(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】線路形状データ推定方法及び線路形状データ推定システム
(51)【国際特許分類】
B61F 5/22 20060101AFI20240116BHJP
B61F 5/24 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
B61F5/22 E
B61F5/24 A
(21)【出願番号】P 2020116245
(22)【出願日】2020-07-06
【審査請求日】2023-06-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000173784
【氏名又は名称】公益財団法人鉄道総合技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000196587
【氏名又は名称】西日本旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】弁理士法人インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】原田 康平
(72)【発明者】
【氏名】真木 康隆
(72)【発明者】
【氏名】風戸 昭人
(72)【発明者】
【氏名】石栗 航太郎
(72)【発明者】
【氏名】三宮 大輝
【審査官】志水 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-195818(JP,A)
【文献】特開2013-205248(JP,A)
【文献】特開2018-039286(JP,A)
【文献】特開昭61-108053(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61F 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両が走行する線路の形状に係るデータを推定する線路形状データ推定方法であって、
車体ヨー角速度を取得する車体ヨー角速度取得工程と、
走行速度を取得する走行速度取得工程と、
台車枠左右加速度を取得する台車枠左右加速度取得工程と、
台車ごとの振子傾斜角速度を取得する振子傾斜角速度取得工程と、
前後の台車の前記振子傾斜角速度の差を算出する振子傾斜角速度差算出工程と、
前記振子傾斜角速度の差に所定の係数を乗じて補正値を算出する補正値算出工程と、
前記車体ヨー角速度取得工程で取得された前記車体ヨー角速度から前記補正値を減算して補正車体ヨー角速度を算出する補正車体ヨー角速度算出工程とを有し、
前記線路形状データは、線路曲率相当値とカント相当値を含み、
前記補正車体ヨー角速度及び前記走行速度から前記線路曲率相当値を算出する線路曲率相当値算出工程と、
前記補正車体ヨー角速度、前記走行速度及び前記台車枠左右加速度から前記カント相当値を算出するカント相当値算出工程とを有することを特徴とする線路形状データ推定方法。
【請求項2】
請求項1に記載の線路形状データ推定方法において、
前記補正値算出工程における前記所定の係数は、前記台車の振子状態に応じて選択されることを特徴とする線路形状データ推定方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の線路形状データ推定方法を用いた線路形状データ推定システムであって、
前記車体ヨー角速度を取得する車体ヨー角速度取得手段と、
前記走行速度を取得する走行速度取得手段と、
前記台車枠左右加速度を取得する台車枠左右加速度取得手段と、
台車ごとの振子傾斜角速度を取得する前振子傾斜角速度取得手段及び後振子傾斜角速度取得手段と、
前記車体ヨー角速度、前記走行速度、前記台車枠左右加速度及び振子傾斜角速度を記録する情報記憶部と、
前記情報記憶部に記録されたデータを処理する情報処理部を有することを特徴とする線路形状データ推定システム。
【請求項4】
請求項3に記載の線路形状データ推定システムにおいて、
前記情報処理部は、前記振子傾斜角速度差算出工程、前記補正値算出工程、前記補正車体ヨー角速度算出工程、前記線路曲率相当値算出工程及び、前記カント相当値算出工程を実行することを特徴とする線路形状データ推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両が走行する線路の形状データを推定する線路形状データ推定方法及び線路形状データ推定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
