(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の精製方法
(51)【国際特許分類】
C07C 303/44 20060101AFI20240116BHJP
C07C 309/15 20060101ALI20240116BHJP
C08F 20/58 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
C07C303/44
C07C309/15
C08F20/58
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021152252
(22)【出願日】2021-09-17
【審査請求日】2023-03-20
(32)【優先日】2020-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】510338248
【氏名又は名称】エスエヌエフ・グループ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】セドリック・ファヴェロ
(72)【発明者】
【氏名】ジョアン・キーファー
(72)【発明者】
【氏名】ブノワ・ルグラ
(72)【発明者】
【氏名】ラファエル・ドゥダン
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-277363(JP,A)
【文献】特開昭54-106427(JP,A)
【文献】特表2020-511510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の精製方法であって、以下の逐次的な工程:
1)アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の水溶液の蒸留によって、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸結晶の懸濁液を調製する工程と、
2)前記懸濁液の固/液分離によって、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸結晶を単離する工程と、
を含み、
蒸留前の、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の水溶液が、溶液の溶媒の全質量に対して、少なくとも80質量%の水を含み、蒸留は、連続的に且つ大気圧未満の圧力で実行されることを特徴とする、方法。
【請求項2】
アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の水溶液が、少なくとも1種の重合抑制剤を含み、重合抑制剤の量が、前記水溶液のアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン
酸の量に対して、1質量%未満であることを特徴とする、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
工程
1)に由来する蒸留された溶媒が、少なくとも部分的に水溶液の中へ再利用されることを特徴とする、請求項1
又は2に記載の方法。
【請求項4】
蒸留が、蒸発
器である蒸留装置において実行されることを特徴とする、請求項1から
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の水溶液が、蒸留装置の中へ向流で通過することを特徴とする、請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
蒸留時間が1~600秒の間に含まれることを特徴とする、請求項1から
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸溶液の
蒸留残渣の温度が、5~90℃の間であることを特徴とする、請求項1から
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
蒸留中の圧力が、1以上1000絶対mbar未満の間に含まれることを特徴とする、請求項1から
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
単離する工程2)が、連続的に実行されることを特徴とする、請求項1から
8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程2)の後に得られるアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の結晶が、少なくとも1種の洗浄溶液で洗浄されることを特徴とする、請求項1から
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
固/液分離工程2)の後に得られる、さもなければ、結晶の洗浄工
程の後に得られる、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸結晶の乾燥操作を含むことを特徴とする、請求項1から1
0のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
工程1)で蒸留されたアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の水溶液中の、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の濃度が、10%と溶液の飽和度との間に含まれることを特徴とする、請求項1から1
1のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続蒸留によるアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸(ATBS)の精製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ATBSとしても公知な、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸は、式:
【0003】
【0004】
を有する、スルホン酸官能基を有するアクリル系モノマーである。
【0005】
それは、アクリル繊維における添加剤として、又は代わりに、様々な分野、例えば、石油産業、建設、テキスタイル、水処理(海水の脱塩、鉱物産業等)若しくは化粧品における分散剤、増粘剤、凝集剤若しくは高吸収剤(superabsorbent)として使用される、ポリマーを得るための出発原料として広く使用される。
【0006】
アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の調製方法で実行される反応は、以下の反応スキームに相当し、ここでアクリロニトリルは、反応の溶媒及び試薬の両方であるために、過剰に存在する。アクリロニトリルは、発煙硫酸(オレウム)及びイソブチレンと接触させられる。
【0007】
【0008】
アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸は、アクリロニトリル溶媒に可溶性ではない。その結果、反応生成物は、反応溶媒中で結晶の懸濁液の形態にある。
【0009】
例としては、文献米国特許第6,448,347号及び中国特許第102351744号は、連続モードによるアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の製造方法を記述している。
【0010】
アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸は、続いて、一般にろ過によってアクリロニトリルから分離され、次に、乾燥される。アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の乾燥は、結晶中に残存するアクリロニトリル及びアクリルアミドの量を低減するために必用である。実際、これら2つの化合物は、CMR発がん性成分として分類されるので、これらの2つの化合物の必用な限り低い含有量を得るために、効果的なろ過、続いて乾燥を実行することが必要である。
【0011】
非常に多くの場合、不純物は、低濃度であってさえ、重合、並びに得られるポリマーの品質、より具体的にはその分子量及び水不溶分のレベルに大きく影響を及ぼすので、追加の精製工程が必要である。
【0012】
従って、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の製造方法に関する、文献国際公開第2009/072480号は、2-メチル-2-プロペニルスルホン酸(IBSA)及び2-メチリデン-1,3-プロピレンジスルホン酸(IBDSA)タイプの不純物が、ある濃度を越えると重合に強く影響を及ぼすことを説明している。
