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特許7420724ろう付け材、ろう付け部材、熱交換器、および、ろう付け部材の製造方法
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  • 特許-ろう付け材、ろう付け部材、熱交換器、および、ろう付け部材の製造方法 図1
  • 特許-ろう付け材、ろう付け部材、熱交換器、および、ろう付け部材の製造方法 図2
  • 特許-ろう付け材、ろう付け部材、熱交換器、および、ろう付け部材の製造方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】ろう付け材、ろう付け部材、熱交換器、および、ろう付け部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 35/363 20060101AFI20240116BHJP
   B23K 1/00 20060101ALI20240116BHJP
   B23K 3/06 20060101ALI20240116BHJP
   B23K 1/19 20060101ALI20240116BHJP
   B23K 35/28 20060101ALN20240116BHJP
   C22C 21/00 20060101ALN20240116BHJP
   B23K 101/14 20060101ALN20240116BHJP
【FI】
B23K35/363 H
B23K1/00 330L
B23K3/06 Z
B23K1/19 E
B23K35/28 310A
C22C21/00 D
B23K101:14
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020538400
(86)(22)【出願日】2019-08-20
(86)【国際出願番号】 JP2019032416
(87)【国際公開番号】W WO2020040128
(87)【国際公開日】2020-02-27
【審査請求日】2022-05-25
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2018/030806
(32)【優先日】2018-08-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】312016056
【氏名又は名称】ハリマ化成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100103517
【弁理士】
【氏名又は名称】岡本 寛之
(74)【代理人】
【識別番号】100149607
【弁理士】
【氏名又は名称】宇田 新一
(72)【発明者】
【氏名】野村 航
(72)【発明者】
【氏名】木賀 大悟
(72)【発明者】
【氏名】田鶴 葵
(72)【発明者】
【氏名】森家 智嗣
【審査官】川口 由紀子
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-314380(JP,A)
【文献】特開昭54-041251(JP,A)
【文献】特開2004-074267(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0135134(US,A1)
【文献】中国特許第104607826(CN,B)
【文献】米国特許第05781846(US,A)
【文献】中国特許第101412168(CN,B)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 35/363
B23K 1/00
B23K 3/06
B23K 1/19
B23K 35/28
C22C 21/00
B23K 101/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウムまたはアルミニウム合金を、ろう付けするためのろう付け材であって、
フッ化物系フラックスと、
固形化剤と、
有機粘度低下剤と
を含み、
前記固形化剤は、常温固体炭化水素、常温固体アルキルアルコール、常温固体エーテルアルコール、および、高炭素カルボン酸-高炭素アルコールエステルからなる群から選択される少なくとも1種の化合物であり、
前記有機粘度低下剤は、界面活性剤、および/または、10℃で液体の有機溶剤を含み、
前記固形化剤の含有割合が、フッ化物系フラックス100質量部に対して10質量部以上2000質量部以下であり、
前記有機粘度低下剤の含有割合が、フッ化物系フラックス100質量部に対して0.2質量部以上1000質量部以下であり、
前記有機粘度低下剤の含有割合が、前記ろう付け材の総量に対して、0.1質量%以上60質量%以下であり、
25℃で固形であることを特徴とする、ろう付け材。
【請求項2】
前記ろう付け材は、加熱により軟化し、
150℃およびせん断速度2/sにおける粘度が100Pa・s以下である
ことを特徴とする、請求項1に記載のろう付け材。
【請求項3】
さらに、ろう材粉末を含み、
前記ろう材粉末が、アルミニウムと共晶合金を形成し得る金属、および/または、前記金属とアルミニウムとの合金からなる
ことを特徴とする、請求項1に記載のろう付け材。
【請求項4】
アルミニウムまたはアルミニウム合金と、
請求項1に記載のろう付け材を、前記アルミニウムまたは前記アルミニウム合金に塗布してなる塗膜とを備えることを特徴とする、ろう付け部材。
【請求項5】
請求項4に記載のろう付け部材の接合体を備えることを特徴とする、熱交換器。
【請求項6】
アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基材を加工する加工工程と、
請求項1に記載のろう付け材を、加熱溶融させた後、吐出装置に供給し、前記基材に吐出させる塗布工程と
を備えることを特徴とする、ろう付け部材の製造方法。
【請求項7】
アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基材を加工する加工工程と、
請求項1に記載のろう付け材を、摩擦することにより、前記基材に塗布する塗布工程と
を備えることを特徴とする、ろう付け部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ろう付け材、ろう付け部材、熱交換器、および、ろう付け部材の製造方法に関し、詳しくは、アルミニウムまたはアルミニウム合金を、ろう付けするためのろう付け材、それを塗布してなる塗膜を備えるろう付け部材、そのろう付け部材を備える熱交換器、さらに、ろう付け部材を製造するためのろう付け部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、金属部材を溶接する場合において、溶接される金属部材の酸化物を除去するために、フラックスが用いられる。
【0003】
通常、フラックスは液状であるため、フラックスを溶接部位に塗布すると、フラックスが流動する場合がある。また、フラックスが液状である場合には、塗膜を固化させるために、溶剤の乾燥設備が必要であり、製造ラインの複雑化を惹起する場合があり、さらに、液状フラックスの飛散などにより、作業性に劣る場合がある。
【0004】
そこで、製造ラインの簡略化および作業性の向上を図るため、固形のフラックスを用いることが検討されており、例えば、ろう材粉末と、フッ化物系フラックス粉末と、常温で固体のワックスとを均一に配合してなるろう付け組成物が提案されている。また、そのろう付け組成物を溶融させ、アルミニウム材料の表面に塗布することにより、ろう付け用のコーティング層を形成することが提案されている(例えば、下記特許文献1参照。)。
【0005】
また、例えば、ろう付け用金属粉末と、パラフィン系のワックスと、ろう付け用フラックスとを混合した後、得られた混合物を水分散させ、ろう付け用組成物として用いることが、提案されている(例えば、下記特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-314380号公報
【文献】特開平3-155460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、上記した常温固体のろう付け組成物を溶融して液化し、被塗物に塗布する場合、フッ化物系フラックス粉末の分散性が十分ではなく、ろう付け性に劣るという不具合がある。また、ろう付け組成物を液化して被塗物に塗布する場合、塗布性(液体状塗布性)が十分ではないという不具合がある。
【0008】
また、上記した常温固体のろう付け組成物を、固体状態のまま被塗物に接触させ、必要に応じて摩擦することにより、ろう付け組成物を被塗物に塗布することも検討される。この場合には、塗布性の観点から、ろう付け組成物を所望形状に形成することが要求される。しかし、上記したろう付け組成物は、成形性が十分ではないため、所望形状に形成し難く、その結果、固体状態での塗布性(固体状塗布性)に劣る。
【0009】
本発明は、製造ラインの簡略化および作業性の向上を図りながら、ろう付け性および塗布性(液体状塗布性、固体状塗布性)にも優れるろう付け材、そのろう付け材を塗布してなる塗膜を備えるろう付け部材、および、そのろう付け部材を備える熱交換器、さらに、ろう付け部材の製造方法である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明[1]は、アルミニウムまたはアルミニウム合金を、ろう付けするためのろう付け材であって、フッ化物系フラックスと、固形化剤と、有機粘度低下剤とを含み、25℃で固形である、ろう付け材を、含んでいる。
【0011】
本発明[2]は、前記ろう付け材は、加熱により軟化し、150℃における粘度が100Pa・s以下である、上記[1]に記載のろう付け材を、含んでいる。
【0012】
本発明[3]は、前記有機粘度低下剤の配合割合が、ろう付け材の総量に対して、0.1質量%以上55質量%以下である、上記[1]または[2]に記載のろう付け材を、含んでいる。
【0013】
本発明[4]は、前記有機粘度低下剤が、界面活性剤、および/または、10℃で液体の有機溶剤を含む
、請求項[1]~[3]のいずれか一項に記載のろう付け材を、含んでいる。
【0014】
本発明[5]は、前記界面活性剤が、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤および両性界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項4に記載のろう付け材を、含んでいる。
【0015】
本発明[6]は、前記界面活性剤が、ノニオン系界面活性剤を含み、前記ノニオン系界面活性剤の疎水基の炭素数が、10以上である、上記[4]または[5]に記載のろう付け材を、含んでいる。
【0016】
本発明[7]は、前記界面活性剤が、ノニオン系界面活性剤を含み、前記ノニオン系界面活性剤のHLB値が、17.5以下である、上記[4]~[6]のいずれか一項に記載のろう付け材を、含んでいる。
【0017】
本発明[8]は、前記界面活性剤が、ノニオン系界面活性剤を含み、前記ノニオン系界面活性剤が、ポリオキシアルキレン基を含む、上記[4]~[7]のいずれか一項に記載のろう付け材を、含んでいる。
【0018】
