(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】生の詰め物パスタを調製するための食品キットの製造方法、その製造方法によって得られた食品キット、及び使用方法
(51)【国際特許分類】
A23L 7/109 20160101AFI20240116BHJP
【FI】
A23L7/109 A
A23L7/109 E
A23L7/109 C
(21)【出願番号】P 2021504372
(86)(22)【出願日】2019-07-23
(86)【国際出願番号】 IB2019056260
(87)【国際公開番号】W WO2020021438
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-05-25
(31)【優先権主張番号】102018000007432
(32)【優先日】2018-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】521031224
【氏名又は名称】ベルターニ 1882 エッセ.ピ.ア.
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】弁理士法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ボッラ、エンリコ
【審査官】手島 理
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第102138694(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2002/0064582(US,A1)
【文献】手包み餃子セット(大) ぎょうざセット,Wayback Machine Archive[online],2017年05月03日,[令和5年4月26日検索],インターネット<URL:https://web.archive.org/web/20170503120421/http://tensin-kasuga.com/?pid=27445059>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自家製生パスタとほぼ同じ特性を有するトルテッリ、ラビオリ
又はパンツェロッテ
ィである生の詰め物パスタ(P)の、オンデマンドでの調製のための食品キット(1)を製造する方法であって、前記方法は、
所定の平らな形状を有する生パスタの、1枚のシート又は2枚のシートのユニット部分(5)からなる第1の構成要素(4)を製造するステップと、
冷却するステップと、
真空包装するステップと、
デンプンのアルファ化を回避しながら、前記第1の構成要素の構造及び物理学的流動学的特性を変化させないまま維持するために、低温殺菌される前記ユニット部分(5)を、冷高圧低温殺菌して冷蔵するステップと、
好都合な形状にされ、後で低温殺菌され、且つ/又は場合によっては冷凍される、予め適量に分けられた詰め物のプラリネ(7)からなる第2の構成要素(6)を製造するステップと
を含み、
前記第1の構成要素(4)及び前記第2の構成要素(6)は、包装されて生又は冷凍保存用の容器(10)に集められ、調理前に生の詰め物パスタ(P)の形態をオンデマンドで調製するように、そのまま又は解凍後に一緒になる準備ができている状態であり、その結果、前記構成要素(4、6)間の水、塩、及び他の成分の交換を回避する、方法。
【請求項2】
前記生パスタの予め生成されたユニット部分(5)は、ユニットのシートを複数の部分に予め切断することにより製造され、前記ユニット部分(5)は、予備切断線に沿って最終分離することにより得られることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記予め生成されたユニット部分(5)又は複数の予め切断された部分は、
a)小麦粉、セモリナ、水、及び卵から生地を作るステップと、
b)前記生地を一方向及び/又は多方向に打ち延ばし、所定の厚さ(s)の連続シートを得るステップと、
c)前記連続シートを、トルテッリ、ラビオリ
又はパンツェロッテ
