(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】ライン焦点を生成するように構成された共焦点レーザー走査顕微鏡
(51)【国際特許分類】
G02B 21/00 20060101AFI20240116BHJP
G01N 21/27 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
G02B21/00
G01N21/27 E
(21)【出願番号】P 2021515105
(86)(22)【出願日】2019-09-16
(86)【国際出願番号】 EP2019074698
(87)【国際公開番号】W WO2020058187
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-09-13
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】スタリンハ,シュールト
(72)【発明者】
【氏名】ファン デル フラーフ,レオン
【審査官】殿岡 雅仁
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/180680(WO,A1)
【文献】特表2017-516401(JP,A)
【文献】特表2019-514060(JP,A)
【文献】特開2016-001274(JP,A)
【文献】特開2007-316281(JP,A)
【文献】特開平06-094641(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 21/00 - 21/36
G01N 21/00 - 21/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
顕微鏡撮像系であって、
照明光を生成する光源と、
光学系と、
検出系と
を備え、前記光学系は
検査されるべき物体の中で、それぞれがライン焦点である複数の焦点を同時に形成するように前記照明光をフォーカスさせ、その結果、前記照明光に応じて前記複数の焦点から検出光が前記物体により発せられるように、且つ
前記検出光を検出するように構成された前記検出系の方へ、前記検出光を向ける
ように構成されており、
前記光学系は、前記照明光が前記物体に入射する前記光学系の光軸に沿って見た場合に、前記複数の焦点は、軸方向において互いから相互に隔たっており且つ横方向
において互いから相互に隔たって
いるように更に構成されており、
前記物体で生じる前記複数の焦点の各々について、前記検出系及び前記光学系は、個々の焦点から発せられた前記検出光を実質的に別々に検出するように構成されており、
前記光学系及び/又は前記検出系は前記軸方向に沿う隔たりを補償するように構成されており、その結果、前記複数の焦点の各々について、前記検出光の一部を受ける前記検出系の
複数の受光部分は、前記個々の焦点の少なくとも一部に対して光学的に共役である位置に実質的に位置し
、ある受光部分と別の受光部分との間に非感光表面領域が存在しており、
前記光学系は、前記光源と前記物体との間の前記照明光の中にあり且つ複数のビームレットを生成するビーム倍増系を備え、
前記ビーム倍増系は回折光学素子を含み、前記ビームレットの各々は、前記回折光学素子により生じる回折次数に対応している、撮像系。
【請求項2】
前記ライン焦点の各々について、前記光学系及び前記検出系は、個々のライン焦点において空間的に分解された光検出のために構成されている、請求項1に記載の撮像系。
【請求項3】
前記受光部分の各々は、前記検出系の光感知検出素子の
それぞれのグループによって提供され、前記光感知検出素子の各々は光感知表面を有し、
前記非感光表面領域は、隣接するグループの前記光感知検出素子の前記光感知表面を分離し、
前記グループの1つにおける隣接する光感知表面のペア各々について、前記ペアの前記光感知表面の間の隔たりは、分離距離の0.25倍未満、0.1倍未満、又は0.05倍未満である、請求項1又は2に記載の撮像系。
【請求項4】
前記ビーム倍増系は、前記ビームレットの各々が
異なるライン焦点
に対応するビームレットを生成するように構成されており、
前記光学系は、前記物体内の複数のライン焦点の1つ
に集まる又はその方に発する前記ビームレットの各々を撮像するように構成されている、請求項1-3のうちの何れか1項に記載の撮像系。
【請求項5】
前記回折光学素子は、前記光学系の球面収差を少なくとも部分的に補償するように構成されており、前記球面収差は複数のライン焦点の少なくとも1つの形状及び/又はライン幅に影響を及ぼす、請求項1-4のうちの何れか1項に記載の撮像系。
【請求項6】
前記回折光学素子は、前記回折光学素子から出る照明光が、前記回折光学素子の回折面
に応じて与えられる位相プロファイルを有するように構成されており、
前記位相プロファイ
ルは、
実質的に2回回転対称性を有する、請求項1-5のうちの何れか1項に記載の撮像系。
【請求項7】
前記2回回転対称性の位相プロファイ
ルは、
前記ライン焦点の長手方向における座標yの2次以上の又は4次以上の単変量項又は単変量多項式
により表現される成分を含む、請求項6に記載の撮像系。
【請求項8】
前記2回回転対称性の位相プロファイ
ルは、
前記座標yの4次以上の単変量多項式
により表現される成分を含み、
前記
座標yの2次
の項の係数(C
1)の、前記
座標yの4次
の項の係数(C
2)に対する比率(R)に関し:
(a)前記比率(R)が、前記回折光学素子の位置における前記照明光のビーム断面半径の
-1ないし
-11倍、
-3ないし
-9倍、又は
-5ないし
-7倍の範囲内にあること;又は
(b)前記比率(R)が、p=R/(F
2・NA
2)により定められる値pに関し、pが
-3ないし
-10、又は
-4ないし
-8の間の値を有すること、
のうちの少なくとも1つが成立し、Rは前記比率であり、Fは、前記ビームレットを前記複数のライン焦点にフォーカスさせる前記光学系の焦点光学機器の物体側の焦点距離であり、NAは前記物体における開口数である、請求項7に記載の撮像系。
【請求項9】
前記ビーム倍増系は、屈折光学ユニットのアレイを含み、前記屈折光学ユニットの各々は、前記ビームレットの1つを形成するように前記照明光の一部の焦点を合わせる又は合わせない、請求項1-8のうちの何れか1項に記載の撮像系。
【請求項10】
前記検出系は、前記検出光が前記検出系に入射する前記光学系の光軸に沿って見た場合に、異なるライン焦点に対する前記受光部分は互いから軸方向に隔たっている
ように構成されている、請求項1-9のうちの何れか1項に記載の撮像系。
【請求項11】
前記受光部分は共通平面内に実質的に配置されており、
前記共通平面に対する法線は、前記検出光が前記受光部分に入射する前記光軸に対して角度をなし、
前記角度は、前記物体における前記複数の焦点の前記軸における隔たりを少なくとも部分的に補償するようなサイズに決定されている、請求項1-10のうちの何れか1項に記載の撮像系。
【請求項12】
複数のライン焦点の各々について、前記光学系及び前記検出系は、前記検出光を共焦点フィルタリングして、個々のライン焦点から発せられた前記検出光の少なくとも一部を選別するように構成されている、請求項1-11のうちの何れか1項に記載の撮像系。
【請求項13】
走査の運動方向が、複数のライン焦点の少なくとも1つ軸に対して実質的に垂直であるように、走査系が構成されている、請求項1-12のうちの何れか1項に記載の撮像系。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体内で生じた複数のライン焦点を用いて、物体から効率的に三次元画像を取得するように構成された三次元光学的撮像系に関する。
【背景技術】
【0002】
今日の生物医学研究の多くは、細胞、組織、及びモデル有機体における複雑な動的プロセスの研究を中心としている。これらのプロセスは、様々なタイムスケールで行われる。これらの研究に必要な空間分解能を考慮すると、共焦点レーザー走査顕微鏡は、生体物質の高分解能な可視化を可能にするので、適切な技術である。共焦点顕微鏡法は、焦点のずれた光をブロックするように構成された空間ピンホールによって、顕微鏡写真の光学的分解能及びコントラストを増大させる光学的撮像技術である。典型的には、ピンホールは、サンプル内の微細なスポットに集められるレーザー・ビームによる照射に応答して、サンプルから放射される反射光又は蛍光によって照射される。サンプルを通過するレーザー焦点をラスター走査することは、異なる深度における複数の二次元画像を捕捉することを可能にし、それによって物体内の三次元構造を再構成することを可能にする。更に、蛍光ラベリング技術を使用することは、個々の生体分子又は細胞の構造の可視化を、高い選択性で可能にする。しかしながら、レーザー焦点は物体を通過して走査されることを必要とするので、多くの生物学的プロセスにとって、共焦点レーザー走査顕微鏡の達成可能な時間分解能は十分ではない。
【0003】
共焦点レーザー走査顕微鏡の更なる応用分野は、組織のスライドのデジタル画像データが後の分析のために取得されるデジタル病理学である。しかしながら、この用途においても、三次元画像データを取得するために必要とされる長い時間は、ますます多くの患者データを取り扱わなければならない臨床ワークフロー内に適合しない。