【0013】
アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の多数の精製方法が存在する。ほとんどの場合、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸は、飽和溶液を得るために、高温の溶媒に再溶解される。冷却中に、高純度結晶が得られる。
【0014】
こうして得られた結晶は、次に、残留溶媒を除去することによって結晶の純度をさらに改善するために、真空下で乾燥される。
【0015】
文献米国特許第4,337,215号は、酢酸からの再結晶によって、高温溶解及び冷却ランプによる結晶化によって、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸を精製する方法を記述している。得られた2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の優れた純度にもかかわらず、その方法、収量は、限定され、複数の溶解/冷却工程を伴い、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の再結晶化のための新しいバッチで再使用する前に、使用した酢酸を蒸留によって再生するために、使用した酢酸の処理を必要とする。記述されている方法は、「バッチ」タイプ、すなわち、不連続モードでの方法である。
【0016】
文献中国特許第103664709号は、この長く高価な乾燥工程を省くことを可能にする、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の調製方法を記述している。乾燥工程は、ATBSが可溶性ではない氷酢酸で洗浄する工程によって置き換えられる。この方法は、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の合成期間を短縮可能にするが、再結晶による精製に必要な溶媒消費及び熱的エネルギーは、依然として大きすぎる。記述の方法は、「バッチ」タイプである。
【0017】
これらの方法はすべて、溶媒に溶解したアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の飽和溶液を使用し、高温の場合、結晶を溶解させる工程を必要とし、これは非常にエネルギーを消費する工程を付加し、溶媒の使用に関連する様々な問題(溶媒のハンドリング、輸送及び貯蔵中のリスク、溶媒の性質に関連した使用する装置の劣化、環境フットプリント)を提起する。
【0018】
現行の文脈では、QHSE(品質、健康、安全及び環境)基準に適合する、新しいプロセスを開発する必要性がある。
【0019】
品質、健康、安全、環境(QHSE)ポリシーは、従業員の作業環境、設備及び環境への尊重に特別の注意を払いながら、企業の生産基準との同一化及びその遵守を含む専門技術の領域である:
- 品質:提供される製品の優れた品質の維持
- 健康及び安全:従業員及び設備のリスク低減
- 環境:環境影響を低減した、より環境に優しい方法。
【0020】
出願人は、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の水溶液の減圧下での蒸留によって連続的に実行される、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の精製方法によって、上述の問題が解決され得ることを予想外に発見した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0021】
【文献】米国特許第6,448,347号
【文献】中国特許第102351744号
【文献】国際公開第2009/072480号
【文献】米国特許第4,337,215号
【文献】中国特許第103664709号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の目的は、QHSE期待を満たす、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸精製の新しい方法を提供することである。
【0023】
本発明による方法は、非常に優れた品質の酸性結晶を得て、一方で、有毒な溶媒のハンドリングに関連するリスクを低減し、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸精製方法の環境影響を低減することを可能にする。
【0024】
本発明は、連続蒸留による、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の精製方法に関する。
【0025】
本発明は、本発明による方法による、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の精製の工程を含む、前記2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸(ATBS)の製造方法にも関する。
【0026】
本発明は、さらに、本発明の方法によって得られるアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の結晶の、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の塩又は塩の溶液調製のための使用に関する。
【0027】
本発明は、本発明の方法によって得られるアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の結晶の、ポリマー製造のための使用にも関する。
【0028】
最終的に、本発明は、本発明の方法によって得られる、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸又はその塩の結晶から得られる、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸又はその塩から得られるポリマー、並びに、オイル及びガスの回収における、水の処理における、汚泥の処理における、紙の製造における、建設における、鉱業における、化粧品配合物における、洗剤配合物における、テキスタイルの製造における、又は農業におけるこれらのポリマーの使用にも関する。
【0029】
本発明による方法は、既に存在する、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の調製のためのすべての方法に、組み込まれ得る。
【課題を解決するための手段】
【0030】
アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の精製方法
本発明は、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の精製方法であって、以下の逐次的工程:
1)アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の水溶液の蒸留によって、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸結晶の懸濁液を調製する工程と、
2)前記懸濁液から固/液分離によって、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸結晶を単離する工程と
を含み、蒸留工程は連続的に、且つ大気圧未満の圧力で実行されることを特徴とする、方法を目的とする。
【0031】
その名称が示すように、本発明による精製されたアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸は、酸の形態にある。
【0032】
「逐次的工程」という用語は、互いに経時的に続く工程を呼ぶ。換言すれば、逐次的工程は示された順序に実行され、交換され得ない。他方、1つ又は複数の中間工程は、任意選択で、2つの逐次的工程の間に置かれ得る。
【0033】
「水溶液」という用語は、一般に、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の固体粒子を含まない、水性溶液を意味すると理解される。それにもかかわらず、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の少量の固体粒子が、前記溶液中に存在することは可能である。「少量」という用語は、水溶液の質量に対して、5%未満、好ましくは2%未満、さらにより好ましくは1%未満を意味すると理解される。好ましくは、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の溶液は、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の固体粒子を含有しない。
