/66
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線偏光からなる照明光が試料の測定面で反射した反射光であって、前記測定面において第1方向の第1偏光及び前記第1方向と異なる第2方向の第2偏光を含む前記反射光を透過させるレンズと、
前記反射光を、前記第1偏光及び前記第2偏光とからなる第1分離反射光と、前記第1偏光及び前記第2偏光とからなる第2分離反射光と、に分離する第1分離部材と、
前記第1分離反射光を、互いに直交する偏光方向の2つの直線偏光に分離する第1偏光光学素子と、
前記第1偏光光学素子を透過した各偏光方向と異なる方向における前記2つの直線偏光の成分を干渉させた第1干渉縞を形成する第1干渉部材と、
前記第2分離反射光を、前記第1偏光からなる第3分離反射光と、前記第2偏光からなる第4分離反射光と、に分離する第2分離部材と、
前記第3分離反射光を、互いに直交する偏光方向の2つの直線偏光に分離する第2偏光光学素子と、
前記第2偏光光学素子を透過した各偏光方向と異なる方向における前記2つの直線偏光の成分を干渉させた第2干渉縞を形成する第2干渉部材と、
前記第1干渉縞及び前記第2干渉縞を検出する画像検出器と、
検出した前記第1干渉縞及び前記第2干渉縞からエリプソメトリ係数Ψ及びΔを算出する解析装置と、
を備えたエリプソメータ。
【請求項2】
前記第3分離反射光における前記第1偏光を、前記第1方向及び前記第2方向と異なる第3方向の第3偏光に変換する波長板をさらに備えた、
請求項1に記載のエリプソメータ。
【請求項3】
前記照明光を生成する光源と、
前記光源から生成された前記照明光が入射され、一方向の直線偏光からなる前記照明光を透過させる偏光子と、
前記直線偏光からなる前記照明光で前記測定面を照明する照明レンズと、
をさらに備えた、
請求項1または2に記載のエリプソメータ。
【請求項4】
前記測定面に入射する前記照明光の光軸、及び、前記測定面で反射した前記反射光の光軸は、前記測定面の法線に対して傾斜した、
請求項3に記載のエリプソメータ。
【請求項5】
前記照明レンズは、前記照明光を点状に集光させて前記測定面を照明し、
前記画像検出器は、前記レンズの瞳位置と共役な瞳共役位置に配置された、
請求項3または4に記載のエリプソメータ。
【請求項6】
前記照明光を生成する光源と、
前記光源から生成された前記照明光が入射され、一方向の直線偏光からなる前記照明光を透過させる偏光子と、
前記直線偏光からなる前記照明光で前記測定面を照明するとともに、前記照明光が前記測定面で反射した前記反射光を透過させる対物レンズと、
をさらに備えた、
請求項1または2に記載のエリプソメータ。
【請求項7】
前記測定面に入射する前記照明光の光軸、及び、前記測定面で反射した前記反射光の光軸は、前記測定面に対して直交した、
請求項6に記載のエリプソメータ。
【請求項8】
前記対物レンズは、前記照明光を点状に集光させて前記測定面を照明し、
前記画像検出器は、前記対物レンズの瞳位置と共役な瞳共役位置に配置された、
請求項6または7に記載のエリプソメータ。
【請求項9】
前記第1偏光光学素子及び前記第2偏光光学素子は、ノマルスキープリズムを含む、
請求項1~8のいずれか1項に記載のエリプソメータ。
【請求項10】
前記ノマルスキープリズムは、前記反射光の光軸に直交する面内で、前記光軸の周り1回転の回転角を等分割した分割角を有する複数の分割片を含み、
各前記分割片は、各前記分割角の二等分線に直交する方向に、前記2つの直線偏光を分離する、
請求項9に記載のエリプソメータ。
【請求項11】
前記照明光は、白色光を含み、
前記解析装置は、前記第1干渉縞及び前記第2干渉縞をフーリエ変換し、フーリエ変換された前記第1干渉縞及び前記第2干渉縞から前記エリプソメトリ係数Ψ及びΔを算出する、
請求項1~10のいずれか1項に記載のエリプソメータ。
【請求項12】
前記第1偏光は、前記測定面においてS偏光であり、
前記第2偏光は、前記測定面においてP偏光である、
請求項1~11のいずれか1項に記載のエリプソメータ。
【請求項13】
前記第2分離部材は、偏光ビームスプリッタ膜を含む、
請求項1~12のいずれか1項に記載のエリプソメータ。
【請求項14】
前記第2分離部材は、ミラー及び偏光板を含む、
請求項1~12のいずれか1項に記載のエリプソメータ。
【請求項15】
前記第1分離部材は、非偏光ビームスプリッタ膜を含み、
前記第2分離部材は、偏光ビームスプリッタ膜を含み、
前記非偏光ビームスプリッタ膜と、前記偏光ビームスプリッタ膜とは、平行に配置された、
請求項1~12のいずれか1項に記載のエリプソメータ。
【請求項16】
前記第1分離部材は、非偏光ビームスプリッタ膜を含み、
前記第2分離部材は、偏光ビームスプリッタ膜を含み、
前記第1分離部材及び前記第2分離部材は、三角柱状の透明部材に一体化され、
前記透明部材における3つの側面を、前記反射光が入射する入射面、前記第1分離反射光及び前記第3分離反射光が出射する出射面、及び、前記第2分離反射光が反射する反射面とした場合に、
前記偏光ビームスプリッタ膜は、前記反射面の内側に配置され、
前記非偏光ビームスプリッタ膜は、前記入射面と前記反射面とのなす角を2等分する面に配置された、
請求項1~12のいずれか1項に記載のエリプソメータ。
【請求項17】
前記第1干渉部材は、前記第1偏光光学素子を透過した前記各偏光方向と異なる方向における前記2つの直線偏光の成分を透過させる第1偏光板を含み、
前記第2干渉部材は、前記第2偏光光学素子を透過した前記各偏光方向と異なる方向における前記2つの直線偏光の成分を透過させる第2偏光板を含む、
請求項1~16のいずれか1項に記載のエリプソメータ。
【請求項18】
前記第1干渉部材及び前記第2干渉部材は、第3干渉部材に一体化され、
前記第3干渉部材は、各前記偏光方向と異なる方向における前記2つの直線偏光の成分を反射させるとともに、前記各偏光方向と前記異なる方向と直交した方向における前記2つの直線偏光の成分を透過させる偏光ビームスプリッタを有し、
前記画像検出器は、
前記偏光ビームスプリッタで反射した各前記成分の前記第1干渉縞を検出する第1画像検出器と、
前記偏光ビームスプリッタを透過した各前記成分の前記第2干渉縞を検出する第2画像検出器と、
を含む、
請求項1~16のいずれか1項に記載のエリプソメータ。
【請求項19】
直線偏光からなる照明光が試料の測定面で反射した反射光であって、前記測定面において第1方向の第1偏光及び前記第1方向と異なる第2方向の第2偏光からなる前記反射光を透過させるレンズと、
前記反射光を、前記第1偏光及び前記第2偏光とからなる第1分離反射光と、前記第1偏光及び前記第2偏光とからなる第2分離反射光と、に分離する第1分離部材と、
前記第1分離反射光を反射する第1ミラーと、
前記第2分離反射光を反射する第2ミラーと、
前記第2ミラーで反射した前記第2分離反射光において、前記第1偏光を、前記第1方向及び前記第2方向と異なる第3方向の第3偏光に変換するとともに、前記第2偏光を、前記第1方向、前記第2方向及び前記第3偏光と異なる第4方向の第4偏光に変換する波長板と、
前記第1ミラーで反射した前記第1分離反射光において、前記第1偏光を反射し、前記第2偏光を透過させるとともに、前記波長板を透過した前記第2分離反射光において、前記第3偏光及び前記第4偏光を透過させる第2分離部材と、
前記第2分離部材を透過した前記第1分離反射光において、前記第2偏光を反射させるとともに、前記第2分離部材で反射した前記第2分離反射光において、前記第3偏光及び前記第4偏光を反射させる第3分離部材と、
所定の方向の透過軸を有し、前記第2分離部材で反射した前記第1偏光、前記第2分離部材を透過した前記第3偏光及び前記第4偏光における前記透過軸の成分を干渉させた第1干渉縞を形成する第1干渉部材と、
前記第3分離部材で反射した前記第2偏光、前記第3偏光及び前記第4偏光における前記透過軸の成分を干渉させた第2干渉縞を形成する第2干渉部材と、
前記第1干渉縞及び前記第2干渉縞を検出する画像検出器と、
検出した前記第1干渉縞及び前記第2干渉縞からエリプソメトリ係数Ψ及びΔを算出する解析装置と、
を備えたエリプソメータ。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか1項に記載の前記エリプソメータを備えた半導体装置の検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エリプソメータ及び半導体装置の検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エリプソメトリ(ellipsometry)は、1975年にAspnesらによって、自動計測が可能となって以来、測定時間の大幅な短縮と共に精度も大幅に向上し、多波長により計測する分光エリプソメトリも実用化された。これ以降、薄膜や微細構造の非破壊計測において、膜厚などの寸法や屈折率等の光学定数の計測を高精度に行えるという特性を生かして、半導体製造工程でも広く使われるようになった。現在でも、ウェハ上の回路パターンの線幅が10nm以下となる微細構造の寸法(Dimension)を計測するOCD(Optical Critical Dimension)測定装置として、測長SEM(Scanning Electron-beam Microscope)やAFM(Atomic Force Microscope)を相補する形で使用されている。
【0003】
