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▶ ハント ペロヴスカイト テクノロジーズ, エル.エル.シー.の特許一覧

(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】酸化ニッケルゾルゲルインク
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/00 20140101AFI20240116BHJP
   H01L 31/04 20140101ALI20240116BHJP
【FI】
C09D11/00
H01L31/04
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2021528879
(86)(22)【出願日】2019-11-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-18
(86)【国際出願番号】 US2019061462
(87)【国際公開番号】W WO2020106542
(87)【国際公開日】2020-05-28
【審査請求日】2022-11-10
(31)【優先権主張番号】62/770,389
(32)【優先日】2018-11-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/577,781
(32)【優先日】2019-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521218526
【氏名又は名称】ハント ペロヴスカイト テクノロジーズ, エル.エル.シー.
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100135079
【弁理士】
【氏名又は名称】宮崎 修
(72)【発明者】
【氏名】アーウィン,マイケル,ディー.
(72)【発明者】
【氏名】サネヒラ,エリン
【審査官】本多 仁
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/001372(WO,A1)
【文献】特開2012-080066(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0026261(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第108682744(CN,A)
【文献】MUECKE Ulrich P、ほか3名,Initial stages of deposition and film formation during spray pyrolysis - Nickel oxide, cerium gadolinium oxide and mixtures thereof,Thin Solid Films,2009年01月01日,Vol.517 No.5,Page.1522-1529
【文献】EKSTRAND A、ほか2名,Solution Synthesis of Nano-Phase Nickel as Film and Porous Electrode,Journal of Sol-Gel Science and Technology,米国,2000年12月,Vol.19 No.1/3,Page.353-356
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 11/00-11/54
H01L 31/00-31/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化ニッケル層の調製に使用するための組成物であって、以下:
Ni(NO・nHO、ここで、nは、0、4、6又は9である;
少なくとも1つの酢酸金属;及び
ジオール、アルコールアミン、及び水を含む、溶媒の組み合わせ;
を含む組成物。
【請求項2】
ここで、前記少なくとも1つの酢酸金属は、酢酸ニッケル四水和物、酢酸銅一水和物、及びそれらの組み合わせの群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
ここで、前記溶媒の組み合わせは、エチレングリコール、エタノールアミン、及び水を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
ここで、前記溶媒の組み合わせが、エチレングリコール、エタノールアミン、水、及びアセチルアセトンを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
ここで、前記少なくとも1つの酢酸金属が酢酸ニッケル四水和物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
ここで、前記少なくとも1つの酢酸金属が酢酸銅一水和物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
ここで、前記少なくとも1つの酢酸金属が酢酸ニッケル四水和物及び酢酸銅一水和物を含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
酸化ニッケル前駆体インクを調製するための方法であって、以下:
ジオール及びアルコールアミンを含む溶媒を調製すること;
硝酸ニッケル含有溶液を形成するため、硝酸ニッケルを前記溶媒に添加すること;
硝酸ニッケル及び酢酸金属含有溶液を形成するため、前記硝酸ニッケル含有溶液に少なくとも1つの酢酸金属を添加すること;
酸化ニッケル前駆体混合物を形成するため、前記硝酸ニッケル及び酢酸金属含有溶液に水を添加すること;
前記酸化ニッケル前駆体混合物を60から75℃に加熱すること;及び
前記酸化ニッケル前駆体インクを形成するため、前記酸化ニッケル前駆体混合物を冷却すること;
を含む方法。
【請求項9】
ここで、前記硝酸ニッケルがNi(NO・nHOであり、且つnが0、4、6又は9である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
ここで、前記酢酸金属がNi(CHCO・xHOであり、且つxが0、2又は4である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
ここで、前記硝酸ニッケルがNi(NO・6HOであり、且つ前記少なくとも1つの酢酸金属がNi(CHCO・4HOである、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
ここで、前記少なくとも1つの酢酸金属が、Ni(CHCO・xHO及びCu(CHCO・bHOを含み、ここで、xが0、2又は4であり、且つbが0又は1である、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
ここで、前記硝酸ニッケルがNi(NO・6HOであり、且つ前記少なくとも1つの酢酸金属がNi(CHCO・4HO及びCu(CHCO・1HOを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
ここで、前記酸化ニッケル前駆体混合物が、0.7Mから0.8Mの間のNi(NO・6HOの濃度と、50mMから110mMの間のNi(CHCO・4HOの濃度を有する、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
ここで、Ni(NO・6HOの前記濃度は0.72Mであり、且つNi(CHCO・4HOの前記濃度は103mMである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
ここで、前記酸化ニッケル前駆体混合物は、0.7Mから0.8Mの間のNi(NO・6HOの濃度、50mMから110mMの間のNi(CHCO・4HOの濃度、及び20mMから41.3mMの間のCu(CHCO・1HOの濃度を有する、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
ここで、前記溶媒がエチレングリコール及びエタノールアミンを含む、請求項8に記載の方法。
【請求項18】
ここで、前記溶媒は、エチレングリコール及びエタノールアミンを含み;且つ
前記エチレングリコール、エタノールアミン、及び水は、それぞれ12:1.46:1の体積比を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項19】
ここで、当該方法は、5ppm未満の水及び5ppm未満の酸素を有する不活性雰囲気下で実施される、請求項8に記載の方法。
【請求項20】
酸化ニッケル層を堆積するための方法であって、以下:
基板を準備すること;
酸化ニッケル前駆体インクを前記基板上に堆積することであって、ここで、前記酸化ニッケル前駆体インクは、以下:

ジオール、アルコールアミン、及び水を含む溶媒;
Ni(NO・6HO;及び
Ni(CHCO・4HO及びCu(CHCO・1HOからなる群から選択される少なくとも1つの酢酸金属;
を含むこと;
前記酸化ニッケル前駆体インクを250℃から400℃の間の温度で10分から6時間の間、アニーリングすること;及び
前記酸化ニッケル層を形成するため、前記酸化ニッケル前駆体インクを冷却すること;
を含む方法。
【請求項21】