本発明[9]は、前記界面活性剤が、アニオン系界面活性剤を含み、前記アニオン系界面活性剤の疎水基の炭素数が、20以下である、上記[4]または[5]に記載のろう付け材を、含んでいる。
【0019】
本発明[10]は、前記界面活性剤が、アニオン系界面活性剤を含み、前記アニオン系界面活性剤が、カルボン酸基、カルボン酸塩、スルホン酸基およびスルホン酸塩からなる群から選択される少なくとも1種を含む、上記[4]、[5]および[9]のいずれか一項に記載のろう付け材を、含んでいる。
【0020】
本発明[11]は、前記界面活性剤が、カチオン系界面活性剤を含み、前記カチオン系界面活性剤の疎水基の炭素数が、20以下である、上記[4]または[5]に記載のろう付け材を、含んでいる。
【0021】
本発明[12]は、前記界面活性剤が、カチオン系界面活性剤を含み、前記カチオン系界面活性剤が、アミノ基および/またはその塩を含む、上記[4]、[5]および[11]のいずれか一項に記載のろう付け材を、含んでいる。
【0022】
本発明[13]は、前記界面活性剤が、両性界面活性剤を含み、前記両性界面活性剤の疎水基の炭素数が、20以下である、上記[4]または[5]に記載のろう付け材を、含んでいる。
【0023】
本発明[14]は、前記界面活性剤が、両性界面活性剤を含み、前記両性界面活性剤が、アミノ基および/またはその塩を含む、上記[4]、[5]および[13]のいずれか一項に記載のろう付け材を、含んでいる。
【0024】
本発明[15]は、前記界面活性剤が、ノニオン系界面活性剤とアニオン系界面活性剤とを含む、上記[4]または[5]に記載のろう付け材を、含んでいる。
【0025】
本発明[16]は、前記界面活性剤が、ノニオン系界面活性剤とカチオン系界面活性剤とを含む、上記[4]または[5]に記載のろう付け材を、含んでいる。
【0026】
本発明[17]は、前記界面活性剤が、ノニオン系界面活性剤と両性界面活性剤とを含む、上記[4]または[5]に記載のろう付け材を、含んでいる。
【0027】
本発明[18]は、前記界面活性剤の配合割合が、ろう付け材の総量に対して、0.2質量%以上50質量%以下である、上記[4]~[17]のいずれか一項に記載のろう付け材を、含んでいる。
【0028】
本発明[19]は、前記有機溶剤が、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、アルコール類、エステル類、エーテル類、および、油脂類からなる群から選択される少なくとも1種を含有する、上記[4]に記載のろう付け材を、含んでいる。
【0029】
本発明[20]は、前記有機溶剤の配合割合が、前記ろう付け材の総量に対して、55質量%以下である、上記[4]または[19]に記載のろう付け材を、含んでいる。
【0030】
本発明[21]は、前記有機溶剤の配合割合が、前記ろう付け材の総量に対して、25質量%以下である、上記[4]、[19]および[20]のいずれか一項に記載のろう付け材を、含んでいる。
【0031】
本発明[22]は、前記有機溶剤の分子量が4000以下である、上記[4]および[19]~[21]のいずれか一項に記載のろう付け材を、含んでいる。
【0032】
本発明[23]は、さらに、ろう材粉末を含み、前記ろう材粉末が、アルミニウムと共晶合金を形成し得る金属、および/または、前記金属とアルミニウムとの合金からなる、上記[1]~[22]のいずれか一項に記載のろう付け材を、含んでいる。
【0033】
本発明[24]は、アルミニウムまたはアルミニウム合金と、上記[1]~[23]のいずれか一項に記載のろう付け材を、前記アルミニウムまたは前記アルミニウム合金に塗布してなる塗膜とを備える、ろう付け部材を、含んでいる。
【0034】
本発明[25]は、上記[24]に記載のろう付け部材を備える、熱交換器を、含んでいる。
【0035】
本発明[26]は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基材を加工する加工工程と、上記[1]~[23]のいずれか1項に記載のろう付け材を、加熱溶融させた後、吐出装置に供給し、前記基材に吐出させる塗布工程とを備える、ろう付け部材の製造方法を、含んでいる。
【発明の効果】
【0036】
本発明のろう付け材は、25℃で固形であるため、加熱溶融しても、液状のろう付け材と比べて固化が早く、そのため、製造ラインの簡略化、および、作業性の向上を図ることができる。
【0037】
さらに、本発明のろう付け材は、フッ化物系フラックスと固形化剤と有機粘度低下剤とを含むため、溶融時における低粘度化を図ることができ、溶融状態(液体状態)で被塗物に塗布する場合のろう付け性および塗布性(液体状塗布性)にも優れる。
【0038】
加えて、本発明のろう付け材は、ろう付け材を固体状態のまま被塗物に接触させて塗布する場合の塗布性(固体状塗布性)にも優れる。
【0039】
本発明のろう付け部材は、本発明のろう付け材を塗布してなる塗膜を備えるため、優れたろう付け性を備えることができる。
【0040】
本発明の熱交換器は、本発明のろう付け部材を用いて得られるので、優れたろう付け性を備えることができる。
【0041】
本発明のろう付け部材の製造方法では、本発明のろう付け材が用いられるため、塗膜の固化が早く、乾燥させる必要がない。そのため、本発明のろう付け部材の製造方法によれば、アルミニウムまたはアルミニウム合金を加工する加工工程と、ろう付け材を吐出する塗布工程とを、同一の製造ラインで実施することができ、製造ラインの簡略化および作業性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
図1図1は、本発明の熱交換器の一実施形態を示す概略斜視図である。
図2図2は、図1に示す熱交換器に用いられるプレート接合チューブの分解斜視図である。
図3図3は、本発明のろう付け部材の製造方法の一実施形態を示す工程図であり、図3Aが、Al基材を加工する工程、および、図3Bが、Al基材にろう付け材を連続的に塗布する工程を、それぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明のろう付け材は、アルミニウムまたはアルミニウム合金を、ろう付けするためのろう付け材であって、フッ化物系フラックスと、固形化剤と、有機粘度低下剤とを含有する。
【0044】
フッ化物系フラックスとしては、例えば、Cs-Al-F系フラックス、K-Al-F系フラックスなどが挙げられる。
【0045】
Cs-Al-F系フラックスは、セシウム(Cs)、アルミニウム(Al)およびフッ素(F)を含有するフッ化物系フラックスであって、例えば、フルオロアルミン酸セシウム(非反応性セシウム系フラックス)が挙げられる。具体的には、CsAlF、CsAlF、CsAlFなどが挙げられる。
【0046】
K-Al-F系フラックスは、カリウム(K)、アルミニウム(Al)およびフッ素(F)を含有するフッ化物系フラックスであって、例えば、フルオロアルミン酸カリウムなどが挙げられる。具体的には、KAlF、KAlF、KAlFなどが挙げられる。
【0047】
フッ化物系フラックスとしては、好ましくは、K-Al-F系フラックスが挙げられる。
【0048】
これらフッ化物系フラックスは、単独使用または2種以上併用することができる。
【0049】
フッ化物系フラックスの配合割合は、フッ化物系フラックス、固形化剤および有機粘度低下剤(以下、フッ化物系フラックス、固形化剤および有機粘度低下剤をまとめて、「ろう付け成分」とする。)の総量に対して、ろう付け性(ろう切れ)の観点から、例えば、1質量%以上、好ましくは、10質量%以上、より好ましくは、20質量%以上、さらに好ましくは、30質量%以上であり、また、低粘度化の観点から、例えば、80質量%以下、好ましくは、60質量%以下、である。
【0050】
また、ろう付け成分の含有割合は、ろう付け材の総量に対して、例えば、50質量%以上、好ましくは、70質量%以上であり、例えば、100質量%以下であり、例えば、ろう付け材が後述するろう材を含む場合には、好ましくは、90質量%以下、より好ましくは、80質量%以下である。
【0051】
固形化剤は、ろう付け材が25℃において固形となるように溶融温度を調整し、保形性を向上させる成分(ゲル化剤を除く。)である。なお、本発明において、25℃は常温である。また、25℃で固体状態であることを、「常温固体」と称する場合がある。
【0052】
本発明において、固形化剤は、常温固体炭化水素、常温固体アルキルアルコール、常温固体エーテルアルコール、および、高炭素カルボン酸-高炭素アルコールエステルからなる群から選択される少なくとも1種の化合物であると定義される。
【0053】
常温固体炭化水素は、常温固体の炭化水素であり、例えば、天然ワックス、合成ワックスなどの常温固体ワックスが挙げられる。
【0054】
天然ワックスとしては、例えば、パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックスなどの石油ワックスなどが挙げられる。
【0055】
合成ワックスとしては、例えば、ポリエチレンワックス、フィッシャートロプシュワックスなどが挙げられる。
【0056】
これら常温固体炭化水素は、単独使用または2種以上併用することができる。
【0057】
常温固体炭化水素としては、好ましくは、天然ワックス、より好ましくは、パラフィンワックスが挙げられる。
【0058】
常温固体炭化水素の配合割合は、保形性、塗布性および外観の観点から、ろう付け成分の総量に対して、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上、より好ましくは、16質量%以上、さらに好ましくは、27質量%以上、さらに好ましくは、30質量%以上、さらに好ましくは、50質量%以上であり、また、例えば、90質量%以下である。
【0059】
とりわけ、固体状塗布性の観点からは、常温固体炭化水素の配合割合は、ろう付け成分の総量に対して、より好ましくは、10質量%超過、さらに好ましくは、40質量%以上、とりわけ好ましくは、60質量%以上であり、より好ましくは、85質量%以下、さらに好ましくは、80質量%以下、とりわけ好ましくは、70質量%以下である。
【0060】
また、液体状塗布性と固体状塗布性とのバランスを図る観点から、常温固体炭化水素の割合は、ろう付け成分の総量に対して、好ましくは、30質量%以上、より好ましくは、40質量%以上であり、好ましくは、70質量%以下、より好ましくは、60質量%以下である。
【0061】
また、常温固体炭化水素の配合割合は、フッ化物系フラックス100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上、より好ましくは、100質量部以上、さらに好ましくは、150質量部以上であり、また、例えば、2000質量部以下、好ましくは、1000質量部以下、より好ましくは、500質量部以下、さらに好ましくは、300質量部以下である。
【0062】
常温固体アルキルアルコールとしては、例えば、デカノール、ドデカノール、テトラデカノール、ヘキサデカノール、オクタデカノール(ステアリルアルコール)、エイコサノールなどの炭素数10~30のノルマルアルコール(直鎖アルキルアルコール)、例えば、炭素数9~30のノルマルジアルコール、例えば、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどの炭素数5~30の多価アルコールなどが挙げられる。
