(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】直動案内ユニット
(51)【国際特許分類】
F16C 29/06 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
F16C29/06
(21)【出願番号】P 2021202322
(22)【出願日】2021-12-14
【審査請求日】2023-01-13
(73)【特許権者】
【識別番号】000229335
【氏名又は名称】日本トムソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100136098
【氏名又は名称】北野 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100137246
【氏名又は名称】田中 勝也
(74)【代理人】
【識別番号】100158861
【氏名又は名称】南部 史
(74)【代理人】
【識別番号】100194674
【氏名又は名称】青木 覚史
(72)【発明者】
【氏名】岩田 保
(72)【発明者】
【氏名】藤井 秀行
【審査官】倉田 和博
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-079776(JP,A)
【文献】特開平09-072335(JP,A)
【文献】特開2012-047288(JP,A)
【文献】特開2015-143536(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 29/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向に互いに平行に延びる一対の第1軌道溝を有するレールと、
前記レールに相対移動可能に取り付けられ、前記一対の第1軌道溝のそれぞれに対向する一対の第2軌道溝を有するスライダと、
複数の転動体としてのボールと、を備え、
前記レールおよび前記スライダによって、前記複数の転動体が循環する環状路が形成されており、
前記環状路は、
前記第1軌道溝と前記第2軌道溝とから構成される軌道路と、
前記スライダ内に形成され、前記軌道路と並行する第1循環路と、
前記スライダ内に形成され、前記軌道路と前記第1循環路とを接続する一対の第2循環路と、を含み、
前記スライダは、前記第1循環路内において、長手方向に延びるように配置されるコイルバネを含み、
前記コイルバネは、
長手方向の両端部に設けられており、前記第1循環路に嵌め込まれる一対の第1領域と、
前記一対の第1領域の径よりも小さい径であり、前記一対の第1領域の間において前記第1循環路の内壁面との間に隙間をあけて配置される第2領域と、を含む、直動案内ユニット。
【請求項2】
前記コイルバネは、金属製である、請求項1に記載の直動案内ユニット。
【請求項3】
前記一対の前記第1領域は、前記コイルバネを拡径させて形成されている、請求項1または請求項2に記載の直動案内ユニット。
【請求項4】
前記コイルバネの長さは、前記第1循環路の長さと等しい、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。
【請求項5】
前記レールは、長手方向に沿ってそれぞれ平行に延びる第1レール側面および第2レール側面を含み、
前記スライダは、前記レールに跨架されており、
一方の前記第1軌道溝は、前記第1レール側面に設けられており、
他方の前記第1軌道溝は、前記第2レール側面に設けられている、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。
【請求項6】
前記レールは、中実円筒状のスプライン軸であり、
前記スライダは、中空円筒状であって、前記レールの外周側に配置されており、
前記レールの外径面には、長手方向に互いに平行に延びる前記一対の第1軌道溝が設けられる、請求項1から請求項4のいずれか1項に記載の直動案内ユニット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、直動案内ユニットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
転動体を含み、レールの長手方向に摺動可能なスライダを含む直動転がり案内ユニットが知られている(例えば特許文献1参照)。特許文献1に開示の直動転がり案内ユニットは、転動体を再度軌道溝へ返すためのリターン路と、転動体の方向を転換する方向転換路と、を含む。特許文献1に開示の直動転がり案内ユニットにおいては、転動体が通るリターン孔内に、中空円筒状のスリーブが嵌め込まれている。そして、スリーブには長手方向に延びるスリットが設けられており、弾性変形可能とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