ここで、前記溶媒が、エチレングリコール、エタノールアミン、及び水を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
ここで、前記基板は、ガラス、pドープドシリコン、nドープドシリコン、サファイア、酸化マグネシウム、マイカ、ポリマー、セラミック、ファブリック、木材、ドライウォール(drywall)、金属、ITOコーティングガラス、FTOコーティングガラス、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
ここで、前記基板は、インジウムドープド酸化スズ(ITO)、フッ素ドープド酸化スズ(FTO)、酸化カドミウム(CdO)、亜鉛インジウムスズ酸化物(ZITO)、アルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、アルミニウム(Al)、金(Au)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、鋼、クロム(Cr)、銅(Cu)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、炭素、及びそれらの組み合わせからなる群から選択される導電性材料でコーティングされている、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
ここで、当該方法は、10%から50%の間の湿度、及び20℃から60℃の間の温度を有する環境下で実施される、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
アニーリングが、310℃の温度で2時間の期間にわたって行われる、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
酸化ニッケル層の調製に使用するための組成物であって、以下:
少なくとも1つの硝酸金属;
少なくとも1つの酢酸金属;及び
ジオール、アルコールアミン、及び水を含む溶媒の組み合わせ;
を含む組成物。
【請求項27】
ここで、前記少なくとも1つの硝酸金属は、硝酸銅を含み;
前記少なくとも1つの酢酸金属は、酢酸ニッケルを含み;且つ
前記溶媒は、エチレングリコール、エタノールアミン、及び水を含む;
請求項26に記載の組成物。
【請求項28】
ここで、前記少なくとも1つの硝酸金属は、硝酸ニッケルを含み;
前記少なくとも1つの酢酸金属は、酢酸銅を含み;且つ
前記溶媒は、エチレングリコール、エタノールアミン、及び水を含む;
請求項26に記載の組成物。
【請求項29】
ここで、前記少なくとも1つの硝酸金属は、硝酸ニッケルを含み;
前記少なくとも1つの酢酸金属は、酢酸ニッケルを含み;且つ
前記溶媒は、エチレングリコール、エタノールアミン、及び水を含む;
請求項26に記載の組成物。
【請求項30】
ここで、前記少なくとも1つの硝酸金属は、硝酸ニッケルを含み;
前記少なくとも1つの酢酸金属は、酢酸ニッケル及び酢酸銅を含み;且つ
前記溶媒は、エチレングリコール、エタノールアミン、及び水を含む;
請求項26に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この出願は、2018年11月21日に出願された「酸化ニッケルゾル-ゲルインク」と題された米国仮特許出願第62/770,389号の優先権を主張している。
【0002】
技術分野
特定の実施形態は、一般に、光起電及び光電子デバイスで使用するための組成物、より具体的には、光起電、電子、光電子、及び機械デバイスで薄膜層として使用するための酸化ニッケル前駆体インク組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
バックグラウンド
光起電(PV)及びオプトエレクトロニクスデバイスは、多層構造を含む。PVデバイスの複数の層の間の酸化ニッケル薄膜用の従来の前駆体インク配合物は、不完全な表面被覆、不十分な表面形態、及び望ましくない光電子特性をもたらした。ペロブスカイト光起電では、不完全な表面被覆により、非放射再結合が増加し、開回路電圧が低下する可能性がある。不十分な表面形態は、ペロブスカイト膜の成長と品質に悪影響を与える可能性がある。
【0004】
酸化ニッケルは、PV及びオプトエレクトロニクスデバイスの正孔輸送及び/又は電子遮断層として機能することが知られている。酸化ニッケル前駆体インクの以前のデモンストレーションは、しばしば不完全な表面被覆、不十分なフィルム形態、及び/又は望ましくない光電子特性をもたらした。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
概要
既存の解決策に関する前述の問題に対処するために、酸化ニッケル(NiO)前駆体インクが開示されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
いくつかの実施形態によれば、酸化ニッケル層の調製に使用するための組成物は、硝酸ニッケル(Ni(NO・nHO、ここで、nは、0、4、6又は9である)、少なくとも1つの酢酸金属(metal acetate);及びジオール、アルコールアミン、及び水を含む、溶媒の組み合わせ;を包含する。
【0007】
特定の実施形態では、前記少なくとも1つの酢酸金属は、酢酸ニッケル四水和物、酢酸銅一水和物、及びそれらの組み合わせの群から選択される。
【0008】
特定の実施形態では、前記溶媒の組み合わせは、エチレングリコール、エタノールアミン、及び水を含む。
【0009】
特定の実施形態では、前記溶媒の組み合わせは、エチレングリコール、エタノールアミン、水、及びアセチルアセトンを含む。
【0010】
特定の実施形態では、前記少なくとも1つの酢酸金属は、酢酸ニッケル四水和物を含む。
【0011】
特定の実施形態では、前記少なくとも1つの酢酸金属は、酢酸銅一水和物を含む。
【0012】
特定の実施形態では、前記少なくとも1つの酢酸金属は、酢酸ニッケル四水和物及び酢酸銅一水和物を含む。
【0013】
いくつかの実施形態によれば、酸化ニッケル前駆体インクを調製するための方法は、以下:
最初に、ジオール及びアルコールアミンを含む溶媒を調製すること;
次に、硝酸ニッケル含有溶液を形成するため、硝酸ニッケルを前記溶媒に添加すること;
次に、硝酸ニッケル及び酢酸金属含有溶液を形成するため、前記硝酸ニッケル含有溶液に少なくとも1つの酢酸金属を添加すること;
次に、酸化ニッケル前駆体混合物を形成するため、前記硝酸ニッケル及び酢酸金属含有溶液に水を添加すること;
次に、前記酸化ニッケル前駆体混合物を60から75℃に加熱すること;
最後に、前記酸化ニッケル前駆体インクを形成するため、前記酸化ニッケル前駆体混合物を冷却すること;
を包含する。
【0014】
特定の実施形態では、前記硝酸ニッケルはNi(NO・nHOであり、且つ、nは、0、4、6又は9である。
【0015】
特定の実施形態では、前記硝酸ニッケルはNi(NO・nHOであり、且つnは0、4、6又は9である。
【0016】
特定の実施形態では、前記酢酸金属はNi(CHCO・xHOであり、且つxは0、2又は4である。
【0017】
特定の実施形態では、前記少なくとも1つの酢酸金属は、Ni(CHCO・xHO及びCu(CHCO・bHOを含み、ここで、xが0、2又は4であり、且つbが0又は1である。
【0018】
特定の実施形態では、前記硝酸ニッケルはNi(NO・6HOであり、且つ前記少なくとも1つの酢酸金属はNi(CHCO・4HO及びCu(CHCO・1HOを含む。
【0019】
特定の実施形態では、前記酸化ニッケル前駆体混合物は、0.7Mから0.8Mの間のNi(NO・6HOの濃度と、50mMから110mMの間のNi(CHCO・4HOの濃度を有する。
【0020】
特定の実施形態では、Ni(NO・6HOの前記濃度は0.72Mであり、且つNi(CHCO・4HOの前記濃度は103mMである。
【0021】
特定の実施形態では、前記酸化ニッケル前駆体混合物は、0.7Mから0.8Mの間のNi(NO・6HOの濃度、50mMから110mMの間のNi(CHCO・4HOの濃度、及び20mMから41.3mMの間のCu(CHCO・1HOの濃度を有する。
【0022】
特定の実施形態では、前記溶媒は、エチレングリコール及びエタノールアミンを含む。
【0023】
特定の実施形態では、前記溶媒は、エチレングリコール及びエタノールアミンを含み;且つ前記エチレングリコール、エタノールアミン、及び水は、それぞれ12:1.46:1の体積比を有する。
【0024】
特定の実施形態では、当該方法は、5ppm未満の水及び5ppm未満の酸素を有する不活性雰囲気下で実施される。
【0025】
いくつかの実施形態によれば、酸化ニッケル層を堆積するための方法は、以下:
最初に、基板を準備すること;
次に、酸化ニッケル前駆体インクを前記基板上に堆積することであって、ここで、前記酸化ニッケル前駆体インクは、以下:

ジオール、アルコールアミン、及び水を含む溶媒;
Ni(NO・6HO;及び
Ni(CHCO・4HO及びCu(CHCO・1HOからなる群から選択される少なくとも1つの酢酸金属;
を包含すること;
次に、前記酸化ニッケル前駆体インクを250℃から400℃の間の温度で10分から6時間の間、アニーリングすること;

最後に、前記酸化ニッケル層を形成するため、前記酸化ニッケル前駆体インクを冷却すること;
を包含する。
【0026】
特定の実施形態では、当該方法は、前記酸化ニッケル前駆体インクを前記基板上に堆積させる前に、酸化ニッケル前駆体インクを濾過することをさらに包含する。
