(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】プラスチック基材用のプライマーコーティング材料系
(51)【国際特許分類】
C09D 175/04 20060101AFI20240116BHJP
C09D 5/00 20060101ALI20240116BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240116BHJP
B05D 7/02 20060101ALI20240116BHJP
C08J 7/043 20200101ALI20240116BHJP
【FI】
C09D175/04
C09D5/00 D
B05D7/24 302T
B05D7/02
C08J7/043 Z
(21)【出願番号】P 2020522911
(86)(22)【出願日】2018-10-23
(86)【国際出願番号】 EP2018078959
(87)【国際公開番号】W WO2019081461
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-10-22
(32)【優先日】2017-10-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】アンデルセン,オードレー
(72)【発明者】
【氏名】ワン,ミヤオ
(72)【発明者】
【氏名】ヴュンネマン,カイ-ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】メルツァー,ユリア
(72)【発明者】
【氏名】リュッケルト,イェンス
(72)【発明者】
【氏名】フェリンク,フレデリク
(72)【発明者】
【氏名】マハツェク,ペーター
(72)【発明者】
【氏名】ミルバイアー,イゴール
(72)【発明者】
【氏名】ボイエルレ,マルク
(72)【発明者】
【氏名】ヤンセン,アンドレアス
(72)【発明者】
【氏名】ブリッケ,タンヤ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフ,トビアス
(72)【発明者】
【氏名】フォッケ,トマス
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-287725(JP,A)
【文献】特開2006-117797(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0138642(US,A1)
【文献】特開2008-200587(JP,A)
【文献】特開2001-262053(JP,A)
【文献】特表2007-536085(JP,A)
【文献】特開2016-117031(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
B05D 7/00
C08J 7/043
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック基材の少なくとも1つの表面を、マルチコート塗装系で少なくとも部分的にコーティングする方法であって、少なくとも以下の工程(1)~(7)、すなわち、
(1)
プライマーコーティング材料組成物を、任意の前処理がされているプラスチック基材の少なくとも1つの表面に、少なくとも部分的に施与する工程(1)、
(2) 工程(1)により施与したプライマーコーティング材料組成物を、好ましくは室温で中間乾燥させて、プライマー膜を得る工程、
(3) 工程(2)の後に得られたプライマー膜に、少なくとも1種のベースコート組成物を施与する工程、
(4) 工程(3)により施与した少なくとも1種のベースコート組成物を、好ましくは室温で中間乾燥させて、少なくとも1種のベースコート膜を得る工程、
(5) 工程(4)の後に得られた少なくとも1種のベースコート膜に、クリアコート組成物を施与する工程、及び
(6) 工程(5)により施与したクリアコート組成物を、好ましくは室温で中間乾燥させて、クリアコート膜を得る工程、及び
(7) 得られたプライマー膜、ベースコート膜(単数又は複数)、及びクリアコート膜を、<100℃の温度で一緒に硬化させる工程、
を含
み、
前記プライマーコーティング材料組成物は、コーティング材料系の少なくとも2つの成分(A)及び(B)を合わせることによって得られ、
成分(A)及び(B)が互いに異なると共に、互いに別々に存在し、
成分(A)が水性であり、イソシアネート基に対して反応性である官能基を含有する少なくとも1種のポリマー(a1)を含み、及び少なくとも1種の顔料(a2)及び/又は少なくとも1種の充填剤(a3)を含み、
及び
成分(B)が非水性であり、2個を超える遊離イソシアネート基を有する少なくとも1種のポリイソシアネート(b1)を含み、そして少なくとも1種の有機溶媒(b2)も含み、
成分(B)が、少なくとも1個の加水分解性ラジカルと少なくとも1個の非加水分解性有機ラジカルとを含有する少なくとも1種のSi含有化合物(b3)をさらに含み、前記少なくとも1種のSi含有化合物(b3)の少なくとも1個の非加水分解性有機ラジカルが、1~24個の炭素原子を有する脂肪族ラジカル、3~12個の炭素原子を有する脂環式ラジカル、6~12個の炭素原子を有する芳香族ラジカル、及び7~18個の炭素原子を有する芳香脂肪族ラジカルからなる群から選択され、これらのラジカルのそれぞれが、イソシアネート基に対して反応性である少なくとも1個の官能基を任意に含有し、そして前記官能基は、加水分解条件下で除去することができる少なくとも1個の保護基で任意にマスクされている、方法。
【請求項2】
成分(A)及び(B)は、イソシアネート基に対して反応性であるポリマー(a1)の官能基の、ポリイソシアネート(b1)のイソシアネート基に対するモル比が、1:2~1:9の範囲にあるように、互いに存在する請求項1に記載
の方法。
【請求項3】
成分(B)が、以下の式(I)
A-R-Si(R’)
x(OR”)
3-x (I)
(式中、
Aは、イソシアネート基に対して反応性の官能基であり、加水分解条件下で除去できる保護基で任意にマスクされているか、又はHであり、
Rは、1~24個又は1~12個の炭素原子を有する脂肪族ラジカル、3~12個の炭素原子を有する脂環式ラジカル、6~12個の炭素原子を有する芳香族ラジカル又は7~18個の炭素原子を有する芳香脂肪族ラジカルであり、
R’は、C
1~C
12-アルキルラジカルの群から選択され、
R”は、メチル又はエチルラジカルであり、及び
xは、0~2の範囲の整数である)
のSi含有化合物(b3)として、少なくとも1種のシラン化合物を含む、請求項1又は2に記載
の方法。
【請求項4】
成分(B)が、Si含有化合物(b3)として少なくとも1種のシラン化合物を含み、Si含有化合物(b3)の少なくとも1個の非加水分解性有機ラジカルが、少なくとも1個のエポキシド基を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項5】
成分(B)が、少なくとも1種のSi含有化合物(b3)を、成分(B)の総質量に基づいて、0.1~20質量%の範囲の量で含む、請求項1から4のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項6】
使用する前記ポリイソシアネート(b1)が、ヘキサメチレンジイソシアネート及び/又はイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート三量体を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項7】
使用する前記ポリマー(a1)が、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリ(メタ)アクリレート及び/又は前記ポリマーのコポリマーからなる群から選択される少なくとも1種のOH官能性ポリマーを含む、請求項1から6のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項8】
前記コーティング材料系が2つの成分(A)及び(B)からなるか、又は2つの成分(A)及び(B)と、(A)及び(B)とは異なると共に、同様に(A)及び(B)とは別々に存在し、希釈に使用するさらなる成分(C)とを含み、前記成分(C)が少なくとも1種の有機溶媒及び/又は水を含む、請求項1から7のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項9】
少なくとも2つの成分(A)及び(B)を合わせることによって調製することができるプライマーコーティング材料組成物のNCO含有量が、この組成物の総固形分含有量に基づいて、1~12質量%の範囲であるように、成分(A)及び(B)が前記コーティング材料系の中で互いに存在する、請求項1から8のいずれか一項に記載
の方法。
【請求項10】
前記工程(5)で使用されるクリアコート組成物は、請求項1に記載の成分(B)を硬化成分として使用する2Kクリアコート材料である、請求項
1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記中間乾燥工程(2)及び(4)及び(6)を、各場合とも室温で空気供給により行い、気流速度が少なくとも0.3m/秒である、請求項
1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
3C1B法であり、正確に1種のベースコート組成物を工程(3)で施与する、請求項
1~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
請求項
1~12のいずれか一項に記載の方法によって得られ、前記プラスチック基材の少なくとも1つの表面上に設けられたマルチコート塗装系。
【請求項14】
請求項
13に記載のマルチコート塗装系で少なくとも部分的にコーティングしたプラスチック基材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コーティング材料系の少なくとも2つの成分(A)及び(B)を合わせることによって得ることができるプライマーコーティング材料組成物の使用方法であって、成分(A)及び(B)が互いに異なると共に互いに別々に存在し、成分(B)が非水性であり、2個を超える遊離イソシアネート基を有する少なくとも1種のポリイソシアネート、少なくとも1種の有機溶媒、及びさらに、少なくとも1種の加水分解性ラジカルと少なくとも1種の非加水分解性有機ラジカルとを含有する少なくとも1種のSi含有化合物を含む、プライマーコーティング材料組成物を、任意の前処理がされているプラスチック基材の少なくとも1つの表面に少なくとも部分的に施与するための使用方法に関するものであり、そのような基材上に対応するコーティングを製造する方法に関するものであり、及びプラスチック基材の少なくとも1つの表面をマルチコート塗装系で少なくとも部分的にコーティングする方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両仕上げの分野では、プラスチックは車両部品用の材料として、及び車両内及び車両上に設置するための構成要素として、及び内部と外部両方の車両付属部品として、確立されたものとなっている。プラスチックは他の材料のように、装飾的な理由(例えば、色及び/又は効果の提供)及び/又は技術的な有用性(例えば、光安定性及び/又は耐候性)から、対応する適したコーティング材料組成物でコーティング及び塗装される。
【0003】
プラスチックを保護するために、プラスチックの準備した(前処理した)表面に、最初に下塗り塗料を塗布するのが通常である。この下塗り塗料は、対応するプライマーコーティング材料(プライマー)をプラスチックに塗布することで得られ、そして典型的には、上述した装飾的な理由及び/又は技術的な有用性を達成するためにプラスチック基材に塗布される、マルチコート塗装系の最初のコートを構成する。
【0004】
プライマーとして、特に水ベースのプライマーとして使用することができるコーティング材料組成物は、例えば米国特許第4,720,528号及びJP2008-031453A1に開示されている。米国特許第4,720,528号は、カプロラクトン修飾アクリルポリマー、アクリルミクロゲル、及びメラミン樹脂を含む、コーティング材料組成物を記載している。これらの組成物の考えられる使用方法として、プラスチック基材のコーティングが挙げられる。JP2008-031453A1は、プライマーとして使用することができ、且つ酸基で修飾したポリオレフィン樹脂を必然的に含む、コーティング材料を開示している。
【0005】
プライマーは典型的には、プラスチック基材に塗布されて硬化し、これはマルチコート塗装系の残りの部分を実際にコーティングする前に、別のコーティングプロセスにおいて行われる。このマルチコート塗装系は、典型的にはプライマーに加え、少なくとも1種の色及び/又は効果ベースコートを含み、その上にクリアコートを含む。ベースコート及びクリアコート材料は、別々に塗布して硬化させるか、又はそれぞれウェットオンウェットプロセスで塗布し、その後2つの膜を一緒に硬化させる(2C1Bプロセス)。プライマーを塗布するために、上流で別のプロセス工程を実施することは、経済的理由から、すなわち伴う時間と費用が大きいことから、不利である。こうした理由から、特に、プライマーを硬化させる別の工程、及びこの硬化を達成するために上流で別のオーブンを関連させて含めることは、特に、自動車OEM仕上げ部門のような、コーティングを必要とするプラスチック基材のOEM製造ラインの仕上げにおいて、望ましくない。
【0006】