直動案内ユニットについては、種々の状況で使用される。各使用状況においても、スライダの円滑な摺動が求められる。そこで、使用される状況に関わらず、円滑にスライダを摺動させることが容易な直動案内ユニットを提供することを目的の1つとする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示に従った直動案内ユニットは、長手方向に互いに平行に延びる一対の第1軌道溝を有するレールと、レールに相対移動可能に取り付けられ、一対の第1軌道溝のそれぞれに対向する一対の第2軌道溝を有するスライダと、複数の転動体としてのボールと、を備える。レールおよびスライダによって、複数の転動体が循環する環状路が形成されている。環状路は、第1軌道溝と第2軌道溝とから構成される軌道路と、スライダ内に形成され、軌道路と並行する第1循環路と、スライダ内に形成され、軌道路と第1循環路とを接続する一対の第2循環路と、を含む。スライダは、第1循環路内において、長手方向に延びるように配置されるコイルバネを含む。コイルバネは、長手方向の両端部に設けられており、第1循環路に嵌め込まれる一対の第1領域と、一対の第1領域の径よりも小さい径であり、一対の第1領域の間において第1循環路の内壁面との間に隙間をあけて配置される第2領域と、を含む。
【発明の効果】
【0006】
上記直動案内ユニットによれば、使用される状況に関わらず、円滑にスライダを摺動させることが容易である。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、本開示の実施の形態1における直動案内ユニットを示す概略斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1に示す直動案内ユニットを示す概略側面図である。
【
図3】
図3は、
図1に示す直動案内ユニットの一部を示す概略側面図である。
【
図4】
図4は、
図1に示す直動案内ユニットの一部を示す概略平面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示す直動案内ユニットにおいて、一方のエンドキャップである第1のエンドキャップを取り除いた場合の概略側面図である。
【
図6】
図6は、スライダの一部を示す概略断面図である。
【
図8】
図8は、コイルバネを示す概略側面図である。
【
図9】
図9は、本開示の実施の形態2における直動案内ユニットを示す概略斜視図である。
【
図12】
図12は、
図9に示す直動案内ユニットにおいて、一方のエンドキャップである第1のエンドキャップを取り除いた場合の概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
[実施形態の概要]
本開示の直動案内ユニットは、長手方向に互いに平行に延びる一対の第1軌道溝を有するレールと、レールに相対移動可能に取り付けられ、一対の第1軌道溝のそれぞれに対向する一対の第2軌道溝を有するスライダと、複数の転動体としてのボールと、を備える。レールおよびスライダによって、複数の転動体が循環する環状路が形成されている。環状路は、第1軌道溝と第2軌道溝とから構成される軌道路と、スライダ内に形成され、軌道路と並行する第1循環路と、スライダ内に形成され、軌道路と第1循環路とを接続する一対の第2循環路と、を含む。スライダは、第1循環路内において、長手方向に延びるように配置されるコイルバネを含む。コイルバネは、長手方向の両端部に設けられており、第1循環路に嵌め込まれる一対の第1領域と、一対の第1領域の径よりも小さい径であり、一対の第1領域の間において第1循環路の内壁面との間に隙間をあけて配置される第2領域と、を含む。
【0009】
直動案内ユニットについては、種々の状況、具体的には、スライダを摺動させるレールの長手方向が水平方向となるような姿勢で用いられる場合もあれば、レールの長手方向が鉛直方向となるような姿勢で用いられる場合もある。もちろん各使用状況においても、スライダの円滑な摺動が求められる。
【0010】
