(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】炉内加圧治具
(51)【国際特許分類】
B23K 20/00 20060101AFI20240116BHJP
F27D 5/00 20060101ALI20240116BHJP
B23K 37/04 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
B23K20/00 310P
F27D5/00
B23K37/04 M
(21)【出願番号】P 2021203054
(22)【出願日】2021-12-15
【審査請求日】2022-05-12
(73)【特許権者】
【識別番号】591105074
【氏名又は名称】株式会社ニチダイ
(74)【代理人】
【識別番号】110003155
【氏名又は名称】弁理士法人バリュープラス
(72)【発明者】
【氏名】森 満帆
(72)【発明者】
【氏名】池田 誠志
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 直紀
【審査官】柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-230856(JP,A)
【文献】特開昭51-020745(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 20/00
F27D 5/00
B23K 37/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱処理を行う炉内で用いられる加圧治具であって、加熱処理対象物の加圧方向の端部に配置され、加熱処理前に加えた圧力を均一的に蓄積する準備基準部を有した加圧体と、加熱処理前に加熱処理対象物を加圧した状態で前記加圧体と該加熱処理対象物を拘束する拘束体とを備え、加熱処理時、前記加圧体は前記拘束体によって共に拘束状態にあ
って加熱により体積が減少する加熱処理対象物
を減少した体積分に追従して加圧する炉内加圧治具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱処理対象物に体積減少が生じても加圧体により十分な加圧が行え、また、通常の加熱炉で使用することができ、かつ炉内挿入方向の制限がなく、炉内空間を有効に使用することができる炉内加圧治具に関する。
【背景技術】
【0002】
炉内で処理物を加圧する構成として、例えば特許文献1(特開2003-212666号公報)には、焼成炉内でセラミック材料を焼成してセラミック積層体を製造する際に、焼成する過程で生じる焼き締まり現象に起因するセラミック積層体の反りを抑制するために、次の構成とすることが記載されている。
【0003】
すなわち、特許文献1は、セラミック材料基板を少なくとも一層以上ずつ互いに積層させてなる材料基板積層体を接合するセラミック積層体製造装置において、材料基板積層体を収容する密閉された処理室と、処理室の容積を縮小させて材料基板積層体を加圧する加圧手段と、処理室の内壁と材料基板積層体との間に介在する変形可能な緩衝材と、材料基板積層体を加熱する加熱手段を備える構成とされている。
【0004】
具体的には、特許文献1において、第1~第3の実施形態には鉛直方向にある所定の重量を持った「錘」(加圧手段)により加圧する構成が記載され、第4の実施形態には処理室の上下端の加圧治具の互いの開放端面に挟持板を設けて、この両挟持板を上下端に達する長さのボルトとナットで「挟み込む」構成(加圧手段)が記載され、第5の実施形態には炉外に「シリンダ装置」(加圧手段)を設けてピストンを炉内に挿入して上記錘に代えて加圧する構成が記載されている。
【0005】
しかしながら、特許文献1の実施形態はいずれも次の課題があった。第1~第3の実施形態における加圧手段の錘は、まず、大きな加圧力を必要とする場合はそれ相応の重量の錘、つまり対応した大きさの錘が必要となり、炉内の限られたスペースをこの錘が占めてしまう可能性がある。また、鉛直方向にしか加圧できないので、例えば処理物を炉内に配置する関係で手前(挿入口側)-奥方向に加圧したい場合は錘が加圧手段として機能しないといった問題がある。
【0006】
第4の実施形態における上下の挟持板をボルトとナットで挟み込む構成では、一旦、挟み込んだ状態で加圧されているとしても、炉内で例えば積層した金属板部材を拡散接合する場合には、接合が進行して体積減少が生じた場合は以降の加圧が行えないといった問題がある。
【0007】
