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  • 特許-ローリングダイアフラムポンプ 図1
  • 特許-ローリングダイアフラムポンプ 図2
  • 特許-ローリングダイアフラムポンプ 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】ローリングダイアフラムポンプ
(51)【国際特許分類】
   F04B 43/02 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
F04B43/02 C
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021515810
(86)(22)【出願日】2020-02-07
(86)【国際出願番号】 JP2020004978
(87)【国際公開番号】W WO2020217647
(87)【国際公開日】2020-10-29
【審査請求日】2022-12-07
(31)【優先権主張番号】P 2019081454
(32)【優先日】2019-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229737
【氏名又は名称】日本ピラー工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】手嶋 一清
(72)【発明者】
【氏名】能登路 裕
(72)【発明者】
【氏名】樋口 慎悟
【審査官】山崎 孔徳
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-198095(JP,A)
【文献】実開昭59-020059(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 43/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
前記ハウジング内にポンプ室を区画形成する合成樹脂製のローリングダイアフラムと、
前記ハウジング内に前記ローリングダイアフラムと共に往復移動可能に配置されたピストンと、を備え、
前記ピストンの往復移動に伴う前記ローリングダイアフラムの屈曲運動により前記ポンプ室内の容積を変化させることで移送流体を吸入および吐出するダイアフラムポンプであって、
前記ローリングダイアフラムは、前記ピストンと一体に往復移動可能な可動部と、前記ハウジングに固定された固定部と、前記可動部と前記固定部とを繋ぎ前記ピストンの往復移動により屈曲する薄膜部と、を有し、
前記薄膜部には、ゴム層が接着することなく重ねられており、
前記ゴム層の前記可動部側の端部が前記ピストンに固定され、前記ゴム層の前記固定部側の端部が前記ハウジングに固定されており
前記ゴム層における前記可動部側の端部と前記固定部側の端部との間の部分は、前記ピストンの往復移動により前記薄膜部に沿いながら屈曲する、ローリングダイアフラムポンプ。
【請求項2】
前記薄膜部には、当該薄膜部と前記ゴム層との間の空気を外部に排出するための貫通孔が形成されている、請求項1に記載のローリングダイアフラムポンプ。
【請求項3】
前記貫通孔は、前記薄膜部における前記固定部の近傍に形成されている、請求項2に記載のローリングダイアフラムポンプ。
【請求項4】
前記貫通孔は、前記薄膜部に複数形成されている、請求項2又は3に記載のローリングダイアフラムポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ローリングダイアフラムポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、半導体、液晶、有機EL、太陽電池等の製造プロセスにおいて、薬液を塗布又は調合するときに当該薬液を送給させるポンプとして、耐薬性に優れたローリングダイアフラムポンプが用いられている。このローリングダイアフラムポンプは、シリンダ内においてピストンを往復移動させると、合成樹脂製のローリングダイアフラムが屈曲運動してポンプ室(圧力室)内の容積が変化することで、薬液をポンプ室内に吸い込んで吐出するようになっている。
【0003】
前記合成樹脂製のローリングダイアフラムは、ピストンの往復移動に対する追従性が悪いため、屈曲運動中に屈曲部分以外の箇所でシワが発生して破れるおそれがある。