ここ10年ほどで、ロジック(Logic)半導体では、FinFET(Fin Field-Effect Transistor)、メモリでは、3D-NANDなど、半導体回路構造は3次元化が進み、より複雑な構造となってきている。多くのOCDは、分光エリプソメトリを計測原理としており、計測対象である半導体回路構造のDimensionや構成物質の光学定数を求めるためには、モデルを作成して計測対象のDimensionや光学定数を、Floating parameterとして、計測結果にモデルをフィッティングさせて解を得るという手法をとる。そのため、求める対象の構造が複雑になると、Floating parameterの数が増える。例えば、現在のFinFETのOCDによる計測では、20-30個程のFloating parameterを用いる必要がある。エリプソメトリは、一般的に、エリプソメトリ係数Ψ及びΔの2つの値を計測結果として得るが、エリプソメトリ係数Ψ及びΔは、共に、波長依存性がある。このため、分光エリプソメトリの場合、エリプソメトリ係数Ψ及びΔは、Ψ(λ)、Δ(λ)と表記することができる。
【0004】
Dimensionの解を求めるためには、Floating parameterの数より多い個数のエリプソメトリ係数Ψ及びΔを計測で得ることが、モデルにフィッティングするために最低限必要であるが、Floating parameterの数が多い場合に発生する問題として、実際のDimensionとは異なったFloating parameterの組み合わせでフィッティングが収束する場合がある。これはカップリングと呼ばれる問題で、これを避けるためには、Floating parameterに対して異なる依存性を持つようなエリプソメトリ係数Ψ及びΔを計測してフィッティングを行うことが有効である。そのため、波長に加え、入射角と入射方位も異なる条件でエリプソメトリ計測を行い、前記のFloating parameterに対して、より異なる依存性を持つエリプソメトリ係数Ψ及びΔが、モデルのフィッティングに使われる。
【0005】
エリプソメトリ計測を行う際に、P偏光の反射率が0となるブリュースター角を入射角に用いると、エリプソメトリ計測の感度を最も高くすることができる。ブリュースター角は、半導体回路構造では、おおよそ、65[deg]から75[deg]に相当する。このような斜入射の光学系では、視野の広さによりシャインプルーフ(Scheimpflug)の原理を満たす必要がある。よって、レンズ設計やカメラへの入射角などの光学システム構成に一定の制約を求められる。また、異方性物質の構造評価に用いられるミュラー行列エリプソメトリという計測手法もOCD測定に一部利用されている。ミュラー行列エリプソメトリは、照明光に対する反射光の偏光状態の応答関数を4行4列の行列で表現したものである。ミュラー行列エリプソメトリを求めるためには、数種類の異なる偏光状態の照明光を半導体回路構造に入射させた場合の反射光の偏光状態を計測する。ミュラー行列は、半導体回路構造のDimensionを計測する際にカップリングを避ける方法の一つとして有効であると認識されている。しかしながら、計測時間が通常のエリプソメトリの数倍程度必要となる。
【0006】
このような計測精度上の要望があるにもかかわらず、半導体製造工程でのOCD測定装置に使われるミュラー行列エリプソメトリや分光エリプソメトリを含むエリプソメトリ測定には、非常に短時間での計測が求められる。例えば、全ウェハを計測するためには、1枚当たりに許容される測定時間は多くても数十秒程度である。このような短時間では、ウェハ上のごく限られた領域しか計測ができない。そのため、半導体製造工程でのOCD測定装置は、測定精度とともに短時間により多い測定条件で、エリプソメトリ係数Ψ及びΔやミュラー行列を計測できることが強く期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】米国特許第5596411号明細書
【文献】米国特許第7667841号明細書
【文献】米国特許第6856384号明細書
【文献】米国特許第8908180号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
半導体製造工程でのOCD測定装置で使用されるエリプソメータは、典型的には、1点の計測に1秒~数秒の計測時間が必要である。この理由として、一般的に、エリプソメータに用いられる回転補償子(Rotating compensator)や位相変調素子による変調周期内で、多数の計測点を必要とすることに起因する。さらに、分光計測を行う場合には、回折格子等の分散素子で各波長に分かれた光の光量を、高いS/N比で計測する必要がある。ミュラー行列エリプソメトリの場合には、照明光において数種類の偏光状態を切り替える必要がある。このため、製造工程のウェハを全数検査するためには、ウェハ内で数点から数十点程度しか計測できず、ウェハ内の部分的な膜厚変化や線幅変化による歩留まり悪化を見逃している場合もある。
【0009】
ウェハ内の測定点を増やすことを目的として、分光エリプソメトリの測定を短時間化するためには、回転補償子などの可動部を高速化する必要があるが、安定性や発熱等がネックとなり、OCD測定等のためのエリプソメトリ係数Ψ及びΔ測定のスループット(Throughput)は向上することは困難である。
【0010】
また、別のアプローチとして、シャインプルーフの原理を満たす光学システムを使用することが考えられる。そのような光学システムは、照明光学系や集光光学系の開口数(Numerical aperture、NA)を小さくして、低い位置分解能を許容する。その代わりに、その光学システムは、広い視野内を画像検出器により同時に多数点を計測することで、スループットを向上させる。このような光学システムの場合には、画像検出器のフレームレート、または、受光する光量が制約となり、多数の波長や複数の偏光状態の照明光の条件ごとに画像を計測する必要がある。このため、スループット向上の効果は限られている。
【0011】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、エリプソメトリ係数Ψ及びΔを測定するスループットを向上させることができるエリプソメータ及び半導体装置の検査装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0012】
これまでのエリプソメトリ計測の基本的な手法としては、一旦ストークスパラメータを求める必要がある。このため、「偏光子や補償子の角度を変えた複数条件で光強度を計測する」必要がある。本実施形態では、「2つの偏光状態の光の強度比及び位相差を、干渉縞を測定することで求める」という異なったアプローチに基づいている。
【0013】
この測定のために、本実施形態では、例えば、完全偏光の照明光で試料を照明し、試料からの反射光を2つの直交する直線偏光に分割する。そして、反射光の分割前の同一光線が画像検出器上で再び重なるような光学系配置とする。これを実現する偏光素子としては、ノマルスキープリズム(nomarski prism)が理想的である。しかしながら、試料上の照明領域や光源の空間的コヒーレンスの違いにより、ウォラストンプリズム(wollaston prism)やローションプリズム(rochon prism)を用いることも可能となる。
【0014】
より具体的な構成としては、例えば、白色光源を光源として用い、さらに、照明光学系において偏光子や波長板を透過させる。これにより、照明光を完全偏光の直線偏光または楕円偏光とする。試料上の照明光は点状に集光される。しかしながら、この際の照明領域の大きさにより、受光光学系の瞳位置での空間的コヒーレンスが変わる。ここで受光光学系の瞳位置とは、試料上で互いに平行な光線が受光光学系内で収束する点を含む光軸に垂直な面として定義し、瞳空間とは、瞳位置を含んでレンズまたは曲面ミラーにより挟まれた空間として定義する。
【0015】
照明光は、試料で反射された後、レンズまたは曲面ミラーにより受光光学系の瞳空間で平行光となる。ここに非偏光ビームスプリッタが配置され、反射光をすべての偏光方向を含んだ2つの光に分割する。このうち1つの光は、試料上のS偏光成分のみが出射するような偏光光学素子を配置する。この偏光光学素子は非偏光ビームスプリッタと一体化した偏光ビームスプリッタ膜でもよいし、非偏光ビームスプリッタとは別に偏光板を配置してもよい。さらに、このS偏光成分は、ノマルスキープリズム等の偏光光学素子で分割される2つの偏光成分が同一となるように、λ/2波長板で45[deg]偏光方向が回転される。
【0016】
2つの反射光は、それぞれ、ノマルスキープリズム等の偏光光学素子で2つの直線偏光成分がそれぞれ異なる角度に進行するように分割され、画像検出器上で再び同一点で重なる。画像検出器と、ノマルスキープリズムの間には、分割された2つの直線偏光の偏光方向の中間の透過軸を持つ偏光板が設置される。2つの直線偏光は、この偏光板の透過後に可干渉となり、画像検出器上で干渉縞を形成する。
【0017】
この偏光板は、これまでのエリプソメータの検光子と同じように画像検出器の前に配置されているが、役割としては、2つの偏光方向が直交する直線偏光を可干渉にするためであり、目的は全く異なる。2つの反射光がそれぞれ干渉縞を作るが、一つは、試料上でP偏光とS偏光成分だった光の干渉縞である。他方は、S偏光同士の干渉縞である。
【0018】
画像検出器上には、2つの反射光内にそれぞれ干渉縞が発生する。画像データは、解析装置に転送され、指定した領域内での干渉縞と強度分布から、フーリエ変換によりそれぞれ振幅情報と位相情報を抽出する。位相成分は、そのままエリプソメトリ係数のΔである。P偏光とS偏光の干渉縞のAC成分は、それぞれの電場振幅をE及びEとして、2|E||E|cosΔと表すことができる。S偏光同士の干渉縞のAC成分は、S偏光の電場振幅をEとして、2|EcosΔと表すことができる。Ψ=|E|/|E|であるため、P偏光とS偏光の干渉縞のAC成分をS偏光同士の干渉縞のAC成分で割ったものがΨとなる。ただし、これらΨとΔは光学系により発生する偏光ごとの透過率差や位相差などにより影響を受けるため、材質と構造が既知の試料で校正をする必要がある。
【0019】
