(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】薬剤送達の方法及びシステム
(51)【国際特許分類】
A61M 35/00 20060101AFI20240116BHJP
A61M 5/142 20060101ALI20240116BHJP
A61M 5/145 20060101ALI20240116BHJP
A61M 5/168 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
A61M35/00
A61M5/142 522
A61M5/145 508
A61M5/168 500
A61M5/145 504
(21)【出願番号】P 2021517561
(86)(22)【出願日】2019-05-29
(86)【国際出願番号】 US2019034432
(87)【国際公開番号】W WO2019232077
(87)【国際公開日】2019-12-05
【審査請求日】2022-05-27
(32)【優先日】2018-05-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】520466951
【氏名又は名称】モーニングサイド ベンチャー インベストメンツ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】MORNINGSIDE VENTURE INVESTMENTS LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】トング,リン-カン
(72)【発明者】
【氏名】バックマン,ダニエラ,テイマー
(72)【発明者】
【氏名】ハンコック,ジャッキー,ジョー
(72)【発明者】
【氏名】ターズリー,ニコラス
【審査官】鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-511355(JP,A)
【文献】特表2007-509661(JP,A)
【文献】特表2013-516239(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0271020(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 35/00
A61M 5/142
A61M 5/145
A61M 5/168
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
2つの部分からなる生物活性剤送達システムであって、
使い捨て部分であって、
薬剤リザーバと、
前記薬剤リザーバと連通していて、前記生物活性剤を使用者に経皮送達するように適合された経皮パッチであって、前記使用者の皮膚と接触するように適合された底面と、前記底面の反対側にある上面と、を有する前記経皮パッチと、
前記経皮パッチの前記上面の上に配置されたガス透過性膜と、
を含む前記使い捨て部分と、
電源及び制御電子回路を含む再利用可能部分であって、前記制御電子回路は、溶媒に溶けた生物活性剤を前記薬剤リザーバから前記経皮パッチまで送達するように適合されている、前記再利用可能部分と、
気体溶媒が前記ガス透過性膜から前記生物活性剤送達システムの周囲の大気中に流れる為の流路を形成する、前記使い捨て部分と前記再利用可能部分との間に配置されたギャップを含む溶媒除去要素と、を
含み、
前記ギャップは、前記使い捨て部分と前記再利用可能部分とが解放可能に係合された場合に形成される、
システム。
【請求項2】
前記ギャップは、
前記使い捨て部分と前記再利用可能部分との間を平行に延びる、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記ギャップは、前記使い捨て部分と前記再利用可能部分との間に配置されたスペーサによって維持される、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記スペーサは前記使い捨て部分から延びる、請求項3に記載のシステム。
【請求項5】
前記スペーサは前記再利用可能部分から延びる、請求項3に記載のシステム。
【請求項6】
前記再利用可能部分又は前記使い捨て部分の外面に形成された少なくとも1つの排水ポートを更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項7】
前記使い捨て部分は更に、前記薬剤リザーバ及び前記経皮パッチと連通している薬剤出口を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記薬剤出口は、前記溶媒に溶けた前記生物活性剤を、前記経皮パッチと前記ガス透過性膜との間のスペースに供給するように構成されている、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記薬剤リザーバは、チャンバ内に可動に配置されたピストンを含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項10】
前記薬剤リザーバピストンと表面との間を延びるばねを更に含み、前記ばねは、前記ばねが圧縮されて、前記薬剤リザーバが大量の生物活性剤溶液を収容しているときに前記薬剤リザーバを加圧する、請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
前記薬剤リザーバ及び薬剤出口と連通しているボーラスチャンバを更に含み、前記ボーラスチャンバは、チャンバ内に可動に配置されたピストンを含み、前記ボーラスチャンバの容積は前記薬剤リザーバの容積より小さい、請求項9に記載のシステム。
【請求項12】
弁を更に含み、前記弁は、第1の位置において前記薬剤リザーバと前記ボーラスチャンバとを連通させ、第2の位置において前記ボーラスチャンバと前記薬剤出口とを連通させる、請求項11に記載のシステム。
【請求項13】
前記再利用可能部分は弁駆動部を含み、前記制御電子回路は、生物活性剤溶液を、前記薬剤リザーバから前記ボーラスチャンバまで、並びに前記ボーラスチャンバから前記薬剤出口まで送達するように前記弁が作動するよう、前記弁駆動部を制御するように適合されている、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記ボーラスチャンバピストンと表面との間を延びるばねを更に含み、前記ばねは、前記ばねが圧縮されて、前記ボーラスチャンバが大量の生物活性剤溶液を収容しているときに前記ボーラスチャンバを加圧する、請求項9に記載のシステム。
【請求項15】
前記使い捨て部分を前記再利用可能部分に取り外し可能に取り付けるように適合されたラッチを更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項16】
前記ラッチは、前記システムの一方の側面に配置されており、前記システムの第2の側面に沿ってレールが配置されており、前記使い捨て部分と前記再利用可能部分は、前記ラッチが活性化されて前記使い捨て部分が前記再利用可能部分に取り付けられるまで、前記レールに沿って互いに対して摺動するように構成されている、請求項15に記載のシステム。