そこで、特許文献1では、減圧装置を用いてローリングダイアフラムをピストン及びハウジングに確実に密着させることで、前記シワの発生を抑制している。また、特許文献2では、合成樹脂製のローリングダイアフラムの表面にゴム層を接着(コーティング)させることにより、前記シワの発生を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2015-98855号公報
【文献】特開2018-25251号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1では、ローリングダイアフラムをピストン等に密着させるための減圧装置が必要となり、コスト高となる。また、特許文献2では、ローリングダイアフラムにゴム層を接着し易くするために、ローリングダイアフラムに対して表面改質処理を行う必要があり、この場合もコスト高となる。
【0006】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたものであり、安価な構成でローリングダイアフラムにシワが発生するのを抑制できるローリングダイアフラムポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
(1)本発明者らは、ゴム層によりローリングダイアフラムにおけるシワの発生を抑制できるメカニズムについて鋭意研究を重ねた。その結果、ローリングダイアフラムの屈曲部分において、テンションが掛かったゴム層の強い復元力によって、その屈曲部分を屈曲させようとする外力が、非屈曲部分のシワを生じさせる外力よりも大きくなり、非屈曲部分でのシワの発生が抑制されることを見出した。そして、前記屈曲させようとする外力と前記シワを生じさせる外力との力関係は、ローリングダイアフラムにゴム層を接着させなくても変化しないという知見を得、かかる知見に基づいて本発明を完成させた。
【0008】
すなわち、本発明のローリングダイアフラムポンプは、ハウジングと、前記ハウジング内にポンプ室を区画形成する合成樹脂製のローリングダイアフラムと、前記ハウジング内に前記ローリングダイアフラムと共に往復移動可能に配置されたピストンと、を備え、前記ピストンの往復移動に伴う前記ローリングダイアフラムの屈曲運動により前記ポンプ室内の容積を変化させることで移送流体を吸入および吐出するダイアフラムポンプであって、前記ローリングダイアフラムは、前記ピストンと一体に往復移動可能な可動部と、前記ハウジングに固定された固定部と、前記可動部と前記固定部とを繋ぎ前記ピストンの往復移動により屈曲する薄膜部と、を有し、前記薄膜部には、ゴム層が接着することなく重ねられており、前記ゴム層の前記可動部側の端部が前記ピストンに固定され、前記ゴム層の前記固定部側の端部が前記ハウジングに固定されている。
【0009】
本発明によれば、ローリングダイアフラムにおいて屈曲する薄膜部にゴム層が重ねられているので、ローリングダイアフラムにシワが発生するのを抑制することができる。また、前記ゴム層は、薄膜部に接着することなく重ねられているので、従来のローリングダイアフラムにゴム層を接着させる場合に比べて、安価な構成で前記シワの発生を抑制することができる。
【0010】
(2)前記薄膜部には、当該薄膜部と前記ゴム層との間の空気を外部に排出するための貫通孔が形成されているのが好ましい。
この場合、薄膜部に形成された貫通孔により、薄膜部とゴム層との間の空気を外部に排出することができるので、薄膜部とゴム層との間に空気が閉じ込められることに起因して薄膜部が塑性変形するのを抑制することができる。
【0011】
(3)前記貫通孔は、前記薄膜部における前記固定部の近傍に形成されているのが好ましい。
薄膜部とゴム層との間の空気は、薄膜部の屈曲運動中に固定部の近傍に集約されるので、薄膜部における固定部の近傍に貫通孔を形成することで、固定部の近傍に集約された空気を効率的に外部に排出することができる。
【0012】
(4)前記貫通孔は、前記薄膜部に複数形成されているのが好ましい。
この場合、薄膜部に形成された複数の貫通孔により、薄膜部とゴム層との間の空気をより効率的に外部に排出することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、安価な構成でローリングダイアフラムにシワが発生するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係るローリングダイアフラムポンプにおいてピストンが最下位置にある状態を示す断面図である。
