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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】監視システム及び監視方法
(51)【国際特許分類】
   B61L 25/02 20060101AFI20240116BHJP
   B60L 15/40 20060101ALI20240116BHJP
   H04B 5/28 20240101ALI20240116BHJP
   H04B 3/46 20150101ALI20240116BHJP
【FI】
B61L25/02 Z
B60L15/40 Z
H04B5/00 A
H04B3/46
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020136926
(22)【出願日】2020-08-14
(65)【公開番号】P2022032764
(43)【公開日】2022-02-25
【審査請求日】2023-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100093104
【弁理士】
【氏名又は名称】船津 暢宏
(72)【発明者】
【氏名】坪井 敏之
【審査官】井古田 裕昭
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/173694(WO,A1)
【文献】特開2017-188846(JP,A)
【文献】特開2011-024154(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 25/02
B60L 15/40
H04B 5/00
H04B 3/46
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
列車に設けられた車上装置と地上装置の間で通信を行う列車無線設備を監視する監視システムであって、
前記列車に、前記列車の外側を撮影する監視カメラを備え、
前記車上装置が、無線信号を受信すると、受信品質を測定し、前記測定された日時及び地点情報を付して前記地上装置に送信すると共に、異常が想定される地点の地点情報である異常地点情報を付した撮影指示を受信すると、前記監視カメラに前記異常が想定される地点に設けられた設備を撮影させ、前記撮影された映像データを、前記異常地点情報を付して前記地上装置に送信し、
前記地上装置が、複数の前記列車から受信した受信品質の情報を、付された地点情報毎に対応付けて記憶すると共に、前記受信品質の情報において受信品質が不良となった地点を検出し、当該地点を前記異常が想定される地点として、前記異常地点情報を付した撮影指示を運行する前記列車に送信することを特徴とする監視システム。
【請求項2】
地上装置は、列車において撮影された映像データを受信すると、前記映像データを異常地点情報毎に記憶し、特定の地点について前記映像データの閲覧要求があると、前記特定の地点に対応する異常地点情報の前記映像データと前記特定の地点に対応する地点情報の受信品質を前記要求元に出力して閲覧させることを特徴とする請求項1記載の監視システム。
【請求項3】
設備が、隧道に設けられた漏洩同軸ケーブルであることを特徴とする請求項1又は2記載の監視システム。
【請求項4】
受信品質が、受信信号強度及び/又はビット誤り率であることを特徴とする請求1乃至3のいずれか記載の監視システム。
【請求項5】
地上装置が、蓄積された受信品質の情報から、現時点での受信品質の値及び前記受信品質の変化状況に基づいて、前記受信品質が不良となるまでの期間を予測することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか記載の監視システム。
【請求項6】
列車に設けられた車上装置と地上装置との間で通信を行う列車無線設備を監視する監視システムにおける監視方法であって、
前記車上装置が、無線信号を受信すると、受信品質を測定し、前記測定された日時及び地点情報を付して前記地上装置に送信し、
前記地上装置が、複数の前記列車から受信した受信品質の情報を、付された地点情報毎に対応付けて記憶すると共に、前記受信品質の情報において受信品質が不良となった地点を検出し、当該地点を異常が想定される地点として、異常地点情報を付した撮影指示を運行する前記列車に送信し、