【請求項17】
前記使い捨て部分と前記再利用可能部分との間の接続を検出するように適合された接続検出器を更に含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項18】
前記接続検出器は磁石を含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記磁石は前記使い捨て部分内に配置されている、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記磁石は前記再利用可能部分内に配置されている、請求項18に記載のシステム。
【請求項21】
前記接続検出器は更に、磁気抵抗スイッチを含む、請求項18に記載のシス
テム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年5月29日に出願された米国特許仮出願第62/677,494号の優先権を主張するものであり、その全内容が参照により本明細書に含まれている。
【0002】
本出願は又、2017年9月8日に出願された米国特許出願第15/699,382号にも関連している可能性があり、その全内容が参照により本明細書に含まれている。
連邦支援研究についての陳述
【0003】
本発明は、米国国立衛生研究所から与えられた契約番号第2R22CA171786-04号による政府支援を受けて成された。米国政府は本発明における一定の権利を有する。
【0004】
文献の引用
本明細書中において言及される全ての公表文献及び特許出願は、それぞれ個々の公表文献又は特許出願が参照により具体的且つ個別に示されて組み込まれるのと同程度に、参照により完全な形で本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0005】
医薬品が人々に投与されるのは、人々の健康状態を様々な理由で管理又は改善する為であり(例えば、糖尿病、パーキンソン病、潰瘍性結腸炎等の症状や疾患の予防又は治療の為)、或いはニコチンその他の中毒や依存症を管理する為であり、或いは疼痛を管理する為である。
【0006】
医薬品には、体で急速に代謝されるものがある。その為、所望の効果を得る為には、一定期間にわたって薬剤を複数回投与することがしばしば必要になる。医薬品は、所望の予防効果又は治療効果があるだけでなく、体に有害な副作用がある場合もあり、そのような副作用は、刺激性のあるものから生命を脅かすものまでありうる。更に、人の体は、薬剤に対する耐性ができる場合があり、ある程度の期間にわたって薬剤を摂取すると、薬剤に対する反応が低下し、効果を得る為に、より高用量が必要になって、結果として薬剤の使用量が増え、副作用も増える可能性がある。従って、薬剤を摂取する人にとっては、耐性及び他の望ましくない副作用を防ぐか最小限に抑える為に薬剤の摂取量を最小限に抑えながらも薬剤の所望の治療効果を享受することが有益である。
【0007】
たばこの使用(喫煙等)は深刻な健康問題を引き起こし、早死ににつながるおそれがある。米国疾病管理センター(CDC)によれば、たばこの使用は、年間500万件を超える死亡の原因になっており、がん、糖尿病、心疾患、肺疾患(気管支炎、慢性気道破壊、気腫)、脳卒中等のような深刻な病気の発症の一因となる。人々のたばこ使用をやめさせたり阻んだりする為の禁煙広告キャンペーン、法制化、課税、及び禁煙グッズ開発にもかかわらず、たばこ販売は数十億ドル産業を存続させており、推定で年間350億ドルの利益を生み出している。たばこは、まず、一時的に心地よい、身体的な効果や気分を変える効果を引き起こす。そして、たばこにはニコチンが含まれる為、人がたばこ製品の使用をやめるのは難しい。ニコチンは中毒性が高く、ニコチンを摂取しないと激しい離脱症状が起こる。人がニコチン中毒を克服して禁煙することは非常に難しい。
【0008】
たばこ使用者は、医薬品の摂取がニコチン中毒の克服に役立つ可能性がある。禁煙を支援する幾つかの製品は、離脱症状を最小限に抑えて、人を徐々にニコチン中毒から引き離す為に、少量のニコチンを医薬品として含有する。ニコチン等の禁煙用医薬品は、ニコチンが減ったことに適応する時間を体に与える為に、長期間にわたって(しばしば何か月にもわたって)摂取しなければならない。禁煙製品を含む医薬品、医療機器等の製品は、米国では食品医薬品局(FDA)によって規制されている。市場にある、FDAが承認した禁煙支援製品には、医師の処方を必要とする様々な医薬品と市販の製品が含まれる。これらの製品には、カプセル又は錠剤、ガム、吸入器、薬用ドロップ、鼻腔用スプレー、及び皮膚パッチが含まれる。従って、これらの製品は、人々を禁煙させるにはおよそ不十分であった。即ち、成人喫煙者の68. %が禁煙したいと言い、毎年42.7%ほどが禁煙を試みて失敗している。
【0009】
既存の禁煙製品及び他の、健康問題に対する治療処置及び予防処置には様々な問題点がある。それらの使用は、不便であったり、人目がはばかられたりする場合がある。それらは、過剰摂取を防ぐ為に、それらをいつ、どれだけ使用したかについての念入り且つ面倒な追跡が必要となる場合がある。それらは、投与されてから働くまでに時間がかかりすぎて、必要なときに所望の効果が得られない可能性がある。それらは、必要なときに(例えば、就寝中に)すぐに利用できない場合がある。様々な病状又は他の状態を予防又は治療することに全面的に有効だったものはなく、喫煙は、依然として重大な健康問題であり社会問題である。
【0010】
そこで、生物活性剤(例えば、禁煙補助薬)用の新規且つ改良された薬剤送達システムが必要とされている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、上記従来の技術における課題を解決するためになされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
全般的に、一実施形態では、2つの部分からなる生物活性剤送達システムが、使い捨て部分、再利用可能部分、及び溶媒除去要素を含む。使い捨て部分は薬剤リザーバ及び経皮パッチを含み、経皮パッチは、薬剤リザーバと連通しており、生物活性剤を使用者に経皮送達するように適合されている。経皮パッチは、使用者の皮膚に接触するように適合された底面と、底面の反対側の上面と、経皮パッチの上面の上に配置されたガス透過性膜と、を有する。再利用可能部分は電源及び制御電子回路を含み、制御電子回路は、溶媒に溶けた生物活性剤を薬剤リザーバから経皮パッチまで送達するように適合されている。溶媒除去要素は、気体溶媒がガス透過性膜から生物活性剤送達システムの周囲の大気中に流れる為の流路を形成する、使い捨て部分と再利用可能部分との間に配置されたギャップを含む。
【0013】
