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特許7420823電気モータアセンブリ、電気モータのモータ抵抗を判別する方法、及びコンピュータプログラム
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  • 特許-電気モータアセンブリ、電気モータのモータ抵抗を判別する方法、及びコンピュータプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】電気モータアセンブリ、電気モータのモータ抵抗を判別する方法、及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   H02P 7/06 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
H02P7/06 G
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021547527
(86)(22)【出願日】2020-02-14
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-05
(86)【国際出願番号】 NL2020050082
(87)【国際公開番号】W WO2020167124
(87)【国際公開日】2020-08-20
【審査請求日】2022-10-05
(31)【優先権主張番号】2022591
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】510126416
【氏名又は名称】エムシーアイ(ミラー コントロールズ インターナショナル)ネザーランド ベー.フェー.
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】フ、ジンク
(72)【発明者】
【氏名】ハウゼルス、バスティアーン
(72)【発明者】
【氏名】メイダム、ヘンドリック ヤン
【審査官】柏崎 翔
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-220441(JP,A)
【文献】特開2002-127922(JP,A)
【文献】特開2005-323488(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02P 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のブラシ及び整流子リングの複数のセクションを備え、前記複数のセクション及び前記複数のブラシの位置がモータの回転中に互いに対して変化する電気モータと、
前記電気モータへの電流を測定するために前記電気モータに結合された電流センサと、
前記電気モータに熱的に結合された温度センサと、
前記電流センサ及び前記温度センサの複数の出力に結合された複数の入力を備え、モータ抵抗値を判別するように構成されている処理回路であって、
前記複数のブラシに対する前記複数のセクションの第1及び第2の位置のモータ抵抗の予測値を判別することであって、前記複数のブラシの少なくとも1つは異なる数の前記セクションと前記第1及び第2の位置においてそれぞれ接触し、前記予測値は前記温度センサによって測定された温度値及び前記温度値に依存する前記モータ抵抗の変化の所定の依存性に基づいている、前記予測値を判別することと、
前記電気モータが少なくとも実質的に静止状態にあるときに、前記電流センサによって測定された電流値を判別することと、
前記モータ抵抗の前記予測値のうちのどれが前記電流値に最も近く対応するかに依存して、前記電流値を用いて、前記モータ抵抗値を判別する異なる方法の中から方法を選択することと、
前記選択した方法に従って、前記電流値を用いて前記モータ抵抗を判別することと、
によって、モータ抵抗値を判別するように構成されている、処理回路と、
を備える、電気モータアセンブリ。
【請求項2】
前記処理回路は、前記電気モータの回転中に前記電気モータへの前記電流におけるリプルをカウントし、V-I*Rのプログレッシブ積分を計算するように構成され、ここで、Vは前記電気モータの供給電圧であり、Iは前記電気モータへの電流であり、Rは判別された前記モータ抵抗値であり、前記処理回路は、前記プログレッシブ積分の値が第1と第2の閾値の間にある各時間間隔の間に、前記リプルのカウントを1回増やし、当該プログレッシブ積分の値を、前記処理回路が前記電流にリプルを検出するときには、前記時間間隔における時点における前記プログレッシブ積分の値だけ、又は前記処理回路が前記時間間隔において前記電流にリプルを検出しないときには、所定の値だけ減らす、
請求項1に記載の電気モータアセンブリ。
【請求項3】
移動させられ且つ/又は回転させられるべき物体を備え、
前記電気モータは、前記物体を移動させ且つ/又は回転させるために前記物体に結合され、
前記電気モータアセンブリは、更なる電気モータを備え、前記物体を移動させ/又は回転させるために前記物体に結合され、
更なる電流センサは、前記更なる電気モータへの電流を測定するための前記更なる電気モータに結合され、
前記処理回路は、前記更なる電流センサの出力に結合された更なる入力を有し、
前記処理回路は、前記電流センサと前記更なる電流センサをそれぞれ組み合わせて、両方に前記温度センサを用いて、前記電気モータについてのものと同じ方法で前記更なる電気モータのモータ抵抗値を判別するように構成されている、
請求項1又は2に記載の電気モータアセンブリ。
【請求項4】
前記電気モータと前記温度センサが中に配置され、前記更なる電気モータが外に配置されているハウジング、を備える、
請求項3に記載の電気モータアセンブリ。
【請求項5】
前記処理回路は、前記モータ抵抗値又は前記モータ抵抗値から判別された温度を閾値と比較し、前記モータ抵抗値又は前記温度が前記閾値を超えるときに、前記電気モータの使用を無効にするように構成されている、
請求項1から4の何れか1項に記載の電気モータアセンブリ。
【請求項6】
前記モータ抵抗値を判別する異なる方法の中から方法を選択することは、前記モータ抵抗の前記予測値のどれが前記電流値に最も近く対応するかに依存して、実質的に静止状態において前記電流センサによって測定された前記電流値に適用されるべき異なる因子の中から因子を選択することを含む、
請求項1から5の何れか1項に記載の電気モータアセンブリ。
【請求項7】
複数のブラシ及び整流子リングの複数のセクションを備え、前記複数のセクション及び前記複数のブラシの位置がモータの回転中に互いに対して変化する電気モータのモータ抵抗を判別する方法であって、
処理回路によって実行される、
前記電気モータが少なくとも実質的に静止状態にあるときに、電流センサによって測定された電流値を測定するステップと、
前記電気モータに熱的に結合された温度センサを用いて温度値を測定するステップと、
