(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】運動アーチファクト検出の方法
(51)【国際特許分類】
G06T 7/00 20170101AFI20240116BHJP
A61B 5/055 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
G06T7/00 612
A61B5/055 380
G06T7/00 350C
(21)【出願番号】P 2021569335
(86)(22)【出願日】2020-05-25
(86)【国際出願番号】 EP2020064376
(87)【国際公開番号】W WO2020239661
(87)【国際公開日】2020-12-03
【審査請求日】2023-05-16
(32)【優先日】2019-05-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】ワイス ステファン
【審査官】千葉 久博
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-25044(JP,A)
【文献】特開2017-157138(JP,A)
【文献】特表2018-503152(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0074604(US,A1)
【文献】工藤博幸, 外1名,“MRIにおける静磁場不均一性と被写体の動きの推定”,電子情報通信学会論文誌,日本,社団法人電子情報通信学会,1990年12月25日,第J73-D-II巻, 第12号,p.2039-2046
【文献】G.A. Wright,"Magnetic resonance imaging",IEEE Signal Processing Magazine,IEEE,1997年01月,第14巻, 第1号,p.56-66
【文献】Daiki Tamada, 外4名,"Motion Artifact Reduction Using a Convolutional Neural Network for Dynamic Contrast Enhanced MR Imaging of the Liver",Magnetic Resonance in Medical Science,第19巻, 第1号,Japn Society for magnetic Resonance in Medicin (JSMRM),2019年04月26日,p.64-76
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 7/00
A61B 5/055
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサが入力画像における運動アーチファクト
を検出
する方法であって、
前記プロセッサが、k空間サンプリングパターンとそのタイミングを表すk空間取得特性を使用して、
第1の運動
パターンに起因する運動アーチファクトを有する動き破損画像を生成するステップであって、前記運動アーチファクトは、
特徴行列と前記動き破損画像の関数として規定される、ステップと、
前記プロセッサが、畳み込みニューラルネットワークの畳み込みカーネル又は乗算カーネル
の出力を表す少なくとも1つの特徴マップを
前記特徴行列の値で初期化するステップと、
前記プロセッサが、訓練画像により、初期化された畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を訓練するステップであって、前記訓練画像は、運動アーチファクトを得るため
の第2の
運動パターンによって破損されたものである、ステップと、
前記プロセッサが、訓練済みCNNを用いて、前記入力画像における運動アーチファクトを得るステップと、
を有する方法。
【請求項2】
前記初期化するステップは、
前記プロセッサが、前記CNNの各特徴マップについて、それぞれ異なる
前記第1の
運動パターンで前記特徴行列を決定するステップと、前記特徴行列の値を使用して前記特徴マップを初期化するステップとを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記運動アーチファクトは、k空間において、前記特徴行列と前記動き破損画像とを乗算したものとして定義され、前記特徴マップは、前記CNNの乗算レイヤであり、前記CNNは、画像のk空間表現を入力として受信するように構成される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記運動アーチファクトは、画像空間において、前記特徴行列と前記動き破損画像との畳み込みとして定義され、前記特徴マップは、前記CNNのカーネルであり、前記CNNは、入力画像として受信するように構成される、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の
運動パターンは、それぞれの並進変位を特徴とする並進運動である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の
運動パターンは、
前記第1の
運動パターンの組み合わせであり、各第1の
運動パターンは、それぞれの並進変位により特徴付けられる、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記入力画像内の前記運動アーチファクトは、前記第1の
運動パターンと前記第2の
運動パターンとの組み合わせ又は前記第2の
運動パターンである、前記運動によって引き起こされる、請求項1乃至6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記第1の
運動パターンは、前記第2の
運動パターンと異なるか、又は同じである、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記k空間取得特性が、前記k空間のサンプリングのパターン及び/又はサンプリングのタイミングを含む、請求項1乃至8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記動き破損画像Mの運動アーチファクトAは、前記特徴行列Kによる前記動き破損画像Mの畳み込みとして規定され、前記特徴行列KはK=FT