本実施形態及び他の任意の実施形態は、以下の要素のうちの1つ以上を含んでよい。ギャップは、平行な、使い捨て部分上のフィーチャと再利用可能部分上のフィーチャとの間を延びてよい。ギャップは、使い捨て部分と再利用可能部分とが解放可能に係合された場合に形成されてよい。ギャップは、使い捨て部分と再利用可能部分との間に配置されたスペーサによって維持されてよい。スペーサは、使い捨て部分から延びてよい。スペーサは、再利用可能部分から延びてよい。本システムは更に、再利用可能部分又は使い捨て部分の外面に形成された少なくとも1つの排水ポートを含んでよい。使い捨て部分は更に、薬剤リザーバ及び経皮パッチと連通している薬剤出口を含んでよい。薬剤出口は、溶媒に溶けた生物活性剤を、経皮パッチと蒸気透過性膜との間のスペースに供給するように構成されてよい。薬剤リザーバは、チャンバ内に可動に配置されたピストンを含んでよい。本システムは更に、薬剤リザーバピストンと表面との間を延びるばねを含んでよく、このばねは、このばねが圧縮されて、薬剤リザーバが大量の生物活性剤溶液を収容しているときに薬剤リザーバを加圧する。本システムは更に、薬剤リザーバ及び薬剤出口と連通しているボーラスチャンバを含んでよく、ボーラスチャンバは、チャンバ内に可動に配置されたピストンを含んでよい。ボーラスチャンバの容積は薬剤リザーバの容積より小さくてよい。本システムは更に、弁を含んでよく、この弁は、第1の位置において薬剤リザーバとボーラスチャンバとを連通させ、第2の位置においてボーラスチャンバと薬剤出口とを連通させる。再利用可能部分は弁駆動部を含んでよく、制御電子回路は、生物活性剤溶液を、薬剤リザーバからボーラスチャンバまで、並びにボーラスチャンバから薬剤出口まで送達するように弁が作動するよう、弁駆動部を制御するように適合されてよい。本システムは更に、ボーラスチャンバピストンと表面との間を延びるばねを含んでよく、このばねは、このばねが圧縮されて、ボーラスチャンバが大量の生物活性剤溶液を収容しているときにボーラスチャンバを加圧する。本システムは更に、使い捨て部分を再利用可能部分に取り外し可能に取り付けるように適合されたラッチを含んでよい。ラッチは、本システムの一方の側面に配置されてよく、本システムの第2の側面に沿ってレールが配置されてよい。使い捨て部分と再利用可能部分は、ラッチが活性化されて使い捨て部分が再利用可能部分に取り付けられるまで、レールに沿って互いに対して摺動するように構成されてよい。本システムは更に、使い捨て部分と再利用可能部分との間の接続を検出するように適合された接続検出器を含んでよい。接続検出器は磁石を含んでよい。磁石は使い捨て部分内に配置されてよい。磁石は再利用可能部分内に配置されてよい。接続検出器は更に、磁気抵抗スイッチを含んでよい。
【0014】
全般的に、一実施形態では、生物活性剤を送達する方法が、送達システムの再利用可能部分を送達システムの使い捨て部分に接続して、再利用可能部分と使い捨て部分との間に流路を形成するステップと、溶媒に溶けた生物活性剤を、使い捨て部分のリザーバから使い捨て部分の経皮膜に送達するステップと、溶媒が経皮膜から蒸発し、ガス透過性膜を通り、流路に沿って、送達システムの周囲の大気中に流れることを可能にするステップと、を含む。
【0015】
本実施形態及び他の任意の実施形態は、以下の要素のうちの1つ以上を含んでよい。本方法は更に、経皮膜を使用者の皮膚に貼り付けるステップを含んでよい。本方法は更に、生物活性剤を皮膚に送達するステップを含んでよい。上記送達するステップは、溶媒に溶けた生物活性剤の、リザーバから経皮膜への移動を、再利用可能部分により制御するステップを含んでよい。上記制御するステップは、弁を作動させることを含んでよい。本方法は更に、使い捨て部分と再利用可能部分との間の接続を検出するステップを含んでよい。上記検出するステップは、磁界を検知することを含んでよい。
【0016】
後述の特許請求の範囲において、本発明の新規な特徴を具体的に説明する。本発明の原理が利用される例示的実施形態を説明する後述の詳細説明と、以下の添付図面とを参照することにより、本発明の特徴及び利点がよりよく理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】一実施形態による、2つの部分からなる生物活性剤送達システムの斜視図である。
【
図2】一実施形態による、一部が接続されている2つの部分からなる生物活性剤送達システムの斜視図である。
【
図3】
図1又は
図2の、2つの部分からなる生物活性剤送達システムの使い捨て部分の一部の斜視図である。
【
図4】
図1又は
図2の、2つの部分からなる生物活性剤送達システムの使い捨て部分の分解図である。
【
図5】
図1又は
図2の、2つの部分からなる生物活性剤送達システムの使い捨て部分のシャーシの側面図である。
【
図6】
図1又は
図2の、2つの部分からなる生物活性剤送達システムの側面図である。
【
図7】
図1又は
図2の、2つの部分からなる生物活性剤送達システムの再利用可能部分の分解図である。
【
図8】一実施形態による、2つの部分からなる生物活性剤送達システムの為の接続センサを示す図である。
【
図9】一実施形態による、一部が接続されている2つの部分からなる生物活性剤送達システムの斜視図である。
【
図10】
図9の、2つの部分からなる生物活性剤送達システムの斜視図である。
【
図11】
図9の、2つの部分からなる生物活性剤送達システムの使い捨て部分の上面図である。
【
図12】
図9の、2つの部分からなる生物活性剤送達システムの再利用可能部分の上面図である。
【
図13】
図9の、2つの部分からなる生物活性剤送達システムの上面図である。
【
図16】一部が接続されている、
図9の、2つの部分からなる生物活性剤送達システムの別の斜視図である。
【
図17】
図9の、2つの部分からなる生物活性剤送達システムの別の斜視図である。
【
図18】
図9の、2つの部分からなる生物活性剤送達システムのシャーシの上面図である。
【
図19C】
図9の、2つの部分からなる生物活性剤送達システムの側面図である。
【
図20C】
図9の、2つの部分からなる生物活性剤送達システムの使い捨て部分の斜視図である。
【
図21A】
図9の、2つの部分からなる生物活性剤送達システムの使い捨て部分の別の斜視図である。
【
図22】
図9の、2つの部分からなる生物活性剤送達システムの再利用可能部分の分解図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書では、生物活性剤を送達する為のシステム及び方法について記載する。本システムは2つの部分を含んでよい。それは使い捨て部分と再利用可能部分である。使い捨て部分は、生物活性剤、及び生物活性剤と接触するシステム部分を含んでよく、再利用可能部分は、生物活性剤、及び生物活性剤と接触するシステム部分を収容しなくてよい。
【0019】
幾つかの実施形態では、使い捨て部分は、薬剤リザーバと、ボーラスチャンバと、リザーバとボーラスチャンバ及びボーラスチャンバと出口を交互に連通させる弁と、溶媒除去要素と、出口から薬剤を受け取る経皮膜と、を含んでよい。再利用可能部分は、弁駆動部及び制御電子回路を含んでよい。
【0020】
本明細書に記載のこのような生物活性剤送達システムは、生物活性剤の溶液を経皮パッチに送達することが可能である。生物活性剤溶液中の溶媒が溶媒除去要素(例えば、再利用可能部分と使い捨て部分との間のギャップ)を通って経皮パッチから蒸発することによって、パッチから使用者の皮膚内への生物活性剤の渡し方を制御することが可能である。