【0027】
特定の実施形態では、前記溶媒は、エチレングリコール、エタノールアミン、及び水を含む。
【0028】
特定の実施形態では、前記基板は、ガラス、pドープドシリコン、nドープドシリコン、サファイア、酸化マグネシウム、マイカ、ポリマー、セラミック、ファブリック、木材、ドライウォール(drywall)、金属、又はそれらの組み合わせ、及びインジウムドープド酸化スズ(ITO)、フッ素ドープド酸化スズ(FTO)、酸化カドミウム(CdO)、亜鉛インジウムスズ酸化物(ZITO)、アルミニウム亜鉛酸化物(AZO)、アルミニウム(Al)、金(Au)、カルシウム(Ca)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、鉄(Fe)、クロム(Cr)、銅(Cu)、銀(Ag)、ニッケル(Ni)、タングステン(W)、モリブデン(Mo)、炭素同素体、又はそれらの組み合わせからなる群から選択される材料でコーティングされた前述の材料のいずれか、からなる群から選択される。
【0029】
特定の実施形態では、当該方法は、10%から50%の間の湿度、及び20℃から60℃の間の温度を有する環境下で実施される。
【0030】
特定の実施形態では、アニーリングは、310℃の温度で2時間の期間にわたって行われる。
【0031】
特定の実施形態によれば、酸化ニッケル層の調製に使用するための組成物は、少なくとも1つの硝酸金属、少なくとも1つの酢酸金属、及びジオール、アルコールアミン、及び水を含む溶媒の組み合わせ、を包含する。
【0032】
特定の実施形態では、前記少なくとも1つの硝酸金属は、硝酸銅を含み、前記少なくとも1つの酢酸金属は、酢酸ニッケルを含み;前記溶媒は、エチレングリコール、エタノールアミン、及び水を含む。
【0033】
特定の実施形態では、前記少なくとも1つの硝酸金属は、硝酸ニッケルを含み、前記少なくとも1つの酢酸金属は、酢酸銅を含み、且つ前記溶媒は、エチレングリコール、エタノールアミン、及び水を含む。
【0034】
特定の実施形態では、ここで、前記少なくとも1つの硝酸金属は、硝酸ニッケルを含み、前記少なくとも1つの酢酸金属は、酢酸ニッケルを含み、且つ前記溶媒は、エチレングリコール、エタノールアミン、及び水を含む。
【0035】
特定の実施形態では、ここで、前記少なくとも1つの硝酸金属は、硝酸ニッケルを含み、前記少なくとも1つの酢酸金属は、酢酸ニッケル及び酢酸銅を含み、且つ前記溶媒は、エチレングリコール、エタノールアミン、及び水を含む。
【0036】
本明細書に開示される酸化ニッケル前駆体インクは、溶液ベースのインク、又はスピンコーティング、ブレードコーティング、及びスロットダイコーティングなどの物理的蒸着方法を介して堆積され得る。本明細書に開示される酸化ニッケル前駆体インクはまた、インク配合及び添加剤工学を通じて調整可能性を提供する。本明細書に開示される溶液ベースの酸化ニッケル前駆体インクは、高スループット、低コストの堆積技術を可能にする。さらに、本明細書に開示される酸化ニッケル前駆体インクから調製された層/フィルムの透明性を高めることは、寄生吸収を低減し、短絡電流を増大させることができる。あるいは、より高いエネルギーの光子の吸収を増加させることは、UVによって誘発される劣化のフィルタリングとして使用され得る。本明細書に開示される酸化ニッケル前駆体インクの配合は、異なる用途に選択性を提供する。
【0037】
本開示の特徴及び利点は、当業者には容易に明らかになるであろう。当業者によって多くの変更を行うことができるが、そのような変更は本発明の精神の範囲内である。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図面の簡単な説明
図1図1は、本開示のいくつかの実施形態による例示的なPVデバイスの構成要素を示す模範的な図である。
図2図2は、本開示のいくつかの実施形態による例示的なPVデバイスの構成要素を示す別の模範的な図である。
図3図3は、本開示のいくつかの実施形態による模範的なPVデバイスの構成要素を示す定型化された図である。
図4図4は、本開示のいくつかの実施形態による模範的なPVデバイスの構成要素を示す別の定型化された図である。
図5図5は、本開示のいくつかの実施形態による模範的なPVデバイスの構成要素を示す別の定型化された図である。
図6図6は、従来技術からの例示的なNiO層のSEM(走査型電子顕微鏡)写真を示す。
図7A図7Aは、本開示のいくつかの実施形態による、20,000倍の倍率で撮影された、例示的なNiO層のSEM写真を示している。
図7B図7Bは、本開示のいくつかの実施形態による、50,000倍の倍率で撮影された、例示的なNiO層のSEM写真を示している。
図7C図7Cは、本開示のいくつかの実施形態による、200,000倍の倍率で撮影された、例示的なNiO層のSEM写真を示す。
図8A図8Aは、本開示のいくつかの実施形態による、5,000倍の倍率で撮影された、別の例示的なNiO層のSEM写真を示している。
図8B図8Bは、本開示のいくつかの実施形態による、20,000倍の倍率で撮影された、別の例示的なNiO層のSEM写真を示す。
図8C図8Cは、本開示のいくつかの実施形態による、50,000倍の倍率で撮影された、別の例示的なNiO層のSEM写真を示す。
図8D図8Dは、本開示のいくつかの実施形態による、200,000倍の倍率で撮影された、別の例示的なNiO層のSEM写真を示す。
図8E図8Eは、本開示のいくつかの実施形態による、150,000倍の倍率で撮影された、別の例示的なNiO層のSEM写真を示す。
図9A図9Aは、本開示のいくつかの実施形態による、20,000倍の倍率で撮影された、別の例示的なNiO層のSEM写真を示している。
図9B図9Bは、本開示のいくつかの実施形態による、50,000倍の倍率で撮影された、別の例示的なNiO層のSEM写真を示す。
図9C図9Cは、本開示のいくつかの実施形態による、150,000倍の倍率で撮影された、別の例示的なNiO層のSEM写真を示す。
図10A図10Aは、本開示のいくつかの実施形態による、20,000倍の倍率で撮影された、別の例示的なNiO層のSEM写真を示している。
図10B図10Bは、本開示のいくつかの実施形態による、50,000倍の倍率で撮影された、別の例示的なNiO層のSEM写真を示す。
図10C図10Cは、本開示のいくつかの実施形態による、150,000倍の倍率で撮影された、別の例示的なNiO層のSEM写真を示す。
図11A図11Aは、本開示のいくつかの実施形態による、20,000倍の倍率で撮影された、さらに別の例示的なNiO層のSEM写真を示している。
図11B図11Bは、本開示のいくつかの実施形態による、50,000倍の倍率で撮影された、別の例示的なNiO層のSEM写真を示す。
図11C図11Cは、本開示のいくつかの実施形態による、150,000倍の倍率で撮影された、別の例示的なNiO層のSEM写真を示す。
図12図12は、本開示のいくつかの実施形態による、NiO層上のNiO及びペロブスカイトのUV-可視吸収図である。
図13図13は、本開示のいくつかの実施形態による、NiO層上のペロブスカイトのフォトルミネッセンス図である。
図14図14は、本開示のいくつかの実施形態による、NiO層のフーリエ変換赤外分光法である。
図15図15は、本開示のいくつかの実施形態による、NiO層を包含する例示的なフィルムスタックである。
図16図16は、本開示のいくつかの実施形態による、NiO層を包含する別の例示的なフィルムスタックである。
【発明を実施するための形態】
【0039】
好ましい実施形態の詳細な説明
本開示は、一般に、薄膜層を形成するための材料、材料を準備して薄膜層に適用する方法、及び短絡電流及び開回路電圧を増加させ、寄生吸収を低減するために、光学デバイス、電子デバイス、機械デバイス、及び光電池に薄膜層を使用する装置、に関する。より具体的には、本開示は、酸化ニッケル(NiO)前駆体インク組成物の形成、並びに装置、使用方法、及びそのような物質の組成物の調製、に関する。
【0040】
本開示のNiO前駆体インクは、硝酸ニッケル及び/又は酢酸ニッケルを包含し、且つジオール、水、及びアルコールアミンを含む溶媒混合物に溶解された硝酸金属又は酢酸金属を包含し得る。いくつかの実施形態では、NiO前駆体インクは、硝酸ニッケルと、ジオール、水、及びアルコールを含む溶媒混合物に溶解された1つ又は複数の酢酸金属とを包含する。他の実施形態では、NiO前駆体インクは、酢酸ニッケル及び1つ又は複数の硝酸金属を包含し、且つジオール、水、及びアルコールアミンを含む溶媒混合物に溶解された硝酸ニッケルを包含しない。NiO前駆体インク層が基板上に堆積された後、層及び/又はフィルムは、加熱及びアニールされ得、その結果、本開示で開示されるNiO前駆体インクによって形成される酸化ニッケル薄層/フィルムを生成する燃焼反応が生じる。得られた酸化ニッケル薄層/膜は、光起電力デバイスにおける効果的な正孔輸送層として役立つ可能性がある。
【0041】
いくつかの実施形態では、本開示のNiO前駆体インクは、本明細書に記載されるような他の金属を包含し得る。これらの金属は、得られる酸化ニッケル薄膜のドーパントとして作用し、NiO前駆体インクに含まれる金属ドーパント(複数可)に応じて、正孔輸送又は電子輸送の酸化ニッケル薄膜をもたらす可能性がある。
【0042】
NiO前駆体インクを調製するための化合物の例は、無水硝酸ニッケル、