-1(FT(D-δ)/FT(D))により規定され、ここで、
であり、δはデルタ関数であり、dx(t)は、運動関数であり、FTはフーリエ変換を表し、kは、前記動き破損画像Mのk空間位置である、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記動き破損画像Mの運動アーチファクトAは、k空間において、k空間において動き破損画像Mの特徴行列Kとの乗算として規定され、前記特徴行列はFT(FT(D-δ)/FT(D))により規定され、
ここで、
であり、δはデルタ関数であり、dx(t)は運動関数であり、FTはフーリエ変換を表し、kは、動き破損画像Mのk空間位置である、請求項1乃至10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
プロセッサが運動アーチファクト検出のための畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を訓練する方法であって、
前記プロセッサが、k空間サンプリングパターンとそのタイミングを表すk空間取得特性を使用して、
第1の運動
パターンに起因する運動アーチファクトを有する動き破損画像を生成するステップであって、前記運動アーチファクトは、
特徴行列と前記動き破損画像の関数として規定される、ステップと、
前記プロセッサが、畳み込みニューラルネットワークの畳み込みカーネル又は乗算カーネルを表す少なくとも1つの特徴マップを特徴行列の値で初期化するステップと、
前記プロセッサが、訓練画像により初期化された畳み込みニューラルネットワーク(CNN)を訓練するステップであって、前記訓練画像は、前記運動アーチファクトを得るために第2の
運動パターンによって破損されている、ステップと、
を有する方法。
【請求項13】
プロセッサによる実行のためのマシン実行可能命令を有するコンピュータプログラムであって、前記マシン実行可能命令の実行により、前記プロセッサに請求項1乃至12のいずれか1項に記載の方法を実行させるコンピュータプログラム。
【請求項14】
少なくとも1つのプロセッサと、コンピュータプログラムコードを含む少なくとも1つのメモリと、を有する医用分析システムであって、前記少なくとも1つのメモリ及び前記コンピュータプログラムコードは、前記少なくとも1つのプロセッサ
によって、前記医用分析システムに請求項1乃至12のいずれか1項に記載の方法を実行させるように構成される、医用分析システム。
【請求項15】
請求項14に記載の医用分析システムを有するMRIシステムであって、画像データを取得し、前記画像データから初期画像を再構成するように構成され、前記初期画像は、請求項1乃至14のいずれか1項に記載の方法を実行するように前記医用分析システムによって処理される、MRIシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スキャニングイメージングシステムに関し、特に、入力画像における運動アーチファクト検出のための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
磁気共鳴イメージング(MRI)スキャン中に、送信機アンテナにより生成される高周波(RF)パルスは局所的な磁場に摂動を生じさせ、原子核スピンにより放出されたるRF信号は、受信機アンテナにより検出される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらのRF信号は、MR画像を構成するために使用される。より長いスキャンの間、スキャンされた被検体は、内部又は外部の動きを有することがあり、かかる動きは、データを破損(corrupts)させるとともに、ブラー(blurs)又はアーチファクトをもつMR画像をもたらす。MR運動アーチファクトを低減し又は補正するために、数多くの方法が提案されている。しかしながら、これらの方法は、画像空間で処理を行い、影響を受けた画像に基づいて運動アーチファクトの特定のフィーチャを認識することを試みる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
様々な実施形態が、独立請求項の主題によって説明されるように、入力画像における運動アーチファクト検出のための方法、医用システム、及びコンピュータプログラム製品を提供する。有利な実施形態は、従属請求項に記載されている。
【0005】
運動アーチファクトは、MRIにおける画像破損の最も多く生じる原因の1つである。ディープラーニング(DL)技術は、例えば、従来のMR画像再構成後、画像空間においてDLネットワークを適用することにより、MR画像の動き補正に適用されることができる。しかしながら、これらの技術は、k空間サンプリングパターンとそのタイミングに関する明示的な情報を捨ててしまうことがある。この情報のすべてではないが一部は、ノイズ値によって初期化された後、DLネットワークの畳み込みカーネルの訓練中に暗示的に学習される。これには、かなりの労力と大量のトレーニングデータが必要になりうる。本主題は、DLネットワークを設計し、それらのカーネルを初期化して、並進運動アーチファクトのような共通の運動アーチファクトを推定するためにかかるカーネルが予め訓練されるように、サンプリングパターンとそのタイミングの明示的知識を使用することにより、動き補正を一層改善することができる。アルゴリズムを用いて、シーケンスパラメータ及び予め規定された運動経路から直接的に、少ない努力でこれらのカーネルを計算することができる。この初期化は、訓練のための努力をかなり短縮することができ、これは、他の形態の動きに対処するために行われる。
【0006】
一態様では、本発明は、運動アーチファクト検出のための医用イメージング方法に関する。本方法は、k空間取得特性を使用して、第1の初期運動パターンによって引き起こされる運動アーチファクトを有する動き破損画像(motion-corrupted image)を生成するステップであって、運動アーチファクトは、特徴行列及び動き破損画像の関数である、ステップと、畳み込みニューラルネットワーク(convolutional neural network,CNN)の少なくとも1つの特徴マップを、特徴行列の値で初期化するステップと、初期化されたCNNをトレーニング画像でトレーニングするステップであって、前記トレーニング画像は、運動アーチファクトを得るように、第2のパターン(タイプ)の動きによって破損されている、ステップと、前記トレーニングされたCNNを用いて入力画像内の運動アーチファクトを得るステップと、を有する。第1の初期タイプの運動パターンと第2の運動パターンは、(多重)変位によってかなり近似される。初期運動パターン(動きの第1の初期タイプ)及びアーチファクトに関して補正されるべき画像の運動パターン(動きの第2の訓練タイプ(パターン))の近似の精度は、プリセットされた所要の画質に関連する残差アーチファクトの予め決定されたレベルに依存する。