前記複数のブラシに対する前記複数のセクションの第1及び第2の位置の前記モータ抵抗の予測値を判別するステップであって、前記予測値は前記温度値及び前記温度値に依存する前記モータ抵抗の変化の所定の依存性に基づいており、前記複数のブラシの少なくとも1つは異なる数の前記セクションと前記第1及び第2の位置においてそれぞれ接触する、前記予測値を判別するステップと、
前記モータ抵抗の前記予測値のうちのどれが前記電流値に最も近く対応するかに依存して、前記電流値を用いて、モータ抵抗値を判別する異なる方法の中から方法を選択するステップと、
前記選択した方法に従って、前記電流値を用いて前記モータ抵抗を判別するステップと、を備える、
方法。
【請求項8】
前記処理回路は、前記電気モータの回転中に前記電気モータへの電流におけるリプルをカウントし、V-I*Rのプログレッシブ積分を計算するように構成され、ここで、Vは前記電気モータの供給電圧であり、Iは前記電気モータへの電流であり、Rは判別された前記モータ抵抗値であり、前記処理回路は、前記プログレッシブ積分の値が第1と第2の閾値の間にある各時間間隔の間に、前記リプルのカウントを1回増やし、当該プログレッシブ積分の値を、前記処理回路が前記電流にリプルを検出するときには、前記時間間隔における時点における前記プログレッシブ積分の値だけ、又は前記処理回路が前記時間間隔において前記電流にリプルを検出しないときには、所定の値だけ減らす、
請求項7に記載の方法。
【請求項9】
同じ物体に結合された電気モータと更なる電気モータのモータ抵抗を判別する方法であって、
前記電気モータと前記更なる電気モータは、それぞれ、複数のブラシと整流子リングの複数のセクションを備え、
前記電気モータと前記更なる電気モータの前記モータ抵抗値は、両方とも、請求項7又は8に記載の方法に従って判別され、両方の前記温度値は、前記温度センサを用いて判別される、
方法。
【請求項10】
前記電気モータと前記温度センサがハウジングの中に配置され、前記更なる電気モータが前記ハウジングの外に配置されている、
請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記処理回路は、前記モータ抵抗値又は前記モータ抵抗値から判別された温度を閾値と比較し、前記モータ抵抗値又は前記温度が前記閾値を超えるときに、前記電気モータの使用を無効にするように構成されている、
請求項7から10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記モータ抵抗値を判別する異なる方法の中から方法を選択するステップは、前記モータ抵抗の前記予測値のどれが前記電流値に最も近く対応するかに依存して、実質的に静止状態において前記電流センサによって測定された前記電流値に適用されるべき異なる因子の中から因子を選択することを含む、
請求項7から11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
プログラム可能な処理回路に対する命令のプログラムを含むコンピュータプログラムであって、前記プログラムが、プログラム可能な処理回路によって実行されるときに、前記プログラム可能な処理回路に、請求項7から12の何れか1項に記載の方法を実行させる、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電気モータアセンブリに関する。
【背景技術】
【0002】
様々な目的のため、動作環境において、電気モータの回転子における導体コイルの巻線の電気抵抗を測定すること、例えば、その環境の温度がどのようにその抵抗に影響を及ぼしたかを判別することが望ましい。一つの応用は、電気モータを流れる電流と電気モータに印加される電圧からモータの速度を推定するために、抵抗値が用いられるときである。他の応用は、例えば、過熱保護機構の一部として、モータの温度を推定するために抵抗値を用いることを含む。
【0003】
国際公開第2016/080834号は、モータに供給される電流におけるリプルをカウントすることにより、モータの回転数を判別することを説明する。このようなリプルは所定のモータの回転角度において生じる。モータがこのような角度に達するときであって、リプルが毎回検出されるときには、検出されるリプルの数とモータの回転数との間に所定の比が存在する。しかし、回転数の精度は、リプル検出の見逃しとリプルの誤検出によって、悪影響を受け得る。1つのリプルが予期された場合で、時間間隔においてリプルが1つも検出されなかったとき、若しくはそのような時間間隔において1つより多いリプルが検出されたときに、又は1つも予期されない場合で、他の時間間隔においてリプルが検出されるときに、リプル数を訂正することによって、この問題は低減され得る。
【0004】
独国特許19729238号明細書は、機械的に整流されるDCモータのモータ速度を判別する方法を開示している。この方法は、所定の許容できる時間範囲内の整流数だけを、その整流数がなければ外挿された可能性の高い整流数を考慮して、モータ電流のリプルから整流数を検出する。モータ速度及び/又は回転の角度は、整流数から判別される。
【0005】
PCT出願番号PCT/NL2018/050673号(本願の優先日においては公開されていない)は、モータ電流においてリプルが予期される時間間隔を判別する方法について記載している。これは、モータの回転周波数、モータ供給電圧、及びモータの巻線抵抗値とモータを通る電流Iの積の間にある物理的な関係に基づく。ここで、モータの巻線抵抗値が既知のとき、同じモータの回転角度に戻るまでの、モータの回転の予期された持続が予測され得るように、供給電圧は固定され又は測定され、かつ、電流Iは測定され得る。
【0006】
PCT/NL2018/050673号は、予め記憶された典型的な値として、又はモータの逆起電力が無視できるときに電流を測定することによって、モータの巻線抵抗値が得られることを説明している。
【0007】
特開2011-087402号は、高精度なモータ角度検出センサ、独立した温度変化又は製造上のばらつきを用いることなく、平均した抵抗値を用いて、角度のモータ速度を正確に推定するモータコントローラを開示している。回転速度は、電気モータの巻線に生じる逆起電力又はモータの抵抗から判別される。電気モータに流れる電流及び電気モータに印加される電圧が検出される。電流と電圧の積算値は、正確な抵抗を判別するために用いられる。コイル、ブラシ及び基板の温度を検出するためにセンサが用いられてもよく、抵抗マップを用いる巻線、ブラシ及び接触抵抗の値の温度依存性を得ることが可能になる。
【0008】
米国特許出願第2013035816号は、モータの速度に影響を与える抵抗がモータの制御の一部として補償される車両モータのモータ制御について開示している。補償条件は、記憶されたモータの性能パラメータのプロファイルを用いて動的に展開される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
