IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 日野自動車株式会社の特許一覧

<>
  • 特許-車両 図1
  • 特許-車両 図2
  • 特許-車両 図3
  • 特許-車両 図4
  • 特許-車両 図5
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
   B62D 21/15 20060101AFI20240116BHJP
   B62D 25/08 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
B62D21/15 B
B62D25/08 D
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020117234
(22)【出願日】2020-07-07
(65)【公開番号】P2022014721
(43)【公開日】2022-01-20
【審査請求日】2023-06-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】中村 薫
(72)【発明者】
【氏名】木村 昌裕
【審査官】高瀬 智史
(56)【参考文献】
【文献】実開昭55-25505(JP,U)
【文献】特開2008-120161(JP,A)
【文献】特開2019-131003(JP,A)
【文献】特開2014-83875(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0054956(US,A1)
【文献】特開2015-9583(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109466422(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 21/15
B62D 25/08
B62D 25/20
B60R 19/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体前部に蓄電池ユニット又は燃料電池ユニットが配置されたエンジン非搭載の車両であって、
前記車両の前後方向に延在する一対のメインフレームと、
前記一対のメインフレーム間において、前記メインフレームの前部上方となる位置に配置された衝撃吸収部と、
前記衝撃吸収部の後端側に結合されると共に、前記メインフレームに結合された衝撃伝達部と、を備え
前記衝撃伝達部は、
前記車両の幅方向に延在して前記衝撃吸収部の後端側に結合された支持部と、
前記支持部における前記車両の幅方向の両縁部に結合され、前記メインフレームの長手方向に沿って延在する一対の側板と、を有し、
前記一対の側板の後端側における前記車両の高さ方向の幅は、前記車両の後方側に向かう程小さくなっており、
前記側板の下端部には、前記車両の幅方向に張り出す張出部が設けられ、
前記側板は、前記張出部を前記メインフレームの上面部に結合することによって前記メインフレームに固定されており、
前記側板には、前記張出部と略平行に前記車両の幅方向に張り出すと共に、前記支持部に結合された補強板が設けられている車両。
【請求項2】
前記支持部は、前記衝撃吸収部の結合面と反対側の面に結合され、前記車両の幅方向に延在する中空部材を有している請求項記載の車両。
【請求項3】
前記中空部材の内部には、前記車両の幅方向に延在する補強板が設けられている請求項記載の車両。
【請求項4】
前記蓄電池ユニット又は前記燃料電池ユニットを冷却する冷却部を備え、
前記冷却部は、前記衝撃吸収部よりも上方又は下方の少なくとも一方の位置に配置されている請求項1~のいずれか一項記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