硝酸ニッケル六水和物、硝酸ニッケル九水和物、硝酸ニッケル四水和物、硝酸ニッケル二水和物、及び硝酸ニッケルのいずれの誘導体水和物、及び無水酢酸ニッケル、酢酸ニッケル二水和物、酢酸ニッケル四水和物、及び無水硝酸銅、硝酸銅一水和物、硝酸銅三水和物、硝酸銅セスキ水和物、硝酸銅ヘミペンタ水和物、硝酸銅三水和物、硝酸銅六水和物、及び硝酸銅のいずれの誘導体水和物、及び無水酢酸銅、酢酸銅一水和物、を包含するが、これに限定されない。
【0043】
本開示のNiO前駆体インクは、アルコール―アミン添加剤を含むジオール溶媒中の硝酸ニッケル(Ni(NO)、酢酸金属、及び水の混合物を使用して配合することができる。特定の実施形態では、酢酸金属は、酢酸ニッケル(Ni(CHCO)又は酢酸銅(Cu(CHCO)の1つ以上であり、且つアミン、ジアミン、及びアセチルアセトン(及びそれらの誘導体)も、NiO前駆体インクに含めることができる。NiO薄膜を形成するため、NiO前駆体インクを調合した後、それを堆積し、アニールすることができる。結果として生じるNiO薄膜は、p型半導体であり得る。いくつかの実施形態では、さまざまな電子デバイス、これには太陽光発電(PV)、電界効果トランジスタ(FET)、発光ダイオード(LED)、電荷結合素子(CCD)、フォトダイオード、X線検出器、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)が含まれるが、これらに限定されない、でNiO薄膜を形成するため、NiO前駆体インクを適用することができる。
【0044】
いくつかの実施形態において、酸化ニッケル前駆体インクは、エチレングリコール溶媒中の硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、水、及びエタノールアミンの混合物で調合されてもよい。他の実施形態では、酸化ニッケル前駆体インクは、エチレングリコール溶媒中の硝酸ニッケル、酢酸ニッケル、水、エタノールアミン、及びアセチルアセトンの混合物で調合することができる。さらに他の実施形態では、酸化ニッケル前駆体インクは、エチレングリコール溶媒中の硝酸ニッケル、酢酸銅、水、及びエタノールアミンの混合物で調合されてもよい。さらに他の実施形態では、酸化ニッケル前駆体インクは、エチレングリコール溶媒中の硝酸ニッケル、酢酸銅、水、エタノールアミン、及びアセチルアセトンの混合物で調合されてもよい。他の実施形態において、酸化ニッケル前駆体インクは、エチレングリコール溶媒中の硝酸ニッケル、式M(CHCOを有する酢酸金属、式中、Mはいずれの金属であり(例えば、Cu、Li、Na、K、Rb、Cs、Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Ti、Zr、Hf、V、Nb、Ta、Cr、Mo、W、Mn、Re 、Fe、Ru、Os、Co、Rh、Ir、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Hg、B、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、As、Sb、Bi、Se、Te、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Er、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Ym、Yb、Lu、Ac、Th、Pa、及びU)、且つyは金属Mの酸化状態に対応する(例えば、MがCu2+の場合y=2、且つ、MがW6+の場合y=6)、水、及びエタノールアミンの混合物で調合され得る。
【0045】
いくつかの実施形態では、硝酸ニッケルの水和物(例えば、Ni(NO・aHO)、酢酸ニッケル(例えば、Ni(CHCO・bHO)、酢酸銅(例えば、Cu(CHCO・cHO)、又は酢酸金属(例えば、M(CHCO・dHO)は、本明細書に記載されるように、酸化ニッケル前駆体インク配合物に含めることができ、ここで、上記の式のa、b、c、及びdは、水和物中のHO分子の数に対応する。
【0046】
いくつかの実施形態では、NiO前駆体インクを調製するための化合物は、硝酸ニッケル六水和物(Ni(NO・6HO)、酢酸ニッケル四水和物(Ni(CHCO・4HO)、硝酸銅三水和物(Cu(NO・3HO)、及び酢酸銅一水和物(Cu(CHCO)・2HO)を包含することができる。
【0047】
NiO前駆体インクを調製するための溶媒の例には、1つ以上のグリセロール;エチレングリコール;プロピレングリコール;メタノール;エタノール;アルコール及びジオールなど、少なくとも1つのヒドロキシル基を含むいずれ他の化合物;アンモニア;アセトン;アセチルアセトン、及び少なくとも1つのカルボニル基を含むいずれの化合物;エチルアミン、及びその他のアリール及びアルキルアミン;エタノールアミン、及び少なくとも1つのヒドロキシル基を含むいずれのアミン;水;ジアミン及びポリアミン、及びNiO前駆体インクを調製するための化合物を溶解するのに適したいずれ他の溶媒、が含まれるが、これらに限定されない。
【0048】
特定の実施形態では、NiO前駆体インクを調製するための溶媒は、エチレングリコール、エタノールアミン、及び水を含み得る。特定の一実施形態では、溶媒は、エチレングリコール、エタノールアミン、及び水を体積比12:1.46:1で含むことができる。
【0049】
特定の実施形態において、NiO前駆体インクは、ジオール、アルコールアミン、及び水からなる溶媒混合物に溶解されたNi(NO及びNi(CHCOからなる。
【0050】
別の実施形態では、NiO前駆体インクは、ジオール、アルコールアミン、及び水からなる溶媒混合物に溶解されたNi(NO及び酢酸金属(M(CHCO)からなる。
【0051】
別の実施形態では、NiO前駆体インクは、ジオール、アルコールアミン、及び水からなる溶媒混合物に溶解したNi(NO、Ni(CHCO)2及び酢酸金属(M(CHCO)からなる。
【0052】
別の実施形態では、NiO前駆体インクは、ジオール、アルコールアミン、及び水からなる溶媒混合物に溶解した、Ni(NO、Ni(CHCO及び硝酸金属(M(NO)からなる。
【0053】
別の実施形態では、NiO前駆体インクは、ジオール、アルコールアミン、及び水からなる溶媒混合物に溶解した、Ni(CHCOと、金属硝酸塩(M(NO)からなる。
【0054】
NiO前駆体インクの調製例は、エチレングリコール、エタノールアミン及び水をそれぞれ5から20対1から5対1から5の体積比で含む溶媒中に、0.7から0.8Mの硝酸ニッケル六水和物及び50から110mMの酢酸ニッケル四水和物を含むことができる。特定の実施形態において、NiO前駆体インクの調製は、エチレングリコール、エタノールアミン及び水を12:1.46:1の体積比で含む溶媒中に0.72Mの硝酸ニッケル六水和物及び103mMの酢酸ニッケル四水和物を含むことができる。いくつかの実施形態では、NiO前駆体インクは、0から20モル%の銅及び0から50モル%の酢酸(acetate)をさらに包含してもよい。
【0055】
NiO前駆体インクの別の調製例は、エチレングリコール、エタノールアミン、及び水をそれぞれ5から20対1から5対1から5の体積比で含む溶媒中に、0.7から0.8Mの硝酸ニッケル及び50から110mMの酢酸金属を含むことができる。特定の実施形態において、NiO前駆体インクの調製は、エチレングリコール、エタノールアミン、及び水を12:1.46:1の体積比で含む溶媒中に0.72Mの硝酸ニッケル六水和物及び103mMの酢酸金属を含むことができる。いくつかの実施形態では、NiO前駆体インクは、0から20モル%の銅及び0から50モル%の酢酸アセテートをさらに含んでもよい。
【0056】
NiO前駆体インクの別の調製例は、エチレングリコール、エタノールアミン、水をそれぞれ5から20対1から5対1から5の体積比で含む溶媒中に0.7から0.8Mの硝酸ニッケル六水和物、50から110mMの酢酸ニッケル四水和物、及び20から41.3mMの硝酸金属を含むことができる。特定の実施形態において、硝酸は、硝酸銅三水和物であり得る。特定の実施形態において、NiO前駆体インクの調製は、エチレングリコール、エタノールアミン及び水を12:1.46:1の体積比で含む溶媒中に0.72Mの硝酸ニッケル六水和物、103mMの酢酸ニッケル四水和物、及び30mMの金属硝酸塩を含むことができる。
【0057】
NiO前駆体インクの別の調製例は、エチレングリコール、エタノールアミン及び水をそれぞれ5から20対1から5対1から5の体積比で含む溶媒中に0.7から0.8Mの硝酸ニッケル六水和物、50から110mMの酢酸ニッケル四水和物、及び20から41.3mMの酢酸金属を含むことができる。いくつかの実施形態では、硝酸金属は酢酸銅であってもよい。特定の実施形態では、NiO前駆体インクの調製は、エチレングリコール、エタノールアミン及び水を12:1.46:1の体積比で含む溶媒中に0.72Mの硝酸ニッケル六水和物、103mMの酢酸ニッケル四水和物、及び30mMの酢酸金属を含み得る。
【0058】
NiO前駆体インクの別の調製例は、エチレングリコール、エタノールアミン及び水をそれぞれ5から20対1から5対1から5の体積比で含む溶媒中に0.7から0.8Mの硝酸金属及び50から110mMの酢酸ニッケル四水和物を含むことができる。特定の実施形態において、NiO前駆体インクの調製は、12:1.46:1の体積比でエチレングリコール、エタノールアミン及び水を含む溶媒中に0.72Mの硝酸金属及び103mMの酢酸ニッケル四水和物を含み得る。
