(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】アニオン-酸化還元活性複合カソードを備える、再充電可能な高エネルギー電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
H01M 4/1391 20100101AFI20240116BHJP
H01M 4/48 20100101ALI20240116BHJP
H01M 4/62 20060101ALI20240116BHJP
H01M 4/40 20060101ALI20240116BHJP
H01M 4/131 20100101ALI20240116BHJP
H01M 4/134 20100101ALI20240116BHJP
H01M 10/052 20100101ALI20240116BHJP
H01M 10/058 20100101ALI20240116BHJP
【FI】
H01M4/1391
H01M4/48
H01M4/62 Z
H01M4/40
H01M4/131
H01M4/134
H01M10/052
H01M10/058
(21)【出願番号】P 2021509182
(86)(22)【出願日】2019-09-05
(86)【国際出願番号】 EP2019073708
(87)【国際公開番号】W WO2020049104
(87)【国際公開日】2020-03-12
【審査請求日】2022-08-30
(31)【優先権主張番号】102018215074.5
(32)【優先日】2018-09-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】517346602
【氏名又は名称】アルベマール・ジャーマニー・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】弁理士法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ビーテルマン,ウルリヒ
【審査官】冨士 美香
(56)【参考文献】
【文献】特表2013-511802(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/1391
H01M 4/48
H01M 4/62
H01M 4/40
H01M 4/131
H01M 4/134
H01M 10/052
H01M 10/058
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アニオン-酸化還元活性複合カソードを備える再充電可能な高エネルギー電池の製造方法であって、
前記カソードは、電気化学的に活性な成分として水酸化リチウムを含むことを特徴とし、
前記方法は、
前記水酸化リチウムを、電子導電性または混合導電性遷移金属及び/または遷移金属酸化物と、混合して接触して、電子導電性または混合導電性ネットワークを形成し、
前記電子
導電性または混合
導電性ネットワークを、電流ドレインに適用して、複合カソードを形成し、
前記複合カソードを、セパレータ、リチウム導電性電解質、及びリチウム含有アノードと共に電池筐体内に配置して、電気化学電池を形成し、および
前記電気化学電池に、少なくとも1つの初期形成サイクルを受けさせる、
ことを含む、
前記方法。
【請求項2】
前記水酸化リチウムが、酸化リチウム、過酸化リチウム及びリチウム超酸化物から選択されるリチウム酸素化合物と混合され、
前記リチウム
酸素化合物中のLiOHの割合が、リチウム酸素化合物の総含有量に基づいて少なくとも10mol%であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記電子導電性または混合導電性遷移金属及び/または遷移金属酸化物と、LiOH、Li
2O、Li
2O
2及びLiO
2から選択されるリチウム酸素化合物とが、1:100~1:1のモル比で使用されることを特徴とし、
前記
電子導電性または混合導電性遷移金属及び/または遷移金属酸化物が微粉化されている、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記
電子導電性または混合導電性遷移金属が、元素周期表の第3族から第12族の元素、または
それらの混合物から選択されることを特徴とする、請求項1~3に記載の方法。
【請求項5】
前記遷移金属酸化物が、二元金属酸化物、層状構造リチウム金属酸化物、スピネル構造リチウム金属酸化物、逆スピネル構造リチウム金属酸化物、及び/またはオリビン構造リチウム金属酸化物から選択されることを特徴とする、請求項1~3に記載の方法。
【請求項6】
前記二元金属酸化物が、チタン酸化物、バナジウム酸化物、鉄酸化物、コバルト酸化物、ニッケル酸化物、マンガン酸化物、クロム酸化物、ニオブ酸化物から選択され;前記層状構造リチウム金属酸化物が、LiCoO
2、LiNiO
2、LiO
2、LiV
3O
8から選択され;前記スピネル構造リチウム金属酸化物が、LiMn
2O
4、LiMnNiO
2、LiNi
0.5Mn
1.5O
4、LiV
3O
5から選択され;前記逆スピネル構造リチウム金属酸化物が、LiNiVO
4、LiCoVO
4から選択され;前記オリビン構造リチウム金属酸化物が、LiFePO
4、LiVPO
4から選択されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記
電子導電性または混合導電性遷移金属及び/または前記遷移金属酸化
