IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシーの特許一覧

特許7420818コーティングされた基材を製造するプロセス
<>
  • 特許-コーティングされた基材を製造するプロセス 図1
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】コーティングされた基材を製造するプロセス
(51)【国際特許分類】
   C09D 133/00 20060101AFI20240116BHJP
   C09D 7/42 20180101ALI20240116BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20240116BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240116BHJP
   B05D 5/06 20060101ALI20240116BHJP
   B05D 7/24 20060101ALI20240116BHJP
   C08J 7/04 20200101ALI20240116BHJP
【FI】
C09D133/00
C09D7/42
C09D5/02
C09D7/63
B05D5/06 D
B05D7/24 302P
B05D7/24 303H
B05D7/24 303A
C08J7/04 Z
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021543976
(86)(22)【出願日】2019-10-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 US2019054225
(87)【国際公開番号】W WO2020076577
(87)【国際公開日】2020-04-16
【審査請求日】2022-09-26
(31)【優先権主張番号】62/742,608
(32)【優先日】2018-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502141050
【氏名又は名称】ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100095360
【弁理士】
【氏名又は名称】片山 英二
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】クオ、インチョン
(72)【発明者】
【氏名】セカラン、マネシュ ナドゥパランビル
(72)【発明者】
【氏名】ライ、ヤミン
【審査官】水野 明梨
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-156025(JP,A)
【文献】国際公開第2018/071088(WO,A1)
【文献】特開2002-309172(JP,A)
【文献】特開2007-262405(JP,A)
【文献】特開2014-196401(JP,A)
【文献】特表2015-537057(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D 1/00-201/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセスであって、
水性艶消しコーティング組成物を形成することであって、前記水性艶消しコーティング組成物が、
A1)0.1μm~2μmの平均粒径を有する第1のアクリルポリマーのビーズと、
A2)0.5μm~30μmの平均粒径を有する第2のアクリルポリマーのビーズと、
B)アクリルポリマー結合剤と、
C)0.15重量%~2.5重量%のスリップ添加剤と、
D)0.10重量%~0.30重量%の、自己乳化性であり、シリコーンとシリカの両方を含まない消泡剤と、
E)0.8重量%~1.5重量%のレオロジー調整剤と、
F)0.01重量%~0.1重量%の少なくとも1つの湿潤剤と、を含む、水性艶消しコーティング組成物を形成することと、
前記水性艶消しコーティング組成物に架橋剤を加えて架橋可能な水性艶消しコーティング組成物を形成することと、
前記水性艶消しコーティング組成物を基材に塗布することと、
前記水性艶消しコーティング組成物を乾燥させることと、
前記基材上に架橋コーティングを形成することと、を含み、
前記架橋コーティングが、
(i)60°および430時間で測定された、15%未満の光沢値の変化率を有し、
(ii)430時間で測定された、2.0~2.5の色(CMC)値を有する、プロセス。
【請求項2】
前記スリップ添加剤が、
i)0.1重量%~1.0重量%のシリコーンエマルジョンと、
ii)0.5重量%~1.5重量%のアミドワックス分散液であって、前記アミドワックスがアルキル二級アミドワックスである、アミドワックス分散液と、を含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
コーティングされた基材を形成することであって、前記コーティングされた基材が、
25℃および相対湿度50%で測定された、2.0~2.6の静摩擦係数と、
25℃および相対湿度50%で測定された、1.0~1.5の動摩擦係数と、を有する、形成することを含む、請求項に記載のプロセス。
【請求項4】
前記第1のアクリルポリマーのビーズが、前記水性艶消しコーティング組成物の重量に基づいて、20重量%~30重量%の量で存在する、請求項1に記載のプロセス。
【請求項5】
前記第2のアクリルポリマーのビーズが、前記水性艶消しコーティング組成物の重量に基づいて、45重量%~55重量%の量で存在する、請求項に記載のプロセス。
