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特許7420772水素ステーション、水素ステーション用制御部及び水素ステーション用のプログラム
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  • 特許-水素ステーション、水素ステーション用制御部及び水素ステーション用のプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】水素ステーション、水素ステーション用制御部及び水素ステーション用のプログラム
(51)【国際特許分類】
   C25B 1/04 20210101AFI20240116BHJP
   H02J 15/00 20060101ALI20240116BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20240116BHJP
   H02J 3/38 20060101ALI20240116BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240116BHJP
   C25B 15/02 20210101ALI20240116BHJP
   H01M 8/0656 20160101ALI20240116BHJP
   H01M 8/04298 20160101ALI20240116BHJP
   H01M 8/04858 20160101ALI20240116BHJP
   H01M 8/04313 20160101ALI20240116BHJP
【FI】
C25B1/04
H02J15/00 G
H02J3/00 180
H02J3/38 170
C25B9/00 A
C25B15/02
H01M8/0656
H01M8/04298
H01M8/04858
H01M8/04313
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021115645
(22)【出願日】2021-07-13
(65)【公開番号】P2023012161
(43)【公開日】2023-01-25
【審査請求日】2022-11-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(72)【発明者】
【氏名】池谷 浩二
【審査官】瀧口 博史
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0109394(US,A1)
【文献】特開2002-095167(JP,A)
【文献】特開2020-162299(JP,A)
【文献】特開2020-202637(JP,A)
【文献】特開2017-046522(JP,A)
【文献】特開2003-047175(JP,A)
【文献】特表2016-530859(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C25B
H02J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力会社の電力網から供給される電気を用いて水を電気分解して水素を生成する電解槽と、前記電解槽により生成された前記水素を貯める水素タンクと、前記水素タンクの前記水素から電気を生成する燃料電池と、前記燃料電池により生成された電気を交流に変換して前記電力網に供給する変換器と、前記水素タンクに貯められた前記水素を他の水素タンクに充填する充填器と、を有する水素生成装置と、
前記水素生成装置を制御する制御部と、を備えた
水素ステーションであって、
前記制御部は、前記電力会社の職員により操作される端末と通信可能に設けられ、
前記端末から水素生成要求を受信すると、前記水素生成装置の状態に基づいて前記水素の生成が可能か否かを判定する第1判定部と、
前記第1判定部の判定結果を前記端末に送信する第1送信部と、
前記端末から売電要求を受信すると、前記水素生成装置の状態に基づいて売電が可能か否かを判定する第2判定部と、
前記第2判定部の判定結果を前記端末に送信する第2送信部と、を有し、
前記第2判定部は、前記水素タンクの残量が所定値以上か以下を判定し、前記残量が前記所定値以上である場合には前記充填器から前記水素が出力されているか否かを更に判定し、前記水素が出力されていない場合には前記売電が可能であると判定し、前記残量が前記所定値未満である場合、又は、前記充填器から前記水素が出力されている場合には前記売電が不可能であると判定する
水素ステーション。
【請求項2】
請求項1に記載の水素ステーションにおいて、
前記制御部は、前記第1判定部により前記水素の生成が可能であると判定されると、前記電解槽に前記電力網からの電気を利用して前記水を電気分解させて前記水素を生成させる第1制御部と、