【0007】
現在の主題は、ネットワークが、解剖学的特性ではなく、アーチファクトの純粋な特性を学習することを導くことを可能にする。訓練の努力を低減するために、CNNは、MR運動アーチファクトの画像特徴を使用して、動き補正に関して初期化される。得られた運動アーチファクトは、例えば、入力画像内の運動アーチファクトを補正するために使用され得る。このことは、アーチファクト検出の精度、ゆえにMR動き補正の精度を高めることができる。本主題は、磁気共鳴画像における運動アーチファクトの自動補正を可能にすることができる。
【0008】
本主題は、k空間取得特性を用いることにより、アーチファクト情報の損失を防ぐことができる。特に、本主題は、k空間における連続した取得パターンによる任意の動きは、k空間における動き破壊の時間コヒーレンスに翻訳されること、これらのパターンは、画像ドメインにおける畳み込みネットワークによって「学習」することがはるかに困難であること、及び時間コヒーレンスに関する明示的な知識は、フーリエ再構成中に失われること、を考慮に入れている。
【0009】
例えば、訓練済みCNNは、遠隔コンピュータシステムによってアクセス可能であり(例えば、訓練済みCNNは、コンピュータシステム内に格納されることができる)、ここで、コンピュータシステムは、MR画像を受け取ると、訓練済みCNNを用いてMR画像内の運動アーチファクトを自動的に検出するように構成される。これは、訓練済みCNNを用いて、例えば異なるMRIシステム間で集中的かつ一貫したアーチファクト検出を可能にし得るので、有利であり得る。
【0010】
k空間取得特性は、MRイメージングプロトコルに依存して決定され得る。イメージングプロトコル又はプロトコルは、検査に必要な画像(例えば、MR画像)を生成するために、撮像モダリティの技術的な設定の組又は取得パラメータの組を参照する。例えば、取得パラメータは、パルスシーケンスのタイプを示すことができる。例えば、本方法は、所与のMRイメージングプロトコルを提供することを含み、ここに、k空間取得特性は、所与のMRイメージングプロトコルを使用して決定されることができる。k空間特性は、k空間サンプリングパターン及びそのタイミングによって決定されることができる。被検体の変位dx(t)の組は、典型的な現実的な動き(例えば、最初のタイプの動き)を反映するように選択することができ、かかる動きは、例えば、任意の方向への一定の速度、初期の静止期間の後の新しい位置への高速な変位、振動、又はより複雑な動きに関する。dx(t)の最大振幅は、臨床撮像セットアップにおけるように、画像の視野(FOV)よりもはるかに小さくなり得る。dx(t)に対するすべての選択は、力学の法則に従うことができ、例えば、時間の連続的な2階微分可能な関数である。これは、動きによって引き起こされるアーチファクトが異なることを可能にしながら、一貫したデータ取得設定を使用することによって、アーチファクト検出の精度を更に高めることができるので、有利であり得る。また、訓練は、回転及び非剛体運動のアーチファクトの学習を可能にすることができる。
【0011】
一実施形態に従って、初期化することは、CNNの各特徴マップについて、異なる第1の初期運動パターンで特徴行列を決定することと、特徴行列の値を使用して前記特徴マップを初期化することとを含む。
【0012】
例えば、想定されるすべてのタイプの動きは、個々の特徴行列を生じる。この実施形態は、個々の動きを用いて、CNNの並列カーネルの個々のカーネル(又は特徴マップ)を初期化することを可能にする。好ましくは、大きな動きは、低解像度のカーネルに割り当てられることができ、逆に小さな動きは、高解像度カーネルに割り当てられることができる。例えば、第1の初期運動パターンは、初期化されるカーネルの解像度に基づいて決定される。初期化されるべきカーネルが、所定の解像度閾値よりも高い解像度を有する場合、第1の初期運動パターンは、所定の動き振幅閾値よりも小さい動き振幅又はシフトを有することができる。初期化されるべきカーネルが、所定の解像度閾値よりも小さい解像度を有する場合、第1の初期運動パターンは、所定の動き振幅閾値よりも高い動き振幅又はシフトを有することができる。別の例では、CNNのカーネルの各解像度について、それぞれの第1の動きタイプが定義され、運動アーチファクトを定義するために使用されることができる。これにより、CNNは、個々に正確な方法で初期化されるので、正確な運動アーチファクト検出が可能になりうる。
【0013】
一実施形態によれば、運動アーチファクトは、特徴行列と動き破損画像の乗算としてk空間で定義され、特徴マップは、CNNの乗算レイヤであり、CNNは、画像のk空間表現を入力として受信するように構成される。この実施形態は、CNNを実装して、完全にk空間(CNNはフーリエ変換(FT)レイヤを有する)で動作させ、測定画像のFTに対応して、測定データと直接供給されることを可能にしてもよい。本実施形態のCNNは、畳み込みカーネルの代わりに乗算レイヤを含み得る。
【0014】
一実施形態によれば、運動アーチファクトは、特徴行列及び動き破損画像の畳み込みとして画像空間内で定義され、特徴マップはCNNのカーネルであり、CNNは、入力画像として受信するように構成される。この実施形態は、CNNを実現して完全に画像空間で動作させ、測定された画像と共に直接送り出されることを可能にしてもよい。本実施形態のCNNは、畳み込みカーネルを含み得る。
【0015】
他の実施形態では、CNNは、k空間及び画像空間をそれぞれ表すFTレイヤ及びFT-1レイヤを有することができ、CNNの各レイヤの特徴マップは、対応する空間において得られた特徴行列を使用して初期化される。次いで、CNNは、CNNの後続のレイヤにおいて、画像空間とk空間とを切り替えることを可能にしうる。