トラック等の車両に適用される構造として、例えば特許文献1に記載の車両の前端構造がある。この従来の車両の前端構造では、バンパーリーンフォースに対して上方向にずれた位置に配置された第1コア部と、下方向側にずれた位置に配置された第2コア部とによって熱交換器が構成されている。第1コア部と第2コア部との間には、両コア部間の隙間を閉塞する断面コの字状の閉塞部材が配置され、衝突時に歪み変形したバンパーリーンフォースが閉塞部材内に入り込むようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-276701号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、ディーゼルエンジン等の内燃機関を搭載した車両では、いわゆるCar tо Car衝突が生じた場合に、車体前部に配置されたエンジンが被衝突車のメインフレーム等に当たることによって衝突エネルギーの吸収が図られていた。しかしながら、車体前部に蓄電池ユニット又は燃料電池ユニットが配置されたエンジン非搭載の車両では、当該部分にインバータ等の小型の機器のみが配置されるため、衝突エネルギーを十分に吸収するための構成が必要となっていた。
【0005】
本開示は、上記課題の解決のためになされたものであり、エンジン非搭載であっても衝突エネルギーを十分に吸収できる車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面に係る車両は、車体前部に蓄電池ユニット又は燃料電池ユニットが配置されたエンジン非搭載の車両であって、車両の前後方向に延在する一対のメインフレームと、一対のメインフレーム間において、メインフレームの前部上方となる位置に配置された衝撃吸収部と、衝撃吸収部の後端側に結合されると共に、メインフレームに結合された衝撃伝達部と、を備える。
【0007】
この車両では、従来のエンジン搭載車両におけるエンジンでの衝突エネルギーの吸収に代えて、一対のメインフレーム間のメインフレームの前部上方となる位置に配置された衝撃吸収部によって衝突エネルギーを吸収することができる。また、この車両では、衝撃吸収部の後端側に衝撃伝達部が結合され、当該衝撃伝達部がメインフレームに結合されている。これにより、この車両では、衝撃吸収部に入力された衝突エネルギーを衝撃伝達部を介してメインフレームに効率的に逃がすことができ、エンジン非搭載であっても衝突エネルギーを十分に吸収できる。
【0008】
衝撃伝達部は、車両の幅方向に延在して衝撃吸収部の後端側に結合された支持部と、支持部における車両の幅方向の両縁部に結合され、メインフレームの長手方向に沿って延在する一対の側板と、を有し、一対の側板の後端側における車両の高さ方向の幅は、車両の後方側に向かう程小さくなっていてもよい。この場合、衝撃吸収部が支持部で支持されることで衝突エネルギーを衝撃吸収部によってしっかりと受けることができる。また、側板の車両の高さ方向の幅が車両の後方側に向かう程小さくなっていることで、衝撃吸収部に入力された衝撃エネルギーを支持部から側板を介してメインフレームに効率良く伝達させることが可能となる。
【0009】
側板の下端部には、車両の幅方向に張り出す張出部が設けられ、側板は、張出部をメインフレームの上面部に結合することによってメインフレームに固定されていてもよい。この場合、側板の張出部とメインフレームの上面部との結合により、衝撃吸収部に入力された衝突エネルギーを側板を介して一層効率的にメインフレームに伝達することができる。
【0010】
側板には、張出部と略平行に車両の幅方向に張り出すと共に、支持部に結合された補強板が設けられていてもよい。かかる補強板により側板の強度を向上させることが可能となり、側板の変形や破損による衝突エネルギーの伝達効率の低下を抑制できる。
【0011】
支持部は、衝撃吸収部の結合面と反対側の面に結合され、車両の幅方向に延在する中空部材を有していてもよい。この場合、中空部材によって支持部の強度を十分に高めることが可能となり、支持部の変形や破損による衝突エネルギーの伝達効率の低下を抑制できる。
【0012】
中空部材の内部には、車両の幅方向に延在する補強板が設けられていてもよい。この場合、中空部材の強度が補強板によって高められ、支持部の強度を一層十分に高めることが可能となる。したがって、支持部の変形や破損による衝突エネルギーの伝達効率の低下をより確実に抑制できる。
【0013】
