(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】船舶用推進システム
(51)【国際特許分類】
B63H 9/061 20200101AFI20240116BHJP
B63H 9/072 20200101ALI20240116BHJP
【FI】
B63H9/061
B63H9/06 D
(21)【出願番号】P 2021562160
(86)(22)【出願日】2020-03-25
(86)【国際出願番号】 ES2020070203
(87)【国際公開番号】W WO2020193835
(87)【国際公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-10-18
(32)【優先日】2019-03-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】521457000
【氏名又は名称】バウンドフォーブルー,エスエル
(74)【代理人】
【識別番号】110003339
【氏名又は名称】弁理士法人南青山国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ベルムデス ミケル,ホセ,ミゲル
(72)【発明者】
【氏名】アレシェンドリ ムニョス,クリスティーナ
(72)【発明者】
【氏名】フェレール デクロー,ダヴィド
(72)【発明者】
【氏名】ベルムデス サンチェス,イグナシオ
(72)【発明者】
【氏名】ゴンザレス ガルシア,マニュエル,ヘスス
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス マルティネス,ウリセス
(72)【発明者】
【氏名】サンチェス ガルシア,オリオル
【審査官】結城 健太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/211260(WO,A1)
【文献】欧州特許出願公開第3235719(EP,A1)
【文献】蘭国特許発明第2006560(NL,C)
【文献】実開平5-80997(JP,U)
【文献】特開昭63-25195(JP,A)
【文献】特開昭62-234795(JP,A)
【文献】特開昭60-139593(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63H 9/02,
B63B 79/10,79/40
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
船舶のデッキに接続され内部領域を有する少なくとも1つの吸気セールを具備し、
前記少なくとも1つの吸気セールは、
前記吸気セールに縦軸回りに移動可能に設けられるフラップと、前記吸気セールに設けられ前記吸気セールの表面を流れる空気の一部を前記内部領域内へ吸引する吸気システムと、
前記縦軸回りに前記吸気セールを回転駆動する駆動部と、
前記吸気システムと前記駆動部とを制御する制御部
と、前記制御部に接続された複数のセンサと
を有し、
前記複数のセンサは、
前記縦軸に対する前記吸気セールの角度位置を検出する少なくとも1つの回転センサと、
前記フラップの位置を検出する少なくとも1つの位置センサと、少なくとも1つの吸気センサと、
風速及び風向きを検出する少なくとも1つの環境センサと、を有する
船舶用推進システム。
【請求項2】
請求項1に記載の船舶用推進システムであって、
前記制御部は、ユーザインターフェースを備える
船舶用推進システム。
【請求項3】
請求項1に記載の船舶用推進システムであって、
前記船舶用推進システムは、前記吸気システムおよび前記駆動部に接続された手動制御部をさらに備える
船舶用推進システム。
【請求項4】
請求項1に記載の船舶用推進システムであって、
前記吸気セールは、剛性のある、または、柔軟性のある外側コーティングを含む
船舶用推進システム。
【請求項5】
請求項1に記載の船舶用推進システムであって、
前記吸気セールは、複数の穴が設けられた2つ以上の吸気領域を備える
船舶用推進システム。
【請求項6】
請求項1に記載の船舶用推進システムであって、
前記駆動部は、前記吸気セールの下端に配置されている
船舶用推進システム。
【請求項7】
請求項1または
6に記載の船舶用推進システムであって、
前記駆動部は、動力部によって動力を供給される電気または油圧駆動ユニットである
船舶用推進システム。
【請求項8】
請求項1に記載の船舶用推進システムであって、
前記吸気セールは、下端に支持構造を備える
