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特許7420730代謝機能不全または低レプチン血症の治療に使用するためのレプチン受容体アゴニスト性抗体
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】代謝機能不全または低レプチン血症の治療に使用するためのレプチン受容体アゴニスト性抗体
(51)【国際特許分類】
   A61K 39/395 20060101AFI20240116BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20240116BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240116BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20240116BHJP
【FI】
A61K39/395 N ZNA
A61P19/08
A61P43/00 111
C07K16/28
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020552696
(86)(22)【出願日】2019-04-05
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-11-25
(86)【国際出願番号】 US2019026173
(87)【国際公開番号】W WO2019195796
(87)【国際公開日】2019-10-10
【審査請求日】2022-03-29
(31)【優先権主張番号】62/653,731
(32)【優先日】2018-04-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507302748
【氏名又は名称】リジェネロン・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100102978
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 初志
(74)【代理人】
【識別番号】100160923
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 裕孝
(74)【代理人】
【識別番号】100119507
【弁理士】
【氏名又は名称】刑部 俊
(74)【代理人】
【識別番号】100142929
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 隆一
(74)【代理人】
【識別番号】100148699
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 利光
(74)【代理人】
【識別番号】100128048
【弁理士】
【氏名又は名称】新見 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100129506
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 智彦
(74)【代理人】
【識別番号】100205707
【弁理士】
【氏名又は名称】小寺 秀紀
(74)【代理人】
【識別番号】100114340
【弁理士】
【氏名又は名称】大関 雅人
(74)【代理人】
【識別番号】100121072
【弁理士】
【氏名又は名称】川本 和弥
(72)【発明者】
【氏名】グロマダ ジェスパー
(72)【発明者】
【氏名】ステヴィス パナヨティス
(72)【発明者】
【氏名】アルタレホス ジュディス
(72)【発明者】
【氏名】マーフィー アンドリュー ジェイ.
【審査官】山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/066204(WO,A1)
【文献】Metabolism Clinical and Experimental ,64,2015年,105-113
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 39/395
A61P
C07K 16/28
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
先天性レプチン欠損症の症状である低骨量を有する対象における骨量、骨ミネラル含量または骨密度を増加させるための、
配列番号26に示されるアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)のHCDR1、HCDR2およびHCDR3を含むHCVR、および配列番号10に示されるアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)のLCDR1、LCDR2およびLCDR3を含むLCVRを含む、ヒトレプチン受容体(LEPR)に結合しかつLEPRシグナル伝達を活性化する抗体またはその抗原結合断片ならびに薬学的に許容可能な担体または希釈剤を含む医薬組成物。
【請求項2】
前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号26に示されるアミノ酸配列を含むHCVRおよび配列番号10に示されるアミノ酸配列を含むLCVRを含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項3】
前記抗体またはその抗原結合断片が、
配列番号28に示されるアミノ酸配列を含むHCDR1、
配列番号30に示されるアミノ酸配列を含むHCDR2、
配列番号32に示されるアミノ酸配列を含むHCDR3、
配列番号12に示されるアミノ酸配列を含むLCDR1、
配列番号14に示されるアミノ酸配列を含むLCDR2、および
配列番号16に示されるアミノ酸配列を含むLCDR3
を含む、請求項1記載の医薬組成物。
【請求項4】
組み換えヒトレプチン、PCSK9阻害剤、スタチン、エゼチミブ、インスリン、インスリンバリアント、インスリン分泌促進剤、メトホルミン、スルホニルウレア、ナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害剤、GLP-1アゴニスト/アナログ、グルカゴン(GCG)阻害剤、グルカゴン受容体(GCGR)阻害剤、アンジオポエチン様タンパク質(ANGPTL)阻害剤、フェンテルミン、オルリスタット、トピラマート、ブプロピオン、トピラマート/フェンテルミン、ブプロピオン/ナルトレキソン、ブプロピオン/ゾニサミド、プラムリンチド/メトレレプチン、ロルカセリン、セチリスタット、テソフェンシン、ベルネペリト、抗けいれん薬、ジゴキシン、クマディン、ビタミンD、チロキシン、甲状腺サプリメント、ビタミンサプリメント、カルシウムサプリメント、カルニチン、コエンザイムQ10、便秘防止薬、抗アレルギー薬、ガバペンチン、麻酔薬、ケタミン、リドカイン、およびベンラファキシン塩酸塩からなる群から選択される第二の治療剤と組み合わせて用いられる、請求項1記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒトレプチン受容体(LEPR:human leptin receptor)に結合するアゴニスト性抗体およびアゴニスト性抗体の抗原結合断片を使用して、代謝機能不全を治療する治療法、ならびにレプチン欠損症およびリポジストロフィーにおいてインスリン感受性を回復させる治療法に関する。
【0002】
配列表
配列表の公的な写しは、ASCIIフォーマットの配列表としてEFS-Webを介して電子的に本明細書と同時に提出され、当該写しのファイル名は「10436WO_SEQ_LIST_ST25」であり、2019年4月5日が作成日であり、サイズはおよそ105キロバイトである。このASCIIフォーマット書面に含まれる配列表は、本明細書の一部であり、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0003】
レプチンは主に脂肪組織によって発現され、代謝、神経内分泌機能、免疫、エネルギーバランス、食物摂取量の調節に関与するポリペプチドホルモンである。レプチン活性は、レプチン受容体との相互作用およびシグナル伝達によって媒介される。レプチン受容体(「LEPR」、「WSX」、「OB受容体」、「OB-R」、および「CD295」としても知られる)は、大きな(818アミノ酸)細胞外ドメインを有するクラスIサイトカイン受容体ファミリーの単回膜貫通型受容体である。レプチン欠損症、レプチン抵抗性、および特定のLEPRシグナル伝達欠損性/シグナル伝達障害性の変異は、肥満、2型糖尿病、脂質異常症、リポジストロフィー、肝臓脂肪症、非アルコール性およびアルコール性の脂肪肝疾患、重度のインスリン抵抗性、妖精症/ドナヒュー症候群、ラブソン・メンデンホール症候群、および関連合併症と関連する。レプチン抵抗性、レプチン欠損症、および低レプチン血症(例えば、リポジストロフィー)に対処する治療アプローチは、罹患した個人への補足的なレプチンまたはレプチンアナログの送達が主な焦点であった。しかしながら、このようなアプローチは、一般的に限定的な有効性、特にレプチン抵抗性の個体において示されており、有害な副作用に頻繁に関連している。したがって、レプチン抵抗性、およびレプチン欠損症または低レプチン血症に関連するその他の状態を治療するための代替的アプローチのための当技術分野における必要性が存在する。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、ヒトレプチン受容体(LEPR)に結合する抗体およびその抗原結合断片を提供する。本発明の抗体は、アゴニスト性抗体である。すなわち本発明の抗LEPR抗体がLEPRに結合することで、特に細胞においてレプチン受容体シグナル伝達の活性化が生じる。特定の実施形態では、本発明の抗体は、LEPRへの結合に関してレプチンと競合しない。本発明の抗体は、例えば、対象における通常のレプチンの生物活性の模倣、代用、または補完に有用である。したがって本発明の抗体および抗原結合断片は、レプチン抵抗性およびレプチン欠損症に関連する疾患および障害の治療的処置に有用である。
【0005】
本発明の抗体は、完全長(例えば、IgG1抗体またはIgG4抗体)であってもよく、または抗原結合部分(例えば、Fab、F(ab’)またはscFv断片)のみを含んでもよく、および例えば残存するエフェクター機能が排除されるなど、機能に影響を及ぼすように改変されてもよい(Reddy et al.,2000,J.Immunol.164:1925-1933)。
【0006】
本発明の例示的な抗LEPR抗体は、本明細書の表1および表2に列記されている。表1には、例示的な抗LEPR抗体の重鎖可変領域(HCVR)、軽鎖可変領域(LCVR)、重鎖相補性決定領域(HCDR1、HCDR2およびHCDR3)、および軽鎖相補性決定領域(LCDR1、LCDR2およびLCDR3)のアミノ酸配列識別子が記載されている。表2には、例示的な抗LEPR抗体のHCVR、LCVR、HCDR1、HCDR2 HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3の核酸配列識別子が記載されている。
【0007】
本発明は、表1に列挙されるHCVRアミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含むHCVR、またはそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含む、LEPRに特異的に結合する、抗体またはその抗原結合断片を提供する。
【0008】
本発明はまた、表1に列挙されるLCVRアミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含むLCVR、またはそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似した配列を含む、LEPRに特異的に結合する、抗体またはその抗原結合断片も提供する。
【0009】
本発明はまた、表1に列挙されるLCVRアミノ酸配列のいずれかとペア形成される、表1に列挙されるHCVRアミノ酸配列のいずれかを含むHCVRとLCVRとのアミノ酸配列ペア(HCVR/LCVR)を含む、LEPRに特異的に結合する、抗体またはその抗原結合断片も提供する。特定の実施形態によれば、本発明は、表1に列挙された例示的な抗LEPR抗体のいずれかの中に含有されるHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを含む、抗体またはその抗原結合断片を提供する。特定の実施形態では、HCVR/LCVRアミノ酸配列ペアは、配列番号2/10、18/10、26/10、34/10、42/10、50/10、58/66、74/66、および82/66からなる群から選択される。
【0010】
本発明はまた、表1に列挙されるHCDR1アミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR1(HCDR1)、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それの実質的に類似の配列を含む、LEPRに特異的に結合する、抗体またはその抗原結合断片も提供する。
【0011】
本発明はまた、表1に列挙されるHCDR2アミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR2(HCDR2)、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それの実質的に類似の配列を含む、LEPRに特異的に結合する、抗体またはその抗原結合断片も提供する。
【0012】
本発明はまた、表1に列挙されるHCDR3アミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む重鎖CDR3(HCDR3)、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それの実質的に類似の配列を含む、LEPRに特異的に結合する、抗体またはその抗原結合断片も提供する。
【0013】
本発明はまた、表1に列挙されるLCDR1アミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR1(LCDR1)、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それの実質的に類似の配列を含む、LEPRに特異的に結合する、抗体またはその抗原結合断片も提供する。
【0014】
本発明はまた、表1に列挙されるLCDR2アミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR2(LCDR2)、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それの実質的に類似の配列を含む、LEPRに特異的に結合する、抗体またはその抗原結合断片も提供する。
【0015】
本発明はまた、表1に列挙されるLCDR3アミノ酸配列のいずれかから選択されるアミノ酸配列を含む軽鎖CDR3(LCDR3)、または少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する、それの実質的に類似の配列を含む、LEPRに特異的に結合する、抗体またはその抗原結合断片も提供する。
【0016】
本発明はまた、表1に列挙されたLCDR3アミノ酸配列のいずれかとペアリングされた表1に列挙されたHCDR3アミノ酸配列のいずれかを含む、HCDR3とLCDR3とのアミノ酸配列ペア(HCDR3/LCDR3)を含む、LEPRに特異的に結合する、抗体またはその抗原結合断片も提供する。特定の実施形態によれば、本発明は、表1に列挙された例示的な抗LEPR抗体のいずれかの中に含有されるHCDR3/LCDR3アミノ酸配列ペアを含む、抗体またはその抗原結合断片を提供する。ある実施形態では、HCDR3/LCDR3アミノ酸配列ペアは、配列番号8/16、24/16、32/16、40/16、48/16、56/16、64/72、80/72および88/72からなる群から選択される。
【0017】
本発明はまた、表1に列挙された例示的な抗LEPR抗体のいずれかの中に含有される六個のCDRのセット(すなわち、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含む、LEPRに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片も提供する。特定の実施形態では、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3のアミノ酸配列のセットは、配列番号4、6、8、12、14、16;20、22、24、12、14、16;28、30、32、12、14、16;36、38、40、12、14、16;44、46、48、12、14、16;52、54、56、12、14、16;60、62、64、68、70、72;76、78、80、68、70、72;および84、86、88、68、70、72からなる群から選択される。
【0018】
関連の実施形態では、本発明は、表1に列挙された例示的な抗LEPR抗体のいずれかにより規定される、HCVR/LCVRアミノ酸配列ペアの中に含有される六個のCDRのセット(すなわち、HCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3)を含む、LEPRに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を提供する。例えば本発明は、配列番号2/10、18/10、26/10、34/10、42/10、50/10、58/66、74/66および82/66からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアの中に含有されるHCDR1、HCDR2、HCDR3、LCDR1、LCDR2、およびLCDR3のアミノ酸配列セットを含む、LEPRに特異的に結合する抗体またはその抗原結合断片を含む。HCVRおよびLCVRアミノ酸配列内のCDRを同定するための方法および技法は当該技術分野で周知であり、本明細書に開示の特定のHCVRおよび/またはLCVRアミノ酸配列内のCDRを同定するために使用することができる。CDRの境界を同定するために使用することができる例示的な慣習としては、例えば、Kabat定義、Chothia定義、およびAbM定義が挙げられる。一般的な条件では、Kabat定義は配列変動性に基づき、Chothia定義は構造ループ領域の位置に基づき、AbM定義はKabatとChothia手法との間の折衷物である。例えば、Kabat,“Sequences of Proteins of Immunological Interest,”National Institutes of Health,Bethesda,Md.(1991);Al-Lazikani et al.,J.Mol.Biol.273:927-948(1997);およびMartin et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 86:9268-9272(1989)を参照されたい。パブリックデータベースもまた、抗体内のCDR配列を同定するために利用可能である。
【0019】
本発明は、抗LEPR抗体またはその一部をコードする核酸分子も提供する。例えば、本発明は、表1に列挙されるHCVRアミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子を提供し、特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙されるHCVR核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれらと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似の配列を含む。
【0020】
本発明はまた、表1に列挙されるLCVRアミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供し、特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙されるLCVR核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれらと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似の配列を含む。
【0021】
本発明はまた、表1に列挙されるHCDR1アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子も提供し、特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙されるHCDR1核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれらと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似の配列を含む。
【0022】
本発明はまた、表1に列挙されるHCDR2アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子を提供し、特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙されるHCDR2核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれらと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似の配列を含む。
【0023】
本発明はまた、表1に列挙されるHCDR3アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子を提供し、特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙されるHCDR3核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれらと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似の配列を含む。
【0024】
本発明はまた、表1に列挙されるLCDR1アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子を提供し、特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙されるLCDR1核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれらと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似の配列を含む。
【0025】
本発明はまた、表1に列挙されるLCDR2アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子を提供し、特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙されるLCDR2核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれらと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似の配列を含む。
【0026】
本発明はまた、表1に列挙されるLCDR3アミノ酸配列のいずれかをコードする核酸分子を提供し、特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙されるLCDR3核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれらと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似の配列を含む。
【0027】
本発明はまた、HCVRをコードする核酸分子も提供し、ここにおいて、HCVRは、三つのCDR(すなわち、HCDR1、HCDR2、HCDR3)のセットを含み、ここにおいて、当該HCDR1、HCDR2、HCDR3のアミノ酸配列のセットは、表1に列挙された例示的な抗LEPR抗体のいずれかによって規定されるとおりである。
【0028】
本発明はまた、LCVRをコードする核酸分子も提供し、ここにおいて、LCVRは、三つのCDR(すなわち、LCDR1、LCDR2、LCDR3)のセットを含み、ここにおいて、当該LCDR1、LCDR2、LCDR3のアミノ酸配列のセットは、表1に列挙された例示的な抗LEPR抗体のいずれかによって規定されるとおりである。
【0029】
本発明はまた、HCVRとLCVRの両方をコードする核酸分子も提供し、ここにおいて、HCVRは、表1に列挙されるHCVRアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸配列を含み、かつここにおいて、LCVRは、表1に列挙されたLCVRアミノ酸配列のいずれかのアミノ酸配列を含む。特定の実施形態では、核酸分子は、表2に列挙されるHCVR核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似の配列と、表2に列挙されるLCVR核酸配列のいずれかから選択されるポリヌクレオチド配列、またはそれと少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の配列同一性を有する実質的に類似の配列とを含む。本発明のこの態様による特定の実施形態では、核酸分子は、HCVRおよびLCVRをコードし、当該HCVRおよびLCVRは両方とも、表1に列挙される、同じ抗LEPR抗体から誘導される。
【0030】
本発明はまた、抗LEPR抗体の重鎖可変領域または軽鎖可変領域を含むポリペプチドを発現することができる組み換え型発現ベクターも提供する。例えば、本発明は、上述の核酸分子、すなわち、表1に記載されるようなHCVR配列、LCVR配列、および/またはCDR配列のいずれかをコードする核酸分子のいずれかを含む、組換え発現ベクターを含む。また、本発明の範囲内に含まれるのは、そのようなベクターが導入されている宿主細胞、ならびに抗体または抗体断片の産生を可能にする条件下で宿主細胞を培養することによって抗体またはその一部分を生産する方法ならびにそうして生産された抗体および抗体断片を回収する方法である。
【0031】
別の態様では、本発明は、LEPRに特異的に結合する組換えヒト抗体またはその断片および薬学的に許容可能な担体を含む医薬組成物を提供する。関連の態様では、本発明は、抗LEPR抗体および第二の治療剤の組み合わせである組成物を特徴とする。一つの実施形態では、第二の治療剤は、抗LEPR抗体と有利に組み合わされる任意の剤である。
【0032】
本開示全体を通して使用される場合、「対象」という用語は、「患者」という用語と相互交換可能である。対象または患者は、成人であってもよい。小児患者も、本明細書に提供される方法および組成物から利益を得ると予期される。
【0033】
さらに別の態様では、本発明は、本発明の抗LEPR抗体、または本発明抗体の抗原結合部分を使用して、LEPRシグナル伝達を強化または刺激するための治療方法を提供する。本発明の態様による治療方法は、それを必要とする対象に、本発明の抗体または本発明抗体の抗原結合断片を含む医薬組成物の治療有効量を投与することを含む。治療される障害は、LEPRシグナル伝達を刺激もしくは活性化することにより、または別手段によってレプチンの本来の活性をインビトロもしくはインビボで模倣することにより、改善される、向上される、阻害される、または予防される、任意の疾患または状態である。
【0034】
一部の態様では、本明細書において、代謝機能不全または低レプチン血症を治療または予防するための治療方法が提供される。方法は、ヒトレプチン受容体(LEPR)に結合しかつLEPRシグナル伝達を活性化する抗体またはその抗原結合断片および薬学的に許容可能な担体または希釈剤を含む医薬組成物を、その必要のある対象に投与することを含む。
【0035】
一部の態様では、本明細書において、代謝機能不全もしくは低レプチン血症、または代謝機能不全もしくは低レプチン血症と関連する疾患もしくは状態、または当該疾患もしくは状態の一つまたは複数の症状を治療または予防するための治療法が提供される。方法は、ヒトLEPRに結合しかつLEPRシグナル伝達を活性化する抗体またはその抗原結合断片および薬学的に許容可能な担体または希釈剤を含む医薬組成物を、その必要のある対象に投与することを含む。
【0036】
一部の実施形態では、状態は、非アルコール性脂肪肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、女性の不妊症、無月経、ホルモンサイクル異常、免疫機能障害、甲状腺機能低下症、肥満、単一遺伝子型肥満、I型糖尿病、II型糖尿病、リポジストロフィー、先天性リポジストロフィー、全身型リポジストロフィー、後天性リポジストロフィー、部分型リポジストロフィー、先天性部分型リポジストロフィー、先天性全身型リポジストロフィー、後天性部分型リポジストロフィー、および後天性全身型リポジストロフィーからなる群から選択される。
【0037】
一部の実施形態では、代謝機能不全または低レプチン血症と関連した疾患または状態の一つまたは複数の症状は、脂肪症、肥満、過食症、高血糖症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、インスリン抵抗性、脂質異常症、成長遅延、思春期成長スパートの遅延、成長ホルモン分泌異常、HbA1c上昇、低い骨ミネラル密度(または低骨量)、低い骨ミネラル含量、および低い除脂肪体重からなる群から選択される。代謝機能不全または低レプチン血症と関連した疾患または状態の症状は、ヒトLEPRに結合する抗体またはその抗原結合断片の投与の後、予防され、改善され、または重症度低下および/もしくは期間短縮され、または低減され得る。
【0038】
さらに他の態様では、本明細書においてリポジストロフィーの代謝合併症を治療するための方法が提供される。当該方法は、ヒトレプチン受容体(LEPR)に結合しかつLEPRシグナル伝達を活性化する抗体またはその抗原結合断片および薬学的に許容可能な担体または希釈剤を含む医薬組成物を、その必要のある対象に投与することを含む。一部の実施形態では、治療によって、対象において、高血糖症を緩和し、インスリン抵抗性を低下させ、高トリグリセリド血症を低下させ、循環コレステロール値を降下させ、および/またはHbA1c値を降下させる。リポジストロフィーは、後天性部分型リポジストロフィー、後天性全身型リポジストロフィー、先天性部分型リポジストロフィー、および先天性全身型リポジストロフィーを含み得る。
【0039】
先天性レプチン欠損症は、LEPRまたはレプチンの病原性バリアントを特徴とする稀な疾患である。一部の対象は循環レプチンを有しているが、当該タンパク質は遺伝子突然変異、例えばp.N103Kが原因で非機能性であり、これは、レプチンの生物不活性型をコードする。一部の対象は、循環レプチンをほとんどまたは全く有さない。例えばLMNA、PPARG、PLIN1、AKT2、CIDEC、LIPEおよびADRA2Aをはじめとする他の遺伝子がレプチンシグナル伝達の障害に関与する場合もあり、本明細書において提供される抗LEPR抗体およびその抗原結合断片は、レプチンシグナル伝達に対する当該変異の影響の軽減に有用である。
【0040】
一部の態様では、本明細書において、先天性レプチン欠損症を治療するための方法が提供される。当該方法は、ヒトレプチン受容体(LEPR)に結合しかつLEPRシグナル伝達を活性化する抗体またはその抗原結合断片および薬学的に許容可能な担体または希釈剤を含む医薬組成物を、その必要のある対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象はリポジストロフィーを有し、メトレレプチン治療に失敗している。一部の実施形態では、先天性リポジストロフィーと関連した症状は、ヒトLEPRに結合する抗体またはその抗原結合断片の投与の後、予防され、改善され、または重症度低下および/もしくは期間短縮され、または低減される。一部の実施形態では、治療は、対象において、過食症、肥満、高インスリン血症、脂質異常症、および脂肪肝のうちの一つまたは複数を逆転させ、または軽減する。一部の実施形態では、対象の血中グルコースが減少し、対象の体重が減少し、対象が食物摂取量の低下を呈し、対象の脂肪量(fat mass)が減少し、対象の除脂肪量(lean mass)が増加し、および/または対象の骨量(bone mass)が増加する。
【0041】
一部の態様では、本明細書において、非アルコール性脂肪肝疾患または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の治療のための治療方法が提供される。一部の態様では、対象は、低レプチン血症、リポジストロフィー、またはレプチン欠損症である。この態様によると、方法は、ヒトLEPRに結合しかつLEPRシグナル伝達を活性化する抗体またはその抗原結合断片および薬学的に許容可能な担体または希釈剤を含む医薬組成物を、その必要のある対象に投与することを含む。一部の実施形態では、対象の肝重量は、治療後に減少する。一部の実施形態では、非アルコール性肝臓脂肪症を含む非アルコール性脂肪肝疾患の症状は、治療後に対象において減退される。一部の実施形態では、アラニントランスアミナーゼ(ALT)の血漿レベル、および/またはアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)の血漿レベルは、対象において減少される。
【0042】
さらに他の態様では、本明細書において、代謝機能不全もしくは低レプチン血症と関連した、女性の不妊症、無月経を治療する方法、または正常なホルモンサイクルを回復させる方法が提供される。当該方法は、ヒトLEPRに結合しかつLEPRシグナル伝達を活性化する抗体またはその抗原結合断片および薬学的に許容可能な担体または希釈剤を含む医薬組成物を、その必要のある対象に投与することを含む。一部の態様では、ヒトLEPRに結合する抗体またはその抗原結合断片の投与は、生殖能力を増加させ、および/または妊娠の機会を増加させ得る。一部の態様では、対象は妊娠する。一部の態様では、治療は、正常な月経サイクルを回復または開始させ得る。
【0043】
一部の態様では、本明細書において、代謝機能不全または低レプチン血症と関連した免疫機能障害を治療するための方法が提供される。当該方法は、ヒトLEPRに結合しかつLEPRシグナル伝達を活性化する抗体またはその抗原結合断片および薬学的に許容可能な担体または希釈剤を含む医薬組成物を、その必要のある対象に投与することを含む。一部の実施形態では、ヒトLEPRに結合する抗体またはその抗原結合断片の投与後、CD4+T細胞数が増加する。
【0044】
他の態様では、本明細書において、代謝機能不全または低レプチン血症を有する対象において骨量を増加させる方法が提供される。方法は、ヒトLEPRに結合しかつLEPRシグナル伝達を活性化する抗体またはその抗原結合断片および薬学的に許容可能な担体または希釈剤を含む医薬組成物を、その必要のある対象に投与することを含む。
【0045】
他の態様では、本明細書において、脂肪症または肥満を治療する方法、または体重を減少させる方法が提供される。この態様によると、方法は、ヒトLEPRに結合しかつLEPRシグナル伝達を活性化する抗体またはその抗原結合断片および薬学的に許容可能な担体または希釈剤を含む医薬組成物を、その必要のある対象に投与することを含む。一部の実施形態では、治療は、脂肪量を減少させるが、除脂肪量を減少させない。
【0046】
一部の実施形態では、その必要のある対象は、低レプチン血症、リポジストロフィー、またはレプチン欠損症である。一部の実施形態では、その必要のある対象は、低レプチン血症またはレプチン欠損症ではない。一部の実施形態では、代謝機能不全、脂肪症または肥満は、シグナル伝達欠損LEPR変異またはシグナル伝達障害LEPR変異と関連しておらず、かつそれらにより引き起こされない。
【0047】
一部の実施形態では、本明細書に提供される方法に従う、ヒトLEPRに結合しかつLEPRシグナル伝達を活性化する抗体または抗原結合断片の投与は、視床下部のSTAT3シグナル伝達を刺激し、またはレプチン誘導型もしくはレプチン非依存性のSTAT3シグナル伝達を強化する。
【0048】
一部の実施形態では、ヒトLEPRに結合しかつLEPRシグナル伝達を活性化する抗体またはその抗原結合断片の投与は、循環血漿トリグリセリドを低下させ、および/または循環血漿総コレステロールを低下させる。
【0049】
他の態様では、本明細書において、視床下部STAT3シグナル伝達を刺激することにより、過食症、高血糖症、インスリン抵抗性、脂質異常症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、または非アルコール性脂肪肝疾患を治療するための方法が提供される。当該方法は、ヒトレプチン受容体(LEPR)に結合しかつLEPRシグナル伝達を活性化する抗体またはその抗原結合断片および薬学的に許容可能な担体または希釈剤を含む医薬組成物を、その必要のある対象に投与することを含む。一部の実施形態では、治療は、循環血漿トリグリセリドを低下させる。一部の実施形態では、治療は、循環血漿総コレステロールを低下させる。
【0050】
さらに他の態様では、本明細書において、先天性レプチン欠損症と関連した成長遅延、思春期成長スパートの欠落、および/または成長ホルモン分泌異常を治療するための方法が提供される。当該方法は、ヒトLEPRに結合しかつLEPRシグナル伝達を活性化する抗体またはその抗原結合断片および薬学的に許容可能な担体または希釈剤を含む医薬組成物を、その必要のある対象に投与することを含む。
【0051】
さらに他の態様では、本明細書において、先天性レプチン欠損症と関連した甲状腺機能低下症を治療するための方法が提供される。当該方法は、ヒトLEPRに結合しかつLEPRシグナル伝達を活性化する抗体またはその抗原結合断片および薬学的に許容可能な担体または希釈剤を含む医薬組成物を、その必要のある対象に投与することを含む。
【0052】
さらに他の態様では、本明細書において、低レプチン血症および/またはレプチン欠損症と関連した、低い骨ミネラル密度および/または低い骨ミネラル含量を治療するための方法が提供される。当該方法は、ヒトLEPRに結合しかつLEPRシグナル伝達を活性化する抗体またはその抗原結合断片および薬学的に許容可能な担体または希釈剤を含む医薬組成物を、その必要のある対象に投与することを含む。
【0053】
一つまたは複数のさらなる治療剤を、ヒトLEPRに結合する抗体またはその抗原結合断片とともに本明細書に記載される対象に投与してもよい。第二の治療剤は、組み換えヒトレプチン、PCSK9阻害剤、スタチン、エゼチミブ、インスリン、インスリンバリアント、インスリン分泌促進剤、メトホルミン、スルホニルウレア、ナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害剤、GLP-1アゴニスト/アナログ、グルカゴン(GCG)阻害剤、グルカゴン受容体(GCGR)阻害剤、アンジオポエチン様タンパク質(ANGPTL)阻害剤、フェンテルミン(Phentermine)、オルリスタット(orlistat)、トピラマート(Topiramate)、ブプロピオン(Bupropion)、トピラマート/フェンテルミン、ブプロピオン/ナルトレキソン(Naltrexone)、ブプロピオン/ゾニサミド(Zonisamide)、プラムリンチド(Pramlintide)/メトレレプチン、ロルカセリン(Lorcaserin)、セチリスタット(Cetilistat)、テソフェンシン(Tesofensine)、ベルネペリト(Velneperit)、抗けいれん薬、ジゴキシン、クマディン、ビタミンD、チロキシン、甲状腺サプリメント、ビタミンサプリメント、カルシウムサプリメント、カルニチン、コエンザイムQ10、便秘防止薬、抗アレルギー薬、ガバペンチン、麻酔薬、ケタミン、リドカイン、またはベンラファキシン塩酸塩からなる群から選択されてもよい。
【0054】
本発明はまた、患者において、(i)リポジストロフィー(任意のタイプ)および/もしくは単一遺伝子型肥満;(ii)リポジストロフィーおよび/もしくは単一遺伝子型肥満と関連した状態;または(iii)(i)もしくは(ii)の症状を治療、予防、または改善する方法を提供するものであり、当該方法は、その必要のある患者に、LEPRに特異的に結合するアゴニスト性抗体(例えば、H4H17319P2)またはその抗原結合断片を投与することを含む。例えば、本発明の実施形態において、リポジストロフィーおよび/または単一遺伝子型肥満と関連した状態は、超早期発症型肥満;過食症および満腹感の障害;免疫機能障害(CD4数);インスリン抵抗性;非アルコール性脂肪肝疾患;NASH、脂質異常症;糖尿病;生殖機能障害;性腺機能低下症;思春期成長スパートの欠落;甲状腺機能低下症;甲状腺機能障害;低い骨ミネラル密度および/または低骨量である。本発明の実施形態において、当該症状は、肥大肝、肝臓酵素の上昇、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の血中レベルの上昇、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の血中レベルの上昇、高度な脂肪症;年齢および性別に対する肥満度指数85パーセンタイル超;食物探索行動異常;食物攻撃性行動異常;再発性のおよび潜在的致死性の感染症;高インスリン血症;肝臓脂肪症;NASHへの進行(リポジストロフィー);高トリグリセリド血症;HbA1cの上昇;高血糖値;耐糖能の障害;思春期発育の遅延;第二次性徴の発現の低下;無月経もしくは月経不順;不妊症;小人症;成長ホルモン分泌異常;T3の変化;TSHの変化;ならびに/または遊離チロキシンレベルの変化である。
【0055】
本発明の実施形態では、アゴニスト性抗LEPR抗体またはその抗原結合断片(例えば、H4H17319P2;WO2017/66204を参照のこと)は、以下のように投与される:(i)約5mg/体重kgの1回または複数回の静脈内投与;次いで(ii)約250~300mg、例えば250mgまたは約300mgの1回または複数回の皮下投与を週に1回;次いで(iii)任意で、約250mgまたは約300mgの1回または複数回の皮下投与を1カ月に1回または約28日に1回。例えば、(i)約5mg/体重kgの1回または複数回の静脈内投与;次いで(ii)約250mgまたは約300mgの1回または複数回の皮下投与を週に1回。本発明の実施形態では、抗体は、以下のように投与される:(i)5mg/体重kgを(1日目に)1回静脈内投与;次いで(ii)約250mgまたは約300mgの4回の皮下投与を週に1回(例えば、4、11、18および25日目);次いで(iii)約250mgまたは約300mgの1回または複数回の皮下投与を1カ月に1回または28日に1回(例えば、53、81、109、137、165、および193日目)。例えば、本発明の実施形態では、最初の皮下投与は約4日目に行われ、これは1日目に行われる静脈内投与の約3日後である。
【0056】
他の実施形態は、次の発明を実施するための形態の検討から明らかになるであろう。
[本発明1001]
代謝機能不全もしくは低レプチン血症、または代謝機能不全もしくは低レプチン血症と関連する疾患もしくは状態、または前記疾患もしくは状態の一つもしくは複数の症状を治療または予防するための方法であって、ヒトレプチン受容体(LEPR)に結合しかつLEPRシグナル伝達を活性化する抗体またはその抗原結合断片および薬学的に許容可能な担体または希釈剤を含む医薬組成物を、その必要のある対象に投与することを含む、前記方法。
[本発明1002]
前記状態は、非アルコール性脂肪肝疾患、NASH、女性の不妊症、無月経、ホルモンサイクル異常、免疫機能障害、甲状腺機能低下症、肥満、単一遺伝子型肥満、I型糖尿病、II型糖尿病、リポジストロフィー、先天性リポジストロフィー、全身型リポジストロフィー、後天性リポジストロフィー、部分型リポジストロフィー、先天性部分型リポジストロフィー、先天性全身型リポジストロフィー、後天性部分型リポジストロフィー、および後天性全身型リポジストロフィーからなる群から選択される、本発明1001の方法。
[本発明1003]
非アルコール性脂肪肝疾患を治療または予防するための本発明1002の方法。
[本発明1004]
先天性リポジストロフィーを治療または予防するための本発明1002の方法。
[本発明1005]
全身型リポジストロフィーを治療または予防するための本発明1002の方法。
[本発明1006]
後天性リポジストロフィーを治療または予防するための本発明1002の方法。
[本発明1007]
部分型リポジストロフィーを治療または予防するための本発明1002の方法。
[本発明1008]
単一遺伝子型肥満を治療または予防するための本発明1002の方法。
[本発明1009]
代謝機能不全または低レプチン血症と関連する前記状態が、先天性リポジストロフィーであり、
先天性リポジストロフィーと関連する前記症状が、ヒトLEPRに結合する前記抗体またはその抗原結合断片の投与の後、予防され、または改善され、または重症度低下および/もしくは期間短縮され、または低下される、本発明1002の方法。
[本発明1010]
ヒトLEPRに結合する前記抗体またはその抗原結合断片の投与の後、前記対象の血中グルコースが減少し、前記対象の体重が減少し、前記対象が食物摂取量の減少を呈し、前記対象の脂肪量が減少し、前記対象の除脂肪量が増加し、および/または前記対象の骨量が増加する、本発明1009の方法。
[本発明1011]
前記状態が非アルコール性脂肪肝疾患であり、治療後に前記対象の肝重量が減少し、前記対象のアラニントランスアミナーゼ(ALT)の血漿レベルが減少し、および/または前記対象のアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)の血漿レベルが減少する、本発明1002の方法。
[本発明1012]
前記状態が女性の不妊症である、本発明1002の方法。
[本発明1013]
前記状態が女性の不妊症であり、前記対象のホルモンサイクルが回復され、および/または前記対象が妊娠する、本発明1012の方法。
[本発明1014]
前記状態が無月経である、本発明1002の方法。
[本発明1015]
前記状態が無月経であり、前記対象が、正常なホルモンサイクルを有し始める、本発明1014の方法。
[本発明1016]
前記状態が免疫機能障害である、本発明1002の方法。
[本発明1017]
前記状態が免疫機能障害であり、前記対象のCD4+T細胞数が増加する、本発明1016の方法。
[本発明1018]
脂肪症、肥満、過食症、高血糖症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、インスリン抵抗性、脂質異常症、成長遅延、思春期成長スパートの遅延、成長ホルモン分泌異常、HbA1c上昇、低い骨ミネラル密度(または低骨量)、低い骨ミネラル含量、および低い除脂肪体重からなる群から選択される一つまたは複数である、代謝機能不全もしくは低レプチン血症のまたは代謝機能不全もしくは低レプチン血症と関連した疾患もしくは状態の、一つまたは複数の症状
を治療または予防するための、本発明1001の方法。
[本発明1019]
対象が罹患している代謝機能不全または低レプチン血症の症状である低骨量を有する前記対象において、骨量を増加させる方法であって、その必要のある前記対象に、ヒトレプチン受容体(LEPR)に結合しかつLEPRシグナル伝達を活性化する抗体またはその抗原結合断片および薬学的に許容可能な担体または希釈剤を投与することを含む、前記方法。
[本発明1020]
その必要のある前記対象が、レプチン欠損症である、本発明1001~1019のいずれかの方法。
[本発明1021]
その必要のある前記対象が、レプチン欠損症ではない、本発明1001~1019のいずれかの方法。
[本発明1022]
前記症状が肥満であり、前記肥満は、シグナル伝達欠損LEPR変異またはシグナル伝達障害LEPR変異と関連しておらず、かつそれらにより引き起こされない、本発明1001~1021のいずれかの方法。
[本発明1023]
前記治療が、脂肪量を減少させるが、除脂肪量を減少させない、本発明1001~1022のいずれかの方法。
[本発明1024]
ヒトLEPRに結合しかつLEPRシグナル伝達を活性化する前記抗体またはその抗原結合断片を用いた前記治療は、視床下部のSTAT3シグナル伝達を刺激し、またはレプチン誘導型もしくはレプチン非依存性のSTAT3シグナル伝達を強化する、本発明1001~1023のいずれかの方法。
[本発明1025]
前記治療が、循環血漿トリグリセリドを低下させる、本発明1001~1024のいずれかの方法。
[本発明1026]
前記治療が、循環血漿総コレステロールを低下させる、本発明1001~1025のいずれかの方法。
[本発明1027]
患者において、
(i)リポジストロフィーおよび/もしくは単一遺伝子型肥満、
(ii)リポジストロフィーおよび/もしくは単一遺伝子型肥満と関連する状態、または
(iii)(i)もしくは(ii)の症状
を治療、予防または改善する方法であって、LEPRに特異的に結合するアゴニスト性抗体を、その必要のある前記患者に投与することを含む、前記方法。
[本発明1028]
リポジストロフィーおよび/または単一遺伝子型肥満と関連する前記状態は、超早期発症型肥満;過食症および満腹感の障害;免疫機能障害(CD4 数);インスリン抵抗性;非アルコール性脂肪肝疾患;NASH、脂質異常症;糖尿病;生殖機能障害;性腺機能低下症;思春期成長スパートの欠落;甲状腺機能低下症;甲状腺機能障害;低い骨ミネラル密度または低骨量である、本発明1027の方法。
[本発明1029]
前記症状は、肥大肝、肝臓酵素の上昇、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)の血中レベルの上昇、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)の血中レベルの上昇、高度な脂肪症;年齢および性別に対する肥満度指数85パーセンタイル超;食物探索行動異常;食物攻撃性行動異常;再発性のおよび潜在的致死性の感染症;高インスリン血症;肝臓脂肪症;NASHへの進行(リポジストロフィー);高トリグリセリド血症;HbA1cの上昇;高血糖値;耐糖能の障害;思春期発育の遅延;第二次性徴の発現の低下;無月経もしくは月経不順;不妊症;小人症;成長ホルモン分泌異常;T3の変化;TSHの変化;または遊離チロキシンレベルの変化である、本発明1027の方法。
[本発明1030]
前記対象が、メトレレプチン治療に失敗した、本発明1001~1029のいずれかの方法。
[本発明1031]
前記抗体が、以下のとおり投与される、本発明1001~1030のいずれかの方法:
(i)約5mg/kg体重の1回または複数回の静脈内投与;次いで
(ii)約250mgまたは約300mgの1回または複数回の皮下投与を週に1回;次いで
(iii)任意で、約250mgまたは約300mgの1回または複数回の皮下投与を月に1回または約28日に1回。
[本発明1032]
前記抗体が、以下のとおり投与される、本発明1001~1030のいずれかの方法:
(i)約5mg/kg体重の1回または複数回の静脈内投与;次いで
(ii)約250mgまたは約300mgの1回または複数回の皮下投与を週に1回。
[本発明1033]
前記抗体が、以下のとおり投与される、本発明1001~1031のいずれかの方法:
(i)5mg/kg体重の1回の静脈内投与;次いで
(ii)約250mgまたは約300mgの4回の皮下投与を週に1回;次いで
(iii)約250mgまたは約300mgの1回または複数回の皮下投与を月に1回または28日に1回。
[本発明1034]
最初の皮下投与が、前記静脈内投与の3日後に行われる、本発明1031~1033のいずれかの方法。
[本発明1035]
前記抗体またはその抗原結合断片が、
(a)配列番号26、配列番号34、配列番号42、配列番号50、配列番号58、配列番号74、または配列番号82のアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(HCVR)の相補性決定領域(CDR)、および
(b)配列番号10または配列番号66のアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(LCVR)のCDR