【請求項6】
ポリエチレンテレフタレート、配向ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、紙、箔、およびそれらの金属化フィルムからなる群から選択される材料から作製された基材を提供することを含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項7】
前記架橋コーティングが、4~5のテープ接着力(Scotch 610テープ)を有する、請求項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記架橋コーティングが、85°および430時間で測定された、15%未満の光沢値の変化率を有する、請求項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記架橋コーティングが、60°および430時間で測定された、0~3の光沢単位の変化を有する、請求項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記架橋コーティングが、85°および430時間で測定された、0~3の光沢単位の変化を有する、請求項に記載のプロセス。
【請求項11】
請求項1~10のいずれかに記載のプロセスから作製された前記コーティングされた基材を含む物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
艶消し仕上げは、包装の機能性および/または外観を変えるために包装用途(例えば食品包装用途)において一般的に使用されている。例えば、艶消し仕上げは、光沢の低減および色の保持などの光学的外観、触感または触覚の応答、直接印刷用のインクおよび画像の保護、および加工性を向上させることができる。現在、ほとんどの艶消し仕上げは、シリカなどの無機充填剤と、溶剤型または水性のいずれかのアクリルおよび/またはポリウレタン結合剤から配合されている。しかしながら、既存の艶消し仕上げは、例えばグラビアおよびフレキソ印刷用途分野の両方において、低い色忠実度および弱い耐摩耗性を示す。
【0002】
最近、ポリウレタンビーズを組み込んだ艶消し仕上げが、以前の艶消し仕上げで発生した柔らかい触感、向上した色忠実度、および耐摩耗性の問題に対処してきた。しかしながら、ポリウレタンビーズは、比較的高価であり、ヒートシール耐性の問題を有する。さらに最近になって、アクリルビーズおよびアミノシランを含む艶消し仕上げが、上述の問題に対処するために使用されてきた。しかしながら、これらのアクリルビーズおよびアミノシランの組み込みでさえも、顧客の満たされていないニーズに十分に対処していない。したがって、摩擦係数を維持しながら、UV曝露下での改善された光沢および色値の保持(耐候性)を提供する水性艶消しコーティング組成物が望ましい。
【発明の概要】
【0003】
本開示は、プロセスを提供する。一実施形態では、このプロセスは、A1)0.1μm~2μmの平均粒径を有する第1のアクリルポリマーのビーズと、A2)0.5μm~30μmの平均粒径を有する第2のアクリルポリマーのビーズと、B)アクリルポリマー結合剤と、C)0.15重量%~2.5重量%のスリップ添加剤と、D)0.10重量%~0.30重量%の消泡剤と、E)0.8重量%~1.5重量%のレオロジー調整剤と、F)0.01重量%~0.1重量%の少なくとも1つの湿潤剤と、を含む、水性艶消しコーティング組成物を形成することを含む。水性艶消しコーティング組成物を基材に塗布し、次に乾燥させて基材上にコーティングを形成する。
【0004】
定義
元素周期表へのいかなる参照も、CRC Press,Inc.によって1990-1991に発行されたときのものである。この表における元素の族への参照は、族の番号付けの新しい表記法による。
【0005】
米国特許実務を目的として、任意の参照される特許、特許出願、または刊行物の内容は、特に定義の開示(本開示に具体的に提供される任意の定義に矛盾しない範囲で)、およびこの技術分野における一般的知識に関して、参照によりこれらの全体が本明細書に組み込まれる(または、その同等の米国版が参照によりそのように組み込まれる)。
【0006】
本明細書に開示される数値範囲は、下限値および上限値からのすべての値を含み、また上限値および下限値を含む。明示的な値(例えば、1または2、または3~5、または6、または7)を含有する範囲の場合、任意の2つの明示的な値の間のあらゆる部分範囲(例えば、上記の1~7の範囲には、1~2、2~6、5~7、3~7、5~6などのサブ範囲が含まれる)が含まれる。
【0007】
相反する記載がない限り、文脈から暗示的でない限り、または当該技術分野で慣習的でない限り、すべての部およびパーセントは重量に基づき、すべての試験方法は本開示の出願日時点で最新のものである。
【0008】
「ブレンド」および「ポリマーブレンド」という用語は、2つ以上のポリマーの密接な物理的混合物(すなわち、反応なし)を指す。ブレンドは、混和性であってもよいか、またはなくてもよい(分子レベルで相分離していない)。ブレンドは、相分離していてもよいか、またはしていなくてもよい。ブレンドは、透過型電子分光法、光散乱、X線散乱を含むがこれらに限定されない技術から判定されるように、乾燥後に1つ以上のドメイン構成を含有しても含有しなくてもよい。ブレンドは、マクロサイズレベル(例えば、ブレンド冷材)またはミクロレベル(例えば、同じ反応器内での同時形成)で2つ以上のポリマーを物理的に混合することによって達成され得る。
【0009】
「組成物」という用語は、組成物を含む材料の混合物、ならびに組成物の材料から形成される反応生成物および分解生成物を指す。