【0063】
これら常温固体アルキルアルコールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0064】
常温固体アルキルアルコールの配合割合は、保形性および塗布性の観点から、ろう付け成分の総量に対して、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上、より好ましくは、12質量%以上、さらに好ましくは、27質量%以上、さらに好ましくは、30質量%以上、とりわけ好ましくは、50質量%以上であり、また、例えば、90質量%以下である。
【0065】
とりわけ、固体状塗布性の観点からは、常温固体アルキルアルコールの配合割合は、より好ましくは、10質量%以上、さらに好ましくは、16質量%以上、とりわけ好ましくは、30質量%以上である。
【0066】
また、外観の観点からは、常温固体アルキルアルコールの配合割合は、より好ましくは、85質量%以下、さらに好ましくは、80質量%以下、とりわけ好ましくは、70質量%以下である。
【0067】
また、液体状塗布性と固体状塗布性とのバランスを図る観点から、常温固体アルキルアルコールの割合は、ろう付け成分の総量に対して、好ましくは、30質量%以上、より好ましくは、40質量%以上であり、好ましくは、70質量%以下、より好ましくは、60質量%以下である。
【0068】
また、常温固体アルキルアルコールの配合割合は、フッ化物系フラックス100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上、より好ましくは、35質量部以上、さらに好ましくは、100質量部以上であり、また、例えば、2000質量部以下、好ましくは、1000質量部以下、より好ましくは、500質量部以下、さらに好ましくは、300質量部以下である。
【0069】
常温固体エーテルアルコールとしては、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシブチレングリコールなどのポリエーテルグリコール、例えば、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのポリエーテルモノオールなどのポリエーテルアルコールなどが挙げられる。
【0070】
なお、これらポリエーテルアルコールの分子量は、25℃で固体状態となるように、調整される。例えば、常温固体エーテルアルコールにおいて、ポリオキシエチレングリコールの重量平均分子量は、1000以上である。
【0071】
これら常温固体エーテルアルコールは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0072】
常温固体エーテルアルコールの配合割合は、保形性および塗布性の観点から、ろう付け成分の総量に対して、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上、より好ましくは、12質量%以上、さらに好ましくは、27質量%以上、さらに好ましくは、30質量%以上、とりわけ好ましくは、50質量%以上であり、また、例えば、90質量%以下である。
【0073】
とりわけ、固体状塗布性の観点からは、常温固体エーテルアルコールの配合割合は、より好ましくは、10質量%以上、さらに好ましくは、16質量%以上、とりわけ好ましくは、30質量%以上である。
【0074】
また、外観の観点からは、常温固体エーテルアルコールの配合割合は、より好ましくは、85質量%以下、さらに好ましくは、80質量%以下、とりわけ好ましくは、70質量%以下である。
【0075】
また、液体状塗布性と固体状塗布性とのバランスを図る観点から、常温固体エーテルアルコールの割合は、ろう付け成分の総量に対して、好ましくは、30質量%以上、より好ましくは、40質量%以上であり、好ましくは、70質量%以下、より好ましくは、60質量%以下である。
【0076】
また、常温固体エーテルアルコールの配合割合は、フッ化物系フラックス100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上、より好ましくは、35質量部以上、さらに好ましくは、100質量部以上であり、また、例えば、2000質量部以下、好ましくは、1000質量部以下、より好ましくは、500質量部以下、さらに好ましくは、300質量部以下である。
【0077】
高炭素カルボン酸-高炭素アルコールエステルは、炭素数10以上のカルボン酸(後述)と、炭素数8以上のアルコール(後述)との反応生成物であるエステル類である。
【0078】
より具体的には、高炭素カルボン酸-高炭素アルコールエステルは、25℃で固体(常温固体)である。このような高炭素カルボン酸-高炭素アルコールエステルは、ろう付け材の保形性を向上させる。
【0079】
炭素数10以上のカルボン酸としては、例えば、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などの炭素数10以上のモノカルボン酸、例えば、デカン二酸、ドデカン二酸などの炭素数10以上のジカルボン酸およびこれらの無水物などが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0080】
炭素数8以上のアルコールとしては、例えば、オクチルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール、オレイルアルコール、リノリルアルコールなどの炭素数8以上の1価アルコール、例えば、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ドデカンジオールなどの炭素数8以上の多価アルコールなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0081】
そして、高炭素カルボン酸-高炭素アルコールエステルは、1分子以上の炭素数10以上のカルボン酸と、1分子以上の炭素数8以上のアルコールとを、公知の方法でエステル化反応させることにより、得られる。
【0082】
高炭素カルボン酸-高炭素アルコールエステルとして、より具体的には、例えば、カルナバワックス、キャンデリラワックス、トリアコンタニルパルミチン酸などが挙げられる。
【0083】
高炭素カルボン酸-高炭素アルコールエステルは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0084】
高炭素カルボン酸-高炭素アルコールエステルの配合割合は、保形性および塗布性の観点から、ろう付け成分の総量に対して、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上、より好ましくは、12質量%以上、さらに好ましくは、27質量%以上、さらに好ましくは、30質量%以上、とりわけ好ましくは、50質量%以上であり、また、例えば、90質量%以下である。
【0085】
とりわけ、固体状塗布性の観点からは、高炭素カルボン酸-高炭素アルコールエステルの配合割合は、より好ましくは、10質量%以上、さらに好ましくは、16質量%以上、とりわけ好ましくは、30質量%以上である。
【0086】
また、外観の観点からは、高炭素カルボン酸-高炭素アルコールエステルの配合割合は、より好ましくは、85質量%以下、さらに好ましくは、80質量%以下、とりわけ好ましくは、70質量%以下である。
【0087】
また、液体状塗布性と固体状塗布性とのバランスを図る観点から、高炭素カルボン酸-高炭素アルコールエステルの割合は、ろう付け成分の総量に対して、好ましくは、30質量%以上、より好ましくは、40質量%以上であり、好ましくは、70質量%以下、より好ましくは、60質量%以下である。
【0088】
また、高炭素カルボン酸-高炭素アルコールエステルの配合割合は、フッ化物系フラックス100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上、より好ましくは、35質量部以上、さらに好ましくは、100質量部以上であり、また、例えば、2000質量部以下、好ましくは、1000質量部以下、より好ましくは、500質量部以下、さらに好ましくは、300質量部以下である。
【0089】
これら固形化剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0090】
固形化剤として、好ましくは、常温固体炭化水素の単独使用、常温固体アルキルアルコールの単独使用が挙げられる。なお、固形化剤として、常温固体炭化水素および常温固体アルキルアルコールを併用することもできる。常温固体炭化水素および常温固体アルキルアルコールを併用する場合、常温固体炭化水素の配合割合、および、常温固体アルキルアルコールの配合割合は、上記の範囲で、適宜調整される。
【0091】
また、固形化剤の割合(総量)は、液体状塗布性と固体状塗布性とのバランスを図る観点から、ろう付け成分の総量に対して、例えば、5質量%以上、好ましくは、10質量%以上、より好ましくは、12質量%以上、さらに好ましくは、16質量%以上、さらに好ましくは、27質量%以上、さらに好ましくは、30質量%以上、とりわけ好ましくは、40質量%以上であり、また、例えば、90質量%以下、好ましくは、80質量%以下、より好ましくは、70質量%以下、さらに好ましくは、60質量%以下である。
【0092】
また、固形化剤の配合割合(総量)は、フッ化物系フラックス100質量部に対して、例えば、10質量部以上、好ましくは、20質量部以上、より好ましくは、35質量部以上、さらに好ましくは、100質量部以上であり、また、例えば、2000質量部以下、好ましくは、1000質量部以下、より好ましくは、500質量部以下、さらに好ましくは、300質量部以下である。
【0093】
有機粘度低下剤は、ろう付け成分中でのフッ化物系フラックスの分散性を向上させるための有機化合物である。
【0094】
有機粘度低下剤としては、例えば、界面活性剤、低融点有機化合物(界面活性剤を除く。)などが挙げられる。好ましくは、有機粘度低下剤は、界面活性剤および/または低融点有機化合物を含み、より好ましくは、界面活性剤および/または低融点有機化合物からなる。
【0095】
界面活性剤は、親水基と疎水基とを併有する化合物であり、例えば、親水基としてノニオン性基を有するノニオン系界面活性剤、例えば、親水基としてイオン性基および/またはその塩を有するイオン系界面活性剤などが挙げられる。
【0096】
ノニオン系界面活性剤としては、例えば、親水基としてノニオン基(ノニオン性親水基)を有し、疎水基として長鎖炭化水素基を有する界面活性剤が挙げられる。
【0097】
ノニオン基としては、例えば、ポリオキシアルキレン基が挙げられる。
【0098】
ポリオキシアルキレン基は、例えば、オキシアルキレン(オキシエチレン、オキシ-1,2-プロピレンなど)単位の縮合ユニットであり、例えば、ポリオキシエチレン基、ポリオキシプロピレン基、ポリオキシブチレン基、ポリオキシエチレン-オキシプロピレン基(ランダム/ブロック)、ポリオキシエチレン-オキシブチレン基(ランダム/ブロック)、ポリオキシプロピレン-オキシブチレン基(ランダム/ブロック)、ポリオキシエチレン-オキシプロピレン-オキシブチレン基(ランダム/ブロック)などが挙げられる。
【0099】