を含む、本発明1001~1034のいずれかの方法。
[本発明1036]
前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号26/10、34/10、42/10、50/10、58/66、74/66および82/66からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアの重鎖CDRおよび軽鎖CDRを含む、本発明1001~1034のいずれかの方法。
[本発明1037]
前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号26/10、34/10、42/10、50/10、58/66、74/66および82/66からなる群から選択されるHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを含む、本発明1001~1034のいずれかの方法。
[本発明1038]
前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号26/10のHCVR/LCVRアミノ酸配列ペアを含む、本発明1001~1034のいずれかの方法。
[本発明1039]
前記抗体またはその抗原結合断片が、配列番号28/30/32/12/14/16のHCDR1/HCDR2/HCDR3/LCDR1/LCDR2/LCDR3のアミノ酸配列の組み合わせを含む、本発明1001~1034のいずれかの方法。
[本発明1040]
前記対象に第二の治療剤を投与することをさらに含み、前記第二の治療剤は、組み換えヒトレプチン、PCSK9阻害剤、スタチン、エゼチミブ、インスリン、インスリンバリアント、インスリン分泌促進剤、メトホルミン、スルホニルウレア、ナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害剤、GLP-1アゴニスト/アナログ、グルカゴン(GCG)阻害剤、グルカゴン受容体(GCGR)阻害剤、アンジオポエチン様タンパク質(ANGPTL)阻害剤、フェンテルミン、オルリスタット、トピラマート、ブプロピオン、トピラマート/フェンテルミン、ブプロピオン/ナルトレキソン、ブプロピオン/ゾニサミド、プラムリンチド/メトレレプチン、ロルカセリン、セチリスタット、テソフェンシン、ベルネペリト、抗けいれん薬、ジゴキシン、クマディン、ビタミンD、チロキシン、甲状腺サプリメント、ビタミンサプリメント、カルシウムサプリメント、カルニチン、コエンザイムQ10、便秘防止薬、抗アレルギー薬、ガバペンチン、麻酔薬、ケタミン、リドカイン、およびベンラファキシン塩酸塩からなる群から選択される、本発明1001~1039のいずれかの方法。
【図面の簡単な説明】
【0057】
図1図1は、ELISAにより測定された、被験抗LEPR抗体または対照分子の濃度を上昇させた中での、ヒトレプチンに対する二量体ヒトLEPRの結合を示す(吸光度は450nm)。
【0058】
図2図2A~2Cは、野生型LEPR(丸)、シグナル伝達欠損LEPR変異体(A409E、四角)、またはシグナル伝達障害LEPR変異体(P316T、三角)のいずれかを発現するHEK293細胞におけるLEPRシグナル伝達の程度を示す。LEPRシグナル伝達は、pSTAT3-Y705/STAT3の比率として表されており、レプチン(図2A)、H4H16650(図2B)、またはH4H16679(図2C)の濃度を上昇させて処置された細胞から調製されたウェスタンブロッティングの濃度測定により測定された。
【0059】
図3図3は、3mg/kgのアイソタイプ対照抗体、または3mg/kgのH4H16650P2、H4H16679P2、H4H17319P2もしくはH4H17321P2から選択されるLEPR抗体のいずれかを投与されたレプチン欠損マウスの平均1日食物摂取量を示す。
【0060】
図4図4は、3mg/kgのアイソタイプ対照抗体、または3mg/kgのH4H16650P2、H4H16679P2、H4H17319P2もしくはH4H17321P2から選択されるLEPR抗体のいずれかを投与されたマウスの体重における平均変化率を示す。
【0061】
図5図5は、平均±SEMとして表される、抗体処置の1日前(斜線無しのバー)および6日後(斜線付きのバー)のμCTにより定量された各抗体処置群における動物の平均脂肪量を示す。
【0062】
図6図6は、H4H18482P2、H4H18487P2、H4H18492P2またはアイソタイプ対照から選択される30mg/kgの抗体を与えられたマウスの体重の変化率を示す。
【0063】
図7図7A~7B。図7Aは、抗LEPR抗体のH4H18482P2、H4H18487P2またはH4H18492P2を投与する前のマウスの脂肪量を示す。図7Bは、30mg/kgのH4H18482P2、H4H18487P2、またはH4H18492P2で処置されたマウスの脂肪量を示す。
【0064】
図8図8図8は、検証された抗LEPR抗体がIMR-32/STAT3-luc/Mf LEPR細胞株においてサル(Mf)LEPRを活性化させたことを示す。
【0065】
図9A図9A~9C。レプチン欠損症は、18週齢のオスのLeprhu/huマウスにおいて、mLepr.ECDのHDDにより0日目に誘導された。HDDの7日後、体重における相対的変化率に基づきマウスを2群に階層化し、対照モノクローナル抗体(灰色の丸またはバー)またはH4H17319P2(黒色の丸またはバー)の単回10mg/kgをSC投与した。データは、平均±SEMである。、指定される時点のH4H17319P2と対照モノクローナル抗体の比較に関して、P<0.05。$、同じ各投与群内でのHDD前(-1日目)およびHDD後のいずれかの日(6日目または13日目)の間で、P<0.05。&、同じ各投与群内でのモノクローナル抗体前(6日目)とモノクローナル抗体後(13日目)の間で、P<0.05。表示された日において各文字色により示された群に関し、0日目の基準から有意差はない(ns)。図9Aは、実験経過中のLeprhu/huマウスの体重(左)と1日食物摂取量(右)を示しており、レプチン欠損の誘導によって急速な体重増加と過食症が生じることを示す。一群当たりN=14。図9Bは、HDDの1日前に行われた(-1日目)、モノクローナル抗体投与の1日前に行われた(HDDの6日後)、および投与の6日後に行われた(HDDの13日後)、マイクロ-CTイメージングによる身体組成解析を示す。脂肪量(左)と除脂肪量(右)の定量は、対照モノクローナル抗体投与群(N=14)およびH4H17319P2(N=14)投与群に対して示されている(それぞれ灰色と黒色のバー)。図9C。対照モノクローナル抗体(灰色のバー、N=14)またはH4H17319P2(黒色のバー、N=14)の単回投与で処置された誘導型レプチン欠損Leprhu/huマウスから処置の6日後(13日目)に取得された血漿の解析。
図9B図9Aの説明を参照されたい。
図9C図9Aの説明を参照されたい。
【0066】
図10A】レプチン受容体細胞外ドメインのヒト化Leprhu/huマウスを作成するための遺伝子ターゲティングを示す。
図10B】オス野生型(Lepr+/+、灰色のバー)およびLeprhu/hu(黒色のバー)マウスの体重(9週齢)と、体組成のマイクロ-CT定量(9~12週齢)。データは、平均±SEMである。一群当たりN=6~10匹。
図10C】8~11週齢のオスのLepr+/+(灰色の丸)マウス、およびLeprhu/hu(黒色の丸)マウスに対するインスリン耐性試験(0.75U/kg、IP)。データは、平均±SEMである。一群当たりN=8~9匹。
図10D】9~13週齢のオスのLepr+/+(灰色のバー)マウス、およびLeprhu/hu(黒色のバー)マウスにおける血清レプチン値。データは、平均±SEMである。一群当たりN=8~9匹。
【0067】
図11図11A図11B図11A。マウスレプチン受容体細胞外ドメインをコードするプラスミド(mLeprECD.hFc、黒色の丸)または対照プラスミド(対照hFc、灰色の丸)の0日目の流体力学的DNA送達(HDD:hydrodynamic DNA delivery)を行った後の、8週齢のオスC57BL/6Nマウスにおける、体重(左)、0日目の基準からの体重の変化率(中央)および累積食物摂取量(右)。データは、平均±SEMである。一群当たりN=6。図11B。マウスレプチン受容体細胞外ドメインをコードするプラスミド(mLeprECD.hFc、黒色のバー)または対照プラスミド(対照hFc、灰色のバー)のHDDを行った7日後の体組成のマイクロ-CT定量。データは、脂肪量、除脂肪量、骨量、骨ミネラル含量、および骨密度(左から右)の平均±SEMである。一群当たりN=6。
【0068】
図12A図12A図12C。レプチン欠損症は、17~20週齢のメス、または18週齢のオスのLeprhu/huマウスにおいて、mLepr.ECDのHDDにより0日目に誘導された。HDDの7日後、体重における相対的変化率に基づきマウスをそれぞれ2つの動物群に階層化し、次いで対照モノクローナル抗体(灰色の丸またはバー)またはH4H17319P2(黒色の丸またはバー)の単回10mg/kgをSC投与した。データは、平均±SEMである。、指定される時点のH4H17319P2と対照モノクローナル抗体の比較に関して、P<0.05。$、同じ各投与群内でのHDD前(-1日目)およびHDD後のいずれかの日(6日目または13日目)の間で、P<0.05。&、同じ各投与群内でのモノクローナル抗体前(6日目)とモノクローナル抗体後(13日目)の間で、P<0.05。表示された日において各文字色により示された群に関し、0日目の基準から有意差はない(ns)。図12A。実験経過中のメスマウスの体重(左)と食物摂取量(右)から、レプチン欠損の誘導によって急速な体重増加と過食症が生じることが示される。体重の増加は、対照モノクローナル抗体の投与の後も継続する(N=14)。一群当たりN=10~11匹。図12B。メスマウスに対するマイクロ-CTイメージングによる体組成解析は、HDDの1日前に行われた(-1日目)、モノクローナル抗体投与の1日前に行われた(HDDの6日後)、および投与の6日後に行われた(HDDの13日後)。データは、脂肪量、除脂肪量、骨量、骨ミネラル含量、および骨密度(左から右)の平均±SEMである。一群当たりN=10~11匹。図12C。オスマウスに対するマイクロ-CTイメージングによる身体組成解析は、HDDの1日前に行われた(-1日目)、モノクローナル抗体投与の1日前に行われた(HDDの6日後)、および投与の6日後に行われた(HDDの13日後)。データは、骨量、骨ミネラル含量、および骨密度(左から右)の平均±SEMである。一群当たりN=14。
図12B図12Aの説明を参照されたい。
図12C図12Aの説明を参照されたい。
【0069】
図13A図13A図13D。レプチン欠損症は、17~20週齢のメスのLeprhu/huマウスにおいて、mLepr.ECDのHDDにより0日目に誘導された。比較を目的として、マウス群に、対照ベクターを用いたHDDを行った。HDDの7日後、mLepr.ECDを投与されたマウスを、体重に基づき3群に階層化して、対照モノクローナル抗体(灰色の丸またはバー)またはH4H17319P2(黒灰色の丸またはバー)の3mg/kgを、2回(7日目および13日目)SC投与した。またはH4H17319P2で処置された誘導型レプチン欠損マウスにより消費される食物量を用いてペア飼育(pair-fed)(明灰色の丸またはバー)を行った。データは、平均±SEMである。、指定された時点で対照モノクローナル抗体を投与されたHDD mLeprECDと比較された、シンボルカラーまたはバーで示された各群に関し、P<0.05。#は、HDD mLeprECDと比較された、H4H17319P2で処置されたHDD mLepr ECDのペア飼育動物の統計的有意性を示す。$、指定された時点で対照モノクローナル抗体を投与されたHDD対照マウスと比較された、シンボルカラーまたはバーにより示される各群に関し、P<0.05。図13Aは、マウスのHDD前からの体重変化(左)および累積食物摂取量(右)を示す。一群当たりN=6~11匹。図13Bは、HDD後、13日目(処置の7日後)の前のLeprhu/huマウスに対する体組成のマイクロ-CT定量を示す。脂肪量、除脂肪量、骨量、骨ミネラル含量、および骨密度(左から右)。一群当たりN=5~10匹。図13Cは、HDD後、10日目(処置の3日後)のインスリン耐性試験を示す。マウスを4時間絶食させ、その後0分でインスリン処置した(1.0U/kg、IP)。インスリン耐性試験の血糖値およびグルコースの曲線下面積(AUC)を示す(それぞれ左および右)。一群当たりN=6~11匹。図13Dは、16日目または17日目に取得された血漿脂質の化学的分析を示す。一群当たりN=6~11匹。
図13B図13Aの説明を参照されたい。
図13C図13Aの説明を参照されたい。
図13D図13Aの説明を参照されたい。
【0070】
図14A図14A図14G。オスのリポジストロフィーのaP2-nSrebp1cTg/+;Leprhu/huマウス(Tg)は、27~30週齢で、週に1回、10mg/kg(SC)の対照モノクローナル抗体(灰色の丸またはバー)またはH4H17319P2(黒色の丸またはバー)を投与された。参照として、27~30週齢のオスの非トランスジェニックLeprhu/huマウス(非Tg)も、週に1回、10mg/kg(SC)の対照モノクローナル抗体(白色の菱形および白色のバー)を投与された。すべてのデータは、平均±SEMである。、指定された時点で対照モノクローナル抗体を投与された非Tgマウスと比較された、シンボルカラーまたはバーにより示される各群に関し、P<0.05。#、指定された時点で対照モノクローナル抗体を投与されたTgマウスと比較された、シンボルカラーまたはバーにより示される各群に関し、P<0.05。$、P<0.05、各群の-5日目と比較した27日目。図14A、左および右はそれぞれ体重および累積食物摂取量を示す。一群当たりN=8~9匹。図14B、左および右はそれぞれ、-5日目に投与される前、および27日目の処置の後、マイクロ-CTイメージングにより定量された除脂肪量と脂肪量を示す。一群当たりN=9。図14Cは、試験中の血糖値(左)、および28日目のヘモグロビンA1cレベルのパーセント(右)を示す。一群当たりN=9。図14Dは、23日目のインスリン耐性試験(0.5U/kg IP)から得た血糖値と、グルコースの曲線下面積(AUC)を示す。一群当たりN=9。図14Eおよび14Fは、循環脂質(E)と肝酵素レベル(F)が、H4H17319P2-処置リポジストロフィーLeprhu/hu(Tg)マウスにおいて低下したことを示す。脂質(トリグリセリド、コレステロール、LDL-C、およびHDL-C)および肝酵素レベル(アラニントランスミアナーゼのALT、およびアスパラギン酸トランスアミナーゼのAST)に関して28日目に得られた血漿の化学的解析。一群当たりN=9。図14Gは、30日目に採取された肝臓重量、肝トリグリセリド含量、および代表的ヘマトキシリンエオジン染色された肝切片(それぞれ左、中央および右)を示す。一群当たりN=5。
図14B図14Aの説明を参照されたい。
図14C図14Aの説明を参照されたい。
図14D図14Aの説明を参照されたい。
図14E図14Aの説明を参照されたい。
図14F図14Aの説明を参照されたい。
図14G図14Aの説明を参照されたい。
【0071】
図15A図15A図15C。指定される週齢でのオスの非Tg Leprhu/hu(黒色の丸または黒色のバー)およびaP2-nSrebp1cTg/+ Leprhu/huマウス(黒色の丸および黒色のバー)の表現型解析。データは平均±SEMである。指定される時点でのLeprhu/huマウスと比較し、p<0.05。図15A。左は、12~24週齢の体重。中央は、およそ15~20週齢でマイクロ-CTイメージングにより定量された脂肪量。右は、19~21週齢で測定された血漿レプチン値。一群当たりN=17~28匹。図15B。18~20週齢でのインスリン耐性試験(0.75U/kgのインスリン、IP)中の血糖値。一群当たりN=12~13匹。図15C。左から右に、15~17週齢でのトリグリセリド、コレステロール、LDL-CおよびHDL-Cの血漿レベル。一群当たりN=20~28匹。
図15B図15Aの説明を参照されたい。
図15C図15Aの説明を参照されたい。
【0072】
図16A図16A。オスのリポジストロフィーのaP2-nSrebp1cTg/+;Leprhu/huマウス(Tg)は、27~30週齢で、週に1回、10mg/kg(SC)の対照モノクローナル抗体(灰色のバー)またはH4H17319P2(黒色のバー)を投与された。参照として、27~30週齢のオスの非トランスジェニックLeprhu/huマウス(非Tg)も、週に1回、10mg/kg(SC)の対照モノクローナル抗体(白色のバー)を投与された。すべてのデータは、平均±SEMである。、指定された時点で対照モノクローナル抗体を投与された非Tgマウスと比較された各群に関し、P<0.05。#、指定された時点で対照モノクローナル抗体を投与されたTgマウスと比較された各群に関し、P<0.05。$、P<0.05。各群の-5日目と比較した27日目。図16A。-5日目の投与前、および27日目の処置後に定量された、骨量、骨ミネラル含量および骨密度(左から右)を示すマイクロ-CTイメージングによる体組成。一群当たりN=9。
【0073】
図17-1】図17A図17E図17Aのデータは、対照(灰色のバー)もしくはH4H17319P2(暗灰色のバー)の単回投与(10mg/kg SC)を与えられた、またはレプチン点滴(30μg/日 SC;黒色のバー)を与えられた32~38週齢のリポジストロフィー(Tg)マウスである、オスのリポジストロフィーaP2-nSrebp1cTg/+;Leprhu/huマウス(Tg)のデータである。図17B~17Eのデータについて、27~30週齢のオスのTgマウスに、週に1回、10mg/kg(SC)の対照モノクローナル抗体(灰色の丸またはバー)もしくはH4H17319P2(暗灰色の丸またはバー)またはレプチン点滴(30μg/日SC、黒色のバー)を投与した。示される場合、27~30週齢のオスの非トランスジェニックLeprhu/huマウス(非Tg)も、週に1回、10mg/kg(SC)の対照モノクローナル抗体(白色の菱形および白色のバー)を投与された。すべてのデータは、平均±SEMである。、対照モノクローナル抗体を投与されたTgマウスと比較された、シンボルカラーまたはバーにより示される各群に関し、P<0.05。#、H4H17319P2を投与されたTgマウスと比較された、シンボルカラーまたはバーにより示される各群に関し、P<0.05。図17Aは、前項からおよそ-1.52mmでの弓状核(Arc)と視床下部腹内側部(Vmh)における、pSTAT3 Y705の免疫組織化学染色であり、オスの32~38週齢のリポジストロフィー(Tg)マウスにおいて、pSTAT3 Y705細胞の数が増加していることを示す。脳切片は、対照もしくはH4H17319P2(10mg/kg SC)の単回投与またはレプチン点滴(30μg/日 SC)を処置された3日後に採取された脳からの切片である。ArcおよびVmhにおけるpSTAT3 Y705細胞数の代表的な顕微鏡写真および定量(それぞれ左、中央、および右)を示している。一群当たりN=4~5匹。図17Bの左は、実験中の血糖値を示す。中央と右は、9日目のインスリン耐性試験中の血糖値、およびグルコースレベルの曲線下面積である。一群当たりN=8~9匹。図17Cは、体重(左)、体重における変化(中央)、および累積食物摂取量(右)を示す。一群当たり、N=8~9匹のTgマウス。非Tgマウスについては、N=5。図17Dは、トリグリセリド、コレステロール、LDL-CおよびHDL-Cに関する、13日目に取得された血漿の化学的分析であり、H4H17319P2処置で血漿トリグリセリドおよびコレステロールが低下したことを示す。一群当たり、N=8~9匹のTgマウス。非Tgマウスについては、N=5。図17Eは、14日目に取得された肝臓の肝重量(左)および肝トリグリセリド含量(右)を示す。一群当たり、N=6~9匹のTgマウス。非Tgマウスについては、N=5。
図17-2】図17-1の説明を参照されたい。
図17-3】図17-1の説明を参照されたい。
【0074】
図18A図18A図18D図18Aおよび18Bに示されるデータは、対照モノクローナル抗体(10mg/kg、SC;灰色の丸)、H4H17319P2(3mg/kg、SC;白色の丸)、またはH4H17319P2(10mg/kg;黒色の丸)の単回投与を与えられた32週齢のメスのLeprhu/huマウスのデータである。図18Cに示されるデータは、対照(SC;灰色の丸)、H4H17319P2(3mg/kg、SC;白色の丸)、またはH4H17319P2(10mg/kg;黒色の丸)の単回投与を与えられた痩せたオスとメスのカニクイザルのデータである。図18Dに示されるデータは、対照(IV;灰色の丸)、またはH4H17319P2(30mg/kg、IV;黒色の丸)の2回投与量を与えられた高体重(約6.0kg)のオスとメスのカニクイザルのデータである。データは、平均±SEMである。、指定された時点での各対照と比較されたH4H17319P2(10mg/kg)に対し、P<0.05。#、指定された時点での各対照と比較されたH4H17319P2(3mg/kg)に対し、P<0.05。$、指定された時点でのH4H17319P2(10mg/kg)と比較されたH4H17319P2(3mg/kg)に対し、P<0.05。&、各対照と比較されたH4H17319P2(30mg/kg、IV)に対し、P<0.05。図18Aは、痩せたメスマウスにおける実験の間の、0日目の投与前からの体重における変化率(左)および食物摂取量(右)を示す。一群当たりN=6~7匹。図18Bは、定量的NMR解析であり、痩せたメスマウスにおける実験の間の、0日目の投与前からの脂肪量(左)および除脂肪量(右)における変化率を示す。一群当たりN=6~7匹。図18Cは、痩せたマウスにおける実験の間の、-1日目の投与前からの体重における変化率を示す。一群当たりN=12。図18Dは、-14日目、-7日目および-1日目の投与前平均からの体重における変化割合(左)、ならびに脂肪量における変化率(中央)、および除脂肪量における変化率(右)を示しており、高体重の太ったサルにおいて、実験中にDEXA(体組成測定用の二重エネルギーX線吸収測定法(Dual Energy X-Ray Absorptiometry))により定量された。対照群およびH4H17319P2投与群のそれぞれに対し、N=4および8。
図18B図18Aの説明を参照されたい。
図18C図18Aの説明を参照されたい。
図18D図18Aの説明を参照されたい。
【0075】
図19図19は、例外的使用の臨床試験において利用された単一患者プロトコールを示す。
【0076】
図20A-1】図20Aは、治療期間1においてH4H17319P2を用いた治療を受けた患者の評価スケジュールを示す表である。
図20A-2】図20A-1の説明を参照されたい。
図20B-1】図20Bは、治療期間2および延長治療期間においてH4H17319P2を用いた治療を受けた患者の評価スケジュールを示す表である。
図20B-2】図20B-1の説明を参照されたい。
【0077】
図21図21A~21Cは、先天性レプチン欠損症のマウスモデルにおける、血中グルコース、体重および食物摂取量に対するH4H17319P2の効果を示す。図21Aは、mg/dLを単位とした血中グルコースを示し、図21Bは、グラム単位での体重、および図21Cは、グラム単位での累積食物摂取量を示す。灰色の丸は、IgG4対照を投与されたLeprhu/hu(N=5)。黒色の四角は、IgG4対照を投与されたLeprhu/huLep-/-(N=7)。白色の四角は、H4H17319P2を投与されたLeprhu/huLep-/-(N=8)。データは、平均+SEMとして表された。、二元配置ANOVAとテューキーの事後検定による、Leprhu/hu,Lep-/- + IgG4対照と比較されたLeprhu/huLep-/- + H4H17319P2群に対し、P<0.05。食物摂取量評価に関し、Leprhu/huLep-/- + IgG4対照群から2匹のマウスが除外され、Leprhu/huLep-/- + H4H17319P2群から1匹のマウスが除外された。原因は、それらマウスのケージ中に過度に細かく刻まれた食物があったためである。
【0078】
図22図22A~22Cは、先天性レプチン欠損症のマウスモデルにおける、μCT体組成解析による脂肪量、骨量および除脂肪量を示す。図22Aは、脂肪量、図22Bは、骨量、および図22Cは、除脂肪量をグラム単位で示す。マウスには、試験開始前の-5日目に基準スキャンを行った。mAb投与後のスキャンは、試験の35日目に行われた。灰色のバーは、IgG4対照を投与されたLeprhu/hu(N=5)。黒色のバーは、IgG4対照を投与されたLeprhu/huLep-/-(N=7)。白色のバーは、H4H17319P2を投与されたLeprhu/huLep-/-(N=8)。マウスには、10mg/kgのH4H17319P2またはアイソタイプ対照抗体のいずれかを毎週皮下注射した。データは、平均+SEMとして表された。、基準と比較して、P<0.05。#、各時点でのLeprhu/hu + IgG4対照と比較して、P<0.05。+、各時点でのH4H17319P2群と比較して、P<0.05。統計解析は、二元配置ANOVAとテューキーの事後検定により実施された。
【0079】
図23図23A~23Cは、先天性レプチン受容体欠損症のマウスモデルにおける、血中グルコース、体重および食物摂取量に対するH4H17319P2の効果を示す。図23Aは、mg/dLを単位とした血中グルコースを示し、図23Bは、グラム単位での体重、および図23Cは、グラム単位での累積食物摂取量を示す。灰色の丸は、IgG4対照を投与されたLeprhu/hu(N=7~8)。黒色の四角は、IgG4対照を投与されたLeprA409E/A409E(N=9~10)。白色の四角は、H4H17319P2を投与されたLeprA409E/A409E(N=10)。データは、平均+SEMとして表された。、シダックの事後検定を用いた混合効果モデルによる、LeprA409E/A409E + IgG4対照と比較した、LeprA409E/A409E + H4H17319P2群に関し、P <.05。食物摂取量評価に関し、Leprhu/hu + IgG4対照群から1匹のマウスが除外され、LeprA409E/A409E + IgG4対照群から1匹のマウスが除外された。原因は、試験中の死亡によるものであった。食物摂取量評価に関し、Leprhu/hu + IgG4対照群から1匹のマウスが除外され、LeprA409E/A409E + IgG4対照群から3匹のマウスが除外された。原因は、試験中、過度に細かく刻まれた食物があったためである。
【0080】
図24図24A~24Cは、先天性レプチン受容体欠損症のマウスモデルにおける、μCT体組成解析による脂肪量、骨量および除脂肪量を示す。図24Aは、脂肪量、図24Bは、骨量、および図24Cは、除脂肪量をグラム単位で示す。マウスには、試験開始前の-1日目に基準スキャンを行った。mAb投与後のスキャンは、試験の41日目に行われた。灰色のバーは、IgG4対照を投与されたLeprhu/hu(N=7~8)。黒色のバーは、IgG4対照を投与されたLeprA409E/A409E(N=9~10)。白色のバーは、H4H17319P2を投与されたLeprA409E/A409E(N=10)。マウスには、10mg/kgのH4H17319P2またはアイソタイプ対照(IgG4)抗体のいずれかを毎週皮下注射した。データは、平均+SEMとして表された。、基準と比較して、P<0.05。#、各時点でのLeprhu/hu + IgG4対照と比較して、P<0.05。+、各時点でのLeprA409E/A409E + H4H17319P2と比較して、P<0.05。すべての統計解析は、シダック事後検定を用いた混合効果モデルを使用して実施された。
【0081】
図25-1】図25は、ヒト初回投与臨床試験のパートAコホートのイベントスケジュールを示しており、スクリーニング、治療および追跡ビジットのための各ビジットで実施される手順を含む。
図25-2】図25-1の説明を参照されたい。
【0082】
図26-1】図26は、ヒト初回投与臨床試験のパートBコホートのイベントスケジュールを示しており、前スクリーニング、スクリーニング、および基準決定のための各ビジットで実施される手順を含む。
図26-2】図26-1の説明を参照されたい。
図26-3】図26-1の説明を参照されたい。
【0083】
図27-1】図27は、ヒト初回投与臨床試験のパートBコホートの第二のイベントスケジュールを示しており、治療および追跡のための各ビジットで実施される手順を含む。
図27-2】図27-1の説明を参照されたい。
【発明を実施するための形態】
【0084】
レプチンは脂肪組織ホルモンであり、エネルギーバランスならびに代謝機能と神経内分泌機能を支配する(Flak and Myers,Mol Endocrinol.2016;30:3-12;Zhang et al.Nature.1994;372:425-432)。エネルギー欠乏の状態では、低い循環レプチン値が適応反応を誘発し、そうした反応には、神経内分泌経路の調節を介した空腹感の上昇とエネルギー保存が含まれる。クラスIサイトカイン受容体ファミリーの1種であるレプチン受容体(LEPR)を会合させることにより、レプチンはエネルギーバランスと代謝バランスを調節する(Tartaglia et al.,1995)。LEPRは単一遺伝子によりコードされており、代替的スプライシングによってLEPRの複数のスプライスアイソフォームが生じる。それらアイソフォームは、C末端配列が異なっている(Baumann et al.,1996)。これらのスプライスアイソフォームのうち、LEPR-bは、レプチンの効果を介在する基本的なアイソフォームであり、そしてJAK-STATシグナル伝達を刺激する唯一のアイソフォームである(Baumann et al.,1996;Tartaglia et al.,1995;White and Tartaglia,1996)。脳中のLEPR-b発現ニューロンが、エネルギー、代謝、および神経内分泌のホメオスタシスに対するレプチンの作用の基本的な標的でありかつメディエーターである。これは、Leprdb/dbマウスにおけるLepr-bの選択的ニューロン発現によって肥満、糖尿病および繁殖能力の表現型が回復するという実験結果により支持される(de Luca et al.,2005)。さらにニューロンからLepr遺伝子を欠失させることで、Leprdb/db動物の肥満と高血糖の表現型が模写された(Cohen et al.,2001)。レプチン欠損症の原因は、Lep遺伝子における機能喪失性の遺伝子変異であり、これにより過食、肥満、インスリン抵抗性、脂質異常症および神経内分泌機能障害がマウスで生じ、これらはレプチン治療で反転される(Barash et al.,1996;Campfield et al.,1995;Chehab et al.,1996;Halaas et al.,1995;Pelleymounter et al.,1995)。臨床的には、レプチンアナログであるメトレレプチンが、レプチン欠損症による単一遺伝子型肥満を有する患者において、肥満ならびに代謝機能不全および生殖機能障害を反転させる(Farooqi et al.,1999;Farooqi et al.,2002)。原発性のレプチン欠損症と同じく、二次的な低レプチン血症の疾患状態も、グルコースと脂質の代謝機能不全に関連しており、これらはレプチン治療で逆転させることができる。先天性および後天性の全身型リポジストロフィーは稀で重度な疾患であり、脂肪組織の貯蔵のほぼ完全な消失を特徴とする(Brown et al.,2016;Patni and Garg,2015)。これら患者における、非常に低い循環レプチン値によって、過食症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、肝臓脂肪症、インスリン抵抗性および糖尿病の状態が生じる(Brown et al.,2016;Patni and Garg,2015)。特にTGレベルが500mg/dL~1000mg/dLを超えた場合、高トリグリセリド血症の重度な合併症は、急性で再発性の膵炎(Yadav and Pitchumoni 2003)であり、感染または臓器不全のような合併症を伴う場合には40%を超える死亡率で生死を脅かす可能性がある(UK Guidelines 2005)。肝臓における異所性の脂質蓄積(肝臓脂肪症)は、脂肪性肝炎を生じる場合がある。脂肪性肝炎は、脂肪の蓄積、細胞損傷、および肝臓の炎症が特徴であり、肝硬変の最も普遍的な原因の一つである(El-Zayadi 2008,Federico 2006,and Festi 2004)。
【0085】
全身型リポジストロフィーによるほぼ完全な脂肪蓄積消失の特性を発現させるTg-aP2-nSrebp1cマウスにおいて、レプチン治療によって過食は低減され、脂質異常症、肝臓脂肪症および血糖管理が改善された(Shimomura et al.,1999;Shimomura et al.,1998)。メトレレプチンは、全身型リポジストロフィーの患者において代謝機能不全を軽減する(Oral et al.,2002)。しかし、部分型リポジストロフィーの患者の治療には承認されていない(Ajluni et al.,2016)。
【0086】
リポジストロフィーの患者はしばしば、例えば慢性腎疾患、心血管系の合併症、自己免疫疾患、ならびに末梢T細胞リンパ腫、急性リンパ芽球性白血病およびホジキンリンパ腫などの他の重篤な共存症を経験している。
【0087】
先天性レプチン欠損症の患者は、誕生後の最初の数カ月で急速な体重増加と免疫異常を呈し、生後10~20年以内の死亡リスクが著しく上昇する(Funcke,et al.,Monogenic forms of childhood obesity due to mutations in the leptin gene.Mol Cell Pediatr.2014;1(1):3);(Dubern,et al.,Leptin and leptin receptor-related monogenic obesity.Biochimie.2012;94(10):2111-5);(Paz-Filho,et al.,Ten years of leptin replacement therapy.Obesity reviews.2011;12:e315-e323.)。先天性レプチン欠損症に承認された治療法は存在しないが、レプチンの機能喪失性変異が原因の単一遺伝子型肥満の患者のいくつかの小規模な非盲検試験において、レプチン治療によって、食欲、体重、脂肪症、代謝異常、骨年齢と実年齢の間のギャップ、ホルモン異常、および免疫異常が大幅に低減した(Wabitsch,et al.,Severe Early-Onset Obesity Due to Bioinactive Leptin Caused by a p.N103K Mutation in the Leptin Gene.J Clin Endocrinol Metab.2015;100(9):3227-3230);(Farooqi,et al.,Effects of recombinant leptin therapy in a child with congenital leptin deficiency.N Engl J Med.1999;341(12):879-84);(Licinio,et al.,Phenotypic effects of leptin replacement on morbid obesity,diabetes mellitus,hypogonadism,and behavior in leptin-deficient adults.Proc Natl Acad Sci USA.2004;101(13):4531-6);(Gibson et al.,Congenital Leptin Deficiency Due to Homozygosity for the Delta133G mutation:report of another case and evaluation of response to four years of leptin therapy.J Clin Endocrin.& Metab.2004;89(10):4821-4826)。他の報告されているレプチン療法では、血漿甲状腺ホルモンレベルの急速で持続的な増加が生じ、そして適切なタイミングの思春期発育が促進され、循環CD4(+)T細胞数およびT細胞増殖およびサイトカイン放出が改善された(Farooqi et al.,Beneficial effects of leptin on obesity,T cell hyporesponsiveness,and neuroendocrine/metabolic dysfunction of human congenital leptin deficiency.J Clin Invest.2002;110(8):1093-1103)。しかしながら一部の症例では、中和活性を有する抗メトレレプチン抗体が発生し、患者は標的治療の選択肢が無い状態となってしまう(Ozsu,et al.,Early-onset severe obesity due to complete deletion of the leptin gene in a boy.J Pediatr Endocrinol Metab.2017;30(11):1227-1230)。本明細書において、H4H17319P2(WO2017/66204を参照)などのレプチン受容体アゴニストを使用して、先天性レプチン欠損症の患者を治療する方法が提供される。
【0088】
本明細書において、レプチンと似た効能を有する、ヒトLEPRを活性化するアゴニスト性モノクローナル抗体が提供される。LEPRのモノクローナル抗体介在性の活性化は、原発性および二次性のレプチン欠損障害のマウスモデルにおいて、重度な体重増加と代謝機能不全の逆転に有効である。さらにLEPRアゴニスト性モノクローナル抗体は、正常な重量のマウス、ならびに正常な体脂肪と高体脂肪の非ヒト霊長類において、脂肪症と体重を減少させ、そして循環レプチンの存在下でLEPRを刺激する。
【0089】
本開示が、記述される特定の方法および実験条件に限定されず、それはこのような方法および条件が変化する場合があるからであることが理解されるべきである。本開示の範囲は添付の特許請求の範囲のみによって制限されるため、本明細書に使用される用語は、特定の実施形態のみを記述する目的で使用されており、制限することを意図しないことも理解されるべきである。
【0090】
別途定義されない限り、本明細書で使用される全ての技術用語および科学用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般に理解されるものと同一の意味を有する。本明細書にて使用される場合、用語「約」とは、特定の言及される数値に関して使用される場合、値が言及された値から1%以下まで変動し得ることを意味する。例えば、本明細書にて使用される場合、「約100」という表現には、99および101、ならびに間の全ての値(例えば、99.1、99.2、99.3、99.4、など)が含まれる。
【0091】
本明細書に記述したものと類似または同等な任意の方法および材料を本発明の実施または試験に使用することができるが、好ましい方法および材料をこれから記述する。
【0092】
定義
本明細書で使用される場合、「レプチン受容体」、「LEPR」、およびこれに類する表現は、配列番号113で表されるアミノ酸配列を含むヒトレプチン受容体を意味する(UniProtKB/Swiss-Prot登録番号P48357も参照)。科学的文献で使用されるLEPRの代替名は、「OB受容体」、「OB-R」、および「CD295」を含む。LEPRは、「WSX」とも称される(例えば、米国特許第7,524,937号を参照)。「LEPR」という表現には、単量体および多量体(例えば、二量体)LEPR分子の両方が含まれる。本明細書において使用される場合、「単量体ヒトLEPR」という表現は、多量体形成ドメインを全く含有も包含もせず、かつ、別のLEPR分子への直接の物理的接続なしに単一のLEPR分子として通常の条件下で存在する、LEPRタンパク質またはその部分を意味する。例示的な単量体LEPR分子は、本明細書において、配列番号114のアミノ酸配列を含む「hLEPR.mmh」と呼称される分子である(例えば、本明細書の実施例3を参照)。本明細書で使用される場合、「二量体ヒトLEPR」という表現は、リンカー、共有結合、非共有結合を介してまたは抗体Fcドメインなどの多量体形成ドメインを介して互いに接続された二個のLEPR分子を含む構築物を意味する。例示的な二量体LEPR分子は、本明細書において、配列番号115のアミノ酸配列を含む「hLEPR.mFc」(例えば、本明細書の実施例3を参照のこと)、または配列番号116のアミノ酸配列を含む「hLEPR.hFc」と呼称される分子である。本明細書において使用される場合、具体的な別段の示唆が無い限り、「抗LEPR抗体」、「LEPRに特異的に結合する抗体」、「LEPR特異的結合タンパク質」といった表現は、全長ヒトLEPR、単量体ヒトLEPR、二量体ヒトLEPR、またはLEPR細胞外ドメインを含む、もしくはLEPR細胞外ドメインからなる他の構築体に結合する分子を指す。
【0093】
本明細書における、タンパク質、ポリペプチド、およびタンパク質断片への全ての言及は、非ヒト種からと明示的に指定されていない限り、それぞれのタンパク質、ポリペプチド、またはタンパク質断片のヒトバージョンを指すことが意図されている。したがって、「LEPR」という表現は、例えば、「マウスLEPR」、「サルLEPR」など、非ヒト種からであると特定されていない限り、ヒトLEPRを意味する。
【0094】
本明細書において使用される場合、「細胞表面発現LEPR」という表現は、LEPRタンパク質の少なくとも一部が細胞膜の細胞外側に曝露されて抗体の抗原結合部分にアクセス可能であるように、インビトロまたはインビボで細胞の表面上に発現される、一つ以上のLEPRタンパク質またはその細胞外ドメインを意味する。「細胞表面発現LEPR」は、LEPRタンパク質を正常に(例えば天然の状態で、または野生型の状態で)発現する細胞の表面上で発現されるLEPRタンパク質を含むか、またはそれからなり得る。あるいは、「細胞表面発現LEPR」は、通常はその表面上にヒトLEPRを発現しないがその表面上にLEPRを発現するように人為的に操作されている細胞の表面上で発現されるLEPRタンパク質を含むか、またはそれからなりうる。
【0095】
本明細書で使用される場合、例えば「抗LEPR抗体」または「ヒトレプチン受容体に結合する抗体」などの表現は、単一特異性を有する一価抗体、ならびにLEPRに結合する第一のアームと第二(標的)抗原に結合する第二のアームを含む二重特異性抗体の両方を含み、この場合において当該抗LEPRアームは、本明細書の表1に記載されるHCVR/LCVR配列またはCDR配列のいずれかを含む。
【0096】
「抗体」という用語は、本明細書にて使用される場合、特定の抗原(例えば、LEPR)と特異的に結合するまたは相互作用する少なくとも一つの相補性決定領域(CDR)を含む、あらゆる抗原結合分子または分子複合体を意味する。用語「抗体」には、四つのポリペプチド鎖、ジスルフィド結合によって相互接続した二つの重(H)鎖および二つの軽(L)鎖、ならびにそれらの多量体(例えば、IgM)を含む、イムノグロブリン分子が包含される。各重鎖は、重鎖可変領域(本明細書ではHCVRまたはVと省略される)と重鎖定常領域とを含む。重鎖定常領域は、C1、C2、およびC3の三つのドメインを含む。軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではLCVRまたはVと省略される)と軽鎖定常領域とを含む。軽鎖定常領域は、一つのドメイン(C1)を含む。V領域およびV領域は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる、より保存された領域が点在する相補性決定領域(CDR)と呼ばれる超可変領域へとさらに細分することができる。各VおよびVは、以下の順序でアミノ末端からカルボキシ末端に配置された3つのCDRと4つのFRから構成される:FR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、FR4。本発明の異なる実施形態において、抗LEPR抗体(またはその抗原結合部分)のFRは、ヒトの生殖系列配列と同一であってもよく、または自然にもしくは人為的に修飾されていてもよい。アミノ酸コンセンサス配列は、二つ以上のCDRの並列分析に基づいて定義されうる。
【0097】
本明細書で使用される場合、「抗体」という用語は、完全抗体分子の抗原結合断片も含む。本明細書で使用される場合、抗体の「抗原結合部分」、抗体の「抗原結合断片」などという用語は、抗原に特異的に結合して複合体を形成する、任意の天然に存在する、酵素的に得ることができる、合成の、または遺伝子的に操作されたポリペプチドまたは糖タンパク質を含む。抗体の抗原結合断片は、例えば、抗体可変ドメインおよび任意で定常ドメインをコードするDNAの操作および発現を要するタンパク質分解または組み換え遺伝子工学技術といった任意の好適な標準的方法を用いて、完全抗体分子から導いてもよい。このようなDNAは公知であり、かつ/または例えば、市販の供給源、DNAライブラリ(例えば、ファージ抗体ライブラリを含む)から容易に入手可能であるか、もしくは合成されうる。DNAを配列決定しかつ化学的にまたは分子生物学技法の使用によって操作して、例えば、一つまたは複数の可変ドメインおよび/または定常ドメインを好適な構成に配置する、またはコドンを導入する、システイン残基を作成する、アミノ酸を修飾する、付加する、もしくは欠失させることなどが可能である。
【0098】
抗原結合断片の非限定例としては、(i)Fab断片、(ii)F(ab’)2断片、(iii)Fd断片、(iv)Fv断片、(v)一本鎖Fv(scFv)分子、(vi)dAb断片、および(vii)抗体の超可変領域(例えば、CDR3ペプチドなどの単離された相補性決定領域(CDR))を模倣するアミノ酸残基、または拘束FR3‐CDR3‐FR4ペプチドからなる最小認識単位が挙げられる。ドメイン特異的抗体、単一ドメイン抗体、ドメイン欠失した抗体、キメラ抗体、CDR移植抗体、ダイアボディ、トリアボディ、テトラボディ、ミニボディ、ナノボディ(例えば、一価ナノボディ、二価ナノボディなど)、小モジュラー免疫薬(SMIP)、およびサメ可変IgNARドメインなどの他の操作された分子もまた、本明細書で使用される場合、「抗原結合断片」という表現に包含される。
【0099】
抗体の抗原結合断片は、典型的に、少なくとも一つの可変ドメインを含む。可変ドメインは任意の大きさでもアミノ酸組成でもよく、かつ、一つ以上のフレームワーク配列に隣接するまたはフレーム内にある少なくとも一つのCDRを一般的に含み得る。Vドメインと結合したVドメインを有する抗原結合断片において、VドメインおよびVドメインは、任意の好適な配置で互いに対して配置されうる。例えば、可変領域は二量体であり、V-V、V-VまたはV-Vの二量体を含有し得る。あるいは、抗体の抗原結合断片は、単量体のVまたはVドメインを含有し得る。
【0100】
特定の実施形態では、抗体の抗原結合断片は、少なくとも一つの定常ドメインに共有結合された少なくとも一つの可変ドメインを含有しうる。本発明の抗体の抗原結合断片内に見られ得る可変ドメインおよび定常ドメインの非限定的な例示的な構成には、(i)V-C1、(ii)V-C2、(iii)V-C3、(iv)V-C1-C2、(v)V-C1-C2-C3、(vi)V-C2-C3、(vii)V-CL、(viii)V-C1、(ix)V-C2、(x)V-C3、(xi)V-C1-C2、(xii)V-C1-C2-C3、(xiii)V-C2-C3、および(xiv)V-Cが含まれる。上に列挙される例示的な構成のうちのいずれかを含む可変ドメインおよび定常ドメインの任意の構成において、可変ドメインおよび定常ドメインは、互いに直接連結され得るか、または完全もしくは部分的なヒンジもしくはリンカー領域によって連結されうる。ヒンジ領域は、単一ポリペプチド分子における隣接する可変ドメインおよび/または定常ドメイン間の可動性または半可動性連鎖をもたらす、少なくとも2個(例えば、5、10、15、20、40、60個以上)のアミノ酸からなってもよい。さらに、本発明の抗体の抗原結合断片は、互いにおよび/または一つまたは複数の単量体VもしくはVドメインとの(例えば、ジスルフィド結合による)非共有会合で上に列挙される可変ドメイン構成および定常ドメイン構成のいずれかのホモ二量体またはヘテロ二量体(または他の多量体)を含みうる。
【0101】
完全抗体分子と同様に、抗原結合断片は単一特異性または多重特異性(例えば二重特異性)であってもよい。抗体の多重特異性抗原結合断片は、典型的に、少なくとも二つの異なる可変ドメインを含み、各々の可変ドメインは、別個の抗原、または同じ抗原上の異なるエピトープに特異的に結合することができる。本明細書に開示される例示的な二重特異性抗体フォーマットを含む任意の多重特異性抗体フォーマットは、当技術分野で利用可能な常套的な技術を使用して、本発明の抗体の抗原結合断片に関する使用のために適合されうる。
【0102】
本発明の特定の実施形態では、本発明の抗LEPR抗体は、ヒト抗体である。用語「ヒト抗体」は、本明細書にて使用される場合、ヒト生殖系列イムノグロブリン配列由来の可変領域および定常領域を有する抗体を含むことを意図する。本発明のヒト抗体は、例えばCDRにおいて、特にCDR3において、ヒト生殖系列の免疫グロブリン配列によってコードされないアミノ酸残基を含み得る(例えば、インビトロでの無作為または部位特異的な突然変異誘導により、またはインビボでの体細胞変異により変異が導入される)。しかしながら、用語「ヒト抗体」とは、本明細書にて使用される場合、マウスなどの別の哺乳類種の生殖系列由来のCDR配列がヒトフレームワーク配列上に移植されている抗体を含むようには意図されていない。
【0103】
本発明の抗体は、一部の実施形態では、組換えヒト抗体であってもよい。用語「遺伝子組換えヒト抗体」とは、本明細書にて使用される場合、遺伝子組換え手段によって、調製される、発現する、作成される、または単離される全てのヒト抗体、例えば、宿主細胞(以下で詳述する)中に形質導入された組換え発現ベクターを用いて発現した抗体、組換え体から単離された抗体、コンビナトリアルヒト抗体ライブラリ(以下で詳述する)、ヒトイムノグロブリン遺伝子に対してトランスジェニックである動物(例えば、マウス)から単離された抗体(例えば、Taylor et al.(1992)Nucl.Acids Res.20:6287-6295を参照のこと)、または抗体ヒトイムノグロブリン遺伝子配列から他のDNA配列へスプライスすることを含むあらゆるその他の手段によって調製される、発現する、作成される、または単離される抗体などを含むように意図される。その様な遺伝子組換えヒト抗体は、ヒト生殖系列イムノグロブリン配列由来の可変領域および定常領域を有する。特定の実施形態において、しかしながら、その様な遺伝子組換えヒト抗体はインビトロでの突然変異誘発(または、ヒトIg配列にトランスジェニックな動物を使用する場合、インビボでの体細胞の突然変異誘発)に供されるため、組換え抗体のV領域およびV領域のアミノ酸配列は、ヒト生殖系列V配列およびV配列に由来し、関連する配列である一方で、インビボでのヒト抗体生殖系列レパートリー中には自然に存在し得ない。
【0104】
本発明は、ヒンジ、C2領域またはC3領域において一つまたは複数の変異を有する抗体を包含し、それら変異は、例えば製造において、所望の抗体型の収率を改善するためなどに望ましい可能性がある。
【0105】
本発明の抗体は、単離抗体であってもよい。本明細書において使用される場合、「単離抗体」とは、その天然環境の少なくとも一つの構成要素から特定され、および分離され、および/または回収された抗体を意味する。例えば、生物体の少なくとも一つの構成要素から、または当該抗体が自然に存在する、もしくは自然に産生される組織または細胞から、分離され、または取り出された抗体は、本発明の目的に関して「単離抗体」である。単離抗体は、組み換え細胞内のin situな抗体を含む。単離抗体は、少なくとも一つの精製工程または単離工程を受けた抗体である。特定の実施形態によれば、単離抗体は、他の細胞物質および/または化学物質を実質的に含まなくてもよい。
【0106】
