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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/42 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
H01R13/42 B
H01R13/42 F
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020126749
(22)【出願日】2020-07-27
(65)【公開番号】P2022023659
(43)【公開日】2022-02-08
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】榛地 陽
(72)【発明者】
【氏名】雨宮 大樹
(72)【発明者】
【氏名】浜田 真吾
【審査官】濱田 莉菜子
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-145463(JP,A)
【文献】特開2003-007390(JP,A)
【文献】実開平04-012268(JP,U)
【文献】特開平10-223295(JP,A)
【文献】特開2006-236678(JP,A)
【文献】特開2004-119088(JP,A)
【文献】特開2002-305052(JP,A)
【文献】特開2002-008764(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0165794(US,A1)
【文献】欧州特許出願公開第3252875(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 13/40-13/533
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
端子金具と、
前記端子金具を挿入可能な端子収容室と、前記端子金具の挿入方向に交差する撓み方向に撓むことが可能になるように、前記挿入方向の後端が固定端となり、前記挿入方向の先端側が自由端となる片持ち梁状に構成され、前記端子金具の前記挿入方向の後端側を係止する係止片と、を有するハウジングと、
仮係止位置と、前記仮係止位置よりも前記挿入方向の後端側の本係止位置と、で前記ハウジングに係止するフロントホルダと、を備えたコネクタにおいて、
前記端子金具は、前記撓み方向に突出する突出部を有し、
前記フロントホルダは、前記挿入方向及び前記撓み方向の双方に交差する交差方向における前記端子金具の位置を決めるフロント位置決め部を有し、
前記フロントホルダを前記仮係止位置から前記本係止位置までガイドするガイド部をさらに備え、
前記ガイド部は、前記交差方向において、前記フロント位置決め部により位置決めされた前記端子金具の前記突出部が前記係止片に近づく側に移動するように前記フロントホルダをガイドして、前記本係止位置で前記係止片を前記突出部の後端に係止させる、
コネクタ。
【請求項2】
請求項1に記載のコネクタにおいて、
前記フロント位置決め部は、前記仮係止位置において前記挿入方向に前記突出部と前記係止片とが対向しない位置に前記端子金具を位置決めする、
コネクタ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のコネクタにおいて、
前記ハウジングは、前記交差方向における前記端子金具の位置を決めるハウジング位置決め部を有し、
前記ハウジング位置決め部は、前記挿入方向に前記突出部と前記係止片とが対向しない位置に前記端子金具を位置決めする、
コネクタ。
【請求項4】
請求項1~3何れか1項に記載のコネクタにおいて、
前記ガイド部は、前記フロントホルダ及び前記ハウジングの何れか一方に設けられたカム溝と、何れか他方に設けられ、前記カム溝に挿入されるカムピンと、から構成される、
コネクタ。
【請求項5】
請求項1~4何れか1項に記載のコネクタにおいて、
前記端子金具が、相手方端子金具が挿入される箱部を有し、
前記突出部が、前記箱部の前記挿入方向の後端から突出して設けられた、
コネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、突出部が設けられた端子金具を有するコネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
