(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
F16H 61/12 20100101AFI20240116BHJP
F16H 57/01 20120101ALI20240116BHJP
F16H 61/662 20060101ALI20240116BHJP
F16H 63/40 20060101ALI20240116BHJP
F16H 9/12 20060101ALI20240116BHJP
F16H 59/18 20060101ALN20240116BHJP
F16H 59/40 20060101ALN20240116BHJP
F16H 59/68 20060101ALN20240116BHJP
【FI】
F16H61/12
F16H57/01
F16H61/662
F16H63/40
F16H9/12 Z
F16H59/18
F16H59/40
F16H59/68
(21)【出願番号】P 2021166503
(22)【出願日】2021-10-08
【審査請求日】2022-04-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000010076
【氏名又は名称】ヤマハ発動機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101351
【氏名又は名称】辰巳 忠宏
(72)【発明者】
【氏名】北野 慎治
【審査官】角田 貴章
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2020/049525(WO,A2)
【文献】特開2020-041675(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0284003(US,A1)
【文献】特開2019-158117(JP,A)
【文献】特開2005-265059(JP,A)
【文献】実開平05-049451(JP,U)
【文献】特開昭62-255242(JP,A)
【文献】特開2010-078025(JP,A)
【文献】特開2002-213548(JP,A)
【文献】特開2021-042806(JP,A)
【文献】特開2011-196426(JP,A)
【文献】特開2018-079884(JP,A)
【文献】特開2002-068070(JP,A)
【文献】特許第5282317(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2016/0076442(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16H 9/00- 9/26
57/01
59/00-61/12
61/16-61/24
61/66-61/70
63/40-63/50
F16G 1/00-17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機と、
無端ベルトを有し前記原動機からの動力を変速して出力する無段変速機と、
前記無段変速機のベルト高負荷状態での使用を検出する検出部と、
前記検出部によって検出された前記ベルト高負荷状態での積算走行距離
のみに基づいて、前記無端ベルトの交換が必要となる劣化を判定する判定部と、
前記無端ベルトの交換を促すために前記無端ベルトの劣化を報知する報知部とを備える、車両。
【請求項2】
前記ベルト高負荷状態は、当該車両が所定速度以上で走行する状態を含む、請求項1に記載の車両。
【請求項3】
前記ベルト高負荷状態は、当該車両が所定開度以上のアクセル開度で走行する状態を含む、請求項1に記載の車両。
【請求項4】
前記ベルト高負荷状態は、前記無段変速機の変速比が所定値以下で当該車両が走行する状態を含む、請求項1に記載の車両。
【請求項5】
前記報知部は、前記無段変速機の変速比の変化をさらに報知する、請求項
1に記載の車両。
【請求項6】
前記無段変速機によって変速された動力が伝達される変速機をさらに含む、請求項1から
5のいずれかに記載の車両。
【請求項7】
前記原動機は、出力軸を含み、
前記無段変速機は、前記出力軸と同軸上に設けられるプライマリシャフトを含む、請求項1から
6のいずれかに記載の車両。
【請求項8】
前記無段変速機の上方または前方に設けられるサイドバイサイドシートをさらに含む、請求項1から
7のいずれかに記載の車両。
【請求項9】
前記無段変速機の上方または前方に設けられる鞍乗りシートと、