ィの1個の前記ユニット部分に対応する形状及びサイズを有する、略平らなユニット部分(5)又は複数の部分に切断又は予め切断するステップと
によって得られることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
生パスタの前記ユニット部分(5)又は複数の部分に対して、
d)どんな発酵も回避するよう適合された、第1の温度(T
1)で急速冷却する処理、
e)前記第1の温度(T
1)以下の第2の温度(T
2)で、前記個々のユニット部分(5)又は複数の部分を、真空包装及び制御された雰囲気で包装する処理、
f)前記ユニット部分(5)の前記平らな形状が変化せず、ベース生地の前記流動学的特性及び感覚刺激特性が影響を受けないように、前記真空包装されたユニット部分(5)又は複数の部分に対して、その中に含まれる前記デンプンのアルファ化を回避するよう適合された第3の温度(T
3)で、冷高圧低温殺菌を施す処理、並びに
g)前記食品キット(1)の生又は冷凍状態の第1の構成要素(4)を得るために、前記低温殺菌されたユニット部分(5)を第4の温度(T
4)で冷却及び貯蔵する処理
が行われることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記プラリネ(7)は、
h)所定のレシピにしたがって適切な材料から詰め物を調製するステップと、
i)前記詰め物を、その重量及び形状が、ラビオリ、トルテッリ
又はパンツェロッテ
ィの各個の前記プラリネに対応する、個々のプラリネ(7)に適量に分けるステップと、
j)大気圧で前記個々のプラリネ(7)を低温殺菌するステップと、
k)保護雰囲気下で、前記個々のプラリネを別々のパッケージ(9)に包装するステップと、
l)前記個々のプラリネ(7)を第5の温度(T
5)で冷却及び冷蔵し、前記食品キット(1)の生又は凍結状態の第2の構成要素(
6)を得るステップと
によって得られる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記ステップf)前記パスタのユニット部分(5)に冷高圧低温殺菌(HPP)を施すステップは、5000バールから6000バールの範囲の圧力(P
H)で、2分から6分の範囲の時間(t)、実行されることを特徴とする、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
第3の温度(T
3)は25℃未満であることを特徴とする、請求項
4に記載の方法。
【請求項8】
前記シートの前記所定の厚さ(s)は、0.3mmから1.5mmの範囲であることを特徴とする、請求項3に記載の方法。
【請求項9】
第1の温度(T
1)は8~10℃未満であり、第2の温度(T
2)は-5℃~10℃の範囲であることを特徴とする、請求項
4に記載の方法。
【請求項10】
トルテッリ、ラビオリ
又はパンツェロッテ
ィである生の詰め物パスタ(P)をオンデマンドで調製するための食品キット(1)であって、前記
食品キットは
、略平らな予め生成された生パスタのユニット部分(5)からなる所与の数の第1の構成要素(4)と、予め適量に分けられた詰め物のプラリネ(7)からなる、対応する数の第2の構成要素(6)とを有
し、前記詰め物は所定のレシピにしたがった適切な材料を含み、個々のプラリネ(7)のそれぞれはラビオリ、トルテッリ又はパンツェロッティの各個に対応する、重量及び形状を有し、前記食品キットは保護雰囲気下で個々のプラリネの別々のパッケージ(9)を含み、前記個々のプラリネは、前記食品キット(1)の生又は凍結状態の第2の構成要素(6)である、
食品キット。
【請求項11】
前記略平らな予め生成された生パスタのユニット部分(5)、及び前記予め適量に分けられた詰め物のプラリネ(7)は、対応する別個の小室(10’、10’’)を有する容器(10)内に集められることを特徴とする、請求項10に記載のキット。
【請求項12】
請求項1から9までのいずれか一
項に記載されるように得られた、トルテッリ、ラビオリ
又はパンツェロッテ
ィである生の詰め物パスタ(P)をオンデマンドで調製するための食品キット(1)の使用方法であって、前記使用方法は、