船舶用推進システム。
【請求項9】
請求項1に記載の船舶用推進システムであって、
前記吸気セールの下部は、前記吸気セールを実質的に水平軸の周りで傾斜させる傾斜支持体を備える
船舶用推進システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船舶用推進システムに関し、特に、1つ以上の吸気セールを備える船舶用推進システムに関する。
【背景技術】
【0002】
風力推進システム(WAPS)と呼ばれる船舶用推進システムの使用は既知であり、このシステムの性能は、システムが作り出すことのできる空気力(揚力)に関係している。
この力は、システムの空力係数のようなシステムの空力特性、システムの表面、および現在の風速に直接関連している。
揚力係数は、空力プロファイルの幾何学的形状(非対称、対、対称)と(プロファイル翼弦と気流の方向の間の角度として定義される)迎え角との2つの主要な変数に依存する。
【0003】
第1の変数は、空力プロファイルの形状である。対称プロファイルは、プロファイル自体の翼弦と同一直線上に対称な軸を有する。このタイプのプロファイルは、迎え角がゼロのとき、その周りの気流に何ら非対称性を生じず、圧力差がないので、揚力係数がゼロである。
空力プロファイルに非対称性を追加すると、プロファイル周辺の気流に圧力差が発生し、その結果、より高い揚力係数が生成される。しかしながら、これらの非対称性は、いかなる風向に対しても機能しなければならないので、WAPSにはほとんど適用できない。
【0004】
揚力係数を増大させるために非対称プロファイルを実施する場合の主な制限は、WAPSの機械システムが複雑になることであり、その結果、コストが高くなり、重量が大きくなってしまう。
第2の変数は迎え角であり、0に等しい迎え角に対して、実質的に乱流のない空力プロファイルの周りに気流が流れ、結果的に揚力はほとんどゼロである。
迎え角が増加すると、揚力係数は直線的に増加する。同時に、後縁から始まる乱流が現れる。
【0005】
乱流およびその効果が関連する最大揚力迎え角が存在する。
最後に、最大耐久の迎え角を超えると、失速として知られる効果が生じる。この現象は、プロファイルに付属した気流の突然の分離であり、これは揚力の急激な減少を引き起こす。
この場合、最大揚力係数の制限は、流れ境界層の急な分離、ロスに関係する。
【0006】
風力推進システム(WAPS)の中で、剛性のある吸気セールの使用が知られている。この剛体吸気セールの目的は、上述の2つの変数によって誘起される効果を制御することによって揚力係数を最大化することである。
迎え角から始めて、プロファイルの周りの境界層の分離を、迎え角に対して遅らせることができれば、より高い揚力係数を得ることができる。
これは、プロファイルの頂部から空気流を吸引し、高い迎え角用に空気流がセール表面に付属したままであることを確保することによって達成することができる。このプロセスを以下に詳細に説明する。
【0007】
(吸気なしで)最大揚力の元の迎え角に達すると、外側面の空気流の一部が吸引される。
吸気は迎え角を増加させるが、プロフィルに境界層を付着させ、失速を遅らせるが、これは揚力係数の増加を意味する。
空気流の吸引により、迎え角(従って迎え角)が増加すると、分離点はほぼ一定のままである。その結果、その流れ解放点の背後には、プロファイルの構造および形状は必要ではなく、除外され、プロファイルのサイズを縮小する。
【0008】
最後に、分離が吸気によって制御されるので、プロファイルの形状は、著しい非対称性を導入することによって修正することができる。この効果を達成するための最良の解決策は、フラップと呼ばれる「移動後縁」によるものである。
このフラップは、(空力プロファイル翼弦の各側に1つずつ)2つの異なる位置に配置することができ、一方または他方に向かって非対称性を発生させ、任意の風向に適応させることができる。
【0009】
剛体吸気セールは、剛体受動セールよりも実質的な改善を有し、それは、セールの揚力係数を増加させ、セールの単位面積当たりの推力に関して剛体セールの効率を改善する。これらの改善には多くの利点がある。
揚力係数が高いほど、同じ推力、従って同じ燃費を提供するために必要な剛体セールのサイズは小さくなる。
小型化とは、構造体の材料費の削減、単位時間当たりの生産時間の短縮を意味し、生産コストの低減につながる。
【0010】
また、使用されるサイズおよび材料の減少は、各ユニットの重量を減少させ、ボートの安定性および貯蔵容量にプラスの影響を及ぼす。この減少は、50重量%まで減少させることができる。
