(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】外科訓練モデル、システム、及び方法
(51)【国際特許分類】
G09B 23/28 20060101AFI20240116BHJP
G09B 9/00 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
G09B23/28
G09B9/00 Z
(21)【出願番号】P 2020566584
(86)(22)【出願日】2019-05-30
(86)【国際出願番号】 US2019034587
(87)【国際公開番号】W WO2019232168
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-05-26
(32)【優先日】2018-05-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】506192652
【氏名又は名称】ボストン サイエンティフィック サイムド,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】BOSTON SCIENTIFIC SCIMED,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】アベ、ヤスヒサ
【審査官】井上 香緒梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-166932(JP,A)
【文献】特開2007-162753(JP,A)
【文献】特表2009-519476(JP,A)
【文献】特開2015-085017(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0008997(US,A1)
【文献】英国特許出願公開第02446460(GB,A)
【文献】独国実用新案第202017102385(DE,U1)
【文献】韓国登録特許第10-0934626(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09B23/00-29/14
A61B1/00-1/32
F16L23/00-25/14
F16L29/00-35/00
F16L47/00-49/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療訓練装置において、
胃モデルと、
十二指腸モデルと、
十二指腸モデルを胃モデルに相対して第1の方向をもって、及び十二指腸モデルを胃モデルに相対して第2の方向をもって、胃モデルと十二指腸モデルを着脱自在に結合する、第1の結合器と、
収容ピットを有した臓器モデル支持体であって、前記収容ピットは前記胃モデル及び十二指腸モデルの外面に共形に湾曲した壁によって画定され、前記収容ピットは可撓性材料からなる、臓器モデル支持体とを備
え、
前記第1の結合器が、
第1の結合リングと、
前記第1の結合リングから突出する第1のフックと、
第2の結合リングと、
前記第2の結合リングから突出する第2のフックと、
前記第1の結合リングを前記第2の結合リングに枢動可能に結合するヒンジとを備える、医療訓練装置。
【請求項2】
食道モデルと、
食道モデルと胃モデルを着脱自在に結合する第2の結合器とをさらに備える、請求項1に記載の医療訓練装置。
【請求項3】
前記十二指腸モデルは、幽門開口部を画定する端壁を有する、請求項1又は2に記載の医療訓練装置。
【請求項4】
前記十二指腸モデルが、本体と、胆管と、膵管と、前記本体へと突出する十二指腸乳頭とを含み、
前記十二指腸乳頭は、前記十二指腸モデルが第1の方向にあるとき、前記胃モデルに相対して第1の位置を有し、前記十二指腸モデルが第2の方向にあるとき、前記胃モデルに相対して第2の位置を有する、請求項1~3のいずれか一項に記載の医療訓練装置。
【請求項5】
前記十二指腸モデルが一体的に形成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の医療訓練装置。
【請求項6】
前記胃モデル及び十二指腸モデルは、前記臓器モデル支持体の収容ピット内に配置される、請求項1に記載の医療訓練装置。
【請求項7】
前記収容ピットは第1の係合凹部を含み、前記第1の結合器は前記第1の係合凹部に配置される、請求項1又は6に記載の医療訓練装置。
【請求項8】
前記第1の係合凹部は、その内部で第1の結合器の移動を可能にするサイズであり、内視鏡が前記十二指腸モデルに力を加える時に、前記第1の結合器が前記第1の係合凹部内を移動するように前記第1の係合凹部に配置される、請求項7に記載の医療訓練装置。
【請求項9】
前記臓器モデル支持体の一部が前記十二指腸モデルの一部に重なる、請求項6~8のいずれか一項に記載の医療訓練装置。
【請求項10】
第2の十二指腸モデルをさらに有し、第1の結合器は、前記胃モデルからの前記十二指腸モデルの離脱、及び前記第2の十二指腸モデルの前記胃モデルへの結合を可能にする、請求項1~9のいずれか一項に記載の医療訓練装置。
【請求項11】
前記第1の結合器が、第1及び第2の結合リングと、前記第1の結合リングを前記第2の結合リングに枢動可能に接続するヒンジとを備え、前記胃モデルの1つの端部が第1の結合リングに接続し、及び、前記十二指腸モデルの1つの端部は前記第2の結合リングに接続し、前記ヒンジは前記第1の結合器を閉じることを可能にし、前記胃モデルと前記十二指腸モデルの端部を整列させる、請求項1~10のいずれか一項に記載の医療訓練装置。
【請求項12】
前記胃モデルの端部がフランジを含み、前記十二指腸モデルの端部がフランジを含み、前記胃モデルの端部のフランジ及び、前記十二指腸モデルの端部のフランジが、前記第1及び第2の結合リングの間に配置される、請求項11に記載の医療訓練装置。
【請求項13】
前記収容ピットは、それぞれが前記十二指腸モデルの載置を可能にする第1の領域及び第2の領域を含み、前記十二指腸モデルは、前記第1の領域に載置された場合と前記第2の領域に載置された場合とでは前記胃モデルに相対する方向が異なる、請求項6~9のいずれか一項に記載の医療訓練装置。
【請求項14】
前記十二指腸モデルが、
