(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】スイッチング要素に使用するための液晶媒体
(51)【国際特許分類】
G02F 1/13 20060101AFI20240116BHJP
C09K 19/02 20060101ALI20240116BHJP
C09K 19/12 20060101ALI20240116BHJP
C09K 19/30 20060101ALI20240116BHJP
C09K 19/34 20060101ALI20240116BHJP
C09K 19/54 20060101ALI20240116BHJP
C09K 19/56 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
G02F1/13 505
C09K19/02
C09K19/12
C09K19/30
C09K19/34
C09K19/54 B
C09K19/56
G02F1/13 500
(21)【出願番号】P 2020531017
(86)(22)【出願日】2018-12-03
(86)【国際出願番号】 EP2018083258
(87)【国際公開番号】W WO2019110459
(87)【国際公開日】2019-06-13
【審査請求日】2021-11-30
(32)【優先日】2017-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】593033142
【氏名又は名称】メルク・パテント・ゲゼルシヤフト・ミツト・ベシユレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent GmbH
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250, 64293 Darmstadt
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】パウル フェルブント
(72)【発明者】
【氏名】ティース デ ヨング
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル ユンゲ
(72)【発明者】
【氏名】ミラ フィッシャー
【審査官】岩村 貴
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/041872(WO,A1)
【文献】国際公開第2010/022891(WO,A1)
【文献】中国特許第104016830(CN,B)
【文献】特表2016-505671(JP,A)
【文献】特開2001-123170(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0012658(US,A1)
【文献】特開平08-304606(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103293738(CN,A)
【文献】特開2001-180264(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/13
G02F 1/1334
G02F 1/137-1/139
C09K 19/02
C09K 19/54
C09K 19/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓要素であって、光学的に透明な状態と散乱状態との間で動作可能かつ電気的にスイッチング可能であり、
- 1種以上のメソゲン化合物および1種以上のキラル化合物を含む液晶媒体であって、95℃以上の透明点を有する液晶媒体と、
- 前記液晶媒体中の、1種以上の重合性メソゲン化合物の重合により得られる1種以上のポリマー構造を含むポリマー成分と、
からなる材料を含有するスイッチング層を含み、
前記1種以上の重合性メソゲン化合物は、2つ以上の重合性基を含有する少なくとも1つの重合性メソゲン化合物を含み、
前記ポリマー成分は、前記材料の全含量に対して5重量%以下の量で前記液晶媒体中に含まれ、
前記ポリマー成分は、前記液晶媒体中にポリマーネットワークを含み、
前記光学的に透明な状態において、前記窓要素は、ASTM D 1003に従って測定された10%未満のヘイズを有する、
窓要素。
【請求項2】
請求項1記載の液晶媒体が、前記媒体の全含量に対して少なくとも15重量%の式I
【化1】
[式中、
R
1およびR
2が、それぞれ独立して、F、Cl、CF
3、OCF
3および置換されていないか、CNもしくはCF
3により一置換されているかまたはハロゲンにより一置換もしくは多置換されている、1~15個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖アルキルもしくはアルコキシまたは2~15個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖アルケニルを指し、1つ以上のCH
2基が、各場合において、それぞれ独立して、酸素原子同士が直接結合しないように、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-または-C≡C-により置き換えられていてもよく、
A
11が、
【化2】
を指し、
nが、0または1を指し、
A
21、A
31およびA
41が、それぞれ独立して、
【化3】
[式中、Lが、各出現において、同一または異なって、F、ClおよびBrから選択されるハロゲンである]
を指す]
で示される1種以上のメソゲン化合物を含有する、請求項1記載の窓要素。
【請求項3】
前記液晶媒体が、さらに、式IIおよびIII
【化4】
[式中、
R
3、R
4、R
5およびR
6が、それぞれ独立して、F、CF
3、OCF
3、CNおよび置換されていないか、CNもしくはCF
3により一置換されているかまたはハロゲンにより一置換もしくは多置換されている、1~15個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖アルキルもしくはアルコキシまたは2~15個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖アルケニルを指し、1つ以上のCH
2基が、各場合において、それぞれ独立して、酸素原子同士が直接結合しないように、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-または-C≡C-により置き換えられていてもよく、
L
1、L
2、L
3、L
4およびL
5が、それぞれ独立して、HまたはFを指す]
で示される化合物の群から選択される1種以上のメソゲン化合物を含む、請求項1または2記載の窓要素。
【請求項4】
前記液晶媒体が、正の誘電異方性Δεおよび20℃、589nmで測定された、0.13以上の光学異方性Δnを示し、
前記液晶媒体に含まれる前記1種以上のキラル化合物が、5μm
-1以上の螺旋ねじれ力の絶対値を有する、請求項1から3までのいずれか1項記載の窓要素。
【請求項5】
窓要素の製造方法であって、
(i)1種以上のメソゲン化合物、1種以上のキラル化合物および1種以上の重合性メソゲン化合物からなる液晶媒体を、それぞれ電極が設けられた2つの対向する透明基板間の層として提供する工程であって、
前記液晶媒体は、95℃以上の透明点を有し、0.55μm以上のコレステリックヘリックスのピッチを示し、
前記1種以上の重合性メソゲン化合物は、前記媒体の全含量に対して5重量%以下の量で前記媒体中に含有され
、
前記1種以上の重合性メソゲン化合物は、2つ以上の重合性基を含有する少なくとも1つの重合性メソゲン化合物を含むものとする工程と、
(ii)前記1種以上の重合性メソゲン化合物を、層中に印加された電界の存在下で重合させることにより、ポリマーネットワークを形成し、重合を光重合により行い、前記印加された電界により、ホメオトロピック配向が誘引される、工程とからなる、
方法。
【請求項6】
前記電極が、各基板の内面の上方に導電層として配置されており、好ましくは、前記導電層がそれぞれ、パッシベーション層上に配置されており、より好ましくは、パッシベーション層間に配置されており、場合により、前記液晶媒体と直接接触している配列層がさらに設けられている、請求項5記載の方法。
【請求項7】
工程(ii)に次いで、熱処理を、電界の存在下または非存在下で行う、請求項5または6記載の方法。
【請求項8】
AC電圧V1を印加することにより光学的に透明な状態にスイッチング可能であり、AC電圧V2を印加することにより散乱状態にスイッチング可能であり、V1>V2である、請求項1から4のいずれか1項記載の窓要素。
【請求項9】
前記液晶媒体が、散乱状態で0.55μm以上のコレステリックヘリックスのピッチを示す、請求項1から4まで、および8のいずれか1項記載の窓要素。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶媒体であって、1種以上のメソゲン化合物、1種以上のキラル化合物および1種以上の重合性メソゲン化合物を含み、該媒体が0.55μm以上のピッチおよび80℃以上の透明点を示し、1種以上の重合性メソゲン化合物が該媒体の全含量に対して5重量%以下の量で含有される、液晶媒体に関する。さらに、本発明は、該媒体から得ることができる変調材料ならびに該材料を含有するスイッチング層および窓要素に関する。
【0002】
光強度変調器、例えば、光シャッターは、液晶(LC)に基づくことができる。原則として、このような光シャッターは、光の散乱または光の吸収による場合がある。光散乱を使用するLC系光シャッターは、いわゆるポリマー分散液晶(PDLC)、ポリマーネットワーク液晶(PNLC)およびコレステリック液晶(CLC)デバイスを含む。これらの散乱型デバイスは、透明状態と半透明状態との間を切り替えることができる。
【0003】
LC系光シャッターまたは変調器は、自動車および建築用途のスイッチング可能な窓として使用することができる。ここで、散乱モードで動作する光シャッターまたは光変調器は、特に、プライバシー窓として使用することができる。また、光の散乱は、直射日光照射によるぎらつきまたはまぶしさを低減させるのに有用である場合がある。
【0004】
状態間のスイッチングは、例えば、熱的に制御することができる。しかしながら、多くの場合、電気的スイッチングを使用するのが適切であり、有利でさえある場合がある。デバイスが非散乱状態から散乱状態に切り替えられる時、光の透過率は、曇った、濁った、拡散した、かすんだまたは不透明なものとしても知覚され得る半透明な外観が生じるように変化する。
【0005】
国際公開第2016/173693号には、スイッチング状態のうちの少なくとも一方において前方散乱特性を有し、透明状態から半透明または不透明状態へのスイッチングを容易にする、スイッチング要素に使用するための液晶媒体を含むスイッチング層が記載されている。
【0006】
国際公開第2009/151716号には、双安定デュアル周波数ポリマー安定化コレステリック液晶材料に基づくスイッチング可能な液晶窓が記載されている。ここで、この液晶材料は、第1の周波数を有する電圧パルスの印加時に透明状態から光散乱状態に、第2の周波数を有する電圧パルスの印加時に光散乱状態から透明状態に切り替わる。
【0007】
国際公開第00/60407号には、散乱モードと透明モードとの動作を有する電気光学グレージング構造が記載されている。
【0008】
当技術分野において、改善された化学的、物理的および電気光学的特性を有し、特に、スイッチング要素および窓要素に使用するための液晶媒体が必要とされている。さらに、当技術分野において、プライバシー用途のための均一な外観を伴って適切な散乱を提供することができ、適切な低電圧および低エネルギー消費で動作させることができ、例えば、電気的破壊および光安定性に関して、適切な信頼性および安定性を有することができる、スイッチング可能なデバイスが必要とされている。
【0009】
したがって、本発明の目的は、例えば、電気的破壊に対する良好な安定性および好ましく低い動作電圧または低エネルギー消費を有し、十分効率的であり、十分に均一な散乱を示すことができる、スイッチング可能なデバイス、特に、窓要素を提供することである。別の目的は、このようなデバイスを製造するための効率的かつ容易な方法を提供することである。
【0010】
本発明のさらなる目的は、特に、良好な信頼性および安定性、特に、光安定性および特に、UV光安定性を示し、適切に高い透明点を有する広い液晶相を示し、スイッチング要素(switching element)および窓要素(window element)、特に散乱モードを有するスイッチング可能な要素に特に有用な、改善された液晶媒体および変調材料を提供することである。さらに、該液晶媒体は、好ましく高い電圧保持比(VHR)、良好な低温安定性および保存に適した安定性と共に、十分に高い光学異方性を有することが望ましい。本発明のさらなる目的は、下記詳細な説明から当業者には直ちに明らかである。
【0011】
これらの目的は、独立請求項に定義された主題により解決される。一方、好ましい実施形態は、各従属請求項で説明され、以下でさらに記載される。
【0012】
本発明は、特に、主な態様、好ましい実施形態および特定の特徴を含む下記項を提供し、これらはそれぞれ、単独でおよび組み合わせて、上記目的の解決に寄与し、最終的に、さらなる利点を提供する。
【0013】
本発明の第1の態様は、窓要素であって、光学的に透明な状態と散乱状態との間で動作可能かつ電気的にスイッチング可能であり、
- 1種以上のメソゲン化合物および1種以上のキラル化合物を含む液晶媒体であって、該液晶媒体は、80℃以上の透明点を有する液晶媒体と、
- 1種以上の重合性メソゲン化合物の重合により得られるかまたはそれからそれぞれ得ることができる1種以上のポリマー構造を含むポリマー成分と、
を含む材料を含有するスイッチング層を含み、
ポリマー成分は、該材料の全含量に対して5重量%以下の量で該材料中に含まれる、窓要素を提供する。
【0014】
本発明によれば、自動車および建築用途のためのスイッチング可能な窓に使用することができ、必要に応じてプライバシーモードを提供するのに特に有用かつ効率的である、すなわち、視界接触を有する状態と視覚バリアを与えるプライベートとの間の切り替え可能性を提供する、有利な窓要素が提供される。さらに、スイッチングは高速であることができ、窓要素は、例えば、伝統的な日よけまたはブラインドと比較して、顕著な利点を提供することができる最小限のスペース要求で設置することができる。
【0015】
本発明に係る窓要素は、光の通過、特に、日光(ただし、人工光源、例えば、ランプおよび光器具も)の通過を調節するのに有用である。
【0016】
本発明に係る窓要素は、外部ファサードの窓に、また、部屋の内部、例えば、部屋間の隔壁および部屋または空間の個々の区画を隔てるための要素にも有利に利用することができる。この場合、窓要素を透明から散乱にスイッチングすることにより達成されるプライバシーにより、部屋の異なる部分間の視覚バリアを生成することができる。
【0017】
好ましい実施形態によれば、窓要素のスイッチング層に含まれる材料に含まれる液晶媒体は、散乱状態で0.55μm以上のピッチを示す。
【0018】
驚くべきことに、上記および以下に記載された液晶媒体およびポリマー成分を含む材料を含有するスイッチング層を窓要素に含ませることにより、改善されたデバイスを得ることができることが見出された。特に、少なくとも1種の重合性メソゲン化合物の重合から得ることができるポリマー構造を含む比較的少量のポリマー成分と組み合わせて、ここで定義されたように高い透明点および長いピッチを有するコレステリックまたはキラルネマチック媒体を提供することにより、驚くべきことに、好ましい透明状態、すなわち、好ましく均質な低ヘイズおよび光学的に透明な状態と、均質かつ色中立の外観と共に向上した散乱効率を有する散乱状態を有するデバイスを与えることができる。このデバイスは、電圧を印加することにより状態間で適宜切り替えることができる。
【0019】
特に、本明細書に記載された長ピッチコレステリック媒体とポリマー成分の存在との組み合わせにより、適切に広い角度散乱分布を有する予想外に強い散乱を与えることができる。これは、要素内に単一のスイッチング層のみを予め設けることにより、適切なプライバシーモードをもたらすことができるという点で有益である。加えて、スイッチング層の厚みは、比較的小さくあることができ、特に、実質的に35μm未満であることができる。それにより、動作電圧および消費電力が低減し、材料の使用も減少する。
【0020】
したがって、本発明によれば、有利な低ヘイズ透明状態と、不要な色効果が好ましく回避されまたは最小化され、十分に均一な散乱を伴う有利な不透明状態との両方を有する、プライバシー用途のためのスイッチング可能な窓要素を得ることができる。加えて、このデバイスは、さらなる利益、例えば、電気的破壊および光の安定性、特に、UV光の安定性に関して良好な信頼性、耐久性および安定性ならびに好ましく低いスイッチング電圧および低エネルギー消費を提供することができる。
【0021】
本発明の別の態様は、窓要素の製造方法であって、(i)1種以上のメソゲン化合物、1種以上のキラル化合物および1種以上の重合性メソゲン化合物を含む液晶媒体を、それぞれ電極が設けられた2つの対向する透明基板間の層として提供する工程であって、該液晶媒体が80℃以上の透明点を有し、0.55μm以上のピッチを示し、1種以上の重合性メソゲン化合物が該媒体の全含量に対して5重量%以下の量で該媒体中に含有されるものとする工程と、次いで(ii)1種以上の重合性メソゲン化合物を、層中に印加された電界の存在下で重合させる工程とを含む、方法に関する。
【0022】
驚くべきことに、この方法は、本明細書に記載された有利な特性を示す窓要素を製造するための容易かつ効率的なプロセスを提供する。
【0023】
したがって、本発明の別の態様では、光の通過を変調するための窓要素が提供される。ここで、窓要素は、上記および以下に記載された方法を行うことにより得られるかまたはそれからそれぞれ得ることができる。
【0024】