本発明は、抗体が誘導された対応する生殖細胞系列配列と比較して、重鎖可変ドメインおよび軽鎖可変ドメインのフレームワークならびに/またはCDR領域に一つまたは複数のアミノ酸置換、挿入、および/または欠失を含む、本明細書に開示される抗LEPR抗体のバリアントを含む。そのような変異は、本明細書に開示されるアミノ酸配列を、例えば公開抗体配列データベースから入手可能な生殖系列配列と比較することによって容易に確認されうる。本発明は、本明細書に開示されるアミノ酸配列のいずれかに由来する抗体、およびこれらの抗原結合断片を含み、一つまたは複数のフレームワークおよび/またはCDR領域内の一つまたは複数のアミノ酸は、抗体が由来する生殖系列配列の対応する残基、または別のヒト生殖系列配列の対応する残基、または対応する生殖系列残基の保存的アミノ酸置換へと変異する(そのような配列変化は、本明細書において集合的に「生殖細胞系変異」と称される)。当業者であれば、本明細書に開示される重鎖可変領域配列および軽鎖可変領域配列から開始して、一つまたは複数の個々の生殖系列変異またはそれらの組合わせを含む、多くの抗体および抗原結合断片を容易に産生することができる。特定の実施形態では、Vおよび/またはVドメイン内のフレームワークおよび/またはCDR残基のすべてが、抗体が由来する元の生殖系列配列に見られる残基に再び変異する。他の実施形態では、特定の残基のみ、例えば、FR1の最初の8個のアミノ酸内、もしくはFR4の最後の8個のアミノ酸内に見られる変異残基のみ、またはCDR1、CDR2、もしくはCDR3内に見られる変異残基のみが、元の生殖系列配列に変異する。他の実施形態では、フレームワークおよび/またはCDR残基のうちの一つまたは複数は、異なる生殖系列配列(すなわち、抗体が元々由来する生殖系列配列とは異なる生殖系列配列)の対応する残基に変異する。さらに、本発明の抗体は、フレームワークおよび/またはCDR領域内に二つ以上の生殖系列変異の任意の組み合わせを含有してもよく、例えば、ある特定の個々の残基が、特定の生殖系列配列の対応する残基に変異する一方で、元の生殖系列配列とは異なる他の残りの残基が維持されるか、または異なる生殖系列配列の対応する残基に変異する。いったん得られれば、一つ以上の生殖系列変異を含有する抗体および抗原結合断片は、結合特異性の改善、結合アフィニティの増大、アンタゴニストまたはアゴニストの生物学的特性の改善または亢進(場合により得る)、免疫原性の低下などの一つ以上の所望の特性について容易に試験することができる。この一般的な様式で得られた抗体および抗原結合断片は、本発明に包含される。
【0107】
本発明は、本明細書に開示される例示的抗LEPR抗体のいずれかに存在する、一つもしくは複数の可変ドメインまたはCDRのアミノ酸配列に対し、実質的に類似した、または実質的に同一であるアミノ酸配列を含む抗LEPR抗体および抗原結合断片を含む。
【0108】
ポリペプチドに適用される場合、「実質的な類似性」または「実質的に類似の」という用語は、二つのペプチド配列が、既定のギャップ重みを用いてプログラムGAPまたはBESTFITなどによって最適に整列した場合、少なくとも95%の配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも98%または99%の配列同一性を共有することを意味する。好ましくは、同一ではない残基位置は、保存的アミノ酸置換の点で異なっている。「保存的アミノ酸置換」とは、アミノ酸残基が、類似の化学的特性(例えば、電荷または疎水性)を備えた側鎖(R基)を有する別のアミノ酸残基によって置換されたものである。一般に、保存的アミノ酸置換は、タンパク質の機能性特性を実質的に変化させない。二つ以上のアミノ酸配列が保存的置換により互いに異なる場合、配列同一性の百分率または相同性の程度は、置換の保存的性質を補正するために上向きに調整してもよい。この調整を行うための手段は、当業者に周知である。例えば、Pearson(1994)Methods Mol.Biol.24:307-331を参照のこと。類似の化学的特性を備えた側鎖を有するアミノ酸の基の例としては、(1)脂肪族側鎖:グリシン、アラニン、バリン、ロイシンおよびイソロイシン、(2)脂肪族-ヒドロキシル側鎖:セリンおよびトレオニン、(3)アミド含有側鎖:アスパラギンおよびグルタミン、(4)芳香族側鎖:フェニルアラニン、チロシン、およびトリプトファン、(5)塩基性側鎖:リジン、アルギニン、およびヒスチジン、(6)酸性側鎖:アスパラギン酸およびグルタミン酸、ならびに(7)含硫側鎖はシステインおよびメチオニンである、が挙げられる。好ましい保存的アミノ酸置換基は、バリン-ロイシン-イソロイシン、フェニルアラニン-チロシン、リジン-アルギニン、アラニン-バリン、グルタミン酸-アスパラギン酸およびアスパラギン-グルタミンである。あるいは、保存的置換とは、Gonnet et al.(1992)Science 256:1443-1445に開示されるPAM250 log-likelihood matrixにおける正の値を有する任意の変化である。「適度に保存的な」置換とは、PAM250対数尤度行列において負以外の値を有する何らかの変化である。
【0109】
ポリペプチドに関する配列類似性は、配列同一性とも呼称され、典型的には配列解析ソフトウェアを使用して測定される。タンパク質解析ソフトウェアは、保存的アミノ酸置換を含む種々の置換、欠失および他の修飾へ割り当てられた類似性の測定値を用いて、類似の配列をマッチさせる。例えば、GCGソフトウェアは、異なる種の生物由来の相同ポリペプチドのような密接に関連するポリペプチド間のまたは野生型タンパク質とその変異タンパク質の間の配列相同性または配列同一性を判定するための既定パラメータとともに使用することができるGapおよびBestfitなどのプログラムを含有する。例えば、GCG第6.1版を参照されたい。ポリペプチド配列は、GCG第6.1版におけるプログラムである、既定パラメータまたは推奨パラメータを備えたFASTAを使用して比較することもできる。FASTA(例えば、FASTA2およびFASTA3)は、問い合わせ配列と検索配列との間の最良重複の領域の整列および配列同一性パーセントを提供する(Pearson(2000)上述)。本発明の配列を、異なる生物由来の多数の配列を含有するデータベースと比較する場合の別の好ましいアルゴリズムは、既定パラメータを用いるコンピュータプログラムBLAST、特にBLASTPまたはTBLASTNである。例えば、Altschul et al.(1990)J.Mol.Biol.215:403~410、およびAltschul et al.(1997)Nucleic Acids Res.25:3389-402を参照のこと。
【0110】
本明細書において使用する場合、「対象」という用語は、レプチン欠損症と関連した疾患または障害の改善、予防、および/または治療を必要とする動物、好ましくは哺乳動物、より好ましくはヒトを指す。対象は、成人または幼児であり得る。対象は、例えば全身型リポジストロフィーまたは部分型リポジストロフィーなどの代謝機能不全を有し得る。対象は、先天性レプチン欠損症または後天性レプチン欠損症を有し得る。先天性レプチン欠損症を有する対象には、循環レベルのレプチンをほとんどもしくは全く生じさせない、または循環するが生物活性が無いレプチンを生じさせる遺伝子変異を有する対象が含まれる。対象は、レプチン欠損症に関連する一つまたは複数の症状を有し得る。本明細書において使用される場合、「対象」という用語は、「患者」という用語と相互交換可能である。一部の態様では、対象は、メトレレプチンに対する中和抗体を有する。
【0111】
本明細書で使用される場合、「治療する」、「治療すること」、または「治療」という用語は、本発明の抗体などの治療剤を、それを必要とする対象に投与することによって、レプチン欠損症の少なくとも一つの症状の重症度の低下または改善を指す。当該用語は、関連疾患の進行の阻害、または疾患に関連した状態もしくは症状の悪化の阻害を含む。当該用語は、疾患の肯定的な予後も含む。すなわち、本発明抗体などの治療剤の投与によって、対象は、症状が無くなり得る。肯定的な予後には、以下の状態のいずれかの軽減が含まれ得る:過食症、高血糖症、インスリン抵抗性、脂質異常症、または肝臓脂肪症。
【0112】
「予防する」、「予防すること」または「予防」という用語は、レプチン欠損症と関連した任意の症状、状態または兆候の発現の阻害を指す。
【0113】
治療剤は、治療用量で対象に投与されてもよい。「治療有効量」という句によって意味されるのは、所望の効果のために投与されて所望の効果を生じる量である。正確な量は、治療の目的に依存し、公知の技術を使用して当業者によって確認可能であり(例えば、Lloyd(1999)The Art,Science and Technology of Pharmaceutical Compoundingを参照されたい)、そして本明細書において詳細に検討される。
【0114】
Fcバリアントを含む抗LEPR抗体
本発明の特定の実施形態によると、例えば中性pHと比較して酸性pHでFcRn受容体への抗体結合を強化するまたは減少させる一つまたは複数の変異を含むFcドメインを含む、抗LEPR抗体が提供される。例えば、本発明は、FcドメインのC2またはC3領域に変異を含む抗LEPR抗体を含み、この場合において当該変異は、酸性環境において(例えば、pHが約5.5~約6.0の範囲のエンドソームにおいて)FcRnに対するFcドメインのアフィニティを増加させる。そのような突然変異は、動物に投与されたときに抗体の血清半減期の増加をもたらしうる。このようなFc修飾の非限定的な例には、例えば、250位(例えば、EまたはQ)、250位および428位(例えば、LまたはF)、252位(例えば、L/Y/F/WまたはT)、254位(例えば、SまたはT)、および256位(例えば、S/R/Q/E/DまたはT)における修飾、または428位および/もしくは433位(例えば、H/L/R/S/P/QまたはK)および/もしくは434位(例えば、H/FまたはY)における修飾、あるいは250位および/もしくは428位における修飾、あるいは307位もしくは308位(例えば、308F、V308F)、および434位における修飾が含まれる。一実施形態では、修飾は、428L(例えば、M428L)および434S(例えば、N434S)修飾、428L、259I(例えば、V259I)、および308F(例えば、V308F)修飾、433K(例えば、H433K)および434(例えば、434Y)修飾、252、254、および256(例えば、252Y、254T、および256E)修飾、250Qおよび428L修飾(例えば、T250QおよびM428L)、ならびに307および/または308修飾(例えば、308Fおよび/または308P)を含む。
【0115】
例えば、本発明は、以下からなる群から選択される変異の一つ以上のペアまたは群を含むFcドメインを含む抗LEPR抗体を含む:250Qおよび248L(例えば、T250QおよびM248L);252Y、254Tおよび256E(例えば、M252Y、S254TおよびT256E);428Lおよび434S(例えば、M428LおよびN434S);および433Kおよび434F(例えば、H433K およびN434F)。前述のFcドメイン変異、および本明細書に開示される抗体可変ドメイン内の他の変異の全ての可能な組み合わせが、本発明の範囲内であることが企図される。
【0116】
本発明の抗LEPR抗体は、エフェクター機能が低下した改変型Fcドメインを含んでもよい。本明細書において使用される場合、「エフェクター機能が低下した改変型Fcドメイン」とは、当該改変Fcを含む分子が、天然の野生型のFc部分を含むコンパレータ分子と比較して、細胞殺傷(例えば、ADCCおよび/またはCDC)、補体活性化、食作用およびオプソニン化からなる群から選択される少なくとも一つの作用の重大性または程度において低下を呈するように野生型の天然Fcドメインと比較して改変され、変異し、切断されている、免疫グロブリンの任意のFc部分を意味する。特定の実施形態では、「エフェクター機能が低下した改変型Fcドメイン」は、Fc受容体(例えばFcγR)への結合が低下した、または減弱したFcドメインである。
【0117】
本発明の特定の実施形態では、改変型Fcドメインは、ヒンジ領域に置換を含むバリアントIgG1 FcまたはバリアントIgG4 Fcである。例えば本発明の文脈で使用するための改変型Fcは、IgG1 Fcヒンジ領域の少なくとも一つのアミノ酸がIgG2 Fcヒンジ領域の対応するアミノ酸と置換されている、バリアントIgG1 Fcを含んでもよい。あるいは本発明の文脈で使用するための改変型Fcは、IgG4 Fcヒンジ領域の少なくとも一つのアミノ酸がIgG2 Fcヒンジ領域の対応するアミノ酸と置換されている、バリアントIgG4 Fcを含んでもよい。本発明の文脈において使用され得る例示的な改変型Fc領域は、米国特許出願公開2014/0243504に記載される。
【0118】
本発明の文脈において使用され得る他の改変型FcドメインおよびFc改変は、US 2014/0171623、US 8,697,396、US 2014/0134162、WO 2014/043361に記載される改変のいずれかを含む。本明細書に記載される改変型Fcドメインを含む抗体または他の抗原結合融合タンパク質を構築する方法は当分野で公知である。
【0119】
抗体の生物学的特徴
本発明は、ヒトLEPRに結合しかつLEPRシグナル伝達を活性化する抗体およびその抗原結合断片を含む。そうした抗体は、本明細書では「アゴニスト性抗体」と呼称され得る。本発明の文脈において、「LEPRシグナル伝達の活性化」は、LEPRを発現する細胞において通常はLEPRとレプチンの相互作用から生じる細胞内作用の刺激を意味する。特定の実施形態では、「LEPRシグナル伝達の活性化」とは、STAT3の転写活性化を意味し、転写活性化は、例えば、レポーター細胞株で発現された標識型のSTAT3を使用して、STAT3の活性を直接または間接的に測定または特定することができる任意の方法を使用して、検出され得る。例えば本発明は、例えば本明細書の実施例7に規定される細胞ベースのアッセイフォーマットを使用した細胞ベースのレポーターアッセイまたは実質的に類似したアッセイにおいて、LEPRシグナル伝達を活性化する、抗体および抗原結合断片を含む。本明細書の実施例7に記載されるアッセイなどのLEPR活性化を検出する細胞ベースのレポーターアッセイは、EC50値(すなわち、最大シグナル伝達の50%を生じさせるために必要な抗体濃度)を単位として、および/またはレプチンの存在下で観察される最大シグナル伝達の割合を単位として、表され得る検出可能なシグナルを生成することができる。本発明の特定の例示的実施形態では、例えば本明細書の実施例7に規定されるアッセイフォーマットを使用した細胞ベースのレポーターアッセイまたは実質的に類似したアッセイにおいて、約12.0nM未満のEC50値でLEPRシグナル伝達を活性化する抗LEPR抗体が提供される。本発明の特定の例示的実施形態では、例えば本明細書の実施例7に規定されるアッセイフォーマットを使用した細胞ベースのレポーターアッセイまたは実質的に類似したアッセイにおいて、約65%を超えるレプチンシグナル伝達に対して、最大割合の活性化でLEPRシグナル伝達を活性化する抗LEPR抗体が提供される。
【0120】
本発明は、高いアフィニティで単量体型ヒトLEPRに結合する抗体およびその抗原結合断片を含む。例えば本発明は、例えば本明細書の実施例3に規定されるアッセイフォーマットを使用した25℃もしくは37℃の表面プラズモン共鳴または実質的に類似したアッセイにより測定されたときに約150nM未満のKで単量体型ヒトLEPR(例えば、hLEPR.mmh、配列番号114)に結合する、抗LEPR抗体を含む。特定の実施形態によれば、例えば本明細書の実施例3に規定されるアッセイフォーマットを使用した表面プラズモン共鳴または実質的に類似したアッセイにより測定されたときに約150nM未満、約140nM未満、約130nM未満、約120nM未満、約110nM未満、約100nM未満、約90nM未満、約80nM未満、約70nM未満、約60nM未満、約50nM未満、約40nM未満、約30nM未満、約20nM未満、約10nM未満、約9nM未満、約8nM未満、約7nM未満、約6nM未満、約5nM未満、約4nM未満、約3nM未満、約2nM未満、約1nM未満、約900pM未満、約800pM未満、約700pM未満、約600pM未満、約500pM未満、約400pM未満、または約300pM未満のKで、25℃で単量体型ヒトLEPRに結合する、抗LEPR抗体が提供される。
【0121】
本発明はさらに、例えば本明細書の実施例3に規定されるアッセイフォーマットを使用した25℃もしくは37℃の表面プラズモン共鳴または実質的に類似したアッセイにより測定されたときに約50分を超える解離半減期(t1/2)で単量体型ヒトLEPR(例えば、hLEPR.mmh、配列番号114)に結合する、抗体およびその抗原結合断片も含む。特定の実施形態によると、例えば本明細書の実施例3に規定されるアッセイフォーマットを使用した表面プラズモン共鳴または実質的に類似したアッセイにより測定されたときに約50分を超える、約55分を超える、約60分を超える、約65分を超える、またはそれ以上のt1/2で、25℃で単量体型ヒトLEPRに結合する、抗LEPR抗体が提供される。
【0122】
本発明はさらに、二量体型ヒトLEPR(例えば、hLEPR.mFc、配列番号115)に高いアフィニティで結合する抗体およびその抗原結合断片も含む。例えば本発明は、例えば本明細書の実施例3に規定されるアッセイフォーマットを使用した25℃もしくは37℃の表面プラズモン共鳴または実質的に類似したアッセイにより測定されたときに約1.5nM未満のKで二量体型ヒトLEPRに結合する、抗LEPR抗体を含む。特定の実施形態によると、例えば本明細書の実施例3に規定されるアッセイフォーマットを使用した表面プラズモン共鳴または実質的に類似したアッセイにより測定されたときに約150nM未満、約130nM未満、約110nM未満、約80nM未満、約70nM未満、約60nM未満、約50nM未満、約40nM未満、約30nM未満、約20nM未満、または約10nM未満のKで、25℃で二量体型ヒトLEPRに結合する、抗LEPR抗体が提供される。
【0123】
本発明はさらに、例えば本明細書の実施例3に規定されるアッセイフォーマットを使用した25℃もしくは37℃の表面プラズモン共鳴または実質的に類似したアッセイにより測定されたときに約10分を超える解離半減期(t1/2)で二量体型ヒトLEPR(例えば、hLEPR.mFc、配列番号115)に結合する、抗体およびその抗原結合断片も含む。特定の実施形態によると、例えば本明細書の実施例3に規定されるアッセイフォーマットを使用した表面プラズモン共鳴または実質的に類似したアッセイにより測定されたときに約10分を超える、約15分を超える、約20分を超える、約25分を超える、約30分を超える、約40分を超える、約50分を超える、約60分を超える、約70分を超える、またはそれ以上のt1/2で、25℃で二量体型ヒトLEPRに結合する、抗LEPR抗体が提供される。
【0124】
本発明はさらに、ヒトレプチンと複合体化したLEPR(「ヒトレプチンと複合体化したLEPR」は、「レプチン:LEPR」という表現で表される場合もある)に結合する抗体およびその抗原結合断片も含む。例えば本発明は、hLEPRとヒトレプチンを含む、前もって形成された複合体に結合する能力を有する抗体およびその抗原結合断片を含む。すなわち特定の実施形態によれば、抗LEPR抗体とLEPRの間の相互作用は、LEPRと複合体化されたレプチンの存在により阻害されない。同様に、本発明のこの態様によると、レプチンとLEPRの間の相互作用は、抗LEPR抗体の存在により阻害されない。抗体またはその抗原結合断片が、ヒトレプチンと複合体化したLEPRに結合するかを決定するための例示的なアッセイフォーマットは、本明細書の実施例4に記載される。
【0125】
同様に、本発明はさらに、LEPRに結合しかつLEPR:レプチン相互作用を遮断しない抗体およびその抗原結合断片も含む。例えば本発明は、LEPRに結合し、それにより抗体:LEPR複合体を産生させる能力を有する抗体およびその抗原結合断片を含み、この場合において、得られた抗体:LEPR複合体は、レプチンと相互作用して、抗体、LEPRおよびレプチンを含む3員の複合体を産生させる能力を有する。抗体またはその抗原結合断片が、LEPRとレプチンの間の相互作用を遮断しない、または干渉しない様式でLEPRに結合する能力を有するかを決定するための例示的なアッセイフォーマットは、本明細書の実施例5に記載される。
【0126】
本発明はさらに、細胞表面に発現されたLEPRにヒトレプチンの存在下および/または非存在下で結合する抗体およびその抗原結合断片も含む。細胞表面に発現されたLEPRとは、天然細胞株または操作細胞株のいずれかの細胞の表面上に発現され、それにより抗体またはその抗原結合断片が当該LEPR分子に結合することができる、LEPRまたはその一部(例えば、LEPRの細胞外部分)を意味する。特定の実施形態では、細胞表面に発現されたLEPRは、タグまたはアンカー(例えば、本明細書の実施例6に例示されるGPIアンカー)を介して細胞に連結されたLEPRの細胞外ドメインを含む組み換え複合体を含む。本発明のこの態様によると、細胞表面に発現されたLEPRにレプチンの非存在下で結合することができかつ細胞表面に発現されたLEPRにレプチンの存在下でも(すなわち、レプチンが細胞表面に発現されたレプチンに結合することができる状況下でも)結合することができる、抗体が提供される。すなわち特定の実施形態によると、抗LEPR抗体と細胞表面に発現されたLEPRの間の相互作用は、細胞表面に発現されたLEPRと複合体化されたレプチンの存在によって阻害されない。本発明のこの態様による抗体は、抗体、細胞表面に発現されたLEPR、およびレプチンを含む3員の複合体を細胞表面上に形成する能力を有する。抗体またはその抗原結合断片が、細胞表面に発現されたLEPRにヒトレプチンの存在下および非存在下で結合する能力を有するかを決定するための例示的なアッセイフォーマットは、本明細書の実施例6に記載される。
【0127】
本発明の抗体は、前述の生物学的特徴、またはそれらの任意の組み合わせのうちの一つまたは複数を保有し得る。本発明の抗体の生物学的特徴の前述のリストは、包括的であることは意図されない。本発明の抗体のその他の生物学的特徴は、本明細書の作業実施例を含む本開示の検討から当業者に明らかであろう。
【0128】
エピトープマッピングおよび関連技術
また本発明はさらに、一つまたは複数の保存的置換を有する、本明細書に開示されるHCVR、LCVR、および/またはCDRのアミノ酸配列のいずれかのバリアントを含有する抗LEPR抗体も含む。例えば、本発明は、本明細書の表1に記載されるHCVRアミノ酸配列、LCVRアミノ酸配列、および/またはCDRアミノ酸配列のいずれかに関して、例えば、10個以下、8個以下、6個以下、または4個以下などの保存的アミノ酸置換を有するHCVRアミノ酸配列、LCVRアミノ酸配列、および/またはCDRアミノ酸配列を有する抗LEPR抗体を含む。特定の実施形態では、本発明は、本明細書の表1に記載される配列に関して、バリアントHCVR、LCVR、および/またはCDRのアミノ酸配列(例えば、保存的アミノ酸置換を含む)を含む抗LEPR抗体を提供するものであり、この場合において当該バリアント抗体はそれでも、本明細書に開示される例示的抗LEPR抗体の一つもしくは複数の機能および/または特性を呈している。
【0129】
ヒトLEPRの細胞外ドメインは、レプチン結合ドメイン(LBD:leptin-binding domain)と呼ばれる、N末端のサイトカイン受容体相同ドメイン(CRH-1:cytokine receptor homology domain)、免疫グロブリン様(Ig)ドメイン、および第二のCRHドメイン(CRH-2)を含む。(Carpenter et al.(2012)Structure 20:487-97)。さらにLEPRは、顆粒球コロニー刺激因子(GCSF)および糖タンパク質130(gp13)と最も高い相同性、ならびに類似した細胞外ドメインサイズおよび機構を共有する。(Haniu et al.(1998)J Biol Chem 273(44):28691-699)。
【0130】
「エピトープ」という用語は、パラトープとして知られる抗体分子の可変領域中の特定の抗原結合部位と相互作用する抗原性決定基を指す。単一の抗原は二つ以上のエピトープを有してもよい。したがって、異なる抗体は、抗原上の異なる領域へ結合することができ、異なる生物学的効果を有することができる。エピトープは、立体構造的または直線状のいずれであってもよい。立体構造的エピトープは、直線状ポリペプチド鎖の異なるセグメントから空間的に並置されたアミノ酸によって生成される。直鎖状エピトープは、ポリペプチド鎖内の隣接するアミノ酸残基によって生成されるエピトープである。特定の状況では、エピトープは、抗原上の糖、ホスホリル基、またはスルホニル基の部分を含み得る。
【0131】
本発明は、ヒトLEPR(配列番号113)のアミノ酸M1~D839内に存在する一つまたは複数のエピトープと相互作用する抗LEPR抗体を含む。実施例11に記載されるように、ヒトLEPRからの201ペプチドは、H4H16650P2抗体に結合したとき、重水素化取り込みが有意に減少した。H4H16650P2に結合したとき、アミノ酸162~169(ヒトLEPR、配列番号113のアミノ酸LYVLPEVL)およびアミノ酸170~191(ヒトLEPR、配列番号113のアミノ酸EDSPLVPQKGSF)に相当するペプチドは、重水素化速度がより遅くなり、このことは、配列LYVLPEVLまたはEDSPLVPQKGSF(それぞれ配列番号113のアミノ酸162~169またはアミノ酸170~191)を有する少なくとも二つのヒトLEPRエピトープにこの抗体が結合することを示唆する。
【0132】
本発明の抗体が結合するエピトープは、LEPRタンパク質の3個以上(例えば、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20個以上)のアミノ酸の単一連続配列からなる場合もある。あるいは、エピトープは、LEPRの複数の非連続的アミノ酸(またはアミノ酸配列)からなる場合もある。一部の実施形態では、エピトープは、LEPRのレプチン結合ドメイン上またはその付近に位置する。他の実施形態では、エピトープは、LEPRのレプチン結合ドメインとは別個の領域に、例えば、当該エピトープが結合されたときにLEPRへのレプチンの結合に抗体が干渉しない、LEPRの表面上の位置に、位置する。
【0133】
当分野の当業者に公知の様々な技術を使用して、特定の抗体に認識されるエピトープ内のアミノ酸を特定することができる。例示的な技術としては例えば、アラニンスキャニング突然変異解析、ペプチドブロット解析およびペプチド切断解析が挙げられる。さらに、抗原のエピトープ切り出し、エピトープ抽出、および化学修飾などの方法を用いることができる(Tomer,2000,Protein Science 9:487-496)。抗体が相互作用するポリペプチド内のアミノ酸を同定するために使用することができる別の方法は、質量分析により検出される水素/重水素交換である。一般的な用語において、水素/重水素交換方法は、対象タンパク質を重水素で標識すること、続いて重水素で標識したタンパク質に抗体を結合させることを含む。次に、タンパク質/抗体複合体は水に移され、抗体によって保護された残基(重水素標識のまま残る)を除く全ての残基で、水素-重水素交換を生じさせる。抗体の解離後、標的タンパク質はプロテアーゼ切断および質量分析解析を受け、それと抗体が相互作用する特異的なアミノ酸に対応する重水素標識残基を明らかにする。例えば、Ehring(1999)Analytical Biochemistry 267(2):252-259;Engen and Smith(2001)Anal.Chem.73:256A~265Aを参照されたい。抗原と複合体化された抗体のX線結晶構造解析を使用して、抗体が相互作用するポリペプチド内のアミノ酸を特定することもできる。
【0134】
本発明は、本明細書に記載される特定の例示的な抗体(例えば、本明細書の表1に記載されるアミノ酸配列のいずれかを含む抗体)と同じエピトープに結合する抗LEPR抗体をさらに含む。同様に、本発明はまた、本明細書に記載される特定の例示的な抗体(例えば、本明細書の表1に記載されるアミノ酸配列のいずれかを含む抗体)のいずれかと、LEPRへの結合に関して競合する抗LEPR抗体も含む。
【0135】
当分野で公知であり、本明細書に例証される日常的な方法を使用することにより、抗体が参照抗LEPR抗体と同じエピトープに結合するか、または参照抗LEPR抗体と結合に関して競合するかを決定することができる。例えば、被験抗体が本発明の参照抗LEPR抗体と同じエピトープに結合するかを決定するために、参照抗体を、LEPRタンパク質に結合させる。次に、LEPR分子に結合する被験抗体の能力が評価される。参照抗LEPR抗体との飽和結合後に被験抗体がLEPRに結合することができる場合、当該被験抗体は参照抗LEPR抗体とは異なるエピトープに結合すると結論付けることができる。一方で、参照抗LEPR抗体との飽和結合後に被験抗体がLEPR分子に結合できない場合、当該被験抗体は、本発明の参照抗LEPR抗体により結合されるエピトープと同じエピトープに結合する可能性がある。その後に追加の日常的な実験(例えば、ペプチド突然変異および結合分析)を実施して、被験抗体の結合の欠落が観察されたのは実際のところ、参照抗体と同じエピトープへの結合が原因なのか、または、結合の欠落が観察されたのは立体遮断(または別の現象)が原因であるのかを、確認することができる。この種類の実験は、ELISA、RIA、Biacore、フローサイトメトリー、または当該技術分野で利用可能な任意の他の定量的または定性的抗体結合アッセイを使用して実施することができる。本発明の特定の実施形態によると、競合結合アッセイにおいて測定したとき、例えば1倍、5倍、10倍、20倍、または100倍過剰量のある抗体が、他の抗体の結合を少なくとも50%、しかし好ましくは75%、90%、またはさらには99%まで阻害する場合、二つの抗体は同じ(または重複する)エピトープに結合する(例えば、Junghans et al.,Cancer Res.1990:50:1495-1502を参照のこと)。あるいは、一個の抗体の結合を減少または消失させる抗原中の本質的に全てのアミノ酸突然変異が他方の抗体の結合を減少または消失させる場合、二個の抗体は同一エピトープに結合するとみなされる。一個の抗体の結合を減少または消失させるアミノ酸突然変異のサブセットのみが他方の抗体の結合を減少または消失させる場合、二個の抗体は「重複エピトープ」を有すると見なされる。
【0136】
抗体が、参照抗LEPR抗体と結合に関して競合する(または結合に関して交差競合する)かどうかを判定するために、以下の二つの方向性で上述の結合技法が実施される:第一の方向性では、参照抗体は、飽和条件下でLEPRタンパク質に結合され、その後、LEPR分子への被験抗体の結合が評価される。第二の方向性では、被験抗体は、飽和条件下でLEPR分子に結合され、その後、LEPR分子への参照抗体の結合が評価される。両方の方向性で、第一の(飽和)抗体のみがLEPR分子に結合することができた場合、被験抗体と参照抗体は、LEPRへの結合に関して競合すると結論付けられる。当分野の当業者によって理解されるように、参照抗体への結合について競合する抗体は、必ずしも参照抗体と同じエピトープに結合しなくてよく、重複したエピトープまたは隣接するエピトープを結合することによって参照抗体の結合を立体的に遮断し得る。
【0137】
ヒト抗体の調製
本発明の抗LEPR抗体は、完全ヒト抗体であり得る。完全ヒトモノクローナル抗体を含むモノクローナル抗体を生成する方法は当該技術分野で既知である。ヒトLEPRに特異的に結合するヒト抗体を作製するために、任意のそうした公知の方法が、本発明の文脈において使用され得る。
【0138】
例えばVELOCIMMUNE(商標)法、または完全ヒトモノクローナル抗体を作製するための任意の他の類似の公知の方法を使用して、ヒト可変領域とマウス定常領域を有する、LEPRに対する高アフィニティキメラ抗体が最初に単離される。以下の実験セクションと同様に、抗体を、アフィニティ、リガンド遮断活性、選択性、エピトープなどを含む望ましい特徴について特徴付け、選択する。必要であれば、マウス定常領域を、所望のヒト定常領域、例えば野生型もしくは改変型のIgG1またはIgG4と置換して、完全ヒト抗LEPR抗体が作製される。選択される定常領域は特定の用途に応じて異なりうるが、高アフィニティ抗原結合特徴および標的特異性特徴は可変領域に存在する。特定の例において、完全ヒト抗LEPR抗体は、抗原陽性B細胞から直接単離される。
【0139】
生物学的等価物
本発明の抗LEPR抗体および抗体断片は、記載される抗体のアミノ酸配列とは異なるがヒトLEPRへの結合能力は保持しているアミノ酸配列を有するタンパク質を包含する。このようなバリアント抗体および抗体断片は、親配列と比較してアミノ酸の一つまたは複数の付加、欠失、または置換を含むが、説明された抗体の生物学的活性とは本質的に等価である生物学的活性を呈する。同様に、本発明の抗LEPR抗体をコードするDNA配列は、開示される配列と比較してヌクレオチドの一つまたは複数の付加、欠失、または置換を含むが、本発明の抗LEPR抗体または抗体断片と本質的に生物学的に等価である、抗LEPR抗体または抗体断片をコードする配列を包含する。そうしたバリアントアミノ酸配列およびDNA配列の例は、上記に検討される。
【0140】
二つの抗原結合タンパク質、または抗体が、例えば類似の実験条件下で同じモル用量で、単一用量または複数回用量のいずれかで投与されたとき吸収の速度および程度が有意差を示さない薬学的等価物または薬学的代替物である場合、これらは、生物学的等価物であるとみなされる。いくつかの抗体が、その吸収の程度は同等であるが吸収速度は同等ではない場合、等価物または薬学的代替物とみなされ、かつさらに、吸収速度のこのような差異が意図的であり標識に反映されており、例えば慢性使用において有効身体薬物濃度の獲得に不可欠ではなく、かつ、研究される特定の薬剤製品にとって医学的に有意ではないとみなされるため、これらは生物学的等価物であるとみなされる。
【0141】
一実施形態では、二つの抗原結合タンパク質は、これらの安全性、純度、または有効性において臨床的に有意な差がない場合、生物学的に等価である。
【0142】
一実施形態では、二つの抗原結合タンパク質は、参照製品と生物学的製品の間での一回または複数回の切り替えを行わない持続的療法と比較して、免疫原性の臨床的に有意な変化を含む有害作用のリスクの予想される上昇または有効性の減退が生じずに患者がその様な切り替えを行うことができる場合、生物学的に等価である。
【0143】
一実施形態では、二つの抗原結合タンパク質は、これらが両方とも、一つまたは複数の使用条件について一つまたは複数の共通の作用機序によって、このような機序が公知である程度まで作用する場合、生物学的に等価である。
【0144】
生物学的等価性は、インビボおよびインビトロの方法によって実証され得る。生物学的等価性測定法には、例えば、(a)抗体またはその代謝産物の濃度が血液、血漿、血清または他の生物学的流体中で時間の関数として測定される、ヒトまたは他の哺乳類におけるインビボでの試験、(b)ヒトのインビボでの生物学的利用能データと相関し、このデータを合理的に予測しているインビトロ試験、(c)抗体(またはその標的)の適切な急性薬理学的効果が時間の関数として測定される、ヒトまたは他の哺乳類におけるインビボ試験、および(d)抗体の安全性、効能、または生物学的利用能もしくは生物学的等価性を確立する、十分に管理された臨床試験が含まれる。
【0145】
本発明の抗LEPR抗体の生物学的に等価なバリアントは、例えば、残基もしくは配列の種々の置換を生じること、または生物活性に必要とされない末端もしくは内部の残基もしくは配列を欠失することによって構築されうる。例えば、生物学的活性にとって必須ではないシステイン残基は、再生の際の不必要または不正確な分子内ジスルフィド架橋の形成を防止するために、欠失または他のアミノ酸で置換することができる。他の状況では、生物学的に等価の抗体には、抗体のグリコシル化特性を改変するアミノ酸変化、例えば、グリコシル化を排除または除去する変異を含む、抗LEPR抗体バリアントを含んでもよい。
【0146】
種選択性および種交差反応
特定の実施形態によると、本発明は、ヒトLEPRに結合するが他種由来のLEPRには結合しない抗LEPR抗体を提供する。本発明はさらに、ヒトLEPRに、および一つまたは複数の非ヒト種に由来するLEPRに結合する、抗LEPR抗体も提供する。例えば、本発明の抗LEPR抗体は、ヒトLEPRに結合してもよく、そして場合によっては、マウス、ラット、モルモット、ハムスター、スナネズミ、ブタ、ネコ、イヌ、ウサギ、ヤギ、ヒツジ、ウシ、ウマ、ラクダ、カニクイザル、マーモセット、アカゲザルまたはチンパンジーのLEPRのうちの一つまたは複数にも結合してもよく、または結合しなくてもよい。本発明の特定の例示的実施形態によると、ヒトLEPRとカニクイザル(例えば、Macaca fascicularis)LEPRに特異的に結合する抗LEPR抗体が提供される。本発明の他の抗LEPR抗体は、ヒトLEPRには結合するが、カニクイザルLEPRには結合しないか、または弱くしか結合しない。
【0147】
多重特異性抗体
本発明の抗体は、単一特異性または多重特異性(例えば、二重特異性)であってもよい。多重特異性抗体は、一つの標的ポリペプチドの異なるエピトープに対して特異的であってもよく、または複数の標的ポリペプチドに特異的な抗原結合ドメインを含有してもよい。例えば、Tutt et al.,1991,J.Immunol.147:60-69;Kufer et al.,2004,Trends Biotechnol.22:238-244を参照のこと。本発明の抗LEPR抗体は、別の機能性分子、例えば、別のペプチドまたはタンパク質と連結されることができ、または共発現されることができる。例えば、抗体またはその断片は、例えば別の抗体または抗体断片などの一つ以上の他の分子実体に(例えば、化学的カップリング、遺伝子融合、または非共有会合、またはその逆により)機能的に連結して、第二の結合特異性を有する二重特異性、または多重特異性の抗体を産生することができる。
【0148】
本発明は、免疫グロブリンの一つのアームがヒトLEPRに結合し免疫グロブリンの他方のアームが第二の抗原に特異的である、二重特異性抗体を含む。LEPR結合アームは、本明細書の表1に記載されるHCVR/LCVRまたはCDRのアミノ酸配列のいずれかを含み得る。
【0149】
本発明の文脈において使用され得る例示的な二重特異性抗体フォーマットは、第一の免疫グロブリン(Ig)C3ドメインと第二のIg C3ドメインの使用を含み、この場合において当該第一および第二のIg C3ドメインは、少なくとも一つのアミノ酸によって互いに異なり、そしてこの場合において、少なくとも一つのアミノ酸の差異は、アミノ酸の差異を欠く二重特異性抗体と比較して、二重特異性抗体のタンパク質Aへの結合を低下させる。一つの実施形態では、第一のIgC3ドメインはプロテインAに結合し、第二のIgC3ドメインは、例えばH95R(IMGTエクソンナンバリングによる;EUナンバリングではH435R)修飾などのプロテインA結合を減少または消失させる突然変異を含有する。第二のC3はさらに、Y96F改変(IMGTによる、EUではY436F)を含んでもよい。第二のC3に見出されうるさらなる改変としては、以下が挙げられる:IgG1抗体の場合、D16E、L18M、N44S、K52N、V57M、およびV82I(IMGTによる、EUではD356E、L358M、N384S、K392N、V397M、およびV422I)、IgG2抗体の場合、N44S、K52N、およびV82I(IMGT、EUではN384S、K392N、およびV422I)、ならびにIgG4抗体の場合、Q15R、N44S、K52N、V57M、R69K、E79Q、およびV82I(IMGTによる、EUではQ355R、N384S、K392N、V397M、R409K、E419Q、およびV422I)。上述の二重特異性抗体フォーマットの変形は、本発明の範囲内で予期される。
【0150】
本発明の文脈において使用され得る他の例示的な二重特異性のフォーマットとしては、非限定的に、例えば、scFvベースのまたはダイアボディ二重特異性のフォーマット(diabody bispecific format)、IgG-scFv融合体、二重可変ドメイン(DVD)-Ig、クアドローマ(Quadroma)、ノブ・イントゥ・ホール(knobs-into-holes)、共通軽鎖(例えば、ノブ・イントゥ・ホールを有する共通軽鎖など)、CrossMab、CrossFab、(SEED)ボディ、ロイシンジッパー、デュオボディ(Duobody)、IgG1/IgG2、二重作用Fab(DAF)-IgG、およびMab二重特異性フォーマットが挙げられる(例えば、前述のフォーマットの概要に関し、Klein et al.2012,mAbs 4:6,1-11および当該文献中に引用される参照文献)。二重特異性抗体は、ペプチド/核酸コンジュゲーションを使用して構築されてもよい。例えば直交的な化学反応性を有する非天然アミノ酸を使用して、部位特異的抗体-オリゴヌクレオチド結合体を作製し、次いでこれを規定の組成、結合価および構造を有する多量体性複合体へと自己アセンブリさせる。(例えば、Kazane et al.,J.Am.Chem.Soc.[オンライン公開、2012年12月4日]を参照のこと)。
【0151】
治療用の製剤および投与
本発明は、本発明の抗LEPR抗体またはその抗原結合断片を含む医薬組成物を提供する。本発明の医薬組成物は、適切な担体、賦形剤、および輸送、送達、忍容性などの改善をもたらす他の剤とともに製剤化される。数多くの適切な製剤が、すべての薬剤師に公知の処方集:Remington’s Pharmaceutical Sciences,Mack Publishing Company,Easton,PAにおいて見出されうる。これらの製剤としては、例えば、粉末、ペースト、軟膏、ゼリー、ワックス、油、脂質、小胞を含有する脂質(カチオン性またはアニオン性)(例えば、LIPOFECTIN(商標)、Life Technologies社、カリフォルニア州カールスバッド)、DNA共役体、無水吸収ペースト、水中油および油中水乳剤、乳剤カルボワックス(様々な分子量のポリエチレングリコール)、半固体ゲル、ならびにカルボワックスを含有する半固体混合物が挙げられる。Powell et al.”Compendium of excipients for parenteral formulations” PDA(1998)J Pharm Sci Technol 52:238-311も参照のこと。
【0152】
患者に投与される抗体の投与量は、患者の年齢および大きさ、標的の疾患、状態、投与経路などに応じて変化し得る。好ましい投与量は、典型的には体重または体表面積に従い計算される。成人患者では、本発明抗体を、約0.01~約20mg/kg体重、より好ましくは約0.02~約7、約0.03~約5、または約0.05~約3mg/kg体重で、通常は単回投与で静脈内投与することが有益であり得る。状態の重症度に応じて、治療の頻度および期間を調節できる。抗LEPR抗体を投与するための効果的な用量およびスケジュールは経験的に決定されうるが、例えば、患者の進行は定期的な評価によってモニタリングすることができ、それに応じて投与量が調整される。さらに用量の種間拡張は、当分野で公知の方法を使用して実施することができる(例えば、Mordenti et al.,1991,Pharmaceut.Res.8:1351)。
【0153】
例えば小児患者などの患者の場合、約5mg/kg体重、または約1mg/kg~約20mg/kg体重、または約1mg/kg~約15mg/kg体重、または約5mg/kg~約10mg/kg体重の治療有効用量で、抗体を例えば静脈内投与することが有益であり得る。例えば約5mg/kgの静脈内(IV)負荷投与量を選択して、100mg/L以上の抗体血清濃度を達成することができる。約250mgの用量で、または約300mgの用量で、または約100mg~約500mgの用量で、または約200mg~約300mgの用量で、抗体を皮下投与することが有益でもあり得る。例えば、250mgのH4H17319P2、または300mgのH4H17319P2の週に1回の皮下(SC)維持投与によって、100mg/L以上の血清中のトラフ濃度が維持される。一部の態様では、SC投与レジメンは、血清中の標的トラフ濃度を最良に維持するために、IV負荷投与量を投与した数日後に開始される。一部の態様では、第一のSC投与は、負荷投与の2日~7日後、例えば負荷投与の2日、3日、4日、5日、6日、または7日後に投与される。一部の態様では、SC投与は、3~14日に1回、例えば3日に1回、4日に1回、5日に1回、6日に1回、週に1回、10日に1回、または2週間に1回、投与され、例えば、最初のSC投与後、週に1回のSC投与を3回、次いで月に1回(約28日ごと)、投与される。本発明の実施形態では、抗体(H4H17319P2)の治療有効投与量は、本明細書において図19に記載されているが、任意で図19に示される最後の月1回の投与後にも継続される。
【0154】
一部の態様では、約50mg/L~約200mg/L、または約100mg/L、または約150mg/L、または50mg/L以上、または100mg/L以上、または150mg/L以上の血清中のトラフ濃度を維持することが望ましい。
【0155】
さまざまな送達系が公知であり、本発明の医薬組成物を投与するために使用されうる。例えば、リポソーム、微粒子、マイクロカプセルへの封入、突然変異ウイルスを発現することができる組換え細胞、受容体介在性エンドサイトーシスなど(例えば、Wu et al.,1987,J.Biol.Chem.262:4429-4432を参照のこと)。導入方法としては限定されないが、皮内経路、筋肉内経路、腹腔内経路、静脈内経路、皮下経路、鼻腔内経路、硬膜外経路および経口経路が挙げられる。組成物は、任意の好都合な経路によって、例えば、注入もしくはボーラス注射によって、上皮もしくは粘膜皮膚内層(lining)(例えば、口腔粘膜、直腸粘膜および腸粘膜など)を介した吸収によって投与することができ、かつ他の生物学的に活性な薬剤と一緒に投与することができる。投与は全身性または局所性であってもよい。
【0156】
本発明の医薬組成物は、標準的な針およびシリンジを用いて、皮下または静脈内に送達することができる。加えて、皮下送達に関して、ペン型送達デバイスは、本発明の医薬組成物の送達において、容易に用途を見出す。そのようなペン型送達デバイスは、再利用可能であるか、または使い捨てでありうる。再利用可能なペン型送達デバイスは、一般に、医薬組成物を含有する交換可能なカートリッジを利用する。カートリッジ内部の医薬組成物の全てが投与され、カートリッジが空になると、空のカートリッジは、容易に廃棄することができ、医薬組成物を含有する新しいカートリッジと交換されうる。次に、ペン型送達デバイスは再利用することができる。使い捨てペン型送達デバイスでは、交換可能なカートリッジはない。むしろ、使い捨てペン型送達デバイスは、医薬組成物がデバイス内部のリザーバ内に保持された事前に充填された状態で販売される。いったんリザーバの医薬組成物が空になると、デバイス全体が廃棄される。
【0157】
多数の再利用可能なペン型および自動注入装置送達デバイスは、本発明の医薬組成物の皮下送達において用途を見出す。例としては限定されないが、AUTOPEN(商標)(Owen Mumford,Inc.、英国、ウッドストック)、DISETRONIC(商標)ペン(Disetronic Medical Systems社、スイス、バーグドーフ)、HUMALOG MIX 75/25(商標)ペン、HUMALOG(商標)ペン、HUMALIN 70/30(商標)ペン(Eli Lilly and Co.、インディアナ州インディアナポリス)、NOVOPEN(商標)I、II、およびIII(Novo Nordisk社、デンマーク、コペンハーゲン)、NOVOPEN JUNIOR(商標)(Novo Nordisk社、デンマーク、コペンハーゲン)、BD(商標)ペン(Becton Dickinson社、ニュージャージー州フランクリンレイク)、OPTIPEN(商標)、OPTIPEN PRO(商標)、OPTIPEN STARLET(商標)、およびOPTICLIK(商標)(Sanofi-Aventis社、ドイツ、フランクフルト)が挙げられる。本発明の医薬組成物の皮下送達における用途を有するディスポーザブルペン送達デバイスの例としては限定されないが、SOLOSTAR(商標)ペン(Sanofi-Aventis社)、FLEXPEN(商標)(Novo Nordisk社)、およびKWIKPEN(商標)(Eli Lilly社)、SURECLICK(商標)Autoinjector(Amgen社、カリフォルニア州サウザンドオークス)、PENLET(商標)(Haselmeier社、ドイツ、シュトゥットガルド)、EPIPEN(Dey,L.P.)およびHUMIRA(商標)Pen(Abbott Labs社、イリノイ州アボットパーク)が挙げられる。
【0158】
ある特定の状況では、医薬組成物は、制御放出系で送達されうる。一つの実施形態では、ポンプを使用してもよい(上記のLanger;Sefton,1987,CRC Crit.Ref.Biomed.Eng.14:201を参照のこと)。別の実施形態では、多量体性材料を使用することができる。Medical Applications of Controlled Release,Langer and Wise(eds.),1974,CRC Pres.,Boca Raton,Floridaを参照のこと。さらに別の実施形態では、制御放出系を組成物の標的の近傍に配置することができる。したがって全身投与量のほんの一部しか必要としない(例えば、Goodson,1984,in Medical Applications of Controlled Release,supra,vol.2,pp.115-138を参照のこと)。他の制御放出系は、Langer,1990,Science 249:1527-1533によるレビューにおいて検討されている。
【0159】
注入可能な調製物は、静脈内、皮下、皮内、および筋肉内注射、点滴などの投与形態を含み得る。これらの注射可能な調製物は、公知の方法によって調製されてもよい。例えば、注入可能な調製物は、例えば、注入に従来使用される無菌水性媒体または油性媒体に、上述される抗体またはその塩を溶解、懸濁、または乳化させることによって調製されうる。注射用水性媒体としては、例えば、生理食塩水、グルコースを含有する等張液、および他の助剤などがあり、これらは、アルコール(例えば、エタノール)、ポリアルコール(例えば、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール)、非イオン性界面活性剤[例えば、ポリソルベート80、HCO-50(水素化ヒマシ油のポリオキシエチレン(50モル)付加物)]などの適切な可溶化剤と併用されうる。油性媒体としては、例えば、ゴマ油、ダイズ油などが採用され、これらは安息香酸ベンジル、ベンジルアルコールなどの可溶化剤と併用されうる。このようにして調製した注射液は、好ましくは、適切なアンプル中に充填される。
【0160】
有利なことに、上述の経口または非経口使用のための医薬組成物は、活性成分の用量を適合させるのに適した単位用量で剤形に調製される。単位用量におけるこのような剤形には、例えば、錠剤、丸剤、カプセル剤、注射剤(アンプル剤)、坐剤などが含まれる。含有される前述の抗体の量は一般的に単位用量で剤形あたり約5~約500 mgであり、特に注射の形態では上記の抗体は約5~約100 mgで含有されることが好ましく、およびその他の剤形に関しては約10~約250 mgで含有されることが好ましい。
【0161】
抗体の治療用途
本発明は、その必要のある対象に、抗LEPR抗体(例えば、本明細書の表1に記載されるHCVR/LCVR配列またはCDR配列のいずれかを含む抗LEPR抗体)を含む治療用組成物を投与することを含む。治療用組成物は、本明細書に開示される抗LEPR抗体またはその抗原結合断片と、薬学的に許容可能な担体または希釈剤を含んでもよい。
【0162】
本明細書に提供される抗体および抗原結合断片は、特に、代謝機能不全または低レプチン血症と関連する、またはそれらに介在される任意の疾患または障害、例えば非アルコール性脂肪肝疾患、NASH、女性の不妊症、無月経、ホルモンサイクル異常、免疫機能障害、甲状腺機能低下症、肥満、単一遺伝子型肥満、I型糖尿病、II型糖尿病、リポジストロフィー、先天性リポジストロフィー、全身型リポジストロフィー、後天性リポジストロフィー、部分型リポジストロフィー、先天性部分型リポジストロフィー、先天性全身型リポジストロフィー、後天性部分型リポジストロフィー、および後天性全身型リポジストロフィー、またはLEPRシグナル伝達を刺激もしくは活性化することにより治療可能なもの、またはインビトロもしくはインビボでレプチンの天然活性を模倣することにより治療可能なもの、の治療、予防および/または改善に有用である。例えば、抗体およびその抗原結合断片は、リポジストロフィー状態の治療に有用である。本発明の抗体および抗原結合断片により治療可能である例示的なリポジストロフィー状態には、例えば、先天性全身型リポジストロフィー、先天性部分型リポジストロフィー、後天性全身型リポジストロフィー、家族性部分型リポジストロフィー、後天性部分型リポジストロフィー、遠心性腹部リポジストロフィー、環状脂肪組織萎縮(lipoatrophia annularis)、局所性リポジストロフィー、およびHIV関連リポジストロフィー、ならびに当該状態と関連した症状が含まれる。