端子金具として、スタビライザ(突出部)が突出されているものがある。誤った姿勢で端子金具をハウジングに挿入すると、スタビライザがハウジングに当たって端子金具を挿入できないようになっている。しかしながら、端子金具にスタビライザを設けると、ハウジングに端子金具を挿入する際に、ランスが突出量の大きいスタビライザを乗り越える必要があり、端子の挿入力が増加する、という問題が生じていた。
【0003】
そこで、特許文献1に記載されたコネクタが提案されている。特許文献1に記載されたコネクタは、端子金具の挿入時にランスの両側をスタビライザが通過することにより、ランスがスタビライザを乗り越える必要がない。しかしながら、特許文献1のコネクタによれば、ランスはスタビライザを係止することができないので、係止力が弱い、という問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2006-236678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、端子金具の挿入力の低減を図りつつ端子金具の係止力の向上を図ったコネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係るコネクタは、下記[1]~[5]を特徴としている。
[1]
端子金具と、
前記端子金具を挿入可能な端子収容室と、前記端子金具の挿入方向に交差する撓み方向に撓むことが可能になるように、前記挿入方向の後端が固定端となり、前記挿入方向の先端側が自由端となる片持ち梁状に構成され、前記端子金具の前記挿入方向の後端側を係止する係止片と、を有するハウジングと、
仮係止位置と、前記仮係止位置よりも前記挿入方向の後端側の本係止位置と、で前記ハウジングに係止するフロントホルダと、を備えたコネクタにおいて、
前記端子金具は、前記撓み方向に突出する突出部を有し、
前記フロントホルダは、前記挿入方向及び前記撓み方向の双方に交差する交差方向における前記端子金具の位置を決めるフロント位置決め部を有し、
前記フロントホルダを前記仮係止位置から前記本係止位置までガイドするガイド部をさらに備え、
前記ガイド部は、前記交差方向において、前記フロント位置決め部により位置決めされた前記端子金具の前記突出部が前記係止片に近づく側に移動するように前記フロントホルダをガイドして、前記本係止位置で前記係止片を前記突出部の後端に係止させる、
コネクタであること。
[2]
[1]に記載のコネクタにおいて、
前記フロント位置決め部は、前記仮係止位置において前記挿入方向に前記突出部と前記係止片とが対向しない位置に前記端子金具を位置決めする、
コネクタであること。
[3]
[1]又は[2]に記載のコネクタにおいて、
前記ハウジングは、前記交差方向における前記端子金具の位置を決めるハウジング位置決め部を有し、
前記ハウジング位置決め部は、前記挿入方向に前記突出部と前記係止片とが対向しない位置に前記端子金具を位置決めする、
コネクタであること。
[4]
[1]~[3]何れか1項に記載のコネクタにおいて、
前記ガイド部は、前記フロントホルダ及び前記ハウジングの何れか一方に設けられたカム溝と、何れか他方に設けられ、前記カム溝に挿入されるカムピンと、から構成される、
コネクタであること。
[5]
[1]~[4]何れか1項に記載のコネクタにおいて、
前記端子金具が、相手方端子金具が挿入される箱部を有し、
前記突出部が、前記箱部の前記挿入方向の後端から突出して設けられた、
コネクタであること。
【0007】
上記[1]の構成のコネクタによれば、ガイド部が、フロントホルダを、交差方向においてフロント位置決め部により位置決めされた端子金具の突出部と係止片とが近づく側に移動させながら、仮係止位置から本係止位置までガイドする。これにより、係止片と突出部とが当たらないように端子金具を仮係止位置にあるフロントホルダのフロント位置決め部まで挿入した後、フロントホルダを本係止位置まで移動させて、本係止位置で係止片を突出部の後端に係止させることができる。従って、端子金具の挿入時は、係止片が突出部に当たらないようにして端子金具の挿入力の低減を図ることができる。フロントホルダを本係止位置まで移動させると、係止片が突出部の挿入方向の後端側を係止して、係止力の向上を図ることができる。
【0008】
上記[2]の構成のコネクタによれば、フロント位置決め部は、仮係止位置において挿入方向に突出部と係止片とが対向しない位置に端子金具を位置決めする。これにより、係止片と突出部とが当たらないように端子金具を仮係止位置にあるフロントホルダまで挿入したとき、フロント位置決め部に挿入することができる。