胆管と、
膵管と、
前記胆管及び膵管が接続されている管状本体であって、前記管状本体は、内視鏡の入口を可能にする入口を備えた第1の端部と、前記第1の端部の反対側にある第2の端部とを有する管状本体と、
前記管状本体に突出して前記管状本体の第2の端部に向かって傾いている十二指腸乳頭とをさらに備え、
前記管状本体、胆管、膵管、及び十二指腸乳頭は、互いに一体的に形成されている、請求項1~13のいずれか一項に記載の医療訓練装置。
【請求項15】
前記胃モデル及び十二指腸モデルが前記臓器モデル支持体内に配置された状態で使用されるように構成されている、請求項1~14のいずれか一項に記載の医療訓練装置。
【請求項16】
前記臓器モデル支持体は挿入部分を含み、前記挿入部分は、前記医療訓練装置の操作中に医療デバイスを受け入れるように構成されている、請求項1~15のいずれか一項に記載の医療訓練装置。
【請求項17】
前記挿入部分は、前記臓器モデル支持体の第1の端部に開口部を形成する、請求項16に記載の医療訓練装置。
【請求項18】
前記胃モデルが第1のフランジを含み、前記十二指腸モデルが第2のフランジを含み、前記第1の結合器が前記第1のフランジ及び第2のフランジと係合する、
請求項1に記載の医療訓練装置。
【請求項19】
前記臓器モデル支持体を収容するように構成されたボックスをさらに備え、前記ボックスは、4つの側壁と、前記4つの側壁と交差する底壁とを含む、
請求項1~18のいずれか一項に記載の医療訓練装置。
【請求項20】
前記ボックスを覆うように構成された蓋をさらに備える、
請求項19に記載の医療訓練装置。
【請求項21】
前記ボックスは、前記4つの側壁のうちの少なくとも1つに結合されたハンドルを含む、
請求項20に記載の医療訓練装置。
【請求項22】
前記ボックスは、前記医療訓練装置の操作中に医療デバイスを受け入れるように構成された挿入部分を含む、
請求項20に記載の医療訓練装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外科訓練システム、外科訓練モデル、及び関連する方法一般に関する。より詳細には、本発明は、医師の内視鏡操作を訓練する時に使用される装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
内視鏡の手順を適切に教えるためには、生きている動物又は生きている臓器を模倣した訓練装置を使用することが望ましい。生きている動物の使用は、通常、動物を鎮静させ、かつ訓練手順が完了した後に動物を犠牲にすることを含み、これは費用がかかり、生命の損失をもたらし、したがって新しい手順を訓練及び開発する機会を制限する。また、無償提供された臓器などの生体物質の輸送は、生体組織の寿命によって制限され、生体組織は急速に腐敗することが多く、動物の生体物質は人体の解剖学的構造を正確に模倣できない場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
人間の臓器を模倣するように設計された合成物訓練システムの現在のデザインは、通常、生体組織ほど現実に即してはいない。また、現在の合成物訓練システムは、輸送が難しいことがよくある。これら又は他の問題の1つ以上に対処できる内視鏡訓練システムが必要である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の実施形態は、とりわけ、十二指腸モデルと、臓器モデル支持体と、内視鏡、十二指腸鏡、結腸内視鏡、気管支鏡、又は関連する医療器具とを操作するように医療提供者を訓練する際に、生きている人体の感触のシミュレーションを行う訓練装置に関する。本明細書に開示される実施形態のそれぞれは、他の開示される実施形態のいずれかに関連して説明される特徴のうちの1つ以上を含み得る。
【0005】
本開示の一態様は、1つ以上の臓器モデルを支持するように構成された臓器モデル支持体である。いくつかの例では、臓器モデルの支持体は、1つ以上の臓器モデルの形状に一致させて湾曲したピット壁を有した収容ピットを備えている。収容ピットは、可撓性材料から形成することができる。
【0006】
本開示の別の態様は、胆管と、膵管と、胆管及び膵管が接続されている管状本体と、本体へと突出する十二指腸乳頭とを有した十二指腸モデルに係る。本体、胆管、膵管、及び十二指腸乳頭は互いに一体に形成されていてもよい。
【0007】
本開示のさらなる態様は、内視鏡又は他の医療装置を操作するように医療提供者を訓練するための訓練装置である。訓練装置は、1つ以上の臓器モデル及び上記の臓器モデル支持体を含み得る。
【0008】
本開示の一態様によれば、医療訓練装置は、胃モデル、十二指腸モデル、及び第1の結合器を含み得る。第1の結合器は、十二指腸モデルを胃モデルに相対して第1の方向をもって、及び十二指腸モデルを胃モデルに相対して第2の方向をもって、胃モデルと十二指腸モデルを着脱自在に結合し得る。
【0009】
本開示の他の態様では、医療訓練装置は、以下の特徴のうちの1つ以上を有し得る。医療訓練装置は、食道モデル及び第2の結合器をさらに有し得る。第2の結合器は、食道モデルを胃モデルに着脱自在に結合することができる。食道モデルと胃モデルの間に仕切りのダイアフラムを配置することができる。十二指腸モデルは、幽門開口部を画定する端壁を含み得る。十二指腸モデルは、本体、胆管、膵管、及び本体に突入する十二指腸乳頭を含み得る。十二指腸乳頭は、十二指腸モデルが第1の方向にあるとき、胃モデルに対して第1の位置を有し得、十二指腸モデルが第2の方向にあるとき、胃モデルに対して第2の位置を有し得る。本体、胆管、膵管、及び十二指腸乳頭を一体形成することができる。臓器モデルの支持体は収容ピットを有し得る。収容ピットは、胃モデル及び十二指腸モデルの外面に共形に湾曲した壁によって画定されることができ、収容ピットは、可撓性材料からなることができる。胃モデル及び十二指腸モデルは、臓器モデル支持体の収容ピット内に配置することができる。収容ピットは、第1の係合凹部を含み、第1の結合器は、第1の係合凹部に配置され得る。第1の係合凹部は、その内部での第1の結合器の移動を可能にするようなサイズにすることができる。第1の結合器は、内視鏡が十二指腸モデルに力を加えたときに第1の係合凹部内を移動するように、第1の係合凹部内に配置することができる。臓器モデル支持体の一部は、十二指腸モデルの一部を覆っている場合がある。医療訓練装置は、第2の十二指腸モデルをさらに有することができ、第1の結合器は、胃モデルからの十二指腸モデルの離脱、及び第2の十二指腸モデルの胃モデルへの結合を可能にするように構成され得る。第1の結合器は、第1及び第2の結合リングと、第1の結合リングを第2の結合リングに枢動可能に接続するヒンジとを含み得る。胃モデルの端部は第1の結合リングに接続することができ、十二指腸モデルの端部は第2の結合リングに接続することができる。ヒンジにより、第1の結合器を閉じて、胃と十二指腸のモデルの端を揃えることができる。胃モデルの端部はフランジを有し、十二指腸モデルの端部はフランジを有することができ、そして胃モデルの端部のフランジ及び十二指腸モデルの端部のフランジは第1及び第2の結合リングの間に配置され得る。