前記第2判定部により前記売電が可能であると判定されると、前記水素タンクからの前記水素を前記燃料電池に供給させると共に前記変換器に前記燃料電池により生成された電気を前記電力網に供給させる第2制御部と、を有する
水素ステーション。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の水素ステーションであって、
前記水素ステーションは、家庭内に設置され、
前記水素生成装置は、前記家庭内に設置された太陽光発電と、
記変換器の出力を前記家庭内の電気設備及び前記電力網の間で切り替える切替部と、
前記電解槽が前記水素を生成する際に利用する電力が前記電力会社の前記電力網から供給される状態と、その電力が前記太陽光発電から供給される状態と、を切り替える第2の切替部と、をさらに有する
水素ステーション。
【請求項4】
電力会社の電力網から供給される電気を用いて水を電気分解して水素を生成する電解槽と、前記電解槽により生成された前記水素を貯める水素タンクと、前記水素タンクの前記水素から電気を生成する燃料電池と、前記燃料電池により生成された電気を交流に変換して前記電力網に供給する変換器と、前記水素タンクに貯められた前記水素を他の水素タンクに充填する充填器と、を有する水素生成装置を制御する水素ステーション用制御部であって、
前記電力会社の職員により操作される端末と通信可能に設けられ、
前記端末から水素生成要求を受信すると、前記水素生成装置の状態に基づいて前記水素の生成が可能か否かを判定する第1判定部と、
前記第1判定部の判定結果を前記端末に送信する第1送信部と、
前記端末から売電要求を受信すると、前記水素生成装置の状態に基づいて売電が可能か否かを判定する第2判定部と、
前記第2判定部の判定結果を前記端末に送信する第2送信部と、を備え
前記第2判定部は、前記水素タンクの残量が所定値以上か以下を判定し、前記残量が前記所定値以上である場合には前記充填器から前記水素が出力されているか否かを更に判定し、前記水素が出力されていない場合には前記売電が可能であると判定し、前記残量が前記所定値未満である場合、又は、前記充填器から前記水素が出力されている場合には前記売電が不可能であると判定する
水素ステーション用制御部。
【請求項5】
電力会社の電力網から供給される電気を用いて水を電気分解して水素を生成する電解槽と、前記電解槽により生成された前記水素を貯める水素タンクと、前記水素タンクの前記水素から電気を生成する燃料電池と、前記燃料電池により生成された電気を交流に変換して前記電力網に供給する変換器と、前記水素タンクに貯められた前記水素を他の水素タンクに充填する充填器と、を有する水素生成装置を制御するための水素ステーション用のプログラムであって、
コンピュータに、
前記電力会社の職員により操作される端末から水素生成要求を受信すると、前記水素生成装置の状態に基づいて前記水素の生成が可能か否かを判定する第1判定部と、
前記第1判定部の判定結果を前記端末に送信する第1送信部と、
前記端末から売電要求を受信すると、前記水素生成装置の状態に基づいて売電が可能か否かを判定する第2判定部と、
前記第2判定部の判定結果を前記端末に送信する第2送信部と、して機能させ、「
前記第2判定部は、前記水素タンクの残量が所定値以上か以下を判定し、前記残量が前記所定値以上である場合には前記充填器から前記水素が出力されているか否かを更に判定し、前記水素が出力されていない場合には前記売電が可能であると判定し、前記残量が前記所定値未満である場合、又は、前記充填器から前記水素が出力されている場合には前記売電が不可能であると判定する
水素ステーション用のプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水素ステーション、水素ステーション用制御部及び水素ステーション用のプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、燃料電池自動車などに搭載される燃料電池に燃料としての水素を供給する水素ステーションが知られている。一般的に、これら水素ステーションには、ガソリンスタンドと同様に、別の場所で生成された水素を輸送して、水素タンクに補充することが考えられていた(特許文献1~4)。
【0003】
また、水素ステーションに太陽光発電などの自家発電機と、自家発電機により発電された電気を利用して水素を生成する水素生成装置と、を設け、水素生成装置により発生した水素により水素タンクを補充することが考えられている(特許文献5)。
【0004】
しかしながら、特許文献1~4の技術では、水素の輸送にコストがかかる、という問題があった。また、特許文献5の技術では、自家発電機の発電量が十分でない、という問題があった。
【0005】
そこで、近年、水素ステーションに電力会社の電力網によって供給される電気を利用して水素を生成する水素生成装置を設け、水素生成装置により発生した水素により水素のタンクを補充することが考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2020/075771号