図2】ローリングダイアフラムを示す図1の要部拡大断面図である。
図3】ローリングダイアフラムポンプにおいてピストンが最上位置にある状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るローリングダイアフラムポンプの断面図である。ローリングダイアフラムポンプ1は、ハウジング2と、ピストン3と、シャフト4と、ローリングダイアフラム5とを備えている。本実施形態では、ローリングダイアフラムポンプ1(以下、単にポンプ1ともいう)の長手方向(軸方向)を、上下方向に配置しているが、水平方向に配置してもよい。
【0016】
[ハウジングの構成]
ハウジング2は、シリンダ11と、ポンプヘッド12とを有している。シリンダ11は、円筒形状に形成され、軸方向を上下方向として配置されている。ポンプヘッド12は、有蓋円筒形状に形成され、シリンダ11の軸方向上側にその開口を閉塞するように取り付けられている。ポンプヘッド12は、シリンダ11と略同一の内径を有し、シリンダ11と共にピストン3を収容し得る収容空間を構成している。
【0017】
ポンプヘッド12の周壁部には、軸方向と直交する方向に貫通する吸入口15が形成されている。この吸入口15は、薬液等の液体(移送流体)を貯溜する液体タンク(図示省略)に接続されている。ポンプヘッド12の蓋部には、軸方向に貫通する吐出口16が当該蓋部の中心部に位置するように形成されている。この吐出口16は、例えば液体を塗布する噴射ノズル等の液体供給部(図示省略)に接続されている。
【0018】
[ピストンの構成]
ピストン3は、ハウジング2内で当該ハウジング2に対して同軸上に配置されるとともに、ハウジング2の軸方向(上下方向)に往復移動可能に配置されている。本実施形態において、ピストン3は、円柱形状に形成されており、ハウジング2(シリンダ11およびポンプヘッド12)の内径よりも小さい外径を有している。これにより、ピストン3の外周面は、ハウジング2の内周面に対して所定の隙間をあけて対向配置されている。
【0019】
ピストン3は、軸方向上側に開口する第1凹部21と、軸方向下側に開口する第2凹部22とを有している。第1凹部21及び第2凹部22は、それぞれピストン3の中心部に形成され、互いに同軸上に配置されている。第2凹部22には、シャフト4の上端部が嵌合して固定されている。シャフト4の下端部には、ピストン3を最下位置(図1参照)と最上位置(図3参照)との間で軸方向に往復移動させる駆動装置(図示省略)が接続されている。なお、駆動装置は、ステッピングモータと、当該ステッピングモータの回転運動を直線運動に変換して出力する直動機構部とを有している。
【0020】
[ローリングダイアフラムの構成]
図2は、ローリングダイアフラムを示す図1の要部拡大断面図である。ローリングダイアフラム5は、合成樹脂材料(例えば、ポリテトラフロオロエチレン(PTFE)等のフッ素樹脂)からなり、ハウジング2内に収容されている。
【0021】
ローリングダイアフラム5は、ピストン3の軸方向上端部に取り付けられた円形の可動部31と、ハウジング2に取り付けられた環状の固定部32と、可動部31と固定部32とを繋いでいる薄膜部33とを有している。そして、ローリングダイアフラム5は、ハウジング2により位置固定された固定部32に対して、薄膜部33を介して可動部31がピストン3と一体に軸方向に往復移動するように構成されている。
【0022】
固定部32は、シリンダ11の上面に形成された環状の凹部11aに嵌め込まれた状態で、ポンプヘッド12の下端部に形成されたフランジ部12aにより下方に押し付けられた状態で保持されている。これにより、固定部32は、シリンダ11とポンプヘッド12との間においてハウジング2に固定されている。
【0023】
可動部31は、ピストン3と略同一の外径を有する円板部31aと、円板部31aの下面から下方に向かって同軸上に突出する円柱部31bとを有している。円柱部31bは、ピストン3の第1凹部21に嵌合して固定されている。これにより、可動部31は、ピストン3と同軸上に配置され、ピストン3と共に往復移動する。
【0024】