【0163】
本明細書に提供される抗LEPR抗体およびその抗原結合断片は、単一遺伝子型肥満および/またはリポジストロフィーの治療、予防および/または改善に有用である。単一遺伝子型肥満およびリポジストロフィーは、多くの病的状態と関連付けられ得る。例えば:超早期発症型肥満で、対象は年齢および性別に対するBMIが85パーセンタイル超である;過食症および満腹感の障害で、対象は食物探索行動および食物攻撃性行動を呈する;免疫機能の障害で、CD4+T細胞数が減少し、再発性(そして潜在的致死性)の感染症を伴う;インスリン抵抗性および高インスリン血症;非アルコール性脂肪肝疾患、肝臓脂肪症、およびリポジストロフィーへの進行;高トリグリセリド血症へとつながる脂質異常症;HbA1c値の上昇および/または高血糖値、および耐糖能の障害を伴う糖尿病;性腺機能低下症、思春期発育の遅延につながる生殖機能障害;第二次性徴の発現の低下;無月経もしくは月経不順、および不妊;小人症、成長ホルモン分泌異常を生じさせる思春期成長スパートの欠落;甲状腺機能低下症または甲状腺機能障害;T3の変化、TSHの変化、または遊離チロキシンレベルの変化;ならびに骨密度および骨ミネラル含量を含む可変性の骨の変化と関連付けられ得る。単一遺伝子型肥満および/またはリポジストロフィーと関連する状態および症状のスペクトラムは、根底にある原因遺伝子、例えばAGPAT2、LMNA、BSCL2またはその他を前提として異なり得る。所与の変異は、レプチンまたはLEPRの機能消失を生じさせる可能性があり、それらは例えば月経不順に対する完全無月経など、内分泌性の重症度に対して変動がある。
【0164】
本明細書に提供される抗体および抗原結合断片は、代謝機能不全または低レプチン血症と関連する疾患もしくは状態の一つまたは複数の症状の治療、軽減、または予防に有用でもある。そうした症状としては、脂肪症、肥満、過食症、高血糖症、高トリグリセリド血症、高コレステロール血症、インスリン抵抗性、脂質異常症、成長遅延、思春期成長スパートの遅延、成長ホルモン分泌異常、HbA1c上昇、低い骨ミネラル密度(または低骨量)、低い骨ミネラル含量、および低い除脂肪体重が挙げられる。
【0165】
本発明はまた、一つまたは複数のLEPRの変異を発現する細胞、組織および器官へのレプチンシグナル伝達の回復に有用な抗LEPR抗体およびその抗原結合断片も含む。そうした変異は、代謝機能不全または低レプチン血症、および代謝機能不全または低レプチン血症に付随する疾患または状態、例えば肥満、先天性リポジストロフィー、不妊症、および非アルコール性脂肪肝疾患と関連し得る。例えば、レプチンの存在下でのシグナル伝達を呈さない、またはシグナル伝達の低下を呈し、肥満および関連障害と関連する特定のLEPR変異体が同定されている。本明細書において使用される場合、レプチンの存在下でシグナル伝達を呈さないLEPR変異体は、「シグナル伝達欠損LEPR変異体」と呼称される。例示的なシグナル伝達欠損LEPR変異は、LEPR-A409Eである(Farooqi et al.,2007,N Engl J Med 356(3):237-247)。本明細書において使用される場合、レプチンの存在下で(野生型LEPRと比較して)シグナル伝達の低下を呈するLEPR変異体は、「シグナル伝達障害LEPR変異体」と呼称される。例示的なシグナル伝達障害性のLEPR変異は、LEPR-P316Tである(Mazen et al.,2011,Mol Genet Metab 102:461-464)。したがって本発明は、一つもしくは複数のシグナル伝達欠損(例えばA409E)LEPR変異体、および/または一つもしくは複数のシグナル伝達障害(例えばP316T)LEPR変異体を原因とするまたはそれらと関連する疾患および障害の治療、予防および/または改善に有用である抗LEPR抗体およびその抗原結合断片を含む。
【0166】
本発明はまた、レプチン遺伝子中の変異を軽減することによりレプチンシグナル伝達の回復に有用である、抗LEPR抗体およびその抗原結合断片も含む。一部の対象は循環レプチンを有しているが、例えば、レプチン遺伝子中のp.N103K変異など、レプチンの生物不活性型をコードする遺伝子変異が原因で、当該タンパク質は非機能性である。一部の対象は、循環レプチンがほとんど無いか、または全くない。LMNA、PPARG、AGPAT2、BSCL2、PLIN1、AKT2、CIDEC、LIPE、およびADRA2Aをはじめとする他の遺伝子がレプチンシグナル伝達の障害に関与する場合もあり、本明細書において提供される抗LEPR抗体およびその抗原結合断片は、レプチンシグナル伝達に対する当該変異の影響の軽減に有用である。
【0167】
本発明の抗LEPR抗体およびその抗原結合断片はまた、肥満、単一遺伝子型肥満、メタボリックシンドローム、食事誘発性大食症、機能性視床下部性無月経、1型糖尿病、2型糖尿病、女性の不妊症、無月経、免疫機能障害、甲状腺機能低下症、インスリン抵抗性、インスリン受容体の変異による重度のインスリン抵抗性を含む重度のインスリン抵抗性、インスリン受容体の変異が原因ではない重度のインスリン抵抗性、下流シグナル伝達経路における変異により生じる、または他の原因によって誘発される重度のインスリン抵抗性、非アルコール性およびアルコール性の脂肪性肝疾患、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、アルツハイマー病、レプチン欠損症、レプチン抵抗性、リポジストロフィー、妖精症/ドナヒュー症候群、ラブソン・メンデンホール症候群からなる群から選択される一つもしくは複数の状態、疾患または障害の治療または予防にも有用である。
【0168】
本明細書に提供されるLEPRアゴニスト性抗体は、代謝機能不全の治療に有用である。方法は、ヒトレプチン受容体(LEPR)に結合しかつLEPRシグナル伝達を活性化する抗体またはその抗原結合断片および薬学的に許容可能な担体または希釈剤を含む医薬組成物を、その必要のある対象に投与することを含む。
【0169】
本明細書に提供されるLEPRアゴニスト性抗体は、脂肪症もしくは肥満、または体重の減少に有用である。一部の実施形態では、治療は、治療された対象において脂肪量を減少させるが、除脂肪量を減少させない。一部の態様では、治療は、対象により少ないカロリーを摂取させる、または食物摂取量を低下させる。
【0170】
本明細書に提供されるLEPRアゴニスト性抗体は、レプチン欠損症と関連する女性の不妊症の治療、または正常なホルモンサイクルの回復に有用である。一部の態様では、治療は、生殖能力を増加させ、および/または妊娠機会を増加させることができる。一部の態様では、治療は、正常な月経サイクルを回復させることができる。レプチン欠損症に少なくとも部分的に起因して破壊された正常な月経サイクルを回復させる方法も本発明の一部である。
【0171】
本明細書において示されるように、方法は、その必要のある対象が低レプチン血症もしくはレプチン欠損症であるとき、または低レプチン血症もしくはレプチン欠損症ではないときに、有用である。方法は、代謝機能不全、脂肪症または肥満が、シグナル伝達欠損LEPR変異またはシグナル伝達障害LEPR変異と関連するもしくは関連しないとき、またはそれらにより引き起こされるもしくは引き起こされないときに、有用である。
【0172】
本明細書に提供されるLEPRアゴニスト性抗体は、低レプチン血症、リポジストロフィー、またはレプチン欠損症の患者における、非アルコール性脂肪肝疾患または非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)の治療に有用である。治療は、例えば肝臓脂肪症など、対象における非アルコール性脂肪肝疾患の症状を減少させることができる。一部の例では、アラニントランスアミナーゼ(ALT)の血漿レベル、および/またはアスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)の血漿レベルは、治療を受けた後、対象において減少される。
【0173】
本明細書に提供されるLEPRアゴニスト性抗体は、視床下部STAT3シグナル伝達を刺激することによる、過食症、高血糖症、インスリン抵抗性、脂質異常症、非アルコール性脂肪性肝炎(NASH)、または非アルコール性脂肪肝疾患の治療に有用である。治療は、循環血漿トリグリセリド、および/または循環血漿総コレステロールを低下させることができる。
【0174】
本明細書に提供されるLEPRアゴニスト性抗体は、リポジストロフィーの治療に有用である。治療は、治療を受ける対象において、高血糖症を軽減し、インスリン抵抗性を減少させ、および/またはHbA1cレベルを低下させる。
【0175】
本明細書に提供されるLEPRアゴニスト性抗体は、代謝疾患または低レプチン血症と関連する不妊および/または無月経の治療に有用である。治療はホルモンサイクルを調節し、治療を受ける女性対象において、妊娠率を改善させることができる。治療は、正常な月経サイクルを回復させることができる。
【0176】
本明細書に提供されるLEPRアゴニスト性抗体は、低レプチン血症および/またはレプチン欠損症に関連する例えばCD4+T細胞数の減少などの免疫機能障害の治療に有用である。治療は免疫機能を改善することができる。例えば、CD4+T細胞数を増加させることができる。
【0177】
本明細書に提供されるLEPRアゴニスト性抗体は、先天性レプチン欠損症と関連した成長遅延、思春期成長スパートの欠落、および/または成長ホルモン分泌異常の治療に有用である。治療は成長を改善することができ、思春期成長スパートを促進することができ、および/または成長ホルモン分泌を改善することができる。
【0178】
本明細書に提供されるLEPRアゴニスト性抗体は、先天性レプチン欠損症に関連する甲状腺機能低下症の治療に有用である。治療は、甲状腺機能低下症に関連する症状を改善することができる。
【0179】
本明細書に提供されるLEPRアゴニスト性抗体は、低レプチン血症および/またはレプチン欠損症に関連する低い骨ミネラル密度および/または低い骨ミネラル含量の治療に有用である。治療は、骨ミネラル密度を改善することができ、および/または骨ミネラル含量を改善することができる。
【0180】
本明細書に記載される治療方法の背景において、抗LEPR抗体は、単剤療法として(すなわち唯一の治療剤として)投与されてもよく、または一つもしくは複数の追加の治療剤(その実施例は本明細書において別に記載される)と併用されて投与されてもよい。
【0181】
併用療法および製剤
本発明は、一つまたは複数の追加の治療活性成分と併用された、本明細書に記載される抗LEPR抗体のいずれかを含む組成物および治療用製剤を含み、および当該組成物を、その必要のある対象に投与することを含む治療方法を含む。
【0182】
本発明の抗LEPR抗体は、一つまたは複数の追加の治療活性成分と共製剤化されてもよく、および/または、併用されて投与されてもよく、そうした治療活性成分としては例えば、肥満、高コレステロール血症、高脂血症、2型糖尿病、1型糖尿病、食欲管理、無月経、不妊などの治療に対して処方される医薬品などが挙げられる。そうした追加の治療活性成分の例としては、例えば、組み換えヒトレプチン(例えば、メトレレプチン[MYALEPT])、PCSK9阻害剤(例えば、抗PCSK9抗体[アリロクマブ、エボロクマブ、ボコシズマブ、ロデルシズマブ、ラルパンシズマブなど])、スタチン(アトルバスタチン、ロスバスタチン、セリバスタチン、ピタバスタチン、フルバスタチン、シンバスタチン、ロバスタチン、プラバスタチンなど)、エゼチミブ、インスリン、インスリンバリアント、インスリン分泌促進剤、メトホルミン、スルホニルウレア、ナトリウム・グルコース共輸送体2(SGLT2)阻害剤(例えば、ダパグリホジン(dapaglifozin)、カナグリホジン(canaglifozin)、エンパグリフロジンなど)、GLP-1アゴニスト/アナログ(例えば、エクステンジン(extendin)-4、エキセナチド、リラグルチド、リキシセナチド、アルビグルチド、デュラグルチド、など)、グルカゴン(GCG)阻害剤(例えば、抗GCG抗体)、グルカゴン受容体(GCGR)阻害剤(例えば、抗GCGR抗体、低分子GCGRアンタゴニスト、GCGR特異的アンチセンスオリゴヌクレオチド、抗GCGRアプタマー[例えば、Spiegelmers]、など)、アンジオポエチン様タンパク質(ANGPTL)阻害剤(例えば、抗ANGPTL3抗体、抗ANGPTL4抗体、抗ANGPTL8抗体など)、フェンテルミン、オルリスタット、トピラマート、ブプロピオン、トピラマート/フェンテルミン、ブプロピオン/ナルトレキソン、ブプロピオン/ゾニサミド、プラムリンチド/メトレレプチン、ロルカセリン、セチリスタット、テソフェンシン、ベルネペリトなど、が挙げられる。さらなる例としては例えば、魚油、ピオグリタゾン、セトメラノチド(setmelanotide)、フィブラート(例えば、フェノフィブラート)、プレドニゾン、ナイアシン、抗けいれん剤、ジゴキシン、クマディン、ビタミンD、チロキシン、甲状腺サプリメント、ビタミンサプリメント、カルシウムサプリメント、カルニチン、コエンザイムQ10、便秘防止薬、抗アレルギー薬、ガバペンチン、麻酔薬、ケタミン、リドカイン、およびベンラファキシン塩酸塩が挙げられる。本発明の実施形態において、本発明の抗LEPR抗体は、食欲抑制剤とともに製剤化されることも投与されることもない。
【0183】
追加の治療活性成分、例えば上記に列記される剤またはその誘導体のいずれかは、本発明の抗LEPR抗体の投与の直前に、投与と同時に、または投与の直後に投与されてもよい(本開示の目的に関し、そうした投与レジメンは、追加の治療活性成分と「併用された」抗LEPR抗体の投与とみなされる)。本発明は、本明細書の別段に記載される追加の治療活性成分の一つまたは複数と本発明の抗LEPR抗体が共製剤化される、医薬組成物を含む。
【0184】
本発明はまた、例えば血漿交換法などの治療手段と組み合わされた、本明細書に記載される抗LEPR抗体のいずれかを含む組成物および治療用製剤を使用した方法も含む。
【0185】
投与レジメン
本発明の特定の実施形態によると、抗LEPR抗体(または抗LEPR抗体と本明細書に言及される追加の治療活性剤のいずれかとの組み合わせを含む医薬組成物)の複数回投与量を、規定の時間経過にわたり対象に投与してもよい。本発明の本態様による方法は、本発明の抗LEPR抗体の複数回投与量を対象に逐次的に投与することを含む。本明細書で使用される場合、「逐次的に投与する」とは、抗LEPR抗体の各用量が、例えば所定の間隔(例えば、時間、日、週または月)をあけた異なる日などの異なる時点で対象に投与されることを意味する。本発明は、抗LEPR抗体の単一の初回投与量、次いで抗LEPR抗体の一回または複数回の第二の投与量、および任意で続いて、抗LEPR抗体の一回または複数回の第三の投与量を逐次的に患者に投与することを含む方法を含む。
【0186】
「初回投与量」、「第二の投与量」、および「第三の投与量」という用語は、本発明の抗LEPR抗体の投与の時間的な順序を指す。したがって、「初回投与量」は、治療レジメンの開始時に投与される投与量であり(また「基準投与量」、「負荷投与量」、「開始投与量」などとも呼称される)、「第二の投与量」は初回投与量の後に投与される投与量であり、「第三の投与量」は第二の投与量の後に投与される投与量である。初回投与量、第二の投与量、および第三の投与量はすべて、同じ量の抗LEPR抗体を含有するが、投与頻度に関しては通常、互いに異なっていてもよい。しかしながら、特定の実施形態では、初回投与量、第二の投与量、および/または第三の投与量に含有される抗LEPR抗体の量は、治療経過の間に(例えば適宜調整されて加減され)、互いに異なっている。特定の実施形態では、二つ以上(例えば、2、3、4、または5)の投与量が、治療レジメンの開始時に負荷投与量」として投与され、その後に続く投与量が、より低い頻度ベースで投与される(例えば、「維持投与量」)。
【0187】
抗体の診断用途および解析用途
本発明の抗LEPR抗体はさらに、例えば、診断目的など、サンプル中のLEPRもしくはLEPR発現細胞を検出および/または測定するためにも使用され得る。例えば、抗LEPR抗体またはその断片を使用して、LEPRの異常発現(例えば過剰発現、過小発現、発現の欠如など)を特徴とする状態または疾患を診断してもよい。LEPRに対する例示的な診断アッセイは、例えば患者から取得されたサンプルを本発明の抗LEPR抗体と接触させることなどを含み、この場合において、当該抗LEPR抗体は、検出可能な標識またはレポーター分子で標識されている。あるいは、標識されていない抗LEPR抗体が、それ自体が検出可能に標識されている2次抗体と組み合わされて、診断応用に使用され得る。検出可能な標識またはレポーター分子は、例えばH、14C、32P、35S、または125Iなどの放射性同位体、フルオレセインイソチオシアネートもしくはローダミンなどの蛍光部分もしくは化学発光部分、またはアルカリホスファターゼ、ベータ-ガラクトシダーゼ、セイヨウワサビペルオキシダーゼ、もしくはルシフェラーゼなどの酵素でありうる。サンプル中のLEPRを検出または測定するために使用され得る具体的な例示的アッセイとしては、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)、ラジオイムノアッセイ(RIA)、蛍光活性化細胞分取(FACS)、およびポジトロン放出断層(PET)撮影法が挙げられる。
【0188】
本発明によるLEPR診断アッセイで使用できるサンプルとしては、正常な状態または病理学的状態下で、検出可能な量のLEPRタンパク質またはその断片を含有する、患者から取得可能な任意の組織または液体サンプルが挙げられる。一般に、基準のまたは標準的なLEPRレベルを最初に確立するために、健常な患者(例えばLEPRのレベル異常または活性と関連した疾患または状態に罹患していない患者)から取得された特定のサンプル中のLEPRレベルが測定される。次に、LEPRのこの基準レベルを、LEPR関連の疾患または状態を有すると疑われる個体から得られたサンプルにおいて測定されたLEPRレベルと比較してもよい。
【実施例
【0189】
以下の実施例は、本発明の方法および組成物をどのように作成し使用するかを当業者へ完全に開示するために提供されており、発明者がその発明として見なすものの範囲を限定することを意図していない。使用した数字(例えば、量、温度等)に対する正確さを確保するために努力がなされているが、一部の実験誤差および偏差を考慮に入れるべきである。別途示さない限り、部は重量部であり、分子量は平均分子量であり、温度は大気圧でまたは大気圧付近での℃(摂氏)である。
【0190】
実施例1:レプチン受容体(LEPR)に特異的に結合する抗原結合タンパク質の作製
抗LEPR抗体は、LEPRの細胞外ドメインを含む免疫原を用いて、VELOCIMMUNE(登録商標)マウス(すなわち、ヒト免疫グロブリン重鎖およびカッパ軽鎖の可変領域をコードするDNAを含む操作マウス)を免疫化することにより取得された。抗体の免疫反応は、LEPR特異的免疫アッセイによりモニタリングされた。過去に報告された技術を使用して、完全ヒト抗LEPR抗体を単離し、精製した。
【0191】
本実施例の方法にしたがって作製された例示的な抗LEPR抗体の特定の生物学的特性を、以下に記載される実施例において詳細に説明する。
【0192】
実施例2:重鎖および軽鎖の可変領域のアミノ酸配列および核酸配列
表1は、本発明の選択された抗LEPR抗体の重鎖および軽鎖の可変領域ならびにCDRのアミノ酸配列識別子を示す。対応する核酸配列識別子を表2に記載する。
【0193】
(表1)アミノ酸配列識別子
【0194】
(表2)核酸配列識別子
【0195】
抗体は通常、以下の命名法にしたがって本明細書で言及される:Fc接頭辞(例えば、「H4H」、「H1M」、「H2M」など)、その後に数値の識別子(例えば「16650」、「16679」など)、その後に「P」または「N」の接尾辞。したがって、この命名法によると、抗体は、本明細書において、例えば「H4H16650P2」、「H4H16679P2」などと呼称される場合もある。本明細書で使用される抗体の名称に対するFc接頭辞(H4H、H1MおよびH2M)は、抗体の特定のFc領域のアイソタイプを示す。例えば、「H4H」抗体は、ヒトIgG4のFcを有し、一方で、「H1M」抗体は、マウスIgG1のFcを有する(すべての可変領域は、抗体の名称において最初に「H」が表示される場合、完全ヒトである)。当業者によって理解されるように、特定のFcアイソタイプを有する抗体は、異なるFcアイソタイプを有する抗体に変換することができる(例えば、マウスIgG1 Fcを有する抗体は、ヒトIgG4を有する抗体に変換することができる、など)が、いずれの場合でも、可変ドメイン(CDRを含む)-これは、表1および2に示される数値識別子によって示されている-は変わらず、結合特性はFcドメインの性質に関わらず同一または実質的に類似していると予想される。
【0196】
本明細書の実施例において使用される場合、「コンパレータmAb」とは、Fazeli et al.(2006)J Immunol Methods 312:190-200、およびCarpenter et al.(2012)Structure 20(3):487-97に記載されるFab9F8を指す。
【0197】
国際特許出願公開 WO2017/66204を参照のこと。
【0198】
実施例3:ヒトモノクローナル抗LEPR抗体の表面プラズモン共鳴から導かれた結合アフィニティおよび速度定数
精製された抗LEPR抗体へのLEPRの結合に対する平衡解離定数(K値)が、Biacore4000装置を使用したリアルタイム表面プラズモン共鳴バイオセンサーを使用して決定された。全ての結合試験は、10mM HEPES、150mM NaCl、3mM EDTA、および0.05% v/v 界面活性剤Tween-20、pH7.4(HBS-ET)のランニング緩衝液中、25℃および37℃で実施した。Biacore センサーの表面を、まずモノクローナルマウス抗ヒトFc抗体(GE,# BR-1008-39)を用いたアミンカップリングによって誘導体化し、抗LEPRモノクローナル抗体を捕捉した。以下のLEPR試薬に対して結合試験が行われた:C末端myc-mycヘキサヒスチジンタグとともに発現されたヒトLEPR細胞外ドメイン(hLEPR.mmh;配列番号114)、C末端myc-myc-ヘキサヒスチジンタグとともに発現されたカニクイザルLEPR細胞外ドメイン(mfLEPR.mmH;配列番号117)、C末端マウスIgG2a Fcタグとともに発現されたヒトLEPR細胞外ドメイン(hLEPR.mFc;配列番号115)、C末端myc-myc-ヘキサヒスチジンタグとともに発現されたマウスLEPR細胞外ドメイン(mLEPR.mmh;配列番号118)、およびC末端myc-myc-ヘキサヒスチジンタグとともに発現されたラットLEPR細胞外ドメイン(rLEPR.mmh;配列番号119)。異なる濃度のLEPR試薬を最初にHBS-ETランニング緩衝液中で調製し(100nM~3.7nM;3倍連続希釈)、そして抗ヒトFc捕捉抗LEPRモノクローナル抗体表面上に30μL/分の流速で4分間注入しながら、モノクローナル抗体結合LEPR試薬の解離を10分間、HBS-ETランニング緩衝液中でモニタリングした。Scrubber2.0cカーブフィッティングソフトウェアを使用して、質量輸送限界(mass transport limitation)を用いてリアルタイム結合センサーグラムを1:1結合モデルにフィッティングさせることによって、動態速度(k)および解離速度(k)定数を決定した。結合解離平衡定数(K)および解離半減期(t1/2)を、動力学的速度定数から以下のように計算した:
【0199】
【数1】
【0200】
25℃および37℃での本発明の各種抗LEPRモノクローナル抗体に結合するhLEPR.mmh、mfLEPR.MMHまたはhLEPR.mFcの結合速度パラメータを、表3から表8に示す。
【0201】
(表3)25℃でのLEPRモノクローナル抗体に結合するhLEPR-MMHの結合速度パラメータ。
NBは、現在の実験条件下で結合が観察されなかったことを示す。
【0202】
(表4)37℃でのLEPRモノクローナル抗体に結合するhLEPR-MMHの結合速度パラメータ。
NBは、現在の実験条件下で結合が観察されなかったことを示す。
【0203】
(表5)25℃でのLEPRモノクローナル抗体に結合するmfLEPR.MMHの結合速度パラメータ。
NBは、現在の実験条件下で結合が観察されなかったことを示す。
ICは、観察された結合が包括的であること、およびリアルタイムの結合データに適合することができなかったことを示す。
【0204】
(表6)37℃でのLEPRモノクローナル抗体に結合するmfLEPR.MMHの結合速度パラメータ。
NBは、現在の実験条件下で結合が観察されなかったことを示す。
ICは、現行の実験条件下では、観察された結合が包括的であること、およびリアルタイムの結合データに適合することができなかったことを示す。
【0205】
(表7)25℃でのLEPRモノクローナル抗体に結合するhLEPR.mFcの結合速度パラメータ。
NBは、現在の実験条件下で結合が観察されなかったことを示す。
【0206】
(表8)37℃でのLEPRモノクローナル抗体に結合するhLEPR.mFcの結合速度パラメータ。
NBは、現在の実験条件下で結合が観察されなかったことを示す。
【0207】
25℃では、表5に示されるように、抗LEPRモノクローナル抗体は、7.93nM~148nMの範囲のK値で、hLEPR-MMHに結合した。37℃では、表4に示されるように、抗LEPRモノクローナル抗体は、14.8nM~326nMの範囲のK値で、hLEPR-MMHに結合した。
【0208】
本発明の12個の抗LEPRモノクローナル抗体のうち10個が、mfLEPR.MMHに結合した。25℃では、表7に示されるように、抗LEPRモノクローナル抗体は、2.27nM~139nMの範囲のK値で、mfLEPR.MMHに結合した。37℃では、表8に示されるように、抗LEPRモノクローナル抗体は、5.18nM~264nMの範囲のK値で、mfLEPR.MMHに結合した。
【0209】
25℃では、表7に示されるように、抗LEPRモノクローナル抗体は、613pM~5.7nMの範囲のK値で、hLEPR-mFcに結合した。37℃では、表8に示されるように、抗LEPRモノクローナル抗体は、1.16nM~12.8nMの範囲のK値で、hLEPR-mFcに結合した。
【0210】
本発明の抗LEPRモノクローナル抗体はいずれも、25℃または37℃でもmLEPR.MMHまたはrLEPR.MMHには結合しなかった(データは示さず)。
【0211】
実施例4:本発明の抗LEPR抗体は、レプチン:LEPR結合の存在下で、LEPRに結合する。
ヒトレプチンによる、抗LEPR抗体のLEPRへの結合の遮断は、Biacore T200装置でリアルタイム表面プラズモン共鳴バイオセンサーを使用して評価された。実験全体が、10mM HEPESのpH7.4、150mM NaCl、3mM EDTA、および0.05%v/vの界面活性剤Tween-20(HBS-ETランニング緩衝液)中で、25℃で実施された。Biacore CM5センサー表面は、標準的なEDC/NHS表面化学法を使用してヒトレプチンをアミンカップリングすることにより最初に誘導体化された(R&D Systems社、#398-LP)。ヒトLEPRとヒトレプチンの複合体は、20nMのC末端myc-myc-ヘキサヒスチジンタグを伴い発現されたヒトLEPR細胞外ドメイン(hLEPR-MMH;配列番号:xx)を、10μL/分または25μL/分の流速でヒトレプチン固定Biacoreセンサー表面上に4分間注入し、およそ200RUの結合反応を実現することにより形成された。hLEPR-MMHへの抗体結合が、ヒトレプチンにより遮断されるかを評価するために、200nMの抗LEPRモノクローナル抗体を、前もって形成されたhLEPR-MMH:ヒトレプチン複合体上に50μL/分または25μL/分の流速で4~5分間注入した。本発明の抗LEPR抗体のすべてが、ほぼ同じシグナル強度でhLEPR-MMHとヒトレプチンの複合体(レプチン:LEPR)に結合した。観察された結合はRUで表され、表9に報告される。この結果は、ヒトレプチンは、試験された抗LEPR抗体に対するhLEPR-MMHの結合を遮断しないことを示す。
【0212】
(表9)hLEPR-MMHとヒトレプチンの前もって形成された複合体に対する抗LEPRモノクローナル抗体の結合。
【0213】
実施例5:ヒトレプチン受容体遮断ELISA
ELISAについて、ヒトレプチン(hLeptin;R&D Systems社、#398-LP-01M)は、PBS中、4℃で一晩、96ウェルマイクロタイタープレート上で5μg/mLの濃度でコーティングされた。その後、非特異結合部位が、0.5%(w/v)BSAのPBS溶液を使用してブロッキングされた。C末端ヒトFcタグとともに発現されたLEPRタンパク質(hLEPR.hFc、配列番号116)の細胞外ドメインの一定量の10nMを、連続希釈で8.5pM~500nMの範囲にある抗LEPR抗体、ヒトレプチンタンパク質、またはアイソタイプ対照抗体を用いて力価測定した。次いでこれらの抗体-タンパク質複合体またはタンパク質-タンパク質複合体を、室温(RT)で1.5時間インキュベートした。続いて、複合体を、ヒトレプチンでコートされたマイクロタイタープレートに移し、2時間、室温でインキュベートした。ウェルを洗浄し、プレートに結合したhLEPR.hFcを、西洋ワサビペルオキシダーゼが結合した抗ヒトIgGポリクローナル抗体(Jackson ImmunoResearch Inc,#109-035-098)を用いて検出した。サンプルをTMB溶液(BD Biosciences社、#555214;基材AおよびBを、メーカーの指示に従って1:1の比で混合)で発色させ、比色反応を生じさせ、次にVictor X5プレートリーダー上で450nmで吸光度を測定する前に、1M硫酸で中和した。
【0214】
プリズム(商標)ソフトウェア(GraphPad社)内でのシグモイド用量反応モデルを使用してデータ解析を実施した。試験された抗体の最大濃度での遮断率は、プレート上のヒトレプチンに対する、10nMのhLEPR.hFcの結合を遮断する抗体の能力の指標として算出された。算出において、抗体の非存在下での10nMのhLEPR.hFcの結合シグナルは、100%結合または0%遮断と呼称された。そしてhLEPR.hFcの非存在下、緩衝液単独の基準シグナルは、0%結合または100%遮断と呼称された。500nMの抗体濃度での遮断データを、表10に要約する。
【0215】
表10に示されるように、本発明の抗LEPR抗体はいずれも、ヒトレプチンがコートされた表面に対するhLEPR.hFcの結合を、28%を超えて遮断しなかった。しかしながら、陽性対照としてのコンパレータ抗体およびヒトレプチンは、ヒトレプチンコート表面に対するhLEPR.hFc結合の99%を遮断することができた。アイソタイプ対照抗体は、最大500nMの濃度で、計測可能な遮断を示さなかった。
【0216】
(表10)抗LEPR抗体による、ヒトレプチンへのhLEPR.hFc結合の遮断ELISA
【0217】
実施例6:HEK293/Mycx2-hLepR(ecto)-GPI固定細胞を用いたFACS分析による細胞結合
レプチン受容体のLEPRは、クラスIサイトカイン受容体ファミリーの単回膜貫通型受容体である(Tartaglia et al.(1997)J Biol Chem 7:272(10):6093-6)。LEPRはレプチンに結合することができ、レプチンは主に、食物の摂取と代謝の調節に関与する脂肪組織により発現されている(Friedman et al.(2014)J Endocrinol 223(1):T1-8)。
【0218】
抗LEPR抗体による細胞結合を評価するために、HEK293安定細胞株が作製された。本明細書において以降、HEK293/hLEPR-GPIとされる一つの細胞株は、タンパク質が膜にGPIで繋留されるように、N末端myc-mycタグと、GPI(グリコシルホスファチジルイノシトール)の付加を誘導するヒトカルボキシペプチダーゼMに由来するC末端ペプチド配列とともにヒトLEPRの細胞外ドメイン(アクセッション番号P48357(配列番号113)のアミノ酸22~839、アイソフォームB)を安定的に発現した(Deddish et al.(1990)J.Biological Chemistry 265:25:15083-89)。別のHEK293細胞株は、ルシフェラーゼレポーター(Stat3-ルシフェラーゼ、Stat3-luc、SA Bioscience社、#CLS-6028L)とともに全長ヒトLEPR(アクセッション番号P48357(配列番号113)のアミノ酸1~1165、アイソフォームB)を安定的に発現するように作製され、本明細書において以降、HEK293/Stat3-luc/hLEPR-FLとされた。Stat3-ルシフェラーゼレポーターのみを含むHEK293細胞も対照細胞株として作製された(HEK293/Stat3-luc)。
【0219】
FACS分析については、HEK293親細胞と、HEK293/hLEPR-GPI細胞が分離され、2%FBSを含有するPBS(FACS緩衝液)中、96-ウェルのv底プレート上に、5x10細胞/ウェルで播種された。抗hLEPR抗体が細胞に結合する能力が、レプチンの存在により影響を受けるかを試験するため、1μMのヒトレプチン(R&D Systems社、# 398-LP)を含む、または含まないFACS緩衝液を、4℃で細胞とともに30分間インキュベートし、次いで抗LEPR抗体または対照抗体を、FACS緩衝液中、10nMで添加した。次いで細胞を4℃で30分間インキュベートし、その後洗浄し、16μg/mLのAlexa Fluor(登録商標)-647結合二次抗体(Jackson ImmunoResearch Laboratories Inc.、# 109-547-003)とともに4℃で30分間、インキュベートした。次いで細胞を、BD CytoFix(商標)(Becton Dickinson社、# 554655)を使用して固定し、ろ過して、HyperCyt Flow Cytometer(Beckman Coulter社)で解析した。未染色および二次抗体単独の対照もまた、すべての細胞株に対して試験された。生細胞に対する蛍光の幾何平均(geometric means)を決定するために、ForeCyt(IntelliCyt)およびFlowJoのバージョン10のソフトウェアを使用して結果を分析した。次いで各サンプルに対する蛍光の幾何平均を、非染色細胞の幾何平均に対して標準化し、「結合比」と呼称される、1条件当たりの相対的結合を得た。これら結合比は、検証された各抗体に対して記録された。
【0220】
表11に示されるように、10nMで試験された本発明の9個の抗LEPR抗体は、レプチンの非存在下で、824~3374倍の範囲の結合比で、HEK293/hLEPR-GPI細胞への結合を示した。抗LEPR抗体は、1μMのレプチンの存在下でも、398および4184倍の結合比で結合した。表11に示すように、10nMで試験されたコンパレータ抗体は、レプチンの非存在下では2349倍の結合比でHEK293/hLEPR-GPI細胞への結合を示したが、1μMのレプチンの存在下では、112の結合比であり、細胞への結合は有意な低下を示した。抗LEPR抗体は、HEK293親細胞にはほとんど結合を示さず、1μMのレプチンの存在下、または非存在下で、結合比は、1~9倍の範囲であった。アイソタイプ対照抗体および二次抗体の単独サンプルも、レプチンの存在下、または非存在下で、いずれの細胞株にもほとんど結合を示さず、結合比は、1~6倍の範囲であった。
【0221】
表12に示されるように、レプチンの非存在下で、70nMで試験された本発明の4個の抗体は、707~1131倍の範囲の結合比でHEK293/hLEPR-GPI細胞に結合を示し、そして42~51倍の範囲の結合比で、HEK293/Stat3-luc/hLEPR-FL 細胞への結合を示した。抗LEPR抗体は、HEK293/Stat3-luc細胞にはほとんど結合を示さず、結合比は、1~8倍の範囲であった。アイソタイプ対照抗体および二次抗体の単独サンプルも、試験された細胞株のいずれにもほとんど結合を示さず、結合比は、1~2倍の範囲であった。
【0222】
(表11)HEK293/hLEPR-GPI細胞およびHEK293親細胞 +/- 1μMヒトレプチンに対する、10nMの抗LEPR抗体の結合
「アゴニスト」または「強化性物質」としての抗体の分類は、本明細書の実施例7および8で観察された結果に一部基づいている。
【0223】
(表12)HEK293/hLEPR-GPI、HEK293/Stat3-hLEPR-FL、およびHEK293/Stat3-luc親細胞に対する、70nMの抗LEPR抗体の結合
【0224】
実施例7:本発明の抗LEPR抗体は、レプチンの存在下または非存在下で、LEPRシグナル伝達を活性化する
完全長ヒトLEPR(hLEPR;アクセッション番号NP_002294.2のアミノ酸1~1165)を、ルシフェラーゼレポーター(STAT3-Luc、Qiagen社、# CLS-6028L)とともにヒト神経芽細胞腫細胞株であるIMR-32細胞株において安定的に発現するレポーター細胞株を使用して、LEPR活性化を介した、STAT3の転写活性化を検出するバイオアッセイを開発した。得られた安定細胞株はIMR-32/STAT3-Luc/hLEPRと呼称され、単離されて、10% FBS、NEAA、1ug/mLのピューロマイシン、100ug/mLのハイグロマイシンBおよびペニシリン/ストレプトマイシン/L-グルタミンを補充されたMEM-Earl培地中で維持された(完全培地)。
【0225】
得られたバイオアッセイを使用して、レプチンの存在下または非存在下でのLEPRシグナル伝達に対する本発明の抗LEPR抗体の効果を測定した。バイオアッセイについては、IMR-32/STAT3-Luc/hLEPR細胞を、完全培地中、96ウェルフォーマットに対し、20,000細胞/100ul/ウェルの密度で播種し、翌日、1% BSAおよび0.1% FBS(アッセイ緩衝液)を補充した適切な量のOpti-MEM培地で30分間、置き換えた。レプチンの非存在下での本発明抗体の効果を測定するために、抗LEPR抗体またはアイソタイプ対照抗体と、ヒトレプチン(hLeptin;R&D Systems社、#398-LP)をアッセイ緩衝液中で半対数連続希釈して、100nM~300fMの範囲の最終濃度とした。これを細胞に添加し、次いで5% CO2中、37℃で一晩インキュベートした。
【0226】
レプチンの存在下での本発明抗体の効果を測定するために、アッセイ緩衝液中、200pMの固定濃度のヒトレプチンを細胞に添加し、その直後に、100nM~300fMの範囲の最終濃度に半対数連続希釈された抗LEPR抗体またはアイソタイプ対照抗体を添加した。次いでサンプルを、5% CO2中、37℃で一晩インキュベートした。次いで、OneGlo試薬(Promega社、#E6051)をサンプルに加え、発光モードで Envision Multilabel Plate Reader(Perkin Elmer社)上でルシフェラーゼ活性を測定した。相対光単位(RLU)値を得て、GraphPad Prismソフトウェア(GraphPad社)で非線形回帰を用いて結果を分析した。ヒトレプチン用量反応から得られた最大RLU値は、IMR-32/STAT3-Luc/hLEPRアッセイにおいて100%の活性化として定義された。
【0227】
表13に示されるように、試験1において、ヒトレプチンの非存在下で、試験されたすべての抗LEPR抗体は、IMR-32/STAT3-Luc/hLEPR細胞の弱い刺激を示した。EC50値は134pM~11.9nMの範囲で、最大活性化はそれぞれ、ヒトレプチン用量反応から得られた最大活性化の5%~13%の範囲であった。試験2において、ヒトレプチンの非存在下で、試験された4つの抗LEPR抗体は、IMR-32/STAT3-Luc/hLEPR細胞の刺激を示した。EC50値は61.9pM~206.9pMの範囲で、最大活性化はそれぞれ、ヒトレプチン用量反応から得られた最大活性化に対して65%~68%の範囲であった。試験1において、200pMのヒトレプチンの存在下で、試験されたすべての抗LEPR抗体は、IMR-32/STAT3-Luc/hLEPR細胞の刺激を示した。EC50値は20.2pM~523pMの範囲で、最大活性化はそれぞれ、ヒトレプチン用量反応から得られた最大活性化の66%~107%の範囲であった。これら抗体がレプチン誘導型LEPRシグナル伝達を強化したことから、これらの抗体を、本明細書に規定されるように「強化性物質」と分類した。試験2において、200pMのヒトレプチンの存在下で、試験された4個の抗LEPR抗体は、IMR-32/STAT3-Luc/hLEPR細胞の刺激を示した。EC50値は51.9pM~257.3pMの範囲で、最大活性化は、ヒトレプチン用量反応から得られた最大活性化の76%~88%の範囲であった。LEPRシグナル伝達は、レプチンの存在下ではこれらの抗体により感知できるほどには増強されなかった。アイソタイプ対照抗体は、アッセイのいずれにおいても、IMR-32/STAT3-Luc/hLEPR細胞の測定可能な刺激を示さなかった。
【0228】
(表13)抗LEPR抗体によるhLEPRの活性化
【0229】
実施例8:本発明の抗LEPR抗体は、シグナル伝達欠損LEPR変異体またはシグナル伝達障害LEPR変異体を発現する細胞においてシグナル伝達を活性化する
LEPR変異体は、レプチン介在性シグナル伝達の欠損または障害を呈すると特定されており、早期発症型の肥満と関連付けられている。例えばLEPR-A409Eは、シグナル伝達欠損変異体LEPRタンパク質であり、レプチンシグナルをSTAT3に伝達しない。A409E変異体は元々、早期発症型の肥満の単一遺伝子性の原因として特定された。(Farooqi et al.,2007,N Engl J Med 356(3):237-247)。LEPR-P316Tは、シグナル伝達障害変異体LEPRタンパク質であり、早期発症型肥満と関連することも示されている。(Mazen et al.,2011,Mol Genet Metab 102:461-464)。
【0230】
本実施例では、シグナル伝達欠損LEPR変異体またはシグナル伝達障害LEPR変異体を発現する細胞株において、本発明の抗LEPR抗体が、LEPRシグナル伝達を刺激する能力を評価した。特に、野生型LEPR、LEPR-A409E(シグナル伝達欠損)またはLEPR-P316T(シグナル伝達障害)のいずれかを発現するレポーター細胞株(HEK293)が構築された。ビヒクルのみ、組み換えヒトレプチン、対照IgG、または本発明のアゴニスト性抗LEPR抗体(H4H16650またはH4H16679)のいずれかで細胞を処理し、LEPRシグナル伝達の程度(STAT3発現と比較した、pSTAT3-Y705発現のウェスタンブロッティング検出により測定される)が決定された。
【0231】
本発明のアゴニスト性抗LEPR抗体(H4H16650およびH4H16679)は、これらの実験において、LEPR-A409E変異体またはLEPR-P316T突然変異体を発現する細胞において、用量依存性の様式でLEPRシグナル伝達を刺激することが示された(STAT3発現により測定される)(図2、パネルBおよびC)。対照的に、レプチン処置は、LEPR-P316T変異体を発現する細胞において中程度のシグナル伝達のみを誘導し、LEPR-A409E変異体を発現する細胞のシグナル伝達は誘導しなかった。(図2、パネルA)。さらに、ビヒクルまたはIgG対照抗体で処理された細胞株ではいずれもLEPRシグナル伝達は検出されなかった(データは示さず)。他のシグナル伝達欠損LEPR変異体またはシグナル伝達障害LEPR変異体をこのアッセイで試験したが、抗LEPR変異体では活性化されなかった(データは示さず)。このことから、この回復効果は、変異体依存性であることが示唆される。
【0232】
本実施例の結果は、本発明のアゴニスト性抗LEPR抗体が、特定のシグナル伝達欠損LEPR変異体またはシグナル伝達障害LEPR変異体(例えば、LEPR-P316TまたはLEPR-A409E)を原因とする、または関連する疾患および障害(例えば、早期発症型肥満)の治療に有用であり得ることを示している。
【0233】
実施例9:各種抗LEPRモノクローナル抗体間での八重(Octet)交差競合。
各種抗LEPRモノクローナル抗体のパネル間の結合競合は、Octet HTXバイオセンサープラットフォーム(Pall ForteBio Corp.)上で、リアルタイムの標識非含有バイオレイヤー干渉分光アッセイを使用して決定された。実験全体は、10mM HEPES、150mM NaCl、3mM EDTA、および0.05% v/v 界面活性剤のTween-20、1mg/mLのBSA、pH7.4(HBS-EBT)を含有する緩衝液中、25℃で、1000rpmの速度でプレートを振とうさせながら実施された。C末端myc-myc-ヘキサヒスチジンタグとともに発現された組み換えヒトLEPR(hLEPR.mmh;配列番号114)上の各エピトープに対する結合に関して、二つの抗体が互いに競合し得るかを評価するために、約0.25nmまたは0.34nmのhLEPR-MMHは、抗-ペンタ-His抗体被覆Octetバイオセンサーチップ(Fortebio Inc,# 18-5122)上で、当該バイオセンサーチップを、20μg/mLのhLEPR-MMHを含有するウェル中に5分間、浸漬することにより最初に捕捉された。次いで、抗原を捕捉したバイオセンサーチップを、50μg/mLのmAb-1溶液を含有するウェルへと210秒間浸漬することによって、第一の抗LEPRモノクローナル抗体(以降、mAb-1と呼称される)で飽和した。次いで、バイオセンサーチップを、50μg/mLの第二の抗LEPRモノクローナル抗体(以降、mAb-2と呼称される)を含有するウェル内に150秒間浸漬させた。バイオセンサーチップは、実験の全行程の間で、HBS-EBT緩衝液で洗浄した。実験の過程全体の間にリアルタイム結合応答をモニタリングし、各ステップの終了時に結合応答を記録した。mAb-1と予め複合体化されたhLEPR-MMHへのmAb-2結合の反応を比較し、表14および表15に示すとおり、各種抗LEPRモノクローナル抗体の競合/非競合の挙動を判定した。
【0234】
(表14)抗LEPRモノクローナル抗体間の交差競合
【0235】
(表15)抗LEPRモノクローナル抗体間の交差競合
【0236】
実施例10:レプチン欠損症の誘導性マウスモデルにおける、LEPRアゴニスト性抗体のH4H16650P2、H4H16679P2、H4H17319P2、およびH4H17321P2のインビボ有効性。
本発明の4種の特異的アゴニスト性抗LEPR抗体であるH4H16650P2、H4H16679P2、H4H17319P2、およびH4H17321P2の、食物摂取量、体重および脂肪症に対する効果を、遺伝子操作されたLEPRHu/Huマウスにおけるレプチン欠損症の誘導性モデルにおいて判定した。当該マウスは、マウスLEPR細胞外ドメイン配列の代わりにヒトLEPR細胞外ドメイン配列から構成されるレプチン受容体を発現する。hFcタグ付マウスLEPR細胞外ドメイン(本明細書において、mLEPR.hFcまたは「レプチントラップ(Leptin trap)」と呼称される、配列番号120)をコードするプラスミドの水力学的DNA送達(HDD)により、レプチン欠損症モデルが誘導された。発現されたときにレプチントラップが分泌され、循環レプチンに結合する。レプチントラップをコードする50μgのDNA構築体のHDDを行った後、マウスは、食物消費量の増大、ならびに脂肪症および体重の増加を呈した。
【0237】
基準の1日食物摂取量は、レプチントラップの投与前の7~4日の間に測定された(-7日目~-4日目)。0日目、35匹の13週~17週齢のオスLEPRHu/Huマウスは、レプチントラップを用いたHDDに成功した。HDD後の6日目および13日目に、眼窩後方から採血し、脂肪症を含む体組成がμCTにより定量された。HDD後の7日目に、0日目からの体重の変化率に基づいて、マウスを、一群当たり7匹で5群に無作為化した。皮下注射を介して、3mg/kgのアイソタイプ対照抗体の単回投与、3mg/kgのH4H16650P2、3mg/kgのH4H16679P2、3mg/kgのH4H17319P2、または3mg/kgのH4H17321の単回投与のいずれかを各群に投与した。アイソタイプ対照抗体は、公知のマウスタンパク質のいずれにも結合しなかった。試験期間中、各動物に対し、食物摂取量と体重が測定された。図3は、各処置群に対する1日平均の食物摂取量をまとめたものである。図3では、点線は、HDD注射前の平均基準食物摂取量を表している。0日目からの体重の変化率は、各時点での各動物に対して計算された。図4は、各抗体処置群における動物の体重の平均変化率をまとめたものである。図5は、抗体処置の1日前、および6日後のμCTにより定量された各抗体処置群における動物の平均脂肪量をまとめたものである。すべての結果は、平均±SEMとして表される。
【0238】
図3および4に示すように、レプチントラップを用いたHDDの後、抗体処置前のマウス群間では、類似した食物摂取量の増加および体重の変化率が観察された。図3に示されるように、3mg/kgのH4H16650P2抗体またはH4H16679P2抗体で処置されたマウスは、アイソタイプ対照抗体を注射されたマウスと比較して、抗体処置後の1日目(HDD後の8日目)からその後の測定時点での食物摂取量の有意な減少を呈した。3mg/kgのH4H17319P2抗体またはH4H17321P2抗体で処置されたマウスは、アイソタイプ対照抗体を注射されたマウスと比較して、抗体処置後の2日目(HDD後の9日目)、およびその後の他の測定時点での食物摂取量の有意な減少を呈した。図4に示されるように、3mg/kgのH4H16650P2抗体で処置されたマウスは、アイソタイプ対照抗体を注射されたマウスと比較して、抗体処置後の1日目(HDD後の8日目)、およびその後の他の測定時点での体重変化率の有意な減少を呈した。抗体処置の1日後、8日目に、アイソタイプ対照抗体で処置されたマウスは、0日目から21.16 ± 1.27%の体重増加を示した。一方で、H4H16650P2で処置されたマウスは、0日目から15.57 ± 0.9%の体重増加であった。3mg/kgのH4H16679P2抗体、H4H17319P2抗体、またはH4H17321P2抗体で処置されたマウスは、アイソタイプ対照抗体を注射されたマウスと比較して、抗体処置後の2日目(HDD後の9日目)、およびその後の他の測定時点での体重変化率の有意な減少を呈した。9日目で、0日目からの体重変化率は、アイソタイプ対照、H4H16650P2、H4H16679P2、H4H17319P2、またはH4H17321P2を処置されたマウスに対し、それぞれ23.18 ± 1.22%、13.17 ± 1.05%、12.95 ± 1.26%、15.98 ± 1.78%、および15.83 ± 2.01%であった。図5に示されるように、3mg/kgのアイソタイプ対照抗体で処置されたマウスは、抗体処置の1日前(HDD後、6日目)と比較して、抗体処置の6日後(HDD後、13日目)、脂肪量の有意な増加を示した。3mg/kgのH4H16650P2抗体、H4H16679P2抗体、H4H17319P2抗体、またはH4H17321P2抗体で処置されたマウスは、抗体処置前と比較して、抗体処置後、脂肪量は増加しなかった。処置の6日後(HDD後、13日目)、3mg/kgのH4H16650P2抗体、H4H16679P2抗体またはH4H17319P2抗体で処置されたマウスは、3mg/kgのアイソタイプ対照抗体で処置されたマウスと比較して、脂肪量の有意な減少を示した。
【0239】
実施例11:水素重水素交換による、ヒトレプチン受容体(hLEPR.mmh)へのH4H16650P2結合に関するエピトープマッピング。
H4H16650P2が相互作用するhLEPR.mmh(配列番号114のアミノ酸M1-D839)のアミノ酸残基を決定するための実験が実施された。この目的に対し、質量分析を含むH/D交換エピトープマッピングが実施された。H/D交換方法の概要説明は、例えば、Ehring(1999)Analytical Biochemistry 267(2):252-259;およびEngen and Smith(2001)Anal.Chem.73:256A~265Aに記載されている。