車体傾斜車両は、乗客の乗り心地の悪化や乗り物酔いを考慮して車体が線路の曲線部を走行する際に、車体を内側に傾斜させる制御を行っている(例えば、特許文献1参照)。このような車体の傾斜方法は、自然振子方式と制御付き振子方式が知られている。自然振子方式は遠心力によって車体を自然に傾斜させるものであり、制御付き振子方式は走行速度や線路形状に応じて車体の傾斜角度を制御するものである。
【0003】
車体傾斜車両では、予め線路形状データを車両に記憶させ、当該線路形状データ、走行位置及び走行速度などの情報から車体傾斜角を制御する方法が知られている。また、線路形状データは、実際の設計値から作成する場合のほか、例えば、特許文献1に記載された発明を実現する方法として、車体傾斜車両に設置したセンサ類の測定データによって算出することが知られている。
【0004】
線路形状データは、線路曲率相当値とカント相当値により構成され、具体的には、線路曲率相当値は車体ヨー角速度や走行速度により算出し、カント相当値は車体ヨー角速度や走行速度、台車枠左右加速度により算出している。ここで、車体ヨー角速度は車体に設置したジャイロセンサ、台車枠左右加速度は台車枠に設置した加速度センサ及び走行速度は車軸に設置した速度発電機の各出力信号を使用して算出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、線路形状データ生成に必要である車体ヨー角速度の波形には、車体の動揺により実際の線路形状とは異なる成分が含まれる場合がある。このとき算出した線路形状データを使用して車体傾斜制御を行うと、実際の線路形状に適合しない車体傾斜角へ制御する恐れがある。
【0007】
特に影響の大きい要因は、振子式車体傾斜車両における車体ヨーイング動揺である。振子式車体傾斜車両では、
図3に示すように、振子はりなどの部品で構成された振子装置を持ち、走行中は車体ローリング方向の自由度を持つが、台車付近で車体の左右方向への剛性が低く、前後台車で逆相方向への振子角変位を伴う車体ヨーイング動揺を起こしやすい。
【0008】
車体ヨーイング動揺が起きているとき、車上で測定された車体ヨー角速度の波形には実際の線路形状に加えて動揺に起因する成分が重畳される。この動揺による成分は遮断周波数の低いローパスフィルタ処理を施すことによりある程度の除去が可能であるが、当該フィルタ処理は実際の線路形状に含まれる周波数成分に対しても影響を及ぼす。このため、取得した線路形状データの波形が実際の線路形状と比較して鈍るという欠点があった。
【0009】
そこで、本発明は上記問題に鑑みてなされたものであり、線路形状の設計値を用いる事なく、線路形状データの作成対象とする区間の線路上を実際に走行することで、当該区間の線路形状データを算出することができる線路形状データ推定方法及び線路形状データ推定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る線路形状データ推定方法は、鉄道車両が走行する線路の形状に係るデータを推定する線路形状データ推定方法であって、車体ヨー角速度を取得する車体ヨー角速度取得工程と、走行速度を取得する走行速度取得工程と、台車枠左右加速度を取得する台車枠左右加速度取得工程と、台車ごとの振子傾斜角速度を取得する振子傾斜角速度取得工程と、前後の台車の前記振子傾斜角速度の差を算出する振子傾斜角速度差算出工程と、前記振子傾斜角速度の差に所定の係数を乗じて補正値を算出する補正値算出工程と、前記車体ヨー角速度取得工程で取得された前記車体ヨー角速度から前記補正値を減算して補正車体ヨー角速度を算出する補正車体ヨー角速度算出工程とを有し、前記線路形状データは、線路曲率相当値とカント相当値を含み、前記補正車体ヨー角速度及び前記走行速度から前記線路曲率相当値を算出する線路曲率相当値算出工程と、前記補正車体ヨー角速度、前記走行速度及び前記台車枠左右加速度から前記カント相当値を算出するカント相当値算出工程とを有することを特徴とする。
【0011】
また、本発明に係る線路形状データ推定方法において、前記補正値算出工程における前記所定の係数は、前記台車の振子状態に応じて選択されると好適である。