前記車上装置が、前記異常地点情報を付した撮影指示を受信すると、前記列車に設けられた監視カメラに前記異常が想定される地点に設けられた設備を撮影させ、前記撮影された映像データを、前記異常地点情報を付して前記地上装置に送信することを特徴とする監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、列車無線設備を監視する監視システムに係り、特に異常が想定される地点の漏洩同軸ケーブル設備の映像データを効率よく収集して、保守作業の効率を向上させることができる監視システム及び監視方法監視システム及び監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
[先行技術の説明]
従来、地下鉄向けの列車無線では、漏洩同軸ケーブル(LCX;Leaky Coaxial Cable)が広く用いられており、LCXを介して基地局と車上局間で無線通信を行うことで、地上と車両間の情報伝送を実現している。
【0003】
列車無線システムでは、位置情報等の車両状態や音声データの情報伝送を行うが、LCXの状態を示す情報は伝送していない。
そのため、列車無線の不通区間が発生した場合には、一旦当該不通区間に保守員が出向き、LCXの状態や損傷等を確認し、必要な準備を行って、再度不通区間に出向いて対策を施すようになっている。
【0004】
[関連技術]
尚、漏洩同軸ケーブルの不具合に関する従来技術としては、特開2004-328121号公報「無線中継方式」(特許文献1)がある。
特許文献1には、LCXに不具合が生じても、当該箇所より基地局に近い箇所ではダイバーシチ受信を可能とする無線中継方式が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2004-328121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、従来の監視システムでは、LCXの状態を示す情報を伝送していないため、不通区間が生じた場合には、保守員が実際に現地に行かないと状況の確認ができず、保守作業の効率がよくないという問題点があった。
【0007】
尚、特許文献1には、列車において測定した受信品質を収集し、受信品質が劣化している地点を検出し、当該地点の地点情報を付して撮影指示を運行中の列車に出力し、列車が当該地点に設けられたLCXを撮影し、その映像を収集して保守員に閲覧させることは記載されていない。
【0008】
本発明は上記実状に鑑みて為されたもので、異常が想定される地点の漏洩同軸ケーブル設備の映像データを効率よく収集して、保守作業の効率を向上させることができる監視システム及び監視方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記従来例の問題点を解決するための本発明は、列車に設けられた車上装置と地上装置の間で通信を行う列車無線設備を監視する監視システムであって、列車に、列車の外側を撮影する監視カメラを備え、車上装置が、無線信号を受信すると、受信品質を測定し、測定された日時及び地点情報を付して地上装置に送信すると共に、異常が想定される地点の地点情報である異常地点情報を付した撮影指示を受信すると、監視カメラに異常が想定される地点に設けられた設備を撮影させ、撮影された映像データを、異常地点情報を付して地上装置に送信し、地上装置が、複数の列車から受信した受信品質の情報を、付された地点情報毎に対応付けて記憶すると共に、受信品質の情報において受信品質が不良となった地点を検出し、当該地点を前記異常が想定される地点として、前記異常地点情報を付した撮影指示を運行する前記列車に送信することを特徴としている。
【0010】
また、本発明は、上記監視システムにおいて、地上装置は、列車において撮影された映像データを受信すると、映像データを異常地点情報毎に記憶し、特定の地点について映像データの閲覧要求があると、特定の地点に対応する異常地点情報の映像データと特定の地点に対応する地点情報の受信品質を要求元に出力して閲覧させることを特徴としている。
【0011】
また、本発明は、上記監視システムにおいて、設備が、隧道に設けられた漏洩同軸ケーブルであることを特徴としている。
【0012】
また、本発明は、上記監視システムにおいて、受信品質が、受信信号強度及び/又はビット誤り率であることを特徴としている。
【0013】
また、本発明は、上記監視システムにおいて、地上装置が、蓄積された受信品質の情報から、現時点での受信品質の値及び受信品質の変化状況に基づいて、受信品質が不良となるまでの期間を予測することを特徴としている。
【0014】