プライマー塗布の別の工程に関連する不利な点を取り除くために、先行技術では、ウェットオンウェットプロセスへのプライマー塗布の組み込みを想定する方法をすでに開示している。これらの方法では、プライマー、ベースコート及びクリアコート材料もウェットオンウェットプロセスによって塗布し、その後3つの膜すべてを一緒に硬化させる(3C1Bプロセス)。プラスチック製基材などの基材をコーティングするためのこの種の3C1Bプロセスは、例えば、US2010/0152336A1、WO2015/114989A1、及びUS2006/0257671A1から知られている。さらに、2種の異なるベースコート材料を使用する対応する4C1Bプロセスは、JP2012-000570Aから知られている。
【0007】
さらに、プラスチック製基材をコーティングするためのこの種の3C1Bプロセスは、US2007/0190311A1、US2011/0070450A1、米国特許第5,747,114号、EP1958982A2及びEP2087944A1から知られている。
【0008】
US2007/0190311A1及びUS2011/0070450A1は、有機溶媒に基づく1K[1成分]プライマーコーティング材料を記載している。しかしながら、少なくとも環境上の理由から、そのようなプライマーの使用は望ましくなく、不利である。US2006/0257671A1は、対応するシラン官能性ポリオレフィンなどのシラン官能性の非極性ポリマーを含む1Kプライマーコーティング材料を開示している。米国特許第5,747,114号は、ポリウレタン及び/又はオリゴマーウレタンに基づく物理的に乾燥するプライマーコーティング材料を開示しているが、その化学的構造は、そのプライマーコーティング材料が60~110℃の温度で化学的に架橋することができないようなものである。さらに、2Kプライマーと比較して、1Kプライマーのよくある不利な点は、すべての場合で十分な架橋が欠けていることであり、プライマー、又はプライマーに基づいて構築されたマルチコート塗装系が、例えばその要求される風化品質などに関し、所望される性能技術的特性を常に有するわけではないことである。さらに、特にラインでのOEM仕上げでは、2Kプライマーを1K系よりも効率的に計量することができる。
【0009】
EP1958982A2は、水ベースのプライマーコーティング材料、金属効果顔料を含有する水ベースのベースコート材料、固形分含有量の高いクリアコート材料を連続塗布し、及び3つすべての膜を70~100℃で一緒に硬化させる3C1Bプロセスを開示しており、プライマーコーティング材料及びベースコートから形成された2コート膜の固形分含有量も比較的高く、75%以上である。EP1958982A2に開示されているプロセスの核心は、特定のクリアコート材料、及び特にその調製に使用される有機溶媒の使用に認められ、この使用によって、クリアコート材料中に同様に存在するポリイソシアネートがベースコート中へ部分的に移行することとなり、その硬化に寄与することとなる。EP1958982A2の実施例に記載されているプライマーは、各場合とも1Kプライマーであり、上で記載した不利な点が関連することが多い。さらに、EP1958982A2に記載された比較的高い固形分含有量を使用する場合、噴霧性及び平滑化(leveling)に関して問題が発生するおそれがある。
【0010】
最後に、EP2087944A1は、水ベースのプライマーコーティング材料、水ベースのベースコート材料、及びクリアコート材料を、40~110℃で連続塗布することを想定する3C1Bプロセスを開示している。このプライマーコーティング材料は、ポリオレフィン樹脂及びアクリル樹脂を、互いに規定された質量比で必然的に含む。EP2087944A1の実施例に記載されているプライマーは、各場合とも1Kプライマーであり、上で記載した不利な点が関連することが多い。さらに、水ベースのプライマーコーティング材料中にポリオレフィン樹脂を使用することは、水及び湿気に対する感受性に悪影響を与えるので、不利であることが多い。特に塩素化ポリオレフィンの使用は、この点において不利である。さらに、そのような塩素化ポリオレフィンの使用は、環境上の理由から望ましくない。
【0011】
さらに、先行技術から知られ、プラスチックのコーティングに使用されるプライマーコーティング材料組成物、及びそのようなプライマーとベースコート材料(単数又は複数)とクリアコート材料とを含む対応するマルチコート塗装系は、特に3C1Bプロセスによって対応するプラスチック基材に塗布してある場合、例えば外観及び化学的耐性など、常に満足のいく性能技術特性を有しないことが多い。
【0012】
従って、プライマーコーティング材料組成物に対する要求、及び複数工程1Bプロセス、例えば特に、前述の不利な点なしでプラスチック基材上にマルチコート塗装系を生成するための3C1Bプロセスなどにおける、プライマーコーティング材料組成物の適合性に対する要求が、存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】米国特許第4,720,528号
【文献】JP2008-031453A1
【文献】US2010/0152336A1
【文献】WO2015/114989A1
【文献】US2006/0257671A1
【文献】JP2012-000570A
【文献】US2007/0190311A1
【文献】US2011/0070450A1
【文献】米国特許第5,747,114号
【文献】EP1958982A2
【文献】EP2087944A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、本発明が対処する課題は、プラスチック基材の少なくとも1つの表面への塗布に使用することができ、従来技術から知られている水性プライマーコーティング材料組成物よりも有利な点を有する、水性プライマーコーティング材料組成物を提供することである。本発明が対処する課題は特に、3C1Bプロセスの一部として、使用される従来のプライマーコーティング組成物よりも環境的で経済的なコーティング方法を可能にする、この種の水性プライマーコーティング材料組成物を提供することである。しかしながら同時に、このようなプライマーコーティング、ベースコート材料(単数又は複数)とクリアコート材料とを含むマルチコート塗装系の性能技術特性、例えば特に外観及び化学的耐性などに対する必要条件は、最適に満たされるべきであり、そうでない場合は、いかなる場合でも従来技術と比較して損なわれることなく実際に改善されるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
この課題は、特許請求の範囲で請求される主題、及び以下の明細で記載する前記主題の好ましい実施形態によって解決される。
【0016】
従って本発明の第1の主題は、コーティング材料系の少なくとも2つの成分(A)及び(B)を合わせることによって得ることができるプライマーコーティング材料組成物の使用方法であって、成分(A)及び(B)が互いに異なると共に互いに別々に存在し、
成分(A)が水性であり、イソシアネート基に対して反応性である官能基を含有する少なくとも1種のポリマー(a1)を含み、及び少なくとも1種の顔料(a2)及び/又は少なくとも1種の充填剤(a3)を含み、
成分(B)が非水性であり、2個を超える遊離イソシアネート基を有する少なくとも1種のポリイソシアネート(b1)を含み、そして少なくとも1種の有機溶媒(b2)も含み、
及び成分(B)が、少なくとも1個の加水分解性ラジカルと少なくとも1個の非加水分解性有機ラジカルとを含有する少なくとも1種のSi含有化合物(b3)をさらに含む、プライマーコーティング材料組成物を、
任意の前処理がされているプラスチック基材の少なくとも1つの表面に少なくとも部分的に施与するために使用する方法である。
【0017】
本発明のさらなる主題は、プラスチック基材の少なくとも1つの表面を、プライマーで少なくとも部分的にコーティングする方法であって、少なくとも工程(1)、すなわち、
(1) 本発明で用いるプライマーコーティング材料組成物を、任意の前処理がされているプラスチック基材の少なくとも1つの表面に、少なくとも部分的に施与する工程、
を含む、方法である。
【0018】
本発明のさらなる主題は、プラスチック基材の少なくとも1つの表面を、マルチコート塗装系で少なくとも部分的にコーティングする方法であって、少なくとも以下の工程(1)~(7)、すなわち、
(1) 本発明で用いるプライマーコーティング材料組成物を、任意の前処理がされているプラスチック基材の少なくとも1つの表面に、少なくとも部分的に施与する工程、
(2) 工程(1)により施与したプライマーコーティング材料組成物を、好ましくは室温で中間乾燥させて、プライマー膜を得る工程、
(3) 工程(2)の後に得られたプライマー膜に、少なくとも1種のベースコート組成物を施与する工程、
(4) 工程(3)により施与した少なくとも1種のベースコート組成物を、好ましくは室温で中間乾燥させて、少なくとも1種のベースコート膜を得る工程、
(5) 工程(4)の後に得られた少なくとも1種のベースコート膜に、クリアコート組成物を施与する工程、及び
(6) 工程(5)により施与したクリアコート組成物を、好ましくは室温で中間乾燥させて、クリアコート膜を得る工程、及び
(7) 得られたプライマー膜、ベースコート膜(単数又は複数)、及びクリアコート膜を、<100℃の温度で一緒に硬化させる工程、
を含む、方法である。
【0019】
本発明のさらなる主題は、上述の本発明による使用方法の文脈で使用されるようなコーティング材料系である。本発明のさらなる主題は、前記コーティング材料系の少なくとも成分(A)及び(B)を合わせることにより得ることができる、プライマーコーティング材料組成物である。
【0020】
驚くべきことに、本発明のコーティング材料系は、プライマーコーティング材料組成物の製造に適しており、そしてこのプライマーコーティング材料組成物は、プラスチック基材の少なくとも1つの表面に少なくとも部分的に施与するのに適しており、特に本発明の方法内で、任意の前処理がされているプラスチック基材に、マルチコート塗装系の一部として施与できることが見出された。これは環境上の理由及び経済的な理由の両方で有利である。環境的には、本発明のコーティング材料系から製造されるプライマーコーティング材料組成物は水性組成物に相当するからであり、経済的には、3C1Bプロセスで使用されるプライマーコーティング材料組成物の適合性によって時間とコスト(エネルギー投入)を削減することができるので、経済的に有利となるからである。特に、本発明の方法が、プラスチック部品のOEM仕上げの一部として、又は自動車車体及び/又はその部品のOEM製造ライン仕上げ内のプラスチック部品の仕上げの一部として用いられる場合、施与したすべての膜を一緒に硬化する工程により、すべての膜を硬化させるのに単一のオーブンのみを使用することが可能である。
【0021】
驚くべきことに、得られるプライマーコーティング、及びプライマーコーティング、ベースコート材料(単数又は複数)とクリアコート材料とで構成されるマルチコート塗装系の、両方の性能技術特性に対する必要条件が最適に満たされ、これらの特性に関して特に観察される不利な点はなく、しかしその代わりに、特に外観、色合い、ストーンチップ耐性、及び化学的耐性に関して観察される有利な点が確かに存在することが、さらに見出された。特に少なくとも1種のSi含有化合物(b3)の存在によってこれが達成されることは、驚くべきことであった。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明の意味において、特に本発明のコーティング材料系及びそれから得ることができる本発明のコーティング材料組成物に関して、「含む」という用語は、好ましくは「からなる」の意味を有する。例えば、本発明で用いるコーティング材料系の成分(A)及び(B)に関して、そこに必須成分として含まれる構成成分((A)の場合、ポリマー(a1)、水、顔料(a2)及び/又は充填剤(a3)であり、(B)の場合、ポリイソシアネート(b1)、有機溶媒(b2)、及びSi含有化合物(b3)である)に加えて、1種以上のさらなる構成成分が、以下に特定するように、これらの成分中に任意に存在することがある。これらの構成成分はすべて、以下に述べるように、その好ましい実施形態においてそれぞれ存在する。本発明のコーティング材料系から得ることができる本発明のコーティング材料組成物に関しても、同様のことが言える。
【0023】
基材
本発明により用いる基材は、好適には、慣例的に用いられ、当業者に知られているあらゆるプラスチック基材である。「プラスチック基材」又は「プラスチック製の基材」(以下、「本発明の基材」とも称する)は、本発明の目的において、好ましくは、少なくとも1種のプラスチックから構成される、又は少なくとも1種のプラスチックに基づく基材である。より具体的には、そのような基材は、少なくとも1つのプラスチック製の表面を有するプラスチック基材である。当該のプラスチックとして、当業者に知られているあらゆる慣例のプラスチック、特にポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリウレタン(PU)又は(PU-RIM)、ガラス繊維強化不飽和ポリエステル、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフェニレンスルフィド(PPS)、ポリオキシメチレン(POM)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリフェニレンオキシド(PPO)、ポリウレア、ポリブタジエンテレフタレート(PBT)、ポリカーボネート(PC)、ポリブタジエンテレフタレート(PC-PBT)で修飾されたポリカーボネート(PC)、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー(ABS)、ポリエチレン(PE)及びポリプロピレン(PP)などのポリオレフィン、及び例えば、エチレン-プロピレン-ジエンコポリマー(EPDM)及び/又はエチレン-ブチレン-ジエンコポリマー(EBDM)で修飾されたポリプロピレン(PP)などのポリオレフィンが挙げられる。上述のもののうち異なるプラスチック、換言すればこれらのプラスチックの混合物を含むプラスチック基材も、ここでは可能である。特に好ましいプラスチックは、ポリプロピレン(PP)及び任意にエチレン-プロピレン-ジエンコポリマー(EPDM)で修飾されたポリプロピレン(PP)などのポリオレフィンである。EPDMのポリオレフィンを修飾する主な目的はプラスチックを弾性化することであり、そのような修飾の考えられる影響の1つはプラスチックの塗装性に影響を与えることである。EPDMの有利な割合は、プラスチックの総質量に基づいて、少なくとも2質量%、例えば2~20質量%である。