【0010】
「含む(comprising)」、「含む(including)」、「有する(having)」という用語、およびそれらの派生語は、同じことが具体的に開示されているかどうかにかかわらず、任意の追加の成分、ステップ、または手順の存在を除くことを意図しない。疑義を回避するために、「含む(comprising)」という用語の使用を通じて特許請求されるすべての組成物は、反対の記載がない限り、ポリマーであろうとなかろうと、任意の追加の添加剤、アジュバント、または化合物を含み得る。対照的に、「から本質的になる」という用語は、操作性に必須ではないものを除き、あらゆる続く記述の範囲からあらゆる他の成分、ステップ、または手順を除く。「からなる」という用語は、具体的に描写または列挙されていないあらゆる成分、ステップ、または手順も除く。「または」という用語は、特に明記しない限り、列挙されたメンバーを個別に、ならびに任意の組み合わせで指す。単数形の使用は、複数形の使用を含み、逆もまた同様である。
【0011】
「架橋性」という用語は、物品に成形される前または後のポリマーが、硬化も架橋もされておらず、実質的な架橋を誘発した処理に供されても曝露されてもいないが、ポリマーが、そのような処理に供されるか、または曝露されると(例えば、水もしくは湿気への曝露)、実質的な架橋を生じさせる、促進させる、または可能にする、添加剤(複数可)または機能性を含むことを示す。
【0012】
「架橋剤」という用語は、ポリマー材料と基材との間に結合を形成する化学剤を指す。
【0013】
「消泡剤(defoaming)または消泡剤(anti-foaming agent)」という用語は、混合中に液体または水性組成物中に形成される泡の量を低下させる化学剤または添加剤を指す。
【0014】
「ポリマー」は、同じタイプまたは異なるタイプであるかに関わらず、重合モノマーによって調製される化合物であり、重合形態で、ポリマーを成す複数ならびに/または反復「単位」もしくは「構造単位」を提供する。したがって、ポリマーという一般的な用語は、ホモポリマーという用語を包含し、通常、1つのタイプのモノマーのみから調製されたポリマーを指すのに用いられ、コポリマーという用語は、通常、少なくとも2つのタイプのモノマーから調製されたポリマーを指すために用いられる。また、例えばランダム、ブロック等のすべての形態のコポリマーも包含する。ポリマーは、多くの場合、1つ以上の特定のモノマー「で作製され」、特定のモノマーまたはモノマータイプに「基づいて」、特定のモノマー含有量を「含有する」などと称されるが、この文脈では、「モノマー」という用語は、特定のモノマーの重合残留物を指し、非重合種を指すものではないと理解されることに留意する。概して、本明細書におけるポリマーは、対応するモノマーの重合形態である「単位」に基づくものとして言及される。
【0015】
「レオロジー調整剤」という用語は、流体または流体組成物に添加されると、流体または流体組成物のレオロジー特性を変化させる化学薬品または添加剤を指す。
【0016】
「粘度」という用語は、せん断応力または引張応力のいずれかによって変形されている流体の抵抗を指す。
【0017】
「湿潤剤」という用語は、流体または流体組成物に添加されると、流体または流体組成物の表面張力を低下させる化学剤または添加剤を指す。
【0018】
試験方法
色の測定は、材料による光の吸収の測定である。色の測定は、Datacolor色分光光度計、モデルSF600 CT Plusを使用して判定される。色の測定は、臨界ミセル濃度(CMC)値で報告される。
【0019】
摩擦係数(「COF」)は、25℃および50%相対湿度(RH)でTMI FrictionおよびSlip Tester Model 32-06-00を用いて判定される。
【0020】
光沢測定は、表面からの光の反射の測定である。光沢測定は、BYK光沢計マイクロTRI光沢モデルを使用して60°および85°で測定される。光沢測定は、光沢単位(GU)で報告される。コーティングが基材を均一に覆い、欠陥がない場合、光沢測定は、基材上のコーティングの厚さに依存しない。本実施例のコーティングの平均厚さは、1μm~3μmである。
【0021】
コーティングされたフィルムのヒートシール耐性は、400°F、40psi、および2秒の持続時間でヒートシーラーを用いたVフォールド耐熱試験によって評価される。ヒートシール後、(i)コーティングと基材との間に接着が発生しない場合、(ii)ヒートシール後に艶消しコーティングが除去されない場合、または(iii)光沢の変化が発生しない場合、「合格」という結果が判定される。「不合格」という結果は、(i)基材のコーティングされた側が一緒に積み重ねられたままである場合、(ii)艶消しコーティングが基材から剥離したまたは裂いた場合、または(iii)光沢の変化が発生した場合に判定される。
【0022】
本明細書において0.5ミクロン~30ミクロンの範囲の直径についての粒子サイズ直径は、ディスク遠心分離光沈降計(「DCP」)(CPS Instruments,Inc.から入手可能)を使用して判定される。粒子のモードは、遠心分離およびショ糖勾配による沈降によって分離される。試料は、0.1%ラウリル硫酸ナトリウムを含有する10ccの脱イオン水に1~2滴を加えることによって調製される。次に、0.1ccの試料を15ccのショ糖勾配で満たされた回転ディスクに注入する。試料は、ポリスチレンキャリブレーション標準と比較して分析される。具体的な条件は、2%~8%のショ糖勾配、および10,000rpmのディスク速度である。キャリブレーション標準は、直径895nmのポリスチレンである。