【0009】
上記[3]の構成のコネクタによれば、交差方向における端子金具の位置を決めるハウジング位置決め部が、挿入方向に突出部と係止片とが対向しない位置に端子金具を位置決めする。これにより、係止片と突出部とが当たらないように端子金具をハウジング内に挿入することができる。
【0010】
上記[4]の構成のコネクタによれば、ガイド部がカム溝とカムピンとから構成されている。これにより、簡単な構成でガイド部を設けることができる。
【0011】
上記[5]の構成のコネクタによれば、端子金具の箱部の先端が係止片を撓み方向に変形させる。箱部が係止片よりも先端側になるまで端子金具を挿入すると、係止片が復元する。その後、フロントホルダを仮係止位置から本係止位置に移動させると、端子金具が交差方向に移動して、係止片が突出部を係止することにより、端子金具の保持力を向上できる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、端子金具の挿入力の低減を図ったコネクタを提供することができる。
【0013】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、フロントハウジングを本係止位置まで挿入したときの本発明のコネクタの先端側から見た斜視図である。
図2図1は、フロントハウジングを仮係止位置まで挿入したときの本発明のコネクタの先端側から見た斜視図である。
図3図2は、図1及び図2に示すコネクタの分解斜視図である。
図4図4は、端子金具の挿入途中における図2のI-I線断面図である。
図5図5は、端子金具を挿入した後の図2のI-I線断面図である。
図6図6は、図1のII-II線断面図である。
図7図7は、図1に示すコネクタを後端側から見た斜視図である。
図8図8は、図1に示すコネクタを構成するハウジングの断面斜視図である。
図9図9は、図1に示すコネクタを構成するフロントホルダを後端側から見た斜視図である。
図10図10は、図5のA-A線断面図である。
図11図11は、図5のB-B線断面図である。
図12図12は、図6のC-C線断面図である。
図13図13は、図6のD-D線断面図である。
図14図14は、図6の断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0016】
本実施形態に係るコネクタ1は、雄コネクタと嵌合可能な雌コネクタである。図1図3などに示すように、コネクタ1は、端子金具2(図3)と、端子金具2を挿入可能なハウジング3と、ハウジング3内に収容されるフロントホルダ4と、を備えている。
【0017】
端子金具2は、図3に示すように、雌型の端子金具であって、金属板材に折り曲げ加工等を施すことで所定の形状に形成されている。端子金具2は、相手側端子金具が嵌合される箱部21と、電線の芯線をかしめる芯線かしめ部22と、電線の被覆部をかしめる被覆かしめ部23と、を有している。箱部21、芯線かしめ部22、被覆かしめ部23は、この順で端子金具2の挿入方向D1に沿って連なって設けられている。なお、上記「挿入方向D1」とは、ハウジング3に端子金具2を挿入する方向のことである。また、以下の説明において、挿入方向D1において箱部21側を先端側、被覆かしめ部23側を後端側と言う。
【0018】
箱部21は、底壁211と、一対の側壁212,212と、天井壁213と、を有する四角筒状に設けられ、内側に相手側端子金具が嵌合される。一対の側壁212,212は、幅方向(交差方向)D2両側から上下方向D3(撓み方向)上方に向かって立設される。上記幅方向D2及び上下方向D3は互いに直交(交差)し、挿入方向D1にも直交(交差)する方向である。天井壁213は、一対の側壁212,212の上端間に架け渡されている。天井壁213の後端かつ幅方向D2一方側には、スタビライザ24(突出部)が上方へ突出して形成されている。スタビライザ24は、天井壁213の一部を切り起こして形成される。
【0019】
芯線かしめ部22は、箱部21の底壁211の挿入方向D1後端に連なる底壁(図示せず)と、底壁の幅方向D2両側から上方に立ち上げられた一対のかしめ片221,221と、を有している。この底壁(図示せず)に芯線を搭載して、一対のかしめ片221,221の先端を芯線に向けてかしめることにより、芯線と端子金具2とを電気的に接続することができる。
【0020】