親水性の観点から、ポリオキシアルキレン基として、好ましくは、オキシエチレン単位を含むことが挙げられ、より好ましくは、ポリオキシエチレン基が挙げられる。
【0100】
ポリオキシアルキレン基の繰り返し単位数は、特に制限されないが、好ましくは、HLB値が後述の範囲となるように、適宜設定される。より具体的には、ポリオキシアルキレン単位(ポリオキシエチレン基)の繰り返し単位数は、例えば、3以上、好ましくは、10以上、より好ましくは、20以上、さらに好ましくは、25以上であり、例えば、100以下、好ましくは、80以下、より好ましくは、60以下、さらに好ましくは、50以下である。
【0101】
長鎖炭化水素基としては、例えば、炭素数8~30の炭化水素基などが挙げられ、具体的には、例えば、オクチル基、ノニル基、デシル基、イソデシル基、ウンデシル基、ドデシル基(ラウリル基)、トリデシル基、テトラデシル基(ミリスチル基)、パラミチル基、セチル基、ステアリル基、アラキジル基、ベヘニル基などの炭素数8~30直鎖炭化水素基、例えば、シクロオクチル基、シクロデシル基などの炭素数8~30環状炭化水素基などが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0102】
ノニオン系界面活性剤の疎水基の炭素数は、塗布性の観点から、好ましくは、25以下、より好ましくは、20以下、さらに好ましくは、18以下、さらに好ましくは、15以下であり、好ましくは、9以上、より好ましくは、10以上、さらに好ましくは、12以上である。
【0103】
このようなノニオン性界面活性剤として、より具体的には、例えば、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレンパルミチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドデシルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンアラキジルエーテル、ポリオキシエチレンベヘニルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキル(炭素数8~30)エーテルが挙げられる。
【0104】
これらノニオン系界面活性剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0105】
ノニオン系界面活性剤として、好ましくは、ポリオキシエチレンアルキル(炭素数8~30)エーテルが挙げられ、より好ましくは、ポリオキシエチレンアルキル(炭素数10~20)エーテルが挙げられる。
【0106】
ノニオン系界面活性剤のHLB値は、例えば、1.0以上、好ましくは、3.0以上であり、例えば、19.0以下、好ましくは、17.5以下である。
【0107】
イオン系界面活性剤としては、例えば、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤などが挙げられる。
【0108】
アニオン系界面活性剤としては、例えば、親水基としてアニオン性基および/またはその塩を有し、疎水基として長鎖炭化水素基を有する界面活性剤などが挙げられる。
【0109】
アニオン性基としては、例えば、カルボン酸基、スルホン酸基、リン酸基などが挙げられ、これらは単独使用または2種類以上併用される。アニオン性基として、塗布性の観点から、好ましくは、カルボン酸基、スルホン酸基が挙げられる。すなわち、親水基として、好ましくは、カルボン酸基、カルボン酸塩、スルホン酸基、スルホン酸塩が挙げられる。アニオン性基として、さらに好ましくは、スルホン酸基および/またはその塩が挙げられる。
【0110】
また、アニオン性基の塩としては、例えば、金属塩(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩など)、アミン塩などが挙げられ、これらは単独使用または2種類以上併用される。塩として、好ましくは、金属塩、アミン塩が挙げられ、より好ましくは、金属塩が挙げられ、さらに好ましくは、ナトリウム塩が挙げられる。
【0111】
長鎖炭化水素基としては、上記した炭素数8~30の炭化水素基などが挙げられ、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0112】
アニオン系界面活性剤の疎水基の炭素数は、塗布性の観点から、好ましくは、25以下、より好ましくは、20以下、さらに好ましくは、18以下、さらに好ましくは、15以下、とりわけ好ましくは、12以下である。
【0113】
このようなアニオン系界面活性剤として、より具体的には、例えば、ラウリン酸ナトリウム、ミリスチン酸ナトリウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、アラキジン酸ナトリウム、ベヘン酸ナトリウムなどの脂肪酸金属塩、例えば、ラウリン酸アミン塩、ミリスチン酸アミン塩、パルミチン酸アミン塩、ステアリン酸アミン塩、アラキジン酸アミン塩、ベヘン酸アミン塩などの脂肪酸アミン塩、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ミリスチル硫酸ナトリウム、パルミチル硫酸ナトリウム、ステアリル硫酸ナトリウム、アラキジル硫酸ナトリウム、ベヘニル硫酸ナトリウムなどのアルキル硫酸の金属塩、例えば、ラウリル硫酸アミン塩、ミリスチル硫酸アミン塩、パルミチル硫酸アミン塩、ステアリル硫酸アミン塩、アラキジル硫酸アミン塩、ベヘニル硫酸アミン塩などのアルキル硫酸アミン塩などが挙げられる。
【0114】
また、アニオン系界面活性剤としては、例えば、アルキルサクシンアミド酸塩、アルキルスルホ酢酸塩、リン酸アルキル塩、リン酸アルキルエーテル塩、アシルサルコシン塩、アシルイセチオン酸塩、アシルN-アシルタウリン塩なども挙げられる。
【0115】
これらアニオン系界面活性剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0116】
アニオン系界面活性剤として、ろう付け性(外観)の向上を図る観点から、好ましくは、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミン塩が挙げられ、より好ましくは、脂肪酸金属塩が挙げられる。
【0117】
カチオン系界面活性剤としては、例えば、親水基としてカチオン性基および/またはその塩を有し、疎水基として長鎖炭化水素基を有する界面活性剤などが挙げられる。
【0118】
カチオン性基としては、例えば、アミノ基、4級アンモニウム基などが挙げられる。これらカチオン性基は、単独使用または2種類以上併用することができる。カチオン性基として、好ましくは、アミノ基が挙げられる。すなわち、親水基として、好ましくは、アミノ基および/またはその塩が挙げられる。
【0119】
また、カチオン性基の塩としては、例えば、ハロゲン塩(クロライド、ブロマイドなど)、無機酸塩(塩酸塩、硫酸塩、リン酸塩など)、有機酸塩(酢酸塩など)などが挙げられ、これらは単独使用または2種類以上併用される。塩として、好ましくは、有機酸塩が挙げられ、より好ましくは、酢酸塩が挙げられる。
【0120】
長鎖炭化水素基としては、上記した炭素数8~30の炭化水素基などが挙げられ、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0121】
カチオン系界面活性剤の疎水基の炭素数は、塗布性の観点から、好ましくは、25以下、より好ましくは、20以下、さらに好ましくは、18以下、さらに好ましくは、15以下、とりわけ好ましくは、12以下である。
【0122】
このようなカチオン系界面活性剤として、より具体的には、例えば、ラウリルアミンアセテート、ミリスチルアミンアセテート、パルミチルアミンアセテート、ステアリルアミンアセテート、アラキジルアミンアセテート、ベヘニルアミンアセテートなどのアミン有機酸塩、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ミリスチルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライドなどの4級アンモニウムのハロゲン塩などが挙げられる。
【0123】
これらカチオン系界面活性剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0124】
カチオン系界面活性剤として、好ましくは、アミン有機酸塩が挙げられる。
【0125】
両性界面活性剤としては、例えば、アルキルベタイン型両性界面活性剤、アルキルアミドベタイン型両性界面活性剤、イミダゾリン型両性界面活性剤、アルキルアミノスルホン型両性界面活性剤、アルキルアミノカルボン酸型両性界面活性剤、アルキルアミドカルボン酸型両性界面活性剤、アミドアミノ酸型両性界面活性剤、リン酸型両性界面活性剤などが挙げられ、これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0126】
両性界面活性剤として、好ましくは、アルキルベタイン型両性界面活性剤が挙げられる。
【0127】
アルキルベタイン型両性界面活性剤としては、例えば、親水基としてベタイン基および/またはその塩を有し、疎水基として長鎖炭化水素基を有する界面活性剤などが挙げられる。
【0128】
ベタイン基は、例えば、上記したアニオン性基(カルボン酸基、スルホン酸基など)と上記したカチオン性基(アミノ基など)とを併有する両性基であり、好ましくは、カルボン酸基、カルボン酸塩、スルホン酸基、スルホン酸塩からなる群から選択される少なくとも一種のアニオン性基を含み、また、好ましくは、アミノ基および/またはその塩からなるカチオン基を含む。
【0129】
ベタイン基として、具体的には、例えば、アミノ酢酸ベタイン、アミノ硫酸ベタインなどが挙げられる。これらは、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0130】
これら両性界面活性剤の親水基は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0131】
長鎖炭化水素基としては、上記した炭素数8~30の炭化水素基などが挙げられ、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0132】
両性界面活性剤の疎水基の炭素数は、塗布性の観点から、好ましくは、25以下、より好ましくは、20以下、さらに好ましくは、18以下、さらに好ましくは、15以下、とりわけ好ましくは、12以下である。
【0133】
このような両性界面活性剤として、より具体的には、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ミリスチルジメチルアミノ酢酸ベタイン、セチルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ベヘニルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライドなどが挙げられる。
【0134】
これら両性界面活性剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0135】
これらイオン性界面活性剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0136】