【0059】
NiOを調製するための例示的な方法は、以下のステップを含むことができるが、これらに限定されない。最初に、少なくとも1つのヒドロキシル基を含むジオール及びアミン(「アルコールアミン」)を含む溶媒が調製される。例えば、エチレングリコールにエタノールアミンを混合して溶媒を調製することができる。次に、Ni(NO・aHOが溶媒に加えられる。ここで、aは0、4、6、又は9である。特定の実施形態において、硝酸ニッケルは、硝酸ニッケル六水和物(a=6)であり得る。次に、Ni(CHCO・bHOを混合物に加える。ここで、bは0、2、又は4である。特定の実施形態では、酢酸ニッケルは酢酸ニッケル四水和物であり得る。次に、混合物に水を加える。次に、混合物を加熱する。最後に、混合物を冷却してNiO前駆体インクを形成する。特定の実施形態において、各成分が混合物に添加されるとき、混合物は、振動、かき混ぜ、攪拌、均質化、乱流の組み合わせ、渦流混合(vortex mixing)、又はいずれの他の既知の混合方法によって混合され得る。特定の実施形態において、NiO層は、不活性雰囲気又は高湿度を有する雰囲気のいずれかで調製され得る(例えば、大気1リットルあたり4グラム超のHO)。
【0060】
いくつかの実施形態では、冷却ステップの前に水を加えて、硝酸ニッケル六水和物の最終濃度が0.7から0.8Mであり、酢酸ニッケル四水和物の最終濃度が50から110mMであるようにすることができる。
【0061】
NiO前駆体インクは、さまざまな基板上に堆積されて、光学、機械、及び電子アプリケーション、これには、太陽光発電(PV)、電界効果トランジスタ(FET)、発光ダイオード(LED)、電荷結合素子(CCD)、フォトダイオード、X線検出器、相補型金属酸化膜半導体(CMOS)が含まれるが、これらに限定されない、で使用される薄膜NiO層を形成することができる。いくつかの実施形態では、NiO前駆体インクによって形成された層は、光電池で使用されてもよい。特定の実施形態では、NiO前駆体インクによって形成される層は、正孔輸送層及び/又は電子輸送層として使用され得る。特定の実施形態では、NiO前駆体インクは、薄膜IFLとして堆積されてもよい。特定の実施形態では、ペロブスカイト光活性層を有する光起電装置内に薄膜NiO層を形成するため、NiO前駆体インクを堆積することができる。
【0062】
好適な基板材料は、次のうちいずれか1つ以上を包含する: ガラス;石英、pドープドシリコン基板;nドープドシリコン基板;サファイア;酸化マグネシウム(MgO);マイカ;ポリマー(例えば、PET、PEG、PES、ポリプロピレン、ポリエチレンなど);セラミック;ファブリック(例えば、綿、絹、羊毛);木材;ドライウォール;金属;及びそれらの組み合わせ。いくつかの実施形態において、NiO前駆体インクが堆積され得る基板は、電極でコーティングされ得る。電極は、アノード又はカソードのいずれでもよい。電極に好適な材料は、インジウムドープド酸化スズ(ITO)、フッ素ドープド酸化スズ(FTO);酸化カドミウム(CdO);亜鉛インジウムスズ酸化物(ZITO);アルミニウム亜鉛酸化物(AZO);アルミニウム(Al);金(Au);カルシウム(Ca);マグネシウム(Mg);チタン(Ti);鉄(Fe);クロム(Cr);銅(Cu);銀(Ag);ニッケル(Ni);タングステン(W);モリブデン(Mo);炭素(及びその同素体);及びそれらの組み合わせ、及び電極として機能し得る他のいずれの材料;を包含する。例えば、電極コーティングを有する基板は、ITOコーティングガラス、FTOコーティングガラス、Agコーティングガラス、CdOコーティングガラス、ITOコーティングPETを包含することができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、基板は、本明細書に記載されるように、1つ以上の界面層(IFL)でさらにコーティングされてもよい。いくつかの実施形態では、IFLはアルミナ(Al)であり得る。いくつかの実施形態では、IFLは連続層を形成することができる。他の実施形態では、IFLは非連続層を形成することができる。
【0064】
NiO前駆体インクを堆積するための例示的な方法は、基板を準備すること、基板上にNiO前駆体インクを堆積すること、NiO前駆体インクをアニールすること、及び薄膜NiO層を形成するため、NiO前駆体インクを冷却すること、を包含することができるが、これらに限定されない。基板上にNiO前駆体インクを堆積することは、基板上に堆積された先行するいずれの層上にNiO前駆体インクを堆積することを包含し得る。例えば、電極層は、NiO前駆体インクの堆積前に基板上に堆積され得、次に電極層上に堆積され得る。同様に、いくつかの実施形態では、電極層及び1つ以上の界面層が、NiO前駆体インクの堆積前に基板上に堆積されてもよい。
【0065】
いくつかの実施形態において、NiO前駆体インクを堆積することは、スピンコーティング、ブレードコーティング、スロットダイコーティング、スクリーン印刷、ロールツーロールコーティング、スプレーコーティング、ディップコーティング、又はグラビア印刷によって実行され得る。いくつかの実施形態において、NiO前駆体インクは、10から50%の相対湿度及び20℃から60℃の温度を有する環境において基板上に堆積され得る。特定の実施形態において、NiO前駆体インクは、35%の相対湿度及び35℃の温度を有する環境において基板上に堆積され得る。いくつかの実施形態では、基板上に堆積される前に、NiO前駆体インクを濾過することができる。特定の実施形態では、NiO前駆体インクを濾過することは、0.2μmフィルターを通してNiO前駆体インクを分配することを包含し得る。いくつかの実施形態において、アニーリングは、250℃から400℃の間の温度で、30分から6時間の間の期間行われてもよい。特定の実施形態では、アニーリングは、310℃の温度で2時間の期間行うことができる。いくつかの実施形態では、基板上でIFLをアニールするステップは、5分当たり約50℃の速度で温度を35℃から310℃に上げることを包含することができる。NiO前駆体インクのアニーリング後に形成されたNiO薄膜層を冷却することは、室温に近い環境で基板と薄膜層を休ませることにより、室温に近い温度(20℃から50℃)に冷却することを包含し得る。いくつかの実施形態では、NiO薄膜層は、第1のアニーリングステップの後に、上記と同じ方法で1回以上アニーリングされてもよい。例えば、本明細書に開示されるようにNiO薄膜層が堆積された基板は、その後の処理ステップの前に保管され、再アニールされてもよい。
【0066】
特定の実施形態では、NiO前駆体インクを堆積する方法は、基板を準備すること、アルミナ薄膜層を堆積すること、アルミナ薄膜上にNiO前駆体インクを堆積すること、NiO薄膜を形成するため、NiO前駆体インクをアニールすること、ペロブスカイト材料を堆積すること、界面層を堆積すること、及び電極を堆積すること、を包含することができる。いくつかの実施形態では、NiO前駆体インクを堆積することは、滴下することなく、基板上のNiO 前駆体インクの良好なカバレッジを確保するため、基板の一方の面から始まり、基板を行ごとに連続的に覆うパターンに従うことができる。
【0067】
図1は、いくつかの実施形態によるペロブスカイト材料デバイス1000の様式化された図を示す。デバイス1000のさまざまなコンポーネントは、連続した材料を含む個別の層として示されているが、図1は図式化された図であることを理解すべきである;したがって、それに基づく実施形態は、本明細書で前述した「層」の使用法と一致する、そのような不連続の(discrete)層、及び/又は実質的に混合された非連続層を包含することができる。デバイス1000は、第1及び第2の基板1010及び1070を包含する。第1の基板1010の内面には第1の電極1020が配置され、第2の基板1070の内面には第2の電極1060が配置される。活性層1100は、2つの電極1020及び1060の間に挟まれている。活性層1100は、界面層(IFL)1030;光活性材料(PAM)層1040;及びIFL 1050;を包含する。
【0068】
いくつかの実施形態によるペロブスカイト材料デバイスは、1つ以上の基板をオプションで包含することができる。いくつかの実施形態において、第1及び第2の電極1020及び1060のいずれか又は両方は、電極が実質的に基板と活性層との間に配置されるように、コーティングされるか、又はそうでなければ基板上に配置され得る。デバイスの組成の材料(例えば、基板、電極、活性層及び/又は活性層構成要素)は、様々な実施形態において、全体的に又は部分的に剛性又は可撓性のいずれかであり得る。いくつかの実施形態では、電極は基板として機能することができ、それにより、別個の基板の必要性をなくすことができる。
【0069】
第1及び第2の基板1010及び1070のいずれか又は両方などの基板は、可撓性又は剛性であり得る。2つの基板が含まれる場合、少なくとも1つは、電磁(EM)放射(例えば、UV、可視、又はIR放射)に対して透明又は半透明でなければならない。1つの基板が含まれる場合、デバイスの一部がEM放射が活性層1100に接触することを可能にする限り、そうである必要はないが、同様に透明又は半透明であり得る。
【0070】