【0024】
本発明で用いる基材は、前処理されていても処理されていなくてもよいが、好ましくは前処理がされている基材である。基材を供する前処理として考えられるものは、火炎処理、プラスチック処理、及び/又はコロナ放電、とりわけ火炎処理が挙げられる。こうした前処理は、当業者に知られている。
【0025】
本発明で用いる基材は、プラスチックのパネルでよい。使用する好ましい基材は、車両部品、及び車両内及び車両上に設置するための部品、及び車両内部及び車両外部の両方のための、プラスチック製の車両付属部品である。
【0026】
本発明のコーティング材料系
本発明のコーティング材料系は、プライマーコーティング材料組成物の製造に適している。
【0027】
当業者は、「プライマー」又は「プライマーコーティング材料組成物」という用語を承知している。本発明の目的において、及びDIN EN ISO4618(ドイツ版、日付:2007年3月)と一致して、この用語は、コーティングされる基材上に下塗り塗料を生成するために使用される、下塗り材料を指す。そして得られる下塗り塗料は、基材上のマルチコート塗装系の最初のコートを構成する。
【0028】
本発明のコーティング材料系は、少なくとも成分(A)及び(B)を含む。好ましくは、その系は、2つの成分(A)及び(B)からなる。この場合、本発明のコーティング材料系は、2成分コーティング材料系(2Kコーティング材料系)である。あるいは、2つの成分(A)及び(B)に加えて、本発明のコーティング材料系は、(A)及び(B)とは異なると共に、(A)及び(B)とは別々に同様に存在する、さらなる成分(C)を含む。この成分(C)は、希釈に使用する成分として作用し、1種以上の有機溶媒及び/又は水を含む。
【0029】
本発明のコーティング材料系の少なくとも成分(A)及び(B)、及び任意に(C)を、好ましくは基材への計画された施与を行う直前に合わせることにより、本発明のプライマーコーティング材料組成物を得ることができる。
【0030】
少なくとも2つの成分(A)及び(B)、及び任意に(C)を合わせることによって調製することができる、本発明のプライマーコーティング材料組成物は、水性成分(A)の使用を考慮して、同様に全体として水性である。
【0031】
本発明のコーティング材料系内の成分(A)及び(B)は、イソシアネート基に対して反応性であるポリマー(a1)の官能基(好ましくはOH基である)の、ポリイソシアネート(b1)のイソシアネート基に対するモル比が、1:1~1:20の範囲、より好ましくは1:1.1~1:15の範囲、非常に好ましくは1:1.2~1:12.5の範囲、特に好ましくは1:1.5~1:10の範囲、最も好ましくは1:2~1:9の範囲にあるように、互いに存在することが好ましい。
【0032】
本発明のコーティング材料系内の成分(A)及び(B)は、少なくとも2つの成分(A)及び(B)、及び任意に(C)を合わせることによって調製することができるコーティング材料組成物のNCO含有量が、各場合ともこの組成物の総固形分含有量に基づいて、1~12質量%の範囲、より好ましくは1~10質量%の範囲、非常に好ましくは1.5~9質量%の範囲、さらにより好ましくは2~8質量%の範囲、最も好ましくは3~7質量%の範囲にあるように、互いに存在することが好ましい。このNCO含有量は、各場合とも理論的に計算されたNCO含有量に対応する。
【0033】
成分(A)
本発明で用いる成分(A)中に存在するすべての構成成分の質量%で表す割合は、成分(A)の総質量に基づいて、合計で100質量%となる。
【0034】
本発明のコーティング材料系の成分(A)は水性である。成分(A)に関連する「水性」という用語は、本発明の目的において、系であって、その溶媒が、各場合とも成分(A)の総質量に基づいて、溶媒の主構成成分として好ましくは少なくとも25質量%の量の水と、より低い割合の、好ましくは<20質量%の量の有機溶媒とを含む系として理解される。
【0035】
本発明で用いる成分(A)は、各場合とも成分(A)の総質量に基づいて、少なくとも27.5質量%、より好ましくは少なくとも30質量%、非常に好ましくは少なくとも32.5質量%、より具体的には少なくとも35質量%の割合の水を含むことが好ましい。
【0036】
本発明で用いる成分(A)は、各場合とも成分(A)の総質量に基づいて、25~70質量%の範囲、より好ましくは27.5~65質量%の範囲、非常に好ましくは30~60質量%の範囲、より具体的には32.5質量%~55質量%まで又は50質量%までの割合の水を含むことが好ましい。
【0037】
本発明で用いる成分(A)は、各場合とも成分(A)の総質量に基づいて、<20質量%の範囲、より好ましくは0~<20質量%の範囲、非常に好ましくは0.5~20質量%まで又は17.5質量%まで又は15質量%までの範囲の割合の有機溶媒を含むことが好ましい。
【0038】
当業者に知られているあらゆる慣例の有機溶媒を、本発明で用いる成分(A)を調製するための有機溶媒として、とりわけ非プロトン性有機溶媒及び/又は(a1)、(b1)、及び(b3)などの架橋に使用される成分に対して化学的に不活性なものとして、使用してよい。「有機溶媒」の概念は、特に1999年3月11日の理事会指令1999/13/EC(ここで溶媒と称されている)から当業者に知られている。有機溶媒又は溶媒は、好ましくは、一価又は多価アルコール、例えば、メタノール、エタノール、1-プロパノール、2-プロパノール、1-ブタノール、エチレングリコール、エチルグリコール、プロピルグリコール、ブチルグリコール、ブチルジグリコール、1,2-プロパンジオール及び/又は1,3-プロパンジオール、エーテル、例えばジエチレングリコールジメチルエーテル、脂肪族炭化水素、芳香族炭化水素、例としてトルエン及び/又はキシレン、ケトン、例としてアセトン、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、メチルイソブチルケトン、イソホロン、シクロヘキサノン、メチルエチルケトン、エステル、例としてメトキシプロピルアセテート、エチルアセテート及び/又はブチルアセテート、アミド、例えばジメチルホルムアミド、及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0039】
本発明で用いる成分(A)の固形分含有量は、各場合とも成分(A)の総質量に基づいて、好ましくは10~70質量%の範囲、より好ましくは15~65質量%の範囲、非常に好ましくは20~60質量%の範囲、より具体的には25質量%~55質量%である。固形分含有量は、以下に記載する方法で測定される。
【0040】
本発明で用いる成分(A)は、イソシアネート基に対して反応性である官能基を有する少なくとも1種のポリマー(構成成分(a1))を含む。
【0041】
「ポリマー」という用語は当業者に知られており、本発明の目的において、重付加物だけでなく、鎖成長付加ポリマー及び重縮合物も包含する。「ポリマー」という用語には、ホモポリマーだけでなくコポリマーも含まれる。
【0042】
成分(A)中に含有される少なくとも1種のポリマー(a1)は、本発明のプライマーコーティング材料組成物内で用いられるバインダー系の構成成分として作用する。「バインダー」という用語は、本発明の目的において、及びDIN EN ISO4618(ドイツ版、日付:2007年3月)と一致して、コーティング材料組成物の、及び/又は本発明のコーティング材料系などのコーティング材料系の、膜形成に関与する不揮発性部分を指すために使用する。従ってそのような組成物又は系に含まれる顔料は、存在する顔料及びいかなる充填剤も含めて、「バインダー」という用語には含まれない。不揮発性部分(固体部分、固形分含有量)は、以下に記載する方法によって測定する。「バインダー」という用語は、成分(A)中に存在するポリマー(a1)だけでなく、存在する架橋剤、例えば成分(B)中に存在するポリイソシアネート(b1)、及びバインダーの定義に当てはまる、任意に存在するいかなる添加剤も包含する。
【0043】
成分(A)内で使用する少なくとも1種のポリマー(a1)は、好ましくは、ポリウレタン、ポリウレア、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテル、ポリ(メタ)アクリレート及び/又は延べたポリマーのコポリマー、特にポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレート及び/又はポリウレタン-ポリウレアからなる群から選択される。特に好ましくは、成分(A)で使用する少なくとも1種のポリマーは、ポリウレタン、ポリエステル、ポリ(メタ)アクリレート及び/又は上述のポリマーのコポリマーからなる群から選択される。「(メタ)アクリル...」又は「(メタ)アクリレート」という表現は、本発明の目的において、各場合とも、「メタクリル...」及び/又は「アクリル...」、「メタクリレート」及び/又は「アクリレート」の定義を包含する。
【0044】
好ましいポリウレタンは、例えば、ドイツ特許出願DE19948004A1、第4頁、第19行~第11頁、第29行(ポリウレタンプレポリマーB1)、ヨーロッパ特許出願EP0228003A1、第3頁、第24行~第5頁、第40行、ヨーロッパ特許出願EP0634431A1、第3頁、第38行~第8頁、第9行、及び国際特許出願WO92/15405、第2頁、第35行~第10頁、第32行に記載されている。
【0045】
好ましいポリエステルは、例えば、DE4009858A1の第6段落、第53行~第7段落、第61行、及び第10段落、第24行~第13段落、第3行、又はWO2014/033135A2の第2頁、第24行~第7頁、第10行、及び第28頁、第13行~第29頁、第13行に記載されている。
【0046】
好ましいポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレートコポリマー((メタ)アクリレート化ポリウレタン)及びその調製は、例えばWO91/15528A1、第3頁、第21行~第20頁、第33行、及びDE4437535A、第12頁、第27行~第6頁、第22行に記載されている。
【0047】
さらに、好ましいポリ(メタ)アクリレートは、水及び/又は有機溶媒中でオレフィン性不飽和モノマーの複数段階のラジカル乳化重合によって調製することができるものである。特に好ましいのは、例えば、シードコアシェルポリマー(SCSポリマー)である。そのようなポリマー及びそのようなポリマーを含む水性分散液は、例えば、WO2016/116299A1から知られている。
【0048】
好ましいポリウレタン-ポリウレアコポリマーは、アニオン基及び/又はアニオン基に変換することができる基を含有するイソシアネート基を含有する、少なくとも1種のポリウレタンプレポリマー、及び2個の第1級アミノ基と1個又は2個の第2級アミノ基とを含有する少なくとも1種のポリアミンを、各場合とも反応した形態で含む、ポリウレタン-ポリウレア粒子である。この種のコポリマーは、水性分散液の形態で使用することが好ましい。そのようなポリマーは原則として、例えば、ポリオール及びポリアミンとのポリイソシアネートの従来の重付加によって、調製することができる。
【0049】
ポリマー(a1)としていかなるポリオレフィンも使用しないことが好ましい。好ましくは、コーティング材料系の成分(A)、(B)、及び任意に(C)のいずれも、いかなるポリオレフィンも含有しない。よって好ましくは、本発明のコーティング組成物も同様に、ポリオレフィンを含有しない。
【0050】
成分(A)で使用するポリマー(a1)は、イソシアネート基との架橋反応を可能にする反応性官能基を有する。この目的に使用することができ、当業者に知られている任意の慣例の架橋可能な反応性官能基が考えられる。成分(A)で使用するポリマー(a1)は、第1級アミノ基、第2級アミノ基、ヒドロキシル基、チオール基、カルボキシル基、及びカルバメート基からなる群から選択される反応性官能基の少なくとも1種を有することが好ましい。成分(A)で使用するポリマー(a1)は、好ましくは官能性ヒドロキシル基を有する。
【0051】
成分(A)で使用するポリマー(a1)は、好ましくはヒドロキシ官能性であり、より特に好ましくは15~250mgKOH/g、より好ましくは20~200mgKOH/gの範囲のOH価を有する。OH価は計算することができる。
【0052】
特に好ましくは、成分(A)で使用するポリマー(a1)は、ヒドロキシ官能性ポリウレタン-ポリ(メタ)アクリレートコポリマー、ヒドロキシ官能性ポリエステル及び/又はヒドロキシ官能性ポリウレタン-ポリウレアコポリマーである。
【0053】
成分(A1)は、少なくとも1種の顔料(a2)及び/又は少なくとも1種の充填剤(a3)を含む。
【0054】
「顔料」という用語は、例えば、DIN55943(日付:2001年10月)から当業者に知られている。本発明の意味における「顔料」とは、好ましくは、それを取り囲む施与媒体(例えば、本発明のコーティング材料系の又は本発明のコーティング材料組成物の、成分(A))に、実質的に、好ましくは完全に不溶性である粉末又はフレークの形態の構成成分を指す。この構成成分は、その磁気的、電気的及び/又は電磁的特性が理由で顔料として使用することができる着色剤及び/又は物質であることが好ましい。顔料は、「充填剤」とは、好ましくはそれらの屈折率において異なり、屈折率は顔料については≧1.7である。