これら界面活性剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0137】
すなわち、界面活性剤は、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤および両性界面活性剤からなる群から選択される少なくとも1種を含んでいればよい。
【0138】
界面活性剤として、分散性および塗布性の向上を図る観点から、好ましくは、カチオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤が挙げられ、より好ましくは、カチオン系界面活性剤が挙げられる。
【0139】
また、分散性および塗布性の向上を図る観点から、界面活性剤として、好ましくは、ノニオン系界面活性剤とイオン性界面活性剤との併用が挙げられ、具体的には、ノニオン系界面活性剤とアニオン系界面活性剤との併用、ノニオン系界面活性剤とカチオン系界面活性剤との併用、ノニオン系界面活性剤と両性界面活性剤との併用が挙げられ、とりわけ好ましくは、ノニオン系界面活性剤とカチオン系界面活性剤との併用が挙げられる。
【0140】
例えば、ノニオン系界面活性剤とアニオン系界面活性剤とが併用される場合、それらの割合は、固形分の質量基準で、界面活性剤の総量に対して、ノニオン系界面活性剤が、例えば、1質量%以上、好ましくは、10質量%以上、より好ましくは、50質量%を超過、さらに好ましくは、60質量%以上であり、例えば、99質量%以下、好ましくは、90質量%以下、より好ましくは、85質量%以下、さらに好ましくは、80質量%以下である。
【0141】
また、アニオン系界面活性剤が、例えば、1質量%以上、好ましくは、10質量%以上、より好ましくは、15質量%以上、さらに好ましくは、20質量%以上であり、例えば、99質量%以下、好ましくは、90質量%以下、より好ましくは、50質量%未満、さらに好ましくは、40質量%以下である。
【0142】
また、例えば、ノニオン系界面活性剤とカチオン系界面活性剤とが併用される場合、それらの割合は、固形分の質量基準で、界面活性剤の総量に対して、ノニオン系界面活性剤が、例えば、1質量%以上、好ましくは、10質量%以上、より好ましくは、50質量%を超過、さらに好ましくは、60質量%以上であり、例えば、99質量%以下、好ましくは、90質量%以下、より好ましくは、85質量%以下、さらに好ましくは、80質量%以下である。
【0143】
また、カチオン系界面活性剤が、例えば、1質量%以上、好ましくは、10質量%以上、より好ましくは、15質量%以上、さらに好ましくは、20質量%以上であり、例えば、99質量%以下、好ましくは、90質量%以下、より好ましくは、50質量%未満、さらに好ましくは、40質量%以下である。
【0144】
また、例えば、ノニオン系界面活性剤と両性界面活性剤とが併用される場合、それらの割合は、固形分の質量基準で、界面活性剤の総量に対して、ノニオン系界面活性剤が、例えば、1質量%以上、好ましくは、10質量%以上、より好ましくは、50質量%を超過、さらに好ましくは、60質量%以上であり、例えば、99質量%以下、好ましくは、90質量%以下、より好ましくは、85質量%以下、さらに好ましくは、80質量%以下である。
【0145】
また、両性界面活性剤が、例えば、1質量%以上、好ましくは、10質量%以上、より好ましくは、15質量%以上、さらに好ましくは、20質量%以上であり、例えば、99質量%以下、好ましくは、90質量%以下、より好ましくは、50質量%未満、さらに好ましくは、40質量%以下である。
【0146】
界面活性剤の併用割合が上記範囲であれば、とりわけ良好に、フッ化物系フラックスの分散性の向上を図り、塗布性およびろう付け性の向上を図ることができる。
【0147】
界面活性剤の配合割合(総量)は、塗布性の観点から、ろう付け材の総量に対して、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、0.2質量%以上、より好ましくは、0.5質量%以上であり、また、例えば、60質量%以下、好ましくは、50質量%以下、より好ましくは、10質量%以下、さらに好ましくは、5質量%以下である。
【0148】
また、界面活性剤の配合割合(総量)は、ろう付け成分の総量に対して、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、0.2質量%以上、より好ましくは、0.5質量%以上であり、また、例えば、60質量%以下、好ましくは、50質量%以下、より好ましくは、10質量%以下、さらに好ましくは、5質量%以下である。
【0149】
また、界面活性剤の配合割合(総量)は、フッ化物系フラックス100質量部に対して、例えば、0.2質量部以上、好ましくは、1質量部以上、より好ましくは、3質量部以上、さらに好ましくは、5質量部以上であり、また、例えば、200質量部以下、好ましくは、50質量部以下、より好ましくは、30質量部以下、さらに好ましくは、10質量部以下である。
【0150】
また、界面活性剤として、両性界面活性剤が用いられる場合、好ましくは、両性界面活性剤とともに水が配合される。
【0151】
水の配合割合は、質量基準で、両性界面活性剤100質量部に対して、例えば、100質量部以上、好ましくは、200質量部以上であり、また、例えば、600質量部以下、好ましくは、500質量部以下である。
【0152】
低融点有機化合物は、常温液体(すなわち、25℃で液体状態)の有機化合物のうち、融点が10℃未満の有機化合物である。つまり、低融点有機化合物は、10℃で液体状態を示す。なお、低融点有機化合物は、界面活性剤を除く有機化合物である。
【0153】
低融点有機化合物として、より具体的には、10℃で液体状態の有機溶剤が挙げられる。そのような有機溶剤としては、例えば、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、アルコール類、エステル類、エーテル類、油脂類などが挙げられる。
【0154】
炭化水素類としては、例えば、ミネラルスピリット、ソルベントナフサ、ターペン、ノルマルデカンなどが挙げられる。
【0155】
ハロゲン化炭化水素類としては、例えば、クロロトルエン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ジブロモベンゼンなどが挙げられる。
【0156】
アルコール類としては、例えば、10℃で液体状態のアルキルアルコール(以下、低融点アルキルアルコール)、10℃で液体状態のエーテルアルコール(以下、低融点エーテルアルコール)などが挙げられる。
【0157】
低融点アルキルアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール、オクタノールなどの炭素数1~9のノルマルアルコール(直鎖アルキルアルコール)、例えば、オクチルドデカノールなどの炭素数1~30の分岐状アルコール、例えば、ブタンジオール、ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなどの炭素数1~8の2価アルコール、例えば、トリメチロールエタン、トリエチロールエタンなどの炭素数4~30の3価アルコール、例えば、炭素数5~30の4価アルコールなどが挙げられる。
【0158】
低融点エーテルアルコールとしては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル(メチルセロソルブ)、エチレングリコールモノエチルエーテル(エチルセロソルブ)などのエーテルアルコール、例えば、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシブチレングリコールなどのポリエーテルグリコール、例えば、ポリエチレングリコールモノメチルエーテル、ポリエチレングリコールモノエチルエーテルなどのポリエーテルモノオールなどのポリエーテルアルコールなどが挙げられる。
【0159】
なお、これらポリエーテルアルコールの分子量は、10℃で液体状態となるように、調整される。例えば、低融点エーテルアルコールにおいて、ポリオキシエチレングリコールの重量平均分子量は、1000未満である。
【0160】
エステル類としては、例えば、酢酸ブチル、酢酸メトキシブチル、酢酸ベンジル、酢酸フェニル、酢酸メチルカルビトール、プロピオン酸エチル、プロピオン酸ブチル、安息香酸メチル、安息香酸エチルなどのカルボン酸エステル、例えば、メチルヘキサン酸トリグリセライド、エチルヘキサン酸トリグリセライドなどのグリセライドなどが挙げられる。
【0161】
エーテル類としては、例えば、ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、メチルエチルエーテル、ジメトキシエタン、ジメトキシメタンなどの鎖状エーテル、例えば、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフランなどの環状エーテルなどが挙げられる。
【0162】
油脂類としては、例えば、大豆油、ヌカ油、ホホバ油、アボガド油、アーモンド油、オリーブ油、カカオ油、ゴマ油、パーシック油、ヒマシ油、ヤシ油などが挙げられる。
【0163】
これら低融点有機化合物は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0164】
低融点有機化合物として、好ましくは、炭化水素類、ハロゲン化炭化水素類、アルコール類、エステル類、エーテル類、油脂類が挙げられ、より好ましくは、アルコール類、エステル類、エーテル類が挙げられ、さらに好ましくは、アルコール類、エステル類が挙げられる。
【0165】
また、アルコール類として、好ましくは、低融点アルキルアルコール、低融点エーテルアルコールが挙げられ、より好ましくは、炭素数6~9のアルキルアルコール、ポリエーテルアルコールが挙げられる。また、エステル類として、好ましくは、グリセライドが挙げられる。
【0166】
低融点有機化合物として、さらに好ましくは、アルコール類が挙げられ、とりわけ好ましくは、ポリエーテルグリコールが挙げられる。
【0167】
また、低融点有機化合物として、好ましくは、界面活性剤と同様に、親水基と疎水基とを併有する化合物が挙げられる。親水基としては、水酸基、エステル基などが挙げられる。疎水基としては、長鎖炭化水素基、炭素数3~4のオキシアルキレン基などが挙げられる。
【0168】
そのような有機溶媒としては、例えば、炭素数6~9のアルキルアルコール、ポリオキシアルキレン(炭素数3~4)グリコール、炭素数6~20のグリセライドなどが挙げられる。
【0169】
低融点有機化合物の分子量は、例えば、30以上、好ましくは、50以上、より好ましくは、100以上であり、例えば、5000以下、好ましくは、4000以下、より好ましくは、3000以下、より好ましくは、2500以下である。
【0170】
なお、低融点有機化合物が単量体である場合、その分子量は、分子骨格および原子数から算出することができる。また、低融点有機化合物が重合体である場合、その分子量は、数平均分子量として、ゲルパーミエーションクロマトグラフ測定による標準ポリスチレン換算分子量として求められる。そして、低融点有機化合物の分子量は、各成分の分子量の平均値として算出される。
【0171】