被覆かしめ部23は、芯線かしめ部22の底壁の挿入方向D1後端に連なる底壁231と、底壁231の幅方向D2両側から上方に立ち上げられた一対のかしめ片232,232と、を有している。この底壁231に被覆部を搭載して、一対のかしめ片232,232の先端を被覆部に向けてかしめることにより、被覆部を端子金具2に固定することができる。
【0021】
ハウジング3は、図4図6に示すように、端子金具2を挿入可能な複数の端子収容室301と、ランス302と、を備えている。ランス302は、端子収容室301毎に設けられている。ランス302は、挿入方向D1の後端側が固定端となり、挿入方向D1の先端側が自由端となる片持ち梁状に構成されている。このように片持ち梁状に構成することにより、ランス302は、端子金具2の挿入時に上下方向D3(撓み方向)上方に撓み、端子金具2が端子収容室301内の正規位置に収容されると上下方向D3下方に復元して端子金具2の箱部21後端を係止する。
【0022】
ハウジング3は、図7に示すように、底壁303と、一対の第1ハウジング側壁304,304と、一対の第2ハウジング側壁305,305と、天井壁306と、を有し、挿入方向D1が開口された略四角筒状に設けられている。底壁303は、先端部が後端部よりも幅広に形成されている。一対の第1ハウジング側壁304,304は、幅広の底壁303の幅方向D2両端から上方に立設する。一対の第2ハウジング側壁305,305は、幅狭の底壁303の幅方向D2両端よりも少し内側から立設する。一対の第1ハウジング側壁304,304と、一対の第2ハウジング側壁305,305と、は挿入方向D1に沿って並んで設けられている。
【0023】
また、第1ハウジング側壁304,304は、ハウジング3の先端部に設けられ、第2ハウジング側壁305,305は、ハウジング3の後端部に設けられている。天井壁306は、一対の第1ハウジング側壁304,304の上端間、第2ハウジング側壁305,305の上端間に架け渡される。天井壁306の上方には、相手側ハウジングを係止する係止部308が設けられている。
【0024】
一対の第2ハウジング側壁305,305間には、ハウジング3内の上下方向D3を仕切る第1ハウジング隔壁309と、ハウジング3内の幅方向D2を仕切る第2ハウジング隔壁310と、が設けられている。第1ハウジング隔壁309は、ハウジング3の後端部のみ(即ち第2ハウジング側壁305,305間にのみ)設けられ、先端部には設けられていない。上記底壁303、一対の第2ハウジング側壁305,305、天井壁306、第1ハウジング隔壁309、第2ハウジング隔壁310に囲まれた空間がそれぞれ、端子収容室301の後端部となる。本実施形態では、第1ハウジング隔壁309が1つ、第2ハウジング隔壁310が複数設けられ、端子収容室301は、上下2段、幅方向D2に複数並べて設けられている。
【0025】
上述した第2ハウジング側壁305と第2ハウジング隔壁310との間、第2ハウジング隔壁310間に、端子金具2を挿入することにより、端子金具2の幅方向D2における位置が決められる。即ち、第2ハウジング側壁305、第2ハウジング隔壁310は、ハウジング位置決め部として機能し、スタビライザ24とランス302とが挿入方向D1に対向しない位置に端子金具2が位置決めされる。
【0026】
また、天井壁306及び第1ハウジング隔壁309には、端子金具2のスタビライザ24が通過可能な挿入方向D1に延在する溝部311が端子収容室301毎に設けられている。この溝部311を設けることにより、スタビライザ24が上側に突出する姿勢で端子金具2をハウジング3に挿入したとき、スタビライザ24の上部が溝部311を通ることができる。即ち、誤った姿勢で端子金具2をハウジング3に挿入すると、スタビライザ24がハウジング3に当たって端子金具2を挿入することができない。これにより、端子金具2が誤った姿勢でハウジング3に挿入されるのを防止することができる。
【0027】
また、図4図6に示すように、第2ハウジング側壁305間の天井壁306は、第1ハウジング側壁304間の天井壁306よりも厚く設けられ、天井壁306には段差面が設けられている。この段差面の下端から複数の板状のランス302が先端側に向かって突設されている。また、上記第1ハウジング隔壁309の先端面の下端からも、複数の板状のランス302が先端側に向かって突設されている。ランス302は、天井壁306の段差面及び第1ハウジング隔壁309の先端面において、スタビライザ24を通す溝部311の幅方向D2他方側に隣接する位置から突設されている。
