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特許7420729エンボス構造をコーティングの表面に転写する方法、および前記コーティングを含むコンポジット
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  • 特許-エンボス構造をコーティングの表面に転写する方法、および前記コーティングを含むコンポジット 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】エンボス構造をコーティングの表面に転写する方法、および前記コーティングを含むコンポジット
(51)【国際特許分類】
   C09D 4/02 20060101AFI20240116BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240116BHJP
   B29C 43/46 20060101ALI20240116BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
C09D4/02
C09D7/63
B29C43/46
B29C59/02 Z
B29C59/02 B
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2020552373
(86)(22)【出願日】2019-03-28
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-08-10
(86)【国際出願番号】 EP2019057923
(87)【国際公開番号】W WO2019185833
(87)【国際公開日】2019-10-03
【審査請求日】2022-03-10
(31)【優先権主張番号】18164689.4
(32)【優先日】2018-03-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008981
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ コーティングス ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】BASF Coatings GmbH
【住所又は居所原語表記】Glasuritstrasse 1, D-48165 Muenster,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】キュス,ヤン-ベルント
(72)【発明者】
【氏名】ピオンテク,ズザンネ
(72)【発明者】
【氏名】エクスナー,イェルク
(72)【発明者】
【氏名】レンツ,イェルク
(72)【発明者】
【氏名】クライネ-ブライ,ビルギット
(72)【発明者】
【氏名】シッパー,ヴィルフリート
(72)【発明者】
【氏名】フォン デア アー,ロベルト
(72)【発明者】
【氏名】ベルクマン,フランク
(72)【発明者】
【氏名】ロレンツ,ミヒャエル
(72)【発明者】
【氏名】クラッベンボルグ,スヴェン オレ
(72)【発明者】
【氏名】デュンネヴァルト,イェルク
【審査官】井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-007767(JP,A)
【文献】国際公開第2014/163198(WO,A1)
【文献】特表2010-525968(JP,A)
【文献】国際公開第2013/187528(WO,A1)
【文献】特表2018-505288(JP,A)
【文献】LEITGEB, Markus et al.,Multilength Scale Patterning of Functional Layers by Roll-to-Roll Ultraviolet-Light-Assisted Nanoimprint Lithography,ACS Nano,2016年,10, 5,p.4926-4941
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D
B29C 43/46
B29C 59/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材(F1)および少なくとも一部がエンボスされておりかつ少なくとも一部が硬化したコーティング(B1)からなるコンポジット(F1B1)を使用する、エンボス構造をコーティング(B2)の表面の少なくとも一部に転写する方法であって、
コーティング(B2)、およびコンポジット(F1B1)のコーティング(B1)が、互いに鏡像であるエンボス構造を有しており、少なくとも工程(1)および(2)、すなわち、
(1) 基材(F1)および少なくとも一部がエンボスされておりかつ少なくとも一部が硬化したコーティング(B1)からなるコンポジット(B1F1)の少なくとも一部がエンボスされた表面の少なくとも一部に、コーティング用組成物(B2a)を塗布して、コンポジット(B2aB1F1)を得る工程と、
(2) 塗布したコーティング用組成物(B2a)を少なくとも一部硬化させて、基材(F1)、少なくとも一部がエンボスされておりかつ少なくとも一部が硬化したコーティング(B1)、および少なくとも一部が硬化したコーティング(B2)からなるコンポジット(B2B1F1)を得る工程と、
を含み、
工程(1)において使用するコンポジット(B1F1)のコーティング(B1)を生成するために使用したコーティング用組成物(B1a)が、放射線硬化性コーティング用組成物であり、
コーティング用組成物(B1a)が、
40~95質量%の範囲の量の少なくとも1種の構成成分(a)と、
0.01~5質量%の範囲の量の、構成成分(b)としての少なくとも1種の添加剤と、
0.01~15質量%の範囲の量の、構成成分(c)としての少なくとも1種の光開始剤と、
0~45質量%の範囲の量の、少なくとも1個の炭素二重結合を含む少なくとも1種の構成成分(d)と
を含み、
(i)構成成分(a)、(b)、(c)および(d)が、互いにそれぞれ異なっており、(ii)構成成分(a)、(b)、(c)および(d)の明記した量がそれぞれ、コーティング用組成物(B1a)の総質量に対するものであり、(iii)コーティング用組成物(B1a)に存在するすべての構成成分の量が合計100質量%になり、
構成成分(a)が、それぞれ互いに異なるまたは少なくとも一部が同一である、式(I)
【化1】
(式中、
基Rは、各場合において互いに独立して、C~Cアルキレン基であり、
は、各場合において互いに独立して、Hまたはメチルであり、
パラメーターmはそれぞれ、互いに独立して、1~15の範囲の整数パラメーターであるが、ただし、パラメーターmは、構成成分(a)内の式(I)の構造単位の少なくとも1個において、少なくとも2である)
の少なくとも3個の構造単位を含む、
方法。

【請求項2】
(3)コンポジット(B2B1F1)からコーティング(B2)を除去して、工程(1)において使用したコンポジット(B1F1)を復元する工程であり、その表面でコンポジット(B2B1F1)内のコーティング(B1)に既に面しているコーティング(B2)が、工程(1)において使用され、この工程で復元されるコンポジット(B1F1)のコーティング(B1)の少なくとも一部がエンボスされた表面の鏡像を有する、工程を、さらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(3)におけるコーティング(B2)が、コンポジット(B1F1)のさらなる復元を伴って、コンポジット(B2B1F1)から剥離することによって、独立フィルムとして得られる、請求項に記載の方法。
【請求項4】
コーティング(B2)が、工程(3)において、段階(3a)、(3b)および(3c)により3段階で、具体的には
(3a) コンポジット(B2B1F1)の表面の少なくとも一部に、コーティング(B2)を有する側で、接着剤(K)を塗布して、コンポジット(KB2B1F1)を得る工程と、
(3b) 段階(3a)の後に得られたコンポジット(KB2B1F1)に、接着剤(K)を有するその表面の少なくとも一部に、基材(F2)を適用するまたはその反対を行い、コンポジット(F2KB2B1F1)を得る工程と、
(3c) コンポジット(F2KB2B1F1)からコンポジット(B1F1)を剥離して、コンポジット(F2KB2)を得る工程であり、このコンポジットのコーティング(B2)が、その表面に、コンポジット(B1F1)のコーティング(B1)の少なくとも一部がエンボスされた表面の鏡像を少なくとも部分的に有する工程と
によって、コンポジット(B2KF2)の形態で得られる、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
コーティング(B2)が、段階(3c)の後に得られたコンポジット(F2KB2)から剥離することによって、独立フィルムとして得られる、請求項に記載の方法。
【請求項6】
工程(1)において使用されるコンポジット(F1B1)の少なくとも一部がエンボスされておりかつ少なくとも一部が硬化したコーティング(B1)が、マイクロメートルおよび/またはナノメートルの範囲のエンボスを有する、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程(1)において使用するコンポジット(B1F1)が、フィルムウェブ(F1)、およびそれに塗布されて、少なくとも一部がエンボスされておりかつ少なくとも一部が硬化したコーティング(B1)からなるコンポジットである、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程(1)に使用され、工程(3)の後に復元したコンポジット(B1F1)が、再使用可能であり、少なくとも1個のエンボス構造を転写するために繰り返し使用することができる、請求項からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程(1)において使用され、基材(F1)および少なくとも一部がエンボスされておりかつ少なくとも一部が硬化したコーティング(B1)からなるコンポジット(F1B1)が、工程(4)~(7)、具体的には、
(4) 放射線硬化性コーティング用組成物(B1a)を基材(F1)の表面の少なくとも一部に塗布する工程と、
(5) 少なくとも1個のエンボス用ダイ(p1)を有する少なくとも1個のエンボス用器具(P1)によって、基材(F1)の表面に少なくとも一部塗布された、コーティング用組成物(B1a)を少なくとも一部エンボスする工程と、
(6) 基材(F1)の表面の少なくとも一部に塗布されておりかつ少なくとも一部がエンボスされているコーティング用組成物(B1a)を放射線硬化により少なくとも一部硬化して、基材(F1)、および少なくとも一部がエンボスされておりかつ少なくとも一部が硬化したコーティング(B1)からなるコンポジット(F1B1)を得る工程であり、少なくとも一部の硬化の時間全体を通じて、コーティング用組成物(B1a)が、少なくとも1個のエンボス用器具(P1)の少なくとも1個のエンボス用ダイ(p1)に接触している工程と、
(7)エンボス用器具(P1)からコンポジット(F1B1)を除去する工程と
によって少なくとも得ることができる、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
コーティング用組成物(B1a)の総質量に対して、コーティング用組成物(B1a)の固体含有量が90質量%以上である、請求項1からのいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
パラメーターmが、構成成分(a)である式(I)の少なくとも3個の構造単位のそれぞれにおいて、少なくとも2である、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
構成成分(a)における式(I)の構造単位に存在する、エーテルセグメント-[O-R-の割合が、構成成分(a)の総質量に対して、少なくとも35質量%である、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記コーティング用組成物(B1a)が、チオールを含まない、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
基材(F1)、少なくとも一部がエンボスされておりかつ少なくとも一部が硬化したコーティング(B1)、および(B1)に塗布された少なくとも一部が硬化したコーティング(B2)からなるコンポジット(B2B1F1)であって、コーティング(B1)が、基材(F1)の表面の少なくとも一部に塗布されて、少なくとも一部がエンボスされたコーティング用組成物(B1a)を、放射線硬化により少なくとも一部を硬化させることによって生成可能であり、コーティング用組成物(B1a)が、放射線硬化性コーティング用組成物であり、
コーティング用組成物(B1a)が、
40~95質量%の範囲の量の少なくとも1種の構成成分(a)と、
0.01~5質量%の範囲の量の、構成成分(b)としての少なくとも1種の添加剤と、
0.01~15質量%の範囲の量の、構成成分(c)としての少なくとも1種の光開始剤と、
0~45質量%の範囲の量の、少なくとも1個の炭素二重結合を含む、少なくとも1種の構成成分(d)と
を含み、
(i)構成成分(a)、(b)、(c)および(d)は、互いにそれぞれ異なっており、(ii)構成成分(a)、(b)、(c)および(d)の明記した量はそれぞれ、コーティング用組成物(B1a)の総質量に対するものであり、(iii)コーティング用組成物(B1a)に存在するすべての構成成分の量が合計100質量%になり、
構成成分(a)が、それぞれ互いに異なるまたは少なくとも一部が同一である、式(I)
【化2】
(式中、
基Rは、各場合において互いに独立して、C~Cアルキレン基であり、
基Rは、各場合において互いに独立して、Hまたはメチルであり、
パラメーターmはそれぞれ、互いに独立して、1~15の範囲の整数パラメーターであるが、ただし、パラメーターmは、構成成分(a)内の式(I)の構造単位の少なくとも1個において、少なくとも2である)
の少なくとも3個の構造単位を含む、
コンポジット(B2B1F1)。
【請求項15】
前記コーティング用組成物(B1a)が、チオールを含まない、請求項14に記載のコンポジット(B2B1F1)。
【請求項16】
独立フィルムの形態の、その表面の1つに少なくとも一部エンボスしたコーティング(B2)を生成するため、または基材(F2)、少なくとも1種の接着剤(K)およびコーティング(B2)からなるコンポジット(B2KF2)を生成するための、請求項14または15に記載のコンポジット(B2B1F1)を使用する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材(F1)および少なくとも一部がエンボスされておりかつ少なくとも一部が硬化したコーティング(B1)からなるコンポジット(F1B1)を使用する、エンボス構造(embossed structure)をコーティング(B2)の表面の少なくとも一部に転写する方法であって、コーティング(B2)、およびコンポジット(F1B1)のコーティング(B1)が、互いに鏡像であるエンボス構造を有しており、方法が少なくとも工程(1)および(2)ならびにまた、任意に(3)を含む、方法;コンポジット(B2B1F1);ならびにまた、独立フィルムの形態の少なくとも一部がエンボスされたコーティング(B2)、または基材(F2)、少なくとも1種の接着剤(K)およびコーティング(B2)からなるコンポジット(B2KF2)を生成するための、このようなコンポジットを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業における多数の用途において、近年、構造的特徴がマイクロメートルの範囲またはさらにはナノメートルの範囲である構造を表面に有するワークピースを提供することが慣例となっている。このような構造はまた、マイクロ構造(マイクロメートルの範囲のフィーチャを有する構造)またはナノ構造(ナノメートルの範囲のフィーチャを有する構造)とも称される。このような構造を使用して、例えば、材料表面の光学的質、生体工学的質および/または触覚的質に影響を及ぼす。この種の構造はまた、エンボス(embossment)またはエンボス構造とも呼ばれる。
【0003】
この場合、一般的な方法の1つは、これらの構造をコーティング材料に転写することである。コーティング材料への構造の転写は、この場合、エンボス操作を用いて実現されることが多く、エンボス表面または転写表面に、ネガ形態で形成されることになるマイクロ構造および/またはナノ構造を含むダイを、コーティング材料に接触させるようにして、圧印する。次に、この構造が恒久的に形成されて、ワークピースの表面に維持されるようにするために、コーティング材料を、通常、その場で硬化させる。
【0004】
しかし、先行技術から公知のこれらの方法に伴う欠点は、ロールツーロールまたはロールツープレート加工などの、広いサイズ範囲で高度なモデル化精度を伴う連続方法は、ホイルおよびフィルム(金属、プラスチック、紙)またはプレート(金属、プラスチック、ガラス)のエンボスのみに好適である。表面が完全に平坦でないか、または構成成分が大きすぎるために、エンボス用機械を使用することができないとすぐに、公知の方法を使用して、構成成分の表面を構造化することができない。しかし、これらの方法は、非連続的方法であり、ネガ構造を有するダイに限定されることを含み、モールドから構成成分を取り出すために離型剤を必要とし、特に、アスペクト比が0.5超の周期的な構造の場合、非常に低いモデル化精度となることを特徴とするので、液状プラスチックペレットなどの個々の構成成分材料が、例えば、構造化されたモールドに入れられて硬化され、硬化後に、これらの構成成分の表面がモールド表面のダイのポジ部を有する、このような問題を解決するための先行技術から公知のインモールド法は、欠点がある。
【0005】