【文献】特開2005-220946号公報
【文献】特開2017-9069号公報
【文献】特開2016-170594号公報
【文献】特開2003-257458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、単純に水素タンクが減ったタイミングで電力網によって供給される電気を利用して水素を生成するだけでは、電力会社での電力供給の効率化に貢献できていない、という問題があった。
【0008】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、電力会社での電力供給の効率化に貢献できる水素ステーション、水素ステーション用制御部及び水素ステーション用のプログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述した目的を達成するために、本発明に係る水素ステーション、水素ステーション用制御部及び水素ステーション用プログラムは、下記[1]~[3]を特徴としている。
【0010】
[1]
電力会社の電力網から供給される電気を用いて水を電気分解して水素を生成する電解槽と、前記電解槽により生成された前記水素を貯める水素タンクと、前記水素タンクの前記水素から電気を生成する燃料電池と、前記燃料電池により生成された電気を交流に変換して前記電力網に供給する変換器と、前記水素タンクに貯められた前記水素を他の水素タンクに充填する充填器と、を有する水素生成装置と、
前記水素生成装置を制御する制御部と、を備えた
水素ステーションであって、
前記制御部は、前記電力会社の職員により操作される端末と通信可能に設けられ、
前記端末から水素生成要求を受信すると、前記水素生成装置の状態に基づいて前記水素の生成が可能か否かを判定する第1判定部と、
前記第1判定部の判定結果を前記端末に送信する第1送信部と、
前記端末から売電要求を受信すると、前記水素生成装置の状態に基づいて売電が可能か否かを判定する第2判定部と、
前記第2判定部の判定結果を前記端末に送信する第2送信部と、を有し、
前記第2判定部は、前記水素タンクの残量が所定値以上か以下を判定し、前記残量が前記所定値以上である場合には前記充填器から前記水素が出力されているか否かを更に判定し、前記水素が出力されていない場合には前記売電が可能であると判定し、前記残量が前記所定値未満である場合、又は、前記充填器から前記水素が出力されている場合には前記売電が不可能であると判定する
水素ステーションであること。
[2]
電力会社の電力網から供給される電気を用いて水を電気分解して水素を生成する電解槽と、前記電解槽により生成された前記水素を貯める水素タンクと、前記水素タンクの前記水素から電気を生成する燃料電池と、前記燃料電池により生成された電気を交流に変換して前記電力網に供給する変換器と、前記水素タンクに貯められた前記水素を他の水素タンクに充填する充填器と、を有する水素生成装置を制御する水素ステーション用制御部であって、
前記電力会社の職員により操作される端末と通信可能に設けられ、
前記端末から水素生成要求を受信すると、前記水素生成装置の状態に基づいて前記水素の生成が可能か否かを判定する第1判定部と、
前記第1判定部の判定結果を前記端末に送信する第1送信部と、
前記端末から売電要求を受信すると、前記水素生成装置の状態に基づいて売電が可能か否かを判定する第2判定部と、
前記第2判定部の判定結果を前記端末に送信する第2送信部と、を備え
前記第2判定部は、前記水素タンクの残量が所定値以上か以下を判定し、前記残量が前記所定値以上である場合には前記充填器から前記水素が出力されているか否かを更に判定し、前記水素が出力されていない場合には前記売電が可能であると判定し、前記残量が前記所定値未満である場合、又は、前記充填器から前記水素が出力されている場合には前記売電が不可能であると判定する
水素ステーション用制御部であること。
[3]
電力会社の電力網から供給される電気を用いて水を電気分解して水素を生成する電解槽と、前記電解槽により生成された前記水素を貯める水素タンクと、前記水素タンクの前記水素から電気を生成する燃料電池と、前記燃料電池により生成された電気を交流に変換して前記電力網に供給する変換器と、前記水素タンクに貯められた前記水素を他の水素タンクに充填する充填器と、を有する水素生成装置を制御するための水素ステーション用のプログラムであって、
コンピュータに、
前記電力会社の職員により操作される端末から水素生成要求を受信すると、前記水素生成装置の状態に基づいて前記水素の生成が可能か否かを判定する第1判定部と、
前記第1判定部の判定結果を前記端末に送信する第1送信部と、
前記端末から売電要求を受信すると、前記水素生成装置の状態に基づいて売電が可能か否かを判定する第2判定部と、
前記第2判定部の判定結果を前記端末に送信する第2送信部と、して機能させ、「