【0021】
本明細書に記載の生物活性剤送達システムは、使用者の体の表面又は内部の任意の部分に生物活性剤を送達することに役立ちうる。幾つかの特定変形形態では、本明細書に記載の生物活性剤送達システムは、使用者の皮膚に、又は使用者の皮膚を通して皮膚層又は血流に、生物活性剤を局所的又は経皮的に送達することに特に役立ちうる。有効な局所送達又は経皮送達は、完全又は十分に湿潤された皮膚を通して生物活性剤を移送することにより、1回分の生物活性剤を有効にユーザの皮膚まで移送する、本明細書に記載のような皮膚送達膜の使用によって支援されることが可能である。幾つかの変形形態では、生物活性剤送達システムは電子制御式、プログラム可能、ポータブル、及び/又はウェアラブルであってよい。
【0022】
本明細書に記載の生物活性剤送達システムは、治療又は予防の効果を使用者にもたらす為に、固定量の生物活性剤を使用者(例えば、使用者の皮膚)に再現可能に送達することが可能である。幾つかの変形形態では、生物活性剤送達システムは、比較的薄く、静音で、使いやすく、便利である電子制御システムの形で、ウェアラブルであって、固定量の生物活性剤を使用者の皮膚に送達するように構成されてよい。生物活性剤送達システムは、ユーザの体に(例えば、一日、又はそれより短く、又は長く)貼り付けられて、ユーザの皮膚とつながって、ユーザの皮膚を通して生物活性剤を送達するように構成されてよい。
【0023】
本明細書に記載の生物活性剤送達システムは、中毒又は依存症(例えば、薬物中毒)の管理や予防の為に、又は糖尿病等の疾患の管理や予防の為に、又は疼痛の管理や予防の為に、又は別の治療や予防の為に、生物活性剤を使用者に送達することに役立ちうる。本発明のシステム、装置、及び方法は、薬剤又は他の生物活性剤の過剰投与のリスクを最小限に抑える、安全で低コストで便利で使いやすいシステムにより、複数回分の薬剤又は他の生物活性剤を使用者に経時的に送達することに特に役立ちうる。
【0024】
本明細書に記載の生物活性剤送達システムは、1日の間、及び/又は何日もの間に用量又はボーラスを複数回送達するように構成されてよい。ボーラスを複数回送達することは、1回分の生物活性剤(例えば、1回分のニコチン)を、1日のうちの特に渇望又は離脱症状が通常最も問題となる時間帯(又はその前)に送達すること(例えば、起床時の渇望を予防する為に夜間のうちに1回分を送達すること)によって、使用者が渇望又は他の離脱症状を制御することを支援するのに特に役立ちうる。
【0025】
更に、生物活性剤送達システムに使い捨て部分を持たせることにより、システムを比較的小型又は平坦にして装着しやすくすることが可能になりうる。例えば、システムを比較的小型又は平坦にできる理由として、使い捨て部分が、限られた量の生物活性剤だけを収容すればよいこと、及び/又は、再利用可能部分が、再充電されるまで、限られた回数分の送達に十分な力又は電力だけ与えられていればよいことが挙げられる。幾つかの例では、本明細書に記載の生物活性剤送達システムは、厚さが約20mm未満、約16mm未満、約15mm未満、約14mm未満、約13mm未満、約12mm未満、約11mm未満、又は約10mm未満であってよく、長さ又は幅が40mm未満、35mm未満、或いは長さ又は幅が30mm未満であってよい。幾つかの例では、システムは、上部(又は底部)の表面積が1500mm2未満又は1000mm2未満であってよい。この場合の「底部」は、主にシステムのうちの使用者に最も近い部分を意味する。システムが経皮パッチを含む場合、底部は経皮パッチを意味してよく、経皮パッチの皮膚送達部材を意味してよい。皮膚送達部材の一方の面の表面積は、少なくとも100mm2、少なくとも500mm2、少なくとも1500mm2、少なくとも2000mm2、少なくとも2500mm2、少なくとも3000mm2、又はこれらのいずれかの数値未満、又はこれらのいずれかの数値と数値の間であってよい(例えば、少なくとも500mm2であり2000mm2未満であってよい)。
【0026】
図1及び2は、本発明の一実施形態による、2つの部分からなる生物活性剤送達システムを示す。システム10は、使い捨て部分14に接続可能な再利用可能部分12を有する。接着要素16(例えば、接着フォーム等)が使い捨て部分14の周辺部の周囲に延びており、剥がせる剥離ライナ18が接着要素16の接着面を覆っている。使い捨て部分14は更に、使用者に経皮送達される生物活性剤(例えば、ニコチン)の溶液を収容するリザーバ20を有する。再利用可能部分12は、制御電子回路、ユーザインタフェースボタン72、及びLEDモードステータスインジケータ24を有する。使い捨て部分14を再利用可能部分12に接続したり、再利用可能部分12から切り離したりする為に、1つ以上のラッチ22が使用されてよい。再利用可能部分12と使い捨て部分14が互いに接続されているときの生物活性剤送達システム10の外面は、円形、卵形、矩形、方形等の任意の形状であってよく、ユーザの皮膚によくなじむようにカーブがつけられてよい(又はカーブをつけることが可能であってよい)。
【0027】
使い捨て部分14の更なる詳細を
図3~5に示す。シャーシ26には、リザーバ20、ボーラスチャンバ28、及び弁チャンバ30がマウントされている。リザーバ20と弁チャンバ30、並びに弁チャンバ30とボーラスチャンバ28が、それぞれマニホールドによって連通している。リザーバ20内及びボーラスチャンバ28内に可動ピストン32及び34がそれぞれ配置されている。弁チャンバ30内に回転弁要素36が配置されている。
【0028】
シャーシ26の下面には、(例えば、ポアフロン(Poreflon)(登録商標)ポリテトラフルオロエチレンで形成された)ガス透過性膜38、及び経皮薬剤送達パッチ40(例えば、セルガード(Celgard)(登録商標)膜)が(例えば、熱接着により)貼り付けられている。上部ハウジング42がラッチ22を支持し、リザーバ20、弁チャンバ30、ボーラスチャンバ28、及びシャーシ26の一部を覆う。ハウジング42の開口部44が充填ポート46につながり、充填ポート46からリザーバ20及びボーラスチャンバ28に生物活性剤の溶液を追加することが可能である。リザーバ及びボーラスチャンバに生物活性剤の溶液が充填された後、充填ポート46は充填ポートプラグ48で封止される。
【0029】
シャーシ26は支持物53、54、及び59を有し、これらはそれぞれ、リザーバ20、弁チャンバ30、及びボーラスチャンバ28と係合して、リザーバ20、弁チャンバ30、及びボーラスチャンバ28を定位置に保持する。1つ以上の突出スペーサ60がシャーシ26の上面から上方に延びている。シャーシ26の開放ベント62がガス透過性膜38の上に配置されている。スペーサ60は再利用可能部分12の下面と係合してギャップ64を設け、ギャップ64は、後述のように、経皮パッチ40からガス透過性膜38及びシャーシベント62を通って蒸発する溶媒の流路を形成する。一代替実施形態では、1つ以上のスペーサ60は、使い捨て部分から延びるスペーサの代わりに、又はこれらに加えて、再利用可能部分から延びてよい。ランプ状レッジ99が、シャーシの薄い部分56から厚い部分58への変わり目であってよい。