一実施形態のエリプソメータは、直線偏光からなる照明光が試料の測定面で反射した反射光であって、前記測定面において第1方向の第1偏光及び前記第1方向と異なる第2方向の第2偏光とからなる前記反射光を透過させるレンズと、前記反射光を、前記第1偏光及び前記第2偏光とからなる第1分離反射光と、前記第1偏光及び前記第2偏光とからなる第2分離反射光と、に分離する第1分離部材と、前記第1分離反射光を、互いに直交する偏光方向の2つの直線偏光に分離する第1偏光光学素子と、前記第1偏光光学素子を透過した各偏光方向と異なる方向における前記2つの直線偏光の成分を干渉させた第1干渉縞を形成する第1干渉部材と、前記第2分離反射光を、前記第1偏光からなる第3分離反射光と、前記第2偏光からなる第4分離反射光と、に分離する第2分離部材と、前記第3分離反射光を、互いに直交する偏光方向の2つの直線偏光に分離する第2偏光光学素子と、前記第2偏光光学素子を透過した各偏光方向と異なる方向における前記2つの直線偏光の成分を干渉させた第2干渉縞を形成する第2干渉部材と、前記第1干渉縞及び前記第2干渉縞を検出する画像検出器と、検出した前記第1干渉縞及び前記第2干渉縞からエリプソメトリ係数Ψ及びΔを算出する解析装置と、を備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明により、エリプソメトリ係数Ψ及びΔを測定するスループットを向上させることができるエリプソメータ及び半導体装置の検査装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施形態1に係るエリプソメータを例示した構成図である。
図2】実施形態1に係るエリプソメータにおいて、偏光光学素子、干渉部材及び画像検出器を例示した図である。
図3】実施形態1に係るエリプソメータにおいて、受光光学系を例示した図である。
図4】実施形態1に係るエリプソメータにおいて、干渉部材を透過する直線偏光を例示した図である。
図5】実施形態1に係るエリプソメータにおいて、画像検出器に入射する反射光に含まれた各直線偏光の波面を例示した図である。
図6】実施形態1に係るエリプソメータにおいて、画像検出器上で干渉した反射光の干渉縞を例示した図である。
図7】実施形態1に係るエリプソメータにおいて、画像検出器が検出した干渉縞の強度を例示したグラフであり、横軸は、干渉縞の位置を示し、縦軸は強度分布を示す。
図8】実施形態1に係るエリプソメータにおいて、画像検出器上で干渉した反射光の干渉縞の強度分布をフーリエ変換し、振幅を表す実数部分と位相を表す虚数部分とに分け、周波数を照明光の波長に関連付けた結果を例示したグラフである。
図9】実施形態2に係るエリプソメータを例示した構成図である。
図10】実施形態2に係るエリプソメータにおいて、偏光光学素子及び干渉部材を例示した図である。
図11】実施形態2に係るエリプソメータにおいて、画像検出器上で干渉した反射光の干渉縞を例示した図である。
図12】実施形態2に係るエリプソメータにおいて、アジマス偏光子を例示した平面図である。
図13】実施形態1及び2に係るエリプソメータにおいて、分離部材を例示した断面図である。
図14】実施形態3に係るエリプソメータにおいて、分離部材を例示した断面図である。
図15】実施形態3に係るエリプソメータを例示した構成図である。
図16】実施形態4に係るエリプソメータを例示した構成図である。
図17】実施形態4に係るエリプソメータにおいて、2つの画像検出器上で干渉した反射光の干渉縞を例示した図である。
図18】実施形態4に係るエリプソメータにおいて、画像検出器が検出した干渉縞の強度を例示したグラフであり、横軸は、干渉縞の位置を示し、縦軸は強度分布を示す。
図19】実施形態4に係るエリプソメータにおいて、偏光ビームスプリッタの反射及び透過する偏光方向を、偏光光学素子が分離する2つの直線方向に対して、45[deg]からずらした場合の各成分を例示した図である。
図20】実施形態5に係るエリプソメータを例示した構成図である。
図21】実施形態5に係るエリプソメータにおいて、干渉部材及び画像検出器を例示した図である。
図22】実施形態5に係るエリプソメータにおいて、受光光学系を例示した図である。
図23】実施形態5に係るエリプソメータにおいて、画像検出器上で干渉した反射光の干渉縞を例示した図である。
図24】実施形態5に係るエリプソメータにおいて、画像検出器が検出した干渉縞の強度を例示したグラフであり、横軸は、干渉縞の位置を示し、縦軸は強度分布を示す。
図25】実施形態5に係るエリプソメータにおいて、画像検出器上で干渉した反射光の干渉縞の強度分布をフーリエ変換し、振幅を表す実数部分と位相を表す虚数部分に分け、周波数を照明光の波長に関連付けた結果を例示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
説明の明確化のため、以下の記載及び図面は、適宜、省略、及び簡略化がなされている。また、各図面において、同一の要素には同一の符号が付されており、必要に応じて重複説明は省略されている。
【0023】
(実施形態1)
実施形態1に係るエリプソメータを説明する。図1は、実施形態1に係るエリプソメータを例示した構成図である。図2は、実施形態1に係るエリプソメータにおいて、偏光光学素子、干渉部材及び画像検出器を例示した図である。図3は、実施形態1に係るエリプソメータにおいて、受光光学系を例示した図である。
【0024】
図1図3に示すように、エリプソメータ1は、照明光学系10、受光光学系20、解析装置60を備えている。照明光学系10は、光源11、ファイバー12、照明レンズ13、偏光子14を含んでいる。受光光学系20は、コリメータレンズ21、非偏光ビームスプリッタ等の分離部材22、偏光ビームスプリッタ等の分離部材23、λ/2波長板24、偏光光学素子31及び32、干渉部材41及び42、画像検出器50を含んでいる。エリプソメータ1は、照明光L10を試料70の測定面71に対して斜入射させ、照明光L10が測定面71で反射した反射光R10を受光して、エリプソメトリ係数Ψ及びΔを測定する。
【0025】
エリプソメータ1の構成の一例をおおまかに言えば、以下のとおりである。すなわち、エリプソメータ1は、広波長域の光源11からの光を完全偏光とした照明光L10で試料70の測定面71を照明する。エリプソメータ1は、測定面71からの反射光R10を非偏光ビームスプリッタ等の分離部材22で2つに分割する。分割した一方の反射光R11は、測定面71上でP偏光及びS偏光であった光を含んでいる。偏光光学素子31及び干渉部材41は、測定面71上でP偏光及びS偏光だった反射光R11を干渉させる。
【0026】
また、分離部材22で分割したもう一つの反射光R12のうち、測定面71上でP偏光であった光を分離部材23で省き、測定面71上でS偏光であった光のみを含むようにする。そして、S偏光同士を干渉させる。このように、エリプソメータ1は、2つの干渉縞を画像検出器50上で形成するように構成されている。エリプソメータ1は、解析装置60で2つの干渉縞の画像を処理する。以下で、詳細を説明する。
【0027】
照明光学系10は、直線偏光からなる照明光L10で試料70の測定面71を照明する。測定面71に入射する照明光L10の光軸Cは、測定面71に対して傾斜している。ここで、「直線偏光からなる照明光L10」は、直線偏光だけでなく、著しく測定精度を毀損しない程度の他の光成分を含んでもよいことを意味する。また、「第1偏光からなる」、「第2偏光からなる」、「P偏光からなる」、「S偏光からなる」も同様に、著しく測定精度を毀損しない程度の他の光成分を含んでもよいことを意味する。
【0028】
光源11は、照明光L10を生成する。光源11は、例えば、広域波長の照明光L10を生成する。光源11が生成する照明光L10は、例えば、白色光を含む。なお、光源11が生成する照明光L10は、広域波長を含めば、白色光に限らない。光源11から生成された照明光L10は、ファイバー12に入射する。
【0029】
ファイバー12は、一端及び他端を有するケーブル状の導光部材である。ファイバー12の一端に入射した照明光L10は、ファイバー12の他端から出射する。ファイバー12の他端から出射した照明光L10は、照明レンズ13に入射する。
【0030】
照明レンズ13は、例えば、凸レンズである。照明レンズ13は、入射した照明光L10の角度分布を変化させる。照明レンズ13は、直線偏光からなる照明光L10で測定面71を照明する。照明レンズ13は、例えば、ファイバー12の他端から出射した照明光L10を、点状に集光させて測定面71を照明する。照明レンズ13と試料70との間には偏光子14が配置されている。よって、照明レンズ13は、照明光L10を偏光子14に照射させ、偏光子14を介して、測定面71に対して点状に集光させる。
【0031】
偏光子14は、光源11から生成された照明光L10が照明レンズ13を介して入射される。偏光子14は、例えば、偏光板である。偏光子14は、一方向の直線偏光からなる照明光L10を透過させる。偏光子14は、完全偏光とした照明光L10を透過させる。例えば、偏光子14は、偏光方向が紙面に対して45°傾いた直線偏光の照明光L10を試料70に対して出射する。本実施形態のエリプソメータ1では、試料70の測定面71に入射する照明光L10の光軸C、及び、測定面71で反射した反射光R10の光軸Cは、試料70の測定面に対して傾斜している。
【0032】
コリメータレンズ21は、直線偏光からなる照明光L10が試料70の測定面71で反射した反射光R10を透過させる。コリメータレンズ21は、反射光R10を平行光にして透過させる。コリメータレンズ21は、透過させた反射光R10を分離部材22に対して入射させる。分離部材22は、例えば、非偏光ビームスプリッタである。分離部材22は、非偏光ビームスプリッタ膜を含む。なお、分離部材22は、非偏光ビームスプリッタに限らず、ハーフミラーでもよい。
【0033】