物が、0.1~100nmの範囲の粒径を有する微粉化された非晶質またはナノ粒子状の形態で存在することを特徴とする、請求項2~6に記載の方法。
【請求項8】
金属リチウムが前記
リチウム含有アノードとして使用されており、
前記
金属リチウムが、シート状金属もしくは粉末電極として、またはシリコン、スズ、ホウ素及びアルミニウムから選択される金属との合金として存在することを特徴とする、請求項1~7に記載の方法。
【請求項9】
最初の放電サイクルの前に、前記
リチウム含有アノードから電気化学的に抽出可能なリチウムのモル量が、前記
リチウム含有アノード内に導入され、
前記モル量が、前記複合カソードに存在する前記LiOH含有量のモル量の少なくとも半分に相当することを特徴とする、請求項1~8に記載の方法。
【請求項10】
非金属系導電性増強剤及び結合剤が、前記アニオン-酸化還元活性複
合カソードに使用され
るか、または前記アニオン-酸化還元活性複合カソード及び前記
リチウム含有アノード
に使用されることを特徴とする、請求項1~9に記載の方法。
【請求項11】
前記非金属系導電性増強剤として、グラファイト、硬質炭素、カーボンブラック及びグラフェンから選択されるグラファイト材料が使用されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記アニオン-酸化還元活性複合カソード及び前記アノードの両方が、プレス処理またはカレンダー処理によって圧縮されることを特徴とする、請求項1~11に記載の方法。
【請求項13】
前記アニオン-酸化還元活性複合カソードの固体成分が粉砕工程によって粉砕されることにより互いに密接に接触させられることを特徴とする、請求項1~12に記載の方法。
【請求項14】
アニオン-酸化還元活性複合カソードを備える高エネルギー電池であって、
前記カソードが、最初の電気化学的放電の前に、少なくとも水酸化リチウムと、酸化リチウム、過酸化リチウム及び/またはリチウム超過酸化物とを含むリチウム酸素化合物、並びに電子導電性遷移金属及び/または遷移金属酸化物を含む、電子導電性または混合導電性ネットワークを含有する、複合材料からなり、
前記電子導電性または混合導電性ネットワーク成分と、リチウム酸素化合物とが、1:100~1:1のモル比で存在することを特徴とする、前記高エネルギー電池。
【請求項15】
前記電池が、金属リチウム、リチウム含有金属合金、リチウムニトリド遷移金属酸塩、または複合材料であってその電気化学的に活性な成分が金属窒素化合物である複合材料、から選択される、Li/Li
+基準電極に対して2V未満の電気化学的電位を有する少なくとも1つのリチウム供与成分または化合物を含み、後者が遷移金属を含有する電子導電性または混合導電性ネットワークに埋め込まれている、アノードを有することを特徴とする、請求項14に記載の高エネルギー電池。
【請求項16】
前記電子導電性または混合導電性遷移金属及び/または遷移金属酸化物と、水酸化リチウムとが、1:100~1:1のモル比で使用され、前記遷移金属及び/または遷移金属酸化物が微粉化されているか;または、
前記遷移金属及び/または前記遷移金属酸化物並びに前記水酸化リチウムが、0.1~100nmの範囲の粒径を有する微粉化された非晶質またはナノ粒子状の形態で均一に混合されて存在することを特徴とする、
請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記リチウム酸素化合物が、0.1~100nmの範囲の粒径を有する微粉化された非晶質またはナノ粒子状の形態であることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アニオン-酸化還元活性複合カソードを備える、再充電可能な高エネルギー電池の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術
市販の再充電可能なリチウムイオン電池が作動する原理は、挿入機構に基づいている。負極(アノード)と正極(カソード)の両方には、微細構造を根本的に変えることなく、リチウムイオンをインターカレート(挿入)できる材料が使用されている。アノード材料がグラファイトや硬質炭素などの炭素系材料であるのに対し、カソード活性材料は遷移金属酸化物からなる。遷移金属酸化物の遷移金属は、酸化還元活性である。すなわち、充放電中に酸化状態を変化させる。これは、以下の代表的な反応で示される。
【化1】
【0003】
現在使用されているカソード材料を用いると、電池の充電/放電の際に、酸化還元活性金属中心の酸化状態は一段階、変化するだけである。前述の場合、酸化状態は+IIIと+IVの間で変化する。このため、カソード材料の静電容量は比較的低い。従来のカソード材料であるLiCoO2の場合、理論上の静電容量は274mAh/gであるが、そのうち実際に使用できるのは約135mAh/gに過ぎない。アノードに使用されているグラファイト材料も、限界化学量論のLiC6に対して372mAh/gと比較的低い静電容量がある。したがって、グラファイト(C6)/LiCoO2系の理論エネルギー密度も、約380Wh/gと低く、不十分である。リチウムイオン電池のもう1つの欠点は、使用されるカソード材料が、コバルトやニッケルといった利用可能性の低い元素が主であるということである。これらの金属は、世界的なエレクトロモビリティや定置エネルギー貯蔵のためのリチウム電池の包括的な供給を確保するのに、十分な量が得られないという懸念がある。
【0004】