【0055】
顔料の概念には、着色顔料(「色付与顔料」及び「着色顔料」という用語は置き換え可能である)及び効果顔料が包含される。効果顔料は、光学的効果又は色と光学的効果との両方を、とりわけ光学的効果を付与する顔料であることが好ましい。従って、「光学的効果及び着色顔料」、「光学的効果顔料」、及び「効果顔料」という用語は、置き換え可能である。好ましい効果顔料の例は、フレーク状金属効果顔料、例えば層状アルミニウム顔料、ゴールドブロンズ、酸化ブロンズ及び/又は酸化鉄アルミニウム顔料、パールエッセンスなどの真珠光沢顔料、塩基性鉛カーボネート、ビスマスオキシクロリド及び/又は金属酸化物マイカ顔料及び/又は他の効果顔料、例えば層状グラファイト、層状酸化鉄、PVD膜からなる多層効果顔料及び/又は液晶ポリマー顔料などである。
【0056】
原則として、成分(A)中の顔料(a2)として効果顔料を使用することが可能である。しかしながら、(A)を使用して得ることができるコーティング材料組成物は、プライマーコーティング組成物として用いられることとなるので、成分(A)に効果顔料を組み込むことは好ましくない。従って好ましくは、成分(A)は効果顔料を含有しない。好ましくは、本発明のコーティング材料系全体及びそれから得ることができるコーティング材料組成物は、効果顔料を含有しない。
【0057】
従って顔料(a2)として、着色顔料を用いることが好ましい。着色顔料として、有機及び/又は無機顔料を使用することが可能である。着色顔料は、好ましくは無機着色顔料である。特に好ましく使用される着色顔料は、白色顔料、有彩顔料及び/又は黒色顔料である。白色顔料の例は、二酸化チタン、ジンクホワイト、硫化亜鉛及びリトポンである。黒色顔料の例は、カーボンブラック、鉄マンガンブラック及びスピネルブラックである。有彩顔料の例は、酸化クロム、酸化クロム水和物グリーン、コバルトグリーン、ウルトラマリングリーン、コバルトブルー、ウルトラマリンブルー、マンガンブルー、ウルトラマリンバイオレット、コバルトバイオレット及びマンガンバイオレット、赤色酸化鉄、カドミウムスルホセレニド、モリブデートレッド及びウルトラマリンレッド、褐色酸化鉄、混合褐色、スピネル相及びコランダム相、及びクロムオレンジ、黄色酸化鉄、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、硫化カドミウム、硫化カドミウム亜鉛、クロムイエロー及びビスマスバナデートである。適した有機色付与顔料の例は、モノアゾ顔料、ジスアゾ顔料、アントラキノン顔料、ベンズイミダゾール顔料、キナクリドン顔料、キノフタロン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ジオキサジン顔料、インダントロン顔料、イソインドリン顔料、イソインドリノン顔料、アゾメチン顔料、チオインジゴ顔料、金属錯体顔料、ペリノン顔料、ペリレン顔料、フタロシアニン顔料又はアニリンブラックである。
【0058】
顔料(a2)の割合は、各場合とも成分(A)の総質量に基づいて、1.0~40.0質量%、好ましくは2.0~35.0質量%、より好ましくは5.0~30.0質量%の範囲にあることが好ましい。
【0059】
顔料(a2)の割合は、各場合とも本発明のコーティング材料系から得ることができる本発明のコーティング材料組成物の総質量に基づいて、0.5~35.0質量%、より好ましくは1.0~30.0質量%、非常に好ましくは2.0~25質量%の範囲にあることが好ましい。
【0060】
「充填剤」という用語は、例えば、DIN55943(日付:2001年10月)から同様に当業者に知られている。本発明の意味における「充填剤」とは、好ましくは、施与媒体(例えば、本発明のコーティング材料系の又は本発明のコーティング材料組成物の、成分(A))に、実質的に不溶性、好ましくは完全に不溶性であり、且つ特に、体積を増加させるために使用される、構成成分である。本発明の意味における「充填剤」は、「顔料」とは、好ましくはそれらの屈折率において異なり、屈折率は充填剤については、<1.7である。
【0061】
当業者に知られている任意の慣例の充填剤を構成成分(a3)として使用してよい。適した充填剤の例は、カオリン、ドロマイト、カルサイト、チョーク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、グラファイト、シリケート、例えばマグネシウムシリケート、特に対応するフィロシリケート、例えばヘクトライト、ベントナイト、モンモリロナイト、タルク及び/又はマイカ、シリカ、とりわけヒュームドシリカ、水酸化物、例えば水酸化アルミニウム又は水酸化マグネシウム、又は有機充填剤、例えば織物繊維、セルロース繊維、ポリエチレン繊維又はポリマー粉末などである。さらなる詳細については、Roempp Lexikon Lacke und Druckfarben、Georg Thieme Verlag、1998年、第250頁以降、「充填剤」を参照されたい。
【0062】
充填剤(a3)の割合は、各場合とも成分(A)の総質量に基づいて、好ましくは1.0~40.0質量%、より好ましくは2.0~35.0質量%、非常に好ましくは5.0~30.0質量%の範囲にある。
【0063】
充填剤(a3)の割合は、各場合とも本発明のコーティング材料系から得ることができる本発明のコーティング材料組成物の総質量に基づいて、好ましくは0.5~35.0質量%、より好ましくは1.0~30.0質量%、非常に好ましくは2.0~25質量%の範囲にある。
【0064】
成分(A)は、任意に、少なくとも1種の増粘剤(thickener)(増粘剤(thickening agent)とも称する)をさらに含んでもよい。そのような増粘剤の例は、無機増粘剤、例として、フィロシリケートなどの金属シリケート、及び有機増粘剤、例として、ポリ(メタ)アクリル酸増粘剤及び/又は(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリレートコポリマー増粘剤、ポリウレタン増粘剤、及びポリマーワックスである。金属シリケートは、好ましくはスメクタイトの群から選択される。スメクタイトは、より好ましくは、モンモリロナイト及びヘクトライトの群から選択される。モンモリロナイト及びヘクトライトは、より具体的には、アルミニウム-マグネシウムシリケート、及びナトリウムマグネシウムフィロシリケート及びナトリウムマグネシウムフッ素リチウムフィロシリケートからなる群から選択される。これらの無機フィロシリケートは、例えば、Laponite(登録商標)の商品名で販売されている。ポリ(メタ)アクリル酸及び(メタ)アクリル酸-(メタ)アクリレートコポリマー増粘剤に基づく増粘剤は、任意に、適した塩基で架橋及び/又は中和されている。そのような増粘剤の例は、「アルカリ膨潤性エマルジョン」(ASE)、及びその疎水的に修飾された変形、「親水性修飾アルカリ膨潤性エマルジョン」(HASE)である。これらの増粘剤は、好ましくはアニオン性である。Rheovis(登録商標)AS1130などの対応する製品が市販されている。ポリウレタンに基づく増粘剤(例えば、ポリウレタン会合性増粘剤)は、任意に、適した塩基で架橋及び/又は中和されている。Rheovis(登録商標)PU1250などの対応する製品が市販されている。適したポリマーワックスの例として、エチレン-酢酸ビニルコポリマーに基づく修飾された又は修飾されないポリマーワックスが挙げられる。このような製品の1つは、例えばAquatix(登録商標)8421の名称で市販されている。
【0065】
少なくとも1種の増粘剤は、各場合とも成分(A)の総質量に基づいて、好ましくは最大で10質量%、より好ましくは最大で7.5質量%、非常に好ましくは最大で5質量%、より具体的には最大で3質量%、最も好ましくは最大で2質量%の量で、成分(A)中に存在する。ここで増粘剤の最小量は、各場合とも成分(A)の総質量に基づいて、好ましくは、0.1質量%である。
【0066】
成分(A)は、さらなる任意の構成成分として、1種以上の一般的に用いられる添加剤を含んでよい。例えば、成分(A)は、既に上記で述べたように、或る特定の割合の少なくとも1種の有機溶媒を含む。成分(A)は、反応性希釈剤、光安定剤、酸化防止剤、脱気剤、乳化剤、スリップ添加剤、重合阻害剤、ラジカル重合開始剤、接着促進剤、流動制御剤、膜形成助剤、垂れ制御剤(SCA)、難燃剤、腐食防止剤、乾燥剤、殺生物剤、及び艶消し剤からなる群から選択される少なくとも1種の添加剤をさらに含む。添加剤は、既知の慣例的な割合で使用してよい。その量は、成分(A)の総質量に基づいて、好ましくは0.01~20.0質量%、より好ましくは0.05~15.0質量%、非常に好ましくは0.1~10.0質量%、特に好ましくは0.1~7.5質量%、より具体的には0.1~5.0質量%、及び最も好ましくは0.1~2.5質量%である。
【0067】
成分(B)
本発明により使用する成分(B)に含まれるすべての構成成分の質量%で表す割合は、成分(B)の総質量に基づいて、合計で100質量%となる。
【0068】
本発明のコーティング材料系の成分(B)は非水性である。成分(B)に関連する「非水性」という用語は、本発明の目的において、少なくとも実質的に水を含まない系を指す。成分(B)内の水の存在は望ましくない。水とポリイソシアネート(b1)のNCO基とが反応してしまうからである。さらに、水とシランなどのSi含有化合物(b3)とが、アルコールの除去を伴って反応し、そしてこれがポリイソシアネート(b1)のNCO基と反応し得る。さらに、この場合同様に形成されるシラノール基において、さらなるそのような基及び/又はSi含有化合物(b3)の加水分解性基との反応が起こることがあり、このような反応はこの時点で同様に望ましくない。それにもかかわらず、成分(B)の調製に使用される構成成分中の水の存在等により含まれる微量の水は、完全に除外することはできない。従って成分(B)は、少なくとも実質的に水を含まないものとされる。これは、好ましくは、成分(B)が水を、たとえあったとしても、各場合とも成分(B)の総質量に基づいて、最大で0.5質量%、より好ましくは最大で0.25質量%、非常に好ましくは最大で0.1質量%、より具体的には<0.1質量%、最も好ましくは<0.05質量%の量で含有することを意味する。
【0069】
成分(B)は、少なくとも1種の有機溶媒(b2)を、成分(B)の総質量に基づいて好ましくは40質量%以下の量で含む。考えられる有機溶媒(b2)は、成分(A)に関連して既に上で述べたものと同じ溶媒である。しかしながら、ポリイソシアネート(b1)のイソシアネート基との(時期尚早な)架橋を防ぐために、(b2)は、(b1)のイソシアネート基との反応に対して化学的に不活性であることが好ましい。従って特に、(b2)はアルコールではない。
【0070】
本発明で用いる成分(B)は、各場合とも成分(B)の総質量に基づいて、37.5質量%以下、より好ましくは35質量%以下、非常に好ましくは32.5質量%以下、より具体的には30質量%以下の割合の(b2)を含むことが好ましい。
【0071】
本発明で用いる成分(B)は、各場合とも成分(B)の総質量に基づいて、1~40質量%の範囲、より好ましくは2~37.5質量%の範囲、非常に好ましくは3~35質量%の範囲、より具体的には4質量%~32.5質量%の又は5質量%~30質量%の範囲の割合の(b2)を含むことが好ましい。
【0072】
本発明で用いる成分(B)の固形分含有量は、各場合とも成分(B)の総質量に基づいて、好ましくは50~99質量%の範囲、より好ましくは55~95質量%の範囲、非常に好ましくは60~90質量%の範囲、より具体的には65質量%~85質量%の範囲にある。固形分含有量は、以下に記載する方法で測定される。
【0073】
本発明のコーティング材料系の成分(B)は、2個を超える遊離イソシアネート基を有する少なくとも1種のポリイソシアネート(b1)を含む。
【0074】
使用するポリイソシアネート(b1)は、好ましくは(ヘテロ)脂肪族、(ヘテロ)脂環式、(ヘテロ)芳香族及び/又は(ヘテロ)脂肪族-(ヘテロ)芳香族ポリイソシアネートである。
【0075】
少なくとも1種のポリイソシアネート(b1)は、好ましくは平均して2.4~4個、より好ましくは2.6~4個、非常に好ましくは2.8~3.6個のNCO基を有し、及び好ましくは少なくとも1つのイソシアヌレート環及び/又はイミノオキサジアジンジオン環を含む。この場合、イソシアヌレート環及びイミノオキサジアジンジオン環はそれぞれ、ジイソシアネートの三量化によって形成されることが好ましく、これらは、ヘキサメチレンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネート、及びそれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0076】
成分(B)内のポリイソシアネート(b1)として、ヘキサメチレンジイソシアネートの及び/又はイソホロンジイソシアネートのイソシアヌレート三量体、及び/又はイソホロンジイソシアネート及び/又はヘキサメチレンジイソシアネートのオリゴマー及び/又はポリマーを使用することが特に好ましい。当業者は、市販されている対応する製品を承知している。例として、Bayer社からのDesmodur(登録商標)シリーズの製品、例えばDesmodur(登録商標)XP2565及びDesmodur(登録商標)N3600などである。成分(B)内のポリイソシアネート(b1)として用いるのが特に好ましいのは、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート三量体である。
【0077】