ここで、本発明者らは、レールの長手方向が鉛直方向となるような姿勢で用いられた場合において、特に鉛直方向下方側にスライダを移動させる際に、スライダが円滑に摺動しにくい点に着目した。そして、以下のように考えた。まずスライダを鉛直方向上方側へ移動させる際には、転動体が軌道溝に戻る際に利用されるリターン路内を転動体が鉛直方向下方側に移動する。この時、リターン路内において転動体は自重により自然落下することになる。ここで、方向転換路から予圧が負荷されている予圧域である軌道溝内に転動体が入り込むこととなるが、この時に予圧域に転動体が入り込む際の摩擦抵抗に打ち勝つ力が必要となる。この摩擦抵抗に打ち勝つための力は、スライダを鉛直方向上方側へ移動させる際の転動体の自重による落下により得られる。一方、スライダを鉛直方向下方側に移動させる際には、リターン路内を鉛直方向上方側に向かって転動体が移動することとなる。この時、リターン路内において転動体は、それぞれ鉛直方向下方側から鉛直方向上方側へ向かって互いに押していくこととなり、いわゆる千鳥位置となって押される方向が定まらない。そうすると、予圧域に転動体が入り込む際の摩擦抵抗に打ち勝つ力を得られない。その結果、転動体が予圧域に入り込む位置において転動体が引っ掛かって詰まった状態になり、円滑なスライダの摺動を阻害していることを突き止めた。
【0011】
そこで、本発明者らは鋭意検討し、以下の着想に至った。すなわち、本開示の直動案内ユニットにおいて、転動体が予圧域に入り込む位置での引っ掛かりによる詰まった状態の発生を抑制するために、スライダが、第1循環路内において、長手方向に延びるように配置されるコイルバネを含む構成を採用することとした。そして、このコイルバネについて、長手方向の両端部に設けられており、第1循環路に嵌め込まれる一対の第1領域と、一対の第1領域の径よりも小さい径であり、一対の第1領域の間において第1循環路の内壁面との間に隙間をあけて配置される第2領域と、を含む構成とすることにした。このようにすることにより、まず、第1領域は、第1循環路に嵌め込まれているため、第2循環路から第1循環路へ転動体が移動する際に、段差を小さくして円滑に第2循環路から第1循環路へ転動体を移動させることができる。また、予圧域に転動体が入り込む際に、第1循環路内において第1循環路の内壁面と第2領域との間に設けられた隙間を利用してコイルバネを弾性変形させて、予圧域に転動体が入り込む際に生ずる摩擦抵抗を吸収することができる。すなわち、転動体が千鳥位置となって押される方向が定まらない時に、隙間が設けられた第2領域におけるコイルバネの径方向の弾性変形により、予圧域から出てくる転動体に押されて生ずる瞬間的な抵抗の増加を緩和することができる。したがって、大きな摩擦抵抗に打ち勝つ力は必要なくなるため、転動体の引っ掛かりによる詰まった状態の発生を抑制することができる。その結果、スライダを鉛直方向上方側に移動させる際においても、第1循環路内における転動体の詰まった状態を回避して、円滑にスライダを摺動させることが容易となる。
【0012】
また、本開示の直動案内ユニットにおいては、コイルバネの長手方向の全域にわたってコイルバネの隙間から転動体への潤滑油の供給が可能となる。したがって、転動体への潤滑油の供給についても、スムースに行うことができる。
【0013】
以上より、本開示の直動案内ユニットによれば、使用される状況に関わらず、円滑にスライダを摺動させることが容易である。
【0014】
上記直動案内ユニットにおいて、コイルバネは、金属製であってもよい。上記直動案内ユニットについては、非常に高温の環境で用いられる場合もある。このようにすることにより、特に樹脂製のものを用いることが困難な高温での使用環境下においても上記金属製のコイルバネを採用し、スライダの円滑な摺動を確保することができる。
【0015】
上記直動案内ユニットにおいて、一対の第1領域は、コイルバネを拡径させて形成されてもよい。このようなコイルバネは、長手方向に径が同じコイルバネを準備し、両端部を拡径して第1領域を形成して製造することができる。よって、生産性の向上を図ることができる。
【0016】
上記直動案内ユニットにおいて、コイルバネの長さは、第1循環路の長さと等しくてもよい。このようにすることにより、第1循環路と接続される第2循環路への転動体の移動をより円滑にすることができる。
【0017】
上記直動案内ユニットにおいて、レールは、長手方向に沿ってそれぞれ平行に延びる第1レール側面および第2レール側面を含んでもよい。スライダは、レールに跨架されていてもよい。一方の第1軌道溝は、第1レール側面に設けられていてもよい。他方の第1軌道溝は、第2レール側面に設けられていてもよい。このような直動案内ユニットは、工作機械や組み立て装置、搬送機械等に好適に用いられる。
【0018】
上記直動案内ユニットにおいて、レールは、中実円筒状のスプライン軸であってもよい。スライダは、中空円筒状であって、レールの外周側に配置されていてもよい。レールの外径面には、長手方向に互いに平行に延びる一対の第1軌道溝が設けられてもよい。このような直動案内ユニットは、ラジアル荷重に加え、トルクも同時に受けることができる。したがって、ラジアル荷重およびトルクが発生する際に、有効に利用できる。
【0019】
[実施形態の具体例]