【0016】
一実施形態によれば、第1の初期運動パターンは、それぞれの並進変位を特徴とする並進運動である。この実施形態は、並進運動が、MRスキャン中のすべての現在の動きの良好な第1の近似であり得るので、有利であり得る。従って、このタイプの運動のための訓練の努力及び量は、本主題によって低減されることができる。特に、本主題は、次の2つのケースに関係する努力を低減又は節約することができる:1)訓練データの計算は、通常、FT、k空間データ操作、及び画像当たりの逆FTを含む膨大な量の個々の画像に対関する運動アーチファクトのシミュレーションを伴う。2)また、実際の訓練では、訓練画像のランダムなサブセットを使用して、畳み込みカーネルを段階的に「教える(teach)」するためにかなりの努力が必要となりうる。
【0017】
一実施形態によれば、第2の訓練運動パターンは、第1の初期運動パターンの組み合わせであり、各第1の初期運動パターンは、それぞれの並進変位によって特徴付けられる。
【0018】
一実施形態によれば、入力画像内の運動アーチファクトは、第1の初期運動パターンと第2のトレーニング運動パターンとの組み合わせである運動、又は第2のトレーニング運動パターンによって引き起こされる。
【0019】
一実施形態によれば、第1のタイプの動きは、第2のタイプの動きとは異なるか、又は同じである。第2のトレーニング運動パターンは、異なる第1の初期運動パターンとの組み合わせでありうる。
【0020】
一実施形態によれば、k空間取得特性は、サンプリングのパターン及び/又はk空間のサンプリングのタイミングを有する。本主題は、例えば、サンプリングパターンとそのタイミングの明示的な知識を用いて、画像内の並進運動アーチファクトを推定するためにセットアップされ予め訓練されるように、CNNを設計し、初期化することができる。CNNは、更に、回転運動及びより複雑な運動に対処するように訓練されることができる。これは、完全に画像空間において処理を行われる他の方法とは対照的であり、前記他の方法は、k空間サンプリングパターンとそのタイミングに関する情報の少なくとも一部の損失をもたらす。k空間の2つのサンプリング点が同じ運動状態を表す確率が、サンプリング時間におけるそれらの距離とともに連続的に低下するという事実のために、前記他の方法では利用されることできない構造及び情報が存在する。前記他の方法の訓練中に、パターンとそのタイミングの暗黙の知識をネットワークに導入しても、それは間接的であるため十分でないか、あるいは効率的ではなく、従って非効率的であり、利用可能なすべての情報を利用できないことがある。
【0021】
一実施形態によれば、動き破損画像Mの運動アーチファクトAは、特徴行列Kによる動き破損画像Mの畳み込みとして規定され、特徴行列Kは、K=FT
-1(FT(D-δ)/FT(D))によって規定され、ここで、
であり、δはデルタ関数であり、dx(t)は運動関数であり、FTはフーリエ変換を表し、kは動き破損画像Mのk空間位置である。
【0022】
一実施形態によれば、動き破損画像の運動アーチファクトは、k空間において、k空間における動き破損画像と特徴行列との乗算として定義され、特徴行列は、FT(D-δ)/FT(D)によって規定され、ここで、
であり、δはデルタ関数であり、dx(t)は運動関数であり、FTはフーリエ変換であり、kは動き破損画像Mのk空間位置である。本実施形態のCNNは、k空間サンプリングパターン及びそのタイミングのようなk空間の特性、並びに特定の運動から導出されるように、特徴行列で初期化され得る畳み込みカーネルの代わりに、乗算レイヤを含むことができる。
【0023】
一実施形態によれば、k空間表現は、2次元又は3次元表現である。
【0024】
一実施形態によれば、本方法は、磁気共鳴画像診断装置、MRI、システムから入力画像を受信するステップを更に有し、本方法は、MRIシステムの動作中に実行される。これにより、オンライン又はリアルタイムのアーチファクト補正方法が可能になりうる。
【0025】
本発明の他の態様は、そのカーネルの別個の初期化(特徴マップ)及びCNNの訓練を含む畳み込みニューラルネットワークの訓練に関する。本発明によるCNNの訓練は、従来の訓練と比較して、少ない労力及び時間しか必要としない。続いて、訓練済みCNNは、磁気共鳴画像の動き補正において用いられることができる。
【0026】
別の態様では、本発明は、プロセッサによる実行のためのマシン実行可能命令を備え、前記マシン実行可能命令の実行が、前記プロセッサを前記実施形態のいずれかの方法にさせるコンピュータプログラム製品に関する。
【0027】
別の態様では、本発明は、前記医用イメージングシステムは、少なくとも1つのプロセッサと、コンピュータプログラムコードを含む少なくとも1つのメモリとを有し、前記少なくとも1つのメモリ及び前記コンピュータプログラムコードは、前記少なくとも1つのプロセッサと共に、前記医用イメージングシステムに、前記実施形態のいずれかの方法の少なくとも一部を少なくとも実行させるように構成される医用分析システムに関する。
【0028】
医用分析システムは、複数のMRIシステムに接続し、MRIシステムのMRIシステムからの入力画像を受信するように構成される。
【0029】
別の態様では、本発明は、医用分析システムを備えるMRIシステムに関する。前記MRIシステムは、画像データを取得し、前記画像データのうちの初期画像を再構成するように構成され、前記初期画像は、前記医用分析システムによって処理されて、前記いずれかの請求項の方法の少なくとも一部を実行する。
【0030】
組み合わせられた実施形態が相互に排他的でない限り、本発明の前述の実施形態の1つ又は複数が組み合わせされることができることを理解されたい。
【0031】
以下、本発明の好ましい実施形態を、単なる例として、図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図2】運動アーチファクト検出のための医用イメージング方法のフローチャート。
【
図3】本主題の一例に従って畳み込み行列を決定する方法のフローチャート。
【
図4】本主題の一例に従って畳み込み行列決定方法の妥当性を確認する方法のフローチャート。
【
図5】本主題に従ってアーチファクトを検出する方法を表す画像を示す図。
【