本発明で用いる成分(B)は、各場合とも成分(B)の総質量及び(b1)の固形分含有量に基づいて、50~95質量%の範囲、より好ましくは55~92.5質量%の範囲、非常に好ましくは60~90質量%の範囲、より具体的には62.5質量%~87.5質量%又は60質量%~85質量%の割合の(b1)を含むことが好ましい。
【0078】
本発明のコーティング材料系の成分(B)は、少なくとも1個の加水分解性の、好ましくは有機のラジカル、及び少なくとも1個の非加水分解性有機ラジカルを含有する、少なくとも1種のSi含有化合物(b3)を含み、後者の非加水分解性有機ラジカルは、イソシアネート基に対して反応性であり、そして加水分解条件下で除去することができる少なくとも1個の保護基で任意にマスクされている、少なくとも1個の官能基を任意に有する。
【0079】
当業者は、「加水分解性ラジカル」という用語を承知している。当業者に知られている任意の慣例の加水分解性ラジカルが、Si含有化合物(b3)の構成成分として役立つ。本発明の目的において、「加水分解性ラジカル」とは、好ましくは有機及び/又は無機ラジカル、より好ましくは有機ラジカルである。本発明の意味における「加水分解性ラジカル」とは、好ましくは、ハロゲン化物、好ましくはフッ化物、塩化物、臭化物、及びヨウ化物、とりわけフッ化物及び塩化物、アルコキシ基、好ましくはアルコキシ基O-Raからなる群から選択される加水分解性ラジカルである。ここで、RaはC1~16脂肪族ラジカル、好ましくはC1~10脂肪族ラジカル、より好ましくはC1~6脂肪族ラジカル、より具体的にはC1~6アルキルラジカル、例えば、任意にC1~6アルコキシ基で置換された、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はtert-ブチルであり、カルボキシレート基、好ましくはC1~6カルボキシレート基、より具体的にはアセテートからなる群から選択されるカルボキシレート基、及び好ましくはアセチルアセトネート、アセトニルアセトネート、及びジアセチレートからなる群から選択されるジケトネート基である。特に好ましくは、「加水分解性ラジカル」は、アルコキシ基、好ましくはアルコキシ基O-Raを意味し、ここでRaはC1~16脂肪族ラジカル、好ましくはC1~10脂肪族ラジカル、より好ましくはC1~6脂肪族ラジカル、より具体的にはC1~6アルキルラジカル、例えば、任意にC1~6アルコキシ基で置換された、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル又はtert-ブチルである。
【0080】
Si含有化合物(b3)は、少なくとも1個の加水分解性の、好ましくは有機のラジカルを有する。すなわちそれは、1個以上の、例えば2個又は3個のそのようなラジカルを有する。
【0081】
Si含有化合物(b3)はまた、少なくとも1個、すなわち1個又は1個を超える、例えば2個又は3個の、非加水分解性有機ラジカルを有する。そしてこのラジカルは、イソシアネート基に対して反応性であり、そして加水分解条件下で除去することができる少なくとも1個の保護基で任意にマスクされている、少なくとも1個の官能基を任意に有する。
【0082】
少なくとも1種のSi含有化合物(b3)の非加水分解性有機ラジカル中のイソシアネート基に対して反応性であり、加水分解条件下で除去することができる少なくとも1個の保護基で任意にマスクされている官能基は、ヒドロキシル基、チオール基、第一級及び第二級アミノ基、及びそれらの混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0083】
少なくとも1種のSi含有化合物(b3)の非加水分解性有機ラジカル中のイソシアネート基に対して反応性である少なくとも1個の官能基は、(b3)が成分(B)中に存在する場合、成分(B)中に同様に存在するポリイソシアネート(b1)のイソシアネート基との即時反応を防ぐために、加水分解条件下で除去することができる保護基でマスクされていてよい。
【0084】
少なくとも1種のSi含有化合物(b3)の非加水分解性有機ラジカルは、好ましくは、1~24個の炭素原子を有する脂肪族ラジカル、3~12個の炭素原子を有する脂環式ラジカル、6~12個の炭素原子を有する芳香族ラジカル、及び7~18個の炭素原子を有する芳香脂肪族ラジカルからなる群から選択され、これらのラジカルのそれぞれは、イソシアネート基に対して反応性である少なくとも1個の官能基を任意に含有し、そして前記基は、加水分解条件下で除去することができる少なくとも1個の保護基で任意にマスクされている。さらに、前述の脂肪族、脂環式、芳香族、及び芳香脂肪族ラジカルのそれぞれは、N、O、及び/又はS、及び/又はヘテロ原子基などの1個以上のヘテロ原子を含有する。例として、これらのラジカルのそれぞれ、例えば特に対応する脂肪族ラジカルなどは、少なくとも1個のエポキシド基を含有する。
【0085】
1~24個の炭素原子を有する脂肪族ラジカルからなる群から選択される少なくとも1個の非加水分解性有機ラジカルを有するSi含有化合物(b3)の例は、1~12個の炭素原子を有する少なくとも1個の脂肪族ラジカルを有するSi含有化合物(b3)、メチルトリメトキシシラン(MTMS)、メチルトリエトキシシラン(MTES)、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、エチルトリプロポキシシラン、エチルトリイソプロポキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、イソブチルトリエトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、及びデシルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、ヘキサデシルトリエトキシシラン、及び1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン及び1,2-ビス(トリメトキシシリル)エタンである。
【0086】
6~12個の炭素原子を有する芳香族ラジカルからなる群から選択される少なくとも1個の非加水分解性有機ラジカルを有するSi含有化合物(b3)の例は、フェニルトリメトキシシラン(PHS)、フェニルトリエトキシシラン、フェニルトリプロポキシシラン、及びフェニルトリイソプロポキシシランである。
【0087】
7~18個の炭素原子を有する芳香脂肪族ラジカルからなる群から選択される少なくとも1個の非加水分解性有機ラジカルを有するSi含有化合物(b3)の例は、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ベンジルトリプロポキシシラン、及びベンジルトリイソプロポキシシランである。
【0088】
Si含有化合物(b3)は、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタンの場合のように、少なくとも1個のSi含有ラジカル、例えば厳密に1個のそのようなラジカル(モノシランの場合など)、又は2個を超えるそのようなラジカル(ビスシラン又はトリスシランの場合など)を含む。4、5、6個、又はそれ以上のシリル基を有するSi含有化合物(b3)の使用も可能である。この種のSi含有化合物(b3)の例は、例えば、第二級アミノ基を有するアルキルラジカルを介してそのシリル基が架橋されているビスシラン(市販製品Dynasylan(登録商標)1124など)と、例えば、ポリイソシアネート(b1)として使用できる種類のポリイソシアネート、例えば、イソシアヌレート三量体(特にHDI三量体)などとの、反応生成物である。そのような反応生成物は、合計で6個のシリル基を有する。
【0089】
少なくとも1個の第一級及び/又は第二級アミノ基を含有する加水分解性シラン化合物は、例えば、3-アミノプロピルトリメトキシシラン(APS)、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、2-アミノエチルトリメトキシシラン、2-アミノエチルトリエトキシシラン、2-アミノエチルトリイソプロポキシシラン、アミノメチルトリメトキシシラン、アミノメチルトリエトキシシラン、アミノメチルトリイソプロポキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン(AEAPS)、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、2-(2-アミノエチル)アミノエチルトリメトキシシラン、2-(2-アミノエチル)アミノエチルトリエトキシシラン、2-(2-アミノエチル)-アミノエチルトリイソプロポキシシラン、3-(3-アミノプロピル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(3-アミノプロピル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(3-アミノプロピル)アミノプロピルトリイソプロポキシシラン、ジエチレントリアミノプロピルトリメトキシシラン、ジエチレントリアミノプロピルトリエトキシシラン、N-(n-ブチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-(n-ブチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-シクロヘキシルアミノメチルトリエトキシシラン、N-シクロヘキシルアミノメチルトリメトキシシラン、N-エチル-γ-アミノイソブチルトリメトキシシラン、N-エチル-γ-アミノイソブチルトリエトキシシラン、N-(ビニルベンジル)-2-アミノエチル-3-アミノプロピルトリメトキシシランヒドロクロリド、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリメトキシシラン、γ-ウレイドプロピルトリエトキシシラン、N-メチル-[3-(トリメトキシシリル)プロピル]カルバメート、及び/又はN-トリメトキシシリルメチル-O-メチルカルバメート、及びビス[γ-(トリエトキシシリル)プロピル]アミン、ビス[γ-(トリメトキシシリル)プロピル]アミン、ビス[γ-(トリエトキシシリル)プロピル]アミン、及びビス[γ-(トリメトキシシリル)プロピル]アミンである。これらのシラン化合物はそれぞれ、Si含有化合物(b3)として使用してよい。さらに、これらの化合物それぞれのアミノ基は、加水分解条件下で除去することができる保護基でマスクされていてよい。アミノ官能を保護することができる対応する保護基は、当業者に知られている。この目的に適した例としてジメチルブチリデン基が挙げられ、これは以下の体系によって加水分解で除去することができる:
【化1】
【0090】
少なくとも1個のチオール基を含有する加水分解性シラン化合物は、例えば、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTMS)、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリイソプロポキシシラン、2-メルカプトエチルトリメトキシシラン、2-メルカプトエチルトリエトキシシラン及び/又は2-メルカプトエチルトリイソプロポキシシランである。これらのシラン化合物はそれぞれ、Si含有化合物(b3)として使用してよい。さらに、これらの化合物それぞれのチオール基は、加水分解条件下で除去することができる保護基でマスクされていてよい。チオール官能を保護することができる対応する保護基は当業者に知られている。例えば、チオエーテル基を含有する適したシランは、この条件下で対応するチオール基含有シランに変換することができる:
【化2】
【0091】
加水分解条件下で除去することができる保護基でマスクされているヒドロキシル基の例として、少なくとも1個のエポキシド基を含有する加水分解性シラン化合物は、例えば、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン(GLYMO)、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリイソプロポキシオキシシラン、2-グリシジルオキシエチルトリメトキシシラン、2-グリシジルオキシエチルトリエトキシシラン、2-グリシジルオキシエチルトリイソプロポキシオキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、及び/又はβ-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシランである。対応する製品は、例えば、Silquest(登録商標)A-186及びA-187の名称で市販されている。
【0092】
少なくとも1個の非加水分解性有機ラジカルが少なくとも1個のエポキシド基を有するSi含有化合物(b3)が、特に好ましい。
【0093】
シラン化合物(b3)として、構造式(I)
A-R-Si(R’)x(OR“)3-x (I)
(式中、
- Aは、イソシアネート基に対して反応性の官能基であり、加水分解条件下で除去できる保護基で任意にマスクされているか、又はHであり、
- Rは、1~24個又は1~12個の炭素原子を有する脂肪族ラジカル、3~12個の炭素原子を有する脂環式ラジカル、6~12個の炭素原子を有する芳香族ラジカル又は7~18個の炭素原子を有する芳香脂肪族ラジカルであり、
- R’ラジカルは、C1~C12-アルキルラジカルの群から選択され、
- R”はメチル又はエチルラジカルであり、及び
- x=0~2である)
の少なくとも1種のアルコキシシランを使用することが好ましい。
【0094】