前記第2判定部は、前記水素タンクの残量が所定値以上か以下を判定し、前記残量が前記所定値以上である場合には前記充填器から前記水素が出力されているか否かを更に判定し、前記水素が出力されていない場合には前記売電が可能であると判定し、前記残量が前記所定値未満である場合、又は、前記充填器から前記水素が出力されている場合には前記売電が不可能であると判定する
水素ステーション用のプログラムであること。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、電力会社での電力供給の効率化に貢献できる水素ステーション、水素ステーション用制御部及び水素ステーション用のプログラムを提供できる。
【0012】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、第1実施形態における本発明の水素ステーションの構成図である。
図2図2は、図1に示す水素ステーションを構成する制御ユニットの構成図である。
図3図3は、電力会社で行われる出力制御について説明するためのグラフである。
図4図4は、図1に示す制御ユニットの処理手順を示すフローチャートである。
図5図5は、第2実施形態における本発明の水素ステーションの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明に関する具体的な実施形態について、各図を参照しながら以下に説明する。
【0015】
(第1実施形態)
第1実施形態の水素ステーションについて説明する。第1実施形態の水素ステーション1は、水素の輸送トラックや、燃料電池車両に水素を充填するための水素スタンド内に設置されている。同図に示すように、水素ステーション1は、電力会社の電力網20から供給される電気を用いて水素を生成する水素生成装置2と、この水素生成装置2を制御する制御部、水素ステーション用制御部としての制御ユニット3と、を備えている。水素生成装置2は、電解槽21と、水素を貯める水素タンク22と、残量計23と、燃料電池24と、変換器としてのパワーコンディショナ25と、バルブ26、27と、充填器28と、流量計29と、を有している。
【0016】
電解槽21は、電力網20から供給される電気を用いて水を電気分解して水素を生成する。電力網20からの電気は、電気の使用量を計量する電力メータ11を介して電解槽21に供給される。水素タンク22は、電解槽21により生成された水素が貯められる。燃料電池24は、水素タンク22の水素を供給すると、酸素と化学反応を起こして電気を発生する。残量計23は、水素タンク22の残量を計測して、その計測値を後述する制御ユニット3に対して出力する。
【0017】
パワーコンディショナ25は、燃料電池24から発生した直流の電気を交流に変換して電力会社の電力網20に供給する。パワーコンディショナ25から供給される電気は、売電量を計量する売電メータ10を介して電力網20に供給される。バルブ26は、水素タンク22と燃料電池24との間に設けられ、開閉により燃料電池24に供給する水素量を調整できる。バルブ27は、水素タンク22と充填器28との間に設けられ、開閉により充填器28から出力される水素量を調整できる。流量計29は、バルブ27と充填器28との間に設けられ、充填器28から出力される水素量を計測して、その計測値を後述する制御ユニット3に出力する。
【0018】
制御ユニット3は、電解槽21に供給される電気、バルブ26の開閉を制御することにより、水素生成装置2を制御する。制御ユニット3は、図2に示すように、通信回路31と、出力回路32と、入力回路33と、マイクロコンピュータ(以下、マイコン)34と、を有している。通信回路31は、イーサネット無線通信又は有線通信で電力会社の端末30と通信するための回路である。出力回路32は、電解槽21やバルブ26に接続され、電解槽21やバルブ26に対して制御信号を出力するための回路である。
【0019】
入力回路33は、残量計23、流量計29に接続され、残量計23、流量計29の計測値を入力するための回路である。マイコン34は、メモリに格納されたプログラムに従って動作するコンピュータであるCPU(Central Processing Unit)が内蔵され、制御ユニット3全体の制御を司る。
【0020】
次に、上述した構成の水素ステーション1の動作を説明する前に、電力会社で行われる出力制御について図3を参照して説明する。同図に示すように、原子力発電は発電量の調整がしにくい。一方、火力発電は発電量の調整がある程度可能である。そこで、電力会社では、需要と供給のバランスを一致させるため、主に火力発電の出力制御を行っている。具体的は、電力会社は、電力需要を予測して、その電力需要予測に例えば3%のマージンを加算した電力供給が行えるように火力発電の出力制御を行っている。
【0021】