更に、組織スライドの横方向の広がりは、しばしば、撮像系の視野のサイズを超え、隣接する視野の連続的に記録された画像の縫合、又は第2走査処理に関連する操作、の何れかを必要とし、この場合、撮像プロセス全体のうちの何らかの時点で、組織スライドの全ての関連する部分が撮像系の視野の中にあるように、サンプルは撮像系に関して走査される。
【0004】
フォーカスされた光ビームを当てにする他の顕微鏡撮像技術にも同様の問題が存在する。
従って、より短い画像取得時間を提供する顕微鏡撮像技術に対するニーズが存在する。
【発明の概要】
【0005】
本開示の実施形態は顕微鏡撮像系に関連する。撮像系は、照明光を生成する光源と、光学系と、検出系とを備える。光学系は、検査されるべき物体の中で、複数の焦点を同時に形成するように照明光をフォーカスさせ、その結果、照明光に応じて複数の焦点から検出光が物体により発せられるように、構成される。光学系は検出光を検出するように構成された検出系へ、検出光を向けるように更に構成される。光学系は、照明光が物体に入射する光学系の光軸に沿って見た場合に、複数の焦点が、軸方向に互いから相互に隔てられ且つ横方向に互いから相互に隔てられるように、更に構成される。物体内で生じた焦点の各々について、検出系及び光学系は、それぞれの焦点から発せられる検出光を実質的に別々に検出するように構成される。光学系及び検出系は、軸方向に沿う変位を補償するように構成される。光学系及び/又は検出系は、焦点の各々について、検出光の一部を受ける検出系の受光部分が、それぞれの焦点の少なくとも一部に対して光学的に共役である場所に実質的に位置するように構成される。
【0006】
顕微鏡撮像系は、共焦点撮像系、特に走査型の共焦点撮像系であってもよい。顕微鏡撮像系は、三次元撮像のために構成されていてもよい。物体は、照明光及び検出光に対して少なくとも部分的に透明であってもよい。具体例として、物体は組織スライスであってもよい。組織スライスは、生検サンプル又は切除サンプルから採取されてもよい。
【0007】
光源はレーザーを含んでもよい。レーザーは、200ナノメートル及び1800ナノメートルの間の範囲内、又は300及び1500ナノメートルの間の範囲内の1つ以上の波長を有する光放射を発するように構成されることが可能である。レーザー光は、DAPI、FITC、又は幾つかの種の蛍光タンパク質のような蛍光体を励起するのに適した波長を有する光放射を発するように構成されることが可能であり、これは典型的には近紫外から可視範囲を経て近赤外に及ぶ範囲の励起波長で動作する。レーザーによって発生される照明光は、単色であってもよいし、又は実質的に単色であってもよい。光学系は、光源及び物体の間の照明光及び検出光の中にあるビーム・スプリッタ・システムを含むことができる。具体例として、ビーム・スプリッタ・システムは、(ダイクロイック・ミラーのような)ダイクロイック・ビーム・スプリッタ及び/又はキューブ・ビーム・スプリッタを含んでもよい。ビーム・スプリッタは、検出光を照明光から分離することができる。検出光は、照明光に含まれる励起光の波長よりも大きな波長を有する可能性のある蛍光発光を含んでもよい。ビーム・スプリッタは、伝搬方向及び/又は光の波長に敏感である可能性がある。
【0008】
焦点は、共通平面内又は実質的に共通平面内に位置する。共通平面に対する法線は、照明光が物体に入射する光軸に対して曲がっていてもよい。具体例として、角度は、0.01度より大きくてもよいし、0.03度より大きくてもよいし、0.3度より大きくてもよいし、又は1度より大きくてもよい。角度は、6度未満であってもよいし、又は4.5度未満であってもよい。これらの値の各々は、空気中で、即ち、物体の屈折率を考慮せずに測定される。
【0009】
顕微鏡撮像系の光学系は、焦点のペア各々について、空気中で測定される軸方向変位が、10ナノメートルより大きくなるように、30ナノメートルより大きくなるように、50ナノメートルより大きくなるように、100ナノメートルより大きくなるように、200ナノメートルより大きくなるように、300ナノメートルより大きくなるように、又は500ナノメートルより大きくなるように、構成されることが可能である。最小の軸方向変位を有する焦点のペアに関し、空気中で測定される軸方向変位は、150マイクロメートル未満であってもよいし、100マイクロメートル未満であってもよいし、50マイクロメートル未満であってもよいし、20マイクロメートル未満であってもよいし、10マイクロメートル未満であってもよいし、5マイクロメートル未満であってもよいし、又は1マイクロメートル未満であってもよい。
【0010】
焦点の各ペアについて、空気中で測定される軸方向変位は、照明光が物体に入射する光軸に沿って測定される、光学系の回折限界焦点の軸方向直径の0.2倍より大きくてもよいし、又は0.5倍より大きくてもよい。回折限界スポットは、光学系の特性に基づいて、光源及び物体を考慮することなく(即ち、1である屈折率を仮定して)、決定されることが可能である。最小の軸方向変位を有する焦点のペアに対して、空気中で測定される軸方向変位は、光軸に沿って測定される回折限界焦点スポットの軸方向直径の150倍未満であってもよいし、又は100倍未満であってもよい。直径は半値全幅(FWHM)直径であってもよい。
【0011】
光学系の焦点平面において光軸に沿って測定される、光学系の回折限界焦点スポットの軸方向直径は、λ/(2(n-√(n2-NA2)))に等しいように規定されることが可能であり、λは励起波長であり、nは物体の屈折率であり、NAは、焦点を生じさせる光学系の物体側の開口数であり、NA=nsinαとして定義され、αは、光学系の光軸と焦点に集束するビームの周辺光線との間の角度である。
【0012】
顕微鏡撮像系の光学系は、焦点の各ペアについて、空気中で測定される横方向変位が、100ナノメートルより大きい、200ナノメートルより大きい、300ナノメートルより大きい、又は500ナノメートルより大きいように構成されることが可能である。最小の横方向変位を有する焦点のペアに関し、空気中で測定される横方向変位は、300マイクロメートル未満であってもよいし、200マイクロメートル未満であってもよいし、100マイクロメートル未満であってもよいし、50マイクロメートル未満であってもよいし、20マイクロメートル未満であってもよいし、10マイクロメートル未満、又は1マイクロメートル未満であってもよい。
【0013】
空気中で測定される横方向変位は、光軸に垂直に測定される回折限界焦点の横方向直径の0.2倍より大きくてもよいし、又は0.5倍より大きくてもよい。回折限界スポットは、光学系の特性に依存して、光源及び物体を考慮することなく(即ち、1である屈折率を仮定して)、決定されることが可能である。最小の横方向変位を有する焦点のペアに対して、空気中で測定される横方向変位は、回折限界焦点の横方向直径の150倍未満であってもよいし、又は100倍未満であってもよい。直径は半値全幅(FWHM)直径、又はエアリー・ディスクの直径(第1強度最小値に対応)とすることができる。
【0014】
光学系の焦点平面において光軸に対して垂直に測定される、光学系の回折限界焦点スポットの横方向直径は、1.22λ/NAに等しく設定されることが可能であり、λは励起波長であり、nは物体の屈折率であり、NAは、焦点を生じさせる光学系の物体側の開口数であり、NA=Nsinαとして定義され、αは、光学系の光軸と焦点に集束するビームの周辺光線との間の角度である。
【0015】
検出光は、1つ以上の波長範囲を表すスペクトル分布を有することが可能であり、これは照明光のスペクトル分布によって表される1つ以上の波長範囲とは異なる。検出光は、照明光に応答してサンプルの一部から発せられる蛍光であってもよい。検出光は、物体の一部によって反射される反射照明光であることも考えられる。
【0016】
物体内で生じる焦点の数は、2、3、4、5又は10以上であってもよい。焦点の数は、250未満、130未満、50未満又は30未満であってもよい。焦点の各々はライン焦点であってもよい。ライン焦点の各々は、直線に沿って、又は実質的に直線の長手方向軸に沿って伸びていてもよい。ライン焦点の長手方向軸は、互いに平行に延びていてもよいし、又は実質的に平行に延びていてもよい。
【0017】
焦点の各々について、空気中で測定される各焦点の最小直径は、200ナノメートルより大きい、250ナノメートルより大きい、又は300ナノメートルより大きい。幅は、5マイクロメートル未満であってもよいし、又は3マイクロメートル未満であってもよい。
【0018】
ライン焦点の長手方向軸は、照明光が物体に入射する光軸に対して垂直又は実質的に垂直であってもよい。追加的又は代替的に、ライン焦点の長手方向軸は、ライン焦点の横方向変位がそれに沿って測定される横方向に対して実質的に垂直又は垂直であってもよい。
【0019】
ライン焦点の各々について、空気中で測定されるライン焦点の軸方向の長さは、1マイクロメートルより大きくてもよいし、2マイクロメートルより大きくてもよいし、又は5マイクロメートルより大きくてもよい。軸方向長さは、10ミリメートル未満、5ミリメートル未満、1ミリメートル未満、500マイクロメートル未満であってもよい。ライン焦点の各々について、軸方向長さは、空気中で測定される光学系の回折限界焦点の横径(即ち、光軸に対して垂直に測定される)の少なくとも5倍、少なくとも10倍、又は20倍、及び/又は光軸に対して垂直に測定される各ライン焦点の最大横幅の少なくとも5倍、又は15倍であってもよい。
【0020】
