IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 清華大学の特許一覧 ▶ 同方威視技術股▲分▼有限公司の特許一覧

特許7420813セキュリティ検査機器およびその制御方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】セキュリティ検査機器およびその制御方法
(51)【国際特許分類】
   G01S 13/89 20060101AFI20240116BHJP
   G01V 3/12 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
G01S13/89
G01V3/12 A
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021538342
(86)(22)【出願日】2019-10-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-22
(86)【国際出願番号】 CN2019110380
(87)【国際公開番号】W WO2020134334
(87)【国際公開日】2020-07-02
【審査請求日】2021-06-29
(31)【優先権主張番号】201811653597.4
(32)【優先日】2018-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】502192546
【氏名又は名称】清華大学
【氏名又は名称原語表記】Tsinghua University
【住所又は居所原語表記】Tsinghua University,Haidian District,Beijing 100084,P.R.China
(73)【特許権者】
【識別番号】503414751
【氏名又は名称】同方威視技術股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】▲陳▼ 志▲強▼
(72)【発明者】
【氏名】游 燕
(72)【発明者】
【氏名】▲趙▼ 自然
(72)【発明者】
【氏名】▲馬▼ 旭明
(72)【発明者】
【氏名】王 ▲凱▼
【審査官】佐藤 宙子
(56)【参考文献】
【文献】特表2018-537679(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109031284(CN,A)
【文献】特開2010-008274(JP,A)
【文献】特開2018-100972(JP,A)
【文献】特開2015-036680(JP,A)
【文献】特開2018-096998(JP,A)
【文献】国際公開第2009/157553(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0320331(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/00- 7/42
G01S 13/00-13/95
G01V 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
被検対象を載せるように構成された底板と、
前記底板に垂直な少なくとも1つの側板と、
前記底板に設けられている、前記底板に平行な2次元多重送受信アレイパネル、および各前記側板に少なくとも1つ設けられている、2次元多重送受信アレイパネルと、
前記2次元多重送受信アレイパネルに接続され、受信したエコー信号に基づいて被検対象の画像を再構成するように構成された信号処理装置と、
信号処理装置に接続され、再構成された被検対象の画像を表示するように構成された表示装置と、を含み、
前記2次元多重送受信アレイパネルは、
それぞれが複数の送信アンテナと複数の受信アンテナとを含むものであって、前記複数の送信アンテナのそれぞれと前記複数の受信アンテナの対応する受信アンテナとを結ぶ線の中点を等価位相中心とし、前記複数の送信アンテナと前記複数の受信アンテナが、等価位相中心が2次元アレイに配列されるように配置される少なくとも1つの2次元多重送受信サブアレイと、
前記複数の送信アンテナを制御して所定の順序で被検対象にマイクロ波ミリ波である検出信号を送信し、前記複数の受信アンテナを制御して被検対象からのエコー信号を受信するように構成された制御回路と、
を含む、セキュリティ検査機器。
【請求項2】
前記少なくとも1つの側板は、第1の側板と、第2の側板と、第3の側板とを含み、前記第1の側板と第2の側板との間は、第1の検出空間を形成し、前記第2の側板と第3の側板との間は、第2の検出空間を形成する、請求項1に記載のセキュリティ検査機器。
【請求項3】
前記底板に設けられている前記2次元多重送受信アレイパネルは、前記底板内部または下方に取り付けられる、請求項1に記載のセキュリティ検査機器。
【請求項4】
前記2次元多重送受信サブアレイのそれぞれにおいて隣接する送信アンテナおよび/または隣接する受信アンテナ間の距離は、前記検出信号の複数の周波数のうちの1つに対応する波長の整数倍であり、隣接する等価位相中心間の距離は、前記検出信号の波長の半分である、請求項1に記載のセキュリティ検査機器。
【請求項5】
前記2次元多重送受信サブアレイは、第1の方向に沿って配列された2行の送信アンテナと、第1の方向に垂直な第2の方向に沿って配列された2列の受信アンテナとを含み、前記2行の送信アンテナと前記2列の受信アンテナは、矩形パターンを形成し、または、
前記2次元多重送受信サブアレイは、第1の方向に沿って配列された1行の送信アンテナと、第1の方向に垂直な第2の方向に沿って配列された1列の受信アンテナとを含み、前記行と前記列とは、交差して十字状を形成する、請求項1に記載のセキュリティ検査機器。
【請求項6】
前記制御回路は、前記2次元多重送受信サブアレイのそれぞれにおける複数の送信アンテナを制御して検出信号を順に送信し、当該2次元多重送受信サブアレイにおける複数の受信アンテナを制御してエコー信号を受信するように構成され、または、
前記制御回路は、前記2次元多重送受信アレイパネルにおける全ての送信アンテナを制御して検出信号を順に送信し、前記2次元多重送受信アレイパネルにおける全ての受信アンテナを制御してエコー信号を受信するように構成される、請求項1に記載のセキュリティ検査機器。
【請求項7】
前記2次元多重送受信アレイパネルが位置する平面内で前記2次元多重送受信アレイパネルを平行移動するように構成された平行移動装置をさらに含む、請求項1~6の何れか一項に記載のセキュリティ検査機器。
【請求項8】
前記信号処理装置に接続された警報装置をさらに含み、