また、本発明は、列車に設けられた車上装置と地上装置との間で通信を行う列車無線設備を監視する監視システムにおける監視方法であって、車上装置が、無線信号を受信すると、受信品質を測定し、測定された日時及び地点情報を付して地上装置に送信し、地上装置が、複数の列車から受信した受信品質の情報を、付された地点情報毎に対応付けて記憶すると共に、受信品質の情報において受信品質が不良となった地点を検出し、当該地点を異常が想定される地点として、異常地点情報を付した撮影指示を運行する列車に送信し、車上装置が、異常地点情報を付した撮影指示を受信すると、列車に設けられた監視カメラに異常が想定される地点に設けられた設備を撮影させ、撮影された映像データを、異常地点情報を付して地上装置に送信することを特徴としている。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、列車に設けられた車上装置と地上装置の間で通信を行う列車無線設備を監視する監視システムであって、列車に、列車の外側を撮影する監視カメラを備え、車上装置が、無線信号を受信すると、受信品質を測定し、測定された日時及び地点情報を付して地上装置に送信すると共に、異常が想定される地点の地点情報である異常地点情報を付した撮影指示を受信すると、監視カメラに異常が想定される地点に設けられた設備を撮影させ、撮影された映像データを、異常地点情報を付して地上装置に送信し、地上装置が、複数の列車から受信した受信品質の情報を、付された地点情報毎に対応付けて記憶すると共に、受信品質の情報において受信品質が不良となった地点を検出し、当該地点を前記異常が想定される地点として、前記異常地点情報を付した撮影指示を運行する前記列車に送信する監視システムとしているので、異常が想定される地点の設備を、走行する複数の列車に撮影させて、当該設備の多くの映像データを効率的に収集でき、保守作業の効率を向上させることができる効果がある。
【0016】
また、本発明によれば、地上装置は、列車において撮影された映像データを受信すると、映像データを異常地点情報毎に記憶し、特定の地点について映像データの閲覧要求があると、特定の地点に対応する異常地点情報の映像データと特定の地点に対応する地点情報の受信品質を要求元に出力して閲覧させる上記監視システムとしているので、保守作業員が実際に現地に行く前に、不良個所の映像を目視で確認でき、不良の原因を予測したり、必要な治具を準備してから現地作業ができ、保守作業の効率を向上させる効果があり、現地に行く前に、異常地点の映像データと受信品質とを認識でき、保守作業の効率を向上させることができる効果がある。
【0017】
また、本発明によれば、地上装置が、蓄積された受信品質の情報から、現時点での受信品質の値及び受信品質の変化状況に基づいて、受信品質が不良となるまでの期間を予測する上記監視システムとしているので、保守作業員は、不良が発生するタイミングを事前に知ることができ、保守作業を計画的且つ効率的に行うことができる効果がある。
【0018】
また、本発明によれば、列車に設けられた車上装置と地上装置との間で通信を行う列車無線設備を監視する監視システムにおける監視方法であって、車上装置が、無線信号を受信すると、受信品質を測定し、測定された日時及び地点情報を付して地上装置に送信し、地上装置が、複数の列車から受信した受信品質の情報を、付された地点情報毎に対応付けて記憶すると共に、受信品質の情報において受信品質が不良となった地点を検出し、当該地点を異常が想定される地点として、異常地点情報を付した撮影指示を運行する列車に送信し、車上装置が、異常地点情報を付した撮影指示を受信すると、列車に設けられた監視カメラに異常が想定される地点に設けられた設備を撮影させ、撮影された映像データを、異常地点情報を付して地上装置に送信する監視方法としているので、異常が想定される地点を走行する複数の列車に撮影させて、異常地点の多くの映像データを効率的に収集でき、保守作業の効率を向上させることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本監視システムの構成を示す説明図である。
図2】地上設備10の構成を示す説明図である。
図3】監視カメラによるLCX撮影を示す模式説明図である。
図4】車上設備の概略構成を示す説明図である。
図5】受信品質一覧情報の例を示す説明図である。
図6】異常地点一覧情報の例を示す説明図である。