前記鞍乗りシートより上方に設けられるバーハンドルと、
前記バーハンドルより下方に設けられる3輪以上の車輪とをさらに含む、請求項1から
7のいずれかに記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は車両に関し、より特定的には無端ベルトを含む無段変速機を備える車両に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両に搭載された無段変速機の無端ベルトは、使用により摩耗すると交換する必要があるので、無端ベルトの交換時期を検知する様々な装置が提案されている。
【0003】
この種の従来技術の一例として、特許文献1において、駆動プーリおよび従動プーリでの無端ベルトの巻掛け径が変化して変速比が変更されるベルト式自動変速機のベルト交換時期報知装置が開示されている。この装置では、車両の特定の運転状態において、自動変速機の実際の変速比が設定変速比よりも大きく設定された基準変速比を越えた状態が、所定時間継続したとき、無端ベルトが交換時期であると判定し、表示手段に判定結果を表示する。すなわち、特許文献1の装置では、同じ特定の運転状態における無端ベルトの新品での変速比と劣化後での変速比とのずれ量が所定の値よりも大きくなった状態の継続時間を計測して、無端ベルトの交換時期を判定する。言い換えれば、変速比のずれが所定範囲内である場合にはタイマーはカウントダウンされず、積算時間は取得されない。また、特許文献1では、積算走行距離を計測することについても言及されているが、この積算走行距離は、変速比のずれなどが無くても計測される。
【0004】
また、特許文献2において、無段式に可変の変速比を備えた、摩擦係合によってトルクを伝達する伝動装置の運転確実性を監視するための方法が開示されている。この方法では、摩擦係合の箇所の温度、摩擦係合する構成部材の間の圧着量、摩擦係合する構成部材の間のスリップ量、摩擦係合の場所、摩擦係合の期間などを運転パラメータとする損傷量モデルを準備し、当該損傷量モデルから導き出したプーリ、ベルト等の巻掛け手段の損傷量を累積して表示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-213548
【文献】特許第5282317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
無端ベルトを含む無段変速機を備える車両において、加速・減速を繰り返して走行するアップダウン走行と、略所定速度で走行する通常走行とでは、無端ベルトが劣化し破損するまでの総走行距離は大きく異なり、特許文献1および2に開示された手法では、このような車両の無端ベルトの劣化を精度よく判定できない。特に、特許文献1および2に開示された手法では、アップダウン走行する場合に無端ベルトの劣化を精度よく検出できない。
【0007】
それゆえにこの発明の主たる目的は、無端ベルトの劣化を簡単に精度よく判定できる、車両を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述の目的を達成するために、原動機と、無端ベルトを有し原動機からの動力を変速して出力する無段変速機と、無段変速機のベルト高負荷状態での使用を検出する検出部と、検出部によって検出されたベルト高負荷状態での使用に関する積算値に基づいて、無端ベルトの劣化を判定する判定部とを備える、車両が提供される。
【0009】
この発明では、アップダウン走行と通常走行とで、無端ベルトが劣化し破損するまでのベルト高負荷状態での走行距離はほとんど変わらないことが初めて見出された。したがって、積算走行距離を走行状態などにかかわらず単に計測する特許文献1とは異なり、ベルト高負荷状態での走行距離などの使用に関する積算値を用いることによって、車両のアップダウン走行や通常走行などの走行モードにかかわらず、無端ベルトの劣化を簡単に精度よく判定できる。
【0010】
好ましくは、ベルト高負荷状態は、車両が所定速度以上で走行する状態を含む。この場合、車両が所定速度以上で走行する状態は、無端ベルトの劣化と相関性が高いので、無端ベルトの劣化を精度よく判定できる。
【0011】
また好ましくは、ベルト高負荷状態は、車両が所定開度以上のアクセル開度で走行する状態を含む。この場合、車両が所定開度以上のアクセル開度で走行する状態は、無端ベルトの劣化と相関性が高いので、無端ベルトの劣化を精度よく判定できる。
【0012】