【0240】
実験手順 HDX-MS実験は、統合型Waters HDX/MSプラットフォーム上で実施された。当該プラットフォームは、重水素標識用のLeaptec HDX PALシステム、サンプル消化とローディング用のWaters Acquity M-Class(Auxiliary solvent manager)、分析的カラム勾配用のWaters Acquity M-Class(μBinary solvent manager)、および消化ペプチド質量測定用のSynapt G2-Si質量分析器からなる。
【0241】
標識溶液は、pD7.0(pH6.6と同等)で、D2O中、10mMのPBS緩衝液中で調製された。重水素ラベル標識のために、3.8μLのhLEPR.mmh(8pmol/μL)、または2:1モル比で抗体と前混合されたhLEPR.mmhを、56.2μLのDO標識溶液とともに様々な時間でインキュベートした(例えば、非重水素化対照=0秒、標識は1分および20分)。50μLのサンプルを50μLの前冷却クエンチ緩衝液(100mM リン酸緩衝液中、0.2M TCEP、6M 塩化グアニジン、pH2.5)に移すことによりクエンチし、混合サンプル液を2分間、1.0℃でインキュベートした。次いで、クエンチされたサンプルを、オンラインペプシン/プロテアーゼXIII消化用のWaters HDX Managerに注入した。消化されたペプチドを、0℃で、ACQUITY UPLC BEH C18 1.7-μm、2.1×5mm VanGuardプレカラム上にトラップし、分析カラムのACQUITY UPLC BEH C18 1.7-μm、1.0×50mmに溶出し、9分間、5%~40% B(移動相A:0.1%ギ酸水溶液、移動相B:0.1%ギ酸アセトニトリル溶液)の勾配分離を行った。質量分析計は、37Vのコーン電圧、0.5秒のスキャン時間、および50~1700Thの質量/電荷範囲で設定された。
【0242】
ヒトLEPR由来のペプチドの識別については、非重水素化サンプルからのLC-MSEデータを処理し、Waters ProteinLynx Global Server(PLGS)ソフトウェアを介して、ヒトLEPR、ペプシン、およびそれらの無作為化配列を含むデータベースに対して検索を行った。識別されたペプチドをDynamXソフトウェアにインポートし、以下の二つの基準によりフィルタリングした:1)1アミノ酸当たりの最小生成物;0.2、および2)複製ファイル閾値:3.次に、DynamXソフトウェアによって、各時点で3回の反復を含む複数時点から、保持時間および高質量精度(<10ppm)に基づいて各ペプチドの重水素取り込みを自動的に決定した。
【0243】
結果.MSデータ取得と連結されたオンラインペプシン/プロテアーゼXIIIカラムを使用することで、ヒトLEPRから合計で201個のペプチドが、抗体の存在下または非存在下で再現可能に識別された。これは70%の配列カバレッジを表している。表16に示されるように、H4H16650P2に結合したときに、5つのペプチドは重水素化取り込みが有意に低下した(セントロイドデルタ値>0.4ダルトンで、p値は<0.05)。記録されたペプチド質量は、3回の反復からのセントロイドMH+質量の平均値に相当する。アミノ酸162~169(ヒトLEPR;配列番号113のアミノ酸LYVLPEVL)およびアミノ酸170~181(ヒトLEPR;配列番号113のアミノ酸EDSPLVPQKGSF)に相当するこれらのペプチドは、H4H16650P2に結合したとき、重水素化速度が減速した。これらの識別された残基は、UniprotエントリーP48357(配列番号113;ヒトレプチン受容体)により規定されるヒトLEPRのアミノ酸残基162-169および170~181にも対応する。
【0244】
(表16)H4H16650P2抗体へ結合することで、大幅な防御を受けるヒトレプチン受容体ペプチド
【0245】
実施例12:ヒト化LEPRマウスにおける、LEPR増強性抗体のインビボ有効性の検証
本発明の3種の特異的増強性抗LEPR抗体であるH4H18482P2、H4H18487P2、およびH4H18492P2の、体重および脂肪症に対する効果を、1匹で飼育された遺伝子操作LEPRHu/Huマウスにおいて判定した。当該マウスは、マウスLEPR細胞外ドメイン配列の代わりにヒトLEPR細胞外ドメイン配列から構成されるレプチン受容体(mLEPR.hFc、配列番号120)を発現する。
【0246】
-19日目、脂肪症を含む体組成は、μCTにより定量された。0日目、48匹の14~16週齢のメスLEPRHu/Hu マウスを、体重に基づき、一群当たり12匹マウスの4群に無作為化した。0日目および11日目に、各群のマウスは、皮下注射を介して、30mg/kgのアイソタイプ対照抗体、30mg/kgのH4H18482P2、30mg/kgのH4H18487P2、または30mg/kgのH4H18492P2の単回投与が投与された。アイソタイプ対照抗体は、公知のマウスタンパク質のいずれにも結合しない。試験期間中、各動物に対し、体重が測定された。0日目からの体重の変化率は、各時点での各動物に対して計算された。図6は、各処置群における動物の体重の平均変化率をまとめたものである。図6は、抗体処置の19日前、および11日後のμCTにより定量された各抗体処置群における動物の平均脂肪量をまとめたものである。すべての結果は、平均±SEMとして表される。
【0247】
図6に示されるように、LEPR強化性抗体を投与された後、体重の変化率の減少が観察されたが、アイソタイプ対照抗体では観察されなかった。図6に示されるように、30mg/kgのH4H18482P2抗体で処置されたマウスは、アイソタイプ対照抗体を注射されたマウスと比較して、処置の2日後(2日目)から他の時点での体重変化率の有意な減少を呈した。30mg/kgのH4H18487P2抗体で処置されたマウスは、アイソタイプ対照抗体を注射されたマウスと比較して、2日目から他の時点での体重変化率の有意な減少を呈した。30mg/kgのH4H18492P2抗体で処置されたマウスは、アイソタイプ対照抗体を注射されたマウスと比較して、4日目、5日目および17日目で体重変化率の有意な低下を呈したが、他の時点では呈さなかった。30mg/kgのH4H18482P2抗体で処置されたマウスは、H4H18492P2抗体を注射されたマウスと比較して、6日目で体重変化率の有意な減少を呈したが、7日目、14日目、および17日目では呈さなかった。30mg/kgのH4H18487P2抗体で処置されたマウスは、H4H18492P2抗体を注射されたマウスと比較して、3日目から他の時点での体重変化率の有意な減少を呈したが、4日目および5日目では呈さなかった。
【0248】
図7Aに示すように、処置前の群間において、脂肪量の差はなかった(-19日目)。図7Bに示すように、30mg/kgで、H4H18482抗体およびH4H18487抗体で処置されたマウスは、アイソタイプ対照抗体と比較して、処置の17日後(12日目)、脂肪量において統計的に有意な減少を示したが、H4H18492抗体ではなかった。
【0249】
実施例13:サルLEPRシグナル伝達に対する本発明の抗LEPR抗体の効果
サルレプチン受容体の転写活性化を評価するために、安定細胞株が開発された。ルシフェラーゼレポーター(STAT3-Luc;SABiosciences社、# CLS-6028L)とともにヒトLEPR(hLEPR:アクセッション番号NP_002294.2のアミノ酸840~1165)の膜貫通ドメインと細胞質ドメインに融合されたカニクイザルLEPRの細胞外ドメイン(MfLEPR;アクセッション番号XP_005543194.1のアミノ酸22~837で、827位のスレオニンがアラニンに変化している)を安定的に発現するIMR-32細胞(ヒト神経芽細胞腫 ATCC)が作製された。得られた細胞株は本明細書において以降、IMR-32/STAT3-Luc/MfLEPRと呼称され、単離されて、10% FBS、NEAA、1ug/mLのピューロマイシン、100ug/mLのハイグロマイシンBおよびペニシリン/ストレプトマイシン/L-グルタミンを補充されたMEM-Earl培地中で維持された。
【0250】
バイオアッセイを実施して、レプチンの非存在下でのサルLEPRシグナル伝達に対する本発明の抗LEPR抗体の効果を測定した。バイオアッセイについては、IMR-32/STAT3-Luc/MfLEPR細胞を、ペニシリン/ストレプトマイシンを含むOptimem中、0.1%FBS(アッセイ緩衝液)で、96ウェルプレートに10,000細胞/ウェルで播種し、5% CO、37℃で一晩インキュベートした。翌日、ヒトレプチン(hLeptin)、抗LEPR抗体またはアイソタイプ対照を、アッセイ緩衝液中、(試験分子を含まない緩衝液単独を含有するサンプルを加えて)50nM~0.8pMに連続希釈し、細胞に添加した。5%CO中、37℃で5.5時間後、ルシフェラーゼ活性を、OneGlo(商標)試薬(Promega社、# E6031)およびVictor(商標)X multilabel plate reader(Perkin Elmer社)を用いて測定した。結果を、Prism(商標)6ソフトウェア(GraphPad社)を用いて非線形回帰(4パラメータロジスティック)を使用して解析し、EC50値を得た。抗体活性化率は、ヒトレプチンにより達成されるRLUの最大範囲と比較した、抗体により達成されるRLUの最大範囲として算出された。
【0251】
表17に示されるように、ヒトレプチンの非存在下では、試験されたすべての抗LEPR抗体が、IMR-32/STAT3-Luc/mfLEPR細胞におけるサルLEPRシグナル伝達の活性化を示した。EC50値は、266pM~368pMの範囲にあり、最大活性化範囲は、76%~82%であった。100%の活性化は、ヒトレプチンで取得されたものである。ヒトレプチンは、333pMのEC50値で活性化した。アイソタイプ対照抗体は、IMR-32/STAT3-Luc/mfLEPR細胞の測定可能な刺激を示さなかった。
【0252】
(表17)抗LEPR抗体によるカニクイザルLEPRの活性化
【0253】
実施例14:Luminex MFIシグナルを使用したヒトLEPRの全長細胞外ドメインへのエピトープ結合
本発明の抗LEPR抗体が結合するヒトLEPR上のエピトープを決定するために、Luminex FLEXMAP(FM3DD、LuminexCorp)フローサイトメトリーベースの分析を利用して、組み換えヒトLEPRタンパク質ドメインと抗LEPR抗体の相互作用を特徴解析した。アッセイについては、約300万個のカルボキシル化されたMicroplexマイクロスフェア(Luminex社、Cat# LC1000A)を洗浄し、ボルテックスし、0.1 M NaPO、pH 6.2(活性化緩衝液)で超音波破砕し、次に遠心分離して上清を除去した。マイクロスフェアを120μLの活性化緩衝液に再懸濁し、50mg/mLのN-ヒドロキシスクシンイミド(NHS、Thermo Scientific社、Cat# 24500)を15μLを加えることによって、カルボキシレート基(-COOH)が活性化された、次に25℃で、50mg/mLの1-エチル-3-[3-ジメチルアミノプロピル]カルボジイミド(EDC、ThermoScientific、Cat# 22980)を15μL加えた。10分後に50mMのMES、pH5(カップリング緩衝液)を600μL加えることによって、反応液のpHを5.0に低下させた。マイクロスフェアをボルテックスし、遠心分離で上清を除去した。活性化されたビーズを、カップリング緩衝液中で、マウスIgGまたはヒトIgGのいずれかを含む20μg/mLの抗mycモノクローナル抗体の500μLと直ちに混合し、25℃で二時間インキュベートした。1M TRIS-HCl、pH 8.0を50μL加えることによりカップリング反応をクエンチし、マイクロスフェアを急速にボルテックスして、遠心分離し、そして1mLのDPBSを用いて4回洗浄して、非カップリングタンパク質と他の反応成分を取り除いた。
【0254】
C末端myc-mycヘキサヒスチジンタグとともに発現されたヒトLEPR細胞外ドメイン(ヒトLEPR-MMH、配列番号113)、C末端myc-mycヘキサヒスチジンタグとともに発現されたヒトLEPR CRH1(D1)(ヒトLEPR CRH1(D1)-MMH、配列番号113のアミノ酸1~208で、アミノ酸209~236にmyc-mycヘキサヒスチジンタグを有する)、C末端myc-mycヘキサヒスチジンタグとともに発現されたヒトLEPR CRH1(D1、D2)ドメイン(ヒトLEPR-CRH1(D1、D2)-MMH、配列番号113のアミノ酸1~318で、アミノ酸319~346にmyc-mycヘキサヒスチジンタグを有する)、C末端myc-mycヘキサヒスチジンタグとともに発現されたヒトLEPR CRH1-Ig(D1、D2、D3)ドメイン(ヒトLEPR CRH1(D1、D2、D3)-MMH、配列番号113のアミノ酸1~278で、アミノ酸279~306にmyc-mycヘキサヒスチジンタグを有する)、C末端myc-mycヘキサヒスチジンタグとともに発現されたヒトLEPR CRH1-Ig(D2、D3)ドメイン(ヒトLEPR CRH1-Ig(D2、D3)-MMH、配列番号113のアミノ酸1~198で、アミノ酸199~226にmyc-mycヘキサヒスチジンタグを有する)、C末端myc-mycヘキサヒスチジンタグとともに発現されたヒトLEPR Ig(D3)ドメイン(ヒトLEPR Ig(D3)-MMH、配列番号113のアミノ酸1~88で、アミノ酸89~116にmyc-mycヘキサヒスチジンタグを有する)、C末端myc-mycヘキサヒスチジンタグとともに発現されたヒトLEPR CRH2ドメイン(ヒトLEPR CRH2-MMH、配列番号113のアミノ酸1~207で、アミノ酸208~235にmyc-mycヘキサヒスチジンタグを有する)、C末端myc-mycヘキサヒスチジンタグとともに発現されたヒトLEPR FNIIIドメイン(ヒトLEPR FNIII-MMH、配列番号113のアミノ酸1~204で、アミノ酸205~232にmyc-mycヘキサヒスチジンタグを有する)、C末端myc-mycヘキサヒスチジンタグとともに発現ヒトLEPR Ig-CRH2-FNIIIドメイン(ヒトLEPR Ig-CRH2-FNIII-MMH、配列番号113のアミノ酸1~510で、アミノ酸511~538にmyc-mycヘキサヒスチジンタグを有する)を含む、一過性発現されたLEPRタンパク質を、無血清CHO-S-SFM II培地(Thermo Fisher社、Cat # 31033020)に懸濁させ、次いで遠心分離により清浄化させた。上述のように調製された固定化抗mycモノクローナル抗体を有するマイクロスフェアのアリコートを、これらのタンパク質上清の各1mLに、個別に添加した。マイクロスフェアを穏やかに混合し、25℃で2時間インキュベートし、1mLのDBPSで二回洗浄し、遠心分離して上清を除去し、最終的に1mLのDPBS緩衝液中に再懸濁した。完全長ヒトLEPRと、各ヒトLEPRドメインタンパク質との個々の反応からの抗myc IgGカップリング化マイクロスフェアを48μL引き出し、3.6mLのPBS+20mg/mL BSA +0.05%のアジ化ナトリウム(ブロッキング緩衝液)中で一緒に混合した。
【0255】
この混合プールから、マイクロスフィアを、96ウェルフィルタープレート(Millipore社、Cat.No:MSBVN1250)の1ウェル当たり75μLで播種され、25μLの個々の抗ヒトLEPRモノクローナル抗体(0.5、または5μg/mL)と混合され、25℃で二時間インキュベートされ、次に0.05%Tween20を含むDPBS(洗浄緩衝液)200μLで二回洗浄された。個々のマイクロスフィアに結合した抗LEPR抗体の量を検出および定量するために、100μLのブロッキング緩衝液中、2.5μg/mL R-Phycoerythrin結合ヤギF(ab’)2抗ヒトカッパ(Southern Biotech社、Cat# 2063-09)、または100μLのブロッキング緩衝液中、1.25μg/mLのR-Phycoerythrin AffiniPure F(ab’)2断片ヤギ抗マウスIgG、F(ab’)2断片特異的(Jackson Immunoresearch社、Cat.No:115-116-072)のいずれかを添加し、25℃で30分間インキュベートした。30分後、サンプルを200μLの洗浄緩衝液で二回洗浄し、150μLの洗浄緩衝液に再懸濁した。マイクロスフェアの蛍光強度中央値(MFI)をLuminex分析器で測定した。
【0256】
(表18)mycタグに捕捉されたヒトLEPR全長細胞外ドメインおよび単離ヒトLEPRドメインに結合する抗LEPR抗体のLuminex MFIシグナル
【0257】
Luminex系解析の結果を表18に一覧にする。Luminex MFIシグナル強度は、本発明の12種の抗LEPR抗体が完全ヒトLEPR細胞外ドメインに結合したことを示す。抗LEPR抗体であるH4H18417P2、H4H18438P2、およびH4H18492P2は、ヒトLEPRのCRH1 D2ドメイン内のエピトープに結合した。抗LEPR抗体であるH4H18449P2、H4H16650P、およびH4H16679Pは、ヒトLEPRのCRH1(D1-D2)ドメイン内のエピトープに結合した。抗LEPR抗体のコンパレータモノクローナル抗体は、ヒトLEPRのCRH2ドメイン内のエピトープに結合した。抗LEPR抗体であるH4H18445P2は、ヒトLEPRのFNIIIドメイン内のエピトープに結合した。抗LEPR抗体であるH4H18446P2、H4H18482P2、およびH4H18487P2は、ヒトLEPRのIg-CRH2-FNIIIドメイン内のエピトープに結合した。
【0258】
実施例15~19:動物実験のプロトコール
すべての動物試験は、Regeneron Pharmaceuticals社のInstitutional Animal Care and Use Committee(IACUC)によるガイドラインを準拠し、承認を受けて実施された。サル実験も、Covance Laboratories社のIACUCによるガイドラインを準拠し、承認を受けて実施された。
【0259】
マウス実験
水力学的DNA送達
水力学的DNA送達(HDD:Hydrodynamic DNA delivery)をベースとしたインビボでのトランスフェクションは、生きた動物中で外来性タンパク質を発現させるためのネイキッドプラスミドDNAを含む大量溶液の急速注入を含むプロトコールである(Suda、2007)。マウスの体重を測定し、体重の10分の1(v/w)に等しい生理食塩水の最終量に懸濁することにより発現ベクターを新しく調製して、これを尾部側面静脈を通して注入することにより送達した。レプチン減衰モデルの実証実験(図11)について、8週齢のC57BL/6Nマウス(Taconic社)に、マウス1匹当たり、50μg DNAのmLeprECD発現ベクター(pRG977.mROR.mLepR.ecto.hFc)または対照ベクター(pRG977.hFc)を投与した。H4H17319P2評価実験(図9)については、17~20週齢のオスおよびメスのLeprhu/hu マウスに、マウス1匹当たり50μg DNAのmLeprECD発現ベクター(pRG977.mROR.mLepR.ecto.hFc)を投与した。
【0260】
体重および食物摂取量の測定
体重は、風袋されたデジタル実験室用はかり上の容器にマウスを置くことにより測定された。3秒間の動的計量間の平均体重が使用された。食物摂取量は、デジタル実験室用はかりを使用して、食品ホッパー内の食物量を測定することにより決定された。食物摂取量は、ホッパー内に入れられた食物の重量と、ホッパー内に残留した食物の重量との差異として算出された。
【0261】
体組成
マイクロコンピュータ断層撮影(micro-CT)イメージング法は、メーカーの説明書にしがたい、イソフルランガスで麻酔された生きたマウスに対し、Quantum Micro-CTイメージングシステム(Perkin Elmer社)を用いて実施された。メーカーの説明書に従い、Quantum Micro-CTイメージングシステム(Perkin Elmer社)を使用して、体組成(脂肪量、除脂肪量、骨量、骨ミネラル含量、および密度)を測定した。その後、AnalyzeDirectイメージングソフトウェアを使用してスキャンを解析した。脂肪量、除脂肪量、および骨量は、記録された組織体積を以下のそれぞれの質量密度で乗算することによって計算された:0.92、1.05、および1.7g/cm。脂肪、除脂肪量、自由水および総水量を測定するために、EchoMRI 100装置(EchoMRI)を用いた定量的核磁気共鳴(qNMR)を、意識のある生きたマウスに対して実施した。
【0262】
血中グルコース測定
食後の血糖値は、血糖計(AlphaTrak2、Zoetis社)およびグルコース試験ストリップ(Zoetis社)を使用し、意識のあるマウスに対し、尾静脈の切り傷から測定された。
【0263】
インスリン耐性試験
4時間の絶食後、示されるように、動物は、0.5、0.75または1.0U/kgのインスリン(Humulin R、Eli Lilly and Company)投与量で、腹腔内(IP)注射された。インスリン注射の0、15、30、60、および120分後で、AlphaTRAK2血糖計および試験ストリップ(Zoetis社)を使用してグルコース測定が実施された。Leprhu/hu の特徴解析実験では、Accu-Chek(登録商標)Compact Plus血糖計および試験ストリップ(Roche Diabetes Care,Inc.)を使用した。
【0264】
化学分析およびホルモンアッセイ
別段の指定が無い限り、マウスを4時間絶食させ、その後、眼窩後方採血から血液を採取した。血清単離のために、血液は血清分離管(Sarstedt AG & Co.)に移され、湿った氷上で少なくとも30分間、凝血され、その後、10,000gで5分間遠心分離された。血清が取り出され、レプチン定量用に処理されるまで、-80℃で保存された。血漿測定については、血液はK3EDTAコーティング管(Sarstedt AG & Co.)に移された。ジペプチジルペプチダーゼ4(DPP4)阻害剤とプロテアーゼ阻害剤のカクテルを血液サンプルに添加し、処理されるまで氷上で保存され、2000xgで10分間の遠心分離によって血漿が取得された。血漿は分注され、血漿脂質、肝酵素、およびレプチン値の定量に使用されるまで-80℃に保存された。K3EDTAコーティング管に収集された新鮮全血中でHbA1cが測定された。HbA1c、血漿脂質、および肝酵素は、化学分析器(Advia Chemistry XPT、Siemens社)を使用して定量された。血清または血漿のレプチン値は、免疫アッセイキット(Milliplex MAP、Millipore社)を使用し、メーカー推奨のプロトコールに従い測定された。
【0265】
肝トリグリセリド定量
肝トリグリセリド含量は、100~200mgの肝臓から定量された。液体窒素で冷却された乳鉢と乳棒により粉末に粉砕した。粉末化した肝組織の重量を測定し、ビーズホモジナイゼーション(FastPrep 24-5G、MP Biomedical社)によりPBS中でホモジナイズされた。ホモジネートを、5mLのFolch溶液(2:1のクロロホルム:メタノール)を含有するガラス管に移し、ボルテックスして、20分間、1500xgで遠心分離した。下の層を集め、5mLまで引き出し、ボルテックスした。特定量(25~50μL)のサンプルおよびトリオレイン標準(Verichem社)を、96ウェルポリプロピレンプレートに移し、1:1のクロロホルム:Triton X-100混合液、10μlと混合し、自然乾燥させた。乾燥したサンプルおよび標準に、300μLのトリグリセリド試薬(Thermo Scientific社)を添加し、プレートを5分間振とうさせ、次いで37℃で20分間インキュベートした。各反応液200μLを新しい透明なポリプロピレン96ウェルプレートに移し、500nmの吸光度を、プレートリーダー(Molecular Devices社)を使用して測定した。
【0266】
固定かん流および免疫組織化学法
マウスは、ペントバルビタールナトリウム(110mg/kg、IP)で麻酔され、2mLの生理食塩水で経心臓かん流され、次いで4%パラホルムアルデヒドの0.1Mホウ酸緩衝液、pH9.5の150mLで経心臓かん流された。肝臓は2時間、後固定(post-fix)され、70%エタノールに移され、パラフィン包埋されて切片作製され、Histservでヘマトキシリン&エオジン染色された。脳は4℃で2時間後固定され、その後、4℃で一晩、リン酸カリウム緩衝生理食塩水中、15%スクロースに浸漬された。全脳は、凍結滑走式ミクロトーム(Leica社)上で標本化され、30μmの厚さに切片作製され、等間隔のシリーズで集められ、そして抗凍結剤(0.1Mリン酸緩衝液中、20%グリセロールおよび30%エチレングリコール)中に保存され、そして抗凍結剤(0.1Mリン酸緩衝液中、20%グリセロールおよび30%エチレングリコール)中に-20℃で保存された。
【0267】
各実験群から150μm離れて置かれた一連の脳切片は同時に処理されて、動物群と処置群の間で、同等の染色であるようにした。全ての免疫染色について、脳切片はブロッキングされ、一次抗体/二次抗体は、1%ロバ血清(Equitech社)、0.03% Triton X-100、および0.05 Mリン酸塩緩衝生理食塩水を含む溶液中で希釈された。メーカー(Vector Labs社)のプロトコールに従い、アビジンおよびビオチンのブロッキングが実施された。pStat3(Y705)の免疫組織化学染色(#9145、Cell Signaling Technologies社、1:1000、4℃で16時間)は、等間隔の一連の脳切片に対し、色素源であるジアミン-ベンジジン(Vector Labs社)を用いたアビジン-ビオチン複合体法を使用して実施された。P-STAT3(Y705)免疫組織化学法(IHC)については、切片は、1% NaOH中、1%Hで10分間、K-PBS中、0.3%グリシンで10分間、K-PBS中、0.03%SDSで10分間、前処理された。
【0268】
明視野画像は、Scanscope XT(Aperio社)上で40xの対物レンズを用いた全スライドスキャニングにより取得された。切片は、Franklin and Paxinosのマウス脳アトラスを用いた組織比較によりマッチングされた。神経解剖学的領域および前項からの距離は、このアトラスに基づいて見積もられた。pSTAT3(Y705)免疫反応性細胞の数は、Haloソフトウェア(Indica Labs社)を使用して示された吻側-尾側レベルでの所与の領域に対し、両側性に定量された。
【0269】
サル実験
カニクイザルの全ての実験は、Covance Laboratories、Inc.で実施された。サルは、Certified Primate Diet #5048(PMI,Inc.)を毎日2回与えられ、新鮮な水への自由なアクセスが与えられた。
【0270】
体重
サルは、投与の日に、投与前に体重測定され、そして該当する場合は実験の残り期間にわたり、少なくとも週に1回、体重測定された。
【0271】
二重エネルギーX線吸収測定法(DEXA)
獣医の決定で、ケタミンとデクスメデトミジンで麻酔された絶食サルに対し、Discovery A densitometer(Hologic社)を使用して全身のスキャンが実施された。
【0272】
実施例15:抗LEPR抗体は、レプチン欠損症により誘発された肥満を回復させる
H4H17319P2がインビボにおいて有効であるかを決定するための実験が実施された。H4H17319P2はマウスLEPRには結合しないため、VelociGene(登録商標)法(Valenzuela et al.,2003)を使用して遺伝子改変マウスが作製された。当該マウスは、LEPR細胞外ドメインをコードするマウスLepr遺伝子の一部が、対応するヒトLEPRゲノム配列で置き換えられた(Leprhu/hu図10A)。Leprhu/huマウスは、体重、体組成、インスリン感受性、および血清レプチン値において、Lepr+/+マウスとの差異を示さなかった(図10B、CおよびD)。
【0273】
レプチン欠損症のマウスモデルは、hFcタグ付マウスLepr細胞外ドメイン(mLeprECD)をコードするプラスミドを水力学的DNA送達(HDD)して、内因性循環マウスレプチンを隠退させることでレプチンが減衰したように作用し、レプチンシグナル伝達を防止することにより開発された。mLeprECDのHDDを行った後、食べ物を与えられたC57BL/6Nマウスは急速に体重を増加させ、対象hFcのHDDを受けたマウスと比較して、HDD後、3日目から有意に増加した(図11A)。試験終了時(HDD後、10日目)、体重は、mLeprECDのHDD後に24%増加した。一方で対照群では、3%という僅かな増加のみが観察された(図11A)。体重データとアライメントすると、mLeprECDのHDD後の累積食物摂取量は、対照群と比較し、HDD後の3日目から有意に増加した(図11A)。体重増加が脂肪症の増加を反映したものであるかを確認するために、マイクロ-CTイメージングをHDD後の7日目に実施したところ、対照群と比較して、mLeprECDのHDD後、脂肪量の顕著な2倍の増加が示された(図11B)。他のすべての体組成パラメータは、群間で類似していた(図11B)。
【0274】
インビボでのH4H17319P2の有効性を評価するために、食物を与えられたオスおよびメスのLeprhu/hu マウスにおいて、mLeprECDのHDDによりレプチン欠損症が誘導された。予測されたように、mLeprECDの発現により、Leprhu/huマウスのオスメスの両方において、急速な体重増加が促進された(図9Aおよび12A)。HDDの7日後、体重における相対的変化率に基づき、Leprhu/huマウスを階層化し、対照またはH4H17319P2の単回10mg/kgをSC投与した。対照モノクローナル抗体(本明細書において以降、対照mAb)を投与されたオスとメスのマウスの両方とも体重が増加し続け、HDDの14日後、それぞれ体重は40.5±2.7%および44.1±4.7%増加した(図9Aおよび11A)。対照的に、LEPRアゴニスト性モノクローナル抗体の単回投与で処置されたマウスは、体重が減少し、HDD前の初期体重に戻った(図9Aおよび11A)。H4H17319P2はヒトLEPRには結合するが、マウスLEPRには結合しないため、体重における改善が、レプチンを隠退させるmLeprECDの能力にLEPR mAbが干渉したことに対する二次的なものである可能性を排除することができる。体重の減少は、食物摂取量の減少と関連していた(図9Aおよび11A)。投与前には二つの群間で、1日食物摂取量は違いが無かった。一方で、H4H17319P2で処置されたマウスは、対照モノクローナル抗体群と比較し、食物摂取量の有意な低下を示した(図9Aおよび11A)。H4H17319P2の単回投与で観察された体重および食物摂取量を低下させる効果は、最終的には弱まった。H4H17319P2で処置されたオスマウスおよびメスマウスにおいて、それぞれ処置の12日後および9日後(19日目および16日目)まで対照モノクローナルを投与されたマウスよりも食物摂取量は有意に低いままであった(図9Aおよび11A)。H4H17319P2で処置されたオスマウスおよびメスマウスの体重は、それぞれ処置の16日後および13日後(23日目および20日目)まで基準体重とほぼ同じで維持され、その後に体重増加が発生した(図9Aおよび11A)。
【0275】
H4H17319P2処置により誘導された体重低下は、脂肪症および除脂肪量の低下を反映していた。マイクロCT解析により、-1日目のHDD前、および6日目の処置前、オスマウスまたはメスマウスの両方の処置群は、類似した体組成を示したことが明らかとなった(図9B、12Bおよび12C)。レプチン欠損症の誘導と一致して、6日目に両方の群は、-1日目のHDD前と比較して、脂肪量および除脂肪量の有意な増加を示したが、骨量は増加しなかった(図9B、12Bおよび12C)。処置の6日後(13日目)、対照モノクローナル抗体投与マウスは、6日目と比較し、脂肪量のさらなる増加を示した。一方で、H4H17319P2処置後には、脂肪症のさらなる増加は検出されなかった。体重の変化と一致して、処置の7日後、対照モノクローナル抗体投与マウスと比較して、H4H17319P2処置されたマウスにおいて脂肪量と除脂肪量の両方が減少した。骨量、骨ミネラル含量または骨密度に対する処置関連効果は観察されなかった(図12Bおよび123C)。
【0276】
次に、誘導レプチン欠損症マウスにおいて、循環脂質を変化させる能力に関してH4H17319P2を評価した。血漿化学解析により、処置の6日後、対照モノクローナル抗体を投与されたオスマウスと比較して、H4H17319P2は、循環血漿トリグリセリド、ならびにHDL-コレステロール(HDL-C)およびLDL-コレステロール(LDL-C)を含む総コレステロールを低下させたことが明らかとなった(図9C)。
【0277】
レプチンは、レプチン欠損症のob/obマウスにおいてエネルギー消費を促進させる(Halaas et al.,1995;Pelleymounter et al.,1995)ことを踏まえると、誘導レプチン欠損症におけるH4H17319P2の体重低下効果が食物摂取量の減少により完全に説明されるのかを明確化させるために、ペア飼育(pair-feeding)効果を評価した。誘導レプチン欠損症Leprhu/huマウスは、HDDにより対照ベクターを投与されたLeprhu/huマウスと比較して、急速に体重を増加させ、そして過食であった(図13A)。7日目および13日目に投与した後、対照モノクローナル抗体が投与されたマウスは、多くの食物を消費し、体重が増え続けたが、H4H17319P2処置されたマウスは、食物摂取量が減少し、体重が減少した(図13A)。ペア飼育でも、mLeprECDを発現するLeprhu/huマウスにおいて、体重減少が促進された。注目すべきは、ペア飼育(pair-fed)されたマウスは、H4H17319P2処置マウスと同じ量の食物を消費していたが、同程度の体重減少は示さなかったことである(図13A)。これらのデータと一致して、対照モノクローナル抗体を投与されたマウスと比較し、ペア飼育されたマウスは脂肪症を減少させたが、H4H17319P2で処置されたマウスの脂肪症よりは有意に高かった(図13B)。対照的に、ペア飼育とH4H17319P2処置の間では、対照モノクローナル抗体が投与されたレプチン欠損症マウスと比較して、除脂肪量の減少に対し類似の効果が観察された(図13B)。骨量、骨密度またはミネラル含量には効果は観察されなかった(図13B)。
【0278】
レプチンは、レプチン欠損症のob/obマウスにおいてインスリン感受性も改善する(Muzzin et al.,1996;Pelleymounter et al.,1995)。ゆえにインスリン感受性に対するH4H17319P2処置とペア飼育の相対的効果を、レプチン欠損症の誘導後に決定した。インスリン耐性試験は、モノクローナル抗体投与、またはペア飼育の3日後に実施された。図13Cに示されるように、対照モノクローナル抗体を投与されたmLeprECD発現Leprhu/huマウスは、対照ベクターでHDDが行われたLeprhu/huマウスと比較して、インスリン感受性の低下を示した。特に、誘導型レプチン欠損症Leprhu/huマウスにおいて、H4H17319P2を用いた処置はインスリン感受性を回復させたが、ペア飼育は効果がなかった(図13C)。
【0279】
最後に、循環脂質を低下させるH4H17319P2の効果は主に、食物摂取量の減少によることが確認された。ペア飼育ではなく、H4H17319P2が、レプチン欠損症において血漿トリグリセリドを有意に低下させたが、総血漿コレステロールとHDL-Cは、H4H17319P2とペア飼育の両方で低下した(図13D)。
【0280】
まとめると、データにより、誘導型レプチン欠損症モデルにおいて、H4H17319P2は過食症と肥満を回復させるだけではなく、インスリン抵抗性も改善したことが示された。注目すべきは、H4H17319P2で観察された体重減少と脂肪症の減少は、食物摂取量の減少に起因する一方で、食物摂取量の減少は、インスリン感受性の改善または血漿トリグリセリド値の低下には不十分であることである。
【0281】
実施例16:H4H17319P2は、リポジストロフィーマウスにおいて、高血糖症、インスリン抵抗性、脂質異常症および肝臓脂肪症を回復させる
次に、全身型リポジストロフィーを原因とする二次性の低レプチン血症を有するマウスにおいて、過食症、代謝機能不全および肝臓脂肪症を軽減するかを判定するために、H4H17319P2を試験した。この仮説を検証するために、全身型リポジストロフィーを特徴とする表現型を発現するaP2-nSrebp1c Tg/+ マウス(Shimomura et al.,1998)を、Leprhu/huマウスと交配させた。aP2-nSrebp1cTg/+マウスは、aP2プロモーターを介して脂肪組織において核Srebp1cを発現する。このマウスを、全身型リポジストロフィーにおいて、低レプチン値に起因する代謝合併症をレプチンが解消するという最初の証拠を提供した古典的な実験(Shimomura et al.,1999)において使用した。オスのaP2-nSrebp1cTg/+;Leprhu/huマウス(Tg)マウスは、aP2-nSrebp1c+/+;Leprhu/hu(非Tg)動物よりも重症である(図15A)。ただし過去の報告と同じように、Tgマウスは、非Tgマウスと比較して、減少した脂肪症と低いレプチン値を呈する(図15A)。aP2-nSrebp1cTg/+;Leprhu/huマウスも、著しいインスリン抵抗性と軽度の脂質異常症を呈し、トリグリセリド、総コレステロール、およびLDL-Cの血漿レベルは非Tgマウスと比較して高い(図15Bおよび15C)。
【0282】
オスのリポジストロフィーTgマウスに、週に1回、10mg/kg(SC)で、対照モノクローナル抗体またはH4H17319P2の投与を行った。さらにオスの非Tgマウスにも、週に1回、10mg/kg(SC)で、対照モノクローナル抗体を投与して、野生型の代謝パラメータの参照とした。0日目の処置前、Tgマウスは、非Tgマウスと比較して有意に高い体重を示していた(図14A)。治療開始から3日後、H4H17319P2を投与されたリポジストロフィーマウスの体重は、対照モノクローナル抗体を投与されたリポジストロフィーマウスよりも有意に低かった(図14A)。対照モノクローナル抗体を投与されたTgマウスは過食状態であり、対照モノクローナル抗体を投与された非リポジストロフィー非Tgマウスよりも多くの食物を消費した(図14A)。しかしH4H17319P2で処置されたTgマウスは、対照モノクローナル抗体を投与されたTgマウスよりも少ない食物を消費した(図14A)。
【0283】
観察された体重変化の根底にあるものを判定するために、体組成をマイクロ-CTにより定量した。これらの解析から、遺伝子型と処置の間での体重の変化が、主に除脂肪量の差異により説明されることが明らかとなった。治療前(-5日目)、非Tgマウスと比較して、リポジストロフィーTgマウスにおいて除脂肪量は有意に上昇した(図14B)。逆に、投与前(-5日目)、Tgマウスは、非Tgマウスと比較して、脂肪量は低下していた(図14B)。1週間に1回で4週間の投与を行った後、H4H17319P2は、対照モノクローナル抗体を投与されたTgマウスの脂肪量と除脂肪量と比較して、Tgマウスにおいて有意に脂肪量と除脂肪量を低下させた(図14B)。骨量および骨ミネラル含量は、野生型マウスと比較してTgマウスで上昇したが、投与前の処置群の中では有意な上昇はなかった(図16A)。さらに、対照モノクローナル抗体またはH4H17319P2を投与されたリポジストロフィーマウスの間で、骨量および骨ミネラル含量における差異は観察されなかった(図16A)。同様に、骨密度に対し、遺伝子型関連効果または処置関連効果は検出されなかった(図16A)。これらのデータは、H4H17319P2が、リポジストロフィーマウスにおいて、除脂肪量と脂肪量を減少させること、しかし骨量、骨ミネラル含量または骨密度には影響を与えないことを示す。
【0284】
過去の報告と一致して、リポジストロフィーTgマウスは、0日目の処置前、非Tgマウスと比較して、突出した高血糖症を呈していた(図14C)。H4H17319P2を用いた処置の3日後、自由摂取時の血糖値が、Tgマウスにおいて正常化され、非Tgマウスの血糖値との差異が無かった。注目すべきは、週に1回のH4H17319P2処置を行うことで、Tgマウスは実験終了まで正常血糖値を維持したこと。一方で、対照モノクローナル抗体を投与されたTgマウスは、実験中、高血糖症のままであったことである(図14C)。それに一致して、28日目、ヘモグロビンA1c(HbA1c)率のレベルは、リポジストロフィーマウスにおいて、処置前または対照モノクローナル抗体の投与と比較して、低下した(図14C)。さらに、H4H17319P2処置による血糖値の低下は、インスリン感受性の改善と関連していた。23日目のインスリン耐性試験では、対照モノクローナル抗体を投与されたリポジストロフィーマウスがインスリン抵抗性であったのに対して、H4H17319P2で処置されたリポジストロフィーマウスは、対照モノクローナル抗体を投与された非Tgマウスと同じ程度のインスリン感受性であった(図14D)。全体として、これらの結果からは、全身型リポジストロフィーのマウスモデルにおいて、H4H17319P2が高血糖症、インスリン抵抗性を軽減し、HbA1cレベルを低下させることが示される。
【0285】
試験終了時に実施された血漿化学分析(28日目)は、全身型リポジストロフィーのマウスにおいて、H4H17319P2が高トリグリセリド血症および高コレステロール血症を低下させたことがさらに明らかにされた。試験終了時、トリグリセリドの血漿レベル、総コレステロール、およびLDL-Cレベルは、対照モノクローナル抗体を投与された非Tgマウスと比較して、対照モノクローナル抗体を投与されたTgマウスにおいて有意に上昇していた(図1E)。注目すべきは、血漿トリグリセリドおよびコレステロールレベルは、H4H17319P2を処置されたTgマウスにおいて有意に低下したことである。ゆえにH4H17319P2は、全身型リポジストロフィーのマウスにおいて、脂質異常症を改善する。
【0286】
糖尿病に加えて、全身型および部分型リポジストロフィーの患者において、インスリン抵抗性および異常脂質症、非アルコール性脂肪肝疾患(肝臓脂肪症を含む)が発症する場合がある。ゆえに肝臓酵素レベル、肝重量および肝臓脂肪症に対するH4H17319P2の効果が検証された。28日目、対照モノクローナル抗体を投与されたTgマウスは、H4H17319P2処置を受けたTgマウス、または対照モノクローナル抗体を投与された非Tgマウスと比較して、ALTおよびASTの循環レベルの有意な増加を示した(図14F)。重要なことは、肝臓酵素プロファイルの改善は、肝重量および肝臓脂肪症に対する有益な効果と関連したことである(図14G)。具体的には、対照モノクローナル抗体を投与されたリポジストロフィーマウスの肝臓は、対照モノクローナル抗体を投与された非Tgマウスの肝臓よりも有意に重く、3.6±0.7gの重量があった(図14G)。対照モノクローナル抗体投与を受けたTgマウスの肝臓は、対照モノクローナル抗体を投与された非Tgマウス、およびH4H17319P2処置を受けたリポジストロフィーマウスの両方と比較して、トリグリセリド含量も高かった(図14G)。注目すべきは、H4H17319P2処置を受けたTgマウスの肝臓は、対照モノクローナル抗体を投与された非Tgマウスの肝臓と比較して、わずか0.6±0.1gだけ重く、肝トリグリセリド含量の増加は呈さなかったことである(図14G)。H4H17319P2を用いた肝臓脂肪症の改善は、ヘマトキシリンおよびエオジン染色された肝切片からも明白であった(図14G)。
【0287】
実施例17:H4H17319P2は、視床下部STAT3シグナル伝達を活性化する
視床下部のArcにおけるLEPR活性化は、エネルギーと代謝のバランスの管理において中心的な役割を果たしている(Coppari et al.,2005;Cowley et al.,2001)。H4H17319P2が、リポジストロフィーLeprhu/huマウスにおいて過食と代謝合併症を軽減したことから、H4H17319P2がレプチンのようにArcにおいてSTAT3活性化を誘導するかをさらに探索した。10mg/kg(SC)の対照またはH4H17319P2の単回投与、または30μg/日(SC)のヒトレプチンの連続点滴を3日間受けたオスのリポジストロフィーTgマウスから取得された合致脳切片に対し、pSTAT3 Y705の免疫染色を行った。過去の研究から、5μg/日(SC)が、リポジストロフィーマウスにおいて有効であること(Shimomura et al.,1999)、およびマウスにおいて最大効果は、10~42μg/日(SC)で観察されたこと(Denroche et al.,2013;Halaas et al.,1997;Harris et al.,1998)から、レプチン投与量が選択された。これらの解析から、対照モノクローナル抗体を投与されたリポジストロフィーマウスにおいて、Arcの細胞がpSTAT3 Y705染色をほとんど示さなかったことが明らかとなった。対照的に、レプチンとH4H17319P2は両方とも、ArcにおいてpSTAT3 Y705を誘導し、検出されたpSTAT3 Y705細胞数はほぼ同じであった(図17A)。Arcはレプチン作用の介在における役割が確立されていたこと、および血液脳関門を欠く脳室周辺の器官である正中隆起に近い位置にあることから、当初は焦点が当てられていたが、VmhにおいてレプチンおよびH4H17319P2の両方がpSTAT3 Y705を誘導したことは注目すべきことであった。ただし、H4H17319P2は、レプチン処置で検出されたよりも多い数のVmh細胞において、pSTAT3染色を誘導した(図17A)。まとめると、これらのデータからは、レプチンおよびH4H17319P2は、Arcではほぼ同じ数の細胞においてpSTAT3 Y705を誘導したが、VmhではH4H17319P2のほうが顕著な効果を有していたことが示された。
【0288】
CNS治療剤としてのモノクローナル抗体の欠点は、血液脳関門を通過する能力が限定的であることであり、循環濃度の約0.1%がCSF中に検出される(Zuchero et al.,2016)。この限定があるにもかかわらず、H4H17319P2は、視床下部ArcにおいてSTAT3のリン酸化を誘導するのみならず、VmhでもSTAT3シグナル伝達を刺激することが本明細書で判明した。Arcは有窓血管による流入があることが報告されているが、隣接する正中隆起よりは程度は低い(Ciofi et al.,2009;Norsted et al.,2008)。現在のところ、Vmhが血液媒介性の分子への直接的な曝露という特権を有するという文献的な証拠はない。理論に拘束されることは望まないが、可能性のある説明は、モノクローナル抗体が、Arcからの拡散によりVmhに到達するというものである。あるいは、H4H17319P2抗体は、レプチンとは異なるシグナル伝達性能を呈する可能性である。機能性LEPR-bはVmhで発現されているが、別の可能性としては、H4H17319P2モノクローナル抗体がVmhのSTAT3シグナル伝達を間接的に刺激することである。それでもなお、VmhにおいてH4H17319P2がレプチンよりも多くのニューロンのSTAT3シグナル伝達を誘導したということは予想外であった。
【0289】
実施例18:H4H17319P2は、リポジストロフィーマウスの代謝機能不全と肝機能不全の軽減において、少なくともレプチンと同程度に有効である。
H4H17319P2は、ArcおよびVmhの細胞において、レプチンと同程度、またはレプチンよりも良好にSTAT3シグナル伝達を発生させることから、H4H17319P2処置とレプチン処置の有効性を、リポジストロフィーマウスにおいて比較した。オスのTgマウスに週に1回、10mg/kg(SC)の対照モノクローナル抗体またはLEPRアゴニストを投与し、または30μg/日(SC)のレプチンの連続点滴を14日間投与した。参照として、オスの非Tgマウスにも、週に1回、10mg/kg(SC)の対照モノクローナル抗体を投与した。0日目の処置前、Tgマウスは顕著な高血糖状態であった(図17B)。対照モノクローナル抗体投与と比較すると、H4H17319P2、またはレプチン点滴により、同程度まで血糖値が低下した(図17B)。血糖値は、H4H17319P2処置またはレプチン処置を開始してから2日後に低下し、試験終了まで低いままであった(図17B)。インスリン感受性の改善が、グルコース低下効果に寄与したかを検証するために、インスリン耐性試験を9日目に行った。実際に、インスリン耐性試験によって、対照モノクローナル抗体を投与されたTgマウスは抵抗性であった一方で、H4H17319P2処置およびレプチン処置Tgマウスはインスリン感受性であったことが明らかとなった(図17B)。血中グルコース低下、またはインスリン感受性に対し、H4H17319P2処置とレプチン処置の間に差異は観察されなかった。
【0290】
過去のデータと一致して、リポジストロフィーマウスにおいて、対照モノクローナル抗体投与と比較し、H4H17319P2は処置の4日後から有意に体重減少を促進した(図17C)。Tgマウスでは、対照モノクローナル抗体と比較して、H4H17319P2は累積食物摂取量を減少させた(図17C)。興味深いことに、レプチンはTgマウスにおいて体重と食物摂取量を減少させているが、H4H17319P2処置で観察された体重減少よりも小さな体重減少であった(図17C)。
【0291】
リポジストロフィーマウスにおける血漿脂質の低下および肝腫脹の回復において、レプチンと比較し、H4H17319P2はより良好な利益を提供した。13日目の血漿化学分析によって、Tgマウスにおいて、対照モノクローナル抗体と比較し、H4H17319P2は血漿トリグリセリドとコレステロール値を低下させたが、レプチンは低下させなかったことが示された(図17D)。Tgマウスにおいて、対照モノクローナル抗体と比較したH4H17319P2処置による他の脂質の有意な変化は明白ではなかった。H4H17319P2は、Tgマウスにおいて対照抗体処置と比較し、肝量(liver mass)も低下させ、そして肝臓脂肪症も解消させた(図17E)。これらの効果はレプチン処置マウスにおいて類似していたが、H4H17319P2で、より大きな肝量の低下が観察された(図17E)。肝量は、H4H17319P2により正常化されたが、レプチン処置では正常化されず、対照モノクローナル抗体を投与された非Tgマウスにおける肝量と同程度であった(図17E)。
【0292】
実施例19:H4H17319P2は、痩せたマウス、ならびに正常体脂肪サルおよび高体脂肪サルにおいて、体重と脂肪症を減少させる
インビトロでの結合および機能性アッセイ実験から、H4H17319P2が、レプチン結合に関し競合しないこと、およびレプチンの存在下でも、レプチン単独よりも大きなLEPR活性化を誘導することが示された。そこでH4H17319P2が正常な体重ホメオスタシスの状態でも体重低下を惹起し得るかを判定した。食物を与えられたオスのLeprhu/huマウスに、0日目、対照モノクローナル抗体(10mg/kg、SC)または3もしくは10mg/kgのH4H17319P2の単回投与量を投与した。両方の投与量レベルでのH4H17319P2処置の後、1~2日後に対照モノクローナル抗体と比較して有意な体重減少が観察された(図18A)。それに伴い、H4H17319P2の両方の投与量レベルが、対照モノクローナル抗体投与と比較して、食物摂取量も減少させた(図18A)。体重変化は脂肪量の低下と関連していたが、除脂肪量とは関連しなかった(図18B)。両方の投与量レベルで、H4H17319P2処置は、脂肪量の-32%の減少を誘導した。一方で、対照モノクローナル抗体投与は、最小限の-2%の脂肪量変化をもたらした(図18B)。注目すべきは、対照モノクローナル抗体処置とH4H17319P2処置の間に除脂肪量に対する有意差は観察されなかったことである(図18B)。H4H17319P2の両方の投与量レベルが、同程度の体重変化と脂肪量変化をもたらしたが、効果の持続時間は異なり、これは薬物動態における差異を反映している可能性がある(図18Aおよび18B)。
【0293】
次に、非ヒト霊長類における体重減少の促進に対するH4H17319P2処置の効果を評価した。最初に、痩せたカニクイザルの体重に対するH4H17319P2の効果を判定した。サルに、週に1回で13週間、対照溶液、または3mg/kgもしくは10mg/kgのH4H17319P2のいずれかを投与した。H4H17319P2処置によって、対照溶液を投与されたサルと比較し、用量依存性に体重減少が生じた(図18C)。13週間の試験後、対照溶液を投与されたサルは、初期体重の9.7±0.9%の増加があった。一方で、3および10mg/kgのH4H17319P2処置では、それぞれ、最小限の0.3±1.6%の体重変化と、-6.0±1.6%体重減少が生じた(図18C)。