上記の直接エンボス法は、航空機の翼、風力タービン翼または建築用上塗り要素などの大型部品に利用することができないので、例えば、この場合、その表面に、ナノメートル構造またはマイクロメートル構造を有するフィルムに構成成分を積層させるか、または接着して接合させる試みが行われることが多い。しかし、フィルムは、迅速に黄色くなる傾向があるので、フィルムの積層は、多数の欠点を伴い、これにより、表面の外観を大きく損なう。構成成分の質量は、担体物質としてフィルムの使用によって増加し、これは、特に軽量の構造物には欠点となる。またフィルムは、例えば、大気の酸素および液体に対して一層大きなバリアとなる。後者は、特に、構成成分から古いコーティング材料を取り除くために特定の液体を使用する修復操作では妨げとなる。大気中の酸素に対する一層大きなバリアにより、特に、建築用上塗り要素の場合、モールドを開発が生じることがある。
【0006】
EP1304235(A1)は、担体フィルムによって、構造化したコーティング層を生成する方法を記載しており、剥離特性を有する構造化した担体フィルムおよびコーティング層からなる積層コンポジットを生成している。DE102005017170(A1)は、担体フィルム、およびその上に堆積された構造層を備える転写フィルムを記載している。この構造層が硬化した後に、構造を提供しようとする目標表面に接着して接合することができる。US2007/0218255A1は、装飾用ガラスに使用することができる構造化フィルムを生成する方法を記載している。
【0007】
US2010/0279075(A1)は、構造化した担体フィルムを使用することによって、構成成分にマイクロ構造化表面を生成する方法を記載している。しかし、この方法の欠点は、構造層を適用する前に、剥離層でマイクロ構造化フィルムを最初にコーティングすることである。これは、作業の追加工程を必要とし、また、モデル化の質に非常に負の影響を及ぼす。エンボスの個々の構造要素間の距離が、剥離層によって不利に低減されるので、マイクロ構造の精密な相補転写は不可能である。
【0008】
WO2015/154866A1は、構造化表面を備えた基材を生成するための方法に関する。その例では、第一に、第1のUV硬化コーティング剤を基材に塗布し、硬化する。次に、この上に第2のUV硬化性コーティング剤であるエンボス用ワニスとして硬化済みコーティング剤を塗布し、これをエンボスして、マイクロ構造を生成し、続いて硬化させる。
【0009】
DE102007062123(A1)は、例えば、UV-架橋性エンボス用ワニスなどのエンボス用ワニスを担体フィルムに塗布するため、マイクロメートル範囲でエンボス用ワニスを構造化するため、およびフィルムに塗布したエンボス用ワニスを硬化して、エンボスしたフィルムを得て、そのマイクロ構造を、続いて、エンボスした表面の金属の堆積によって、言い換えると、フィルムを金属化することによってモデル化するための方法を記載している。しかし、その後の金属化によるこのようなモデル化の欠点は、その結果生じる、モデル化の質の望ましくない低下である。
【0010】
最後に、EP2146805B1は、ざらつきのある表面を有する材料を生成する方法を記載している。この方法は、硬化性コーティングを有する基材を用意する工程、前記コーティングをエンボス用のテクスチャリング媒体(texturing medium)に接触させる工程、次に、この方法でエンボスしたコーティングを硬化させて、テクスチャリング媒体から基材を取り出す工程を含む。テクスチャリング媒体は、20%~50%のアクリルオリゴマー、15%~35%の一官能性モノマー、および20%~50%の多官能性モノマーを含有する表面層を含む。WO2016/090395(A1)およびACS Nano Journal、2016年、10巻、4926~4941頁は、各場合において明確な教示と共に、テクスチャリング媒体の表面層を生成するために、テクスチャリング媒体の比較的硬質なダイの生成を可能にするためには、各場合において、三エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート(TMP(EO)TA)の部数を多く使用する必要があるという、類似の方法を記載している。さらに、WO2016/090395(A1)によれば、表面層を生成するために使用されるコーティング用組成物は、例えば、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)などの少なくとも2個のチオール基を有する構造単位を必然的に含まなければならない。しかし、このような組成物は、保管時に十分な安定性を必ずしも有していないため、およびこのような組成物から生成したコーティングは、適切な耐候安定性が欠如しているので、対応するコーティング材料組成物におけるこのようなチオールの使用は、欠点があることが多い。さらなる要因は、有害臭であることであり、これはチオールの使用に起因し、このことは、当然ながら、同様に望ましいものではない。
【0011】
特に、EP2146805(B1)、WO2016/090395(A1)およびACS Nano Journal、2016年、10巻、4926~4941頁に記載されている方法などの先行技術から公知のエンボス方法は、特に、マイクロメートル範囲および/またはナノメートル範囲のエンボス、すなわち、マイクロ構造および/またはナノ構造を転写すること、特に、このような転写の場合に、モデル化の精度が許容されない程度にまで低下させずに行うことは、必ずしも十分には可能でない。さらに、上で観察されたように、先行技術から公知の方法は、特に、大型構成成分および/または非平面形状を有する構成成分に、さらに十分な耐候安定性にとって重要であり、したがってその外観が不利に影響を受けないナノ構造化および/またはマイクロ構造化コーティングフィルムを設けるには必ずしも好適ではない。同時に、エンボスは、必ずしも適切に複製されるとは限らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】EP1304235(A1)
【文献】DE102005017170(A1)
【文献】US2007/0218255A1
【文献】US2010/0279075(A1)
【文献】WO2015/154866(A1)
【文献】DE102007062123(A1)
【文献】EP2146805(B1)
【文献】WO2016/090395(A1)
【非特許文献】
【0013】
【文献】ACS Nano Journal、2016年、10巻、4926~4941頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
したがって、上記の欠点を有さないエンボス構造を転写する方法が必要である。
【0015】
したがって、本発明により対処される課題は、十分なモデル化精度を伴って、とりわけマイクロ構造および/またはナノ構造などのエンボス構造の転写を可能にし、特に、エンボス構造を転写するため、非常に大規模で再使用可能なエンボス用ダイの生成を可能にする、および/またはこの種のエンボス用ダイを使用して実施することができる、エンボス構造をコーティングに転写する方法を提供することである。本発明のさらなる目的は、特に大型構成成分および/または非平面形状を有する構成成分にでさえ、この種のエンボス構造を含むコーティングを提供することができる方法であって、前記コーティングが、さらに、十分な耐候安定性、したがって、その光学的、生体工学的および/または触覚的外観に及ぼす有害的影響がないことによって、さらに区別される方法を提供することである。同時に、各場合において、特に、本方法が、例えば不適切な接着性などの、使用されるコーティングおよびコーティング用組成物の部分に関する望ましくないまたは不適切な特性によって引き起こされるいかなる欠点も特徴とすることなく、転写されることになるエンボス構造をかなり高い程度に複製することが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
この課題は、本特許の特許請求の範囲において権利請求されている主題によって、およびさらに本発明のこれ以降の説明に記載されているそのような主題の好ましい実施形態によって解決される。
【0017】
したがって、本発明の第1の主題は、基材(F1)と少なくとも一部がエンボスされておりかつ少なくとも一部が硬化したコーティング(B1)とからなるコンポジット(F1B1)を使用する、エンボス構造をコーティング(B2)の表面の少なくとも一部に転写する方法であって、コーティング(B2)、およびコンポジット(F1B1)のコーティング(B1)が、互いに鏡像であるエンボス構造を有しており、少なくとも工程(1)および(2)ならびにまた任意に(3)、具体的には、
(1) 基材(F1)および少なくとも一部がエンボスされておりかつ少なくとも一部が硬化したコーティング(B1)からなるコンポジット(B1F1)の少なくとも一部がエンボスされた表面の少なくとも一部に、コーティング用組成物(B2a)を塗布して、コンポジット(B2aB1F1)を得る工程と、
(2) 塗布したコーティング用組成物(B2a)を少なくとも一部硬化させて、基材(F1)、少なくとも一部がエンボスされておりかつ少なくとも一部が硬化したコーティング(B1)、および少なくとも一部が硬化したコーティング(B2)からなるコンポジット(B2B1F1)を得る工程と、
(3) 任意に、コンポジット(B2B1F1)からコーティング(B2)を除去して、工程(1)において使用したコンポジット(B1F1)を復元する工程であり、コンポジット(B2B1F1)内のコーティング(B1)に既に面しているその表面のコーティング(B2)が、工程(1)において使用され、この工程で復元されるコンポジット(B1F1)のコーティング(B1)の少なくとも一部がエンボスされた表面の鏡像を有する、工程と
を含み、
工程(1)において使用し、工程(3)において復元したコンポジット(B1F1)のコーティング(B1)を生成するために使用したコーティング用組成物(B1a)が、放射線硬化性コーティング用組成物であり、
コーティング用組成物(B1a)が、
40~95質量%の範囲の量の少なくとも1種の構成成分(a)と、
0.01~5質量%の範囲の量の、構成成分(b)としての少なくとも1種の添加剤と、
0.01~15質量%の範囲の量の、構成成分(c)としての少なくとも1種の光開始剤と、
0~45質量%の範囲の量の少なくとも1個の炭素二重結合を含む、少なくとも1種の構成成分(d)と
を含み、
(i)構成成分(a)、(b)、(c)および(d)が、互いにそれぞれ異なっており、(ii)構成成分(a)、(b)、(c)および(d)の明記した量がそれぞれ、コーティング用組成物(B1a)の総質量に対するものであり、(iii)コーティング用組成物(B1a)に存在するすべての構成成分の量が合計100質量%になり、
構成成分(a)が、それぞれ互いに異なるまたは少なくとも一部が同一である、式(I)
【化1】
(式中、
基Rは、各場合において互いに独立して、C~Cアルキレン基であり、
基Rは、各場合において互いに独立して、Hまたはメチルであり、
パラメーターmはそれぞれ、互いに独立して、1~15の範囲の整数パラメーターであるが、ただし、パラメーターmは、構成成分(a)内の式(I)の構造単位の少なくとも1個において、少なくとも2である)
の少なくとも3個の構造単位を含む、
方法に関する。
【0018】
好ましくは、コーティング用組成物(B1a)の構成成分(a)における、それぞれ互いに異なる、または少なくとも一部が同じ式(I)である少なくとも3個の構造単位におけるパラメーターmは、各場合において少なくとも2である。
【0019】
本発明の方法は、エンボス構造、より詳細にはマイクロ構造および/またはナノ構造を非常に高度のモデル化精度でコーティング(B2)に転写することを可能にし、その結果、エンボス中に、調節した深さが失われず、モデル化が、詳細には、10nm~1000μmの構造幅の範囲、および0.1nm~1000μmの構造深さの範囲の高い精度で行われることを驚くべきことに見いだした。この文脈では、本発明の方法により、放射線硬化性コーティング用組成物(B1a)の基材(F1)へのコーティングによって得ることが可能なコンポジット(F1B1)を用いて、非常に高度のモデル化精度および高度なレベルの複製の成功率でエンボス構造を転写することが可能となることを特に驚くべきことに見いだした。
【0020】
放射線硬化性コーティング用組成物(B1a)の好ましくは移動する基材(F1)へのコーティングによって得ることが可能な、使用したコンポジット(F1B1)のコーティング(B1)は、高い二重結合の転化にとって重要であるので、本発明の方法は、かなり有利に適用することができることを驚くべきことにさらに見いだした。その結果、本発明の方法の工程(3)におけるコーティング(B2)とコンポジットとの間に効果的な分離が可能となる。基材(F1)上のコーティング(B1)は、非常に良好な接着によって区別されるので、本発明の方法は、かなり有利に適用することができることをさらに驚くべきことに見いだした。
【0021】
本発明の方法を使用することにより、特に、一層大型の構成成分および/または非平面形状を有する構成成分に、このようなエンボス構造を有するコーティングを設けること、またはこのようなエンボス構造を有するコーティングを前記構成成分に転写することが可能となるということをさらに驚くべきことに見いだした。このようなエンボス構造が設けられた得られたコーティング(B2)は、十分な耐候安定性によって区別され、したがって、その光学的、生体工学的および/または触覚的外観に関して悪影響を与えないことを、さらに驚くべきことに見いだした。さらに、本発明の方法により、このようなエンボス構造を有するコーティング(B2)を、基材とコーティングとの間に存在する1つもしくは複数のさらなる層または任意にコーティングしたフィルムを何ら必要とすることなく、大型構成成分、および/または非平面形状を有する構成成分などのこのような基材に直接、塗布または接合させることが可能となる。
【0022】
さらに、工程(1)において使用したコーティング用組成物(B2a)が、UV照射によって硬化性コーティング用組成物などの放射線硬化性コーティング用組成物である場合、この組成物は、硬化を生じさせるため、UV照射が、例えば、125μmの厚さのPETフィルム(F1)、および最大で150μmの厚のコーティング(B1)を構成することができるコンポジット(F1B1)を貫通しなければならないという事実があるにも関わらず、迅速な過程速度でさえも、工程(2)において少なくとも一部がまたは完全に硬化することを驚くべきことに見いだした。さら驚くべきことは、コーティング(B2)は、本方法の工程(3)において、コンポジット(F1B1)から容易に分離することができることである。特に驚くべきことは、少なくとも一部が硬化したコーティング(B1)の特定の構成のために、任意の慣用的な放射線硬化したコーティング(B2)に関して、このような良好な剥離効果が実現することである。
【0023】
工程(1)において使用したコーティング用組成物(B2a)が、物理的に乾燥性の、熱硬化性および/または化学硬化性コーティング用組成物である場合、工程(1)における(B2a)の塗布時の、コーティング(B1)のエンボス構造は、この場合、(B2a)におけるこれらの場合に通常、存在する溶媒の蒸発により、大きく収縮する可能性があることを示唆し、通常、一層、乏しいモデル化精度をもたらすという事実があるにも関わらず、良好なモデル化精度で転写されることをさらに驚くべきことに見いだした。しかし、現在の場合、このことは、驚くべきことに見いだされなかった。この場合、さらに、本方法の任意の工程(3)において、コーティング(B2)は、コンポジット(F1B1)から容易に分離することが可能なことがやはり驚くべきことである。特に驚くべきことは、少なくとも一部が硬化したコーティング(B1)の特定の構成のために、任意の慣用的な物理的に乾燥させ、熱硬化し、および/または化学的に硬化したコーティング(B2)に関して、このような良好な剥離効果が実現することである。
【0024】
マイクロ構造および/またはナノ構造などの、エンボス構造を転写するために、工程(1)における本発明の方法において使用することができるコンポジット(F1B1)は、再使用可能であることを驚くべきことにさらに見いだし、このことは、経済的状況では有利である。驚くべきことに、さらに、コンポジット(F1B1)は、再使用可能であり、したがっていくつかの回数、利用可能であるばかりではなく、工業的な大規模で迅速かつ安価に生成することができる。
【0025】
本発明のさらなる主題はまた、基材(F1)、少なくとも一部がエンボスされておりかつ少なくとも一部が硬化したコーティング(B1)、および(B1)に塗布されて少なくとも一部が硬化したコーティング(B2)からなるコンポジット(B2B1F1)であって、コーティング(B1)が、基材(F1)の表面の少なくとも一部に塗布されて、少なくとも一部がエンボスされたコーティング用組成物(B1a)を、放射線硬化により少なくとも一部を硬化させることによって生成可能であり、コーティング用組成物(B1a)が、放射線硬化性コーティング用組成物であり、
コーティング用組成物(B1a)が、
40~95質量%の範囲の量の少なくとも1種の構成成分(a)と、
0.01~5質量%の範囲の量の、構成成分(b)としての少なくとも1種の添加剤と、
0.01~15質量%の範囲の量の、構成成分(c)としての少なくとも1種の光開始剤と
0~45質量%の範囲の量の、少なくとも1個の炭素二重結合を含む、少なくとも1種の構成成分(d)と、
を含み、
(i)構成成分(a)、(b)、(c)および(d)が、互いにそれぞれ異なっており、(ii)構成成分(a)、(b)、(c)および(d)の明記した量がそれぞれ、コーティング用組成物(B1a)の総質量に対するものであり、(iii)コーティング用組成物(B1a)に存在するすべての構成成分の量が合計100質量%になり、
構成成分(a)が、それぞれ互いに異なるまたは少なくとも一部が同一である、式(I)
【化2】
(式中、
基Rは、各場合において互いに独立して、C~Cアルキレン基であり、
基Rは、各場合において互いに独立して、Hまたはメチルであり、
パラメーターmはそれぞれ、互いに独立して、1~15の範囲の整数パラメーターであるが、ただし、パラメーターmは、構成成分(a)内の式(I)の構造単位の少なくとも1個において、少なくとも2である)
の少なくとも3個の構造単位を含む、