ライン焦点の各々について、それぞれのライン焦点の長手方向軸に垂直に空気中で測定された、それぞれのライン焦点の横方向幅は、200ナノメートルより大きくてもよいし、250ナノメートルより大きくてもよいし、300ナノメートルより大きくてもよいし、又は500ナノメートルより大きくてもよい。幅は、20マイクロメートル未満、10マイクロメートル未満、5マイクロメートル未満、又は1マイクロメートル未満であってもよい。ライン焦点の各々について、幅は、空気中で測定される光学系の回折限界焦点スポットの横方向直径(即ち、光軸に対して垂直に測定される)より大きくてもよい。ライン焦点の各々について、幅は、光軸に垂直に測定される回折限界焦点スポットの横径の100倍未満、10倍未満、又は5倍未満であってもよい。
【0021】
更なる実施形態によれば、光学系は、光学系の球面収差を少なくとも部分的に補償するように構成された補正光学系を含む。球面収差は、少なくとも1つの焦点の形状及び/又は位置に影響を及ぼす可能性がある。特に、球面収差は、ライン焦点の少なくとも1つの形状及び/又は線幅に影響を及ぼす可能性がある。更に、以下で更に詳細に説明されるように、ライン焦点の形状及び/又はライン幅に影響する球面収差は、ライン焦点がサンプル内の異なる深さに位置するので、影響を受けるライン焦点の各々について異なる可能性がある。
【0022】
補正光学系は、1つ以上の屈折光学素子及び/又は1つ以上の回折光学素子を含んでもよい。1つ以上の回折光学素子の少なくとも一部は、アドレス可能な空間光変調器として構成されてもよい。屈折光学素子は、例えば、ガラス又は石英又はポリマーで形成される透明板であって、照明光ビームによって横断されるものであり、且つ屈折光学素子と共に照明光ビームの断面内の位置に依存する厚さを有するものである可能性がある。補正光学系の各要素は、照明光の中に配置されてもよい。補正光学系は、ビーム倍増系の一部であってもよいし、又はそれを構成してもよい。ビーム倍増系は、複数のビームレットを生成するように構成することができる。光学系は、各ビームレットを、物体内の焦点のうちの1つに合焦させるように構成されることが可能である。
【0023】
補正光学系は、光源と物体との間、特に光源と光学系の1つ以上の屈折光学素子(球面収差の少なくとも一部を生じる)との間の照明光の中にあってもよい。光学系は、1つ以上の屈折光学素子を使用して、照明光を、物体内の焦点に集束させることができる。1つ以上の屈折光学素子は、対物レンズを含んでもよい。対物レンズは、物体に入射する前に照明光が横切する最終的な光学系であってもよい。
【0024】
球面収差の少なくとも一部は、物体における開口数によって引き起こされる可能性があり、開口数は0.25以上、又は0.5以上である。開口数は、2.0未満、1.5未満、1.3未満、又は1.0未満であってもよい。
【0025】
撮像系が走査型共焦点顕微鏡として構成される場合、ライン焦点の長手方向軸に垂直な方向における合焦光の最大密度は、ライン焦点の軸に垂直な方向における最大分解能を可能にする。
【0026】
検出系は、複数の光感知検出素子を含んでもよい。光感知検出素子の各々は、それぞれの光感知検出素子の光感知表面に入射する光の一部を、互いに別々に検出するように構成されてもよい。具体例として、光感知検出素子は、光感知ピクセルであってもよい。光感知検出素子は、検出系の受光表面上に1つ以上の規則的な又は不規則的なアレイ内に配置されてもよい。物体内で生じる焦点の各々について、それぞれの焦点から発せられる検出光は、検出系の受光表面に焦点を合わせてもよいし、又は焦点を合わせなくてもよい。
【0027】
受光部分の少なくとも一部は、受光表面の表面部分であってもよい。受光部分の少なくとも一部は、検出系の1つ以上の光感知検出素子、例えば1つ以上のピクセルを含んでもよい。
【0028】
軸方向に沿った変位に対する補償は、物体の屈折率を考慮してもよい。物体の屈折率の値は、1以上、1.2以上、1.3以上であるとすることが可能である。屈折率は、4以下、3以下、又は2.5以下であるとすることが可能である。物体の屈折率は、実質的に水(即ち、1.33)に対応してもよい。物体の主成分は水であってもよい。
【0029】
更なる実施形態によれば、検出系は、検出光がそれに沿って受光部分に入射する光学系の光軸に対して見た場合に、異なる焦点に対する受光部分が互いに軸方向に隔たっているように構成される。
【0030】
更なる実施形態によれば、受光部分は、共通平面内にあるか、又は実質的に共通平面内にある。共通平面に対する法線は、検出光が受光部分に入射する光軸に対して、ある角度をもって配置される。角度は、物体内の焦点の軸方向変位を少なくとも部分的に補償するように、寸法決定されることが可能である。共通平面は、検出系の受光表面であってもよい。角度は、物体の屈折率が考慮されるように寸法決定されてもよい。
【0031】
追加的又は代替的に、検出器の受光表面は、段差のある表面を有することが考えられる。段差のある表面は、相互に軸方向に変位した受光部分を提供するように構成されてもよい。
【0032】
更なる実施形態によれば、焦点の各々について、光学系及び検出系は、それぞれの焦点から発せられる検出光の少なくとも一部を選別するように、検出光の共焦点フィルタリングのために構成される。
【0033】
更なる実施形態によれば、焦点の各々について、光学系及び検出系は、個々の焦点の内で空間的に分解された光検出のために構成される。空間分解能は、一次元又は二次元の空間分解能であってもよい。物体内で生じた焦点の各々について、検出系は、それぞれの焦点から発せられる検出光の一部を別々に検出するための複数の光感知検出素子を含んでもよい。光検出素子の各々は、焦点内の領域からの光を検出することができ、領域は、光感知検出素子に対して光学的に共役である。
【0034】
更なる実施形態によれば、受光部分の各々は、検出系の光感知検出素子の各グループによって提供される。光感知検出素子の各々は、光感知検出表面を有してもよい。非・感光性表面領域は、隣接するグループの光感知検出素子の光感知表面を分離する。グループのうちの1つにある隣接する光感知表面の各ペアについて、ペアの光感知表面の間の隔たりは、分離距離の0.25倍未満、0.1倍未満、又は0.05倍未満である。分離距離は、変位の15倍未満、45倍未満、60倍未満、100倍未満、200倍未満であってもよい。
【0035】
分離距離は、相違するが隣接している受光部分の光感知表面の間の最小距離であってもよい。隣接する光感知表面の間の隔たりは、光感知表面の重心エリア間の距離として測定されてもよい。
【0036】
1つ以上のグループに関し、各グループの光感知検出素子は、光感知表面の規則的なアレイ(矩形又は正方形アレイのようなもの)又は不規則的なアレイを形成してもよい。アレイは、長手方向軸を有する細長い形状を有していてもよい。分離距離は、長手方向軸に垂直に測定されることが可能である。
【0037】
更なる実施形態によれば、焦点の各々はライン焦点であり、ライン焦点の各々について、空間的に分解された光検出は、少なくとも、それぞれのライン焦点の軸に沿っている。
【0038】
更なる実施形態によれば、顕微鏡撮像系は、一方の側の焦点と他方の側の物体との間の相対的な走査運動を生成するように構成された走査システムを更に含む。撮像系は、焦点の各々について、走査経路に沿った複数の走査位置の各々において、それぞれの焦点から発せられる検出光を検出するように構成されてもよい。
【0039】
走査システムは、1次元、2次元、又は3次元走査システムであってもよい。走査システムは、物体が取り付けられることが可能な走査ステージを含んでもよい。走査ステージは、走査動作の少なくとも一部を実行するように構成することができる。相対的な走査運動は、照明光が光軸に沿って物体に入射する光学系の光軸に実質的に垂直な物体及び/又は焦点の運動を含んでもよい。追加的又は代替的に、光学系は、光源と物体との間の照明光の中にあるビーム走査ユニットを含んでもよい。特に、走査ユニットは、ビーム倍増系と物体との間の照明光の中にあってもよい。走査ユニットは、1つ以上の走査ミラーを含んでもよい。走査ミラーは、照明光が光軸に沿って物体に入射する光軸に垂直な又は実質的に垂直な方向において、焦点を同時に変位させるように構成することができる。
【0040】
更なる実施形態によれば、焦点の各々はライン焦点である。走査システムは、走査運動の方向がライン焦点の少なくとも1つの軸に対して実質的に垂直であるように構成されてもよい。焦点の軸は、互いに対して平行に又は実質的に平行に配向されてもよい。
【0041】
更なる実施形態によれば、光学系は、ビーム倍増系を含む。ビーム倍増系は、光源と物体との間の照明光の中にあってもよい。ビーム倍増系は、複数のビームレットを生成するように構成することができる。
【0042】
更なる実施形態によれば、ビーム倍増系は、ビームレットの各々が実又は仮想焦点から発する又はそこへ向かって集まるように、ビームレットを生成するように構成される。光学系は、集まる又は発するビームレットの各々を、物体内の焦点の1つにフォーカスするように構成されたフォーカシング光学系を含んでもよい。
【0043】
更なる実施形態によれば、ビーム倍増系は、回折光学素子を備え、ビームレットの各々は、回折光学素子によって生成される回折次数に対応する。光学系は、ビーム倍増系に入射する照明光、特に回折光学素子に入射する照明光が、平行な又は実質的に平行な光ビームであるように構成されてもよい。換言すれば、ビーム倍増系又は回折光学素子に入射する照明光は、平面又は実質的に平面の波面を有するビームを含む。波面は、ビーム倍増系の回折面、又は回折光学素子の屈折面に対して平行に又は実質的に平行に配向されてもよい。