ここで脂肪族ラジカルRは、例えばフェニルラジカルなどの芳香族基を持たない有機ラジカルを意味する。脂肪族ラジカルRは、1~24個又は1~12個の炭素原子を有する。好ましくは、脂肪族ラジカルRは、2~12個、より好ましくは3~10個の炭素原子を有する。脂環式ラジカルRは、例えばフェニルラジカルなどの芳香族基を持たない有機ラジカルを意味する。脂環式ラジカルRは、例えば、シクロプロピル又はシクロヘキシルの場合のように、3~12個の炭素原子を有する。脂肪族及び脂環式ラジカルも飽和又は不飽和である。そのような不飽和脂肪族ラジカルの例は、例えば(b3)の例としての、例えばビニルトリメトキシシラン及び/又はビニルトリエトキシシランの場合のような、エテニル基である。芳香族ラジカルRは、例えば、フェニレンラジカルなどの芳香族基から構成される有機ラジカルを意味する。芳香族ラジカルRは、6~12個の炭素原子を有する。芳香脂肪族ラジカルRは、芳香族基だけでなく脂肪族基も有する有機ラジカルを意味する。芳香脂肪族ラジカルRは、7~18個の炭素原子を有する。脂肪族ラジカルRなどのラジカルRは、炭素及び水素に加えて、酸素、窒素又は硫黄などのヘテロ原子も含有する。さらに、各場合とも同様に、エステル基又はウレタン基などのさらなる官能基が存在してもよい。より好ましくは、Rは、1~12個の炭素原子又は1~10個の炭素原子、非常に好ましくは1~8個の炭素原子、特に1~6個の炭素原子を有する脂肪族ラジカルである。ラジカルRが二価のラジカルであることは、当業者には明らかである。
【0095】
ラジカルR’は、好ましくはC1~C10アルキルラジカル、より好ましくはC1~C8アルキルラジカル、及び非常に好ましくはC1~C6アルキルラジカルである。
【0096】
特に好ましくは、一般構造式(I.1)及び/又は(I.2)、非常に好ましくは(I.1)の、すなわち、
【化3】
(式中、
- R
2は、C
1~C
10アルキレンラジカル、C
2~C
10アルケニレンラジカル、又は多価不飽和C
4~C
10アルキレンラジカルであり、
- R
3は、C
1~C
12アルキレンラジカル、C
2~C
12アルケニレンラジカル、又は多価不飽和C
4~C
12アルキレンラジカルであり、
- ラジカルR’は、C
1~C
12アルキルラジカルの群から選択され、
- R”はメチル又はエチルラジカルであり、及び
- x=0~2である)
のアルコキシシランが使用される。
【0097】
R2は、好ましくはC1~C10アルキレンラジカル、又はさらにはC1~C8アルキレンラジカルである。特に好ましくは、R2はC1~C6アルキレンラジカル、及び非常に好ましくはC1~C4アルキレンラジカル又はC3アルキレンラジカルである。ラジカルR’に関しては、上記の好ましい、より好ましい、及び非常に好ましい特徴を参照されたい。さらに、xは好ましくは0又は1であり、非常に好ましくはx=0である。R3は、好ましくはC1~C12アルキレンラジカル又はさらにはC1~C10アルキレンラジカルである。特に好ましくは、R3はC1~C8アルキレンラジカル、及び非常に好ましくはC1~C6アルキレンラジカル又はC3アルキレンラジカルである。ラジカルR’に関しては、上記の好ましい、より好ましい、及び特に好ましい特徴を参照されたい。さらに、xは好ましくは0又は1であり、及び非常に好ましくはx=0である。
【0098】
成分(B)は、少なくとも1種のSi含有化合物(b3)を、各場合とも成分(B)の総質量に基づいて、0.1~20質量%の範囲の量で、より好ましくは0.5~18質量%の範囲の量で、非常に好ましくは1~16質量%の範囲の量で、より好ましくは1.5~14質量%の範囲の量で、最も好ましくは2~12質量%の範囲の量で、含むことが好ましい。
【0099】
成分(B)は、少なくとも1種のSi含有化合物(b3)を、各場合とも本発明のコーティング材料組成物の総質量に基づいて、0.1~15質量%の範囲の量で、より好ましくは0.25~14質量%の範囲の量で、非常に好ましくは0.5~12質量%の範囲の量で、より好ましくは0.75~10質量%の範囲の量で、最も好ましくは1.0~8質量%の範囲の量で、含むことが好ましい。
【0100】
成分(B)は、1種以上の一般的に使用される添加剤、及びさらなる任意の構成成分として、1種以上の増粘剤を含んでもよい。この目的のために、増粘剤及び添加剤及び考えられるそれらの量は、成分(A)に関連して既に上で述べたものと同じである。
【0101】
任意の成分(C)
本発明のコーティング材料系は、2つの成分(A)及び(B)の他に、(A)及び(B)とは異なると共に、同様に(A)及び(B)とは別々に存在する、さらなる成分(C)を含む。この成分(C)は、希釈に使用する成分として機能し、1種以上の有機溶媒及び/又は水を含む。従って成分(C)は、少なくとも1種の有機溶媒及び/又は水を含む。考えられる有機溶媒は、成分(A)及び(B)に関連して既に上で述べたものと同じ溶媒である。
【0102】
本発明のコーティング材料組成物
本発明のさらなる主題は、本発明のコーティング材料系の少なくとも成分(A)及び(B)を合わせることによって得ることができる、プライマーコーティング材料組成物である。ここでの「合わせる」という表現は、混合、特に均一な混合を含む。
【0103】
本発明のコーティング材料系に関連して上記で記載したすべての好ましい実施形態は、本発明のコーティング材料組成物に関する好ましい実施形態でもある。
【0104】
本発明のコーティング材料組成物に含有されるすべての構成成分の質量%で表す割合は、コーティング材料組成物の総質量に基づいて、合計で100質量%となる。
【0105】
本発明のコーティング材料組成物は、全体として水性である。本発明のコーティング材料組成物に関連する「水性」という用語は、本発明の目的において、系であって、その溶媒が、各場合とも本発明のコーティング材料組成物の総質量に基づいて、溶媒の主構成成分として好ましくは少なくとも17.5質量%の量の水と、より低い割合の、好ましくは<15質量%の量の有機溶媒とを含む、系として理解される。
【0106】
本発明のコーティング材料組成物は、各場合とも本発明のコーティング材料組成物の総質量に基づいて、少なくとも20質量%、より好ましくは少なくとも22.5質量%、非常に好ましくは少なくとも25質量%の割合の水を含むことが好ましい。
【0107】
本発明のコーティング材料組成物は、各場合とも本発明のコーティング材料組成物の総質量に基づいて、17.5~65質量%の範囲、より好ましくは20~60質量%の範囲、非常に好ましくは25~55質量%の範囲にある割合の水を含むことが好ましい。
【0108】
本発明のコーティング材料組成物は、各場合とも本発明のコーティング材料組成物の総質量に基づいて、<15質量%の範囲、より好ましくは2~<15質量%の範囲、非常に好ましくは3~14質量%まで又は13質量%まで又は10質量%までの範囲の割合の有機溶媒を含むことが好ましい。
【0109】
本発明のコーティング材料組成物の固形分含有量は、各場合とも本発明のコーティング材料組成物の総質量に基づいて、好ましくは10~70質量%の範囲、より好ましくは15~65質量%の範囲、非常に好ましくは20~60質量%の範囲、より具体的には25質量%~55質量%である。固形分含有量は、以下に記載する方法によって測定される。
【0110】
コーティング組成物において、イソシアネート基に対して反応性であるポリマー(a1)の官能基(これらの官能基は、好ましくはOH基である)の、ポリイソシアネート(b1)のイソシアネート基に対するモル比は、好ましくは1:1~1:20、より好ましくは1:1.1~1:15の範囲、非常に好ましくは1:1.2~1:12.5の範囲、特に好ましくは1:1.5~1:10の範囲、最も好ましくは1:2~1:9の範囲にある。
【0111】
本発明のコーティング材料組成物のNCO含有量は、各場合とも総固形分含有量に基づいて、好ましくは1~12質量%の範囲、より好ましくは1~10質量%の範囲、非常に好ましくは1.5~9質量%の範囲、さらにより好ましくは2~8質量%の範囲、最も好ましくは3~7質量%の範囲にある。ここでNCO含有量は、各場合とも、理論的に計算されたNCO含有量に対応する。
【0112】
本発明による使用方法
本発明のさらなる主題は、プライマーコーティング材料組成物を、任意の前処理がされているプラスチック基材の少なくとも1つの表面に、少なくとも部分的に施与するための、本発明のコーティング材料系又は本発明のコーティング材料組成物の使用方法である。
【0113】
本発明のコーティング材料系及び本発明のコーティング材料組成物に関連して上記で記載したすべての好ましい実施形態は、上で特定した本発明の使用方法に関する好ましい実施形態でもある。
【0114】
本発明による方法
本発明のさらなる主題は、プラスチック基材の少なくとも1つの表面を、プライマーで少なくとも部分的にコーティングする方法であって、少なくとも工程(1)、すなわち、
(1)本発明のプライマーコーティング材料組成物を、任意の前処理がされているプラスチック基材の少なくとも1つの表面に、少なくとも部分的に施与する工程、
を含む、方法である。
【0115】
本発明のコーティング材料系及び本発明のコーティング材料組成物に関連して上記で記載したすべての好ましい実施形態は、上で特定した本発明の方法に関する好ましい実施形態でもある。
【0116】
本発明のさらなる主題は、プラスチック基材の少なくとも1つの表面を、マルチコート塗装系で少なくとも部分的にコーティングする方法であって、少なくとも以下の工程(1)~(7)、すなわち、
(1) 本発明のプライマーコーティング材料組成物を、任意の前処理がされているプラスチック基材の少なくとも1つの表面に、少なくとも部分的に施与する工程、
(2) 工程(1)により施与したプライマーコーティング材料組成物を、好ましくは室温で中間乾燥させて、プライマー膜を得る工程、
(3) 工程(2)の後に得られたプライマー膜に、少なくとも1種のベースコート組成物を施与する工程、
(4) 工程(3)により施与した少なくとも1種のベースコート組成物を、好ましくは室温で中間乾燥させて、少なくとも1種のベースコート膜を得る工程、
(5) 工程(4)の後に得られた少なくとも1種のベースコート膜に、クリアコート組成物を施与する工程、及び
(6) 工程(5)により施与したクリアコート組成物を、好ましくは室温で中間乾燥させて、クリアコート膜を得る工程、及び
(7) 得られたプライマー膜、ベースコート膜(単数又は複数)、及びクリアコート膜を、<100℃の温度で一緒に硬化させる工程、
を含む、方法である。
【0117】
本発明のコーティング材料系及び本発明のコーティング材料組成物に関連して上記で記載したすべての好ましい実施形態は、上で特定した本発明の方法に関する好ましい実施形態でもある。
【0118】
マルチコート塗装系でプラスチック基材の少なくとも1つの表面を少なくとも部分的にコーティングするための本発明の方法は、ウェットオンウェット法であり、プライマー膜、ベースコート膜、及びクリアコート膜を工程(1)、(3)、及び(5)でウェット塗布し、その後初めて、3つすべての膜を一緒に硬化させる。工程(3)内でベースコート膜を施与する場合、この方法は3C1Bプロセスである。工程(3)内で2つのベースコート膜を施与する場合、この方法は4C1Bプロセスである。しかしながら、3C1Bプロセスが好ましい。本発明の方法によって、自動車のOEM仕上げにおける好ましい施与が見いだされた。
【0119】
「ベースコート材料」及び「ベースコート膜」という用語はそれぞれ当業者に知られており、好ましくは、一般的な工業仕上げ、特に自動車(OEM)仕上げにおける色付与及び/又は効果付与中間コーティングの呼称として使用される。ここで、ベースコート材料又はベースコート膜は、好ましくは、プライマー、ベースコート、及びクリアコートから構成される3コート仕上げにおける第2のコートを形成する。使用することができるベースコート材料は市販のベースコート材料であり、水性ベースコート材料が好ましい。2Kベースコート材料を使用する場合、構成成分(a1)及び(b1)と同じ上記のバインダー構成成分を用いることが可能である。1Kベースコート材料を使用する場合(これが好ましい)、用いるバインダー構成成分は、構成成分(a1)として上記で記載したものと同じである。この場合、バインダー系の架橋剤として、例えば、メラミン樹脂などのアミノ樹脂、より具体的にはメラミン-ホルムアルデヒド樹脂、及び/又はブロックポリイソシアネートを使用することが可能である。しかしながら、使用するバインダー構成成分が化学的に架橋しないこと、従って、ベースコート材料が化学的硬化ではなく単に物理的乾燥により硬化することも可能であり、これが好ましい。
【0120】
クリアコート材料は、知られているように、塗布及び硬化後に、保護的特性及び/又は装飾的特性を有する透明なコーティング(硬化クリアコート膜)を形成するコーティング材料である。保護的特性は、例えば、引っかき耐性及び風化安定性、特に紫外線耐性である。装飾的特性の例は、高光沢である。使用するクリアコート材料は、プラスチック仕上げの分野で慣例的に使用されるクリアコート材料であり、そのような材料の選択と使用は当業者に知られている(この点に関して、Roempp-Lexikon Lacke und Druckfarben、Georg Thieme Verlag、Stuttgart、ニューヨーク、1998年、第325頁も参照されたい)。よってクリアコート材料として、溶媒ベースの市販のクリアコート材料を使用することが可能である。ここでは2Kクリアコート材料が好ましい。本発明で用いる成分(B)をこの種の2Kクリアコート材料の硬化成分として使用することも可能である。
【0121】
工程1)
工程(1)は、任意の前処理がされている少なくとも1つの表面を有するプラスチック基材を使用する。前処理は、任意に及び好ましくは工程(1)を実施する前に行う。基材を供する前処理として考えられるものは、火炎処理プラズマ処理、及び/又はコロナ処理、とりわけ火炎処理が挙げられる。
【0122】