【0010】
本開示の他の態様では、医療訓練装置は、食道モデル、胃モデル、十二指腸モデル、胃モデルを十二指腸モデルに着脱自在に結合する第1の結合器、及び食道モデルを胃モデルに着脱自在に結合する第2の結合器と、臓器モデル支持体とからなることができる。臓器モデル支持体には、食道モデル、胃モデル、及び十二指腸モデルを収容するための収容ピットが設けられ得る。収容ピットは、食道モデル、胃モデル、及び十二指腸モデルの外面に共形に湾曲した壁によって画定することができる。
【0011】
本開示の他の態様では、医療訓練装置は、以下の特徴のうちの1つ以上を有し得る。第1の結合器は、突起(フランジなど)を含み得、第2の結合器は、突起を含み得、臓器モデル支持体は、第1の係合凹部及び第2の係合凹部を含み得る。第1の係合凹部は、ピット壁の窪みであることができ、第1の結合器の突起を受け入れるように構成され得る。第2の係合凹部は、ピット壁の窪みであることができ、第2の結合器の突起を受け入れるように構成される。収容ピットは、それぞれが十二指腸モデルの配置を可能にする第1の領域及び第2の領域を含み得、十二指腸モデルは、第1の領域に配置された場合及び第2の領域に配置された場合、胃モデルに相対した方向が異なり得る。十二指腸モデルは、十二指腸モデルが第1の方向にあるとき、胃モデルに相対して第1の位置を有し、十二指腸モデルが第2の方向にあるとき、胃モデルに相対して第2の位置を有し得る。第1の方向における十二指腸モデルの位置は、第2の方向に対して第1の結合器の周りを回転させることができる。
【0012】
他の態様では、十二指腸モデルは、胆管と、膵管と、胆管及び膵管が接続されている管状本体とを含み得る。本体は、内視鏡が入ることを可能にする入口を備えた第1の端部と、第1の端部の反対側にある第2の端部とを含み得る。十二指腸モデルはまた、本体内へと突出し、本体の第2の端に向かって傾斜している十二指腸乳頭を含み得る。本体、胆管、膵管、及び十二指腸乳頭は互いに一体に形成されていてもよい。
【0013】
他の態様では、十二指腸モデルは、以下の特徴の1つ以上を含み得る。本体は、胆管及び膵管が本体に接続されている部分を取り囲む環状部分を含み得る。環状部分は、本体の他の部分よりも厚くてもよい。本体は、第1の端部を閉じる端壁を有し、端壁は、端壁を通って延びる幽門開口部を含み得る。
【0014】
上記の一般的な説明及び以下の詳細な説明は両方とも、例示的かつ説明的なものであり、特許請求の範囲に記載される特徴を制限するものではない。本明細書で使用される場合、「含む(comprises)」、「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」、又はそれらの他の変形という用語は、プロセス、方法、物品、又は装置などの非排他的な含有物を包含することを意図するが、要素のリストは、それらの要素だけを含むことに限らず、明示的にリストされていないか、又はそのようなプロセス、方法、物品、又は装置に固有の他の要素を含み得る。さらに、「例示的」という用語は、本明細書では、「理想的」ではなく「例示」の意味で使用される。本明細書で使用される場合、「約」、「実質的に」、及び「ほぼ」という用語は、記載された値の±5%以内の値の範囲を示す。
【0015】
本明細書に組み込まれ、その一部を構成する添付の図面は、様々な例示的な実施形態を示し、説明とともに、本開示の原理を説明するのに役立つ。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】一実施形態による例示的な訓練装置の分解斜視図。
【
図3】一実施形態による例示的な臓器モデル支持体の平面図。
【
図4】一実施形態による例示的な十二指腸モデルの水平方向の断面図。
【
図5】
図4に示される例示的な十二指腸モデルの垂直方向の断面図。
【
図6】
図1の例示的な訓練装置の一部を示す平面図。
【
図7】
図4の例示的な十二指腸モデルに挿入された内視鏡によって捕捉されたモデル十二指腸乳頭を示す図。
【
図8】例示的な十二指腸モデルの方向が
図7に示される状態の方向と異なる場合に、
図7の例示的な十二指腸モデルに挿入された内視鏡によって撮影された十二指腸乳頭モデルを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明による十二指腸モデル、臓器モデル支持体、及び訓練装置の例を、図面を参照して説明する。
図1に示されるように、内視鏡又は他の医療機器を操作するために人、例えば医師などの医療サービス提供者を訓練するために使用され得る訓練装置11は、1つ以上の臓器モデルと、臓器モデル支持体30と、臓器モデル支持体30を収容するケース20とを有する。1つ以上の臓器モデルには、例えば、食道モデル50、胃モデル51、及び十二指腸モデル52が含まれ得る。
【0018】
ケース20は、臓器モデル支持体30を収容するボックス21を有し得る。ボックス21は、4つの側壁21a、21b、21c、及び21dと、4つの側壁21a、21b、21c、及び21dと交差する底壁とを含み得る。ケース20は、ボックス21の開口部を覆う蓋22と、ボックス21の側壁21aに取り付けられたハンドル23とをさらに含み得る。訓練装置11は、蓋22でボックス21の開口部を閉じ、ハンドル23を把持することによって容易に運搬することができる。ボックス21は、内視鏡12又は他の医療機器を挿入するための挿入部分24を含み得る。挿入部分24は、例えば、ボックス21の側壁21cの一部を切り出すことによって形成することができる。