前記信号処理装置は、さらに、再構成された被検対象の画像から、予め設定された標準に従って、被検対象が危険物を含む可能性があるか否かを判断し、危険物を含む可能性があると判断する場合、前記警報装置を制御して警報を行うように構成された、請求項1~6の何れか一項に記載のセキュリティ検査機器。
【請求項9】
前記検出信号は、周波数が10~300GHz範囲内のマイクロ波ミリ波である、請求項1~6の何れか一項に記載のセキュリティ検査機器。
【請求項10】
前記2次元多重送受信アレイパネルの長さおよび幅は、いずれも10cm~50cmの範囲内である、請求項1~6の何れか一項に記載のセキュリティ検査機器。
【請求項11】
前記2次元多重送受信アレイパネルを用いて被検対象に検出信号を送信し、被検対象からのエコー信号を受信することと、
受信したエコー信号に基づいて、被検対象の画像を再構成することとを含む、請求項1~10の何れか一項に記載のセキュリティ検査機器の制御方法。
【請求項12】
前記被検対象の画像を再構成することは、ホログラフィック再構成アルゴリズムまたは逆投影アルゴリズムに基づいて被検対象の画像を再構成することを含む、請求項11に記載の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2018年12月29日に提出された、出願番号が201811653597.4の中国特許出願の優先権を主張し、その内容全体が参照により本願に組み込まれる。
【0002】
本開示は、セキュリティ検査技術分野に関し、具体的にはセキュリティ検査機器およびその制御方法に関する。
【背景技術】
【0003】
空港、駅、ホテル、校庭、銀行などの特別な場所におけるセキュリティ対策は、ますます高まるセキュリティニーズを満たすことができない。毒物、爆発物などの危険物を靴底に隠すことは、現在、犯罪を犯す一般的な方法である。これに通常使用されるセキュリティ検査方法には、金属探知機によるセキュリティ検査、手動セキュリティ検査、X線セキュリティ検査が含まれる。しかし、金属探知機は、金属しか探知できず、毒物、爆発物などの非金属物質を探知することができない。手動セキュリティ検査は、通常の場合、靴を脱いだり、特定の姿勢を維持したりするなど、被検対象の協力が必要であり、被検対象およびセキュリティ検査担当者の両方に不便を与える一方で、セキュリティ検査の速度および正確性が低い。X線セキュリティ検査は、電離放射線があり、人体の健康に影響を与える。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示の一態様によれば、セキュリティデバイスを提供し、当該セキュリティデバイスは、
被検対象を載せるように構成された底板と、
前記底板に設けられて前記底板に平行である2次元多重送受信アレイパネルと、を備え、
前記2次元多重送受信アレイパネルは、
それぞれが複数の送信アンテナと複数の受信アンテナとを含むものであって、前記複数の送信アンテナのそれぞれと前記複数の受信アンテナの対応する受信アンテナとを結ぶ線の中点を等価位相中心とし、前記複数の送信アンテナと前記複数の受信アンテナが、等価位相中心が2次元アレイに配列されるように配置された、少なくとも1つの2次元多重送受信サブアレイと、
前記複数の送信アンテナを制御して所定の順序で被検対象に電磁波形態の検出信号を送信し、前記複数の受信アンテナを制御して被検対象からのエコー信号を受信するように構成された制御回路と、
前記2次元多重送受信サブアレイに接続され、受信したエコー信号に基づいて被検対象の画像を再構成するように構成された信号処理装置と、
信号処理装置に接続され、再構成された被検対象の画像を表示するように構成された表示装置と、を含む。
【0005】
好ましくは、前記セキュリティ検査機器は、少なくとも1つの側板をさらに含み、前記少なくとも1つの側板は、前記底板に垂直であり、各側板には、少なくとも1つの前記2次元多重送受信アレイパネルが設けられている。
【0006】
好ましくは、前記少なくとも1つの側板は、第1の側板と、第2の側板と、第3の側板とを含み、前記第1の側板と第2の側板との間は、第1の検出空間を形成し、前記第2の側板と第3の側板との間は、第2の検出空間を形成する。
【0007】
好ましくは、前記2次元多重送受信アレイパネルは、前記底板内部または下方に取り付けられる。
【0008】
好ましくは、2次元多重送受信サブアレイのそれぞれにおいて隣接する送信アンテナおよび/または隣接する受信アンテナ間の距離は、前記検出信号の複数の周波数のうちの1つに対応する波長の整数倍であり、隣接する等価位相中心間の距離は、前記検出信号の波長の半分である。
【0009】
好ましくは、前記2次元多重送受信サブアレイは、第1の方向に沿って配列された2行の送信アンテナと、第1の方向に垂直な第2の方向に沿って配列された2列の受信アンテナとを含み、前記2行の送信アンテナと前記2列の受信アンテナは、矩形パターンを形成し、または、
前記2次元多重送受信サブアレイは、第1の方向に沿って配列された1行の送信アンテナと、第1の方向に垂直な第2の方向に沿って配列された1列の受信アンテナとを含み、前記行と前記列とは、交差して十字状を形成する。
【0010】
好ましくは、前記制御回路は、2次元多重送受信サブアレイのそれぞれにおける複数の送信アンテナを制御して検出信号を順に送信し、当該2次元多重送受信サブアレイにおける複数の受信アンテナを制御してエコー信号を受信するように構成され、または、前記制御回路は、前記2次元多重送受信アレイパネルにおける全ての送信アンテナを制御して検出信号を順に送信し、前記2次元多重送受信アレイパネルにおける全ての受信アンテナを制御してエコー信号を受信するように構成される。
【0011】
好ましくは、前記セキュリティ検査機器は、前記2次元多重送受信アレイパネルが位置する平面内で前記2次元多重送受信アレイパネルを平行移動するように構成された平行移動装置をさらに含む。
【0012】
好ましくは、前記セキュリティ検査機器は、前記信号処理装置に接続された警報装置をさらに含み、前記信号処理装置は、さらに、再構成された被検対象の画像から、予め設定された標準に従って、被検対象が危険物を含む可能性があるか否かを判断し、危険物を含む可能性があると判断する場合、前記警報装置を制御して警報を行うように構成された。
【0013】
好ましくは、前記検出信号は、周波数が10~300GHz範囲内のマイクロ波ミリ波である。
【0014】
好ましくは、前記2次元多重送受信アレイパネルの長さおよび幅は、いずれも10cm~50cmの範囲内である。
【0015】
本開示の他の態様によれば、上記セキュリティ検査機器の制御方法を提供し、それは、
前記2次元多重送受信アレイパネルを用いて被検対象に検出信号を送信し、被検対象からのエコー信号を受信することと、