カチオン-酸化還元活性正極材料に代わるものとして、開放型電池系の研究が進められている。これらは、環境に開放された多孔質構造体を含有し、炭素から主になり、貴金属を含有する触媒でその表面を被覆することで、拡散した酸素を酸化リチウムに結合させ得る(酸素還元反応)ものである。
Li++e-+O2 -> LiO2
【0005】
最初に生成された生成物である過酸化リチウム(LiO2)では、酸素の平均酸化数は-0.5である。リチウムを更に取り込むと、酸素の酸化数が-1の過酸化リチウム(Li2O2)を生成する。後者の酸化リチウムは、生成反応を逆転させることによって酸素の酸化を触媒する金属触媒の存在下で、リチウムと元素状酸素に変わることができる。
Li2O2 -> 2Li++2e-+O2
【0006】
その欠点は、前述した空気電極がまさしく中程度の電力密度しか持たず、何よりも可逆性が非常に限られているため、このカソード形態はまだ実用化には程遠いということであ
る。そのうえ、充電電位と放電電位の間には通常0.5~1Vの強いギャップが存在するため、エネルギー効率(「往復効率」)はまったく満足のいくものではない。現在の技術的な課題は、リチウム/空気電池の商業化が早くても10~20年後になり得ることを意味する。概説については、K.Amine et al.,Chem.Reviews2014,5611-40,114を参照のこと。
【0007】
更に、アニオン酸化還元の原理に従って機能する活性カソード材料として酸化リチウム(Li2O、Li2O2及びLiO2)を使用する試みもある。前述したリチウム酸素化合物はすべて電子絶縁体であるため、それらは、微細に分割された(非晶質状またはナノ粒子状の)形態で存在する、または非常に薄い層で存在する必要があり、個々の粒子は導電性ネットワークによって接触されなければならない。微粉化された導電性金属、ならびに多くの金属酸化物及びリチウム金属酸化物をこの目的のために使用できる。このようなシステムは文献で公知であり、ここでは代表的な実施形態のみを言及する。20%のLi2O2、20%のカーボンブラック及び60%のPEO-LiClO4からなる複合カソードは、リチウム箔を対極とする電気化学電池にて3度、放電/充電が可能である(M.D.Wardinsky and D.N.Bennion,Proc.Electro
chem.Soc.1993,93-23)(Proc.Symp.New Sealed Rech.Batt.and Supercapacitors,1993,389-400)。
【0008】
過酸化リチウム(Li2O2)は、混合導電性LiNi0.33Co0.33Mn0.33O2との共粉砕によって、接触されて、陰極的に完全に分解されることができる(Y.Bie et al.,Chem.Commun.2017,53,8324-7)。両方ともナノ粒子形態のCo金属及びLi2Oの混合物からなる複合体もまた、陰極的に完全に分解することができる(Y.Sun,Nature Energy,January2016,15008)。Co3O4のマトリックスに埋め込まれたナノ粒子状の酸化リチウム(Li2O、Li2O2及びLiO2の混合物)を含有する、電池フルセルの実際の機能は公知である(Z.Zhu,Nature Energy,25July2016,16111)。酸化リチウムからの酸素放出を避けるために、Li/Li+に対して約3~3.5Vの充電電圧を超えることはできない。
【0009】
しかし、カソード活性材料として酸化リチウムを使用するには、商業化に関連して実用的な面で欠点がある。リチウム超過酸化物(LiO2)は、結晶形で熱力学的に安定しておらず、Li2O2と酸素に分解する(K.C.Lau,.Phys.Chem.C115,23625-33)。過酸化リチウムは強力な酸化剤であり、酸素の発生下で水と接触して分解する。したがって、前述の化合物はいずれも大規模で取り扱うのは安全ではない。酸化リチウムLi2Oは、熱力学的に安定しているが、市販されていない。それは腐食性が非常に高く、エネルギーを大量消費する工程、例えば、約1000℃以上の温度でのLi2CO3の熱分解によってのみ得ることができる(R.B.Poeppel in:Advances in ceramics,Vol.25,”Fabrication and properties of lithium ceramics”,ed.I.J.Hastings and G.W.Hollenberg,1989,111-116)。
【発明の概要】
【0010】
解決すべき問題
本発明が解決しようとする課題は、特にモバイルアプリケーション用に十分に高い、少なくとも500Wh/kgのエネルギー密度を確実にすることができる、製造方法及び電気化学的貯蔵システムを提供することである。更に、商業的に容易に入手可能で、安全に管理可能な活性材料であって、希少金属または入手困難な金属の含有量が可能な限り低い
ものを使用することが好ましい。
【発明を実施するための形態】
【0011】
課題の解決方法