【0030】
図7は、再利用可能部分12の構成要素を示す。使い捨て部分のラッチ22と係合するように適合されたラッチ要素86が上部ハウジング70に形成されている。上部ハウジング70と下部ハウジング74との間に、リザーバ20用のばねアセンブリ76と、ボーラスチャンバ28用のばねアセンブリ78とが配置されている。使い捨て部分14が再利用可能部分12と係合してラッチされると、ばねアセンブリ76及び78がそれぞれピストン32及び34と係合し、ばねアセンブリ76、78のばねが圧縮されて、それぞれリザーバ20及びボーラスチャンバ28の中の生物活性剤溶液を加圧する。モータアセンブリ80が、弁要素36と係合し、バッテリ84からの電力を使用するプリント回路基板82上のマイクロプロセッサの制御下で動作して、弁要素36を、リザーバ20がボーラスチャンバ28と連通する位置と、ボーラスチャンバ28がパッチ40と連通する位置との間で回転させる。上部ハウジング70の制御ボタン72がマイクロプロセッサと通信する。制御ボタン72は更に、ユーザ入力機構として働いてよい。これが押下されるのは、例えば、電子回路の電源をオンにするとき、本装置をスマートフォンのアプリケーションとペアにするとき、使用者に関する情報(例えば、喫煙渇望経験)を入力するとき、又は装置のステータスアップデート又は他の情報を要求するときであってよい。ステータスインジケータ24は本システムのステータスを表示することが可能であり、例えば、本システムが流体を送達しているかどうか、スタンバイモードであるかどうか、或いは生物活性剤が空であるかどうかを表示することが可能である。
【0031】
システム10は、使用者に生物活性剤を経皮送達する為に使用されてよい。使い捨て部分14には、生物活性剤の溶液があらかじめ充填されてよい。使い捨て部分14は、再利用可能部分12に接続され、ラッチ構成要素22及び86によりラッチされてよい。この接続により、ばねアセンブリ76及び78がそれぞれリザーバ20及びボーラスチャンバ28のピストン32及び34に対して圧縮されて、リザーバ20内及びボーラスチャンバ28内の生物活性剤溶液が加圧される。剥離ライナ18が剥がされて、接着要素16の下面上の接着剤がユーザの皮膚にくっつけられてよい。本装置のマイクロプロセッサからの信号に対する応答として、モータアセンブリ80は回転弁要素36を、ボーラスチャンバ28の内容物がシャーシ26の薬剤出口を通ってガス透過性膜38と経皮パッチ40との間のスペースまで送達される位置まで回転させる。生物活性剤がパッチ40から使用者の皮膚内に移動するにつれて、生物活性剤溶液中の溶媒が蒸発し、ガス透過性膜38とシャーシ26のベント62とを通り抜けて、ギャップ64によって画定されている流路に達する。経皮パッチ40から溶媒が除去されることによって、生物活性剤溶液のボーラス中の生物活性剤の実質的に全量が送達されるまで、パッチ内の液体溶液中の生物活性剤のパーセンテージが、生物活性剤の所望の経皮送達速度を維持するのに十分な高さにとどまることが可能になる。その後の生物活性剤のボーラスの送達は、リザーバ20からボーラスチャンバ28に溶液を再充填することを可能にするように弁要素36を作動させ、その後、ボーラスチャンバ28から経皮パッチ40への次のボーラスの送達を可能にするように弁要素36を動かすことによって行われてよい。ボーラス送達のタイミングは、プログラムされたマイクロプロセッサの制御下にある。
【0032】
再利用可能部分及び使い捨て部分、並びに、制御されたタイミングで生物活性剤溶液を経皮パッチに送達する為の構成要素(リザーバ20、ボーラスチャンバ28、及び弁36、及び/又は制御ボタン72及びインジケータ24を含む)の動作の更なる詳細については、参照によって全内容が本明細書に組み込まれている米国特許出願公開第2016/0220798号を参照されたい。
【0033】
幾つかの実施形態では、本明細書に記載のシステムは、使い捨て部分と再利用可能部分との接続を検出するセンサを含んでよい。
図8に示した一実施形態では、システム210が磁気抵抗スイッチ290を含み、磁気抵抗スイッチ290は、再利用可能部分212内に配置されて、ばねアセンブリ278内に配置された磁石292を検出する。一代替実施形態では、磁石は使い捨て部分214内に配置されてよい(例えば、
図21Bの磁石392を参照)。磁気抵抗スイッチ290の使用により、電子回路をカプセルに包んで防水加工することが可能になる。幾つかの実施形態では、磁気抵抗スイッチの代わりにリードスイッチ又はホールセンサが使用されてよい。再利用可能部分と使い捨て部分との接続のタイミング及び継続時間に関する情報が、例えば、薬剤送達レジメンを遵守しているかどうかを監視する為に使用されてよい。
【0034】
システム10によく似た、2つの部分からなる別の例示的生物活性剤送達システム310を
図9~22に示す。
図9~10を参照すると、システム310は、使い捨て部分314に接続可能な再利用可能部分312、接着要素316、及び剥離ライナ318を含む。再利用可能部分312は、制御電子回路、ユーザインタフェースボタン372、及びLEDモードステータスインジケータ324を有する。再利用可能部分312と使い捨て部分314が互いに接続されると、使い捨て部分314の上部ハウジング342と、再利用可能部分のハウジング370とが互いに突き当たって、ほぼ滑らかな外面形状が形成される。
【0035】
図11~16に示すように、システム310は更に、使い捨て部分314を再利用可能部分312に接続したり、再利用可能部分312から切り離したりする為のシングルラッチ322及びレール333を含む。ラッチ322は使い捨て部分314の第1の側面にあってよく、一方、レール333は使い捨て部分314の反対側の第2の側面に配置されてよい。レール333は、システム310の長手軸にほぼ平行に延びてよい。更に、レール333は、再利用可能部分312のハウジング730上にある摺動要素335(例えば、C字型要素)と嵌合するように構成されてよい。使用時には、摺動要素335は、使い捨て部分314と再利用可能部分312とが係合している場合にレール333に沿って摺動することが可能である。従って、レール333は、使い捨て部分314と再利用可能部分312とが接続されたり切り離されたりするときにそれらが位置合わせされたままであることを有利に保証することが可能である。ラッチ322は、カンチレバ状の第1の端部361と、スロープ状又はランプ状の第2の端部366とを有してよい(
図11を参照)。ランプ状の第2の端部366は、使い捨て部分314の上部ハウジング342と接続されてよく、一方、カンチレバ状の第1の端部361は、再利用可能部分312のハウジング370上のラッチ要素386(例えば、開口)と嵌合するように構成されてよい。ラッチ322及びラッチ要素386は、使用者がラッチ322を押下するまで、使い捨て部分314と再利用可能部分312とを一緒に保持するように働くことが可能である。
【0036】