所定の形状のパスタの平らなユニット部分(5)からなる第1の構成要素(4)、及び詰め物の予め適量に分けられたプラリネ(7)からなる第2の構成要素(6)を、前記キット(1)の容器(10)から取るステップと、
ユーザが、自家製パスタの調製とほぼ同じ条件下で、前記構成要素(4、6)間での水、塩、及び他の成分の交換を回避しながら、前記第1の構成要素(4)及び前記第2の構成要素(6)を組み立てて、所望の形状の生の詰め物パスタ(P)を生成するステップと
による、使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、広く言えば、食品の分野での用途に関し、詳細には、トルテッリ、ラビオリ、パンツェロッティなどの生の詰め物パスタ(filled pasta)を、オンデマンドで調製するための食品キットを製造する方法に関する。
【0002】
本発明はさらに、上記の方法で得られた食品キット、及び最終ユーザが食品キットを使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
少なくとも1つの詰め物を封入する、パスタの外被を有する詰め物パスタは、食品として永らく知られている。
【0004】
こうした食品は、イタリアの美食の典型的な製品であり、詰め物は、たとえば、肉、魚、シリアル、野菜、チーズなどのいくつかのタイプの材料で作ることができる。
【0005】
イタリア又は外国の地域の伝統に応じて、こうしたタイプの詰め物パスタは、ラビオリ及びトルテリーニ、カッペレッティ、又はパンツェロッティとして知られている。
【0006】
一般に、詰め物は、後ほど2つ折りにして閉じられる1枚のパスタ・シート内か、又は詰め物を覆って封入するための一対のシート間に置かれる。
【0007】
この種の食品は、小売チャネル、すなわちスーパーマーケット及び食料品店の冷蔵キャビネットに、ばら積み又は包装済みの形態で見られ、調理の準備ができた状態であり得るため、ユーザは、比較的低コストですぐに消費できるように、又はHoReCaチャネル、すなわちレストラン、食堂、ケータリングなどの一括した食品サービスにおける、詰め物パスタの調製に必要な時間を節約できる。
【0008】
生パスタは、製造方法に応じて様々なタイプ、すなわち、1日生、熱処理なしで最大48時間の貯蔵寿命、10日間生、また手作りで蒸気殺菌あり、自動生成機を使って、低温殺菌、及び0~4℃の温度で60日を超える貯蔵寿命を持つ、制御された雰囲気での包装によって生産された業務用生、並びに低温殺菌及び冷凍が行われ、-18℃の温度で最大12~15か月の非常に長い保存期間の、大規模な業務用施設で製造された、冷凍生パスタが入手可能である。
【0009】
それにもかかわらず、このタイプの包装済みの詰め物食品は、その感覚刺激品質及び味が手作りの生のものの該品質及び味とはかなり異なるという欠点がある。
【0010】
これは、水性若しくは非水性の環境での、又は非水の加熱による、パスタ・シートの低温殺菌に起因し、デンプンのアルファ化で生じるシートの構造の変化を引き起こす。
【0011】
このタイプの処理は通常、80℃から100℃の範囲の温度の蒸気飽和チャンバ内、又は95~100℃に加熱された水中で実行され、時間と温度との複合効果は、必然的にでんぷんの糊化を引き起こす。このプロセスはまた、とりわけ、トルテッリを完全に密封し、調理中にトルテッリから詰め物がどのように広がることも防ぐために、必要である。パスタの適切な水分含有量(約30%R.H.)は、パスタを所与の温度(80~100℃)に所与の時間(2~10分)曝すことの複合効果による、デンプンの糊化に必要である。
【0012】
温度及び適切な水分のため、相互に接触するパスタ・シート(又は2重に折り畳まれる1枚のシート)は、デンプンを放出し、シートを適切に付着させる。
【0013】
さらに、詰め物食品の生成からユーザによる調理までの期間に、相互に接触するパスタ・シート及び詰め物は、自然拡散プロセスにおいてそれぞれの感覚刺激性含有成分を交換する傾向があり、その結果、最終製品の品質を損なう。
【0014】