コンポジット(B2B1F1)である。
【0026】
好ましくは、本コンポジットは、方法工程(1)および(2)によって得られる。
【0027】
本発明のさらなる主題はさらに、独立フィルムの形態の、その表面の1つに少なくとも一部エンボスしたコーティング(B2)を生成するため、または基材(F2)、少なくとも1種の接着剤(K)およびコーティング(B2)からなるコンポジット(B2KF2)を生成するための、本発明のコンポジット(B2B1F1)を使用する方法である。このコンポジット(B2KF2)は、好ましくは、方法段階(3a)、(3b)および(3c)を横断的に行うことによって、具体的には、
(3a) コンポジット(B2B1F1)の表面の少なくとも一部に、コーティング(B2)を有する側で、接着剤(K)を塗布して、コンポジット(KB2B1F1)を得る工程と、
(3b) 段階(3a)の後に得られたコンポジット(KB2B1F1)に、接着剤(K)を有するその表面の少なくとも一部に、基材(F2)を適用するまたはその反対を行い、コンポジット(F2KB2B1F1)を得る工程と、
(3c) コンポジット(F2KB2B1F1)からコンポジット(B1F1)を剥離して、コンポジット(F2KB2)を得る工程であり、このコンポジットのコーティング(B2)が、その表面に、コンポジット(B1F1)のコーティング(B1)の少なくとも一部がエンボスされた表面の鏡像を少なくとも部分的に有する工程と
によって得られる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1図1は、コンポジット(F1B1)を生成するための、すなわちマスターフィルムを生成するための本発明の方法の工程(4)~(7)を実施するために使用され得る装置であって、工程(4)~(7)に関連する本発明の方法の例示的実例に使用される、装置の側面図を概略的に示している。
【発明を実施するための形態】
【0029】
包括的記載
用語「含む(comprising)」は、本発明による、例えば、コーティング用組成物(B1a)、および本発明の方法、およびその方法工程などにより使用されるコーティング用組成物に関連する本発明の意味では、好ましくは、「からなる(consisting of)」という定義を有する。例えば、本発明により使用されるコーティング用組成物(B1a)に関すると、構成成分(a)および(b)およびまた(c)ならびに任意に(d)に加えて、以下に特定される、および本発明により使用されるコーティング用組成物(B1a)中に任意に存在する1種または複数の他の構成成分をその組成物中に含ませることもさらに可能である。構成成分はすべて、以下に特定されているその好ましい実施形態にそれぞれ存在してもよい。本発明の方法に関すると、工程(1)および(2)ならびにまた任意に(3)に加えて、例えば、工程(3a)、(3b)および(3c)および(4)~(7)などのさらに任意の方法工程を有してもよい。
【0030】
少なくとも工程(1)および(2)および任意に(3)を含む、エンボス構造を転写する本発明の方法
本発明の第1の主題は、上で観察された通り、基材(F1)および少なくとも一部がエンボスされておりかつ少なくとも一部が硬化したコーティング(B1)からなるコンポジット(B1F1)を使用する、エンボス構造をコーティング(B2)の少なくとも一部に転写する方法であって、コーティング(B2)、およびコンポジット(B1F1)のコーティング(B1)が、互いに鏡像であるエンボス構造を有しており、少なくとも工程(1)および(2)ならびにまた、任意に(3)を含む、方法である。
【0031】
本発明の方法は、好ましくは連続法である。
【0032】
一方で、方法工程(1)~(3)を行った後、工程(1)において使用したコンポジット(B1F1)は、復元される、すなわち回収されて、好ましくは再使用され得る、すなわち本方法に再度、使用され得る。一方、コーティング(B2)が得られ、このコーティング(B2)は、コンポジット(F1B1B2)内のコーティング(B1)に既に面しているその表面に、工程(1)において使用し、次に復元させたコンポジット(B1F1)のコーティング(B1)の少なくとも一部がエンボスされた表面の鏡像を有する。
【0033】
任意の工程(3)によれば、(B2)は、コンポジット(B2B1F1)内のコーティング(B2)からコンポジット(B1F1)を剥離することにより、またはその反対で独立フィルムとして得ることができる。これにより、コンポジット(B1F1)か復元する。
【0034】
コーティング(B2)は好ましくは、工程(3)において、段階(3a)、(3b)および(3c)により3段階で、具体的には、
(3a) コンポジット(B2B1F1)の表面の少なくとも一部に、コーティング(B2)を有す側で、接着剤(K)を塗布して、コンポジット(KB2B1F1)を得る工程と、
(3b) 段階(3a)の後に得られたコンポジット(KB2B1F1)に、接着剤(K)を有するその表面の少なくとも一部に、基材(F2)を適用するまたはその反対を行い、コンポジット(F2KB2B1F1)を得る工程と、
(3c) コンポジット(F2KB2B1F1)からコンポジット(B1F1)を剥離して、コンポジット(F2KB2)を得る工程であり、このコンポジットのコーティング(B2)が、その表面に、コンポジット(B1F1)のコーティング(B1)の少なくとも一部がエンボスされた表面の鏡像を少なくとも部分的に有する工程と
によって、コンポジット(B2KF2)の形態で、得られる。
【0035】
次に、コーティング(B2)は、段階(3c)の後に得られたコンポジット(F2KB2)から剥離することによって、独立フィルムとして、次に、得ることができる。
【0036】
したがって、コンポジット(F2KB2)の形態で任意に存在するコーティング(B2)を生成するために、本発明の方法の工程(1)~(3)を行う。
【0037】
所望のエンボス構造は、好ましくは放射線硬化性コーティング用組成物(B2a)を、方法工程(1)による基材(F1)および少なくとも一部がエンボスされておりかつ少なくとも一部が硬化したコーティング(B1)からなるコンポジット(B1F1)の少なくとも一部がエンボスされた表面の少なくとも一部に、コーティング用組成物(B2a)に、または工程(2)の実施後にコーティング(B2)に塗布することによって転写される。
【0038】
用語「エンボスする」とは、工程(1)の後にコーティング用組成物(B2a)または工程(2)の後のコーティング(B2)の表面の少なくとも一部に、エンボス構造を少なくとも部分的に設けることを指す。この場合、コーティング用組成物(B2a)またはコーティング(B2)の少なくともある領域に、エンボス構造が設けられる。好ましくは、コーティング用組成物(B2a)またはコーティング(B2)の領域全体に、エンボス構造が設けられる。類似の注釈が、工程(1)においてエンボス用ダイとして使用され、基材(F1)および少なくとも一部がエンボスされておりかつ少なくとも一部が硬化したコーティング(B1)からなる、少なくとも一部がエンボスされたコンポジット(B1F1)であって、であって、以下に記載した工程(4)~(7)により生成することができるコンポジット(B1F1)に関する用語「エンボスする」に関連して該当する。
【0039】
コンポジット(B1F1)および(B2KF2)およびコーティング(B2)のエンボス構造は、好ましくは、および各場合において互いに独立して、繰り返しおよび/または規則的配列パターンに基づいている。構造は、各場合において、連続的な溝構造として、他には複数の好ましくは繰り返された個々のエンボス構造などの連続的なエンボス構造であってもよい。この場合、それぞれの個々のエンボス構造は、次に、エンボス構造のエンボス高さを画定する、多かれ少なかれ強力な目立ったリッジ(エンボス隆起)を有する溝構造に好ましくは基づくことができる。好ましくは繰り返される個々のエンボス構造のリッジの個々の形状によれば、平面図は、様々な、例えば、好ましくは、屈曲状、のこぎり歯状、六角形、ダイヤモンド形状、ひし形状、平方四辺形(parallelogrammatical)、ハニカム形状、円筒形、点状、星形形状、ロープ形状、網状、多角形、好ましくは三角形、正方形、より好ましくは長方形および正方形、五角形、六角形、七角形および八角形、ワイヤー形状、楕円形、長円形および格子形状のパターンなどの、複数の好ましくは繰り返される個々のエンボス構造を示してもよく(それらのそれぞれは異なる)、少なくとも2つのパターンは、互いに重ね合わせることがやはり可能である。個々のエンボス構造のリッジはまた、湾曲状、すなわち凸構造および/または凹構造を有してもよい。
【0040】
個々のエンボス構造は、リッジの幅などのその幅によって、言い換えるとその構造幅によって、およびエンボスの高さによって、言い換えるとその構造高さ(または、構造深さ)によって記載されてもよい。リッジの幅などの構造幅は、最大で1センチメートルの長さを有してもよいが、好ましくは、10nm~1mmの範囲で位置する。構造高さは、好ましくは、0.1nm~1mmの範囲で位置する。しかし、好ましくは、個々のエンボス構造は、マイクロ構造および/またはナノ構造を表す。ここで、マイクロ構造は、マイクロメートルの範囲の特徴部を有する構造(構造幅および構造高さの両方に関して)である。ここで、ナノ構造は、ナノメートルの範囲の特徴部を有する構造(構造幅および構造高さの両方に関して)である。マイクロ構造およびナノ構造は、この場合、ナノメートルの範囲の構造幅、およびマイクロメートル範囲の構造高さを有する、またはその逆である構造である。用語「構造高さ」および「構造深さ」は、この場合、相互交換可能である。
【0041】
個々のエンボス構造の構造幅は、好ましくは10nm~500μmの範囲、より好ましくは25nm~400μmの範囲、非常に好ましくは50nm~250μmの範囲、より詳細には100nm~100μmの範囲に位置する。個々のエンボス構造の構造高さは、好ましくは10nm~500μmの範囲、より好ましくは25nm~400μmの範囲、非常に好ましくは50nm~300μmの範囲、より詳細には100nm~200μmの範囲に位置する。これは、コンポジット(F1B1)およびコンポジット(B2KF2)およびコーティング(B2)のエンボス構造の場合にその通りとなる。
【0042】
個々のエンボス構造の構造幅および構造高さは、この場合、表面を機械的に走査することによって決定する。この場合、エンボス高さは、試料のウェブ幅の上に均質に分布した線上の10個以上の点で測定され、走査機器は、エンボス構造を圧縮しないことを確実にするよう気を付ける。構造高さの決定は、モデル化の精度の決定であり、以下に記載されている方法に従って、走査型力顕微鏡法により行われる。
【0043】
工程(1)
本発明の方法の工程(1)は、基材(F1)および少なくとも一部がエンボスされておりかつ少なくとも一部が硬化したコーティング(B1)からなるコンポジット(B1F1)の少なくとも一部がエンボスされた表面の少なくとも一部に、コーティング用組成物(B2a)を塗布して、コンポジット(B2aB1F1)を得ることを実現する。
【0044】
工程(1)において使用される、コンポジット(F1B1)の少なくとも一部がエンボスされておりかつ少なくとも一部が硬化したコーティング(B1)は、好ましくは、マイクロメートルおよび/またはナノメートルの範囲のエンボスを有する。
【0045】
(B1)で少なくとも一部がコーティングされている基材(F1)は、そこに塗布される、コーティング用組成物(B2a)またはコーティング(B2)のための担体物質となる。
【0046】
基材(F1)、またはコーティングされている基材を使用する場合、基材(F1)の表面に位置する層は、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリエステル(ポリカーボネートおよびポリ酢酸ビニル、好ましくはPBTおよびPETなどのポリエステルを含む)、ポリアミド、ポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、やはりまたポリブタジエンなど)、ポリアクリロニトリル、ポリアセタール、ポリアクリロニトリル-エチレン-プロピレン-ジエン-スチレンコポリマー(A-EPDM)、ポリエーテルイミド、フェノール樹脂、ウレア樹脂、メラミン樹脂、アルキド樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン(TPUを含む)、ポリエーテルケトン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテル、ポリビニルアルコールおよびそれらの混合物からなる群からより詳細には選択される少なくとも1種の熱可塑性ポリマーから好ましくはなる。特に、好ましい基材、またはその表面の層は、例えば、PP(ポリプロピレン)などのポリオレフィンであり、これは、代替として、アイソタクチック、シンジオタクチックまたはアタクチックであってもよく、代替として、単軸延伸または二軸延伸により方向性があるまたは方向性がない、SAN(スチレン-アクリロニトリルコポリマー)、PC(ポリカーボネート)、PMMA(ポリメチルメタクリレート)、PBT(ポリ(ブチレンテレフタレート))、PA(ポリアミド)、ASA(アクリロニトリル-スチレン-アクリルエステルコポリマー)およびABS(アクリロニトリル-ブタジエン-スチレンコポリマー)、およびさらにそれらの物理混合物(ブレンド)であってもよい。特に、PP、SAN、ABS、ASA、やはりまたABSまたはASAとPAまたはPBTまたはPCとのブレンドが好ましい。とりわけ、PET、PBT、PP、PEおよびポリメチルメタクリレート(PMMA)、または耐衝撃性改質PMMAが好ましい。基材(F1)に対する材料として使用するため、ポリエステルがとりわけ好ましく、PETが最も好ましい。代替として、基材(F1)自体(任意に、そこに塗布される少なくとも1種の上述のポリマーの層が存在する場合でも)は、ガラス、セラミック、金属、紙および/または布地などの様々な材料から作製されてもよい。その場合、基材(F1)は、好ましくはプレートであり、例えば、ロールツープレートエンボス装置に使用されてもよい。
【0047】
基材(F1)の厚さは、好ましくは、2μm~5mmである。特に、25~1000μm、より詳細には50~300μmの層の厚さが好ましい。
【0048】
基材(F1)は、好ましくはフィルム、より好ましくはフィルムウェブ、非常に好ましくは連続フィルムウェブである。その場合、基材(F1)は、好ましくはロールツーロールエンボス装置に使用されてもよい。コーティング(B1)の厚さは、好ましくは0.1~500μm、より好ましくは1~300μmである。
【0049】
本発明の意味では、用語「連続フィルム」または「連続フィルムウェブ」とは、100m~10kmの長さを有するフィルムを好ましくは指す。
【0050】
工程(1)が、行われる場合(および好ましくは、同様に、本方法の工程(2)および(3)を行う場合)、使用されるコンポジット(F1B1)は、好ましくは動かされ、したがって、移動性コンポジットとなる。工程(1)の実施の間、コンポジット(F1B1)は、コンベヤベルトなどの輸送デバイスによって好ましくは動かされる。したがって、工程(1)を行うために使用される対応する装置は、このような輸送デバイスを好ましくは含む。工程(1)を実施するために使用される対応する装置は、コンポジット(F1B1)の表面の少なくとも一部に、好ましくは放射線硬化性コーティング用組成物(B2a)を塗布するための手段をさらに備える。
【0051】
工程(1)によって、コンポジット(F1B1)から転写される望ましい(鏡像)エンボス構造は、好ましくは放射線硬化性コーティング用組成物(B2a)を基材(F1)および少なくとも一部がエンボスされておりかつ少なくとも一部が硬化したコーティング(B1)からなるコンポジット(F1B1)の少なくとも一部がエンボスされた表面の少なくとも一部に塗布することによって、コーティング用組成物(B2a)に、および工程(2)の実施後にコーティング(B2)に転写される。したがって、コンポジット(F1B1)は、(B2a)または(B2)のための担体物質として機能するだけではなく、エンボス用ダイとしてもさらに機能する。
【0052】
工程(1)におけるエンボス用ダイとして使用されるコンポジット(F1B1)は、好ましくは再使用可能であり、好ましくは本発明の方法において少なくとも1個のエンボス構造を転写するために繰り返し使用することができる。工程(1)により、マイクロ構造および/またはナノ構造がエンボス構造としてコーティング用組成物(B2a)に、および工程(2)の実施後にコーティング(B2)に転写される。
【0053】
コンポジット(F1B1)は、少なくとも一部がエンボスされておりかつ完全に硬化したコーティング(B1)を有する、フィルムウェブ(F1)を好ましくは含む。特に好ましくは、基材(F1)は、少なくとも一部がエンボスされておりかつ少なくとも一部が硬化したコーティング(B1)を有する連続フィルムウェブであり、こうして、コンポジット(F1B1)は連続エンボス用ダイとなる。
【0054】
エンボス用ダイとして使用されるコンポジット(F1B1)は、「ネガ構造(ネガ形態)」、すなわち、本発明の方法の工程(1)において、コーティング用組成物(B2a)に、および工程(2)の実施後に、コーティング(B2)に転写される、エンボス構造の鏡像を有する。
【0055】
工程(1)を実施するために使用される対応する装置は、基材(F1)および少なくとも一部がエンボスされておりかつ少なくとも一部が硬化したコーティング(B1)からなるコンポジット(F1B1)の少なくとも一部がエンボスされた表面の少なくとも一部に、好ましくは放射線硬化性コーティング用組成物(B2a)を塗布するための手段を備える。さらに、使用される装置は、(B1)により少なくとも一部がコーティングされている連続フィルムウェブの形態で好ましくは使用される基材(F1)に、言い換えると、放射線硬化性コーティング用組成物(B2a)の塗布後に対応するコンポジット(F1B1)に、圧力を印加するため、またはこうして塗布したコーティング用組成物(B2a)をプレスするための、少なくとも1個のロールを備えるロール機構またはグリッドロール機構などの手段を好ましくは有しており、この手段は、放射線硬化性コーティング用組成物(B2a)を塗布するための手段の好ましくは下流(コンポジット(F1B1)の運搬方向に見る)に位置する。