【0294】
痩せたサルにおいて、H4H17319P2は用量依存性に体重を減少させたことから、体重および体組成に対するH4H17319P2処置の効果を、高体脂肪のカニクイザルにおいて検証した。対照溶液、または30mg/kgのLEPRアゴニスト性抗体を2週間、週に1回、動物に投与した。H4H17319P2は、対照溶液注射と比較して、体重を減少させた。試験終了時(56日目)、二つの投与量のH4H17319P2を与えられたサルは、基準から3.6±1.9%の体重減少を示し、一方で対照溶液を与えられたサルは、6.4±1.5%の体重増加があった。並行して二重エネルギーX線吸収測定法(DEXA:Dual-Energy X-ray Absorptiometry)により定量したところ、H4H17319P2処置によって、対照溶液投与と比較して脂肪量が減少したが、除脂肪量は減少しなかった(図18D)。対照溶液を与えられたサルは、試験終了時までに28.0±1.5%の脂肪症の増加を呈した。対照的に、LEPRアゴニスト性のH4H17319P2で処置されたサルは、13.7±6.4%の顕著な脂肪症の減少を示した(図18D)。まとめると、これらのデータから、H4H17319P2抗体は、正常な体重のLeprhu/huマウス、および痩せ~高体脂肪の非ヒト霊長類の両方において、選択的な脂肪症の減少を通じて体重低下を促進することが示された。
【0295】
実施例20:ヒトにおける抗LEPR抗体を使用した二重盲検試験
肥満は世界中で13%の人々が罹患し、2型糖尿病、心血管疾患、様々なタイプの癌、および整形外科的な障害を発症するリスク因子である。西欧の国々では、20%を超える人々が肥満であり(Ng et al.,Lancet.2014;384:766-781)、そして米国では現在、肥満の罹患率は35%を超えている(Flegal et al.,JAMA.American Medical Association.2016;315(21):2284-2291)。食事および運動による改善は一部の人々では有効であるが、多くの場合、体重が若干減少するだけであり、大部分の人々は肥満(≧30kg/mの肥満度指数[BMI]として定義される)または過体重(25~<30kg/mのBMIと定義される)のままである。
【0296】
現在の体重減量薬は、体重に対して僅かな効果しかなく、および/または安全性/忍容性が乏しい。そのため、保険者、医師および患者による、これら介入手段の採用が限定的となっている(Zhang et al.,Obes Sci Pract.2016;2(2):104-114)。例えばリラグルチド、オルリスタット、ナルトレキソンHCl/ブプロピオンHCl、フェンテルミン/トピラマート、およびロルカセリンHClといった現在の標準的な薬物療法は、平均で基準からおよそ3~10%の体重を減少させる。典型的には、体重減少は頭打ちとなり、1年以内に治療は中止される(Sjostrom et al.,Lancet.1998;352(9123):167-72)(Smith et al.,N.Engl.J.Med.2010;363(3):245-56)。肥満手術は最も重度の肥満患者(BMI≧40kg/m または併存疾患を伴いBMI≧35kg/m)に対してのみ、留保されており、米国では1年で200,000件を超える症例(American Society for Metabolic and Bariatric Surgery)、および欧州全土では1年で150,000よりは少ない症例がある(Angrisani et al.,Obes Surg.2017,27:2279-2289)。肥満、および肥満関連の代謝合併症の治療および予防に対する、安全で効果的な治療法に対する大きな医療上のアンメットニーズがある。
【0297】
レプチンは循環脂肪由来ホルモンであり、視床下部のレプチン受容体(LEPR)に結合して、食物摂取、エネルギー消費、およびグルコース/脂質代謝の制御を調節している(Allison et al.,J Endocrinol 2014,223(1):T25-35)。レプチン(LEP)遺伝子の機能性変異による非常に稀なホモ接合性の喪失を原因とする原発性レプチン欠損症の個体、またはLEPRのホモ接合性の変異を原因とするレプチンシグナル伝達の不全を伴う個体は、重度の肥満、糖尿病、易感染性、および不妊を発症する(Montague et al.,Nature 1997,387(6636):903-908)(Clement et al.,Nature 1998,392(6674):398-401)。機能性変異によるレプチン喪失を原因とする単一遺伝子型肥満の小児および成人の患者に、組み換えヒトレプチン投与を行うことで、体重の安定的な減少と、代謝合併症の改善がもたらされる(Farooqi et al.,N Engl Jo Med 1999,341(12):879-884)(Licinio et al.,Proc Nat Acad Sci 2004,101(13):4531-4536)。
【0298】
二次的なレプチン欠損症は、稀な障害のリポジストロフィーでも発生し、これは身体の様々な領域からレプチン産生脂肪組織が遺伝子的または後天的に喪失することにより生じる。
【0299】
全身型リポジストロフィーおよび部分型リポジストロフィーの患者は、様々な程度の糖尿病、重度のインスリン抵抗性、高トリグリセリド血症、および脂肪肝を発症する(Brown et al.,J Clin Endocrinol Metab.2016;101(12):4500-4511)。組み換えヒトレプチンを1日1回皮下送達することで、全身型リポジストロフィーの患者において、ヘモグロビンA1c(HbA1c)、グルコース、トリグリセリド、および肝臓脂肪症が低下することが示されている(Oral et al.,N Engl J Med.2002;346(8):570-578)(Ebihara et al.,J Clin Endocrinol Metab 2007,92(2):532-541)。全身型リポジストロフィーの患者の大部分は、血清レプチン値が4ng/mL未満であり、亜群解析から、レプチン治療でのHbA1cおよびトリグリセリド(TG)の低下は、レプチン値が4ng/mL未満の全身型リポジストロフィーおよび部分型リポジストロフィーの患者において大きいことが示唆されている(Brown et al.,J Clin Endocrinol Metab.2016;101(12):4500-4511)(FDA Advisory Committee Meeting 2013)。
【0300】
メトレレプチン(組み換えメチオニルレプチン;Novelion(登録商標))は、全身型の先天性および後天性のリポジストロフィー患者のレプチン欠損症の合併症治療に対し、Risk Evaluation and Mitigation Strategies(REMS)プログラムの元で米国において現在承認されており、日本でもリポジストロフィーのすべてのサブタイプに対して承認されている。メトレレプチンを毎日投与することが必要であり、有害な作用としては、約85%の患者に結合抗体を発生させる免疫原性のリスク、および約9%に、内因性レプチンと交差反応する中和抗体を発生させるリスクが挙げられる(Chan,Clin Endocrinol.2016;85(1):137-149)。
【0301】
低レプチン障害またはレプチン欠損障害とは対照的に、BMIが30~35kg/mの範囲の対象において、過体重または肥満の個体は、典型的には、男性において10ng/mL、および女性では24ng/mLのメジアン値の高レベルのレプチンを有している(Ruhl and Everhart,Am J Clin Nutr.2001;74(3):295-301)。20~25kg/mの正常なBMIを有する男性および女性の成人の循環レプチン値は、それぞれメジアン値が3および9ng/mLであり(Ruhl et al.,Am J Clin Nutr 2001;74(3):295-301)、男性では正常範囲は1.2~9.5ng/mL、女性では4.1~25ng/mLと言われる(Quest Lab Reference Range)。多くの研究から、循環レプチン値、およびBMI、および体脂肪率の間の相関が示されている(Ruhl et al.,Am J Clin Nutr.2001,74(3):295-301)(Considine et al.,N Engl J Med.1996,334(5):292-295)が、同程度のBMIを有する個体間のレプチン値は、高度に変動的であるい(Buettner et al.,J Endocrinol.2002;175(3):745-756).レプチン値は日周変動し(Gavrila et al.,J Clin Endocrinol Metab.2003,88(6):2838-43)(Schoeller et al.,J Clin Invest.1997,100(7):1882-87)、そして栄養状態に応じて変動する。正常な体重および肥満の個体において、24時間の絶食後、レプチン値は35~60%まで急速に低下し、絶食期間が延びた後も低下し続ける(Chan et al.,J Clin Invest.2003;111(9):1409-1421)(Schurgin et al.,2004,J Clin Endocrinol Metab,89(11):5402-5409)(Boden et al.,J Clin Endocrinol Metab.1996;81(9):3419-3423)。体重減少中もレプチン値は低下し(Considine et al.,N.Engl J Med,1996;334(5):292-295)(Herrick et al.,J Obes.Hindawi.2016;2016(2):8375828-5)(van Dielen et al.,J Clin Endocrinol Metab.2002;87(4):1708-1716)、そして体重増加中には上昇し(Ravussin et al.,Cell Metab.2014;20(4):565-572)、脂肪量の変化と一致する。肥満対象に組み換えヒトレプチンを投与しても、最小限の体重減少しか生じない(3%のPBOを差し引きした体重の減少)(Heymsfield et al.,JAMA.1999;282(16):1568-1575)(Hukshorn et al.,J Clin Endocrinol Metab.2000;11(12):1163-1172)(Ravussin et al.,Obesity.2009;17(9):1736-1743)。これは、高レベルの内因性レプチンによる、レプチン受容体シグナル伝達の飽和が原因の可能性が高い。いくつかの集団研究により、レプチン値が比較的低く(Ruhl and Everhart,Am J Clin Nutr.2001;74(3):295-301)(Buettner et al.,J Endocrinol.2002;175(3):745-756)、およびレプチン受容体が飽和していない可能性がある肥満患者のサブセットの存在が示唆されている。対処すべき重要な問題は、基準レプチン値が比較的低い肥満対象において、レプチンシグナル伝達の回復が、食欲、食物摂取量および体重を減少するか、である。
【0302】
H4H17319P2は、LEPRアゴニストとして作用し、ナノモルのアフィニティでヒトLEPRに結合するヒト抗LEPR抗体である。前臨床研究では、H4H17319P2は、レプチンの存在下、または非存在下でもLEPRシグナル伝達を活性化する。H4H17319P2(10mg/kgの皮下[SC])を1週間に1回投与することで、リポジストロフィーのヒト化LEPRマウスにおいて、血糖管理、インスリン感受性、脂質異常症、食物摂取量、体重、肝量、および肝臓脂肪症が改善された。H4H17319P2は、誘導性レプチン欠損症のヒト化LEPRマウスでは体重と脂肪症も減少させたが、食事誘導性の肥満ヒト化LEPRマウスでは体重を減少させなかった。痩せたカニクイザルが、皮下注射(3、10、30mg/kg)または静脈内注射(100mg/kg)により週に1回、13週間、H4H17319P2処置された医薬品安全性試験実施基準(GLP)毒性試験では、H4H17319P2暴露によって、体重増加抑制または体重減少誘導が生じた。H4H17319P2が投与されたサルは、最大で8.7%の体重が減少した(投与前体重と比較した群平均)が、プラセボを投与された並行対照動物は、同期間で、平均で8.3%の体重増加があった。観察された体重減少の程度は、H4H17319P2処置動物において、明確な用量反応または曝露反応を有するとは見られなかった。体重変化は、無投与回復期間中の暴露停止で、戻ることが観察された。
【0303】
上述のように、H4H17319P2の投与は、すべての投与量レベルおよび両投与経路で忍容性良好であり、有害な臨床的作用はなかった。インスリンおよび循環絶対リンパ球数の一過性の減少(T細胞数の減少)が、治療期間のおよそ30日で観察されたが、これらの所見は、投与期間の終了時には観察されず、その作用は用量反応性ではなかった。胸腺重量の低下、および胸腺皮質の細胞充実度の低下が、治療期間中、H4H17319P2処置群で観察され、回復期間中に完全に、または部分的に元に戻ることができた。胸腺の変化、およびT細胞数の一過性の減少は、栄養摂取量の減少と、成長期にあるサルの体重減少に関連する可能性が高く、正常な栄養状態にある成人のヒトでは観察されない可能性が高い。
【0304】
本試験は、ヒト初回投与試験(FIH:first-in-human)であり、健康な参加者におけるH4H17319P2の静脈内(IV)投与およびSC投与される投与量の安全性、忍容性、薬物動態(PK)および薬理(PD)を評価するために設計された無作為化二重盲検プラセボ対照の二部試験である。パートAの目的は、健康な男性および女性の対象における単回漸増IV投与量およびSC投与量の安全性、忍容性、PKおよびPDを評価することである。パートAにおけるPK/PD、安全性、および忍容性の中間解析を使用して、パートBにおける評価のための投与レジメンを選択する。パートAに登録された対象は、パートBの登録には適格とされない。パートBに関しては、過体重または肥満の新たな対象が登録され、12週間のH4H17319P2(単回投与レベル)またはプラセボの反復投与に関する安全性、忍容性、PKおよびPDが評価される。例えば食物摂取量、食欲、体組成、および体重などのバイオマーカーに対するH4H17319P2の効果は、基準レプチン値により規定される4つの異なるコホートにおいて評価される。
【0305】
目的
本試験の主要目的は、健康な対象におけるH4H17319P2の安全性および忍容性を評価することである。本試験の副次的な目的は、以下である:
・ H4H17319P2の単回投与および反復投与の薬物動態(PK)プロファイルの特徴解析;
・ 体重に対するH4H17319P2の反復投与効果の推定;
・ 過体重および肥満の対象における、エネルギー自由摂取量に対する、H4H17319P2の反復投与効果の評価;
・ 経時的な可溶型の脂質制御性タンパク質(sLEPRおよびANGPTL3)値に対するH4H17319P2の単回投与および反復投与の効果の評価;
・ H4H17319P2の単回投与と反復投与の免疫原性の評価。
【0306】
本試験のその他の探索的な目的は、以下である:
1.体重ならびに血清/血漿の血糖パラメータおよび脂質パラメータに対するH4H17319P2の単回投与の効果の推定。
2.以下に対する、12週にわたるH4H17319P2の反復投与の効果の推定:
・ 血清/血漿の血糖パラメータおよび脂質パラメータ。
・ 患者は、摂食行動に影響を与え得る食欲評価(例えば、空腹感、膨満感、および満腹感)を報告した。
・ 二重X線吸収測定(DXA)イメージングによる、脂肪量および除脂肪体重の合計と分布。
・ 磁気共鳴イメージング(MRI)によるSC脂肪および内臓脂肪(肝脂肪を含む)の定量。
・ レプチン、甲状腺ホルモン(T3、T4、甲状腺刺激ホルモン[TSH])、黄体形成ホルモン(LH)、テストステロン、エストラジオール、コルチゾール、およびアディポネクチンを含む、他の探索的バイオマーカー。
【0307】
理由:
パートAは、単回漸増投与FIH設計であり、最大88人の健常対象が、最大で7つの漸増単回投与コホート(最大で5つがIV、二つがSC)において、3:1でH4H17319P2とプラセボに無作為化され、112日間の追跡期間で、H4H17319P2の単回漸増投与の安全性、忍容性および薬物動態が評価される。7つの漸増単回投与コホートは、8人の対象が無作為化され、各用量レベルで、H4H17319P2またはプラセボ(6人が活性:2人がプラセボ)を投与される。試験設計には、二つの追加の任意コホートも含まれる(16人の対象が無作為化され、H4H17319P2またはプラセボを投与される(各コホートで12人が活性:4人がプラセボ))。漸増用量コホートからの中間解析が、PKプロファイルに共変性の効果(例えば、年齢、体重または性別)の可能性を示唆した場合、任意コホートを登録して、一つまたは複数の用量に対する追加データを収集し(最大で本試験における30mg/kg IVの最大用量まで)、PKに対する共変効果のさらなる推定を取得する。
【0308】
本試験のパートAは、スクリーニング期間(-21日目~-2日目)、基準前ビジット(-1日目)、試験ビジットの終了日(113日目)を含む追跡期間(3日目~113日目)からなり、基準前ビジットでは、対象は2日のクリニック滞在が承認される(IV投与を受ける対象、および安全性監視ブロックにいるSC投与を受ける対象)か、または1日のクリニック滞在が承認される(SC投与を受ける対象)。
【0309】
安全性および忍容性の評価が、パートAの主要目的であり、安全性は試験全体を通して慎重に評価される。本試験で投与された開始用量および最大投与量は、毒性試験で観察された曝露量よりもそれぞれ約10,000倍および約20倍低いと予想される。臨床試験全体において、安全性評価には、バイタルサイン、身体検査、心電図(ECG)、血液/差分を含む臨床検査、および有害事象(AE)の監視が含まれる。体重も評価される。薬理学的な測定値も本試験において収集されるが、PDマーカーの有意義な変化は、痩せた個体においてメトレレプチンで観察された体重の最小限の効果(1kg未満)(Heymsfield,1999)に基づき、痩せた/過体重の対象の群において観察されることは予測されない。
【0310】
薬理学的な測定値には、体重、代謝パラメータ(グルコース、脂質)、およびANGPTL3が含まれる。ANGPTL3は、レプチンおよび/またはインスリンにより制御され得る潜在的マーカーである(Muniyappa,2017)(Nidhina Haridas,2015)。体重は各ビジット時に慎重に評価される。H4H17319P2処置の単回投与量が、痩せた/過体重の対象において体重に臨床的に有意義な効果を有した場合には、安全性/用量漸増決定のタイミングを修正してもよく、用量漸増決定を行う前に追加の安全性データが収集されてもよい(例えば、15日目の安全性評価を待つ)。
【0311】
パートBは、過体重/肥満の対象の体重に対するH4H17319P2の安全性、PK、および効果を評価するための12週間の治療期間を有する単回用量レベルでの反復投与試験である。いくつかの集団研究からは、レプチン値が比較的低く(Ruhl,2001)(Buettner,2002)、レプチン受容体が飽和していない可能性がある肥満患者サブセットがあることが示唆されている。パートBにおいて対処される重要な問題は、基準レプチン値が比較的低い過体重または肥満の対象において、レプチンシグナル伝達の回復が、食欲、食物摂取量および体重を減少させるか、である。
【0312】
したがって、パートBは、体重が変化し、基準レプチン値が比較的低い対象における、体重、食物摂取量、代謝パラメータおよび体組成に対するH4H17319P2の効果を評価する。過体重または肥満の健康な対象(BMI範囲は25~40kg/m)が、前スクリーニングされたレプチン値に規定される4つの別個のコホートに登録される。4つの別個のコホートへの登録は、適切な数の対象が、比較的低い基準レプチン値の範囲およびBMI範囲で試験されるように実施される。コホートによる階層化は、H4H17319P2とプラセボへの無作為化のときに行われる。以下に定義されるように、最大でおよそ20名の対象が4つの各コホートに登録され、パートBの合計サンプルサイズは最大で81名の対象である:レプチン値およびBMIは、前スクリーニングビジット時に測定され、試験適格性、および4コホートのうちの一つへの適格性に関して最初に評価される。試験への登録は、適格性を満たす対象のスクリーニング時に行われる。特定のコホートへの登録が、許容される最大数に達した場合、対象は登録適格ではなくなる。いくつかのコホートは、低レプチン値で肥満率が低いという前提での登録が困難である可能性があるため、スポンサーは特定コホート内での登録を停止することを選択してもよい。
【0313】
パートBの4つのコホートは以下の通り定義される:
・ コホート1:前スクリーニング時での空腹時レプチン値が5ng/mL未満で、前スクリーニング時に28.0から40.0kg/mのBMIを有する男性および女性の対象。
・ コホート2:前スクリーニング時での空腹時レプチン値が5ng/mL未満で、前スクリーニング時に25.0~<28kg/mのBMIを有する男性および女性の対象。
・ コホート3:前スクリーニング時での空腹時レプチン値が5.0ng/mL以上、8.0ng/mL以下で、前スクリーニング時に28.0から40.0kg/mのBMIを有する男性対象。
・ コホート4:前スクリーニング時での空腹時レプチン値が5.0ng/mL以上、24.0ng/mL以下で、前スクリーニング時に28.0から40.0kg/mのBMIを有する女性対象。
【0314】
注記:上記のコホートのうちの一つに対する適格性は、前スクリーニングビジット時のBMIおよびレプチン値に基づく。BMIおよび/またはレプチン値がコホートに規定される範囲に無い場合、対象は登録適格ではない。前スクリーニング時のBMIまたはレプチン値が、一つ以上のコホート内への登録に関して境界にある場合、BMIおよびレプチンの測定を、前スクリーニングウィンドウの間に1回繰り返してもよい。反復測定については、最低レプチン値をコホートのうちの一つへの登録に使用する。特定のコホートへの登録が、許容される最大数に達した場合、対象は登録適格ではなくなる。
【0315】
パートBの開始は、パートAの利用可能な安全性、PK、およびPDのデータの中間解析により導かれ、パートBに対する適切な用量、投与頻度、および投与様式(IVまたはSC)が選択される。パートAに登録された対象は、パートBの参加に適格ではない。パートBの試験設計は、BMIおよび空腹時レプチン値を評価し、4コホートのうちの一つに対する適格性を評価するための前スクリーニング期間(-60~-14日目)、スクリーニング期間(-32~-14日目)、基準期間(-29~-1日目)、治療期間(1~85日目)、そして無治療追跡期間(107~191日目)からなる。対象は、基準期間中(-14~-1日目が予定される)、および治療期間中の二つの時点(29~30日および84~85日)での正確な食欲摂取評価と、食物自由摂取量評価のために2日のクリニック滞在が認められる。クリニック滞在は、管理された状況下での食物自由摂取量評価における正確なカロリー摂取の評価のために必要であり、標準的な食事が用意され、食欲以外に食物摂取量に影響を与え得るきっかけ(例えば、時刻、他者の食事行動、一人前の分量など)が最小化されている。対象は、-1日目に、2日間のクリニック滞在も承認される。治療期間中の1日目に、対象は、治験薬またはプラセボの第一の投与を受け、一連のPKおよび他の臨床検査測定用に血液サンプルが取られ、一晩滞在して、2日目の24時間のPK評価が完了される。
【0316】
血液サンプリングのための治療期間中のビジットは、週に1回行われる。治験薬の用量および頻度は、パートAからのPKデータの中間解析によって決定され、4週間ごとまたは2週間ごとに決定される(最大頻度は週に1回以下である)。
【0317】
DXAによる体組成、ならびにMRIによる肝臓、腹部および大腿部の脂肪の定量は、基準期間、治療期間の終了間際、および追跡期間中に実施される。治療期間後、対象は16週間の休薬期間中に追跡され、安全性およびPD効果が評価される。単回用量レベルでの反復投与の安全性および忍容性の評価(パートAからの安全性および忍容性に基づく)は、試験のパートBの主要目的である。試験全体を通じて、安全性評価は、バイタルサイン、身体検査、ECG、臨床検査、AEの監視が含まれる。抗薬剤抗体も評価される。さらに、体重、食物自由摂取量、および例えばグルコースと脂質などの代謝パラメータを評価する副次的な目的は、試験全体を通じて注意深く評価される。
【0318】
パートBの薬理学的な測定には、レプチン受容体シグナル伝達の増加によって影響を受ける可能性のあるパラメータに関する基準時、および治療時の評価が含まれる。これらのPD評価には、患者が報告した食欲の測定値、管理された入院患者設定での食物摂食に関する定量的測定値、DXAによる正確な体組成および脂肪量の測定値、ならびに目盛り付きスケールを使用した正確な体重測定値が含まれる。さらに、例えばレプチン、グルコース、インスリン、ホメオスタシスモデル評価により推定されるインスリン抵抗性(HOMA-IR:homeostasis model assessment-estimated insulin resistance)、HbA1c、脂質などの代謝パラメータは、基準時、治療期間中、および治療期間終了時に測定され、インスリン感受性および脂質代謝に対するH4H17319P2の効果が評価される。肝臓のMRIは、基準時、および治療後にも実施され、H4H17319P2が肝臓脂肪症に影響を及ぼすかどうかが決定される。
【0319】
薬理学的変数およびバイオマーカー変数の根拠
食物自由摂取量の評価(パートBのみ)
H4H17319P2を用いた治療は、視床下部レプチン受容体シグナル伝達を増加させ、摂食行動に影響を及ぼすニューロンにおける下流効果を有すると仮定される。H4H17319P2処置により、誘導性レプチン欠損マウスにおいて、食物摂取量および体重の著しい減少がもたらされた。カニクイザル試験において定量的な食物摂取量評価は実施されなかったが、H4H17319P2治療は体重および脂肪量に対して有意な効果をもたらした。本試験において、比較的低いレプチン値を有する過体重/肥満対象における食物摂取量に対するH4H17319P2の効果は、基準時、および治療期間中の2時点で、過去に報告されたように(Krishna,2009)(Addy,2008)、厳密な定量的入院患者の食物自由摂取量評価を使用して、評価される。簡潔に述べると、対象は、絶食後、臨床試験ユニットに入院し、標準化された朝食、昼食および夕食が提供され、標準化された基準エネルギー摂取が確立される。一晩の絶食の後、対象は、自由摂取の朝食、昼食、および夕食が提供され、食物/エネルギー摂取量が定量される。対象は、時間/時刻および社会的きっかけの知覚が隠された専門的な部屋ですべての試験食を消費する。
【0320】
カロリー密度が判明している食事が、4~5倍の過剰量で提供され、消費される総カロリー数が隠されるように提供される。対象は、好きなだけ食べるように求められる。食物摂取量を定量化するために、食物摂取量評価の前後に食事を計量し、摂取カロリーが計算される。
【0321】
食欲評価(パートBのみ)
レプチンの食欲への影響はその作用機序の中心であり、ゆえにH4H17319P2の予測される作用機序の直接的評価である。LEPの変異、または全身型リポジストロフィーのいずれかに由来する低レプチン血症の個体は、とどまることを知らない食欲を現し、食物摂取と肥満が導かれる。これら個体にメトレレプチン治療を行うことで、満腹感が増し、食物摂取量が減少する(Farooqi,1999)(Farooqi,2007)(McDuffie,2004)。食欲の様々な構成要素(例えば空腹感、満腹感)を測定する質問票(Flint,2000)(Dalton,2015)を使用した食欲に対するH4H17319P2の効果は基準時、および追跡期間中に実施される。
【0322】
食欲は、クリニックビジットの間の標準的なカロリー負荷の前後に評価され、追加の食欲質問票は、基準期間、治療期間および追跡期間の間、毎日完了される。
【0323】
ANGPTL3
アンジオポエチン様タンパク質3(ANGPTL3:Angiopoietin like protein 3)は、例えばTG、低密度リポタンパク質C(LDL-C)などのリポタンパク質レベルを、リポタンパク質リパーゼの阻害を介して調節する(Tikka,2016によるレビュー)。ANGPTL3のレベルは、摂食、レプチンおよび/またはインスリンによって調節され得る(Minicocci,2012)(Nidhina,2015)。ANGPTL3のレベルは、リポジストロフィーの患者で上昇し、メトレレプチンを用いた治療後に低下する(Muniyappa,2017)。ANGPTL3の低下は、TGリッチなリポタンパク質のリパーゼクリアランスの強化を介在し得る。ANGPTL3およびTGのレベルは、リポジストロフィーのマウスモデルでも増加しており、H4H17319P2を用いた処置後に正常化される。したがって、ANGPTL3は、レプチン受容体シグナル伝達が強化された状況下で減少し得る薬理学的マーカーであり得る。ANGPTL3は、パートAおよびBの基準時、およびいくつかの時点での治療後に測定される。
【0324】
可溶性LEPR
レプチンは、遊離体として血流中を循環し、およびLEPR細胞外ドメインの脱落を介して生成されるsLEPRにも結合し得る(Sinha,1996)(Lammert,2001)。可溶性LEPRは、レプチンの生体利用効率および/またはクリアランスを調節し得る(Lou,2010)。標的飽和度は、sLEPRの飽和に依存し得る可能性があり、そのため、線形および非線形の標的介在性の動態における変動は、sLEPR値に影響を受ける場合がある。したがって、パートAおよびBでは、基準時、および治療期間中の様々な時点(抗体薬物動態に関するサンプリングに相当)でsLEPRが測定される。
【0325】
イメージング(パートBのみ)
DXAイメージングおよびMRIイメージングは、基準時、治療終了間際、および試験終了時に実施され、総脂肪分布および局所的脂肪分布、大腿部/腹部領域のSC脂肪および内臓脂肪、ならびに肝臓脂肪含量における、基準からの変化が推定される。カニクイザルのパイロット試験では、前臨床データから、H4H17319P2は、総脂肪量を減少させることによって、除脂肪量に影響を与えることなく、体重を減少させることが示された(DXAによる評価)。DXAは、臨床試験において総脂肪量および局所的脂肪分布の有用な定量的バイオマーカーであることが示されている。例えば、DXAを使用した局所的脂肪分布における有意差(足の脂肪%に対する胴体の脂肪%(脂肪量比率[FMR])が1.78±0.53)が、正常な対象と比較して、部分型リポジストロフィーの患者において観察された(Aijluni,2017)。またDXAを使用して、例えばGLP-1アゴニストなどの体重減量剤の試験(Jendle,2009)および認知療法(Ponti,2018)における総脂肪量および局所脂肪量の変化が定量されている。
【0326】
磁気共鳴イメージング(MRI)は、専用パルスシーケンスを使用した全器官のイメージング、または限定的な組織量での分光法による、肝臓(Aijluni,2017)および筋肉(Burakiewicz,2017)を含む様々な組織中の脂肪含量の測定に有効な手段であることが示されている。また、MRIは、腹部の脂肪量と分布の測定に対する、ハイコントラストな画像も示しており(Klopfenstein,2012)、その画像において、家族性リポジストロフィー2型の患者は、対照患者よりも2.5倍高い内臓脂肪率を示していた(Al-Attar,2007)。筋肉の脂肪分画も、定量的MRIにより評価することができ、複数の筋ジストロフィー研究で示されているように、分光法およびパルスシーケンスによって解剖学的なイメージングと脂肪分画推定が可能であり、疾患進行の評価で効果を発揮することが示されている(Burakiewicz,2017)。
【0327】
本試験では、腹部および大腿部のMRIを実施して、基準時、およびH4H17319P2を用いた治療後のSC脂肪、内臓脂肪、および肝臓脂肪における局所的変化が定量される。
【0328】
投与量選択の根拠
リポジストロフィーおよび単一遺伝子型肥満のマウスモデルにおける前臨床試験、およびサルの毒性試験からの有効性、安全性、および薬物動態データに基づき、パートAの静脈内投与量およびSC投与量が選択された。このFIH試験で最も高い投与量は、30mg/kg以下であり、開始投与量は、およそ0.3mg/kgである。カニクイザルのGLP毒性試験では、H4H17319P2は、100mg/kg IVの週1回で12週間の投与まで忍容性良好であり、無毒性量(NOAEL)は100mg/kgであった。ヒトにおけるH4H17319P2の予測血清曝露量に基づき、このFIH試験における予定最大投与量の30mg/kgは、NOAELの20倍未満の暴露倍数を有している。初期開始投与量の0.3mg/kgは、GLP毒性試験で試験された最高用量よりも低い10,000を超える安全域を有し、また定量限界を超えるヒトにおけるH4H17319P2濃度を提供すると予測され、ゆえに有用なPK情報を提供すると予測される。
【0329】
パートBの投与選択の目的は、忍容性を評価するための広範な曝露範囲を確保すること、および暴露-反応の関係性の特徴解析を促進すること、ならびに線形および非線形の両方の薬物動態の特徴解析を可能にする薬物動態プロファイルの解明を含む。さらに、投与量選択は、対象となりうる推定PDマーカー閾値の上下の暴露を確保しなければならない(例えば、sLEPR飽和)。パートBの投与量は、パートAからの暫定的な安全性、PKおよびPK/PDデータに基づく。投与量レベル、投与間隔、投与経路(IVまたはSC)の選択は、安全性、薬物動態、および可能な場合には、パートAならびに動物前臨床試験からのPK/PDデータに基づく。パートBの投与量は、パートAで評価された投与量を超えず、投与は4週ごとまたは2週間ごとである可能性が高いが、週に1回より頻繁には投与されない。
【0330】
投与レジメンは、毒性試験で観察された曝露量を超えない。
【0331】
基準
最大169人の対象(パートAに対し最大88人、パートBに対し最大81人)が、登録標的集団である。標的集団は、パートAに対しては健康で痩せた、または過体重の男性および女性であり、パートBに対しては、様々な基準レプチン値を有する健康な過体重または肥満の男性および女性である。
【0332】
重要な登録基準
対象は、本試験のパートAの登録に適格であるためには、スクリーニング時に以下の基準を満たす必要がある。
1.18歳以上50歳以下の男性および女性。
2.18.5~<30.0kg/mの肥満度指数(BMI)。
3.対象は、治験責任医師により、良好な健康状態であり、スクリーニング時および/または治験薬の初回投与前に実施される既往歴、身体検査、臨床検査安全性試験に基づき主要な併存症を有していないと判断される。
4.クリニックビジット、試験関連手順、および食事指示の順守について、順守する意思があり、可能であること。
5.試験全体を通じて、通常の食事および運動レジメンを維持する意思があること。
6.署名されたインフォームドコンセントを提供することが可能であり、意思があること。
【0333】
対象は、本試験のパートBの登録に関し適格であるためには、スクリーニング時に以下の基準をすべて満たす必要がある(前スクリーニング時に決定されるBMIおよびレプチンの適格性を除く)。
1.18歳以上65歳以下の男性および女性。
2.コホートのうちの一つにより以下に定義される、前スクリーニング時の肥満度指数(BMI)および空腹時レプチン値を有すること。特定のコホートへの登録が、許容される最大数に達した場合、対象は登録適格ではなくなる。
3.対象は、治験責任医師により、スクリーニング時および/または治験薬の初回投与前に実施される既往歴、身体検査、臨床検査安全性試験に基づき主要な併存症を有していないと判断される。対象は、軽度の高脂血症および/または軽度の高血圧の既往を有してもよいが、スクリーニング前の少なくとも2か月間、脂質降下剤または血圧降下薬について、安定した投与をうけていなくてはいけない。
4.クリニックビジット、試験関連手順、および食事指示の順守について、順守する意思があり、可能であること。
5.試験全体を通じて、通常の食事および運動レジメンを維持する意思があること。
6.署名されたインフォームドコンセントを提供することが可能であり、意思があること。
【0334】
除外基準
スクリーニング時に以下の基準のいずれかを満たす対象は、本試験のパートAから除外される:
1.臨床的に意義のある心血管系疾患(例えば、高血圧、心筋梗塞、脳卒中、末梢血管疾患、心不全、難治性不整脈の既往)、呼吸器系疾患、肝臓疾患、腎疾患、消化管疾患、内分泌疾患(例えば、高脂血症)、血液疾患または神経疾患の既往。
2.1型糖尿病もしくは2型糖尿病もしくは前糖尿病段階の既往、またはスクリーニング時の空腹時血糖値(FBG)が>100mg/dL、またはスクリーニング時のHbA1cが>5.7%。
3.空腹時のLDL-Cが≧130mg/dL、TGが>250mg/dL。
4.スクリーニング時に、臨床的に意義のある完全血球数異常、臨床化学、尿分析、または尿薬物スクリーニング検査。臨床検査結果における些細な逸脱は許容される。注記:なんらかの臨床検査結果異常(例えば、正常上限(ULN)から3x以内のクレアチニンホスホキナーゼ(CPK)で、激しい肉体活動が推定原因であるもの)は、スクリーニング期間中に1回反復されてもよい。
【0335】
スクリーニング時に以下の基準のいずれかを満たす対象は、本試験のパートBから除外される:
1.臨床的に意義のある心血管系疾患(例えば、中~高度な高血圧、心筋梗塞、脳卒中、末梢血管疾患、心不全、難治性不整脈の既往)、呼吸器系疾患、肝臓疾患、腎疾患、消化管疾患、内分泌疾患、血液疾患または神経疾患の既往。
2.1型糖尿病もしくは2型糖尿病の既往、またはスクリーニング時のFBGが>126mg/dL、またはスクリーニング時のHbA1cが>6.5%。「前糖尿病段階」の診断は許容される。
3.空腹時のLDL-Cが>160mg/dL、またはTGが>500mg/dL。
4.スクリーニング時に、臨床的に意義のある完全血球数異常、臨床化学、尿分析、または尿薬物スクリーニング検査。上述のように軽度の脂質異常および血糖異常は除外される。臨床検査結果における些細な逸脱は許容される。注記:なんらかの臨床検査結果異常(例えば、ULNから3x以内のCPKで、激しい肉体活動が推定原因であるもの)は、スクリーニング期間中に1回反復されてもよい。
5.食物摂取量評価で使用される特定の食品カテゴリーに対する制限的な食習慣(例えば、ベジタリアンまたはビーガン)、嫌悪、または食物摂取量、食欲、食物管理の評価の解釈に干渉する、または混乱させる摂食行動。
【0336】
スクリーニング時に以下の基準のいずれかを満たす対象は、本試験のパートAおよびパートBから除外される:
1.スクリーニングビジットから60日以内の何らかの理由による入院(すなわち、24時間超)。
2.対象が、治験責任医師の意見において、本試験に参加することにより、試験結果を混乱させる、または対象に追加的なリスクを負わせる何らかの身体検査所見、および/または何らかの既往歴を有する。
3.視床下部性の無月経またはリポジストロフィーの既往。
4.スクリーニング前の過去3か月間にわたり、5%を超える体重の変化。
5.肥満に対する肥満症治療術の既往歴(例えば、スリーブ胃切除術、胃バイパス、バンディングなど)。
6.過去6ヶ月間における体重減少術(例えば脂肪吸引)または体型矯正術。
7.過去3ヶ月間における体重減少のための(店頭販売の[OTC]または処方の)医薬品を用いた治療(例えば、ロルカセリン、フェンテルミン/トピラマート、ナルトレキソンHCl/ブプロピオンHCl、リラグルチド)。
8.主要な精神障害、摂食障害(例えば、過食症、拒食症)の既往。
9.現喫煙者、またはスクリーニング前の3か月以内に禁煙した旧喫煙者(紙巻たばこ、または電子たばこ)。
10.スクリーニングビジット前の1年以内に、レクリエーション薬剤(マリファナを含む)またはアルコール依存症(1日につき2回を超える飲酒)の既往。
11.スクリーニング時に、B型肝炎感染症またはB型肝炎表面抗原陽性(HbsAg+)の既往。
12.スクリーニングビジット時に、HIV感染症またはHIV血清陽性の既往。
13.スクリーニング時に、C型肝炎感染症またはC型肝炎抗体検査結果が陽性の既往。
14.過去10年以内に何らかの悪性腫瘍。ただし、切除され、3年間、転移性疾患の証拠がない皮膚の基底細胞癌もしくは扁平上皮癌、または子宮頚もしくは肛門の上皮内癌は除く。
15.活動性結核(TB)または潜伏性結核の既往。注記:潜伏性TBの既往は、ツベルクリン皮膚テストが陽性(TST;Bacillus Calmette-Guerin(BCG)または他のワクチン歴にかかわらず、皮膚硬結が>5mmと規定される)またはQuantiFERON(登録商標)TB Goldテストが陽性(不明瞭ではない)のいずれかとして規定される。
16.パートAについて:スクリーニングビジット時、および基準ビジット時に、座位血圧または仰臥位血圧の少なくとも2回の測定値(>140/90または<90/60)、および安静時脈拍(<45または>125)または起立時変化(収縮期に>20mm Hgの低下、および/または拡張期に>10mm Hgの低下)。パートBについて:スクリーニングビジット時に、座位血圧または仰臥位血圧の少なくとも2回の測定値(>150/90または<90/50)、および安静時脈拍(<45または>125)または起立時変化(収縮期に>20mm Hgの低下、および/または拡張期に>10mm Hgの低下)。血圧値が高い場合、血圧測定を繰り返してもよく、または対象を1回、再スクリーニングしてもよい。
17.対象が、スクリーニング時に、<60mL/分/1.73mの推定糸球体濾過率(MDRD式を使用)を有する。
18.少なくとも2回の測定で、臨床的に意義のあるECG異常または異常間隔が確認される(男性に対してはQTcF>450ミリ秒、女性に対しては、>470ミリ秒;PR<120ミリ秒または>220ミリ秒、QRS >100ミリ秒)。
19.ドキシサイクリン(またはテトラサイクリン類の薬剤)または製剤の他の成分に対する過敏症。
20.タンパク質治療薬に対する急性過敏症および/またはアナフィラキシーの既往。
21.治験責任医師の意見において、対象に対する実質的なリスクを呈し得る重度なアレルギーの既往(ラテックスを含む、またはアナフィラキシー性反応またはアレルギー)。
22.スクリーニングビジット時に、90日以内または治験生物製剤の少なくとも5半減期以内(いずれか長い方)、または他の治験製品に関しては少なくとも4週間以内、または免疫療法に関しては少なくとも6カ月間以内に、別の治験薬(生物製剤を含む)または治験療法を評価するなんらかの臨床試験の参加。
23.妊娠中または授乳中の女性。
24.初回投与前/最初の治療の開始前、本試験期間中、および最後の投与後少なくとも4か月間、高度に有効な避妊法を実施する意思のない、妊娠可能性のある女性。高度に有効な避妊手段としては以下が挙げられる:
a.スクリーニング前に2回以上の月経サイクルで開始された排卵の阻害に関連する、混合(エストロゲンおよびプロゲステロン含有)ホルモン避妊薬(経口、膣内、経皮)またはプロゲステロンのみのホルモン避妊薬(経口、注射、移植)の安定的な使用。
b.子宮内デバイス(IUD);子宮内ホルモン放出システム(IUS)。
c.卵管結紮術。
d.精管切除術を受けたパートナー。
e.および/または性的禁欲†、‡
閉経後の女性は、妊娠可能であると見なされないように、少なくとも12カ月間、無月経でなければならない。子宮摘出術または卵管結紮術が書面で証明できる女性に対しては、妊娠検査と避妊は要求されない。
†性的禁欲とは、試験治療薬と関連するリスクのある全期間中に、異性間性交を慎むこととして規定される場合にのみ、高度に有効な方法とみなされる。
‡定期的な禁欲(カレンダー法、症状体温法、排卵後法)、引き抜き(膣外射精)、殺精子剤のみ、および授乳性無月経法(LAM)は、許容可能な避妊法ではない。女性用コンドームと男性用コンドームは、一緒には使用されないものとする。
25.治験薬の治療期間中および治験薬の最終投与後の4ヵ月間に、以下の医学的に許容可能な避妊形態の使用を望まない性的に活動的な男性:医学的な外科手術成功に関する評価を伴う精管切除術またはコンドームの一貫した使用。試験期間中および試験薬の最終投与後の4ヵ月間、精子提供は禁止される。
26.許容される医薬品または栄養補助食品に記載されているものを除く、併用薬の使用。
【0337】
試験コホートおよび用量漸増に関する説明
7つの逐次的な漸増用量コホートは、0.3mg/kg~30mg/kgの最大用量までの用量を含むように計画されている。各用量コホートは、8人の対象からなる:6人は無作為化されてH4H17319P2を投与され、2人は無作為化されてプラセボを投与される。安全性を最適化するために、コホート1(0.3mg/kg IV)、コホート2(1mg/kg IV)、コホート3(3mg/kg IV)、コホート4(300mg SC)、およびコホート5(10mg/kg IV)の各々の8名の対象(6名活性、2名プラセボ)を2ブロックに分割する。2名の対象(1名は活性:1名はプラセボ)がブロック1に安全性監視群として登録され、残りの6名の対象は、ブロック2に登録される(5名が活性:1名がプラセボ)。ブロック1の対象が最初に登録され、同日に投与される。ブロック1の対象の両名が少なくとも24時間の安全性評価を安全に完了し、安全性データが治験責任医師とスポンサーの医療モニターによってレビューされ、そしてブロック2の対象の登録を開始できることが、治験責任医師とスポンサーの医療モニターによって合意された後でのみ、ブロック2の対象の登録が開始される。ブロック2の全対象者は、同日に投与されてもよい。
【0338】
コホート6(600mg SC)およびコホート7(30mg/kg IV)の各々8名の対象(6名が活性:2名がプラセボ)は、4名の対象(3名が活性:1名がプラセボ)の二つのブロックに分割される。各ブロックの投与は、異なる日に実施される。漸増用量コホートは以下のように登録される:
□ コホート1:H4H17319P2 0.3mg/kg IV、単回投与
□ コホート2:H4H17319P2 1mg/kg IV、単回投与
□ コホート3:H4H17319P2 3mg/kg IV、単回投与
□ コホート4:H4H17319P2 300mg SC、単回投与
□ コホート5:H4H17319P2 10mg/kg IV、単回投与
□ コホート6:H4H17319P2 600mg SC、単回投与
□ コホート7:H4H17319P2 公称用量の30mg/kg IV、単回投与
【0339】
PK変動が予想よりも大きい場合、任意のコホートが登録され、例えば年齢、体重、性別などの特定の共変成分の役割を検証するための追加の対象が必要となる。
□ コホート8:H4H17319P2 公称用量の30mg/kg IV、単回投与
□ コホート9:H4H17319P2 公称用量の30mg/kg IV、単回投与。30mg/kg IVまでの最大用量がコホート8および9に割り当てられているが、新たに得られたPKデータに応じてさらに低い用量が投与されてもよい。
【0340】
用量漸増:安全性/用量漸増チームには、治験責任医師、医療/研究ディレクター、生物統計研究者、およびリスク管理リーダーが含まれる。治験責任医師、および他の治験施設担当者、医療モニターを含むスポンサーの治験チームも、投与される治療薬に関して盲検化される。スポンサーに非盲検の個人がいてもよいが、そうした非盲検の個人は、スポンサーの治験チームの一員とはならない。
【0341】
前のコホートのすべての対象が8日目の安全性評価を完了させ、盲検化安全性データが安全性/用量漸増チームのミーティングにおいてレビューされた時点で、コホート2(1mg/kg)に対する用量漸増を進行させてもよい。
【0342】
前のコホートのすべての対象が8日目の安全性評価を完了させ、盲検化安全性データが安全性/用量漸増チームのミーティングにおいてレビューされた時点で、コホート3(3mg/kg IV)およびコホート4(300mg SC)に対する用量漸増を進行させてもよい。コホート4の投与は、コホート3の投与と並行して行うことができる。
【0343】
コホート3のすべての対象が8日目の安全性評価を完了させ、盲検化安全性データが安全性/用量漸増チームのミーティングにおいてレビューされた時点で、コホート5(10mg/kg IV)に対する用量漸増を進行させてもよい。
【0344】
コホート4のすべての対象が8日目の安全性評価を完了させ、盲検化安全性データが安全性/用量漸増チームのミーティングにおいてレビューされた時点でのみ、コホート5と並行して、コホート6(600mg/kg SC)に対する用量漸増を進行させてもよい。
【0345】
公称用量の30mg/kg IVがコホート7に割り当てられているが、新たに得られたPKデータに応じてさらに低い用量が投与されてもよい。30mg/kg IVへの用量漸増の前に、コホート5のすべての対象が8日目の安全性評価を完了させ、盲検化安全性データが安全性/用量漸増チームのミーティングにおいてレビューされた。体重に対する薬理効果が予想よりも高い場合、安全/用量漸増の決定のタイミングが修正され、追加的な安全データが収集されてもよい。例えば、8日で6名の対象のうち少なくとも3名において、体重が3%を超えて減少した場合、観察期間を15日目まで延長し、その後、何らかの用量漸増の決定が為される。2週間にわたり、6名の対象のうち少なくとも3名において、体重が5%を超えてさらに減少した場合、観察期間を4週間まで延長し、その後に用量漸増に対する決定が為される。
【0346】
(表19)試験のパートAおよびパートBにおける投与コホート
【0347】
試験設計
これは、健康な参加者におけるH4H17319P2の単回投与および反復投与の安全性、忍容性、PKおよび薬理(PD)に関する第I相無作為化二重盲検プラセボ対照二部試験である。パートAにおいて、健康で痩せた、または過体重の対象が登録され、単回漸増静脈内(IV)投与および皮下(SC)投与に関する安全性、忍容性、PK、およびPDが評価される。パートAのPKおよび安全性の中間情報を使用して、パートBの投与の用量レベル、投与頻度、および投与様式(IVまたはSC)が選択される。パートBでは、肥満度指数(BMI)が25~40kg/mの過体重/肥満の対象が登録され、基準レプチン値により規定される4つの個別のコホートにおいて、H4H17319P2の反復投与に関する安全性、忍容性、PK、およびPDが評価される。
【0348】
パートAでは、最大で88名の対象が、最大で7つの逐次的漸増単回投与(最大で5つのIVおよび二つのSC)コホート(コホート1、2、3、4、5、6、7)および二つの任意の単回投与コホート(コホート8および9)に無作為化される。7つの逐次的単回投与コホートは、8人の対象が無作為化され、各用量レベルで、H4H17319P2またはプラセボ(6人が活性:2人がプラセボ)を投与される。二つの追加的な任意の単回投与コホートは、最大で16人の対象が無作為化され、H4H17319P2またはプラセボ(12人が活性:4人がプラセボ)を投与される。最大で5つの単回IV用量レベル(0.3、1.0、3、10、および30mg/kg)および二つのSC用量レベル(300および600mg)が、単回漸増様式で評価される。用量を漸増するかどうかの決定は、安全性パラメータおよびAEの分析に基づく。経時的な抗体濃度の中間解析、探索的PD測定、および該当する場合には、用量コホート間のPK/PDの関連性も、用量漸増決定に情報を与えうる。最大30mg/kgまでの用量レベルでの二つの任意コホートの登録に関する決定は、PKプロファイルの変動に関する中間解析に基づく。
【0349】
任意コホート:コホート8と9は、対象の中で予想よりも高いPKの変動が観察されたとき、およびPKプロファイルに対する特定の共変量の影響を理解するために追加の対象が必要とされる場合に、登録される。例えば前もって指定された数の男性、女性、年齢範囲、体重または特定のBMIカットポイントなど、登録/除外基準により規定される集団内の特定の部分集団中の対象が、登録される。公称用量の30mg/kg IVがコホート8と9に割り当てられているが、新たに得られたPKデータに応じてさらに低い用量が投与されてもよい。コホート8および9の各々が、16人の対象を登録する(4人がプラセボ投与に割り当てられ、12人がH4H17319P2投与に割り当てられる)。30mg/kg IVへの用量漸増の前に、コホート5のすべての対象が8日目の安全性評価を完了させ、盲検化安全性データが安全性/用量漸増チームのミーティングにおいてレビューされた。パートAの試験設計は、スクリーニング期間(-21日目~-2日目)、基準前ビジット(-1日目)、追跡期間(3日目~113日目)、および試験ビジットの終了日(113日目)からなり、基準前ビジットでは、対象は2泊の滞在を伴うクリニック滞在が承認される(IV投与を受ける対象、および安全性監視ブロックにいるSC投与を受ける対象)か、または1日のクリニック滞在が承認される(SC投与を受ける他の対象)。試験全体を通じて、安全性評価は、バイタルサイン、体重、身体検査、ECG、臨床検査、およびAEの監視、PK測定、ならびに様々なPD評価が含まれる。