蓄電池ユニット又は燃料電池ユニットを冷却する冷却部を備え、冷却部は、衝撃吸収部よりも上方又は下方の少なくとも一方の位置に配置されていてもよい。この場合、衝突エネルギーの入力を受けた衝撃吸収部が変形して冷却部に干渉することを防止できる。したがって、冷却部の変形や破損によって車両の運転席回りのスペースが狭小化してしまうことを回避でき、衝突時の安全性を高めることができる。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、エンジン非搭載であっても衝突エネルギーを十分に吸収できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の一実施形態に係る車両の要部を示す概略図である。
図2】衝撃伝達部及び衝撃吸収部の斜視図である。
図3】衝撃伝達部及び衝撃吸収部の正面図である。
図4】衝撃伝達部及び衝撃吸収部の側面図である。
図5】衝突時の車両の状況を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係る車両の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0017】
[車両の概略構成]
図1は、本開示の一実施形態に係る車両の要部を示す概略図である。図1に示す車両1は、例えば蓄電池を動力源とするエンジン非搭載のトラック車両として構成されている。図1では、車両1の前部のキャブフロア下の構成を示している。同図に示すように、車両1は、蓄電池ユニット2と、冷却部3と、一対のメインフレーム4,4と、衝撃吸収部5と、衝撃伝達部6と、を含んで構成されている。なお、車両1は、燃料電池を動力源とするエンジン非搭載のトラック車両としても構成され得る。この場合、蓄電池ユニット2に代えて、燃料電池ユニットが配置される。以下の説明において、構成部材同士の結合には、特に制限はなく、溶接、ボルト-ナット接合、リベット接合などの各種の手法を適宜用いることができる。
【0018】
蓄電池ユニット2は、車両1の動力源の一部であり、インバータ等を含んで構成されている。図1の例では、蓄電池ユニット2は、車両1の前後方向に延在する一対のメインフレーム4,4の間において、衝撃伝達部6の上方に配置されている。蓄電池ユニット2は、例えば一対のメインフレーム4,4間に橋架された支持部材(不図示)に固定されていてもよいし、一対のメインフレーム4,4に直接固定されていてもよい。
【0019】
冷却部3は、蓄電池ユニット2を冷却する部分である。冷却部3は、熱交換を行うラジエータ8と、ファン9とを含んで構成されている。本実施形態では、冷却部3は、衝撃吸収部5を上下に挟むように一対に設けられている。一対の冷却部3,3は、一対のメインフレーム4,4の間において、衝撃吸収部5よりも上方となる位置及び衝撃吸収部5よりも下方となる位置にそれぞれ配置されている。これらの冷却部3,3は、例えば車両1の前輪11よりも前方に位置している。なお、冷却部3は、衝撃吸収部5よりも上方となる位置及び衝撃吸収部5よりも下方となる位置の一方のみに配置されていてもよい。
【0020】
メインフレーム4は、車両1のシャシーを構成する左右一対の部材であり、車両1の前後方向に延在している。メインフレーム4,4の前端には、車両1の幅方向に延在するクロスメンバ10が結合されている。クロスメンバ10は、例えばメインフレーム4,4の前端部分に固定された支持フレーム12を介してメインフレーム4,4に結合されている。
【0021】
[衝撃伝達部及び衝撃吸収部の構成]
次に、衝撃吸収部5及び衝撃伝達部6の構成について詳述する。
【0022】
図2は、衝撃伝達部及び衝撃吸収部の斜視図である。また、図3は、その正面図であり、図4は、その側面図である。図2図4に示すように、衝撃吸収部5及び衝撃伝達部6は、上述したメインフレーム4に対して結合されている。
【0023】
メインフレーム4は、例えば断面略C字状の金属製の型材によって構成されている。メインフレーム4は、車両1の幅方向を向く側面部4aと、側面部4aの上下端から側面部4aと直交して車両1の幅方向中央側に張り出す上面部4b及び底面部4cとを有している。上面部4b及び底面部4cは、いずれも一定の幅で平坦な形状をなしている。また、メインフレーム4の前端部分の上部には、矩形の切欠部Kが設けられている。これにより、側面部4a及び底面部4cは、上面部4bよりも車両1の前方に突出し、当該突出部分は、上述した支持フレーム12との結合代となっている。