工程(1)で、本発明のプライマーコーティング材料組成物を、工程(6)の実施後に得られるプライマー膜が、好ましくは5~150μm、より好ましくは8~120μm、非常に好ましくは10~100μm、より具体的には10~80μmの範囲の乾燥膜厚を有するように、施与する。
【0123】
工程(2)
工程(2)は、工程(1)により施与したプライマーコーティング材料組成物の中間乾燥により、プライマー膜を得ることを想定している。
【0124】
工程(3)
工程(3)で、ベースコート組成物を、工程(6)の実施後に得られるベースコート膜が、好ましくは5~80μm、より好ましくは7.5~70μm、より具体的には10~60μm、最も好ましくは10~50μmの範囲の乾燥膜厚を有するように、施与する。
【0125】
工程(4)
工程(4)は、工程(3)により施与したベースコート組成物の中間乾燥により、ベースコート膜を得ることを想定している。
【0126】
工程(5)
工程(5)で、クリアコート組成物を、工程(6)の実施後に得られるクリアコート膜が、好ましくは20~60μm、より好ましくは25~50μmの範囲の乾燥膜厚を有するように、施与する。
【0127】
工程(6)
工程(6)は、工程(5)により施与したクリアコート組成物の中間乾燥により、クリアコート膜を得ることを想定している。
【0128】
工程(7)
工程(7)は、得られたプライマー膜、ベースコート膜、及びクリアコート膜を、<100℃の温度で一緒に硬化させることを想定している。
【0129】
工程(1)における本発明の水性プライマーコーティング材料組成物の施与、及び同様に、工程(3)及び(5)における施与は、あらゆる慣例の塗布技術によって、例えば、噴霧、ナイフコーティング、拡散、注入、浸漬、含浸、トリックリング、又はローリングによって行い、好ましくは噴霧塗布によって行う。そのような塗布の際、コーティングされる基材自体は動かずに、塗布設備又は塗布ユニットが動いてよい。或いは、コーティングされる基材が動いて、塗布ユニットは基材に対して動かないか、又は適切に動いてよい。噴霧塗布技術、例えば、圧縮空気噴霧(空気塗布)、無気噴霧、高速回転、又は静電噴霧塗布(ESTA)などを、任意に、例えば高温空気噴霧などの高温噴霧塗布と併用して用いることが好ましい。各場合とも、ESTAが特に好ましい。
【0130】
中間乾燥工程(2)、(4)、及び(6)は、施与したコーティング材料組成物それぞれの部分的な乾燥を想定している。本発明の文脈における「乾燥」という用語は、好ましくは、施与したコーティング材料それぞれから、有機溶媒及び/又は水を部分的に除去することを指す。ここで、使用するバインダーの性質に応じて、架橋反応が既に起こっている場合が無論あり得る。しかしながらいずれにしても、架橋はまだ完全ではない。換言すれば、ここでは完全に硬化したコーティング膜は生成されない。中間乾燥は、各場合とも、好ましくは室温で、すなわち10~50℃、好ましくは12~45℃の温度で、より好ましくは14~40℃の範囲の温度で、さらにより好ましくは16~35℃の温度で、非常に好ましくは18~25℃の温度で、各場合とも好ましくは5~30分、より好ましくは7~25分、さらにより好ましくは10~20分間行う。
【0131】
中間乾燥工程(2)及び(4)及び(6)は、好ましくは各場合とも空気供給により行い、供給する空気の気流速度は、好ましくは少なくとも0.3m/秒、より好ましくは少なくとも0.4m/秒、非常に好ましくは0.4~0.8m/秒の範囲又はさらに高速である。
【0132】
本発明の方法の工程(7)により一緒に硬化させることは、方法に関して特別なことはなく、しかしその代わりに、慣例の知られている技術、例えば強制空気オーブンでの加熱、又はIRランプの照射によって行う。放射線硬化系の場合、例えば、UV放射線による化学線硬化も可能である。硬化条件、特に硬化温度は、例えば、使用する基材の温度感受性に、又は使用するバインダーの選択に、従う。硬化は本発明において、<100℃、より好ましくは60℃~<100℃、特に好ましくは70℃~95℃の温度で行う。硬化段階の持続期間も個別に選択され、既に指定したもの(例えば、バインダー及び/又は硬化温度の選択)を含む要因に依存する。硬化は、例えば、5~100分、好ましくは10分~45分の期間にわたって行ってよい。
【0133】
マルチコート塗装系
本発明のさらなる主題は、マルチコート塗装系でプラスチック基材の少なくとも1つの表面を少なくとも部分的にコーティングするための本発明の方法の実施後に得ることができる、マルチコート塗装系である。
【0134】
本発明のコーティング材料系に関連して、本発明のコーティング材料組成物に関連して、及び本発明の方法に関連して上記で記載したすべての好ましい実施形態は、本発明のマルチコート塗装系に関する好ましい実施形態でもある。
【0135】
少なくとも部分的にコーティングした基材
本発明のさらなる主題は、本発明のマルチコート塗装系で少なくとも部分的にコーティングした基材である。使用する基材は、上記で既に特定したプラスチック基材、すなわち、少なくとも1種のプラスチックから構成されるか、又はそれに基づく基材である。
【0136】
本発明のコーティング材料系に関連して、本発明のコーティング材料組成物に関連して、及び本発明の方法に関連して、及び本発明のマルチコート塗装系に関連して、上記で記載したすべての好ましい実施形態は、本発明の少なくとも部分的にコーティングした基材に関する好ましい実施形態でもある。
【0137】
測定方法
1. 不揮発性部分の測定
不揮発性部分(固形分含有量)は、DIN EN ISO3251(日付:2008年6月)によって測定される。これは、試料1gを事前に乾燥させたアルミ皿に量り取り、試料が入った皿を乾燥キャビネットで60分間105℃で乾燥させ、デシケーターで冷却してから、再び計量することを伴う。使用した試料の総量に対する残渣が、不揮発性部分に対応する。
【0138】
2. 数平均及び質量平均分子量の測定
数平均(Mn)及び質量平均(Mw)の分子量は、テトラヒドロフランを溶離液とするゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって、ポリスチレン標準を使用し、ISO13885-1:2008に準拠して測定する。スチレン-ジビニルベンゼンコポリマーをカラム材料として使用する。この方法で、多分散性(質量平均分子量(Mw)の数平均分子量(Mn)に対する比率)を測定することも可能である。
【0139】
3. 膜厚の測定
膜厚は、DIN EN ISO2808(日付:2007年5月)、当該規格の5.4.4.2節の方法6Aに準拠して、測定顕微鏡を使用して測定する。
【0140】
4. 蒸気ジェット試験による接着の測定
使用する基材に施与したプライマー膜と、その上にあるベースコート及びクリアコート膜との間の接着は、以下に記載する方法によって測定し評価する。
【0141】
蒸気ジェット試験は、DIN EN ISO55662(日付:2009年12月)に準拠して行う。これに続き、等級付けシステムを使用した評価を行う。調査対象のコーティングした基材上に10cmの距離から60℃の温度及び67バールで1分間、蒸気ジェットを垂直に向ける。これに続き、グレード0~5の等級付けシステムによる接着の評価を行う。グレード0は、蒸気ジェット処理後に目に見える痕跡がないコーティングに付与し(非常に良好な接着)、グレード5は、蒸気ジェット試験後に著しくはく離した領域を示すコーティングに付与する(不十分な接着)。
【0142】
この蒸気ジェット試験は、気候チャンバー内での風化の前、及びそのような風化後に一度、行う。気候チャンバー内での風化は、DIN EN ISO6270-2に準拠してCH試験条件下(日付:2005年9月)、恒湿条件下で貯蔵して実施する。貯蔵期間中、調査対象のコーティングした基材を、大気湿度100%及び40℃で気候チャンバー内に10日間貯蔵する。気候チャンバーから取り出した後、続いて蒸気ジェット試験を、試料を取り出した24時間後に行う。
【0143】
5. ストーンチップ耐性の測定
ストーンチップ耐性は、DIN EN ISO20567-1B(日付:2017年7月)に準拠して測定し評価する。試験は常に、各場合とも基材表面の特定の位置で行う。評価は、0(最良値)~5(最低値)の範囲の特徴的な値に基づいて行う。
【0144】
6. 温度変化試験(TCT)の実施
この実施は、本発明のマルチコート塗装系又は対応する比較例のマルチコート塗装系の貯蔵を想定している。温度変化試験は、3つのいわゆるサイクルで行う。この場合、1サイクル(24)は、105℃で15時間の貯蔵、23℃±2℃で30分間の貯蔵、-40℃で8時間の貯蔵、及び23℃±2℃で30分間の貯蔵からなる。TCTに続いて、上記の蒸気ジェット試験をDIN EN ISO55662(日付:2009年12月)に準拠して行う。
【0145】
7. 化学的耐性の評価
化学的耐性は、DIN EN ISO2812-3(日付:2012年10月)又はDIN EN ISO2812-4(日付:2007年5月)に準拠して測定し評価する。評価は、0(最良値)~5(最低値)の範囲の特徴的な値に基づいて行う。
【0146】
8. 外観の測定
外観は、Byk/Gardner社のWaveスキャン機器を使用して評価する。外観を評価する目的で、レーザービームを60°の角度で調査対象の表面に照射し、測定距離10cmにわたる反射光の変動を、短波領域(0.3~1.2mm)及び長波領域(1.2~12mm)で機器によって記録する(長波=LW、短波=SW、値が小さいほど外観が良好である)。さらに、マルチコート系の表面に反映される画像の鮮明さの尺度として、特性変数「画像の明瞭さ」(DOI)を機器によって測定する(値が大きいほど外観が良好である)。さらに、用いる機器を使用して、COMBFORD値も測定する(値が大きいほど外観が良好である)。
【0147】
9. PV1200温度変化試験の実施
この実施は、本発明のマルチコート塗装系又は対応する比較例のマルチコート塗装系の、フォルクスワーゲンAG PV1200試験プロトコルの条件下における貯蔵を想定している。これに続き、上記の蒸気ジェット試験をDIN EN ISO55662(日付:2009年12月)に準拠して行う。
【実施例】
【0148】
本発明の実施例及び比較例
以下の本発明の実施例及び比較例は、本発明を説明するのに役立つが、限定的に解釈されるべきではない。特に明記しない限り、部で表す量は質量部であり、パーセントで表す量は各場合とも質量パーセントである。
【0149】
1. 2Kプライマーコーティング材料組成物P1及びP2の製造
1.1 塗料ベース成分S1
以下の表1.1に特定する成分を、記載した順序で互いに均一に混合し、塗料ベース成分S1を製造した。
【0150】
【0151】
1.2 硬化成分H1(比較例)
以下の表1.2に特定する成分を、記載した順序で互いに均一に混合し、比較例として硬化成分H1を製造した。
【0152】
【0153】
1.3 硬化成分H2
上記の1.2節及び表1.2に記載した比較例硬化成分H1を、得られる硬化成分H2が、その総質量に基づいて7.41質量%の量の3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランを含むような量で、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシランと混合した。H2は、本発明で用いる硬化成分である。
【0154】
1.4 塗料ベース成分S1を硬化剤H1と混合することにより、比較例プライマー組成物のシリーズP1が得られ、塗料ベース成分S1を硬化剤H2と混合することにより、本発明のプライマー組成物のシリーズP2が得られた。
【0155】
ここで使用した塗料ベースの硬化剤に対する混合割合は、次のとおりであった(数値はいずれの場合も質量部である)。
P1a:100部の塗料ベースS1:15部の硬化剤H1(本発明によらない)
P1b:100部の塗料ベースS1:25部の硬化剤H1(本発明によらない)
【0156】
P2a:100部の塗料ベースS1:16.2部の硬化剤H2(本発明の実施例)
P2b:100部の塗料ベースS1:27部の硬化剤H2(本発明の実施例)
【0157】
P1a及びP2aの場合、OH基のNCO基に対するモル比は1:5であった。P1b及びP2bの場合、OH基のNCO基に対するモル比は1:8であった。
【0158】
1.5 硬化成分H5a及びH5b
上記の1.2節及び表1.2に記載した比較例硬化成分H1を、得られる硬化成分が、各場合ともその総質量に基づいて、5.1質量%(H5a)又は9.6質量%(H5b)の量の市販製品Geniosil(登録商標)GF60(N-メチル[3-(トリメトキシシリル)プロピル]カルバメート)を含むような量で、この製品と混合した。H5a及びH5bは、本発明で用いる硬化成分である。
【0159】
塗料ベース成分S1を、硬化剤H5a及びH5bとそれぞれ混合することにより、本発明のプライマー組成物のシリーズP2が得られた。ここで使用した塗料ベースの硬化剤に対する混合割合は、次のとおりであった(数値はいずれの場合も質量部である)。
【0160】
P2c:100部の塗料ベースS1:15.8部の硬化剤H5a(本発明の実施例)
P2d:100部の塗料ベースS1:16.6部の硬化剤H5b(本発明の実施例)
【0161】
1.6 硬化成分H6a
上記の1.2節及び表1.2に記載した比較例硬化成分H1を、得られる硬化成分が、その総質量に基づいて、5.1質量%(H6a)の量の市販製品Geniosil(登録商標)GF80(3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン)を含むような量で、この製品と混合した。H6aは、本発明で用いる硬化成分である。
【0162】
塗料ベース成分S1を硬化剤H6aと混合することにより、本発明のプライマー組成物のシリーズP2が得られた。ここで使用した塗料ベースの硬化剤に対する混合割合は、次のとおりであった(数値はいずれの場合も質量部である)。