前述のように、電極(例えば、図1の電極1020及び1060の一方)は、アノード又はカソードのいずれかであり得る。いくつかの実施形態では、一方の電極がカソードとして機能し、他方の電極がアノードとして機能し得る。電極1020及び1060のいずれか又は両方は、リード、ケーブル、ワイヤ、又はデバイス1000へ及び/又はデバイス1000からの電荷輸送を可能にする他の手段に結合され得る。電極は、いずれの導電性材料を構成することができ、且つ少なくとも1つの電極は、EM放射に対して透明又は半透明であるべきであり、及び/又はEM放射が活性層1100の少なくとも一部と接触できるように配置されるべきである。
【0071】
本明細書に記載の例示的なNiO前駆体インクは、界面層(IFL)として、又は以下に説明する他のIFLに加えて、NiO薄膜層を形成するため、本明細書に記載の方法のいずれかによって堆積することができる。界面層は、隣接する層又は材料間の電荷輸送及び/又は収集を強化するためのいずれの好適な材料を含んでもよい;また、界面層に隣接する材料の1つから電荷が移動すると、電荷の再結合の可能性を防止又は低減するのにも役立る。界面層はさらに、基板の粗さ、誘電率、接着性、欠陥の生成又は消滅(quenching)(例えば、電荷トラップ、表面状態)の変動を作成又は低減するため、その基板を物理的及び電気的に均質化することができる。好適な界面材料は、次のうちのいずれか1つ以上を包含してよい: Ag;Al;Au;B;Bi;Ca;Cd;Ce;Co;Cr;Cu;Fe;Ga;Ge;H;In;Mg;Mn;Mo;Nb;Ni;Pt;Sb;Sc;Si;Sn;Ta;Ti;V;W;Y;Zn;Zr;前述の金属のいずれかの炭化物(例えば、SiC、FeC、WC、VC、MoC、NbC);前述の金属のシリサイド(例えば、MgSi、SrSi、SnSi);前述の金属のいずれかの酸化物(例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、SnO、ZnO、WO、VO5、MoO、NiO、ZrO、HfO)は、インジウムスズ酸化物、アルミニウムドープド酸化亜鉛(AZO)、カドミウム酸化物(CdO)、フッ素ドープドスズ酸化物(FTO)などの透明導電性酸化物(「TCO」)を包含する;前述の金属の硫化物(例えば、CdS、MoS、SnS);前述の金属のいずれかの窒化物(例えば、GaN、Mg、TiN、BN、Si);前述の金属のいずれかのセレン化物(例えば、CdSe、FeS、ZnSe);前述の金属のいずれかのテルル化物(例えば、CdTe、TiTe、ZnTe);前述の金属のいずれかのリン化物(例えば、InP、GaP、GaInP);前述の金属のいずれかのヒ化物(例えば、CoAs、GaAs、InGaAs、NiAs);前述の金属のいずれかのアンチモン化物(例えば、AlSb、GaSb、InSb);前述の金属のいずれかのハロゲン化物(例えば、CuCl、CuI、BiI);前述の金属のいずれかの擬ハロゲン化物(例えば、CuSCN、AuCN、Fe(SCN));前述の金属のいずれかの炭酸塩(carbonates)(例えば、CaCO、Ce(CO);官能化又は非官能化アルキルシリル基;グラファイト;グラフェン;フラーレン;カーボンナノチューブ;本明細書の他の場所で議論されるいずれのメソポーラス材料及び/又は界面材料;及びそれらの組み合わせ(いくつかの実施形態では、複合材料の二層、三層、又は多層を包含する)。いくつかの実施形態では、界面層はペロブスカイト材料を包含することができる。さらに、界面層は、本明細書で言及されるいずれの界面材料のドープされた実施形態(例えば、YドープドZnO、Nドープド単層カーボンナノチューブ)を含むことができる。界面層は、上記の材料のうちの3つを有する化合物(例えば、CuTiO、ZnSnO)又は上記の材料のうちの4つを有する化合物(例えば、CoNiZnO)を含むこともできる。上記の材料は、平面、メソポーラス、又はその他のナノ構造の形態(例えば、棒、球、花、ピラミッド)、又はエアロゲル構造で存在する可能性がある。
【0072】
特定の実施形態では、本明細書に記載のアルミナIFL層は、以下の方法に従って堆積されてもよい。まず、アルミナ前駆体溶液を調製することができる。アルミナ前駆体溶液は、硝酸アルミニウムをブタノール、クロロホルム、及びメタノールの混合物に溶解することによって調製することができる。いくつかの実施形態では、ブタノール、クロロホルム、及びメタノールの溶液は、ブタノール、クロロホルム、及びメタノールの体積比が1:1:1であってもよい。特定の実施形態では、25mMの硝酸アルミニウムの濃度を有する溶液を形成するため、硝酸アルミニウムをブタノール、クロロホルム、及びメタノールに溶解することができる。
【0073】
次に、アルミナ前駆体溶液を基板上に堆積させることができる。アルミナ前駆体溶液を基板上に堆積することは、基板上に堆積された先行する層上にアルミナ前駆体溶液前駆体インクを堆積することを包含し得る。いくつかの実施形態において、アルミナ前駆体溶液は、とりわけ、本明細書に記載されるスピンコーティング、スロットダイコーティング、又はブレードコーティングによって堆積され得る。特定の実施形態において、アルミナ前駆体溶液は、1nmから100nmの厚さの層をもたらすように堆積され得る。別の実施形態において、アルミナ前駆体溶液は、1nm未満の厚さで堆積され得る。いくつかの実施形態において、アルミナ前駆体溶液は、基板の全領域にわたって連続的に堆積され得る。他の実施形態では、アルミナ前駆体溶液が基板の領域の一部を覆うように、アルミナ前駆体溶液を不連続な方法で堆積させることができる。堆積後、アルミナ前駆体をアニールすることができる。アルミナ前駆体をアニールするには、基板の温度を25分かけて310℃に上げ、その後、310℃で35分間保持する。アルミナ前駆体をアニーリングすることは、制御された湿度環境で行うことができる。いくつかの実施形態において、制御された湿度環境は、アルミナ酸化物前駆体の堆積及びアニール中に25%の相対湿度の湿度を維持するように制御され得る。アニーリング後、基板を周囲条件で室温まで冷却することができる。アニーリング及び冷却後、アルミナ前駆体がアルミナ層を形成し、後続の層が、本明細書に記載の方法によって、NiO層などのアルミナ層上に堆積され得る。アルミナ層は、基板の表面上で連続的又は不連続的であり得る。
【0074】
本明細書ではNiO及び/又は酸化ニッケルと呼ばれるが、ニッケル及び酸素の様々な比率を酸化ニッケルの形成に使用できることに留意すべきである。したがって、本明細書で議論されるいくつかの実施形態は、NiOに関して説明されるが、そのような説明は、酸素中のニッケルの必要な比率を定義することを意図していない。むしろ、実施形態は、いずれの1つ以上の酸化ニッケル化合物を含んでもよく、それぞれは、Niに従った酸化ニッケル比を持ち、ここで、xは整数又は非整数で、約1と100の間のいずれの値であり得る。いくつかの実施形態では、xは約1から3の間であり得る(そして、再び、整数である必要はない)。同様に、yは、0.1から100の間の整数又は非整数のいずれの値である可能性がある。いくつかの実施形態では、yは2から4の間であり得る(そして、再び、整数である必要はない)。さらに、アルファ、ガンマ、及び/又はアモルファス形態など、さまざまな実施形態において、Niのさまざまな結晶形態が存在し得る。
【0075】
さらに、本明細書ではAl及び/又はアルミナと呼んでいるが、アルミナを形成する際に、様々な比率のアルミニウムと酸素を使用できることに留意されたい。したがって、本明細書で議論されるいくつかの実施形態は、Alを参照して説明されるが、そのような説明は、酸素中のアルミニウムの必要な比率を定義することを意図していない。むしろ、実施形態は、いずれの1つ以上の酸化アルミニウム化合物を含んでもよく、それぞれAlに応じた酸化アルミニウム比率を有し、ここで、xは、約1から100までの整数又は非整数のいずれの値である。いくつかの実施形態では、xは約1から3の間であり得る(そして、再び、整数である必要はない)。同様に、yは、0.1から100の間の整数又は非整数のいずれの値である可能性がある。いくつかの実施形態では、yは2から4の間であり得る(そして、再び、整数である必要はない)。さらに、アルファ、ガンマ、及び/又はアルミナのアモルファス形態など、さまざまな結晶形態のAlが、さまざまな実施形態に存在し得る。
【0076】
さらに、本明細書で言及される金属酸化物は、金属と酸素のさまざまな比率を有することができる。実施形態は、いずれの1つ以上の金属酸化物化合物を包含することができ、それぞれがMに応じた金属酸化物比率を有し、ここで、xは、約1から100までの整数又は非整数のいずれの値である。いくつかの実施形態では、xは約1から3の間であり得る(そして、再び、整数である必要はない)。同様に、yは、0.1から100の間の整数又は非整数のいずれの値である可能性がある。いくつかの実施形態では、yは2から4の間であり得る(そして、再び、整数である必要はない)。さらに、アルファ、ガンマ、及び/又はアルミナのアモルファス形態など、Mの様々な結晶形態が様々な実施形態に存在し得る。
【0077】