さらに好ましくは、ベルト高負荷状態は、無段変速機の変速比が所定値以下で車両が走行する状態を含む。この場合、無段変速機の変速比が所定値以下で車両が走行する状態は、無端ベルトの劣化と相関性が高いので、無端ベルトの劣化を精度よく判定できる。
【0013】
好ましくは、積算値は走行距離を含む。この場合、上述のように、アップダウン走行と通常走行とでは、無端ベルトが劣化し破損するまでのベルト高負荷状態での走行距離はほとんど変わらないので、ベルト高負荷状態での走行距離を用いることによって、無端ベルトの劣化を精度よく判定できる。
【0014】
また好ましくは、無端ベルトの劣化を報知する報知部をさらに含む。この場合、運転者は、無端ベルトの劣化を容易に認識することができる。
【0015】
さらに好ましくは、報知部は、無段変速機の変速比の変化をさらに報知する。この場合、運転者は、無段変速機の変速比の変化を示す情報をさらに加味して無段ベルトの状態を認識できる。
【0016】
好ましくは、無段変速機によって変速された動力が伝達される変速機をさらに含む。
【0017】
また好ましくは、原動機は、出力軸を含み、無段変速機は、出力軸と同軸上に設けられるプライマリシャフトを含む。
【0018】
さらに好ましくは、無段変速機の上方または前方に設けられるサイドバイサイドシートをさらに含む。この発明は、このような構成を有するROV(Recreational Off-Highway Vehicle)に好適に用いられる。
【0019】
好ましくは、無段変速機の上方または前方に設けられる鞍乗りシートと、鞍乗りシートより上方に設けられるバーハンドルと、バーハンドルより下方に設けられる3輪以上の車輪とをさらに含む。この発明は、このような構成を有するATV(All Terrain Vehicle)に好適に用いられる。
【0020】
この発明において「ベルト高負荷状態」とは、ベルトに高負荷がかかる状態をいい、たとえば、低変速比、高速およびアクセル開度大の少なくともいずれか1つの状態が該当する。
【発明の効果】
【0021】
この発明によれば、無端ベルトの劣化を簡単に精度よく判定できる、車両が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】この発明の一実施形態に係る車両を示すも模式的な側面図である。
【
図5】車両の主要な電気的構成の一例を示すブロック図である。
【
図7】走行モードと走行距離との関係を示すグラフである。
【
図8】車両の主要な電気的構成の他の例を示すブロック図である。
【
図10】車両の主要な電気的構成のその他の例を示すブロック図である。
【
図11】この発明の他の実施形態に係る車両を示す模式的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図面を参照してこの発明の実施の形態について説明する。なお、この発明の実施形態における前後、左右、上下とは、車両10の第1シート18aに運転者がステアリングホイール22に向かって着座した状態を基準とする前後、左右、上下を意味する。図中において、「Fr」は前方を示し、「Rr」は後方を示し、「R」は右方を示し、「L」は左方を示し、「U」は上方を示し、「Lo」は下方を示す。
【0024】
図1および
図2を参照して、この発明の一実施形態に係る車両10は、4人乗りのROVであり、一対の前輪12、一対の後輪14、フレーム16、前シート部18、後シート部20、ステアリングホイール22、ロールケージ24、ルーフ26および荷台28を備える。
【0025】
フレーム16は、サスペンションアッセンブリ(図示せず)を介して一対の前輪12および一対の後輪14によって支持される。前シート部18および後シート部20は、サイドバイサイドシートである。前シート部18は、左右に並ぶ運転席用の第1シート18aと助手席用の第2シート18bとを含み、無段変速機32(後述)の上方に設けられる。後シート部20は、前シート部18の後方に設けられ、左右に並ぶ第3シート20aと第4シート20bとを含む。ステアリングホイール22は、前シート部18の第1シート18aの前方に設けられる。前シート部18、後シート部20およびステアリングホイール22を覆うように、ロールケージ24が設けられる。ロールケージ24はフレーム16に支持される。ロールケージ24の上部に、ルーフ26が設けられる。荷台28は、後シート部20の後方かつ後輪14の上方に設けられる。
【0026】
車両10はさらに、ステアリングホイール22の動作を一対の前輪12に伝達する伝達機構(図示せず)を含む。伝達機構の構成としては、たとえばラックアンドピニオン型の伝達機構などの公知の種々の構成を採用できるので、ここではその説明は省略する。