このため、実際の電力需要が電力需要予測よりも少なかった場合、3%以上の電力が余剰電力となってしまう。この余剰電力を少なくするため、マージンを3%以下とした場合、実際の電力需要が電力需要予測よりも多かった場合、電力が足りずに停電などが発生してしまう恐れがある。
【0022】
そこで、本実施形態では、電力会社は、実際の電力需要が電力需要予測よりも少なかった場合、端末30から水素ステーション1に対して水素生成要求を送信し、水素ステーション1に余剰電力から水素を生成させることにより、余剰電力を水素として貯めておくことができる。また、電力会社は、実際の電力需要が電力需要予測よりも多かった場合、端末30から水素ステーション1に対して売電要求を送信し、水素ステーション1から電力網20に電力を供給させる。
【0023】
なお、この水素生成要求、売電要求の送信は、電力会社の職員が端末30を操作して手動で送信してもよい。また、電力会社では、電力使用率を常に計算しているため、端末30が電力使用率を取得し、取得した電力使用率に応じて自動で送信するようにしてもよい。
【0024】
次に、上述した構成の水素ステーション1の動作について図4のフローチャートを参照して説明する。マイコン34は、端末30から要求を受信すると、図4に示すフローチャートの動作を開始する。まず、マイコン34は、水素生成要求を受信すると(S1でY)、第1判定部として機能し、残量計23の計測値を取り込み、水素タンク22が満タンか否かを判定する(S2)。満タンであれば(S2でY)、マイコン34は、水素の生成が不可能であると判定して、第1送信部として機能し、水素生成の不許可信号を端末30に対して送信した後(S3)、処理を終了する。
【0025】
一方、満タンでなければ(S2でN)、マイコン34は、第1送信部として機能し、水素の生成が可能であると判定して、水素生成の許可信号を端末30に対して送信する(S4)。その後、マイコン34は、第1制御部として機能し、電解槽21に電力網20からの電気供給を開始して、電解槽21による水素の生成を開始して(S5)、処理を終了する。
【0026】
また、マイコン34は、売電要求を受信すると(S6でY)、残量計23の計量値を取り込み、水素タンク22の残量が所定値以上あり余力があるか否かを判定する(S7)。余力があると判定すると、マイコン34は、流量計29の計量値に基づいて、バルブ27が開かれていて、充填器28から水素が出力されているか否かを判定する(S8)。水素が出力されていなければ(S8でY)、マイコン34は、第2判定部、第2送信部として機能し、売電が可能であると判定して、売電の許可信号を端末30に送信する(S9)。
【0027】
その後、マイコン34は、第2制御部として機能し、バルブ26を開いて売電を開始させた後(S10)、処理を終了する。バルブ26を開くと、水素タンク22の水素が燃料電池24に供給され、燃料電池24により電気が生成される。また、燃料電池24が生成した電気は、パワーコンディショナ25により交流に変換された後、電力網20に供給される。
【0028】
これに対して、余力がない場合(S7でN)、または、充填器28から水素が出力されていた場合(S8でN)、マイコン34は、第2判定部、第2送信部として機能し、売電が不可能であると判定し、売電の不許可信号を端末30に送信した後(S11)、処理を終了する。
【0029】
上述した第1実施形態によれば、電力会社の端末30から送信される水素生成要求、売電要求に応じて、制御ユニット3が、水素生成可能か否か、売電可能か否かの判定結果を示す許可、不許可信号を電力会社の端末30に送信できる。これにより、電力会社では電力余剰時に余剰電力を水素として貯めてくれる水素ステーション1を把握でき、電力不足時に売電してくれる水素ステーション1を把握することができる。このため、電力需要予測に対する余剰電力のマージンを抑えた電力供給を行うことができ、電力会社での電力供給の効率化に貢献できる。
【0030】
また、水素ステーション1においても、電力余剰時の安価な電気により水素を貯めて、電力が足りないときに高い価格で電気を売ることができる可能性がある。
【0031】
また、上述した第1実施形態によれば、マイコン34は、水素生成の許可信号を送信したとき、水素生成装置2を制御して水素を生成することができ、売電の許可信号を送信したとき水素生成装置2を制御して売電することができる。
【0032】
なお、上述した第1実施形態によれば、マイコン34は、水素タンク22の状態によって水素の生成が可能か否かを判定していたが、これに限ったものではない。マイコン34は、水素生成装置2の状態に基づいて水素の生成が可能か否か判定できればよく、例えば、水素生成装置2、特に電解槽21に故障があるか否かなどによって水素の生成が可能であるか否かを判定するようにしてもよい。
【0033】