とりわけ、リプルを数えることから電気モータの回転を判別する精度を改善することが目的である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
複数のブラシ及び整流子リングの複数のセクションを備え、前記複数のセクション及び前記複数のブラシの位置がモータの回転中に互いに対して変化する電気モータと、
前記電気モータへの電流を測定するために前記電気モータに結合された電流センサと、
前記電気モータに熱的に結合された温度センサと、
前記電流センサ及び前記温度センサの複数の出力に結合された複数の入力を備え、モータ抵抗値を判別するように構成されている処理回路であって、
前記複数のブラシに対する前記複数のセクションの第1及び第2の位置の前記モータ抵抗の予測値を判別することであって、前記複数のブラシの少なくとも1つは異なる数の前記セクションと前記第1及び第2の位置においてそれぞれ接触し、前記予測値は前記温度センサによって測定された温度値及び前記温度値に依存する前記モータ抵抗の変化の所定の依存性に基づいている、前記予測値を判別することと、
前記電気モータが少なくとも実質的に静止状態にあるときに、前記電流センサによって測定された電流値を判別することと、
前記モータ抵抗の前記予測値のうちのどれが前記電流値に最も近く対応するかに依存して、前記電流値を用いて、前記モータ抵抗値を判別する異なる方法の中から方法を選択することと、
前記選択した方法に従って、前記電流値を用いて前記モータ抵抗を判別することと、
によって、モータ抵抗値を判別するように構成されている、処理回路と、
を備える、電気モータアセンブリが提供される。
ここで、処理回路は、モータが少なくとも実質的に静止しているときにモータへの電流の測定からモータの抵抗をどのように判別するかを判別する温度センサを用いる。原則として、抵抗は、モータの供給電圧を測定されたモータの電流で割ることによって(供給電圧の所定の名目上の値が用いられてもよく、供給電圧が同様に測定されてもよい)判別され得る。しかし、結果はモータの位置に依存するものであり、同時にブラシが接触するセクションの数に応じて異なる位置で、モータの電圧/電流の比と巻線抵抗との間の異なる関係がある。例えば、一つの実施の形態において、各ブラシは第1の位置で1つのセクションだけに接触し、ブラシの一つは第2の位置で2つのセクションに同時に接触する。電気モータアセンブリの処理回路は、測定された電流を用いてモータ抵抗値を判別する異なる方法から選択するための温度センサを用いることにより、位置に依存しないモータ抵抗値の判別を提供する。処理回路は、測定された温度と、温度とブラシと整流子の異なる相対位置に対するモータ抵抗値を予測する巻線抵抗値との間の既知の予測された関係と、を用いる。処理回路は、どの予測が電流測定に対応する抵抗に最も近いかに基づいて、モータ抵抗値が判別される方法を選択する。
【0011】
通常、モータ抵抗値を判別する異なる方法からの選択は、停止時に測定される電流に適用される異なる要素からの選択に帰着する。ここで用いられるように、このことは、たとえ抵抗値が明示的に判別されないときでも、抵抗値の使用と呼ばれる。
【0012】
実施の形態において、電気モータの回転数を表現するリプルのカウントの信頼性を改善するために、モータ抵抗値が用いられる。この計算のため、処理回路は、V-I*Rのプログレッシブ積分を計算し、Vは電気モータの供給電圧であり、Iは電気モータへの電流であり、Rは請求項1に記載されたように判別されたモータ抵抗値である。
【0013】
実施の形態において、電気モータのアセンブリは、移動させられ、且つ/又は、回転させられなければならない同一の物体に結合された複数のモータを含んでいてもよい。この場合には、処理回路は、全てのモータのモータ抵抗値を判別するための温度センサを使用してもよい。測定された温度は、それぞれのモータに対して、異なる方法から選択するためだけに用いられるため、モータの一部又は全部の実際の温度がやや温度センサの温度と異なるかもしれないことは問題ではない。従って、異なるモータに対する異なる温度センサは必要とされない。
【0014】
実施の形態において、処理回路は、1つのモータ又は複数のモータの過熱保護のためにモータ抵抗値を使用するように構成されている。モータ抵抗値は、この目的のための実際のモータの温度の代表である。モータ抵抗値が判別される方法の選択は、モータ抵抗値の精度を高め、それゆえに、誤った過熱警告を生じさせ得る安全マージンの大きさを下げる。
【0015】
これらおよび他の目的及び有利な側面は、以下の図を参照する例示的な実施の形態の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、モータアセンブリを示す。
図2図2は、DC電気モータの例示的な断面を示す。
図2a図2aは、DC電気モータの例示的な断面を示す。
図3図3は、リプルのカウントを計算する方法を説明するフローチャートを示す。
図4図4は、モータの抵抗を計算する方法を説明するフローチャートを示す。
図5図5は、複数のモータを備えるモータアセンブリを示す。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(例示的な実施の形態の詳細な説明)
図1は、電気モータ10と、電圧センサ11と、電流センサ12と、温度センサ14と、モータスイッチ16と、処理回路18と、を備えるモータアセンブリを含む実施の形態を示すものである。モータ10、電流センサ12及びモータスイッチ16は、外部電圧源(図示せず)に直列に接続されている。直列接続において、モータ10、電流センサ12及びモータスイッチ16の任意の順序が用いられ得る。モータスイッチ16は、例えばスイッチングトランジスタを含んでいてもよい。
【0018】
温度センサ14は、モータ10と熱的に通じて搭載されている。処理回路18は、電圧センサ11と電流センサ12に結合されている。電圧センサ11は、モータ10にかかる電圧を測定するため接続され、電流センサ12は、モータ10を流れる電流を検知するため接続されている。電圧センサ11、電流センサ12及び温度センサ14は、処理回路18に結合された出力を有する。さらに、処理回路18は、命令入力とモータスイッチ16の制御入力に結合された制御出力を有する。電流センサは、モータ10に直列に接続された電流検知抵抗と、電流検知抵抗にかかる電圧を検知するために接続された別の電圧センサを含んでいてもよい。好ましくは、電流検知抵抗は、実質的に温度に依存しない、又は少なくともモータ10の巻線抵抗よりも温度に依存しない電流検知抵抗の抵抗値を保証する既知の抵抗の種類のものである。しかし、もし電流検知抵抗がモータ10の巻線に近接した熱的な結合を有しないならば、巻線と同じ温度依存性をも有し得る。他の実施の形態では。ホールセンサ又は他の電流センサが、電流検知抵抗及び電圧センサの代わりに電流を測定するために用いられる。1つ又は複数の電圧センサは、アナログ・デジタル(A/D)変換器を含んでいてもよく、電圧センサ11と電流センサ12は、A/D変換器を共有してもよい。