【0034】
一般に、以下に示される値の範囲の境界は、本発明によって組み合わせられ得る。従って、1つの端によって規定される2つの値の範囲は、これらの2つの端によって境界を定められた値の範囲も規定する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【
図1】本発明による方法(実線)を、その異なる変形(点線)とともに示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0036】
当然、
図1に示される寸法及び要素の比率は、実際と比較して誇張されねばならず、本発明の理解を促進するという唯一の目的で、これは実行された。
【0037】
図1は、本発明による方法の工程を、必須工程は実線で、任意選択の工程は点線で示している。流体の流れは、同じ方法で、すなわち、実線又は点線で表現される。
【0038】
本発明の方法によれば、水溶液中のATBSの流れ1は、一般に蒸留装置によって、工程1)において処理される。この水溶液は、ATBSの水溶液の調製のための任意選択のプレ工程から得られる、又は、それ自体として提供される。ATBS結晶の懸濁液の流れ2、及び工程1)から発生する蒸留された溶媒の流れ3。固/液分離工程2)は、例えば、遠心分離機又はヌッチェタイプの密閉されたフィルターによって実行される。
【0039】
これらの工程、及び任意選択の工程を、
図1を参照して以下で詳述する。
【0040】
プレ工程-アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の水溶液の調製(任意選択)
通常、精製方法は、溶液を冷却する工程の最中に結晶の形成を促進する飽和溶液を得るために、溶媒中の精製されるべき生成物の高温溶解を必要とする。
【0041】
アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の場合に、通常的に使用される溶媒は、有利には酢酸、アクリロニトリル、及び、一般に、精製で通常的に使用され、溶媒の分子当たり1~10個の炭素原子を有するすべての溶媒(すなわち、ほとんどの場合:アルコール、アミド、ケトン、アルデヒド、エーテル、カルボン酸、アルカン、エステル、ニトリル、ハロゲン化炭化水素等)、並びにそれらの混合物である。
【0042】
こうした溶媒は、溶媒のハンドリングに関連するリスクであれ、溶媒の輸送及び貯蔵中のリスクであれ、又は使用する設備の劣化のリスク(特に酸の場合)であれ、それらの使用に関連する異なる問題を提起する。
【0043】
本発明による方法によって、主として水を、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の精製における溶媒として使用することができる。
【0044】
本発明の特別の実施形態によれば、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の水溶液は、蒸留前に、溶液の溶媒の全質量に対して、少なくとも80質量%、好ましくは少なくとも85質量%、より好ましくは少なくとも90質量%、より好ましくは少なくとも92質量%、より好ましくは少なくとも95質量%、さらにより好ましくは少なくとも99質量%の水を含む。好ましくは、それは溶液の溶媒の全質量に対して100質量%の水を含む。
【0045】
アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の水溶液は、例えば、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸を水溶液に溶解させることによって得られる。この溶解は、混合機において実行され得る。例として、非限定的な方式では、こうした混合機は、撹拌機を備える反応器、ループ反応器、スタチックミキサー、マイクロ反応器、及びピストン反応器から選択され得る。
【0046】
本発明による方法で使用されるアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の水溶液は、他の溶媒を含むことが可能である。例として、非限定的な方式では、この/これらの溶媒は、精製されるアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸に存在する不純物から由来し得る。
【0047】
有利には、調製されるアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の水溶液は、溶液の溶媒の全重量に対して20重量%未満、好ましくは15重量%未満、より好ましくは10重量%未満、より好ましくは8重量%未満、さらにより好ましくは5重量%未満、さらにより好ましくは1重量%未満の水以外の溶媒を含有する。好ましくは、前記水溶液は、水以外のいずれの溶媒も含有しない。
【0048】
溶解は、高温(典型的には50℃超)、低温(典型的には10℃未満)、又は室温、すなわち、10℃~40℃の間、好ましくは10℃~30℃の間で実行され得る。有利には、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の溶解は、室温で行われる。
【0049】
アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の水溶液のモノマーは、一般に完全に酸の形態にあり、すなわち、それらはアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の塩の形態で中和されていない。前記水溶液中にアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の塩が存在する場合、それらは典型的には、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸モノマーの溶液の全体に対して、1%未満で存在する。
【0050】
工程1)で蒸留される、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の水溶液中のアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の濃度は、一般に、(水溶液の質量に対して)10質量%と、本明細書で溶液の飽和度(saturation)と呼ばれる溶液の飽和につながるパーセントとの間である。好ましくは、それは、20質量%と溶液の飽和度との間、より好ましくは、30質量%と溶液の飽和度との間である。1つの特別の実施形態では、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の溶液は飽和している。
【0051】
アクリルアミド-2-メチル-プロパンスルホン酸の水溶液の飽和度値は、温度に依存する。従って、例えば25℃では、溶液の飽和度は58質量%である。当業者は、飽和溶液に到達するために、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の溶液の濃度を、温度の関数として調節することができるであろう。
【0052】
本発明による方法は、濃度が低い、換言すれば、どんな温度でもATBSが10質量%未満である溶液でも作用する。しかしながら、こうした濃度は工業的観点から興味を持たれない。実際に、低濃度は、大量の水の蒸留を必要とし、これはエネルギー消費を増加させ、精製方法の生産性及び収益性を低減させる。
【0053】
通常の精製方法では、モノマーの精製中のモノマーの重合のリスクを回避するために、少なくとも1種の重合抑制剤が通常的に使用される。本発明の方法は、重合抑制剤の量を低減することができる、又は、それらを省くことさえできる。実際に、前記重合抑制剤は重合中にマイナスの影響を有し得るので、それらの量を低減できることは有利である。
【0054】
水溶液が少なくとも1種の重合抑制剤を含む場合、後者は、有利には、例えば非限定的な方式では、フェノチアジン、(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、フェニレンジアミン誘導体、及びそれらの混合物から選択される。好ましくは、重合抑制剤は、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシルである。
【0055】