試料70の測定面71を照明する照明光L10は、一方向の直線偏光からなっている。そのような一方向の直線偏光からなる照明光L10は、点状に集光されながら、試料70の測定面71に入射する。よって、照明光L10が完全偏光かつ直線偏光であって、光軸Cが測定面71に対して傾斜した場合には、測定面71に入射する方位によって、照明光L10は、P偏光の部分もあれば、S偏光の部分もある。照明光L10におけるS偏光の部分は、S偏光として反射する。照明光L10におけるP偏光の部分は、P偏光として反射する。したがって、試料70の測定面71で反射した反射光R10は、測定面71においてP偏光及びS偏光の光を含む。
【0034】
コリメータレンズ21は、直線偏光からなる照明光L10が試料70の測定面71で反射した反射光R10であって、測定面71において第1方向の第1偏光及び第1方向と異なる第2方向の第2偏光とからなる反射光R10を透過させる。例えば、第1偏光は、測定面71においてS偏光であり、第2偏光は、測定面71においてP偏光である。よって、コリメータレンズ21を透過した反射光R10は、図3の位置D1において、測定面71上でP偏光であった光及びS偏光であった光を含む。
【0035】
非偏光ビームスプリッタ等の分離部材22は、反射光R10を、反射光R11及び反射光R12に分離する。反射光R11を第1分離反射光とも呼ぶ。反射光R12を第2分離反射光とも呼ぶ。例えば、分離部材22は、入射した反射光R10の一部を透過し、一部を反射させる。透過した反射光R10を反射光R11とし、反射した反射光を反射光R12とする。そうすると、分離部材22は、測定面71で反射した反射光R10の一部を、反射光R11として透過させ、一部を反射光R12として反射させる。
【0036】
分離部材22を透過した反射光R11は、図3の位置D4において、測定面71上でP偏光であった光及びS偏光であった光を含む。分離部材22で反射した反射光R12も、測定面71上でP偏光であった光及びS偏光であった光を含む。
【0037】
一方、分離部材22で反射した反射光R12は、偏光ビームスプリッタ等の分離部材23に入射する。分離部材23は、例えば、偏光ビームスプリッタ膜を含む偏光ビームスプリッタである。
【0038】
分離部材23は、反射光R12を、S偏光からなる反射光R13と、P偏光からなる反射光R14と、に分離する。例えば、反射光R12が入射された分離部材23は、反射光R13を反射し、反射光R14を透過させる。反射光R12は、測定面71上でS偏光であった光及びP偏光であった光を含む。分離部材23は、例えば、S偏光を反射させ、P偏光を透過させる。分離部材23で反射した反射光R13は、図3の位置D2において、測定面71上でS偏光であった光を含む。分離部材23で反射した反射光R13は、λ/2波長板24に入射する。
【0039】
なお、分離部材23の偏光ビームスプリッタ膜の消光比が不十分な場合には、偏光板23cを配置させる。また、分離部材23は、偏光ビームスプリッタの代わりに、ミラー及び偏光板23cを含んでもよい。例えば、分離部材22で反射した反射光R12は、ミラーで反射し、偏光板23cに入射する。偏光板23cは、ミラーで反射した反射光R12のうち、P偏光からなる光を遮断し、S偏光からなる反射光R13を透過させる。
【0040】
λ/2波長板24は、入射した反射光R13におけるS偏光を、S偏光の方向及びP偏光の方向と異なる方向の偏光に変換する。例えば、λ/2波長板24は、S偏光の直線偏光の方向を、反射光R13の光軸の周りで45[deg]回転させる。反射光R13は、図3の位置D3において、反射光R12と異なる方向の偏光の光を含む。反射光R13は、測定面71上でS偏光であって、反射光R12と異なる方向の偏光の光を含む。
【0041】
次に、偏光光学素子31及び32を説明する。分離部材22を透過した反射光R11は、偏光光学素子31に入射する。一方、λ/2波長板24を透過した反射光R13は、偏光光学素子32に入射する。偏光光学素子31及び32は、例えば、ノマルスキープリズムを含む。なお、偏光光学素子31及び32は、ノマルスキープリズムに限らず、ウォラストンプリズム、または、ローションプリズムを含んでもよい。
【0042】
偏光光学素子31は、入射した反射光R11を、互いに直交する偏光方向の2つの直線偏光に分離して出射させる。偏光光学素子31が分離する互いに直交した偏光方向を、X方向及びY方向とする。この場合、X方向とY方向が作る面と反射光R11の光軸Cは直交する。そうすると、偏光光学素子31は、X方向の直線偏光とY方向の直線偏光とに分離する。例えば、偏光光学素子31は、測定面71においてP偏光であった光及びS偏光であった光を含む反射光R11を、P偏光とS偏光に分離する。
【0043】
偏光光学素子31は、分離させたX方向の直線偏光とY方向の直線偏光とを、画像検出器50上で再び同一点となるように偏向して出射させる。偏光光学素子31を出射した反射光R11は、干渉部材41を介して画像検出器50に入射する。
【0044】
偏光光学素子32も、入射した反射光R13を、互いに直交する偏光方向の2つの直線偏光に分離して出射させる。偏光光学素子32が分離する互いに直交した偏光方向を、X方向及びY方向とする。この場合、X方向とY方向が作る面と反射光R13の光軸は直交する。そうすると、偏光光学素子32は、X方向の直線偏光とY方向の直線偏光とに分離する。例えば、偏光光学素子32は、測定面71においてS偏光であって、λ/2波長板24によって45[deg]傾いた直線偏光からなる反射光R13を、X方向の直線偏光とY方向の直線偏光とに分離する。これにより、偏光光学素子32は、測定面71上でS偏光であった光を、半分ずつの強度に分離する。
【0045】
偏光光学素子32は、分離させたX方向の直線偏光とY方向の直線偏光とを、画像検出器50上で再び同一点となるように偏向して出射させる。偏光光学素子32を出射した反射光R13は、干渉部材42を介して画像検出器50に入射する。
【0046】
図4は、実施形態1に係るエリプソメータにおいて、干渉部材を透過する直線偏光を例示した図である。図4に示すように、偏光板等の干渉部材41は、偏光光学素子31が分離させたX方向の偏光方向及びY方向の偏光方向と、所定の角度だけ傾いた方向の直線偏光の成分を透過させる。所定の角度だけ傾いた方向の軸を透過軸41aと呼ぶ。透過軸41aは、例えば、45[deg]方向である。この場合には、干渉部材41は、偏光光学素子31が分離させたX方向の偏光方向及びY方向の偏光方向と、45[deg]傾いた方向における直線偏光の成分を透過させる。
【0047】
したがって、干渉部材41は、X方向の偏光方向を有する直線偏光のうち、X方向と45[deg]傾いた偏光成分を透過させる。また、干渉部材41は、Y方向の偏光方向を有する直線偏光のうち、Y方向と45[deg]傾いた偏光成分を透過させる。よって、互いに直交した2つの直線偏光は、干渉部材41を透過することによって、透過軸41aに偏光した偏光成分として出射する。よって、互いに直交した2つの直線偏光は、可干渉となる。
【0048】
このように、干渉部材41は、各偏光方向と異なる方向における2つの直線偏光の成分を透過させる偏光板を含む。これにより、干渉部材41は、偏光光学素子31を透過した各偏光方向と異なる方向における2つの直線偏光の成分を干渉させた干渉縞を形成する。干渉部材41から出射した当該偏光成分からなる反射光R11は、画像検出器50に入射する。
【0049】
干渉部材42は、偏光光学素子32が分離させたX方向の偏光方向及びY方向の偏光方向と、所定の角度だけ傾いた透過軸42aの成分を透過させる。例えば、干渉部材42は、偏光光学素子32が分離させたX方向の偏光方向及びY方向の偏光方向と、45[deg]傾いた方向における直線偏光の成分を透過させる。
【0050】
したがって、干渉部材42は、X方向の偏光方向を有する直線偏光のうち、X方向と45[deg]傾いた偏光成分を透過させる。また、干渉部材42は、Y方向の偏光方向を有する直線偏光のうち、Y方向と45[deg]傾いた偏光成分を透過させる。よって、互いに直交した2つの直線偏光は、干渉部材42を透過することによって、透過軸42aに偏光した偏光成分として出射する。よって、互いに直交した2つの直線偏光は、可干渉となる。
【0051】
このように、干渉部材42は、各偏光方向と異なる方向における2つの直線偏光の成分を透過させる偏光板を含む。これにより、干渉部材42は、偏光光学素子32を透過した各偏光方向と異なる方向における2つの直線偏光の成分を干渉させた干渉縞を形成する。干渉部材42から出射した当該偏光成分からなる反射光R13は、画像検出器50に入射する。
【0052】
画像検出器50は、入射した反射光R11及びR13を受光する。画像検出器50は、コリメータレンズ21の瞳位置と共役な瞳共役位置21hに配置されている。反射光R11は、互いに直交した2つの直線偏光における同じ方向の偏光成分からなっている。よって、反射光R11は、画像検出器50上で干渉する。反射光R13も、互いに直交した2つの直線偏光における同じ方向の偏光成分からなっている。よって、反射光R13は、画像検出器50上で干渉する。
【0053】
図5は、実施形態1に係るエリプソメータにおいて、画像検出器50に入射する反射光R11に含まれた各直線偏光の波面を例示した図である。図6は、実施形態1に係るエリプソメータにおいて、画像検出器50上で干渉した反射光R11及びR13の干渉縞を例示した図である。図5に示すように、偏光光学素子31によって分離された2つの直線偏光RX及びRYからなる反射光R11は、干渉部材41を透過し、画像検出器50上で干渉縞51を形成する。図6の上段に示すように、画像検出器50は、干渉部材41を透過した反射光R11の各偏光成分の干渉縞51を検出する。干渉縞51は、測定面71上でP偏光であった光及びS偏光であった光を含む反射光R11により形成される。
【0054】