本発明の別の態様は、液晶媒体であって、1種以上のメソゲン化合物、1種以上のキラル化合物および1種以上の重合性メソゲン化合物を、該媒体の全含量に対して5重量%以下の量で含み、該媒体が0.55μm以上のピッチおよび80℃以上の透明点を示す、液晶媒体に関する。
【0025】
驚くべきことに、本発明に係る液晶媒体を提供することにより、スイッチング層および窓要素のための変調材料を製造するのに特に有用である、改善された特性、特に、適切に高い透明点および適切に長いピッチを有する媒体を得ることができることが見出された。加えて、該媒体は、さらなる利益、例えば、適切に高い光学異方性、好ましく高い電圧保持比(VHR)および良好な光安定性を提供することができる。
【0026】
本発明のさらなる態様では、変調材料であって、1種以上のメソゲン化合物および1種以上のキラル化合物を含む液晶媒体であって、該液晶媒体は、80℃以上の透明点を有し、0.55μm以上のピッチを示す液晶媒体と、さらに、1種以上の重合性メソゲン化合物の重合により得られるかまたはそれからそれぞれ得ることができる1種以上のポリマー構造を含むポリマー成分とを含み、ポリマー成分は、該材料の全含量に対して5重量%以下の量で該材料中に含有される、変調材料が提供される。
【0027】
本発明に係る変調材料は、スイッチング要素、特に、光の散乱に基づくスイッチング要素および窓要素に有益に使用することができる。本発明に係る変調材料は、好ましくは、電磁放射線、好ましくは、光、特に、日光(ただし、人工光源からの光も)の通過を調節するためのデバイスに使用される。
【0028】
本発明に係る変調材料は、CLC散乱型デバイスに使用されるのが特に好ましい。例えば、散乱効率または均一性および散乱効果の外観に関して、該材料がここで定義されたポリマー成分と組み合わせて比較的長いピッチおよび好ましく高い透明点を有するキラルネマチックまたはコレステリック液晶媒体を含有する場合、特に、いわゆるポリマー安定化コレステリックテクスチャ(PSCT)が提供される場合に、特定の利益を得ることができることが、現在認識されている。
【0029】
本発明によれば、本明細書に記載された液晶媒体および変調材料は、スイッチング層に有益に配置され、使用することができる。このため、さらなる態様では、本発明に係る媒体またはそれぞれの材料を含む、好ましくは、それらからなるスイッチング層が提供される。
【0030】
スイッチング層は、光学的に透明な状態と散乱状態とで電気的にスイッチング可能かつ動作可能なスイッチング要素を与えるように、2つの基板間に配置することができる。
【0031】
重合安定化により、散乱状態での散乱性能および効率についての利益を与えることができ、一方で、透明状態で好ましい透明度を達成することも可能である。
【0032】
本発明を限定するものではないが、以下に、本発明を、態様、実施形態および特定の特徴の詳細な説明により例証し、特定の実施形態を、より詳細に説明する。
【0033】
本明細書において、「液晶」(LC)という用語は、好ましくは、幾らかの温度範囲において液晶中間相を有する材料または媒体(サーモトロピックLC)に関する。それらは、メソゲン化合物を含有する。
【0034】
「メソゲン化合物」および「液晶化合物」という用語は、1種以上のカラミチック(ロッドまたはボード/ラス形状)またはディスコチック(ディスク形状)メソゲン基、すなわち、液晶相または中間相挙動を誘引する能力を有する基を含む化合物を意味する。
【0035】
LC化合物または材料およびメソゲン化合物またはメソゲン基を含む材料は、必ずしも液晶相自体を示す必要はない。それらが他の化合物との混合物においてのみ、液晶相挙動を示すことも可能である。これは、低分子量の非反応性液晶化合物、反応性または重合性液晶化合物および液晶ポリマーを含む。
【0036】
カラミチックメソゲン化合物は、通常、互いに直接または連結基を介して連結している1つ以上の芳香族または非芳香族環状基からなるメソゲンコアを含み、場合により、メソゲンコアの末端に結合している末端基を含み、場合により、メソゲンコアの長辺に結合している1種以上の側鎖基を含み、これらの末端基および側鎖基は、通常、例えば、カルビルもしくはヒドロカルビル基、極性基、例えば、ハロゲン、ニトロ、ヒドロキシ等または重合性基から選択される。
【0037】
単純化の目的で、「液晶」または「液晶」材料または媒体という用語は、液晶材料または媒体とメソゲン材料または媒体との双方に使用され、逆もまた同様であり、「メソゲン」という用語は、材料のメソゲン基に使用される。
【0038】
「非メソゲン化合物または材料」という用語は、上記定義されたメソゲン基を含有しない化合物または材料を意味する。
【0039】
本明細書で使用する場合、「ポリマー」という用語は、1つ以上の異なる種類の繰り返し単位(分子の最小構成単位)の骨格を包含し、一般に公知の「オリゴマー」、「コポリマー」、「ホモポリマー」等の用語を含む分子を意味すると理解されるであろう。さらに、ポリマーという用語は、ポリマー自体に加えて、開始剤、触媒およびこのようなポリマーの合成に付随する他の要素からの残留物を含むと理解されるであろう。この場合、このような残留物は、ポリマーに共有結合的に組み込まれていないと理解される。さらに、このような残留物および他の要素は、通常、重合後精製プロセスの間に除去されるが、典型的には、ポリマーと混合されるかまたは共混合され、その結果、それらは、一般的には、ポリマーが容器間または溶媒もしくは分散媒体の間で移動される場合に、ポリマーに残留する。
【0040】
「重合」という用語は、複数の重合性基またはこのような重合性基を含有するポリマー前駆体(重合性化合物)同士を結合させることによりポリマーを形成する化学的プロセスを意味する。
【0041】
1つの重合性基を有する重合性化合物は、「一反応性」化合物とも呼ばれ、2つの重合性基を有する化合物は、「二反応性」化合物とも呼ばれ、2つ以上の重合性基を有する化合物は、「多反応性」化合物とも呼ばれる。重合性基を有さない化合物は、「非反応性」または「非重合性」化合物とも呼ばれる。
【0042】
「薄膜」および「層」という用語は、多少を問わず、顕著な機械的安定性を有する剛性または可撓性の自己支持または自立薄膜または層および支持基板上または2つの基板間の被覆または層を含む。
【0043】
「キラル」という用語は、一般的には、その鏡像に重ね合わせることができない物体を説明するのに使用される。対照的に、「アキラル」(非キラル)物体は、それらの鏡像と同一である物体である。本発明に係る媒体は、キラリティーを示す。これは、キラルネマチック液晶としても公知のコレステリック液晶を提供することにより達成することができる。キラルネマチックおよびコレステリックという用語は、特に断らない限り、本明細書において同義的に使用される。
【0044】
本明細書において、
【化1】
は、trans-1,4-シクロヘキシレンを指す。
【0045】
本明細書において、特に断らない限り、全ての濃度は、重量%で与えられ、それぞれの完全な混合物に関する。
【0046】
全ての温度は、摂氏(℃)で与えられ、全ての温度差は摂氏で与えられる。全ての物理的特性および物理化学的または電気光学的パラメータは、特に断らない限り、20℃の温度について測定され、与えられる。
【0047】
光の透過および散乱は、好ましくは、380nm~780nmのスペクトル範囲の電磁放射線の透過および散乱に関する。
【0048】
スイッチングは、好ましくは、バイナリ状態間のスイッチングを指し、ここで、好ましくは、一方の状態は非散乱であり、人間の目に対して実質的に透明または透明に見え、別の状態は散乱であるかまたは拡散透過性を有し、人間の目に対して半透明または不透明に見える。
【0049】
ただし、本発明に係るスイッチング層が、さらなるスイッチング状態、特に、中間状態を有することも可能である。
【0050】
したがって、本発明によれば、好ましくかつ望ましくは、完全にプライベートな状態と外部または隣接する空間への視界接触を有する状態との間のスイッチングを得ることができる。
【0051】
本発明に係る光学的に透明な状態において、窓要素は、好ましくは、ASTM D 1003に従って測定された、20%未満、より好ましくは、15%未満、さらにより好ましくは、10%未満、特に、5%未満のヘイズを有する。
【0052】
本発明に係る散乱状態では、窓要素は、好ましくは、ASTM D 1003に従って測定された、75%超、より好ましくは、85%超、さらにより好ましくは、90%超のヘイズを有する。散乱状態において、本発明に係る窓要素は、ASTM D 1003に従って測定された95%以上のヘイズを有するのが特に好ましい。
【0053】
ヘイズの測定のために、BYK-Gardner製のヘイズメーターを使用することができる。分光光度計を使用することも可能である。
【0054】
本発明に係るスイッチングは、好ましくは、電気的スイッチングを意味する。電気的スイッチングは、典型的には、基板、例えば、ガラス基板に電極を設けることにより達成することができる。実施形態において、導電層が基板上に提供され、導電層は、透明導電性物質、例えば、透明導電性酸化物、好ましくは、インジウムスズ酸化物(ITO)またはSnO2:F、特にITOまたは導電性ポリマーまたは薄い透明金属および/もしくは金属酸化物層、例えば、銀を含むかまたはそれらから形成される。導電層には、好ましくは、電気的接続部が設けられる。電圧は、好ましくは、電池、蓄電池、スーパーキャパシタまたは外部電源により、より好ましくは、外部電源により供給される。
【0055】
実施形態では、基板上に、例えば、ポリイミド(PI)製の配向層が設けられる。導電層および配向層は、基板上に共に設けられるのが特に好ましい。この場合、配向層または配列層は、配向層がLC媒体に接触するように、導電層の上部に設けられる。配向層、好ましくは、ポリイミド層は、特に界面において、液晶媒体の分子の均質または平面配向あるいはホメオトロピック配向を提供するように配置することができる。特定の実施形態では、ラビングされたポリイミドが、いわゆるツイステッドネマチック(TN)ジオメトリで使用されるように、90°の方向の差を有する両方の基板上で使用される。
【0056】
特定の実施形態では、プレチルト角を有する配列層が使用され、例えば、TNジオメトリについては0°~20°の範囲または垂直配向(VA)ジオメトリについては80°~90°の範囲のプレチルト角を有する。
【0057】
代替的には、別の好ましい実施形態によれば、配向層のない基板が使用される。驚くべきことに、追加の層として配向層、例えば、ポリイミド層を設けることを、有益に回避することができ、それでも、有効かつ効率的なスイッチング挙動を依然として実現することができることが見出された。
【0058】
基板上にパッシベーション層またはバリア層を設けることも可能であるが、代替的には、配向層に加えて、例えば、酸化ケイ素または窒化ケイ素を含むパッシベーション層、好ましくは、酸化ケイ素または窒化ケイ素からなるパッシベーション層を設けることも可能である。パッシベーション層および配向層の両方が基板上に設けられる場合、それらは、配向層が最上部になるように、すなわち、LC媒体に接触するように配置される。
【0059】
第1の態様では、本発明は、窓要素であって、光学的に透明な状態と散乱状態との間で動作可能かつ電気的にスイッチング可能であり、スイッチング層を含む、窓要素に関する。スイッチング層は、1種以上のメソゲン化合物および1種以上のキラル化合物を含む液晶媒体と、1種以上の重合性メソゲン化合物の重合により得られるかまたはそれからそれぞれ得ることができる1種以上のポリマー構造を含むポリマー成分とを含む材料を含有する。
【0060】
本発明によれば、ポリマー成分は、該材料の全含量に対して5重量%以下、好ましくは、3.5重量%以下、より好ましくは、2.5重量%以下、特に、1重量%以下の量で該材料中に含有される。好ましい実施形態では、ポリマー成分は、該材料の全含量に対して0.5~1.5重量%の範囲の量で該材料中に含有される。
【0061】
ポリマー成分は、1種以上の重合性メソゲン化合物の重合により得られるかまたはそれからそれぞれ得ることができる1種以上のポリマー構造を含む。ポリマー成分は、もっぱら1種以上の重合性メソゲン化合物を重合させることから得られること、すなわち、ポリマー成分は、前駆体として1種以上の重合性メソゲン化合物のみに基づくかまたはそれぞれそれによってのみ得られる1種以上のポリマー構造からなるのが好ましい。ポリマー成分は、1種、2種または3種の重合性メソゲン化合物、さらにより好ましくは、1種または2種の重合性メソゲン化合物を重合させることにより、特にスイッチング層において、in situで調製されるのが特に好ましい。
【0062】
本発明に係る重合性メソゲン化合物は、メソゲン基および1つ以上の重合性基、すなわち、重合に適した官能基を含有する。これらの化合物は、反応性メソゲン(RM)またはメソゲンモノマーとしても公知である。RMは、一反応性および/または二反応性もしくは多反応性であることができる。
【0063】
本発明に従って使用される重合化合物は、反応性メソゲンのみを含む、すなわち、全ての反応性モノマーがメソゲンであるのが好ましいが、代替的な実施形態では、1種以上の非メソゲン重合性化合物と組み合わせて、1種以上のRMを使用することも可能である。
【0064】
重合性化合物およびメソゲン化合物は、得られるポリマー成分および変調材料中のLC媒体の屈折率を一致させることを考慮して選択することができ、この選択は、透明状態の改善に好ましく寄与することができる。
【0065】
本発明によれば、該液晶媒体は、特に窓要素のスイッチング層に使用される場合、80℃以上、より好ましくは、90℃以上、さらにより好ましくは、95℃以上、さらにより好ましくは、98℃以上、さらにより好ましくは、102℃以上、特に、115℃以上の透明点を有する。該媒体は、90℃~160℃、より好ましくは、100℃~150℃の範囲の透明点を有するのが好ましい。
【0066】
全ての物理的特性および物理化学的または電気光学的パラメータは、特に、「Merck Liquid Crystals, Physical Properties of Liquid Crystals」, Status Nov. 1997, Merck KGaA, Germanyに従って、一般公知の方法により決定される。
【0067】
透明点、特に、キラルネマチック相またはコレステリック相と等方性相との間の相転移温度は、一般公知の方法により、例えば、Mettlerオーブン、偏光顕微鏡下のホットステージまたは示差走査熱量測定(DSC)分析を使用して測定し、決定することができる。本発明によれば、透明点は、好ましくは、DSCにより決定される。
【0068】
さらに、本発明によれば、該液晶媒体は、好ましくは、窓要素のスイッチング層に使用される場合、散乱状態で0.55μm以上のピッチを示す。
【0069】
ここで提供されているコレステリック媒体またはキラルネマチック媒体は、比較的長いピッチ、特に、好ましくは780nm超のブラッグ型反射を与えるピッチを有する。この場合、平面テクスチャも、可視光スペクトルにわたって好ましい透過を与えることができる。
【0070】
本明細書において、ピッチは、コレステリックヘリックスのピッチpを意味する。ここで、ピッチpは、CLCの配向軸(ディレクタ)が2π回転するための距離である。好ましい実施形態では、該媒体は、0.75μm以上、さらにより好ましくは、1.00μm以上、特に、1.50μm以上のピッチを示す。
【0071】
好ましくは、1種以上のキラルドーパントの濃度は、得られるキラルピッチが0.55μm~10μmの範囲にあるように設定される。
【0072】
本発明によれば、ピッチは、選択反射極大波長λmaxの、特に20℃でのNIR分光測定により測定される。ピッチpは、λmaxの測定値から、等式λmax=n(λmax)*p(式中、n(λmax)は、λmaxでの屈折率である)を使用して決定される。
【0073】
特に20℃で螺旋ねじれ力HTPを測定し、決定されたピッチを確認するために、当技術分野において公知のウェッジセル法を使用することも可能である。
【0074】
驚くべきことに、本発明に係る窓要素は、効率的で十分に強い散乱、特に、拡散透過率を与え、目には均一な外観を有する散乱状態に切り替えて作動させることができ、特に、より大きな窓には望ましいように、大きな面積にわたって作動させることができる。この均一な外観は、有利には、色中立な外観を含み、これは、望ましくない色効果またはそれぞれの色アーチファクトを最小限にしまたは回避することさえできることを意味する。
【0075】
コレステリック材料を含有する層では、固有のキラル周期性のために、色効果が生じる場合があることが認識されており、例えば、材料が直接的な非拡散光で照射される場合、異なる色が異なる角度で透過される場合がある。このような場合、透過光は、軸外で観察されるときに着色され、窓要素および窓は、軸外で観察されるときに着色されて見える場合がある。ここで、観察される色は、観察角度により決まる。この効果は、虹のような外観に似ている場合がある。多くの用途において、このような色効果は望ましくないことがさらに認識されている。
【0076】
本発明に係るスイッチング層に提供される材料は、例えば、材料領域、特に、境界、欠陥またはランダム構造からの散乱により、所望のヘイズで十分な散乱を与えることができる、一方で、周期構造により引き起こされる入射光の回折を、特に、ポリマー成分の導入による、関連する長さスケール上の周期性を十分に摂動または破壊することにより実質的に抑制しまたは回避することができると考えられる。このことは、驚くべきことに、少量でのみ含有される場合であっても、この点で有効であることができる。
【0077】
本発明に係る窓要素により、光がそれを通過することが可能となる。好ましくは、窓、隔離ガラスユニットを含むガラスユニット、ファサード要素、部屋の仕切り、分離壁等に使用し、含ませることができ、要求に応じて、スイッチング可能なプライバシーモードを提供する要素として使用することができる。本発明に係る窓要素は、代替的にまたは付加的に、アンチグレア制御を提供することもできる。
【0078】