第5の実施形態における炉にシリンダ装置を設ける構成では、そもそもそういった特別な構成の炉でしか処理を行うことができず、また、そのようなシリンダ装置を備えた炉を構築するには、炉内の密閉性や断熱性の確保のために、また、加圧による力を炉の底面で受ける必要があり、相応の剛性が求められるなど別途特別な構成としなければならないといった問題がある。
【0008】
以上のとおり、特許文献1は、焼成炉により反りのないセラミック積層体を製造するには適しているだけであって、場合によっては、加圧が行われなかったり、通常の加熱炉では処理できなかったり、といった種々の問題があった。
【0009】
また、特許文献2(特開平8-290275号公報)には、精密で精度が要求される加工、例えば拡散接合の際に要求される処理時の均一な押圧を可能とすべく、炭素繊維で強化された炭素系複合材料からなる挾持部とその挾持部を押圧する同じく弾性部材からなる押圧部とで構成した拡散接合用治具が開示されている。
【0010】
特許文献2は、特許文献1における、加圧が行われなかったり、通常の加熱炉では処理できなかったり、といった種々の問題は生じないが、次の別の問題が存在する。すなわち、特許文献2は、拡散接合処理「前」において加熱処理対象物を加圧状態で「拘束する構成」においてバネが用いられているので、拘束のための圧力がバネで吸収され、拡散接合前の加圧時の圧力がどの程度の力なのかが把握しにくく、加工ロットによって加圧条件が異なって品質にばらつきが生じる可能性がある。
【0011】
なお、特許文献2は、弾性部材として、バネとして各種バネを採用してもよいと記載されているが、一般的にバネやゴムといった弾性部材は変形量(特許文献2に例ではバネの短縮量)によって復元力、つまり加圧力が異なるので、上記のとおり、拘束のための圧力(バネの短縮量)が把握しにくく、不均一になりがちとなり、拡散接合の際に要求される処理時の均一な押圧は困難である可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】特開2003-212666号公報
【文献】特開平8-290275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明が解決しようとする問題は、特許文献1の構成に存在した、実施形態によって、炉内空間を無駄に消費する、加圧が行われない、通常の加熱炉では処理できないといった点、特許文献2の構成に存在する、加工ロット毎に加熱処理対象物に対する加圧条件が異なって品質にばらつきが生じる点、である。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するために、本発明の炉内加圧治具は、加熱処理を行う炉内で用いられる加圧治具であって、加熱処理対象物の加圧方向の端部に配置され、加熱処理前に加えた圧力を均一的に蓄積する準備基準部を有した加圧体と、加熱処理前に加熱処理対象物を加圧した状態で前記加圧体と該加熱処理対象物を拘束する拘束体とを備え、加熱処理時、前記加圧体は前記拘束体によって共に拘束状態にあって加熱により体積が減少する加熱処理対象物を減少した体積分に追従して加圧する構成とした。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、特許文献1のように加熱処理対象物を収容した処理室の外部から加圧するのではなく、また、特許文献2のように「加圧する側」つまり本発明で言う拘束体により加圧するのではなく、加熱処理対象物と共に該拘束体に拘束された加圧体により該加圧処理対象物を加圧し、加熱処理対象物を加圧することには変わりないが、加熱処理によって生じた体積の減少により低下する加圧力を補償するよう加圧する点で従来と趣を異とする。
【0016】
よって、本発明は、加熱処理対象物に大きな加圧力を加えるとしても炉内空間を加圧体が占有することがなく、また、加熱処理対象物と共に加圧体が拘束された状況下で常時加熱処理対象物を加圧しているので、加熱処理対象物の体積減少が生じてもこの体積減少に追従して加圧体により加圧が行え、かつ炉内での姿勢に制約がなく、さらに、本発明を複数用意すれば、複数の加圧条件を1回の加熱で行うことができ、そのうえ、炉の構成でもって加熱処理対象物を加圧しないと共に炉内に加圧による力がかからないので炉を特別な構成とする必要がなく、つまり通常の加熱炉で使用することができるという利点がある。
【0017】