図6】本主題に従ってアーチファクトを検出する方法を表す画像を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下では、図中の同じ番号の構成要素は、同様の構成要素であるか、又は同等の機能を果たす。前述した構成要素は、機能が同等である場合には、必ずしも後の図で説明されない。
【0034】
様々な構造、システム及び装置が、説明のみを目的として、また当業者に周知の詳細とともに本発明を不明瞭にしないように、図に概略的に描かれている。それにもかかわらず、開示された主題の例示的な例を記述し、説明するために、添付の図が含まれている。
【0035】
図1は、医用分析システム100の概略図である。医用分析システム100は、スキャンイメージングシステム(又は取得コンポーネント)101に接続するように構成される制御システム111を有する。制御システム111は、プロセッサ103、各々が医用システム100の1つ又は複数の構成要素と通信することができるメモリ107を有する。例えば、制御システム111の構成要素は、双方向システムバス109に結合される。
【0036】
本明細書に記載される方法は、少なくとも部分的に非インタラクティブであり、コンピュータ化されたシステムによって自動化されていることが理解されるであろう。例えば、これらの方法は更に、ソフトウェア121(ファームウェアを含む)、ハードウェア、又はそれらの組み合わせにおいて実現されることができる。例示的な実施形態では、本明細書に記載する方法は、実行可能なプログラムとしてソフトウェアで実現され、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、ミニコンピュータ、又はメインフレームコンピュータなどの特殊な又は汎用のデジタルコンピュータによって実行される。
【0037】
プロセッサ103は、特にメモリ107に記憶されたソフトウェアを実行するためのハードウェア装置である。プロセッサ103は、任意のカスタムメイド又は市販のプロセッサ、中央処理装置(CPU)、制御システム111に関連したいくつかのプロセッサの中の補助プロセッサ、半導体ベースのマイクロプロセッサ(マイクロチップ又はチップセットの形成)、マイクロプロセッサ、又は一般にソフトウェア命令を実行するための任意の装置とすることができる。プロセッサ103は、スキャンイメージングシステム101の動作を制御することができる。
【0038】
メモリ107は、不揮発性メモリ素子(例えば、ランダムアクセスメモリ(DRAM、SRAM、SDRAMなどのRAM))及び不不揮発性メモリ素子(例えば、ROM、消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EPROM)、電子的消去可能プログラマブル読み出し専用メモリ(EEPROM)、プログラマブル読み出し専用メモリ(PROM)など)の任意の1つ又は組み合わせを含むことができる。メモリ107は分散アーキテクチャを有することができ、この場合、様々なコンポーネントが互いに離れた場所に配置されているが、プロセッサ1によってアクセスすることができることに留意されたい。メモリ107は、医用分析システム100の少なくとも1つの他の構成要素に関連する命令又はデータを格納することができる。
【0039】
制御システム111は、例えばユーザインタフェース129上に文字及び画像等を表示する表示装置125を更に有することができる。表示装置125は、タッチスクリーン表示装置でありうる。
【0040】
医用分析システム100は、更に、医用分析システム100に電力供給するための電源108を有することができる。電源108は、例えば、バッテリ又は規格ACコンセントによって供給される電気のような外部ソースであってもよい。
【0041】
スキャンイメージングシステム101は、MRI、CT、及びPET-CT撮像装置のうちの少なくとも1つを有することができる。制御システム111及びスキャニングイメージングシステム101は、一体部分であってもなくてもよい。他の言い方をすれば、制御システム111は、スキャンイメージングシステム101の外部であってもなくてもよい。
【0042】
スキャンイメージングシステム101は、制御システム111に画像データを提供するようにスキャンイメージングシステム101を構成するために、プロセッサ103によって制御され得るコンポーネントを有する。スキャンイメージングシステム101の構成設定は、スキャンイメージングシステム101の動作を可能にし得る。スキャンイメージングシステム101の動作は、例えば、自動であってもよい。
図1は、MRIシステムであるスキャニングイメージングシステム101の構成要素の一例を示す。
【0043】
制御システム111とスキャニングイメージングシステム101との間の接続は、例えば、バスイーサネット接続、WAN接続、又はインターネット接続等を含みうる。
【0044】
一実施形態では、スキャンイメージングシステム101は、指定された測定値に応じて、画像などの出力データを提供するように構成されることができる。制御システム111は、スキャンイメージングシステム101からMR画像データなどのデータを受信するように構成されることができる。例えば、プロセッサ103は、そのような情報が表示装置125上に表示され得るように、互換性のあるデジタル形式でスキャンイメージングシステム101から情報を(自動的に、又は要求に応じて)受信するように構成されてもよい。そのような情報は、動作パラメータ、警報通知、及びスキャニングイメージングシステム101の使用、動作及び機能に関連する他の情報を含むことができる。
【0045】
医用分析システム100は、ネットワーク130を介して、他のスキャニングイメージングシステム131及び/又はデータベース133と通信するように構成されることができる。ネットワーク130は、例えば、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)接続、WAN(ワイドエリアネットワーク)接続LAN(ローカルエリアネットワーク)接続、又はそれらの組み合わせを含む。データベース133は、患者、スキャニングイメージングシステム、解剖学的構造、スキャンジオメトリ、スキャンパラメータ、スキャンなどに関する情報を含んでもよい。データベース133は、例えば、患者のEMR、放射線情報システムデータベース、医療画像データベース、PACS、病院情報システムデータベース及び/又はスキャンジオメトリを計画するために使用することができるデータを比較する他のデータベースを含むEMRデータベースを有することができる。データベース133は、例えば、訓練画像を有することができる。付加的に、又は代替的に、訓練画像は、制御システム111のローカル記憶装置(例えば、ディスク記憶装置又はメモリ)に記憶されることができる。