次に、本開示の直動案内ユニットの具体的な実施の形態の一例を、図面を参照しつつ説明する。以下の図面において同一または相当する部分には同一の参照番号を付しその説明は繰返さない。
【0020】
(実施の形態1)
まず、本開示の実施の形態である実施の形態1について説明する。
図1は、本開示の実施の形態1における直動案内ユニットを示す概略斜視図である。
図2は、
図1に示す直動案内ユニットを示す概略側面図である。
図2は、
図1に示す直動案内ユニットを矢印Yで示す向きに見た図である。
図3は、
図1に示す直動案内ユニットの一部を示す概略側面図である。
図3は、
図1に示す直動案内ユニットを矢印Xで示す向きに見た図である。
図4は、
図1に示す直動案内ユニットの一部を示す概略平面図である。
図4は、
図1に示す直動案内ユニットを矢印Zで示す向きに対して逆向きに見た図である。
図5は、
図1に示す直動案内ユニットにおいて、後述する一方のエンドキャップである第1のエンドキャップを取り除いた場合の概略側面図である。
図5についても
図2と同様に、矢印Yで示す向きに見た図である。
図6は、後述するスライダの一部を示す概略断面図である。
図7は、
図6中のVIIで示す領域の拡大図である。
図6および
図7においては、理解を容易にする観点から、後述するボールを図示している。
図1および以下に示す図において、X方向は、直動案内ユニットの幅方向である短手方向を示し、Y方向は、直動案内ユニットの長手方向を示し、Z方向は、直動案内ユニットの厚さ方向(高さ方向)を示す。X方向、Y方向およびZ方向はそれぞれ、直交している。
【0021】
図1、
図2、
図3、
図4、
図5、
図6および
図7を参照して、本開示の実施の形態1に係る直動案内ユニット10aは、軸としてのレール11aと、スライダ21aと、複数の転動体としてのボール20と、を含む。レール11aは、長手方向であるY方向に真っ直ぐに延びる構成である。実施の形態1に係る直動案内ユニット10aは、転動体としてボール20を含むことにより、構成をシンプルにすることができる。
【0022】
まず、レール11aの構成について説明する。レール11aは、Z方向に間隔をあけて配置されるレール上端面12aおよびレール下端面12bと、X方向に間隔をあけて配置される第1レール側面13aおよび第2レール側面13bと、Y方向に間隔をあけて配置されるレール前端面14aおよびレール後端面14bと、を含む。すなわち、レール11aは、長手方向に沿ってそれぞれ平行に延びる第1レール側面13aおよび第2レール側面13bを含む。レール11aは、長手方向に互いに平行に延びる一対の第1軌道溝15a,15bを有する。第1軌道溝15aは、第1レール側面13aに設けられる。第1軌道溝15bは、第2レール側面13bに設けられる。第1軌道溝15a,15bはそれぞれ第1レール側面13aおよび第2レール側面13bにおいて、レール11aの内方側に凹んで半円弧状の凹溝を形成するように設けられる。第1レール側面13aおよび第2レール側面13bにはそれぞれ、第1軌道溝15a,15bのZ方向の中央領域においてさらに内方側へ凹む凹部16a,16bが設けられる。なお、このようなレール11aを含む直動案内ユニット10aは、工作機械や組み立て装置、搬送機械等に好適に用いられる。
【0023】
レール11aには、レール上端面12aからレール下端面12bに至るようZ方向に貫通する複数の貫通孔17が設けられる。複数の貫通孔17は、Y方向において間隔をあけて設けられる。貫通孔17は、例えば直動案内ユニット10aの使用時において、レール11aを所定の箇所に取り付ける際にそれぞれ有効に利用される。
【0024】
次に、スライダ21aの構成について説明する。スライダ21aは、レール11aに相対移動可能に取り付けられる。本実施形態においては、スライダ21aは、レール11aに摺動可能に跨架される。すなわち、スライダ21aは、レール11aに跨るように取り付けられ、Y方向に移動可能な構成である。
【0025】
スライダ21aは、一対の第1軌道溝15a,15bのそれぞれに対向する一対の第2軌道溝18a,18bを有する。レール11aおよびスライダ21aによって、複数のボール20が循環する環状路19aが形成されている。そして、環状路19aは、第1軌道溝15aと第2軌道溝18aとから構成される軌道路22aと、スライダ21a内に形成され、軌道路22aと並行する第1循環路23aと、スライダ21a内に形成され、軌道路22aと第1循環路23aとを接続する一対の第2循環路24a,25aと、を含む。第1循環路23aは、リターン路とも呼ばれる。また、一対の第2循環路24a,25aは、方向転換路とも呼ばれる。軌道路22aは、予圧が負荷されている予圧域である。第1循環路23a、第2循環路24a,25aは、負荷がかからない無負荷路となる。第1軌道溝15bと第2軌道溝18bとから構成される軌道路も含む環状路も同様の構成である。以下の構成についても同様である。