スイッチング可能な散乱セルまたはデバイスとしての窓要素は、外部空間から内部空間、例えば、建物、例えば、住宅建物、オフィス建物もしくは商業目的に使用される建物または車両の内部への光の通過を調節しまたは変調するのに使用することができる。また、窓要素は、内部空間から別の内部空間への光の通過を調節しまたは変調するのに使用することができ、特に、異なる機能領域または部屋を分離する構造要素では、少なくとも1つの空間において、他の空間からの直接視認を遮断するプライバシーモードが、一時的に、すなわち、所与の期間だけ望まれる(ただし他の期間では望まれない)。
【0079】
実施形態において、本発明に係る窓要素を含む窓は、好ましくは、内部用途に提供される。窓要素は、例えば、積層または接着、好ましくは、ペインまたはガラスユニットへの積層により、窓に適切に一体化されてもよい。
【0080】
窓要素および窓要素を含む窓全体も、好ましくは、光源を何ら含まない。このため、窓を透過する任意の光は、外部光源、例えば、太陽または家庭用照明装置から生じる。
【0081】
窓要素は、好ましくは、0.5m2超、より好ましくは、1m2超、さらにより好ましくは、3m2超のサイズを有する。実施形態において、窓要素は、0.25m2~15m2の範囲、より好ましくは、0.5m2~10m2の範囲内の面積を有する。
【0082】
窓要素は、種々の形状、例えば、正方形、長方形、三角形または多角形を有することができる。
【0083】
好ましくは、窓要素および窓は、偏光子を含有しない。
【0084】
本発明によれば、スイッチング層および窓要素の状態は、電極により印加される電界を使用して制御される。電極は、好ましくは、被覆の形態で基板上に配置された透明電極である。被覆は、一般的には、スイッチング層に面する基板側または表面に適用される。
【0085】
好ましくは、電極は、それらが隣接するようにはパターン化されずかつ/または構造化されない。このため、スイッチング可能な領域全体が、電界を印加することにより、同時にアドレス指定され、スイッチングされる。代替的な実施形態では、電極は、電界を印加することにより他の領域から独立して切り替えることができる独立にアドレス指定可能な領域を形成するようにパターン化することができる。この場合、電極は、好ましくは、2~10個の独立にアドレス指定可能な領域が存在するようにパターン化される。
【0086】
本明細書に記載されたように、該液晶媒体は、一般的には、スイッチング層および窓要素に有用かつ適用可能である。散乱型のスイッチング要素およびデバイスに特に有用である。
【0087】
好ましい実施形態では、本発明に従って使用されるLC媒体は、正の誘電異方性を有する。この場合、3~45の範囲、より好ましくは、5~30の範囲の誘電異方性Δεを有する液晶混合物が好ましい。
【0088】
Δεは、誘電異方性を指す。Δε=ε||-ε⊥である。誘電異方性Δεは、20℃および1kHzで決定される。
【0089】
一方、代替的な実施形態では、負の誘電異方性を有するLC媒体を提供することも可能である。この場合、-6~-3の範囲の誘電異方性Δεを有する液晶混合物が好ましい。
【0090】
本発明に従って使用される媒体は、該媒体の全含量に対して少なくとも15重量%の式I
【化2】
[式中、
R
1およびR
2は、それぞれ独立して、F、Cl、CF
3、OCF
3および置換されていないか、CNもしくはCF
3により一置換されているかまたはハロゲンにより一置換もしくは多置換されている、1~15個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖アルキルもしくはアルコキシまたは2~15個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖アルケニルを指し、1つ以上のCH
2基は、各場合において、それぞれ独立して、酸素原子同士が直接結合しないように、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-または-C≡C-により置き換えられていてもよく、
A
11は、
【化3】
を指し、
nは、0または1を指し、
A
21、A
31およびA
41は、それぞれ独立して、
【化4】
[式中、Lは、各出現において、同一または異なって、F、ClおよびBrから選択されるハロゲンである]
を指す]
で示される1種以上のメソゲン化合物を含有するのが特に好ましい。
【0091】
好ましくは、本発明に係る媒体は、複屈折としても公知の、適切に高い光学異方性Δnを有することができる。本明細書に記載され、本発明に係るスイッチング層および窓要素に使用される媒体は、好ましくは、20℃および589nmで測定された、0.13以上、より好ましくは、0.16以上、さらにより好ましくは、0.20以上の光学異方性Δnを示す。
【0092】
上記および以下において、Δnは、光学異方性を指す。ここで、Δn=ne-noである。光学異方性Δnは、20℃および波長589.3nmで決定される。
【0093】
適切に高い光学異方性に加えて、本発明に係る媒体は、有利には、良好な光安定性および適切に高い透明点と組み合わせて、好ましく高い電圧保持比(VHR)を示すことができる。
【0094】
反応性メソゲンを、特に、特定されたような少量で使用すること、好ましくは、低濃度での使用を可能にすることができる高いHTPを有するキラルドーパントを使用することは、有利には、好ましく高い透明点を維持することに寄与することができる。
【0095】
該媒体は、コレステリック媒体またはキラルネマチック媒体である。コレステリック液晶(CLC)は、通常、例えば、初期状態において、特定の波長を有する光を反射し、電気交流電圧パルスの印加によりフォーカルコニック光散乱構造にまたはその逆にスイッチングすることができる平面構造を有する媒体を含有する。より強い電圧、特により強い電圧パルスを印加すると、CLC媒体は、ホメオトロピックな透明状態にスイッチングされ、そこから、電圧の急速なスイッチオフ後に平面状態にまたは低速スイッチオフ後にフォーカルコニック状態に緩和される。
【0096】
平面テクスチャでは、ブラッグ反射が生じる。この場合、反射光は、コレステリックヘリックスと同じ旋回を有する。
【0097】
フォーカルコニック状態では、螺旋軸は、ランダムに配置され、テクスチャは、ドメイン境界での屈折率の不連続な空間変動のために光散乱を示す。
【0098】
平面およびフォーカルコニック配位は双方とも、典型的には、外部電界が存在しない場合に安定である。平面状態とフォーカルコニック状態との間の電界駆動テクスチャ遷移の効果により、CLCディスプレイの動作の基礎が形成される。CLCのテクスチャが平面からフォーカルコニックテクスチャにスイッチングされると、ブラッグ反射が消え、CLCは、螺旋軸がランダムに分布しているため、入射光を散乱させる。
【0099】
ただし、状態間のスイッチングは、典型的には、ホメオトロピック状態によってのみ達成される。この場合、コレステリックヘリックスは、正の誘電異方性(Δε>0)を有するLC分子間の誘電体結合および垂直電界により完全に巻き戻される。
【0100】
本発明に係る実施形態では、スイッチング層の散乱状態は、上記されたフォーカルコニック状態であることができる。
【0101】
代替的には、好ましい実施形態によれば、本発明において、散乱状態は、ポリドメイン構造により形成される。好ましくは、このポリドメイン構造は、十分に強い散乱を生じさせることができ、一方同時に、ブラッグ型の反射挙動が、少なくともある程度、依然として観測可能なままである。ポリドメインを含む、好ましくは、ポリドメインからなるこの相において、螺旋軸の配向は、典型的には、ドメインごとに変化し、ドメイン境界が典型的に生じる。ただし、巨視的には、この相は、人間の目には均一に、特に均一に不透明または曇って見え、層領域全体にわたって目に見える欠陥がない。
【0102】
ポリドメイン構造は、例えば、平面またはホメオトロピック様式で配向された従来の配向層を使用して得ることができ、有利には、ポリドメイン状態へのスイッチングは、比較的低い電圧で達成することができる。ただし、ポリドメイン構造は、配向層が存在しない場合にも得ることができる。
【0103】
加えて、変調材料およびスイッチング層中のポリマー成分の存在により、散乱性能に好ましい影響を与え、安定化させることができる。
【0104】
好ましい実施形態では、非散乱状態または透明状態は、上記されたホメオトロピック状態により形成することができる。この透明状態を使用することは、例えば、大きな面積を有する要素が使用される場合に好ましい場合がある。この点において、現在得られる有利に高いVHRは、自己放電挙動に対してこの状態にある要素を安定化させるため、顕著に低いリフレッシュレートおよび/またはより低い電力消費でさえ状態を持続することを可能にするのに有用であることができる。
【0105】
代替的には、非散乱状態または透明状態は、上記された平面テクスチャにより形成することができる。
【0106】
キラルネマチックまたはコレステリック媒体を使用することは、媒体を含むデバイスがエネルギー消費をより少なくすることができるように、比較的安定な状態、さらには双安定性を提供することができるという点で有益であることができる。特に、それぞれの状態は、電界がオフにされた後、少なくともかなりの時間、保持することができ、電圧の頻繁なアドレス指定またはリフレッシュを少なくすることが可能であり得る。
【0107】
好ましい実施形態では、窓要素は、AC電圧V1を印加することにより光学的に透明な状態にスイッチング可能であり、AC電圧V2を印加することにより散乱状態にスイッチング可能であり、V1>V2である。
【0108】
実施形態において、スイッチングされた透明状態、特に、ホメオトロピック配向を有する状態は、15V~100V、より好ましくは、20V~80V、特に、25V~50Vの範囲の電圧を印加することにより維持され、一方、スイッチングされたプライバシーまたは散乱状態は、少なくともある程度の時間、0Vでも安定であることができる。
【0109】
好ましくは、本発明に係る窓要素は、デュアル周波数アドレス指定を使用しない。これにより、必要な電子部品を単純化することができる。
【0110】
上記されたように、該媒体は、好ましくは、780nm超の波長を有する選択的反射を示す。したがって、該媒体は、好ましくは、近赤外(NIR)スペクトル領域で反射する。
【0111】
キラルドーパントおよびそれらの濃度は、該媒体のコレステリックピッチが適切に設定されまたは調整されるように提供することができる。CLC媒体は、例えば、ネマチックLC媒体に高いねじれ力を有するキラルドーパントをドーピングすることにより製造することができる。ついで、誘引されたコレステリックヘリックスのピッチpは、キラルドーパントの濃度cおよび螺旋ねじれ力HTPにより、等式(1):
p=(HTP c)-1 (1)
に従って与えられる。
【0112】
例えば、個々のドーパントのHTPの温度依存性を補償することにより、CLC媒体のヘリックスピッチおよび反射波長の、低い温度依存性を達成するために、2種以上のドーパントを使用することも可能である。総HTP(HTPtotal)については、およそ等式(2)が成立する:
HTPtotal=ΣiciHTPi (2)
(式中、ciは、個々のドーパントの濃度であり、HTPiは、個々のドーパントの螺旋ねじれ力である)。
【0113】
該液晶媒体は、1種以上のキラルドーパントを含有する。キラルドーパントは、好ましくは、HTPの絶対値が高く、一般的には、比較的低濃度でメソゲンベース混合物に加えることができ、アキラル成分中で良好な溶解性を有する。2種以上のキラル化合物が利用される場合、それらは、同じまたは反対の回転方向およびねじれの同じまたは反対の温度依存性を有することができる。
【0114】
好ましくは、本発明に係る1種以上のキラル化合物は、好ましくは、Merck KGaAからの市販の液晶混合物MLC-6828中において、5μm-1以上、より好ましくは、10μm-1以上、さらにより好ましくは、15μm-1以上の螺旋ねじれ力の絶対値を有する。好ましくは、Merck KGaAからの市販の液晶混合物MLC-6828中において、20μm-1以上、より好ましくは、40μm-1以上、さらにより好ましくは、60μm-1以上、最も好ましくは、80μm-1以上~260μm-1以下の範囲の螺旋ねじれ力(HTP)の絶対値を有するキラル化合物が特に好ましい。
【0115】
好ましくは、1種以上のキラル化合物は、該媒体の全含量に対して2重量%以下、より好ましくは、1重量%以下の量で該液晶媒体中に含有される。
【0116】
本発明の好ましい実施形態では、キラル成分は、全てHTPの同じ符号を有する2種以上のキラル化合物からなる。個々の化合物のHTPの温度依存性は、高くてもまたは低くてもよい。該媒体のピッチの温度依存性は、HTPの異なる温度依存性を有する化合物を対応する比率で混合することにより補償することができる。
【0117】
適切なキラルドーパントは、当技術分野において公知である。その幾つか、例えば、ノナン酸コレステリル、R/S-811、R/S-1011、R/S-2011、R/S-3011、R/S-4011、B(OC)2C*H-C-3またはCB15(全てMerck KGaA、Darmstadt、Germany)等は市販されている。
【0118】
特に適切なキラルドーパントは、1つ以上のキラル基および1つ以上のメソゲン基またはキラル基と共にメソゲン基を形成する1つ以上の芳香族基もしくは脂環式基を含有する化合物である。
【0119】
適切なキラル基は、例えば、キラル分岐鎖炭化水素基、キラルエタンジオール、ビナフトールまたはジオキソランであり、さらに、糖誘導体、糖アルコール、糖酸、乳酸、キラル置換グリコール、ステロイド誘導体、テルペン誘導体、アミノ酸または数個、好ましくは1~5個のアミノ酸の配列からなる群から選択される一価または多価キラル基である。
【0120】
好ましいキラル基は、糖誘導体、例えば、グルコース、マンノース、ガラクトース、フルクトース、アラビノースおよびデキストロース;糖アルコール、例えば、ソルビトール、マンニトール、イジトール、ガラクチトールまたはそのアンヒドロ誘導体、特に、ジアンヒドロヘキシトール、例えば、ジアンヒドロソルビド(1,4:3,6-ジアンヒドロ-D-ソルビド、イソソルビド)、ジアンヒドロマンニトール(イソソルビトール)またはジアンヒドロイジトール(イソイジトール)等;糖酸、例えば、グルコン酸、グロン酸およびケトグロン酸等;キラル置換グリコール基、例えば、モノ-またはオリゴエチレンまたはプロピレングリコール(式中、1つ以上のCH2基は、アルキルまたはアルコキシにより置換されている)等;アミノ酸、例えば、アラニン、バリン、フェニルグリシンもしくはフェニルアラニンまたはこれらのアミノ酸の2~5個の配列等;ステロイド誘導体、例えば、コレステリルまたはコリン酸基等;テルペン誘導体、例えば、メンチル、ネオメンチル、カンフェイル、ピネイル、テルピネイル、イソロンギホリル、フェンチル、カルレイル、ミルテニル、ノピル、ゲラニル、リナロイル、ネリル、シトロネリルまたはジヒドロシトロネリル等である。
【0121】
適切なキラル基およびメソゲンキラル化合物は、例えば、独国特許発明第3425503号明細書、同第3534777号明細書、同第3534778号明細書、同第3534779号明細書および同第3534780号明細書、同第4342280号明細書、欧州特許第01038941号明細書ならびに独国特許第19541820号明細書に記載されている。
【0122】
本発明に従って使用される好ましいキラル化合物は、下記化合物群から選択される。
【0123】
実施形態において、下記式A-I~A-III:
【化5】
[式中、
R
a11およびR
a12は、それぞれ独立して、2~9個、好ましくは、7個までの炭素原子を有するアルキル、オキサアルキルまたはアルケニルであり、代替的には、R
a11は、メチルまたは1~9個の炭素原子を有するアルコキシであり、好ましくは、双方とも、アルキル、好ましくは、n-アルキルであり、
R
a21およびR
a22は、それぞれ独立して、1~9個、好ましくは、7個までの炭素原子を有するアルキルまたはアルコキシ、2~9個、好ましくは、7個までの炭素原子を有するオキサアルキル、アルケニルまたはアルケニルオキシであり、好ましくは、双方とも、アルキル、好ましくは、n-アルキルであり、
R
a31およびR
a32は、それぞれ独立して、2~9個、好ましくは、7個までの炭素原子を有するアルキル、オキサアルキルまたはアルケニルであり、代替的には、R
a11は、メチルまたは1~9個の炭素原子を有するアルコキシであり、好ましくは、双方とも、アルキル、好ましくは、n-アルキルである]
で示される化合物からなる群から選択されるドーパントが好ましい。
【0124】
下記式:
【化6】
で示される化合物からなる群から選択されるキラルドーパントが特に好ましい。
【0125】
さらに好ましいドーパントは、下記式A-IV
【化7】
[式中、
基
【化8】
は、
【化9】
である]
で示されるイソソルビド、イソマンニトールまたはイソイジトールの誘導体、好ましくは、ジアンヒドロソルビトールおよびキラルエタンジオール、例えば、ジフェニルエタンジオール(ヒドロベンゾイン)、特に、下記式A-V
【化10】
[式中、
【化11】
は、それぞれ独立して、1,4-フェニレン(同フェニレンも、Lにより一置換、二置換または三置換されていることができる)または1,4-シクロヘキシレンであり、
Lは、H、F、Cl、CNまたは1~7個の炭素原子を有し、場合によりハロゲン化されているアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニルもしくはアルコキシカルボニルオキシであり、
cは、0または1であり、
Z
0は、-COO-、-OCO-、-CH
2CH
2-または単結合であり、
R
0は、1~12個の炭素原子を有するアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニルまたはアルキルカルボニルオキシである]
で示されるメソゲンヒドロベンゾイン誘導体((R,S)、(S,R)、(R,R)および(S,S)のエナンチオマーを含むが、これらは示されていない)である。
【0126】
式A-IVで示される化合物は、国際公開第98/00428号に記載されている。式A-Vで示される化合物は、英国特許出願公開第2,328,207号明細書に記載されている。
【0127】