受信したエコー信号に基づいて、被検対象の画像を再構成することとを含む。
好ましくは、前記被検対象の画像を再構成することは、ホログラフィック再構成アルゴリズムまたは逆投影アルゴリズムに基づいて被検対象の画像を再構成することを含む。
【0016】
本開示の実施例は、2D MIMOアレイパネルを利用して電磁波走査により底板に載せられた被検対象の局部(例えば、人体の足部)に対して自動セキュリティ検査を行い、検出正確度が高い一方、被検対象の脱靴が不要であり、セキュリティ検査速度を向上させるとともにユーザ使用体験を改善させる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1a】本開示の一実施例によるセキュリティ検査機器の構成概略図を示す。
図1b図1aのセキュリティ検査機器の概略回路図を示す。
図2a】本開示の別の実施例によるセキュリティ検査機器の構成概略図を示す。
図2b図2aのセキュリティ検査機器の概略回路図を示す。
図3a】本開示の一実施例による2D MIMOアンテナアレイの構成概略図を示す。
図3b図3aの2D MIMOアンテナアレイの等価位相中心の概略図を示す。
図4】本開示の別の実施例による2D MIMOアンテナアレイの構成概略図を示す。
図5】本開示の別の実施例による2D MIMOアンテナアレイの構成概略図を示す。
図6】本開示の別の実施例による2D MIMOアンテナアレイの構成概略図を示す。
図7】本開示の別の実施例による2D MIMOアンテナアレイの構成概略図を示す。
図8a】本開示の別の実施例による2D MIMOアンテナアレイの構成概略図を示す。
図8b図8aの2D MIMOアンテナアレイの等価位相中心の概略図を示す。
図9a】本開示の別の実施例による2D MIMOアンテナアレイの構成概略図を示す。
図9b図9aの2D MIMOアンテナアレイの等価位相中心の概略図を示す。
図10】本開示の実施例による2D MIMOアンテナアレイの動作原理の概略図を示す。
図11】本開示の一実施例によるセキュリティ検査機器の制御方法の概略フローチャートを示す。
図12】本開示の別の実施例によるセキュリティ検査機器の制御方法の概略フローチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本開示は、様々な修正および代替可能な形態を許容するが、その具体的な実施例は、例として図面に示され、本明細書で詳細に説明される。しかしながら、添付の図面および詳細な説明は、本開示を開示された具体的な形態に限定することを意図するものではなく、逆に、添付の特許請求の範囲によって限定される本開示の趣旨および範囲に入る全ての補正、同等形態および代替形態をカバーすることを意図することが理解されるべきである。図面は説明のためのものであり、縮尺通りに描かれていない。
【0019】
本明細書において「上」、「下」、「左」、「右」などの用語を使用することは、要素の絶対方位を限定するためではなく、理解のために図面における要素の相対的な位置を説明するためである。本明細書において、「頂側」および「底側」は、一般的な場合に対して物体直立の上側および下側の方位である。「第1の」、「第2の」なども、ソートではなく、異なる部品を区別するためのものである。
【0020】
以下、図面を参照して本開示による複数の実施例を説明する。
【0021】
図1aは、本開示の一実施例によるセキュリティ検査機器の構成概略図を示し、図1bは、図1aのセキュリティ検査機器の概略回路図を示す。図1aおよび1b(まとめて図1と呼ばれる)に示すように、セキュリティ検査機器100は、底板10と、2次元多重送受信アレイパネル20と、信号処理装置30とを含む。
【0022】
底板10は、被検対象40を載せるためのものである。図1aの示例では、被検対象40は、人の足である。底板10は、電磁波の浸透に適した様々な材料であればよく、木、ゴム、ガラスなどを含むが、これらに限定されない。
【0023】
2次元多重送受信(2D MIMO、2~Demensional Multiple-Input Multiple-Output)アレイパネル20は、底板10に設けられて底板10に平行である。図1aでは、2D MIMOアレイパネル20は、底板10の内部に取り付けられ、サイズは、被検対象のサイズとマッチングするように設定され、例えば、人間の両足のサイズとマッチングするように設定される。
【0024】
2D MIMOアレイパネル20は、2D MIMOアンテナアレイ21と、制御回路22とを含む。2D MIMOアンテナアレイ21は、少なくとも1つの2D MIMOサブアレイを含んでもよく、2D MIMOサブアレイのそれぞれは、複数の送信アンテナと複数の受信アンテナとを含み、前記複数の送信アンテナのそれぞれと前記複数の受信アンテナの対応する受信アンテナとを結ぶ線の中点は、等価位相中心(phase center)とされ、前記複数の送信アンテナと前記複数の受信アンテナは、等価位相中心が2次元アレイに配列されるように配置される。制御回路22は、2D MIMOアンテナアレイ21における複数の送信アンテナを制御して所定の順序で被検対象に電磁波形態の検出信号を送信することができ、複数の受信アンテナを制御して被検対象からのエコー信号を受信することができる。いくつかの実施例では、2D MIMOアレイパネル20は、10~40GHzチップによって実現することができ、アレイ集積度が高く、コストが低いなどの利点を有する。
【0025】
信号処理装置30は、2D MIMOアレイパネル20に接続され、受信したエコー信号に基づいて被検対象40の画像を再構成することができる。例えば、信号処理装置30は、アナログ信号プロセッサ、デジタル-アナログ変換器(D/A変換器)およびデジタル信号プロセッサを含んでもよい。2D MIMOアレイパネル20は、マイクロ波ミリ波形態の検出信号を被検対象に送信し、検出信号が被検対象に到達した後に生成されたエコー信号は、2D MIMOアレイパネル20で受信され、それは2D MIMOアレイパネル20の等価位相中心に対応するエコーデータを載せた。2D MIMOアレイパネル20は、エコー信号をアナログ信号プロセッサ21に送信する。アナログ信号プロセッサは、受信した電力信号形態のエコー信号をアナログ信号に変換してデジタル-アナログ変換器に送信する。デジタル-アナログ変換器は、受信したアナログ信号をデジタル信号に変換してデジタル信号プロセッサに送信する。デジタル信号プロセッサは、受信したデジタル信号に基づいて画像再構成を行う。
【0026】