【0163】
P2e:100部の塗料ベースS1:15.8部の硬化剤H6a(本発明の実施例)
【0164】
1.7 硬化成分H7a及びH7b
上記の1.2節及び表1.2に記載した比較例硬化成分H1を、得られる硬化成分が、各場合ともその総質量に基づいて、5.1質量%(H7a)又は9.6質量%(H7b)の量のWacker社から市販されているシラン25013VP(ヘキサデシルトリメトキシシラン)を含むような量で、この製品と混合した。H7a及びH7bは、本発明で用いる硬化成分である。
【0165】
塗料ベース成分S1を硬化剤H7a及びH7bとそれぞれ混合することにより、本発明のプライマー組成物のシリーズP2が得られた。ここで使用した塗料ベースの硬化剤に対する混合割合は、次のとおりであった(数値はいずれの場合も質量部である)。
【0166】
P2f:100部の塗料ベースS1:15.8部の硬化剤H7a(本発明の実施例)
P2g:100部の塗料ベースS1:16.6部の硬化剤H7b(本発明の実施例)
【0167】
1.8 硬化成分H8a
上記の1.2節及び表1.2に記載した比較例硬化成分H1を、得られる硬化成分が、その総質量に基づいて、5.1質量%(H8a)の量のフェニルトリエトキシシランを含むような量で、この製品と混合した。H8aは、本発明で用いる硬化成分である。
【0168】
塗料ベース成分S1を硬化剤H8aと混合することにより、本発明のプライマー組成物のシリーズP2が得られた。ここで使用した塗料ベースの硬化剤に対する混合割合は、次のとおりであった(数値はいずれの場合も質量部である)。
【0169】
P2i:100部の塗料ベースS1:15.8部の硬化剤H8a(本発明の実施例)
【0170】
1.9 硬化成分H9a及びH9b
上記の1.2節及び表1.2に記載した比較例硬化成分H1を、得られる硬化成分が、各場合ともその総質量に基づいて、5.1質量%(H9a)又は9.6質量%(H9b)の量の1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタンを含むような量で、この製品と混合した。H9a及びH9bは、本発明で用いる硬化成分である。
【0171】
塗料ベース成分S1を硬化剤H9a及びH9bとそれぞれ混合することにより、本発明のプライマー組成物のシリーズP2が得られた。ここで使用した塗料ベースの硬化剤に対する混合割合は、次のとおりであった(数値はいずれの場合も質量部である)。
【0172】
P2j:100部の塗料ベースS1:15.8部の硬化剤H9a(本発明の実施例)
P2k:100部の塗料ベースS1:16.6部の硬化剤H9b(本発明の実施例)
【0173】
1.10 硬化成分H10a及びH10b
上記の1.2節及び表1.2に記載した比較例硬化成分H1を、得られる硬化成分が、各場合ともその総質量に基づいて、2.6質量%(H10a)又は5.1質量%(H10b)の量の、3部のDynasylan(登録商標)1124(ビス(トリメトキシシリルプロピル)アミン)とDesmodur(登録商標)N3300との反応生成物を含むような量で、この製品と混合した。H10a及びH10bは、本発明で用いる硬化成分である。
【0174】
塗料ベース成分S1を硬化剤H10a及びH10bとそれぞれ混合することにより、本発明のプライマー組成物のシリーズP2が得られた。ここで使用した塗料ベースの硬化剤に対する混合割合は、次のとおりであった(数値はいずれの場合も質量部である)。
【0175】
P2l:100部の塗料ベースS1:15.4部の硬化剤H10a(本発明の実施例)
P2m:100部の塗料ベースS1:15.8部の硬化剤H10b(本発明の実施例)
【0176】
2. 使用した水性1Kベースコート材料
2.1 ベースコート材料B1
ベースコート材料B1は、少なくとも1種の色付与顔料として赤色顔料を含む、市販の水性1Kベースコート材料である(市販製品のColorBrite(登録商標)Jupiter Red)。
【0177】
2.2 ベースコート材料B2
ベースコート材料B2は、少なくとも1種の効果顔料として市販のアルミニウム顔料を含む、市販の水性金属1Kベースコート材料である(市販製品のColorBrite(登録商標)AC Polar Silver)。
【0178】
2.3 ベースコート材料B3
ベースコート材料B3は、少なくとも1種の色付与顔料として緑色顔料を含む、市販の水性1Kベースコート材料である(市販製品のColorBrite(登録商標)AC Elbait Green)。
【0179】
2.4 ベースコート材B4
ベースコート材料B4は、少なくとも1種の色付与顔料として黒色顔料を含む、ColorBrite(登録商標)シリーズからの市販の水性1Kベースコート材料である。
【0180】
3. 2Kクリアコート材料K1及びK2の調製
市販の溶媒型2Kクリアコート材料(CM)を使用した。これは、少なくとも1種のOH官能性ポリ(メタ)アクリレートを含む塗料ベース成分と、少なくとも1種の遊離ポリイソシアネートを含む硬化成分(市販製品Evergloss(登録商標)906)を混合することによって調製した。この市販のクリアコート材料の塗料ベース成分を、以下に「塗料ベース成分S2」と称する。この市販のクリアコート材料の硬化成分を、以下に「硬化成分H3」と称する。硬化成分H3として用いる成分は、1.2節のプライマーに関連して硬化成分H1として上述したものと同じ硬化成分であった。あるいは、或る特定の場合において、H3を硬化成分H4の使用により置き換えた。硬化成分H4として用いた成分は、1.3節のプライマーに関連して硬化成分H2として上述したものと同じ硬化成分であった。
【0181】
塗料ベース成分S2を硬化剤H3及びH4と混合することにより、クリアコート組成物のシリーズK1(S2H3)及びシリーズK2(S2H4)がそれぞれ得られた。
【0182】
ここで使用した塗料ベースの硬化剤に対する混合割合は、次のとおりであった(数値はいずれの場合も質量部である)。
【0183】
K1a:100部の塗料ベースS2:35部の硬化剤H3
K2a:100部の塗料ベースS2:37.5部の硬化剤H4
【0184】
4.2 コーティングした基材の製造
4.2.1 使用した基材はプラスチック基材で、いずれの場合も10cmx14cmx0.3cmの面積の試験プレートの形状であった。使用したプラスチック基材は、PP/EPDM(ポリプロピレン/エチレン-プロピレン-ジエンゴム;Sabic(登録商標)8500)の基材であった(基材T1)。加えて、一連のさらなる基材、すなわちPC/PBT(ポリカーボネート/ポリブチレンテレフタレート;Bayblend(登録商標)T65XF901510;T2)、PC/ABS(ポリカーボネート/アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン;Xenoy(登録商標)CL101Dブラック;T3)、PU/RIM(ポリウレタン/反応射出成形;T4)、及びCRP(炭素繊維強化プラスチック、T5)を使用した。基材T1を、低速のベルト速度(0.45±0.2m/秒)で、5.2±0.2cmの距離から、ガスの体積流量設定=5.2±0.2L/分及び空気=125±5L/分で、プロパンバーナーを使用して、3回火炎に供した。
【0185】
4.2.2 その後続いて、シリーズP1又はP2のプライマー組成物、ベースコート材料B1又はB2又はB3、及びシリーズK1又はK2のクリアコート材料で、前処理がされている基材T1からT5を連続してコーティングした。
【0186】
ここで、様々な方法の変形例をいくつか実行した。
【0187】
変形例v1:
v1は、次の成分工程を含む。
【0188】
シリーズP1又はP2のプライマーを基材に施与し、これに続き、循環空気中室温(20℃)で10分間乾燥させた。次いで、80℃(基材温度)で30分間硬化を実施した。その後、ベースコート材料を施与し、循環空気中室温(20℃)で10分間乾燥を実施した。これに続いて、80℃で10分間硬化させた。その後、シリーズK1又はK2のクリアコート材料を施与し、循環空気中室温(20℃)で10分間乾燥を実施した。これに続いて、80℃で30分間硬化させた。
【0189】
変形例v2:
v2は、次の成分工程を含む。
【0190】
シリーズP1又はP2のプライマーを基材に施与し、これに続き、循環空気中室温(20℃)で10分間乾燥させた。その後、ベースコート材料を施与し、循環空気中室温(20℃)で10分間乾燥を実施した。その後、シリーズK1又はK2のクリアコート材料を施与し、循環空気中室温(20℃)で10分間乾燥を実施した。次いで、すべての膜を90℃(基材温度)で30分間一緒に硬化させた。
【0191】
変形例v3:
v3は、次の成分工程を含む。
【0192】
シリーズP1又はP2のプライマーを基材に施与し、これに続き、循環空気中室温(20℃)で10分間乾燥させた。その後、ベースコート材料を施与し、循環空気中室温(20℃)で15分間乾燥を実施した。その後、シリーズK1又はK2のクリアコート材料を施与し、循環空気中室温(20℃)で10分間乾燥を実施した。次いで、すべての膜を90℃(基材温度)で30分間一緒に硬化させた。
【0193】
変形例v4:
v4は、次の成分工程を含む。
【0194】
シリーズP1又はP2のプライマーを基材に施与し、これに続き、循環空気中室温(20℃)で10分間乾燥させた。その後、ベースコート材料を施与し、循環空気中室温(20℃)で15分間乾燥を実施した。その後、シリーズK1又はK2のクリアコート材料を施与し、循環空気中室温(20℃)で10分間乾燥を実施した。次いで、すべての膜を80℃(基材温度)で40分間一緒に硬化させた。
【0195】
変形例v5:
v5は、次の成分工程を含む。
【0196】
シリーズP1又はP2のプライマーを基材に施与し、これに続き、循環空気中室温(20℃)で10分間乾燥させた。その後、ベースコート材料を施与し、循環空気中室温(20℃)で10分間乾燥を実施した。その後、シリーズK1又はK2のクリアコート材料を施与し、循環空気中室温(20℃)で10分間乾燥を実施した。次いで、すべての膜を80℃(基材温度)で40分間一緒に硬化させた。
【0197】
変形例v6:
v6は、次の成分工程を含む。
【0198】
シリーズP1又はP2のプライマーを基材に施与し、これに続き、循環空気中室温(20℃)で15分間乾燥させた。その後、ベースコート材料を施与し、循環空気中室温(20℃)で10分間乾燥を実施した。その後、シリーズK1又はK2のクリアコート材料を施与し、循環空気中室温(20℃)で10分間乾燥を実施した。次いで、すべての膜を80℃(基材温度)で40分間一緒に硬化させた。
【0199】
各変形において、プライマーのシリーズP1又はP2を10~15μmの乾燥膜厚で、ベースコート材料B1又はB2又はB3を11~25μmの乾燥膜厚で、クリアコート材料のシリーズK1又はK2を25~35μmの乾燥膜厚で施与した。
【0200】
5.コーティングした基材の特性の調査
得られたマルチコート塗装系の様々な性能技術特性を調査した。調査は上記の方法に従って行った。これらの結果を、以下の表4aから4kに要約する。報告する結果は、4~8回の測定の平均値である(従って、いくつかの場合では小数点以下で報告する)。
【0201】
【0202】
系2対3及び4対5の結果を比較すると、本発明のプライマーコーティング組成物を使用して製造したマルチコート塗装系では、対応する比較例のプライマーコーティング組成物よりも、一貫して著しく良好な結果が達成されたことがわかる。
【0203】
【0204】
系4対5の結果を比較すると、本発明のプライマーコーティング組成物を使用して製造したマルチコート塗装系では、特にパンクレアチンに関する化学的耐性に関して、対応する比較例のプライマーコーティング組成物よりも、良好な結果が達成されたことがわかる。
【0205】
【0206】
系4対5及び6対7の結果を比較すると、本発明のプライマーコーティング組成物を使用して製造したマルチコート塗装系では、特にLWでの外観に関して、対応する比較例のプライマーコーティング組成物よりも、良好な結果が達成されたことがわかる。
【0207】
【0208】
系8対系9の結果を比較すると、本発明のプライマーコーティング組成物を使用して製造したマルチコート塗装系では、特にLWでの外観に関して、対応する比較例のプライマーコーティング組成物よりも良好な結果が達成されたことがわかる。
【0209】
【0210】
系10~14の結果を比較すると、本発明のプライマーコーティング組成物を使用して製造したマルチコート塗装系では、異なるプラスチック基材について、各場合とも良好な結果が達成されたことがわかる。
【0211】
【0212】
結果から、系15及び16の両方で良好な結果が達成されたことがわかる。
【0213】
【0214】
系17対18の結果を比較すると、本発明のプライマーコーティング組成物を使用して製造したマルチコート塗装系では、特にCC後の蒸気ジェット試験に関して、対応する比較例のプライマーコーティング組成物よりも良好な結果が達成されたことがわかる。
【0215】
【0216】
結果から、系19及び20の両方で良好な結果が達成されたことがわかる。
【0217】
【0218】
系21対22の結果を比較すると、本発明のプライマーコーティング組成物を使用して製造したマルチコート塗装系では、特にCC後の蒸気ジェット試験に関して、対応する比較例のプライマーコーティング組成物よりも良好な結果が達成されたことがわかる。
【0219】
【0220】
結果から、系23及び24の両方で良好な結果が達成されたことがわかる。
【0221】
【0222】
系25及び26対27の結果を比較すると、本発明のプライマーコーティング組成物を使用して製造したマルチコート塗装系では、特にCC後の蒸気ジェット試験に関して、対応する比較例のプライマーコーティング組成物よりも良好な結果が達成されたことがわかる。