システムが小さくなれば、同一の利用可能なデッキスペースに対してより多くのユニットを設置することが可能になり、1隻の船舶の燃料消費の最大限の削減ポテンシャルが高まる。
また、システムが小さいほど、視認性要件への影響が少ないことを意味する。
【0011】
また他方では、剛体の吸気セールは、特定の制限を提供し、それらの大部分は、吸気システム自体に関連する。主な制限は以下の通りである。
吸気は、常に空気を吸引する活性ポンプまたはファンを必要とする。これにより、システムを動作状態に保つための定電源消費が発生する。この電力消費は、セールによって提供される推力のごくわずかな部分であることに留意することが重要である。
境界層吸気が行われるべき剛体セール面の領域は、特定の臨界位置を有しており、剛体セール面の残りの部分が確実にシールされるようにすることが非常に重要である。
【0012】
向かい風に対する剛体吸気セールの性能は、この動作シナリオにおいては、空気抵抗が推力に対して多くの関連性を得るので、より低い。
その結果、剛体吸気セールは、以下の特徴を有する船舶に適している。
デッキスペースが限られている船舶
安定性の低い船舶
視認性の限られた船舶
折り畳みシステムを必要としないため、支柱の制限がない船舶
漁船は、これらの特性に完全に適合する。
【0013】
従って、本発明の目的は、それらの船舶が吸気セールを使用してその性能を最適化することを可能にする船舶用の推進システムを提供することである。
【発明の概要】
【0014】
本発明の推進システムによれば、上述の欠点が解決され、以下に説明する他の利点が提供される。
本発明に係る船舶用推進システムは、少なくとも1つの吸気セールと、吸気システムと、上記少なくとも1つの吸気セールの回転を駆動する駆動部とを具備し、上記少なくとも1つの吸気セールは、制御部に接続された複数のセンサを備え、上記制御部は、上記吸気システムおよび上記駆動部の動作を決定する。
このような操作は、自律的または半自律的であり得、すなわち、乗組員との相互作用が非常に少ない。
【0015】
有利には、このような複数のセンサは、少なくとも1つの風向センサ、吸気セールの回転用の少なくとも1つのセンサ、吸気セールのフラップの位置用の少なくとも1つのセンサ、および/または、少なくとも1つの吸気センサを含む。
さらに、制御部は、ユーザが制御部と相互作用するためのユーザインタフェースを含むことが好ましい。
【0016】
必要に応じて、推進システムは、推進システムの手動制御のために、吸気システムおよび駆動部に接続された手動制御部をさらに備えてもよい。
有利には、上記吸気セールは、剛性のある、または、柔軟性のある外側コーティングと、複数の穴が設けられた吸気領域とを備える。
好ましくは、上記駆動部は、吸気セールの下端に配置され、動力部によって駆動される電気または油圧駆動ユニットである。
【0017】
この吸気セールは、吸気セールの重量を支持し、吸気セールの横方向の動きを制限するために、吸気セールの下端に支持構造をさらに含む。
実施可能な実施形態によれば、吸気セールの下部は、吸気セールを垂直に対して傾斜させる、すなわち、実質的に水平軸に対して傾斜させることを可能にする傾斜支持体を備える。
本発明による船舶用推進システムでは、上記センサによって収集されたデータに基づいて、吸気セールの動作を自動的に最適化することができる。
【0018】
吸気システムが単一のファンまたは複数のファンの場合、各領域に応じて吸気領域に沿って吸気を調整することができる。
また、複数の吸気領域を作ることができ、これにより、圧力勾配(したがって、吸気)が、吸引される流れを制御することができる。
本発明は、フラップの移動/位置決めが(モータおよび歯車によって、ケーブルによって)能動的であるか、または、受動的である(吸気セールの(垂直)回転に応じて、一方の側または他方の側に機械的に位置決めされる)ことを可能にする。
【図面の簡単な説明】
【0019】
開示されたものをより良く理解するために、いくつかの図面が含まれており、これらの図面には、概略的に、非限定的な例としてのみ、実施形態の実用的な場合が示されている。
【
図1】本発明に係る推進システムを組み込んだ船舶の側面図である。
【
図2】本発明に係る推進システムに用いる吸気セールの側面図である。
【
図3】本発明に係る推進システムに使用される吸気セールの下方から見た斜視図である。
【
図4】本発明に係る推進システムに用いられる吸気セールの上面図であり、吸気システムが示されている。
【