別の実施形態では、特に好ましいキラルドーパントは、国際公開第02/94805号に記載されているようなキラルビナフチル誘導体、同第02/34739号に記載されているようなキラルビナフトールアセタール誘導体、同第02/06265号に記載されているようなキラルTADDOL誘導体ならびに同第02/06196号および同第02/06195号に記載されているような少なくとも1つのフッ化架橋基および末端または中心キラル基を有するキラルドーパントである。
【0128】
式A-VI
【化12】
[式中、
X
1、X
2、Y
1およびY
2は、それぞれ独立して、F、Cl、Br、I、CN、SCN、SF
5、1~25個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル(同アルキルは、F、Cl、Br、IまたはCNにより一置換または多置換されていることができ、同アルキルにおいて、さらに、1つ以上の隣接していないCH
2基は、それぞれ独立して、-O-、-S-、-NH-、NR
0-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-、-S-CO-、-CO-S-、-CH=CH-または-C≡C-により、Oおよび/またはS原子同士が直接結合しないように置き換えられていることができる)、重合性基または20個までの炭素原子を有するシクロアルキルもしくはアリール(これらは、場合により、ハロゲン、好ましくは、Fによりまたは重合性基により一置換または多置換されていることができる)であり、
x
1およびx
2は、それぞれ独立して、0、1または2であり、
y
1およびy
2は、それぞれ独立して、0、1、2、3または4であり、
B
1およびB
2は、それぞれ独立して、芳香族または部分的にもしくは完全に飽和した脂肪族6員環であり、これらは、1つ以上のCH基が、N原子により置き換えられていることができ、1つ以上の隣接していないCH
2基が、Oおよび/またはSにより置き換えられていることができ、
W
1およびW
2は、それぞれ独立して、-Z
1-A
1-(Z
2-A
2)
m-Rであり、2つのうちの一方が、代替的には、R
1またはA
3であるが、双方が同時にHではなく、または
【化13】
は、
【化14】
であり、
U
1およびU
2は、それぞれ独立して、CH
2、O、S、COまたはCSであり、
V
1およびV
2は、それぞれ独立して、(CH
2)
nであり、(CH
2)
nにおいて、1~4個の隣接していないCH
2基は、Oおよび/またはSにより置き換えられていることができ、V
1およびV
2の一方および
【化15】
が、
【化16】
である場合、双方ともが単結合であり、
Z
1およびZ
2は、それぞれ独立して、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-COO-、-CO-NR
0-、-NR
0-CO-、-O-CH
2-、-CH
2-O-、-S-CH
2-、-CH
2-S-、-CF
2-O-、-O-CF
2-、-CF
2-S-、-S-CF
2-、-CH
2-CH
2-、-CF
2-CH
2-、-CH
2-CF
2-、-CF
2-CF
2-、-CH=N-、-N=CH-、-N=N-、-CH=CH-、-CF=CH-、-CH=CF-、-CF=CF-、-C≡C-、これらの基のうちの2つの組み合わせ(この場合、2つのOおよび/またはSおよび/またはN原子同士が直接結合していない)、好ましくは、-CH=CH-COO-または-COO-CH=CH-または単結合であり、
A
1、A
2およびA
3は、それぞれ独立して、1,4-フェニレン(同フェニレンにおいて、1つまたは2つの隣接していないCH基は、Nにより置き換えられていることができる)、1,4-シクロヘキシレン(同シクロへキシレンにおいて、1つまたは2つの隣接していないCH
2基は、Oおよび/またはSにより置き換えられていることができる)、1,3-ジオキソラン-4,5-ジイル、1,4-シクロヘキセニレン、1,4-ビシクロ[2.2.2]オクチレン、ピペリジン-1,4-ジイル、ナフタレン-2,6-ジイル、デカヒドロナフタレン-2,6-ジイルまたは1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-2,6-ジイルであり、この場合、これらの基はそれぞれ、Lにより一置換または多置換されていることができ、さらに、A
1は、単結合であり、
Lは、ハロゲン原子、好ましくは、F、CN、NO
2、1~7個の炭素原子を有し、1つ以上のH原子がFまたはClにより置き換えられていることができるアルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニルまたはアルコキシカルボニルオキシであり、
mは、各場合において、独立して0、1、2または3であり、
RおよびR
1は、それぞれ独立して、H、F、Cl、Br、I、CN、SCN、SF
5、1個または3~25個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖アルキル(同アルキルは、場合により、F、Cl、Br、IまたはCNにより一置換または多置換されていることができ、同アルキルにおいて、1つ以上の隣接していないCH
2基は、-O-、-S-、-NH-、-NR
0-、-CO-、-COO-、-OCO-、-O-COO-、-S-CO-、-CO-S-、-CH=CH-または-C≡C-により置き換えられていることができ、この場合、2つのOおよび/またはS原子同士が直接結合していない)または重合性基である]
で示されるキラル化合物が特に好ましい。
【0129】
式A-VI-1
【化17】
で示されるキラルビナフチル誘導体、特に、下記式A-VI-1a~A-VI-1c:
【化18】
[式中、
BおよびZ
0は、式A-IVについて定義されたとおりであり、Z
0は、より好ましくは、-OCO-または単結合であり、
R
0は、式A-IVについて定義されたとおりであるかまたはHもしくは1~4個の炭素原子を有するアルキルであり、
bは、0、1または2である]
から選択されるものが特に好ましい。
【0130】
式A-VI-2
【化19】
で示されるキラルビナフチル誘導体、特に、下記式A-VI-2a~A-VI-2f:
【化20-1】
【化20-2】
[式中、R
0は、式A-VIについて定義されたとおりであり、Xは、H、F、Cl、CNまたはR
0、好ましくは、Fである]
から選択されるものが特にさらに好ましい。
【0131】
特に好ましい実施形態では、本発明に係るキラル媒体は、以下の表Fに示された式R-5011およびS-5011で示される1種以上の化合物を含む。実施形態において、該媒体は、R-5011を含有する。別の実施形態では、該媒体は、S-5011を含有する。
【0132】
本発明に係るLC媒体は、好ましくかつ望ましくは、高い信頼性および高い電気抵抗率を示す。また、本発明に係るLC媒体は、好ましくかつ望ましくは、高い電圧保持率(VHR)も示す。Matsumoto et al., Liquid Crystals 5, 1320(1989);K. Niwa et al., Proc. SID Conference, San Francisco, June 1984, p. 304(1984);T. Jacob and U. Finkenzeller in 「Merck Liquid Crystals - Physical Properties of Liquid Crystals」, 1997を参照のこと。本発明に係るLC媒体のVHRは、好ましくは、≧85%、より好ましくは、≧90%、さらにより好ましくは、≧95%、特に好ましくは、≧98%である。特に断らない限り、VHRの測定は、T. Jacob, U. Finkenzeller in 「Merck Liquid Crystals - Physical Properties of Liquid Crystals」, 1997に記載されているように行われる。
【0133】
本発明によれば、該媒体は、該媒体の全含量に対して5重量%以下の量で1種以上の重合性メソゲン化合物を含む。
【0134】
好ましくは、1種以上の重合性メソゲン化合物は、該媒体の全含量に対して3.5重量%以下の量で、さらにより好ましくは、2.5重量%以下の量で、特に好ましくは、1.25重量%以下の量で該媒体中に含有される。
【0135】
好ましくは、1種以上の重合性メソゲン化合物のうちの1つ以上が、1つ、2つまたはそれ以上のアクリレート基および/またはメタクリレート基を含む。
【0136】
本発明に係る媒体において、好ましくは、1種以上の重合性、硬化性(curable)または硬化性(hardenable)化合物、好ましくは,1種以上の光硬化性モノマーが提供される。同モノマーは、好ましくは、変調材料およびスイッチング層中のポリマー成分のための前駆体として機能することができる。
【0137】
使用される反応性メソゲン(RM)またはメソゲンモノマーは、メソゲン基および1種以上の重合性基、すなわち、重合に適した官能基を含有する。
【0138】
特に好ましい実施形態では、使用される重合化合物は、反応性メソゲンのみを含む、すなわち、全ての反応性モノマーが、メソゲンである。代替的には、RMは、1種以上の非メソゲン重合性化合物と組み合わせて提供することができる。RMは、一反応性および/または二反応性もしくは多反応性であることができる。
【0139】
本発明の好ましい実施形態では、1種以上の重合性化合物のうちの1つ以上が、式M
RMa-AM1-(ZM1-AM2)m1-RMb M
[式中、個々の基は、下記のように定義される:
RMaおよびRMbは、それぞれ独立して、P、P-Sp-、H、F、Cl、Br、I、-CN、-NO2、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、SF5または1~25個の炭素原子を有する直鎖または分枝鎖アルキルであり、同アルキルにおいて、1つ以上の隣接していないCH2基は、それぞれ独立して、酸素原子および/または硫黄原子同士が直接結合しないように、-C(R0)=C(R00)-、-C≡C-、-N(R00)-、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-により置き換えられていることもでき、また、同アルキルにおいて、1つ以上の水素原子は、F、Cl、Br、I、CN、PまたはP-Sp-により置き換えられていることもでき、この場合、好ましくは、RMaおよびRMb基のうちの少なくとも一方が、PまたはP-Sp-基であるかまたはこれらを含有し、
好ましくは、
RMaおよびRMbは、それぞれ独立して、P、P-Sp-、H、ハロゲン、SF5、NO2、アルキル、アルケニルまたはアルキニル基であり、この場合、好ましくは、RMaおよびRMb基のうちの少なくとも一方が、PまたはP-Sp-基であるかまたはこれらを含有し、
Pは、重合性基であり、
Spは、スペーサ基または単結合であり、
AM1およびAM2は、それぞれ独立して、芳香族、ヘテロ芳香族、脂環式または複素環式基であり、好ましくは、4~25個の環原子、好ましくは、炭素原子を有するものであり、これらは、縮合環も含むかまたは含有することができ、場合により、Lにより一置換または多置換されていることができ、
Lは、P、P-Sp-、OH、CH2OH、F、Cl、Br、I、-CN、-NO2、-NCO、-NCS、-OCN、-SCN、-C(=O)N(Rx)2、-C(=O)Y1、-C(=O)Rx、-N(Rx)2、場合により置換されているシリル、6~20個の炭素原子を有する場合により置換されているアリール、または1~25個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖アルキル、アルコキシ、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アルキルカルボニルオキシもしくはアルコキシカルボニルオキシまたは2~25個の炭素原子を有するアルケニルもしくはアルキニルであり、これらにおいて、1つ以上の水素原子は、F、Cl、PまたはP-Sp-、好ましくは、P、P-Sp-、H、OH、CH2OH、ハロゲン、SF5、NO2、アルキル、アルケニルまたはアルキニル基により置き換えられていることもでき、
Y1は、ハロゲン、好ましくは、Fであり、
ZM1は、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-OCO-、-O-CO-O-、-OCH2-、-CH2O-、-SCH2-、-CH2S-、-CF2O-、-OCF2-、-CF2S-、-SCF2-、-(CH2)n1-、-CF2CH2-、-CH2CF2-、-(CF2)n1-、-CH=CH-、-CF=CF-、-C≡C-、-CH=CH-、-COO-、-OCO-CH=CH-、CR0R00または単結合であり、
R0およびR00は、それぞれ独立して、Hまたは1~12個の炭素原子を有するアルキルであり、
Rxは、P、P-Sp-、H、ハロゲン、1~25個の炭素原子を有する直鎖、分岐鎖または環状アルキルであり、同アルキルにおいて、1つ以上の隣接していないCH2基は、酸素原子および/または硫黄原子同士が直接結合しないように、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-により置き換えられていることもでき、また、同アルキルにおいて、1つ以上の水素原子は、F、Cl、PまたはP-Sp-、6~40個の炭素原子を有する場合により置換されているアリールもしくはアリールオキシ基または2~40個の炭素原子を有する場合により置換されているヘテロアリールもしくはヘテロアリールオキシ基により置き換えられていることもでき、
m1は、0、1、2、3または4であり、
n1は、1、2、3または4であり、
この場合、RMa、RMbからの少なくとも1つの置換基、好ましくは、1つ、2つまたは3つの置換基、より好ましくは、1つまたは2つの置換基およびLが存在する場合には、置換基Lは、PもしくはP-Sp-基であるかまたは少なくとも1つのPもしくはP-Sp-基を含有する]
で示される化合物から選択される。
【0140】
RmaおよびRmbのうちの一方またはその双方がPまたはP-Sp-である式Mで示される化合物が特に好ましい。
【0141】
本発明に係る液晶媒体に使用するのに適した好ましいRMは、例えば、下記式:
【化21-1】
【化21-2】
【化21-3】
【化21-4】
【化21-5】
[式中、個々の基は、下記のように定義される:
P
1~P
3は、それぞれ独立して、好ましくは、Pについて上記および以下で特定された定義のうちの1つを有する重合性基、より好ましくは、アクリレート、メタクリレート、フルオロアクリレート、オキセタン、ビニルオキシまたはエポキシ基であり、
Sp
1~Sp
3は、それぞれ独立して、単結合または好ましくは、上記および以下で与えられたSpの定義のうちの1つを有するスペーサ基、より好ましくは、-(CH
2)
p1-、-(CH
2)
p1-O-、-(CH
2)
p1-CO-O-または-(CH
2)
p1-O-CO-O-(式中、p1は、1~12の整数であり、後者の基における隣接する環への結合は、酸素原子を介している)であり、この場合、P
1-Sp
1-、P
2-Sp
2-およびP
3-Sp
3-基のうちの1つは、R
aaであることもでき、
R
aaは、H、F、Cl、CNまたは1~25個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖アルキルであり、同アルキルにおいて、1つ以上の隣接していないCH
2基は、それぞれ独立して、酸素原子および/または硫黄原子同士が直接結合しないように、C(R
0)=C(R
00)-、-C≡C-、-N(R
0)-、-O-、-S-、-CO-、-CO-O-、-O-CO-、-O-CO-O-により置き換えられていることもでき、また、同アルキルにおいて、1つ以上の水素原子は、F、Cl、CNまたはP
1-Sp
1-、より好ましくは、1~12個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖で、場合により一フッ化または多フッ素化アルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニルまたはアルキルカルボニルオキシ(この場合、アルケニル基およびアルキニル基は、少なくとも2つの炭素原子を有し、分岐基は、少なくとも3つの炭素原子を有する)により置き換えられていることもでき、
R
0およびR
00は、各場合において、同じかまたは異なり、それぞれ独立して、Hまたは1~12個の炭素原子を有するアルキルであり、
R
yおよびR
zは、それぞれ独立して、H、F、CH
3またはCF
3であり、
Z
1は、-O-、-CO-、-C(R
yR
z)-または-CF
2CF
2-であり、
Z
2およびZ
3は、それぞれ独立して、-CO-O-、-O-CO-、-CH
2O-、-OCH
2-、-CF
2O-、-OCF
2-または-(CH
2)
n-(式中、nは、2、3または4である)であり、
Lは、各場合において、同じかまたは異なり、上記式Mで与えられた意味を有し、好ましくは、F、Cl、CNまたは1~12個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖で、場合により一フッ化または多フッ化のアルキル、アルコキシ、アルケニル、アルキニル、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニルまたはアルキルカルボニルオキシ、好ましくは、Fであり、
L’およびL’’は、それぞれ独立して、H、FまたはClであり、
X
1~X
3は、それぞれ独立して、-CO-O-、-O-CO-または単結合であり、
rは、0、1、2、3または4であり、
sは、0、1、2または3であり、
tは、0、1または2であり、
xは、0または1である]
から選択される。
【0142】
適切な重合性化合物は、例えば、表Gに列記されている。特に好ましい反応性メソゲンは、実施例1、2、3および5それぞれに示されているような、式RM-A、RM-B、RM-C、RM-D、RM-E、RM-FおよびRM-Gで示される化合物である。
【0143】
重合性化合物は、少なくとも1つの重合性基を有する。重合性基は、好ましくは、CH
2=CW
1-COO-、