【0012】
また、本発明に係る線路形状データ推定システムは、上述した線路形状データ推定方法を用いた線路形状データ推定システムであって、前記車体ヨー角速度を取得する車体ヨー角速度取得手段と、前記走行速度を取得する走行速度取得手段と、前記台車枠左右加速度を取得する台車枠左右加速度取得手段と、台車ごとの振子傾斜角速度を取得する前振子傾斜角速度取得手段及び後振子傾斜角速度取得手段と、前記車体ヨー角速度、前記走行速度、前記台車枠左右加速度及び振子傾斜角速度を記録する情報記憶部と、前記情報記憶部に記録されたデータを処理する情報処理部を有することを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係る線形データ線路形状データ推定システムにおいて、前記情報処理部は、前記振子傾斜角速度差算出工程、前記補正値算出工程、前記補正車体ヨー角速度算出工程、前記線路曲率相当値算出工程及び、前記カント相当値算出工程を実行すると好適である。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る線路形状データ推定方法及び線路形状データ推定システムは、車体ヨー角速度取得工程で取得された車体ヨー角速度から補正値を減算して補正車体ヨー角速度を算出する補正車体ヨー角速度算出工程を有するので、算出した線路形状データに対し、動揺による影響を効率よく低減できる。また、補正に必要な振子傾斜角速度の測定データは、既存の振子装置で取得可能な振子傾斜角から演算可能なものであり、センサ類の追加は不要であることから、車両の改良などを行うことなく、容易に線路形状データを推定することができる。また、本発明に係る線路形状データ推定方法及び線路形状データ推定システムによれば、ローパスフィルタ処理が不要となるか、または、遮断周波数の高いローパスフィルタのみの適用で十分となり、実際の線路形状に対してより忠実な車体傾斜制御が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施形態に係る線路形状データ推定方法を示すフロー図。
【
図2】本発明の実施形態に係る線路形状データ推定方法で用いる曲率波形データ。
【
図3】本発明の実施形態に係る線路形状データ推定システムで用いる振子式の鉄道車両の構成を示す図。
【
図4】本発明の実施形態に係る線路形状データ推定システムの車両側の構成を示す図。
【
図5】本発明の実施形態に係る線路形状データ推定システムの地上側の構成を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0017】
図1は、本発明の実施形態に係る線路形状データ推定方法を示すフロー図であり、
図2は、本発明の実施形態に係る線路形状データ推定方法で用いる曲率波形データであり、
図3は、本発明の実施形態に係る線路形状データ推定システムで用いる振子式の鉄道車両の構成を示す図であり、
図4は、本発明の実施形態に係る線路形状データ推定システムの車両側の構成を示す図であり、
図5は、本発明の実施形態に係る線路形状データ推定システムの地上側の構成を示す図である。
【0018】
本実施形態に係る線路形状データ推定方法は、
図3に示すような振子式の鉄道車両1が走行する線路の形状に係るデータを推定する。具体的には、
図1に示すように、車体3の車体ヨー角速度を取得する車体ヨー角速度取得工程(S101)と、鉄道車両1の走行速度を取得する走行速度取得工程(S102)と、台車2の台車枠左右加速度を取得する台車枠左右加速度取得工程(S103)と、台車2ごとの振子傾斜角速度を取得する振子傾斜角速度取得工程(S104)と、前後の台車2の振子傾斜角速度の差を算出する振子傾斜角速度差算出工程(S105)と、振子傾斜角速度の差に所定の係数を乗じて補正値を算出する補正値算出工程(S106)と、車体ヨー角速度取得工程(S101)で取得された前記車体ヨー角速度から補正値を減算して補正車体ヨー角速度を算出する補正車体ヨー角速度算出工程(S107)を有し、補正車体ヨー角速度及び走行速度から線路曲率相当値を算出する線路曲率相当値算出工程(S108)と、補正車体ヨー角速度、走行速度及び台車枠左右加速度からカント相当値を算出するカント相当値算出工程(S109)とを有している。なお、本実施形態に係る線路形状データは、上述した線路曲率相当値とカント相当値とを含む。ここで、車体ヨー角速度とは、