この拡散/交換プロセスは、このプロセスを容易にする水及び脂肪を含む、詰め物食品の含有成分の性質のため、避けられない。パスタの水分含有量は約30%、周囲相対湿度は94%から97%、且つ脂肪は9~10%であり、これらの値は拡散プロセス(水)と親和性があり、拡散プロセスを回避するための障壁が作られるのを防ぐ(脂肪含有量が低すぎる)。
【0015】
加えて、詰め物は、40%から70%の水分含有量、94%から97%の周囲相対湿度、及び障壁として機能できない脂肪含有量であり、これは、迅速な拡散プロセスを容易にする。というのは、詰め物の含水量がより多いほど、拡散が一層速くなるからである。
【0016】
さらに、適切な湿度を有する塩(詰め物にかなりの量が使用される)及び他の成分(砂糖など)の存在は、2つの構成要素、すなわちパスタ及び詰め物が均衡状態に達するまで、拡散及び交換プロセスをさらに加速することになる。水及び塩は、両方の構成要素が非常に類似したAw(水分活性)値に達するまで、2つの構成要素の実質的な化学修飾を引き起こし、Aw値は、相対湿度値に近い場合がある。
【0017】
2つの構成要素の物理化学的変化は、品質の低下を引き起こすことになる。詰め物の水分含有量がより多いほど(すなわち、生の原材料の量がより多いほど)、変化は一層大きくなり、したがって感覚刺激性が一層劣化する。
【0018】
こうした欠点を少なくとも部分的に取り除く試みで、食品の構成要素が乾燥状態又は脱水状態にある、詰め物又は味付け食品を調製するキットが開発されている。
【0019】
米国特許出願公開第2002064585号は、所定の形状の第1の乾燥食品構成要素の密封容器と、第1の食品構成要素の詰め物を生成するために、液体を使って元に戻すよう設計された第2の乾燥粉末食品構成要素とを有する、食品を開示する。
【0020】
この従来技術の構成の1つの欠点は、第1の食品構成要素をモデル化して、ユーザが望む形状をとることができないことである。さらに、第1の食品構成要素の所定の形状は、ユーザが、詰め物が第1の食品構成要素の中にある状態で、第1の食品構成要素を密封するのを妨げる。
【0021】
この構成のさらなる欠点は、第2の食品構成要素が、加湿後でさえも、手作りの詰め物と同じ感覚刺激特性及び同じ品質を示さないことである。
【0022】
この構成のもう1つの欠点は、第1及び第2の食品構成要素が両方とも、上記の一般的な低温殺菌技法で処理され、第1の構成要素のデンプンがアルファ化されることである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0023】
【文献】米国特許出願公開第2002064585号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0024】
従来技術を鑑み、本発明によって対処される技術的課題は、パスタ・シートのアルファ化及び食品構成要素間の成分の交換を回避し、それにより、自家製のものとほぼ同じやり方で、調理の直前での生の詰め物パスタの調製を可能にすることである。
【0025】
本発明の目的は、非常に効率的で比較的費用効果の高い、生の詰め物パスタのオンデマンドでの調製のための食品キットを製造する方法を提供することによって、上記の欠点を取り除くことである。
【0026】
本発明の具体的な目的は、ユーザが、自家製の生の詰め物パスタとほぼ同じ感覚刺激品質及び味を有する、生の詰め物パスタを手作業で調製することを可能にし得る、前述の方法及びキットを提供することである。
【0027】
本発明のより一層具体的な目的は、食品の構成要素間での水、塩、及び他の成分の交換を回避しながら、パスタ・シートのアルファ化及び発酵を防ぐことができる、前述の方法及びキットを提供することである。
【0028】
本発明の別の目的は、機械的に合する手段、並びに/又はデンプン及び/若しくは水の使用を回避しながら、対応するパスタ・シートに、詰め物のそれぞれ個別のプラリネを容易に合することができる、前述の方法及びキットを提供することである。
【0029】
本発明のさらなる目的は、ユーザが元の自家製プロセスと同様のやり方で、生の詰め物パスタを即座に手作業で調製することを可能にし得る、上記の食品キットの使用方法を提供することである。
【0030】