【0024】
衝撃吸収部5は、衝突時の衝撃を吸収する金属製の部材である。衝撃吸収部5は、一対のメインフレーム4,4の間において、メインフレーム4の前部上方となる位置に配置されている。衝撃吸収部5の高さ位置は、いわゆるCar tо Car衝突を考慮し、かかる衝突が生じた場合に被衝突車のメインフレーム等に当たる位置を想定して定められている。この位置は、例えば従来のエンジン搭載車両におけるエンジンの配置位置に対応したものであってもよい。
【0025】
衝撃吸収部5は、例えばハニカム構造を有するクラッシュボックス21を含んで構成されている。本実施形態では、4体のクラッシュボックス21が、車両1の幅方向に等間隔に配列されている。クラッシュボックス21の前方には、4体のクラッシュボックス21の正面形状に応じた面積を有する略矩形状の衝突面板22が配置されている。衝突面板22は、4体のクラッシュボックス21の前端側に結合されている。
【0026】
衝撃伝達部6は、衝撃吸収部5で受けた衝撃荷重をメインフレーム4に伝達する金属製の部材である。衝撃伝達部6は、衝撃吸収部5の後端側に配置されている。衝撃伝達部6は、支持部23と、側板24とを備えている。
【0027】
支持部23は、衝撃伝達部6の前部を構成し、衝撃吸収部5を支持する部分である。支持部23は、メインフレーム4の上方において、車両1の幅方向に延在し、衝撃吸収部5におけるクラッシュボックス21の後端側を支持している。本実施形態では、支持部23は、支持板25と、中空部材26とによって構成されている。
【0028】
支持板25は、金属製の略矩形かつ平板部材である。支持板25は、例えば衝突面板22と略同形状をなしており、当該衝突面板22との間でクラッシュボックス21を挟むように配置されている。支持板25の前面側は、クラッシュボックス21の後端側に結合されている。
【0029】
中空部材26は、支持部23の基体をなす金属製の部材である。中空部材26は、図4に示すように、2つの断面略C字状のチャネル鋼28,28を組み合わせることによって形成され、断面略矩形の内部空間Uを有している。中空部材26は、支持板25と同程度に車両1の幅方向に延在し、中空部材26の前面側は、支持板25における衝撃吸収部5の結合面とは反対側の面、すなわち、支持板25の背面側に結合されている。
【0030】
中空部材26の内部空間Uには、車両1の幅方向に延在する補強板30が配置されている(図4参照)。本実施形態では、内部空間Uにおいて、2体の補強板30,30が上下に離間した状態で略水平に配置されている。補強板30の幅方向の縁部は、中空部材26の前面側の壁部及び背面側の壁部にそれぞれ結合されている。
【0031】
側板24は、車両1の幅方向において、衝撃伝達部6の両翼となる左右一対の部材である。側板24は、例えば金属製の型材によって断面略L字状となるように構成されている。側板24は、側面部31と、張出部32とを有している。
【0032】
側面部31は、メインフレーム4の上面部4bに接するように当該上面部4bに直交する向きに配置され、メインフレーム4と同方向に延在している。側面部31は、車両1の正面視において、衝突面板22及び支持板25よりも僅かに車両1の幅方向の外側に位置している(図3参照)。この側面部31の前端側は、高さ方向について等幅となっており、メインフレーム4の上面部4bよりも車両1の前方に突出した状態で、支持部23(支持板25及び中空部材26)における車両1の幅方向の縁部に結合されている。側面部31の後端側は、側面部31とメインフレーム4の上面部4bとが接する位置の近傍から側面部31の後端にかけて側面部31の上端の高さが徐々に小さくなっている。これにより、側面部31の後端側における車両1の高さ方向の幅は、車両1の後方側に向かう程小さくなっている。
【0033】
張出部32は、側面部31の下端から側面部31と直交して車両1の幅方向中央側に張り出し、側面部31と略同じ長さでメインフレーム4と同方向に延在している。張出部32の高さ位置は、車両1の正面視において、衝突面板22及び支持板25の下端に対応している(図3参照)。この張出部32は、メインフレーム4の上面部4bと当接し、当該上面部4bに結合されている。張出部32がメインフレーム4の上面部4bと結合することにより、側板24とメインフレーム4との結合がなされ、衝撃吸収部5に入力された衝突エネルギーが衝撃伝達部6を介してメインフレーム4に伝達される伝達経路が構築されている。