【0019】
処理回路18は、動作を制御する命令を含んでいるプログラムメモリを備えるプログラム可能な(マイクロ)コンピュータであり得る。その代わりに、処理回路18は、2つ以上のコンピュータを含んでいてもよく、又は処理回路18は、ハードワイヤードな回路を含んでいてもよい。ここで用いられるように、処理回路18がコンピュータを備え、処理回路18が関数を実行することが説明され、又は関数を実行するように構成されているものとして説明されることが記載されているとき、これは、コンピュータが、処理回路18にその関数を実行させる命令を格納しているプログラムメモリを有することを意味すると理解されるべきである。必要な変更を加えて、これはハードワイヤードな処理回路18を用いる実装にも当てはまる。
【0020】
実施の形態において、モータアセンブリは、車両における部品の位置を機械的に調節するために用いられる補助的な調節機構の一部であってもよい。そのような応用においては、モータ10は、車両の主要なモータに比べて比較的小さいモータである。例えば、そのような補助的な調節機構は、バックミラーに折り畳まれ、且つ/又はその方向を調節するために、カメラの方向を調節するために、又は空力構造を調節するために用いられてもよい。このように、モータアセンブリは、車両のバックミラーアセンブリ、カメラユニットなどの一部であってもよい。モータ10は、位置決め可能な部品、例えば、ギアシステムを経由して結合されていてもよい。
【0021】
図2は、ブラシ20と回転子22を含む単純なDC電気モータの一部の例示的な断面を示す。回転子22は、3つのモータコイル24a-c(複数の箱として記号的に示されている)と、3つのセクション26a-cを備える整流子リングを含む。典型的には、モータコイル24a-cは、巻線を通る電流に応答して、例えば、磁化可能なヨーク(図示せず)の方法によって、回転子の半径方向に磁場又は磁場成分を生成するように構成されている。さらに、DC電気モータは、固定子磁石(図示せず)を備える。各モータコイル24a-cは、セクション26a-cのそれぞれの対の間で電気的に接続されている。ブラシ20は、回転子の回転中、固定されている。モータの動作中、回転子22は回転する。ここで用いられるように、これはモータの回転(rotation)、又はモータの回転(revolution)と呼ばれる。より複雑なモータにおいては、より多くのモータコイル、より多くのセクションを備える整流子リング、及び/又は、より多くのブラシがあってもよいことに注意されたい。
【0022】
他の種類の電気モータが異なる数のモータコイル24a-c(1つは巻線として、その他は複数の箱として記号的に示されている)及びセクションを有し得ることに注意されたい。例えば、n個のモータコイルを備え、それぞれが連続するセクションの対に結合されたn個のうちの任意の別の数のセクションが使われてもよい。
【0023】
処理回路18は、電気モータの動作環境において、モータ10の抵抗値R、又は、等価的に、単一のモータコイル24の巻線の抵抗値を判別するように構成されている(例えば、プログラムされている)。多くの場合には、ブラシ20a、bの抵抗は、モータコイル24a-cの抵抗と比べて無視できるものであるので無視されるが、抵抗値は、コイル24a-cとブラシ20a、bの巻線の抵抗の結果である。後述するが、処理回路18は、回転子の回転数を判別するために、より一般的には、モータの位置と速度の推定の一部として、リプルのカウントの信頼性を改善するための抵抗値Rの判別を用いるように構成されてもよい。他の応用においては、抵抗値は、例えば、過熱保護機構の一部として、モータの温度を推定するために用いられてもよい。
【0024】
原則として、モータ10の抵抗値Rは、モータが静止しているか又はモータが実質的に静止しているものと言い得るほど遅く動いているときに、測定されるモータを流れる電流Iとモータにかかる供給電圧Vとの比から判別され得る。モータは、例えば、滑り継ぎ手から摩擦力若しくは別の反力に打ち勝たなければならないとき、又は静止からゆっくりと回転し始めるとき、実質的に静止状態にあり得る。モータの逆起電力が、モータの抵抗による電圧低下よりずっと小さいとき、例えば、逆起電力が、モータの抵抗による電圧低下の20%よりも小さいとき、モータは、実質的に静止状態にあるものと言い得る。処理回路18は、この比を判別するため、モータが少なくとも実質的に静止状態にある時点での電圧センサ11と電流センサ12からの測定値を使ってもよい。しかし、この比とモータコイルの巻線抵抗との間の関係は、測定の時点におけるモータの回転位置に依存する。
【0025】
図2aは、測定時のモータの回転位置にあるブラシの間で測定された抵抗の依存性を示す。図2aにおいて、整流子リングの整流子のセクション26a-cは、第1のブラシ20aが整流子リングのセクション26a-cのうちの2つに同時に接触するように配置されている。これは、ブラシ20a、bがそれぞれ整流子リングのセクション26a-cのうちの1つとだけ接触している図2に示されている回転位置とは対照的である。
【0026】
図2の場合には、ブラシ20a、b間の巻線抵抗は、2つの枝の並列回路の抵抗であり、第1の枝は、単一のコイルの巻線抵抗R1を含み、第2の枝は、2つのコイルの巻線抵抗R1+R1の直列抵抗2*R1を含む。結果として生じるブラシ20a、b間の抵抗値は、2*R1/3である。図2aの場合には、ブラシ20a、b間の巻線抵抗は、それぞれが単一のコイルを含む2つの枝の並列回路の抵抗であり、それゆえ、結果として生じるブラシ20a、b間の抵抗値はR1/2である。注意されているかもしれないが、ブラシが回転子上にあり、整流子リングが回転しないとき、類似の効果が生じ得る。
【0027】
より一般的には、異なるブラシの位置において生じるブラシ間の抵抗のネットワークの抵抗の表現は、その構成部分の抵抗の抵抗値の観点で抵抗のネットワークの抵抗値を表現する従来の方法に従って、コイルの抵抗R1の観点で表現され得る。
【0028】
このようにして、モータがより多くの整流子のセクション、及び/又は、より多くのコイルを有するとき、類似の表現がより容易に得られる。これは、各ブラシが通常複数の整流子のセクションに接触し、接触している整流子のセクションの数がプラス又はマイナス1だけ変化し得るモータの構成に対しても同様である。もし抵抗間の所定の比を有するコイルが同じモータにおいて用いられるならば、全てのコイルに同じ抵抗を用いる代わりに、ブラシ間の抵抗の表現も得られる。抵抗値にとっては、モータがDCモータであるかACモータであるかは関係ない。一般的に、異なるブラシの位置において適用されるブラシ間の抵抗値の表現は、基準抵抗R1の異なる因子倍であり、基準抵抗R1は温度に依存するであろう。
【0029】