また、上述した第1実施形態によれば、マイコン34は、水素タンク22の状態や充填器28の使用状況によって売電が可能か否かを判定していたが、これに限ったものではない。マイコン34は、水素生成装置2の状態に基づいて売電が可能か否か判定できればよく、水素生成装置2、特に燃料電池24やパワーコンディショナ25に故障があるか否かなどによって売電が可能であるか否かを判定するようにしてもよい。
【0034】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の水素ステーションについて説明する。上述した第1実施形態の水素ステーション1は、水素スタンドに設置される場合について説明したが、これに限ったものではない。水素ステーション1Bは、図5に示すように家庭内に設置するようにしてもよい。
【0035】
なお、図5において、上述した第1実施形態で既に説明した図1に示す水素ステーション1と同等の部分については同一符号を付してその詳細な説明を省略する。水素ステーション1Bは、第1実施形態と同様に、水素生成装置2と、制御ユニット3Bと、切替部4と、を備えている。水素生成装置2は、第1実施形態と同等であるため、ここでは詳細な説明を省略する。なお、図5においては、図を簡略化するため、残量計23、バルブ26、27、流量計29については省略してある。
【0036】
第2実施形態では、電解槽21には家庭内に設置された太陽光発電40の余剰電力が供給される。また、切替部4は、パワーコンディショナ25の出力を家庭内の電気設備50及び売電メータ10の間で切り替える。切替部4を電気設備50側に切り替えると、パワーコンディショナ25の出力を電気設備50に供給することができる。切替部4を売電メータ10に切り替えるとパワーコンディショナ25の出力を電力網20に供給することができる。
【0037】
マイコン34は、夜間などに電力が安いときに電解槽21に電力網20からの電気を供給し、水素として貯める。また、マイコン34は、昼間など電気需要が高くなり電力が高いときに水素タンク22に貯めた水素を燃料電池24に供給する。また、マイコン34は、切替部4を電気設備50に切り替える。これにより、燃料電池24により生成された電力を、パワーコンディショナ25を介して電気設備50に供給することができる。また、マイコン34は、第1実施形態と同様に図4に示す動作を行い、売電の許可信号を送信した後は、切替部4を売電メータ10に切り替えて、燃料電池24により生成された電力を、パワーコンディショナ25を介して電力網20に供給する。
【0038】
上述した第2実施形態によれば、太陽光発電40が発電した余剰電力を水素として貯めて、自家用車である燃料電池車両に搭載された他の水素タンクに充填することができる。
【0039】
なお、上述した第2実施形態では、上述した水素ステーション1Bは、家庭内に設置されていたが、これに限ったものではない。水素ステーション1Bとしては、工場や会社などに設置し、社用車である燃料電池に搭載された他の水素タンクに充填してもよい。
【0040】
また、上述した第1、第2実施形態において、燃料電池24が生成した電気を電気自動車に供給する充電器を設けてもよい。
【0041】
また、上述した第1、第2実施形態では、水素ステーション1、1Bから端末30に対して許可信号、不許可信号を送信していたが、これに限ったものではない。例えば、水素ステーション1、1Bから定期的に水素タンク22の残量情報を端末30に送信するようにしてもよい。これにより、電気会社側で各水素ステーション1、1Bの水素タンク22の残量を把握することができるため、水素タンク22の残量が少ない水素ステーション1、1Bに対して優先的に水素生成要求を送信したり、残量が多い水素ステーション1、1Bに対して優先的に売電要求を送信したり、することができる。
【0042】
ここで、上述した本発明に係る水素ステーション、水素ステーション用制御部及び水素ステーション用のプログラムの実施形態の特徴をそれぞれ以下[1]~[5]に簡潔に纏めて列記する。
[1]
水を電気分解して水素を生成する電解槽(21)と、前記電解槽(21)により生成された前記水素を貯める水素タンク(22)と、前記水素タンク(22)の前記水素から電気を生成する燃料電池(24)と、前記燃料電池(24)により生成された電気を交流に変換して電力会社の電力網(20)に供給する変換器(25)と、を有する水素生成装置(2)と、
前記水素生成装置(2)を制御する制御部(3、3B)と、を備えた
水素ステーション(1、1B)であって、
前記制御部(3、3B)は、電力会社が所有する端末(30)と通信可能に設けられ、
前記端末(30)から水素生成要求を受信すると、前記水素生成装置(2)の状態に基づいて前記水素の生成が可能か否かを判定する第1判定部(34)と、
前記第1判定部(34)の判定結果を前記端末(30)に送信する第1送信部(34)と、
前記端末(30)から売電要求を受信すると、前記水素生成装置(2)の状態に基づいて売電が可能か否かを判定する第2判定部(34)と、
前記第2判定部の判定結果を前記端末(30)に送信する第2送信部(34)と、を有する