図7】本監視システムにおけるシーケンスを示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る監視システム(本監視システム)は、列車の側面に外側を撮影するカメラを設け、走行中にRSSI,BER等の測定を行って位置・時刻情報に対応付けて中央処理装置に送信し、中央処理装置が、受信したRSSI等を記憶して、複数の列車で測定されたRSSI等が予め設定されたしきい値を下回っている地点がある場合には、全列車に異常箇所の位置情報(異常地点情報)を付した撮影指示を通知し、当該撮影指示を受信した列車が、指定された箇所のLCXの撮影を行って中央処理装置に送信し、中央処理装置が、各列車からの映像を受信すると、対応する位置情報やRSSI等と紐づけて記憶する監視システムとしており、LCXの異常が想定される状況において、保守員が現地に出向く前に映像で状況確認を行うことができ、保守に必要な治具等を準備してから現地入りでき、保守作業の効率を向上させることができるものである。
【0021】
また、本発明の実施の形態に係る監視方法(本監視方法)は、本監視システムで行われる監視方法である。
【0022】
[本監視システムの構成:図1
本監視システムの構成について図1を用いて説明する。図1は、本監視システムの構成を示す説明図である。尚、本実施の形態では、本監視システムを地下鉄用の列車無線システムに適用した場合を例として説明する。
図1に示すように、本監視システムは、通常の列車無線システムにLCX監視の機能を追加したものであり、運行管理本部等に設けられた地上設備10と、複数の基地局20-1,20-2,20-3,…20-n(基地局20と記載することもある)と、LCX21と、複数の列車30-1,30-2(列車30と記載することもある)と、ネットワーク40とを備えている。尚、ここでは列車30は2台しか記載していないが、列車の数は制限されるものではない。
【0023】
地上設備10は、列車運行に関わる監視や各種制御を行う複数の設備を備えている。
特に、本監視システムの地上設備10は、LCX21の異常が想定される箇所を検出して、当該箇所の映像情報を収集し、保守作業に利用できるようにしている。地上設備10の構成については後述する。
【0024】
基地局20は、ネットワーク40を介して地上設備10に接続すると共に、複数のLCX21を介して列車30と無線通信を行い、地上設備10と列車30との通信を中継する。ここで、LCX21は、地下鉄などの隧道内壁や地上の線路沿いに設けられている。
ネットワーク40は、地上設備10と基地局20とを接続する。
【0025】
列車30は、車上無線装置を備え、LCX21を介して基地局20と無線通信を行って、地上設備10との間で、位置情報、列車の状態、音声、各種制御データ等を送受信する。
本監視システムでは、特に、列車30は、無線通信における受信品質を測定して位置情報及び時刻情報と共に地上設備10に送信する。
また、本監視システムの列車30は、カメラ(監視カメラ)を備えており、地上設備10からの指示で静止画や動画の撮影を行う。
列車30に設けられた車上設備、及び動作については後述する。
【0026】
そして、本監視システムでは、通常の列車無線システムと同様に、地上設備10と列車30との間で位置情報や音声データによる指令や報告などの情報伝達が行われる。
それと共に、本監視システムの特徴として、列車30及び地上設備10の構成及び処理を追加したことにより、受信品質の劣化からLCX21の異常が想定される箇所を検出し、当該箇所の画像を収集して保守作業に利用可能に蓄積する動作を行うものである。
【0027】
[地上設備10の構成:図2
次に、地上設備10の構成について、図2を用いて説明する。図2は、地上設備10の構成を示す説明図である。
図2に示すように、地上設備10は、中央制御装置11と、列車・保守無線監視端末13と、車上動態監視情報端末14と、データサーバ15と、列車無線操作盤16と、ネットワーク17とを備えている。
地上設備10は、請求項に記載した地上装置に相当している。
【0028】
中央処理装置11は、列車無線システム全体の制御を行う。本監視システムでは、列車30から受信した無線品質の情報に基づいてLCX21の異常を検出し、すべての列車30に対して当該箇所の撮影を行うよう指示を出力し、映像を受信して蓄積する処理を行う。
中央処理装置11の処理については後述する。
【0029】
列車・保守無線監視端末13は、保守作業員が操作する端末であり、本監視システムでは、LCX21の異常が予想される地点毎に、複数の列車30で撮影した映像を、時刻、受信品質と共に閲覧可能としている。
【0030】
車上動態監視情報端末14は、従来と同様の部分であり、運行管理本部に設けられ、列車の現在位置を管理する。
データサーバ15は、列車の運行管理に必要な各種情報を記憶すると共に、本監視システムでは、列車から受信した通信品質情報や映像情報を記憶する。
列車無線操作盤16は、従来と同様の部分であり、運行管理本部の担当者が列車30の車上装置と通信を行う操作盤である。