【0056】
上記の通り、プレスするまたは圧力を印加するための好適な手段は、少なくとも1個のロールを備えるロール機構またはグリッドロール機構である。グリッドロール機構は、この場合、例えば、鋼製ロール、またはニッケル製ロールとしての金属製ロール、またはそうでない場合、石英をベースとするロールもしくは少なくとも1種のプラスチックによりコーティングされているロールを備える。
【0057】
工程(1)に使用されるコンポジット(F1B1)であって、基材(F1)および少なくとも一部がエンボスされておりかつ少なくとも一部が硬化したコーティング(B1)からなるコンポジット(F1B1)は以下、「マスター基材」または「マスターフィルム」とも称される。基材(F1)が、フィルムである場合、対応するマスターフィルムは、「マスターフィルム」と呼ばれる。基材(F1)が、フィルムウェブである場合、対応するマスターフィルムは、「マスターフィルムウェブ」と呼ばれる。マスターフィルム上のコーティング(B1)はまた、本明細書のこれ以降、「少なくとも一部が硬化したマスターコーティング」または「マスターコーティング層」とも称され、硬化したマスターコーティングを生成するために使用されるコーティング用組成物(B1a)は、「マスターコーティング」と称される。コンポジット(F1B1)における(F1)と(B1)との間に、さらなる(コーティング)層が好ましくは存在しない。しかし、コンポジット(F1B1)の(F1)と(B1)との間に存在する少なくとも1つの接着促進層が存在することがやはり可能であり、この層は、この場合、UV照射に好ましくは透過性である。
【0058】
エンボス用ダイ(F1B1)として使用されるコンポジットは、使用されるコーティング用組成物(B2a)を用いて工程(1)を行う前に、任意に事前処理され得る。このような事前処理は、コーティング用組成物(B2a)による、エンボス用ダイの湿潤を含むか、または好ましくは湿潤である。
【0059】
工程(2)
本発明の方法の工程(2)により、塗布したコーティング用組成物(B2a)を少なくとも一部硬化させて、基材(F1)、少なくとも一部がエンボスされておりかつ少なくとも一部が硬化したコーティング(B1)、および少なくとも一部が硬化したコーティング(B2)からなるコンポジット(B2B1F1)を得ることが実現される。コンポジット(B2B1F1)は以下、「転写用基材」とも称される。(F1)がフィルムである場合、コンポジットは、それ対応して、転写フィルムとなる。
【0060】
好ましくは、工程(2)における少なくとも一部の硬化の期間全体を通して、コンポジット(F1B1)に圧力を印加する、または塗布したコーティング用組成物(B2a)をプレスするための、工程(1)に使用される手段は、コーティング用組成物(B2a)および/または形成するコーティング(B2)と接触している。
【0061】
したがって、工程(1)および(2)は、好ましくは、同時に行われる。その場合、とりわけ放射線硬化性コーティング用組成物がコーティング用組成物(B2a)として使用される場合、工程(2)における硬化は、工程(1)の実施の間に、好ましくはその場で行われる。代替的に、およびとりわけ、使用されるコーティング用組成物(B2a)が、熱硬化性および/または化学硬化性コーティング用組成物である場合、工程(1)および(2)は、互いの後に一時的に行われる。
【0062】
したがって、工程(2)を実施するために使用される対応する装置は、硬化性照射によりコーティング用組成物(B2a)に照射するための少なくとも1個の照射線源を好ましくは備える。コーティング用組成物(B2a)は、好ましくはUV硬化性コーティング用組成物であるので、使用される硬化性照射は、好ましくは、UV照射である。コーティング用組成物(B2a)が、放射線硬化性ではない場合、好ましくは化学硬化性である。その場合、工程(2)における硬化は、例えば、好適な熱放射源の使用によって熱的に行われる。同様に、当然ながら、組合せ硬化、すなわち、熱硬化およびUV照射による硬化が可能である。
【0063】
放射線硬化に好適な照射線源の例には、低圧、中圧および高圧水銀放射体、やはりまた蛍光灯、パルス放射体、ハロゲン化金属放射体(ハロゲンランプ)、レーザー、LED、およびさらには電子フラッシュ設備(これは、光開始剤を使用しないで放射線硬化が可能である)、またはエキシマ放射体が含まれる。放射線硬化は、高エネルギー照射、すなわちUV照射または日光への曝露により、または高エネルギー電子による照射によって行われる。UV硬化の場合に架橋させるために通常、十分な放射線量は、80~3000mJ/cmの範囲にある。当然ながら、硬化のために2個以上の照射線源、例えば、2~4個を使用することも可能である。これらの線源は、それぞれ、異なる波長範囲でやはり発光することができる。
【0064】
工程(2)における少なくとも一部の硬化は、基材として使用されるコンポジット(F1B1)による照射によって好ましくは行われる。
【0065】
任意の工程(3)
本発明の方法における任意の工程(3)により、コンポジット(B2B1F1)からコーティング(B2)を除去して、工程(1)において使用したコンポジット(B1F1)の復元をもたらし、コーティング(B2)は、コンポジット(B2B1F1)内のコーティング(B1)に既に面しているその表面に、工程(1)において使用され、この工程で復元されるコンポジット(B1F1)のコーティング(B1)の少なくとも一部がエンボスされた表面の鏡像を有する。
【0066】
コーティング(B2)は、コンポジット(B2B1F1)内のコーティング(B2)からコンポジット(B1F1)を剥離することにより、またはその反対で独立フィルムとして好ましくは得られる。コンポジット(B1F1)は、本方法で復元される。
【0067】
コーティング(B2)は好ましくは、工程(3)において、段階(3a)、(3b)および(3c)により3段階で、具体的には、
(3a) コンポジット(B2B1F1)の表面の少なくとも一部に、コーティング(B2)を有する側で、接着剤(K)を塗布して、コンポジット(KB2B1F1)を得る工程と、
(3b) 段階(3a)の後に得られたコンポジット(KB2B1F1)に、接着剤(K)を有するその表面の少なくとも一部に、基材(F2)を適用するまたはその反対を行い、コンポジット(F2KB2B1F1)を得る工程と、
(3c) コンポジット(F2KB2B1F1)からコンポジット(B1F1)を剥離して、コンポジット(F2KB2)を得る工程であり、このコンポジットのコーティング(B2)が、その表面に、コンポジット(B1F1)のコーティング(B1)の少なくとも一部がエンボスされた表面の鏡像を少なくとも部分的に有する工程と
によって、コンポジット(B2KF2)の形態で、得られる。
【0068】
次に、コーティング(B2)は、段階(3c)の後に得られたコンポジット(F2KB2)から剥離することによって、独立フィルムとして、次に、得ることができる。
【0069】
この場合に使用される接着剤(K)は、ポリアクリレートまたはポリアクリレートをベースとする接着剤などの、好ましくは少なくとも1種の積層用接着剤である。基材(F2)として、基材(F1)に関連して既に上で特定したものと同じ材料を使用することが可能である。したがって、基材(F1)を記載する際に使用される好ましい実施形態はすべて、基材(F2)と類似して有効である。使用される基材(F2)は、好ましくは、金属製基材、より詳細には非平面形状を有する構成成分などの構成成分である。前記構成成分は、その表面の少なくとも1つの表面に少なくとも1つのコーティング層または複数の層のコーティングを有するコーティングされた構成成分であってもよく、これは、コンポジット(KB2B1F1)に塗布されることになる。接着剤(K)として、接着剤が使用されてもよく、これは、それ自体、多層構造の一部である。このような接着剤(K)の例は、中間層としてポリマー層(PS)を有し、これは、次に、その表面のそれぞれの表面に接着剤層(KS)を有する、対応する構造である。接着剤層(KS)は、それぞれ、ポリアクリレートまたはポリアクリレートをベースとする接着剤であってもよい。原理的に、任意のタイプのポリマーを使用して、ポリマー層(PS)を調製することができる。このようなポリマーの例は、ポリ(メタ)アクリレート、ポリエステル(PETおよび/またはPBTなど)、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニル、ポリアミドおよび/またはポリオレフィンである。特に、PETなどのポリエステルを使用することができる。ポリマー層(PS)は、インライナーである。ポリマー層の層厚さは、5~55μm、好ましくは6~50μm、より好ましくは7~40μm、特に8~30μmの範囲にあってもよい。接着剤層(KS)はそれぞれ、最初に、取り扱いがより優れているため、シリコーンペーパーなどの剥離ライナーを有していてもよい。しかし、本発明による方法における接着剤(K)として使用する前に、この剥離ライナーが取り除かれる。
【0070】
コンポジット(F1B1)を生成するための本発明の方法の任意の工程(4)~(7)
本方法の工程(1)に使用されるコンポジット(B1F1)であって、基材(F1)および少なくとも一部がエンボスされておりかつ少なくとも一部が硬化したコーティング(B1)からなるコンポジット(B1F1)は、本発明のこれ以降、一層詳細に指定されている工程(4)~(7)によって好ましくは少なくとも得ることができる。図1は、以下のこの図の記載からやはり明白な通り、本発明の方法の工程(4)~(7)の例示的実例を提示している。
【0071】
工程(4)
本発明の方法の工程(4)により、放射線硬化性コーティング用組成物(B1a)の基材(F1)の表面の少なくとも一部への塗布が実現する。基材(F1)は、そこに塗布される、コーティング用組成物(B1a)またはコーティング(B1)のための担体物質を構成する。基材(F1)は、コーティングされていてもよい。基材(F1)は、好ましくはフィルム、より好ましくはフィルムウェブ、非常に好ましくは連続フィルムウェブである。基材(F1)の好ましい材料は、ポリエステル、より詳細にはPETである。基材(F1)の厚さは、好ましくは、2μm~5mmである。特に、25~1000μm、より詳細には50~300μmの層の厚さが好ましい。
【0072】
工程(4)の実施中(および好ましくは、本方法の工程(5)、(6)および(7)の実施中も同様)、基材(F1)は、好ましくは動かされ、したがって、移動性基材となる。工程(4)の実施中、基材(F1)は、コンベヤベルトなどの輸送デバイスによって好ましくは動かされる。したがって、工程(4)を実施するために使用される対応する装置は、この種の輸送デバイスを好ましくは備える。工程(4)を実施するために使用される対応する装置は、基材(F1)の表面の少なくとも一部に、好ましくは放射線硬化性コーティング用組成物(B1a)を塗布するための手段をさらに備える。
【0073】
工程(5)
本発明の方法の工程(5)により、少なくとも1個のエンボス用ダイ(p1)を有する少なくとも1個のエンボス用器具(P1)によって、基材(F1)の表面に少なくとも一部塗布された、コーティング用組成物(B1a)の少なくとも一部のエンボスがもたらされる。少なくとも一部のエンボスは、エンボス構造を基材(F1)に塗布されたコーティング用組成物(B1a)の表面に少なくとも一部転写する。用語「エンボス」は、上で既に定義されている。したがって、エンボスとは、(B1a)または(B1)に関連すると、コンポジット(F1B1a)の部分として、コーティング用組成物(B1a)にエンボス構造を少なくとも一部設けることを指す。この場合、コーティング用組成物(B1a)の少なくともある領域に、エンボス構造が設けられる。好ましくは、コーティング用組成物(B1a)の領域全体に、コンポジット(F1B1a)の部分として、エンボス構造が設けられる。工程(5)の実施中に、エンボス用器具(P1)は、塗布されたコーティング用組成物(B1a)に好ましくは圧力が印加されるか、または少なくとも一部がプレスされる。
【0074】
工程(5)は、エンボス構造として、マイクロ構造および/またはナノ構造をコーティング用組成物(B1a)に転写する。
【0075】
したがって、工程(5)を実施するために使用される対応する装置は、少なくとも1個のエンボス用器具(P1)によって、基材(F1)の表面に少なくとも一部が塗布されたコーティング用組成物(B1a)を少なくとも一部エンボスするための手段を備える。使用される装置は、放射線硬化性コーティング用組成物(B1a)を(F1)に塗布した後に、好ましくは連続フィルムウェブの形態で使用される、基材(F1)表面にプレスする手段(P1)をさらに備えており、この手段は、基材(F1)の運搬の方向から見て、放射線硬化性コーティング用組成物(B1a)を塗布する手段の好ましくは下流に位置する。
【0076】
本発明の方法の工程(5)による少なくとも一部のエンボスは、エンボス用器具(P1)によって行われる。(P1)は、好ましくは、エンボス用カレンダーであってもよく、これは、グリッド塗布機構部、より好ましくはグリッドロール機構部を好ましくは備える。このカレンダーは、ある間隔で、高さ方向に互いに上に好ましくは配列された、逆方向回転式ロールまたは同方向回転式ロールを有しており、エンボス構造を提供しようとするコンポジット(F1B1a)がロールに供給され、案内されて、形成するロールニップを通り、このニップ幅は、可変的に調節可能である。グリッドロール機構部は、この場合、例えば、鋼製ロール、またはニッケル製ロール(少量のリンが混合されたニッケルから作製されたロールを含む)としての金属製ロール、または他には、石英をベースとするロールもしくは少なくとも1種のプラスチックによりコーティングされているロールとしての第1のロール、および第2のロールを備える。第1のロール(エンボス用ロール)は、ここでは、エンボス用器具(P1)として機能し、コンポジット(F1B1a)の表面にエンボスされ、次に、対応するネガ構造となる、エンボス構造のポジ形態を含む。これは、転じて、本方法の工程(1)において、コーティング用組成物(B2a)に転写されることになるポジ構造に相当する。エンボス用器具(P1)は、エンボス用ダイとして、UVコーティングなどの構造化コーティングをそれ自体、有してもよい。第2のロールは、圧印ロールまたはプレスロールとして働く。エンボスされる構造のネガ形態は、慣用的かつ当業者に公知の方法に準拠し、エンボス用器具(P1)で生成される。構造および材料に応じて、特定の方法が、特に、有利となることがある。本発明によれば、これは、エンボス用器具(P1)として働くエンボス用ロール、およびエンボス用ダイ(p1)を備えることによって、好ましくは実現される。例えば、(B1a)により少なくとも一部がコーティングされているフィルムウェブの形態の、エンボスされるコンポジット(F1B1a)は、加圧ロールによって回転方向と反対に動かされる。互いにある距離で配設されている逆方向回転式ロールによって形成されるロールニップの点において、工程(5)に従いエンボスが行われる。エンボス用ダイ(p1)を有する第1のロールは、この場合、このエンボス用ロールに対向する第2のロールによって案内される、コンポジット(F1B1a)をエンボスするよう働き、第2のロールは、第1のエンボス用ロールに対して、エンボス構造を提供しようとするコンポジット(F1B1a)をプレスする。必要に応じて、工程(5)は、例えば、30~100℃、または最大で80℃として高温で行われてもよい。この場合、エンボスするためのコンポジット(F1B1a)を加熱ロール機構部にまず通し、次いで、上記の実際のエンボス手順の前に、任意に赤外光の照射が行われる。エンボス後に、コンポジット(F1B1a)は、次にエンボスされるが、冷却するために、冷却ロール機構部に任意に通される。代替的に、工程(5)はまた、冷却と共に行われてもよい。この場合、エンボスするためのコンポジット(F1B1a)は、上記の実際のエンボス手順が行われる前に、まず冷却ロール機構部に通す。使用されるエンボス用器具(P1)はまた、従来の加圧シリンダーであってもよく、これは、コンポジット(F1B1a)の表面にエンボスされることになるエンボス構造のネガ形態を有する。このシリンダーは、少なくとも一部をエンボスするため、コンポジット(F1B1a)にプレスされ得る。
【0077】
工程(5)による少なくとも一部のエンボスのために使用されるエンボス用器具(P1)の少なくとも1個のエンボス用ダイ(p1)は、「ポジ構造」(「ポジ形態」)を有しており、すなわち、それは、本発明の方法の工程(3)の実施後に得られるコーティング(B2)によって示されるエンボス構造を有する。エンボス用器具(P1)は、好ましくは、金属製エンボス用器具であり、より好ましくはニッケルから作製されている。したがって、エンボス用ダイ(p1)は、好ましくは金属製であり、より好ましくはニッケルから作製されており、より詳細には、リンを少量含有するニッケルから作製されている。さらに、少なくとも1種のプラスチックによりコーティングされているロールが使用されてもよい。しかし、代替的に、例えば、ポリジメチルシロキサン(PDMS)などの柔らかい物質もまた、生成(p1)に使用されてもよい。(F1)に塗布されたコーティング用組成物(B1a)は、工程(5)が実施された後、マイクロ構造および/またはナノ構造などの、転写されることになるエンボス構造のネガ形態を示す。
【0078】
使用されるエンボス用器具のエンボス用ダイは、使用されるコーティング用組成物(B1a)を用いて工程(5)を行う前に、任意に事前処理され得る。このような事前処理は、コーティング用組成物(B1a)を用いるエンボス用ダイの湿潤を含むか、または好ましくはその湿潤である。
【0079】
工程(6)
本発明の方法の工程(6)により、基材(F1)の表面の少なくとも一部に塗布されておりかつ少なくとも一部がエンボスされているコーティング用組成物(B1a)を少なくとも一部硬化して、基材(F1)、および少なくとも一部がエンボスされておりかつ少なくとも一部が硬化したコーティング(B1)からなるコンポジット(F1B1)を得ることが実現する。硬化期間の全体を通じて、コーティング用組成物(B1a)は、少なくとも1個のエンボス用器具(P1)の少なくとも1個のエンボス用ダイ(p1)に接触している。