重合抑制剤は、上述の重合抑制剤ほど十分に作用しないが、フェノール誘導体タイプ、例えば、ヒドロキノン又はパラメトキシフェノールでもあり得る。実際に、フェノール誘導体タイプのこれらの抑制剤は、重合抑制剤として効果的にそれらの役割を果たすために、溶液中の溶存酸素を必要とする。アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の水溶液は、大気圧未満の圧力で連続的に蒸留されるので、これらの抑制剤を確実に適切に機能させるには、溶存酸素は少ない。本発明による方法が少なくとも1種の重合抑制剤を含む場合、それは好ましくは、フェノール誘導体タイプの抑制剤から選択されない。
【0056】
重合抑制剤は、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸中に、若しくはアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の水溶液中に既に存在し得る、又は前記水溶液の形成時に、例えば溶解によって添加され得る、若しくは蒸留工程の最中に連続的に添加もされ得る。
【0057】
アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の水溶液が重合抑制剤を含有している場合、その量は一般に、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の量に対して、1質量%未満、好ましくは0.1質量%未満、より好ましくは0.01質量%未満、さらにより好ましくは0.001質量%未満である。好ましくは、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の水溶液は、重合抑制剤を含まない。
【0058】
通常的に、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の再結晶化は、飽和溶液を有して、前記溶液を冷却する緩やかな工程の最中に結晶化を強制するために、高温溶解工程を必要とする。これらの工程は、多くのエネルギーを消耗する。
【0059】
好ましい実施形態では、本発明による方法は、高温溶解工程、続く徐冷工程を必用としない。
【0060】
アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の水溶液の調製は、不連続的に(バッチで)又は連続的に実行され得る。好ましくは、それは連続的に実行される。
【0061】
工程1)-アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の水溶液の蒸留
本発明による方法は、そのまま提供された、さもなければ、上述のプレ工程において調製された、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の水溶液の連続蒸留の工程を含む。
【0062】
本発明による蒸留工程1)は、連続的に、大気圧未満の圧力で、一般に真空蒸留装置、典型的には蒸発器において実行される。従って、それは、本明細書では「真空蒸留」とも呼ばれる。
【0063】
本発明による「連続法」という用語は、少なくとも1つの流れが連続的に、有利には真空蒸留装置の中へ入り、そこから少なくとも1つの流れが中断することなく去る方法を意味すると理解される。本発明による連続法は、数日、又は数か月の間さえ、中断することなく操作することができる。
【0064】
しかしながら、本発明による連続法が、様々な理由で例外的に中断され、次に、再開されることは可能である。例として、非限定的な方式では、保守操作、又は技術的問題に言及され得る。この方法は、バッチプロセス、又は各バッチ間で少なくとも1回の操作停止を有して実行される半バッチプロセスとは対照的に、依然として連続的であると考えられる。
【0065】
アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の溶液が、典型的には蒸発器を通過することによって蒸留されると、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の結晶が生じ始める。次に、蒸留が実行されるアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の水溶液と、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の固体粒子との共存が存在する。
【0066】
真空蒸留は、蒸発器を使用して実行され得る。それは、流下膜式蒸発器、又は上昇膜式蒸発器、又はスクレープ薄膜蒸発器、又はショートパス蒸発器、又は強制循環式蒸発器、又は螺旋管式蒸発器、又はさらにフラッシュ冷却による蒸発器であり得る。それは、連続撹拌反応器でもあり得る。好ましくは、蒸留は、スクレープ薄膜蒸発器、又はショートパス蒸発器、又は強制循環式蒸発器において実行される。さらにより好ましくは、蒸留はスクレープ薄膜蒸発器において実行される。
【0067】
一般に、蒸発器は、処理されるべき溶液(ATBSの水溶液)の入口、水及び任意の蒸留された溶媒を排出する出口、並びに濃厚溶液(又は結晶及び/若しくは粒子が存在する懸濁液)を排出する出口を含む装置である。「X及び/又はY」という用語は、本発明によれば、X若しくはY、又は、X及びYを意味すると理解される。
【0068】
蒸留装置、有利には蒸発器における、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の水溶液の滞留時間、換言すれば蒸留時間は、有利には1秒~600秒の間、好ましくは3秒~300秒の間、より好ましくは30秒~100秒の間である。滞留時間は、工程1)を実行するために必要な時間、すなわち、ATBSの水溶液の蒸留によって、ATBS結晶の懸濁液を調製する時間に相当する。換言すれば、蒸発器の場合、これは、装置の入口と出口の間のATBSの滞留時間である。
【0069】
蒸留は、垂直又は水平の蒸発器において実行され得る。好ましくは、それは垂直の蒸発器において実行される。
【0070】
アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の水溶液は、蒸発によって発生した蒸気に対して、並流又は向流で循環することができる。好ましくは、それは、蒸留装置の蒸気に対して、向流で循環する。換言すれば、ATBSの水溶液は、蒸留された溶媒に対して並流又は向流で、蒸留装置、有利には蒸発器の中へ導入される。
【0071】
アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の水溶液は、1つ又は複数の直列にある蒸発器において循環し得る。好ましくは、それは単一の蒸発器において循環する。
【0072】
図1を参照して、本発明の方法によれば、工程1)の蒸留装置に入る流れは、プレ工程において供給又は調製された、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の水溶液に相当する、流れ1である。
【0073】
入ってくる流れ1の流速は、有利には100kg/時~200000kg/時の間に含まれ、より有利には200~100000kg/時の間に含まれる。
【0074】
工程1)の蒸留装置から出ていく流れは、流れ1の真空蒸留の後に得られるアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸結晶の懸濁液に相当する流れ2、及び、蒸留中に蒸留される溶媒に相当する流れ3である。
【0075】
流れ2と流れ3の間の質量比は、一般に0.01~200の範囲、好ましくは0.1~10の範囲、より好ましくは1~5の範囲にある。
【0076】
流れ2では、固体(結晶)及び液体(可溶化した)形態にあるアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の割合は、一般に、流れ2の全質量に対して、50質量%~95質量%の間、好ましくは60質量%~80質量%の間を示す。流れ2の成分の残りは、主として水及び潜在的に別の溶媒である。
【0077】
流れ3は、主として水を含有し、微量の1種又は複数の他の溶媒、又はアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸を含有し得る。
【0078】
蒸発速度は、入ってくる流れの流速、及び入ってくる流体と蒸留装置との間の接触表面、ほとんどの場合蒸留装置に関連して使用される熱伝導流体の温度、並びに最終的に蒸発器の圧力に依存する。接触表面は蒸留装置の大きさに依存し、それは、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の水溶液、及び/又は蒸留工程1)の最中に蒸留装置の内側で形成されるアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の懸濁液と接触する、蒸留装置の内部表面として規定される。