例えば、奇数2*n+1のセクションが使われ、同じ抵抗R1である2*n+1個のモータコイルを備え、それぞれがセクションの続く対に結合され、ブラシが正反対の位置に配置されているならば、ブラシがともに1つのセクションだけに接触するとき、抵抗はn*(n+1)*R1/(2*n+1)_であり得るが、ブラシがともに2つのセクションに接触するとき、抵抗はn*R1/2であり得る。すなわち、抵抗値は、2*(n+1)/(2*n+1)の因子だけ異なる。
【0030】
同様に、偶数2*nのセクションが使われ、抵抗R1である2*n個のモータコイルを備え、それぞれがセクションの続く対に結合され、ブラシが正反対に配置されているならば、ブラシがともに1つのセクションだけに接触するとき、抵抗はn*R1/2であり得るが、ブラシがともに2つのセクションに接触するとき、抵抗は(n-1)*R1/2であり得る。
【0031】
回転子が静止しているときに、回転子の回転位置に関する不確かさを考慮して、処理回路18は、ブラシ間の抵抗値を測定するその構成において電圧と電流から判別することができない。従って、処理回路18は、電圧と電流だけから単一のコイルの抵抗値R1を判別できない。処理回路18は、どの抵抗値が使われるべきかを判別するために温度センサ14からの入力を使う。
【0032】
温度の関数として単一のコイルの抵抗値R1の所定の近似値と温度センサ14で測定された温度を考慮に入れると、図2、2aの構成におけるブラシ20a、b間の予測された抵抗値が予測され得る。これらの予測に基づいて、測定された抵抗値Rmに最も近い予測された抵抗値を算出する構成が選択され得る。そして、単一のコイルの抵抗値R1が、図2、2aの構成にそれぞれ従った例において、最も近い予測された抵抗値を算出する構成に従って、即ち、R1=2*Rm又はR1=3*Rm/2に従って、測定された抵抗値Rmから計算され得る。
【0033】
通常、抵抗値を計算する異なる方法からの選択は、異なる因子(図2、2aの例における2又は3/2)から選択することに帰着する。実際には、R1を明示的に計算する必要はないかもしれず、その代わりに、R1に依存する何らかの他の量が、温度に依存する異なる方法で(例えば、異なる因子で)計算されてもよい。例えば、他の量が回転の大部分の間のモータの抵抗であるとき、測定された抵抗値Rmが使われてもよく、又は、測定された値と測定された温度に基づいて予測値との比較が、Rmが測定されたときに見られる図2aの構成を示すならば、4*Rm/3が使われてもよい。
【0034】
第1の応用として、リプルをカウントする応用が説明される。
【0035】
この出願の一つの実施の形態において、処理回路18は、モータ10を回転させ、応答としてモータスイッチ16にモータ10への電圧を供給させ、モータ10の回転数を判別させ、処理回路18が所定の回転数をカウントすると、モータスイッチ16にモータ10への電圧の供給を停止させる命令を受信するように構成されている。
【0036】
電流センサ12は、モータ10を流れる電流を測定する。処理回路18は、モータ10を流れる電流におけるリプル(即ち、ピーク及び/又はディップ)を検出し、回転数を判別するためにリプルをカウントするように構成されている。一つの実施の形態においては、リプルの固定された端数、例えば、2番目ごと、又はより一般的には、nが自然数である、毎n番目のリプル、だけが数えられる。回転子22の回転中に整流子リングの次のセクション26a-cがブラシ20と接触するときに、回転している間に電流のリプルは典型的に生じる。これは、ブラシに対して回転子22が所定の回転角度にあるときに生じる。そのため、リプル又はリプルの固定された端数をカウントすることによって、回転子モータ回転数が判別され得る。
【0037】
しかし、リプルのカウントは、リプルの誤検出又はリプル検出の見逃しのために、信頼できなくなるかもしれない。そのようなエラーは、電気モータが小さければ小さいほど、相対的に益々重大になる。このように、バックミラー調節機構に用いられるもののように、特に小さいモータなどにとって、そのようなエラーは重大であり得る。処理回路18は、リプルが予期され、リプルがないときに、予測を計算することによってそのようなエラーの影響を減らし、予測に基づいてリプルの検出とカウントを修正するように構成されている。そのようにするために、リプルのカウントよりも安定であるモータの回転の持続時間の判別方法が用いられ得る。エラーのないリプルのカウントに比べて正確でない、そのようなより安定である方法がモータの速度を判別するとしても、先行するリプルの後に次のリプルが予期されるべきであるときに大まかに予測する能力は、リプルの検出のエラーを修正することを可能にする。
【0038】
特に、次のリプルが大まかに予期されるべきとき、累積されたモータの逆起電力が予測に用いられるであろう。逆起電力の電圧Veが、固定子の磁石から、磁場において、モータコイル24の回転のため、磁場の変化によって生成される。逆起電力の電圧は、モータの角回転速度に、一定の比例定数で比例する。
【0039】
電気モータ回路において、供給電圧の差Vsがブラシ20に印加された逆起電力Veとモータを流れる電流Iとの間の次の関係が大まかに適用される。
Vs=Ve+R*I
【0040】
ここで、Rはブラシ20間に接続されたモータコイルの巻線によるモータ抵抗値に、ブラシ20の抵抗を加えたものである。平均した逆起電力を判別するという目的のため、このモータ抵抗は、図2の構成に示されている構成におけるように、同じモータの抵抗を生成するブラシの相対位置と整流子リングのセクションを備えるものに対応する。原則として、逆起電力と供給電圧との差と、電流との間のこの関係は、VsとIの測定された値を用いて、一定の比例定数で割って、時間間隔の間、その時間間隔にわたってVs-R*Iを積分することによって、回転数を判別するために用いられ得る。実際には、このような計算は、エラーのないリプルのカウントより正確でない回転のカウントになるが、リプルの検出のエラーに対してより安定である。
【0041】
処理回路18が次のリプルの位置を予測するためのそのような計算を用いるとき、リプルのカウントをより正確にするために用いられ得る。回転子が次々に同じ回転角度に到達するときに生じるリプル間の時間間隔Tは、モータの単一の回転に対応する。モータの単一の回転の時間間隔TにわたるVs-R*Iの積分は、所定の定数値である。それゆえ、第1のリプルの時点から始まり、次のリプルがプログレッシブ積分(積分区間の上界のプログレッシブ値として計算された積分)がこの所定の値に到達したときに、第1のリプルが生じるべきであるのと同じ回転角度にある、積分がプログレッシブに計算される(即ち、積分区間の上界のプログレッシブ値として計算される)。不正確さのため、これは、その場合と同じにはならないが、処理回路18は、次のリプルが予期されるプログレッシブ積分からタイムウインドウを生じさせるように構成され得る。
【0042】