【0026】
スライダ21aは、ケーシング26aと、一対のエンドキャップ27a,27bと、を含む。ケーシング26aとエンドキャップ27aとは、複数のビス38a,38b,38c,38dにより連結されている。同様にケーシング26aとエンドキャップ27bとは、複数のビスにより連結されている。ケーシング26aには、上面36aから下面36bまで貫通する4つの貫通孔37a,37b,37c,37dが設けられている。
【0027】
ケーシング26aには、第1循環路23aが設けられる、また、ケーシング26aは、第2軌道溝18a,18bを含む。第1のエンドキャップ27aは、ケーシング26aの長手方向の一方側に配置される。本実施形態においては、第1のエンドキャップ27aは、長手方向においてレール前端面14a側に配置される。第1のエンドキャップ27aには、一方の第2循環路24aが設けられる。第2のエンドキャップ27bは、ケーシング26aの長手方向の他方側に配置される。本実施形態においては、第2のエンドキャップ27bは、長手方向においてレール後端面14b側に配置される。第2のエンドキャップ27bには、他方の第2循環路25aが設けられる。
【0028】
次に、スライダ21aのさらなる詳細な構成について説明する。スライダ21aは、第1循環路23a内において、長手方向に延びるように配置されるコイルバネ30aを含む。また、スライダ21aは、第1軌道溝15bと第2軌道溝18bとから構成される軌道路も含む環状路に含まれる第1環状路内において、長手方向に延びるように配置されるコイルバネ30bを含む。コイルバネ30bの構成は、コイルバネ30aの構成と同様であるため、その説明を省略する。
【0029】
図8は、コイルバネ30aを示す概略側面図である。
図8を併せて参照して、コイルバネ30aは、金属製であって、引っ張りコイルバネである。コイルバネ30aの長さは、第1循環路23aの長さと等しい。コイルバネ30aは、円環状であり、その内部を径R
1のボール20が通過することができる。コイルバネ30aは、一対の第1領域31a,31bと、第2領域32aと、を含む。一対の第1領域31a,31bはそれぞれ、長手方向の両端部に設けられ、第1循環路23aに嵌め込まれる。本実施形態においては、第1領域31a,31bはそれぞれ、すきまばめで第1循環路23aに嵌め込まれる。第2領域32aは、一対の第1領域31a,31bの径D
1よりも小さい径D
2であり、一対の第1領域31a,31bの間において第1循環路23a,23bの内壁面28aとの間に隙間29aをあけて配置される。一対の第1領域31a,31bは、コイルバネ30aを拡径させて形成されている。隙間29aの寸法は、間隔D
3で示される。本実施形態においては、コイルバネ30aは、一体型である。
【0030】
上記直動案内ユニット10aによると、まず、第1領域31a,31bは、第1循環路23aに嵌め込まれているため、第2循環路24a,25aから第1循環路23aへボール20が移動する際に、段差を小さくして円滑に第2循環路24a,25aから第1循環路23aへボール20を移動させることができる。また、予圧域にボール20が入り込む際に、第1循環路23a内において第1循環路23aの内壁面28aと第2領域32aとの間に設けられた隙間29aを利用してコイルバネ30aを弾性変形させて、予圧域にボール20が入り込む際に生ずる摩擦抵抗を吸収することができる。すなわち、ボール20が千鳥位置となって押される方向が定まらない時に、隙間29aが設けられた第2領域32aにおけるコイルバネ30aの径方向の弾性変形により、予圧域から出てくるボール20に押されて生ずる瞬間的な抵抗の増加を緩和することができる。したがって、大きな摩擦抵抗に打ち勝つ力は必要なくなるため、ボール20の引っ掛かりによる詰まった状態の発生を抑制することができる。その結果、スライダ21aを鉛直方向上方側に移動させる際においても、第1循環路23a内におけるボール20の詰まった状態を回避して、円滑にスライダ21aを摺動させることが容易となる。
【0031】
また、上記直動案内ユニット10aにおいては、コイルバネ30aの長手方向の全域にわたってコイルバネ30aの隙間からボール20への潤滑油の供給が可能となる。したがって、ボール20への潤滑油の供給についても、スムースに行うことができる。
【0032】
以上より、本開示の直動案内ユニット10aによれば、使用される状況に関わらず、円滑にスライダ21aを摺動させることが容易である。
【0033】