【化22】
、CH
2=CW
2-(O)
k1-、CH
3-CH=CH-O-、(CH
2=CH)
2CH-OCO-、(CH
2=CH-CH
2)
2CH-OCO-、(CH
2=CH)
2CH-O-、(CH
2=CH-CH
2)
2N-、HO-CW
2W
3-、HS-CW
2W
3-、HW
2N-、HO-CW
2W
3-NH-、CH
2=CW
1-CO-NH-、CH
2=CH-(COO)
k1-Phe-(O)
k2-、Phe-CH=CH-、HOOC-、OCN-(式中、W
1は、H、Cl、CN、フェニルまたは1~5個のC原子を有するアルキル、特に、H、ClまたはCH
3であり、W
2およびW
3は、それぞれ独立して、Hまたは1~5個のC原子を有するアルキル、特に、H、メチル、エチルまたはn-プロピルであり、Pheは、1,4-フェニレンであり、k
1およびk
2は、それぞれ独立して、0または1である)から選択される。重合性基または反応性基は、好ましくは、ビニル基、アクリレート基、メタクリレート基、フルオロアクリレート基、オキセタン基またはエポキシ基、特に好ましくは、アクリレート基またはメタクリレート基から選択される。
【0144】
実施形態において、非メソゲンモノマーは、1種以上のRMに加えて、該媒体中に含まれる。好ましくは、1種以上の重合性化合物、非メソゲンモノマーもしくはRMのいずれかまたは双方は、アクリレート、メタクリレート、フルオロアクリレートおよびビニルアセテートから選択される。この場合、該組成物は、より好ましくは、さらに、ジアクリレート、ジメタクリレート、トリアクリレートおよびトリメタクリレートから好ましく選択される1種以上の二反応性および/または三反応性の重合性化合物を含む。
【0145】
好ましい実施形態では、本発明に係る媒体は、1種以上の非メソゲンモノアクリレート、特に好ましくは、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、イソプロピルアクリレート、ブチルアクリレート、t-ブチルアクリレート、ペンチルアクリレート、ヘキシルアクリレート、ノニルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシブチルアクリレートおよびイソボルニルアクリレートから選択される1種以上の化合物を含む。
【0146】
加えてまたは代わりに、本発明に係る媒体は、好ましくは、1種以上の非メソゲンモノメタクリレート、特に好ましくは、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、t-ブチルメタクリレート、ペンチルメタクリレート、ヘキシルメタクリレート、ノニルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、2-エチル-ヘキシルメタクリレート、2-ヒドロキシ-エチルメタクリレート、2-ヒドロキシ-ブチルメタクリレート、イソボルニルメタクリレートおよび1-アダマンチルメタクリレートから選択される1種以上の化合物を含む。
【0147】
少なくとも1種の架橋剤、すなわち、2つ以上の重合性基を含有する重合性化合物が、該媒体に加えられるのが特に好ましく、好ましくは、二反応性または多反応性RMが使用される。
【0148】
この点において、二反応性および多反応性化合物は、それ自体のポリマーネットワークを形成するかつ/または一反応性化合物の重合から実質的に形成されるポリマー鎖を架橋するのに役立つことができる。
【0149】
代えてまたは加えて、当技術分野において公知の従来の架橋剤を使用することができる。二反応性または多反応性アクリレートおよび/またはメタクリレートを付加的に提供するのが特に好ましい。特に好ましい化合物は、エチレンジアクリレート、プロピレンジアクリレート、ブチレンジアクリレート、ペンチレンジアクリレート、ヘキシレンジアクリレート、グリコールジアクリレート、グリセロールジアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エチレンジメタクリレート(エチレングリコールジメタクリレートとしても公知)、プロピレンジメタクリレート、ブチレンジメタクリレート、ペンチレンジメタクリレート、ヘキシレンジメタクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、グリコールジメタクリレート、グリセロールジメタクリレート、トリメチルプロパントリメタクリレートおよびペンタエリスリトールトリアクリレートから選択される。
【0150】
一反応性モノマーと二反応性または多反応性モノマーとの比は、好ましくは、形成されるポリマー成分の特性に影響を及ぼすように設定し、調整することができる。
【0151】
反応を容易にするために、適切かつ従来から使用されている熱開始剤または光開始剤、例えば、アゾ化合物または有機過酸化物、例えば、Luperox型開始剤を、該媒体に加えることができる。さらに、重合に適した条件ならびに開始剤の適切な種類および量は、当技術分野において公知であり、文献に記載されている。重合開始剤が該媒体に含まれる場合、光開始剤の使用が好ましい。
【0152】
例えば、UV光により重合させる場合、UV照射により分解して、重合反応を開始させるフリーラジカルまたはイオンを生成する光開始剤を使用することができる。アクリレート基またはメタクリレート基を重合させるために、好ましくは、ラジカル光開始剤が使用される。ビニル、エポキシドまたはオキセタン基を重合させるために、好ましくは、カチオン性光開始剤が使用される。加熱されると分解して重合を開始させるフリーラジカルまたはイオンを生成する熱重合開始剤を使用することも可能である。典型的なラジカル光開始剤は、例えば、市販のIrgacure(登録商標)、例えば、Irgacure 651(BASFから入手可能、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オンを含有)またはDarocure(登録商標)(Ciba Geigy AG、Basel、Switzerland)である。典型的なカチオン性光開始剤は、例えば、UVI 6974(Union Carbide)である。さらに有用な光開始剤は、α-アミノケトン、例えば、Irgacure 907、クマリン、ホスフィンオキシド、例えば、Irgacure 2100、アシルホスフィン、例えば、Irgacure 819を含む。
【0153】
特定の実施形態では、加えられる重合開始剤、好ましくは、光開始剤は、1種以上のメソゲン重合開始剤、好ましくは、1種以上のメソゲン光開始剤、すなわち、重合を開始させることができ、それ自体が異方性およびメソゲン特性を有する1種以上の反応性化合物を含み、好ましくは、それらからなる。
【0154】
ただし、特に好ましい実施形態によれば、重合開始剤、特に、光開始剤は使用されない。ある場合には、これにより、VHRを改善し、スイッチング層においてイオンを生成する傾向を低減することができる。
【0155】
良好なVHRを維持し、達成するために、好ましくは、重合の反応生成物中の不純物が最少限に保たれるかまたは実質的に回避される。特に、残留反応種および荷電汚染物質は、適切かつ好ましくは、最少限に保たれる。例えば、UV重合が行われる場合、好ましい実施形態では、可視スペクトルに近い比較的長い波長を有する光が使用され、好ましくは、340nm~380nm、さらにより好ましくは、360nm~380nmの範囲のUV光が有利に使用される。このようにして、LC媒体成分の望ましくない光分解または分解を回避することができまたは少なくとも最低限にすることができる。光開始剤が使用される場合、照射波長および光開始剤は、適切に一致させまたは調整することができる。
【0156】
一部の実施形態で好ましい光開始剤が使用されない代替例では、波長範囲は、重合性化合物の少なくとも一部が光反応を受けることができ、それ自体により重合反応を開始させることができ、さらに、LC媒体の非反応性成分の分解または崩壊を回避することができまたは少なくとも最低限にすることができるように設定することができる。所望の波長範囲の取得および設定は、当技術分野において公知の従来法により、例えば、光学フィルタ、特に、エッジフィルタを使用することにより達成することができる。
【0157】
驚くべきことに、本発明に係る媒体を、該媒体中に上記および以下で説明された1種以上の重合性メソゲン化合物を提供することにより、in situでポリマー構造を生成するのに有利に使用することができることが見出された。
【0158】
該媒体中の重合性化合物は、重合後に安定な系が得られるように選択することができる。これは、例えば、さらなる処理工程、例えば、加熱工程において安定であることができる。この場合、良好なVHRを維持することができる。
【0159】
さらに、本発明によれば、比較的少量の(a)重合性メソゲン化合物のみが使用される。これは、安定性に好ましい影響を及ぼし、望ましくない分解を最少限にすることができる。
【0160】
本発明によれば、該媒体は、ポリマー成分、特に、ポリマーネットワークを含む変調材料を製造するのに使用される。ポリマー成分は、上記および以下で説明されたように、重合性化合物を重合させることにより得られるかまたはそれからそれぞれ得ることができる。
【0161】
ポリマー成分の提供は、LC媒体の1つ以上の状態または相を安定化させるのに有用であることができる。
【0162】
好ましくは、ポリマー成分は、該媒体の全含量に対して0.1重量%~5重量%の範囲、より好ましくは、0.5重量%~1.5重量%の範囲の量で該媒体中に含有される。
【0163】
ポリマー成分は、得られる材料の有利な特性に寄与することができる。例えば、ポリマー成分は、顕著により安定な散乱状態、特に、ポリドメイン状態に寄与することができる。その結果、この散乱状態は、リフレッシュまたは電圧を再印加することなく、より長期間、特に、数日まで維持することができる。
【0164】
さらに、本発明に係るCLC媒体を含有する材料中に提供されるポリマー成分は、好ましくは、例えば、均一性および視野角依存性に関して、散乱効率および外観に影響を及ぼすことができる。これにより、斜めの視野角下で生じる場合がある色効果を顕著に低減することができる。
【0165】
好ましい実施形態では、変調材料は、液晶媒体とポリマー成分とを含む。この場合、ポリマー成分は、反応性メソゲンの重合により得られるポリマーネットワークを含み、反応性メソゲンは、好ましくは、アクリレート基、特に好ましくは、モノアクリレート基、ジアクリレート基またはトリアクリレート基、ビニルエーテル基およびエポキシド基から選択される少なくとも1つの基を含有する。本明細書で使用する場合、アクリレート基を含有する化合物は、アクリルモノマー、メタクリルモノマーおよびこのようなモノマーの混合物を含む。
【0166】
重合は、従来法を使用して行うことができる。重合は、1つ以上の工程で行うことができる。特に、重合性化合物の重合は、好ましくは、熱または化学線への暴露により達成される。ここで、化学線への暴露は、UV光、可視光もしくはIR光等の光による照射、X線もしくはガンマ線による照射または高エネルギー粒子、例えば、イオンもしくは電子による照射を意味する。好ましい実施形態では、フリーラジカル重合が行われる。
【0167】
重合は、適切な温度で行うことができる。実施形態において、重合は、メソゲン混合物の透明点未満の温度で行われる。ただし、代替的な実施形態では、重合を透明点以上で行うことも可能である。
【0168】
実施形態において、重合は、光照射により、すなわち、光、好ましくは、UV光により行われる。化学線源として、例えば、単一のUVランプまたはUVランプのセットを使用することができる。高いランプ出力を使用すると、硬化時間を短縮することができる。別の可能性のある光照射源は、例えば、UVレーザ、可視レーザまたはIRレーザ等のレーザである。
【0169】
実施形態において、重合は、キラル液晶ホスト混合物に、好ましくは、二反応性化合物を含む1種以上の重合性化合物および場合により適切な光開始剤を加え、重合性化合物を、UV照射への暴露により重合させることにより行われる。
【0170】
好ましくは、重合は、キラル液晶ホスト混合物の所定の状態に維持された電気光学セル中で行われる。好ましい実施形態では、重合、好ましくは、UV光を使用する重合は、媒体がホメオトロピック状態にあるときに行われ、典型的かつ好ましくは、電界が印加される。
【0171】
該媒体は、好ましくは、0.01重量%~25重量%、より好ましくは、0.1重量%~5重量%の量で、さらなる化合物、例えば、1種以上の多色性染料、特に、1種以上の二色性染料および/または他の慣用の適切な添加剤を含有することができる。
【0172】
多色性染料は、好ましくは、二色性染料であり、例えば、アゾ染料、アントラキノン、メチン化合物、アゾメチン化合物、メロシアニン化合物、ナフトキノン、テトラジン、ピロメテン染料、マロノニトリル染料、リレン、特に、ペリレンおよびテリレン、チアジアゾール染料、チエノチアジアゾール染料、ベンゾチアジアゾール、ピロメテンおよびジケトピロロピロールから選択することができる。特に国際公開第2014/187529号に記載されているアゾ化合物、アントラキノン、ベンゾチアジアゾール、特に国際公開第2015/090497号に記載されているジケトピロロピロールおよび特に国際公開第2014/090373号に記載されているリレンが特に好ましい。
【0173】
ただし、好ましくは、透明状態でより高い透過率を提供し、着色されていない外観またはそれぞれ白色の外観を与えることができるスイッチング層は、染料を何ら含まない。
【0174】
窓要素、より好ましくは、本発明に係る窓要素を含む窓は、1つのスイッチング層のみを含有するのが特に好ましい。
【0175】
ただし、代替的な実施形態では、窓要素内に、2つ以上のスイッチング層、特に、2つのスイッチング層、例えば、スイッチング可能な散乱モードを双方が提供する2つの層またはスイッチング可能な散乱を提供する一方の層および光のスイッチング可能な調光を提供する他方の層を提供することも可能である。
【0176】
特定の実施形態では、本発明に係るスイッチング層は、光の通過を制御し、調整するために、窓要素内にゲスト-ホストLC媒体を含む別のスイッチング層と組み合わされる。各スイッチング層は、例えば、1つ以上の隣接する基板またはシート、ペインまたはパネルを使用することにより、適切に分離することができる。場合により、ペインは、真空またはガス充填空間によりさらに分離することができる。
【0177】
本発明によれば、本液晶媒体は、該媒体の全含量に対して少なくとも15重量%、好ましくは、少なくとも20重量%、より好ましくは、少なくとも25重量%、さらにより好ましくは、少なくとも30重量%、特に、少なくとも35重量%の量で、上記および以下で説明された式Iで示される1種以上の化合物を含有する。
【0178】
実施形態において、式Iで示される1種以上の化合物は、該媒体の全含量に対して15重量%~75重量%、より好ましくは、20重量%~65重量%、さらにより好ましくは、20重量%~55重量%、特に、25重量%~50重量%の範囲の量で該媒体中に含有される。
【0179】
このため、本発明に係る媒体は、式Iで示される少なくとも1種の化合物を含む。ただし、多くの場合、式Iで示される2種、3種またはそれ以上の化合物が該媒体中に含有されるのが有益であり、好ましくあることができる。
【0180】
好ましくは、式Iで定義された基A
11は、
【化23】
を指す。
【0181】
別の実施形態では、式Iで定義されたnは、0を指す。
【0182】
好ましい実施形態では、式Iで示される1種以上の化合物は、式Ia、IbおよびIcで示される化合物、より好ましくは、式IaおよびIb
【化24】
[式中、
R
1およびR
2は、それぞれ独立して、F、Cl、CF
3、OCF
3および置換されていないか、CNもしくはCF
3により一置換されているかまたはハロゲンにより一置換もしくは多置換されている、1~15個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖アルキルもしくはアルコキシまたは2~15個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖アルケニル(ここで、1つ以上のCH
2基は、各場合において、それぞれ独立して、酸素原子同士が直接結合しないように、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-または-C≡C-により置き換えられていてもよい)、好ましくは、F、CF
3、OCF
3、1~9個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシまたは2~9個の炭素原子を有するアルケニルを指し、
Lは、各出現において、同一または異なって、HまたはF、ClおよびBr、好ましくは、FおよびClから選択されるハロゲンであり、より好ましくは、各出現において、同一または異なって、HまたはFである]
で示される化合物から選択される。
【0183】
式Iで示される化合物のフェニレン環が置換されている場合、置換基は、Fであり、さらに、末端基R1およびR2は、Clを含有しないのが特に好ましい。
【0184】
好ましい実施形態では、該媒体中に含まれるCl含有化合物の量は制限され、好ましくは、該媒体の全含量に対して55重量%以下、より好ましくは、40重量%以下、さらにより好ましくは、25重量%以下に制限される。特に好ましい実施形態では、該液晶媒体は、Cl含有化合物を含有しない。
【0185】
したがって、上記および以下で説明された式Iで示される化合物からなるLC媒体の成分中のCl含有化合物の量を、該媒体中に含まれる式Iで示される化合物の全含量に対して好ましくは、55重量%以下、より好ましくは、40重量%以下、さらにより好ましくは、25重量%以下に制限するのも好ましい。特に好ましい実施形態では、式Iで示される1種以上の化合物は、Clを含有しない化合物から選択される。
【0186】
式Iに係る環A21、A31およびA41のうちの少なくとも1つが、少なくとも1つのF置換基を有するのがさらに特に好ましい。式Iに係る環A21、A31およびA41が共に、少なくとも2つのF置換基を有するのがさらに特に好ましい。
【0187】