【0028】
また、ランス302は、後端部が、先端に向かうに従って下方に近づくように設けられ、先端部が上下方向D3に略垂直に設けられている。ランス302は、後端が天井壁306又は第1ハウジング隔壁309に支持され、先端面は支持されていない。
【0029】
また、図8に示すように、第2ハウジング側壁305間の底壁303は、第1ハウジング側壁304間の底壁303よりも厚く設けられ、段差面が設けられている。また、底壁303には、上記段差面よりも少し後端側から段差面にかけて挿入方向D1に沿って延在する位置決め凸部312が設けられている。第1ハウジング隔壁309にも、先端面よりも少し後端側から先端面にかけて挿入方向D1に沿って延在する位置決め凸部312が設けられている。これら位置決め凸部312は端子収容室301毎に設けられ、後述するフロントホルダ4に設けられた切欠部48と嵌合して、フロントホルダ4の幅方向D2を位置決めする。
【0030】
また、ハウジング3は、第2ハウジング側壁305及び第2ハウジング隔壁310の上下から各々先端に向かって突出する底壁313と、底壁313の幅方向D2一方端から立設する立壁314と、をさらに有している。底壁313は、上下方向D3に直交して設けられている。立壁314は、ランス302の幅方向D2他方を支持する。立壁314には、挿入方向D1に長尺な貫通孔314aが設けられている。ランス302は、この貫通孔314aの上方に支持されていて、上下方向D3に撓みやすく設けられている。
【0031】
また、ハウジング3は、第1ハウジング側壁304間にある底壁303の幅方向D2両端よりも少し内側から立設する一対の第1内壁315,315と、一対の第1ハウジング側壁304のうち他方側の内側面に重ねられた第2内壁316と、を有している。一対の第1内壁315,315は、一対の第2ハウジング側壁305よりも幅方向D2外側に位置している。本実施形態では、第1内壁315の内側面と、第2ハウジング側壁305の外側面と、が同一平面上に位置している。
【0032】
また、ハウジング3は、フロントホルダ4を後述する仮係止位置で係止させる一対の仮係止部317,317と、フロントホルダ4を後述する本係止位置で係止させる一対の本係止部318,318と、を有している。一対の仮係止部317,317は各々、一対の第1ハウジング側壁304,304のうち幅方向D2一方側と、一対の第1内壁315,315のうち幅方向D2他方側と、にそれぞれ設けられている。一対の仮係止部317,317は、フロントホルダ4の仮係止突起44bと係止する仮係止突起317aと、フロントホルダ4の仮係止部44を挿入方向D1にガイドするガイド壁317bと、から構成されている。仮係止突部317aは、幅方向D2の他方側に向かって突設されている。ガイド壁317bは、幅方向D2の他方側に向かって突設され、仮係止突部317aの下端から挿入方向D1後端に向かって延在して設けられている。
【0033】
一対の本係止部318,318は各々、一対の第1内壁315,315のうち幅方向D2一方側と、第2内壁316と、にそれぞれ設けられている。一対の本係止部318は、フロントホルダ4の本係止突起45bと係止する本係止突起318aと、フロントホルダ4の本係止突起45bを挿入方向D1にガイドするガイド溝318bと、から構成されている。ガイド溝318bは、幅方向D2の他方側に向かって窪み、第1内壁315、第2内壁316の先端から後端に向かって延在して設けられている。本係止突起318aは、ガイド溝318b内から幅方向D2一方側に向かって突設されている。
【0034】
また、ハウジング3は、筒部319と、筒部319の上面から突出するカムピン51と、をさらに有している。筒部319は、筒長さ方向が挿入方向D1に沿って設けられ、第1ハウジング側壁304,304間に設けられている。カムピン51は、円柱状に設けられ、後述するフロントホルダ4のカム溝52内に挿入される。
【0035】
次に、フロントホルダ4について説明する。フロントホルダ4は、仮係止位置と、仮係止位置よりも挿入方向D1の後端側の本係止位置と、でハウジング3に係止する。本実施形態では、仮係止位置において、フロントホルダ4は、図2に示すように、挿入方向D1の先端側がハウジング3から突出する。一方、本係止位置において、フロントホルダ4は、図1に示すように、全部がハウジング3内に収容される。
【0036】