【0046】
メモリ107は、人工知能(AI)コンポーネント150を更に含むことができる。AIコンポーネント150は、ソフトウェアコンポーネント121の一部であってもなくてもよい。AIコンポーネント150は、本主題に従ってCNNを訓練し、更なる使用のために訓練済みCNNを提供するように構成されることができる。例えば、制御システム111がスキャンイメージングシステム101の一部でない場合、訓練済みCNNは、スキャンイメージングシステム101によって再構成される画像内のアーチフキャットを検出するためにスキャンイメージングシステム101において使用され得るように、スキャンイメージングシステム101に提供されることができる。
【0047】
図2は、運動アーチファクト検出のための医用イメージング方法のフローチャートである。ステップ201において、動き破損画像Mを得ることができる。動き破損画像は、モデル化された画像又はシミュレートされた画像でありえ、例えば、これは、動きアーチファクトを有しない理想的な画像から開始して実行されることができる。動き破損画像は、所与のk空間取得特性から生じ得る。k空間取得特性は、例えば、サンプリングパターンx及びそのタイミングtを含むことができる。1又は複数のシフト関数dx(t)が、第1の初期運動パターンを記述する。第1の初期運動パターンは、並進変位関数dx(t)でありえ、この場合、tは、k空間がサンプリングされる際の全ての時間を含みうる。動き破損画像は、第1の初期運動パターンに起因する既知の運動アーチファクトを有する。
【0048】
ステップ203では、運動アーチファクトAは、特徴行列と、動き破損画像Mとの関数として定義し又はモデル化されることができる。運動アーチファクトAは、k空間及び/又は画像空間において規定されることができる。一例において、動き破損画像Mの運動アーチファクトAは、動き破損画像Mの特徴行列との畳み込みとして画像空間においてモデル化されることができる。この場合、特徴行列は畳み込み行列である。別の例では、動き破損画像Mの運動アーチファクトAは、動き破損画像Mの特徴行列との乗算としてk空間においてモデル化されることができる。この場合、特徴行列は乗算行列である。
【0049】
一例において、CNNの各特徴マップについて、ステップ201及び203が、それぞれ異なる第1の初期運動パターンを用いて繰り返されることができる。この結果、CNNの各特徴マップが、それぞれの特徴行列に関連付けられることになりうる。これらのマトリクスの第1の初期運動パターン間の差異は、例えば、特徴マップの解像度に基づいて定義されることができる。例えば、大きな運動は、低解像度の特徴マップに割り当てられ、逆に、小さな運動は、高解像度の特徴マップに割り当てられることができる。
【0050】
ステップ205で、CNNの少なくとも1つの特徴マップが、特徴行列の値で初期化されることができる。一例では、CNNの各フィルタカーネルは、特徴行列の値で初期化されることができる。これにより、CNNの訓練が改善され、ひいてはアーチファクト検出の精度が向上しうる。別の例では、CNNの第1レイヤの各フィルタカーネルが、特徴行列の値で初期化されることができる。これにより、CNNの訓練とアーチファクト検出の精度が更に向上しうる。別の例では、CNNの各フィルタカーネルについて、ステップ201~205が、異なる第1のタイプの運動に関して繰り返されることができ、その結果、各フィルタカーネルは、それぞれの特徴行列によって初期化される。例えば、異なる仮説シフト関数dx(t)を用いて複数の動き破損画像が得られることができ、それぞれの特徴行列が決定されることができる。これは、CNNの訓練とアーチファクト検出の精度を更に向上することができる。一例では、CNNの特徴マップは、それぞれの予め規定されたサイズを有することができる。別の例では、CNNの各特徴マップのサイズは、特徴マップを初期化するために使用される第1の初期運動パターンを使用して規定されることができる。これは、特徴マップが、第1の方向(例えば、x方向)において、第1の初期運動パターンの範囲よりも大きくないこと、及び第2の方向(例えば、y方向)において、特徴マップのサイズが、k空間タイミング及び取得パターンによって支配されること、を可能にし得る。これは、例えば、
図5及び
図6の「カーネル(kernel)K」を表す画像に示されており、ここで、画像の白ピクセルは、その「カーネルK」によって初期化されるべき特徴マップのサイズを決定するために使用されることができる。例えば、式(8)は、所与の動きに対してフル解像度でKを計算し、次いで、それが特徴マップのサイズに対応するように、それを関連するサポートにダウンサイジングする。縮小版は、CNNのその特徴マップを初期化するために使用されることがある。
【0051】
初期化されたCNNは、訓練画像において、第2の訓練運動パターンによって引き起こされる運動アーチファクトを得るために、ステップ207において訓練されることができる。訓練画像の各々は、第2の訓練運動パターンによって引き起こされる運動アーチファクトを有している。一例では、第2の訓練運動パターンは、複数の第1の初期運動パターンの組み合わせでありえ、この場合、各々の第1の初期運動パターンは、それぞれの並進変位によって特徴付けられる。これは、初期化が訓練画像内の運動の少なくとも一部を既に考慮しているので、CNNの訓練及びアーチファクト検出の精度を改善することができる。訓練は、そのような初期化方法を使用することによって、迅速に収束することができる。
【0052】
訓練済みCNNを使用して、ステップ209において入力画像から運動アーチファクトを得ることができる。
【0053】