【0023】
テープの接着力は、Scotch 610テープを使用して、艶消しコーティング表面にテープをしっかりと接着し、テープをすばやくはがすことによって判定される。接着性は、コーティング表面の目視観察によって評価される。コーティングが除去されていないか、欠陥が発生していない場合、スコア5が割り当てられる。コーティングの5%未満が除去された場合、スコア5が割り当てられる。コーティングの10%未満が除去された場合、スコア4が割り当てられる。コーティングの20%未満が除去された場合、スコア3が割り当てられる。コーティングの30%未満が除去された場合、スコア2が割り当てられる。コーティングの40%未満が除去された場合、スコア1が割り当てられる。
【0024】
Sutherland耐摩量は、摩耗に耐える材料の能力を測定する。Sutherland耐摩量は、走行速度2(1サイクル/秒)で4lbの重量パッドを有するSutherlandインク耐摩擦試験機を用いて判定される。コーティングされたすべての基材は、試験を実施する前に、室温で1週間硬化させる。データを50回/読み取りに基づいて記録する。
【0025】
粘度は、スピンドル#2を備えたBrookfield粘度計DV Iを使用して室温(25℃)で測定される。
【0026】
耐候性は、外部環境への暴露(例えば、日光、湿気、上昇した気温)によって引き起こされる損傷に耐えるコーティングされた基材の耐久性の尺度である。耐候性は、Q-Lab加速耐候性試験機、モデルQUV/SE(以下、QUVA)を使用して測定される。風化法は、UV露光セグメントおよび結露セグメントという2つのセグメントで構成されている。最初のセグメントは、340nmで0.77W/mの制御された放射照度での連続紫外線A(UVA)の曝露と60℃の温度での黒パネルとで8時間続く明サイクルである。放射照度は、UV光の強度の尺度である。2番目のセグメントは、4時間続く暗サイクルで、試験片に結露が発生し、黒パネル温度は、40℃に制御される。合計8時間の明サイクルと4時間の暗サイクルは、合計12時間に相当する完全な2セグメントの風化サイクルを構成する。12時間の2セグメント風化サイクルが36回繰り返され、合計試験時間は、430時間になる。この方法は、放射照度レベルと黒パネル温度がわずかに変化する点で、ASTM G154サイクル1と技術的に類似する。表1に耐候性試験方法をまとめる。
【表1】
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】(i)QUVA曝露前と(ii)430時間のQUVA曝露後の2つの本発明の実施例と第1の比較試料のコーティング外観の比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本開示は、プロセスを提供する。このプロセスは、水性艶消しコーティング組成物を形成することを含む。水性艶消しコーティング組成物は、A1)0.1μm~2μmの平均粒径を有する第1のアクリルポリマーのビーズと、A2)0.5μm~30μmの平均粒径を有する第2のアクリルポリマーのビーズと、B)アクリルポリマー結合剤と、C)0.15重量%~2.5重量%のスリップ添加剤と、D)0.10~0.30重量%の消泡剤と、E)0.8重量%~1.5重量%のレオロジー調整剤と、F)0.01重量%~0.1%の少なくとも1つの湿潤剤と、を含む。次に、水性艶消しコーティング組成物を基材に塗布する。次に、水性艶消しコーティング組成物を乾燥させて、基材上にコーティングを形成する。
【0029】
A1.第1のアクリルポリマーのビーズ
水性艶消しコーティング組成物は、第1のアクリルポリマーのビーズを含む。第1のアクリルポリマーのビーズは、均一なアクリルビーズとアクリル系の担体エマルジョンとの組み合わせから形成される。第1のアクリル系ポリマーのビーズは、0.1μm~2μmの平均粒径、-30℃~-5℃のTgを有する。追加の特性には、30%~40%の範囲の固形分、および100cP~1000cPの範囲の粘度が含まれるが、これらに限定されない。さらに、第1のアクリルポリマーのビーズは、陰イオン電荷を有する。
【0030】
一実施形態では、第1のアクリルポリマーのビーズは、水性艶消しコーティング組成物の総重量に基づいて、20重量%~30重量%の量で存在する。
【0031】
第1のアクリルポリマーのビーズの非限定的な例には、Dow Chemical Companyから入手可能なOpulux 3001が含まれる。
【0032】
A2)第2のアクリルポリマーのビーズ
水性艶消しコーティング組成物は、第2のアクリルポリマーのビーズをさらに含む。第2のアクリルポリマーのビーズは、均一なアクリルビーズとアクリル系の担体エマルジョンとの組み合わせから形成される。第2のアクリルポリマーの組成は、第1のアクリルポリマーの組成とは異なる。第2のアクリルポリマーのビーズは、0.5μm~30μmの平均粒径、および-50℃~-20℃のTgを有する。
【0033】
一実施形態では、第2のアクリルポリマーのビーズの平均粒径は、第1のアクリルポリマーのビーズの平均粒径よりも大きい。第2のアクリルポリマーのビーズは、30%~40%の範囲の固形分、100cP~1000cPの範囲の粘度、および陰イオン電荷を有する。一実施形態では、第2のアクリルポリマーのビーズは、水性艶消しコーティング組成物の総重量に基づいて、45重量%~55重量%の量で存在する。
【0034】
第2のアクリルポリマーのビーズの非限定的な例には、Dow Chemical Companyから入手可能なOpulux 3501が含まれていた。
【0035】
B)アクリルポリマー結合剤