本発明の課題は、アニオン-酸化還元活性複合カソードを備える再充電可能な高エネルギー電池の製造方法によって解決される。そこで、アニオン-酸化還元活性複合カソードは、電気化学的に活性な成分として水酸化リチウムを含有し、それは、電子導電性または混合導電性の遷移金属及び/または遷移金属酸化物と混合されて接触される。そうすると、電子導電性または混合導電性ネットワークが形成され、この混合物が電流ドレインに適用され、こうして形成された複合カソードが、セパレータ、リチウム導電性電解質及びリチウム含有負極と共に電池ケーシング内に配置され、電気化学電池が得られる。これは、少なくとも1回の初期形成サイクルを受ける。正極(カソード)が、電気化学的に活性な成分として少なくとも水酸化リチウム(LiOH)、ならびに所望により酸化リチウム(Li2O)、過酸化リチウム(Li2O2)及び/またはリチウム超過酸化物(LiO2)から選択される、リチウム化合物を含有する、複合材料からなる、再充電可能な高エネルギー電池の場合、カソードは、少なくとも最初の放電サイクルの後に(すなわち、リチウム過剰状態に)水素化リチウム(LiH)を更に含有する。このLiHは、後述する式(1)~(3)のいずれかに従って形成される。電気化学的に活性な成分は、電子導電性または混合導電性ネットワーク内に埋め込まれており、それは、遷移金属粒子及び/または電子導電性遷移金属酸化物、ならびに所望により他の導電性増強材料を含む。
【0012】
電気化学的に活性な複合カソード材料の製造には、少なくともリチウム酸素化合物である水酸化リチウム(LiOH)、ならびに所望によりLi2O、Li2O2及びLiO2から選択される、別のリチウム酸素化合物が使用される。水酸化リチウムは市販されており、取り扱いが容易かつ安全である。複合カソード材料中のLiOHの割合は、前述したリチウム酸素化合物の全含有量に基づいて、少なくとも10mol%、好ましくは少なくとも30mol%である。
【0013】
負極(アノード)は、Li/Li+基準電極に対して2V未満の電気化学的電位を有する、少なくとも1つのリチウム供与成分または化合物を含む。リチウムを供与する電気化学的に活性な成分または化合物は、金属リチウム、リチウム含有金属合金、リチウムニトリド遷移金属酸塩、または複合材料から選択される。その電気化学的に活性な成分は、遷移金属を含有する電子導電性または混合導電性ネットワークに埋め込まれた金属窒素化合物である。
【0014】
再充電可能な高エネルギー電池、好ましくは本発明による複合カソード及びアノードを含有する二次リチウム電池であって、その活性材料がLi/Li+に対して2V未満の電気化学的電位を有する、電池を製造する際に、2つの電極のそれぞれの電気化学的に活性な成分に関して適切なバランス(すなわち、重量の適合)を確保するように注意を払わなければならない。適切なバランスをとることは、電気化学的に活性な材料を可能な限り完全に使用し得ることを特徴とする。この場合、これは特に、最初の放電サイクルの前に、アノードが、電気化学的に活性化可能な、すなわち、アノードから電気化学的に抽出可能なリチウムのモル量を含み、これは、複合カソード中のLiOH含有量の少なくとも半分、好ましくは少なくとも同じ、特に好ましくは少なくとも2倍のモル量に対応するものであることを意味する。これについては、以下に説明する。
【0015】
再充電可能なリチウム電池のカソードにLiOHを使用する場合、最初の放電サイクル中に、酸化リチウム(Li2O)、過酸化リチウム(Li2O2)及び/または過酸化リチウム(LiO2)に加えて、水素化リチウム(LiH)が形成される。ガルバニ電池の最初の放電中の一般的なカソード半反応は、以下の3つの式のうちの少なくとも1つに対
応する。
LiOH+2Li++2e- -> Li2O+LiH (1)
2LiOH+2Li++2e- -> Li2O2+2LiH (2)
2LiOH+Li++e- -> LiO2+2LiH (3)
【0016】
最初の放電反応の結果、水素化リチウムに加えて、少なくとも1つの酸化リチウム化合物が形成され、これがアニオン-酸化還元活性であり、その後のサイクルで使用される電気化学的に活性なカソード材料となる。本発明者らは、水酸化リチウム粒子の十分な電子的また混合した電子/イオン接触が確保されている場合にのみ、驚くべきことに(1)~(3)の反応が起こることを見いだした。これとは別に、水酸化リチウム粒子は、微粉化された形態(ナノ粒子状)で存在することが好ましい。カソード材料中に存在し得るLi2O、Li2O2、LiO2から選択される、他のリチウム酸素化合物についても同様である。
【0017】
Li2Oは、検討中のリチウム酸素化合物の中で最もリチウム含有量が高く、したがって理論的に最も高い電気化学的静電容量を有するカソードを形成できるため、アノードから抽出可能な(すなわち電気化学的に活性な)LiOH:リチウムのモル比が1:2である反応式(1)が特に好ましい。
【0018】
最初の放電サイクル後に存在するリチウム過剰な形態の本発明に従った電気化学的に活性なカソード材料は、原則として、Li2O及び/または別のリチウム酸素化合物とLiHとを混合することによっても製造することができる。しかし、この製造形態は、主に実用的な理由からあまり有利ではない。水素化リチウムは、水蒸気及び二酸化炭素のような反応性空気成分に対して安定していない(分解して、水酸化リチウムまたは炭酸リチウムを形成)。更に、酸化リチウムは市販されておらず、エネルギーを大量消費する製造方法を必要とする。
【0019】
その後の充電-放電サイクルの間に、電極組成物の更なる、ときには不可逆的な変化が起こる。先行技術(Z.Zhu,Nature Energy,25July2016,16111)とは対照的に、本発明によるカソードは、少なくとも最初の放電の後で(すなわち、リチウム過剰な状態で)水素化リチウムを含有する。驚くべきことに、最初の放電サイクルで形成された水素化リチウムは、その後の充電サイクルの間に順調に分解し、おそらく以下の反応に従う。
LiH -> 1/2H2+Li++e- (4)
【0020】
水素ガスのほかに、リチウムも放出される。
【0021】