本発明のさらに別の目的は、ユーザが、多種多様な形状及びタイプの製品がある、生の詰め物パスタを調製することを可能にする、上記の製造方法、キット、及び使用方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0031】
これら及び他の諸目的は、これ以降でより明確に説明するように、特性が自家製の生パスタの特性に類似している、トルテッリ、ラビオリ、パンツェロッティなどの、生の詰め物パスタをオンデマンドで調製するための食品キットを製造する方法によって果たされる。該方法は、所定の平らな形状を有する、1枚又は2枚の生パスタ・シートのユニット部分からなる第1の構成要素を製造するステップと、冷却するステップと、真空包装するステップと、第1の構成要素の構造及び物理学的流動学的特性を変化しないまま維持し、デンプンのアルファ化を回避するために、高圧低温殺菌して、低温殺菌されたユニット部分を冷蔵するステップと、後で低温殺菌され、場合によっては冷凍される、予め適量に分けられて好都合な形状にされた詰め物のプラリネからなる、第2の構成要素を製造するステップとを含む。
【0032】
調理前の生の詰め物パスタをオンデマンドで調製するために、第1の構成要素及び第2の構成要素は、包装されて生又は冷凍保存用の容器に集められ、そのまま又は解凍後に一緒になる準備ができた状態であり、その結果、構成要素間の水、塩、及び他の成分の交換を回避する。
【0033】
このプロセスの利点の1つは、高温の水がないため、パスタの構造を変える必要性を回避することである。さらに、パスタの化学物理的構造を変えることなく、微生物数が減少する。真空包装は、パスタ内部の拡散プロセスばかりでなく、酸化作用で生じる変性プロセスによる、どんな変化をも最小限に抑える。
【0034】
このプロセスは、パスタをいくらか「休止状態」にし、パッケージが開かれるまでパスタの初期特性を維持するであろう。その後で、パスタは、あたかも作られたばかりであるかのように使用できる。
【0035】
このプロセスにより、パスタ・シートは、まさに調製され切断されたばかりであるかのように使用できる。詰め物をシートのユニット部分の適切な位置に置くと、シートを、その中に詰め物がある状態で2重に折り畳み、密封プロセスを容易にするために湿らせ、機械的手段を使用することなくわずかに押圧し、次いで調理できる。密封するプロセスは、調理中に完了するであろう。
【0036】
最終製品は、生の自家製パスタの典型的な特性である「絹のような」表面、適切な硬さ、及び優れた卵の風味を示すであろう。
【0037】
パスタのユニット部分は、冷高圧低温殺菌(HPP:High Pressure Pasteurization)を使用して、完全に平らで滑らかな状態で保持され、これは、高品質な「美的」効果を伴う、完全な真空包装を容易にし、包装は、優れた視覚的インパクトを有するであろう。
【0038】
高圧低温殺菌はエネルギー・コストが非常に高いが、該コストは、最終製品の35~45%にしか影響を及ぼさず、いずれにせよその付加価値を高め、自家製パスタのすべての利点を実現する。
【0039】
他方では、詰め物は、従来の低温殺菌プロセスが行われ、且つ場合によっては冷凍されることになり、これにより、発酵の開始及び細菌数の増加が防止されるであろう。
【0040】
さらなる態様において、本発明は、請求項11に定義される、前述の方法で得られた、生の詰め物パスタをオンデマンドで調製するための食品キットに関する。
【0041】
さらに別の態様において、本発明は、請求項13に定義される、生の詰め物パスタをオンデマンドで調製するための食品キットの使用方法に関する。
【0042】
本発明の有益な実施例は、従属請求項にしたがって定義される。
【0043】
本発明のさらなる特徴及び利点は、以下の添付図面の助けを借りて非限定的な実例として記載される、生の詰め物パスタのオンデマンドでの調製のための食品キットを製造する方法、上記で定義された食品キット、及び食品キットの使用方法の、好ましい非排他的実施例の詳細な説明を読むと、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【
図1】本発明の食品キットを製造する方法の構成図である。