いくつかの実施例では、図1bに示すように、セキュリティ検査機器100は、表示装置50をさらに含んでもよい。表示装置50は、信号処理装置20に接続され、信号処理装置20によって再構成された被検対象40の画像を表示することができる。表示装置3は、表示画面、プロジェクタなどの表示機能を備えた様々な機器として実現されてもよい。いくつかの実施例では、信号処理装置30は、さらに、画像を再構成した後、再構成された被検対象の画像から、予め設定された標準に従って、被検対象が危険物を含む可能性があるか否かを判断することもできる。例えば、禁則シード、毒物、爆発物などの危険物の特徴テンプレートを予め記憶しておき、再構成された画像をテンプレートと対比することにより、被検対象が危険物を含む可能性があるか否かを判断してもよいし、含まれる可能性がある危険物の種類、量およびこの種類の危険品を含む確率などをさらに判断してもよい。信号処理装置30は、被検対象12が危険物を含むことを検出した後、表示装置50を制御して提示情報を提示することができ、例えば、提示情報は、危険物の種類、当該危険品を含む確率などを示すことができ、これにより、作業者が更なる判断を行い、必要に応じてパッケージを開いて検査するのに役立つ。
【0027】
いくつかの実施例では、セキュリティ検査機器100は、信号処理装置2に接続された警報装置60をさらに含んでもよい。この場合、信号処理装置30は、さらに、再構成された被検対象40の画像から、予め設定された標準に従って、被検対象40が危険物を含む可能性があるか否かを判断し、危険物を含む可能性があると判断する場合、警報装置60を制御して警報を行ってもよい。警報装置60は、様々な形態で実現されてもよく、スピーカ、バイブレータ、アラームなどのような音声、振動、および他の様々な形態で警報を発する装置を含むが、これらに限定されない。警報レベルをさらに設定してもよく、例えば、信号処理装置30は、危険物を含む確率が低い場合には、より低い音量の音またはより弱い振動で警告するように警報装置60を制御し、危険物を含む確率が高い場合には、より高い音量の音またはより強い振動で警告するように警報装置60を制御してもよい。
【0028】
いくつかの実施例では、セキュリティ検査機器は、平行移動装置70をさらに含んでもよい。平行移動装置70は、セキュリティ検査機器100に取り付けられてもよく、2D MIMOアレイパネル20が位置する平面内で2D MIMOアレイパネル20を平行移動するために使用される。例えば、平行移動装置70は、予め設定された経路および速度で2D MIMOアレイパネル20を平行移動させることができ、2D MIMOアレイパネル20が走査タスクを完了する度に(すなわち、2D MIMOアレイパネル20内の全ての送信アンテナが検出信号の送信を完了し、受信アンテナがエコー信号の受信を完了する度に)、2D MIMOアレイパネル20を次の位置に平行移動させて、2D MIMOアレイパネル20が次の走査を再開するようにすることができ、これにより、1つの2D MIMOアレイパネル20を用いて複数の2D MIMOアレイパネル20の走査効果を達成することができ、コスト節減およびシステム構成の簡素化の効果を奏することができる。これについては、以下でさらに詳細に説明する。いくつかの実施例では、平行移動装置70は、レール、モータ、接続部材、スライダ、制御回路などを含んでもよく、2D MIMOアレイパネル20は、モータの作用下でレールに沿って移動可能となるように、接続部材を介してスライド部材に取り付けられてもよい。
【0029】
図2aおよび図2b(まとめて図2と呼ばれる)は、それぞれ本開示の別の実施例によるセキュリティ検査機器の構成概略図および概略回路図を示す。図2のセキュリティ検査機器200は、図1のセキュリティ検査機器100と同様であり、少なくとも、図2のセキュリティ検査機器200が3つの側板11、12および13をさらに備え、各側板11、12および13(例えば、内部または表面)に上記2D MIMOアレイパネルが設けられる点で相違する。以下、説明を簡単にするために、主に相違部分について詳細に説明する。図2では、底板10に取り付けられる2D MIMOアレイパネルを20aと示し、側板11、12および13に取り付けられる2D MIMOアレイパネルをそれぞれ20b、20cおよび20dとして示し、2D MIMOアレイパネル20a、20b、20c、20dをまとめて2D MIMOアレイパネル20と呼ぶ。側板11と側板12との間は、第1の検出空間を形成し、側板12と側板13との間は、第2の検出空間を形成する。図2aでは、第1の検出空間および第2の検出空間は、それぞれ、被検対象40の2つの部分、例えば人の左足および右足を収容することができる。底板10(例えば、内部または下方)に取り付けられる2D MIMOアレイパネル20aは、被検対象40(例えば、人の両足)の底部(例えば、靴底)を走査するために使用され得、側板11、12および13の内部または表面に取り付けられる2D MIMOアレイパネル20b、20cおよび20dは、被検対象40(例えば、人の両足)の側面を走査するために使用され得る。
【0030】
信号処理装置30は、2D MIMOアレイパネル20a、20b、20c、20dに接続される。信号処理装置30は、以上のような構成を有していてもよく、もちろん、他の適切な構成を採用していてもよい。2D MIMOアレイパネル20a、20b、20c、20dは、それぞれ異なる位置から被検対象40の異なる部分に検出信号を送信して被検対象40の各部分からのエコー信号を受信し、例えば、2D MIMOアレイパネル20aは、人の両足の底部に検出信号を送信し、人の両足底部からのエコー信号を受信し、2D MIMOアレイパネル20bおよび20cは、それぞれ人の左足の両側に検出信号を送信し、対応するエコー信号を受信し、2D MIMOアレイパネル20cおよび20dは、それぞれ人の右足の両側に検出信号を送信し、対応するエコー信号を受信する。信号処理装置30は、2D MIMOアレイパネル20a、20b、20c、20dのそれぞれのエコー信号に基づいて、当該2D MIMOアレイパネルに対応する被検対象部分の画像を再構成することができ、例えば、2D MIMOアレイパネル20aが受信したエコー信号に基づいて、人の両足の底部の画像を再構成し、2D MIMOアレイパネル20bおよび20cが受信したエコー信号に基づいて、それぞれ左足の両側の画像を再構成し、2D MIMOアレイパネル20cおよび20dが受信したエコー信号に基づいて、それぞれ右足の両側の画像を再構成することができる。信号処理装置30は、2D MIMOアレイパネル20a、20b、20c、20dのエコー信号の組み合わせに基づいて、被検対象の画像の一部または全体を再構成することもできる。
【0031】