ネットワーク17は、中央制御装置11と運行管理本部の各部、及び各所の車両基地(図示せず)とを接続するネットワークである。
【0031】
[監視カメラによるLCX撮影:図3
次に、列車30におけるLCXの撮影について図3を用いて説明する。図3は、監視カメラによるLCX撮影を示す模式説明図である。
図3は、地下鉄の隧道内を模式的に示したものであり、隧道50の側壁にLCX21が線路に沿って設けられている。
【0032】
また、本監視システムの列車30には、側面にLCX撮影用監視カメラ(監視カメラ)35が設けられている。監視カメラ35は、LCX21の撮影に最適となるよう、設置位置、パン、チルト、ズーム等が調整されている。
そして、列車30は、中央制御装置11から異常が予想される箇所の撮影指示を受信すると、運行中に、当該箇所の撮影を行うものである。
【0033】
[車上設備の構成:図4
次に、列車30に設けられる車上設備の構成について図4を用いて説明する。図4は、車上設備の概略構成を示す説明図である。尚、ここでは、本監視システムの動作に関連する構成のみを示している。
図4に示すように、車上設備は、列車無線アンテナ31と、列車無線車上装置32と、無線LANアンテナ33と、無線LAN装置34と、監視カメラ(カメラ)35と、制御装置36と、記録装置(1)37と、記録装置(2)38と、HUB39とを備えている。
尚、車上設備の内、監視カメラ35以外の構成が請求項に記載した車上装置に相当している。
【0034】
車上設備の各部について説明する。
列車無線装置32は、列車無線アンテナ31及びLCX21を介して基地局20との無線信号の送受信を行う。
また、列車無線装置32は、基地局20からの無線信号を受信した際に、受信品質を測定する。受信品質としては、例えばRSSI(Received Signal Strength Indicator:受信信号強度)、同期ワードのBER(Bit Error Rate:ビット誤り率)等がある。これらをまとめてRSSI等と称することがある。
【0035】
LCX21に不具合が発生した場合、受信信号のRSSIやBERは著しく劣化する。本監視システムは、このことを利用して、複数の列車30からRSSI等を取得して受信品質の不良を検出し、LCX21の不具合に迅速に対応できるようしている。
【0036】
尚、列車無線では事業者ごとにコードが決められており、それに基づいてスクランブルをかけて無線通信を行っている。
そのため、本監視システムでは、通常運用においては、スクランブルがかかった信号を受信してRSSI等を測定しているが、スクランブルがかからない信号であっても同様に測定可能である。
【0037】
無線LAN装置34は、無線LANアンテナ33を介して、無線LANによる送受信を行う。
本監視システムにおいては、列車30が車両基地に戻ってきた際に、無線LAN装置34が、制御装置36からの指示で、記録装置(2)38に記憶されている画像情報を中央処理装置11に送信する。
【0038】
監視カメラ35は、上述したように、LCX21の撮影を行うカメラであり、静止画像又は動画像を撮影する。
制御装置36は、各部を制御して中央処理装置11へ通信品質の情報を報告し、中央処理装置11からの撮影指示に従って、指定された箇所のLCX21の撮影を行わせる。制御装置36の動作については後述する。
【0039】
記録装置(1)37は、列車無線システムで送受信する位置情報や列車の状態を示す情報、更にRSSI,BERを記憶する。
記録装置(2)38は、中央処理装置11からの指示によって撮影された画像及びそれに対応する時刻情報、位置情報を記憶する。
本監視システムでは、列車の運行に影響を与えないよう、LCX21の映像データは、列車無線システムで送受信される情報とは別に記憶しておくようにしている。
また、HUB39は、車上設備の各部を接続する。
【0040】
[本監視システムの動作:図1,2,4]
次に、本監視システムの動作について図1,2,4を用いて説明する。
本監視システムでは、列車30の列車無線装置32が、運行中に列車無線を受信すると、RSSI及びBERを測定して、受信データと共にRSSI,BERを制御装置36に出力する。
尚、本実施の形態では、RSSIとBERの両方を測定することとしているが、いずれか一方としてもよい。
【0041】
制御装置36は、受信データに応じた処理を行うと共に、RSSI等のデータが入力されると、時刻と、取得時の位置情報(地点情報)とを対応付けて記録装置(1)37に記憶する。
更に、制御装置は、RSSI等のデータと、測定された時刻と、測定された地点の地点情報とを紐づけた情報を、中央処理装置11に報告する。報告には列車IDが付される。
【0042】