図3及び
図4に示すように、車体3がZ軸まわりの回転運動を起こした場合の角速度をいい、振子傾斜角速度とは、X軸まわりの回転運動によって振子はり23が台車枠22に対して傾斜した場合のX軸まわりの角速度をいい、カントとは、左右のレール4の高低差をいう。
【0019】
車体ヨー角速度取得工程(S101)は、後述する車体ヨー角速度取得手段によって線路を走行する鉄道車両1の走行距離に対応した車体ヨー角速度を測定する。車体ヨー角速度取得手段は、車体ヨー角速度を測定することができれば、どのような構成を用いても構わないが、例えば、車体3のZ軸まわりのヨー角速度を測定することができるヨー角速度センサが好適に用いられる。
【0020】
走行速度取得工程(S102)は、後述する走行速度取得手段によって鉄道車両1の走行距離に対応した走行速度を測定する。走行速度取得手段は、鉄道車両1の走行速度を測定することができれば、どのような構成を用いても構わないが、例えば、車軸21に取り付けた速度発電機を用いて車輪回転数センサとして構成すると好適である。
【0021】
台車枠左右加速度取得工程(S103)は、後述する台車枠左右加速度取得手段によって台車枠22の走行距離に対応した左右加速度を測定する。左右加速度取得手段は、台車枠22の左右加速度を測定することができれば、どのような構成を用いても構わないが、例えば、台車枠22に取り付けた左右加速度センサを用いると好適である。
【0022】
振子傾斜角速度取得工程(S104)は、後述する振子傾斜角速度取得手段によって前台車2a及び後台車2bのそれぞれの走行距離に対応した振子傾斜角速度を測定する。振子傾斜角速度取得手段は、前台車2a及び後台車2bのそれぞれの傾斜角速度を測定することができれば、どのような構成を用いても構わないが、例えば、前台車2a及び後台車2bのそれぞれに取り付けた傾斜角センサから得られる傾斜角度データを微分して得られる傾斜角速度データを用いると好適である。
【0023】
振子傾斜角速度差算出工程(S105)は、前台車2a及び後台車2bにおける振子傾斜角速度の差を算出する。
【0024】
補正値算出工程(S106)は、振子傾斜角速度差算出工程(S105)で算出された前後台車の振子傾斜角速度の差に所定の係数を乗じて補正値を算出する。この所定の係数は、車体傾斜車両の台車の振子状態に応じて予め定められており、例えば、鉄道車両1が曲線部分を通過する際に受ける遠心力とシリンダなどの動作部によって振子装置を制御する制御振子状態や、遠心力のみで振子装置を制御する自然振子状態に応じて決定されると好適である。この台車2ごとの振子傾斜角速度の差(ヨー方向成分)を算出すると、車体ヨー角速度に重畳した車体ヨーイング動揺による成分との相関があることが
図2の振子角速度(ヨー成分)を示すA及び曲率の生信号を示すBから確認できる。
【0025】
補正車体ヨー角速度算出工程(S107)は、車体ヨー角速度取得工程(S101)で取得された車体ヨー角速度から補正値算出工程(S106)で算出された補正値を減算して補正車体ヨー角速度を算出する。補正車体ヨー角速度は、
図2における曲率(補正あり)を示すCであり、管理台帳上の曲率を示すEと同様の台形の波形を得ることができる。
【0026】
線路曲率相当値算出工程(S108)は、補正車体ヨー角速度算出工程(S107)で算出された補正車体ヨー角速度及び、走行速度取得工程(S102)で取得された走行速度を用いて線路曲率相当値を算出する。線路曲率相当値の算出方法は、従来周知の方法を用いることができるので、詳細な説明は省略する。
【0027】
カント相当値算出工程(S109)は、補正車体ヨー角速度算出工程(S107)で算出された補正車体ヨー角速度、走行速度取得工程(S102)で取得された走行速度及び、台車枠左右加速度取得工程(S103)で取得された台車枠左右加速度を用いてカント相当値を算出する。カント相当値の算出方法は、従来周知の方法を用いることができるので、詳細な説明は省略する。
【0028】
上述したように、本実施形態に係る線路形状データ推定方法によれば、台車ごとの振子傾斜角速度の差に所定の係数を乗じて補正値を算出し、取得された車体ヨー角速度から補正値を減算して得られた補正車体ヨー角速度を用いて線路曲率相当値及びカント相当値を算出するので、