例えば、処理回路18は、Vs-R*Iのプログレッシブ積分が回転子の単一の回転から名目上生じる完全な回転積分値に満たない第1の閾値(例えば、完全な回転積分値の0.9倍)に達するとき、このタイムウインドウが始まるものと判別し得る。同様に、処理回路18は、Vs-R*Iのプログレッシブ積分が完全な回転積分値を超える第2の閾値(例えば、完全な回転積分値の1.1倍)に達するとき、このタイムウインドウが終わるものと判別し得る。処理回路18は、そのような時間間隔のそれぞれに1つのリプルだけカウントし、時間間隔においてリプルが検出された時点でその値だけプログレッシブ積分を減らす。もしリプルが遅れずに又はほとんど遅れずにリプルが検出されるならば、減らすことは、単にプログレッシブ積分をゼロにリセットすることによって実現されてもよい。時間間隔においてリプルが検出されないときには、1つのリプルが未だにカウントされ、プログレッシブ積分がちょうど1回転にわたる積分に対応する所定の値だけ減らされる。
【0043】
この方法は、モータの全回転のために説明されてきたが、回転中に2つ以上のリプルが組織的に生じるとき、この方法は、リプルが組織的に生じる回転の端数における回転位置のために、回転中に複数のタイムウインドウとともに用いられてもよいことに注意すべきである。
【0044】
図3は、処理回路18によって実行されるリプルのカウントの計算方法を説明するフローチャートを示す。フローチャートは、この計算の原則を説明しており、方法のバリエーションが可能であることに注意されたい。フローチャートのステップは、リプルが検出され、プログレッシブ積分の計算がその時点から開始する初期化ステップ(示されていない)によって先行されていてもよい。第1のステップ31において、処理回路18は、供給電圧Vsとセンサ11、12の出力からのモータ電流Iの値を判別する。モータに供給される電圧が測定される実施の形態が説明されるが、いくつかの場合には、所定のモータ供給電圧の値を用いることが十分であり得ることにも注意されたい。その場合には、電圧センサ12は不要である。
【0045】
第2のステップ32において、処理回路18は、第1のステップ31において得られた供給電圧Vsとモータ電流Iを用いて、Vs-R*Iのプログレッシブ積分値を更新する。ここで用いられているように、「積分」という用語は、連続する積分又は連続する積分を近似する時間離散計算によって判別される任意の時間離散値に用いられる。時間離散計算の一つの方法は、前のプログレッシブ積分値にその時点に対するVs-R*Iの値を加えることによって、連続するサンプル時点に対するプログレッシブ積分値がそれぞれ計算され得るように、サンプル時点に、Vs-R*I値の合計を積分として用いることである。
【0046】
第3のステップ33において、処理回路18は、プログレッシブ積分値が第1の閾値を超えるか否かを検査する。もしそうならば、処理回路18は、プログレッシブ積分値が第1の閾値を超えている間、モータ電流値がモータ電流にリプルが生じたことを処理回路18が示すか否かを判別する第4のステップ34に進む。
【0047】
もしそうならば、処理回路18は、処理回路18がリプルのカウントを1だけ増やし、プログレッシブ積分値をリセットする、即ち、プログレッシブ積分値の開始時点を検出されたリプルの時にリセットする(又は等価的に、次のリプルを検出するために用いられるプログレッシブ積分値から検出されたリプルの時点におけるプログレッシブ積分値を引く)、第5のステップ35に進む。処理回路18は、第5のステップ35から第6のステップ36に進み、次のサンプル時点が到達すると、そこから、処理回路18が第1のステップ31から繰り返す。
【0048】
もし回路18が第4のステップ34においてリプルを発見しないならば、処理回路18は、プログレッシブ積分値が第2の閾値を超えるか否かを処理回路18が検査する第7のステップ37を実行する。もしそうならば、処理回路18は、リプルが検出されていないという事実にもかかわらず、処理回路18は、リプルのカウントを1だけ増やし、処理回路18は、プログレッシブ積分値から全回転積分値を引く第8のステップ38を実行する。第8のステップ38から、処理回路18は、第6のステップ36に進む。同様に、処理回路18が第3のステップ33においてプログレッシブ積分値が第1の閾値を超えるものと判別しないか、又は第4のステップ34においてリプルを検出しないときには、処理回路18は、第6のステップ36に進む。
【0049】
上述したようにバリエーションがあり得る。例えば、積分が第1の閾値を超えた後、第1の検出されたリプルに応答して第5のステップ35を実行する代わりに、積分が第1と第2の閾値の間にあるときに、最も正しそうなリプルの検出の探索が行われてもよく、そのリプルの時点におけるプログレッシブ積分値が次のリプルの検出のために用いられるプログレッシブ積分値から引かれてもよい。
【0050】
即ち、各時間の点において全てのステップを繰り返す代わりに、タイムウインドウの間、測定された電流値がサンプル化され、記録され、リプルの最もあり得る時点は、あるとしても、記録されたサンプルから後に判別されてもよく、その時点での積分の値を選択して、選択された値をプログレッシブ積分から引くために用いられる。更なる実施の形態において、測定された電流値は、タイムウインドウの外側でサンプル化され、記録されてもよく、記録された値におけるタイムウインドウの位置は、記録された値から判別されてもよい。
【0051】
この方法はモータコイルの巻線とモータ電流が流れるブラシの抵抗Rの値を必要とすることに注意されたい。実際には、この抵抗は環境の温度に依存する。特定の環境において、車両における部品の位置を機械的に調節するために用いられる補助的な調節機構などで、抵抗の温度がリプルカウント判別の信頼性に重大な影響を及ぼすことが判明した。信頼性の欠如のこの源を取り除くため、処理回路18は、モータの静止状態、即ち、逆起電力の電圧がゼロであるときにおける抵抗値Rの兆候を測定し、図3の方法におけるプログレッシブ積分値の計算における、この兆候から得られる抵抗値を用いるように構成されている。
【0052】
原則として、抵抗値Rは、モータが回転し始める前のモータを通って流れる測定された電流Iとモータにかかる供給電圧との比から判別され得る。しかし、図2、2aに関して議論されたように、この比とモータコイルの巻線抵抗との間の関係は、測定の時間におけるモータの回転位置に依存する。測定された抵抗値Rmと測定された温度に基づいて予測された抵抗値との間の比較が図2aの構成は、Rmが測定されたときに生じたことを示す。
【0053】