図17~19Cを参照すると、システム310は、シャーシ326を貫通する開放ベント362を含んでよく、これはその下の膜338を露出させる為である。ベント362は、シャーシ326の中央部分に配置されてよく、膜338の表面の露出が最大になるようにカットされてよい。例えば、ベント362は、膜338の表面の5~30%、例えば、表面の10~20%を露出させてよい。シャーシ362の強度を確保する為にベント362間に対角支柱375が渡されてよい。ベント326は、再利用可能部分312と使い捨て部分314との間のギャップ364につながってよい。ギャップ364は、平行な、再利用可能部分312の底面381と使い捨て部分314の上面383との間に形成されてよい。ギャップ364は、レール333と摺動要素335との嵌合、並びにラッチ322とラッチ要素382との嵌合を含む、本システムのフレーム構造によって形成されてよい。更に、1つ以上のスペーサ360が、ギャップ364の維持を支援するように構成されてよい。スペーサ360は、例えば、シャーシ326から(即ち、その上面383から)上向きに突出した円筒状又は半球状の要素であってよい。更に、スペーサ360は、(例えば、薄い部分356の)シャーシ360の、リザーバ320、ボーラスチャンバ320、及び弁チャンバ330の反対側の面に配置されてよい。複数のスペーサ360(例えば、3~5個のスペーサ360)が、ベント362の周囲にほぼ均等な間隔で配置されてよい。スペーサ360のそれぞれは小径であってよい(例えば、シャーシ26の幅の10%未満の径であってよい)。更に、ランプ状レッジ399が、シャーシ326の薄い部分356とシャーシ326の厚い部分358との間の変わり目であってよい。幾つかの実施形態では、シャーシ326のほぼ中央に、互いに軸方向に位置合わせされた2つのレッジ399があってよい。
【0037】
スペーサ360は、再利用可能部分312の底面381と係合することによって、ギャップ364を維持することが可能であり、従って、ベント362を通り抜けた蒸発溶媒の流路を形成することが可能である。一代替実施形態では、1つ以上のスペーサは、使い捨て部分から延びるスペーサの代わりに、又はこれらに加えて、再利用可能部分から延びてよい。更に、シャーシ326の厚い部分358は、再利用可能部分312の底面381と係合することが可能であり(即ち、再利用可能部分312の底面と一致することが可能であり)、これによって、薄い部分356の上のギャップ364がより確実に維持されることが可能である。
【0038】
図20A~20Cを参照すると、システム310は更に、1つ以上の排水ポート371をその中に含んでよく、排水ポート371は、ギャップ364と位置合わせされているか、つながっていて、システム310の側面に過剰な流体が残っていた場合にはこれを排水することが可能である。排水ポート371は、使い捨て部分312の上部ハウジング377の、シャーシ326の厚い部分358の近くに形成されてよく、(例えば、使用者の入浴、且つ/又は他の形で、システム310に水が入り込んだりシステム310が濡れたりした場合に)排水を促進することが可能である。幾つかの実施形態では、排水ポート371は、本システムが体に(例えば、腕に)装着されていて、装置310が垂直になったときに、ポート371を介して装置から水が重力によって出るように配置されてよい。ポート371は、そこに水の毛細管滞留が発生しないようなサイズであってよい。
【0039】
使い捨て部分314の更なる詳細を
図21A~21Cに示し、再利用可能部分312の更なる詳細を
図22に示す。使い捨て部分314は更に、経皮送達パッチ340と、透過性膜338と、デッドニングストリップ364を有するフォーム接着剤365と、を含んでよい。デッドニングストリップ364は、システム310を皮膚から剥がしやすくする為に掴むエッジ又は小さいフラップを使用者に提供することが可能である。ハウジング342の開口部344が充填ポート346につながり、充填ポート346からリザーバ320及びボーラスチャンバ328に生物活性剤の溶液を追加することが可能である。リザーバ320内及びボーラスチャンバ328内に可動ピストン332及び334がそれぞれ配置されている。再利用可能部分312は、下部ハウジング374の上に位置するプリント回路基板382と、(ピストン334を制御する)ボーラスばねアセンブリ378と、(ピストン332を制御する)リザーバばねアセンブリ376と、を含んでよい。モータ329が弁336及びばねアセンブリ376、378の活性化を制御してよい。電源384(例えば、バッテリ)がモータ329に電力を供給してよい。検出磁石392が使い捨て部分314内に配置されてよく、一方、磁気抵抗スイッチ390が再利用可能部分312のプリント回路基板382上に配置されてよく、これによって、再利用可能部分312への使い捨て部分314の接続が検出される(即ち、再利用可能部分312と使い捨て部分314とが接続されて、磁石392とスイッチ390とが互いに近接したときに接続が検出される)。
【0040】
システム310の動作は、システム10と同様であってよい。再利用可能部分312への使い捨て部分314の接続は、構成要素がラッチ構成要素322及び386にラッチされるまで、レール333及び摺動要素382を互いに対して摺動させることによって行われてよい。この接続により、ばねアセンブリ376及び378がそれぞれリザーバ320及びボーラスチャンバ328のピストン332及び334に対して圧縮されて、リザーバ320内及びボーラスチャンバ328内の生物活性剤溶液が加圧される。本装置のマイクロプロセッサからの信号に対する応答として、モータアセンブリ380は回転弁要素336を、ボーラスチャンバ328の内容物が経皮送達パッチ340を通って患者の皮膚まで送達される位置まで回転させる。生物活性剤が使用者の皮膚上まで移動するにつれて、生物活性剤溶液中の溶媒が蒸発し、ガス透過性膜338とシャーシ326のベント362とを通り抜けて、ギャップ364によって画定されている流路に達する。再利用可能部分及び使い捨て部分、並びに、制御されたタイミングで生物活性剤溶液を経皮パッチに送達する為の構成要素の動作の更なる詳細については、参照によって開示内容が本明細書に組み込まれている米国特許出願公開第2016/0220798号を参照されたい。
【0041】
当然のことながら、一実施形態に関して本明細書に記載された任意の要素が、別の実施形態に関して記載された任意の要素に追加されてよく、或いはその任意の要素を置き換えてよい。
【0042】