運動アーチファクトの取得は、例えば、入力画像が運動アーチファクトを有しているかどうかをCNNを使用して決定することを含み、運動アーチファクトを有している場合には、訓練済みCNNが提供する値を使用して運動アーチファクトが取得されることができる。例えば、訓練済みCNNは、多数のピクセル値を出力として提供することができ、この場合、各ピクセル値は、そのピクセル位置における運動アーチファクトコンテンツを示し、それはゼロであっても消失であってもよい。言い換えると、CNNは、測定された動き破損画像を入力として得、純粋な運動アーチファクトを出力として推定することができる。測定された画像から純粋なアーチファクトを減算して、補正画像を生成することができる。また,訓練済みCNNは,MRイメージング中に異常に発生する実際の動きを反映した値で初期化されるため,運動アーチファクトの検出を正確に行うことができる。これは、入力画像内の運動アーチファクトが、第1の初期運動パターンと第2の訓練運動パターンとの組み合わせである運動、又は第2の訓練運動パターンである運動によって引き起こされる場合に、特に有利であり得る。
【0054】
図3は、本主題の一例に従って畳み込み行列を決定する方法のフローチャートである。
【0055】
例えば、そのk空間データS=FT(I)を持つ理想的な画像Iが、並進変位関数dx(t)によって特徴付けられる動きを受けると仮定し、ここで、tは、k空間がサンプリングされる際の全ての時間を含む。動き破損画像Mは、ステップ301において、次のように決定され又は定義され得る:
ここで、Eは、指数関数位相項である。
【0056】
なお、ステップ303において、上記(1)式の動き破損画像は、理想的な画像Iから画像Mに帰着する粒度(kernel D)の関数として、(2)式から(3)式を用いて以下のように規定されることができる。
【0057】
Eの逆FTがD=FT
-1(E)と表され、
が畳み込みである場合、Mは次のように書くことができる。
Dは、k空間サンプリングパターンで定義される指数関数位相項Eの逆FT、そのタイミング、動きである。Aが動き破損画像M内の純粋なアーチファクトであり、δがデルタ関数である場合、純粋なアーチファクトAは、次のように画像Mを用いてステップ305において規定されることができる。
【0058】
【0059】
畳み込み行列は、畳み込み定理を用いて、まずフーリエ変換の式(5)への適用により、ステップ307において決定されることができる。これは、式(6)、
を与える。
【0060】
更に畳み込み定理を使用して(6')式に逆FTを適用する。これにより式(7)が得られる。
ここで、
である。式(8)は、畳み込み行列Kのモデリングを提供する。画像空間における畳み込み行列Kは、測定画像の畳み込みごとに純粋なアーチファクトを得るために使用され得るカーネルである。カーネルDは、k空間サンプリングパターン、そのタイミング、及び運動に依存する指数関数位相項Eの逆FTであるので、畳み込み行列Kは、これらの特性のみに依存してもよい。
【0061】
式(8)の畳み込み行列Kは、各運動及び各イメージングプロトコルの組み合わせについて別々に決定されることができる。例えば、運動タイプは、dx(t)の値によって規定されるが、サンプリングパターン及びタイミングは、イメージングプロトコルの収集パラメータ(例えば、収集のタイプ)の組によって規定される。
【0062】
図4は、
図3の方法をチェックし又は検証する方法のフローチャートである。
図4は、式(8)に組み込まれているような動きを含む取得の例を使用することができる。このために、円盤をもつ理想的なファントム画像Iが、動き破損画像Mをシミュレートするために使用される。そして、選択された特定の運動dx(t)は、典型的なターボ係数、サンプリングパターン、タイミングを持つターボフィールドエコーシーケンスによる取得中に起こるものと仮定した。
図4の方法は、例えば、各運動及びシーケンスパラメータの組に関して以下のステップを含むことができる。ステップ401において、シーケンスタイプ及びパラメータに基づいてk空間の各点にサンプリングの時間を割り当てる時間マップTが計算される。ステップ403で、運動dx(t)によってk空間に引き起こされる位相のマップが、式(2)の指数を使用して計算される。ステップ405において、式(2)及び式(3)を用いて、動き破損画像Mが計算される。ステップ407では、Mから理想的なファントム画像Iを引くことによって、グラウンドトゥルースアーチファクトA1が計算される。ステップ409では、CNNの初期化に使用される畳み込み行列Kが、式(8)を使用して計算される。ステップ411では、畳み込み行列K及び式(7)を使用して、純粋なアーチファクトA2が計算される。ステップ413では、A2からグラウンドトゥルースA1を減じた差が計算されることで、式(7)及び(8)の精度、したがって、
図3の方法の精度が評価される。
図5及び
図6は、
図4のステップで説明したように得られた画像を示す。
【0063】
図5は、セグメント化されたデカルトk空間取得(解像度256
2、TR 9ms、ターボ係数4、エコー間時間2ms)を有するTFEシーケンスに基づくチェック方法の結果を示す。k空間データの70%の取得後の5ピクセルの読み出し方向の突然の変位が仮定された。
図5に示すように、時間マップ(timemap)は、k空間における4回(4-fold)セグメンテーションを可視化する。位相マップは、データの70%に対して平坦な位相を示し、データの残りの部分に関する変位のために、位相符号化方向の傾きの増加と共に読み出し方向に線形位相を示す。畳み込み行列Kを使用して計算される純粋なアーチファクト(artifact)A2は、例えばMRIシステム700によって測定された画像(image)Mから理想的な画像(ideal image)Iを減じることによって計算されるアーチファクト(artifact)A1とほぼ同一である。畳み込み行列Kは、規定された動きに似た5ピクセルずれた2行のピクセルを示す。
【0064】
図6は、ターボ係数8(TR 17ms、エコー時間2ms)及び読み出し方向に10ピクセルずつの連続した動きのデータを示す。畳み込み行列Kは、10ピクセルの長い水平線によってこの動きに似ており、ここでは、より高いセグメント化のために、垂直方向に更に離間している。位相符号化方向における5ピクセルの付加的な動きが追加された。
【0065】
図5及び
図6の例では、畳み込み行列Kは、主に、特定のサンプリングパターンに依存する方法で位相符号化方向に複製される運動経路に類似する。いずれの例でも、カーネルを用いたアーチファクトの計算誤差は無視できる程度であり、式(7)、(8)の正しさを証明している。
【0066】