フロントホルダ4は、本係止位置において、ランス302を押し下げてランス302の係止力を高める。フロントホルダ4は、図9に示すように、フロント壁41と、フロント壁41の上端から後端に向けて立設した天井壁42と、フロント壁41の下端から後端に向けて立設した底壁43と、一対の仮係止部44,44と、一対の本係止部45,45と、フロント隔壁46と、を有している。フロント壁41には、相手側端子金具を挿入する挿入穴41aが複数、設けられている。
【0037】
一対の仮係止部44,44は、フロント壁41の幅方向D2の一方側の端部よりも少し他方側と、フロント壁41の幅方向D2の他方側の端部と、からそれぞれ後端に向けて立設した仮係止壁44aと、仮係止壁44aから幅方向D2の一方に向けて突出する仮係止突起44bと、から構成されている。フロントホルダ4の仮係止突起44bと、ハウジング3の仮係止突起317aと、が係止する仮係止位置で、フロントホルダ4がハウジング3に係止される。
【0038】
一対の本係止部45,45は、フロント壁41の幅方向D2の一方側の端部と、フロント壁41の幅方向D2の他端側の端部よりも少し一方側と、からそれぞれ後端に向けて立設した本係止壁45aと、本係止壁45aから幅方向D2の他方に向けて突出する本係止突起45bと、から構成されている。本係止壁45aは、仮係止壁44aよりも下方に設けられている。フロントホルダ4の本係止突起45bと、ハウジング3の本係止突起318aと、が係止する本係止位置で、フロントホルダ4がハウジング3に係止される。
【0039】
フロント隔壁46は、フロント壁41から後端に向けて突出し、天井壁42及び底壁43間を上下方向D3に仕切る。また、上述したフロント隔壁46及び底壁43には、挿入方向D1に延び、幅方向D2に複数並べられた複数の位置決め壁47aが設けられている。この位置決め壁47a間が端子金具2の幅方向D2を位置決めする位置決め溝47b(フロント位置決め部)となる。位置決め溝47bは、端子収容室301毎に設けられる。
【0040】
底壁43及びフロント隔壁46は、天井壁42よりも挿入方向D1に長く設けられ、天井壁42よりも挿入方向D1後端側に突出して設けられている。また、底壁43及びフロント隔壁46の後端側は、端子収容室301毎に設けた切欠部48が設けられ、上述したハウジング3に設けた位置決め凸部312と嵌合する。また、天井壁42及びフロント隔壁46には、ランス302を下側に押し下げるためのランス押下部49が突設されている。ランス押下部49は、端子収容室301毎に設けられている。
【0041】
天井壁42に設けられたランス押下部49は、天井壁42の後端面から突設されている。また、フロント隔壁46は、天井壁42の後端面より先端側が後端側よりも厚く設けられ、段差面が設けられている。フロント隔壁46に設けられたランス押下部49は、この段差面から後端に向かって突設されている。
【0042】
また、上述した天井壁42には、カムピン51が挿入されるカム溝52が設けられている。カム溝52の後端部は、図11及び図13に示すように、天井壁42の後端から先端に向かって挿入方向D1に沿って設けられている。また、カム溝52の後端部は、先端に向かうに従って幅方向D2の一方側の端部に近づくように斜めに形成されている。このカムピン51とカム溝52とが、フロントホルダ4を仮係止位置から本係止位置までガイドするガイド部5を構成している。ガイド部5は、幅方向D2の他方側(即ち、位置決め溝47b内に収容された端子金具2のスタビライザ24がランス302に近づく側)に移動するようにフロントホルダ4をガイドして、本係止位置でランス302をスタビライザ24の後端に係止させる。
【0043】
次に、上述した構成のコネクタ1の組み立てについて説明する。まず、フロントホルダ4をハウジング3の先端側から挿入する。このとき、フロントホルダ4に設けたカム溝52の後端からハウジング3に設けたカムピン51を挿入する。仮係止位置までは、図11に示すように、カムピン51は、カム溝52の挿入方向D1に沿った後端部に沿って移動する。これにより、フロントホルダ4は仮係止位置まで挿入方向D1に沿って真っすぐに移動する。
【0044】
フロントホルダ4が仮係止位置に到達すると、フロントホルダ4に設けた仮係止突起44bと、ハウジング3に設けた仮係止突起317aとが係止して、フロントホルダ4がハウジング3に仮係止される。図4に示すように、仮係止位置において、ランス押下部49はランス302よりも先端側に位置し、ランス302を押し下げない。また、フロントホルダ4の底壁43の上面とハウジング3の底壁303の後端部の上面と、は略同一平面上に配置される。フロントホルダ4のフロント隔壁46の上面とハウジング3の第1ハウジング隔壁309の上面と、も略同一平面上に配置される。