【0044】
回折光学素子は、各ビームレットが非点収差であるように構成されてもよい。光学系は、非点収差ビームレットの各々を、それぞれのライン焦点に合焦するように構成されることが可能である。従って、ライン焦点のライン形状は、ビームレットの非点収差によって少なくとも部分的に引き起こされる可能性がある。非点収差ビームレットの各々を、各自のライン焦点にフォーカスすることは、光学系の直線的な、湾曲した及び/又は曲がった光軸に対して回転対称な又は実質的に回転対称なフォーカシング光学系によって実行されることが可能である。
【0045】
回折光学素子は、各ビームレットが非点収差であるように構成されてもよい。非点収差は、ビームレットが、複数のライン焦点に合焦されることを、少なくとも部分的に引き起こすことができる。非点収差は、回折光学素子から出る照明光の位相プロファイルによって、少なくとも部分的に引き起こされる可能性がある。
【0046】
更なる実施形態によれば、回折光学素子は、回折光学素子から出る照明光が、回折光学素子の回折面において測定される位相プロファイルを有するように構成される。位相プロファイル又は位相プロファイルの多項式表現の加算成分は、2回回転対称性又は実質的な2回回転対称性を有する可能性がある。2回回転対称性の対称軸は、光学系の光軸及び/又は照明ビームのビーム軸であってもよいし、又は実質的にそれであってもよい。
【0047】
多項式表現は、固有に決定された多項式表現であってもよい。多項式表現の原点(即ち、多項式のパラメータがゼロの値を有する点)は、光学系の光軸上、及び/又は回折光学素子に入る照明光のビーム軸上に位置してもよい。
【0048】
更なる実施形態によれば、位相プロファイル又は加算成分は、項又は多項式であるか、又は実質的にそれである。項又は多項式は単変量であってもよい。単変量項又は単変量多項式は、2次以上又は4次以上であってもよい。
【0049】
単変量多項式の4次の項の係数に対する、単変量多項式の2次の項の係数の比率は、照射光が回折光学素子を横切る位置における照射光のビーム断面の半径に、-1ないし-11の間にある値を乗じたものを有することが可能である。半径はFWHM (半値全幅) の半分に対応してもよい。断面は、照明光のビームの軸に垂直に、及び/又は回折光学素子の回折平面内で採用されてもよい。
【0050】
追加的又は代替的に、比率は、p=R/(F2・NA2)で定められる値pに関して、pが-3及び-10の間の値、又は-4及び-8の間の値を有するようなものであってもよく、Rは比率であり、Fは、ビームレットをライン焦点に合焦させる光学系のフォーカシング光学系の物体側の焦点距離であり、NAは物体における開口数である。具体例として、pは-6の値を有する。
【0051】
本発明者は、比率に関するこれらの範囲は、それぞれのライン焦点の長手方向軸に沿ったピーク強度の変動及び/又はライン幅の変動を僅かにしか有しないライン焦点を得るために、特に有利であることを示している。
【0052】
更なる実施形態によれば、ビーム倍増系は、複数のビームレットを生成し且つ補正光学系としても機能する回折光学素子を含む。
【0053】
追加的又は代替的に、回折光学素子は、ビームレットの各々について、球面収差を補償するように構成されてもよい。球面収差は、少なくとも部分的に、フォーカシング光学系を用いてビームレットをライン焦点に集束させることによって引き起こされる可能性がある。以下で詳細に説明するように、回折光学素子は、異なるライン焦点の各々に対して異なる量の球面収差の補償を可能にする。
【0054】
回折光学素子の回折次数の数は、物体内の焦点の数と同一であってもよい。ビーム倍増系は、ビーム倍増系に入射する照明光のパワーを、複数の回折次数に集中させ、その結果、残りの回折次数への光放出が抑制されるように構成されることが可能である。言い換えると、残りの回折次数のトータル光パワーは、物体内で焦点を形成するために使用される回折次数のトータル光パワーの30%未満、20%未満、又は10%未満である。
【0055】
更なる実施形態によれば、ビーム倍増系は、屈折光学ユニットのアレイを含み、各々の屈折光学ユニットは、照明光の一部をフォーカス又はデフォーカスして、ビームレットの1つを形成する。屈折光学ユニットの光軸は、ビームレットが光軸に沿ってフォーカシング光学系に入るフォーカシング光学系の光軸に対して曲がっていてもよいし、又は、屈折光学ユニットに入射する照明光のビームのビーム軸に対して曲がっていてもよい。角度は、少なくとも部分的に、物体内の焦点の軸方向変位に対して寸法決定されてもよい。
【0056】
更なる実施形態によれば、ビーム倍増系は、アドレス指定可能な空間光変調器を含む。アドレス指定可能な空間光変調器は、光学的にアドレス指定可能な及び/又は電気的にアドレス指定可能な空間光変調器であってもよい。空間光変調器は、反射型及び/又は透過型空間光変調器であってもよい。アドレス可能な空間光変調器は、回折光学素子として構成することができる。
【0057】
更なる実施形態によれば、検出光は、照明光に応答して物体によって生成される蛍光である。
【0058】
本開示は以下の実施形態に関連する:
項目1:
顕微鏡撮像系であって、照明光を生成する光源と、光学系と、検出系とを備え、光学系は、検査されるべき物体の中で、複数の焦点を同時に形成するように照明光をフォーカスさせ、その結果、照明光に応じて複数の焦点から検出光が物体により発せられるように、且つ検出光を検出するように構成された検出系の方へ、検出光を向けるように構成されており、
光学系は、照明光が物体に入射する光学系の光軸に沿って見た場合に、複数の焦点は、軸方向において互いから相互に隔たっており且つ横方向おいて互いから相互に隔たっており、
物体で生じる複数の焦点の各々について、検出系及び光学系は、個々の焦点から発せられた検出光を実質的に別々に検出するように構成されており、
光学系及び/又は検出系は軸方向に沿う隔たりを補償するように構成されており、その結果、複数の焦点の各々について、検出光の一部を受ける検出系の受光部分は、個々の焦点の少なくとも一部に対して光学的に共役(optically conjugate)である位置に実質的に位置している、撮像系。
【0059】
項目2:
検出系は、照明光が検出系に入射する光学系の光軸に沿って見た場合に、異なる焦点に対する受光部分が、互いから軸方向に隔たっているように構成されている、項目1に記載の撮像系。
【0060】
項目3:
受光部は、実質的に共通平面内に配置され、
共通平面に対する法線は、検出光が光軸に沿って受光部分に入射する光軸に対して或る角度で配置され、
角度は、物体内の焦点の軸方向変位を少なくとも部分的に補償するように寸法決定されている、項目1又は2の撮像系。
【0061】
項目4:
焦点の各々について、光学系及び検出系は、それぞれの焦点から発せられた検出光の少なくとも一部を選別するために、検出光の共焦点フィルタリング用に構成されている、上記の何れかの項目の撮像系。
【0062】
項目5:
焦点の各々について、光学系及び検出系は、それぞれの焦点の内で空間的に分解された光の検出のために構成されている、上記の何れかの項目の撮像系。
【0063】
項目6:
受光部分の各々が、検出系の光感知検出素子の各グループによって提供され、光感知検出素子の各々は光感知表面を有し、非・感光表面領域は、隣接するグループの光感知検出素子の光感知表面を分離し、グループのうちの1つにある隣接する光感知表面の各ペアについて、ペアの光感知表面の間の隔たりは、分離距離の0.25倍未満、0.1倍未満、又は0.05倍未満である、上記の何れかの項目の撮像系。
【0064】
項目7:
焦点の各々はライン焦点であり、ライン焦点の各々に対して、空間的に分解される光検出は、少なくとも、各ライン焦点の軸に沿っている、上記の何れかの項目の撮像系。
【0065】
項目8:
一方の側にある焦点と他方の側にある物体との間の相対的な走査運動を生成するように構成された走査システムを更に備え、
撮像系は、焦点の各々について、走査経路に沿った複数の走査位置の各々において、それぞれの焦点から発せられた検出光を検出するように構成されている、上記の何れかの項目の撮像系。
【0066】
項目9:
焦点のそれぞれは、ライン焦点であり、走査システムは、走査運動の方向が、ライン焦点の少なくとも1つの軸に対して実質的に垂直であるように構成されている、項目8の撮像系。
【0067】
項目10:
光学系が、光源と物体との間の照明光であって複数のビームレットを生成するビーム倍増系を備える、上記の何れかの項目の撮像系。
【0068】
項目11:
ビーム倍増系は、ビームレットの各々が実又は仮想焦点を有するようにビームレットを生成するように構成され、光学系は、物体内の焦点の1つへの、実又は仮想焦点から集まる又はそこへ向かって放出するビームレットの各々を撮像するように構成されている、項目10の撮像系。
【0069】
項目12:
ビーム倍増系は、回折光学素子を備え、ビームレットの各々は、回折光学素子によって生成される回折次数に対応する、項目10又は11の撮像系。
【0070】
項目13:
ビーム倍増系は、屈折光学ユニットのアレイを含み、