本実施形態においては、コイルバネは、金属製である。よって、特に樹脂製のものを用いることが困難な高温での使用環境下においても上記コイルバネ30aを採用し、スライダ21aの円滑な摺動を確保することができる。
【0034】
本実施形態においては、一対の第1領域31a,31bは、コイルバネ30aを拡径させて形成されている。このようなコイルバネ30aは、長手方向に径が同じコイルバネ30aを準備し、両端部を拡径して第1領域31a,31bを形成して製造することができる。よって、生産性の向上を図ることができる。
【0035】
本実施形態においては、コイルバネ30aの長さは、第1循環路23aの長さと等しい。このようにすることにより、第1循環路23aと接続される第2循環路24a,25aへのボール20の移動をより円滑にすることができる。
【0036】
(実施の形態2)
次に、他の実施の形態である実施の形態2について説明する。
図9は、本開示の実施の形態2における直動案内ユニットを示す概略斜視図である。
図10は、
図9に示す直動案内ユニットを示す概略側面図である。
図10は、
図9に示す直動案内ユニットを矢印Yで示す向きに見た図である。
図11は、
図9に示す直動案内ユニットの一部を示す概略側面図である。
図11は、
図9に示す直動案内ユニットをレールの外径側から見た図である。
図12は、
図9に示す直動案内ユニットにおいて、一方のエンドキャップである第1のエンドキャップを取り除いた場合の概略側面図である。
図12についても
図10と同様に、矢印Yで示す向きに見た図である。
図13は、スライダの一部を示す概略断面図である。
図13においては、理解を容易にする観点から、ボールを図示している。実施の形態2における直動案内ユニットは、基本的には実施の形態1の場合と同様の構成を有し、同様の効果を奏する。しかし、実施の形態2の直動案内ユニットは、レールおよびスライダの構成において実施の形態1の場合とは異なっている。
【0037】
図9、
図10、
図11、
図12および
図13を参照して、実施の形態2における直動案内ユニット10bは、レール11bと、スライダ21bと、複数の転動体としてのボール20と、を含む。レール11bは、長手方向であるY方向に真っ直ぐに延びる構成である。実施の形態2に係る直動案内ユニット10bについても、実施の形態1に係る直動案内ユニット10aと同様、転動体としてボール20を含むことにより、構成をシンプルにすることができる。
【0038】
レール11bは、長手方向に互いに平行に延びる一対の第1軌道溝15c,15dを有する。本実施形態においては、レール11bは、中実円筒状のスプライン軸である。レール11bの外径面13cには、長手方向に互いに平行に延びる一対の第1軌道溝15c,15dが設けられる。長手方向から見て、一方の第1軌道溝15cが設けられた位置に対してレール11bの中心を回転中心軸12cとして180度回転させた位置に他方の前記第1軌道溝15dが設けられる。回転中心軸12cは、
図9において一点鎖線で示される。
【0039】
また、スライダ21bは、レール11bに相対移動可能に取り付けられる。本実施形態においては、スライダ21bは、中空円筒状である。また、スライダ21bは、レール11bの外周側に配置される。
【0040】
レール11bは、一対の第1軌道溝15c,15dのそれぞれに対向する一対の第2軌道溝18c,18dを有する。レール11bおよびスライダ21bによって、複数のボール20が循環する環状路19cが形成されている。そして、環状路19cは、第1軌道溝15cと第2軌道溝18cとから構成される軌道路22cと、スライダ21b内に形成され、軌道路22cと並行する第1循環路23cと、スライダ21b内に形成され、軌道路22cと第1循環路23cとを接続する一対の第2循環路24c,25cと、を含む。第1軌道溝15dと第2軌道溝18dとから構成される軌道路も含む環状路も同様の構成である。以下の構成についても同様である。
【0041】
スライダ21bは、外筒26bと、一対のエンドキャップ27c,27dと、を含む。外筒26bには、第1循環路23cが設けられる、また、外筒26bは、第2軌道溝18c,18dを含む。第1のエンドキャップ27cは、外筒26bの長手方向の一方側に配置される。本実施形態においては、第1のエンドキャップ27cは、長手方向においてレール前端面14c側に配置される。第1のエンドキャップ27cには、一方の第2循環路24cが設けられる。第2のエンドキャップ27dは、外筒26bの長手方向の他方側に配置される。本実施形態においては、第2のエンドキャップ27dは、長手方向においてレール後端面14d側に配置される。第2のエンドキャップ27dには、他方の第2循環路25cが設けられる。
【0042】