図4は、抵抗値Rの判別のフローチャートを示す。第1のステップ41において、処理回路18は、(例えば、モータの摩擦に打ち勝つには足りない小さい供給電圧だけを印加することにより、又はモータが停止構造によって動くことを禁止されているとき、又はモータの供給電圧が印加されていない時間間隔の直後に)モータが静止状態にある時点で、センサ11、12から電圧Voと電流Isを読む。第2のステップ42において、処理回路18は、実質的に同じ時間に、温度センサ14から測定された温度を読む。第3のステップ43において、処理回路18は、モータの回転子の異なる位置の構成に対する測定された温度に基づいて、予測された抵抗値を計算する。第4のステップ44において、処理回路18は、最も近い予測された抵抗値を生じる構成に従った測定された抵抗値から抵抗値Rを計算する方法を選択する。ここで、最も近い値はVo/Isが最小である差の絶対値の予測に対応する。しかし、その代わりに、最大の予測値のVo/Isとの比よりVo/Isの最小の予測値との比が小さいか否かなどの、近さに対する他の基準が用いられてもよい。第5のステップ45において、処理回路18は、選択された方法に従って抵抗値Rを計算する。図2と2aの例において、モータ抵抗値Rは、予測された抵抗が、Vo/Isとみなされ、ブラシが2つ以上の整流子のセクションに接触していないときにはVo/Isに最も近く、そうでないときには4*Vo/(3*Is)に最も近い。処理回路18は、図3に示された方法において計算された抵抗値Rを用いる。
【0054】
上述したように、これは、被積分関数がVs-c*I*Vo/Isと書き直され、cが図4を参照して説明されるような基準によって判別される因子(c=1又は4/3)である。もしVs=Voならば、これは、Vs-c*(I/Is)*Vsにまで減少する。
【0055】
必要に応じて、処理回路18は、温度センサ14による温度変化の検出と所定の温度依存性に基づいて、回転中に抵抗値Rを動的に更新するように構成されている。巻線抵抗R1が、Tが巻線の温度であり、関数F(T)が所定の温度依存性を表す、R1=R10*F(T)に従って温度に依存することが知られているとき、処理回路18は、R=Rs*F(T)/F(Ts)に従って回転中の更新された抵抗を計算し得、ここでの抵抗は、静止状態における測定から判別される抵抗であり、温度Tsはその時間に測定された温度である。多くの場合に、そのような計算の線形化されたバージョンである、R=Rs*(1+alpha*(T-Ts))が使われてもよく、alphaは所定の温度係数である。動的な温度依存性の更新を利用することは、リプルのカウントをより信頼性のあるものにする。
【0056】
図5は、第1の電気モータ10と第2の電気モータ50が再配置されるべき、即ち、動かされ且つ/又は回されるべき、物体(図示せず)に機械的に結合されているモータアセンブリの一つの実施の形態を示す。物体の種類は、応用に依存する。自動車の応用の場合には、例えば、再配置されるべき物体はミラー、カメラ、空気吸入口のフラップ又はとりわけアクティブエアダム(AAD)であり得る。第1のモータ10と第2のモータ50は、物体に、例えば、ギアシステムを介して結合されていてもよい。第1のモータ10と第2のモータ50は、それぞれモータスイッチと電流センサ12、52とに個別に直列に接続されて、処理回路18に結合されている。処理回路18は、第1及び第2のモータ10、50のモータスイッチへの制御出力(図示せず)を有していてもよい。
【0057】
動作時に、モータ10、50が物体を再配置するとき、制御回路18は、モータスイッチの方法によりモータ10、50を両方とも動作させる。モータの動きに対するモータのトルクと抵抗の違いのため、モータ10、50が同じ回転数を実現しなければならず、かつ、モータ10、50が同一であり、同じ電圧と電流を受けるときであっても、モータ10、50が動作している持続時間は、異なるものである必要があるかもしれない。処理回路18は、モータ10、50のリプルのカウントに基づいて、図3との関係で開示されたものなどの方法により、これらの持続時間を判別するように構成されている。この方法において、処理回路18は、抵抗値Rの代わりに、第1のモータ10のために処理回路18が判別した第1の抵抗値、及び、第2のモータ50のために処理回路18が判別した第2の抵抗値を用いる。
【0058】
説明的な実施の形態において、処理回路18は、図4との関係で開示されたものなどの方法によって、それぞれ、第1と第2の抵抗値の両方を判別するときに、温度センサ14からの温度測定を用いる。この温度センサ14は、第1のモータ10をも含むハウジング(図示せず)に含まれていてもよく、必要に応じて、第2のモータ50がこのハウジングの外に配置される場合は、処理回路18に含まれていてもよい。第1と第2のモータ10、50は、同じ環境、例えば、配置されなければならない単一の物体に結合されていてもよく、それゆえ、これらの温度が異なっているとしても、類似の温度を有しする。これは、測定された温度が電圧と電流からモータの抵抗の異なる判別間の選択にだけ用いられるため、モータの抵抗を判別するために十分である。
【0059】
リプルをカウントする、例えば、モータの回転を数えるため、リプルを選択するように抵抗値が用いられる実施の形態が説明されたが、他の応用もあり得る。例えば、タイムウインドウは、タイムウインドウの間に繊細な回路へのリプルを含む電圧又は電流の伝送の抑制を制御するために用いられてもよい。このようにして、リプルは除外され得る。
【0060】
別の実施の形態において、処理回路18は、測定されたモータの抵抗、即ち、実質的にコイルの巻線抵抗をモータの温度の兆候として用いることによって、温度センサ14だけで、モータの温度を可能な限り正確に推測するように構成され得る。そのような実施の形態においては、温度センサ14がモータの抵抗(又は巻線抵抗に等しい)がどのようにモータの電圧と電流から判別されるかを制御するためだけに用いられる。これは、温度センサ14が、モータの温度を判別するためにモータととても熱的に近接して接触している必要がないという利点を有する。
【0061】
さらなる実施の形態において、処理回路18は、この方法で推測されたモータ(特にその回転子)の温度を用いて、過熱監視を実現するように構成されてもよい。処理回路18は、図4の方法との関係で開示されたものなどの方法によって判別されたモータの抵抗が閾値を超えるとき、モータを供給電圧源から切り離し、又は任意の他の方法でモータによる電力消費を無効にするように構成されていてもよい。
【0062】
これは、単一のモータを備えるモータアセンブリに適用され得る。しかし、それは、図5の実施の形態におけるもののように、例えば、あるモータが温度センサと必要に応じて他のモータを含むハウジングの外に配置されているとき、温度センサと熱的に近接して接触していないモータの過熱監視を可能にするので、2つ以上のモータを備えるモータアセンブリに特に有利である。
【0063】
(付記)
(付記1)
複数のブラシ及び整流子リングの複数のセクションを備え、前記複数のセクション及び前記複数のブラシの位置がモータの回転中に互いに対して変化する電気モータと、
前記電気モータへの電流を測定するために前記電気モータに結合された電流センサと、
前記電気モータに熱的に結合された温度センサと、
前記電流センサ及び前記温度センサの複数の出力に結合された複数の入力を備え、モータ抵抗値を判別するように構成されている処理回路であって、