【0019】
臓器モデル支持体30は、可撓性材料から形成され得る。臓器モデル支持体30を形成する可撓性材料の一例は、ウレタン樹脂である。臓器モデル支持体30は、同一材料から一体的に形成され得る。本実施形態の臓器モデル支持体30は、概ね直方体をなす可撓性の本体であり得る。
【0020】
臓器モデル支持体30は、1つ以上の臓器モデルを収容する収容ピット31と、収容ピット31が開く開口面32(表面32は、ピット31の上部開口31bを規定する)と、開口面32と交差する4つの側面33と、開口面32の反対側に位置する底面とを含み得る。 収容ピット31は、連続するピット壁31a及び連続する開口31bを含み得る。ピット壁31aは、臓器モデル50、51、及び52の形状、すなわち3次元形状に共形となるように湾曲させることができる。
【0021】
4つの側面33のうちの1つは、突起開口部34を含み得る。内視鏡12が最初に挿入され得る臓器モデル、例えば、食道モデル50は、突起開口部34を通して収容ピット31から部分的に突出し得る。収容ピット31の内部は、突起開口部34を介して外部と連通していてもよい。突起開口部34は、ケース20の挿入部分24と重なる位置に配置することができる。突起開口部34は、収容ピット31の開口部31bに結合された切り欠き部分であり得る。
【0022】
食道モデル50、胃モデル51、及び十二指腸モデル52は、可撓性材料から形成することができる。食道モデル50、胃モデル51、及び十二指腸モデル52は、臓器モデル支持体30よりも高い可撓性を有する材料から形成することができる。食道モデル50、胃モデル51、及び十二指腸モデル52は、異なる材料から形成することができる。
【0023】
十二指腸モデル52は、食道モデル50、胃モデル51、及び臓器モデル支持体30の材料よりも柔らかく、変形しやすい材料から形成することができる。十二指腸モデル52の材料の一例は、ポリビニルアルコールである。十二指腸モデル52は、例えば、生理食塩水で保湿された状態で保存することができる。十二指腸モデル52は、生体の柔らかさに近い状態を維持するために保湿することができる。
【0024】
食道モデル50、胃モデル51、及び十二指腸モデル52はそれぞれ、内視鏡12のための入口と、入口の反対側に配置された出口とを有し得る。食道モデル50の出口は、胃モデル51の入口に接続することができ、胃モデル51の出口は、十二指腸モデル52の入口に接続することができる。
【0025】
訓練装置11は、ボックス21が臓器モデル支持体30の開口面32が上向きに設定されているときに、患者が腹臥位又は仰臥位に横たわっている状態のシミュレーションを行うことができる。人が訓練装置11を使用して内視鏡又は他の医療デバイス操作を訓練する場合、内視鏡12(又は他の医療デバイス)は、ケース20の挿入部分24を通して食道モデル50の入口に挿入され得る。
【0026】
訓練が完了すると、ケース20の蓋22を閉じることができる。ケース20は、訓練装置11が使用されていないときに可撓性の臓器モデル支持体30を保護する。
訓練装置11は、2つの臓器モデルを分離可能な方法で結合する結合器46を含み得る。例えば、臓器モデル50、51、及び52は、2つの結合器46によって一緒に結合され、次いで、開口部31bによって収容ピット31に収容され得る。臓器モデル50、51、及び52はそれぞれ、別の臓器モデルに接続された1つ又は2つの端部を含み得る。そのような端部は、結合器46と係合するフランジ54を含み得る。
【0027】
仕切りダイアフラム55は、食道モデル50と胃モデル51との間に配置され得、噴門を模倣する噴門穴55aを含み得る。仕切りダイアフラム55の配置により、医師は、内視鏡12を人体の噴門を通して動かすための操作を練習することができる。仕切りダイアフラム55は、食道モデル50と胃モデル51との間の結合器46によって保持され得る。
【0028】
各結合器46は、例えば、2つの結合リング47と、2つの結合リング47を枢動可能に結合するヒンジ48と、それぞれの結合リング47から突出するフック49とを含み得る。結合器46は、臓器モデル50、51、及び52及び臓器モデル支持体30よりも高い剛性を有し得る。
【0029】
図2に示されるように、臓器モデル支持体30の収容ピット31は、第1の溝35、第2の溝36、及び第3の溝37を含み得る。第1の溝35、第2の溝36、及び第3の溝37は、それぞれ、食道モデル50、胃モデル51、及び十二指腸モデル52の三次元形状に一致させて形成され得る。臓器モデル50、51、及び52が、それぞれ、第1の溝35、第2の溝36、及び第3の溝37に2つの結合器46によって互いに結合された状態で配置される場合、臓器モデル50、51、及び52は、開口面32から実質的に突出することなく、収容ピット31に完全に収容される。
【0030】
第1の溝35、第2の溝36、及び第3の溝37はそれぞれ、食道モデル50、胃モデル51、及び十二指腸モデル52の寸法に従って異なり得る寸法、すなわち幅Wd及び深さを有する。例えば、胃モデル51を収容することができる第2の溝36は、十二指腸モデル52を収容することができる第3の溝37よりも深い部分を含み得る。第1の溝35、第2の溝36、及び第3の溝37の寸法は、それぞれ第1の溝35、第2の溝36、及び第3の溝37に収容される臓器モデル50、51、及び52よりも大きいか、又はわずかに大きくてもよい。
【0031】
第1の溝35、第2の溝36、及び第3の溝37のそれぞれの幅Wdは、対応する第1の溝35、第2の溝36、及び第3の溝37の伸長方向及び深さ方向(
図5のZ方向)の両方に直交する方向に取られた寸法である。溝35、36、及び37の伸長方向は、管状の臓器である、対応する臓器モデル50、51、及び52の伸長方向であり、臓器モデルの管腔の縦軸に沿って入口から出口まで取られる。
【0032】
図3に示すように、第3の溝37は、第2の溝36から湾曲して延びる湾曲溝部分38と、湾曲溝部分38から内側(