地点情報は、鉄道で用いられるキロ程、区間IDとする。
例えば、制御装置36は、一定時間毎に車輪が何回転したかをカウントし、当該時間における走行距離を求め、一定時間毎の走行距離を積算して起点からのキロ程を算出し、対応する区間IDを特定する。
地点情報をキロ程、区間IDとすることで、保守員が対応が必要な地点を容易に特定できるものである。
RSSI,BERと、時刻、キロ程、区間IDとを対応付けた(紐づけた)情報を受信品質情報と称する。
【0043】
中央処理装置11は、各列車30から受信品質情報を受信すると、データサーバ15に記憶する。
データサーバ15は、複数の列車30から受信した受信品質情報を統合して、地点情報(キロ程、区間ID)毎に対応付けて一覧情報(受信品質一覧情報)として保存しておく。
【0044】
[受信品質一覧情報:図5]
ここで、データサーバ15に記憶される受信品質一覧情報について図5を用いて説明する。図5は、受信品質一覧情報の例を示す説明図である。
図5に示すように、受信品質情報一覧は、測定地点の地点情報(キロ程、区間ID)毎に、列車ID、時刻、RSSI、BERを記憶した情報である。
これにより、それぞれの地点において、複数の列車から送られてきた受信品質情報を一括して管理できるものである。
【0045】
本監視システムの動作に戻る。
中央処理装置11は、定期的にデータサーバ15の受信品質一覧情報をチェックして、受信品質が不良となっている地点がないか、監視する。
具体的には、中央処理装置11は、予め通信不良を検出するためのRSSI,BERのしきい値をそれぞれ記憶しており、定期的に、RSSI,BERがしきい値を下回った地点があるかどうか、チェックする。
【0046】
そして、複数の列車30においてRSSI,BERがしきい値を下回った地点があれば、中央処理装置11は、当該地点ではLCX21に何らかの不具合が発生している可能性があるとしてアラームを出力する。当該アラームは、運行管理本部の各部に伝達される。
1台の列車でRSSI等が不良となった際に直ちにアラームを出力してもよいが、当該列車側の不具合も考えられるので、複数台で不良となった場合にアラーム出力とすることで、アラームの信頼性を向上させている。
尚、中央制御装置11は、複数の列車30で、RSSIとBERの両方がしきい値を下回った場合に不良を検出してもよいし、いずれか一方が下回った場合に不良としてもよい。
【0047】
更に、中央処理装置11は、複数の列車30で受信品質が不良となった地点があった場合、当該地点を異常が想定される地点として、当該地点の地点情報(キロ程、区間ID)を付して、運行可能な全ての列車30に対して、当該地点の撮影を行うよう、列車無線システムを介して撮影指示を出力する。異常が想定される地点の地点情報を異常地点情報と称する。
尚、全ての列車30は、当該区間を走行する全ての列車30としてもよい。
【0048】
列車30の制御装置36は、中央処理装置11からの撮影指示を受信すると、撮影指示に含まれる異常地点情報(キロ程、区間ID)を記録装置(1)37に記憶し、監視カメラ35に対して当該地点の撮影を行うように指示する。撮影は、運行中に行われる。
具体的には、制御装置36は、撮影指示に含まれるキロ程及び区間IDを読み取って、起点からカウントした車輪の回転数が当該キロ程に対応する回転数に近づいた場合に、監視カメラ35に撮影を行わせる。
【0049】
実際には、当該異常地点だけでなく、その前後を含むように撮影する。これにより、列車30では、LCX21において異常が発生していると予想される箇所のLCX21の画像が撮影される。
上述したように、監視カメラ35は、LCX21の撮影に最適となるよう、設置位置やカメラの向きが設定されており、確実にLCX21の撮影が行われる。
【0050】
そして、制御装置36は、監視カメラ35で撮影した画像データ(確認映像)と、時刻、異常地点情報(キロ程、区間ID)とを対応付けて記録装置(2)38に保存する。映像データ、時刻、異常地点情報を対応付けた情報を確認映像情報と称する。
制御装置36は、列車30が車両基地に戻るまでの間、中央処理装置11からの指示があればそれに応じて、LCX21を撮影させ、確認映像情報を記録装置(2)38に保存する。
【0051】
そして、列車30が車両基地に戻った際に、制御装置36は、記録装置(2)38から確認映像情報を読み出して、無線LAN装置34から中央処理装置11に送信させる。
中央処理装置11は、それぞれの列車30から受信した確認映像情報をデータサーバ15に記憶する。
データサーバ15は、複数の列車30から受信した確認映像情報を、地点情報(キロ程、区間ID)毎に対応付けて一覧情報(異常地点一覧情報)として保存しておく。