図2に示すように、曲率(生信号)を示すBにローパスフィルタを適用した曲率(フィルタのみ)を示すDと比較して、車体ヨーイング動揺の影響を低減することができるとともに、曲率波形の台形の角の部分が管理台帳上の曲率を示すEと同様の形状を示すことができる。これによって、曲率(生信号)にローパスフィルタを用いて補正することなく、鉄道車両1に設けた各種センサ類で取得された情報のみで線路形状データを作成することができるので、線路形状に関する設計値を用いることなく、路線上を実際に走行することで、車体ヨーイング動揺の影響を低減した線路形状データを算出することができる。
【0029】
次に、本実施形態に係る線路形状データ推定方法を行う、線路形状データ推定システムについて説明を行う。
【0030】
図3に示すように、振子式の鉄道車両1は、レール4上を走行する台車2と、台車2によって支持された車体3とを有している。
【0031】
台車2は、複数の車輪20,…と、車輪20同士を連結した複数の車軸21,…と、これら車軸21,…によって支持された台車枠22と、振子はり23等とからなる。この振子はり23と台車枠22に設けられたガイド装置24とによって車体3は傾斜可能となっており、台車枠22及び振子はり23には車体3を傾斜させる動作部25が連結されている。
【0032】
動作部25は、ガイド装置24に対して振子はり23を揺動させることによって、車体3を傾斜させることができるようになっている。このような動作部25としては、作動流体によるアクチュエータや電気モータによるアクチュエータ等が用いられている。
【0033】
車軸21には、速度発電機が取り付けられており、車軸21の車輪回転数センサ12として機能する走行速度取得手段を構成している。また、動作部25には、振子傾斜角センサ14が取り付けられており、振子傾斜角速度取得手段を構成している。なお、振子傾斜角センサ14は、
図4に示すように、前台車2a及び後台車2bのそれぞれに取り付けられている。
【0034】
また、
図4に示すように、鉄道車両1の車体3には車体3のヨー角速度を測定する車体ヨー角速度センサ11が取り付けられており、車体ヨー角速度取得手段を構成している。台車2(例えば前台車2a)には台車枠22aに取り付けられた台車枠左右加速度センサ13が取り付けられており、台車枠左右加速度取得手段として構成している。なお、車体ヨー角速度センサ11,車輪回転数センサ12,台車枠左右加速度センサ13及び振子傾斜角センサ14は、車体3に取り付けられた情報記憶部31に各種測定データを記録するように構成されており、情報記憶部31に記録された各種測定データは、測定データ保存用の外部記憶媒体32に保存することができる。
【0035】
鉄道車両1の走行によって上述した各種測定データが測定された後、測定されたデータは、外部記憶媒体32に保存されるので、例えば、地上に設置された情報処理部33に当該測定データを読み込ませることで、上述した線路形状データ推定方法を実行して、鉄道車両1が走行した区間の線路形状データを推定することができる。情報処理部33は、上述した線路形状データ推定方法を実行するプログラムを備えた自動計算機などが好適に用いられる。なお、得られた線路形状データは、線路形状データ保存用の外部記憶媒体からなる線路形状データ保存部34に保存される。保存された線路形状データは、車体傾斜車両に記憶させることで、車体傾斜車両の走行時の車体傾斜制御に用いることができる。
【0036】
なお、上述した線路形状データ推定システムでは、情報処理部33を地上に備えた場合について説明を行ったが、情報処理部33を車体3に備え、算出された線路形状データをリアルタイムに車体傾斜制御に用いても構わない。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれうることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【符号の説明】
【0037】
1 鉄道車両, 2 台車, 3 車体, 4 レール, 11 車体ヨー角速度センサ, 12 車輪回転数センサ, 13 台車枠左右加速度センサ, 14 振子傾斜角センサ, 20 車輪, 21 車軸, 22 台車枠, 23 振子はり, 24 ガイド装置, 25 動作部, 31 情報記憶部, 32 外部記憶媒体, 33 情報処理部, 34 線路形状データ保存部。