【0027】
車両10はさらに、エンジン30と、エンジン30の側方(この実施形態では、左方)に設けられるベルト式の無段変速機(CVT)32と、エンジン30の前方に位置するギア式の変速機34とを含む。すなわち、エンジン30および変速機34の左方に、無段変速機32が設けられ、エンジン30と変速機34とは、無段変速機32を介して接続される。無段変速機32は、エンジン30からの回転動力を変速して、変速機34に伝達する。
【0028】
エンジン30は、たとえば水冷式4サイクル並列2気筒エンジンであり、前シート部18の前端よりも後方かつ後シート部20の後端より前方で車幅方向中央付近に設けられる。エンジン30は、やや後方に傾き、かつそのクランクシャフト36(
図3参照)が車両10の幅方向を指向するように設けられる。
【0029】
車両10はさらに、プロペラシャフト38,40を含む。プロペラシャフト38は、車両10の幅方向略中央部において、変速機34よりも前方に延びるように設けられ、プロペラシャフト40は、変速機34よりも後方に延びるように設けられる。
【0030】
プロペラシャフト38と一対の前輪12との間に、回転伝達部(図示せず)が設けられる。プロペラシャフト40と一対の後輪14との間に、回転伝達部(図示せず)が設けられる。したがって、エンジン30の回転は、無段変速機32および変速機34によって変速された後、プロペラシャフト38および回転伝達部を介して一対の前輪12に伝達される。それにより、一対の前輪12が回転する。また、エンジン30の回転は、無段変速機32および変速機34によって変速された後、プロペラシャフト40および回転伝達部を介して一対の後輪14に伝達される。それにより、一対の後輪14が回転する。
【0031】
ここで、
図3および
図4を参照して、無段変速機32およびその近傍の構成について説明する。
【0032】
無段変速機32は、プライマリシャフト42と、セカンダリシャフト44と、プライマリシャフト42に取り付けられる駆動プーリ46と、セカンダリシャフト44に取り付けられる従動プーリ48と、駆動プーリ46と従動プーリ48とに巻かれるたとえばゴム製の無端ベルト50とを含む。
【0033】
プライマリシャフト42、セカンダリシャフト44ならびに変速機34の変速シャフト72(後述)およびミドルギアシャフト74(後述)は、左右方向に延びかつ互いに平行に設けられる。
【0034】
プライマリシャフト42は、エンジン30のクランクシャフト36と同軸上に設けられる。クランクシャフト36とプライマリシャフト42とは、遠心クラッチ52を介して連結される。
【0035】
遠心クラッチ52は、クラッチインナー54とクラッチアウター56とを含む。クラッチインナー54は、クランクシャフト36の端部に取り付けられ、クラッチアウター56は、プライマリシャフト42の端部に取り付けられる。遠心クラッチ52は、クランクシャフト36の回転に伴う遠心力でクラッチインナー54の外周面がクラッチアウター56の内周面に押し付けられることによって、クランクシャフト36の回転動力をプライマリシャフト42に伝達する。
【0036】
駆動プーリ46は、プライマリシャフト42に固定される固定シーブ58と、プライマリシャフト42に軸方向に移動可能に設けられる可動シーブ60とを含む。プライマリシャフト42にカムプレート62が固定される。可動シーブ60とカムプレート62との間には、プライマリシャフト42の回転に伴う遠心力によって可動シーブ60を軸方向に移動させるウェイト64が設けられる。
【0037】
従動プーリ48は、セカンダリシャフト44に固定される固定シーブ66と、セカンダリシャフト44に軸方向に移動可能に設けられる可動シーブ68とを含む。可動シーブ68は、コイルばね70によって固定シーブ66に向かう方向に付勢される。
【0038】
図3に示すロー状態(低速域)では、可動シーブ60が固定シーブ58から離れる方向(外側)に移動して駆動プーリ46の溝幅が広くなるとともに、可動シーブ68が固定シーブ66に近づく方向(外側)に移動して従動プーリ48の溝幅が狭くなる。これにより、無端ベルト50の巻き付き径は、駆動プーリ46側で小さくかつ従動プーリ48側で大きくなり、ロー状態に設定できる。
【0039】
図4に示すトップ状態(高速域)では、可動シーブ60が固定シーブ58に近づく方向(内側)に移動して駆動プーリ46の溝幅が狭くなるとともに、可動シーブ68が固定シーブ66から離れる方向(内側)に移動して従動プーリ48の溝幅が広くなる。これにより、無端ベルト50の巻き付き径は、駆動プーリ46側で大きくかつ従動プーリ48側で小さくなり、トップ状態に設定できる。