図5】本発明に係る推進システムに用いる吸気セールの断面図であり、駆動部と動力部とが示されている。
【
図6】代替の実施形態に係る、本発明の推進システムに使用される吸気セールの底部の図であり、吸気セールが実質的に水平軸に対して傾いている。
【
図7】本発明に係る推進システムを構成する構成要素のブロック図である。
【
図8】本発明に係る推進システムの一制御方法を示す図である。
【
図9】本発明に係る推進システムの一制御方法を示す図である。
【
図10】本発明に係る推進システムの一制御方法を示す図である。
【
図11】本発明に係る推進システムの一制御方法を示す図である。
【
図12】本発明に係る推進システムの一制御方法を示す図である。
【
図13】本発明に係る推進システムの一制御方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
図1は、本発明に係る推進システムを備える船舶2を示す。
この推進システムは、剛性のあるものであっても柔軟性のあるものであってもよい外側コーティング4を含む少なくとも1つの吸気セール3を備え、この吸気セール3は、吸気セール3の縦軸5の周りで回転してもよい。
また、吸気セール3は、異なる位置間で回転可能な少なくとも1つのフラップ6と、複数の穴を設けた少なくとも2つの吸気領域7とを備える。
【0021】
また、吸気セール3は、プロファイルの外側面から空気流の一部を吸引するファン型または同等のものであってもよい吸気システム10と、駆動部8を駆動する電気または油圧動力部18を備えた、吸気セール3を回転させるための電気式または油圧式であってもよい少なくとも1つの駆動部8とを備える。
【0022】
さらに、吸気セール3は、ギア機構またはベアリング付き構造を備えてもよい支持構造17を用いて船舶2のデッキに接続され、この支持構造17は、全体の重さを支持し、吸気セール3の横方向の動きを制限することができる。
【0023】
図6には、代替の実施形態が示されており、この実施形態では、吸気セール3の下部は傾斜支持部19を備えており、この傾斜支持部19は、モータ20を駆動することによって、吸気セールを鉛直に傾斜させること、すなわち、実質的に水平軸に対して傾斜させることを可能にしている。
【0024】
図7のブロック図から分かるように、本発明に係る推進システムは、後述するように、複数のセンサ12、13、14、15から受け取った情報から、または、手動で手動制御部16によって、駆動部8および吸気システム10を自律的に制御する制御部9も備える。
この目的のために、制御部9は、吸気セール3によって提供される有効な推進力の自律モードまたは手動モードを調整するためにユーザがアクセスできるようになっている。
【0025】
ここで示されるように、本発明に係る推進システムは、以下から選択される複数のセンサを備える。
- 風速を測定する風速計および方向を測定する風向計のような風速および方向を測定する風向センサ12、および/または、船舶の傾斜を測定する慣性センサ/傾斜計
- 船舶2の縦軸5に対する吸気セール3の角度位置をリアルタイムに知るための回転センサ13
- フラップ6の可能な動作位置間の位置を知るためのポジションセンサ14
- 吸気センサ15。吸気センサ15は、吸気セール3の内部領域と外部領域との間に対応する圧力差を作り出すための吸気領域7の複数の穴を介して吸気することによって吸気システム10により提供される吸気力を知るために動力および/または圧力を検出する。
【0026】
また、制御部は以下を含む。
データ収集システム、
プロセッサ、
自律制御ロジック、
動力部および吸気システムに駆動信号を送る駆動システム、
制御/監視マン・マシン・インターフェース、すなわち、得られた結果の自律制御および監視に導入するための制御通信システム、
手動操縦のためのマン・マシン・インターフェース。
【0027】
これらのセンサ12、13、14、15によって構成されるデータ収集システムは、風、空気圧、温度、および湿度などの環境変数、動作変数(回転速度、内圧、流れ方向)の監視を可能にする。
また、制御部は、速度、位置、慣性ユニット、および推進ユニットの特性(回転、流れ、トルク、および推進力)などの基準システム(船舶)の変数の監視を可能にする。
制御部9は、すべてのデータが受信され、最適な制御解を得るために処理され、予測保守のためのシステム健全指標を生成する役割も果たす。
【0028】
本明細書に開示された推進システムの使用例を以下に説明する。