薄膜部33は、固定部32の内周端と、可動部31の外周端とを繋いでいる。また、薄膜部33は、薄膜状(薄肉)に形成されることで、可撓性を有している。一方、可動部31及び固定部32は、剛性を有するように、薄膜部33よりも十分に厚い厚肉に形成されている。なお、以下では、薄膜部33におけるポンプ室7(後述)に接する面を外周面といい、薄膜部33におけるポンプ室7に接しない面を内周面という。
【0025】
本実施形態のローリングダイアフラム5には、可動部31の円板部31aの下面から、薄膜部33の内周面を介して、固定部32の下面に至るまで、ゴム層6が接着することなく重ねられている。以下、ゴム層6における薄膜部33の内周面に接する面を外面といい、ゴム層6における薄膜部33の内周面に接しない面を内面という。
ゴム層6は、伸縮性(ゴム弾性)を備えている。ゴム層6の材質は、天然ゴム、合成ゴム等の熱硬化性エラストマーのほか、ポリウレタン系樹脂等の熱可塑性エラストマーであってもよい。
【0026】
ゴム層6の円板部31a側の端部6aは、円柱部31bがピストン3の第1凹部21に嵌合されることによって、円板部31aの下面とピストン3の上面との間に挟持された状態で保持されている。これにより、ゴム層6の端部6aは、ピストン3に固定されている。
【0027】
ゴム層6の固定部32側の端部6bは、固定部32と共にシリンダ11の凹部11aに嵌め込まれた状態で、ポンプヘッド12のフランジ部12aにより固定部32が下方に押し付けられることで、固定部32の下面と凹部11aの底面との間に挟持された状態で保持されている。これにより、ゴム層6の端部6bは、ハウジング2に固定されている。
【0028】
ピストン3が図2に示す最下位置(図1も参照)にあるとき、薄膜部33及びゴム層6は、ピストン3の外周面とシリンダ11の内周面との間で断面U字状に屈曲している。具体的には、薄膜部33及びゴム層6は、可動部31の外周端からピストン3の外周面に沿って下側に少し延び、その下端部から径方向外側に屈曲して、シリンダ11の内周面に沿って固定部32の内周端まで上側に延びている。この状態において、ゴム層6の径方向外側に屈曲された内面の大部分は、シリンダ11の内周面に密着している。
【0029】
図3は、ピストン3が最上位置にある状態のポンプを示す断面図である。図3に示すように、ピストン3が最上位置まで移動すると、薄膜部33及びゴム層6は、ピストン3の外周面に沿った円筒形状に変形する。この状態において、ゴム層6の内面の大部分は、ピストン3の外周面に密着している。
【0030】
図1及び図3において、ポンプ1のハウジング2内は、ローリングダイアフラム5によってポンプ室7が区画形成されている。具体的には、ポンプ室7は、ローリングダイアフラム5により、ハウジング2内のローリングダイアフラム5よりも軸方向上側に区画形成されており、ポンプヘッド12の吸入口15及び吐出口16のそれぞれと連通している。ポンプ室7は、ピストン3の往復移動に伴うローリングダイアフラム5の屈曲運動によって、室内の容積が変化するようになっている。
【0031】
[ポンプの駆動方法]
以上の構成により、ポンプ1では、前記駆動装置により、ピストン3が軸方向上側に往移動する吐出工程と、ピストン3が軸方向下側に復移動する吸込工程とが交互に繰り返し行われる。これにより、液体タンク等に貯溜された液体を、ポンプ1から液体供給部に供給することができる。
【0032】
具体的には、吸込工程において、ピストン3の復移動に追従してローリングダイアフラム5の可動部31が下方へ移動する(図3に示す状態から図1に示す状態に変化する)。その過程で、ローリングダイアフラム5の薄膜部33及びゴム層6は、ピストン3の外周面とシリンダ11の内周面との隙間で屈曲し、その屈曲位置が下方へ変位するようにローリングした後、シリンダ11の内周面にゴム層6の内面の大部分が密着した状態となる。これにより、ポンプ室7の容積が拡大するので、液体タンク内の液体が吸入口15を通じてポンプ室7に吸い込まれる。
【0033】
そして、吐出工程においては、ピストン3の往移動に追従してローリングダイアフラム5の可動部31が上方へ移動する(図1に示す状態から図3に示す状態に変化する)。その過程で、ローリングダイアフラム5の薄膜部33及びゴム層6は、ピストン3の外周面とシリンダ11の内周面との隙間での屈曲位置が上方へ変位するようにローリングした後、ピストン3の外周面にゴム層6の内面の大部分が密着した状態となる。これにより、ポンプ室7の容積が縮小するので、ポンプ室7内の液体が吐出口16から吐出される。