【0079】
蒸発速度は以下:
蒸発速度(kg/時/m2)=流速3(kg/時)/蒸留装置の表面(m2)
のように計算される。
【0080】
蒸発速度は有利には、10kg/時/m2~4000kg/時/m2の間、好ましくは20~1000kg/時/m2の間、さらにより好ましくは30~100kg/時/m2の間に含まれる。
【0081】
溶媒の蒸発を促進するために、蒸留は高温で実行され得る。蒸留中の加熱は、様々な技術を通して達成され得る。例として、非限定的な方式では、蒸気を用いる、熱水を用いる、電気を用いる、蒸気圧縮による、又は熱ポンプの使用による加熱に言及され得る。従って、蒸留装置は、高温の熱伝導流体が2つの壁の間を循環する二重壁タイプであり得る。
【0082】
蒸留装置の内壁の温度は、有利には、5~90℃の間、好ましくは30~80℃の間に含まれる。
【0083】
蒸留されたアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の水溶液(すなわち、蒸留装置内側)の温度は、一般に、5~90℃の間、好ましくは25~70℃の間に含まれる。
【0084】
蒸留中の圧力は、有利には、1~1000絶対mbar未満の間(1mbar=100Pa)に含まれる。それは、好ましくは900絶対mbar未満、より好ましくは800絶対mbar未満、より好ましくは700絶対mbar未満、より好ましくは600絶対mbar未満、より好ましくは500絶対mbar未満、より好ましくは400絶対mbar未満、より好ましくは300絶対mbar未満、より好ましくは200絶対mbar未満、より好ましくは100絶対mbar未満、さらにより好ましくは50絶対mbar未満、有利には1絶対mbar超である。絶対圧力は、ゼロ圧力(真空)に対する圧力に相当する。
【0085】
蒸留が実行される水溶液のpHは、一般に好ましくは2未満である。好ましくは、真空蒸留は、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸モノマーの酸性の形態においてであって、前記モノマーの部分的に又は完全に中和された形態においてではなく実行される。
【0086】
本発明の別の特別の実施形態によれば、流れ2は、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の懸濁液の固/液分離工程2)の前に、冷却され得る。これは、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の結晶化を加速することによって、本発明の方法の生産性及び収益性を増加させる効果を有する。
【0087】
流れ2は、例えば、非限定的な方式では、熱交換器を使用して冷却され得る。
【0088】
図1に示される、本発明の特別の実施形態によれば、プレ工程が存在する場合、流れ3は、前処理工程を有して又は有さずに、こうしたプレ工程において部分的に又は全体的に再利用され得る。換言すれば、工程2)からの蒸留された溶媒は、一般にプレ工程において、又は工程1の前の前記水溶液と混合することによって、少なくとも部分的に水溶液の中へ再利用される。
【0089】
図1に示される、本発明の別の特別の実施形態によれば、流れ3は、一般に、液/固分離工程2の後に得られるアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸結晶を洗浄するために、前処理工程を有して且つ/又は有さずに、部分的に又は全体的に再利用され得る。
【0090】
図1に示される、本発明の別の特別の実施形態によれば、流れ3は、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の塩を調製するために、前処理工程を有して又は有さずに、部分的に又は全体的に使用され得る。この塩は、次にポリマーの合成のために一般に使用される。
【0091】
工程2)-蒸留後に得られるアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の懸濁液の固/液分離
アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の結晶は、ほとんどの場合アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の結晶のケーキの形態での製造につながる、流れ2からの液/固分離工程によって、好ましくは単離される。この工程は、例として、非限定的な方式では、水平若しくは垂直の遠心分離機、デカンター、加圧ろ過機、ベルトろ過機、ディスクろ過機、真空-密閉ろ過機、圧力-密閉ろ過機又は回転式ドラムろ過機によって実行される。好ましくは、液/固分離は、遠心分離機又はヌッチェタイプの密閉ろ過機を使用して実行される。
【0092】
液/固分離工程2)の後に回収される水溶液は、主として、水及び可溶化したアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸を含有し、微量の他の溶媒又は不純物を含有し得る。
【0093】
図1に示される、本発明の1つの特別の実施形態によれば、液/固分離後に回収される水溶液は、前処理工程を有して又は有さずに、プレ工程が存在する場合、こうしたプレ工程において部分的に又は全体的に再利用され得る。
【0094】
図1に示される、本発明の1つの特別の実施形態によれば、液/固分離後に回収される水溶液は、前処理工程を有して又は有さずに、蒸留装置の中へ直接又は、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の水溶液に添加されて、工程1)において部分的に又は全体的に再利用され得る。
【0095】
図1に示される、本発明の別の特別の実施形態によれば、液/固分離後に回収される水溶液は、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の塩を調製するために、前処理工程を有して又は有さずに、部分的に又は全体的に再利用され得る。
【0096】
液/固分離は、不連続的に(バッチで)又は連続的に実行され得る。好ましくは、それは連続的に実行される。
【0097】
アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸結晶の洗浄(任意選択)
図1に示される任意選択の洗浄工程の最中に、固/液分離工程2)で得られるアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の結晶は、少なくとも1種の洗浄溶液を使用して、洗浄され得る。
【0098】
洗浄溶液は、主として水を含む。しかしながら、それは他の溶媒、及び溶解したアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸を含み得る。
【0099】
有利には、洗浄溶液は、洗浄溶液の全質量に対して、20質量%以下、好ましくは15質量%未満、より好ましくは10質量%未満、さらにより好ましくは8質量%未満、さらにより好ましくは5質量%未満、さらにより好ましくは1質量%未満の水以外の溶媒を含有する。
【0100】
本発明の特別の実施形態によれば、真空蒸留から得られる結晶は、前記結晶に洗浄溶液を噴霧することによって洗浄され得る。
【0101】
本発明の別の特別の実施形態によれば、真空蒸留から得られる結晶の洗浄は、結晶を洗浄溶液中に懸濁させることによって実行され得る。
【0102】
図1に示される、本発明の別の特別の実施形態によれば、洗浄溶液は、部分的に又は全体的に、流れ3に相当する、工程1)で得られる蒸留された相である。
【0103】
洗浄溶液と、真空蒸留から得られるアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の結晶との間の質量比は、有利には0.1:1~10:1(洗浄溶液/結晶)の間、より好ましくは0.2:1~5:1の間である。
【0104】
この洗浄工程から得られるアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の結晶は、有利には、例えば、
図1に示される、第2の任意選択の液/固分離工程によって洗浄溶液から単離される。
【0105】
この第2の固/液分離工程の後に得られる結晶は、それ自体としてさもなければ乾燥されて使用され得る。
【0106】
しかしながら、好ましくは、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の結晶は、第2の液/固分離工程の後に乾燥されない。