【0045】
その後、端子金具2をハウジング3の後端から挿入する。このとき、スタビライザ24が上方に立設する姿勢で端子金具2をハウジング3内に挿入する。スタビライザ24は、溝部311内に挿入される。挿入し始めにおいては、端子金具2は、第2ハウジング側壁305、第2ハウジング隔壁310によって幅方向D2が位置決めされる。端子金具2は、第2ハウジング側壁305、第2ハウジング隔壁310によって、スタビライザ24とランス302とが挿入方向D1に対向しない位置に位置決めされる。
【0046】
端子金具2を先端側に向けてさらに挿入すると、図4に示すように、端子金具2の先端がランス302の傾斜面に形成された下面に当接する。端子金具2をさらに挿入すると、端子金具2によりランス302が上方に撓む。上述したようにスタビライザ24とランス302とは挿入方向D1に対向しないので、スタビライザ24がランス302に当たることがない。
【0047】
端子金具2をさらに挿入すると、図10及び図14に示すように、端子金具2がフロントホルダ4の位置決め溝47b内に挿入される。また、端子金具2の箱部21がランス302よりも先端側まで位置すると、ランス302が下方に復元される。端子金具2をさらに挿入すると、図5に示すように、端子金具2がフロントホルダ4のフロント壁41に当接して、それ以上挿入できないようになっている。位置決め溝47bは、図10に示すように、仮係止位置において、端子金具2をスタビライザ24とランス302とが挿入方向D1に対向しない位置に位置決めする。
【0048】
その後、フロントホルダ4を本係止位置まで挿入させる。本係止位置までは、図13に示すように、カムピン51は、カム溝52の挿入方向D1に対して傾いて形成された先端部に沿って移動する。これにより、フロントホルダ4は、後端に向かうに従って幅方向D2他方側に近づくように移動する。これにより、図12に示すように、本係止位置において、位置決め溝47bに位置決めされた端子金具2はスタビライザ24とランス302とが挿入方向D1に対向し、ランス302が箱部21及びスタビライザ24双方の後端を係止する。
【0049】
上述した実施形態によれば、ガイド部5が、フロントホルダ4を、幅方向D2において位置決め溝47bにより位置決めされた端子金具2のスタビライザ24とランス302とが近づく側に移動させながら、仮係止位置から本係止位置までガイドする。これにより、ランス302とスタビライザ24とが当たらないように端子金具2を仮係止位置にあるフロントホルダ4の位置決め溝47bまで挿入した後、フロントホルダ4を本係止位置まで移動させて、本係止位置でランス302をスタビライザ24及び箱部21の後端に係止させることができる。従って、端子金具2の挿入時は、ランス302がスタビライザ24に当たらないようにして端子金具2の挿入力の低減を図ることができる。フロントホルダ4を本係止位置まで移動させると、ランス302がスタビライザ24の挿入方向D1の後端側を係止して、係止力の向上を図ることができる。
【0050】
また、上述した実施形態によれば、位置決め溝47bは、仮係止位置において挿入方向D1にスタビライザ24とランス302とが対向しない位置に端子金具2を位置決めする。これにより、ランス302とスタビライザ24とが当たらないように端子金具2を仮係止位置にあるフロントホルダ4まで挿入したとき、位置決め溝47bに挿入することができる。
【0051】
また、上述した実施形態によれば、幅方向D2における端子金具2の位置を決める第2ハウジング側壁305、第2ハウジング隔壁310が、挿入方向D1にスタビライザ24とランス302とが対向しない位置に端子金具2を位置決めする。これにより、ランス302とスタビライザ24とが当たらないように端子金具2をハウジング3内に挿入することができる。
【0052】
また、上述した実施形態によれば、ガイド部5がカム溝52とカムピン51とから構成されている。これにより、簡単な構成でガイド部5を設けることができる。
【0053】
また、上述した実施形態によれば、スタビライザ24が箱部21の後端に設けられている。これにより、端子金具2の箱部21の先端がランス302を上下方向D3に変形させる。箱部21がランス302よりも先端側になるまで端子金具2を挿入すると、ランス302が復元する。その後、フロントホルダ4を仮係止位置から本係止位置に移動させると、端子金具2が幅方向D2他方側に移動して、ランス302がスタビライザ24を係止することにより、端子金具2の保持力を向上できる。