吸気セールは、空気の流れが分離し、プロファイルが失速(揚力が生じなくなる状況に)しないようにする外側面(セールの上面/正面)の境界層(セールの表面付近の空気の領域)から、一定量の空気を吸引することにより、高い揚力係数(空気力)を発生させることができる。
この吸気は、1つ以上の吸気ゾーンを介して行われ、外側から空気を取り込むセール内部からの圧力低下を生成する。
【0029】
境界層のサイズ、したがって吸引される空気の量は、レイノルズ数(Re)の関数である。
【数1】
レイノルズ数は、以下によって決まる。
- 気流速度(V)
- 空気の圧力(P
∞)および気温(T)によって決まる空気の密度(ρ)
- 空気の温度(T)によって決まる空気の動的粘度(μ)
- 特性長さ(例えば、空気の流れた距離)。
【0030】
必要とされるより少ない境界層が吸気される場合、これは境界層の分離をもたらすであろう。さらにより多い境界層が吸気される場合、余剰分が吸気される故に、無駄な吸気力を消費するであろう。
吸気セールを効率的かつ最適に作動させることができるように、望ましくない分離や過剰な電力消費を避けるためには、我々が見てきたように、吸引される境界層の空気量を、各瞬間の速度、温度および空気圧とともに正確に制御しなければならない。
【0031】
これに対する制御変数は、いわゆる吸気圧力係数(SPC)であり、以下のように定義される。
【数2】
ここで、
P
∞- は外気圧であり、
P
a- は、吸気圧力すなわちセールの内圧である。
制御ロジックの原理は、すべての動作状態に対して所望のC
pa(設計)を得るために必要なP
aを達成するように、バキュームモータを制御することである。
【0032】
(制御オプション1)
図8に示すこの第1の自律制御オプションは、2つのセンサ群の使用に基づいている。
- 風、特に風速(V)および船首に対する方向(β)を測定するための複数のセンサ
- 環境/大気状態、特に気温(T)および気圧(P
∞)を測定するための複数のセンサ。
【0033】
セールの回転およびフラップの位置を制御するために、制御システムは、以下のステップに従う。
- 風向読み取り値(β)を取る。
- その風向(β)は、所望/目標のセールの関連する迎え角(AoA)と、所望/目標のフラップ位置とを有する。この関係β-AoAは、セール設計および制御ロジックに従って、システムにおいて予め定義される(例えば、表にされる)。
- 制御システムは、セールの回転およびフラップの位置決め用の複数のアクチュエータに作用し、異なる回転センサおよび位置センサを読み取ることによって、セールおよびフラップを新しい所望の位置にもたらす。
【0034】
吸気制御のために、制御システムは、以下のステップに従う。
- 風速(V)、気温(T)、気圧(P∞)を読み取る。
- 密度(ρ)、動圧(PD)およびレイノルズ数(Re)を計算する。
- このレイノルズ数(Re)は、所望/目標吸気圧係数(Cpa)に関連付けられている。このRe - Cpa比率は、セールの設計および制御ロジックに従って、システムにおいて事前に定義される(例えば、表にされる)。
- 所望の圧力増加(ΔP)が計算される。吸気システムの作動曲線は、特定のΔPを提供する作動条件(例えば、rpm、出力、電力など)を規定する。
- 制御システムは、吸気アクチュエータに作用して、その所望のΔPを生成する条件下(例えば、rpm、出力、電力など)で吸気アクチュエータを作動させる。そのΔP-吸気力(rpm、出力、電力など)比率は、セールの設計および制御ロジックに従って、システムにおいて事前に定義される(例えば、表にされる)。
【0035】
(制御オプション2)
図9に示すこの第2の自律制御オプションは、3つのセンサ群の使用に基づいている。
- 風、特に風速(V)および船首に対する方向(β)を測定するための複数のセンサ
- 環境/大気状態、特に気温(T)および気圧(P
∞)を測定するための複数のセンサ
- 複数の圧力センサを搭載したピトー管。これらの圧力センサの1つは、動圧(P
d)を測定する。他のものは、吸気圧力(P
a)と静圧(P
∞)との間の差圧を測定し、したがって、船舶の内部と外部との間の圧力上昇(ΔP)を得る。1つ以上の圧力センサの存在は、より小さいサブレンジに測定範囲を分割することを可能にし、各センサをそのサブレンジに調整し、したがって、測定精度を改善する。
【0036】
セールの回転および翼の位置を制御するために、制御システムは、以下のステップに従う。
- 風向読み取り値(β)を取る。
- その風向(β)は、所望/目標のセールの関連する迎え角(AoA)と、所望/目標のフラップ位置とを有する。この関係β-AoAは、セール設計および制御ロジックに従って、システムにおいて予め定義される(例えば、表にされる)。