【0350】
パートBでは、BMIが25~40kg/mの最大で81人の対象が、基準レプチン値により規定される4つのコホートに登録され(最大で1コホート当たりおよそ20人)、プラセボ対照二重盲検の12週間の反復投与試験に無作為化される(コホート割り当てに応じて、3:1または6:1のH4H17319P2:プラセボ)。用量、投与間隔、および投与様式(IVとSC)の選択は、パートAからの安全性、PK、および該当する場合にはPK/PDのデータに基づく。パートAのH4H17319P2のPKプロファイルを使用して、反復投与後の血清中の濃度が予測される。
【0351】
本試験は、前スクリーニング期間(-60~-14日目)、スクリーニング期間(-32~-14日目)、体重、DXAとMRIによる体組成の基準測定値を取得するための基準期間(-29日目~-1日目)、空腹時レプチン、体重、食欲評価および食物自由摂取量評価の基準測定値の収集のためのクリニック滞在からなる。対象は、-1日目に、2日間のクリニック滞在が承認される。1日目に、対象は治験薬剤またはプラセボの第一の投与を受け、薬物動態測定のための一連の血液サンプリングが行われ、一晩滞在して24時間のPKサンプリングが行われ、2日目に退院する。治験薬は4週間ごとまたは2週間ごとに投与され得るが、治療期間中、週に1回よりも多い頻度で投与はされない(投与頻度は、パートAのPKデータの中間解析により決定される)。
【0352】
治療期間中のビジットは最大で週に1回行われ、体重と血清代謝パラメータ(グルコース、インスリン、HOMA-IR、脂質)の正確で反復的な測定値が収集される。食欲と食物自由摂取量に関する追跡期間の評価は、4週目と治療期間(12週間)の終了時に、クリニック滞在中に行われる。対象は、基準期間、治療期間、および追跡期間中、毎日の食欲質問票も完了させる。DXAおよびMRIのイメージングに関する追跡評価も実施される。治療期間後、対象は16週間の休薬期間の間、追跡される。試験全体を通じて、安全性評価は、バイタルサイン、身体検査、ECG、臨床検査、およびAEの監視が含まれる。試験全体を通じて、薬剤濃度、標的エンゲージメントマーカー(sLEPR)、および探索的バイオマーカーも測定される。
【0353】
試験期間
対象に対する、本試験のパートAの期間は約19週間であり、スクリーニング期間を含む。対象に対する、本試験のパートBの期間は約35週間であり、前スクリーニング/スクリーニング/基準期間を含む。試験終了時は、パートBにおける最後の対象の最後のビジット時として定義される。
【0354】
治療薬の用量/経路/スケジュール
H4H17319P2は、滅菌済みの単回使用での20mLのガラスバイアル中、IV投与用またはSC投与用のいずれかで凍結乾燥粉末として供給される。H4H17319P2に対応するプラセボは、タンパク質添加を伴わない同じ処方で調製される。パートAについては、単回投与は、IV投与およびSC投与される。パートBについては、用量、投与間隔、および投与様式(IVとSC)の選択は、パートAからの安全性、PK、および該当する場合にはPK/PDのデータに基づく。
【0355】
手順および評価
安全性は、TEAE、バイタルサイン、身体検査、心電図検査(ECG)、および臨床検査のモニタリング/査定によって評価される。薬物動態を評価するために、予め指定された時点での血清中のH4H17319P2濃度の測定のために、高密度で少量のサンプルが収集される。薬理は、体重および胴囲、食物摂取量および食欲評価、ならびにDXAとMRIを使用した体組成を測定することにより評価される。
【0356】
主要転帰の測定:
1.治療下で発生した有害事象(TEAE)の数[時間枠:12週目(治療期間終了)]
【0357】
副次的転帰の測定:
1.経時的な血清中のH4H17319P2の濃度[時間枠:27週目まで(試験終了)]
2.過体重または肥満の対象における体重の変化率[時間枠:基準時から12週目まで]
3.過体重または肥満の対象における体重の絶対的変化[時間枠:基準時から12週目まで]
4.過体重または肥満の対象における標準的な食事に反応したカロリー摂取における基準からの変化[時間枠:基準時から12週目まで]
5.H4H17319P2の単回投与後の経時的な脂質制御性タンパク質レベルの変化[時間枠:16週目まで]
6.H4H17319P2の反復投与後の経時的な脂質制御性タンパク質レベルの変化[時間枠:27週目まで]
7.H4H17319P2の単回投与後の経時的なH4H17319P2に対する抗薬剤抗体の発生率[時間枠:16週目まで]
8.H4H17319P2の反復投与後の経時的なH4H17319P2に対する抗薬剤抗体の発生率[時間枠:27週目まで]
【0358】
薬物動態変数
時間に加えて、総H4H17319P2の濃度が測定される。薬物動態パラメータには以下が含まれるが、これらに限定されない。
・ AUClast - ゼロ時から、最終の正の濃度の時間までの、コンピューター計算された曲線下面積(AUC)
・ AUC0-τ - 長さτの投与間隔の間のコンピューター計算されたAUC
・ Cmax - ピーク濃度
・ tmax - Cmaxまでの時間
・ CL - クリアランス
・ Ctrough - トラフ濃度
【0359】
パートBの場合、これら(および他の)のパラメータの選択は、選択された最終サンプリングスケジュールならびに得られた結果のデータに基づくことに注意されたい。
【0360】
抗薬剤抗体変数
抗薬剤抗体(ADA:Anti-drug antibody)変数には、以下のようなADA反応および力価が含まれる:
・ 治療下で発生した反応は、基準の結果が負であったとき、任意の投与後の正のADAアッセイ反応と規定される
・ 治療により強化されたADA反応は、ADAアッセイにおいて基準が正であったとき、基準力価の9倍以上である、任意の投与後の正のADAアッセイ反応と規定される
・ 力価の値
・ 力価のカテゴリー
- 低(力価<1,000)
- 中(1,000≦力価≦10,000)
- 高(力価>10,000)
【0361】
薬理学的変数および他のバイオマーカー変数
薬理学的変数およびバイオマーカー変数は、以下である。体重、食物自由摂取量評価、食欲評価、血清/血漿の糖パラメータ(例えば空腹時のグルコース、インスリン、HbA1c)および脂質パラメータ(例えば、総コレステロール、TG、LDL-C、HDL-C)、全体および身体の位置での脂肪量ならびに除脂肪量のDXA測定値、局所的なSC脂肪および内臓脂肪のMRI定量、ANGPTL3、レプチンならびにsLEPR。追加的な探索的バイオマーカーには、甲状腺ホルモン(T3、T4、TSH)、黄体形成ホルモン(LH)、テストステロン、エストラジオール、コルチゾール、およびアディポネクチンに対するH4H17319P2の効果が含まれる。
【0362】
有効性手順
体重は、スクリーニング中および試験全体を通じて指定された試験ビジット時に評価される。体重は、他の試験評価が実施される前に、高精度較正されたデジタルスケールを使用して三重に評価される。体重評価を行う前に、対象は排尿しなければならない(膀胱は空に)。対象は下着のみを着用し、体重評価中は靴を履いてはならない。体重は、最も近い0.1kg単位まで記録されます。
【0363】
すべての人体測定は三重で行われなければならず、最終の報告値は、平均値である。三頭筋、肩甲骨下筋、腸骨棘上(suprailiac)、および大腿部の皮下脂肪厚は、乾燥した傷の無い表皮の領域において、身体の右側から採取されなければならないが、ただし奇形または手足を失っている場合には、別手段を要する。胴囲を測定するために、対象は、直立してリラックスし、腕は両脇に、足はまとめて前を向くように指示される。腸骨稜および最も低い肋骨縁は、触診により特定され、これらの領域の上にある皮膚はペンで印をつけられる。次に、印が付いたこれらの皮膚の間の中点を、巻き尺を使用して特定し、ペンで印をつける。次に、穏やかに息を吐き切ったときに、巻き尺を使用して中点での胴囲を測定する。身長は、較正されたスタジオメーターを使用して息を吸いきったときに完全に直立した立位で測定され、最も近い0.1cm単位まで記録される。パートB、およびパートAの任意コホートについて、身長は、それぞれ前スクリーニングビジットまたはスクリーニングビジットで、単回測定として測定される。肥満度指数は、体重(キログラム)の平均を、身長(メートル)の二乗で割ることで計算される。パートA(任意コホートを除く)では、平均身長は、計算に使用されるものとする。パートB、およびパートAの任意コホートでは、各ビジットでの身長(それぞれ前スクリーニングまたはスクリーニングでの単回測定)および体重(3回の測定値の平均)の値は、BMIの計算に使用される。
【0364】
食物自由摂取量が評価される。食物摂取量評価で使用される食品に対して摂食行動異常または嫌悪がある場合、その対象はスクリーニング時に除外される。食物自由摂取量評価を使用したエネルギー摂取量(朝食+昼食+夕食)は、パートBにおいて基準時、治療の4週間後、および治療期間終了時(12週)に定量される。食物評価が評価されるクリニックビジットの1日前に、対象は、活発な活動およびアルコール消費を回避するように求められる。
【0365】
対象は空腹状態で入院し、午前中にクリニックに到着する。4週間の治療中の入院患者の食物摂取量評価において、対象は、割り当てられた治療を受ける(治験薬またはプラセボ)。次に、対象は、標準化され、固定されたカロリーと主要栄養素含量の朝食、昼食および夕食が提供され、その後、一晩絶食する。翌日、対象は、自由摂取の朝食、自由摂取の昼食、および自由摂取の夕食が与えられる。自由摂取試験の食事中、対象は、典型的な一人前をはるかに超える(4~5倍)、大量の食物を与えられる。食事は、標準化された主要栄養素含量とカロリー密度が判明している食事となるように栄養士により設計される。すべての食事と給仕品は、食事試験の前後に専用の較正済みスケールを使用してひそかに計量され、0.1g以内まで、摂取された食物量が正確に評価される。対象は、食物摂取量に影響を与える可能性のある時間的および社会的なきっかけを排除するために、時計、ラジオ、携帯電話、およびテレビがない専用の個室ですべての食事を摂取する。摂取される食物の量を隠すようにして食事が提示される。そのため食物摂取量は、例えば入手可能な食物量などの過食の視覚的/社会的なきっかけに影響を受けない。対象は好きなだけ食べることを求められ、食事試験の期間中、対象は邪魔をされず、例えば読書、音楽鑑賞、電話での会話、またはビデオ鑑賞などのレジャー活動に従事することを禁止される。対象は充分に満腹になったときに、食事試験の部屋からの退室が許可される。もし1時間後でも満腹にならない場合、研究担当者によって食事が終了される。
【0366】
クリニック内での食欲評価、および毎日の食欲質問票(パートBのみ)
クリニック内での食欲は、調査質問票により評価され(Flint,2000)、対象は、視覚的アナログ尺度に答えを記録するよう指示される。対象は、クリニック滞在の1日目の間に、標準化された夕食の前後のおよそ30分以内にクリニック内の食欲評価を完了させ、ならびに基準期間、治療期間および追跡期間の間に毎日の食欲評価票を完了させる。調査対象が他の試験参加者と検査結果を共有しないよう、注意を払う。本試験のパートBに関して、クリニック内食欲評価と毎日の食欲評価票に使用される質問の詳細は、験マニュアルに記載され、(最終稿となったときに)質問は倫理委員会に提出され、パートBの開始前にレビューされる。
【0367】
DXAによる体組成(パートBのみ)
DXAは、臨床での全身骨密度測定に広く使用されている。合計の検査時間は短く(約6~7分)、電離放射線量は、約0.1mGyで最小である。二重X線吸収測定法は除脂肪体重(LBM)および体組成の推定値を提供する性能を有し、臨床研究の設計でLBM測定に使用された。LBM測定用のDXAに関する臨床的信頼性は、LBMの変化と身体機能の低下の間に有意な関連性を示す縦断的研究によって支持される(Goodpaster,2006)。二重X線吸収測定法は、基準期間中に2回、治療ビジット終了時、および試験終了時に実施される。DXAスキャンのための対象の個人的な準備に関しては、試験全体を通じて、一定の水分補給を維持すること、食事を一定して摂取すること、カフェインを一定して摂取すること、一定した運動(スキャン前の24時間、激しい運動をしない)、一定した被服、およびスキャン用のDXAテーブル上に対象を一定して位置取りすること、を行う努力をしなければならない。またDXAスキャンは、試験全体を通じて任意の所与の対象に対し、大まかに同じ時刻で取得されなければならない。
【0368】
MRIによる体組成(パートBのみ)
磁気共鳴イメージングは、肝脂肪分画の測定において使用される。肝臓全体をカバーする軸位画像を取得するマルチエコー勾配-リコールエコーシーケンスが推奨される。エコー時間は、連続的なエコー時間(TE)で、脂肪と水がout-of-phaseとin-phaseの間で交互となるようなものでなければならない。動きによるアーチファクトを最小化するために、これらは短時間の息止めで取得されなければならない。すべての取得には、3~5分かかる。大腿部の脂肪分画のスキャンには、対象を注意深く位置取りすることが必要であり、そして成形発泡支持体とローカライザーを使用した固定が必要である。完全な大腿部のMRI取得は、最大で10分かかる場合がある。対象は、午前中のスキャン前、10~12時間の絶食が要求される場合がある。
【0369】
イベントの試験スケジュールおよび脚注
試験評価および手順は、以下の脚注とともに図25、26、および27において、期間およびビジットごとに提示される。
1.非監視SC投与群の退院。しかし施設側は、対象を一晩滞在させ、翌日退院させる選択肢を有している。
2.IV投与群および安全性監視SC投与群の退院。
3.パートAのIVコホートに関し、1日目にバイタルサインも測定されるものとし、AEは、投与前、30分の時点、治験薬点滴終了時点、ならびに点滴後1時間、2時間、4時間および8時間の時点でモニタリングされるものとする。パートAのSCコホートに関し、1日目にバイタルサインも測定されるものとし、AEは、投与前、注射後30分、ならびに注射後1時間、2時間、4時間および8時間の時点でモニタリングされるものとする。パートBの用量投与に関し、1日目にバイタルサインも測定されるものとし、AEは、投与前、30分の時点、IV投与に関しては治験薬点滴の終了時点、ならびにIV投与とSC投与に関してはそれぞれ点滴または注射後の1時間、2時間、4時間および8時間の時点でモニタリングされるものとする。投与の翌日、バイタルサインも測定されるものとし、AEは、投与前、30分の時点、IV投与に関しては治験薬点滴の終了時点、ならびにIV投与とSC投与に関してはそれぞれ点滴または注射後の1時間、2時間、および4時間の時点でモニタリングされるものとする。バイタルサインは、スクリーニングビジット時(パートAおよびB)および1日目(パートAのみ)で、起立性血圧の評価も含む。起立性血圧評価に関し、血圧および脈拍は、およそ10分間の仰臥位、およそ1分間の起立状態、およびおよそ3分間の起立状態の後の対象で測定される。
4.少なくとも8時間空腹状態であった後に、採血される。投与日では、投与前サンプルのみが、空腹状態である必要がある。
5.体重は、排尿後(膀胱は空)、空腹状態で、靴を脱ぎ、下着のみを着用して、専用の較正済みスケールを使用して三重で測定されなければならない。
6.皮膚のひだの厚みは、以下の領域から三重で計測され、体脂肪分布の適切な説明を提供しなければならない:三頭筋、肩甲骨下、腸骨棘上、および大腿部。
7.1日目の薬剤濃度、sLEPRR濃度、およびANGPTL3濃度のためのサンプルの採取は、点滴前/注射前、点滴後/注射後±15分、ならびに点滴後/注射後1時間±15分、2時間±15分、4時間±15分、8時間±15分、12時間±15分、および24時間±15分である。sLEPRおよびANGPTL3は、薬剤濃度が測定される時点のサブセットでのみ解析されてもよい。
8.DNAは、任意のビジットで収集できる。
9.一晩滞在させ、翌日に退院させる選択肢。パートBについて、対象はさらに、1日目の1日前(-1日目)に入院し、一晩滞在する。1日目の手順(一晩の絶食、ECG、PK測定および治験薬の投与の後に実施されなければならない評価を除く)、例えば薬剤スクリーニング、尿検査および尿妊娠検査は、-1日目に実施されてもよい。
10.30日目のビジットは、29日目のビジットの正確に1日後に行わなければならない。
11.85日目のビジットは、84日目のビジットの1日後に行わなければならない。
12.パートBでの治験薬の投与頻度は、パートAで得られた結果に基づく。
13.二つの基準画像(DXAおよびMRI)は、-29日目~-14日目に取得される。DXAとMRIの両方とも、同日または別の日に実施することができる。しかし1回目と2回目のDXA、および1回目と2回目のMRIは、別の日に実施されなければならない。
14.ビジット18のDXAとMRIの手順は、ビジット18の5日前まで、または5日後までに実施されてもよいが、DXAとMRIは、治験薬投与後の24時間の内に実施されてはならない。ビジット24のDXAとMRIの手順は、ビジット24の7日前までに実施されてもよい。
15.パートBに関し、実際のサンプル収集スケジュールは、パートAからのPKデータの中間レビューに基づく。しかし反復投与であるため、最初の投与の後に高密度サンプリングが実施され、他の時点でトラフサンプリングが行われる。
16.クリニック内での食欲評価は、標準化された夕食の前後に実施される。
17.施設は、指定された各ビジット時に、毎日の食欲評価票の完了を対象が順守しているかチェックする。
18.ECGは、投与前に実施される。
【0370】
安全性
図25~27に従う時点で、対象が少なくとも10分間座って休んだ後または仰臥位となった後に、体温、血圧、脈拍、および呼吸数を含むバイタルサインが収集される。
【0371】
完全な身体検査は、図25~27に従う時点で実施される。対象の既往歴により示唆される、存在する可能性のある異常をすべて検討し、評価するために注意を払わなければならない。
【0372】
採血を必要とするビジット中、採血される前に心電図を実施しなければならない。標準的な12誘導ECGが、図25~27に従う時点で実施される。12誘導ECGは、対象が少なくとも10分間休んだ後、仰臥位で実施されなければならない。ECGは、治験責任医師により施設で解釈される。心拍数は、心室の拍数から記録され、PR、QRS、RR、QTcBおよびQTcF間隔が記録される。臨床的に意義のある異常は、該当する場合はAE/SAEとして文書化されなければならない。各ECGの出力図は、スクリーニング記録の出力図と比較して分析される。ECGストリップまたはレポートはソースとともに保持される。
【0373】
血液検査、化学検査、尿検査、薬物スクリーニング、および妊娠検査のサンプル(血清または尿)が分析される。血液サンプル収集の詳細な説明は、治験施設サイトに提供される検査室マニュアルにある。臨床検査のサンプルは、図25~27に従ってビジット時に収集される。検査には以下が含まれる。血液化学検査:ナトリウム、カリウム、塩化物、重炭酸塩、カルシウム、グルコース、アルブミン、総血清タンパク質、クレアチニン、血中尿素窒素(BUN)、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、アルカリホスファターゼ、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、ガンマ-グルタミルトランスフェラーゼ(GGT)、総ビリルビン、総コレステロール(低密度リポタンパク質[LDL]および高密度リポタンパク質[HDL])、トリグリセリド、尿酸、クレアチニンホスホキナーゼ(CPK)、LDL-C、HDL-C;血液検査:ヘモグロビン、ヘマトクリット、赤血球(RBC)、白血球(WBC)、赤細胞指数(平均赤血球容積[MCV]、平均赤血球ヘモグロビン量[MCH]、平均赤血球ヘモグロビン濃度[MCHC]、赤血球分布幅[RDW:red blood cell distribution width]、血小板数、好中球、リンパ球、単球、好塩基球、および好酸球を含む差分(フローサイトメトリーによる追加検査は、臨床的に意義のある異常が観察された場合に細胞亜群を評価するために実施されてもよい);尿検査:色、糖、RBC、透明性、血液ガラス質および他の円柱、pH、ビリルビン、細菌、比重、白血球エステラーゼ、上皮細胞、ケトン、亜硝酸塩、結晶、タンパク質、WBC、酵母;他の臨床検査:レプチン、インスリン、および例えば甲状腺ホルモン(T3、T4、TSH)、黄体形成ホルモン(LH)、テストステロン、エストラジオールなどの内分泌性ホルモン、ならびにHbA1cが、パートAおよびパートBにおいて評価される。パートBについては、血清レプチンが、前スクリーニングビジットで測定され、4コホートのうちの一つに対する対象適格性が決定される。またレプチンは、図25~27に記載されるように、試験全体を通じて測定される。測定される他のタンパク質には、アディポネクチンおよびコルチゾールが含まれる。
【0374】
臨床検査値異常、および臨床検査有害事象
臨床検査の値はすべて、治験責任医師または権限を有する被指名者によってレビューされなければならない。治療の開始後に発生した重大な異常検査結果は、その異常の性質および程度を確認するために反復されなければならない。必要に応じて、適切な補佐的調査を開始させなければならない。異常が解消されない場合、または異常が治験薬または治験薬投与と無関係な事象または状態により説明できない場合、医療/ディレクターに相談しなければならない。
【0375】
検査値異常の臨床上の重大性は、試験下の疾患の背景内において、治験責任医師により決定されなければならない。
【0376】
薬物濃度の測定およびサンプル
パートAの間の血清中のH4H17319P2濃度の測定用サンプルは、図25に列記される時点で収集される。パートBの間の血清中のH4H17319P2濃度の測定用サンプルは、名目上、図27に列記される時点で収集される。しかしながら、パートAのデータの中間解析に基づいてパートBのイベントスケジュールが確認された時点で、パートBの間のH4H17319P2の測定用サンプルは、(場合により)改訂された時点の組み合わせで収集される。任意の未使用のサンプルが、探索的バイオマーカー研究に使用されてもよい。
【0377】
抗薬剤抗体の測定およびサンプル
パートAおよびBの抗薬剤抗体評価用のサンプルは、図25および27に列記される時点で収集される。任意の未使用のサンプルが、探索的バイオマーカー研究に使用されてもよい。
【0378】
薬理バイオマーカーおよび探索的バイオマーカーの手順
本試験において、H4H17319P2がどのように食欲、食物摂取量、体重、および例えば可溶性LEPRおよびANGPTL3などの循環マーカーならびに探索的バイオマーカーを調節し得るかを探索するための研究評価が実施される。
【0379】
可溶性LEPRは、健康対象および疾患対象の循環中に存在する。可溶性LEPRは、レプチン受容体の非シグナル伝達形態であり、レプチンに結合することができ、その生体利用効率を制御し得る。H4H17319P2は、用量依存性、および時間依存性に、循環中のsLEPRに結合し得る。可溶性LEPRは、1日目のビジット、および図25と27に記載されるその後のビジットで投与前に測定される。sLEPRの変化は、H4H17319P2投与後の標的会合と飽和を反映し得る。
【0380】
ANGPTL3は、リポタンパク質リパーゼの内因性阻害剤であり、循環トリグリセリドを調節する。H4H17319P2は、ANGPTL3を介してトリグリセリドを調節している可能性がある。そこで、ANGPTL3の循環濃度を、投与前血清、および投与後の様々な時点の治療後血清において測定し、食後変化を捕捉する。ANGPTL3に対するH4H17319P2の用量依存性の効果は、図25~27に概説されるように、パートAおよびBの両方で探索される。
【0381】
血清または血漿中で測定され得る他の探索的バイオマーカーとしては、体重減少中に調節されると考えられるレプチン、アディポネクチンおよび内分泌性ホルモンが挙げられる。マーカーは、図25~27のバイオマーカー評価コレクションに従い測定される。
【0382】
有害反応および有害事象
注入反応の治療のための緊急時の機器および薬剤は、即時使用できるようにしなければならない。注入反応はすべてAEとして報告され、適切なグレード化スケールを使用して等級分けしなければならない。以下のAEのいずれかが観察された場合、注入を中断しなければならない:咳嗽、硬直/悪寒、発疹、掻痒症(痒み)、蕁麻疹(urticaria)(蕁麻疹(hives)、ミミズばれ、膨疹)、発汗(汗が出る)、低血圧、呼吸困難(息切れ)、嘔吐および顔面紅潮。
【0383】
反応は対症療法的に治療されなければならず、注入を再開してはならない。治験責任医師が、治療の医学的必要がある、または上述以外の注入中断の医学的必要があると感じた場合、臨床的判断を行い、典型的な臨床業務に従い適切な応答を提供しなければならない。
【0384】
注入は終了されなければならず、そして以下のAEのいずれかが発生した場合、再開してはならない:アナフィラキシー、喉頭/咽頭の浮腫、重度の気管支けいれん、胸痛、けいれん、重度の低血圧、他の神経症状(錯乱、意識喪失、知覚障害、麻痺、など)、治験責任医師の意見において、IV注入の終了を正当化する任意の他の症状または兆候。以下が観察された場合、アナフィラキシーを考慮する(Sampson,2006):皮膚、粘膜組織、またはその両方を含む病気の急性の発生(数分から数時間)(例えば、全身性の蕁麻疹、掻痒、または顔面紅潮、唇-舌-口蓋垂の膨張)および以下の少なくとも一つ:呼吸困難(例えば、呼吸困難(dyspnea)、苦しそうな呼吸-気管支けいれん、喘鳴、最大呼気流量の低下、低酸素血症)および血圧低下または末端器官の機能障害の関連症状(例えば低血圧[虚脱]、失神、失禁)。
【0385】
全身性反応の治療のための緊急時の機器および薬剤は、即時使用できるようにしなければならない。注入反応はすべてAEとして報告され、指示されるようにグレード化スケールを使用して等級分けしなければならない。治験薬注射(SC)後の急性全身反応は、臨床判断を行い、典型的な臨床診療に従って適切な応答を決定して治療されなければならない。
【0386】
局所注射部位反応は、AEとして報告されなければならず、および食品医薬品局(FDA)の2007年9月のGuidance for Industry,Toxicity Grading Scale for Healthy Adult and Adolescent Volunteers Enrolled in Preventive Vaccine Clinical Trials(試験規制バインダー中に提供される)に従い等級分けされなければならない。
【0387】
AEは、治験薬を投与された対象における任意の有害な医学的事件であり、治験薬と因果関係を有している場合といない場合がある。したがって、AEは、治験薬と関連するとみなされるかどうかに関わらず、治験薬の使用と時間的に関連する、任意の好ましくない、意図せざる兆候(臨床検査所見異常を含む)、症状、疾患である。また、AEには、治験薬の使用と時間的に関連する、既存の状態の任意の悪化も含む(すなわち、頻度および/または強度における任意の臨床上の意義のある変化)。
【0388】
重篤な有害事象(SAE)は、任意の用量でのあらゆる有害な医学的事件である:
・ 例えば治験薬とは完全に無関係であるように見える場合であっても(例えば、対象が乗客の自動車事故)、すべての死亡を含む死亡の結果。
・ 治験責任医師の観点から、対象が当該事象の時点で、ただちに死亡するリスクがある、生死にかかわる事象。これには、より重篤な形態で発生し、死をもたらした可能性のあるAEは含まれない。
・ 入院またはすでに入院している期間の延長を必要とする。入院は、24時間を超えて病院または救急室へ入ることと規定される。すでに入院している期間の延長は、当該事象に対して元々見込まれていた期間よりも長い病院滞在として規定され、または治験責任医師もしくは治療している医師により決定される新たなAEの発現を原因として延長された病院滞在として規定される。
・ 持続的または重大な障害/不能が生じる(通常の生命機能を実施する能力の実質的な破壊)。
・ 先天異常/出生異常である。
・ 重要な医学的事象である-重要な医学的事象は、直ちに生命を脅かしたり、死亡や入院をもたらすことは無いが、対象を危険に曝す可能性があり、または上記の他の重篤な転帰の一つを予防するための介入を必要とする可能性がある(例えば、アレルギー性気管支けいれんのために、緊急治療室または自宅での集中治療;入院をもたらさない造血機能障害もしくは発作;または薬物依存症もしくは薬物乱用の発症)。
【0389】
これらの事象については、SAE報告基準に従う必要がある。
【0390】
特に注目すべき有害事象(AESI、重篤または非重篤)は、スポンサー製品またはプログラムに固有の科学的および医学的な懸念の一つであり、継続的なモニタリングと、治験責任医師による、スポンサーとの迅速なコミュニケーションが適切であり得る。そのような事象は、特徴解析を行い、理解するためのさらなる調査を正当化し得る。事象の性質に応じて、試験スポンサーと第三者(例えば規制当局)による迅速なコミュニケーションも正当化され得る。
【0391】
注入反応は、注入中または注入が完了した後の2時間以内に発生する任意の関連AEとして規定される。注入反応はすべてAEとして報告され、等級分けされなければならない。
【0392】
治験責任医師(または被指名人)は、インフォームドコンセントに署名されたときから、試験終了までに発生したすべてのAEを記録する。臨床検査、バイタルサイン、またはECGの異常は、AEとして記録されるものとする。治験薬との因果関係の評価に関わらず、すべてのSAEが24時間以内にスポンサー(または被指名人)に報告されなければならない。
【0393】
初回レポートの時点で入手できない情報は、フォローアップレポート中に記録されなければならない。例えば関連病院または医療記録、および診断検査レポートなどの証拠データも、要求される場合がある。対象が試験を完了させた後にSAEについて治験責任医師が通知を受けた場合、以下が適用される:
【0394】
パートA:試験終了後の30日以内に発生した、または対象が初期に試験終了した場合に最後の治験薬投与の112日以内に発生したSAEは、スポンサーに報告される。治験責任医師は、当該事象が慢性的および/または安定したとみなされるまで、転帰に関する追跡情報を得るために、いかなる努力も行わなければならない。
【0395】
パートB:試験終了後の30日以内に発生した、または対象が初期に試験終了した場合に最後の治験薬投与の112日以内に発生したSAEは、スポンサーに報告される。治験責任医師は、当該事象が慢性的および/または安定したとみなされるまで、転帰に関する追跡情報を得るために、いかなる努力も行わなければならない。
【0396】
パートAおよびB:試験/早期終了ビジットの終了から30日を超える日に発生したSAEは、致死性で、および治験責任医師により治験薬関連のSAEであるとみなされるSAEのみ、スポンサーに報告される。治験責任医師は、当該事象が慢性的および/または安定したとみなされるまで、治験薬関連SAEの転帰に関する追跡情報を得るために、いかなる努力も行わなければならない。
【0397】
結果
本試験の最初(パートA)の単回漸増投与の部分では、患者は、7つのコホートのうちの一つにおいて、H4H17319P2とプラセボに3:1で無作為化され、0.3mg/Kgの静脈内(IV)~30mg/kg IVまでの投与を受け、および300mgの皮下(SC)~600mg SCの投与を受ける。56人の患者が、H4H17319P2またはプラセボを投与され、最短で用量投与の85日後に、薬物動態(PK)データおよび安全性データが利用可能となる。盲検化データのレビューにより、投与された用量のいずれでも重篤または重大な有害事象は明らかにならず、死亡も報告されなかった。H4H17319P2またはプラセボを用いた治療は、IV経路またはSC経路を介して投与されたとき、全体的に忍容性良好であった。治療の中断または中止はなかった。頭痛は最も多く報告された治療下で発生した有害事象(TEAE)であった。安全性臨床検査パラメータ、バイタルサインまたはECGの基準から、臨床的に意義のある異常または用量依存性のシフトはなかった。
【0398】
実施例21:小児患者における、先天性レプチン欠損症の治療のための抗LEPR抗体の臨床使用
簡潔に述べると、患者は、6カ月齢で過度な肥満、過食症、高インスリン血症、脂質異常症、グレード2の肝臓脂肪症、および低レプチン値(0.55ng/mL)を呈した。患者は、ポリメラーゼ連鎖反応によりレプチン遺伝子欠失(LEP-/-)と診断され、当該診断は、European Medical Genetics Quality Network standardsのもと、マルチプレックスライゲーション依存性プローブ増幅法により確認された。患者は、24ヵ月齢でメトレレプチン治療を開始し、その後の6ヶ月間にわたり、10kgの体重減少(37kgから27kg)で反応した。次いで、患者はすぐに体重増加が始まった。最近では、患者は入院を必要とする呼吸困難があるが、過度な肥満と、頻繁な感染の結果と推定される。医師は、メトレレプチン投与の1時間後のレプチン値を測定することにより、中和抗体を試験した。臨床検査から、レプチン値が0.1ng/mL未満であることが示され、患者はメトレレプチンに対する中和抗体を発生させたことが確認された。これらの所見は、患者の体重増加を説明し、メトレレプチンがもはやこの患者の状態の治療には有効な治療法ではないことを示す。
【0399】
H4H17319P2治療を使用して、先天性レプチン欠損症におけるLEPRシグナル伝達を回復させ、この状態の過食症、体重増加および代謝合併症を改善する。
【0400】
追加的な小児患者の登録/除外基準
患者は、この例外的使用プログラムにおける登録適格となるためには、以下の基準を満たさなければならない:
1.LEPの機能喪失性バリアントおよび/または遺伝子欠失の遺伝子診断が確定した先天性レプチン欠損症。
2.成人に対しては40kg/m以上のBMI、および子供に対しては年齢および性別に対する97パーセンタイルを超える体重として規定される重度の肥満。
3.レプチン値<1.0ng/mL
4.以下に規定される、メトレレプチンに対する中和抗体の証拠:
・ 治療担当医の判断において、メトレレプチンの有効性の消失であって、レプチン治療での体重増加に関する書面化された証拠を伴うもの。および
・ レプチン注射後1時間で、レプチン値<1.0ng/mL、またはメトレレプチンのメーカーであるAegerion社により実施される中和抗体活性アッセイがポジティブ。
【0401】
先天性レプチン欠損症の治療に関する進行中の臨床試験に適格である患者は除外される。
【0402】
用量選択
本明細書に記載される投与レジメンは、全体として忍容性良好であると予想される。H4H17319P2は、0.3~30mg/kg IVおよび300と600mg SCの単回投与として投与されたとき、健康な成人ボランティアで忍容性良好であった。30mg/kg IV投与で、1035mg/Lの最大血清濃度が観察された。これは治療過程で小児患者において観察されることが予測される最大値のほぼ2倍である。さらに、定常状態での1週間の投与間隔で予測される濃度-時間の曲線下面積(AUC)は、カニクイザルにおける3回の前臨床毒性試験から導かれた薬物動態モデルから推定される、定常状態で同じ投与間隔(無毒性量[NOAEL])でのAUCよりも少なくとも8倍低いことが予測される。
【0403】
100mg/L以上のH4H17319P2血清濃度を迅速に達成するために、5mg/kgの静脈内(IV)負荷投与量を選択した。このIV負荷投与量を含めることにより、H4H17319P2の最大血清濃度(Cmax)の即時の評価が可能となる。250mgのH4H17319P2の週に1回の皮下(SC)維持投与によって、100mg/L以上の血清中のトラフ濃度が維持される。このSC投与レジメンは、血清中の標的トラフ濃度を最良に維持するために、IV負荷投与量を投与した3日後に開始される。
【0404】
治療および評価スケジュール
小児患者に対する初期治療および評価計画を表20に概説する。治療および評価の推奨は、PKデータおよびPDデータが利用可能になったときに、更新され、医師に伝達される。計画は可能な限り厳密に遵守し、逸脱はすべて記載されなければならない。H4H17319P2の投与前、または以下の評価のいずれかを実施する前に、記入済みのインフォームドコンセントを取得しなければならない。1日目に5mg/kgの単回IV負荷投与が行われ、H4H17319P2は、250mgのQ7日(週に1回)のSCとして投与される。最初のSC投与は、4日目に投与される。
【0405】
H4H17319P2は、1時間にわたる点滴で、1日目にIVで1回投与される。H4H17319P2の静脈内投与は、特定タイプのIV点滴ポンプ(Alaris社、Gemini、PC-1、または類似物;Baxter社、Flo-Gard 6201または類似物;Hospira社、Lifecare 5000または類似物)およびIV点滴セット(Baxter社、製品コード2C6571または類似物;Alaris社、製品番号2430-0500または類似物;Alaris社、製品番号11532269または類似物;Hospira社、製品番号14255-28または類似物;Baxter社、製品コード2H6480または類似物;Hospira社、製品番号12336-05または類似物)を介して行わなければならない。インラインフィルターおよびIV点滴ポンプは、正確にわずか1mL/分で送達できるようにしなければならない。
【0406】
H4H17319P2薬物濃度および抗H4H17319P2抗体の測定、体重評価、代謝パラメータ評価、および試験スポンサーへのサンプル輸送のタイミングも、表20に提示される。患者のH4H17319P2値および体重測定値を使用して、25日目の用量レベルと投与頻度の推奨を更新し、H4H17319P2投与がこの患者において利益の兆候を示すかを確立する。抗体濃度の測定により、選択された用量および投与レジメンが最適であるか、および調整が必要かの評価が可能になる。薬剤濃度評価および抗薬剤抗体(ADA)評価のために収集された、未使用の血清サンプルを使用して、予想外の有害事象の調査を行ってもよく、および研究目的に使用してもよく、最大で15年間保存してもよい。
【0407】
患者の日常的および標準的な治療の一環として医師により取得される任意の他の疾患関連臨床パラメータは、安全性モニタリングの目的のために治験スポンサーに伝達されなければならない。これには、限定されないが、バイタルサインおよび臨床検査値(すなわち、肝臓酵素、血液、代謝パラメータを用いた血液化学検査など)が含まれる。そうした情報は、患者に対する次の投与に情報を与える可能性があり、H4H17319P2投与が利益または損害の兆候を示しているかの決定にも役立ち得る。
【0408】
アナフィラキシーまたは過敏症の事象がある場合、可能な限り、当該事象からすぐに追加の血清サンプルを収集しなければならない。予定外のサンプル収集の場合、追加のラベルが提供される。
【0409】
H4H17319P2のIV点滴後の注入反応、またはH4H17319P2の注射後の全身反応の治療のための緊急用設備および医薬品を、施設で利用可能な状態にしなければならない。H4H17319P2投与後の急性のIV注入反応または全身性注射反応は、臨床判断を行い、典型的な臨床診療に従って適切な応答を決定して治療されなければならない。治療担当医が認識する全ての安全性関連所見および有害事象は、可能な限り早く治験スポンサーに報告されなければならず、および例外的使用の基準上、本治験製品の使用に関与する任意の当局要件に厳密に従わなければならない。そうした有害事象としては、死亡をもたらす、生命を脅かす、患者の入院を必要とする、もしくは既存の入院期間を延長させる、持続的もしくは重大な身体障害/不能を生じさせる、先天性異常/出生異常である、または重要な医学的事象(例えば、アレルギー性気管支けいれんのために緊急治療室または自宅での集中的な治療;入院は必要がない造血機能障害もしくはけいれん;または薬物依存症もしくは薬物乱用の発症)である、任意の有害な医学的事件が挙げられる。
【0410】
(表20)治療、評価およびサンプル収集のスケジュール
† H4H17319P2の投与、および投与前血清の収集は、PKおよび体重のデータに関するスポンサーのレビューに基づく修正が推奨されない限り、週に1回継続する。
【0411】
IV点滴バッグにより投与される5mg/kg用量のH4H17319P2の調製
5mg/kg用量に対し、IVバッグに添加される再構成済みH4H17319P2の量を、以下の表21に列記する。
【0412】
(表21)5mg/kg用量に対し、100mLの生理食塩水含有IVバッグに添加される50mg/mLのH4H17319P2の量
IP=治験製品
【0413】
H4H17319P2の各バイアルは、注射用の4.9mLの滅菌水で再構成される。
【0414】
再構成された時点で、H4H17319P2の各バイアルは、4.8mLの引き出し体積を含有する。IV投与用に再構成された場合、H4H17319P2のバイアル中の濃度は、50mg/mLである。再構成の工程は以下の通りである。
1.必要とされる数の凍結乾燥H4H17319P2のバイアルを、0.9%塩化ナトリウムの100mL点滴バッグと共に取得する
2.硬く清浄な表面で作業しながら、H4H17319P2を調製する
3.キャップをバイアルから取り外し、アルコール綿でバイアルのトップ面を拭き取る。
4.投与に使用される各バイアルに対し、21ゲージ針と10.0mLのポリプロピレンシリンジを取得する。針からキャップを取り外すことなく、21ゲージの針を10.0mLのポリプロピレンシリンジに取り付ける。カバーをかぶせて、10.0mLのシリンジのプランジャーを5.5mLの印まで引き戻す。これは、シリンジ内に空気を引き込むためである。
5.21ゲージ針からキャップを取り外す。注射用滅菌水が入ったバイアルの上部ゴムに針を挿入する。プランジャーを押し下げて、すべての空気をバイアルに注入する。バイアルを一方の手で上下逆にして、針の先端が水に入っていることを確認する。注射用滅菌水を少なくとも5.5mL、シリンジ内に引き抜く。汚れた表面上に針を置かないこと。指で針に触れないこと。直接針に息を吹きかけないこと。
6.シリンジを反転させることにより、シリンジを上向かせ(針が上)、空気がシリンジから排出されるまでプランジャーを押し込む。少量の液体が出て、プランジャーが4.9mLに達するまで、プランジャーを押し込み続ける。
7.H4H17319P2バイアルを硬い表面に置き、針を上部に挿入する。注射用の4.9mLの滅菌水を薬剤バイアルに加え、水の流れをバイアルの側面および粉末薬剤内に向けさせる。
8.シリンジからバイアル内にすべての水を押し出した後に、バイアルから針を取り外す。針とシリンジを、鋭利品用容器に捨てる。
9.すべての粉末が溶解するまで、まっすぐ立った状態でバイアルを穏やかに攪拌させる。
10.バイアルを振らない。振ると、泡が生じる場合がある。
【0415】
H4H17319P2のIV投与
抗体投与の工程は以下の通りである:
1.適切なサイズポリプロピレンシリンジおよび21ゲージ針を使用して、表21に従い適切な量のH4H17319P2を引き出すための標準的な無菌技術を使用する。汚れた表面上に針を置かないこと。指で針に触れないこと。直接針に息を吹きかけないこと。
2.H4H17319P2溶液を100mLのIVバッグに添加する前に、IVバッグに添加されるH4H17319P2の体積と等しい体積の0.9%塩化ナトリウムをIVバッグから引き抜く。
3.適切な量のH4H17319P2をIVバッグに添加し、次いでIVバッグを10回反転させ、薬剤と0.9%塩化ナトリウムをしっかりと混合させる。
4.調製されたIVバッグは、施設により承認されたラベリング要件に従い、ラベリングされる。ラベルには以下が含まれなければならない:患者のイニシャル、調製日/時間、H4H17319P2の0.9%塩化ナトリウム溶液バッグ中のmg 1x1、点滴バッグの全内容物を静脈内点滴し、1プロトコール当たり1時間かけて流すことの指示書、日付/時刻、および治療担当医の名前。
5.H4H17319P2は、再構成から4時間以内に点滴されなければならない。
【0416】
H4H17319P2の皮下用調製と投与
H4H17319P2の各バイアルは、注射用の1.4mLの滅菌水で再構成される。再構成された時点で、各バイアルは、1.2mLの引き出し体積を含有する。SC投与用に再構成された場合、H4H17319P2の濃度は、150mg/mLである。投与には、二つのH4H17319P2のバイアルが必要となる。
1.硬く清浄な表面で作業しながら、H4H17319P2を調製する
2.キャップをバイアルから取り外し、アルコール綿でバイアルのトップ面を拭き取る。
3.針からキャップを取り外すことなく、21ゲージの針を3.0mLのポリプロピレンシリンジに取り付ける。カバーをかぶせて、シリンジのプランジャーを2.0mLの印まで引き戻し、シリンジ内に空気を引き込む。21ゲージ針からキャップを取り外す。注射用滅菌水が入ったバイアルの上部ゴムに針を挿入する。プランジャーを押し下げて、すべての空気をバイアルに注入する。バイアルを一方の手で上下逆にして、針の先端が水に入っていることを確認する。注射用滅菌水を最低で2.0mL、シリンジ内に引き抜く。汚れた表面上に針を置かないこと。指で針に触れないこと。直接針に息を吹きかけないこと。
4.シリンジを反転させることにより、シリンジを上向かせ(針が上)、空気がシリンジから排出されるまでプランジャーを押し込む。少量の液体が出て、プランジャーが1.4mLの印に達するまで、プランジャーを押し込み続ける。
5.H4H17319P2バイアルを硬い表面に置き、針を上部に挿入する。注射用の1.4mLの滅菌水をH4H17319P2バイアルに加え、水の流れをバイアルの側面および粉末薬剤内に向けさせる。
6.シリンジからバイアル内にすべての水を押し出した後に、バイアルから針を取り外す。針とシリンジを、鋭利品用容器に捨てる。
7.すべての粉末が溶解するまで、まっすぐ立った状態でバイアルを穏やかに攪拌させる。
8.バイアルを振らない。振ると、泡が生じる場合がある。
【0417】
250mg用量のH4H17319P2のSC投与
この用量は、2回のH4H17319P2の注射を必要とする。1回の注射は、0.67mLのSC注射で、もう1回は、1.0mLのSC注射である。
1.1.0mLのポリプロピレンプラスチックシリンジと3.0mLのポリプロピレンシリンジを取得し、各シリンジに21ゲージ針を取り付ける。
2.凍結乾燥されたH4H17319P2を2バイアル取得する。
3.上述のように、凍結乾燥されたH4H17319P2の各バイアルを、注射用滅菌水1.4mLを用いて再構成する。
4.針カバーをかぶせて、1.0mLのポリプロピレンシリンジのプランジャーを1.0mLの印まで引き戻し、シリンジ内に空気を引き込む。
5.針キャップを取り外し、針をバイアルの上部ゴムに挿入する。
6.プランジャーを押し下げて、すべての空気をバイアルに注入する。
7.針をバイアル内に維持しながら、バイアルを一方の手で上下逆にして、針の先端が液体に入っていることを確認する。もう一方の手を使用してプランジャーを引き、最小で1.0mLの薬剤をシリンジ内に引き抜く。キャップを針の上に戻す。キャップがされた針を取り外し、鋭利品用容器に入れる。
8.針のカバーを外さずに、最小で1.0mLの薬剤が入った1.0mLのポリプロピレンシリンジに、27ゲージ、0.5インチの針を取り付ける。
9.針のキャップを取り外し、薬剤とともに27ゲージ、0.5インチの針を上向かせる。キャップを針の上に戻す。
10.準備されたSCシリンジは、0.67mL=100mg/0.67mLである。
11.準備されたSCシリンジは、施設の標準的な操作手順による要件に従いラベリングされる。
12.針カバーをかぶせて、3.0mLのポリプロピレンシリンジのプランジャーを1.5mLの印まで引き戻し、シリンジ内に空気を引き込む。
13.針キャップを取り外し、針をバイアルの上部ゴムに挿入する。
14.プランジャーを押し下げて、すべての空気をバイアルに注入する。
15.針をバイアル内に維持しながら、バイアルを一方の手で上下逆にして、針の先端が液体に入っていることを確認する。もう一方の手を使用してプランジャーを引き、最小で1.2mLの薬剤をシリンジ内に引き抜く。キャップを針の上に戻す。キャップがされた針を取り外し、鋭利品用容器に入れる。
16.針のカバーを外さずに、最小で1.2mLの薬剤が入った1.0mLのポリプロピレンシリンジに、27ゲージ、0.5インチの針を取り付ける。
17.針のキャップを取り外し、薬剤とともに27ゲージ、0.5インチの針を上向かせる。キャップを針の上に戻す。
18.準備されたSCシリンジは、1.0mL=150mg/1.0mLである。
19.準備されたSCシリンジは、施設の標準的な操作手順による要件に従いラベリングされる。
20.H4H17319P2は、再構成から4時間以内に送達されなければならない。
【0418】
H4H17319P2の永続的な中断
H4H17319P2の投与は、以下の事象があったときに永続的に中止されることが推奨される。
・ H4H17319P2に関連したとみなされる重篤または重度のアレルギー反応
・ 特定のタイプの肝臓機能障害(例えば、Hy’s lawを満たす([Guidance for Industry Drug Induced Liver Injury:Premarketing Clinical Evaluation FDA 2009])。
・ 妊娠の証拠
・ 患者/法的代表者が、同意を撤回する
・ スポンサーによりH4H17319P2の最適な用量および最適な投与レジメンとみなされる期間(治療担当医とスポンサーにより検討される)の後に患者が臨床的利益(すなわち体重減少)を示さない。
【0419】
一時的なH4H17319P2の中断
H4H17319P2の投与は、以下の事象の場合に一時的に中断することが推奨される。
・ 好中球数が、1.0×10/μL以下
・ 長期的に、ALT/AST値が正常上限(ULN)の3倍よりも高く、そして総ビリルビンが、ULNの2倍を超える、または単離AST/ALTがULNの5倍を超える。
・ 外科手術
・ 入院
【0420】
H4H17319P2の一時的中断につながる状態が解消された後、H4H17319P2の投与を再開してもよい。H4H17319P2の一時的な中断、および/またはH4H17319P2の投与再開の決定は、スポンサー代表者と検討しなければならない。
治療担当医はいつでもH4H17319P2投与を一時的に中断してもよく、状況の切迫性が即時の行動を必要とする場合、および患者の最善の利益であると決定される場合には、スポンサー代表者との協議さえなく、一時的に中断してもよい。ただし、スポンサー代表者に、可能な限り早く連絡を取らなければならない。H4H17319P2投与の再開は、治療担当医とスポンサー代表者の間で検討し、合意されなければならない。
【0421】
要約すると、H4H17319P2は、先天性レプチン欠損症を有する患者においてLEPRシグナル伝達を回復させ、当該患者において、この状態の過食症、体重増加および/もしくは代謝合併症を改善または逆転させる。
【0422】
実施例22:小児患者における部分型リポジストロフィーの治療に対する抗LEPR抗体の臨床使用
11歳で、女性患者は、肝脾腫大症と高トリグリセリド(>500mg/dL)ならびに四肢に脂肪の欠如を呈した。彼女は抗GAD(グルタミン酸デカルボキシラーゼ)抗体を有していることが判明し、市販のLMNA遺伝子解析が陰性であった。リポジストロフィーに関連した肝疾患の治療におけるメトレレプチンの有効性を評価する試験のための評価を行う際にさらなる特徴が特定され、手の拘縮、脊柱側彎症および副腎皮質兆候発現の欠落といった非定型の特徴が含まれた。彼女の基準時のレプチン値は、3.2ng/dLであった。
【0423】