水性艶消しコーティング組成物は、0.03μm~0.5μm、または0.1μm~0.5μmの平均粒径を有するアクリルポリマー結合剤を含む。アクリルポリマー結合剤は、水性艶消しコーティング組成物の総重量に基づいて、水性艶消しコーティング組成物の10重量%、または15重量%~25重量%、または30重量%の量で存在する。一実施形態では、アクリルポリマー結合剤は、10重量%~30重量%、または15重量%~25重量%の量で存在する。
【0036】
一実施形態では、アクリルポリマー結合剤は、メチルメタクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、エチレン-メチルアクリレート、ブチルアクリレート、およびブチルメタクリレートを含むが、これらに限定されない、好適なコモノマーと共重合した少なくとも1つの非イオン性エチレン性不飽和モノマーを含む。アクリルポリマー結合剤は、架橋されていない。
【0037】
アクリルポリマー結合剤の非限定的な例には、Dow Chemical Companyから入手可能なアクリル結合剤であるEXP 5612(またはOpulux 1000)が含まれる。
【0038】
C)スリップ添加剤
水性艶消しコーティング組成物は、スリップ添加剤を含む。一実施形態では、スリップ添加剤は、水性艶消しコーティング組成物の総重量に基づいて、水性艶消しコーティング組成物の0.15重量%、または0.35重量%、または0.55重量%、または0.75重量%~1.9重量%、または2.1重量%、または2.3重量%、または2.5重量%の量で存在する。一実施形態では、スリップ添加剤は、0.15重量%~2.5重量%、または0.35重量%~2.3重量%、または0.55重量%~2.1重量%、または0.75重量%~1.9重量%の量で存在する。
【0039】
一実施形態では、スリップ添加剤は、i)シリコーンエマルジョン、およびii)アミドワックス分散液を含む。
【0040】
i)シリコーンエマルジョン
一実施形態では、スリップ添加剤は、シリコーンエマルジョンを含む。好適なシリコーンエマルジョンとしては、ポリジメチルシロキサン(「PDMS」)系エマルジョン、ポリジエチルシロキサン(「PDES」)系エマルジョン、他の乳化シリコーンポリマー、およびシリコーンコポリマー生成物、ならびにこれらの組み合わせ、例えば、水に容易に分散するPDMS系エマルジョンが挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
シリコーンエマルジョンは、45%~85%の範囲の固形分、および30%~65%の範囲のパーセント活性含有量を有する。シリコーンエマルジョン添加剤の粘度は、1,000cP~700,000cPの範囲である。
【0042】
一実施形態では、シリコーンエマルジョンは、水性艶消しコーティング組成物中に、0.1重量%、または0.2重量%、または0.3重量%、または0.4重量%、または0.5重量%~0.6重量%、または0.7重量%、または0.8重量%、または0.9重量%、または1.0重量%の量で存在する。一実施形態では、シリコーンエマルジョンは、水性艶消しコーティング組成物中に、0.1重量%~1.0重量%、または0.2t%~0.9重量%、または0.3重量%~0.8重量%、または0.4重量%~0.7重量%、または0.5重量%~0.6重量%の量で存在する。
【0043】
好適なシリコーンエマルジョンの非限定的な例としては、TE 352 FG(商標)、EM 350、ICM 3563FGなどのICM Products Inc.によって販売されているシリコーンエマルジョン、およびDC-24エマルジョン、Dowsil-51、Dowsil-52、およびDowsil 210SなどのDowCorningによって販売されているシリコーンエマルジョンが挙げられるが、これらに限定されない。シリコーンエマルジョンは、個々の製品またはそれらの混合物によって使用される。
【0044】
ii)アミドワックス分散液
一実施形態では、スリップ添加剤は、アミドワックス分散液を含む。アミドワックスは、固形分が30重量%~60重量%のエチレン-ビスステアラミド水性分散液などのアルキル二級アミドワックスである。
【0045】
アミドワックス分散液の粘度は、500cP~1500cPの範囲であり、pHは、6.0~9.0の範囲である。アミドワックス分散液は、液体の形態である。
【0046】
一実施形態では、アミドワックスは、固体粉末であり、これは次に、水性コーティングに分散される。
【0047】
一実施形態では、アミドワックス分散液は、水性艶消しコーティング組成物中に、0.5重量%、または0.7重量%、または0.9重量%~1.0重量%、または1.2重量%、または1.5重量%の量で存在する。一実施形態では、アミドワックス分散液は、水性艶消しコーティング組成物中に、0.5重量%~1.5重量%、または0.7重量%~1.2重量%、または0.9重量%~1.0重量%の量で存在する。
【0048】
好適なアルキル二級アミドワックスの非限定的な例には、Shamrock TechnologiesによってHYDROCER(商標)およびS-400N5(商標)の商品名で販売されているワックスが挙げられる。
【0049】
D)消泡剤
水性艶消しコーティング組成物は、消泡剤を含む。消泡剤は、自己乳化性であり、シリコーンとシリカの両方を含まない。消泡剤の密度は、0.80g/cc~1.05g/ccの範囲である。消泡剤はまた、100cP~1000cPの範囲の粘度を有する。
【0050】