また、画像検出器50は、入射した反射光R13を受光する。反射光R13は、互いに直交した2つの直線偏光における同じ方向の偏光成分を含んでいる。よって、反射光R13は、画像検出器50上で干渉する。図6の下段に示すように、画像検出器50は、干渉部材42を透過した反射光R13の各偏光成分の干渉縞52を検出する。干渉縞52は、測定面71上でS偏光であった光からなる反射光R13により形成される。
【0055】
このように、エリプソメータ1において、測定面71上で反射した照明光R10は、受光光学系20におけるコリメータレンズ21で平行光になったのち、非偏光ビームスプリッタ等の分離部材22で2つに分割される。位置D4を通る反射光R11は、そのまま、ノマルスキープリズム等の偏光光学素子31に入射し、入射面内でP偏光とS偏光に角度分割される。分割された反射光R11は、透過軸41aが45[deg]の検光子等の干渉部材41を透過することで可干渉となる。
【0056】
一方の位置D2及びD3を通る反射光R13は、偏光ビームスプリッタ等の分離部材23によるフィルタリングで、測定面71においてS偏光であった光のみを含む。反射光R13は、さらに、λ/2波長板24で、45[deg]偏光方向が回転する。これにより、反射光R13は、ノマルスキープリズム等の偏光光学素子32によって、S偏光のうち半分ずつの強度に角度分割される。分割された反射光R13の光は、透過軸42aが45[deg]の検光子等の干渉部材42を透過することで可干渉となる。このようにして、エリプソメータ1は、2つの干渉縞51及び52を画像検出器50上に形成する。
【0057】
解析装置60は、例えば、PC(Personal Computer)、サーバ(Server)等の情報処理装置である。解析装置60は、画像検出器50が検出した干渉縞51及び干渉縞52から、エリプソメトリ係数Ψ及びΔを算出する。具体的には、解析装置60は、干渉縞51及び52からフーリエ変換により、振幅及び位相をそれぞれ求める。位相は、エリプソメトリのΔに相当する。振幅に関しては、P偏光とS偏光の干渉縞51から求めた振幅Ψを、S偏光同士の干渉縞52から求めた振幅Ψで割ることにより、エリプソメトリのΨに相当する|E|/|E|の情報を得る。これにより、エリプソメトリ係数Ψ、Δと、全光量の3つの情報を得ることができる。以下で、詳細を説明する。
【0058】
図7は、実施形態1に係るエリプソメータにおいて、画像検出器50が検出した干渉縞51及び52の強度を例示したグラフであり、横軸は、干渉縞51及び52の位置を示し、縦軸は強度分布を示す。図8は、実施形態1に係るエリプソメータにおいて、画像検出器50上で干渉した反射光R11及びr13の干渉縞51及び52の強度分布をフーリエ変換し、振幅を表す実数部分と位相を表す虚数部分に分け、周波数を照明光L10の波長に関連付けた結果を例示したグラフである。
【0059】
図7及び図8に示すように、干渉縞51における反射光R11の強度分布Ifringe1を以下の(1)式にフィッティングする。また、干渉縞52における反射光R13の強度分布Ifringe2を以下の(2)式にフィッティングする。
【0060】
【数1】
【数2】
【0061】
exp項、すなわち、(1)式の2|E||E|exp(iΔ)、及び、(2)式の2|Eexp(iΔ)は、ACコンポーネントである。そこで、フィッティングする際に、強度分布Ifringe1をフーリエ変換することにより、振幅(Ψ=2|E||E|)と位相(Δ)がそれぞれ求められる。また、強度分布Ifringe2をフーリエ変換することにより、振幅(Ψ=2|E)と位相(Δ)がそれぞれ求められる。
【0062】
位相(Δ)は、エリプソメトリのΔに相当する。一方、振幅Ψは、P偏光及びS偏光からなる反射光R11の干渉縞51から求めた振幅Ψを、反射光R13のS偏光同士の干渉縞52から求めた振幅Ψで割ることで求めることができる。すなわち、振幅Ψ/Ψ=tan-1Ψから、エリプソメトリのΨに相当する|E|/|E|を求めることができる。このように、解析装置60は、干渉縞51及び干渉縞52をフーリエ変換し、フーリエ変換された干渉縞51及び干渉縞52から、エリプソメトリ係数Ψ及びΔを算出する。また、解析装置60は、全光量の情報を得ることができる。
【0063】
次に、本実施形態の効果を説明する。本実施形態のエリプソメータ1は、エリプソメトリ係数Ψ及びΔの測定において、偏光光学素子31及び32を利用する。偏光光学素子31及び32は、試料70の測定面71で反射した反射光R11及びR13を、互いに直交する偏光方向の2つの直線偏光RX及びRYに分離し、分離した2つの直線偏光から干渉縞51及び52を画像検出器50上に形成する。その干渉縞51及び52のコントラスト及び位相の測定結果から、2つの独立パラメータであるエリプソメトリ係数ΨとΔを直接測定する。これにより、これまでのエリプソメトリ係数Ψ及びΔの測定に必要であった回転する偏光子や補償子を用いた時系列の少なくとも4個の偏光成分の光量測定を不要とする。
【0064】
また、これまでのエリプソメトリ係数Ψ及びΔの測定は、複数の異なる偏光状態の光の光量からストークス(stokes)パラメータを求め、求めたストークスパラメータからエリプソメトリ係数Ψ及びΔを求めている。本実施形態では、直接かつ単一画像からエリプソメトリ係数Ψ及びΔを求めることができる。よって、短時間で測定することができるので、OCD測定のスループットを向上させることができる。
【0065】
また、これまでのエリプソメータと比較して、可動部がないため、より安定したエリプソメトリ係数Ψ及びΔの測定をすることができる。
【0066】
反射光R13を光軸の周りに回転させるλ/2波長板24を加えることにより、ノマルスキープリズム等の偏光光学素子31及び32の分離方向を同一にすることができ、光学部材の設計を容易にすることができる。また、偏光光学素子31及び32の分離方向を同一にすることで、偏光光学素子31及び32、干渉部材41及び42を一体化することができる。
【0067】
さらに、OCD測定装置に用いられる多くのエリプソメータにおいては、試料70の測定面71に入射させる照明光L10の入射角は、ブリュースター(brewster)角で固定であった。しかしながら、本実施形態では、大NAの対物レンズ16の瞳位置に共役な瞳共役位置に画像検出器50を配置させることで、任意の入射角、入射方位でのエリプソメトリ係数Ψ及びΔの測定を可能とする。このような構成は、検光子等を回転させるこれまでのエリプソメータの構成では容易には実現することができない。
【0068】
その結果、例えば、ウェハ上の微細構造モデルへのフィッティングにおいて、より多くの条件での計測結果を用いることができ、OCD測定装置で問題となることの多い、異なるDimensionのカップリングの低減にもつながるため、特に3次元化が進展した現在の半導体構造の計測において精度を向上させることが期待される。さらに、照明光L10による試料70の照明領域を、これまでのφ30[μm]程度からφ1[μm]以下まで小さくすることができ、チップ内のDimensionの分布の評価もより高い位置分解能で行うことが可能となる。これらの測定結果をリソグラフィーや成膜、エッチング工程に反映させ、半導体製造のプロセスコントロールを適切に行うことができる。これにより、半導体製造における歩留まり及び生産性を向上させることができる。
【0069】
さらに、ロジックにおいて、半導体チップ内に配置されているエリプソメトリ係数Ψ及びΔの測定用のテストパターンを、これまでの数十[μm]角であったものを、数[μm]角以下まで小さくすることができる。このため、半導体チップ内の回路に使える領域が増え、半導体デバイスのコスト低減にも貢献することができる。
【0070】
(実施形態2)
次に、実施形態2に係るエリプソメータを説明する。本実施形態のエリプソメータ2では、照明光R10を試料70の測定面71に対して垂直に入射する。図9は、実施形態2に係るエリプソメータを例示した構成図である。図9に示すように、エリプソメータ2は、実施形態1と同様に、照明光学系10、受光光学系20、解析装置60を備えている。図9には、位置D1~D4における各反射光の一部の成分として、P偏光及びS偏光を示す。
【0071】
照明光学系10は、光源11、ファイバー12、照明レンズ13a、偏光子14、ビームスプリッタ15、対物レンズ16を含んでいる。光源11及びファイバー12は、実施形態1の光源11及びファイバー12と同様である。受光光学系20は、対物レンズ16、ビームスプリッタ15、リレーレンズ(relay lens)21a及び21b、非偏光ビームスプリッタ等の分離部材22、偏光ビームスプリッタ等の分離部材23、アジマス偏光子25、λ/2波長板24、偏光光学素子31及び32、干渉部材41及び42、画像検出器50を含んでいる。対物レンズ16及びビームスプリッタ15は、照明光学系10の部材でもあり、受光光学系20の部材でもある。
【0072】
エリプソメータ2の構成の一例をおおまかに言えば、以下のとおりである。すなわち、照明光L10は、ビームスプリッタ15により、反射光R10と同一光路を含み、対物レンズ16を通して試料70の測定面71を照明する。この方式は、大きなNAを持つ対物レンズ16を用い、対物レンズ16の瞳位置をリレーレンズ21a及び21bにより、画像検出器50上に瞳共役位置21hとして配置させることで、同時に複数の入射角かつ複数の入射方位を計測できる。この特徴は、多くの条件で計測する必要がある半導体検査装置、特に、OCD計測装置として優位性がある。以下で、詳細を説明する。
【0073】
照明レンズ13aは、例えば、凸レンズである。照明レンズ13aは、入射した照明光L10の角度分布を変化させ、照明光L10を偏光子14に照射させる。例えば、照明レンズ13aは、ファイバー12の他端から出射した照明光L10を平行光に変換する。そして、平行光にした照明光L10を偏光子14に入射させる。
【0074】