以上、3つの側板11、12および13を有し、各側板に1つの2D MIMOアレイパネルが設けられていることを例として説明したが、本開示の実施例はこれに限定されず、側板の数および配列形態ならびに側板における2D MIMOアレイパネルの数および配列形態が必要に応じて設計されてもよいことは、当業者にとって明らかである。例えば、底板に垂直であり且つ底板における2D MIMOアレイパネルの上方に位置する1つの側板を設けることができ、当該側板の両側の空間には、人の左足と右足がそれぞれ置かれ、当該側板の左右両側の表面または内部には、それぞれ少なくとも1つの2D MIMOアレイパネルが設けられて左足の右側と右足の左側をそれぞれ走査することができる。いくつかの実施例では、底板および側板の形状ならびにサイズは、異なる検出対象の外形およびサイズに適応するように必要に応じて設定されてもよい。例えば、側板は、円弧状、不規則な形状などに設計されてもよく、底板は、円形、不規則な形状などに設計されてもよい。いくつかの実施例では、他の方向に延びる2D MIMOアレイパネルを設けてもよく、例えば、側板上方に位置する頂板を設けてもよく、頂板には、人体の足の表面を走査するなどために、2D MIMOアレイパネルを設けてもよく、ここでその説明が省略される。
【0032】
いくつかの実施例では、上記セキュリティ検査機器は、他のセキュリティ検査機器と組み合わせて使用することができ、例えば、ミリ波検出に基づくセキュリティ検査ゲートの下方に取り付けることができ、被検対象が当該セキュリティ検査機器に立って、ミリ波セキュリティ検査ゲートによる走査探知を待つと同時に、その足の結像が完了する。当該セキュリティ検査機器の検出および結像過程は、ミリ波セキュリティ検査ゲートと同時に行うことができ、表示装置および/または警報装置を共用することができる。
【0033】
以下、図3図10を参照して、本開示の実施例による2D MIMOアレイパネル20における2D MIMOアンテナアレイ21の構造を説明する。本開示の実施例によれば、2D MIMOアレイパネル20は、10~40GHzチップを用いて実現することができ、2D MIMOアレイパネル20における2D MIMOアンテナアレイ21は、アレイに配列された複数の送信アンテナと複数の受信アンテナを含むことができ、送信アンテナと受信アンテナは、必要に応じて様々な形態で基板に取り付けることができる。2D MIMOアンテナアレイ21は、少なくとも1つの2D MIMOサブアレイを含むことができ、各サブアレイのサイズは、等価位相中心を使用する許容可能な誤差に従って決定され、結像距離(検出距離)に関する。本開示の実施例では、各2D MIMOサブアレイにおいて隣接する送信アンテナおよび/または隣接する受信アンテナ間の距離は、検出信号の複数の周波数のうちの1つ(例えば、中心動作周波数)に対応する波長の整数倍(例えば、1倍、2倍、3倍、4倍、5倍など)であってもよい。隣接する等価位相中心間の距離は、検出信号の複数の周波数のうちの1つに対応する波長の半分であってもよい。2D MIMOアンテナアレイ21のサイズは、結像領域と同じか、または結像領域より若干小さくまたは若干大きく設計されてもよく、それにより、被検対象の画像を正しく再構成することを確保でき、例えば、2D MIMOアンテナアレイの長さおよび幅は、30cm~50cm範囲内であってもよい。2D MIMOアンテナアレイ21の結像距離、すなわち、2D MIMOアンテナアレイ21と被検対象との間の距離は、2cm~30cm範囲内であってもよい。
【0034】
図3aおよび3b(まとめて図3と呼ばれる)は、それぞれ本開示の一実施例による2D MIMOアンテナアレイの構成概略図および等価位相中心概略図を示す。
図3aに示すように、2D MIMOアンテナアレイは、1つのサブアレイを含み、当該サブアレイは、水平方向に配列された2行の送信アンテナTxと、垂直方向に配列された2列の受信アンテナRxとを含み、2行の送信アンテナTxと2列の受信アンテナRxとは、矩形パターンを形成する。図3aでは、2D MIMOアンテナアレイのサイズは、30cm×30cmであってもよく、送信アンテナTxと受信アンテナRxの数はそれぞれ46、46であり、図では、簡略化のために、送信アンテナTxと受信アンテナRxの数は、単に例示であり、実際の数ではない。
【0035】
図3bに示すように、送信信号と受信信号の等価位置は、アンテナの位相中心で表すことができ、当該等価位置は、2つの独立したアンテナまたは開口の物理中心である。本開示の実施例では、送信アンテナと対応する受信アンテナとを結ぶ線の中点を二者の等価位相中心とする。MIMOアーキテクチャの下では、1つの送信アンテナTxが複数の受信アンテナRxに対応し、本開示の実施例では、受信アンテナRxと送信アンテナTxが同じ位置に配置されず、そのような送信アンテナおよび受信アンテナが空間的に分離されたシステムは、1つの仮想的なシステムを使用してシミュレーションすることができ、仮想システムでは、送信アンテナTxと受信アンテナRxの各グループの間に1つの仮想位置が追加され、この位置は等価位相中心と呼ばれる。送受信アンテナの組み合わせによって収集されたエコーデータは、その等価位相中心が存在する位置で自己送受信アンテナによって収集されたエコーと等価であり得る。
【0036】
図3における2D MIMOアンテナアレイでは、隣接する送信アンテナと隣接する受信アンテナとの間の距離はいずれも、検出信号の波長λであり、隣接する等価位相中心間の距離は、λ/2であり、結像のサンプリング間隔(すなわち、等価位相中心の間隔)は、λ/2 のオーダーであり、これにより、再構成された画像にはアーチファクトの重畳が存在しない。
【0037】
図4は、本開示の別の実施例による2D MIMOアンテナアレイの構成概略図を示す。図4に示すように、2D MIMOアンテナアレイは、2×2個のサブアレイを含み、各サブアレイのサイズは、10cm×10cmとされ、2D MIMOアンテナアレイの総サイズは、20cm×20cmであり、送信アンテナTxと受信アンテナRxの数は、それぞれ141、141である。
【0038】
図5は、本開示の別の実施例による2D MIMOアンテナアレイの構成概略図を示す。図5に示すように、2D MIMOアンテナアレイは、3×3個のサブアレイを含み、各サブアレイのサイズは、8cm×8cmであり、2D MIMOアンテナアレイの総サイズは、24cm×24cmであり、送信アンテナTxと受信アンテナRxの数は、それぞれ224、224である。
【0039】
図6は、本開示の別の実施例による2D MIMOアンテナアレイの構成概略図を示す。図6に示すように、2D MIMOアンテナアレイは、2×3個のサブアレイを含んでもよく、各サブアレイのサイズは、10cm×10cmであり、2D MIMOアンテナアレイの総サイズは、20cm×30cmであり、送信アンテナTxと受信アンテナRxの数は、それぞれ188、213である。
【0040】