【0052】
[異常地点一覧情報:図6]
ここで、データサーバ15に記憶される異常地点一覧情報について図6を用いて説明する。図6は、異常地点一覧情報の例を示す説明図である。
図6に示すように、異常地点情報一覧は、中央処理装置11が検出した異常地点情報(キロ程、区間ID)毎に、列車ID、時刻、映像データを記憶した情報である。異常地点を通過した列車が複数あった場合には、当該異常地点に対応して複数の映像データが記憶される。
これにより、LCX21の異常が想定される各地点において、複数の列車から送られてきた異常地点情報を一括して管理できるものである。
【0053】
そして、保守作業員により、列車・保守無線監視端末13から、データサーバ15にアクセスがあり、LCX21に異常が予想される地点(異常地点)の映像データの閲覧が要求されると、データサーバ15は、異常地点の一覧を列車・保守無線監視端末13に閲覧させ、更に、その中から任意の異常地点が選択されると、当該地点の確認映像及び受信品質を表示させる。
【0054】
例えば、データサーバ15への閲覧要求用として、列車・保守無線監視端末13の表示画面に「異常箇所の閲覧」のボタンを用意しておき、当該ボタンがクリックされると、データサーバ15に異常箇所の映像データの閲覧要求が出力される。
データサーバ15は、閲覧要求があると、例えば、異常地点一覧情報に記憶されている地点情報を要求元に一覧表示させ、そこから特定の地点が選択されると、当該地点に対応して記憶されている確認映像を表示させると共に、受信品質一覧情報から当該地点情報に対応するRSSI,BERを読み出して表示させる。
【0055】
尚、確認映像と受信品質を同時に表示させるのではなく、まず確認映像を表示させ、追加で受信品質表示の指示(例えば「受信品質表示」のボタンにより)が入力された場合に、当該地点情報に対応するRSSI,BERを表示させるようにしてもよい。
このようにして閲覧が行われる。
【0056】
これにより、保守作業員は、LCX21の不具合が想定される地点の映像を、時刻と共に複数確認して、外観検査を行うことができ、更にその地点における受信品質(RSSI,BER)も確認することができ、現地に行く前に状況の把握や不良原因の推定を行うことができるものである。
そして、このような準備を行ってから現地に向かうことで、必要な治具の不足を防ぎ、保守作業を迅速に行うことができ、列車無線の不良状態を早期に解消できるものである。
【0057】
[不良発生時期の予測]
更に、本監視システムでは、蓄積された受信品質情報を解析して、LCX21の不良発生時期を予測する。
具体的には、列車・保守無線監視端末13は、データサーバ15に蓄積された受信品質情報を参照し、地点毎のRSSI,BERの変化状況に基づいて、その劣化の速度から異常となる時期を予測する。
【0058】
予測方法としては、それまでの実績から、RSSI,BERの変化状況と、RSSI,BERがしきい値を下回る(不良発生)までの時間を算出する数式を求めておき、当該数式に現在の劣化速度に対する不良発生までの時間を算出し、不良発生時期を予測するようにしてもよい。
また、不良発生に至るまでの時間に対する大量のRSSI,BERの変化の状況(その時点での値や変化の傾き)を教師データとして、人工知能(AI:Artificial Intelligence)により機械学習させ、不良発生推定モデルを生成し、そのモデルを用いて、不良発生時期を予測するようにしてもよい。
この処理も、RSSI,BERの両方について行って推定してもよいし、一方のみで推定してもよい。
【0059】
これにより、各地点におけるLCX21がいつ頃不具合となるのか、目安とすることができ、保守作業を計画的、効率的に行うことができるものである。
尚、ここでは、列車・保守無線監視端末13が不良発生時期の予測処理を行うものとして記載したが、中央処理装置11で行う構成としてもよい。
【0060】
[本監視システムにおけるシーケンス:図7]
次に、本監視システムにおけるシーケンスについて図7を用いて説明する。図7は、本監視システムにおけるシーケンスを示すシーケンス図である。
ここでは、流れをわかりやすく説明するために、特定の列車(列車A)と、地上設備(中央処理装置11)と、全列車の動作を示すが、実際には列車Aは全列車の一部であるため、全列車の動作も行うものである。
【0061】
図7に示すように、列車Aが運行中に列車無線を受信すると、RSSI,BERを測定し(S11)、時刻及び地点情報(キロ程、区間ID)と紐づけて記録装置(1)37に受信品質情報として保存する(S12)。