本明細書において、ある特徴又は要素が別の特徴又は要素の「上に(on)」あると言及された場合、その特徴又は要素は、直接その別の特徴又は要素に接していてよく、或いは、介在する特徴及び/又は要素が存在してもよい。これに対し、ある特徴又は要素が別の特徴又は要素の「直接上に(directly on)」あると言及された場合、介在する特徴及び/又は要素は存在しない。又、当然のことながら、ある特徴又は要素が別の特徴又は要素に「接続されている(connected)」、「取り付けられている(attached)」、又は「結合されている(coupled)」と言及された場合、その特徴又は要素は、直接その別の特徴又は要素に接続されているか、取り付けられているか、結合されていてよく、或いは、介在する特徴又は要素が存在してもよい。これに対し、ある特徴又は要素が別の特徴又は要素に、「直接接続されている(directly connected)」、「直接取り付けられている(directly attached)」、又は「直接結合されている(directly coupled)」と言及された場合、介在する特徴又は要素は存在しない。そのように記載又は図示された特徴及び要素は、1つの実施形態に関して記載又は図示されているが、他の実施形態にも当てはまってよい。又、当業者であれば理解されるように、ある構造又は特徴が別の特徴に「隣接して(adjacent)」配置されていて、その構造又は特徴が言及された場合、その言及は、隣接する特徴と部分的に重なり合うか、隣接する特徴の下層となる部分を有してよい。
【0043】
本明細書において使用された術語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本開示の限定を意図したものではない。例えば、本明細書において使用される単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈上明らかに矛盾する場合を除き、複数形も同様に包含するものとする。更に、当然のことながら、「comprises(含む)」及び/又は「comprising(含む)」という語は、本明細書で使用された際には、述べられた特徴、手順、操作、要素、及び/又は構成要素の存在を明記するものであり、1つ以上の他の特徴、手順、操作、要素、構成要素、及び/又はこれらの集まりの存在又は追加を排除するものではない。本明細書では、「及び/又は(and/or)」という用語は、関連付けられて列挙されたアイテムのうちの1つ以上のアイテムのあらゆる組み合わせを包含するものであり、「/」と略記されてよい。
【0044】
「下に(under)」、「下方に(below)」、「下方の(lower)」、「上方の(over)」、「上方の(upper)」等のような空間的に相対的な語句は、本明細書では、図面に示されるような、1つの要素又は特徴と別の要素又は特徴との関係を説明する場合に説明を簡単にする為に使用されてよい。当然のことながら、この空間的に相対的な語句は、使用時又は操作時の器具の、図面で描かれる向きに加えて、それ以外の向きも包含するものとする。例えば、図面内の器具が反転された場合、別の要素又は特徴の「下に(under)」又は「真下に(beneath)」あると記載された要素は、その別の要素又は特徴の「上に(over)」方向づけられることになる。従って、例えば、「下に(under)」という語句は、「上に(over)」及び「下に(under)」の両方の向きを包含しうる。本装置は、他の方向づけ(90度回転又は他の方向づけ)が行われてよく、それに応じて、本明細書で使用された空間的に相対的な記述子が解釈されてよい。同様に、「上方に(upwardly)」、「下方に(downwardly)」、「垂直方向の(vertical)」、「水平方向の(horizontal)」等の用語は、本明細書では、特に断らない限り、説明のみを目的として使用される。
【0045】
「第1の」及び「第2の」という語句は、本明細書では様々な特徴/要素(手順を含む)を説明する為に使用されてよいが、これらの特徴/要素は、文脈上矛盾する場合を除き、これらの語句によって限定されるべきではない。これらの語句は、ある特徴/要素を別の特徴/要素と区別する為に使用されてよい。従って、本発明の教示から逸脱しない限り、第1の特徴/要素が後述時に第2の特徴/要素と称されてもよく、同様に、第2の特徴/要素が後述時に第1の特徴/要素と称されてもよい。
【0046】
本明細書及び後続の特許請求の範囲の全体を通して、別段に記述しない限りは、「含む(comprise)」という後、及びその変形である「含む(comprises)」、「含む(comprising)」等は、方法及び物品(例えば、装置(device)及び方法を含む構成及び装置(apparatus))において様々な構成要素が相互連帯して使用されてよいことを意味する。例えば、「含む(comprising)」という語は、述べられた全ての要素又はステップの包含を意味するものであって、他のあらゆる要素又はステップの排除を意味するものではないことを理解されたい。
【0047】
実施例において使用される場合も含め、本明細書及び特許請求の範囲において使用されているように、且つ、特に断らない限り、あらゆる数値は、「約(about)」又は「およそ(approximately)」という語句が前置されているものとして読まれてよく、たとえ、その語句が明示的に現れていなくても、そのように読まれてよい。「約(about)」又は「およそ(approximately)」という語句は、大きさ及び/又は位置を示す場合に、記載された値及び/又は位置が、妥当な予想範囲の値及び/又は位置に収まっていることを示す為に使用されてよい。例えば、数値は、述べられた値(又は値の範囲)の±0.1%の値であってよく、述べられた値(又は値の範囲)の±1%の値であってよく、述べられた値(又は値の範囲)の±2%の値であってよく、述べられた値(又は値の範囲)の±5%の値であってよく、述べられた値(又は値の範囲)の±10%の値であってよく、他のそのような値であってよい。本明細書で与えられるいかなる数値も、文脈上矛盾する場合を除き、その値の前後のおおよその値も包含するものと理解されたい。例えば、値「10」が開示されている場合は、「約10」も開示されている。本明細書に記載のいかなる数値範囲も、そこに包含される全ての副範囲を包含するものとする。又、当然のことながら、当業者であれば適正に理解されるように、ある値が開示されていれば、その値「以下の」値、その値「以上の」値、及びそれらの値の間の可能な範囲も開示されている。例えば、値「X」が開示されていれば、「X以下の」値、及び「X以上の」値(例えば、Xが数値の場合)も開示されている。又、本出願全体を通して、データが幾つかの異なるフォーマットで与えられていること、並びにこのデータが終点及び始点を表していて、これらのデータ点の任意の組み合わせにわたる範囲を有することも理解されたい。例えば、特定のデータ点「10」及び特定のデータ点「15」が開示されていれば、10と15の間の値だけでなく、10及び15より大きい値、10及び15以上の値、10及び15より小さい値、10及び15以下の値、及び10及び15に等しい値も開示されていると見なされる。2つの特定の単数の間の各単数も開示されていることも理解されたい。例えば、10及び15が開示されていれば、11、12、13、及び14も開示されている。
【0048】
ここまで様々な例示的実施形態について記載してきたが、特許請求の範囲によって示される本発明の範囲から逸脱しない限り、様々な実施形態に対して、幾つかある変更のいずれが行われてもよい。例えば、記載された各種方法ステップが実施される順序は、代替実施形態では変更されてよい場合が多く、代替実施形態によっては、1つ以上の方法ステップがまとめてスキップされてもよい。装置及びシステムの様々な実施形態の任意選択の特徴が、実施形態によっては含まれてよく、実施形態によっては含まれなくてよい。従って、上述の説明は、主に例示を目的としたものであり、特許請求の範囲に明記されている本発明の範囲を限定するように解釈されるべきではない。