一実施形態では、消泡剤は、水性艶消しコーティング組成物の総重量に基づいて、0.10重量%、または0.12重量%、または0.15重量%、または0.20重量%、または0.25重量%、または0.30重量%の量で存在する。一実施形態では、消泡剤は、0.10重量%~0.30重量%、または0.12重量%~0.25重量%、または0.15重量%~0.20重量%の量で存在する。
【0051】
消泡剤の非限定的な例には、変性鉱油に基づく非シリコーン系の消泡剤である、Evonikから入手可能なTEGO(商標)Anti foam 2291が含まれる。
【0052】
E)レオロジー調整剤
水性艶消しコーティング組成物は、レオロジー調整剤を含む。レオロジー調整剤は、非イオン性である。レオロジー調整剤の固形分は、15重量%~25重量%である。レオロジー調整剤の粘度は、1000cP~3800cPである。
【0053】
レオロジー調整剤は、水性艶消しコーティング組成物中に、水性艶消しコーティング組成物の総重量に基づいて、0.8重量%、または0.9重量%、または1.0重量%、または1.1重量%~1.2重量%、または1.3重量%、または1.4重量%、または1.5重量%の量で存在する。一実施形態では、レオロジー調整剤は、0.8重量%~1.5重量%、または0.9重量%~1.4重量%、1.0重量%~1.3重量%、または1.1重量%~1.2重量%の量で存在する。
【0054】
好適なレオロジー調整剤の非限定的な例には、Dow Chemical Companyから入手可能なAcrysol RM 2020Eが含まれる。
【0055】
F)湿潤剤
水性艶消しコーティング組成物は、水性艶消しコーティング組成物の総重量に基づいて、0.01重量%、または0.02重量%、または0.03重量%、または0.04重量%、または0.05重量%~0.06重量%、または0.07重量%、0.08重量%、または0.09重量%、または0.1重量%の量で存在する、少なくとも1つの多型湿潤剤を含む。一実施形態では、湿潤剤は、0.01重量%~0.1重量%、または0.02重量%~0.09重量%、0.03重量%~0.08重量%、または0.04重量%~0.07重量%、または0.05重量%~0.06重量%の量で存在する。
【0056】
好適な湿潤剤の非限定的な例には、ラウリル硫酸ナトリウム、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ジ-2-エチルヘキシルナトリウムスルホコハク酸塩、およびそれらの混合物が含まれる。
【0057】
一実施形態では、水性艶消しコーティング組成物は、第1のアクリルポリマーのビーズ、第2のアクリルポリマーのビーズ、シリコーンエマルジョン、アミドワックス、およびポリマー結合剤を低剪断撹拌下で一緒に加えることによって形成される。所望される際、他のコーティング添加剤を加えることができる。
【0058】
一実施形態では、スリップ添加剤のシリコーンエマルジョンおよびアミドワックス分散液は、第1のアクリルポリマーと第2のアクリルポリマーの両方のビーズ、消泡剤、アクリルポリマー結合剤、レオロジー調整剤、および湿潤剤と後でブレンドされる。
【0059】
水性艶消しコーティング組成物は、第1のアクリルポリマーと第2のアクリルポリマーの両方のビーズ、およびスリップ添加剤に加えて、添加剤を含有し得る。そのような添加剤には、フィルム形成溶液、非フィルム形成溶液、またはエマルジョンポリマーが含まれるが、これらに限定されない。そのような添加剤の特性は、第1のアクリルポリマーおよび第2のアクリルポリマーの特性とは異なる。添加剤は、第1のアクリルポリマーと第2のアクリルポリマーのビーズの合計の0重量%、または0重量%超、または1重量%、または5重量%~10重量%、または20重量%、または30重量%の量で存在する。一実施形態では、添加剤は、0重量%~30重量%、または1重量%~20重量%、または5重量%~10重量%の量で存在する。
【0060】
コーティング添加剤などの他の添加剤には、乳化剤、合体剤、不凍液、硬化剤、緩衝剤、中和剤、増粘剤、保湿剤、および可塑剤が含まれるが、これらに限定されない。
【0061】
第2のアクリルポリマーのビーズと第1のアクリルポリマーのビーズとの重量比は、80:20~60:40、または70:30~60:40である。
【0062】
一実施形態では、水性艶消しコーティング組成物の乾燥は、周囲条件下、すなわち25℃で行われる。代替的に、コーティングは、高温、すなわち35℃~150℃で乾燥され得る。
【0063】
水性艶消しコーティング組成物の固形分は、10~70重量%、または20~50重量%、または30~40重量%であり得る。固形分は、Mettler Toledo水分計で測定される。水性艶消しコーティング組成物の粘度は、Gardner Zahn粘度カップ#2を用いて測定される場合、25℃で20~50秒、または25~35秒であり得る。
【0064】
コーティング
水性艶消しコーティング組成物を基材に塗布して、基材上にコーティングを形成する。基材の材料の非限定的な例には、ポリエステル(PET)、配向ポリプロピレン(OPP)、ナイロン、ポリエチレン(PE)、紙、箔、およびそれらの金属化フィルムが含まれる。
【0065】
水性艶消しコーティング組成物は、グラビア印刷技術またはフレキソ印刷技術またはオフセット印刷技術を使用して基材に塗布され得る。コーティングの塗布方法には、ハンドプルーフまたはMeyerロッドを使用したハンドドローダウン、ペイントブラシ、ペイントローラ、カーテンコータも含まれるが、これらに限定されない。水性艶消しコーティング組成物は、スプレーによって塗布され得る。スプレー方法には、空気噴霧スプレー、空気補助スプレー、空気レススプレー、大量低圧スプレー、および空気補助空気レススプレーが含まれるが、これらに限定されない。