【0040】
エンジン30のクランクシャフト36に遠心クラッチ52を介して連結されたプライマリシャフト42の回転動力は、無段変速機32によって無段階に変速された上で、セカンダリシャフト44に接続される変速機34に伝達される。
【0041】
変速機34は、変速シャフト72およびミドルギアシャフト74を含み(
図5参照)、セカンダリシャフト44の回転動力を、ハイ、ローおよびリバースのいずれかのモードに変速して、プロペラシャフト38,40に伝達する。そして、上述のように、プロペラシャフト38に伝達された回転動力は、回転伝達部を介して一対の前輪12に伝達されるとともに、プロペラシャフト40に伝達された回転動力は、回転伝達部を介して一対の後輪14に伝達される。
【0042】
図5を参照して、車両10はさらに、コントロールユニット76、車速センサ78、アクセル開度センサ80および表示器82を含む。
【0043】
コントロールユニット76は、車両10の動作を制御する。車速センサ78は、ミドルギアシャフト74の回転数を検出し、車速信号としてコントロールユニット76に出力する。アクセル開度センサ80は、運転者の操作するアクセル量を示すアクセル開度を検出し、アクセル開度信号としてコントロールユニット76に出力する。表示部82は、コントロールユニット76からの指示に基づき、各種情報を表示する。
【0044】
この実施形態では、エンジン30が、原動機に対応する。コントロールユニット76、車速センサ78およびアクセル開度センサ80が、検出部に対応する。コントロールユニット76が、判定部に対応する。表示器82が、報知部に対応する。クランクシャフト36が、原動機の出力軸に対応する。
【0045】
図6を参照して、車両10の動作の一例について説明する。
【0046】
エンジン30が始動されると(ステップS1)、車速センサ78からの車速信号に基づいて、コントロールユニット76によって車両10の車速が検出され(ステップS3)、当該車速が第1閾値(所定速度:たとえば80±10km/hの範囲内のいずれかの速度)以上か否かがコントロールユニット76によって判断される(ステップS5)。当該車速が第1閾値未満であれば、ステップS3に戻り、一方、当該車速が第1閾値以上であれば、ステップS7に進む。
【0047】
ステップS7では、アクセル開度センサ80からのアクセル開度信号に基づいて、コントロールユニット76によってアクセル開度が検出され(ステップS7)、当該アクセル開度が第2閾値(所定開度:たとえば70±10°の範囲内のいずれかの開度)以上か否かがコントロールユニット76によって判断される(ステップS9)。当該アクセル開度が第2閾値未満であれば、ステップS3に戻り、一方、当該アクセル開度が第2閾値以上であれば、ステップS11に進む。すなわち、車速が第1閾値以上かつアクセル開度が第2閾値以上という条件を満たせば、コントロールユニット76は、無段変速機32がベルト高負荷状態で使用されていると判定し、ステップS11に進む。ステップS11では、無段変速機32がベルト高負荷状態で使用されているときの走行距離がコントロールユニット76によって積算される。走行距離は、たとえば車速信号に基づいて算出される。そして、当該走行距離が第3閾値(たとえば400km以上のいずれかの距離)以上か否かがコントロールユニット76によって判断される(ステップS13)。当該走行距離が第3閾値未満であれば、ステップS3に戻る。一方、当該走行距離が第3閾値以上であれば、コントロールユニット76は、無端ベルト50が劣化しているまたは劣化が進んでいると判定し、コントロールユニット76からの指示により、無端ベルト50の劣化が表示器82に表示される(ステップS15)。このようにして無端ベルト50の寿命が判定されて、無端ベルト50の交換が促され、無端ベルト50の破断前に無端ベルト50を交換できる。
【0048】
このような車両10によれば、アップダウン走行と通常走行とで、無端ベルト50が劣化し破損するまでの総走行距離は大きく異なるが、無端ベルト50が劣化し破損するまでのベルト高負荷状態での走行距離はほとんど変わらないことに着目し(
図7参照)、ベルト高負荷状態での使用に関する積算値を用いることによって、車両10のアップダウン走行や通常走行などの走行モードにかかわらず、無端ベルト50の劣化を簡単に精度よく判定できる。
【0049】