前記複数のブラシに対する前記複数のセクションの第1及び第2の位置の前記モータ抵抗の予測値を判別することであって、前記複数のブラシの少なくとも1つは異なる数の前記セクションと前記第1及び第2の位置においてそれぞれ接触し、前記予測値は前記温度センサによって測定された温度値及び前記温度値に依存する前記モータ抵抗の変化の所定の依存性に基づいている、前記予測値を判別することと、
前記電気モータが少なくとも実質的に静止状態にあるときに、前記電流センサによって測定された電流値を判別することと、
前記モータ抵抗の前記予測値のうちのどれが前記電流値に最も近く対応するかに依存して、前記電流値を用いて、前記モータ抵抗値を判別する異なる方法の中から方法を選択することと、
前記選択した方法に従って、前記電流値を用いて前記モータ抵抗を判別することと、
によって、モータ抵抗値を判別するように構成されている、処理回路と、
を備える、電気モータアセンブリ。
【0064】
(付記2)
前記処理回路は、前記電気モータの回転中に前記電気モータへの前記電流におけるリプルをカウントし、V-I*Rのプログレッシブ積分を計算するように構成され、ここで、Vは前記電気モータの供給電圧であり、Iは前記電気モータへの電流であり、Rは判別された前記モータ抵抗値であり、前記処理回路は、前記プログレッシブ積分の値が第1と第2の閾値の間にある各時間間隔の間に、前記リプルのカウントを1回増やし、当該プログレッシブ積分の値を、前記処理回路が前記電流にリプルを検出するときには、前記時間間隔における時点における前記プログレッシブ積分の値だけ、又は前記処理回路が前記時間間隔において前記電流にリプルを検出しないときには、所定の値だけ減らす、
付記1に記載の電気モータアセンブリ。
【0065】
(付記3)
移動させられ且つ/又は回転させられるべき物体を備え、
前記電気モータは、前記物体を移動させ且つ/又は回転させるために前記物体に結合され、
前記電気モータアセンブリは、更なる電気モータを備え、前記物体を移動させ/又は回転させるために前記物体に結合され、
更なる電流センサは、前記更なる電気モータへの電流を測定するための前記更なる電気モータに結合され、
前記処理回路は、前記更なる電流センサの出力に結合された更なる入力を有し、
前記処理回路は、前記電流センサと前記更なる電流センサをそれぞれ組み合わせて、両方に前記温度センサを用いて、前記電気モータについてのものと同じ方法で前記更なる電気モータのモータ抵抗値を判別するように構成されている、
付記1又は2に記載の電気モータアセンブリ。
【0066】
(付記4)
前記電気モータと前記温度センサが中に配置され、前記更なる電気モータが外に配置されているハウジング、を備える、
付記3に記載の電気モータアセンブリ。
【0067】
(付記5)
前記処理回路は、前記モータ抵抗値又は前記モータ抵抗値から判別された温度を閾値と比較し、前記モータ抵抗値又は前記温度が前記閾値を超えるときに、前記電気モータの使用を無効にするように構成されている、
付記1から4の何れか1つに記載の電気モータアセンブリ。
【0068】
(付記6)
前記モータ抵抗値を判別する異なる方法の中から方法を選択することは、前記モータ抵抗の前記予測値のどれが前記電流値に最も近く対応するかに依存して、実質的に静止状態において前記電流センサによって測定された前記電流値に適用されるべき異なる因子の中から因子を選択することを含む、
付記1から5の何れか1つに記載の電気モータアセンブリ。
【0069】
(付記7)
複数のブラシ及び整流子リングの複数のセクションを備え、前記複数のセクション及び前記複数のブラシの位置がモータの回転中に互いに対して変化する電気モータのモータ抵抗を判別する方法であって、
処理回路によって実行される、
前記電気モータが少なくとも実質的に静止状態にあるときに、前記電流センサによって測定された電流値を測定するステップと、
前記電気モータに熱的に結合された温度センサを用いて温度値を測定するステップと、
前記複数のブラシに対する前記複数のセクションの第1及び第2の位置の前記モータ抵抗の予測値を判別するステップであって、前記予測値は前記温度値及び前記温度値に依存する前記モータ抵抗の変化の所定の依存性に基づいており、前記複数のブラシの少なくとも1つは異なる数の前記セクションと前記第1及び第2の位置においてそれぞれ接触する、前記予測値を判別するステップと、
前記モータ抵抗の前記予測値のうちのどれが前記電流値に最も近く対応するかに依存して、前記電流値を用いて、前記モータ抵抗値を判別する異なる方法の中から方法を選択するステップと、
前記選択した方法に従って、前記電流値を用いて前記モータ抵抗を判別するステップと、を備える、
方法。
【0070】
(付記8)
前記処理回路は、前記電気モータの回転中に前記電気モータへの前記電流におけるリプルをカウントし、V-I*Rのプログレッシブ積分を計算するように構成され、ここで、Vは前記電気モータの供給電圧であり、Iは前記電気モータへの電流であり、Rは判別された前記モータ抵抗値であり、前記処理回路は、前記プログレッシブ積分の値が第1と第2の閾値の間にある各時間間隔の間に、前記リプルのカウントを1回増やし、当該プログレッシブ積分の値を、前記処理回路が前記電流にリプルを検出するときには、前記時間間隔における時点における前記プログレッシブ積分の値だけ、又は前記処理回路が前記時間間隔において前記電流にリプルを検出しないときには、所定の値だけ減らす、
付記7に記載の方法。
【0071】
(付記9)
同じ物体に結合された電気モータと更なる電気モータのモータ抵抗を判別する方法であって、
前記電気モータと前記更なる電気モータは、それぞれ、複数のブラシと整流子リングの複数のセクションを備え、
前記電気モータと前記更なる電気モータの前記モータ抵抗値は、両方とも、付記7又は8に記載の方法に従って判別され、両方の前記温度値は、前記同じ温度センサを用いて判別される、
方法。
【0072】
(付記10)
前記電気モータと前記温度センサがハウジングの中に配置され、前記更なる電気モータが前記ハウジングの外に配置されている、
付記9に記載の方法。
【0073】
(付記11)
前記処理回路は、前記モータ抵抗値又は前記モータ抵抗値から判別された温度を閾値と比較し、前記モータ抵抗値又は前記温度が前記閾値を超えるときに、前記電気モータの使用を無効にするように構成されている、
付記7から10の何れか1つに記載の方法。
【0074】
(付記12)
前記モータ抵抗値を判別する異なる方法の中から方法を選択するステップは、前記モータ抵抗の前記予測値のどれが前記電流値に最も近く対応するかに依存して、実質的に静止状態において前記電流センサによって測定された前記電流値に適用されるべき異なる因子の中から因子を選択することを含む、
付記7から11の何れか1つに記載の方法。
【0075】
(付記13)
プログラム可能な処理回路に対する命令のプログラムを含むコンピュータプログラムプロダクトであって、前記プログラムが、プログラム可能な処理回路によって実行されるときに、前記プログラム可能な処理回路に、付記7から12の何れか1つに記載の方法を実行させる、コンピュータプログラムプロダクト。
図1
図2
図2a
図3
図4
図5