【
図2】
図1の方法によって得られる食品キットを、模式的に示す図である。
【
図3】
図2の食品キットの使用方法、及び食品キットを使って得ることができる生の詰め物パスタの実例を、模式的に示す図である。
【
図4】
図2の食品キットの使用方法、及び食品キットを使って得ることができる生の詰め物パスタの実例を、模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0045】
添付の図は、主に美食の高品質料理の調製のための、生の詰め物パスタPのオンデマンドでの調製用の、全体として数字1で示す食品キットを製造する方法を示す。
【0046】
生の詰め物パスタPは、
図4に模式的に示されるように、本質的に、中に詰め物3を有するパスタの封包物から構成され、食用原料から構成される複合食品であることが知られている。
【0047】
具体的には、本発明の方法で製造される生の詰め物パスタPは、トルテッリ、ラビオリ、カッペレッティ、パンツェロッティなどの形態であり得、調製直後に調理されるよう構成され得る。
【0048】
知られているように、調理は、すなわち、たとえば水若しくはスープ内で沸騰することにより、又は炒めること、電子レンジにかけること、若しくは揚げることにより、ユーザによって実行され得る。
【0049】
本発明の方法は、本質的に、所定の平らな形状を有する生パスタの1枚又は2枚のシートのユニット部分5からなる、第1の構成要素4の製造と、好都合な形にされ、低温殺菌され、場合によっては冷凍される、予め適量に分けられた詰め物のプラリネ7からなる、第2の構成要素6の製造とを含む。
【0050】
生パスタの予め生成されたユニット部分5は、ユニットのシートを複数の部分に予め切断することにより得ることができ、ユニット部分5は、図示されていない予備切断線に沿って最終分離することにより得られる。
【0051】
予め生成されたユニット部分5又は複数の予め切断された部分は、好ましくは、伝統的に、a)一般的な小麦粉及び/又はデュラム小麦粉、セモリナ、水及び/又は卵から生地を作る第1のステップによって得られる。
【0052】
次のステップは、b)通常はパン、クロワッサンなどのベーカリ製品に使用されるような、知られた技法によって、生地を一方向及び/又は多方向に打ち延ばし、好ましくは0.3mmから1.5mmの範囲の所定の厚さsの連続シートを得るステップである。
【0053】
連続シートに対して、c)トルテッリ、ラビオリ、パンツェロッティなどの1個のユニット部分に対応する形状及びサイズを有する、ほぼ平らなユニット部分5又は複数の部分5に切断又は予め切断するステップが行われる。
【0054】
この目的のために、ユニット部分5は、ユーザによって調製されるべき個々のタイプの生の詰め物パスタPに応じた、所定のサイズ及び形状を有することができ、正方形、三角形、菱形、及び円、又は生の詰め物パスタPを生成するよう適合された他の任意の幾何形状を含む群から選択され得る。
【0055】
便宜上、
図2及び
図3のユニット部分は、単純な長方形の平面形状で示されている。
【0056】
切断するステップc)の後に、d)生パスタのユニット部分5を、パスタのあらゆる発酵を防止するよう適合された第1の温度T1まで、急速に冷却するステップが続く。
【0057】
パスタの発酵は、パスタ中の酵母、及び具体的には乳酸菌の自然作用で生じることが知られており、かかる発酵は、生地の特性を変化させ、ユーザが、生の詰め物パスタPを生成するのを妨げる。
【0058】
実験的に、冷却するステップd)の第1の温度T1が8~10℃未満の場合、パスタの急速な発酵が防止され得ることが判明した。
【0059】
好適には、生のパスタ・シートの切断又は予備切断され、冷却されたユニット部分5は、e)ユニット部分を生体適合性材料の層8の中に包むことによって、真空下及び制御された雰囲気の中で包装される。この包装するステップe)は、第1の温度T1以下である第2の温度T2で実行できる。
【0060】
好都合なことに、
図1及び
図2に示されるように、真空包装するステップe)は、e
1)複数枚の生体適合性材料の層8を準備するステップ、及びe