車両10が第1閾値(所定速度)以上で走行する状態および車両10が第2閾値(所定開度)以上のアクセル開度で走行する状態はそれぞれ、無端ベルト50の劣化と相関性が高く、ベルト高負荷状態と判断できる。したがって、車速が第1閾値以上かつアクセル開度が第2閾値以上という2つの条件を満たす場合の走行距離を用いることによって、無端ベルト50の劣化をより精度よく判定できる。
【0050】
上述のように、アップダウン走行と通常走行とでは、無端ベルト50が劣化し破損するまでのベルト高負荷状態での走行距離はほとんど変わらないので、ベルト高負荷状態での走行距離を用いることによって、無端ベルト50の劣化を精度よく判定できる。
【0051】
表示器82によって無端ベルト50の劣化を報知することによって、運転者は、無端ベルト50の劣化を容易に認識することができる。
【0052】
この発明は、上述のような構成を有するROV(Recreational Off-Highway Vehicle)に好適に用いられる。
【0053】
また、
図8に示すように、
図5に示すアクセル開度センサ80に代えて、エンジン回転数センサ84が用いられてもよい。エンジン回転数センサ84は、プライマリシャフト42の回転数を検出する。ここで、クランクシャフト36とプライマリシャフト42とは連動し、プライマリシャフト42の回転数とクランクシャフト36の回転数とは等しい。したがって、エンジン回転数センサ84は、プライマリシャフト42の回転数を検出することによって、クランクシャフト36の回転数を検出でき、検出値をエンジン回転信号としてコントロールユニット76に出力する。その他の構成については、
図5に示す構成と同様である。
【0054】
この実施形態では、コントロールユニット76、車速センサ78およびエンジン回転数センサ84が、検出部に対応する。
【0055】
図9を参照して、
図8の構成を備える車両10の動作の一例について説明する。
【0056】
エンジン30が始動されると(ステップS21)、無段変速機32の変速比が検出される(ステップS23)。無段変速機32の変速比は、(プライマリシャフト42の回転数)÷(セカンダリシャフト44の回転数)で算出される。ここで、プライマリシャフト42の回転数は、エンジン回転数センサ84によって検出できる。また、セカンダリシャフト44の回転数は、車速センサ78によって検出されるミドルギアシャフト74の回転数と、その時点で設定されている変速機34の変速比とに基づいて算出できる。したがって、エンジン回転数センサ84によってプライマリシャフト42の回転数を検出し、車速センサ78によってミドルギアシャフト74の回転数を検出することによって、コントロールユニット76によって無段変速機32の変速比が算出される。
【0057】
そして、無段変速機32の変速比が第4閾値(所定値)以下か否かがコントロールユニット76によって判断される(ステップS25)。当該変速比が第4閾値より大きければ、ステップS23に戻り、一方、当該変速比が第4閾値以下であれば、コントロールユニット76は、無段変速機32がベルト高負荷状態で使用されていると判定し、ステップS27に進む。
【0058】
ステップS27では、無段変速機32の変速比が第4閾値以下という条件を満たす場合の走行距離がコントロールユニット76によって積算される。そして、当該走行距離が第3閾値以上か否かがコントロールユニット76によって判断される(ステップS29)。当該走行距離が第3閾値未満であれば、ステップS23に戻る。一方、当該走行距離が第3閾値以上であれば、コントロールユニット76は、無端ベルト50が劣化しているまたは劣化が進んでいると判定し、コントロールユニット76からの指示により、無端ベルト50の劣化が表示器82に表示される(ステップS31)。このようにして無端ベルト50の寿命が判定されて、無端ベルト50の交換が促され、無端ベルト50の破断前に無端ベルト50を交換できる。
【0059】
このように動作する車両10において、無段変速機32の変速比が第4閾値(所定値)以下で車両10が走行する状態は、無端ベルト50の劣化と相関性が高く、ベルト高負荷状態と判断できる。したがって、無段変速機32の変速比が第4閾値以下で車両10が走行する場合の走行距離を用いることによって、無端ベルト50の劣化を精度よく判定できる。
【0060】
なお、
図8に示す構成において、コントロールユニット76によって無段変速機32の変速比の変化をさらに算出し、表示器82に無段変速機32の変速比の変化をさらに表示するようにしてもよい。
【0061】
また、
図10に示すように、