屈折光学ユニットの各々は、ビームレットの1つを形成するために、照明光の一部をフォーカスするか又はデフォーカスする、項目10-12のうちの何れかの撮像系。
【0071】
項目14:
ビーム倍増系が、アドレス指定可能な空間光変調器を備える、項目10-13のうちの何れかの撮像系。
【0072】
検出光は、照明光に応答して物体により発せられる蛍光である、上記の何れかの項目の撮像系。
【図面の簡単な説明】
【0073】
【
図2】
図1に概略的に示される第1実施例の撮像系を使用して生成されるフォーカシング光学系及びライン焦点の概略図である。
【
図3】
図1に概略的に示される第1実施例の撮像系の検出系の受光表面における光感知検出素子の配置の概略図である。
【
図5】
図4に示される第2実施例による撮像系におけるビーム倍増系の回折次数に対する入力パワーの分布を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0074】
図1は、第1実施例による顕微鏡撮像系1の概略図である。顕微鏡撮像系1は、検出光が検出系12を用いて検出されるように構成されており、検出光は、照明光に応答して物体4によって生成され、照明光は、光源2によって生成され、物体4に向けられる。検出光は、蛍光光及び/又は反射された照明光を含む可能性がある。
【0075】
光源2は、光源2から発せられた照明光のビーム3がレーザー・ビームであるように、レーザー・システムを含んでいてもよい。しかしながら、光源2はハロゲン・ランプのような非レーザー光源を含むこともまた、(特に、
図6に関連して説明されることになる第3実施例において)考えられる。一例として、レーザーは、半導体ダイオード・レーザー、ガス又は固体レーザーとして構成されてもよい。照明光のビーム3は、ビーム増倍部5、ビーム・スプリッタ6、及びフォーカシング光学系7を含む光学系を用いて物体4に導かれる。照明光のビーム3は、200ナノメートル及び1800ナノメートルの範囲内、又は300ナノメートル及び1500ナノメートルの範囲内の1つ以上の波長を含む可能性がある。より具体的には、それは、DAPI、FITC、又は幾つかの種の蛍光タンパク質のような、一般的に使用されるフルオロフォアを励起するのに適した波長を有する可能性があり、それらは典型的には近紫外から可視範囲を経て近赤外までの範囲に及ぶ励起波長で動作する。
【0076】
ビーム倍増部5は、光源2により生じた照明光のビーム3を受けて、照明光の複数のビームレット8及び9を発生させる。ビーム倍増部5の構成及びビームレット8,9は、
図4及び
図6に関連して説明される第2及び第3実施例を参照しながら、以下で更に詳細に説明されるであろう。説明を簡単にするために、
図1では、2つのビームレット8及び9のみが示されている。しかしながら、ビーム倍増部は、5より多いビームレット、又は10より多いビームレットのような2より多いビームレットを生成することが考えられる。ビームレットの数は、500未満又は130未満であってもよい。
【0077】
ビーム増倍部5によって発せされるビームレット8及び9は、ビーム・スプリッタ6に入射される。ビーム・スプリッタ6は、それが反射するものとは異なる波長を透過するダイクロイック・ビーム・スプリッタのような波長感知ビーム・スプリッタとして構成することができる。追加的又は代替的に、ビーム・スプリッタ6は、キューブ・ビーム・スプリッタとして構成されてもよい。
図1に示されるビーム・スプリッタ6は、反射される照明光の部分が、反射されないで透過される照明光の部分に比べて抑制されるように構成される。更に、反射されない検出光の部分は、反射される検出光の部分に比べて抑制される。代替的な実施例では、ビーム・スプリッタ6は、反射されないで透過される照明光の部分が、反射される照明光の部分に比べて抑制され、反射される検出光の部分が反射されないで透過される検出光の部分と比べて抑制されるように構成される。
【0078】
ビーム・セパレータ6から出る照明光のビームレット8及び9は、フォーカシング光学系7に入射し、フォーカシング光学系7は、各ビームレット8及び9を、物体4内のライン焦点LF
1,LF
2にフォーカスするように構成される。
図1において、ライン焦点LF
1及びLF
2の軸は、紙面に対して垂直に向いている。ライン焦点LF
1及びLF
2の数は、ビームレット8及び9の数に等しい。代替的な実施例では、ライン焦点の数は、ビームレット8及び9の数よりも多いか又は小さいことも考えられる。
【0079】
フォーカシング光学系7は、回転対称、又は実質的に回転対称である。フォーカシング光学系7は、照明光が物体4に入射する光軸A1を規定する。
【0080】
フォーカシング光学系7が回転対称性から実質的に逸脱している構成が考えられることが理解されるべきである。一例として、フォーカシング光学系7は、シリンダー・レンズのような1つ以上の平面対称な光学素子を含んでもよい。平面対称な光学素子の場合、光軸は、対称平面内にある。更に、本発明は、1つの光軸のみを有するフォーカシング光学系7に限定されない。一例として、フォーカシング光学系7は、照明光が物体に入射する複数の光軸を規定する光学素子のアレイを含んでもよい。
【0081】
図2により詳細に示すように、光学系は、光軸A1に関して見た場合に、ライン焦点LF
1及びLF
2が、軸方向において互いから相互に変位し、且つ横方向において(即ち、光軸A1に対して垂直に測定される)互いから相互に変位するように構成される。
図2の概略図では、ライン焦点LF
1及びLF
2の長手方向軸は、紙面に対して垂直に且つ互いに対して平行に延びる。ライン焦点LF
1及びLF
2は、互いに平行に延びることは必須出ないことが理解されるべきである。更に、ライン焦点LF
1及びLF
2は、ライン焦点の軸に沿った方向において一定の幅及び/又は一定の強度を有する完全なラインを必ずしも表わしてないことが理解されるべきである。むしろ、ライン焦点LF
1及びLF
2の各々は、その長手方向軸線に沿って可変幅を有する楕円又は実質的に楕円のビーム・プロファイルを有することが可能である。具体的には、ライン・フォーカスの長手方向軸に沿って見た場合に、強度プロファイルは強度最大値を有し、強度プロファイルは強度最大の何れかの側で先細りになっている。
【0082】
具体的には、
図2に示すように、光軸A1に沿って測定される場合に、ライン・フォーカスLF
1とライン・フォーカスLF
2とは、(光軸A1に沿って測定される)軸方向分離距離Δzだけ、及び(光軸A1に対して垂直な方向dに沿って測定される)横方向分離距離Δxだけ、互いから隔たっている。横方向分離距離Δxは、各ライン焦点LF
1及びLF
2の各々に対して、照明光に応答してそれぞれのライン焦点LF
1及びLF
2から発せられる検出光27,28の共焦点検出が、光学系と検出光を検出するように構成された検出系12(
図1に示す)とを使用することによって別々に実行できるように選択される。
【0083】
言い換えると、十分に大きな横方向分離距離Δxは、ライン焦点LF1及びLF2の各々に対して、隣接するライン焦点からのクロストークなしに、それぞれのライン焦点LF1,LF2から発せられる検出光27,28の共焦点検出を可能にする。
【0084】
一例として、光学系は、ライン焦点間の横方向変位距離が、横方向dに沿って測定されたライン焦点LF1及びLF2の回折限界幅の0.5倍より大きくてもよいし、又は2倍より大きくてもよいように構成されることが可能である。横方向変位距離Δxは、回折限界幅の100倍未満又は1000倍未満であってもよい。ライン焦点LF1及びLF2は、共通平面P内にあり、平面Pに対する法線ベクトルn1は、光軸A1に対して角度が付けられている。具体例として、法線ベクトルn1及び光軸A1によって形成される角度α1は、0.01度より大きくてもよいし、又は0.03度より大きくてもよい。角度α1は、6度未満又は4.5度未満であってもよい。撮像系が2つより多いライン焦点を生成する場合、各々のライン焦点は共通平面P内に存在してもよい。
【0085】
光軸に対して垂直な物体平面であって物体が物体平面に対して傾斜している物体平面にライン焦点が位置する異なる構成(クレームによってカバーされない)は、顕微鏡撮像系の解像度を著しく低下させる重大な収差をもたらすことが、本発明者によって示されている。具体的には、これらの収差はコマ収差及び非点収差が支配的である。本発明者は、更に、
図2に関連して上述したように、ライン焦点LF
1とLF
2が互いに軸方向及び横方向に相対的に変位している構成が使用される場合には、このような収差は生じないことを示している。
【0086】
図1に戻ると、撮像系1の光学系は、更に、光感知検出系12の受光表面10上におけるそれぞれの受光部分SP1,SP2において、ライン焦点LF1,LF2のそれぞれを撮像するように構成され、検出系12には、
図3に関連して以下で詳細に説明されるように、光感知検出系12の複数の光感知検出素子が配置されている。従って、受光部分SP
1,SP
2は、物体4内のライン焦点LF
1,LF
2の位置に光学的に共役な場所に実質的に位置している。受光部分SP
1,SP
2は重複していない。
【0087】
図1から分かるように、受光部分SP
1,SP
2である光学的に共役な位置は、検出光が光感知検出系12に入射する光軸A2に対して、光感知検出系12の受光表面10を傾斜させ、その結果、受光表面10に対する表面法線n
2
→と光軸A
2とが、法線ベクトルn
1
→と光軸A