偏光子14は、光源11から生成された照明光L10が入射される。偏光子14は、一方向の直線偏光からなる照明光L10を透過させる。例えば、偏光子14は、偏光方向が紙面に対して45°傾いた直線偏光の照明光L10をビームスプリッタ15に出射する。
【0075】
ビームスプリッタ15は、入射した照明光L10の一部を反射し、一部を透過させる。ビームスプリッタ15は、入射した照明光L10の一部を対物レンズ16に向けて反射する。ビームスプリッタ15で反射した照明光L10は、対物レンズ16に入射する。
【0076】
対物レンズ16は、直線偏光からなる照明光L10で試料70の測定面71を照明する。対物レンズ16は、ビームスプリッタ15で反射した照明光L10を点状に集光させて試料70の測定面71を照明する。そして、対物レンズ16は、照明光L10が試料70の測定面71で反射した反射光R10を透過させる。本実施形態のエリプソメータ2では、測定面71に入射する照明光L10の光軸C、及び、測定面71で反射した反射光R10の光軸Cは、測定面71に対して直交している。
【0077】
測定面71を照明する照明光L10は、一方向の直線偏光からなっている。そのような一方向の直線偏光からなる照明光L10は、集光されながら、試料70の測定面71に入射する。よって照明光L10が完全偏光かつ直線偏光であって、光軸Cが測定面71に直交する場合には、測定面71に入射する方位によって、照明光L10は、P偏光の部分もあれば、S偏光の部分もある。照明光L10におけるS偏光の部分は、S偏光として反射する。照明光L10におけるP偏光の部分は、P偏光として反射する。
【0078】
対物レンズ16は、照明光L10が測定面71で反射した反射光R10を透過させて、ビームスプリッタ15に入射させる。ビームスプリッタ15は、入射した反射光R10の一部を透過させる。例えば、ビームスプリッタ15を透過した反射光R10は、リレーレンズ21aに入射する。
【0079】
リレーレンズ21aは、ビームスプリッタ15を透過した反射光R10を集光させ、像を結んだ後にリレーレンズ21bに入射させる。リレーレンズ21bは、入射した反射光R10を平行光に変換して透過させる。コリメータレンズ21を透過した反射光R10は、図9の位置D1において、測定面71上でP偏光及びS偏光であった光を含む。なお、位置D1は、反射光R10の断面の一部分を示す。リレーレンズ21bは、透過させた反射光R10を、非偏光ビームスプリッタ等の分離部材22に入射させる。
【0080】
非偏光ビームスプリッタ等の分離部材22は、実施形態1と同様に、反射光R10を、反射光R11及び反射光R12に分離する。例えば、分離部材22は、試料70の測定面71で反射した反射光R10の一部を、反射光R11として透過させ、一部を反射光R12として反射させる。
【0081】
分離部材22を透過した反射光R11は、図9の位置D4において、測定面71上でP偏光及びS偏光であった光を含む。なお、位置D4は、反射光R11の断面の一部分を示す。分離部材22を透過した反射光R11は、偏光光学素子31に入射する。偏光光学素子31は、例えば、ノマルスキープリズムを含む。
【0082】
本実施形態の垂直入射光学系は、360度の入射方位が可能である。しかしながら、入射方位ごとにP偏光とS偏光の偏光方向が異なるため、効率的な計測のためには、入射方位ごとに角度分割方向を変えることが好ましい。
【0083】
図10は、実施形態2に係るエリプソメータにおいて、偏光光学素子及び干渉部材を例示した図である。図10に示すように、偏光光学素子31及び32のノマルスキープリズムを4分割して、偏光の角度分割方向が円周方向になるように配置する。検光子等の干渉部材41及び42の透過軸41a及び42aの方向は、分割される偏光方向の中間となるように配置する。
【0084】
例えば、偏光光学素子31は、反射光R11の光軸Cに直交する面内で、光軸Cを中心にした360[deg]を等分割されている。偏光光学素子31は、反射光R10の光軸Cに直交する面内で、例えば、4分割されている。このように、偏光光学素子31は、光軸Cの周り1回転の回転角を等分割した分割角αを有する複数の分割片31a~31dを含んでいる。分割角αの頂点は光軸Cである。偏光光学素子31は、例えば、4つの矩形状の分割片31a~31dに分割されている。各分割片31a~31dは、光軸Cを頂点とし、光軸Cの周り1回転の回転角を等分割した分割角αを有する。各分割片31a~31dは、各分割角αの二等分線に直交する方向に、2つの直線偏光を分離する。すなわち、偏光光学素子31は、光軸Cを含まない対角線αの方向に、2つの直線偏光を分離する。よって、2つの直線偏光の分離方向は、光軸の周りの円周方向に接した方向である。なお、偏光光学素子31は、光軸Cを中心にした360[deg]を等分割されれば、4分割に限らず8分割等されてもよい。また、偏光光学素子32も、同様に、4つの矩形状の分割片32a~32d等、光軸Cを中心にした360[deg]を等分割されてもよい。
【0085】
光軸Cを挟んで対向する分割片31a及び31cが分離する方向は平行であり、分割片31b及び31dが分離する方向は平行である。各分割片31a~31dが分離する方向は、隣り合う分割片31a~31dが分離する方向と直交する。すなわち、分割片31a及び31cが分離する方向は、分割片31b及び31dが分離する方向と直交する。
【0086】
干渉部材41の透過軸41a方向は、分割片31a及び31cが分割する方向と、分割片31b及び31dが分離する方向と、の間の方向が好ましい。
【0087】
画像検出器50上の瞳共役位置21hの瞳面において、中心部分は、試料70の測定面71に対して垂直に照明光L10を入射させた場合の反射光R10である。一方、瞳面において、周辺部分は、測定面71に対して傾いて照明光L10を入射させた場合の反射光R10である。エリプソメータ2による測定において、照明光L10の測定面71に対する入射角が変わると、エリプソメトリ係数Ψ及びΔも変わる。
【0088】
そこで、本実施形態では、偏光光学素子31及び32を4分割して、各分割片の分離方向が光軸Cの周りの円周方向としている。反射光R11の干渉縞51に上述の(1)式をフィッティングさせる場合には、ある程度の範囲のプロファイルに(1)式及び(2)式をフィッティングする。その場合に、照明光L10の入射角を一定にするためには、光軸Cの周りの円周方向に沿った干渉縞のプロファイルを用いることが好ましい。
【0089】
図11は、実施形態2に係るエリプソメータにおいて、画像検出器50上で干渉した反射光R11及びR13の干渉縞51及び52を例示した図である。図11において、上段は、反射光R11の干渉縞51を示し、下段は、反射光R13の干渉縞51を示す。図11に示すように、偏光光学素子31と同じ4分割された干渉縞51が円周方向に形成される。干渉縞51は、光軸Cの周りの円周方向に沿った部分A1-A2を有している。そうすると、照明光L10が試料70の測定面71に入射する入射角をほぼ一定とした反射光R11をフィッティングすることができる。よって、エリプソメトリ係数Ψ及びΔを精度よく測定することができる。
【0090】
一方、非偏光ビームスプリッタ等の分離部材22で反射した反射光R12は、偏光ビームスプリッタ等の分離部材23に入射する。分離部材23は、反射光R12を、S偏光からなる反射光R13と、P偏光からなる反射光R14と、に分離する。分離部材23は、例えば、S偏光を反射させ、P偏光を透過させる。分離部材23で反射した反射光R13は、図9の位置D2において、測定面71上でS偏光であった光からなる。なお、位置D2は、反射光R13の断面の一部分を示す。分離部材23で反射した反射光R13は、アジマス偏光子25に入射する。
【0091】
図12は、実施形態2に係るエリプソメータにおいて、アジマス偏光子を例示した平面図である。図12に示すように、アジマス偏光子25は、偏光光学素子32の分割に伴って、分割片25a~25dに分割されている。アジマス偏光子25は、透過する反射光R13の光軸Cに直交する面内で、光軸Cの周り1回転の回転角を等分割した中心角を有する扇型状の複数の分割片を含んでいる。具体的には、アジマス偏光子25は、中心角が90[deg]の4つの扇型状の分割片25a~25dに分割されている。
【0092】
各分割片25a~25dは、各分割片32a~32dと対応している。各分割片25a~25dは、各分割片25a~25dの透過軸の方向の偏光を透過させる。各分割片32a~32dは、各分割片25a~25dを透過した反射光R13が入射する。
【0093】
λ/2波長板24は、入射した反射光R13を、S偏光の方向及びP偏光の方向と異なる方向の偏光に変換する。例えば、λ/2波長板24は、S偏光の直線偏光の方向を、反射光R13の光軸の周りで45[deg]回転させる。反射光R13は、図9の位置D3において、反射光R12と異なる方向の偏光の光を含む。なお、位置D3は、反射光R13の断面の一部分を示す。反射光R13は、測定面71上でS偏光であって、反射光R12と異なる方向の偏光の光を含む。反射光R13は、偏光光学素子32に入射する。
【0094】
偏光光学素子32において、光軸Cを挟んで対向する分割片32a及び32cが分離する方向は平行であり、分割片32b及び32dが分離する方向は平行である。各分割片32a~32dが分離する方向は、隣り合う分割片32a~32dが分離する方向と直交する。すなわち、分割片32a及び32cが分離する方向は、分割片32b及び32dが分離する方向と直交する。
【0095】
干渉部材42の透過軸42a方向は、分割片32a及び32cが分割する方向と、分割片32b及び32dが分離する方向と、の間の方向が好ましい。
【0096】