【0080】
工程(5)および(6)は、好ましくは、同時に行われる。その場合、工程(6)による硬化は、工程(5)の実施中に、好ましくはその場で行われる。
【0081】
したがって、工程(6)を実施するために使用される対応する装置は、硬化性照射、好ましくはUV照射を放射線硬化性コーティング用組成物(B1a)に照射するための少なくとも1個の照射線源を好ましくは備える。
【0082】
放射線硬化に好適な照射線源の例には、低圧、中圧および高圧水銀放射体、やはりまた蛍光灯、パルス放射体、ハロゲン化金属放射体(ハロゲンランプ)、レーザー、LED、およびさらには電子フラッシュ設備(これは、光開始剤を使用しないで放射線硬化が可能となる)、またはエキシマ放射体が含まれる。放射線硬化は、高エネルギー放射線、すなわちUV照射または日光への曝露により、または高エネルギー電子による照射によって行われる。UV硬化の場合に架橋させるために通常、十分な放射線量は、80~3000mJ/cmの範囲にある。当然ながら、硬化のために2個以上の照射線源、例えば、2~4個を使用することも可能である。これらの線源は、それぞれ、異なる波長範囲でやはり発光することができる。
【0083】
工程(6)における硬化は、基材(F1)を通過する照射によって好ましくは行われる。その場合、基材(F1)の透過性は、使用される放射線に対する、使用される少なくとも1種の光開始剤の透過性と調和するのが有利である。したがって、例えば、基材(F1)としてのPET材料、故に例えばPETフィルムが、300nm未満の波長を有する放射線に透過性である。このような照射を用いてラジカルを生成する光開始剤は、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、エチル2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネートおよびビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシドを含む。
【0084】
工程(7)
本発明の方法の工程(7)により、エンボス用器具(P1)からコンポジット(F1B1)の除去がもたらされ、そうして、所望の生成物、すなわち、基材(F1)および少なくとも一部がエンボスされておりかつ少なくとも一部が硬化したコーティング(B1)からなるコンポジット(F1B1)を生成する。
【0085】
図1は、コンポジット(F1B1)を生成するための、すなわちマスターフィルムを生成するための本発明の方法の工程(4)~(7)を実施するために使用され得る装置であって、工程(4)~(7)に関連する本発明の方法の例示的実例に使用される、装置の側面図を概略的に示している。この装置によって、エンボス用器具(P1)によって、マイクロ構造および/またはナノ構造などの構造を(B1a)によりコーティングされている基材(F1)に転写すること、および硬化後、コンポジット(F1B1)(図1では、マスターフィルムウェブ(8)と称される)を生成することが可能であり、これは、マスターフィルムとして使用することができる。
【0086】
図1に示されているマスター転写装置(30)は、転写原理に従い操作され、所望のネガ構造は、ここでは、マスタープレスシリンダー(17)である構造化プレスシリンダーまたはプレスロールから、コンポジット(F1B1a)に対応するマスターフィルムウェブ(8b)に塗布された、まだ硬化していないコーティング層に直接、エンボスされ、このコーティング層は、次に、その上に塗布された構造と共に少なくとも一部が硬化され、硬化は、発光ユニット(3)によりその場で行われて、コンポジット(F1B1)に対応するマスターフィルムウェブ(8)が得られる。この方法では、基材(F1)として使用されるフィルムウェブ(8a)は、担体物質、言い換えると、塗布したマスターコーティングのない純粋なフィルムしか含んでいないフィルムウェブローラー(18)から引き出され、様々な偏向ローラーシステムおよびウェブテンションシステムにより案内されて、装置のエンボス領域(1)に導入される。そこで、フィルムウェブ(8a)は、加圧ロール(4)とマスタープレスシリンダー(17)との間の領域に入り、プレス領域の外側で、まだ硬化していないマスターコーティング層(コーティング用組成物B1aに対応する)と共に、コーティング塗布デバイス(27)に供給される。コーティングのこのような塗布は、本発明の方法の工程(4)に相当する。まだ硬化していないマスターコーティング層と一緒にマスターフィルムウェブ(8b)が、マスタープレスシリンダー(17)の外側表面の区域に沿って動くエンボス領域(1)では、マスタープレスシリンダー(17)の外側表面にエンボスされたマイクロ構造および/またはナノ構造が、ネガ画像として、マスターフィルムウェブ(8b)のマスターコーティング層に導入されて転写される。これは、本発明の方法の工程(5)に相当する。次に、未硬化のコーティング用組成物(B1a)を含むマスターフィルムウェブ(8b)は、本発明の方法の工程(6)に従って硬化される。硬化は、ここで、例えば、UV-LEDから形成されるユニットによるものとして、UV照射によって、発光ユニット(3)による照射によってその場で少なくとも一部が行われる。結果として生じるマスターフィルム(8)、言い換えると、コンポジット(F1B1)は、次いで、本発明の方法の工程(7)に準拠して、マスタープレスシリンダー(17)の外側表面から採取され、こうして完成したマスターフィルムウェブ(8)が、フィルムウェブローラー(19)に巻き取られる。次に、フィルムウェブローラー(19)は、その上に塗布されたマスターコーティング層、ならびにその中にエンボスされたマイクロ構造および/またはナノ構造のネガ画像と共に完成したマスターフィルムウェブ(8)を含む。このフィルムウェブローラー(19)は取り除かれて、次に、本発明の方法の工程(1)~(3)を実施するための装置に使用することができる。
【0087】
本発明により使用されるコーティング用組成物(B1a)および(B2a)
コーティング用組成物(B1a)
コーティング用組成物(B1a)は、放射線硬化性コーティング用組成物である。用語「放射線硬化性(radiation-curable)」および「放射線硬化性(radiation curing)」は、ここでは、相互交換可能である。用語「放射線硬化性」とは、電磁波照射および/または微粒子照射による重合性化合物のラジカル重合を好ましくは指し、例は、λ=400超~1200nm、好ましくは700~900nmの波長範囲の(N)IR光、ならびに/またはλ=100~400nm、好ましくはλ=200~400nm、より好ましくはλ=250~400nmの波長範囲のUV光、ならびに/または150~300keVの範囲およびより好ましくは、少なくとも80、好ましくは80~3000mJ/cmの放射線量の電子線照射である。放射線硬化は、特に好ましくは、UV照射を使用して行われる。コーティング用組成物(B1a)は、好適な照射線源の使用により硬化されてもよい。したがって、(B1a)は、好ましくはUV照射硬化性コーティング用組成物である。
【0088】
コーティング用組成物(B1a)は、各場合において、コーティング用組成物(B1a)の総質量に対して、
40~95質量%の範囲、好ましくは45質量%以上~90質量%の範囲、より好ましくは55~85質量%などの50質量%超の範囲、非常に好ましくは55または60~80質量%の範囲の量の少なくとも1種の構成成分(a)と、
0.01~5質量%の範囲、好ましくは0.05~4.5質量%の範囲、より好ましくは0.1~4質量%の範囲、非常に好ましくは0.2または0.5~3質量%の範囲の量の構成成分(b)としての少なくとも1種の添加剤と、
0.01~15質量%の範囲、好ましくは0.1~12質量%の範囲、より好ましくは0.5~10質量%の範囲の量の構成成分(c)としての少なくとも1種の光開始剤と、
0~45質量%の範囲、好ましくは0~40質量%の範囲、より好ましくは0~35質量%の範囲、非常に好ましくは0~30質量%の範囲の量の、少なくとも1個の炭素二重結合を有する、少なくとも1種の構成成分(d)と
を含む。
【0089】
したがって、本発明により使用されるコーティング用組成物(B1a)における構成成分(d)の存在は、それぞれ上で示されている下限値が0質量%であることから明白な通り、単に任意のものに過ぎない。好ましくは、コーティング用組成物(B1a)は、コーティング用組成物(B1a)の総質量に対して、最大で30質量%の量で構成成分(d)を含む。
【0090】
構成成分(a)、(b)、(c)および(d)は、それぞれ、互いに異なる。構成成分(a)、(b)、(c)および(d)の明記した量は、各場合において、コーティング用組成物(B1a)の総質量に対するものである。コーティング用組成物(B1a)中に存在する構成成分すべての量、すなわち構成成分(a)、(b)および(c)ならびに任意に(d)、ならびにまた、(B1a)に任意に存在するさらなる構成成分の量は、合計100質量%である。
【0091】
構成成分(a)は、各場合において互いに異なるまたは少なくとも一部が同一の、式(I)
【化3】
(式中、
基Rは、各場合において互いに独立して、C~Cアルキレン基であり、
基Rは、各場合において互いに独立して、Hまたはメチルであり、
パラメーターmは、それぞれ互いに独立して、1~15の範囲、好ましくは1~10の範囲、より好ましくは1~8または2~8の範囲、非常に好ましくは1~6または2~6の範囲、より詳細には1~4または2~4の範囲の整数パラメーターであるが、ただし、式(I)の構造単位の少なくとも1個において、パラメーターmは、少なくとも2、好ましくは少なくとも3であることを)
の少なくとも3個の構造単位を有する。
【0092】
構成成分(a)は、好ましくは、式(I)と同一の少なくとも3個の構造単位を有する。
【0093】
記号
【化4】
は、ここでは、構成成分(a)である上位構造に対する個々のラジカルの結合を表し、言い換えると、例えば、構成成分(a)の上位構造に対する式(I)の構造単位内の基-[O-R-O-C(=O)-C(R)=CHの結合を表す。この結合は、構造-[O-R-の酸素原子の、上位ラジカルの炭素原子への連結を介して好ましくは起こる。同様の注釈は、式(I)の他の構造単位に関して該当する。式(I)の少なくとも3個の構造単位のすべてが、単一構成成分、すなわち構成成分(a)内で組み合わされるのが明白である。
【0094】
構成成分(a)は、好ましくは、式(I)である構造単位を正確に3個有する。その場合、構成成分(a)は、正確に3個の官能性(メタ)アクリル基を有する。代替的に、式(I)の構造単位はまた、それぞれ、構成成分(a)の部分として、3回を超えて存在してもよい。その場合、例えば構成成分(a)は、例えば4個、5個または6個の(メタ)アクリル基として、3個を超える官能性(メタ)アクリル基を有してもよい。
【0095】
上述の基Rは、互いにそれぞれ独立して、C~Cアルキレン基、好ましくはC~Cアルキレン基、より好ましくはC~Cアルキレン基、非常に好ましくは、互いにそれぞれ独立して、エチレン基および/またはプロピレン基、とりわけ好ましくはエチレンである。特に、基Rはすべて、エチレンである。プロピレン基として好適なものは、各場合において、基Rであり、これは、構造-CH-CH-CH-または構造-CH(CH)-CH-または構造-CH-CH(CH)-を有する。しかし、特に、好ましいのは、各場合において、プロピレン構造-CH-CH-CH-である。
【0096】
パラメーターmは、各場合において互いに独立して、1~15の範囲の整数である。構成成分(a)は、少なくとも3個の式(I)である構造単位を有するので、およびパラメーターmは、式(I)である構造単位の少なくとも1個において、少なくとも2となるので、構成成分(a)は、合計で一般式「-O-R-」であるエーテル基を少なくとも4個含む。
【0097】
好ましくは、構成成分(a)の合計は、一般式「-O-R-」であるエーテル基を少なくとも5個、より好ましくは少なくとも6個、有する。構成成分(a)内の一般式「-O-R-」のエーテル基の数は、好ましくは4~18の範囲、より好ましくは5~15の範囲、非常に好ましくは6~12の範囲で位置する。
【0098】
構成成分(a)の式(I)の構造単位中に存在するエーテルセグメント-[O-Rの割合は、各場合において、構成成分(a)の総質量に対して、合計で、好ましくは少なくとも35質量%、より好ましくは少なくとも38質量%、非常に好ましくは少なくとも40質量%、さらにより好ましくは少なくとも42質量%、より詳細には少なくとも45質量%である。
【0099】
構成成分(a)は、好ましくは、300~2000g/mol、より好ましくは350~1500g/mol、より詳細には400~1000g/molの範囲の分子量(M)を有する。
【0100】
特に、構成成分(a)として使用するのに好ましいものは、一般式(IVa)および/または(IVb)のうちの少なくとも1つの化合物
【化5】
(式中、各場合において互いに独立して、
およびR、やはりまたmは、上で明記されているその好ましい実施形態を含めた、構造単位(I)に関連して、上で示されている定義を有し、
は、H、C~Cアルキル、OHまたはO-C1~8アルキルであり、より好ましくは、C~Cアルキル、OHまたはO-C1~4アルキルであり、非常に好ましくは、C~CアルキルもしくはOHであるか、または
は、基-[O-R-O-C(=O)-C(R)=CHであり、R、Rおよびmは、上で明記されているその好ましい実施形態を含めた、構造単位(I)に関連して、上で明記されている定義を有する)
である。
【0101】
一般式(IVa)である少なくとも1つの化合物の構成成分(a)として使用することが非常に特に好ましく、式中、
基Rは、それぞれ互いに独立して、C~Cアルキレン基であり、
基Rは、それぞれ互いに独立して、Hまたはメチルであり、
パラメーターmは、各場合において互いに独立して、1~15の範囲、好ましくは1~10の範囲、より好ましくは1~8または2~8の範囲、非常に好ましくは1~6または2~6の範囲、より詳細には1~4または2~4の範囲の整数パラメーターであるが、ただし、式(I)である構造単位の少なくとも1個、および好ましくはすべてにおいて、パラメーターmは、少なくとも2である。
【0102】
は、C~Cアルキル、OHまたはO-C1~8アルキル、より好ましくは、C~Cアルキル、OHまたはO-C1~4アルキル、非常に好ましくは、C~CアルキルまたはOHである。
【0103】
構成成分(a)として使用するのにとりわけ好ましいものは、エトキシ化、プロポキシ化またはエトキシ化とプロポキシ化との混じりなどの合計で4倍~20倍のアルコキシ化または4倍~12倍のアルコキシ化がされているネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンまたはペンタエリスリトールの(メタ)アクリレート、より詳細には、もっぱらエトキシ化、ネオペンチルグリコール、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタンまたはペンタエリスリトールである。最も好ましいものは、それに応じたアルコキシ化トリメチロールプロパンに由来する、対応する(メタ)アクリレートである。これらの種類の製品は、市販されており、例えば、Sartomer(登録商標)SR499およびSartomer(登録商標)SR502、やはりまたSartomer(登録商標)SR415およびSartomer(登録商標)SR9035、やはりまたSartomer(登録商標)SR501という名称で販売されている。本発明の意味では、用語「(メタ)アクリル」または「(メタ)アクリレート」は、それぞれ、メタアクリルだけではなく、アクリルも包含し、メタアクリレートだけではなくアクリレートも包含する。
【0104】
任意の構成成分(d)に加えて、コーティング用組成物(B1a)は、(メタ)アクリル基などのエチレン性不飽和基をちょうど1つだけ、またはちょうど2つだけしか有していない構成成分を好ましくは含有しない。したがって、(B1a)は、構成成分(d)を有していない場合、(B1a)は、(メタ)アクリル基などのエチレン性不飽和基を正確に1つだけ、または正確に2つだけしか有していない構成成分を好ましくは含有しない。
【0105】
構成成分(b)は、添加剤である。添加剤の概念は、例えば、Roempp Lexikon、「Lacke und Druckfarben」、Thieme Verlag、1998年、13頁から、当業者に公知である。使用される好ましい構成成分(b)は、少なくとも1つのレオロジー添加剤である。この用語は同様に、例えば、Roempp Lexikon、「Lacke und Druckfarben」、Thieme Verlag、1998年、497頁から、当業者に公知である。用語「レオロジー添加剤(rheology additive)」、「レオロジー添加剤(rheological additive)」および「レオロジー助剤」は、ここでは、相互交換可能である。構成成分(b)として使用される添加剤は、流動制御剤、界面活性剤などの表面活性剤、湿潤剤および分散剤、さらにまた増粘剤、チキソトロープ剤、可塑剤、潤滑および粘着防止添加剤、ならびにそれらの混合物からなる群から好ましくは選択される。これらの用語は同様に、例えば、Roempp Lexikon、「Lacke und Druckfarben」、Thieme Verlag、1998年から、当業者に公知である。流動制御剤は、粘度および/または表面張力を低下させることにより、コーティング用組成物が、均一に流れ出すフィルムを形成する一助となる構成成分である。湿潤剤および分散剤は、表面張力、または一般に界面張力を低下させる構成成分である。潤滑および粘着防止添加剤は、相互の他着(粘着)を低減する構成成分である。
【0106】
市販の添加剤の例は、Efka(登録商標)SL3259、Byk(登録商標)377、Tego(登録商標)Rad2500、Tego(登録商標)Rad2800、Byk(登録商標)394、Byk-SILCLEAN3710、Silixan(登録商標)A250、Novec FC4430およびNovec FC 4432という製品である。