1とによって形成される角度α
1(
図2に示されている)に依存する角度α
2を形成することによって達成される。従って、検出系12は、物体4内のライン焦点LF
1及びLF
2の軸方向変位を補償するように構成される。具体例として、角度α
2は、1度より大きくてもよいし、3度より大きくてもよい。角度α
2は60度未満でもよいし、45度未満でもよい。なお、光学系の構成に応じて(特に、ビーム・スプリッタ6の構成に応じて)、光軸A1とA2は互いに平行であってもよいし、90度の角をなしてもよいし、或いは90度とは異なる角度で傾斜していてもよい。
【0088】
追加的又は代替的に、光学系は、物体4内のライン焦点LF1及びLF2の軸方向変位を少なくとも部分的に補償するように構成されることが考えられる。具体例として、光学系は、屈折光学パワーの異なる値を有する屈折光学素子のアレイを含んでもよい。ライン焦点LF1及びLF2の各々について、それぞれのライン焦点LF1,LF2から発せられた検出光27,28は、屈折光学素子のうちの1つを通過することが可能であり、その結果、異なるライン焦点LF1,LF2からの検出光は異なる屈折素子を通過することが可能である。
【0089】
図1に更に概略的に示すように、物体4は、物体4を介してライン焦点LF
1及びLF
2を走査するために、焦点LF
1及びLF
2に対して走査方向s
→に沿って移動させられる。走査動作は、物体4が取り付けられ且つ焦点LF
1及びLF
2に対して物体4を変位させるように構成された走査ステージ(
図1には示されていない)を使用して実行される。走査方向s
→は、ライン焦点LF
1及びLF
2の各々の長手方向軸に対して垂直に又は実質的に垂直に向いている。しかしながら、走査方向s
→は、ライン焦点LF
1及びLF
2の軸に対して、90度よりも著しく小さな角度で曲がっていることも考えられる。走査方向s
→はまた、ライン焦点LF
1及びLF
2が延びている共通平面Pに対して曲がっていてもよい。
図3に関連して更に詳細に説明されるように、走査動作は、物体4の体積から、三次元共焦点画像データの取得を可能にする。
【0090】
図3は、(
図1に示される)検出系12の受光表面10上の光感知検出素子20の配置を概略的に示す。光感知検出素子20は、光感知表面を有し且つピクセルである。光感知検出素子の各々は、物体から発せられる検出光のそれぞれの部分を別々に検出するように構成される。焦点LF
1及びLF
2の各々について、光感知検出素子20のアレイ21,22が提供され、アレイ21及び22の各々は、複数のピクセル・ラインから形成されるピクセル・ブロックを表し、受光部分SP
1及びSP
2のうちの1つを表す。アレイ21及び22の各々は、TDI (時間遅延積分)ブロックとして構成されることが可能である。アレイ21及び22との間に位置する受光表面10の一部では、更なる検出素子は配置されておらず、その結果、非・感光表面領域23が形成される。具体例として、アレイ21及び22の長手方向軸Lに垂直に測定される、非・感光表面領域23の幅g(即ち、隣接するアレイ21及び22の検出素子の感光表面の間の分離距離)は、ピクセル・サイズの4倍より大きくてもよいし、又は12倍より大きくてもよい(正方形ピクセルの辺に沿って測定される)。追加的又は代替的に、アレイ21及び22のうちの1つにおける隣接する光感知表面のうちのペア各々について、ペアの光感知表面の間の変位hは、分離距離gの0.25倍未満、又は0.1倍未満、又は0.05倍未満である。幅gは、変位hの15倍未満、45倍未満、60倍未満、100倍未満、又は200倍未満であってもよい。
【0091】
アレイ21及び22の各々は、共焦点空間フィルタとして機能するように寸法が決められ、これは、従来の走査型共焦点顕微鏡におけるピンホールと同様に機能する。従って、ライン焦点LF1,LF2の各々について、それぞれのアレイ21,22は、それぞれのライン焦点から発せられる検出光を選別するための、及びそれぞれのライン焦点とは異なる軸方向及び/横方向の位置から発せられる光を抑制するための、検出光の共焦点フィルタリングを可能にする。しかしながら、アレイ21,22の各々は、共焦点フィルタリングを実行するために必要とされるよりも大きな広がりを有すること、及び、共焦点フィルタリングは、アレイ21,22の光感知検出素子20の一部からの検出信号のみを使用することによって提供されることも考えられる。更に、共焦点フィルタリングを実行するために、従来の画像センサが使用され、ライン焦点LF1及びLF2の各々に対して、ピクセルが、必要な共焦点フィルタリングを提供するように、画像センサの光感知ピクセルの一部の検出信号が使用されることも考えられる。これは、容易に入手可能な市販の構成要素を使用する利点を提供する。
【0092】
更に、各々のアレイ21及び22の内の複数の光検出素子20は、ライン焦点LF1及びLF2の長手方向軸に沿った方向において、及び/又はライン焦点LF1及びLF2の幅方向において、ライン焦点LF1及びLF2の各々の中で空間的に分解された光検出を可能にする。
【0093】
従来の二次元画像センサと比較して、本実施形態の光感知検出系12は、有用な情報を提供しないピクセル信号を検出してしまうことを防ぎ、なぜなら、受光表面10は、検出光の焦点位置において、即ち物体4の焦点LF1及びLF2の位置に光学的に共役である受光部分SP1及びSP2において、光感知検出素子を有するだけだからである。更に、本実施形態の検出系12は、非・感光領域23において、読み出し電子回路(論理回路及び接続回路、特に電荷から電圧への変換器CVC)の少なくとも一部が配置されるように構成される。これにより、より高い読み出し速度を得ることができるように、より多くの回路を光感知検出系12に配置することができる。また、非・感光領域の回路は、検出素子のアレイ21及び22において、増加した充填率を提供することを可能にし、その結果、焦点LF1及びLF2内の集光効率を改善することができる。
【0094】
図4は、第2実施例による顕微鏡撮像系1aの概略図である。
図1ないし3に示される第1実施例の構成要素と同様である又は対応する撮像系1aの構成要素は、同じ数字を有しているが、混同を避けるために接尾辞文字「a」を後に続けている。
【0095】
実施例2の撮像系1aでは、ビーム倍増系5aは、光源2aとビーム・セパレータ6aとの間の照明光の経路中に回折光学素子13aを含む。反射光学素子13aは、反射回折格子として、又は透過回折格子として機能するように構成されることが可能な回折格子を含んでもよい。具体例として、回折格子は、電気的にアドレス指定可能な回折格子及び/又は光学的にアドレス指定可能な回折格子を含むことができる。電気的及び/又は光学的にアドレス指定可能な回折格子の例は、空間光変調器である。空間光変調器は、液晶技術を使用してもよい。空間光変調器は、ピクセルのアレイを含むことが可能であり、ピクセルの各々は、照明光のビーム3aの一部に位相遅延を生じさせ、照明光は、それぞれのピクセルを横切るか、又はそれらに入射する。位相遅延は、空間光変調器に提供される信号によって調節可能であってもよい。信号は、電気及び/又は光の信号であってもよい。回折光学素子13aによって規定される回折平面は、フォーカシング光学系7a又はその光学系の瞳孔面であってもよく、これは、回折光学素子から出る照明光を、物体内の焦点(ポイント焦点又はライン焦点)にフォーカスする。
【0096】
追加的又は代替的に、回折光学素子13aは、回折光学素子13aに入射する照明光のビーム3aに、調整不可能な位相遅延を与える光学素子を含んでもよい。具体例として、回折光学素子13aは、ガラス、石英、及び/又はポリマー、例えばポリカーボネートで作られたプレートを含む。プレートは、波形表面構造のような表面構造を有していてもよく、これは、ビーム・プロファイルに対する光学経路長における所望の変化を生成し、複数のビームレットを生成するように構成される。波形表面構造は、エッチング及び/又はエンボス加工プロセスを使用して生成されてもよい。
【0097】
以下に説明するように、回折光学素子13aを用いて生成されたビームレット8a,9aは、対物レンズを含むフォーカシング光学系7aが、上述したように、相互の軸方向及び横方向の変位を伴って、これらのビームレットをライン焦点LF1及びLF2にフォーカスさせるように構成される。説明を簡単にするために、回折光学素子13aの設計プロセスの以下の説明は、透過回折格子に関連する。しかしながら、この原理は、反射回折格子を設計するように適合させることが可能である。
【0098】
回折光学素子13aは、ビーム倍増系5aを通って透過される照明光が、複数のビームレット8a,9aを含み、ビームレットの各々が、実又は仮想焦点から発する又はそこに向かって集まるように構成される。実又は仮想焦点は互いに隔たっている。回折光学素子13aは、実又は仮想焦点の変位が、物体4a内のライン焦点の横方向及び軸方向変位を引き起こすように構成される。具体的には、第2実施例による撮像系1aにおいて、ビーム倍増系5aとビーム・スプリッタ6aとの間の領域におけるビームレット8a及び9aは、ビームレット8a,9aが発せられる元の仮想焦点(
図4には示されていない)であって互いに隔たっているものに関連する異なる発散を有する。フォーカシング光学系7aは、これらの仮想焦点の各々を、物体内のライン焦点LF
1及びLF
2の1つに結像するように構成される。従って、フォーカシング光学系7aに関し、一方では仮想焦点、他方ではライン焦点LF