本発明に係る媒体において、CNを含有する化合物の使用は、好ましくかつ望ましくは、好ましくは、75重量%以下、より好ましくは、50重量%以下、さらにより好ましくは、25重量%以下、特に、15重量%以下に制限され、特に好ましい実施形態では、完全に回避される。
【0188】
式Iで示される1種以上の化合物に加えて、本発明に係る液晶媒体は、好ましくは、1種以上のさらなるメソゲン化合物を含有する。また、これらのさらなる化合物は、該媒体の好ましい特性、例えば、良好なVHRおよび好ましい安定性に寄与するまたはこれらを維持する観点からも加えられるのが好ましい。
【0189】
実施形態において、本発明に係る液晶媒体は、さらに、式II
【化25】
[式中、
R
3およびR
4は、それぞれ独立して、F、CF
3、OCF
3、CNおよび置換されていないか、CNもしくはCF
3により一置換されているかまたはハロゲンにより一置換もしくは多置換されている、1~15個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖アルキルもしくはアルコキシまたは2~15個の炭素原子を有する直鎖もしくは分岐鎖アルケニル(ここで、1つ以上のCH
2基は、各場合において、それぞれ独立して、酸素原子同士が直接結合しないように、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-または-C≡C-により置き換えられていてもよい)、好ましくは、F、CF
3、OCF
3、CN、1~9個の炭素原子を有する直鎖アルキルもしくはアルコキシまたは2~9個の炭素原子を有するアルケニルを指し、
L
1、L
2およびL
3は、それぞれ独立して、HまたはFを指す]
で示される1種以上の化合物を含む。
【0190】
さらなる実施形態では、本発明に係る液晶媒体は、さらに、式III
【化26】
[式中、R
5およびR
6は、R
3と同様に定義され、L
4およびL
5は、上記式IIについてのL
1と同様に定義される]
で示される1種以上の化合物を含む。
【0191】
したがって、該媒体は、該媒体の全含量に対して少なくとも15重量%の式Iで示される1種以上のメソゲン化合物、場合により、1種以上の光開始剤ならびに式IIおよびIIIで示される化合物の群から選択される1種以上のメソゲン化合物を含有するのが好ましい。
【0192】
該媒体は、さらに、上記説明された式Iで示される1種以上の化合物、式IIで示される1種以上の化合物および式IIIで示される1種以上の化合物を含むのが特に好ましい。
【0193】
好ましくは、本発明に係る液晶媒体は、さらに、式IV
【化27】
[式中、
R
7は、置換されていないか、CNもしくはCF
3により一置換されているかまたはハロゲンにより一置換もしくは多置換されている、1~15個の炭素原子、好ましくは、1~7個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖アルキルもしくはアルコキシまたは2~15個の炭素原子を有する直鎖もしくは分枝鎖アルケニルを指し、1つ以上のCH
2基は、各場合において、それぞれ独立して、酸素原子同士が直接結合しないように、-O-、-S-、-CO-、-COO-、-OCO-、-OCOO-または-C≡C-により置き換えられていてもよく、
iは、0、1または2であり、
L
6およびL
7は、それぞれ独立して、HまたはFであり、
X
1は、F、CF
3、OCF
3またはCNを指す]
で示される1種以上の化合物を含む。
【0194】
式IIで示される化合物は、好ましくは、1重量%~45重量%、より好ましくは、5重量%~25重量%の総濃度で該媒体中に使用される。
【0195】
式IIIで示される化合物は、好ましくは、1重量%~45重量%、より好ましくは、5重量%~25重量%の総濃度で該媒体中に使用される。
【0196】
式IVで示される化合物は、好ましくは、1重量%~45重量%、より好ましくは、5重量%~25重量%の総濃度で該媒体中に使用される。
【0197】
該媒体は、上記および以下で説明された式Iで示される1種以上の化合物、式IIで示される1種以上の化合物、式IIIで示される1種以上の化合物ならびに式IVで示される1種以上の化合物を含むのが特に好ましい。
【0198】
特に好ましい実施形態では、式Iで示される1種以上の化合物のうちの1つ以上は、式I-1およびI-2
【化28】
[式中、
R
1およびR
2は、上記式Iaについて定義されたとおりであり、
Lは、各出現において、同一または異なって、HまたはFである]
で示される化合物から選択される。
【0199】
場合により、本発明に係る媒体は、物理的特性を調整するために、さらなる液晶化合物を含むことができる。このような化合物は、当分野において公知である。本発明に係る媒体中のこれらの場合によりさらに含まれる液晶化合物の濃度は、好ましくは、0重量%~30重量%、より好ましくは、0.1重量%~20重量%、最も好ましくは、1重量%~15重量%である。
【0200】
好ましくは、本発明に係る媒体は、以下の1種以上の化合物
- PGP-n-m、PGP-n-mV、PGU-n-F、PGIGI-n-F、GGP-n-F、GGP-n-Cl、特に、GGP-5-Cl、CPGP-n-m、CPGP-n-OT、CPGU-n-OT、DPGU-n-Fおよび/または
- CPP-n-m、CPG-n-F、CGU-n-F、BCH.n.F.F.F.、特に、BCH.7.F.F.Fおよび/または
- CP-n-m、CP-n-Nおよび/または
- 式R-5011もしくはS-5011で示される化合物および/または
- 1種以上の反応性重合性化合物および/または
- 1種以上の重合開始剤
を含む。ここで、各略語または頭字語の意味および構造は、以下の表に説明され、例示されている。
【0201】
本発明に係る液晶媒体は、さらなる添加剤を通常の濃度で含有することができる。これらのさらなる成分の総濃度は、全混合物に対して0%~10%、好ましくは、0.1%~6%の範囲にある。使用される個々の化合物の濃度はそれぞれ、好ましくは、0.01%~3%の範囲にある。これらおよび類似の添加剤の濃度は、本明細書において、液晶成分および液晶媒体の化合物の濃度の値および範囲については考慮されない。このことは、混合物中に場合により使用される二色性染料の濃度にも当てはまり、各化合物、ホスト混合物の成分の濃度が特定される場合には考慮されない。各添加剤の濃度は、常に、最終的にドーピングされた混合物に対して与えられる。
【0202】
本明細書において、特に断らない限り、全ての濃度は、重量%で与えられる。
【0203】
本発明に係る液晶媒体は、幾つかの化合物、好ましくは、3~30、より好ましくは、4~20、最も好ましくは、4~16の化合物からなる。これらの化合物は、従来の方法で混合される。原則として、より少量で使用される化合物の必要量は、より多量で使用される化合物に溶解される。温度が、より高い濃度で使用される化合物の透明点を超える場合、溶解プロセスの完了を観察するのは特に容易である。ただし、他の従来の方法により、例えば、いわゆる予備混合物(例えば、化合物の相同または共晶混合物であることができる)を使用してまたはいわゆるマルチボトルシステム(その構成要素は、混合物自体をただちに使用できる)を使用して、該媒体を製造することも可能である。
【0204】
上記され、以下に記載されたメソゲン化合物またはその混合物の多くは市販されている。これらの化合物は公知であるかまたは文献(例えば、標準研究、例えば、Houben-Weyl, Methoden der Organischen Chemie [Methods of Organic Chemistry], Georg-Thieme-Verlag, Stuttgart)に記載されているように、それ自体公知の方法により、前記反応について公知でありかつ適切な反応条件下で正確になるように製造することができる。本明細書において、それ自体公知の変形例も使用することができる。ただし、本明細書において、より詳細には言及されていない。本発明に係る媒体は、それ自体従来からある方法で製造される。一般的には、成分同士を、好ましくは、高温で溶解させる。適切な添加剤または物質を加えて、液晶相の誘電異方性、粘度および/または配向を変更することができる。
【0205】
該媒体は、さらに、慣用の添加剤、例えば、安定剤、酸化防止剤、フリーラジカルスカベンジャー、連鎖移動剤、例えば、チオエーテルおよび/または可塑剤を含むことができる。
【0206】
安定剤は、例えば、熱応力またはUV照射による分解または酸化に対して変調材料をさらに安定化させるのに有用であることができる。
【0207】
本発明のさらなる態様では、式
【化29】
を有する化合物を含む液晶媒体が提供される。
【0208】
BCH-7F.F.Fと指定されているこの化合物を含ませることにより、ここで記載されている散乱用途のホスト媒体として特に適した有利な液晶媒体が得られることが現在認識されている。この化合物は、上記および以下で説明された該媒体中に含まれることが特に好ましい。
【0209】
好ましくは、上記されたホスト媒体、しかしまた本発明に係るキラルネマチック媒体も、BCH-7F.F.Fに加えて、式
【化30】
を有する化合物を含む。
【0210】
該媒体は、表Dに示されたようなPCH-nと指定される化合物、特に、PCH-3およびPCH-5から選択される化合物から選択される1種以上の化合物を含有するのがさらに好ましい。
【0211】
本発明に係る「アルキル」という用語は、好ましくは、1~7個の炭素原子を有する直鎖および分枝鎖アルキル基、特に、直鎖基であるメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシルおよびヘプチルを包含する。2~5個の炭素原子を有する基が概して好ましい。
【0212】
アルコキシは、直鎖または分枝鎖であることができ、好ましくは、直鎖であり、1、2、3、4、5、6または7個の炭素原子を有するため、好ましくは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブトキシ、ペントキシ、ヘキソキシまたはヘプトキシである。
【0213】
本発明に係る「アルケニル」という用語は、好ましくは、2~7個の炭素原子を有する直鎖および分岐鎖アルケニル基、特に、直鎖基を包含する。特に好ましいアルケニル基は、C2~C7-1E-アルケニル、C4~C7-3E-アルケニル、C5~C7-4E-アルケニル、C6~C7-5E-アルケニルおよびC7-6E-アルケニル、特に、C2~C7-1E-アルケニル、C4~C7-3E-アルケニルおよびC5~C7-4E-アルケニルである。好ましいアルケニル基の例は、ビニル、1E-プロペニル、1E-ブテニル、1E-ペンテニル、1E-ヘキセニル、1E-ヘプテニル、3-ブテニル、3E-ペンテニル、3E-ヘキセニル、3E-ヘプテニル、4E-ペンテニル、4Z-ヘキセニル、4E-ヘキセニル、4Z-ヘプテニル、5-ヘキセニルおよび6-ヘプテニルである。5個以下の炭素原子を有する基が概して好ましい。
【0214】
フッ化アルキルまたはアルコキシは、好ましくは、CF3、OCF3、CFH2、OCFH2、CF2H、OCF2H、C2F5、OC2F5、CFHCF3、CFHCF2H、CFHCFH2、CH2CF3、CH2CF2H、CH2CFH2、CF2CF2H、CF2CFH2、OCFHCF3、OCFHCF2H、OCFHCFH2、OCH2CF3、OCH2CF2H、OCH2CFH2、OCF2CF2H、OCF2CFH2、C3F7またはOC3F7、特に、CF3、OCF3、CF2H、OCF2H、C2F5、OC2F5、CFHCF3、CFHCF2H、CFHCFH2、CF2CF2H、CF2CFH2、OCFHCF3、OCFHCF2H、OCFHCFH2、OCF2CF2H、OCF2CFH2、C3F7またはOC3F7、特に好ましくは、OCF3またはOCF2Hを含む。好ましい実施形態では、フルオロアルキルは、末端フッ素を有する直鎖基、すなわち、フルオロメチル、2-フルオロエチル、3-フルオロプロピル、4-フルオロブチル、5-フルオロペンチル、6-フルオロヘキシルおよび7-フルオロヘプチルを包含する。ただし、フッ素の他の位置も除外されない。
【0215】
オキサアルキルは、好ましくは、式CnH2n+1-O-(CH2)m(式中、nおよびmは、それぞれ独立して、1~6である)で示される直鎖基を包含する。好ましくは、n=1であり、mは、1~6である。
【0216】
オキサアルキルは、好ましくは、直鎖である2-オキサプロピル(=メトキシメチル)、2-(=エトキシメチル)もしくは3-オキサブチル(=2-メトキシエチル)、2-、3-もしくは4-オキサペンチル、2-、3-、4-もしくは5-オキサヘキシル、2-、3-、4-、5-もしくは6-オキサヘプチル、2-、3-、4-、5-、6-もしくは7-オキサオクチル、2-、3-、4-、5-、6-、7-もしくは8-オキサノニルまたは2-、3-、4-、5-、6-、7-、8-もしくは9-オキサデシルである。
【0217】
ハロゲンは、好ましくは、FまたはCl、特に、Fである。
【0218】
上記言及された基のうちの1つが、1つのCH2基が-CH=CH-により置き換えられているアルキル基である場合、これは、直鎖または分岐鎖であることができる。これは、好ましくは、直鎖であり、2~10個の炭素原子を有する。したがって、これは、特に、ビニル、プロパ-1-もしくはプロパ-2-エニル、ブタ-1-、-2-もしくはブタ-3-エニル、ペンタ-1-、-2-、-3-もしくはペンタ-4-エニル、ヘキサ-1-、-2-、-3-、-4-もしくはヘキサ-5-エニル、ヘプタ-1-、-2-、-3-、-4-、-5-もしくはヘプタ-6-エニル、オクタ-1-、-2-、-3-、-4-、-5-、-6-もしくはオクタ-7-エニル、ノナ-1-、-2-、-3-、-4-、-5-、-6-、-7-もしくはノナ-8-エニル、デカ-1-、-2-、-3-、-4-、-5-、-6-、-7-、-8-もしくはデカ-9-エニルである。
【0219】
上記言及された基のうちの1つが、1つのCH2基が-O-により置き換えられておりかつ1つが-CO-により置き換えられているアルキル基である場合、これらは、好ましくは、隣接している。このため、これらは、アシルオキシ基-CO-O-またはオキシカルボニル基-O-CO-を含有する。これらは、好ましくは、直鎖であり、2~6個の炭素原子を有する。
【0220】
したがって、それらは、特に、アセチルオキシ、プロピオニルオキシ、ブチリルオキシ、ペンタノイルオキシ、ヘキサノイルオキシ、アセチルオキシメチル、プロピオニルオキシメチル、ブチリルオキシメチル、ペンタノイルオキシメチル、2-アセチルオキシエチル、2-プロピオニルオキシエチル、2-ブチリルオキシエチル、3-アセチルオキシプロピル、3-プロピオニルオキシプロピル、4-アセチルオキシブチル、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、プロポキシカルボニル、ブトキシカルボニル、ペントキシカルボニル、メトキシカルボニルメチル、エトキシカルボニルメチル、プロポキシカルボニルメチル、ブトキシカルボニルメチル、2-(メトキシカルボニル)エチル、2-(エトキシカルボニル)エチル、2-(プロポキシカルボニル)エチル、3-(メトキシカルボニル)プロピル、3-(エトキシカルボニル)プロピルまたは4-(メトキシカルボニル)ブチルである。
【0221】
上記言及された基のうちの1つが、1つのCH2基が非置換または置換-CH=CH-により置き換えられており、隣接しているCH2基がCO、CO-OまたはO-COにより置き換えられているアルキル基である場合、これは、直鎖または分岐鎖であることができる。これは、好ましくは、直鎖であり、4~13個の炭素原子を有する。したがって、これは、特に、アクリロイルオキシメチル、2-アクリロイルオキシエチル、3-アクリロイルオキシプロピル、4-アクリロイルオキシブチル、5-アクリロイルオキシペンチル、6-アクリロイルオキシヘキシル、7-アクリロイルオキシヘプチル、8-アクリロイルオキシオクチル、9-アクリロイルオキシノニル、10-アクリロイルオキシデシル、メタクリロイルオキシメチル、2-メタクリロイルオキシエチル、3-メタクリロイルオキシプロピル、4-メタクリロイルオキシブチル、5-メタクリロイルオキシペンチル、6-メタクリロイルオキシヘキシル、7-メタクリロイルオキシヘプチル、8-メタクリロイルオキシオクチルまたは9-メタクリロイルオキシノニルである。
【0222】
上記言及された基のうちの1つが、CNまたはCF3により一置換されているアルキル基またはアルケニル基である場合、この基は、好ましくは、直鎖である。CNまたはCF3による置換は、任意の位置にある。
【0223】
上記言及された基のうちの1つが、ハロゲンにより少なくとも一置換されているアルキル基またはアルケニル基である場合、この基は、好ましくは、直鎖であり、ハロゲンは、好ましくは、FまたはCl、より好ましくは、Fである。多置換の場合、ハロゲンは、好ましくは、Fである。また、得られる基は、パーフルオロ化基も含む。一置換の場合、フルオロまたはクロロ置換基は、任意の所望の位置にあることができるが、好ましくは、ω位にある。
【0224】
分岐基を含有する化合物は、幾つかの従来の液晶ベース材料におけるより良好な溶解性のために重要である場合がある。ただし、それらが光学的に活性である場合、それらは、キラルドーパントとして特に適している。
【0225】
この種の分岐基は、一般的には、1つ以下の鎖分岐を含有する。好ましい分岐基は、イソプロピル、2-ブチル(=1-メチルプロピル)、イソブチル(=2-メチルプロピル)、2-メチルブチル、イソペンチル(=3-メチルブチル)、2-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2-エチルヘキシル、2-プロピルペンチル、イソプロポキシ、2-メチルプロポキシ、2-メチルブトキシ、3-メチルブトキシ、2-メチルペントキシ、3-メチルペントキシ、2-エチルヘキソキシ、1-メチルヘキソキシまたは1-メチルヘプトキシである。
【0226】