また、低融点有機化合物が、水酸基を含有する重合体であり、かつ、平均官能基数(一分子当たりの水酸基数)が分子構造より明らかな場合、その平均分子量は、計算上の数平均分子量として、以下の式より求められる。
【0172】
(平均分子量)=(KOHのモル質量)×平均官能基数×1000/(水酸基価)
式中、水酸基価は、JIS K1557-1(2007年)に記載の手法により測定することができる。
【0173】
低融点有機化合物の含有割合は、塗布性および固化性の観点から、ろう付け材の総量に対して、例えば、60質量%以下、好ましくは、55質量%以下、より好ましくは、50質量%以下、さらに好ましくは、40質量%以下、とりわけ好ましくは、25質量%以下であり、例えば、1質量%以上、好ましくは、10質量%以上、より好ましくは、15質量%以上である。
【0174】
また、低融点有機化合物の含有割合は、ろう付け成分の総量に対して、例えば、60質量%以下、好ましくは、55質量%以下、より好ましくは、50質量%以下、さらに好ましくは、40質量%以下、とりわけ好ましくは、25質量%以下であり、例えば、1質量%以上、好ましくは、10質量%以上、より好ましくは、15質量%以上である。
【0175】
また、低融点有機化合物の配合割合は、フッ化物系フラックス100質量部に対して、例えば、5質量部以上、好ましくは、10質量部以上、より好ましくは、30質量部以上、さらに好ましくは、50質量部以上であり、また、例えば、1000質量部以下、好ましくは、300質量部以下、より好ましくは、200質量部以下、さらに好ましくは、100質量部以下である。
【0176】
これら有機粘度低下剤は、単独使用または2種類以上併用することができる。
【0177】
すなわち、有機粘度低下剤として、界面活性剤を単独使用してもよく、また、低融点有機化合物を単独使用してもよく、さらには、界面活性剤および低融点有機化合物を併用してもよい。
【0178】
有機粘度低下剤の含有割合(総量)は、塗布性の観点から、ろう付け材の総量に対して、例えば、0.1質量%以上、好ましくは、0.2質量%以上、より好ましくは、0.5質量%以上、さらに好ましくは、1.0質量%以上、とりわけ好ましくは、1.5質量%以上であり、例えば、60質量%以下、好ましくは、55質量%以下、より好ましくは、50質量%以下、さらに好ましくは、40質量%以下、とりわけ好ましくは、25質量%以下である。
【0179】
また、有機粘度低下剤の配合割合(総量)は、フッ化物系フラックス100質量部に対して、例えば、0.2質量部以上、好ましくは、1質量部以上、より好ましくは、3質量部以上、さらに好ましくは、5質量部以上であり、また、例えば、1000質量部以下、好ましくは、300質量部以下、より好ましくは、30質量部以下、さらに好ましくは、20質量部以下、とりわけ好ましくは、10質量部以下である。
【0180】
さらに、ろう付け材は、必要に応じて、ろう材を含有することができる。
【0181】
ろう材としては、例えば、アルミニウムと共晶合金を形成し得る金属からなるろう材が挙げられ、また、そのような金属とアルミニウムとの合金からなるろう材も挙げられる。
【0182】
ろう材として、より具体的には、例えば、金属ケイ素、ケイ素-アルミニウム合金、これらに少量のマグネシウム、銅、ゲルマニウムなどを含む合金などが挙げられる。
【0183】
また、ろう材は、好ましくは、粉末状に調製される。すなわち、ろう材として、好ましくは、ろう材粉末が挙げられる。ろう材粉末の平均粒子径は、特に制限されず、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0184】
ろう付け材が、ろう材を含めば、アルミニウムまたはアルミニウム合金のろう付けにおいて、作業効率に優れる。
【0185】
ろう材の配合割合は、ろう付け成分100質量部に対して、例えば、3質量部以上、好ましくは、5質量部以上、より好ましくは、10質量部以上であり、また、例えば、300質量部以下、好ましくは、100質量部以下、より好ましくは、50質量部以下、さらに好ましくは、30質量部以下である。
【0186】
また、ろう材の配合割合は、ろう付け材の総量に対して、例えば、1質量%以上、好ましくは、10質量%以上、より好ましくは、20質量%以上であり、例えば、60質量%以下、好ましくは、40質量%以下、より好ましくは、30質量%以下である。
【0187】
加えて、ろう付け材には、必要に応じて、例えば、酸化防止剤(例えば、ジブチルヒドロキシトルエンなど)、腐食防止剤(例えば、ベンゾトリアゾールなど)、消泡剤(例えば、シリコンオイルなど)、増粘剤(例えば、脂肪酸アミド、ポリアミドなど)、着色剤などの各種添加剤を、ろう付け材の総量に対して5質量%以下の割合で、含有させることができる。
【0188】
なお、ろう付け材は、必要に応じて、ゲル化剤を含有しても良いが、ろう付け性(外観)の観点から、好ましくは、ゲル化剤を含有しない。
【0189】
そして、ろう付け材は、上記の各成分を、上記の配合割合で、公知の方法により混合および撹拌することにより得ることができる。このとき、有機粘度低下剤によってフッ化物系フラックスが分散され、固形化剤によってろう付け材が固形化される。
【0190】
すなわち、上記ろう付け材は、固形であり、詳しくは、25℃において固形である。
【0191】
25℃において固形とは、「消防危第11号 危険物の規制に関する政令等の一部を改正する政令(危険物の試験及び性状に係る部分)並びに危険物の試験及び性状に関する省令の公布について(通知)」に記載される「液状の確認方法」に記載される手法に従って、25℃において試験を実施した結果、「液状でない」と判定されることと定義される。
【0192】
また、ろう付け材は、加熱により軟化する。
【0193】
より具体的には、例えば、上記のろう付け材をアルミニウムまたはアルミニウム合金に塗布する場合、詳しくは後述するように、固形のろう付け材が加熱されることにより、ろう付け材が軟化し、溶融する。
【0194】
加熱温度としては、例えば、40℃以上、好ましくは、60℃以上、より好ましくは、70℃以上、さらに好ましくは、80℃以上、とりわけ好ましくは、90℃以上であり、例えば、400℃以下、好ましくは、300℃以下、より好ましくは、200℃以下、さらに好ましくは、180℃以下、とりわけ好ましくは、150℃以下である。
【0195】
すなわち、上記のろう付け材は、とりわけ好ましくは、150℃以下において溶融する。換言すれば、ろう付け材は、少なくとも150℃では溶融状態であることが好ましい。
【0196】
このような場合、ろう付け材の150℃(溶融状態)における粘度は、例えば、0.001Pa・s以上、好ましくは、0.003Pa・s以上、より好ましくは、0.006Pa・s以上、さらに好ましくは、0.02Pa・s以上、とりわけ好ましくは、0.05Pa・s以上であり、例えば、300Pa・s以下、好ましくは、100Pa・s以下、より好ましくは、10Pa・s以下、さらに好ましくは、5Pa・s以下、さらに好ましくは、1Pa・s、とりわけ好ましくは、0.1Pa・s以下である。
【0197】
150℃における粘度が上記範囲であれば、とりわけ優れた塗布性を得ることができる。
【0198】
なお、150℃における粘度は、後述する実施例に準拠して、レオメーターにより測定される。
【0199】
そして、ろう付け材の溶融物は、アルミニウムまたはアルミニウム合金に塗布され、その後、固化により塗膜(固形の塗膜)を形成する。
【0200】
塗布方法は、特に制限されず、例えば、刷毛塗り法、ロールコート法、スピンコート法、ディップコート法、スプレーコート法、バーコート法、ナイフコート法、ダイコート法、インクジェット法、ジェットディスペンス法、グラビアコート法などが挙げられ、塗布性および塗膜固化性の観点から、好ましくは、ジェットディスペンス法が挙げられる。
【0201】
ジェットディスペンス法でろう付け材を塗布することにより、より正確に所望の位置に塗布することができ、また、早く固化させて、所望の固化塗膜を得ることができる。
【0202】
固化塗膜の厚みは、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0203】
そして、このようなろう付け材は、25℃において固形であるため、アルミニウムまたはアルミニウム合金のろう付けにおける作業性の向上を図ることができる。
【0204】
すなわち、例えば、金属部材に、液状またはペースト状のろう付け材を塗布する場合には、低融点有機化合物によって、塗布設備およびその周辺を汚染する場合があり、設備保全に手間がかかるという不具合がある。
【0205】
一方、25℃において固形のろう付け材を加熱し、溶融して塗布する場合、ろう付け材の液滴の飛散を低減できるため、塗布設備およびその周辺の汚染を抑制できる。
【0206】
さらに、上記のろう付け材は、25℃で固形であるため、加熱溶融しても、液状のろう付け材と比べて固化が早く、そのため、製造ラインの簡略化、および、作業性の向上を図ることができる。
【0207】
さらに、上記のろう付け材は、フッ化物系フラックスと固形化剤と有機粘度低下剤とを含むため、溶融時における低粘度化を図ることができ、ろう付け性および塗布性(液体状塗布性)にも優れる。
【0208】
加えて、上記のろう付け材は、固体状態のまま被塗物に接触させて塗布する場合の塗布性にも優れる。
【0209】
そのため、上記のろう付け材は、アルミニウムまたはアルミニウム合金製品に対して、好適に用いられる。具体的には、上記のろう付け材は、アルミニウムまたはアルミニウム合金を備えるろう付け部材の製造や、そのろう付け部材を用いる熱交換器の製造において、好適に用いられる。
【0210】
以下において、ろう付け部材および熱交換器について、詳述する。
【0211】
図1において、熱交換器1は、例えば、空調機(エアコン)などに用いられる積層型熱交換器であって、公知の積層構造を有している。
【0212】
具体的には、熱交換器1は、プレート接合チューブ2が複数積層されてなるチューブ積層体3と、そのチューブ積層体3に冷媒を供給および排出する冷媒給排管4とを備えている。
【0213】
チューブ積層体3において、プレート接合チューブ2は、略扁平形状を有する中空部材であって、図2に示されるように、互いに対向配置される一対(2つ)のプレート部材5と、そのプレート部材5の内側に配置される2つのインナーフィン6とを備えている。
【0214】
各プレート部材5は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる部材(Al部材)であって、平面視略長矩形状を有しており、その長手方向略中央部(長手方向両端部を除く領域)において、長手方向に沿って延びる平面視略矩形状の凹部7を有している。
【0215】
凹部7には、長手方向と直交する幅方向中央部において、凹部7の長手方向に沿って延びる凸部8(リブ)が立設されている。すなわち、凸部8によって、凹部7は、幅方向一方側の凹部7aと、幅方向他方側の凹部7bとに分割されている。
【0216】
また、凹部7aの長手方向一方側端部には、第1貫通孔9が形成されている。
【0217】
また、凹部7aの長手方向他方側端部には、第2貫通孔10が形成されている。
【0218】
また、凹部7bの長手方向一方側端部には、第3貫通孔11が形成されている。
【0219】
また、凹部7bの長手方向他方側端部には、第4貫通孔12が形成されている。