本明細書で議論される界面材料は、ドープされた組成物をさらに含むことができる。界面材料の特性(例えば、電気的、光学的、機械的)を変更するために、化学量論的又は非化学量論的材料は、1ppbから50mol%の範囲の量の1つ以上の元素(例えば、Na、Y、Mg、N、P)でドープすることができる。界面材料のいくつかの例は、次のようなものを包含する: NiO、TiO、SrTiO、Al、ZrO、WO、V、MO、ZnO、グラフェン、カーボンブラック。これらの界面材料の可能なドーパントの例は、次のようなものを包含する: Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Nb、Ti、Fe、Co、Ni、Cu、Ga、Sn、In、B、N、P、C、S、As、ハロゲン化物、擬ハロゲン化物(例えば、シアン化物、シアネート、イソシアネート、フルミネート、チオシアネート、イソチオシアネート、アジド、テトラカルボニルコバルト、カルバモイルジシアノメタニド、ジシアノニトロソメタニド、ジシアナミド、及びトリシアノメタニド)、及びその酸化状態のいずれかのAl。ドープされた界面材料への本明細書での言及は、界面材料化合物中の成分元素の比率を制限することを意図していない。
【0078】
光活性材料1040は、いずれの光活性化合物、例えば、シリコン(場合によっては単結晶シリコン)、テルル化カドミウム、硫化カドミウム、セレン化カドミウム、銅インジウムガリウムセレン化物、ヒ化ガリウム、リン化ゲルマニウム、1つ以上の半導体ポリマー、及びそれらの組み合わせのうちのいずれか1つ以上など、を含むことができる。いくつかの実施形態では、光活性材料1040は、1つ以上のペロブスカイト材料を含むことができる。ペロブスカイト材料は、式CMXを持つ組成を包含し、ここで、Cはカチオン、Mは金属カチオン、Xはアニオンである。いくつかの実施形態において、ペロブスカイト材料は、CMXとして表される厳密な化学量論から逸脱し、準化学量論及び超化学量論組成の両方を包含することができる。このようなペロブスカイトは、式Cで表すことができる。ここで、x、y、及びzは実数である。いくつかの実施形態において、固体ペロブスカイト含有材料は、いずれの好適な手段(例えば、蒸着(vapor deposition)、溶液堆積、固体材料の直接配置など)によって堆積され得る。様々な実施形態によるデバイスは、1つ、2つ、3つ、又はそれ以上の光活性化合物(例えば、1つ、2つ、3つ、又はそれ以上のペロブスカイト材料)を包含することができる。特定の実施形態では、光活性材料1040は、MAPbI、FAPbI3、5-AVA.HC1:FAPbI、CHP:FAPbI3、Cs:FAPbI3、FA:MA:CsPbI.yBry、CsPbI、及び/又はFA:MAPbIを包含することができる。ここで、MAはメチルアンモニウム、FAはホルムアミジニウム、5-AVAは5-アミノ吉草酸、CHPはN-シクロヘキシル-2-ピロリドンである。さらに、光活性材料1040は、先行するペロブスカイト材料の準化学量論的及び超化学量論的組成の両方を包含することができる。複数の光活性材料を包含する実施形態では、光活性材料のそれぞれは、1つ以上の界面層によって分離され得る。例えば、図2は、いくつかの実施形態によるペロブスカイト材料デバイス2000の様式化された図を示す。デバイス2000は、第1及び第2の基板2010及び2090を包含する。第1の基板2010の内面には、第1の電極2020が配置され、第2の基板2070の内面には、第2の電極2080が配置される。活性層2100は、2つの電極2020及び2080の間に挟まれている。活性層2100は、IFL2030;光活性材料(PAM)層2040;IFL 2050及び2055;PAM層2060及びIFL1070;を包含する。いくつかの実施形態では、PAM層2040及び2060は、異なる波長の光に応答して光活性である異なる光活性材料から構成され得る。
【0079】
電荷輸送材料(例えば、図3の電荷輸送層3050の電荷輸送材料)は、固体電荷輸送材料(つまり、口語でラベル付けされた固体電解質)を包含することができ、又は、液体電解質及び/又はイオン液体を包含してもよい。液体電解質、イオン液体、固体電荷輸送材料のいずれも電荷輸送材料と呼ぶことができる。本明細書で使用される「電荷輸送材料」は、電荷担体を収集及び/又は電荷担体を輸送することができる、固体、液体、又はその他の材料を指す。例えば、いくつかの実施形態によるPVデバイスにおいて、電荷輸送材料は、電荷キャリアを電極に輸送することができる場合がある。電荷キャリアは、正孔(その輸送により、電荷輸送材料が適切に「正孔輸送材料」とラベル付けされたものになる可能性がある)及び電子が包含する場合がある。PV又は他のデバイスにおけるカソード又はアノードに対する電荷輸送材料の配置に応じて、正孔はアノードに、電子はカソードに輸送され得る。いくつかの実施形態による電荷輸送材料の好適な例は、以下のうちの1つ以上を包含し得る: ペロブスカイト材料;I/I ;Co錯体;ポリチオフェン(例えば、ポリ(3-ヘキシルチオフェン)及びその誘導体、又はP3HT);ポリヘプタデカニルカルバゾールジチエニルベンゾチアジアゾール及びその誘導体(例えば、PCDTBT)などのカルバゾール系共重合体;ポリシクロペンタジチオフェン―ベンゾチアジアゾール及びその誘導体(例えば、PCPDTBT)などの他の共重合体;ポリ(トリアリールアミン)化合物及びその誘導体(例えば、PTAA);Spiro-OMeTAD;フラーレン及び/又はフラーレン誘導体(例えば、C60、PCBM);及びそれらの組み合わせ。特定の実施形態では、電荷輸送材料は、電荷キャリア(電子又は正孔)を収集することができる、及び/又は電荷キャリアを輸送することができる、固体又は液体のいずれの材料を包含することができる。したがって、いくつかの実施形態の電荷輸送材料は、n型又はp型の活性及び/又は半導体材料であり得る。電荷輸送材料は、デバイスの電極の1つに近接して配置することができる。特定の実施形態では、電荷輸送材料のタイプは、それが近接する電極に基づいて選択されてもよい。例えば、電荷輸送材料が正孔を収集及び/又は輸送する場合、正孔をアノードに輸送するように、それはアノードに近接していてもよい。しかしながら、電荷輸送材料は、代わりにカソードに近接して配置され、電子をカソードに輸送するように選択又は構築されてもよい。
【0080】
いくつかの実施形態では、以下に説明する図3に示すように、別のIFLを1つのIFLと1つの電極との間に配置することができる。
【0081】
図3は、いくつかの実施形態によるペロブスカイト材料デバイス3000の別の様式化された図を示す。デバイス3000は、第1及び第2の基板3010及び3070を包含する。第1の電極3020は、第1の基板3010の内面に配置され、第2の電極3060は、第2の基板3070の内面に配置される。活性層3100は、2つの電極3020及び3060の間に挟まれている。活性層3100は、第1のIFL3030及び第2のIFL3035;光活性材料(PAM) 3040;及びCTL 3040;を包含する。特定の実施形態では、デバイス3000は、1つより多いIFL 3010を含み得る。
【0082】
様々な実施形態によれば、デバイス2000は、いずれの2つの他の層及び/又は材料の間に界面層2030をオプションで包含することができるが、デバイス2000は、いかなる界面層も含む必要はない。例えば、ペロブスカイト材料デバイスは、0、1、2、3、4、5、又はそれ以上の界面層を含むことができる。
【0083】
本開示の恩恵を受ける当業者には明らかであるように、複数の光活性層を有するデバイスなど、様々な他の実施形態が可能である。いくつかの実施形態では、上述のように、各光活性層は、界面層によって分離され得る。
【0084】
図4は、様々な実施形態による例示的なデバイス4000を示す。デバイス4000は、第1及び第2のガラス基板4010及び4070を包含する実施形態を示す。第1の基板4010の内面には、第1の電極(ITO)4020が配置され、第2の基板4070の内面には、第2電の極(Al)4060が配置される。活性層4100は、2つの電極4020及び4060の間に挟まれている。活性層4100は、IFL(例えば、NiO)4030、光活性材料(例えば、MAPbI、FAPbI)4040、及び電荷輸送層4050を包含する。
【0085】
図5は、様々な実施形態による別の例示的なデバイス5000を示す。デバイス5000は、第1及び第2のガラス基板5010及び5080を包含する実施形態を示す。第1の基板5010の内面には第1の電極(ITO)5020が配置され、第2の基板5080の内面には第2の電極5070が配置される。第2の電極5070は、クロム-アルミニウム二重層(Cr/A1)であってもよく、ここで、クロムの層がアルミニウムの層でコーティングされ、二重層を形成する。活性層5100は、2つの電極5020及び5070の間に挟まれている。活性層5100は、IFL(例えば、Al)4030、第2のIFL(例えば、NiO)5040、光活性材料(例えば、MAPbI、FAPbI)5050、及び電荷輸送層(例えば、C60)5060を包含する。
【0086】
図6は、本明細書に開示される方法より前の方法により生成されたNiO層の一例のSEM写真を示す。SEM写真は、同じNiO層を10,000倍の倍率(上)と100,000倍の倍率(下)で撮影したものである。示されているNiO層は、Steirer et al., J. Mater. Chem. A, 2015, 3, 10949, Nickel oxide interlayer films from nickel formate-ethylenediamine precursor: influence of annealing on thin film properties and photovoltaic device performanceに開示されているNiO前駆体溶液の調合によって生成された。SEM画像は、従来の方法で形成されたNiO層が、画像に見られるかなりの数の大きくて明確な暗い領域と明るい領域によって示される、不十分なカバレッジと不規則な粒子構造を持っていることを示している。これは、(i)NiO層が光起電力デバイスに適用されたときに寄生吸収損失を引き起こす欠陥につながる、(ii)カバレッジが不完全で不均一になり、シャントや直列抵抗の損失が発生する、及び/又は(iii)望ましくない表面粗さにつながる可能性がある。