【0107】
第2の液/固分離工程の後に回収される洗浄溶液は、主として水及び可溶化したアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸を含有し、微量の少なくとも1種の有機溶媒を含有し得る。
【0108】
図1に示される、本発明の1つの特別の実施形態によれば、第2の液/固分離工程の後に回収される洗浄溶液は、プレ工程が存在する場合は、こうしたプレ工程の中へ、前処理工程を有して又は有さずに、部分的に又は全体的に再利用され得る。
【0109】
図1に示される、本発明の特別の実施形態によれば、第2の液/固分離工程の後に回収される洗浄溶液は、前処理工程を有して又は有さずに、部分的に又は全体的に工程1)において再利用され得る。
【0110】
図1に示される、本発明の別の特別の実施形態によれば、第2の液/固分離工程の後に回収される洗浄溶液は、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸塩を調製するために、前処理工程を有して又は有さずに、部分的に又は全体的に再利用され得る。
【0111】
図1に示される、本発明の別の特別の実施形態によれば、第2の液/固分離工程の後に回収される洗浄溶液は、蒸留後に得られるアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸結晶を洗浄するために、前処理工程を有して又は有さずに、部分的に又は全体的に再利用され得る。
【0112】
洗浄操作は、不連続的に(バッチで)又は連続的に実行され得る。好ましくは、それは連続的に実行される。
【0113】
アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の結晶の純度が十分でない場合、洗浄操作は数回逐次的に実行され得る。
【0114】
アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸結晶の乾燥(任意選択)
図1に示される、任意選択の工程では、固/液分離工程2)の後に得られる、又は代わりに、結晶の洗浄工程の後に得られる、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸結晶は、それ自体として又は代わりに乾燥されて使用され得る。例として、非限定的な方式では、乾燥は、それが対流、伝導、又は放射による(流動床乾燥、スルーベッド(through-bed)乾燥、コンベヤーベルト上乾燥、マイクロ波乾燥、高周波放射線乾燥、赤外線乾燥、噴霧乾燥等)ものであれ、任意の乾燥技術によって実行され得る。
【0115】
任意選択の乾燥工程は、大気圧で、さもなければ真空下で実行され得る。
【0116】
任意選択の乾燥工程は、不連続的に(バッチで)又は連続的に実行され得る。好ましくは、それは連続的に実行される。
【0117】
しかしながら、液/固分離工程2)又は第2の液/固分離工程の後に、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸結晶は、好ましくは乾燥されない。
【0118】
本発明の特別の実施形態では、洗浄及び乾燥工程を逐次的に実行することは可能である。
【0119】
本発明による方法は、非常に高純度のアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の結晶を得ることを可能にする。こうして単離されたアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸結晶は、一般に、99.90~99.99%、好ましくは99.95超の純度を有する。
【0120】
本発明による方法の別の利点は、典型的には2-メチル-2-プロペニル-スルホン酸(IBSA)タイプ及び2-メチリデン-1,3-プロピレンジスルホン酸(IBDSA)タイプの、非常に低レベルの不純物、すなわち、得られるATBSの重量による量に対して少量のこれらの不純物を有する、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸結晶を得ることであり、これらの不純物は、ある濃度を越えると、重合に強く影響する可能性がある。一般に、本発明によって得られる結晶は、化合物当たり、重量で100ppm未満、好ましくは50ppm未満の量、さらにより好ましくは20ppm未満の量のIBSA及びIBDSAの含有量を有する。ATBSの合成中に通常見出される他の不純物は、tert-ブチルアクリルアミド、アクリルアミド及びアクリロニトリルである。
【0121】
2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸の結晶における純度、並びにIBDSA及びIBSAの量は、HPLC(高速液体クロマトグラフィー)によって、以下:
- カラムODS-3(GL Science(登録商標));
- 移動相:0.03%のトリフルオロ酢酸/アセトニトリル(質量比90/10)を有する水;
- 移動相流速:0.8ml/分;
- 検出波長:200nm
の条件下で測定され得る。
【0122】
得られるアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸は、微粉の形態であり得る、又は、圧縮、造粒、又は押出し等の方法によって制御された方式で形作られ得る。
【0123】
本発明による方法によって得られるアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸結晶は、それらの純度を改善するために、再溶解され、本発明によるプロセスに再度循環され得る。
【0124】
アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の塩又は塩の溶液の調製(任意選択)
本発明の別の態様は、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸塩の水溶液の製造のための、本発明の方法によって得られるアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の結晶の使用を含む。
【0125】
アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸塩は、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の水溶液を、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の水酸化物、アルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の酸化物、アンモニア、以下の式NR1R2R3のアミン又はアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属の炭酸塩から選択される少なくとも1種の中和化合物と、接触及び混合することによって得られる。
【0126】
化合物がアルカリ金属又はアルカリ土類金属の水酸化物である場合、それは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化マグネシウム及び水酸化カルシウムから選択され得る。
【0127】
化合物がアルカリ土類金属酸化物である場合、それは酸化カルシウム及び酸化マグネシウムから選択され得る。
【0128】
化合物が式NR1R2R3のアミンである場合、R1、R2及びR3は、独立して水素原子、又は1~22個の炭素を含有し有利には直鎖の炭素鎖であり、R1、R2及びR3は、同時に水素原子であることはない。一般に、アンモニア(NH3)は式NR1R2R3のアミンより好ましい。
【0129】
アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸塩の調製のための方法の最中に、少なくとも1種の重合抑制剤を導入することは可能である。この抑制剤は、非限定的な方式では、ヒドロキノン、パラメトキシフェノール、フェノチアジン、2,2,6,6-テトラメチル(ピペリジン-1-イル)オキシル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、フェニレンジアミン誘導体、又はそれらの混合物から選択され得る。
【0130】
好ましくは、抑制剤はパラメトキシフェノールである。
【0131】
アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸ポリマー
本発明は、本発明の方法によって得られる、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸結晶又はその塩から得られる、ポリマーにも関する。
【0132】
本発明の別の特別の実施形態によれば、ポリマーは、本発明の方法によって得られるアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸及び少なくとも1種の水溶性モノマーを含む、コポリマーである。
【0133】
(コ)ポリマーは、ATBS(酸性及び/若しくは塩化形態)のホモポリマー、又はATBS(酸性及び/若しくは塩化形態)と少なくとも1種の他のタイプのモノマーとのコポリマーを意味する。
【0134】
水溶性モノマーは、特に、水溶性ビニルモノマー、特にアクリルアミド;N-イソプロピルアクリルアミド;N,N-ジメチルアクリルアミド;N-ビニルホルムアミド;アクリロイルモルホリン;N,N-ジエチルアクリルアミド;N-tert-ブチルアクリルアミド;N-tert-オクチルアクリルアミド;N-ビニルピロリドン;N-ビニルカプロラクタム;並びにN-ビニルイミダゾール、ヒドロキシエチルメタクリルアミド、ヒドロキシプロピルアクリレート、イソプレノール及びジアセトンアクリルアミドを含む群から選択され得る、非イオン性モノマーであり得る。有利には、非イオン性モノマーは、アクリルアミドである。
【0135】
水溶性モノマーは、アニオン性モノマーの群からも選択され得る。本発明の範囲で使用され得るアニオン性モノマーは、広い群から選択され得る。これらのモノマーは、ビニル官能基、特にアクリル、マレイン、フマル、マロン、イタコン又はアリル官能基を有し得る。それらは、カルボキシレート、ホスホネート、ホスフェート、スルフェート若しくはスルホネート基、又はアニオン電荷を有するいくつかの他の基も含有し得る。アニオン性モノマーは、酸の形態、さもなければ、アルカリ土類金属塩、アルカリ金属塩又はアンモニウム塩の形態にあり得る。好適なモノマーの例としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、及び、例えば、スルホン酸又はホスホン酸タイプの官能基を有する強酸タイプのモノマー、例えば、2-アクリルアミド2-メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、ビニルホスホン酸、アリルスルホン酸、アリルホスホン酸、スチレンスルホン酸、並びに水に可溶性であるこれらのモノマーのアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、及びアンモニウム塩が挙げられる。
【0136】
水溶性モノマーは、アミン若しくは第四級アンモニウムの官能基を有する、アクリルアミド、アクリル、ビニル、アリル又はマレインタイプのカチオン性モノマーであり得る。特別で非限定的な方式では、四級化ジメチルアミノエチルアクリレート(DMAEA)、四級化ジメチルアミノエチルメタクリレート(DMAEMA)、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド(DADMAC)、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(APTAC)、及びメタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(MAPTAC)に言及され得る。
【0137】
水溶性モノマーは、両性イオンモノマー、例えば、アクリルアミド、アクリル、ビニル、アリル又はマレイン単位を有する、並びにアミン又は第四級アンモニウム官能基、及びカルボン酸(若しくはカルボキシレート)、スルホン酸(若しくはスルホネート)又はリン酸(若しくはホスフェート)タイプの酸性官能基を有する誘導体であり得る。特別で非限定的な方式では、ジメチルアミノエチルアクリレート誘導体、例えば、2-((2-(アクリロイルオキシ)エチル)ジメチルアンモニオ)ジメチルアンモニオ)エタン-1-スルホネート、3-((2-(アクリロイルオキシ)エチル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート、4-((2-(アクリロイルオキシ)エチル)ジメチルアンモニオ)ブタン-1-スルホネート、[2-(アクリロイルオキシ)エチル](ジメチルアンモニオ)アセテート、ジメチルアミノエチルメタクリレート誘導体、例えば、2-((2-(メタクリロイルオキシ)エチル)ジメチルアンモニオ)エタン-1-スルホネート、3-((2-(メタクリロイルオキシ)エチル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート、4-((2-(メタクリロイルオキシ)エチル)ジメチルアンモニオ)ブタン-1-スルホネート、[2-(メタクリロイルオキシ)エチル](ジメチルアンモニオ)アセテート、ジメチルアミノプロピルアクリルアミド誘導体、例えば、2-(3-(3-アクリロイルオキシ)エチル)ジメチルアンモニオ)ジメチルアンモニオ)エタン-1-スルホネート、3-(3-(3-(メタクリロイルオキシ)ジメチルアミドプロピル)ジメチルアンモニオ)プロパン-1-スルホネート、4-(3-(メタクリロイルオキシ)エチル](ジメチルアンモニオ)プロピルアンモニオ)アセテート、及び3-(3-(ジメチルアメチルアンモノイルオキシ)ジメチルアンモニオ)アセテート、例えば、2-(3-(3-(3-(メタクリロイルオキシ)エチル)ジメチルアンモニオ)ジメチルアンモニオ)ブタン-1-スルホネート、及び3-(ジメチルアンモニオ)プロピルメチルアンモニオ)アセテートに言及され得る。
【0138】
本発明によれば、(コ)ポリマーは、直鎖、分岐、架橋、星形又はくし形の構造を有し得る。これらの構造は、開始剤、移動剤(transfer agent)、重合技術、例えば、濃縮物(concentration)の構造上のモノマーの組み込みの、raft(可逆的付加連鎖移動(Reversible Addition Chain Transfer))、NMP(ニトロキシド媒介重合(Nitroxide Mediated Polymerisation))又はATRP(原子ラジカル移動重合(Atom Radical Transfer Polymerisation))と呼ばれる制御されたラジカル重合を選択することによって得られ得る。
【0139】
一般に、本発明のポリマー複合体(polymer complex)の調製は、特別の重合方法の開発を必要としない。実際に、この複合体は、当業者に周知である任意の重合技術を使用して得られ得る。特に、重合は、溶液重合、ゲル重合、沈殿重合、(水性又は逆)乳化重合、懸濁重合、又はミセル重合であり得る。
【0140】
本発明の1つの特別の実施形態によれば、(コ)ポリマーは、ポスト加水分解(post-hydrolyse)され得る。ポスト加水分解は、重合後の(コ)ポリマーの加水分解反応である。
【0141】
この工程は、非イオン性モノマーの加水分解性官能基、例えば、アミド又はエステル官能基を、塩基と反応させることからなる。コポリマーのポスト加水分解のこの工程の最中に、カルボン酸官能基の数は増加する。実際に、塩基と、コポリマーに存在するアミド又はエステル官能基との間の反応は、カルボキシレート基を生成する。
【0142】
(コ)ポリマーは、その調製が、乾燥工程、例えば、噴霧乾燥、噴霧造粒、円筒乾燥、電磁放射線(マイクロ波、高周波)による乾燥又は流動床での乾燥を含む場合、液体、ゲル又は固体形態にあり得る。
【0143】
(コ)ポリマーは、10,000~3000万ダルトンの間の分子量を有し得る。それは、分散剤、凝集剤又は高吸収剤であり得る。
【0144】
(コ)ポリマーは、好ましくは、少なくとも1モル%、より好ましくは少なくとも5モル%、さらにより好ましくは少なくとも10モル%、さらにより好ましくは少なくとも30モル%、さらにより好ましくは少なくとも50モル%の本発明の方法によって得られるアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸を含有する。
【0145】
本発明は、本発明の方法によって得られる、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸及び/又はその塩の結晶から得られるポリマーの、オイル及びガスの回収における、水の処理における、汚泥の処理における、紙の製造における、建設における、鉱業における、化粧品配合物における、洗剤配合物における、テキスタイルの製造における、又は農業における使用にも関する。
【0146】
オイル及びガス回収の方法は、一般に、水性の注入流体の粘度を増加させるために、及び/又は前記流体が地下層に注入された場合に起こる摩擦抵抗のレベルを低減するために、又は代わりに地下層の一部を時々又は最終的に遮断するためにポリマーが使用される、地下層の処理である。