そして、列車Aは、記録装置(1)に保存した受信品質情報を、列車無線で地上設備に送信する(S13)。
【0062】
地上設備は、列車Aからの受信品質情報を受信すると、データサーバ15に保存し、複数の列車からの受信品質情報を統合して、地点情報毎の受信品質を表す受信品質一覧情報を生成する(S14)。
そして、地上設備は、受信品質一覧情報を参照して、複数列車において受信品質が不良となった地点があれば、アラームを出力する(S15)。
更に、地上設備は、当該地点の地点情報を付した撮影指示を全列車に送信する(S16)。
【0063】
全列車は、地上設備からの撮影指示を受信すると、それに含まれる地点情報を記録装置(1)37に記憶し、当該地点に接近すると、LCX21の撮影を行う(S17)。
そして、全列車は、映像データに時刻と地点情報とを紐づけて、異常地点情報として記録装置(2)38に保存する(S18)。
その後、車両基地に戻ると、各列車は、無線LANによって異常地点情報を地上設備に送信する(S19)。
【0064】
地上設備は、各列車から異常地点情報を受信すると、データサーバ15に保存し、全列車からの異常地点情報を統合して、地点情報毎の確認映像を複数記憶した異常地点一覧情報を生成する。
これにより、地点情報をキーとして、時刻、RSSI,BERの情報と、複数の列車30によって撮影された確認映像とが紐づけられて、一元管理されるものである。
【0065】
そして、列車・保守無線監視端末13から閲覧要求が入力されると、データサーバ15は、異常地点一覧情報を閲覧させ、更にRSSI等の要求が入力されると、受信品質一覧情報から地点情報が一致するRSSI等を読み出して出力する。
このようにして、本監視システムのシーケンスが行われるものである。
【0066】
[実施の形態の効果]
本監視システム及び本監視方法によれば、列車30の側面に外側を撮影する監視カメラ35を設け、走行中に列車無線を受信するとRSSI,BER等の測定を行って、制御装置36が、位置・時刻情報に対応付けて中央処理装置11に送信し、中央処理装置11が、受信したRSSI等を記憶して、複数の列車30で測定されたRSSI等を統合して受信品質一覧情報としてデータサーバ15に記憶しておき、複数の列車で測定されたRSSI等が設定されたしきい値を下回っている地点がある場合には、アラームを出力すると共に、全列車30に異常箇所の地点情報を付した撮影指示を通知し、当該撮影指示を受信した列車30が、指定された地点のLCX21の撮影を行って中央処理装置11に送信し、中央処理装置11が、各列車30からの映像を受信すると、対応する地点情報やRSSI等と紐づけて異常地点一覧情報として記憶し、列車・保守無線管理端末13からの要求に基づいて、異常地点一覧情報及び受信品質一覧情報を閲覧可能に出力する監視システムとしており、LCX21の異常が想定される状況において、保守員が現地に出向く前に映像で状況確認を行うことができ、保守に必要な治具等を準備してから現地入りでき、保守作業の効率を向上させることができる効果がある。
【0067】
また、本監視システムでは、車上設備の制御装置36が、撮影指示に従って撮影された映像データを列車無線システムで送受信する情報とは別の記録装置(2)38に保存しておき、無線LANを用いて別途送信するようにしているので、列車の運行への影響を抑えることができる効果がある。
【0068】
また、本監視システムでは、列車・保守無線監視端末13が、データサーバ15に蓄積された受信品質情報及び実際に受信品質がしきい値を下回った時期に基づいて、現時点におけるRSSI,BERの値やその変化状況を算出して、LCX21が異常となる(受信品質がしきい値を下回る)時期を予測するようにしているので、保守作業を計画的且つ効率的に行うことができる効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、異常が想定される地点の漏洩同軸ケーブル設備の映像データを効率よく収集して、保守作業の効率を向上させることができる監視システム及び監視方法に適している。
【符号の説明】
【0070】
10…地上設備、 11…中央処理装置、 13…列車・保守無線監視端末、 14…車上動態監視情報端末、 15…データサーバ、 16…列車無線操作盤、 20…基地局、 21…漏洩同軸ケーブル(LCX)、 30…列車、 31…列車無線アンテナ、 32…列車無線装置、 33…無線LANアンテナ、 34…無線LAN装置、 35…監視カメラ、 36…制御装置、 37…記録装置(1)、 38…記録装置(2)、 50…隧道
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7