再充電可能なリチウム電池は、その動作のために、金属リチウム反応性ガス及び化合物へのアクセスを防止する必要がある。例えば、空気成分である酸素、窒素、二酸化炭素、水蒸気及び他の空気微量成分は、リチウムと反応性がある。したがって、再充電可能なリチウム電池は一般に、密閉状態(すなわち、気密封止された筐体に充填される)で動作させる必要がある。この場合、少なくとも最初の充電サイクルの間に水素ガスが形成される。形成された水素は、中程度の温度では金属リチウムと反応しないが、気密封止された電池セル内に望ましくない圧力の増加をもたらすだろう。この望ましくない効果を回避するために、少なくとも最初のサイクル及び必要に応じて更なる放電/充電サイクルが、開放状態で実行されなければならない。最初のサイクル(複数可)、いわゆる形成サイクルの間のこのような処理は、公知の処理である。電池の内容物が環境と過度に接触することを避けるために、圧力の均等化は一般に、ガス形成反応(複数可)が完了した後に閉鎖される、開放型キャピラリーチューブを用いて行われる。
【0022】
最初の充電サイクル中に形成されたリチウムは、カチオン形態でセパレータを通ってアノードに移動し、そこで、金属状態で堆積する、またはリチウムを受け取ることができる、そこに存在する物質または化合物と反応する。これは、例えば、グラファイト材料、合金を形成する際にリチウムを受け取る金属、リチウムプアな金属合金、リチウムプア形態のリチウムニトリド遷移金属酸塩及び/または電気化学的に活性な成分が金属窒素化合物である複合材料との、少なくとも部分的に可逆的な反応であり得て、前記金属窒素化合物は、遷移金属を含有する、電子導電性または混合導電性ネットワーク内に埋め込まれている。しかし、不可逆的な反応(例えば、電解質の分解及び/またはアノードの粒子状もしくはシート状金属成分、特にそれらの電気化学的に活性な成分の表面上の不動態化層の形成)も含まれる場合がある。このようにして不可逆的に消費されるリチウムは、別の供給源からのリチウム、例えばLi2O、Li2O2、LiO2から選択されるリチウム酸素化合物、及び/または別のカソード材料(例えば、リチウム遷移金属酸化物)をこの目的のために使用しなければならないので、再充電可能なリチウム電池セルの重量容量を間接的に増加させる。水素化リチウムの場合、リチウムの放出中に生成された水素ガスは、電池セルの残りの電池成分、特に電解質に対して非反応性であり、電池セルから外へ出る。一方で、前記リチウム酸素化合物の場合には、電解質と反応性のある酸素ガスが生成される。パッシベーション層または保護層形成のために使用されるリチウムが、カソード内に導入されたリチウム遷移金属酸化物に由来する場合、脱リチウム化した材料、すなわち、Lix-δMOy(δ=0~x、x及びyは1~10の間の値をとることができる)または完全にリチウムのない遷移金属酸化物が残る。これは、リチウムが不足しているために電池の酸化還元工程に参加することができないので、その系のエネルギー密度を低下させる電気化学的に不活性な容量を表す。この場合、本発明に従って形成された水素化リチウムは、エレガントなプレリチウム化剤として作用する。
【0023】
再充電可能な電気化学電池の環化中にカソードで起こる半反応は、概略的に以下のようになる。
LiO2+Li++e- <=> Li2O2 (5)
Li2O2+2Li++2e- <=> 2Li2O (6)
LiO2+3Li++3e- <=> 2Li2O (7)
【0024】
左から右に読んだ(5)~(7)は放電反応である。双方向の矢印は、これらが可逆的な工程であることを示している(十分な電子的または混合された接触があれば)。
【0025】
水酸化リチウム(LiOH)、酸化リチウム(Li2O)、過酸化リチウム(Li2O2)及び/またはリチウム超酸化物(LiO2)、ならびに所望により水素化リチウム(LiH)から選択される電気化学的に活性なリチウム化合物は、Li/Li+に対して2Vを超える電気化学的電位(リチウムインターカレーション電位)を有する、微粉化された遷移金属粒子及び/または微粉化された導電性遷移金属酸化物化合物からなる、電子導電性または混合導電性ネットワークに埋め込まれなければならない。電気化学的に活性なリチウム化合物と、電気化学的に2Vを超える電気化学的電位を有する遷移金属または導電性遷移金属酸化物化合物との間の可能な限り近接した接触を確保することは重要である。そのうえ、Li/Li+に対して2Vを超える電気化学的電位を有する電子導電性または混合導電性遷移金属酸化物化合物と同様に、後者が、可能な限り微粉化された、すなわち非晶質またはナノ粒子状の形態で存在していると有利である。好ましいナノ粒子印象の正確な寸法は、機械的なフォームファクタ(すなわち、粒子の三次元形状)に依存する。球状(または類似の)粒子形状の場合、これらは0.1~100nm、好ましくは1~30nmである。
【0026】
カソード複合材料の固体成分は、好ましくは高エネルギーミルを用いた粉砕工程によって、粉砕されて互いに近接させることができる。遊星ボールミルを使用して、リチウム酸
素化合物のナノ粒子状形態、及びLi/Li+に対して2Vを超える電気化学的電位を有する電子導電性もしくは混合導電性遷移金属または遷移金属酸化物化合物がこのようにして得られる。ナノ粒子状の粒子形態は更に、代替的な物理的処理(蒸着法、プラズマ法及びレーザー法)、または化学的処理、例えば溶媒系処理、好ましくはゾル/ゲル処理によって製造することができる。
【0027】
カソードの一方の微粉化された遷移金属及び/または電子導電性もしくは混合導電性遷移金属酸化物化合物と、カソードの他方のLiOH、Li2O、Li2O2、LiO2から選択されるリチウム酸素化合物に基づく活性材料とのモル比は、1:100~1:1、好ましくは1:50~1:1.5の範囲内である。