さらに、本発明は、加圧体に準備基準部を設けていることで、拘束体による拘束時にはこの準備基準部における基準位置まで加圧拘束すれば、どの加工ロットにおいてもほぼ一定の加圧力で加熱処理を行うことができるので、品質のばらつきが抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の炉内加圧治具における加圧体を示す概略図である。
【
図2】本発明の炉内加圧治具における加圧体を上方から見た図である。
【
図3】本発明の炉内加圧治具における加圧体を示し、(a)は
図2のA-A線断面図、(b)は
図2のB-B線断面図、である。
【
図4】(a)~(g)は本発明の炉内加圧治具における加圧体の構成の一部を詳細に示した図である。
【
図5】(a)~(d)は本発明の炉内加圧治具の使用状況を示す図である。
【
図6】(a)~(d)は本発明の炉内加圧治具の使用状況を示す図である。
【
図7】本発明の炉内加圧治具を炉内に挿入する方向を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明は、炉内空間を無駄に消費したり、一方向しか炉内に挿入できなかったりする問題点、また、加工ロット毎に加熱処理対象物に対する加圧条件が異なって品質にばらつきが生じる問題点を、加熱処理対象物の加圧方向の端部に配置され、加熱処理前に加えた圧力を均一的に蓄積する準備基準部を有した加圧体と、加熱処理前に加熱処理対象物を加圧した状態で前記加圧体と該加熱処理対象物を拘束する拘束体とを備え、加熱処理時、前記加圧体は前記拘束体によって共に拘束状態にあって加熱により体積が減少する加熱処理対象物を減少した体積分に追従して加圧する構成により解消した。
【0020】
本発明の炉内加圧治具は、例えば拡散接合する際に体積が減少する加熱処理に用いて好適である。拡散接合は処理対象物の材料によっては炉内で加圧し続けなければ、処理対象物同士の表面の良好な拡散、及び両者の接合が得られない。そこで、特許文献1の構成を採用したとしても、例えば非常に大きな力を要する場合には、特許文献1における錘はその重量でもって加圧するから、それ相応の大きさの錘が必要となり、錘の大きさによっては炉内に挿入できない可能性がある。
【0021】
また、特許文献1における錘は鉛直方向にしか加圧できないので、水平に加圧するように炉内に配置することができず、この場合も錘に起因して炉内に挿入方向が制限されることになる。さらに、特許文献1において挟持板で加圧すると、ボルトとナットで挟み込んだ状態でそれ以上の加圧ができないから、拡散接合時に減少した体積に追従して加圧することができない。
【0022】
特許文献1でいう、炉内に加圧用のシリンダ装置のピストンを挿入する構成は、もはやそのような特別な炉構成となるから、通常の炉で使用するという前提が存在しないことになる。また、特許文献2は、加圧時のバネの短縮量が把握できないので、加圧力を加工ロット毎に一定にすることができない。
【0023】
本発明の炉内加圧治具は、加熱処理対象物の加圧端部に設ける加圧体が、該処理対象物と共に拘束体に拘束された状態で、拘束状態の内側から加熱処理対象物を加熱処理前に準備基準部まで加圧して圧力を均一的に蓄積するから、加工ロットが変わっても同じ圧力条件で、加熱処理中に常時加圧することができ、錘は要せず、よって重量に相当する大きさの錘も、錘による鉛直方向のみの加圧の問題も無関係である。また、前記のとおり拘束状態の内側から加圧するので、挟持板で加圧した場合には挟み込んだ状態で、加熱対象物の体積減少があれば、その減少した体積分に追従して加圧を行うので、加圧不足が生じることはなく、良好かつ均質な処理(例えば拡散接合)を行うことができる。
【実施例】
【0024】
本発明の実施例について、図面を用いて説明する。本発明の炉内加圧治具1は、加熱処理を行う炉F(
図7)内で用いられる加圧治具であって、概略構成としては、本例では、拡散接合を行う金属板P1,P2を一対とし、複数対の積層体を加熱処理対象物とし、この積層体の加圧端部に配置する加圧体2と、加圧体2が積層体を加圧した状態で該加圧体と該加熱処理対象物を拘束する拘束体3とを備えている。
【0025】
本例における炉内加圧治具1は、炉F内で使用するから、全要素が、1000℃以上の耐熱性を有すると共に、高温下において熱による物性変化がなく安定した材質で構成されている。
【0026】
加圧体2は、基板2aと受板2bとの間に、本例では例えば伸長状態が自然長とされた皿バネ2Aとコイルバネ2Bが設けられている。皿バネ2Aとコイルバネ2Bとは、本例では基板2aの縦横に所定間隔で皿バネ2Aが配置され、これら皿バネ2Aの縦横の隙間にコイルバネ2Bが配置されている。さらに基板2aは、中央から所定間隔存した皿バネ2Aが配置される位置にエンドブロック2dが配置される。基板2aと受板2bは、皿バネ2Aとコイルバネ2Bを挟んだ状態で配置する。