1及びLF
2が、光学的に共役や場所に位置する。
【0099】
図4から更に分かるように、ビーム倍増系5aは、回折光学素子13aとビーム・スプリッタ6aとの間の照明光の中に配置される適合光学系24aを含む。適合光学系24aは、ビームレット8a,9aの各々の断面を、フォーカシング光学系7aの入射瞳に適合させるビーム拡大器として機能する。フォーカシング光学系7aの入射瞳にビーム直径を適応させることは、比較的小さな幅を有する物体4a内でのライン焦点LF
1及びLF
2の発生を可能にし、なぜならフォーカシング光学系7aの完全な開口数が使用されるからである。これにより、共焦点走査顕微鏡の最適な横方向及び軸方向の分解能を得ることができる。
【0100】
図4に示される実施例では、適応光学系24aは、2つのリレー・レンズ14a及び17aを有するアフォーカル・ケプラー望遠鏡として構成され、その主平面はそれらの焦点距離の合計によって互いに変位させられる。別の実施例では、ケプラー望遠鏡として構成されていないか、又はアフォーカルであるように構成されていない他の構成の適応光学系が想定される。
【0101】
適応光学系24aは、回折光学素子13aとビーム・スプリッタ6aとの間の照明光のビームレット8a,9a内に配置されるので、適応光学系24aは、検出光の経路外に配置される。これにより、受光表面10aで検出される光の強度が、適応光学系24aによって低減されることが防止される。これにより、改善された低光感度を得ることができる。しかしながら、多くの用途において、適応光学系24aが照明光によって及び検出光によって横断される場合に、十分な低光感度が得られることに留意すべきである。
【0102】
回折光学素子13aは、照射光の入射ビーム3に対して位相W(x,y)を付与するように構成され、ここで、(x,y)は、実施例では、照射光のビーム3aのビーム軸に垂直に配向される回折光学素子13aによって規定される平面内の座標値である。
【0103】
平面は、複数のゾーンに分割されることが可能であり、各ゾーンには、離散インデックスjが割り当てられ、これは、本願ではゾーン・インデックスとして示される。
【0104】
座標(x,y)に関する点は、以下が真である場合には、ゾーンjの中にある:
【数1】
ここで、λはビームの波長であり、K(x,y)は本願ではゾーン関数として示される関数である。例示的な例として、従来の回折格子では、ゾーン関数はxの線形関数である。各ゾーンj内で、0≦t<1の値をとる変数tは次のように定義される。
【数2】
ここで、floor(x)は、xより小さな最大整数として定義される。照射光の入射ビーム3aに加えられる位相プロファイルW(x,y)は、以下のように、本願においてはプロファイル関数として示される関数f(t)によって定義される:
【数3】
【0105】
従って、プロファイル関数f(t)は、各ゾーン内の回折格子の形状に依存する。回折光学素子13aの複素透過関数は、以下のように定義される:
【数4】
これは、インデックスmの回折次数に渡る合計として次のように書くことができる:
【数5】
次数mの回折効率は、η
m=|C
m|
2である。
【0106】
以上のことから、プロファイル関数f(t)は、回折次数mにわたって光強度の所望の分布を与えるように設計することが可能であり、ゾーン関数K(x,y)は、異なる寄与次数mに所望の位相を与えるように設計することが可能である。
【0107】
上述のように、ライン焦点LF
1及びLF
2の軸方向及び横方向の変位を得るために、以下のゾーン関数を選択することが可能である:
【数6】
【0108】
以下の式から分かるように、a及びbは、ライン焦点LF
1及びLF
2の間の横方向及び軸方向の変位を決定する係数である。
図4を参照すると、F
14aがリレー・レンズ14aの焦点距離である場合、レンズ14aと17aとの間における、リレー・レンズ14aの焦点平面の位置に近い領域15aにおいて生じる焦線の間の横方向変位Δx
1は、次式で与えられる:
【数7】
焦線の間の軸方向変位Δz1は、次式で与えられる:
【数8】
【0109】
領域15a内のライン焦点と物体4a内の焦点との間の横方向拡大倍率は、M
15a4a=F
17a/F
7bであり、F
17aはリレー・レンズ17aの焦点距離であり、F
7aはフォーカシング光学系7aの焦点距離であり、光学系7aは、対物レンズを含んでもよいし、又は対物レンズによって形成されてもよい。これは、横方向変位Δx(
図2参照)及び物体4aにおけるライン焦点LF
1とLF
2との間の軸方向変位Δzについて、以下の式を導く:
【数9】
ここで、nは物体4a内の屈折率であり、典型的には、生体サンプルについては水の屈折率に近い。物体4aからセンサ12aまでの倍率ステップは、上述したのと全く同じ方法で取り扱うことができる。横方向倍率は、M
4a12a=F
18a/F
7aであり、F
18aはチューブ・レンズ18aの焦点距離であり、光感知検出部12aの受光表面10aの受光部分SP
1及びSP
2においてライン焦点の横方向変位Δx
2及び軸方向変位z
2を与える。
【数10】
【0110】
受光表面10aに対する法線ベクトルと、検出光が受光表面10aに入射する光軸との間に形成される角度α
2 (
図1の第1実施例で示されている)は、次の条件を満足しなければならない:
【数11】
そして、受光表面10aの光感知検出素子20の隣接するアレイ21,22の間の隔たりであるΔr(第1実施例に関して
図3に示されている)は、次の条件を充足しなければならない(ただし、pは整数である):
【数12】
【0111】
大きなNAのビームがフォーカシング光学系7aによって集束されて物体4a内にライン焦点LF1及びLF2を形成する際に生じる球面収差を補償するために、及び、レンズ製造誤差のような他の原因によって生じる球面収差を補償するために、座標x及びyに依存する高次項を追加することによって、ゾーン関数K(x,y)を改良することが可能である。大きな開口数の対物レンズは複数のレンズ要素を含むことが知られており、レンズ要素の曲率及び/又は厚さの誤差が容易に球面収差を生じさせるような方法で組み立てられる。
【0112】
更なる代替実施例では、回折光学素子13は、フォーカシング光学系7aが、ビームレット8a、9aを、物体4内の複数のライン焦点にフォーカスするように構成される。発明者等は、これが、例えば、上述の位相プロファイルW (x,y)を適合させることによって、回折面内で2回回転対称の位相プロファイルW
ast(y)を加えることによって、達成できることを示しており、その結果、(平面波面を有する)照明光の入射ビーム3aに加えられるトータル位相プロファイルW
tot(x,y)は、
【数13】
次のように表現され、これは複数のポイント焦点を、物体内の複数のライン焦点に変換する。具体的には、2回回転対称性を有する位相プロファイルW
tot(x,y)は、各ビームレットを非点収差にする。上述の多項式W
tot(x,y)は、一意に決定された多項式表現であって、ビーム倍増系5a及び/又はフォーカシング光学系7aの光軸上に及び回折光学素子13aの回折平面内にその原点を有する多項式表現を表す。W
ast(y)は単変量単項式又は単変量多項式であり、W
tot(x,y)の加算成分である。
【0113】
本発明者は、更に、位相プロファイルWast(y)の異なる表現が、線幅及び強度に関して、異なる均一性レベルのライン焦点を生成するために使用できることを示している。
【0114】
具体例として、実施例によれば、位相プロファイルW
ast(y)は、以下の式で表される:
【数14】
ここで、cは定数であるので、W
ast(y)は2次の単変量項である。値c/NAは、実質的にライン焦点の長さに対応するので、ライン焦点の長さの尺度である。Fは、フォーカシング光学系7aの物体側の焦点距離(即ち、物体内のライン焦点に向かって収束する照明光のセクションに対する焦点距離)であり、NAは、物体4における開口数である。本発明者は、更に、上記の位相プロファイルW
ast(y)を用いて、物体4内の各ライン焦点のライン強度が、次式によって説明できることを示している:
【数15】
ここで、λは波長であり、Aは定数であり、sinc(x)は、sinc(x) = sin(x)/x として定義される。x
1はライン焦点の長手方向軸に垂直な座標であり、y
1はライン焦点の長手方向軸に沿った方向の座標である。
【0115】
この式から、ライン焦点の長手方向軸に沿って見る場合に、ピーク強度は、
【数16】
のように変化し、線幅は、
【数17】
のように変化することが分かる。
【0116】
本発明者は、更に、強度及び線幅の変動が低減されるように、回折光学素子13aの位相プロファイルW
ast(y)を適合させることが可能であることを示している。具体例として、本発明者は次のことを示している:
【数18】
という形式を有する位相プロファイルW
ast(y)(即ち、2次及び4次の項から成る単変量多項式)を利用すると、ピーク強度及びライン幅の変動は小さくなる。2wは実質的にライン焦点の長さに等しいので、値wはライン焦点の長さの尺度である。W
ast(y)は、ライン焦点の強度変動及び/又は線幅変動を更に低減するために、2及び4以外の次数の単変量項を含むことが考えられる。
【0117】
この式において、パラメータp(4次の項に対する2次の項の係数比の尺度)は、-3と-10の間の範囲内、又は-4ないし-8の間の範囲内にある。本発明者は、pが-6の値を有する場合に、特に有利な構成が提供されることを示している。