【0054】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0055】
上述した実施形態によれば、ハウジング3は、第2ハウジング隔壁310を設けて、端子金具2の幅方向D2の位置決めを行っていたが、これに限ったものではない。第2ハウジング隔壁310を設けることは必須ではなく、なくてもよい。
【0056】
また、上述した実施形態によれば、ランス302は、スタビライザ24と箱部21との双方を係止していたが、これに限ったものではない。ランス302は、スタビライザ24のみを係止するようにしてもよい。
【0057】
ここで、上述した本発明に係るコネクタの実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[5]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
端子金具(2)と、
前記端子金具(2)を挿入可能な端子収容室(301)と、前記端子金具(2)の挿入方向(D1)に交差する撓み方向(D3)に撓むことが可能になるように、前記挿入方向(D1)の後端が固定端となり、前記挿入方向(D1)の先端側が自由端となる片持ち梁状に構成され、前記端子金具(2)の前記挿入方向(D1)の後端側を係止する係止片(302)と、を有するハウジング(3)と、
仮係止位置と、前記仮係止位置よりも前記挿入方向(D1)の後端側の本係止位置と、で前記ハウジング(3)に係止するフロントホルダ(4)と、を備えたコネクタ(1)において、
前記端子金具(2)は、前記撓み方向(D3)に突出する突出部(24)を有し、
前記フロントホルダ(4)は、前記挿入方向(D1)及び前記撓み方向(D3)の双方に交差する交差方向(D2)における前記端子金具(2)の位置を決めるフロント位置決め部(47b)を有し、
前記フロントホルダ(4)を前記仮係止位置から前記本係止位置までガイドするガイド部(5)をさらに備え、
前記ガイド部は、前記交差方向(D2)において、前記フロント位置決め部(47b)により位置決めされた前記端子金具(2)の前記突出部(24)が前記係止片(302)に近づく側に移動するように前記フロントホルダ(4)をガイドして、前記本係止位置で前記係止片(302)を前記突出部(24)の後端に係止させる、
コネクタ(1)。
[2]
[1]に記載のコネクタ(1)において、
前記フロント位置決め部(47b)は、前記仮係止位置において前記挿入方向(D1)に前記突出部(24)と前記係止片(302)とが対向しない位置に前記端子金具(2)を位置決めする、
コネクタ(1)。
[3]
[1]又は[2]に記載のコネクタ(1)において、
前記ハウジング(3)は、前記交差方向(D2)における前記端子金具(2)の位置を決めるハウジング位置決め部(305、310)を有し、
前記ハウジング位置決め部(305、310)は、前記挿入方向(D1)に前記突出部(24)と前記係止片(302)とが対向しない位置に前記端子金具(2)を位置決めする、
コネクタ(1)。
[4]
[1]~[3]何れか1項に記載のコネクタ(1)において、
前記ガイド部(5)は、前記フロントホルダ(4)及び前記ハウジング(3)の何れか一方に設けられたカム溝(52)と、何れか他方に設けられ、前記カム溝(52)に挿入されるカムピン(51)と、から構成される、
コネクタ(1)。
[5]
[1]~[4]何れか1項に記載のコネクタ(1)において、
前記端子金具(2)が、相手方端子金具が挿入される箱部(21)を有し、
前記突出部(24)が、前記箱部の前記挿入方向(D1)の後端から突出して設けられた、
コネクタ(1)。
【符号の説明】
【0058】
1 コネクタ
2 端子金具
3 ハウジング
4 フロントホルダ
5 ガイド部
21 箱部
24 スタビライザ(突出部)
47b 位置決め溝(フロント位置決め部)
51 カムピン
52 カム溝
301 端子収容室
302 ランス(係止片)
305 第2ハウジング側壁(ハウジング位置決め部)
310 第2ハウジング隔壁(ハウジング位置決め部)
D1 挿入方向
D2 幅方向(交差方向)
D3 上下方向(撓み方向)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14