【0034】
また、側板24には、図2及び図4に示すように、張出部32と略平行に車両1の幅方向中央に向かって張り出す金属製の補強板33が設けられている。補強板33は、支持部23と側板24とを繋ぐように平面視において略L字状に形成されている。本実施形態では、補強板33は、上部補強板34と、下部補強板35とによって構成されている。上部補強板34と下部補強板35とは、車両1の高さ方向に互いに離間した状態で、いずれもメインフレーム4と同方向に延在している。
【0035】
上部補強板34は、側板24の側面部31の内面側に結合された側方結合部34aと、中空部材26の背面側に結合された前方結合部34bとを有している。側方結合部34a及び前方結合部34bは、例えば側板24の張出部32と略等幅に形成されている。
【0036】
側方結合部34aは、側面部31の後端まで延びており、側面部31の上端からはみ出さないように、側面部31の上端の傾斜角度よりも僅かに大きい角度でメインフレーム4の上面部4bに対して傾斜している。前方結合部34bは、側方結合部34aの前端から車両1の幅方向の中心に向かって略直角に突出し、中空部材26の背面側において車両1の幅方向の縁部に結合されている。なお、本実施形態では、側方結合部34aと前方結合部34bとがなす隅部Rには、円弧状の面取りがなされている。
【0037】
下部補強板35は、上部補強板34と同様に、側板24の側面部31の内面側に結合された側方結合部35aと、中空部材26の背面側に結合された前方結合部35bとを有している。側方結合部35a及び前方結合部35bは、例えば側板24の張出部32と略等幅に形成されている。
【0038】
側方結合部35aは、上部補強板34における側方結合部34aに当たらないような長さで、メインフレーム4の上面部4bと略平行に延在している。前方結合部35bは、側方結合部34aの前端から車両1の幅方向の中心に向かって略直角に突出し、中空部材26の背面側において車両1の幅方向の縁部に結合されている。なお、本実施形態では、上部補強板34と同様に、側方結合部34aと前方結合部34bとがなす隅部Rには、円弧状の面取りがなされている。
【0039】
[作用効果]
図5は、衝突時の車両の状況を示す図である。同図の例では、従来の車両C1及び車両C2において、メインフレーム104の前部の高さが後部の高さよりも低くなっている。この場合、進行方向の前方に位置する車両(被衝突車)C1の後部に後続の車両(衝突車)C2の前部が衝突すると、車両C2のメインフレーム104の前部上方となる位置に、車両C1のメインフレーム104の後部が当たることとなる。
【0040】
ここで、衝突車である車両C2が図5の仮想線で示すようにエンジンEを搭載する車両である場合、メインフレーム4の前部上方となる位置にエンジンEが位置するため、エンジンEが車両C1のメインフレーム104の後部に当たることによって衝突エネルギーの吸収を図ることができる。
【0041】
一方、車両C2がエンジンEを搭載しない車両である場合、エンジンEの配置部分にインバータ等の小型の機器のみが配置され得るため、車両C1のメインフレーム104の後部が当たった際に、衝突エネルギーの吸収が不十分となることが考えられる。
【0042】
このような問題に対し、上述した車両1では、従来のエンジン搭載車両におけるエンジンでの衝突エネルギーの吸収に代えて、一対のメインフレーム4間のメインフレーム4の前部上方となる位置に衝撃吸収部5が配置されている。したがって、この衝撃吸収部5によって衝突エネルギーを吸収することができる。車両1では、衝撃吸収部5の後端側に衝撃伝達部6が結合され、当該衝撃伝達部6がメインフレーム4に結合されている。これにより、車両1では、衝撃吸収部5に入力された衝突エネルギーを衝撃伝達部6を介してメインフレーム4に効率的に逃がすことができ、エンジン非搭載であっても衝突エネルギーを十分に吸収できる。
【0043】