次に、スライダ21bのさらなる詳細な構成について説明する。スライダ21bは、第1循環路23c内において、長手方向に延びるように配置されるコイルバネ30cを含む。また、スライダ21bは、第1軌道溝15dと第2軌道溝18dとから構成される軌道路も含む環状路に含まれる第1環状路内において、長手方向に延びるように配置されるコイルバネ30dを含む。コイルバネ30dの構成は、コイルバネ30cの構成と同様であるため、その説明を省略する。
【0043】
コイルバネ30cは、金属製であって、引っ張りコイルバネである。コイルバネ30cの長さは、第1循環路23cの長さと等しい。コイルバネ30cは、円環状であり、その内部を径R1のボール20が通過することができる。コイルバネ30cは、一対の第1領域31c,31dと、第2領域32bと、を含む。一対の第1領域31c,31dはそれぞれ、長手方向の両端部に設けられ、第1循環路23cに嵌め込まれる。本実施形態においては、第1領域31c,31dはそれぞれ、すきまばめで第1循環路23cに嵌め込まれる。第2領域32bは、一対の第1領域31c,31dの径よりも小さい径であり、一対の第1領域31c,31dの間において第1循環路23cの内壁面28bとの間に隙間29bをあけて配置される。一対の第1領域31c,31dは、コイルバネ30cを拡径させて形成されている。本実施形態においては、コイルバネ30cは、一体型である。その他、コイルバネ30cの構成は、実施の形態1におけるコイルバネ30a,30bの構成と同様であるため、その説明を省略する。
【0044】
このような直動案内ユニット10bにおいても、上記構成のコイルバネ30c,30dを含むため、使用される状況に関わらず、円滑にスライダ21bを摺動させることが容易である。このような直動案内ユニット10bは、ラジアル荷重に加え、トルクも同時に受けることができる。したがって、ラジアル荷重およびトルクが発生する際に、有効に利用できる。
【0045】
(他の実施の形態)
なお、上記実施の形態においては、コイルバネの長さは、第1循環路の長さと等しいこととしたが、これに限らず、コイルバネの長さは、第1循環路の長さと異なっていてもよい。例えば、コイルバネの長さは、第1循環路の長さよりも短くてもよい。この場合、第1領域の少なくとも一方は、第1循環路内に配置されることとなる。そして、コイルバネが配置されない領域における第1循環路の内壁面と転動体とが接触して移動することになる。また、コイルバネの長さは、第1循環路の長さよりも長いものを採用することにしてもよい。この場合、コイルバネは、第2循環路内の一部または第2循環路内の全てに配置されることとなる。コイルバネは、弾性変形が可能であるため、折り返すようにして構成される第2循環路内においても、容易に配置することができる。
【0046】
また、上記実施の形態においては、一対の第1領域は、コイルバネを拡径させて形成されていることとしたが、これに限らず、コイルバネは、径の異なるコイルバネを繋ぎ合わせて、一対の第1領域および第2領域を含む上記コイルバネを形成することとしてもよい。
【0047】
なお、上記実施の形態においては、コイルバネは、金属製であることとしたが、これに限らず、コイルバネは、樹脂製であってもよい。具体的には、例えばエンジニアリングプラスチック製のものが用いられる。
【0048】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって、どのような面からも制限的なものではないと理解されるべきである。本発明の範囲は、特許請求の範囲によって規定され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0049】
10a,10b 直動案内ユニット、11a,11b レール、12a レール上端面、12b レール下端面、12c 回転中心軸、13a 第1レール側面、13b 第2レール側面、13c 外径面、14a,14c レール前端面、14b,14d レール後端面、15a,15b,15c,15d 第1軌道溝、16a,16b 凹部、17,37a,37b,37c,37d 貫通孔、18a,18b,18c,18d 第2軌道溝、19a,19c 環状路、20 ボール、21a,21b スライダ、22a,22c 軌道路、23a,23b,23c 第1循環路、24a,24c,25a,25c 第2循環路、26a,26b 外筒、27a,27c エンドキャップ(第1のエンドキャップ)、27b,27d エンドキャップ(第2のエンドキャップ)、28a,28b 内壁面、29a,29b 隙間、30a,30b,30c,30d コイルバネ、31a,31b,31c,31d 第1領域、32a,32b 第2領域、36a 上面、36b 下面、38a,38b,38c,38d ビス。