図5に示す構成にエンジン回転数センサ84を付加し、プライマリシャフト42の回転数を検出するようにしてもよい。この場合、無段変速機32の変速比の変化を、コントロールユニット76によってさらに算出し、表示機82にさらに表示することができる。
【0062】
これにより、運転者は、無段変速機32の変速比の変化を示す情報をさらに加味して無段ベルト50の状態を認識できる。すなわち、ベルト高負荷状態での走行距離に加えて、変速比の変化を考慮することによって、より精度よく無端ベルト50の寿命を推定できる。
【0063】
図8に示す構成において、アクセル開度センサ80を付加し、アクセル開度を検出するようにしてもよい。この場合、コントロールユニット76は、アクセル開度に基づいて減速中と判断すれば、無段変速機32の変速比が第4閾値(所定値)以下であってもベルト高負荷状態とは判定せず、走行距離を積算しないようにしてもよい。
【0064】
また、この発明は、
図11および
図12に示すような車両10aにも適用できる。車両10aは、鞍乗型車両、より具体的には四輪タイプのATVである。車両10aは、無段変速機32の上方に設けられる鞍乗りシート86と、鞍乗りシート86より上方に設けられるバーハンドル88と、バーハンドル88より下方に設けられる一対の前輪90および一対の後輪92とを含む。
【0065】
この発明は、このような構成を有するATVに好適に用いられる。
【0066】
上述の実施形態では、原動機としてエンジン30が用いられたが、これに限定されない。原動機として電動モータが用いられてもよい。
【0067】
上述の実施形態では、ベルト高負荷状態での使用に関する積算値として、ベルト高負荷状態での走行距離が用いられたが、これに限定されず、ベルト高負荷状態での走行時間が用いられてもよい。
【0068】
図5および
図10に示す構成において、アクセル開度センサに代えて、スロットルバルブ(図示せず)の開き具合を示すスロットル開度を検出するスロットル開度センサが用いられてもよい。この場合、アクセル開度とスロットル開度とは相関性が高いので、スロットル開度センサによって検出されたスロットル開度に基づいて、ベルト高負荷状態か否かを判定できる。
【0069】
図5に示す構成では、車速センサ78からの車速信号に基づいて車両10の車速を検出したが、これに限定されない。GPSシステムを用いて車速を検出してもよい。
【0070】
図8に示す構成では、車速センサ78によって検出されたミドルギアシャフト74の回転数に基づいて、セカンダリシャフト44の回転数を検出したが、これに限定されない。セカンダリシャフト44の回転数を直接検出してもよい。
【0071】
図10に示す構成において、車速センサ78に代えて、GPSシステムを用いて車速を検出し、さらにセカンダリシャフト44の回転数を直接検出するようにしてもよい。
【0072】
図6に示す動作例では、車速が第1閾値以上かつアクセル開度が第2閾値以上という2つの条件を満たせば、無段変速機32がベルト高負荷状態で使用されていると判断されたが、これに限定されない。車速が第1閾値以上かまたはアクセル開度が第2閾値以上かのいずれかの条件を満たせば、無段変速機32がベルト高負荷状態で使用されていると判断されてもよい。この場合においても、無端ベルト50の劣化を精度よく判定できる。
【0073】
無端ベルト50は、金属製または樹脂製であってもよい。
【0074】
報知部は、表示器82に限定されず、音やメッセージ等を出力する出力部であってもよい。
【0075】
図1に示す車両10では、前シート部18は、無段変速機32の上方に設けられたが、これに限定されず、前シート部は、無段変速機の前方または後方に設けられてもよい。
【0076】
また、
図11に示す車両10aでは、鞍乗りシート86は、無段変速機32の上方に設けられたが、これに限定されず、鞍乗りシートは、無段変速機の前方または後方に設けられてもよい。
【0077】
この発明に係る車両は、3輪以上の車輪を有していればよい。
【符号の説明】
【0078】
10,10a 車両
12,90 前輪
14,92 後輪
18 前シート部
20 後シート部
30 エンジン
32 無段変速機
34 変速機
36 クランクシャフト
42 プライマリシャフト
44 セカンダリシャフト
46 駆動プーリ
48 従動プーリ
50 無端ベルト
72 変速シャフト
74 ミドルギアシャフト
76 コントロールユニット
78 車速センサ
80 アクセル開度センサ
82 表示器
84 エンジン回転数センサ
86 鞍乗りシート
88 バーハンドル