【0028】
遷移金属Mは、好ましくは元素周期表の第3族から第12族の元素、特に好ましくはM=Sc、Ti、Zr、Hf、V、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Ni、Co、Cu、Ag、Zn、及び希土類金属La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Dy、Ho、Er、TM、Yb、Lu、または前記遷移金属の任意の混合物である。
【0029】
遷移金属酸化物化合物としては、M=元素周期表の第3族から第12族の金属を有する電子導電性遷移金属酸化物が用いられる。二元(MOx)だけでなく、三元(MM’yOx)やそれ以上の混合相を用いることができ、そこで、他の金属M’は少なくとも元素周期表の第3族から第12族の別の遷移金属及び/またはリチウム元素である(LiyMOx)。この場合、w、y=0~8、x=0.5~4である。
【0030】
好ましくは、以下の金属酸化物化合物、二元金属酸化物(例えば、チタン酸化物(TiO、Ti2O3)、バナジウム酸化物(V2O3、VO、VO2)、鉄酸化物(Fe3O4、FeO)、コバルト酸化物(CoO2、Co3O4)、ニッケル酸化物(Ni2O3)、マンガン酸化物(MnO2、Mn3O4)、クロム酸化物(CrO2、Cr3O3)、ニオブ酸化物(NbO));層構造リチウム金属酸化物(LiCoO2、LiNiO2、Li(Ni,Mn,Co)O2)、LiV3O8;スピネル構造リチウム金属酸化物(LiMn2O4、LiMnNiO2、LiNi0.5Mn1.5O4、LiV3O5);逆スピネル構造リチウム金属酸化物(LiNiVO4、LiCoVO4);オリビン構造リチウム金属酸化物(LiFePO4、LiVPO4)が用いられる。前述の化学式は、塩基性化合物の理想的な組成を示している。しかし、実際には、これらはわずかにまたは強固に改質された形で使用される。これらは、構造安定化ドーパント(例えば、Al安定化Li-ニッケルコバルト酸化物、「NCA」)を有する材料、または導電性を増加させるために異金属または非金属でドープされた化合物を含む。ドーピングによって変質された親化合物のこのような変異型も、本発明が適用可能であれば使用することができる。
【0031】
特に好ましいのは、リチウムを可逆的に放出及び挿入することができる、電子導電性または混合導電性の遷移金属酸化物及びリチウム遷移金属酸化物の使用である。これらの場合、これらの導電性増強剤の追加の電気化学的容量は、それらの電気化学的電位が、電気化学的に活性なリチウム酸素化合物の電気化学的電位とほぼ同じ(約3V)であれば、使用することができる。本発明に従って使用可能な金属酸化物化合物の室温での電子伝導率は、少なくとも10-7秒/cm、好ましくは少なくとも10-6秒/cm、特に好ましくは少なくとも10-5秒/cmである。
【0032】
本発明による再充電可能な高エネルギー電池は、Li/Li+に対して電気化学的電位が2V未満の材料を含有する、負極(アノード)を有する。これらは、グラファイト材料(グラファイトそのもの、硬質炭素、グラフェンなど);金属リチウム;リチウムと合金化することが可能な元素(例えば、アルミニウム、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、ホウ素、亜鉛、これらの混合物)及び前述の金属元素のリチウム含有化合物;M=元素周期
表の第3族から第12族の金属、及びM’=周期表の第3族から第12族の少なくとも1つの更なる遷移金属、及び/またはリチウム元素(LiyMNx)を有する遷移金属窒化物(ニトリドメタレート)(MM’yNx)であって、ここでy=0~8、x=0.5~1;一般式
LiM2
z(NH)0.5x+z (I)及び
LimM2
n(NH2)1+n (II)であって、
ここで、
(I)及び(II)は任意の混合比で存在することができ、
M2=アルカリ土類元素(Mg、Ca、Sr、Ba、またはこれらの任意の混合物)であり、
x=0~4、z=0~2であり、
m=1または0であり、n=1または0であり、ここで(m+n)=1である、金属窒素化合物;であり得る。
【0033】
完全に充電した(リチウムが最も多い)状態で、金属窒素化合物は、一般式(III)及び/または(IV)に対応する。
Li2z+xM2
z(NH)0.5x+z (III)
Li3N・n(LiM2N)・(4-2m)LiH (IV)
ここで、
(III)及び(IV)は任意の混合比で存在することができ、
M2=アルカリ土類元素(Mg、Ca、Sr、Ba、またはこれらの任意の混合物)であり、
x=0~4、z=0~2であり、
m=1または0であり、n=1または0であり、ここで(m+n)=1である。
【0034】
好ましくは、金属窒素化合物は、電気化学的に活性なアノード材料として使用され、ここで、金属窒素化合物は、遷移金属を含有する電子導電性または混合導電性ネットワークに埋め込まれている。電気化学活性金属窒素化合物は、2つの一般式(I)及び/または(II)のうち少なくとも1つで示される、電荷の完全放電状態(リチウムプア状態)の組成物を有する。遷移金属を含有する電子導電性または混合導電性ネットワークは、Li/Li+に対して電気化学的な電位(リチウムインターカレーション電位)が2.5V未満である、微粉化された基本形態の遷移金属M、または微粉化された導電性介在型遷移金属化合物を含有している。
【0035】