図3の左側)に向かって広がる拡幅部39とを含み得る。第1の溝35、第2の溝36、及び湾曲した溝部分38のそれぞれの内側の最大幅は、開口面32の対応する開口部の幅よりも大きくてもよい。
拡幅部39は、湾曲した溝部分38の一方の幅方向の端部(
図3の右端)から内側(
図3の左方向)に向かって徐々に浅くなる可能性がある。開口面32の開口部における拡幅部39の幅は、拡幅部39内の最大幅よりも大きくてもよい。
図3では、より濃い色になっている部分はより深い部分を示している。
【0033】
臓器モデル支持体30の収容ピット31は、第1の溝35と第2の溝36の境界の近く、及び第2の溝36と第3の溝37の境界の近くの係合凹部40を含み得る。係合凹部40は、ピット壁31aの一部であり得、ピット壁31aの他の部分と滑らかに連続していてもよい。
【0034】
図4に示されるように、各係合凹部40は、対応する結合器46と係合され得る。それぞれの係合凹部40は、溝36及び37を接続する部分の2つの幅方向の端部からくぼんでいる2つの係合凹部40a及び40bを含み得る。第1の係合凹部40a及び第2の係合凹部40bは、結合器46の2つの突起、すなわち、ヒンジ48及びフック49に対応し得る。第1の係合凹部40aは、湾曲した溝36及び37の内側に配置され得、第2の係合凹部40bは、溝36及び37の外側に配置され得る。第1の係合凹部40aは、第2の係合凹部40bよりも深く窪んでいる可能性があり、第2の係合凹部40bは、溝36及び37が延びる方向において、第1の係合凹部40aよりも長くてもよい。
【0035】
十二指腸モデル52に挿入された内視鏡12又は他の医療機器の前進方向を変えるとき、内視鏡12は、十二指腸モデル52の内壁に接触する可能性がある。さらに、内視鏡12によって押された十二指腸モデル52は、収容ピット31の湾曲した溝部分38と接触し得る。十二指腸モデル52及び湾曲した溝部分38は、内視鏡12によって押されると弾性的に変形し、内視鏡12に反力を加える。
【0036】
十二指腸モデル52は、管状本体60、胆管61、膵管62、及び十二指腸乳頭64を含み得る。十二指腸乳頭64は、単に乳頭64と呼ばれることがある。本体60、胆管61、膵管62、乳頭64を一体的に形成することができる。
【0037】
胆管61は、胆嚢に接続された部分を含まなくてもよく、膵管62は、膵臓に接続された部分を含まなくてもよい。例えば、モデルには、膵臓又は胆嚢に対応する部分が含まれていない場合がある。胆管61は管腔61aを含み得、膵管62は管腔62aを含み得る。管腔61a及び62aは、本体60に接続された部分に収束する。胆管61と膵管62が単一の管に収束する部分は、接続管63と呼ばれる。
【0038】
管14は、胆管61及び膵管62のそれぞれに接続され得る。2つの管14のそれぞれは、締結具15によって胆管61又は膵管62に結合され得る。締結具15は、例えば、ゴムコード又はクリップであり得る。管14は透明であり得る。
【0039】
本体60は、胃モデル51に接続された第1の端部65と、第1の端部65の反対側にある第2の端部69と、第1の端部65を閉じる端部壁66とを含み得る。端壁66は、端壁66を通って延びる幽門開口部66aを含み得る。幽門開口部66aは、内視鏡12又は他の医療機器のための十二指腸モデル52への入口であり得る。幽門開口部66aは、円形の穴の周りに十字のようにスリットを切ることによって形成することができる(
図5を参照)。これは、医療機器を人間の幽門に挿入する感覚をシミュレートする。
【0040】
別の実施形態では、本体60は、端壁66を含む必要がない場合がある。この場合、仕切りダイアフラム55(
図1を参照)のような仕切りダイアフラムは、幽門開口部66aで準備され、胃モデル51と十二指腸モデル52との間の結合器46によって保持され得る。本体60の第2の端部69は、閉じていても開いていてもよい。
【0041】
本体60の内壁面は、複数の環状の折り目60aを含み得る。本体60は、端壁66と、隣接部分に比べて直径が大きい十二指腸球根67と、十二指腸の下降部分68とを、第1の端部65から第2の端部69に向かう順番で、含むことができる。本体60は、十二指腸の下降部分68と結合された、十二指腸の水平部分及び十二指腸の上昇部分をさらに含み得る。
【0042】
乳頭64は、十二指腸の下降部分68に、本体60の内側に向かって突出して配置することができる。接続ダクト63は、乳頭64が突出する部分において、本体60の外面から突出し得る。乳頭64は、連通孔63aを含み得る。管腔61a及び62aは、連通孔63aを介して本体60の内部と連通していてもよい。
【0043】
乳頭64は、本体60において第2の端部69に向かって傾けることができる。接続ダクト63は、乳頭64に対応する角度で本体60に接続することができる。乳頭64及び接続ダクト63の傾斜角は、人体の乳頭及び接続ダクトの傾斜角に近似することができる。
本体60は、接続ダクト63が本体60に接続されている場所に環状部分70を含み得る。環状部分70は、本体60の他の部分よりも厚くてもよい。例えば、環状部分70は、約5mm~約8mmの範囲の厚さを有し得、本体60の他の部分は、約3mm~約5mmの範囲の厚さを有し得る。さらに、環状部分70は、約2cmの直径を有し得る。環状部分70は、連通孔63aを取り囲むことができる。環状部分70は円錐形であり得る。
【0044】
図2に示されるように、臓器モデル支持体30は、モデル52が収容ピット31にあるとき、十二指腸モデル52の上に突出する突起41を含み得る。より具体的には、開口面32の一部は、収容ピット31に収容された1つ以上の臓器モデルよりも上に突出して、突起41を形成することができる。突起41は、開口面32を占める面積が近位部分よりも遠位部分で大きくなるように形成することができる。突起41は、十二指腸モデル52を湾曲した溝部分38で挟むように、拡幅部39から湾曲した溝部分38に向かって突出し得る。
【0045】
突起41の遠位部分は、十二指腸球根67と接続ダクト63との間の部分で、収容ピット31に収容される十二指腸モデル52を保持することができる。突起41は、開口面32に突出する突起41の長さよりも薄い厚さ(収容ピット31の深さ方向の寸法)を有し得る。したがって、突起41は、十二指腸モデル52の弾性変形を妨げることなく、十二指腸モデル52を第3の溝37に保持する。