【0107】
添加剤(b)として使用するのに好ましいものは、少なくとも1種のポリ(メタ)アクリレート、ならびに/または少なくとも1種のオリゴシロキサンおよび/もしくはポリシロキサンなどの少なくとも1種のシロキサン、フッ素含有のポリエステル、好ましくは脂肪族ポリエステルなどの少なくとも1種のフッ素含有ポリマーである。特に、構成成分(b)として好ましいものは、シロキサンである。使用にとりわけ好ましいものは、シリコーン(メタ)アクリレートである。
【0108】
(N)IRおよび/またはUV光による硬化の場合、コーティング用組成物(B1a)は、構成成分(c)として少なくとも1種の光開始剤を含む。この光開始剤は、照射波長の光によって、ラジカルに分解することができ、次に、ラジカル重合を開始することが可能となる。電子線照射による硬化の場合、反対に、このような光開始剤の存在を必要としない。コーティング用組成物(B1a)は、構成成分(c)として、照射波長の光によって、ラジカルに分解することができ、次に、ラジカル重合を開始することが可能となる、少なくとも1種の光開始剤を好ましくは含む。
【0109】
UV光開始剤などの光開始剤は、当業者に公知である。企図されているものの例には、ホスフィンオキシド、ベンゾフェノン、α-ヒドロキシアルキルアリールケトン、チオキサントン、アントラキノン、アセトフェノン、ベンゾインおよびベンゾインエーテル、ケタール、イミダゾールまたはフェニルグリオキシル酸、ならびにそれらの混合物が含まれる。
【0110】
ホスフィンオキシドは、例えば、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、エチル2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネートまたはビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシドとしての、例えばモノアシルホスフィンオキシドまたはビスアシルホスフィンオキシドである。ベンゾフェノン系は、例えば、ベンゾフェノン、4-アミノベンゾフェノン、4,4’-ビス(ジメチルアミノ)ベンゾフェノン、4-フェニルベンゾフェノン、4-クロロベンゾフェノン、Michler’sケトン、o-メトキシベンゾフェノン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、4-メチルベンゾフェノン、2,4-ジメチルベンゾフェノン、4-イソプロピルベンゾフェノン、2-クロロベンゾフェノン、2,2’-ジクロロベンゾフェノン、4-メトキシベンゾフェノン、4-プロポキシベンゾフェノンまたは4-ブトキシベンゾフェノンである。α-ヒドロキシアルキルアリールケトン系は、例えば、1-ベンゾイルシクロヘキサン-1-オール(1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)、2-ヒドロキシ-2,2-ジメチルアセトフェノン(2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン)、1-ヒドロキシアセトフェノン、1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-ヒドロキシ-2-メチル-1-プロパン-1-オン、または共重合形態の、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-(4-イソプロペン-2-イルフェニル)プロパン-1-オンを含有するポリマーである。キサントン系およびチオキサントン系は、例えば、10-チオキサチエノン、チオキサンテン-9-オン、キサンテン-9-オン、2,4-ジメチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、2,4-ジイソプロピルチオキサントン、2,4-ジクロロチオキサントンまたはクロロキサンテノンである。アントラキノン系は、例えば、β-メチルアントラキノン、tert-ブチルアントラキノン、アントラキノンカルボン酸エステル、ベンズ[de]アントラセン-7-オン、ベンズ[a]アントラセン-7,12-ジオン、2-メチルアントラキノン、2-エチルアントラキノン、2-tert-ブチルアントラキノン、1-クロロアントラキノンまたは2-アミルアントラキノンである。アセトフェノン系は、例えば、アセトフェノン、アセトナフトキノン、バレロフェノン、ヘキサノフェノン、α-フェニルブチロフェノン、p-モルホリノプロピオフェノン、ジベンゾスベロン、4-モルホリノベンゾフェノン、p-ジアセチルベンゼン、4’-メトキシアセトフェノン、α-テトラロン、9-アセチルフェナントレン、2-アセチルフェナントレン、3-アセチルフェナントレン、3-アセチルインドール、9-フルオレノン、1-インダノン、1,3,4-トリアセチルベンゼン、1-アセトナフトン、2-アセトナフトン、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、2,2-ジエトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1,1-ジクロロアセトフェノン、1-ヒドロキシアセトフェノン、2,2-ジエトキシアセトフェノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン、2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-2-オンまたは2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オンである。ベンゾイン系およびベンゾインエーテル系は、例えば、4-モルホリノデオキシベンゾイン、ベンゾイン、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインテトラヒドロピラニルエーテル、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテルまたは7H-ベンゾインメチルエーテルである。ケタール系は、例えば、アセトフェノンジメチルケタール、2,2-ジエトキシアセトフェノン、またはベンジル(benzil)ジメチルケタールなどのベンジルケタール系である。同様に使用することができる光開始剤は、例えば、ベンズアルデヒド、メチルエチルケトン、1-ナフトアルデヒド、トリフェニルホスフィン、トリ-o-トリルホスフィンまたは2,3-ブタンジオンである。典型的な混合物は、例えば、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-2-オンと1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、ベンゾフェノンと1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシドと1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドと2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン、2,4,6-トリメチルベンゾフェノンと4-メチルベンゾフェノンまたは2,4,6-トリメチルベンゾフェノン、ならびに4-メチルベンゾフェノンと2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシドを含む。
【0111】
これらの光開始剤の中で好ましいものは、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド、エチル2,4,6-トリメチルベンゾイルフェニルホスフィネート、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)フェニルホスフィンオキシド、ベンゾフェノン、1-ベンゾイルシクロヘキサン-1-オール、2-ヒドロキシ-2,2-ジメチルアセトフェノンおよび2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノンである。したがって、好ましくは、少なくとも1種のこのような光開始剤が、構成成分(c)として使用される。構成成分(c)は、構成成分(a)、(b)および(d)とは異なる。市販の光開始剤は、例えば、BASF SE製のIrgacure(登録商標)184、Irgacure(登録商標)500、Irgacure(登録商標)TPO、Irgacure(登録商標)TPO-LおよびLucirin(登録商標)TPO、やはりまたDarocure(登録商標)1173という製品である。
【0112】
上記の通り、少なくとも1種の構成成分(d)の使用は、任意のものに過ぎない。構成成分(d)は、少なくとも1個の、好ましくは末端炭素二重結合を有する。これは、好ましくは、(メタ)アクリル基である。構成成分(d)は、例えば、1個、または2個、または3個、または他にはそれより多い(メタ)アクリル基などの、1個または2個のエチレン性不飽和基を好ましくは有する。2種以上の異なる構成成分(d)を使用することもやはり可能である。
【0113】
構成成分(d)の例は、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5-ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8-オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,1-、1,2-、1,3-および1,4-シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、1,2-、1,3-または1,4-シクロヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタまたはヘキサ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリまたはテトラ(メタ)アクリレート、グリセリルジまたはトリ(メタ)アクリレート、やはりまた例えばソルビトール、マンニトール、ジグリセロール、トレイトール、エリスリトール、アドニトール(リビトール)、アラビトール(リキシトール)、キシリトール、ズルシトール(ガラクチトール)、マルチトールまたはイソマルトなどの糖アルコールのジおよびポリ(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、エチルジグリコール(メタ)アクリレート、4-tert-ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンホルマールモノ(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、2-(2-エトキシエトキシ)エチル(メタ)アクリレートやはりまたラウリル、ステアリル、イソデシル、オクチルおよびデシル(メタ)アクリレート、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸、好ましくは(メタ)アクリル酸と1~20個の炭素原子を有するアルコールと、好ましくは任意に、1~20個の炭素原子を有するヒドロキシ置換アルカノールとのエステル、例えば、メチル(メタ)アクリル酸エステル、エチル(メタ)アクリル酸エステル、n-ブチル(メタ)アクリル酸エステル、2-エチルヘキシル(メタ)アクリル酸エステル、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートまたは4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどの一、二および/または三官能性(メタ)アクリルエステルである。
【0114】
とりわけ好ましい構成成分(d)は、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレートおよび1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、やはりまたトリシクロデカンジメタノールジ(メタ)アクリレートである。
【0115】
構成成分(d)として、さらにまたは代替的に、少なくとも1種のポリエステル、ポリエーテル、カーボネート、エポキシド、ポリ(メタ)アクリレート、および/またはウレタン(メタ)アクリレート、および/または不飽和ポリエステル樹脂を使用することもやはり可能である。
【0116】
ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、ポリイソシアネートと、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートおよび任意にジオール、ポリオール、ジアミン、ポリアミンまたはジチオールまたはポリチオールなどの鎖延長剤との反応によって得ることができる。乳化剤を添加しない水中で分散性のウレタン(メタ)アクリレートは、イオン性および/または非イオン性親水性基をさらに含み、例えば、これらは、ヒドロキシカルボン酸などの合成構成成分によりウレタンに導入される。このようなウレタン(メタ)アクリレートは、合成構成成分として以下:
(a) 例えば、2種の構成成分のコーティング材料に関連して上で記載したポリイソシアネートのうちの少なくとも1種としての、少なくとも1種の有機脂肪族、芳香族もしくは脂環式ジまたはポリイソシアネートと、
(b) ポリアクリレートポリオールおよび少なくとも1種のラジカル重合性不飽和基に関連して、上で記載した、少なくとも1個のイソシアネート反応性基を有する少なくとも1種の化合物、好ましくはヒドロキシルを有するモノマーの1種と、
(c) 任意に、ポリエステロールに関連して、上で記載されている、例えば多価アルコールのうちの1種として、少なくとも2個のイソシアネート反応性基を有する少なくとも1種の化合物と
を本質的に含む。
【0117】
ウレタン(メタ)アクリレートは、200~20000、より詳細には500~10000、非常に好ましくは600~3000g/mol(テトラヒドロフランおよび標準品としてポリスチレンを使用するゲル浸透クロマトグラフィーによって決定)の数平均モル質量Mを好ましくは有する。ウレタン(メタ)アクリレートは、1000gのウレタン(メタ)アクリレートあたり、好ましくは1~5、より好ましくは2~4molの(メタ)アクリル基を含有する。
【0118】
エポキシド(メタ)アクリレートは、エポキシドと(メタ)アクリル酸との反応によって得ることができる。企図されるエポキシドの例には、エポキシ化オレフィン、芳香族グリシジルエーテルまたは脂肪族グリシジルエーテル、好ましくは芳香族または脂肪族グリシジルエーテルのものが含まれる。可能なエポキシド化オレフィンの例には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、イソブチレンオキシド、1-ブテンオキシド、2-ブテンオキシド、ビニルオキシラン、スチレンオキシドまたはエピクロロヒドリンが含まれる。エチレンオキシド、プロピレンオキシド、イソブチレンオキシド、ビニルオキシラン、スチレンオキシドまたはエピクロロヒドリンが好ましく、エチレンオキシド、プロピレンオキシドまたはエピクロロヒドリンが、特に好ましく、エチレンオキシドおよびエピクロロヒドリンがとりわけ好ましい。芳香族グリシジルエーテルは、例えば、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールBジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ヒドロキノンジグリシジルエーテル、フェノール/ジシクロペンタジエンのアルキル化生成物、例えば、2,5-ビス[(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]オクタヒドロ-4,7-メタノ-5H-インデン、トリス[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]メタン異性体、フェノールをベースとするエポキシノボラックおよびクレゾールをベースとするエポキシノボラックである。脂肪族グリシジルエーテルは、例えば、1,4-ブタンジオールジグリシジルエーテル、1,6-ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールテトラグリシジルエーテル、1,1,2,2-テトラキス[4-(2,3-エポキシプロポキシ)フェニル]エタン、ポリプロピレングリコールのジグリシジルエーテル(α,ω-ビス(2,3-エポキシプロポキシ)ポリ(オキシプロピレン))(および水素化ビスフェノールAのジグリシジルエーテル(2,2-ビス[4-(2,3-エポキシプロポキシ)シクロヘキシル]プロパン))である。エポキシド(メタ)アクリレートは、200~20000、より好ましくは200~10000g/mol、非常に好ましくは250~3000g/molの数平均モル質量Mを好ましくは有する。(メタ)アクリル基の量は、1000gのエポキシド(メタ)アクリレートあたり、好ましくは1~5個、より好ましくは2~4個である(標準品としてポリスチレンおよび溶離液としてテトラヒドロフランを使用するゲル浸透クロマトグラフィーによって決定)。
【0119】
(メタ)アクリレート化したポリ(メタ)アクリレートは、α,β-エチレン性不飽和カルボン酸、好ましくは(メタ)アクリル酸、より好ましくはアクリル酸のポリアクリレートポリオール(ポリ(メタ)アクリレートポリオールを(メタ)アクリル酸でエステル化することにより得ることができる)との対応するエステルである。ポリアクリレートポリオールは、例えば、二構成成分のコーティング材料に関連して上で記載したものであってもよい。
【0120】