遷移金属粉末Mは、好ましくは元素周期表の第3族から第12族の元素、特に好ましくは、M=Sc、Ti、Zr、Hf、V、Cr、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Ag、Zn、及び希土類金属La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、または前記遷移金属の任意の混合物である。
【0036】
遷移金属化合物としては、Li/Li+に対して電気化学的な電位(リチウムインターカレーション電位)が2.5V未満の電子導電性介在型化合物が用いられる。これらは、好ましくは遷移金属窒化物(ニトリドメタレート)及び/または遷移金属炭化物であって、それぞれM=元素周期表の第3族から第12族の金属を有する、及び/またはM=元素周期表の第3族から第10族の金属を有する遷移金属水素化物である。二元(MNx、MCx、MHx)及び三元(MM’yNx;MM’yCx;MM’yHx)及びそれ以上の混合相を使用することができ、ここで、更なる金属M’は、元素の周期表の第3族から第12族の少なくとも1つの更なる遷移金属(MxM’yNz)及び/またはリチウム元素(LiyMNx;LiyMCx;LiwMxM’yNz;LiwMxM’yHz;など)である。この場合、w、y=0~8、x=0.5~1、z=0~3である。
【0037】
一般式(I)による放電状態(リチウムプア状態)で、ニトリドメタレートは、以下の化合物、Li2NH、MgNH、CaNH、Li2Mg(NH)2、Li2Ca(NH)2、MgCa(NH)2、Li4Mg(NH)3、Li2Mg2(NH)3のうちの少なくとも1つからなる、及び/または一般式(II)による以下の化合物、LiNH2、Mg(NH2)2、Ca(NH2)2のうちの1つ以上からなることが好ましい。
【0038】
本発明に従った高エネルギー電池を外部電圧を印加して充電すると、活性N含有アノード材料はリチウム過剰状態に変化する。完全に充電されると、リチウム過剰化合物は、一般式(III)により、好ましくはLi4NH、Li2MgNH、Li2CaNH、Li6Mg(NH)2、Li6Ca(NH)2、Li4MgCa(NH)2、Li10Mg(NH)3、Li8Mg2(NH)3により形成され、及び/または一般式(IV)により、好ましくはLi3N、MgLiN、CaLiN、及びLiHにより形成される。
【0039】
前述した定性組成LiwMxM’yEz(E=N、C、H;w、y=0~8;x=0.5~1;z=0~3)を有する遷移金属化合物は、いわゆる介在型金属化合物または合金の群に属しており、すなわち、インターカレートされた異元素E(炭素、窒素または水素である)が、下層の金属格子の介在層(介在部位)上に配置されている。表示されている化学量論は、それぞれ炭素、窒素または水素の最高含有量(限界化学量論)を示す。しかし、介在型化合物は正確には化学量論的化合物ではなく、すなわち、純金属から限界化学量論までのすべての組成が通常可能であり、ほとんどは安定している。異元素の含有量が低い化合物、すなわち、質的にLiwMxM’yEz-δ(δは0とzの間の任意の値を取ることができる)で表されるすべての化合物はまた、電子導電性材料または混合導電性材料であり、したがって、窒素を含有する複合アノード材料を製造するのに適している。
【0040】
電子導電性遷移金属、またはそれらに対応する電子導電性窒化物、炭化物もしくは水素化物化合物も、微細な分散形態(ナノ粒子状)で使用されるのが好ましい。これらは、同様にナノ粒子状のリチウム窒素含有アノード材料との物理的混合処理によって可能な限り均一に混合することができる。それによって、個々の粒子間の良好な接触が、アノードストリップの製造中の後続のプレスによって(一般的にカレンダー処理による、技術的な製造工程で)確保され、完全に機能的な窒素含有及び遷移金属含有複合アノード材料が得られる。好適な複合アノード材料はまた、化学的処理、例えば窒素源との反応によって製造することができる。好ましい窒素源は、元素状窒素(N2)、アンモニア(NH3)、ヒドラジン(N2H4)、尿素(CH4N2O)である。NH3を有するアンモノリシスでは、金属、すなわちリチウム及び選択された遷移金属を、高温及び圧力条件下でアンモニアと反応させるのが好ましい。得られたアミド化合物は、その後の熱分解によって、例えば、イミド化合物及び/または窒化物に更に変化させることができる。非窒化物導電性増強剤が望まれる場合には、適切な遷移金属水素化物及び/または遷移金属炭化物を、アンモノリシスの前または後に添加することができる。余分なアンモニアを除去した後、残りの固体を一緒に粉砕することができる。この処理は、粒子径を小さくして、接触を改善する。おおむね上昇した温度及び圧力での窒素との反応の間に、窒化物相が直ちに形成される。また、この場合には、所望の非窒化物導電性増強剤を添加することができる。
【0041】
本発明の好ましい一実施形態では、リチウム窒素含有アノード材料は、導電性を増強する遷移金属またはその窒化物、炭化物もしくは水素化物と共研削される。粉砕には、高エネルギーミル(例えば、遊星ボールミルの種類)が使用される。
【0042】
窒素含有複合アノード材料には、アノードの機能性を向上させる他の材料を添加することができる。これらには、前述のすべての非金属系導電性増強剤、リチウム供与添加剤、及び結合剤が含まれる。元素状炭素(グラファイト、カーボンブラック、グラフェン、カーボンナノチューブ)のすべての導電形態は、非金属系導電性増強剤として好適である。