【0220】
これら第1貫通孔9と第3貫通孔11との間には、溝13が形成されており、これにより、第1貫通孔9と第3貫通孔11との間を冷媒(後述)が流通可能とされている。なお、第2貫通孔10と第4貫通孔12との間には、溝13が形成されておらず、互いに独立している。
【0221】
インナーフィン6は、アルミニウムまたはアルミニウム合金からなる部材(Al部材)であって、凹部7aに1つ、凹部7bに1つ(合計2つ)備えられている。具体的には、各インナーフィン6は、凹部7aおよび凹部7bと略同一サイズの波板形状を有しており、冷媒通路15(後述)に収容可能とされている。
【0222】
そして、詳しくは後述するように、プレート接合チューブ2は、上記した一対のプレート部材5とインナーフィン6とを互いにろう付けすることにより、形成される。
【0223】
得られたプレート接合チューブ2は、図1に示されるように、第1貫通孔9、第2貫通孔10、第3貫通孔11および第4貫通孔12が互いに重複するように複数積層され、冷媒給排路16を形成する。そして、この積層されたプレート接合チューブ2は、積層方向両側から、アウタープレート17によって固定される。
【0224】
より具体的には、積層方向一方側(後側)のアウタープレート17により、第1貫通孔9、第2貫通孔10、第3貫通孔11および第4貫通孔12が閉塞される。一方、積層方向他方側(前側)のアウタープレート17により、第3貫通孔11および第4貫通孔12が閉塞され、第1貫通孔9および第2貫通孔10は開放される。
【0225】
これにより、チューブ積層体3が得られる。なお、チューブ積層体3においては、必要に応じて、プレート接合チューブ2間に、冷媒の流路を調整するための仕切板や、熱交換効率を向上するためのアウターフィンが設けられていてもよい。
【0226】
冷媒給排管4は、チューブ積層体3に冷媒を供給するための冷媒供給管18と、チューブ積層体3から冷媒を排出するための冷媒排出管19とを備えている。
【0227】
冷媒供給管18は、一方側端部が第1貫通孔9に接続され、他方側端部が図示しない冷媒タンクに接続されている。冷媒タンクには、例えば、ハイドロフルオロオレフィンなどの公知の冷媒が貯留されている。
【0228】
冷媒排出管19は、一方側端部が第2貫通孔10に接続され、他方側端部が図示しない冷媒回収タンクに接続されている。
【0229】
そして、このような熱交換器1では、冷媒供給管18からプレート接合チューブ2の内側の冷媒通路15に冷媒Xを供給することにより、チューブ積層体3の内側を流れる冷媒Xと、チューブ積層体3の外側を流れる空調用空気Yとを熱交換させ、空調用空気Yを冷却できる。
【0230】
以下において、プレート接合チューブ2、および、そのプレート接合チューブ2を得るためのろう付け部材としてのブレージングプレート20の製造方法について、詳述する。
【0231】
すなわち、プレート接合チューブ2の製造では、まず、プレート部材5(Al部材)と、そのプレート部材5の表面に形成されたろう付け材の塗膜29とを備えるブレージングプレート20を製造し、その後、得られたブレージングプレート20と上記したインナーフィン6とをろう付けする。
【0232】
ブレージングプレート20の製造では、例えば、図3に示すように、薄板上のアルミニウムまたはアルミニウム合金からなる基材22(以下、Al基材と称する。)を準備し、そのAl基材22を加工した後、そのAl基材22に、上記したろう付け材を塗布する。
【0233】
なお、図3において、Al基材22は、例えば、ベルトコンベアなどの移動装置23によって所定方向(例えば、紙面左側から右側へ)移動する。
【0234】
そして、移動装置23の上流側から下流側に向かって順に、以下に示す図3A(加工工程)および図3B(塗布工程)が、連続的に実施される。
【0235】
すなわち、この方法では、図3Aが参照されるように、まず、Al基材22を加工する(加工工程)。
【0236】
より具体的には、製造ライン中において、Al基材22を所定方向に断続的に移動させながら、Al基材22を加工し、所定形状(例えば、上記のプレート部材5の形状)に形成する。
【0237】
加工方法としては、特に制限されず、例えば、プレス加工装置、折り曲げ加工装置、切断加工装置などの公知の加工装置30が用いられる。
【0238】
これにより、加工後のAl基材22として、プレート部材5(図2参照)が得られる。
【0239】
次いで、この方法では、図3Bに示されるように、上記のろう付け材27を加熱して溶融させ、得られた液状の溶融組成物28を、プレート部材5に塗布する(塗布工程)。
【0240】
より具体的には、塗布工程では、ろう付け材27の溶融組成物28を、プレート部材5の凹部7(図2参照)に、塗布する。
【0241】
ろう付け材27の加熱温度としては、上記の通り、例えば、40℃以上、好ましくは、60℃以上、より好ましくは、70℃以上、さらに好ましくは、80℃以上、とりわけ好ましくは、90℃以上であり、例えば、400℃以下、好ましくは、300℃以下、より好ましくは、200℃以下、さらに好ましくは、180℃以下、とりわけ好ましくは、150℃以下である。
【0242】
また、溶融組成物28を塗布する方法としては、特に制限されないが、塗布領域が狭く、精密な塗布が要求される場合などには、好ましくは、ジェットディスペンス法が採用される。すなわち、好ましくは、溶融組成物28は、ジェットディスペンサなどの吐出装置31に供給され、プレート部材5(Al基材22)に対して吐出される。
【0243】
吐出装置31(ジェットディスペンサなど)における吐出条件(温度、圧力など)は、目的および用途に応じて、適宜設定される。
【0244】
吐出装置31(ジェットディスペンサなど)を用いることにより、溶融組成物28を、より正確に所望の位置に塗布することができ、また、早く固化させて、所望の塗膜(固化塗膜)29を得ることができる。
【0245】
すなわち、上記のろう付け材27は、加熱溶融しても、液状のろう付け材と比べて固化が早いため、乾燥させる工程を経ずとも自然固化し、塗膜29を形成できる。そのため、上記のろう付け材27は、塗膜29の工業生産性に優れる。
【0246】
塗膜29の厚みは、特に制限されないが、例えば、1μm以上、好ましくは、5μm以上であり、例えば、1000μm以下、好ましくは、200μm以下である。
【0247】
これにより、プレート部材5(Al基材22)と塗膜29とを備えるブレージングプレート20を得ることができる。
【0248】
そして、このようなブレージングプレート20は、上記のろう付け材27をプレート部材5(Al基材22)に塗布してなる塗膜29を備えるため、優れたろう付け性を備えることができる。
【0249】
そのため、得られたブレージングプレート20は、プレート接合チューブ2および熱交換器1の製造において、好適に用いられる。
【0250】
より具体的には、図1および図2が参照されるように、一対のブレージングプレート20(プレート部材5)を対向配置し、その一対のブレージングプレート20(プレート部材5)の間において、凹部7aおよび凹部7bに対応するようにインナーフィン6を配置する。
【0251】
そして、各インナーフィン6と凹部7aおよび凹部7bとをろう付けし、これとともに、一対のブレージングプレート20(プレート部材5)の接触部分(周端縁および凸部8)を互いにろう付けする。
【0252】
これにより、一対のブレージングプレート20(プレート部材5)が接合され、互いに対向する凹部7aおよび凹部7bが中空空間を形成し、2つの冷媒通路15が形成される。また、その冷媒通路15にはインナーフィン6が固定される。
【0253】
このようにして、プレート接合チューブ2を得ることができ、また、このようなプレート接合チューブ2を積層することにより、熱交換器1を得ることができる。
【0254】
得られる熱交換器1は、上記のブレージングプレート20を用いて得られるので、優れたろう付け性を備えることができる。
【0255】
さらに、上記したブレージングプレート20の製造方法では、上記のろう付け材27が用いられるため、塗膜29の固化が早い。そのため、上記のブレージングプレート20の製造方法によれば、Al基材22(アルミニウムまたはアルミニウム合金)を加工する加工工程と、ろう付け材27を吐出する塗布工程とを、同一の製造ラインで実施することができ、製造ラインの簡略化および作業性の向上を図ることができる。
【0256】
そのため、上記のろう付け部材および熱交換器は、例えば、自動車の車室、家屋の室内などにおいて用いられる空調機用の熱交換器として、好適に用いられる。
【0257】
なお、上記した説明では、固体のろう付け材27を加熱して得られる溶融組成物28を、プレート部材5に塗布しているが、固体のろう付け材27を、固体状態のまま溶融することなくプレート部材5に接触させ、必要に応じて摩擦することによって塗布することもできる。
【0258】
このような場合の塗布方法としては、例えば、国際公開WO2018/235906号に記載されるように、長尺のプレート部材5とろう付け材27とを接触させた状態で、プレート部材5をロール式搬送機などによって巻取り、ろう付け材27に対して相対移動させる方法などが挙げられる。このような方法により、固形のろう付け材27が削れ、その削れたろう付け材27が、プレート部材5に付着(塗布)する。
【0259】
そして、上記のろう付け材27を用いれば、固体状態のまま被塗物に接触させて塗布する場合にも、塗布性に優れる。
【実施例
【0260】
次に、本発明を、実施例および比較例に基づいて説明するが、本発明は、下記の実施例によって限定されるものではない。なお、「部」および「%」は、特に言及がない限り、質量基準である。また、以下の記載において用いられる配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなどの具体的数値は、上記の「発明を実施するための形態」において記載されている、それらに対応する配合割合(含有割合)、物性値、パラメータなど該当記載の上限値(「以下」、「未満」として定義されている数値)または下限値(「以上」、「超過」として定義されている数値)に代替することができる。
【0261】
1.ろう付け材の製造
実施例1
表1に示す配合処方に従って、ろう付け材を得た。
【0262】
具体的には、フッ化アルミン酸カリウム系フラックス33.3部と、パラフィンワックス64.7部、および、界面活性剤(ポリオキシエチレンラウリルエーテル、HLB 16.9)2.0部を加熱混合し、所定の型に流し入れて、冷却および成形することによって、ろう付け材を得た。
【0263】
ろう付け材は、25℃で固形であった。
【0264】
実施例2~実施例69、および、比較例1~比較例2
表1~表8に示す配合処方に変更した以外は、実施例1と同様にして、ろう付け材を得た。
【0265】
なお、ろう材について、Al-12%Siは、Siを12%含有するAlろう材(製品名ECKA Aluminium-Silicon 12AN <0.025mm、ECKA Granules Germany GmbH社製)である。
【0266】
また、ろう材について、Siは、Siろう材(製品名M-Si SH-2微粉 45μm品、キンセイマテック社製)である。
【0267】
2.150℃溶融時の粘度