上記言及された基のうちの1つが、2つ以上のCH2基が-O-および/または-CO-O-により置き換えられているアルキル基である場合、これは、直鎖または分岐鎖であることができる。これは、好ましくは、分岐鎖であり、3~12個の炭素原子を有する。したがって、これは、特に、ビスカルボキシメチル、2,2-ビスカルボキシエチル、3,3-ビスカルボキシプロピル、4,4-ビスカルボキシブチル、5,5-ビスカルボキシペンチル、6,6-ビスカルボキシヘキシル、7,7-ビスカルボキシヘプチル、8,8-ビスカルボキシオクチル、9,9-ビスカルボキシノニル、10,10-ビスカルボキシデシル、ビス(メトキシカルボニル)メチル、2,2-ビス-(メトキシカルボニル)エチル、3,3-ビス(メトキシカルボニル)プロピル、4,4-ビス(メトキシカルボニル)ブチル、5,5-ビス(メトキシカルボニル)ペンチル、6,6-ビス(メトキシカルボニル)ヘキシル、7,7-ビス(メトキシカルボニル)ヘプチル、8,8-ビス(メトキシカルボニル)オクチル、ビス(エトキシカルボニル)メチル、2,2-ビス(エトキシカルボニル)エチル、3,3-ビス(エトキシカルボニル)プロピル、4,4-ビス(エトキシカルボニル)ブチルまたは5,5-ビス(エトキシカルボニル)ペンチルである。
【0227】
本発明の別の態様では、本発明に係る媒体または変調材料を含む、スイッチング層が提供される。
【0228】
本発明に係るスイッチング層は、好ましくは、1μm~100μm、より好ましくは、2μm~50μm、さらにより好ましくは、4μm~40μm、特に、10μm~25μmの範囲の厚みを有する。
【0229】
2つ以上の層を組み合わせて、例えば、窓要素に提供することも可能である。この場合、該層は、基板または適切なシート、ペインまたはパネルにより分離される。
【0230】
本発明によれば、スイッチング層を含む、スイッチング要素、特に窓要素を提供することができる。スイッチング層は、2つの基板、特に、2つの透明基板間に配置される。
【0231】
基板は、ガラスまたはポリマー、特に、ガラス、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリカーボネート(PC)、ポリイミド(PI)、COP(環状オレフィンポリマー)またはTAC(トリアセチルセルロース)を含むことができ、好ましくは、これらからなることができる。
【0232】
特に好ましい実施形態では、ガラス基板が使用される。
【0233】
窓要素は、特に、光学的に透明な状態または透明状態と散乱状態との間でスイッチング層を電気的にスイッチングすることにより、光の通過に影響を及ぼすことができる。
【0234】
本発明に係る窓要素または該窓要素が一体化されていることができる窓は、好ましくは、UV光を遮断する1つ以上の層を含む。特に、窓要素は、好ましくは、350nm未満、好ましくは、360nm未満、特に好ましくは、380nm未満まで及ぶ波長を有する光の通過を許容しないかまたは非常に小さい割合でしか許容しない1つ以上の層を含む。
【0235】
窓要素は、幾つかの窓用途において、例えば、プライバシーまたはアンチグレアを提供するのに有用であることができる。窓要素は、例えば、スイッチング可能なガラスユニットとして配置することができる。隔離ガラスユニットに組み込むことができる。
【0236】
有利には、窓要素は、本明細書に記載された容易かつ効率的な方法により製造することができる。
【0237】
製造方法において、1種以上の重合性メソゲン化合物を含む液晶媒体は、それぞれ電極が設けられた2つの対向する透明基板間の層として提供される。好ましくは、電極は、各基板の内面の上方に導電層として配置され、より好ましくは、導電層は、パッシベーション層上にそれぞれ配置され、さらにより好ましくは、パッシベーション層間に配置され、場合により、該液晶媒体と直接接触している配列層がさらに設けられる。
【0238】
次いで1種以上の重合性メソゲン化合物が、特に、層内に印加された電界の存在下で重合される。
【0239】
重合を、好ましくは、UV光を使用して、光重合により行うのが好ましい。特に好ましい実施形態では、重合中に、少なくとも一時的に、電界を印加して、該媒体の配向、好ましくは、ホメオトロピック配向を誘引する。
【0240】
重合中に所定の配向を設定するための電圧の印加は、スイッチング層および窓要素の生成物特性に好ましい影響を及ぼすことができる。例えば、重合中にホメオトロピック配向を誘引することは、均一で低ヘイズの透明状態を達成するのに寄与することができ、一方でさらに、均一で適切に強いヘイズを散乱状態で得ることができる。
【0241】
光重合中の温度を、例えば、20℃~100℃の範囲、好ましくは、透明点未満に制御することが可能である。
【0242】
実施形態において、反応性メソゲンは自己開始性である。一方、別の実施形態では、光開始剤を使用して重合を誘発する。
【0243】
スイッチング層中の該材料の光重合には、好ましくは、30秒~240分、より好ましくは、1分~120分の暴露時間を使用し、好ましくは、0.01mW/cm2~100mW/cm2、より好ましくは、0.1mW/cm2~50mW/cm2、特に、1mW/cm2~20mW/cm2の範囲の照射強度を使用する。
【0244】
重合のために、幾つかのパラメータ、例えば、照射線量、印加電圧、AC電圧の周波数および該媒体中のキラルドーパントの量を適切に設定しまたは変化させることができる。
【0245】
重合、特に光重合工程後に、さらなる処理を行うことができる。好ましくは、熱処理を、電界の存在下または非存在下のいずれかで、重合工程後に行う。熱処理、すなわち、先の重合工程と比較して上昇した温度への暴露により、さらなる硬化またはさらなる変換率または重合の完了をもたらすことができる。
【0246】
使用される基板に前処理工程、例えば、表面処理法、例えば、UV-オゾン処理またはプラズマ処理を行うことも可能であり、これにより、より広い領域にわたって配向および濡れ挙動を改善することができ、均一性の改善および透明状態における望ましくないヘイズの好ましい低減に寄与することができる。
【0247】
本明細書に記載された方法は、有利には、単一のスイッチング層のみがデバイスに使用される場合であっても、好ましい耐久性、色の中立性、低ヘイズの透明状態および良好なプライバシーを与える散乱状態を有する窓要素を製造するのに有用である。
【0248】
本発明において、特に、下記実施例において、メソゲン化合物の構造を、頭字語とも呼ばれる略語により示す。これらの頭字語において、化学式を、以下の表A~Cを使用して、下記のように省略する。全ての基C
nH
2n+1、C
mH
2m+1およびC
lH
2l+1またはC
nH
2n-1、C
mH
2m-1およびC
lH
2l-1はそれぞれ、n、mおよびl個のC原子を有する直鎖アルキルまたはアルケニル、好ましくは、1-E-アルケニルを指す。表Aに、化合物のコア構造の環要素に使用されるコードを列記する。一方、表Bに、連結基を示す。表Cに、左側末端基または右側末端基についてのコードの意味を示す。頭字語は、任意の連結基を有する環要素のためのコードと、次いで第1のハイフンと、左側末端基のためのコードと、第2のハイフンと、右側末端基のためのコードとから構成される。表Dに、化合物の例示的な構造を、それらの各略語と共に示す。
【表1-1】
【表1-2】
【表1-3】
【表2】
【表3-1】
【表3-2】
【0249】
ここで、nおよびmはそれぞれ、整数を指し、3つのドット「...」は、この表からの他の略語のためのプレースホルダである。
【0250】
下記表に、例示的な構造を、それらの各略語と共に示す。これらは、略語に対する規則の意味を説明するために示されている。それらは、さらに、好ましく使用することができる化合物を表す。
【表4-1】
【表4-2】
【表4-3】
【表4-4】
【表4-5】
【表4-6】
【表4-7】
【表4-8】
【表4-9】
【表4-10】
【表4-11】
【表4-12】
【表4-13】
【表4-14】
【表4-15】
【表4-16】
【表4-17】
【表4-18】
【表4-19】
【0251】
ここで、n、mおよびlは、好ましくは、それぞれ独立して、1~7を指す。
【0252】
下記表に、本発明に係る媒体に安定剤として使用することができる例示的な化合物を示す。
【0253】
表E
表Eに、本発明に係るLC媒体に加えることができる可能性のある安定剤を示す。ここで、nは、1~12の整数、好ましくは、1、2、3、4、5、6、7または8を指す。末端メチル基は示していない。
【表5-1】
【表5-2】
【表5-3】
【表5-4】
【表5-5】
【表5-6】
【0254】
LC媒体は、好ましくは、0~10重量%、特に、1ppm~5重量%、特に好ましくは、1ppm~1重量%の安定剤を含む。
【0255】
以下の表Fに、本発明に係るメソゲン媒体中にキラルドーパントとして好ましく使用することができる例示的な化合物を示す。
【表6-1】
【表6-2】
【表6-3】
【0256】
本発明の好ましい実施形態では、メソゲン媒体は、表Fに示された化合物から選択される1種以上の化合物を含む。
【0257】
本発明に係るメソゲン媒体は、好ましくは、上記表D~Fに示された化合物から選択される2種以上、好ましくは、4種以上の化合物を含む。
【0258】
実施形態において、本発明に係るLC媒体は、好ましくは、表Dに示された3種以上、より好ましくは、5種以上の化合物を含む。
【0259】
表G
表Gに、本発明に係るLC媒体に、好ましくは、反応性メソゲン化合物として使用することができる例示的な化合物をまとめる。好ましくは、重合のために、開始剤または2種以上の開始剤の混合物が加えられる。開始剤または開始剤混合物は、好ましくは、混合物に対して0.001重量%~2重量%の量で加えられる。適切な開始剤は、例えば、Irgacure
(登録商標)651(BASF製)である。
【表7-1】
【表7-2】
【表7-3】
【表7-4】
【表7-5】
【表7-6】
【表7-7】
【表7-8】
【表7-9】
【表7-10】
【表7-11】
【表7-12】
【表7-13】
【表7-14】
【表7-15】
【表7-16】
【表7-17】
【表7-18】
【0260】
本発明の好ましい実施形態では、メソゲン媒体は、表Gからの化合物の群から選択される1種以上の化合物を含む。
【0261】
本発明に係る液晶媒体は、表Dの化合物の群から選択される、好ましくは、4種以上、より好ましくは、6種以上、さらにより好ましくは、7種以上、特に好ましくは、8種以上の化合物、好ましくは、表Dの式の群から選択される3種以上の異なる式で示される化合物を含む。該媒体は、さらに、表Eの式の群から選択される1種、2種またはそれ以上の化合物を含有するのが特に好ましい。さらにより好ましくは、該媒体は、さらに、表Gの式の群から選択される1種、2種またはそれ以上の化合物を含有する。
【0262】
下記実施例は、本発明の単なる例示であり、それらは、決して本発明の範囲を限定するものとみなされるべきではない。本開示に照らして、実施例およびその改変または他の等価物は、当業者に明らかになるであろう。
【0263】
ただし、下記に示された物理的特性および組成は、どの特性を達成することができ、どの範囲でそれらを改変することができるかを例証する。特に、好ましく達成することができる種々の特性の組み合わせは、このように明確に定義される。
【0264】
実施例
液晶混合物および複合系を、下記に与えられた組成および特性で実現する。それらの特性と光学的性能を調査する。
【0265】
参照例1
液晶ベース混合物B-1を製造する。同B-1は、その一般的な物理的特性に関して特性決定され、下記表に示された組成および特性を有する。
【表8】
【0266】
参照例2
液晶ベース混合物B-2を製造する。同B-2は、その一般的な物理的特性に関して特性決定され、下記表に示された組成および特性を有する。
【表9】
【0267】
参照例3
液晶ベース混合物B-3を製造する。同B-3は、その一般的な物理的特性に関して特性決定され、下記表に示された組成および特性を有する。
【表10】
【0268】
参照例4
液晶ベース混合物B-4を製造する。同B-4は、その一般的な物理的特性に関して特性決定され、下記表に示された組成および特性を有する。
【表11】
【0269】
参照例5
液晶ベース混合物B-5を製造する。同B-5は、その一般的な物理的特性に関して特性決定され、下記表に示された組成および特性を有する。
【表12】
【0270】
参照例6
液晶ベース混合物B-6を製造する。同B-6は、その一般的な物理的特性に関して特性決定され、下記表に示された組成および特性を有する。
【表13】
【0271】
参照例7
液晶ベース混合物B-7を製造する。同B-7は、その一般的な物理的特性に関して特性決定され、下記表に示された組成および特性を有する。
【表14】
【0272】
参照例8
液晶ベース混合物B-8を製造する。同B-8は、その一般的な物理的特性に関して特性決定され、下記表に示された組成および特性を有する。
【表15】
【0273】
参照例9
液晶ベース混合物B-9を製造する。同B-9は、その一般的な物理的特性に関して特性決定され、下記表に示された組成および特性を有する。
【表16】
【0274】
参照例10
液晶ベース混合物B-10を製造する。同B-10は、その一般的な物理的特性に関して特性決定され、下記表に示された組成および特性を有する。
【表17】
【0275】
参照例11
液晶ベース混合物B-11を製造する。同B-11は、その一般的な物理的特性に関して特性決定され、下記表に示された組成および特性を有する。
【表18】
【0276】
参照例12
液晶ベース混合物B-12を製造する。同B-12は、その一般的な物理的特性に関して特性決定され、下記表に示された組成および特性を有する。
【表19】
【0277】
参照例13
液晶ベース混合物B-13を製造する。同B-13は、その一般的な物理的特性に関して特性決定され、下記表に示された組成および特性を有する。
【表20】
【0278】
参照例14
液晶ベース混合物B-14を製造する。同B-14は、その一般的な物理的特性に関して特性決定され、下記表に示された組成および特性を有する。
【表21】
【0279】
参照例15
液晶ベース混合物B-15を製造する。同B-15は、その一般的な物理的特性に関して特性決定され、下記表に示された組成および特性を有する。
【表22】
【0280】
参照例16
液晶ベース混合物B-16を製造する。同B-16は、その一般的な物理的特性に関して特性決定され、下記表に示された組成および特性を有する。
【表23】
【0281】
実施例1
コレステリック混合物C-1を、97.01%の上記参照例1に記載された混合物B-1と、Merck KGaA、Darmstadt、Germanyから入手可能な、0.42%のキラルドーパントR-5011と、1.25%の式RM-A
【化31】
で示される化合物と、0.62%の式RM-B
【化32】
で示される化合物と、0.62%の式RM-C
【化33】
で示される化合物と、Ciba、Switzerlandから入手可能な、0.08%の光開始剤Irgacure(登録商標)651(以下、IRG-651と省略)
【化34】
とを混合することにより製造する。
【0282】
得られた混合物C-1のピッチは、1.84μmである。
【0283】
ピッチを、上記されたNIR分光法を使用し、20℃での選択反射極大波長λmaxを測定することにより確認する。
【0284】
混合物C-1を、ITO電極およびポリイミド配列層(AL-1054、Japan Synthetic Rubber製、平面、TN)を有し、セルギャップが25μmであるガラス基板を有する試験セルに真空充填することにより充填し、充填口を密閉する。電気配線を、はんだ付けによりこのセルに適用する。
【0285】
その後、重合を、方形波電圧(70V、60Hz)を印加しながら、UV光(UVAおよびUVB 光強度3.5mW/cm2)で試験セルを照射することにより行う。
【0286】
重合後、ヘイズを、ASTM 1003-92に従って、分光光度計(Lambda 1050、Perkin Elmer)および150mmのUlbricht球を使用して測定する。
【0287】
得られたセルは、63Vにおいて、6%のヘイズおよび100%の透明度を有する透明状態を有する。さらに、0Vにおいて、このセルは、100%のヘイズおよび13%の透明度を有するプライバシー(散乱)状態を有する。
【0288】
本明細書において、透明度は、BYK-Gardner製のhaze-gard iを使用して測定する。
【0289】
望ましくない軸外色効果は観察されない。
【0290】
実施例2
コレステリック混合物C-2を、98.28%の参照例1に記載された混合物B-1と、Merck KGaA、Darmstadt、Germanyから入手可能な、0.42%のキラルドーパントR-5011と、0.63%の式RM-D
【化35】
で示される化合物と、0.63%の式RM-E
【化36】
で示される化合物と、0.04%のIRG-651とを混合することにより製造する。
【0291】
得られた混合物C-2のピッチは、1.84μmである。
【0292】
混合物C-2を、ITO電極およびポリイミド配列層(AL-1054、Japan Synthetic Rubber製、平面、TN)を有し、セルギャップが20μmであるガラス基板を有する試験セルに真空充填することにより充填し、充填口を密閉する。電気配線を、はんだ付けによりこのセルに適用する。
【0293】
充填された試験セルを、実施例1に記載されたように、さらに処理し、測定する。
【0294】
重合後に得られたセルは、50Vにおいて、4%のヘイズおよび100%の透明度を有する透明状態を有する。さらに、0Vにおいて、このセルは、100%のヘイズおよび18%の透明度を有するプライバシー(散乱)状態を有する。
【0295】
望ましくない軸外色効果は観察されない。
【0296】
比較例1
コレステリック混合物CC-1を、99.58%の上記参照例1に記載された混合物B-1をMerck KGaA、Darmstadtから入手可能な、0.42%のキラルドーパントR-5011と混合することにより製造する。
【0297】
混合物CC-1を、ITO電極およびポリイミド配列層(AL-1054、Japan Synthetic Rubber製、平面、TN)を有し、セルギャップが35μmであるガラス基板を有する試験セルに真空充填することにより充填し、充填口を密閉する。電気配線を、はんだ付けによりこのセルに適用する。