【0066】
一実施形態では、水性艶消しコーティング組成物は、グラビアシリンダを備えたLabcombiパイロットコータを使用して基材に塗布される。次に、スムージングバーを適用して、水性艶消しコーティング組成物の厚さの均一性を確保する。水性艶消しコーティング組成物は、コーティング速度が400ft/分を超える場合、スムージングバーのないグラビアシリンダを備えたLabcombiパイロットコータを使用して基材に塗布される。
【0067】
一実施形態では、水性艶消しコーティング組成物は、基材に塗布する前にオーバーヘッドミキサで艶消しコーティングに直接混合することにより、固形分が100%の水分散性脂肪族ポリイソシアネートなどの架橋剤を0.5~5部だけ取り入れられる。次に、水性艶消しコーティング組成物を基材に塗布し、乾燥させる。その結果、基材上に架橋コーティングが施される。乾燥コーティングの坪量は、1平方メートルあたり0.9グラム(gsm)~3.2gsmの範囲である。
【0068】
このプロセスは、基材上に架橋コーティングを形成することを含む。
【0069】
一実施形態では、基材上の架橋コーティングは、次の特性のうちの1つ、いくつか、またはすべてを有する。
(i)60°および430時間で測定された、15%未満の光沢値の変化率、および/または
(ii)85°および430時間で測定された、15%未満の光沢値の変化率、および/または
(iii)25℃および相対湿度50%で測定された、2.0~2.6の静摩擦係数、および/または
(iv)25℃および相対湿度50%で測定された、1.0~1.5の動摩擦係数、および/または
(v)4~5のテープ接着力(Scotch 610)。本明細書で使用されるとき、「光沢値の変化率」という用語は、耐候性試験が完了したときの430時間での最終光沢値と耐候性試験開始の0時間前の初期光沢値との間の差を、耐候性試験開始0時間前の初期光沢値で割った大きさを指す。
【0070】
一実施形態では、基材上の架橋コーティングは、60°および430時間で測定された、光沢値の変化率が1%~15%、または5%~15%、または9%~15%である。
【0071】
一実施形態では、基材上の架橋コーティングは、85°および430時間で測定された、光沢値の変化率が1%~15%、または5%~15%、または9%~15%である。
【0072】
一実施形態では、基材上の架橋コーティングは、60°および430時間で測定された、0~3の光沢単位の変化を有する。本明細書で使用されるとき、「光沢単位の変化」または「GUの変化」という用語は、耐候性試験が完了した430時間での最終光沢値と耐候性試験開始の0時間前の初期光沢値との間の差の大きさを指す。一実施形態では、基材上の架橋コーティングは、60°および430時間で測定された、1~2の光沢単位の変化を有する。
【0073】
一実施形態では、基材上の架橋コーティングは、85°および430時間で測定された、0~3の光沢単位の変化を有する。一実施形態では、基材上の架橋コーティングは、85°および430時間で測定された、1~2の光沢単位の変化を有する。
【0074】
一実施形態では、基材上の架橋コーティングは、1000サイクル時間を超えるSutherland摩擦抵抗を有する。
【0075】
出願人は、本発明の実施例Iおよび本発明の実施例IIと比較試料Iとの比較により、架橋コーティングの耐候性(光沢および色の保持)が改善され、本発明の実施例の各々の静的および動的摩擦係数が改善されることを予期せず発見した。特定の理論に拘束されることなく、消泡剤から0.1重量%~0.3重量%の量で形成された架橋コーティングでコーティングされた基材は、0.1重量%未満の消泡剤を有する架橋コーティングと比較して、改善された加工性およびより良好な耐候性を有すると考えられる。
【0076】
一例として、これに限定されないが、本開示の一実施形態について以下の実施例において詳細に説明する。
【実施例
【0077】
実施例において使用される材料を、下記の表2に提供する。
【表2】
【0078】
比較試料Iは、外部供給業者から入手したポリウレタン分散ベースの艶消しコーティングである。
【0079】
発明の実施例I、本発明の実施例II、および比較試料IIの配合物、ならびに両方の本発明の実施例および両方の比較試料の試験結果を、以下の表3に示す。
【0080】
水性艶消しコーティング組成物は、第1のアクリルポリマーと第2のアクリルポリマーの両方のアクリルビーズ分散液を容器に充填することによって調製される。次に、消泡剤を撹拌しながら加える。次に、アクリル結合剤を加える。混合物のpHをアンモニアで調整し、次にレオロジー調整剤を撹拌しながらゆっくりと加える。最後に湿潤剤および他の添加剤を加えて、混合を15~20分間続け、混合をさらに20分間続ける。
【0081】
本発明の実施例および比較試料IIの各々について、水性艶消しコーティング組成物を基材に適用する前に、オーバーヘッド撹拌下で、100部の湿潤材料あたり0.5部の水分散性ポリイソシアネートであるCR 9-101(架橋剤)を、配合された水性艶消しコーティング組成物に加える。次に、基材に塗布する前に20分間混合する。
【0082】
本発明の実施例の組成物および比較試料IIの各々は、180Q/7.5BCM体積グラビアシリンダを用いて、400フィート/分のコーティング速度でLabcombiパイロットコータによって92ゲージのPET基材にコーティングされる。均一な外観を確保するために、スムージングバーをコーティングの上に沿わせる。均一なコーティングの厚さは0.1μm~0.3μmである。最終的な乾燥コーティングの坪量は、0.9gsm~3.2gsmである。
【0083】