2)予め生成されたユニット部分5又は複数の予め切断された部分を、生体適合性材料の層8のそれぞれの中に置くステップを含み得る。
【0061】
こうした層8は、好ましくは、食品グレードの生体適合性材料で製造でき、適切な真空度を維持するために後で密封できる。
【0062】
真空包装されたユニット又は複数の部分5に対して、後に、f)その中に含まれるデンプンのアルファ化を回避するよう適合された第3の温度T3で、冷高圧低温殺菌(HPP)するステップが行われ、その結果、ユニット部分5の平らな形状は変化せず、ベース生地の流動学的特性及び感覚刺激特性は影響を受けないであろう。
【0063】
好都合なことに、真空包装するステップe)の第2の温度T2は、-5℃から10℃の範囲であり得、低温殺菌するステップf)の第3の温度T3は、25℃未満であり得る。
【0064】
高圧低温殺菌(HPP)は、5000バールから6000バールの範囲の圧力PHで、2分から6分の範囲の時間t、実行される。
【0065】
低温殺菌するステップf)の後、ユニット部分5に対して、g)第4の温度T4で冷却及び最終貯蔵を行い、生又は凍結状態の、食品キット1の第1の構成要素4を得るステップが行われ、その結果、デンプンのアルファ化を回避することにより、第1の構成要素の構造及び物理学的流動学的特性は、変化しないまま維持される。
【0066】
さらに、冷却及び貯蔵を行うステップg)は、第1の構成要素4を0℃から4℃の範囲の第4の温度T4で冷凍又は貯蔵することによって実行できる。
【0067】
本発明によれば、詰め物のプラリネ7は、h)所定のレシピにしたがって適切な材料で詰め物を調製するステップ、i)詰め物を、その重量及び形状が、ラビオリ、トルテッリ、パンツェロッティなどの各個のプラリネに対応する、個々のプラリネ7に適量に分けるステップ、j)大気圧で個々のプラリネ7を低温殺菌するステップ、k)保護雰囲気7の下で個々のプラリネ7を別々のパッケージ9に包装するステップ、l)個々のプラリネ7を第5の温度T5に冷却及び冷蔵し、生又は凍結状態の、食品キット1の第2の構成要素6を準備するステップによって、得られる。
【0068】
h)詰め物を調製するステップで使用される材料は、たとえば肉、魚、卵、チーズ、非再加熱肉料理(cold cut)、野菜、シリアル、タンパク質及び脂肪ベースの物質、並びに他のタイプの調味料、香味料、及びソースを含む群から選択され得る。これらの材料は、従来のレシピでは簡単に組み合わせることができない。
【0069】
本発明の好ましい実施例において、詰め物を調製するステップh)及び詰め物を適量に分けるステップi)は、本明細書の出願人に特許権が付与された、欧州特許第2900083号に開示された方法を含み得る。
【0070】
具体的には、詰め物は、2重管型ノズル、又は別法として、重なり合って同心の位置に配置された単一のノズルを使用する共押出しによって適量に分けられ、2つの相異なる詰め物を有する予め適量に分けられたプラリネ7を得ることができる。
【0071】
好都合なことに、
図1及び
図2に示されるように、包装するステップk)は、k
1)いくつかの別個のパッケージ9を準備するステップ、及びk
2)単一又は複数の詰め物を有する個々のプラリネ7を、それぞれのパッケージ9内に導入するステップを含み得る。
【0072】
やはりパッケージ9も、食品グレードの生体適合性材料で生成でき、プラリネ7を収容するよう適合された形状であり得る。
【0073】
本発明によれば、食品キット1は、m)第1の構成要素4及び第2の構成要素6を1つの容器10に導入するステップ、及びn)調理前の様々な形態の生の詰め物パスタPをオンデマンドで調製するために、生又は冷凍状態の構成要素4、6を、第1の構成要素4と第2の構成要素6との間での水、塩、及び他の成分の交換を回避しながら、そのまま又は解凍後に一緒になる準備ができた状態で貯蔵するステップで形成される。
【0074】
さらなる態様において、本発明は、上記で論じられた方法によって得られた、生の詰め物パスタPをオンデマンドで調製するための食品キット1に関する。
【0075】