図7は、本開示の別の実施例による2D MIMOアンテナアレイの構成概略図を示す。図7に示すように、2D MIMOアンテナアレイは、2×4個のサブアレイを含み、各サブアレイのサイズは、10cm×10cmであり、2D MIMOアンテナアレイの総サイズは、20cm×40cmであり、送信アンテナTxと受信アンテナRx数は、それぞれ285、235である。
【0041】
上記10~40GHzチップを用いることに加えて、2D MIMOアレイパネル20は、2~100GHz範囲内の他の周波数のMIMOチップとしても実現できる。2D MIMOアレイパネル20において2D MIMOアンテナアレイ21の長さおよび幅は、30cm~50cm範囲内であってもよく、結像距離(すなわち、2D MIMOアンテナアレイと被検対象との距離)は、2cm~30cm範囲内であってもよい。表1は、2D MIMOアンテナアレイの総サイズが30cm×30cmである場合、2つの異なるサブアレイサイズについて異なる周波数帯域における送信アンテナTxと受信アンテナRxの数を表し、*は、中心周波数を表す。例えば、表1に示すように、30cm×30cmの2D MIMOアンテナアレイについて、サブアレイサイズが30cm×30cmであれば、2GHz~20GHz周波数帯域の検出信号に関して、送信アンテナ数が18個であり、受信アンテナ数が18個であるが、サブアレイサイズが15cm×15cmであれば、2GHz~20GHz周波数帯域の検出信号に関して、送信アンテナ数が24個であり、受信アンテナ数が24個であり、以下同様である。
【0042】
【表1】
【0043】
図8aは、本開示の別の実施例による2D MIMOアンテナアレイの構成概略図を示す。図8bは、図8aの2D MIMOアンテナアレイの等価位相中心の概略図を示す。図8aに示すように、2D MIMOアンテナアレイは、1つのサブアレイを含み、当該サブアレイは、水平方向に沿って配列された1行の送信アンテナTxと、垂直方向に沿って配列された1列の受信アンテナRxとを含み、当該1行の送信アンテナTxと1行の受信アンテナRxとは、交差して十字状パターンを形成する。図9bに示すように、図9aの2D MIMOアンテナアレイの等価位相中心は、アレイの形態で十字形パターンの中心位置に分布する。
【0044】
図9aは、本開示の別の実施例による2D MIMOアンテナアレイの構成概略図を示す。図9bは、図8aの2D MIMOアンテナアレイの等価位相中心の概略図を示す。図9aに示すように、2D MIMOアンテナアレイは、1つのサブアレイを含み、当該サブアレイは、アレイの第1の対角方向に沿って配列された1列の送信アンテナTxと、アレイの第2の対角方向に沿って配列された1列の受信アンテナRxとを含み、当該1列の送信アンテナTxと1列の受信アンテナRxとは、交差して、パネルに対角形態の十字形パターンを形成する。図9bに示すように、図9bの等価位相中心は、図8bの等価位相中心に対して45度(時計回りまたは反時計回り)回転されており、これは、図9aの2D MIMOアンテナアレイが図8aの2D MIMOアンテナアレイに対して45度回転されるためである。
【0045】
当業者には明らかなように、以上は、単なる例であり、本開示の2D MIMOアンテナアレイ11の構造は、これに限定されず、サブアレイのサイズ、アレイのサイズ、サブアレイにおいてアンテナの配列形態およびアンテナの数は、必要に応じて調整されてもよい。
【0046】
以下、図10を参照して、本開示の実施例による2D MIMOアンテナアレイの動作原理を説明する。図10に示すように、4×4個のサブアレイを含む2D MIMOアンテナアレイを例として説明し、各サブアレイ101は、図2に示す構造を有し、形成された等価位相中心は、アレイ102の形態(等価位相中心ネットワークとも呼ばれる)で配列され、(n、n)は、アレイ(等価位相中心ネットワーク)における等価位相中心の座標を示す。当該2D MIMOアンテナアレイの結像領域103の中心基準点は、
【数1】
で表され、被検対象は、中心基準点
【数2】
に位置する点散乱体を含む。セキュリティ検出を行う時に、電子走査の形態を用いて上記2D MIMOアンテナアレイを制御することができる。
【0047】
例として、制御回路は、2D MIMOアンテナアレイの各サブアレイにおける送信アンテナを制御して検出信号を順に送信し、受信アンテナを制御してエコー信号を受信し、それから、次のサブアレイを切り替え、アンテナアレイの全体の走査が完了するまでこれを繰り返して、被検対象の異なる視角の全ての散乱データを取得する。別の示例として、制御回路は、2D MIMOアンテナアレイにおける全ての送信アンテナを制御して検出信号を順に送信し、2D MIMOアンテナアレイにおける全ての受信アンテナを制御してエコー信号を受信することができる。2D MIMOアンテナアレイがただ1つのサブアレイを含む場合、後述するホログラフィック再構成アルゴリズムを用いて画像再構成を行うことができる。2D MIMOアンテナアレイが複数のサブアレイを含む場合、後述する逆投影アルゴリズムを用いて再構成を行うことができる。
【0048】
本開示の実施例では、周波数が10~300GHz範囲内のマイクロ波ミリ波を検出信号として用い、当該帯域の波は、人体に電離障害を与えず、人体セキュリティ検査に用いることができる。本開示の実施例では、2D MIMOアンテナアレイは、2次元アレイに配置された複数の送信アンテナと複数の受信アンテナを含み、電子走査の形態で動作し、電子走査は、検出速度が速い利点を有し、高速フーリエ変換(FFT)に基づく3次元ホログラフィックアルゴリズムアルゴリズムと組み合わせてリアルタイム結像を実現することができる。2D MIMOアンテナアレイにおける1つの送信アンテナと1つの対応する受信アンテナは、1つの等価位相中心を生成することができ、送受信アンテナ組み合わせのペアによって収集されたエコーデータは、その等価位相中心がある位置での自己受送信アンテナによって収集されたエコーと等価であり得る。等価位相中心はアレイに配列され、隣接する等価位相中心の間隔は基本的に検出信号の波長λの半分であり、これにより、等価挙動中心アレイ全体が基本的にフルアレイになり、適用される結像システムで採用されるサンプリング間隔(すなわち、等価位相中心の間隔)はλ/2 のオーダーであるため、生成された画像にはアーチファクトの重畳が存在せず、より鮮明な画像を形成することができ、画像処理の速度が向上する。
【0049】
図11は、本開示の実施例によるセキュリティ検査機器の制御方法の概略フローチャートを示す。
【0050】