- 制御システムは、セールの回転およびフラップの位置決め用の複数のアクチュエータに作用し、異なる回転センサおよび位置センサを読み取ることによって、セールおよびフラップを新しい所望の位置にもたらす。
【0037】
吸気制御のために、制御システムは、以下のステップに従う。
- 風速(V)、気温(T)、気圧(P∞)を読み取る。
- 密度(ρ)およびレイノルズ数(Re)を計算する。
- このレイノルズ数(Re)は、所望/目標吸気圧係数(Cpa)に関連付けられている。このRe - Cpa比率は、セールの設計および制御ロジックに従って、システムにおいて事前に定義される(例えば、表にされる)。
- ピトー管および圧力センサアセンブリによって測定された動圧(Pd)および圧力上昇値(ΔP)を読み取る。
- 実際の吸気圧係数(Cpa)が計算される。
- 制御システムは、吸気アクチュエータ(例えば、回転数、出力、電力など)に作用して、実際のCpaを所望/目標のCpaに調整する。
【0038】
(制御オプション3)
図10に示すこの第3の自律制御オプションは、3つのセンサ群の使用に基づいている。
- 風、特に風速(V)および船首に対する方向(β)を測定するための複数のセンサ
- 環境/大気状態、特に気温(T)および気圧(P
∞)を測定するための複数のセンサ
- 吸気圧力(P
a)は、種々の圧力センサによって測定される。1つ以上の圧力センサの存在は、より小さいサブレンジに測定範囲を分割することを可能にし、各センサをそのサブレンジに調整し、したがって、測定精度を改善する。
【0039】
セールの回転およびフラップの位置を制御するために、制御システムは、以下のステップに従う。
- 風向読み取り値(β)を取る。
- その風向(β)は、所望/目標のセールの関連する迎え角(AoA)と、所望/目標の翼の位置とを有する。この関係β-AoAは、セール設計および制御ロジックに従って、システムにおいて予め定義される(例えば、表にされる)。
- 制御システムは、セールの回転およびフラップの位置決め用の複数のアクチュエータに作用し、異なる回転センサおよび位置センサを読み取ることによって、セールおよびフラップを新しい所望の位置にもたらす。
【0040】
吸気制御のために、制御システムは、以下のステップに従う。
- 風速(V)、気温(T)、気圧(P∞)を読み取る。
- 密度(ρ)およびレイノルズ数(Re)を計算する。
- このレイノルズ数(Re)は、所望/目標吸気圧係数(Cpa)に関連付けられている。このRe - Cpa比率は、セールの設計および制御ロジックに従って、システムにおいて事前に定義される(例えば、表にされる)。
- 圧力読み取り値(P∞)、吸気圧力(Pa)、風速(V)、および計算された密度(ρ)を読み取る。
- 実際の吸気圧係数(Cpa)が計算される。
- 制御システムは、吸気アクチュエータ(例えば、回転数、出力、電力など)に作用して、実際のCpaを所望/目標のCpaに調整する。
【0041】
(簡易制御オプション)
温度(T)および圧力(P
∞)の大気状態の計測を除外し、温度(T)および密度(ρ)について所定の一定値をとることからなる、上述の3つのオプションに適用可能な、
図11に示す制御方法の単純化選択肢がある。
【0042】
これにより、システムアーキテクチャならびにデータ収集および処理が簡素化される。
その代わりに、(適用される制御オプションに応じて)所望/目標吸気係数(Cpa)、所望/目標圧上昇(ΔP)および/または実際の吸気係数(Cpa)の決定において誤差が導入され、吸気精度に誤差が導入され、準最適な動作につながる。
【0043】
中間的な選択肢としては、温度、圧力および密度の環境変数を関連付けることができるISA(国際標準大気)方程式を用いることも考えられる。したがって、これら3つの変数のうちの1つだけをセンサで測定することによって、他の2つを計算することができる。
【0044】
一例として、オプション1による吸気制御用の制御システムが従うステップが、詳述される。
- 温度(T)および密度(ρ)の値があらかじめ定義される。
- 風速の読み取り値(V)を取得する。
- 動圧(PD)およびレイノルズ数(Re)が計算され、これらは今や風速の読み出しによって決まる/変化するだけである。
- このレイノルズ数(Re)は、所望/目標吸気圧係数(Cpa)に関連付けられている。このRe - Cpa比率は、セールの設計および制御ロジックに従って、システムにおいて事前に定義される(例えば、表にされる)。