【0027】
本発明において、エンドブロック2dの受板2b側の面は、つまり後述のように加熱処理対象物を加熱処理する前に拘束体3により拘束する際に、受板2bの基板2a側の面と当接するまで加圧する準備基準部2Cとしている。なお、この準備基準部2Cは、本例に限らず、例えばバネ軸2Aaと受板2bとの当接面としても構わない。
【0028】
基板2aは、皿バネ2Aが配置される個所、コイルバネ2Bが配置される個所、エンドブロック2dが配置される個所に凹部がそれぞれ形成されており、皿バネ2Aが配置される個所には直列状に複数配置された皿バネ2Aの数個が嵌入する凹部2a1とばね軸2Aaが挿入される孔2a2が形成され、コイルバネ2Bが配置される個所にはコイルバネ2Bの一端が嵌入する凹部2a3が形成され、エンドブロック2dが配置される個所にはエンドブロック2dの一端が挿入される孔2a4が形成されている。
【0029】
受板2bは、加圧体2においては加熱処理対象物と面する側に配置される。受板2bの加熱処理対象物に面する側と反対の面において、後述する皿バネ2Aの他端(受板2b側)に設けたスペーサ2cと、コイルバネ2Bの他端(受板2b側)と、が当接し、上記の基板2aとで、皿バネ2Aとスペーサ2c及びコイルバネ2Bを挟んだ状態とする。
【0030】
皿バネ2Aは、
図4に詳細に示すように、基板2a―受板2b方向に直列状に複数の皿バネが積層され、内周部にバネ軸2Aaが配置されている。皿バネ2Aのうちの数個が基板2aにおける凹部2a1に嵌入されている。また、バネ軸2Aaは基板2aにおける孔2a2に嵌入されている。皿バネ2Aの他端に設けたスペーサ2cは、皿バネ2Aの短縮時におけるバネ軸2Aaの突出代を確保するためのものである。
【0031】
コイルバネ2Bは、その一端の所定巻き数分が基板2aの凹部2a3に嵌入し、他端が受板2bに当接している。
【0032】
以上の皿バネ2Aと、コイルバネ2Bは、加熱処理対象物を高温雰囲気下で常時加圧するため、特に本例では、1000℃以上の耐熱性を有すると共に、高温下において熱による物性変化がなく安定した材質として、C/Cコンポジット(Carbon Fiber Reinforced Carbon Composite:炭素繊維強化炭素複合材料)と言われる高温で焼成・熱処理することにより炭素化したプラスチックと炭素繊維の複合材を用いている。
【0033】
皿バネ2Aとコイルバネ2Bに、C/Cコンポジット材を用いることで、一般炭素材に比べて高強度でかつ高弾性を発揮し、後述する予圧の高圧力に耐え、かつ体積が減少した場合には(予圧と同等の)高圧力で加熱対象処理物を加圧することができる。
【0034】
拘束体3は、加熱処理対象物と上記加圧体2とを一体的に拘束する構成であり、さらには予圧を加えた状態を維持する機能を有していれば、特に限定しないが、本例では、例えば
図5及び
図6に示す構成としている。
【0035】
図5に示す拘束体3は、受台3Aと、この受台3A上に一体的に立設されたガイド壁3Bと、炉外において予圧を受ける予圧受板3Cと、予圧が加えられた状態を維持するための拘束ブロック3Dとを備える。
【0036】
ここで、
図5を用いて拘束体3の詳細説明と共に本例の炉内加圧治具1の使用について説明する。
図5(a)において、受台3Aには、加圧体2が基板2aを下、つまり受台3Aに接触するように載置される。加熱処理対象物は加圧体2の受板2b上で、ガイド壁3B,3Bに積層状に載置される。本例の場合、板P1,板P2を拡散接合すべく、これらを突き合わせた状態で一対として積層した状態で載置し、積層した最上部に予圧受板3Cを載置する。
【0037】
ガイド壁3B,3Bには同高さに調整孔3aが形成されており、
図5(a)の後、予圧受板3Cに例えばプレス装置により、
図5(b)に示すように加圧体2が短縮するようにすなわち、受板2bが準備基準部2Cに当接するまで所定圧力を加え、加熱処理対象物の加圧前において加圧力を均一的に蓄積する。このとき、加圧体2は、皿バネ2A及びコイルバネ2Bが短縮状態となり、受板2bの基板2a側の面がエンドブロック2dの上端面に当接した状態となる。
【0038】
図5(b)のように予圧を加えた状態で、
図5(c)に示すように前記3B,3B間の調整孔3a同士に向けて拘束ブロック3Dを挿入する。このとき、拘束ブロック3Dを調整孔3aに挿入してもなお該調整孔3aに隙間が生じる場合は、この隙間を埋めるように不図示の拘束板を挿入する。そして、拘束ブロック3Dを調整孔3aに挿入した後、予圧を解除する。加圧体2は予圧を解除した後は、短縮状態から復元しようとして常時、板P1、板P2の積層体を加圧することとなる。