本実施形態において、画像検出器50上に2つの干渉縞51及び52が形成される。そして、干渉縞51及び52は、放射状の境界で4分割されている。解析装置60は、干渉縞51及び52の信号処理をする際に、まず、図11におけるA1-A2及びB1-B2のように、干渉縞51及び52と垂直な線上の強度分布を取得する。そして、そこから、図7と同様の信号処理を行う。この場合、画像検出器50上は、受光光学系20の瞳共役位置21hに相当し、画像検出器50上の位置が、測定面71に対する入射角と入射方位に相当する。よって上記のA1-A2のような干渉縞51の強度分布を取得する場所を変えることにより、任意の入射角及び入射方位でのエリプソメトリ係数Ψ、Δの取得が可能となる。
【0097】
次に、本実施形態の効果を説明する。本実施形態のエリプソメータ2は、測定面71に入射する照明光L10の光軸、及び、測定面71で反射した反射光r10の光軸は、測定面71に対して直交している。よって、測定面71において、複数の入射角及び複数の入射方位におけるエリプソメトリ係数Ψ及びΔを同時に取得することができる。よって、エリプソメトリ係数Ψ及びΔを測定するスループットを向上させることができる。また、測定するスループットを向上させることができるので、OCD計測装置として、半導体装置の検査装置に適用することができる。
【0098】
また、偏光光学素子31及び32を、光軸の周りで分割された分割片としている。よって、光軸Cの周りの円周方向に沿った干渉縞のプロファイルを取得することができるので、エリプソメトリ係数Ψ及びΔの精度を向上させることができる。これ以外の構成及び効果は、実施形態1の記載に含まれている。
【0099】
(実施形態3)
次に、実施形態3に係るエリプソメータを説明する。本実施形態は、分離部材22及び分離部材23を変形させた例である。図13は、実施形態1及び2に係るエリプソメータにおいて、分離部材を例示した断面図である。
【0100】
図13に示すように、前述のエリプソメータ1及び2は、分離部材22及び分離部材23を組み合わせたビームスプリッタ26を有している。ビームスプリッタ26において、分離部材22は、非偏光ビームスプリッタ膜22aを含む。分離部材23は、偏光ビームスプリッタ膜23aを含む。ビームスプリッタ26において、非偏光ビームスプリッタ膜22aと、偏光ビームスプリッタ膜23aとは、平行に配置されている。例えば、ビームスプリッタ26は、ガラス等の透明部材を含み、透明部材上に非偏光ビームスプリッタ膜22aと偏光ビームスプリッタ膜23aとを配置させている。
【0101】
反射光R10は、非偏光ビームスプリッタ膜22aに対して、45[deg]の入射角で入射する。反射光R11は、非偏光ビームスプリッタ膜22aを透過したものである。反射光R12は、非偏光ビームスプリッタ膜22aで反射したものである。反射光R12は、偏光ビームスプリッタ膜23aに対して、45[deg]の入射角で入射する。反射光R13は、偏光ビームスプリッタ膜23aで反射したものである。
【0102】
ビームスプリッタ26は、反射光R10の入射方向と、反射光R11及び反射光R13の出射方向とが平行である。よって、各種の光学部材の配置に関して、設計が容易であり、設計の自由度を向上させることができる。しかしながら、反射光R11と反射光R13との間で、ガラス中における光路長が異なる。すなわち、反射光R12の距離W1だけ、反射光R13の光路は、反射光R11の光路よりも長くなる。この場合には、軸上色収差が問題となる可能性がある。
【0103】
そこで、空気換算長が反射光R11と反射光R13とで同等になるように、厚さW2=距離W1/(n-1)を満たすように、光路長補正板23bの厚さW2を設定する。ここで、nは、ガラスの屈折率である。
【0104】
図14は、実施形態3に係るエリプソメータにおいて、分離部材を例示した断面図である。図14に示すように、ビームスプリッタ27は、分離部材22及び分離部材23を含んでいる。分離部材22は、非偏光ビームスプリッタ膜22aを含み、分離部材23は、偏光ビームスプリッタ膜23aを含んでいる。ビームスプリッタ27において、分離部材22及び分離部材23は、三角柱状のガラス等の透明部材に一体化されている。透明部材における3つの側面を、反射光R10が入射する入射面F1、反射光R11及び反射光R13が出射する出射面F2、及び、反射光R12が反射する反射面F3とする。その場合には、偏光ビームスプリッタ膜23aは、反射面F3の内側に配置されている。非偏光ビームスプリッタ膜22aは、入射面F1と反射面F3とのなす角を2等分する面に配置されている。非偏光ビームスプリッタ膜22aと偏光ビームスプリッタ膜23aとのなす角度は、30[deg]である。
【0105】
反射光R10は、入射面F1に垂直に入射する。そして、反射光R10は、非偏光ビームスプリッタ膜22aに対して、30[deg]の入射角で入射する。ビームスプリッタ27において、反射光R11は、非偏光ビームスプリッタ膜22aで反射したものである非偏光ビームスプリッタ膜22aで反射した反射光R11は、入射面F1の内側で全反射角を超えるので、全反射となる。入射面F1の内側で反射した反射光R11は、出射面F2に対して直交する方向に出射する。
【0106】
ビームスプリッタ27において、反射光R12は、非偏光ビームスプリッタ膜22aを透過したものである。反射光R12は、偏光ビームスプリッタ膜23aに対して、60[deg]の入射角で入射する。偏光ビームスプリッタ膜23aで反射した反射光R13は、出射面F2に対して直交する方向に出射する。
【0107】
ビームスプリッタ27では、反射光R11と反射光R13との間で、ガラス中における光路長は同じである。しかしながら、入射面F1の内側において、全反射による位相差と、入射光と出射光との偏角に考慮する必要が生じる可能性がある。
【0108】
図15は、実施形態3に係るエリプソメータを例示した構成図である。図15に示すように、エリプソメータ3は、エリプソメータ1の分離部材22及び分離部材23を、ビームスプリッタ27に代えたものである。このような構成とすることにより、反射光R11と反射光R13と間で、分離部材22及び分離部材23のガラス中における光路長を同一にすることができ、軸上色収差を抑制することができる。また、画像検出器50は、反射光R11及び反射光R13を鉛直方向に受講することができ。光学部材の設計において、自由度を向上させることができる。これ以外の構成及び効果は、実施形態1及び2の記載に含まれている。
【0109】
(実施形態4)
次に、実施形態4に係るエリプソメータを説明する。本実施形態のエリプソメータは、受光光学系20において、干渉部材41及び干渉部材42が偏光ビームスプリッタ43に一体化されている。以下、図面を参照して説明する。
【0110】
図16は、実施形態4に係るエリプソメータを例示した構成図である。図16に示すように、エリプソメータ4の受光光学系20は、偏光ビームスプリッタ43と、2つの画像検出器50a及び50bを有している。
【0111】
前述の実施形態1の干渉部材41及び42は、例えば、偏光光学素子31及び32により、0[deg]及び90[deg]の偏光方向に分離された2つの直線偏光の45[deg]成分を透過させて干渉させるものである。この場合には、干渉部材41は、135[deg]成分を吸収または反射している。
【0112】
一方、本実施形態の偏光ビームスプリッタ43は、45[deg]成分を反射させ、135[deg]成分を透過させるように配置されている。このように、偏光ビームスプリッタ43は、各偏光方向と異なる方向における2つの直線偏光の成分を反射させるとともに、異なる方向と直交した方向における2つの直線偏光の成分を透過させる。具体的には、偏光光学素子31が分離した各直線偏光のうち、45[deg]傾いた方向の直線偏光を反射させ、135[deg]傾いた方向の直線偏光を透過させる。干渉部材42及び偏光光学素子32についても同様である。
【0113】
エリプソメータ4は、画像検出器50a及び50bを含む。画像検出器50aは、偏光ビームスプリッタ43で反射した(45[deg]方向の)各偏光成分の干渉縞を検出する。画像検出器50bは、偏光ビームスプリッタ45を透過した(135[deg]方向の)各偏光成分の干渉縞51及び52を検出する。
【0114】
図17は、実施形態4に係るエリプソメータにおいて、2つの画像検出器上で干渉した反射光の干渉縞を例示した図である。図18は、実施形態4に係るエリプソメータにおいて、画像検出器が検出した干渉縞の強度を例示したグラフであり、横軸は、干渉縞の位置を示し、縦軸は強度分布を示す。図17及び図18に示すように、各画像検出器50a及び50b上には、位相が180[deg]反転した干渉縞51及び52が形成される。
【0115】
図19は、実施形態4に係るエリプソメータにおいて、偏光ビームスプリッタ43の反射及び透過する偏光方向を、偏光光学素子が分離する2つの直線方向に対して、45[deg]からずらした場合の各成分を例示した図である。
【0116】
図19に示すように、X方向の成分とY方向の成分との強度が異なる場合、例えば、X方向の成分の強度が2で、Y方向の成分の強度が1の場合を検討する。偏光ビームスプリッタ43の反射及び透過する偏光方向を、偏光光学素子31及び32が分離する2つの直線方向に対して45[deg]から40[deg]にずらした場合には、X方向の成分は大きくなり、Y方向の成分は小さくなる。よって、X方向の成分とY方向の成分との差は、ますます大きくなり、コントラストは低下する。
【0117】
一方、135[deg]から130[deg]にずらした場合には、X方向の成分は小さくなり、Y方向の成分は大きくなる。よって、X方向の成分とY方向の成分との差は小さくなり、コントラストは増加する。実施形態1では、偏光光学素子31及び32によって分離された2つの直線偏光のうち、一方の強度が低下するとコントラストが低下する。この場合に、どちらの直線偏光が低下したかまでは測定することができない。しかしながら、本実施形態では、どちらの直線偏光が低下したかも判別することができる。
【0118】