【0118】
本発明者は、更に、追加的又は代替的に、4次の項の係数
【数19】
に対する2次の項の係数
【数20】
の比率(R=C
1/C
2)が、照明光が回折光学素子を横断する位置における、照明光のビーム断面の半径の-1ないし-11倍の間の値を有する場合に、強度及び線幅の小さな変動を得ることができることを示している。半径はFWHM(full width at half maximum)の半分に対応していてもよい。比率がビーム断面の半径の-3ないし-9倍又は-5ないし-7倍の間にある場合には、更に小さな変動を得ることができる。
【0119】
従って、4以上の次数の単変量項又は単変量多項式を含むか、又はそれらを表現する或いは実質的に表現する位相プロファイルWast(y)を使用することによって、ライン焦点の長手方向軸に沿ったより均一な強度及び線幅を得ることができることが、本発明者によって示されている。これは、長手方向軸に沿った画像強度の改善された均一なダイナミック・レンジと同様に、改善された均一な解像度の達成を可能にする。しかしながら、用途に応じて、次数2の単変量項を表すか又は実質的に表す位相プロファイルWast(y)を用いて、撮像系の十分なパフォーマンスを得ることが可能であることも、示されている。
【0120】
ポイント焦点又はライン焦点が物体内で生じる更なる代替的な実施例において、回折光学素子13aは、以下のゾーン関数を有するように構成される:
【数21】
ここで、nはサンプルの屈折率であり、Fは、フォーカシング光学系7aの物体側の焦点距離(即ち、物体内の焦点に向かって収束する照明光のセクションに対する焦点距離)であり、x及びyは、回折光学素子13aの回折平面における座標である。
【0121】
上記のゾーン関数は複数の焦点を生成し、また、フォーカシング光学系7aにより引き起こされる球面収差に対する補正を提供し、その結果、フォーカシング光学系7aは、比較的高い開口数を有するように構成されることが可能であるということが、本発明者によって示されている。
【0122】
具体的には、上記のゾーン関数は、0.25以上、又は0.5以上の物体における開口数を有するように構成されたフォーカシング光学系7aに対する球面収差の補正を可能にすることが、本発明者によって示されている。球面収差は、フォーカシング光学系7aによって、特にフォーカシング光学系の対物レンズによって、少なくとも部分的に引き起こされる可能性がある。換言すれば、回折光学素子13aは、フォーカシング光学系7aの球面収差を少なくとも部分的に補償するように構成され、この場合において、球面収差は、焦点の少なくとも一部の形状及び/又は位置に影響を及ぼす。
【0123】
更に、2つ以上の焦点の形状及び/又は線幅に影響を及ぼす球面収差は、焦点の各々について異なる可能性がある。これは、球面収差の1つの値を補正するように構成された単一の補正器を使用して、すべての焦点の球面収差を補償することを困難にする。しかしながら、1つ以上の回折光学素子を使用することは、特に上記のゾーン関数を使用することによるものは、焦点の各々について異なる量の球面収差の補償を可能にすることを、本発明者は示している。
【0124】
更に、球面収差を補正する上記のゾーン関数は、2回回転対称の位相プロファイルW
ast(y) (特に、単変量位相関数)と組み合わせることができることも、本発明者は示している。具体的には、位相プロファイルW
ast(y)は、位相プロファイルW(x,y)に追加されることが可能である:
【数22】
ここで、K(x,y)は、物体内のライン焦点を生成するW
totを得るためのゾーン関数である:
【数23】
W
ast(y)は、2次以上又は4次以上の単変量項又は単変量多項式であってもよい。
【0125】
本開示はまた、空間的に別々のライン・センサ素子のセットの代わりに、隣接するピクセルの2Dアレイを含む従来の画像センサにも適用することができるが、それは依然としてある角度α
2で傾斜させられる。その場合、横方向変位が、光感知検出素子20の隣接するアレイ21,22(
図3に示されている)の間の距離に合致している、という第2制約を落とすことが可能であり、回折光学素子の設計の自由度を更に1つ提供する。これは走査型共焦点顕微鏡のコスト効率の良い設計を可能にする。
【0126】
以下に説明するように、限られた次数のセットm=m1,...,m2にわたってパワーを分配するプロファイル関数f(t)を選択することが可能であり、ここで、m1及びm2は正又は負の整数であり、その結果、回折光学素子13aに入射する照明光のビーム3aの実質的に全てのパワーが、この回折次数のセットに集中し、好ましくは、回折次数の各々が実質的に等しい量のパワーを受ける。これは、近似的に等しいライン強度の焦点ラインを与えるであろう。
【0127】
具体的には、本発明者等は、プロファイル関数f(t)をパラメータ化し、数値探索アルゴリズムを用いて最適パラメータを発見することによって、適切なプロファイル関数を決定できることを発見している。複数の次数にわたるパワーの対称的な分布を提供するプロファイル関数の場合、即ち、η
m=η
-mである場合、それはf(t)=f(-t)というC
mに対する式に従う。従って、f(t)に適切なパラメータ化は、以下の有限コサイン級数である:
【数24】
【0128】
2N+1個の回折次数にわたるパワーの最適な分布は、η
i=η
i’である場合に得られる:
【数25】
【0129】
コスト関数Zは次のように定義される:
【数26】
ここで、整数M≧Nが使用される。Zの最小値は、一般的な数値探索アルゴリズムを用いて、パラメータc
0,...,c
Kに対して発見することが可能である。初期条件として、c
0=1を除いて、全てのc
jはゼロに設定される。
【0130】
図5は、上述した方法を用いて決定されたプロファイル関数f(t)に関する回折次数(x軸)に対する任意単位の照明光のパワー(y軸)のヒストグラムである。
図5から分かるように、最適なパワー分布は、11ラインに対して得ることが可能であり、パラメータN=5,K=14,M=15を用いた適切な解を提供する。得られるプロファイル関数f(t)は、回折光学素子13a(
図4に示す)に入射する照明光のビーム3aのパワーの87%を、11個の回折次数に集中させる。これら11個の回折次数の各々について、それぞれの回折次数のパワーは、これら11個の回折次数の平均パワー値から5%未満だけ変化する。
【0131】
図6は、第3実施例による顕微鏡撮像系1bの概略図である。
図1ないし5に示される第1及び第2実施例の構成要素と同様である又は対応する撮像系1bの構成要素は、同じ数字を有しているが、混同を避けるために接尾辞文字「b」を後に続けている。
【0132】
顕微鏡撮像系1bのビーム倍増系5bは、屈折光学ユニット25b,26bのアレイ19bを含み、各アレイは、ソース2bによって提供される照明光のビーム3bの別々の部分を受けている。屈折光学ユニット25b,26bの各々は、照明光のビーム3bの各自の部分をフォーカスするように構成され、それによって、ビームレット8b,9bのうちの1つを形成する。屈折光学ユニット25b,26bの各々は、シリンダー・レンズとして構成される。屈折光学ユニット25b,26bの各々について、それぞれの屈折光学ユニット25b,26bの光軸は、アレイ19bに入射する照明光のビーム3bのビーム軸に対して傾斜している。
【0133】
それぞれの屈折光学ユニット25b,26bを出るビームレット8b,9bの各々は、それぞれの屈折光学ユニット25b,26bによってフォーカスされて、アレイ19bと適応光学系24bとの間の領域内でライン焦点を形成し、その結果、ライン焦点は、軸方向距離Δz3及び横方向距離Δx3だけ互いから相対的に変位させられる。撮像系1bは、屈折光学素子に依存しないので、光源2bとしてハロゲン・ランプを使用することが可能である。屈折光学ユニット25b及び26bのアレイ19bと適応光学系24bとの間の領域内の焦点は、物体4b内のライン焦点LF1及びLF2の位置に光学的に共役な場所に位置する。
【0134】
上記の実施例で説明される顕微鏡撮像系は、走査型共焦点顕微鏡システムとして構成されるが、本発明は、そのようなシステムに限定されないことが理解されるべきである。具体的には、本開示の教示は、走査機能を提供しない、及び/又は共焦点検出に依存しない顕微鏡システムに使用されることが考えられる。具体例として、顕微鏡撮像系は、異なる深さに位置する、物体内の2つの選択された位置における反射率及び/又は蛍光発光を検査するように構成されることが可能であり、その結果、走査機能は必要とされない。また、軸方向分解能について要件が低い場合には、検出光の共焦点フィルタリングを使用せずに、検出光を検出することが考えられる。
【0135】
説明された上記の実施形態は、単に例示的であるに過ぎず、本発明の技術的アプローチを制限するようには意図されていない。本発明は、好ましい実施形態を参照して詳細に説明されているが、当業者は、本発明の技術的アプローチが、本発明のクレームの保護範囲から逸脱することなく、修正され又は均等に置き換えられ得ることを理解するであろう。クレームにおいて、「備えている」という言葉は、他の要素又はステップを排除しておらず、「ある」という不定冠詞的な語は複数を排除していない。クレーム中の如何なる参照符号も、その範囲を限定するように解釈されるべきではない。