様々な官能基を有するカーボネート(メタ)アクリレートが入手可能である。カーボネート(メタ)アクリレートの数平均分子量Mは、好ましくは、3000g/mol未満、より好ましくは1500g/mol未満、非常に好ましくは800g/mol未満である(標準品としてポリスチレンおよびテトラヒドロフラン溶媒を使用するゲル浸透クロマトグラフィーによって決定)。カーボネート(メタ)アクリレートは、例えば、EP0092269A1に記載されている通り、炭酸エステルと多価アルコール、好ましくは二価アルコール(ジオール、例えばヘキサンジオール)とのエステル交換、およびその後に遊離OH基を(メタ)アクリル酸でエステル化する、または他には(メタ)アクリルエステルとのエステル交換による単純な方法で得ることができる。それらは、例えば、ホスゲン、ウレア誘導体と多価アルコール、二価アルコールとの反応によって得ることもできる。同様に、明記したジオールまたはポリオールの1種と炭酸エステルとやはりまたヒドロキシル含有(メタ)アクリレートとの反応生成物などの、ポリカーボネートポリオールの(メタ)アクリレートが考えられる。好適な炭酸エステルの例は、エチレン、1,2-または1,3-プロピレンカーボネート、ジメチル、ジエチルまたはジブチルカーボネートである。好適なヒドロキシル含有(メタ)アクリレートの例は、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-または3-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールモノ(メタ)アクリレート、グリセリルモノおよびジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンモノおよびジ(メタ)アクリレート、やはりまたペンタエリスリトールモノ、ジおよびトリ(メタ)アクリレートである。好ましくは、カーボネート(メタ)アクリレートは、脂肪族カーボネート(メタ)アクリレートである。
【0121】
不飽和ポリエステル樹脂は、以下の構成成分:
(a1) マレイン酸またはその誘導体と、
(a2) 少なくとも1種の環式ジカルボン酸またはその誘導体と、
(a3) 少なくとも1つ種脂肪族または脂環式ジオールと
から好ましくは合成される。
【0122】
誘導体は、ここでは、好ましくは、
- モノマー形態または他にはポリマー形態の適切な無水物、
- モノアルキルまたはジアルキルエステル、好ましくはモノもしくはジ-C~Cアルキルエステル、より好ましくはモノメチルもしくはジメチルエステル、または対応するモノエチルもしくはジエチルエステル
- さらに、モノビニルおよびジビニルエステル、ならびにまたは
- 混合型エステル、好ましくは異なるC~Cアルキル構成成分を有する混合型エステル、より好ましくは混合型メチルエチルエステル
を指す。
【0123】
(B1a)が、構成成分(d)を含む場合、その構成成分は、好ましくは少なくとも1種のウレタン(メタ)アクリレートである。
【0124】
コーティング用組成物(B1a)は、例えば、充填剤、顔料、例えば、ペルオキソ二硫酸カリウム、ジベンゾイルペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、アゾビスイソブチロニトリル、シクロヘキシルスルホニルアセチルペルオキシド、ジイソプロピル過カーボネート、tert-ブチルペルオクトエートまたはベンゾピナコール、クメンヒドロペルオキシド、ジクミルペルオキシド、tert-ブチルペルベンゾエート、シリル化ピナコールなどの熱活性開始剤、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシルおよび4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシルなどのヒドロキシル含有アミンN-オキシド、および有機溶媒、やはりまた安定化剤などの、構成成分(a)~(d)とは異なる、少なくとも1種のさらなる構成成分(e)を含んでもよい。しかし、好ましくは、(B1a)中に、有機溶媒は含まれない。構成成分(e)は、各場合において、コーティング用組成物(B1a)の総質量に対して、(B1a)中に0~15質量%の範囲、好ましくは0~12質量%の範囲、より好ましくは0~10質量%の範囲の量で存在してもよい。
【0125】
コーティング用組成物(B1a)の固体含有量は、各場合において、コーティング用組成物(B1a)の総質量に対して、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、非常に好ましくは95質量%以上、より詳細には98以上または99質量%以上、最も好ましくは100質量%である。固体含有量は、ここでは、以下に記載されている方法によって決定する。
【0126】
コーティング用組成物(B1a)は、好ましくはチオールを含まず、とりわけトリメチロールプロパントリス(3-メルカプトプロピオネート)を含まない。
【0127】
(B1a)から得られる少なくとも一部が硬化したコーティング(B1)の二重結合の転化率は、好ましくは少なくとも70%、より好ましくは少なくとも75%、さらにより好ましくは少なくとも80%、非常に好ましくは少なくとも85%、より詳細には少なくとも90%である。
【0128】
コーティング用組成物(B2a)
任意の種類のコーティング用組成物が、本発明の方法の工程(1)におけるコーティング用組成物(B2a)として使用されてもよい。コーティング用組成物(B2a)は、物理的に乾燥性の、熱硬化性、化学硬化性および/または放射線硬化性なコーティング用組成物(B2a)であってもよい。好ましくは、コーティング用組成物(B2a)は、化学硬化性、熱硬化性および/または放射線硬化性コーティング用組成物、より好ましくは放射線硬化性コーティング用組成物である。したがって、工程(3)による少なくとも一部の硬化は、放射線硬化によって好ましくは行われる。コーティング用組成物(B2a)は、コーティング用組成物(B1a)と同じであってもよい。しかし、好ましくは、(B2a)は、(B1a)とは異なる。(B2a)は、(B1a)の調製にやはり使用される、類似しているが同じではない構成成分(a)~(e)から好ましくは構成されるが、(B1a)に関連するその量条件は、(B2a)に適用する必要はない。
【0129】
物理的乾燥は、この場合、溶媒を単純に蒸発させて、コーティング(B2)を形成させることを好ましくは指す。熱硬化は、ここでは、室温より高い温度(23℃超)に起因する硬化機構を好ましくは必然的に伴う。これは、例えば、高温で分解する開始剤からのラジカルまたはイオン、好ましくはラジカルの形成とすることができ、その結果、ラジカル重合またはイオン重合が開始される。このような熱活性化可能な開始剤の例は、80℃において、100時間未満の半減期を有するものである。化学的硬化は、例えば、-OH基と-COOH基との反応などの重縮合、または重付加(NCO基と-OH基またはアミノ基との反応)の方法で、少なくとも2種の異なる、および相互に相補反応性の官能基の反応を好ましくは指す。
【0130】
コーティング用組成物(B2a)が、物理的に乾燥性の、熱硬化性および/または化学硬化性コーティング用組成物である場合、それは、結合剤として、当業者に公知の少なくとも1種の慣用的なポリマーを使用して調製される。次に、この結合剤は、好ましくは、架橋性官能基を有する。当業者に公知の任意の慣用的な架橋性官能基が、この文脈において好適である。より詳細には、架橋性官能基は、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボン酸基、イソシアネート、ポリイソシアネートおよびエポキシドからなる群から選択される。ポリマーは、好ましくは-20℃~250℃または18℃~200℃の温度範囲において、好ましくは発熱的または吸熱的に硬化性または架橋性である。とりわけ、ポリマーとして好適なものは、ポリウレタン、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド、ポリウレア、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリカーボネート、ポリ(メタ)アクリレート、エポキシ樹脂、フェノール-ホルムアルデヒド樹脂、メラミン-ホルムアルデヒド樹脂からなる群から選択される少なくとも1種のポリマーである。これらのポリマーは、特に、OH官能性であってもよい。その場合、それらは、一般用語「ポリオール」によって含まれてもよい。このようなポリオールは、例えば、ポリアクリレートポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリウレアポリオール、ポリエステル-ポリアクリレートポリオール、ポリエステル-ポリウレタンポリオール、ポリウレタン-ポリアクリレートポリオール、ポリウレタン修飾アルキド樹脂、脂肪酸修飾ポリエステル-ポリウレタンポリオール、やはりまた明記したポリオールの混合物であってもよい。ポリアクリレートポリオール、ポリエステルポリオールおよびポリエーテルポリオールが好ましい。
【0131】
ここで、イソシアネートおよび/またはオリゴマー化イソシアネート基、非常に好ましくは少なくとも1種の対応するポリウレタンおよび/または少なくとも1種の対応するポリウレア(例えば、「ポリアスパラギン酸結合剤」と呼ばれるもの)の関与により硬化する少なくとも1種のポリマーを使用することが可能である。ポリアスパラギン酸結合剤は、アミノ官能性化合物、とりわけ二級アミンとイソシアネートとの反応から変換される構成成分である。少なくとも1種のポリウレタンを使用する場合、とりわけ、好適なものは、ポリオールなどのヒドロキシル含有構成成分と少なくとも1種のポリイソシアネート(芳香族および脂肪族イソシアネート、ジ、トリおよび/またはポリイソシアネート)との間の重付加反応によって調製可能なポリウレタンをベースとする樹脂である。慣用的に、ここでは、ポリオール中のOH基とポリイソシアネート中のNCO基との化学量論反応が必要である。しかし、ポリイソシアネートは「過剰架橋」または「架橋不足」となり得る量でポリオール構成成分に添加することができるので、使用されることになる化学量論比はまた、様々となり得る。エポキシ樹脂、すなわちエポキシドをベースとする樹脂が使用される場合、好適なものは、好ましくはエポキシドをベースとする樹脂であり、これは、官能基として、分子内に末端エポキシド基とヒドロキシル基を有するグリシジルエーテルから調製される。これらは、好ましくは、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンと、および/またはビスフェノールFとエピクロロヒドリンとの反応生成物、ならびにそれらの混合物であり、これらはまた、反応性希釈剤の存在下で使用される。このようなエポキシドをベースとする樹脂の硬化または架橋は、エポキシド環のエポキシド基の重合によって、硬化剤として他の反応性化合物の付加反応の形態の、化学量論量でのエポキシド基との重付加反応(したがって、この場合、エポキシド基あたり活性水素が1当量存在する必要がある(すなわち、エポキシド当量あたり1個のH活性当量が硬化に必要である))、またはエポキシド基およびヒドロキシル基による重縮合によって慣用的に行われる。好適な硬化剤の例は、ポリアミン、とりわけ、(ヘテロ)脂肪族、(ヘテロ)芳香族および(ヘテロ)脂環式ポリアミン、ポリアミドアミン、ポリアミノアミド、やはりまたポリカルボン酸およびそれらの無水物である。
【0132】
「放射線硬化」の概念は、コーティング用組成物(B1a)に関連して上で既に記載されている。コーティング用組成物(B2a)は、照射線源の使用によって、好ましくはUV照射を使用することによって、硬化されてもよい。したがって、好ましくは、(B2a)は、UV照射硬化性コーティング用組成物である。
【0133】
したがって、(B2a)は、不飽和炭素二重結合、より好ましくは(メタ)アクリル基を好ましくは有する。この目的のため、コーティング用組成物(B2)は、(B1a)に関連して上で特定されている構成成分、ならびに、特に、ポリエステル、ポリエーテル、カーボネート、エポキシド、ポリ(メタ)アクリレートおよび/またはウレタン(メタ)アクリレートおよび/または少なくとも1種の不飽和ポリエステル樹脂、ならびに/または一、二および/または三官能性(メタ)アクリルエステルなどの(B1a)の構成成分(a)および(d)に含まれ得る構成成分のいずれかを含んでもよい。
【0134】
(N)IRおよび/またはUV光による硬化時に、コーティング用組成物(B2a)は、照射波長の光によってラジカルに分解することが可能であり、次に、これらのラジカルがラジカル重合を開始することができる、少なくとも1種の光開始剤を好ましくは含む。電子線照射による硬化の場合、対照的に、このような光開始剤の存在は必要ではない。光開始剤として、コーティング用組成物(B1a)の構成成分(c)に関連して、上で明記されているものと同じ量で同じ構成成分を使用することが可能である。
【0135】
さらに、コーティング用組成物(B2a)は、少なくとも1種のさらなる添加剤を含んでもよい。そのような場合、コーティング用組成物(B1a)の構成成分(b)および(e)に関連して、上で特定されているものと同じ量で同じ構成成分を使用することが可能である。
【0136】
コーティング用組成物(B2a)として使用されるコーティング用組成物は、より好ましくは(メタ)アクリル基を有するものである。好ましくは、このコーティング用組成物(B2a)は、少なくとも1種のウレタン(メタ)アクリレートを含む。好ましくは、さらに、コーティング用組成物(B2a)は、少なくとも1種の光開始剤を含む。
【0137】
本発明のコンポジット(B2B1F1)
本発明のさらなる主題は、さらに、基材(F1)、少なくとも一部がエンボスされておりかつ少なくとも一部が硬化したコーティング(B1)、および(B1)に塗布されて少なくとも一部が硬化したコーティング(B2)からなるコンポジット(B2B1F1)であって、コーティング(B1)が、基材(F1)の表面の少なくとも一部に塗布されて、少なくとも一部がエンボスされたコーティング用組成物(B1a)を、放射線硬化により少なくとも一部を硬化させることによって生成可能であり、コーティング用組成物(B1a)が、放射線硬化性コーティング用組成物であり、
コーティング用組成物(B1a)が、
40~95質量%の範囲の量の少なくとも1種の構成成分(a)と、
0.01~5質量%の範囲の量の、構成成分(b)としての少なくとも1種の添加剤と、
0.01~15質量%の範囲の量の、構成成分(c)としての少なくとも1種の光開始剤と、
0~45質量%の範囲の量の少なくとも1個の炭素二重結合を含む、少なくとも1種の構成成分(d)と
を含み、
(i)構成成分(a)、(b)、(c)および(d)が、互いにそれぞれ異なっており、(ii)構成成分(a)、(b)、(c)および(d)の明記した量はそれぞれ、コーティング用組成物(B1a)の総質量に対するものであり、(iii)コーティング用組成物(B1a)に存在するすべての構成成分の量が合計100質量%になり、
構成成分(a)が、そのそれぞれが、それぞれ互いに異なるまたは少なくとも一部が同一である、式(I)
【化6】
(式中、
基Rは、各場合において互いに独立して、C~Cアルキレン基であり、
基Rは、各場合において互いに独立して、Hまたはメチルであり、
パラメーターmはそれぞれ、互いに独立して、1~15の範囲の整数パラメーターであるが、ただし、パラメーターmは、構成成分(a)内の式(I)の構造単位の少なくとも1個において、少なくとも2である)
の少なくとも3個の構造単位を含む、
コンポジット(B2B1F1)である。
【0138】
本発明の方法に関連して、とりわけ、その中に使用されているコーティング用組成物(B1a)および(B2a)、ならびに基材(F1)さらにまたコーティング(B1)および(B2)に関連して、本明細書の上に記載されている好ましい実施形態はすべて、本発明のコンポジット(B2B1F1)に関連する好ましい実施形態でもある。
【0139】
このコンポジット(B2B1F1)のコンポジット(B1F1)は、上記の方法工程(4)~(7)の実施によって好ましくは得ることができる。
【0140】
コンポジット(B2B1F1)は、上記の方法工程(1)および(2)の実施によって好ましくは得ることができる。
【0141】
基材(F1)は、好ましくはフィルムウェブ、より好ましくは連続フィルムウェブである。
【0142】
使用
本発明のさらなる主題は、独立フィルムの形態の、その表面の1つに少なくとも一部エンボスしたコーティング(B2)を生成するため、または基材(F2)、少なくとも1種の接着剤(K)およびコーティング(B2)からなるコンポジット(B2KF2)を生成するための、本発明のコンポジット(B2B1F1)を使用する方法である。このコンポジット(B2KF2)は、好ましくは、方法段階(3a)、(3b)および(3c)を横断的に行うことによって、具体的には、
(3a) コンポジット(B2B1F1)の表面の少なくとも一部に、コーティング(B2)を有する側で、接着剤(K)を塗布して、コンポジット(KB2B1F1)を得る工程と、
(3b) 段階(3a)の後に得られたコンポジット(KB2B1F1)に、接着剤(K)を有するその表面の少なくとも一部に、基材(F2)を適用するまたはその反対を行い、コンポジット(F2KB2B1F1)を得る工程と、
(3c) コンポジット(F2KB2B1F1)からコンポジット(B1F1)を剥離して、コンポジット(F2KB2)を得る工程であり、このコンポジットのコーティング(B2)が、その表面に、コンポジット(B1F1)のコーティング(B1)の少なくとも一部がエンボスされた表面の鏡像を少なくとも部分的に有する工程と
によって得られる。
【0143】
本発明の方法、ならびに本発明のコンポジット(F1B1)および(B2B1F1)に関連して本明細書の上に記載されている好ましい実施形態はすべて、上述の使用に関連する好ましい実施形態でもある。
【0144】
コーティング用組成物(B2a)は、ここでは、好ましくは放射線硬化性コーティング用組成物である。
【0145】
決定方法
1.不揮発性画分の決定
不揮発性画分(固体または固体含有量)は、DIN EN ISO3251(日付:2008年6月)に準拠して決定する。本方法は、事前に乾燥したアルミニウム製トレイに試料1gを秤量して125℃で60分間、乾燥キャビネット中で試料を乾燥する工程と、この試料をデシケータ中で冷却する工程と、次にこれを再秤量する工程とを含む。使用した試料の総量に対する残留物が、不揮発性画分に相当する。
【0146】
2.モデル化精度の決定