【0046】
図5に示されるように、収容ピット31の深さ方向(
図5のZ方向)において、係合凹部40aは、突起41の近位部分の下に配置され得る。これは、十二指腸モデル52を3つの部分、すなわち、突起41及び係合凹部40a及び40bで保持することができる。十二指腸モデル52を保持する3つの部分はそれぞれ、十二指腸モデル52の弾性変形を可能にする。したがって、十二指腸モデル52に挿入された内視鏡12は、人体から受ける反力をシミュレートする反力を受けることができる。
【0047】
図2に示されるように、訓練装置11は、十二指腸モデル52の本体60を保持する拘束装置16を含み得る。拘束装置16は、例えば、十二指腸の下降部分68を保持する細長いクリップであり得る。拘束装置16は、十二指腸モデル52及び臓器モデル支持体30よりも高い剛性を有し得る。十二指腸モデル52は、拘束装置16をどこに取り付けるかを示すマーク52a(
図1を参照)を含み得る。
収容ピット31は、2つの係合穴42を含み得、それらのそれぞれは、拘束装置16の2つの端部のうちの1つと係合され得る。拘束装置16は、十二指腸モデル52を所定の位置に保持するために係合穴42の1つに取り付けられたピンであり得る。
【0048】
臓器モデル支持体30の収容ピット31は、十二指腸モデル52の配置を可能にするようにそれぞれ設定された第1の領域44及び第2の領域45を含み得る。この場合、収容ピット31は、第1の領域44に対応する第1の係合穴42と、第2の領域45に対応する第2の係合穴43とを含み得る。十二指腸モデル52の向きは、十二指腸モデル52が第1の領域44に配置されている場合と、十二指腸モデル52が第2の領域45に配置されている場合とで異なり得る。例えば、第1の領域44は、湾曲した溝部分38に沿って配置され得、第2の領域45は、小さな深さ方向の寸法を有する拡幅部39に沿って配置され得る。
【0049】
十二指腸モデル52は、第1の領域44と第2の領域45との間に位置する第3の領域(図示せず)及び第4の領域(図示せず)をさらに含み得る。領域44及び45は、十二指腸の下降部分68に一致して形作られた異なる窪みであり得る。あるいは、十二指腸モデル52は、拡幅部39の任意の場所で拘束装置16によって保持され得る。収容領域71(
図3を参照)は、十二指腸モデル52の胆管61及び膵管62を収容するために、突起41と第2の領域45との間の拡幅部39に画定され得る。
【0050】
拘束装置16が第1の領域44に配置された十二指腸モデル52に取り付けられると、拘束装置16は、
図2の実線で示すように、十二指腸モデル52を第1の領域44に保持するために第1の係合穴42と係合することができる。
図6に示すように、拘束装置16が第2の領域45に配置された十二指腸モデル52に取り付けられると、拘束装置16は第2の係合穴43と係合して、十二指腸モデル52を第2の領域45に保持することができる。
【0051】
係合穴42及び43の壁は、可撓性材料から形成することができる。これにより、拘束装置16が取り付けられた状態でも、内視鏡12に押されたときに十二指腸モデル52が弾性変形することができる。これは、内視鏡12が十二指腸モデル52に挿入されたときの人体の感触をシミュレートする。
【0052】
十二指腸モデル52は、十二指腸モデル52が胃モデル51に接続されている部分で胃モデル51に相対して回転して、胆管61及び膵管62の突出方向を変えることができる。十二指腸モデル52及び胃モデル51が互いに接続されたリング状の端面を有する場合、回転が容易になり得る。例えば、結合器46を取り外した後、十二指腸モデル52を回転させて、十二指腸モデル52の胆管61及び膵管62が開口部31bから突出するようにすることができる。次に、十二指腸モデル52及び胃モデル51を結合器46に再び接続することができる。
【0053】
例えば、十二指腸モデル52は、
図5に示される時計回り方向又は反時計回り方向に回転されて、内視鏡12が挿入されたときの乳頭64及び連通孔63aの外観を変えることができる。十二指腸乳頭の位置は個人によって異なるため、十二指腸乳頭の異なる位置をシミュレートすることにより、医師はさまざまな操作を実行するように訓練することができる。
【0054】
接続された臓器モデル51及び52のフランジ54又は結合器46は、臓器モデル51及び52の相対位置を示すための1つ以上のマークを含み得る。マークの例には、キャリブレーション、ステッカー、ノッチ、及び突起が含まれる。マークを基準として臓器モデル51及び52を相対的に回転させる場合、内視鏡等の医療機器を操作するように医師を訓練する際に、回転量を容易に確認することができる。
【0055】
複数の十二指腸モデル52は、各モデル52の乳頭64が異なって傾けられた状態で準備され得る。この場合、それぞれが他の十二指腸モデル52の乳頭64とは異なって傾斜した乳頭64を有する異なる十二指腸モデル52が、胃モデル51に接続される。十二指腸乳頭の傾きには個人差がある。したがって、十二指腸モデル52は、十二指腸乳頭の異なる傾斜をシミュレートすることができ、多種多様な操作を実行するように医師を訓練するために使用することができる。
【0056】
次に、十二指腸モデル52、臓器モデル支持体30、及び訓練装置11の動作について説明する。
訓練装置11は、内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)に関連する技術である、カニューレ挿入又は内視鏡的括約筋切開術(EST)を実施するように医師を訓練するのに適している可能性がある。
【0057】
内視鏡12は、人体の十二指腸に挿入するために、食道、噴門、及び胃を通って移動することができる。特に、内視鏡12が噴門及び胃の中を移動する過程において、内視鏡12は、噴門及び胃の形状に合わせて様々な方向に前進させる必要がある。この点で、訓練装置11は、人体をシミュレートする環境下で内視鏡12を十二指腸に挿入するように医師を訓練するために、食道モデル50、噴門穴55a、及び胃モデル51を含み得る。
【0058】