【0034】
吸込工程および吐出工程における薄膜部33の屈曲部分では、図1に示すように、ゴム層6が図中の矢印a方向及び矢印b方向に引っ張られることで、ゴム層6の屈曲部分にテンションが掛かる。そうすると、薄膜部33の屈曲部分には、ゴム層6の屈曲部分における強い復元力により、図中の白抜き矢印の方向に押される力、つまり薄膜部33を屈曲させようとする外力が作用する。これにより、薄膜部33の屈曲部分を屈曲させようとする外力は、薄膜部33の非屈曲部分(図1ではシリンダ11の内周面に沿う直線部分)に作用するシワを生じさせる外力よりも大きくなる。従って、吸込工程および吐出工程において、薄膜部33に重ねられたゴム層6により、薄膜部33の非屈曲部分でのシワの発生を抑制することができる。
【0035】
ところで、ポンプ1の製造時において、ローリングダイアフラム5にゴム層6を重ねたときに、薄膜部33とゴム層6との間に空気が入り込む場合がある。この場合、ポンプ1の吐出工程(図1参照)においてピストン3が最下位置から上方へ移動するときに、薄膜部33とゴム層6との間の空気は、薄膜部33の上方へ変位する屈曲位置と固定部32との間に閉じ込められて徐々に上方へ移動する。そして、薄膜部33の屈曲位置が固定部32に近づいたときに、前記閉じ込められた空気は、固定部32の近傍に集約され、逃げ場を失うことによって膨張する。そうすると、薄膜部33は、膨張した空気に強く押されることによって塑性変形するおそれがある。
【0036】
そこで、薄膜部33には、薄膜部33とゴム層6との間に入り込んだ空気を外部に排出するための貫通孔34が形成されている。本実施形態の貫通孔34は、薄膜部33における固定部32の近傍において、固定部32の周方向に所定間隔をあけて複数形成されている。これにより、ポンプ1の吐出工程において、薄膜部33の屈曲位置が上方へ変位することで、薄膜部33とゴム層6との間の空気を複数の貫通孔34から外部に排出することができる。
【0037】
[作用効果]
以上、本実施形態のローリングダイアフラムポンプ1によれば、ローリングダイアフラム5において屈曲する薄膜部33にゴム層6が重ねられているので、ローリングダイアフラム5にシワが発生するのを抑制することができる。また、ゴム層6は、薄膜部33に接着することなく重ねられているので、従来のローリングダイアフラムにゴム層を接着させる場合に比べて、安価な構成で前記シワの発生を抑制することができる。
【0038】
また、薄膜部33に形成された貫通孔34により、薄膜部33とゴム層6との間の空気を外部に排出することができるので、薄膜部33とゴム層6との間に空気が閉じ込められることに起因して薄膜部33が塑性変形するのを抑制することができる。
【0039】
また、貫通孔34は、薄膜部33における固定部32の近傍に形成されているので、固定部32の近傍に集約された空気を、貫通孔34から効率的に外部に排出することができる。また、薄膜部33に形成された複数の貫通孔34により、薄膜部33とゴム層6との間の空気をより効率的に外部に排出することができる。
【0040】
[その他]
前記実施形態のゴム層6の端部6aは、ローリングダイアフラム5の可動部31(円板部31a)と共にピストン3に固定されているが、可動部31とは別にピストン3に固定されていてもよい。同様に、ゴム層6の端部6bは、ローリングダイアフラム5の固定部32と共にハウジング2に固定されているが、固定部32とは別にハウジング2に固定されていてもよい。
【0041】
前記実施形態のローリングダイアフラム5の薄膜部33には、薄膜部33とゴム層6との間の空気を外部に排出するための貫通孔34が形成されているが、薄膜部33とゴム層6との間に空気が入り込まない場合には、貫通孔34を形成しなくてもよい。
【0042】
今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した意味ではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味、及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0043】
1 ローリングダイアフラムポンプ
2 ハウジング
3 ピストン
5 ローリングダイアフラム
6 ゴム層
6a 端部
6b 端部
7 ポンプ室
31 可動部
32 固定部
33 薄膜部
34 貫通孔
図1
図2
図3