ステップS101では、2D MIMOアレイパネル20を制御して、検出信号を被検対象に送信し、被検対象からのエコー信号を受信する。例えば、制御回路22によって、2D MIMOアンテナアレイ21を制御して、上述のようにして被検対象に検出信号を送信し、エコー信号を受信するようにしてもよい。検出信号は、電磁波であってもよく、例えば、ミリ波、具体的にはミリ波テラヘルツ波であってもよい。
【0051】
ステップS102では、受信したエコー信号に基づいて、被検対象の画像を再構成する。例えば、ホログラフィック再構成アルゴリズムまたは逆投影アルゴリズムを用いて被検対象の画像を再構成することができる。
【0052】
ホログラフィック再構成アルゴリズムは、被検物画像のリアルタイム再構成を実現することができる。送受信アンテナ組み合わせのペアによって収集されたエコーデータは、その等価位相中心がある位置での自己受送信アンテナによって収集されたエコーと等価であり得る。信号処理装置は、等価位相中心におけるエコーデータを収集し、収集された被検対象の反射データをs(n、n)と仮定し、反射データを以下の式により補正し、補正後反射データマトリクスが得られる。
【0053】
【数3】
【0054】
s(n、n)は、補正されていない散乱データマトリクスであり、nおよびnは、等価位相中心ネットワークにおける等価位相中心の位置(すなわち、行および列の指数)である。
【0055】
(n、n)のR(n、n)の算出式は、次のとおりである。
【数4】
【0056】
図10に示すように、
【数5】
は、結像領域103の中心の基準点を表し、jは、虚数を表し、kは、空間定数を表す。
【0057】
(n、n)は、算出された反射集を表し、この場合、図10に示すように、次の被検対象がサンプリングされ、被検対象は、
【数6】
に定位する1つの点散乱体を含む。
【0058】
(n、n)は、算出された反射集を表し、マルチ送受信開口の等価位相中心ネットワークをサンプリング(図10に示す)する場合、この算出された反射集が得られる。
【0059】
次に、2次元フーリエ変換アルゴリズムを使用して再構成し、被検対象の散乱係数が得られる:
【数7】
I(x、y)は、被検対象の散乱係数を表し、zは、2D MIMOアレイパネルと被検対象との間の距離を表し、jは、虚数を表し、kは、伝搬定数であり、k、kはそれぞれ空間伝搬定数である。FFT2Dは、2次元フーリエ変換であり、IFFT2Dは、2次元逆フーリエ変換である。
【0060】
2次元開口走査が完了した後に、収集されたエコーデータは、s(n、n)として表すことができる。最後に、快速フーリエ変化に基づく合成開口ホログラフィックアルゴリズムと組み合わせて、高速再構成を実現でき、結像を完了することができる。結像アルゴリズムの目的は、エコー表示式から被検対象の像、すなわち被検対象の散乱係数I(x、 y)を逆算することにあり、フーリエ変換に基づく合成開口ホログラフィックアルゴリズムは、結像領域全体をポイント毎に再構成する必要がなく、高速フーリエ変換の利点を用いて、正確な結像領域に対する再構成を一度に完了する。したがって、当該アルゴリズムは、高速走査および高速画像再構成を実現できるため、リアルタイム結像を実現する。再構築された画像が表示装置に表示され、不審物警告アルゴリズムと組み合わせて不審物に対して警告が行われる。
【0061】
逆投影は、コンピュータ断層走査技術から生じ、時間領域信号処理に基づく精確な撮像アルゴリズムである。その基本的な考え方としては、結像領域領域内の各結像ポイントについて、そのポイントと受信アンテナおよび送信アンテナの間の遅延を算出することにより、全てのエコーのそのポイントへの寄与に対してコヒーレント重ね合わせ処理を行って、当該ポイントの画像内の対応する画素値が得られ、このように、結像領域全体に対してポイント毎にコヒーレント重ね合わせ処理を行って、結像領域の画像が得られる。逆投影アルゴリズムは、本来、並列演算が容易であるため、複数のサブアレイにおける受信アンテナが同時に反射した電磁波を受信する場合に適用される。結像区間全体の各ポイントを再構築する必要があるが、処理システムにおけるハードウェアがGPUまたはFPGA技術を使用する場合、再構成時間は大幅に低減され、リアルタイム再構成さえも実現できる。
【0062】
再構成式は、次のように表すことができる。
【数8】
【0063】
【数9】
は、被検対象の散乱係数であり、zは、結像距離であり、jは、虚数単位であり、kは、伝搬定数であり、s(x、y、x、y、k)は、送信アンテナ-受信アンテナ組み合わせのペアが受信した被検対象のエコー信号であり、(x、y)は、送信アンテナ座標であり、(x、y)は、受信アンテナの座標であり、zは、2D MIMOアレイパネルと被検対象のある断層との距離を表す。
【0064】
ステップS102の後、他のステップを実行してもよく、例えば、再構成された被検対象の画像を分析して、被検対象が危険物を携行する可能性があるか否かを判断し、危険物を含む可能性があると判断する場合、警報装置を制御して警報を行う。例えば、再構成された被検対象の画像と予め記憶されたテンプレートとを比較し、ある危険物の特徴テンプレートとのマッチング度合いが予め設定された閾値よりも大きければ、この種類の危険物を含む可能性があると判断し、そうでなければ、危険物を含んでいないと判断することができる。いくつかの実施例では、さらに、マッチング度合いの高低に基づいて危険物を含む確率の高低を特定してもよく、例えば、マッチング度合いが高いことは、危険物を含む確率が高いことを表し、マッチング度合いが低いことは、危険物を含む確率が低いことを表す。警報の形態は、画面表示、オーディオ警報、振動警報などを含むが、これらに限定されない。警告のレベルを設定してもよく、例えば、危険物を含む確率が低い場合には、より低い音量の音またはより弱い振動で警告し、危険物を含む確率が高い場合には、より高い音量の音またはより強い振動で警告することができる。
【0065】
また、表示装置を介して、再構成された被検対象の画像および/または上記判断結果をユーザに提示することもでき、例えば、画像再構成後に再構成された画像を表示画面で表示し、その後、分析結果を表示画面に提示することができる。画像再構成および分析対比を完了した後に再構成された画像と判断結果を合わせて表示画面に表示することもできる。判断結果(例えば、どのような危険物を含む可能性があるか、当該危険物を含む確率)の提示態様は、必要に応じて選択されてもよく、上述したように表示画面に画面の形態で提示するのに加えて、オーディオ、振動などの他の形態で提示してもよく、例えば、判断結果を音声の形態で再生してもよいし、警報器の警報音量の高低または振動の強弱で判断結果を指示してもよく、例えば、高い音量の警報は、危険物を含む可能性が高いことを表し、低い音量の警報は、危険物を含む可能性が低いことを表す。
【0066】
図12は、本開示の別の実施例によるセキュリティ検査機器の制御方法の概略フローチャートを示す。