【0039】
図5(c)の後、加圧方向を垂直、水平、どちらでも可能な方向にして(本例では垂直)炉Fに挿入する。炉F内で加熱処理によって拡散接合が進展すると、板P1、板P2同士の界面が拡散して一体化し、体積が若干減少する。このとき、板P1,板P2の積層体には加圧体2が伸長(自然長)に弾性復元しようとする所定の圧力がかかっているので、体積減少に追従して、これを補償するように加圧体2が加圧することになる。
【0040】
図6の拘束体3は、受台3Aの四隅にボルト3Eが立設されており、これら四隅のボルト3Eを、予圧受体3Cの四隅に形成された孔3bに挿通して、各々のボルト3Eにナット3Fを締める構成である。
【0041】
ここで、
図6を用いて拘束体3の詳細説明と共に本例の炉内加圧治具1の使用について説明する。
図6(a)において、受台3Aには、加圧体2が基板2aを下、つまり受台3Aに接触するように載置される。加熱処理対象物は加圧体2の受板2b上に積層状に載置される。本例の場合、板P1,板P2を拡散接合すべく、これらを突き合わせた状態で一対として積層した状態で載置し、その後、積層した最上部から予圧受板3Cを載置すべく、該予圧受板3Cの孔3bにボルト3Eを挿通する。
【0042】
図6(a)の後、どのタイミングでも構わないが、ボルト3Eにナット3Fを仮螺着しておき、予圧受板3Cに例えばプレス装置により、
図6(b)に示すように加圧体2が短縮するように、すなわち、受板2bが準備基準部2Cに当接するまで所定圧力を加え、加熱処理対象物の加圧前において加圧力を均一的に蓄積する。このとき、加圧体2は、皿バネ2A及びコイルバネ2Bが短縮状態となり、受板2bの基板2a側の面がエンドブロック2dの上端面に当接した状態となる。
【0043】
図6(b)のように予圧を加えた状態で、
図6(c)に示すように予圧受板3Cが浮き上がらないようにナット3Fを締めて、その後、予圧を解除する。加圧体2は予圧を解除した後は、短縮状態から復元しようとして常時、板P1、板P2の積層体を加圧することとなる。
【0044】
図6(c)の後、加圧方向を垂直、水平、どちらでも可能な方向にして(本例では垂直)炉Fに挿入する。炉F内で加熱処理によって拡散接合が進展すると、板P1、板P2同士の界面が拡散して一体化し、体積が若干減少する。このとき、板P1,板P2の積層体には加圧体2が伸長(自然長)に弾性復元しようとする所定の圧力がかかっているので、体積減少に追従して加圧体2が加圧することになる。
【0045】
なお、上記では、加熱処理対象物を一方向から加圧体2により加圧する構成を示したが、これに限らず、加圧体2を例えば加熱処理対象物を挟んで対向状に設けて、相対する方向から加圧するようにしてもよい。
【0046】
また、加圧体2は、皿バネ2A又はコイルバネ2Bのいずれか一方でなる構成でも構わないし、短縮・圧縮状態から大きな力で弾性(復元力)する構成であれば、特に限定しない。
【0047】
以上のとおり、本発明の炉内加圧治具1は、加熱処理対象物(板P1、板P2の積層体)と共に加圧体2を拘束して、加圧体2が予圧後に拘束状態にある加熱処理対象物を常時加圧しているので、炉F内で加熱対象物の処理が進展して体積減少が生じても、この体積減少分を補償するように常時加圧することができる。
【0048】
したがって、本発明の炉内加圧治具1を用いることで、炉内において良好な加熱処理が行えることはもちろん、炉の構成でもって加熱処理対象物を加圧しないと共に炉内に加圧による力がかからないので炉を特別な構成とする必要がなく、つまり通常の加熱炉で上記良好な加熱処理を行うことができる。
【0049】
また、本発明の炉内加圧治具1は、上記したように加圧方向を選ばないし、非常にコンパクトな構成であるため、大きな力を加えるとしても炉F内の空間を占有することがなく、さらに、
図7に示すように、炉内加圧治具1の炉F内における姿勢に制約がなく、また、錘を要しないので炉F内の奥行、高さのスペースを有効に使用することができ、炉F内空間の許容範囲で本発明の炉内加圧治具1を複数用意すれば、複数の加圧条件を1回の加熱で行うことができる。
【0050】
さらに、本発明の炉内加圧治具1は、準備基準部2Cを設けていることで、加工ロット毎に、加圧力が変動することが抑制され、加熱処理は均一的に行われ、品質のばらつきが抑制される。
【符号の説明】
【0051】
1 炉内加圧治具
2 加圧体
2A 皿バネ
2B コイルバネ
2C 準備基準部
3 拘束体