モデル化精度は、市販の原子間力顕微鏡(AFM)により、および市販のカンチレバーを使用して求める。したがって、AFMによって、例えば、140nmの深さ、および例えば430nmの周期を有するエンボス用器具P1の明確な格子構造などの格子構造の表面トポグラフィーと、例えば、エンボス後のマスターフィルム(B1F1)の表面トポグラフィーとを比較することが可能となる。この場合、エンボス用器具は、基準点を定義するため、特定の部位において、故意に損傷を与える。この基準点によって、この参照の同じ領域および複製の同じ領域を検討すること、および互いに比較することが可能となる。モデル化精度は、例えば、エンボス用器具P1からマスターフィルム(B1F1)になどの、特定の参照構造がどれほど正確に転写され得るかと定義する。例えば、エンボス用器具P1の検討領域が、140nmの深さを有する格子構造をフィーチャした場合、この参照深さを、マスターフィルム(B1F1)に対して求めた構造の対応する高さと比較する。変化率は、ここでは、モデル化精度に相当し、以下の通り定義される:
【数1】
【0147】
Δhは、ここでは、変化率に相当し、hは、マスターフィルムの検討領域における構造の高さに相当し、hは、エンボス用器具の検討領域の構造の対応する深さに相当する。この変化率、言い換えると、モデル化精度はまた、「収縮」とも称される。Δhの値が小さいほど、モデル化精度は良好となる。
【0148】
3.流動時間の決定
流動時間は、DIN EN ISO2431(日付:2012年3月)に準拠して決定する。本方法は、室温(20℃)において、4mmのフローカップ(4番)により流動時間を求めることを含む。
【0149】
4.二重結合の転化率の決定
二重結合の転化率(DB転化率)は、検討下にある試料の硬化後に、ATR-IR分光法によって求める。ATR-IR分光法の技法を用いて、基材を含む円形の反射結晶が接触している部位でIRスペクトルを記録する。接触部位は、約200μmの直径を有しており、使用する反射結晶は、ゲルマニウム結晶である。
【0150】
二重結合の転化率を計算するために使用する出発原料は、試料の対応する湿潤試験体を含む。DB転化率は、810cm-1のバンドの強度の低下により算出する。規格化に使用するバンドは、1730cm-1におけるエステルのバンドである。二重結合転化率は、以下の式:
【数2】
(式中、I810cm-1は、810cm-1における、硬化した層の規格化強度であり、IRef-810cm-1は、810cm-1における、対応する湿潤試験体の規格化強度である)
によって算出する。二重結合の転化率が90%以上であれば十分と分類する。
【0151】
5.接着性の決定
接着性は、クロスカット試験により、DIN EN ISO2409(日付:2013年6月)に準拠して決定する。この試験では、二連の決定で、基材への検討下にあるコーティング層の接着性を試験する。2mmの裁断間隔を有するByk Gardner製のクロスカット試験器を手作業で使用する。続いて、Tesaテープ4651番を損傷領域にプレスし、それを剥離して、層間剥離した領域を除去する。評価は、0(層間剥離は最小限)~5(層間剥離は非常に高い)の範囲の特性値に基づいて行う。少なくとも3.5の平均値があれば、十分と分類する。
【0152】
6.複製の成功の判定
複製の成功は、目視により判定し、首尾よく複製した領域の百分率を確定する。この範囲は、ここでは、首尾よく複製した領域が0%~100%の間に収まる。領域の100%が複製されていない場合、これは、対応する領域の断片をエンボス用ダイから除去することができなかったこと、言い換えると、B1F1の形態にあるコーティングB1は、エンボス用器具P1に一部、付着したままであること、またはコーティングB2は、マスターフィルムB1F1に一部、付着したままであることを意味する。
【実施例
【0153】
本発明の実施例および比較例
以下の本発明の実施例および比較例は、本発明を例示する働きをするが、いかなる制限も課すものとして解釈されるべきではない。
【0154】
特に示さない限り、部での量は質量部であり、百分率での量は、各場合において、質量百分率である。
【0155】
1.使用される成分および物質
Hostaphan(登録商標)GN - 125μmの層厚さを有する市販のPETフィルム
Laromer(登録商標)UA9033(L UA9033) - 構成成分(d)として使用可能な、BASF SE製の脂肪族ウレタンアクリレート
ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA) - 構成成分(d)として使用可能
Sartomer(登録商標)395(SR395) - 構成成分(d)として使用可能な、Sartomer製のイソデシルアクリレート
Sartomer(登録商標)502(SR502) - 構成成分(a)として使用可能な、Sartomer製の9倍エトキシ化を有するTMPTA(トリメチロールプロパントリアクリレート)
Sartomer(登録商標)499(SR499) - 構成成分(a)として使用可能な、Sartomer製の6倍エトキシ化を有するTMPTA(トリメチロールプロパントリアクリレート)
Sartomer(登録商標)454(SR454) - 比較構成成分(a)として使用可能な、Sartomer製の3倍エトキシ化を有するTMPTA(トリメチロールプロパントリアクリレート)
TMPTA(トリメチロールプロパントリアクリレート) - 比較構成成分(a)として使用可能
GPTA(グリセリルプロポキシトリアクリレート) - 比較構成成分(a)として使用可能な、3倍プロポキシ化を有するグリセリルトリアクリレート
Irgacure(登録商標)184(I-184) - 構成成分(c)として使用可能な、BASF SE製の市販光開始剤
Irgacure(登録商標)TPO-L(I-TPO-L) - 構成成分(c)として使用可能な、BASF SE製の市販光開始剤
Tego(登録商標)Rad2500(TR2500) - 構成成分(b)として使用可能な、Evonik製の潤滑および粘着防止添加剤(シリコーンアクリレート)
Byk-SILCLEAN3710(BS3710) - 構成成分(b)として使用可能(employavle)なBYK Chemie GmbH製の表面添加剤(ポリエーテル修飾アクリル官能性ポリジメチルシロキサン)
【0156】
2.実施例
2.1 コーティング用組成物(B1a)および対応する比較コーティング用組成物の生成
コーティング用組成物は、以下の表1aおよび1bに準拠して生成した。コーティング用組成物E1a~E3a、およびE4a~E6aは、本発明のものである。コーティング用組成物V1a~V5aは、比較コーティング用組成物である。E1a~E3aおよびV1a~V5aの生成の場合、室温(20℃)で確定した流動時間は、26~172秒の範囲にある。
【0157】
【表1】
【0158】
【表2】
【0159】
2.2 E1a~E3aおよびV1a~V5a、ならびにE4a~E6aを使用したマスターフィルム(B1F1)の生成
所望のポジ構造を有するニッケル製エンボス用器具P1を備える、ロールツープレートエンボス装置を使用して、いくつかの異なるマスターフィルムを生成する。この目的のために、上記のコーティング用組成物E1a~E3aおよびV1a~V5a、ならびにE4a~E6aの1つをそれぞれ、P1に適用し、PETフィルム(F1)をその上から塗布する(Hostaphan(登録商標)GN)。次に、フィルムおよび個々のコーティング用組成物から生じた積層をプレスロールの下に通し、エンボス装置が個々の積層のコーティング用組成物と接触している間も依然として、コーティング用組成物は、UV-LEDランプによって少なくとも一部、硬化している。この場合、使用したランプは、Easytec製の365nm、6W UV-LEDランプである(ランプ出力100%、2m/分、2回通す)。続いて、P1と比較するとネガ構造となるフィルムと共に、少なくとも一部が硬化したコーティングをエンボス装置から分離して、構造化フィルム(マスターフィルム)を得る。続いて、このマスターフィルムを、UVAランプで後露光する(Panacol-Elosal UV F-900)。
【0160】
さらに、所望のポジ構造を有する、ニッケルからなるエンボス用器具P1を有するロールツーロールエンボス装置を使用することによってマスターフィルムを生成する。この目的のため、上記のコーティング用組成物E1aをPETフィルム(F1)(Hostaphan(登録商標)GN)に塗布し、プレスロールにより、エンボス用器具P1の上に通す。エンボス装置がコーティング用組成物に接触している間でさえも、UV-LEDランプによって、コーティング用組成物の少なくとも一部の硬化を行う。Easytec製の365nm、6W UV-LEDランプ(ランプ出力100%、5m/分)を使用する。続いて、フィルムと共に少なくとも一部が硬化したコーティングを、P1との比較によりネガ構造を有するエンボス装置から分離し、構造化フィルム(マスターフィルム)を得る。続いて、このマスターフィルムを、UVAランプで後露光する(Panacol-Elosal UV F-900)。
【0161】
2.3 生成したマスターフィルム
項目2.2に記載されている方法で、ポジ構造の性質に従い、そのエンボスのさらに異なる様々な一連のマスターフィルムを得る(E1F1~E3F1およびV1F1~V5F1、ならびにE4F1~E6F1)。この場合、以下を具体的に有する、様々なポジ構造
・ ナノ構造(430nmの周期および140nmの深さを有する格子構造。使用したPETフィルムに、個々のコーティング用組成物を5~10μmの間の層厚さで塗布する)
・ マイクロ構造M1(幅および高さが33μm、ならびに構造間の間隔が35μmを有する二次元三角形構造。使用したPETフィルムに、個々のコーティング用組成物を20μmの層厚さで塗布する)
・ マイクロ構造A(幅45μmおよび高さ13μmを有する連続二次元三角形構造。使用したPETフィルムに、個々のコーティング用組成物を20μmの層厚さで塗布する)、または
・ マイクロ構造B(高さ80μmおよび両構造間の空間が115μmを有する二次元三角形構造。使用したPETフィルムに、個々のコーティング用組成物を110μmの層厚さで塗布する)
を有する、ニッケル製のエンボス装置を使用した。
【0162】
モデル化精度、二重結合の転化率および接着性を決定するためにナノ構造を有するマスターフィルムを使用する。マイクロ構造M1を有するマスターフィルムを複製の成功率を決定するために使用する。項目2.4を参照のこと。項目2.5~2.7において以下に記載されている転写フィルムの生成にも使用する。マイクロ構造AまたはBを有するマスターフィルムを、以下の項目2.8において記載した転写フィルムの生成に使用する。これらのマスターフィルムを生成するため、各場合において、コーティング用組成物E1aを使用して、それに対応して、マイクロ構造AまたはBを有するマスターフィルムE1F1を得る。
【0163】
2.4.マスターフィルムに関する検討
以下の表2に、実施した検討を要約する。これらの検討は、それぞれ、上記の方法に従い行った。表内の記号「-」は、特定の検討を実施しなかったことを表す。
【0164】
【表3】
【0165】
データは、V2F1、V3F1およびV5F1の場合において、十分なDB転化率を実現しないこと(DB転化率<90)を示している。DB転化率が低すぎる場合、コーティング用組成物(B1a)、および同様に後のコーティング用組成物(B2a)の両方をエンボスする際に問題が生じる恐れがある。反対に、マスターフィルムE1F1、E2F1およびE3F1は、少なくとも90%のDB転化率であることを示している。
【0166】
V1F1およびV4F1の場合、DB転化率は、実際に>90%であるが、これらのマスターフィルムの場合に実現する接着性は、まさにV3F1およびV5F1と同様に、不適切である(クロスカット試験は、評点5と評価された)。PETフィルムへのマスターコーティングの接着性が不十分である場合、コーティング用組成物(B1a)、および同様に後のコーティング用組成物(B2a)の両方をエンボスする間に問題が発生する恐れがある。反対に、マスターフィルムE1F1、E2F1およびE3F1はすべて、良好から十分な接着特性を示している。
【0167】
このデータは、V2F1、V3F1およびV5F1の場合、個々のコーティングV2、V3およびV5の15%が、エンボス用器具から除去することができなかったので、複製の成功率の評価では、わずか85%の値しか得られないことをさらに示している。反対に、検討したマスターフィルムE1F1およびE2F1は、複製の成功率が100%であることを示している。
【0168】
V5F1とは別に、検討したスターフィルムはすべて、非常に低い収縮値が一貫して得られているので、十分なモデル化精度を示す。V5F1の場合だけ、29%の収縮が得られ、これは許容されるものではない。
【0169】
まとめると、マスターフィルムE1F1、E2F1およびE3F1のみが、検討した特性(DB転化率、接着性、モデル化精度および複製の成功率)のすべてに関して、良好な結果をもたらすと明言することができる。
【0170】
2.5.転写フィルムの生成:
次に、マイクロ構造を用いてそれぞれ得られたマスターフィルムをそれぞれ、ロールツープレートエンボス装置に使用し、コーティング用組成物(B2a)を20μmの湿潤層厚さで、個々のマスターフィルムの構造化表面に塗布する。マスターフィルムおよびコーティング用組成物(B2a)の得られた積層にTACフィルムを裏打ちし、酸素から保護する。次いでマスターフィルムを含んで得られた積層、そこに塗布したコーティング用組成物(B2a)、およびこのコーティング用組成物に塗布したTACフィルムを次に、UV-LEDランプによるコーティング用組成物(B2a)の少なくとも一部の硬化と同時の方法で、プレスロールの下に通す。この場合、使用したランプは、Easytec製の365nm、6W UV-LEDランプである(ランプ出力100%、2m/分、2回通す)。この方法では、TACフィルムを除去した後に、転写フィルム積層としてコンポジット(B2B1F1)が得られる。
【0171】
使用したコーティング用組成物(B2a)は、市販の放射線硬化性コーティング用組成物であり、これは、少なくとも1種のウレタンアクリレート、少なくとも1種の光開始剤、やはりまた市販の添加剤を含む。
【0172】
2.6 接合したコンポジットおよび独立構造化フィルムの生成:
次に、コーティングした鋼製プレートに、積層フィルム(ATP製のマウント積層フィルムS-4705 WSA 120P。ポリアクリレート)によって、転写フィルム(B2B1F1)のコーティング(B2)の非構造化したコーティング面を接着させる。使用した積層フィルムは、意図しない他着から保護するため、各場合において、シリコーンペーパーを最初に片側に裏打ちした接着フィルムKからなる。この目的の場合、シリコーンペーパーを最初に、両面の一方から剥離し、このシリコーンペーパーの剥離方向に対して平行に、ゴムローラーを用いてB2に接着フィルムをプレスすることによって、今曝露したその接着側で、接着フィルムを転写フィルム(B2B1F1)のコーティング(B2)のコーティング面にあてる。同様に、次に、シリコーンペーパーをもう一方の側から剥離し、シリコーンペーパーの剥離方向に対して平行に、ゴムローラーを使用して、基材F2としての鋼製プレートの表面に、今曝露した最終的な接着面によって接着フィルムをプレスする。得られたコンポジット(F2KB2B1F1)を、最初に、50℃で12時間、保管する。この保管の後に、個々のマスターフィルム(B1F1)を前述のコンポジットから剥離し、マスターフィルムだけでなくコンポジットも(F2KB2)も得る。
【0173】
独立構造化フィルムを得るため、接合した鋼製プレート(F2KB2)からコーティング(B2)を分離することができる。
【0174】
2.7 接合したコンポジット(F2KB2)または独立構造化フィルム(B2)に関する検討
以下の表3は、エンボスするために使用した特定のマスターフィルムを考慮して、得られた転写フィルムに行った複製の成功率の検討結果を要約している。表内の記号「-」は、特定の検討を実施しなかったことを表す。
【0175】
【表4】
【0176】
データは、V3F1およびV4F1を使用した場合、複製は不適切なだけであることを示している。同様に、V1F1およびV5F1を使用すると、これらの場合では、コーティングB2の部分は、個々のマスターフィルムのコーティングV1およびV5から除去することができなかったので、複製の成功率を評価した場合、100%未満の値しか得られない。反対に、検討したマスターフィルムE1F1~E3F1およびE5F1およびE6F1を使用した場合、100%の複製の成功率が達成される。
【0177】
2.8 さらなる転写フィルムの生成:
熱硬化性コーティング用組成物(B2a)を、200μmの湿潤層厚さで、マイクロ構造AまたはBの1つを有する、個々のマスターフィルムE1F1の構造化した表面に塗布する。室温(23℃)で10分間のフラッシュオフタイムの後に、80℃のオーブン温度のHeraeus製の市販オーブン中(45分間)、こうして得られたマスターフィルムおよびコーティング用組成物(B2a)の積層の少なくとも一部の硬化を行う。こうして、転写フィルムとしてのコンポジット(B2B1F1)を積層として得る。
【0178】
使用した熱硬化性コーティング用組成物(B2a)は、市販の熱硬化性2Kコーティング用組成物である。構成成分1と構成成分2との間の混合比は、2:1である。構成成分1は、少なくとも1種のポリオールおよび市販の添加剤を含む。構成成分2は、少なくとも1種のポリイソシアネートおよび市販の添加剤を含む。
【0179】
こうして得られた転写フィルムから、項目2.6に記載した手順によってコンポジット(F2KB2)を得る。
【0180】
以下の表4は、エンボスするために使用した各マスターフィルムを考慮して、得られた転写フィルムに行った試験の、複製の成功率の結果を要約している。
【0181】
【表5】
【0182】
これらのデータは、検討したマスターフィルムE1F1を使用した場合、熱硬化性コーティング用組成物をコーティング用組成物(B2a)として使用した場合でさえも、100%の複製の成功率が実現することを示している。
図1