メトレレプチン治療は臨床研究プロトコール(ClinicalTrials.gov Identifier:NCT01679197)の一環として13歳で開始され、高トリグリセリドおよび重度の肝臓脂肪症が治療された。彼女は重篤な有害事象が発生することなく、12カ月間、メトレレプチンを継続させた。彼女の代謝パラメータはメトレレプチン後にわずかな改善を示したが、彼女の肝生検は改善を示していた。彼女は別の治験プロトコール(ClinicalTrials.gov Identifier:NCT02654977)の一環としてメトレレプチンを継続した。しかし治療の17か月目の間に、患者は倦怠感、喉の渇き、目のかすみ、そして多飲症を報告し、1カ月で5ポンド(約2.3キロ)減少した。臨床検査結果は、アニオンギャップ陽性およびケトン陽性を伴い、著しい高血糖症と高脂血症を示した。抗GAD65(グルタミン酸デカルボキシラーゼの65kDaアイソフォーム)値は、5.39nmol/L(2カ月後に反復したところ、抗GAD65:8.38nmol/L)であり、レプチン値は注射後1時間で下降し、検出不可能となった。中和活性を有するメトレレプチン抗体の存在が最終的に確認された。このレプチン値の低さは、継続中のメトレレプチン治療に対する抗メトレレプチン抗体形成を伴う免疫原性の交差反応、脂肪組織の継続的な消失の可能性、またはレプチン産生を抑制する機序の結果である可能性が高かった。
【0424】
メトレレプチンならびに内因性レプチンに対する中和活性は、約6カ月後に陽性と確認された。この間に、グルコースおよび脂質の制御は大幅に悪化し、トリグリセリドは一貫して>2,000mg/dLであった。彼女は、基礎+ボーラスレジメンを含む高用量のインスリン療法を維持しており、インスリンポンプに移行した。彼女は、メトホルミンも開始させた。糖尿病性ケトアシドーシス、膵炎、または膵炎の予防のために複数回の入院を必要とした。
【0425】
次いで患者はフェノフィブラートを開始し、その後、脂質管理の悪化(トリグリセリド>2,000mg/dL)によってピオグリタゾンを開始させた。メトレレプチンの使用中止の1カ月後、LFTは、正常よりも10倍高くまで大幅に上昇した。肝生検は、門脈と門脈周辺の斑状炎症を示し、プラズマ細胞と境界面の損傷が含まれ、自己免疫性の肝炎と一致していた。自己免疫性肝炎を管理するために、彼女は、3カ月間プレドニゾンで治療され、肝機能の異常が解消された。プレドニゾンの中断中、および中断後の両方で、糖尿病性ケトアシドーシスと関連付けられた高トリグリセリド血症(8,000mg/dLに達する)が原因で、患者は複数回の急性膵炎の症状を患った。上記の代謝合併症または膵炎によって、患者は定期的に入院した。
【0426】
患者は、1mg/日でセトメラノチド(setmelanotide)(ClinicalTrials.gov Identifier:NCT03262610)を開始し、用量は、トリグリセリドが500mg/dl未満に低下するまで漸増された。セトメラノチドはこの患者に体重減少をもたらさなかった。空腹スケールにわずかな減少があったが、効果は安定的ではなかった。治療は、糖制御と高トリグリセリド血症を改善できなかった。1日の総インスリン用量のわずかな減少は、HbA1c値が高いままであったため、臨床的に意義があるとはみなされなかった。セトメラノチドは、内臓脂肪をわずかに減少させたが、肝臓脂肪含量に対する効果は示さなかった。
【0427】
この患者の高いトリグリセリド値(>500mg/dL、および>2,000mg/dLに達する)は、膵炎再発を予防するために血漿交換療法を必要とする。彼女は、インスリンアスパルト、インスリングラルギンおよびメトホルミンに加えて、1日10mgのエンパグリフロジンでも治療される。
【0428】
理由:
この臨床試験プロトコールの目的は、治験薬(IP)のH4H17319P2を、必要な適格性基準を満たし、および以下に概要される以下の基準を満たしている患者に提供することである。
・ 患者は、重篤または生命を脅かす疾患を有しており、そのために拡張アクセスプロトコールが許可される。
・ 提唱される薬剤の作用機序に基づいて、臨床的に意義のある利益が予想され得る有効性の充分な証拠。
・ 当該疾患または状態を治療するための同等の、または充分な代替療法がない。
・ この患者にH4H17319P2を投与することによって生じる不合理なリスクがあることを示唆する、この特定の患者に固有のものはない。
【0429】
中和活性を有する抗メトレレプチン抗体が、メトレレプチンで治療された全身型リポジストロフィーの患者において特定されている。これらの中和抗体の因果関係はあまり解析されていないが、内因性レプチン作用の阻害および/またはメタリプチンの有効性消失を含み得る(Chan,et al.Immunogenicity associated with Metreleptin treatment in patients with obesity or lipodystrophy.Clin Endocrinol.2016;85(1):137-149)。重度の感染症および/または代謝管理の悪化が報告されている。進行性の代謝の悪化、ならびに1型糖尿病の発症が、抗メトレレプチン中和抗体の発生と同時にこの患者に記録され、これらは持続している。疾患が自然に進行したのか、または抗体の出現がなんらかの役割を果たしたのかは不明である。いずれにしても、患者のリポジストロフィーは適切に治療することができない。
【0430】
この個別患者の拡張アクセスプロトコールの目的は、再発性の膵炎発作をもたらす難治性高トリグリセリド血症を含む、この患者のリポジストロフィーに起因する重度の代謝合併症の治療に使える可能性があるとしてH4H17319P2を提供することである。さらに、この患者におけるH4H17319P2の安全性および有効性が評価される。治療期間はこの1人の患者における反応性の程度に基づく。この患者は、高トリグリセリド血症と再発性膵炎を伴う重篤な悪性のリポジストロフィー患者であり、H4H17319P2が治療利益をもたらし、この重度の代謝異常を改善し得るかを評価する目的がある。
【0431】
主要エンドポイント
・ 空腹時トリグリセリドにおける、基準時から24週目までの変化率
・ 24週目で継続的な血漿交換を必要とすることなく、<500mg/dLの空腹時トリグリセリドを実現。
・ 治療下で発生した有害事象
【0432】
副次的エンドポイント:
・ 空腹時トリグリセリドにおける、基準時から12週目までの変化率
・ 12週目で継続的な血漿交換を必要とすることなく、<500mg/dLの空腹時トリグリセリドを実現。
・ 経時的な空腹スコアにおける基準からの変化
・ 経時的な空腹時グルコースおよび糖化ヘモグロビン(HbA1c)における基準からの変化
・ 経時的な膵炎による入院の発生
・ 経時的な平均インスリン要求用量における基準からの変化
・ 経時的な空腹時総コレステロール、HDL-C、LDL-CおよびVLDL-Cを含む、他の空腹時の脂質パラメータにおける基準からの変化
・ 可能であれば、この患者における経時的なDEXAおよび肝脂肪パラメータにおける基準からの変化率
・ 経時的な血清中の総H4H17319P2濃度
・ 経時的なH4H17319P2に対する抗薬剤抗体(ADA)の存在
【0433】
プロトコール設計
プロトコールは、2週間のスクリーニング期間と、3つの非盲検治療期間を含む:治療期間1(第1~12週目)、治療期間2(第13-24週目)、および治療延長期間(第25~52週目)。スクリーニング期間中、患者は、適格性に関して評価され、少なくとも3つの別の日に空腹質問票を完了させて、H4H17319P2を用いた治療を行う前にリポジストロフィーに関連する、および脂肪組織の不存在または欠落に起因する内因性レプチンの不存在または欠損に関連する空腹症状の理解を強化することを指示される。この状態が稀である場合、スクリーニング中に空腹スコアを獲得することで、重要な患者固有の詳細の収集が可能となり、この障害における空腹症状のより良い理解が可能となる。
【0434】
治療期間1の間、患者は、H4H17319P2の初期投与レジメンを受ける。治療期間1の終了時(12週目)、有効性の評価(TG低下)とH4H17319P2薬物レベル(PK)の評価が実施され、治療期間2のH4H17319P2投与レジメンが決定される。治療期間2の用量レベルおよび投与頻度は、治療期間1の値を超えない。24週目で、有効性(TG 低下)とH4H17319P2薬物レベル(PK)の評価が実施され、治療延長期間に継続させる患者の適格性が決定される。
【0435】
したがって、この患者は、図19に示されるように逐次プロトコールを経て進行する。
【0436】
空腹時トリグリセリド(TG)値および血漿交換の要求は、治療効果が達成されたかを評価するために使用される主要基準である。この患者が、24週目まで<500mg/dLの空腹時TG値という必要とされる治療標的反応を呈さない場合、彼女はこのプロトコールから脱落する。
【0437】
高トリグリセリド血症の同時管理については、この患者は、治療担当医の判断において必要に応じて血漿交換治療を継続する資格を有する。H4H17319P2治療に対する治療応答が達成されたかを判断する空腹時TG値は、最も直近の血漿交換治療の少なくとも1週間後の時点で測定されなければならない。
【0438】
用量選択
実施例15~19に記載された前臨床試験において、PD効果は広範な範囲のH4H17319P2暴露と関連しており、一方で、効果の持続性は、H4H17319P2の標的介在クリアランス(TMC:target-mediated clearance)が飽和した投与条件下で観察された。リポジストロフィーのマウスモデル(上述)において、H4H17319P2の単回投与によって、グルコース濃度の正常化と体重の減少がもたらされた。これらの効果は、H4H17319P2の血清中濃度が4mg/Lを超えるときに明らかであったが、特にTMC経路を飽和させた濃度で、さらに持続的であった。上述のサルの試験において、30mg/Lを超える定常状態濃度で、持続的体重の効果(体重減少、または対照動物と比較した体重増加の低下)が観察された。しかしH4H17319P2の濃度が、サルにおいてTMCを飽和させるために必要とされる濃度である100mg/Lを超えたときに、全体的にさらに高い効果がみられた。レプチン結合受容体は広く発現されているが、標的(シグナル伝達)受容体は、中枢神経系に限定されていることを考慮すると、前臨床PK/PDデータは、末梢LEPRへの結合に関連するTMCを飽和させて、脳において適切な暴露を実現させることの必要性を反映していると予測される。さらに、TMCを飽和させるために必要な濃度、および持続的なPD効果をもたらすために必要な濃度における種間の差異は、末梢標的量における差異の結果であり得る。
【0439】
実施例20に記載されるヒト臨床研究では、TMC経路の飽和は、濃度対時間プロファイルに基づき、100mg/Lを超える血清濃度で明白であった。このFIH試験のデータを利用して集団PKモデルを確立した。このモデルは健康なボランティアに単回投与として投与したときのH4H17319P2の関連薬物動態特性を捕捉するものである。このモデルを採用して、異なる投与レジメンの下で予想される濃度プロファイルをシミュレートした。健康なボランティアにおいて観察されたH4H17319P2のPK特性が、この患者に適するという仮定を用いた。
【0440】
H4H17319P2は、滅菌済みの単回使用での20mLのガラスバイアル中、IV投与用またはSC投与用のいずれかで凍結乾燥粉末として供給される。各バイアルは265mgのH4H17319P2を含有し、IV投与およびSC投与のために、注射用滅菌水で再構成される。
【0441】
100mg/L以上のH4H17319P2血清濃度を迅速に達成するために、5mg/kgの静脈内(IV)負荷投与量を選択した。このIV負荷投与量を含めることにより、H4H17319P2の最大血清濃度(Cmax)の即時の評価も可能となる。300mgのH4H17319P2の週に1回の皮下(SC)維持投与によって、100mg/L以上の血清中のトラフ濃度が維持されることが予測される。このSC投与レジメンはIV負荷投与量を投与した4日後に開始され、血清中の標的トラフ濃度を最良に維持することが予測される。患者が臨床的に必要な血漿交換法を受けた日は、H4H17319P2の投与は、血漿交換が完了した後に行わなければならない。
【0442】
健康な対象56人における、進行中の二部試験の一部のデータに基づき(実施例20)、記載される投与レジメンは、全体的に忍容性良好であることが予想される。H4H17319P2は、0.3~30mg/kg IVならびに300および600mg SCの単回投与として投与された実施例20において、健康な成人ボランティアで忍容性良好であった。1035mg/Lの血清最大濃度が、30mg/kg IV投与で観察された。これは、治験の過程でこの患者において達成されると予測される最大暴露の6倍超である。さらに、定常状態での1週間の投与間隔で予測される濃度-時間の曲線下面積(AUC)は、カニクイザルにおける3回の前臨床毒性試験から導かれた薬物動態モデルから推定される、定常状態で同じ投与間隔(無毒性量[NOAEL])でのAUCよりもほぼ27倍低いことが予測される。
【0443】
5mg/kg IV負荷量の初回投与と、300mg SCで週1回の維持投与は、忍容性であることが予測され、末梢受容体を飽和させるH4H17319P2の血清濃度を迅速に達成し、持続的な薬物動態効果を提供するために選択された。より低い用量レベル、またはより少ない頻度の投与が、同じくらい有効である可能性もある。したがって、用量レベルと投与頻度は、予定された有効性および薬剤レベルの中間評価後に下向きに調整されてもよい。加えて、血漿交換によって循環中からH4H17319P2を含む抗体が取り除かれ得るため、血漿交換の後に投与量を調整し、有効なH4H17319P2レベルを確保することが必要となる場合がある。患者が血漿交換を受けた日は、追加の300mgのH4H17319P2の投与が、標的薬剤濃度の達成に必要となる場合がある。通常の最大用量(血漿交換により変化する可能性は考慮しない)は、週に1回、300mg SCを超えてはならない。
【0444】
有効性および薬剤レベルの評価
有効性と薬剤レベルの中間評価は、プロトコールの12週後および24週後に実施され、選択された投薬レジメンが、予測した薬剤レベル、PKプロファイル、および脂質パラメータに対する効果を達成したかを評価する。用量レベルと投与頻度は、有効性および薬剤レベルの評価後に必要に応じて調整されてもよい。
【0445】
データレビュー委員会は、(1)経験豊富なリポジストロフィーの専門家、(2)患者の小児集中治療室の医師、(3)彼女の治療に関与する超専門医の1人(小児GIまたは肝臓病学のいずれか)、および(4)前臨床試験および臨床試験における、H4H17319P2の暴露-反応の関連性に精通したスポンサーの代表者、を含む。
【0446】
患者の参加期間
合計プロトコール期間は、スクリーニング期間を含めて、およそ54週間と予想される。このプロトコールにおける患者の参加は、以下の期間からなる:スクリーニング期間、治療期間1[12週間となる予定]、治療期間2[12週間となる予定]、次いで患者が的確であれば、長期の治療延長期間[28週間]。安全性と忍容性が良好で実質的な代謝改善が治療延長期間に実証された場合、患者には、継続治療を可能とするための将来的な別個の延長プロトコールに登録する機会が与えられることが見込まれる。この将来的な延長プロトコールは、このプロトコールの期間を超えて患者を行う前に、適用される規制当局に提出され、承認される。
【0447】
治験の終了は、最後の患者の最後に来院したときと規定される。患者は、いつでも理由を問わず、影響を受けることなく、このプロトコールから離脱する権利を有する。治験責任医師も、臨床上の安全性に関する懸念または有効性の欠如により、いつでも当該患者を離脱させることができる。
【0448】
プロトコールの中断
第一治験責任医師またはスポンサーの意見において、充分に合理的な原因がある場合には、時期を早めて本プロトコールの実施が終了する場合がある。終了させる当事者は、治験責任医師またはスポンサーのいずれかに対し、プロトコールの終了の理由を書面化して通知する。
【0449】
終了の正当な理由となる状況としては以下が挙げられるが、これらに限定されない。
・ 患者に対する予想外、重大、または許容できないリスクの判定
・ プロトコール要件の遵守が不充分
・ 完了データおよび/または評価可能なデータが不充分
・ 妊娠の証拠
・ 薬剤に関連したとみなされる重篤または重度のアレルギー反応
・ 例えばウイルス性のA型肝炎、B型肝炎、またはC型肝炎;既存または急性の肝疾患;または観察された損傷をもたらし得る別の薬剤など、説明できる他の理由が見つからない重度の肝損傷または機能障害 この患者の肝臓の損傷は、平均基準値の3倍を超えるALTまたはAST、および基準値の2倍を超える総ビリルビン(または国際標準比(INR:international normalized ratio)>1.5)と規定される。
・ 患者が、同意を取り下げる
・ 薬剤開発を修正、延期、または中止する計画
・ 12週目のデータレビューで、充分な利益が観察されないというデータレビュー委員会の意見
・ 24週目のデータレビューで、血漿交換管理を伴うことなく、一定して<500mg/dLの空腹時TG値を患者が維持することができないというデータレビュー委員会の意見
【0450】
データレビュー委員会の全会一致の意見が、血漿交換管理を伴うことなく、一定して<500mg/dLのTG値を患者が維持することはできないが、顕著な臨床上の利益を受けている、という意見の場合には、治療ビジットの52週目の終了まで投与を継続してもよい。
【0451】
治療コンプライアンスの評価
薬剤の安全性、忍容性、および薬物動態を評価するために、患者が指示したとおりにH4H17319P2を投与されることが重要である。全ての使用されたH4H17319P2は、プロトコール順守を評価するために収集される。
【0452】
最初の2つのプロトコール期間(初回投与期間、および非盲検積極的治療期間)の間、H4H17319P2は、経験豊富な医療提供者によって患者に投与される。非盲検延長期間の間、H4H17319P2は、臨床施設で投与されてもよく、またはそれぞれ患者により自己投与/指定人物により投与されてもよい。患者が、H4H17319P2の自己投与を選択するか、または指定人物によるH4H17319P2投与を選択する場合、資格を有する臨床施設の人物によりH4H17319P2投与のトレーニングを実施しなければならず、および最初の自己投与は、同人物により観察されなければならない。さらに、自己投与の開始前、または例えば親もしくは介護者などの指定人物による投与の開始前に、患者/指定人物に対し、薬剤投与日誌が提供される。日誌は、薬剤を投与するごとに完了させなければならない。患者および/または彼女の介護者は、コンプライアンスを監視するために日誌を維持することが要求される。さらに投与時間が患者日誌に記録される。患者が薬剤の全投与量を投与されていない場合、投与された量が記録される。投与量を調整した理由を、原本およびCRFに記録しなければならない。
【0453】
さらに、SOAに従い血液サンプルを収集して、血清中のH4H17319P2のトラフ濃度および抗H4H17319P2抗体を測定する。
【0454】
過去の、および併用される治療ならびに手順/許可される医薬品
併用薬が潜在的で強力な安全性上の懸念をもたらす可能性が高い場合を除き、このプロトコールの全体的な目的は、この希少な状態にある患者が、本プロトコールに参加できるようにすることである。したがって患者は、慢性的な併用薬(例えば以下に記載される)の使用を許可されながら、本プロトコールに参加することができる。併用薬としては以下が挙げられる:
・ 1型糖尿病を治療するためのインスリン製剤;
・ インスリン抵抗性を治療するためのメトホルミン;
・ 欠損症を治療するためのビタミンD;
・ チロキシンまたは他の甲状腺サプリメント;
・ LD患者に普遍的に使用される他の医薬品としては以下が挙げられる:内分泌治療(例えばビタミンおよびカルシウムサプリメント);および他の医薬品(例えばカルニチン、コエンザイムQ10、ビタミン、便秘防止薬、抗アレルギー薬);
・ 疼痛コントロールに対し、必要とされる麻酔薬もしくはケタミン/リドカインの点滴、パッチまたは錠剤を併用するニューロンチン;
・ 気分高揚のためのイフェクサー;
・ 低閾値薬剤(すなわち、抗痙攣剤、ジゴキシン、クマディンなど)を除き、継続投与されており、治療担当医により必須であると見なされる場合には、他の医薬品が許可される場合がある
・ 患者の治療担当医の決定により、血漿交換を継続してもよい
【0455】
上述の治療と、H4H17319P2の相互作用に関するデータは現在のところ存在しない。患者と彼女の介護者は、患者が受けるいずれか医薬品で発生する可能性がある、薬剤相互作用による副作用の可能性について警告を受けなければならない。
【0456】
この患者は、プロトコール期間中に任意の他の医薬品を摂取しなければならなくなった場合には、スクリーニングビジットから最後のプロトコールビジットの間の各ビジット時に彼女は直ちにプロトコール担当者に情報を与えなければならないこと、およびその特定医薬品と適応症について、治験責任医師と検討しなければならないことを再認識される。本プロトコールの過程で摂取されるすべての併用薬は、原本に記録されなければならない。
【0457】
禁忌の医薬品および物質および併用手順
治療担当医により必須であるとみなされない限り、プロトコール期間の有効性評価に影響を与え得る医薬品は禁止される。例えば、新たな脂質降下治療の追加、または新たな糖尿病薬の任意の追加などが禁止される。
【0458】
食欲抑制剤、または非常に稀な副作用として食欲不振を伴う剤は、本プロトコールの期間、禁止される。
【0459】
血漿交換および有害事象を治療するために使用される他の治療をはじめとする、本プロトコールの期間中に実施される併用手順は、CRFに記録されるものとする。
【0460】
評価とスケジュール
本プロトコール中に実施される評価スケジュール(SOA:Schedule of Assessment)を図20(A-B)に示す。
【0461】
この1人の患者のプロトコールで必要な手順および評価は、18歳未満の子供の参加者における疼痛と不安の軽減に対する配慮が含まれる2008年の指針書「Ethical Considerations for Clinical Trials on Medicinal Products Conducted with the Paediatric Population」に準拠する「リスク無しまたは最小リスク」(「最小リスクを上回るわずかなリスク増加」に分類され得るDEXAを除く)に分類される。
【0462】
インフォームドコンセントを提供することで、患者はスクリーニング期間に入る。スクリーニング期間中、患者は、適格性に関して評価され、少なくとも3つの別の日に空腹質問票を完了させて、H4H17319P2を用いた治療を行う前に、リポジストロフィーに関連する空腹感の理解を強化することを指示される。スクリーニング中、必要に応じて、新たな医療チャートレビューを含む、任意の追加的な既往歴を取得することも重要である。
【0463】
この患者に関するデモグラフィックデータを含む、追加の既往歴は、スクリーニング期間中に取得される。原本およびCRFに記録されるデータには、患者の性別、人種、誕生日、および併用薬の使用が含まれる。
【0464】
最近の既往歴は、1日目の薬剤の最初の投与の前に取得され、継続されたプロトコールの適格性と、最終の登録/除外基準の順守が評価される。この最近の既往歴には、スクリーニング時からの変化に関するレビュー、ならびに患者の最近の医薬品の使用に関するレビューが含まれ、過去のビジットから何等かの変化が発生しているか、否かが評価される。
【0465】
末梢リンパ節、頭部、眼(結膜を含む)、耳、鼻、口および中咽頭、首、心臓、肺、腹部、背部を含む骨格筋、四肢および神経系を含む完全な身体検査が実施される。この患者はTannerのステージVに到達していないため、Tanner病期診断でも評価される。この評価は、SOAに従い実施される。
【0466】
治験責任医師により臨床的に重大と特定されたすべての身体検査所見における基準からの変化は、適切なCRFにAEとして記録されなければならない。
【0467】
身長(cm)は、壁に取り付けられたスタジオメーターを使用して、SOAに従い、靴を脱いで測定される。
【0468】
併用薬のレビューは、スクリーニング期間中、および各プロトコールビジット時に行われる。患者により摂取された薬剤はすべて原本に記録される。
【0469】
治験責任医師は、併用される抗糖尿病薬および脂質医薬品の用量は、インスリン抵抗性および高トリグリセリド血症が改善されるにつれ、治療開始時に調整の必要があり得ることを認識する。患者は、併用薬の調整期間中、注意深くモニタリングされる。低血糖症を回避するために、週に1回の頻度でインスリン用量が下方修正される必要が(高用量インスリンで治療されている患者については特に)あり得るため、治療の最初の数週間、インスリン治療中の患者は緊密にモニタリングされなければならない。同様に、高トリグリセリド血症のために脂質治療中であり、血漿交換の必要があるとみなされる患者の治療中、各追跡ビジットで、治験責任医師は、脂質医薬品の用量調整の必要性について評価しなければならない。何らかの理由で薬剤治療が中断された場合、併用薬のさらなる調整が必要とされる場合がある。例えば、膵炎の潜在的リスクを軽減させるための脂質降下薬が必要とされ得る。
【0470】
バイタルサインは、SOAに従い、測定される度に少なくとも5分間の休息の後に座位で取得される。血圧(BP;mmHg)および心拍数(HR;bpm)は、プロトコール全体を通じて、同じ技法を使用して実施される(手動または自動)。すべてのBPおよびHRの測定値は、少なくとも5分間の休息の後に座位で取得されるものとする。すべての測定値は、およそ2分間おいて、三重で取得される。可能であれば、プロトコール全体を通じて同じ技法(自動または手動)を使用して、利き手ではない腕でBPが取得される。BPまたはHRの大幅な増加に対しては、反復測定およびより頻繁なモニタリングを実施することができる。
【0471】
トラフ血圧測定を行うために、患者は、クリニックでバイタルサインが測定されるプロトコール日にはプロトコール医薬品を摂取しないように指示されるものとするが、クリニックで当該医薬品を摂取する。これは、治療期間1のビジット中には特に重要である。治療期間1のビジットでは、SOAに従い、クリニックでの投与後期間の経過中、より集中的に血圧が測定される。
【0472】
体温(℃)と呼吸数(呼吸/分)は、少なくとも5分間の休息後に座位で取得される。
【0473】
仰臥位で少なくとも10分間の休息期間の後に、単一12誘導心電図が実施される。
【0474】
臨床安全性に関する臨床検査は、現地の検査室で実施されるものとし、患者は、8時間、絶食するものとする。安全性に関する臨床検査は、投与前に結果が出るものとする。
【0475】
臨床的に重大な臨床検査の全ての異常は、反復検査により追跡され、治験責任医師の判断に従ってさらに調査される。
【0476】
肝機能試験の異常は、FDAガイダンス(2009)に従って評価される。血液および臨床化学サンプルは、空腹状態で採取される。血小板数を含む完全血球数および標準的指標が取得される。
・ 化学的検査:ナトリウム、カリウム、塩化物、CO、アルブミン、総タンパク質、グルコース、血中尿素窒素(BUN)、クレアチニン、尿酸、アスパラギン酸アミノトランスフェラーゼ(AST)、アラニンアミノトランスフェラーゼ(ALT)、ガンマ-グルタミルトランスペプチダーゼ(GGT)、クレアチンホスホキナーゼ(CPK)、アルカリホスファターゼ、総ビリルビン、直接ビリルビン、乳酸デヒドロゲナーゼ(LDH)、カルシウムおよびリン。
・ 尿検査:尿試験紙検査または尿検査機械による、pH、グルコース、タンパク質、ケトン、ビリルビン、血液、ウロビリノーゲン、比重、亜硝酸塩、および白血球。尿の顕微鏡検査は、尿試験紙で陽性の所見により、さらなる検査が必要とされる場合に実施される。
・ 凝固プロファイル:プロトロンビン時間(PT)または国際標準比(INR)、および活性部分トロンボプラスチン時間(aPTT)とも呼称される部分トロンボプラスチン時間(PTT)。
【0477】
プロトコール期間中、注射部位は注意深く検査され、評価され、およびスコア化される。注射部位の評価には、紅斑、浮腫および硬結の領域の特定ならびに測定、ならびに局所的な疼痛、圧痛、および痒みの存在の特定ならびに測定が含まれる。
【0478】
予定外の評価も、臨床状態により必要な場合には記録され得る。
【0479】
抗薬剤抗体(ADA)測定
抗薬剤抗体の測定用の血液サンプルは、投与前、およびその後にSOAで特定される時点で採取される。この患者がADA陽性を示す場合、解消されるまで追跡される。
【0480】
患者質問票
患者質問票は、慎重な訓練を行った後に、患者および/または介護者により回答される。
【0481】
空腹スコア
空腹は、SOAに従う特定のプロトコールビジット時に依頼される、3パートの質問票、ならびに2つの包括的質問のセットを使用して評価される。空腹は、0~10の範囲の数値評定スコアを使用して評価される;0 = 全く空腹ではない、10 = 起こり得る限り最も空腹。すべての毎日の空腹質問票のスコアは、Likert様スケールに基づき、患者に自身の空腹をスコア化するよう依頼することにより評価される。当該スケールでは、0は全く空腹ではなく、10は、起こり得る限り最も空腹である。空腹質問票のスコアは、患者の朝食前に毎日記録される。空腹質問票は、スクリーニング中の3つの別個の日に、およびクリニックビジットで午前中の投与前に、完了されなければならない。患者は、朝食前(空腹時)に空腹スコアを記録する。包括的空腹質問票:二つの包括的質問は、評価スケジュールに従って、特定のプロトコールビジット時に尋ねられる。
【0482】
SF-36 健康質問票
SF-36は、36個の質問のみを含む、多目的の略式健康調査である。これは、機能的健康と満足できる生活状態のスコアならびに心理学を基にした肉体的および精神的な健康に関する集約尺度の8スケールプロファイルと、選択を基にした健康効用指数を生じさせる。特定の年齢、疾患、または治療群を標的とする尺度とは対照的な、包括的尺度である。したがって、SF-36は、疾患の相対的負荷量を比較する、一般集団と特定集団の調査に有用であることが証明されており、および広範な様々な治療によりもたらされる健康利益の識別に有用であることが証明されている。
【0483】
患者の健康質問票-9(PHQ-9)
PHQ-9は、患者の健康質問票の9項目の鬱病スケールである。PHQ-9は、鬱病の診断ならびに治療選択および治療モニタリングにおいて臨床医を補助するツールである。患者がPHQ-9質問票を完了した後、プロトコール担当者によりスコア化される。
【0484】
プロトコール中、個別患者のPHQ-9スコアが10以上となったときはいつでも、患者はMHPに紹介されなければならない。PHQ-9は、SOAに従って実施される。
【0485】
コロンビア自殺重症度評価尺度(C-SSRS:Columbia-Suicide Severity Rating Scale)
C-SSRSは、自殺試行を予測するだけでなく、証拠ベースの念慮および行動項目の全範囲の評価にも使用されるツールであり、次のステップ(例えば、メンタルヘルス専門家(MHP)への紹介など)への基準も含む。SOAに従い本プロトコールに利用されるC-SSRSには二つのバージョンがある。(1)尺度の基準/スクリーニングバージョンは、患者の生涯および所定期間中の自殺傾向を評価する基準フォームとスクリーニングフォームを組み合わせる。このバージョンは、データ収集目的の患者生涯の自殺傾向、ならびに登録/除外基準に基づく適格性を評価することができる。(2)最終ビジット以降の尺度は、患者の最終ビジット以降の自殺傾向を評価する。このバージョンは、少なくとも一つの初回C-SSRS評価を完了した患者を評価することが意図され、その後のビジットごとに使用されなければならない。C-SSRSの「最終ビジット以降」バージョンは、C-SSRSが行われた最後のときから、患者/参加者が有し得る何らかの自殺思考や行動について尋ねるものである。
【0486】
患者がタイプ4または5の自殺念慮を有するとき、またはなんらかの自殺行動を有するときはプロトコール中いつでも、患者はMHPに紹介されなければならない。
【0487】
患者の適格性確認が判定されたスクリーニング期間の後、患者は治療期間1に入る。この段階では、H4H17319P2の第一の用量は、プロトコールの1日目にIV投与される。第一の皮下(SC)用量の投与は、プロトコールの5日目に行われる。患者は、用量投与のために、毎週クリニックに戻る。臨床検査および検査の評価は、図20に記載されるとおりである。
【0488】
このプロトコール中に実施される安全性、臨床検査、PKおよびADAの評価に関する詳細な説明は、以下のセクションで提供される。
【0489】
患者は、スクリーニングビジットから始まるすべてのビジットの前日に一晩絶食する必要がある。彼女は、各クリニックビジットの午前中に一口の水とともに通常の医薬品を摂取することが許可される。
【0490】
評価は、スクリーニング期間中の複数の日にわたり行われ得る。3つの異なる日に収集された空腹症状に対する充分な基準データを取得するために、スクリーニング期間は、最低3日間、最大2週間とするべきである。
【0491】
この患者およびプロトコール担当者に、クリニックビジット数の柔軟性を提供するため、クリニックビジットの実際のスケジュールは、ビジットのタイミングに柔軟性をもたせてもよい。治療期間1および治療期間2の間、目的は、±3日以内にビジットを発生させることである。収集されたデータは、ビジットウィンドウ外であっても、エンドポイント解析に含められる。
【0492】
有害事象のモニタリングは、プロトコール全体を通して実施される。有害事象は、スクリーニングから最終プロトコールのビジットまでCRFに記録される。薬物投与開始後に発生する有害事象は、治験薬投与後に発生した有害事象(TEAE)とみなされる。SAEは、最終プロトコールのビジットまで記録される。すべての有害事象が、解消されるまで、または患者の安定状態もしくは慢性状態もしくは併発疾患に起因すると明白に判定されるまで、モニタリングされなければならない。
【0493】
有害事象:定義、文書および報告
有害事象(AE)は、薬剤が関連したとみなされるか否かにかかわらず、ヒトにおいて薬剤の使用と関連したすべての有害な医学的事件である。有害事象(有害な体験とも呼ばれる)は、因果関係に関する判断を行うことなく、時間的に薬剤の使用に関連したすべての好ましくない、および意図されない兆候(例えば、臨床検査所見異常)、症状または疾患であり得る。AEは、薬剤の任意の使用(例えば、適応外使用、別の薬剤との併用使用)から生じ得る、および任意の投与経路、製剤、またはオーバードーズを含む用量から生じ得る。
【0494】
H4H17319P2は、ヒト初回投与試験において、忍容性良好であった。薬剤関連TEAE(有害事象が、治験責任医師によって薬剤に関連している可能性がある、またはおそらく関連していると評価された)が報告された。今までにH4H17319P2を用いた臨床経験が非常に限定されているため、他の知られていない副作用が存在する可能性がある。臨床上の緊急時にはいつでも、プロトコール参加者はPI(または援護臨床医(covering clinician))を利用することができる。この利用可能性と、治験責任医師が緊急時にどのように到達するかの両方が、プロトコール参加者に、口頭および書面で明白に伝達される。すべてのプロトコール介入が、無料で提供される。
【0495】
AEまたは疑わしい有害反応は、治験責任医師またはスポンサーのいずれかの所見において以下の転帰のいずれかを生じさせる場合、重篤(SAE)とみなされる。
・ 死亡。
・ 生命を脅かす。生命を脅かすとは、反応が発生したとき、その反応により患者がただちに死亡するリスクがあったことを意味する。すなわち、より重篤な形態で発生した場合に、仮定として死をもたらし得る反応は含まれない。
・ 入院またはすでに入院している期間の延長。プロトコール期間中に発生することが予定されているが、プロトコールに入る前に計画された入院および/または外科手術は、当該病気または疾患が、当該患者が本プロトコールに登録される前から存在した場合にはAEとはみなされないが、ただし、プロトコール中に予期せぬ様式で悪化しないものとする(例えば、計画よりも早く手術が実施された)。
・ 通常の生命機能を実施する能力の持続的もしくは重大な無能または実質的な破壊。
・ 重要な医学的事象。重要な医学的事象は、死をもたらす、生命に脅やかす、または入院を必要とすることは無いが、適切な医学的判断に基づき、患者を危機に曝し、およびSAEの定義に列記される転帰のうちの一つを予防するために医学的介入または外科的介入を必要とし得る場合には、SAEとみなされ得る事象である。そうした医学的事象の例としては、救急治療室または自宅での集中的な治療を必要とするアレルギー性気管支けいれん、入院をもたらさない造血機能障害もしくはけいれん;または薬物依存もしくは薬物乱用の発現が挙げられる。
【0496】
有害事象のモニタリングおよび観察期間
各患者は、AEの発現に対し、注意深くモニタリングされなければならない。この情報は、誘導的ではない質問の形態(例えば、「あなたはどのように感じているか?」など)で取得されなければならず、および各検査中に検出された兆候および症状、プロトコール担当者による観察、ならびに患者からの自発的な報告から取得されなければならない。
【0497】
AEは、スクリーニングから、最後のプロトコールビジットまで、原本に記録される。SAEおよび死亡は、ICFが署名されたときから、最後のプロトコールビジットまで継続して、SAE CRFに記録される。すべてのAEが、解消されるまで、または患者の安定状態もしくは慢性状態もしくは併発疾患に起因すると明白に判定されるまで、モニタリングされなければならない。
【0498】
患者により自発的に報告された、および/またはプロトコール担当者からの自由回答式の質問に対する反応において自発的に報告された、または観察、身体検査もしくは他の診断手順により明らかとなったすべてのAE(重篤および非重篤)は、適切なCRFに記録される。臨床検査評価における、または他の臨床所見における臨床的に関連のある悪化はすべて、AEとみなされ、適切なCRFに記録されなければならない。可能であれば、共通して根底にある病的状態を示唆する兆候および症状は、一つの包括的事象として記録されるものとする。
【0499】
プロトコール完了後のいずれかのときに発生する、治験責任医師が薬剤と関連するとみなすSAEはすべて、スポンサーに報告されなければならない。
【0500】
プロトコールの仮定で発生するすべてのSAEは、治験責任医師が当該SAEに気が付いた時点から24時間以内に、治験責任医師により医療モニターに報告されなければならない。すべてのSAEは、薬剤に因果的に関連するとみなされるか否かを報告されなければならない。SAEフォームは完了され、収集された情報は、患者番号、当該事象の物語的な説明(関連既往歴、併用薬、および関連臨床検査結果および診断検査結果を含み得る)、ならびに当該事象の重症性および薬剤との関連性に関する治験責任医師の評価を含む。SAEに関する追跡情報は、スポンサーまたはその指定者によりリクエストされる場合がある。
【0501】
すべてのSAE文書が、スポンサーに伝達されるものとする。
【0502】
患者は、施設クリニックビジットの間の治療期間中、ならびにプロトコール担当者により患者に対して為される定期的な電話の間、注意深くモニタリングされる。AEにより患者が治療から離脱した場合、患者は、解消まで当該事象をモニタリングするために、および追加のプロトコールに規定された安全性評価を取得するために、最終プロトコールビジット/早期終了ビジットを完了させるよう推奨される。
【0503】
上述のように、患者が10よりも高いPHQ-9スコアを有する場合、なんらかの自殺行動がある場合、またはC-SSRSのタイプ4もしくは5のなんらかの自殺念慮がある場合、MHPを紹介されるものとする。MHPへの紹介は、治験責任医師の意見において、患者の安全に必要である場合にも行われるものとする。患者の精神障害が精神療法および/または薬剤療法で適切に治療され得る場合、MHPの裁量で、患者は試験において継続されるものとする。
【0504】
薬剤の使用に関連した、重篤で予想外の有害な薬剤反応がある場合、適切な規制当局、倫理委員会(EC)、およびすべての参加治験責任医師に、速達ベースで通知される。ヒト患者に対するリスクを伴うすべての予想外の重篤で有害な薬剤反応について施設内治験審査委員会(IRB)/独立倫理委員会(IEC)に要求された場合、IRB/IECへの迅速な通知は治験責任医師の責任である。予想外の事象とは、IBに報告されていない事象である。
【0505】
重篤なAEと非重篤なAEの両方について、治験責任医師は、当該事象の強度と、当該事象とH4H17319P2投与の関連性の両方を判定しなければならない。治験責任医師により臨床的に重大であるとみなされる注射部位反応のみが、AEとして記録される。
【0506】
臨床的に重大な治療下で発生した臨床検査の異常、注射部位反応、および潜在的な全身反応を含むすべてのAEの強度が、CTCAEバージョン4.03に従い等級分けされる。CTCAEグレードは、AEの重症度と呼称され、グレード1(軽度AE)、グレード2(中程度AE)、グレード3(重篤なAE)およびグレード4(生命を脅かすAEまたは障害をもたらすAE)、そしてグレード5(AEに関連する死亡)にわたる。
【0507】
CTCAEによってリスト化されない有害事象は、以下のように等級分けされる:
・ 軽度:不快感が認められたが、通常の日常活動の乱れはない。
・ 中程度:日常活動を低下させる、または影響を与えるには充分な不快感。
・ 重度:働くことができない、または通常の日常業務を行うことができない。
・ 生命を脅かす:生命に対する即時的な脅威を表す。
【0508】
H4H17319P2投与に対する関連性は、以下の基準に従い治験責任医師によって判定される:
・ なし:事象と、薬剤投与の間には関連性がない。事象は、例えば併用薬または患者の臨床状態などの他の病因に関連する。
・ 可能性は低い:現在の既存知識では、H4H17319P2と関連性がある可能性は低い、または観察された事象とのなんらかの合理的な関連をH4H17319P2が有さないような時間的な関連性である。
・ 可能性がある:H4H17319P2投与からの妥当な時間的シーケンスに続く反応、および疑わしい薬剤に対する公知の反応パターンに続く反応。反応は、患者の臨床状態または患者に投与された他の治療方法によって生じた可能性がある。
・ 推定される:H4H17319P2投与からの妥当な時間的シーケンスに続く反応、および薬剤に対する公知の反応パターンに続く反応。反応は、患者の臨床状態または患者に投与された他の治療方法の公知の特徴により合理的に説明することができない。
【0509】
安全性解析の目的に対し、可能性がある、または推定されると分類されるすべてのAEは、治療に関連した事象とみなされる。
【0510】
管理要件
臨床試験実施基準(Good Clinical Practice)
プロトコールは、臨床試験実施基準(GCP)に対する国際調和会議(ICH:International Council on Harmonization)、および適切な規制当局の要件に従って実施される。治験責任医師は、プロトコールおよびIBに記載される薬剤の適切な使用について充分に熟知している。必須臨床文書(Essential clinical documents)は、プロトコールの妥当性、および収集されたデータの完全性を実証するために維持される。マスターファイルは、プロトコールの開始時に確立され、プロトコール期間中、維持され、適切な規制に従い保持されるものとする。
【0511】
倫理規定
プロトコールは、ヘルシンキ宣言に基づく倫理原則に従い実施される。IRB/IECは、患者の権利、安全性、および福祉を保護するために、すべての適切なプロトコール文書をレビューする。プロトコールは、IRB/IECの承認が取得された施設でのみ実施される。プロトコール、IB、インフォームドコンセント、広告(該当する場合)、患者に与えられる書面化された情報(日誌カードを含む)、安全性のアップデート、年次進捗報告書、およびこれら文書の任意の改訂は、治験責任医師によってIRB/IECに提供される。
【0512】
H4H17319P2は、患者において部分型リポジストロフィー(PLD)を治療し、ならびにPLDと関連する肝脾腫大症、高トリグリセリド血症、および患者の四肢の脂肪の欠落を改善する。
【0513】
実施例23および24:先天性レプチン欠損症および先天性LEPR欠損症のマウスモデルにおけるアゴニスト性抗LEPR抗体の効果
血糖値、体重、食物摂取量、および体組成(脂肪量、除脂肪量、および骨量)に対する本発明の特異的アゴニスト性抗LEPR抗体であるH4H17319P2の効果が、機能喪失性変異による先天性レプチン欠損症および先天性レプチン受容体欠損症のマウスモデルにおいて判定された。マウスLEPR細胞外ドメイン配列の代わりにヒトLEPR細胞外ドメイン配列から構成されるレプチン受容体を発現し、レプチンを発現しない遺伝子操作Leprhu/hu Lep-/-マウスが、先天性レプチン欠損症のマウスモデルとして利用された。先天性LEPR欠損症のモデルは、マウスLEPR細胞外ドメイン配列の代わりに、A409Eミスセンス変異を伴うヒトLEPR細胞外ドメイン配列から構成されるレプチン受容体を発現する遺伝子操作LeprhuA409E/huA409Eマウスである。
【0514】
実施例23:先天性レプチン欠損症のマウスモデルにおけるH4H174319P2の効果
0日目に、16匹の27週~32週齢のメスのLeprhu/hu Lep-/-マウスが体重に基づいて2群に階層化された。各群に10mg/kgのアイソタイプ対照(IgG4)抗体、または10mg/kgのH4H17319P2が、週に1回、0、7、14、21、28および35日目に皮下注射を介して投与された。7匹の27~32週齢のメスのLeprhu/hu対照マウスに、10mg/kgのアイソタイプ対照(IgG4)抗体が、週に1回、0、7、14、21、28および35日目に皮下注射を介して投与された。-5日目および35日目に、体組成がμCTにより定量された。試験期間中、各動物に対し、食物摂取量、体重および血糖値が測定された。図21は、各処置群に対する血糖値、体重および累積食物摂取量をまとめたものである。図22は、抗体処置の5日前、および35日後のμCTにより定量された各抗体処置群における動物の脂肪量、除脂肪量および骨量をまとめたものである。すべての結果は、平均±SEMとして表される。
【0515】
図21Aに示されるように、0日目の抗体投与前は、レプチン欠損症のLeprhu/hu Lep-/-マウスは、対照Leprhu/huマウスと比較して高血糖症であった。10mg/kgのH4H17319P2で処置されたレプチン欠損症マウスは、抗体処置の2日後から、測定されたその後の他の時点で、アイソタイプ対照(IgG4)抗体を注射されたレプチン欠損症マウスと比較して血糖値の有意な低下を呈した。10mg/kgのアイソタイプ対照(IgG4)抗体を投与されたレプチン欠損症Leprhu/hu Lep-/-マウスは、計測されたすべての時点で高血糖症を維持した。
【0516】
図21Bに示されるように、0日目の抗体投与前は、レプチン欠損症のLeprhu/hu Lep-/-マウスは、対照Leprhu/huマウスと比較して有意に重かった。10mg/kgのH4H17319P2で処置されたレプチン欠損症マウスは、抗体処置の15日後から、その後の他の測定時点で、アイソタイプ対照(IgG4)抗体を注射されたレプチン欠損症マウスと比較して体重の有意な減少を呈した。10mg/kgのアイソタイプ対照(IgG4)抗体を投与されたレプチン欠損症マウスLeprhu/hu Lep-/-は、すべての計測時点で、基準時からの体重の減少を示さなかった。
【0517】
図21Cに示されるように、レプチン欠損症のLeprhu/hu Lep-/-マウスは、H4H17319P2処置の2日後、およびその後の他の測定時点で、アイソタイプ対照(IgG4)抗体を注射されたレプチン欠損症マウスと比較して、有意な累積食物摂取量の減少を呈した。
【0518】
図22に示されるように、-5日目の抗体投与前、レプチン欠損症のLeprhu/hu Lep-/-マウスは、Leprhu/huマウスと比較して、有意な脂肪量の増加、除脂肪量の低下、および骨量の低下を示した。35日目、10mg/kgのH4H17319P2で処置されたレプチン欠損症Leprhu/hu Lep-/-マウスは、アイソタイプ対照(IgG4)抗体を注射されたレプチン欠損症マウスと比較して有意な脂肪量の低下、ならびに除脂肪量の増加、および骨量の増加を呈した。
【0519】
実施例24
0日目に、20匹の24週~28週齢のオスのLeprhuA409E/huA409Eマウスを、体重に基づいて2群に階層化した。各群に、5mg/kgのアイソタイプ対照(IgG4)抗体、または5mg/kgのH4H17319P2を、週に1回、0、7、14、21、28、35日目および42日目に皮下注射を介して投与した。8匹の24~28週齢のオスのLeprhu/hu対照マウスに、5mg/kgのアイソタイプ対照(IgG4)抗体が、週に1回、0、7、14、21、28、35および42日目に皮下注射を介して投与された。-1日目および41日目に、体組成がμCTにより定量された。試験期間中、各動物に対し、食物摂取量、体重および血糖値が測定された。図23は、各処置群に対する血糖値、体重および累積食物摂取量をまとめたものである。図24は、抗体処置の-1日前、および41日後のμCTにより定量された各抗体処置群における動物の脂肪量、除脂肪量および骨量をまとめたものである。すべての結果は、平均±SEMとして表される。
【0520】
図23Aに示されるように、0日目の抗体投与前は、レプチン受容体欠損症のLeprhuA409E/huA409Eマウスは、対照Leprhu/huマウスと比較して高血糖症であった。5mg/kgのH4H17319P2で処置されたLeprhuA409E/huA409Eマウスは、抗体処置の7日後から、その後の他の測定時点で、アイソタイプ対照(IgG4)抗体を注射されたLeprhuA409E/huA409Eマウスと比較して血糖値の有意な低下を呈した。5mg/kgのアイソタイプ対照(IgG4)抗体を投与されたレプチン受容体欠損症マウスのLeprhuA409E/huA409Eマウスは、すべての計測時点で高血糖症を維持した。
【0521】
図23Bに示されるように、0日目の抗体投与前は、レプチン受容体欠損症のLeprhuA409E/huA409Eマウスは、対照Leprhu/huマウスと比較して有意に重かった。5mg/kgのH4H17319P2で処置されたLeprhuA409E/huA409Eマウスは、抗体処置の13日後から、その後の他の測定時点で、アイソタイプ対照(IgG4)抗体を注射されたレプチン受容体欠損症マウスと比較して体重の有意な減少を呈した。5mg/kgのアイソタイプ対照(IgG4)抗体を投与されたLeprhuA409E/huA409Eは、すべての計測時点で、基準時からの体重の減少を示さなかった。
【0522】
図23Cに示されるように、LeprhuA409E/huA409Eは、H4H17319P2処置の7日後、およびその後の他の測定時点で、アイソタイプ対照(IgG4)抗体を注射されたレプチン欠損症マウスと比較して、累積食物摂取量の有意な減少を呈した。
【0523】
図24に示されるように、-1日目の抗体投与前、LeprhuA409E/huA409Eマウスは、Leprhu/huマウスと比較して、有意な脂肪症の増加、除脂肪量の低下、および骨量の低下を示した。41日目、5mg/kgのH4H17319P2で処置されたLeprhuA409E/huA409Eマウスは、アイソタイプ対照(IgG4)抗体を注射されたLeprhuA409E/huA409Eマウスと比較して有意な脂肪量の低下、ならびに除脂肪量の増加、および骨量の増加を呈した。
【0524】
本発明は、本明細書に記載の特定の実施形態による範囲に限定されるものではない。実際に、本発明の種々の修飾は、本発明に記載されるものに加えて、上記の記述および関連する図から、当業者に明らかとなるであろう。そのような変更は、添付される特許請求の範囲の範囲内にあることが意図される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図10D
図11
図12A
図12B
図12C
図13A
図13B
図13C
図13D
図14A
図14B
図14C
図14D
図14E
図14F
図14G
図15A
図15B
図15C
図16A
図17-1】
図17-2】
図17-3】
図18A
図18B
図18C
図18D
図19
図20A-1】
図20A-2】
図20B-1】
図20B-2】
図21
図22
図23
図24
図25-1】
図25-2】
図26-1】
図26-2】
図26-3】
図27-1】
図27-2】
【配列表】
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