【0147】
こうした地下処理としては、限定されるものではないが、ドリル作業、破壊作業等の刺激処理、完成作業、及びポリマー溶液でオイルを掃き出す改善された方法が挙げられる。
【0148】
本発明は、本発明の方法によって得られるアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸結晶から得られるポリマーを、特に凝集剤、分散剤、増粘剤、吸収剤又は摩擦低減剤として使用することも目的とする。
【0149】
本発明及びそれによって得られる利点は、例証を目的とし、本発明の範囲を限定する意図ではなく提供される、以下の実施例を読むと、一層よく理解されるであろう。
【実施例】
【0150】
すべての実施例は、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の同じ供給源から調製した。700kgのアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の粉を、撹拌された反応器中で500kgの水に連続的に溶解した。このアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸は、99.8%の純度を有し、300ppmのIBDSA及び500ppmのIBSAを含む。
【0151】
(実施例1)
バッチに対する連続の比較
1.1-本発明の範囲では、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の溶液は、薄膜縦型蒸発器に、600kg時-1の流速で、1平方メートルの接触表面領域を連続的に供給する。滞留時間は、34秒である。薄膜縦型蒸発器を水によって80℃に加熱し、蒸留圧力は30mbarである。測定された蒸発流れの速度は、72kg/時/m2であった。蒸留後に得られたアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の懸濁液を、次に、分析する前に、毎分800回転の回転速度を有する水平穿孔かご絞り器を、連続的に通過させる。得られたアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸結晶の純度は、99.9667%であり、44ppmのIBDSA及び88ppmのIBSAを含む。アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の結晶の生産性は、100kg時-1と測定される。
【0152】
水の溶液で洗浄する工程は、水平穿孔かごドライヤーを通過させた後に得られる、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸のケーキ上で実行される。得られたアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸結晶の純度は、99.9692%であり、これらの結晶は、36ppmのIBDSA及び72ppmのIBSAを含む。アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸結晶の生産性は、80kg時-1と測定される。
【0153】
1.2-例1.1と同じアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の溶液を、重合抑制剤(340gのパラメトキシフェノール)を添加して調製した。前記溶液の蒸留は、撹拌された反応器(「バッチ」)中で実行する。反応器は、4.6m2の接触表面領域を備えるジャケットを有する。80℃の水が、ジャケットを通過した。反応器は、80℃で30mbarの圧力を有する真空下で設置した。測定された蒸発流れの速度は、15kg/時/m2であった。24時間後、得られたアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の懸濁液を、分析する前に、毎分800回転の回転速度を有する水平穿孔かご絞り器を通過させる。得られたアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸結晶の純度は、99.9%であり、これらの結晶は、233ppmのIBDSA及び466ppmのIBSAを含む。アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の結晶の生産性は、20kg時-1と測定される。
【0154】
1.3-重合抑制剤の添加を除いて、例1.2と同じ手順に従う。上述の条件下で24時間蒸留後、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の溶液を部分的にゲル化する。アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の結晶は、ろ過することができない。
【0155】
1.4-酢酸に溶解させ、緩やかに再結晶させる、通常の精製方法を実行した。前の例で使用した150gのアクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸を、撹拌しながら、90℃の温度で500gの酢酸に溶解する。結晶の溶解終了後、混合物を撹拌しながら1時間放置する。溶液は、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸の結晶化温度より5℃下で、2時間放冷する。液/固分離後、結晶をオーブンで6時間乾燥した。
【0156】
様々な例1.1~1.4の結果を、Table 1(表1)に報告する。
【0157】
【0158】
本発明の方法は、通常の「バッチ」法より優れた生産性を有し、生産性を5倍増加できることが観察され得る。これは、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパンスルホン酸結晶の純度を改善し、これらの結晶中のIBDSA及びIBSAの割合を低減する。
【0159】
追加の洗浄工程によって、「バッチ」法と比較して4倍増加する生産性を維持しながら、IBDSA及びIBSAの量をさらに低減することができる。
【0160】
従って、本発明の方法は、重合抑制剤が存在しなくとも、「バッチ」法より優れた性能を有する。例1.3で見られるように、重合抑制剤無しで、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパン酸は「バッチ」法で自己重合し、一方、本発明による方法の場合は、これは起こらない。
【0161】
本発明の方法は、溶媒中で緩やかに結晶化する、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパン酸の精製に通常的に使用される精製方法(例1.4)と比較して、より低レベルのIBDSA及びIBSA、高純度及びより高い生産性を有して、結晶を得ることを可能にする。
【0162】
(実施例2)
圧力の影響
例1.1を、異なる圧力で、洗浄工程を伴わずに再現した(例2.1~2.3)。結果を、Table 2(表2)に要約する。
【0163】
【0164】
本発明による方法では、圧力が重要な役割を果たすことが観察され得る。蒸留圧力を増加させることによって、生産性は減少し、一方IBDSA及び残留IBSAの量を低減することができる。300mbarを超えると、一般に生産性はもはや産業上魅力がない。
【0165】
当業者は、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパン酸結晶のより高い純度か、それともより高い生産性に興味を有するかによって、蒸留圧力を調整することができるであろう。
【0166】
(実施例3)
溶媒の比較
例1.1を、洗浄工程を伴わずに、異なる溶媒で(例3.1~3.4)再現した。結果を、Table 3(表3)に要約する。
【0167】
【0168】
溶媒として水を使用することによって、より良好な純度の結晶だが、より少ないIBDSA及びIBSAを含有する結晶も得ることができる。水のみを使用する方法では、生産性もより高い。従って、本発明は、より生産的な方法を有し、一方で、溶媒の使用、貯蔵及びハンドリングに関連する、環境上のフットプリント、コスト及びリスクを低減することを可能にする。
【0169】
本発明による方法は、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパン酸塩、及び精製されていない結晶に由来するポリマーより優れた性能を提供する、本発明のポリマーの調製に使用され得る、アクリルアミド-2-メチル-2-プロパン酸結晶を得ることを可能にする。