図2に示されるように、食品キット1は、生パスタのほぼ平らな、予め生成されたユニット部分5からなる、ある一定数の第1の構成要素4と、予め適量に分けられた詰め物のプラリネ7からなる、それに対応する数の第2の構成要素6とを収容する、容器10を備える。
【0076】
生パスタのほぼ平らな、予め生成されたユニット部分5、及び予め適量に分けられた詰め物のプラリネ7は、対応する別個の小室10’、10’’を備える容器10内に集められ得る。
【0077】
キットの好ましい実施例では、容器は、
図2及び
図3に示されるように、2重に折り畳まれるシートに収容される詰め物を有する、トルテリーニのタイプの生の詰め物パスタを生成するために、同数のユニット部分及びプラリネを有し得る。
【0078】
キットの代替実施例では、図示されていないが、2枚のシート及び1個の詰め物からパンツェロッティを、又は1枚のシート及び2個の詰め物からラビオリを生成するために、容器10内のユニット部分5の数は、プラリネ7の数よりも多く、又はその逆であり得る。
【0079】
さらなる態様において、本発明は、上記で論じられた方法によって得られた、生の詰め物パスタPをオンデマンドで調製するための食品キット1の、使用方法に関する。
【0080】
該使用方法は、所定の形状のパスタの平らなユニット部分5からなる第1の構成要素4、及び詰め物の予め適量に分けられたプラリネ7からなる第2の構成要素6を、キット1の容器10から取るステップと、ユーザが、自家製パスタの調製とほぼ同じ条件下で、構成要素4及び6の間での水、塩、及び他の成分の交換を回避しながら、第1の構成要素4及び第2の構成要素6を組み立てて、所望の形状の生の詰め物パスタPを生成するステップとを含む。
【0081】
作業中、パスタのユニット部分5を収容する生体適合性材料の層8及び詰め物のプラリネ7を収容するパッケージ9を開いた後、ユーザは、
図4に模式的に示されるように、パスタのユニット部分5内にプラリネ7を置き、該ユニット部分を2重に折り畳み、詰め物パスタPを生成できる。
【0082】
別法として、
図3にされるように、詰め物パスタPは、ユーザが、生パスタの一対のユニット部分5間により多数のプラリネ7が挿置された状態で、ユニット部分の縁部11を密封して詰め物パスタPを生成することにより、調製できる。
【0083】
さらに、ユニット5を形成する部分は柔軟性が高く、ユニット中のデンプンのアルファ化がまったくないことにより、ユーザは、わずかな圧力で縁部11を簡単に閉じ、でんぷん又は水などの添加剤の使用を回避することで、詰め物パスタPを生成できる。
【0084】
閉じた縁部11及び調理水は、生の詰め物パスタPを糊化させ、生の詰め物パスタは確実に、詰め物が広がることなく調製されるであろう。
【0085】
食品キット1及び上記の使用方法は、自家製パスタのように、優れた絹のような表面、適切な硬さ、及び優れた卵の風味を示す、生の詰め物パスタPを提供することが、実験的に判明した。
【0086】
前述のことから、本発明の食品キットの製造方法、食品キット、及びキットの使用方法は、所期の諸目的を達成し、具体的には、調理前のパスタ・シートのアルファ化を回避することが明らかであろう。
【0087】
本発明の食品キットの製造方法、食品キット、及びキットの使用方法はまた、食品の構成要素間の成分の交換を防ぎ、その結果、自家製パスタとほぼ同じように、調理前の生の詰め物パスタの即時調製を可能にする。
【0088】
この発明の食品の構成要素のキット及び方法は、添付の特許請求の範囲に開示される本発明の概念の範囲内で、いくつかの変更又は変形を受けやすい。
【0089】
この発明の食品の構成要素のキット及び方法のすべての詳細は、他の技術的に同等の要素で置き換えることができ、材料は、本発明の範囲から逸脱することなく、様々なニーズに応じて変更できる。
【0090】
本発明のキット及び方法は、添付の図を具体的に参照して説明されてきたが、本開示及び特許請求の範囲で参照される数字は、本発明のより良い理解度を目的に使用されているに過ぎず、特許請求される範囲を何らかのやり方で制限することを意図するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、食品加工の分野で、産業規模で製造することができるので、産業用途に適用され得る。