各実施例および各比較例のろう付け材を、150℃で加熱し溶融させた後、150℃を保ったまま、レオメーター(Anton Paar製、Physica MCR 301、冶具:PP25、測定位置:0.5 mm)を用いて、せん断速度2/sにおける粘度を測定した。
【0268】
また、ろう付け材が、水や低融点有機化合物などの150℃以下で沸騰する成分(低沸点成分とする)を含む場合、ろう付け材の有機成分が溶融する温度以上、低沸点成分の沸点以下の3点の温度(例えば、実施例19および実施例20の場合、60℃、75℃および90℃)で粘度を測定し、直線外挿により150℃での粘度を算出した。
【0269】
150℃溶融時の粘度を、表1~表8に示す。
【0270】
3.評価
(1)塗布性
(1-1)液体状塗布性
各実施例および各比較例のろう付け材を、95℃で加熱し溶融させた後、吐出装置(非接触ジェットディスペンサ、武蔵エンジニアリング社製、ホットメルト対応AeroJet (シリンジ:PSY-30FH-P、ロッド:M35-2582-079-00、バルブシート:V、ノズル口径:0.29mm))に供給し、スプリング:100%、ノズル温調:95℃、シリンジ温調:120℃、シリンジ圧力:30kPa、ストローク:0.3mm、on time:2msec、クリアランス:1mmでアルミニウム部材(150mm×70mm×0.8mm)に1ショット吐出して試験片を作製した後、塗布された範囲におけるフッ化物系フラックスの塗布量について、次の基準で優劣を評価した。その結果を表1~表8に示す。
【0271】
なお、ろう付け材を安定して塗布でき、より薄い塗膜を形成できるものが、塗布性に優れるとした。
S:5g/m以上、20g/m未満塗布された。
A:20g/m以上、50g/m未満塗布された。
B:50g/m以上、150g/m未満塗布された。
C:150g/m以上、300g/m未満塗布された。
D:300g/m以上塗布された。
E:300g/m以上塗布されるが、安定的に塗布できなかった。
×:吐出機内で詰まりが発生し吐出できなかった。
【0272】
(1-2)固体状塗布性
各実施例および各比較例のろう付け材を100℃で溶融させ、直径10cm(内径9cm)の円筒状の型(アルミシフォンケーキ型10cm)に流し入れ、室温で1時間放置して、固化させた。得られた円筒状の試料の内空に回転軸を挿入し、曲面の幅が5cmかつ曲面が回転軸に平行になるように試料を削り、塗布用のサンプルを作成した。
【0273】
その後、得られた円筒状のサンプルを、固形材押付塗布機(ダイセキ製)にセットし、150m/minで搬送しているアルミニウム基材(長さ:250m、幅:5cm、厚み100μm)に対して押圧した。また、このとき、サンプルの回転軸をドリル(マキタ製、DF-458D)により2000rpmで回転させ、設定荷重10kgとした。
【0274】
これにより、ろう付け材が固体状態で塗布されたアルミニウム基材を得た。その後、塗布された範囲におけるフッ化物系フラックスの塗布量について、次の基準で優劣を評価した。その結果を表1~表8に示す。
【0275】
なお、ろう付け材を安定して塗布でき、より薄い塗膜を形成できるものが、塗布性に優れているとして評価した。
S:0.5g/m以上、10g/m未満塗布された。
A:10g/m以上、20g/m未満塗布された。
B:20g/m以上、50g/m未満塗布された。
C:50g/m以上、150g/m未満塗布された。
D:150g/m以上、300g/m未満塗布されるが安定的に塗布できなかった。
×:サンプルが柔らかすぎて塗布できなかった。
※:ろう付け材を100℃で溶融させ、円筒状の型に流し入れたが、溶融したろう付け材が均質な形状の液体にならず、所要の円筒状の固体ろう付け材が得られなかったため、塗布性の評価ができなかった。なお、均質な形状の液体にならない現象は、100℃よりさらに高温まで加熱しても、同様であった。
【0276】
(2)塗膜固化性
各実施例および各比較例のろう付け材を、95℃で加熱し溶融させた後、吐出装置(非接触ジェットディスペンサ、武蔵エンジニアリング社製、ホットメルト対応AeroJet (シリンジ:PSY-30FH-P、ロッド:M35-2582-079-00、バルブシート:V、ノズル口径:0.29mm))に供給し、スプリング:100%、ノズル温調:95℃、シリンジ温調:95℃、シリンジ圧力:30kPa、ストローク:0.3mm、on time:2msec、クリアランス:1mmでアルミニウム部材(150mm×70mm×0.8mm)に1ショット吐出して試験片を作製した後、次の基準で優劣を評価した。その結果を表1~表8に示す。
A:塗布後、すぐさま固形の塗膜を形成した。
B:塗布後は液状の塗膜を形成し、25℃で30秒静置すると固形の塗膜となった。
C:塗布後は液状の塗膜を形成し、25℃で1分静置すると固形の塗膜となった。
×:塗布後は液状の塗膜を形成し、25℃で1分静置しても液状の塗膜のままであった。
【0277】
(3)ろう付け性
(3-1)外観
各実施例および各比較例のろう付け材を、90℃で加熱し溶融させた後、アルミニウム部材(150mm×70mm×0.8mm)に、フッ化物系フラックスの塗布量が10g/mとなるように直径10mmの円で塗布し、試験片を作成した。
【0278】
その後、上記試験片をろう付け炉(箱形電気炉、ノリタケTGF社製、A(V)-DC-M)を用いて、窒素ガス雰囲気下(酸素濃度100ppm以下)にて600℃で加熱してろう付けした。
【0279】
そして、以下の試験での性能の優劣を評価した。その結果を表1~表8に示す。
【0280】
ろう付け試験後の外観を次の基準で目視にて評価した。
A:黒色がほとんど見られなかった。
B:黒色が塗布領域の一部に見られた。
×:強い黒色が塗布領域全体に明らかに見られた。
【0281】
(3-2)ろう切れ
各実施例および各比較例のろう付け材を、90℃で加熱し溶融させた後、アルミニウム合金にケイ素-アルミニウム合金(ろう材)をクラッドしたブレージングシートよりなるアルミニウム部材(JIS-BAS121P(クラッド率 10%)、60mm× 25mm× 1.0mm)に、フッ化物系フラックスの塗布量が10g/mとなるように全面に刷毛により塗布し、水平材として作成した。次に、アルミニウム合金(JIS-A3003、55mm× 25mm× 1.0mm)を垂直材として前記水平材に逆T字型に組み付けて、ステンレスワイヤーで固定し、ろう付け評価用の試験片を作成した。
【0282】
その後、上記試験片をろう付け炉(箱形電気炉、ノリタケTGF社製、A(V)-DC-M)を用いて、窒素ガス雰囲気下(酸素濃度100ppm以下)にて600℃で加熱してろう付けした。
【0283】
そして、以下の試験での性能の優劣を評価した。その結果を表1~表8に示す。
【0284】
ろう付け試験後のフィレットを次の基準で目視にて評価した。
〇:水平材と垂直材が接する部位の全体に途切れなくフィレットが形成された。
×:水平材と垂直材が接する部分の一部にフィレットが形成されるが、フッ化物系フラックスの分散性が悪く均一に塗布されないため、フィレットに途切れが確認された。
【0285】
【表1】
【0286】
【表2】
【0287】
【表3】
【0288】
【表4】
【0289】
【表5】
【0290】
【表6】
【0291】
【表7】
【0292】
【表8】
【0293】
なお、表中の各成分の詳細は、以下の通りである。
・ろう材
Al-12%Si:Si12%含有Alろう材、製品名ECKA Aluminium-Silicon 12AN <0.025mm、ECKA Granules Germany GmbH社製
Si:Siろう材、製品名M-Si SH-2微粉 45μm品、キンセイマテック社製
・フッ化物系フラックス
K-Al-F系フラックス:製品名ノコロックフラックス、SOLVAY社製
・固形化剤
パラフィンワックス:製品名Paraffin Wax-135、日本精蝋社製
ステアリルアルコール:高融点有機化合物(融点59℃)
・ノニオン系界面活性剤
ポリオキシエチレン(23)ラウリルエーテル:疎水基の炭素数12、ポリオキシエチレン単位数23、HLB16.9、製品名エマルゲン 123P、花王社製
ポリオキシエチレン(41)ラウリルエーテル:疎水基の炭素数12、ポリオキシエチレン単位数41、HLB18.3、製品名エマルゲン 130K、花王社製
ポリオキシエチレン(4)オクチルエーテル:疎水基の炭素数12、ポリオキシエチレン単位数8、HLB11.5、製品名Tetraethylene glycol monooctyl ether、メルク社製
ポリオキシエチレン(20)オクチルドデシルエーテル(疎水基の炭素数:12 HLB 15)、製品名エマルゲン 108、花王社製
ポリオキシエチレン(25)オクチルドデシルエーテル(疎水基の炭素数:12 HLB 15.7)、製品名エマルゲン 2020G-HA、花王社製
ポリオキシエチレン(6)ステアリルエーテル(疎水基の炭素数:18 HLB 9.4)、製品名エマルゲン 306P、花王社製
ポリオキシエチレン(12)ステアリルエーテル(疎水基の炭素数:18 HLB 13.9)、製品名エマルゲン 320P、花王社製
ポリオキシエチレンオレイルエーテル(疎水基の炭素数:18 HLB 13.9)、製品名エマルゲン 420P、花王社製
・アニオン系界面活性剤
ベヘン酸ナトリウム:疎水基の炭素数22、製品名NS-7、日東化成工業社製
ステアリン酸ナトリウム:疎水基の炭素数18、製品名ステアリン酸ナトリウム、キシダ化学社製
ラウリン酸ナトリウム:疎水基の炭素数12、製品名ラウリン酸ナトリウム、キシダ化学社製
ラウリル硫酸ナトリウム:疎水基の炭素数12、製品名エマール 0、花王社製
・カチオン系界面活性剤
ベヘニルアミンアセテート:疎水基の炭素数22、製品名ニッサンアミン VB-S(日油社製)と、製品名酢酸(キシダ化学社製)とを1:1(モル比)で混合して調製した組成物
ステアリルアミンアセテート:疎水基の炭素数18、製品名アセタミン 86、花王社製
ラウリルアミンアセテート:疎水基の炭素数12、製品名アセタミン 24、花王社製
・両性界面活性剤
ステアリルジメチルアミノ酢酸ベタイン:疎水基の炭素数18、製品名アンヒトール 86B、花王社製
ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン:疎水基の炭素数12、製品名アンヒトール 24B、花王社製
・低融点有機化合物
エチルヘキサン酸トリグリセライド:製品名エキセパール TGO、花王社製
オクチルドデカノール:製品名カルコール 200GD、花王社製
ポリブチレングリコールA:数平均分子量4800、ポリオキシブチレングリコール、製品名ユニオール PB-2000、日油社製
ポリブチレングリコールB:数平均分子量2000、ポリオキシブチレングリコール、製品名ユニオール PB-4800、日油社製
なお、上記発明は、本発明の例示の実施形態として提供したが、これは単なる例示にすぎず、限定的に解釈してはならない。当該技術分野の当業者によって明らかな本発明の変形例は、後記特許請求の範囲に含まれるものである。
【産業上の利用可能性】
【0294】
本発明のろう付け材、そのろう付け材を塗布してなる塗膜を備えるろう付け部材、および、そのろう付け部材を備える熱交換器、さらに、ろう付け部材の製造方法は、例えば、自動車空調機用熱交換器、室内空調機用熱交換器において、好適に用いられる。
【符号の説明】
【0295】
1 熱交換器
22 Al基材
27 ろう付け材
29 塗膜
31 吐出装置
図1
図2
図3