- 所望の圧力増加(ΔP)が計算される。吸気システムの作動曲線は、特定のΔPを提供する作動条件(例えば、rpm、出力、電力など)を規定する。
- 制御システムは、吸気アクチュエータに作用して、その所望のΔPを生成する条件下(例えば、rpm、出力、電力など)で吸気アクチュエータを作動させる。そのΔP-吸気力(rpm、出力、電力など)比率は、セールの設計および制御ロジックに従って、システムにおいて事前に定義される(例えば、表にされる)。
【0045】
(制御オプション4)
図13に示すこの代替制御方法では、セール回転およびフラップ位置の制御ロジックの理論的基礎および原理は、他の3つの制御方法について詳述したものと同一である。
空気流にさらされる任意の空気力学的プロファイルは、その面に沿って配圧(P
skin)を生成する。プロファイルの両側のその圧力分布の間の差異は、プロファイル空気力、すなわち揚力および抗力を発生させるものである。
【0046】
その面圧(P
skin)が寸法決めされる場合、圧力係数(C
P)に変換され、ここで圧力係数が以下のように定義される。
【数3】
【0047】
この圧力分布(その形状および値)は、迎え角(AoA)のみによって決まるようになる。同時に、揚力係数(CL)も迎え角(AoA)のみによって決まるため、プロファイルを付与している揚力係数(CL)に点の面圧係数(CP)を明確にリンクすることができる。
【0048】
既知のAoAが与えられると、これを吸気セールに外挿することによって、吸気が適切である場合に、所与の地点で表面圧係数(C
P)がどのようなものであるべきかを知ることができる。
表面圧係数(C
P)がより低い場合は、不十分な吸気のためにプロファイルが失速していることの兆候である。
このC
Pの差異は、プロファイル翼弦に沿った任意の点で生じるが、検出を簡単にするために、圧力変動がより顕著である点を選択することが好ましく、この点は、プロファイル前縁に近接している。
種々の迎え角(AoA)に対する面圧係数(C
P)のこの変化は、
図12に見ることができる。
【0049】
制御ロジックの原理は、すべての動作状況で望ましい(設計)CPに等しい測定CPを達成するように、バキュームモータを制御することである。
【0050】
図13に示すこの自律制御オプションは、3つのセンサ群の使用に基づいている。
- 風、特に風速(V)および船首に対する方向(β)を測定するための複数のセンサ
- 環境/大気状態、特に気温(T)および気圧(P
∞)を測定するための複数のセンサ
- 種々の圧力センサが、セール表面上の1つ以上の関連点で表面圧力(P
skin)を測定する。1つ以上の圧力センサの存在は、より小さいサブレンジに測定範囲を分割することを可能にし、各センサをそのサブレンジに調整し、したがって、測定精度を改善する。
【0051】
セールの回転およびフラップの位置を制御するために、制御システムは、以下のステップに従う。
- 風向読み取り値(β)を取る。
- この風向(β)は、セール設計に従ったシステムで予め定義されたセールの所望/目標の迎え角(AoA)、および、所望/目標のフラップ位置に関連付けられる。
- 制御システムは、翼の回転およびフラップの位置決め用の複数のアクチュエータに作用し、異なる回転センサおよび位置センサを読み取ることによって、翼およびフラップを新しい所望の位置にもたらす。
【0052】
吸気制御のために、制御システムは、以下のステップに従う。
- 気温(T)および圧力読み出し(P∞)を取る。
- 密度(ρ)を計算する。
- 計算された密度(ρ)と共に、風速(V)、圧力(P∞)および表面圧(Pskin)の読み出しを取る。
- 面圧係数(CPskin)が計算される。
- 風向読み取り値(β)を取る。
- この風向(β)は、セール設計に従ったシステムで予め定義されたセールの所望/目標の迎え角(AoA)と、所望/目標のフラップ位置とに関連付けられる。
- その迎え角(AoA)は、所望の対象面圧係数(CPskin)に関連付けられる。
- 制御システムは、吸気アクチュエータ(例えば、回転数、出力、電力など)に作用して、実際のCPskinを所望/目標のCPskinに調整する。
【0053】
本発明の特定の実施形態が参照されたという事実にもかかわらず、記載された推進システムは、多数の変形および修正が可能であり、言及されたすべての詳細は、添付の特許請求の範囲によって定義される保護の範囲から逸脱することなく、他の技術的に同等のものによって置き換えることができることが、当業者には明らかである。