実質的にすべての臓器モデル50、51、及び52は、それぞれ、溝35、36、及び37に収容され得る。したがって、内視鏡12が臓器モデル50、51、又は52の内壁と接触する角度に関係なく、収容ピット31からの反力を内視鏡12に加えることができる。これは、訓練中に内視鏡12が臓器モデル50、51、及び52に挿入されたときの人体の感触をシミュレートする。
【0059】
ERCP処置で使用される十二指腸用の内視鏡は、一般に、前進方向に相対して後方で斜めに撮影された画像を撮影する後方斜め観察用の画像化装置を含む。また、人体の十二指腸では、十二指腸乳頭が大腸に向かって斜めに突出している(患者が立っているときは下向き)。したがって、内視鏡12が十二指腸に挿入されると、内視鏡は、乳頭の開口部を探す前に、乳頭を超えて前進する可能性がある。
【0060】
これに関して、十二指腸モデル52の十二指腸乳頭64は、本体60の第2の端部69に向かって斜めに延びることができる。したがって、連通孔63aは、内視鏡12が十二指腸モデル52に挿入されたときの人体における視界をシミュレートすることができる。例えば、内視鏡12を十二指腸の下降部68の遠位側に前進させた後、内視鏡12を引き戻して、乳頭64及び連通孔63aを探すことができる。
【0061】
内視鏡を操作するように医師などの人を訓練するために、ワイヤ13を連通孔63aに挿入して乳頭64を切開するとき、内視鏡によって画像12を撮影しながら、ワイヤ13は、乳頭64(
図4を参照)に向かって突出させる。ワイヤ13が乳頭64から遠くに移動する場合、ワイヤ13は、本体60の薄い部分、すなわち、環状部分70の周りに突き刺さる。環状部分70及び環状部分70の周りの部分は、拡幅部39の広い開口部から外側に露出され得る。したがって、ワイヤ13によって形成された突き刺し痕は視覚的であり、容易に見つけることができるであろう。したがって、訓練結果を簡単に確認できる。
【0062】
十二指腸モデル52の向きは、結合器46を取り外して十二指腸モデル52を回転させることによって、又は十二指腸モデル52を第1の領域44と第2の領域45との間で移動させることによって変更することができる。十二指腸モデル52の向きを変えるとき、例えば、
図7の第1のイメージ18及び
図8の第2のイメージ19によって示されるように、乳頭64及び連通孔63aの向きが変わり得る。このようにして、乳頭64及び連通孔63aは、内視鏡12を用いて異なる角度から視認することができ、その結果、医師は、多種多様な操作を実行するように訓練され得る。
【0063】
胆管61及び膵管62は、それぞれ、透明な管14に接続され得る。したがって、胆管61又は膵管62へのガイドワイヤの挿入を実施する場合、胆管61又は膵管62を通るガイドワイヤの動きは、管14内で視認され得る。これにより、訓練結果を簡単に確認できる。
【0064】
図6に示されるように、訓練装置11は、2つのチューブ14を保持する保持プレート17を含み得る。保持プレート17は、2つのチューブ14の挿入を可能にする2つの挿入リング17aを含み得る。保持プレート17は、臓器モデル支持体30の開口面32上に配置され得る。これは、管14、胆管61、又は膵管62が拡幅部39の開口部から突出している場合でも、管14、胆管61、及び膵管62を弾性的に変形可能な方法で保持する。したがって、内視鏡12が管14、胆管61、及び膵管62に挿入されたときに、人体から内視鏡12に加えられる反力がシミュレートされ得る。
【0065】
臓器モデル50、51、及び52、臓器モデル支持体30、及び訓練装置11の少なくとも特定の実施形態は、以下に説明される1つ以上の利点を有する。
(1)収容ピット31は、可撓性材料で形成することができる。したがって、医師が内視鏡12を臓器モデル50、51、及び52に挿入すると、医師は、収容ピット31からの反力を感じる。これは、内視鏡を操作するように医師を訓練するときに、人体の操作感をシミュレートする。
【0066】
(2)収容ピット31は、臓器モデル50、51、及び52をそれぞれ収容する溝35、36、及び37を含み得る。したがって、医師は、内視鏡12を食道及び胃を通して十二指腸に操作することを練習できる。
【0067】
(3)内視鏡12が十二指腸モデル52を押すと、
図3の一点鎖線で示すように、第2の係合凹部40bに沿って第1の係合凹部40aと係合する部分を中心に結合器46を傾けることができる。これにより、十二指腸モデル52のわずかな動きが可能になる。さらに、第3の溝37は、十二指腸モデル52よりもわずかに大きくすることができる。これにより、十二指腸モデル52と第3の溝37との間に、十二指腸モデル52の移動を可能にする間隙が生じる。
【0068】
十二指腸モデル52の弾性変形及び動き、ならびに収容ピット31の弾性変形は、内視鏡12が人体の臓器に接触したときの内視鏡12の感触をシミュレートする。内視鏡12が十二指腸モデル52の内壁から離れると、弾性変形した十二指腸モデル52及び臓器モデル支持体30は元の形状に戻り、結合器46は元の位置に戻る。
【0069】
(4)臓器モデル支持体30の収容ピット31は、第1の溝35と第2の溝36の境界近く、及び第2の溝36と第3の溝37の境界近くの係合凹部40を含み得る。臓器モデル50、51、及び52を結合する結合器46は、それぞれ、対応する2つの係合凹部40と係合して、臓器モデル50、51、及び52の弾性変形を可能にしながら、臓器モデル50、51、及び52を溝35、36、及び37の適切な位置に保持することができる。
【0070】
(5)臓器モデル支持体30は、収容ピット31に収容される十二指腸モデル52の上に突出する突起41を含む。突起41は、十二指腸モデル52を収容ピット31内に保持することができる。したがって、十二指腸モデル52は、収容ピット31、特に拡幅部39から突出しない。
【0071】
(6)十二指腸モデル52の向きは、十二指腸モデル52を第1の領域44及び第2の領域45に配置することによって変更することができる。これは、十二指腸乳頭のさまざまな傾きをシミュレートし、さまざまな操作を実行するように医師を訓練するために使用できる。十二指腸の形状は個人によって異なる。したがって、十二指腸モデル52の向きを変えることにより、十二指腸の異なる形状をシミュレートして、医師が多種多様な操作を実行するように訓練することができる。
【0072】