【0298】
得られたセルは、63Vにおいて、3%のヘイズおよび100%の透明度を有する透明状態を有する。さらに、3Vにおいて、このセルは、79%のヘイズおよび25%の透明度を有するプライバシー(散乱)状態を有する。
【0299】
このセルは、軸外で観察した場合、角度依存性を有する虹のような外観に似た望ましくない色効果を示す。
【0300】
比較例2
コレステリック混合物CC-2を、98.70%の上記参照例1に記載された混合物B-1と、0.63%の上記実施例2に示された式RM-Dで示される化合物と、0.63%の上記実施例2に示された式RM-Eで示される化合物と、0.04%のIRG 651とを混合することにより製造する。
【0301】
混合物CC-2を、ITO電極およびポリイミド配列層(AL-1054、Japan Synthetic Rubber製、平面配向)を有し、セルギャップが25μmであるガラス基板を有する試験セルに真空充填することにより充填し、充填口を密閉する。電気配線を、はんだ付けによりこのセルに適用する。
【0302】
充填された試験セルを、実施例1に記載されたように、さらに処理し、測定する。
【0303】
重合後に得られたセルは、70Vにおいて、54%のヘイズを有するプライバシー(散乱)状態を有する。しかしながら、このセルは、透明状態を示さず、3Vでも、ヘイズが、21%である。
【0304】
実施例3
コレステリック混合物C-3を、98.28%の上記参照例1に記載された混合物B-1と、Merck KGaA、Darmstadt、Germanyから入手可能な、0.42%のキラルドーパントR-5011と、0.63%の上記実施例2で示された式RM-Dで示される化合物と、0.58%の上記実施例2で示された式RM-Eで示される化合物と、0.05%の式RM-F
【化37】
で示される化合物と、0.04%のIRG 651とを混合することにより製造する。
【0305】
混合物C-3を、ITO電極およびポリイミド配列層(AL-1054、Japan Synthetic Rubber製、平面配向)を有し、セルギャップが25μmであるガラス基板を有する試験セルに真空充填することにより充填し、充填口を密閉する。電気配線を、はんだ付けによりこのセルに適用する。
【0306】
充填された試験セルを、実施例1に記載されたように、さらに処理する。
【0307】
このセルは、好ましい透明状態および散乱状態ならびに好ましいスイッチング性能および電気光学的性能を示す。
【0308】
望ましくない軸外色効果は観察されない。
【0309】
実施例4
コレステリック混合物C-4を、98.64%の上記参照例1に記載された混合物B-1と、Merck KGaA、Darmstadt、Germanyから入手可能な、0.42%のキラルドーパントR-5011と、0.45%の上記実施例2で示された式RM-Dで示される化合物と、0.45%の上記実施例2で示された式RM-Eで示される化合物と、0.04%のIRG 651とを混合することにより製造する。
【0310】
混合物C-4を、ITO電極およびポリイミド配列層(AL-1054、Japan Synthetic Rubber製、平面配向)を有し、セルギャップが20μmであるガラス基板を有する試験セルに真空充填することにより充填し、充填口を密閉する。電気配線を、はんだ付けによりこのセルに適用する。
【0311】
充填された試験セルを、実施例1に記載されたように、さらに処理する。
【0312】
重合後に得られたセルは、50Vにおいて、3%のヘイズおよび100%の透明度を有する透明状態を有する。さらに、0Vにおいて、このセルは、100%のヘイズおよび10%の透明度を有するプライバシー(散乱)状態を有する。
【0313】
望ましくない軸外色効果は観察されない。
【0314】
実施例5
コレステリック混合物C-5を、98.58%の参照例1に記載された混合物B-1と、Merck KGaA、Darmstadt、Germanyから入手可能な、0.42%のキラルドーパントR-5011と、1.00%の式RM-G
【化38】
で示される化合物とを混合することにより製造する。
【0315】
混合物C-5を、ITO電極およびポリイミド配列層(垂直配向)を有し、セルギャップが20μmであるガラス基板を有する試験セルに真空充填することにより充填し、充填口を密閉する。電気配線を、はんだ付けによりこのセルに適用する。
【0316】
充填された試験セルを、実施例1に記載されたように、さらに処理し、測定する。
【0317】
重合後に得られたセルは、50Vにおいて、5%のヘイズおよび100%の透明度を有する透明状態を有する。さらに、0Vにおいて、このセルは、100%のヘイズおよび15%の透明度を有するプライバシー(散乱)状態を有する。
【0318】
望ましくない軸外色効果は観察されない。
【0319】
実施例6
コレステリック混合物C-6を、98.61%の参照例1に記載された混合物B-1と、Merck KGaA、Darmstadt、Germanyから入手可能な、0.64%のキラルドーパントR-5011と、0.75%の上記実施例5で示された式RM-Gで示される化合物とを混合することにより製造する。
【0320】
混合物C-6を、ITO電極およびポリイミド配列層(AL-1054、Japan Synthetic Rubber製、平面、TN)を有し、セルギャップが15μmであるガラス基板を有する試験セルに真空充填することにより充填し、充填口を密閉する。電気配線を、はんだ付けによりこのセルに適用する。
【0321】
その後、重合を、方形波電圧(50V、60Hz)を印加しながら、UV光(UVAおよびUVB 光強度3.5mW/cm2)で試験セルを照射することにより行う。
【0322】
重合後に得られたセルは、50Vにおいて、2%のヘイズおよび100%の透明度を有する透明状態を有する。さらに、0Vにおいて、このセルは、100%のヘイズおよび35%の透明度を有するプライバシー(散乱)状態を有する。
【0323】
望ましくない軸外色効果は観察されない。
【0324】
実施例7
コレステリック混合物C-7を、98.28%の参照例12に記載された混合物B-12と、Merck KGaA、Darmstadt、Germanyから入手可能な、0.42%のキラルドーパントR-5011と、0.63%の上記実施例2で示された式RM-Dで示される化合物と、0.63%の上記実施例2で示された式RM-Eで示される化合物と、0.04%のIRG-651とを混合することにより製造する。
【0325】
得られた混合物C-7のピッチは、1.84μmである。
【0326】
混合物C-7を、ITO電極およびポリイミド配列層(AL-1054、Japan Synthetic Rubber製、平面、TN)を有するガラス基板を有し、セルギャップが25μmである試験セルに充填する。
【0327】
その後、重合を、方形波電圧(70V、60Hz)を印加しながら、UV光(UVACUBE 2000、Hoenle、光強度9mW/cm2)で試験セルを10分間照射することにより行う。
【0328】
重合後、ヘイズを測定する。散乱(曇り)状態では、94.4%のヘイズ値を得る。透明状態では、2.3%のヘイズ値を得る。
【0329】
実施例8
コレステリック混合物C-8を、98.28%の参照例4に記載された混合物B-4と、Merck KGaA、Darmstadt、Germanyから入手可能な、0.42%のキラルドーパントR-5011と、0.63%の上記実施例2で示された式RM-Dで示される化合物と、0.63%の上記実施例2で示された式RM-Eで示される化合物と、0.04%のIRG-651とを混合することにより製造する。
【0330】
得られた混合物C-8のピッチは、1.84μmである。
【0331】
混合物C-8を、ITO電極およびポリイミド配列層(AL-1054、Japan Synthetic Rubber製、平面、TN)を有するガラス基板を有し、セルギャップが25μmである試験セルに充填する。
【0332】
その後、重合を、実施例7に記載されたように行う。
【0333】
重合後、ヘイズを測定する。散乱(曇り)状態では、95.7%のヘイズ値を得る。透明状態では、2.6%のヘイズ値を得る。
【0334】
実施例9
コレステリック混合物C-9を、98.28%の参照例14に記載された混合物B-14と、Merck KGaA、Darmstadt、Germanyから入手可能な、0.42%のキラルドーパントR-5011と、0.63%の上記実施例2で示された式RM-Dで示される化合物と、0.63%の上記実施例2で示された式RM-Eで示される化合物と、0.04%のIRG-651とを混合することにより製造する。
【0335】
得られた混合物C-9のピッチは、1.84μmである。
【0336】
混合物C-9を、ITO電極およびポリイミド配列層(AL-1054、Japan Synthetic Rubber製、平面、TN)を有するガラス基板を有し、セルギャップが25μmである試験セルに充填する。
【0337】
その後、重合を、実施例7に記載されたように行う。
【0338】
重合後、ヘイズを測定する。散乱(曇り)状態では、96.7%のヘイズ値を得る。透明状態では、3.3%のヘイズ値を得る。
【0339】
実施例10
コレステリック混合物C-10を、98.28%の参照例13に記載された混合物B-13と、Merck KGaA、Darmstadt、Germanyから入手可能な、0.42%のキラルドーパントR-5011と、0.63%の上記実施例2で示された式RM-Dで示される化合物と、0.63%の上記実施例2で示された式RM-Eで示される化合物と、0.04%のIRG-651とを混合することにより製造する。
【0340】
得られた混合物C-10のピッチは、1.84μmである。
【0341】
混合物C-10を、ITO電極およびポリイミド配列層(AL-1054、Japan Synthetic Rubber製、平面、TN)を有するガラス基板を有し、セルギャップが25μmである試験セルに充填する。
【0342】
その後、重合を、実施例7に記載されたように行う。
【0343】
重合後、ヘイズを測定する。散乱(曇り)状態では、96.7%のヘイズ値を得る。透明状態では、2.5%のヘイズ値を得る。
【0344】
比較例3
コレステリック混合物CC-3を、91.12%の上記参照例1に記載された混合物B-1と、Merck KGaA、Darmstadt、Germanyから入手可能な、6.49%のキラルドーパントCB15と、2.37%のエチレングリコールジメタクリレートと、0.02%のIRG-651とを混合することにより製造する。
【0345】
混合物CC-3を、ITO電極およびポリイミド配列層(AL-1054、Japan Synthetic Rubber製、平面、TN)を有し、セルギャップが25μmであるガラス基板を有する試験セルに充填する。
【0346】
次いで、重合を、実施例7に記載されたように行う。
【0347】
重合後、ヘイズを測定する。散乱(曇り)状態では、95.1%のヘイズ値を得る。透明状態では、4.3%のヘイズ値を得る。
【0348】
実施例11
コレステリック混合物C-11を、98.61%の上記参照例4に記載された混合物B-4と、Merck KGaA、Darmstadt、Germanyから入手可能な、0.64%のキラルドーパントR-5011と、0.75%の上記実施例5で示された式RM-Gで示される化合物とを混合することにより製造する。
【0349】
光開始剤を加えない。得られた混合物C-11のピッチは、1.1μmである。
【0350】
混合物C-11を、ITO電極およびポリイミド配列層(AL-1054、Japan Synthetic Rubber製、平面、TN)を有し、セルギャップが15μmであるガラス基板を有する試験セルに充填する。
【0351】
次いで、重合を、実施例7に記載されたように行う。
【0352】
重合後、ヘイズを測定する。散乱(曇り)状態では、95%のヘイズ値を得る。透明状態では、2.1%のヘイズ値を得る。
【0353】
実施例12
コレステリック混合物C-12を、98.68%の上記参照例4に記載された混合物B-4と、Merck KGaA、Darmstadt、Germanyから入手可能な、0.57%のキラルドーパントR-5011と、0.75%の上記実施例5で示された式RM-Gで示される化合物とを混合することにより製造する。
【0354】
光開始剤を加えない。得られた混合物C-12のピッチは、1.24μmである。
【0355】
混合物C-12を、ITO電極およびポリイミド配列層(AL-1054、Japan Synthetic Rubber製、平面、TN)を有し、セルギャップが18μmであるガラス基板を有する試験セルに充填する。
【0356】
次いで、重合を、実施例7に記載されたように行う。
【0357】
重合後、ヘイズを測定する。散乱(曇り)状態では、97%のヘイズ値を得る。透明状態では、3.5%のヘイズ値を得る。
【0358】
実施例13
コレステリック混合物C-13を、98.61%の上記参照例15に記載された混合物B-15と、Merck KGaA、Darmstadt、Germanyから入手可能な、0.64%のキラルドーパントR-5011と、0.75%の上記実施例5で示された式RM-Gで示される化合物とを混合することにより製造する。
【0359】
混合物C-13を、ITO電極およびポリイミド配列層(AL-1054、Japan Synthetic Rubber製、平面、TN)を有し、セルギャップが20μmであるガラス基板を有する試験セルに充填する。
【0360】
次いで、重合を、実施例7に記載されたように行う。
【0361】
重合後、ヘイズを測定する。
【0362】
このセルは、好ましい透明状態および散乱状態ならびに好ましいスイッチングおよび電気光学的性能を示す。
【0363】
望ましくない軸外色効果は観察されない。
【0364】
実施例14
コレステリック混合物C-14を、98.78%の上記参照例15に記載された混合物B-15と、Merck KGaA、Darmstadt、Germanyから入手可能な、0.44%のキラルドーパントR-5011と、0.75%の上記実施例5で示された式RM-Gで示される化合物と、0.03%の式A-1
【化39】
で示される化合物とを混合することにより製造する。
【0365】
混合物C-14を、ITO電極およびポリイミド配列層(AL-1054、Japan Synthetic Rubber製、平面、TN)を有し、セルギャップが20μmであるガラス基板を有する試験セルに充填する。
【0366】
次いで、重合を、実施例7に記載されたように行う。
【0367】
重合後、ヘイズを測定する。
【0368】
このセルは、好ましい透明状態および散乱状態ならびに好ましいスイッチングおよび電気光学的性能を示す。
【0369】
望ましくない軸外色効果は観察されない。
【0370】
実施例15
コレステリック混合物C-15を、98.75%の上記参照例15に記載された混合物B-15と、Merck KGaA、Darmstadt、Germanyから入手可能な、0.44%のキラルドーパントR-5011と、0.75%の上記実施例5で示された式RM-Gで示される化合物と、0.03%の上記実施例14で示された式A-1で示される化合物と、0.03%の式A-2
【化40】
で示される化合物とを混合することにより製造する。
【0371】
混合物C-15を、ITO電極およびポリイミド配列層(AL-1054、Japan Synthetic Rubber製、平面、TN)を有し、セルギャップが20μmであるガラス基板を有する試験セルに充填する。
【0372】
次いで、重合を、実施例7に記載されたように行う。
【0373】
重合後、ヘイズを測定する。
【0374】
このセルは、好ましい透明状態および散乱状態ならびに好ましいスイッチングおよび電気光学的性能を示す。
【0375】
望ましくない軸外色効果は観察されない。
【0376】
実施例16
コレステリック混合物C-16を、98.82%の上記参照例16に記載された混合物B-16と、Merck KGaA、Darmstadt、Germanyから入手可能な、0.40%のキラルドーパントR-5011と、0.75%の上記実施例5で示された式RM-Gで示される化合物と、0.03%の上記実施例14で示された式A-1で示される化合物とを混合することにより製造する。
【0377】
混合物C-16を、ITO電極およびポリイミド配列層(AL-1054、Japan Synthetic Rubber製、平面、TN)を有し、セルギャップが20μmであるガラス基板を有する試験セルに充填する。
【0378】
次いで、重合を、実施例7に記載されたように行う。
【0379】
重合後、ヘイズを測定する。
【0380】
このセルは、好ましい透明状態および散乱状態ならびに好ましいスイッチングおよび電気光学的性能を示す。
【0381】
望ましくない軸外色効果は観察されない。
【0382】
実施例17
コレステリック混合物C-17を、上記参照例15に記載された混合物B-15と、Merck KGaA、Darmstadt、Germanyから入手可能なキラルドーパントS-1011とを、2μmのピッチが得られるように混合し、ここで、99.25%のこの混合物を、0.75%の上記実施例5で示された式RM-Gで示される化合物とさらに混合することにより製造して、混合物C-17を得る。
【0383】
混合物C-17を、実施例1に記載されたように、さらに処理する。
【0384】
このセルは、好ましい透明状態および散乱状態ならびに好ましいスイッチングおよび電気光学的性能を示す。
【0385】
望ましくない軸外色効果は観察されない。
【0386】
実施例18~26
混合物C-18、C-19、C-20、C-21、C-22、C-23、C-24、C-25およびC-26を製造し、実施例2に従ってさらに処理する。ただし、ここで、キラルドーパントR-5011に代えて、キラルドーパントS-1011を使用し、混合物B-1に代えて、参照例2、3および5~11にそれぞれ記載された混合物B-2、B-3、B-5、B-6、B-7、B-8、B-9、B-10およびB-11それぞれを使用する。
【0387】
このセルは、好ましい透明状態および散乱状態ならびに好ましいスイッチングおよび電気光学的性能を示す。
【0388】
望ましくない軸外色効果は観察されない。