【0067】
ステップS201では、制御2D MIMOアレイパネルを制御して、被検対象に検出信号を送信し、被検対象からのエコー信号を受信する。本実施例で採用するのは、電子走査と機械走査とを組み合わせた走査形態であり、本ステップでは、2D MIMOアレイパネルは現在位置で電子走査を行う。
【0068】
ステップS202では、2D MIMOアレイパネルが電子走査を完了した(すなわち、全ての送信アンテナが送信を完了し、受信アンテナが受信を完了した)か否かを判断し、完了したと判断する場合、現在位置の走査が完了したことを表し、ステップS203に進んで次の位置に平行移動し、そうであれば、ステップS201に戻って現在位置の走査を継続する。図10は、本開示の実施例によるセキュリティ検査機器の機械走査と電子走査とを組み合わせた走査線概略図を示す。図10に示すように、1つの5cm×5cmの2D MIMOアレイパネルで30cm×30cmのエリアアレイを機械的に走査する場合、経路上の全ての位置の走査が完了するまで、図10に矢印で示す経路に沿って1ステップ(例えば5cm)ずつ平行移動し、30cm×30cmのエリアアレイの走査を実現する。
【0069】
ステップS203では、機械走査が完了したか否か、すなわち、平行移動経路上の最後の1つの位置の電子走査が完了したか否かを判断し、完了したと判断する場合、2D MIMOアレイパネルが経路上の全ての位置の走査を完了したことを表すため、現在被検対象の走査が終了し、ステップS204に進んで画像再構成を行い、そうであれば、ステップS205に進んで次の位置に平行移動して走査を行う。
【0070】
ステップS204では、得られたエコー信号を用いて被検対象の画像を再構成する。再構成アルゴリズムは、上記ホログラフィック再構成アルゴリズムおよび逆投影アルゴリズムを含むが、これらに限定されない。

【0071】
ステップS205では、2D MIMOアレイパネルを平行移動させ、ステップS201に戻り、新たな位置で再度走査検出を行う。平行移動は、予め設定された経路に従って実行することができ、例えば、図10に示すように、経路上の最後の位置に平行移動するまで、1ステップずつ平行移動する。
【0072】
いくつかの実施例では、ステップS204の後にステップS206~207を実行してもよい。
【0073】
ステップS206では、再構成された被検対象の画像を分析して、被検対象が危険物を含む可能性があるか否かを判断し、危険物を含む可能性があると判断する場合、ステップS207を実行し、そうでなければ、現在被検対象のセキュリティ検出を終了する。例えば、再構成された被検対象画像と予め記憶されたテンプレートとを比較し、ある危険物の特徴テンプレートとのマッチング度合いが予め設定された閾値よりも大きければ、この種類の危険物を含む可能性があると判断し、そうでなければ、危険物を含んでいないと判断することができる。いくつかの実施例では、さらに、マッチング度合いの高低に基づいて危険物を含む確率の高低を特定してもよく、例えば、マッチング度合いが高いことは、危険物を含む確率が高いことを表し、マッチング度合いが低いことは、危険物を含む確率が低いことを表す。
【0074】
ステップS207では、警報装置を制御して警報を行う。警報の形態は、画面表示、オーディオ警報、振動警報などを含むが、これらに限定されない。警告のレベルをさらに設定してもよく、例えば、危険物を含む確率が低い場合には、より低い音量の音またはより弱い振動で警告し、危険物を含む確率が高い場合には、より高い音量の音またはより強い振動で警告することができる。
【0075】
以上は、セキュリティ検査機器が1つの2D MIMOアレイパネルを含む場合を説明したが、複数の2D MIMOアレイパネルを含むセキュリティ検査機器に対しても、図2に示すように、4個の2D MIMOアレイパネルを含むセキュリティ検査機器に対しても、制御方法が類似することは、当業者にとって明らかである。いくつかの実施例では、さらに、複数の2D MIMOアレイパネルによって受信したエコー信号の組み合わせを用いて被検対象の画像を再構成することもできる。いくつかの実施例では、さらに、複数の2D MIMOアレイパネルにそれぞれ対応する複数の再構成画像の組み合わせ(例えば、人の足の異なる視角の画像)に基づいて分析を行って、危険物を含む可能性があるか否か、危険物の種類、数などを判断することもできる。
【0076】
本開示の実施例は、プロセッサによって実行されたときに、プロセッサに上記セキュリティ検査機器の制御方法を実行させる命令を記憶したコンピュータ可読媒体をさらに提供する。
【0077】
本開示の実施例は、電磁波に基づいて(例えば、超広帯域レーダー技術に基づいて)底板に載せられた被検対象の局部(例えば、人体の足)を自動セキュリティ検査することができ、検出正確度が高い一方で、被検対象の脱靴が不要であり、セキュリティ検査速度を向上させるとともにユーザ使用体験を改善させる。
【0078】
本開示の実施例は、全電子走査形態および電子走査と機械走査とを組み合わせた走査形態をサポートする。全電子走査形態は走査速度が速く、高速フーリエ変換(FFT)に基づく3次元ホログラフィックアルゴリズムアルゴリズムと組み合わせて、リアルタイム結像を実現することができる。電子走査と機械走査とを組み合わせた走査形態は、小さなアンテナアレイを利用して、大きな結像領域の走査を実現することができ、コストを節約し、構造が簡単である。
【0079】
本開示の実施例は、必要に応じて、様々な異なる構成の2D MIMOアンテナアレイを柔軟に選択することができ、より高い使用柔軟性を有する。ミリ波を検出信号として用いることで、被検査物を透過して結像することができ、X線機器の代わりにセキュリティ検出の目的を達成するとともに、より高い検出品質およびより高い安全性が向上する。
【0080】
本開示の実施例は、再構成された被検査物の画像を自動的に分析することにより、自動化脅威検出を提供することができ、従来形態に比べて大幅に検出効率を向上させ、検出漏れ率を低下させる。
【0081】
当業者であれば、上記した実施例が全て例示的であり、当業者であれば、それらを改善することができ、様々な実施例において説明した構造を構造的または原理的に矛盾しない場合に自由に組み合わせることができることを理解することができる。
【0082】
本開示の好ましい実施例を詳細に説明した後、当業者は、添付の特許請求の範囲の保護範囲および精神から逸脱することなく、様々な変更および改変を行うことができ、本開示が明細書に挙げた示例的な実施例の実施形態に限定されないことは、当業者には明らかであろう。
図1a
図1b
図2a
図2b
図3a
図3b
図4
図5
図6
図7
図8a
図8b
図9a
図9b
図10
図11
図12