リチウム金属(好ましくはコーティングされた、すなわち、表面不動態化された、粉末状または薄い箔として)またはリチウム過剰化合物(例えば、リチウムグラファイト(LiC6-δ、δ=0~5)またはコーティングされたリチウムケイ化物(LinSiOx@Li2O))をリチウム供与添加剤として使用することができる。結合剤としては、通常電極製造に用いられる有機ポリアミドを使用できる。これらには、PTFE、PVdF、ポリイソブチレン(例えば、BASF製Oppanole(登録商標))、及び類似の材料が含まれる。窒素含有及び遷移金属含有の複合アノード材料にて、一方の微粉化された遷移金属または電子導電性または混合導電性遷移金属化合物LiwMxM’yEz(E=N、C、H;w、y=0~8;x=0.5~1;z=0~3)と他方の窒素含有電気化学的に活性な窒素含有アノード材料との重量比は、一般的に1:100~1:2の間である。すぐに使用できる(完全な)窒素含有及び遷移金属含有複合アノードは更に、他の導電性向上剤(30wt%まで)、結合剤(20wt%まで)及び/またはプレリチウム化剤(20wt%まで)を含んでもよい。
【0043】
また、金属リチウムを含むアノードを使用することも好ましく、ここで、リチウムは、シート状金属電極もしくは粉末電極の形態で、またはシリコン、スズ、ホウ素及びアルミニウムから選択される金属との合金として使用される。
【0044】
アニオン-酸化還元活性複合カソードを備える本発明に従った再充電可能な高エネルギー電池用電解質として、複合カソードは、最初の放電前の状態では、電子導電性または混合導電性ネットワークに埋め込まれた水酸化リチウム、及び所望により追加的にLi2O、Li2O2及びLiO2から選択される1つ以上のリチウム酸素化合物を含有し、それは当業者にとっては通常の種類(液体、ゲル、ポリマー及び固体電解質)であり得る。液体、ポリマー、ゲル-ポリマー系の導電性塩としては、弱配位で酸化安定なアニオンを有する可溶性リチウム塩が、使用されるマトリックス中で用いられる。これらには、例えば、LiPF6、リチウムフルオロアルキルリン酸塩、LiBF4、イミド塩(例えば、LiN(SO2CF3)2)、LiOSO2CF3、メチド塩(例えば、LiC(SO2CF3)3)、LiClO4、リチウムキレートホウ酸塩(例えば、LiB(C2O4)2、「LiBOB」とも呼ばれる)、リチウムフルオロキレートホウ酸塩(例えば、LiC2O4BF2、「LiDFOB」と呼ばれる)、リチウムキレートリン酸塩(例えば、LiP(C2O4)3、「LiTOP」と呼ばれる)、リチウムフルオロキレートリン酸塩(例えば、Li(C2O4)2PF2)などが挙げられる。アニオンの解離に対して安定で、フッ素を含まないアニオンを有する塩が、特に好ましい。
【0045】
固体電解質、すなわち、リチウムイオン導電性ガラス、セラミックまたは結晶性無機固体も特に好ましい。そのような材料の例としては、チオリン酸リチウム(例えば、Li3PS4)、アルジロダイト(X=Cl、Br、Iを有するLi6PS5X)、ホスフィドケイ酸塩(例えば、Li2SiP2)、ニトリドリン酸塩(例えば、Li2.9PO3.3N0.36)、ニトリドホウリン酸塩(例えば、Li47B3P14N42)、金属硫化物リン酸塩(例えば、Li10GeP2S11)、ガーネット(例えば、Li7La3Zr2O12)、チタンリン酸塩(Li1.5Al0.5Ti1.5(PO4)3)、水素化ホウ素化合物(例えば、LiBH4、Li2B12H12)などが挙げられる。
【0046】
アノード室は、リチウムイオン透過性であるが電子的に絶縁性のセパレータ(例えば、微多孔性ポリオレフィンからなる)、または固体電解質(無機固体または固体高分子材料タイプのもの)によってカソード室から分離されている。
【0047】
以下の実施例を用いて、本発明を説明する。
【0048】
実施例1:粉砕による水酸化リチウム含有複合カソードの製造(導電性増強剤としての
遷移金属酸化物とカーボンブラック)
Arで満たされたグローブボックスにて、0.9gのCo3O4(50nm未満、供給元Aldrich)、3.6gの無水水酸化リチウム粉末(供給元Albemarle Germany)、及び0.2gのカーボンブラック(AB400)を、ビーカー中で予め混合した。均質化された混合物を、約27gの3mmジルコニアセラミックボールと一緒に50mLのジルコニアセラミック粉砕ビーカーに充填して、密封した。次いで、混合物を遊星ボールミル(Fritsch製Pulverisette P7)で毎分900回転(rpm)で240分間粉砕した。
【0049】
粉砕ボウルをAr充填グローブボックスの中に戻し、そこで開けた。粉砕物をふるいにかけて、粉砕媒体から分離した。
【0050】
収量:4.1gの微粉末
【0051】
実施例2:溶媒系処理による水酸化リチウム含有複合カソードの製造(導電性増強剤としての遷移金属酸化物)
1.2gの塩化コバルト(Aldrich製97%)、0.69gの過酸化リチウム(Albemarle Germany製93%未満)及び3.6gの無水水酸化リチウム粉末(Albemarle Germany)を、50mlの無水エタノールに溶解または懸濁させて、高エネルギー撹拌器(Ultraturrax IKA T65)を用いて15分間均質化した。得られた懸濁液をRTで4時間磁気撹拌し、次いで濾過した。
【0052】
このフィルター残渣をまず真空中で予備乾燥し、次いで酸素雰囲気下で300℃で5時間焼結した。
【0053】
収量:3.6gの微粉末
【0054】
粉末には15%のCo3O4と約73%のLiOHが含まれており、残りの部分から100%は基本的に酸化リチウムで構成される。