【0049】
本明細書に含まれる実施例及び具体例は、本発明対象が実施されうる具体的な実施形態を、限定ではなく例示として示す。言及されたように、他の実施形態が利用されたり派生したりしてよく、本開示の範囲から逸脱しない限り、構造的な、或いは論理的な置換又は変更が行われてよい。本発明対象のそのような実施形態は、本明細書においては、個別に参照されてよく、或いは、「本発明」という言い方でまとめて参照されてよく、「本発明」という言い方で参照することは、あくまで便宜上であって、本出願の範囲を、実際には2つ以上が開示されていても、いずれか1つの発明又は発明概念に自発的に限定することを意図するものではない。従って、本明細書では特定の実施形態を図示及び説明してきたが、この、示された特定の実施形態を、同じ目的を達成するように作られた任意の構成で置き換えてよい。本開示は、様々な実施形態のあらゆる翻案又は変形を包含するものである。当業者であれば、上述の説明を精査することにより、上述の複数の実施形態の組み合わせ、及び本明細書に具体的な記載がない他の実施形態が明らかになるであろう。
〔付記1〕
2つの部分からなる生物活性剤送達システムであって、
使い捨て部分であって、
薬剤リザーバと、
前記薬剤リザーバと連通していて、前記生物活性剤を使用者に経皮送達するように適合された経皮パッチであって、前記使用者の皮膚と接触するように適合された底面と、前記底面の反対側にある上面と、を有する前記経皮パッチと、
前記経皮パッチの前記上面の上に配置されたガス透過性膜と、
を含む前記使い捨て部分と、
電源及び制御電子回路を含む再利用可能部分であって、前記制御電子回路は、溶媒に溶けた生物活性剤を前記薬剤リザーバから前記経皮パッチまで送達するように適合されている、前記再利用可能部分と、
気体溶媒が前記ガス透過性膜から前記生物活性剤送達システムの周囲の大気中に流れる為の流路を形成する、前記使い捨て部分と前記再利用可能部分との間に配置されたギャップを含む溶媒除去要素と、
を含むシステム。
〔付記2〕
前記ギャップは、平行な、前記使い捨て部分上のフィーチャと前記再利用可能部分上のフィーチャとの間を延びる、付記1に記載のシステム。
〔付記3〕
前記ギャップは、前記使い捨て部分と前記再利用可能部分とが解放可能に係合された場合に形成される、付記1に記載のシステム。
〔付記4〕
前記ギャップは、前記使い捨て部分と前記再利用可能部分との間に配置されたスペーサによって維持される、付記1に記載のシステム。
〔付記5〕
前記スペーサは前記使い捨て部分から延びる、付記4に記載のシステム。
〔付記6〕
前記スペーサは前記再利用可能部分から延びる、付記4に記載のシステム。
〔付記7〕
前記再利用可能部分又は前記使い捨て部分の外面に形成された少なくとも1つの排水ポートを更に含む、付記1に記載のシステム。
〔付記8〕
前記使い捨て部分は更に、前記薬剤リザーバ及び前記経皮パッチと連通している薬剤出口を含む、付記1に記載のシステム。
〔付記9〕
前記薬剤出口は、前記溶媒に溶けた前記生物活性剤を、前記経皮パッチと前記蒸気透過性膜との間のスペースに供給するように構成されている、付記8に記載のシステム。
〔付記10〕
前記薬剤リザーバは、チャンバ内に可動に配置されたピストンを含む、付記1に記載のシステム。
〔付記11〕
前記薬剤リザーバピストンと表面との間を延びるばねを更に含み、前記ばねは、前記ばねが圧縮されて、前記薬剤リザーバが大量の生物活性剤溶液を収容しているときに前記薬剤リザーバを加圧する、付記10に記載のシステム。
〔付記12〕
前記薬剤リザーバ及び薬剤出口と連通しているボーラスチャンバを更に含み、前記ボーラスチャンバは、チャンバ内に可動に配置されたピストンを含み、前記ボーラスチャンバの容積は前記薬剤リザーバの容積より小さい、付記10に記載のシステム。
〔付記13〕
弁を更に含み、前記弁は、第1の位置において前記薬剤リザーバと前記ボーラスチャンバとを連通させ、第2の位置において前記ボーラスチャンバと前記薬剤出口とを連通させる、付記12に記載のシステム。
〔付記14〕
前記再利用可能部分は弁駆動部を含み、前記制御電子回路は、生物活性剤溶液を、前記薬剤リザーバから前記ボーラスチャンバまで、並びに前記ボーラスチャンバから前記薬剤出口まで送達するように前記弁が作動するよう、前記弁駆動部を制御するように適合されている、付記13に記載のシステム。
〔付記15〕
前記ボーラスチャンバピストンと表面との間を延びるばねを更に含み、前記ばねは、前記ばねが圧縮されて、前記ボーラスチャンバが大量の生物活性剤溶液を収容しているときに前記ボーラスチャンバを加圧する、付記10に記載のシステム。
〔付記16〕
前記使い捨て部分を前記再利用可能部分に取り外し可能に取り付けるように適合されたラッチを更に含む、付記1に記載のシステム。
〔付記17〕
前記ラッチは、前記システムの一方の側面に配置されており、前記システムの第2の側面に沿ってレールが配置されており、前記使い捨て部分と前記再利用可能部分は、前記ラッチが活性化されて前記使い捨て部分が前記再利用可能部分に取り付けられるまで、前記レールに沿って互いに対して摺動するように構成されている、付記16に記載のシステム。
〔付記18〕
前記使い捨て部分と前記再利用可能部分との間の接続を検出するように適合された接続検出器を更に含む、付記1に記載のシステム。
〔付記19〕
前記接続検出器は磁石を含む、付記18に記載のシステム。
〔付記20〕
前記磁石は前記使い捨て部分内に配置されている、付記19に記載のシステム。
〔付記21〕
前記磁石は前記再利用可能部分内に配置されている、付記19に記載のシステム。
〔付記22〕
前記接続検出器は更に、磁気抵抗スイッチを含む、付記19に記載のシステム。
〔付記23〕
生物活性剤を送達する方法であって、
送達システムの再利用可能部分を前記送達システムの使い捨て部分に接続して、前記再利用可能部分と前記使い捨て部分との間に流路を形成するステップと、
溶媒に溶けた前記生物活性剤を、前記使い捨て部分のリザーバから前記使い捨て部分の経皮膜に送達するステップと、
前記溶媒が前記経皮膜から蒸発し、ガス透過性膜を通り、前記流路に沿って、前記送達システムの周囲の大気中に流れることを可能にするステップと、
を含む方法。
〔付記24〕
前記経皮膜を使用者の皮膚に貼り付けるステップを更に含む、付記23に記載の方法。
〔付記25〕
前記生物活性剤を前記皮膚に送達するステップを更に含む、付記24に記載の方法。
〔付記26〕
前記送達するステップは、前記溶媒に溶けた前記生物活性剤の、前記リザーバから前記経皮膜への移動を、前記再利用可能部分により制御するステップを含む、付記23に記載の方法。
〔付記27〕
前記制御するステップは、弁を作動させることを含む、付記26に記載の方法。
〔付記28〕
前記使い捨て部分と前記再利用可能部分との間の接続を検出するステップを更に含む、付記23に記載の方法。
〔付記29〕
前記検出するステップは、磁界を検知することを含む、付記28に記載の方法。