PET基材は、3つの乾燥ゾーンにさらされる。3つのゾーンの乾燥オーブン温度は、170°F/180°F/190°Fであった。PET基材は、水性艶消しコーティング組成物でコーティングする前に、1キロワットのコロナ処理でその場で処理される。次に、コーティングされた基材は、性能試験の前に25℃および50%RHで1週間保管される。
【0084】
性能試験は、前述の試験方法を使用して行われる。
【0085】
【表3】
【0086】
本発明の実施例の各々は、比較試料の各々に対して改善された接着性を有する。本発明の実施例の各々はまた、比較試料の各々よりも改善された静的および動的係数を有する。耐候性に関して、本発明の実施例の各々は、60°および85°の両方の光沢値の変化が最小限であるのに対し、比較試料Iは、QUVA試験後にかなり高い光沢値を示している。耐候性試験後の光沢値が高い場合は、艶消しコーティングが徐々に失われているか、または耐候性が低いことを示している。図1に示すように、比較試料Iの艶消しコーティングは、耐候性試験中に徐々にエッチングされる。比較試料Iは、本発明の実施例の各々に関して、より低い色変化値を示している。これは、比較試料Iの艶消しコーティングがUV露光中にエッチングされ、艶消しコーティングの下の光沢のある透明なPET基材が露光されるためである。
【0087】
図1は、本発明の実施例Iおよび本発明の実施例IIの架橋コーティングが各々、430時間のQUVA曝露後の比較試料Iの艶消しコーティングよりも良好な外観を有することを示している。本発明の実施例Iおよび本発明の実施例IIの各々の架橋コーティングは、比較試料Iの艶消しコーティングよりも耐候性シミュレーションに耐えることができる。本発明の実施例の各々は、比較試料Iの艶消しコーティングよりも多くの脱泡剤含有量を有する架橋コーティングを実証し、包装の外部用途の性能と耐久性が向上していることを示している。
【0088】
本開示は、本明細書に含まれる実施形態および例示に限定されず、実施形態の一部、および異なる実施形態の要素の組み合わせを含むこれらの実施形態の変更された形態を、以下の特許請求の範囲の範囲に該当するものとして含むことが、特に意図されている。
本願は以下の態様にも関する。
(1) プロセスであって、
水性艶消しコーティング組成物を形成することであって、前記水性艶消しコーティング組成物が、
A1)0.1μm~2μmの平均粒径を有する第1のアクリルポリマーのビーズと、 A2)0.5μm~30μmの平均粒径を有する第2のアクリルポリマーのビーズと、
B)アクリルポリマー結合剤と、
C)0.15重量%~2.5重量%のスリップ添加剤と、
D)0.10重量%~0.30重量%の消泡剤と、
E)0.8重量%~1.5重量%のレオロジー調整剤と、
F)0.01重量%~0.1重量%の少なくとも1つの湿潤剤と、を含む、形成することと、
前記水性艶消しコーティング組成物を基材に塗布することと、
前記水性艶消しコーティング組成物を乾燥させることと、
前記基材上にコーティングを形成することと、を含む、プロセス。
(2) 前記スリップ添加剤が、
i)0.1重量%~1.0重量%のシリコーンエマルジョンと、
ii)0.5重量%~1.5重量%のアミドワックス分散液であって、前記アミドワックスがアルキル二級アミドワックスである、アミドワックス分散液と、を含む、上記(1)に記載のプロセス。
(3) 前記水性艶消しコーティング組成物に架橋剤を加えて架橋可能な水性艶消しコーティング組成物を形成することと、
前記架橋可能な水性艶消しコーティング組成物を前記基材に塗布することと、
前記基材上に架橋コーティングを形成することと、を含む、上記(1)に記載のプロセス。
(4) コーティングされた基材を形成することであって、前記コーティングされた基材が、
25℃および相対湿度50%で測定された、2.0~2.6の静摩擦係数と、
25℃および相対湿度50%で測定された、1.0~1.5の動摩擦係数と、を有する、形成することを含む、上記(3)に記載のプロセス。
(5) 前記第1のアクリルポリマーのビーズが、前記水性艶消しコーティング組成物の重量に基づいて、20重量%~30重量%の量で存在する、上記(1)に記載のプロセス。
(6) 前記第2のアクリルポリマーのビーズが、前記水性艶消しコーティング組成物の重量に基づいて、45重量%~55重量%の量で存在する、上記(5)に記載のプロセス。
(7) ポリエチレンテレフタレート、配向ポリプロピレン、ポリエチレン、ナイロン、紙、箔、およびそれらの金属化フィルムからなる群から選択される材料から作製された基材を提供することを含む、上記(1)に記載のプロセス。
(8) 前記架橋コーティングが、4~5のテープ接着力(Scotch 610テープ)を有する、上記(3)に記載のプロセス。
(9) 前記架橋コーティングが、60°および430時間で測定された、15%未満の光沢値の変化率を有する、上記(3)に記載のプロセス。
(10) 前記架橋コーティングが、85°および430時間で測定された、15%未満の光沢値の変化率を有する、上記(9)に記載のプロセス。
(11) 前記架橋コーティングが、60°および430時間で測定された、0~3の光沢単位の変化を有する、上記(3)に記載のプロセス。
(12) 前記架橋コーティングが、85°および430時間で測定された、0~3の光沢単位の変化を有する、上記(11)に記載のプロセス。
(13) 前記架橋コーティングが、430時間で測定された、2.0~2.5の色(CMC)値を有する、上記(9)~(12)のいずれかに記載のプロセス。
(14) 上記(1)~(13)のいずれかに記載のプロセスから作製された前記コーティングされた基材を含む物品。
図1