本実施形態のエリプソメータ4によれば、干渉部材41及び42として、検光子の代わりに偏光ビームスプリッタ43を用いることで、追加の干渉縞51及び52を画像検出器50b上に作成し、追加の情報を得ることができる。利点としては、検光子の場合に捨てていた成分を検出に利用することができる。よって、S/Nを向上することができる。しかも、位相を180[deg]反転した干渉縞51及び52を形成することができる。これにより、画像検出器50のみで検出された干渉縞51及び52では、谷の位置に相当する強度が小さい点を、画像検出器50a及び50bを用いて検出することにより、山の位置に相当する強度の大きい点とすることができる。よって、相補的に利用することが可能となる。
【0119】
なお、図16では、偏光ビームスプリッタ43で反射及び透過した反射光R11及びR13が紙面に平行な面内の2つの方向に進んでいるが、実際は、45[deg]傾いた方向に進んでいる。これ以外の構成及び効果は、実施形態1~3の記載に含まれている。
【0120】
(実施形態5)
次に、実施形態5のエリプソメータを説明する。本実施形態のエリプソメータは、偏光光学素子31及び32として、ノマルスキープリズムを用いないエリプソメータである。図20は、実施形態5に係るエリプソメータを例示した構成図である。図21は、実施形態5に係るエリプソメータにおいて、干渉部材及び画像検出器を例示した図である。図22は、実施形態5に係るエリプソメータにおいて、受光光学系を例示した図である。
【0121】
図20図22に示すように、エリプソメータ5において、受光光学系20は、コリメータレンズ21、非偏光ビームスプリッタ等の分離部材22、ミラー33、ミラー34、λ/2波長板24、分離部材35、分離部材36、干渉部材41及び42、画像検出器50を有している。
【0122】
コリメータレンズ21を透過した反射光R10は、図22の位置D1において、測定面71上でP偏光であった光及びS偏光であった光を含む。反射光R10は、分離部材22によって、反射光R11と反射光R12に分離される。分離部材22で分離された反射光R11は、ミラー33に入射する。ミラー33は、反射光R11を反射する。ミラー33で反射した反射光R11は、図22の位置D4において、測定面71上でP偏光であった光及びS偏光であった光を含む。ミラー33で反射した反射光R11は、偏光ビームスプリッタ等の分離部材35に入射する。分離部材35において、反射光R11のS偏光は反射し、反射光R11のP偏光は透過する。分離部材35を透過した反射光R11のP偏光は、偏光ビームスプリッタ等の分離部材36で反射する。
【0123】
一方、分離部材22で分離された反射光R12は、ミラー34に入射する。ミラー34は、反射光R12を反射する。ミラー34で反射した反射光R12は、図22の位置D2において、測定面71上でP偏光であった光及びS偏光であった光を含む。ミラー34で反射した反射光R12は、λ/2波長板24に入射する。λ/2波長板24において、反射光R12のP偏光及びS偏光は、光軸の周りに、45[deg]回転する。このように、λ/2波長板24は、ミラー34で反射した反射光R12において、P偏光を、P偏光の方向及びS偏光の方向と異なる方向の直線偏光に変換するとともに、S偏光を、P偏光の方向及びS偏光の方向と異なる方向の直線偏光に変換する。λ/2波長板24を透過した反射光R12を反射光R13と呼ぶ。反射光R13は、図22の位置D3において、45[deg]傾いたP偏光の方向及びS偏光の方向の光からなっている。
【0124】
反射光R13は、分離部材35に入射する。分離部材35において、反射光R13の45[deg]傾いたP偏光及びS偏光の一部は透過し、一部は反射する。分離部材35で反射した反射光R13は、分離部材36に入射する。分離部材36において、反射光R13の45[deg]傾いたP偏光及びS偏光の一部は反射する。
【0125】
このように、分離部材35は、ミラー33で反射した反射光R11において、S偏光を反射し、P偏光を透過させるとともに、λ/2波長板24を透過した反射光R12において、光軸Cの周りに45[deg]傾いたP偏光及びS偏光を透過させる。また、分離部材36は、分離部材35を透過した反射光R11において、P偏光を反射させるとともに、分離部材35で反射した反射光R13において、光軸Cの周りに45[deg]傾いたP偏光及びS偏光を反射させる。
【0126】
本実施形態において、分離部材35及び36で合流した反射光R11及び反射光R13は、干渉部材41及び42を介して、画像検出器50上に干渉縞51及び52を形成する。干渉部材41は、分離部材35で反射したS偏光、分離部材35を透過した45[deg]傾いたP偏光及びS偏光における透過軸41aの成分を干渉させた干渉縞51を形成する干渉部材42は、分離部材36で反射したP偏光、分離部材35で反射した45[deg]傾いたP偏光及びS偏光における透過軸42aの成分を干渉させた干渉縞52を形成する。
【0127】
合流した反射光R11及び反射光R13は、画像検出器50上において、同一位置に角度差をもって到達するような配置とされている。すなわち、分離部材36及び36から出射した反射光R11及び反射光R13が画像検出器50上において、同一位置に角度差をもって到達するように、ミラー33及び34を調整する。
【0128】
このような構成により、反射光R11のP偏光と、反射光R13のP偏光及びS偏光の半分ずつを切り出したものとを干渉させ、干渉縞51を形成することができる。また、反射光R11のS偏光と、反射光R13のP偏光及びS偏光を半分ずつ切り出したものとを干渉させ、干渉縞52を形成することができる。
【0129】
図23は、実施形態5に係るエリプソメータにおいて、画像検出器上で干渉した反射光の干渉縞を例示した図である。図24は、実施形態5に係るエリプソメータにおいて、画像検出器が検出した干渉縞の強度を例示したグラフであり、横軸は、干渉縞の位置を示し、縦軸は強度分布を示す。図25は、実施形態5に係るエリプソメータにおいて、画像検出器上で干渉した反射光の干渉縞の強度分布をフーリエ変換し、振幅を表す実数部分と位相を表す虚数部分に分け、周波数を照明光の波長に関連付けた結果を例示したグラフである。
【0130】
図23図25に示すように、干渉縞51における反射光R11の強度分布Ifringe3を以下の(3)式にフィッティングする。また、干渉縞52における反射光R13の強度分布Ifringe4を以下の(4)式にフィッティングする。
【0131】
【数3】
【数4】
【0132】
上記(3)及び(4)において、EP+Sは、以下の(5)式である。
【数5】
【0133】
exp項、すなわち、(3)式の2|E||EP+S|exp(iΔS-PS)、(4)式の2|E||EP+S|exp(iΔP-PS)は、ACコンポーネントである。そこで、フィッティングする際に、強度分布Ifringe3をフーリエ変換することにより、振幅(Ψ=2|E||EP+S|)と位相(ΔS-PS)がそれぞれ求められる。また、強度分布Ifringe4をフーリエ変換することにより、振幅(Ψ=2|E||EP+S|)と位相(ΔP-PS)がそれぞれ求められる。
【0134】
位相(ΔS-PS)と位相(ΔP-PS)との和を算出することにより、エリプソメトリのΔに相当する位相(Δ)を求めることができる。一方、振幅Ψは、振幅Ψを、振幅Ψで割ることで求めることができる。すなわち、振幅Ψ/Ψ=tan-1Ψから、エリプソメトリのΨに相当する|E|/|E|を求めることができる。このように、解析装置60は、干渉縞51及び干渉縞52をフーリエ変換し、フーリエ変換された干渉縞51及び干渉縞52から、エリプソメトリ係数Ψ及びΔを算出する。また、解析装置60は、全光量の情報を得ることができる。
【0135】
次に、本実施形態の効果を説明する。本実施形態では、偏光光学素子31及び32として、ノマルスキープリズムを不要とする。よって、光学部材の設計の自由度を向上させることができる。また、解析装置60は、干渉縞51及び52の両方を活用する。これにより、エリプソメトリ係数ψ及びΔと、全光量に加え、偏光度の4つの情報を得ることができる。これ以外の構成及び効果は、実施形態1~4の記載に含まれている。
【0136】
本発明は上記実施の形態に限られたものではなく、趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更することが可能である。例えば、実施形態1~5の各構成は相互に組み合わせることができる。また、実施形態1~5のエリプソメータを備えた半導体装置の検査装置も、本実施形態の技術的思想に含まれる。
【符号の説明】
【0137】
1、2、3、4、5 エリプソメータ
10 照明光学系
11 光源
12 ファイバー
13、13a 照明レンズ
14 偏光子
15 ビームスプリッタ
16 対物レンズ
20 受光光学系
21 コリメータレンズ
21a、21b リレーレンズ
21h 瞳共役位置
22 分離部材
22a 非偏光ビームスプリッタ膜
23 分離部材
23a 偏光ビームスプリッタ膜
23b 光路長補正板
23c 偏光板
24 λ/2波長板
25 アジマス偏光子
25a、25b、25c、25d 分割片
26、27 ビームスプリッタ
31、32 偏光光学素子
31a、31b、31c、31d、32a、32b、32c、32d 分割片
33、34 ミラー
35、36 分離部材
41、42 干渉部材
41a、42a 透過軸
43 偏光ビームスプリッタ
50、50a、50b 画像検出器
51、52 干渉縞
60 解析装置
70 試料
71 測定面
C 光軸
D1、D2、D3、D4 位置
F1 入射面
F2 出射面
F3 反射面
L10 照明光
R10、R11、R12、R13 反射光
W1、W2 距離
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21
図22
図23
図24
図25