本実施形態では、衝撃伝達部6は、車両1の幅方向に延在して衝撃吸収部5の後端側に結合された支持部23と、支持部23における車両1の幅方向の両縁部23aに結合され、メインフレーム4の長手方向に沿って延在する一対の側板24,24とを有している。そして、一対の側板24,24の後端側における車両1の高さ方向の幅は、車両1の後方側に向かう程小さくなっている。これにより、衝撃吸収部5が支持部23で支持され、衝突エネルギーを衝撃吸収部5によってしっかりと受けることができる。また、側板24の車両1の高さ方向の幅が車両1の後方側に向かう程小さくなっていることで、衝撃吸収部5に入力された衝撃エネルギーを支持部23から側板24を介してメインフレーム4に効率良く伝達させることが可能となる。
【0044】
本実施形態では、側板24の下端部には、車両1の幅方向に張り出す張出部32が設けられ、側板24は、張出部32をメインフレーム4の上面部4bに結合することによってメインフレーム4に固定されている。この構成では、側板24の張出部32とメインフレーム4の上面部4bとの結合により、衝撃吸収部5に入力された衝突エネルギーを側板24を介して一層効率的にメインフレーム4に伝達することができる。
【0045】
本実施形態では、側板24には、張出部32と略平行に車両1の幅方向に張り出すと共に、支持部23に結合された補強板33が設けられている。かかる補強板33により側板24の強度を向上させることが可能となり、側板24の変形や破損による衝突エネルギーの伝達効率の低下を抑制できる。
【0046】
本実施形態では、支持部23は、衝撃吸収部5の結合面と反対側の面に結合され、車両1の幅方向に延在する中空部材26を有している。これにより、中空部材26によって支持部23の強度を十分に高めることが可能となり、支持部23の変形や破損による衝突エネルギーの伝達効率の低下を抑制できる。
【0047】
本実施形態では、中空部材26の内部空間Uには、車両1の幅方向に延在する補強板30が設けられている。これにより、中空部材26の強度が補強板30によって高められ、支持部23の強度を一層十分に高めることが可能となる。したがって、支持部23の変形や破損による衝突エネルギーの伝達効率の低下をより確実に抑制できる。
【0048】
本実施形態では、蓄電池ユニット2を冷却する一対の冷却部3,3が、一対のメインフレーム4,4の間において、衝撃吸収部5よりも上方となる位置及び衝撃吸収部5よりも下方となる位置にそれぞれ配置されている。このような構成により、衝突エネルギーの入力を受けた衝撃吸収部5が変形して冷却部3に干渉することを防止できる。したがって、冷却部3の変形や破損によって車両1の運転席回りのスペースが狭小化してしまうことを回避でき、衝突時の安全性を高めることができる。
【0049】
[変形例]
以上、本開示の好適な実施形態について説明してきたが、本開示は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、蓄電池ユニット2を冷却する一対の冷却部3,3が、一対のメインフレーム4,4の間において、衝撃吸収部5よりも上方となる位置及び衝撃吸収部5よりも下方となる位置にそれぞれ配置されているが、冷却部3は、衝撃吸収部5よりも前方となる位置に配置されていてもよい。
【0050】
また、上記実施形態では、衝撃吸収部5の高さ位置がCar tо Car衝突の際に被衝突車のメインフレーム等に当たる位置を想定している点を説明したが、この高さ位置は、衝突車及び被衝突車がブレーキをかけた際の車両姿勢を考慮して設定されていてもよい。例えば一般的なトラック車両では、車体の重心がタイヤの中心よりも高い位置にあり、衝突の際にパニックブレーキ或いはPCS(Pre-Crash Safety)システムが作動すると、車両が前傾姿勢となる。したがって、定常走行中或いは停止中の被衝突車に衝突車が制動しながら衝突する場合や、被衝突車及び衝突車の双方が制動しながら衝突する場合に、被衝突車のメインフレームに衝突車の衝撃吸収部が当たるように、衝撃吸収部の高さ位置を設定することが好適である。
【符号の説明】
【0051】
1…車両、2…蓄電池ユニット、3…冷却部、4…メインフレーム、4b…上面部、5…衝撃吸収部、6…衝撃伝達部、23…支持部、23a…両縁部、24…側板、25…支持板、26…中空部材、30,33…補強板、32…張出部。
図1
図2
図3
図4
図5