水素ステーション(1、1B)。
【0043】
上記[1]の構成によれば、電力会社の端末(30)から送信される水素生成要求、売電要求に応じて、第1、第2送信部(34)が、水素生成可能か否か、売電可能か否かの判定結果を電力会社の端末(30)に送信できる。これにより、電力会社では電力余剰時に余剰電力を水素として貯めてくれる水素ステーション(1、1B)を把握でき、電力不足時に売電してくれる水素ステーション(1、1B)を把握することができる。このため、電力需要予測に対する余剰電力のマージンを抑えた電力供給を行うことができ、電力会社での電力供給の効率化に貢献できる。
【0044】
[2]
[1]に記載の水素ステーション(1、1B)において、
前記制御部(3、3B)は、前記第1判定部(34)により前記水素の生成が可能であると判定されると、前記電解槽(21)に前記電力網(20)からの電気を利用して前記水を電気分解させて前記水素を生成させる第1制御部(34)と、
前記第2判定部により前記売電が可能であると判定されると、前記水素タンク(22)からの前記水素を前記燃料電池(24)に供給させると共に前記変換器(25)に前記燃料電池(24)により生成された電気を前記電力網(20)に供給させる第2制御部(34)と、を有する
水素ステーション(1、1B)。
【0045】
上記[2]の構成によれば、水素生成可能と判定したとき、第1制御部(34)が、水素を生成するように水素生成装置(2)を制御でき、売電可能と判定したとき、第2制御部(34)が、売電できるように水素生成装置(2)を制御できる。
【0046】
[3]
[1]又は[2]に記載の水素ステーション(1、1B)であって、
前記水素生成装置(2)は、太陽光発電と、
前記水素タンク(22)に貯められた前記水素を他の水素タンク(22)に充填する充填器(28)と、をさらに有し、
前記電解槽(21)は、前記太陽光発電により発電された電力を利用して前記水素を生成する、
水素ステーション(1、1B)。
【0047】
上記[3]の構成によれば、太陽光発電(40)が発電した余剰電力を水素として貯めて、他の水素タンク(22)に充填することができる。
【0048】
[4]
水を電気分解して水素を生成する電解槽(21)と、前記電解槽(21)により生成された前記水素を貯める水素タンク(22)と、前記水素タンク(22)の前記水素から電気を生成する燃料電池(24)と、前記燃料電池(24)により生成された電気を交流に変換して電力会社の電力網(20)に供給する変換器(25)と、を有する水素生成装置(2)を制御する水素ステーション用制御部(3、3B)であって、
電力会社が所有する端末(30)と通信可能に設けられ、
前記端末(30)から水素生成要求を受信すると、前記水素生成装置(2)の状態に基づいて前記水素の生成が可能か否かを判定する第1判定部(34)と、
前記第1判定部(34)の判定結果を前記端末(30)に送信する第1送信部(34)と、
前記端末(30)から売電要求を受信すると、前記水素生成装置(2)の状態に基づいて売電が可能か否かを判定する第2判定部(34)と、
前記第2判定部の判定結果を前記端末(30)に送信する第2送信部(34)と、を備えた
水素ステーション用制御部(3、3B)。
【0049】
上記[4]の構成によれば、電力会社での電力供給の効率化に貢献できる。
【0050】
[5]
水を電気分解して水素を生成する電解槽(21)と、前記電解槽(21)により生成された前記水素を貯める水素タンク(22)と、前記水素タンク(22)の前記水素から電気を生成する燃料電池(24)と、前記燃料電池(24)により生成された電気を交流に変換して電力会社の電力網(20)に供給する変換器(25)と、を有する水素生成装置(2)を制御するための水素ステーション用のプログラムであって、
コンピュータに、
電力会社が所有する端末(30)から水素生成要求を受信すると、前記水素生成装置(2)の状態に基づいて前記水素の生成が可能か否かを判定する第1判定部(34)と、
前記第1判定部(34)の判定結果を前記端末(30)に送信する第1送信部(34)と、
前記端末(30)から売電要求を受信すると、前記水素生成装置(2)の状態に基づいて売電が可能か否かを判定する第2判定部(34)と、
前記第2判定部(34)の判定結果を前記端末(30)に送信する第2送信部(34)と、して機能させる
水素ステーション用のプログラム。
【0051】
上記[5]の構成によれば、電力会社での電力供給の効率化に貢献できる。
【符号の説明】
【0052】
1、1B 水素ステーション
2 水素生成装置
3、3B 制御ユニット(制御部、水素ステーション用制御部)
20 電力網
21 電解槽
22 水素タンク
24 燃料電池
25 パワーコンディショナ(変換器)
28 充填器
30 端末
34 マイコン(1判定部、第1送信部、第2判定部、第2送信部、第1制御部、第2制御部)
40 太陽光発電
図1
図2
図3
図4
図5