(7)十二指腸モデル52では、本体60、胆管61、膵管62、十二指腸乳頭64を一体的に形成することができる。例えば、十二指腸乳頭部材を本体60から分離する場合、十二指腸乳頭部材を本体60に分離可能に取り付けると、十二指腸乳頭部材と本体60との間に継ぎ目が形成される。縫い目に接触したときの内視鏡12の感触は、人体の感触とは大きく異なるであろう。この点、十二指腸乳頭64は、本体60と一体的に形成され得る。これは、内視鏡12を用いた人体の感触をシミュレートする。したがって、内視鏡的逆行性胆道膵管造影(ERCP)に関連する技術である、カニューレ挿入、ガイドワイヤ挿入、EST、又はステント留置を行うように医師を訓練するときに、人体の感触をシミュレートすることができる。
【0073】
(8)十二指腸モデル52は、胆管61及び膵管62が本体60に接続されている位置に環状部分70を含み得る。環状部分70及び環状部分70の周りの部分は、拡幅部39の広い開口部を通して外部に露出され得る。したがって、ワイヤ13によって形成された突き刺し痕は視覚的であり、容易に見つけることができるであろう。したがって、訓練結果を簡単に確認できる。
【0074】
(9)十二指腸乳頭64は、本体60において第2の端部69に向かって傾斜している。したがって、内視鏡12によって撮影された十二指腸乳頭64の画像は、人体の画像に近いであろう。さらに、ERCPに関連する技術を実行するように医師を訓練するときに、人体に対して実行される操作をシミュレートすることができる。
【0075】
(10)十二指腸モデル52は、幽門開口部66aを含み得る。したがって、医師は、幽門を通して内視鏡を動かすために必要な操作を実行するように訓練することができる。
(11)訓練装置11は、臓器モデル50、51、及び52を開口部31bを通して収容ピット31に配置することによって容易に設定することができる。これに対し、臓器モデル50、51、及び52を取り巻く臓器が形成され、臓器モデル50、51、及び52とは別に配置される場合、訓練装置11を設定するために時間が必要となる可能性がある。
【0076】
(12)臓器モデル50、51、及び52は、結合器46によって分離可能な方法で互いに結合することができる。したがって、例えば、乳頭64を切開するための操作を実施した後、使用された十二指腸モデル52を胃モデル51から取り外して、新しい十二指腸モデル52と交換することができる。このようにして、臓器モデル50、51、及び52のそれぞれを容易に交換することができる。
【0077】
(13)十二指腸モデル52に取り付けられた拘束装置16は、十二指腸モデル52を第1の領域44に保持するために、第1の係合穴42と係合することができる。さらに、十二指腸モデル52に取り付けられた拘束装置16は、第2の係合穴43と係合して、十二指腸モデル52を第2の領域45に保持することができる。十二指腸の向きには個人差がある。したがって、十二指腸モデル52の向きを変えることにより、医師は、多種多様な操作を実行するように訓練することができる。さらに、十二指腸乳頭の位置には個人差がある。乳頭64の位置及び向きは、本体60を動かすことによって変更することができる。これにより、乳頭64をさまざまな場所でシミュレートできる。
【0078】
本開示が他の多くの特定の形態で具体化され得ることは、当技術分野の当業者には明らかであるはずである。特に、本開示は、以下の形態でも具体化され得ることを理解されたい。
【0079】
1つ以上の臓器モデルには、咽頭、大腸、及び尿管などの他の器官のモデルも含まれ得る。
1つ以上の臓器モデルは、人体器官のモデルに限定されず、動物器官のモデルであり得る。
【0080】
上記実施形態の臓器モデル支持体30は、直方体に限定されず、任意の適切な形状であり得る。例えば、臓器モデル支持体30は、人体のような形状にすることができ、臓器モデル支持体30に対応する形状のケースに収容することができる。
【0081】
さらに三次元的な収容ピット31を形成するために、人体の前面に対応する形状の収容ピット31を含む臓器モデル支持体30を、人体の背面に対応する形状の収容ピット31を含む臓器モデル支持体30と、2つの臓器モデル支持体30の開口部31bが互いに結合された様式で接合することができる。この場合、溝35、36、及び37の開口部は、弾性部材によって覆われ得る。これにより、人体に近い感触のシミュレーションが可能となる。2つの臓器モデル支持体30は、例えば、訓練装置11が容易に設置されるように、例えば、ケース20のボックス21及び蓋22にそれぞれ収容され得る。
【0082】
臓器モデル支持体30は、全体が可撓性材料から形成される必要はない。
訓練装置11は、内視鏡12の挿入開口部として機能する人体の頭、口、又は鼻腔のモデルを含み得る。
【0083】
訓練装置11は、臓器モデル50、51、及び52のうちの少なくとも1つのみを必要とし得る。
本実施例及び実施形態は、例示的であり、限定的ではないと見なされるべきであり、開示された事項は、本明細書に与えられた詳細に限定されるべきではない。
【0084】
訓練装置、臓器モデルの任意の実施形態の1つ以上の態様、又は本開示の他の任意の態様を、他の実施形態のいずれかと組み合わせて使用できることを理解されたい。本明細書に記載の実施形態のいずれかの1つ以上の態様を使用して、ヒト又は他の動物の体をシミュレートできることも理解されたい。
【0085】
さらに、特定の例示的な実施形態が本明細書で集合的に例示及び説明され得るが、同じ又は同様の目的を達成するように設計されたさらなる任意の構成が、本明細書で説明及び示される特定の実施形態の代わりになり得ることを理解されたい。この開示は、様々な実施形態のその後のすべての適応又は変形例をカバーすることを意図している。 上記の実施形態、及び本明細書に具体的に記載されていない他の実施形態の組み合わせは、発明の詳細な説明を検討することにより、2つの臓器モデル支持体30の開口部31bが互いに結合された当業者には明らかであろう。
【0086】
本開示の他の例示的な実施形態は、本明細書に開示される例示的な実施形態の仕様及び実施を考慮することにより、当業者には明らかであろう。明細書及び実施例は単なる例示と見なされることが意図されており、以下の特許請求の範囲によって定義される本開示の範囲及び精神から逸脱することなく、形式及び詳細の逸脱を行うことができる。