【0087】
図7AからCは、特定の実施形態による、本明細書に開示される例示的なNiO層のSEM写真を示す。本明細書に記載の方法に基づいて形成されたNiO層は、図6に示されるNiO層と比較して優れたフィルム被覆率を示す。この実施形態において、NiO層を形成するために堆積されるNiO前駆体インクの配合は、エチレングリコール中に0.95Mの硝酸ニッケル六水和物及び213モル%のエタノールアミンを含み得る。ここで、エタノールアミンのモルパーセントはNiモルに対する相対値である。図7Aは、20,000倍の倍率で撮影されたNiO層の表面の画像を示し、図7Bは、50,000倍の倍率で撮影されたNiO層の表面の画像を示し、図7Cは、200,000倍の倍率で撮影されたNiO層のプロファイルを撮影した2つの画像を示す。画像からわかるように、本明細書に開示される方法により生成されるNiO層は、図6に示される従来の方法により生成されるNiO層よりもはるかに均一な粒子構造を有し、本明細書に記載の光起電デバイスに適用すると、カバレッジが改善され、寄生吸収が低下する。
【0088】
図8AからEは、特定の実施形態による、本明細書に開示される別の例示的なNiO層のSEM写真を示す。本明細書に記載の方法に基づいて形成されたNiO層は、図6に示されるNiO層と比較して優れたフィルム被覆率を示し、その結果、より優れた電子性能が得られる可能性がある。図8Aは、5,000倍の倍率で撮影されたNiO層の表面の画像を示し、図8Bは、20,000倍の倍率で撮影されたNiO層の表面の画像を示し、図8Cは、50,000倍の倍率で撮影されたNiO層の表面の画像を示し、図8Dは、200,000倍の倍率で撮影されたNiO層の表面の画像を示し、図8Eは、150,000倍の倍率で撮影されたNiO層のプロファイルを撮影した2つの画像を示す。この実施形態では、NiO層を形成するために堆積されるNiO前駆体インクの配合は、エチレングリコール中の0.95Mの硝酸ニッケル六水和物、5モル%の酢酸銅一水和物、231モル%のエタノールアミン、及び488モル%の水を含み得る。ここで、酢酸銅一水和物、エタノールアミン、及び水のモルパーセントは、Niモルに対する相対値である。図7AからCに示す画像と同様に、図8AからEに描かれたNiO層は、図6に描かれた従来の方法によって生成されたNiO層よりも著しく均一な構造を示す。例えば、図8Dにおいて、暗い領域として示される粒界は、200,000倍の倍率で見ると、図6に暗い領域として示されている粒界よりも、100,000倍の倍率で見たときの粒界よりも実質的に小さく、より規則的な間隔である。
【0089】
図9AからCは、NiO層を形成するために使用されるNiO前駆体インク中に5モル%のCu及び5モル%の酢酸(acetate)を有する、本明細書に記載の例示的なNiO層のSEM写真を示す。図9AからCは、それぞれ20,000倍、50,000倍、及び150,000倍の倍率でキャプチャされた、光起電デバイス内に配置されたNiO層のプロファイル画像を示す。NiO層は、各画像の中心を横切る「バンド」として画像に表示される。
【0090】
図10AからCは、NiO層を形成するために使用されるNiO前駆体インク中に5モル%のCu及び12.5モル%の酢酸(acetate)を有する、本明細書に記載の別の例示的なNiO層のSEM写真を示す。図10AからCは、それぞれ20,000倍、50,000倍、及び150,000倍の倍率でキャプチャされた、光起電デバイス内に配置されたNiO層のプロファイル画像を示す。NiO層は、各画像の中心を横切る「バンド」として画像に表示される。
【0091】
図11AからCは、特定の実施形態による、さらに別の例示的なNiO層のSEM写真を示す。図10AからCは、それぞれ20,000倍、50,000倍、及び150,000倍の倍率でキャプチャされた、光起電デバイス内に配置されたNiO層のプロファイル画像を示す。本明細書に記載の方法に基づいて形成された図示のNiO層は、図5に示されるNiO層と比較して優れた膜被覆率を示し、より優れた電子性能をもたらす可能性がある。この実施形態では、NiO前駆体インクの配合は、エチレングリコール中の0.87Mの硝酸ニッケル六水和物、0.12Mの酢酸ニッケル四水和物、200モル%のエタノールアミン、及び464モル%の水を含み得る。ここで、エタノールアミンと水のモルパーセントはNiモルに対する相対値です。
【0092】
図12から14は、特定の実施形態による、本明細書に開示される方法及び組成物によって光起電デバイスにおいて生成される様々なNiO層について、それぞれ、UV―Vis吸収図、フォトルミネッセンス(PL)図、及びフーリエ変換赤外分光法(FTIR)図を示す。これらのさまざまな層をサンプル番号13乃至18と呼び、各サンプルの各NiO層の組成を以下でより詳細に説明する。サンプル番号16、17、及び18は、FAPbIの350nm層をさらに包含する。図15は、特定の実施形態による、サンプル番号13から15の例示的なフィルムスタックの様式化された図を示す。図16は、特定の実施形態による、サンプル番号16から18の例示的なフィルムスタックの様式化された図を示す。いくつかの実施形態では、図15に示すNiO層を有する薄膜スタックは、基板、界面層、及び本明細書に記載の方法によって調製及び堆積されたNiO層を含むことができる。いくつかの実施形態では、図16に示すNiO層を有する薄膜スタックは、基板、界面層、本明細書に記載の方法によって調製及び堆積されたNiO層、及びペロブスカイト材料の層を含むことができる。基板はITOコーティングされたガラスであってもよい。界面層は、Al層であってもよい。ペロブスカイト材料はFAPbIであり得る。
【0093】
サンプル番号13から17のサンプル番号のNiO層を生成するために使用されるNiO前駆体インクの配合は、体積比12:1.46:1のエチレングリコール、エタノールアミン、及び水の混合溶媒中に0.72Mの硝酸ニッケル六水和物及び0.1から110mMの酢酸ニッケル四水和物を包含し、各サンプルについて以下に説明するように、銅及び酢酸塩の最終濃度を得るために、追加の酢酸銅を加えた。サンプル番号13のNiO層を生成するために使用されるNiO前駆体インクの配合は、5モル%のCu及び5モル%の酢酸(acetate)を包含する。サンプル番号14のNiO層を生成するために使用されるNiO前駆体インクの配合は、0モル%のCu及び12.5モル%の酢酸を包含する。サンプル番号15のNiO層を生成するために使用されるNiO前駆体インクの配合は、5モル%のCu及び12.5モル%の酢酸を包含する。サンプル番号16のNiO層を生成するために使用されるNiO前駆体インクの配合は、5モル%のCu及び5モル%の酢酸を包含する。サンプル番号17のNiO層を生成するために使用されるNiO前駆体インクの配合は、0モル%のCu及び12.5モル%の酢酸を包含する。サンプル番号18のNiO層を生成するために使用されるNiO前駆体インクの配合は、5モル%のCu及び12.5モル%の酢酸を包含する。上記の各サンプルにおいて、CuとNiの合計モル数に対するCuのモルパーセンテージが示されている。酢酸とニッケルの合計モル数に対する酢酸のモルパーセンテージが表示される。
【0094】
本開示のいくつかの実施形態による材料の一部又は全部は、いずれの有機又は他の光学、機械、又は電子デバイスに有利に使用することができ、いくつかの例には以下が含まれるが、これらに限定されない: バッテリー、電界効果トランジスタ(FET)、発光ダイオード(LED)、非線形光学デバイス、メモリスタ、コンデンサ、整流器、及び/又は整流アンテナ。
【0095】
したがって、本発明は、言及された目的及び利点、ならびにそれに固有の目的及び利点を達成するためによく適合されている。本発明は、本明細書の教示の利益を享受する当業者には明らかな、異なるが同等の方法で修正及び実施され得るため、上記に開示された特定の実施形態は単なる例示である。さらに、本明細書に示される構造又は設計の詳細は、請求項に記載されているもの以外に限定されるものではない。したがって、上に開示した特定の例示的な実施形態は変更又は修正することができ、そのような変更はすべて本発明の範囲及び精神内にあると考えられることは明らかである。特に、本明細書に開示されている値のすべての範囲(「約aから約bまで」、又は同等に「ほぼaからbまで」、又は同等に「ほぼaーbから」という形式の)は、それぞれの値の範囲のべき集合(すべてのサブセットのセット)を指すものと理解されるべきであり、より広い範囲の値に含まれるすべての範囲を説明する。また、請求項の用語は、特許権者によって明示的かつ明確に定義されていない限り、平易な通常の意味を持つ。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B
図10C
図11A
図11B
図11C
図12
図13
図14
図15
図16