図7は、医用システム100の一例として、磁気共鳴イメージングシステム700を示す。磁気共鳴イメージングシステム700は、磁石704を有する。磁石704は、その中にボア706を有する超伝導円筒型の磁石である。異なる種類の磁石の使用も可能である;例えば、分割円筒形磁石といわゆるオープン磁石又は密閉磁石の両方を使用することも可能である。分割された円筒形磁石は、クライオスタットが磁石の等平面へのアクセスを可能にするために2つのセクションに分割されていることを除いて、標準の円筒形磁石に類似する。このような磁石は、例えば、荷電粒子ビーム治療と併せて使用されることができる。オープン磁石は、撮像すべき被検体718を受け入れるのに十分な大きさの空間をそれらの間に有する2つの磁石部を有し、その間には、ヘルムホルツコイルと同様の2つのセクションの配置がある。円筒形磁石のクライオスタットの内部には、超電導コイルの集合体がある。円筒状磁石704のボア706内には、磁場が磁気共鳴CTを実行するのに十分なほど強力かつ均一である撮像ゾーン又はボリューム又は解剖学的構造708が存在する。
【0067】
磁石のボア706内には、磁気共鳴データの取得中に、磁石704の撮像ボリューム又は検査ボリューム708内のターゲット領域の磁気スピンを空間的に符号化するために使用される、一組の磁場勾配コイル710も存在する。磁場勾配コイル710は、磁場勾配コイル電源712に接続される。磁場勾配コイル710は、例示であることが意図される。典型的には、磁場勾配コイル710は、3つの直交する空間方向における符号化のための3つの別個のコイルの組を有する。磁場勾配電源は、磁場勾配コイルに電流を供給する。磁場勾配コイル710に供給される電流は、時間の関数として制御され、ランプ状でもパルス状でもよい。
【0068】
MRIシステム700は、更に、被検体718のところに且つ検査領域708に隣接して、RF励起パルスを生成するためのRFコイル714を有する。RFコイル714は、例えば、一組の表面コイル又は他の特殊化されたRFコイルを有することができる。RFコイル714は、RFパルスの送信並びに磁気共鳴信号の受信のために交互に使用されることができ、例えば、RFコイル714は、複数のRF送信コイルを有する送信アレイコイルとして実施されることができる。RFコイル714は、1つ又は複数のRF増幅器715に接続される。
【0069】
磁場勾配コイル電源712及びRF増幅器715は、制御システム111のハードウェアインタフェースに接続される。制御システム111のメモリ107は、例えば、制御モジュールを有することができる。制御モジュールは、プロセッサ103が磁気共鳴イメージングシステム700の動作及び機能を制御することを可能にする、コンピュータ実行可能コードを有する。制御モジュールはまた、磁気共鳴データの取得など、磁気共鳴イメージングシステム700の基本的な動作を可能にする。当業者に理解されるように、本発明の態様は、装置、方法、又はコンピュータプログラム製品として具体化されることができる。従って、本発明の態様は、完全にハードウェアの実施形態、完全にソフトウェアの実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコードなどを含む)、又は本明細書では一般に「回路」、「モジュール」又は「システム」と呼ぶことができるソフトウェアとハードウェアの態様を組み合わせた実施形態の形態をとることができる。更に、本発明の態様は、具体化されたコンピュータ実行可能コードをその上に有する1つ又は複数のコンピュータ可読媒体内に具体化されるコンピュータプログラム製品の形態をとることができる。
【0070】
1つ又は複数のコンピュータ可読媒体の任意の組み合わせが利用されることができる。コンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読信号媒体又はコンピュータ可読記憶媒体でありうる。本明細書で使用される「コンピュータ可読記憶媒体」は、コンピューティング装置のプロセッサによって実行可能な命令を記憶することができる任意の有形記憶媒体を包含する。コンピュータ可読記憶媒体は、コンピュータ可読の非一時的記憶媒体と呼ばれることもある。コンピュータ可読記憶媒体はまた、有形コンピュータ可読媒体と呼ばれうる。ある実施形態では、コンピュータ可読記憶媒体は、コンピューティング装置のプロセッサによってアクセス可能なデータを記憶することも可能である。コンピュータ可読記憶媒体の例としては、フロッピーディスク、磁気ハードディスクドライブ、ソリッドステートハードディスク、フラッシュメモリ、USBサムドライブ、ランダムアクセスメモリ、読み取り専用メモリ(ROM)、光ディスク、光磁気ディスク、及びプロセッサのレジスタファイルが挙げられるが、これらに限定されない。光ディスクの例としては、CD-ROM、CD-RW、CD-R、DVD-ROM、DVD-RW、又はDVD-Rディスクなどのコンパクトディスク(CD)及びデジタル多用途ディスク(DVD)がある。コンピュータ可読記憶媒体という語はまた、ネットワーク又は通信リンクを介してコンピュータ装置によってアクセスされることが可能な様々なタイプの記録媒体をさす。例えば、データは、モデムを介して、インターネットを介して、又はローカルエリアネットワークを介して取り出されることができる。コンピュータ可読媒体上に具体化されるコンピュータ実行可能コードは、無線、有線、光ファイバケーブル、RF等を含むがこれらに限定されない任意の適切な媒体、又は前述の任意の適切な組み合わせを用いて送信され得る。
【0071】
コンピュータ可読信号媒体は例えば、ベースバンドで、又は搬送波の一部として、コンピュータ実行可能コードがその中に具体化された伝播されるデータ信号を含むことができる。そのような伝播信号は、電磁、光学、又はそれらの任意の適切な組み合わせを含むが、それらに限定されない、任意の様々な形態をとることができる。コンピュータ可読信号媒体は、任意のコンピュータ可読媒体でありえ、かかるコンピュータ可読媒体は、コンピュータ可読記憶媒体ではなく、命令実行システム、機器、又は装置によって、又はそれに関連して使用されるためのプログラムを通信、伝播、又は伝送することができる。
【0072】
「コンピュータメモリ」又は「メモリ」は、コンピュータ可読記憶媒体の一例である。コンピュータメモリは、プロセッサに直接アクセス可能な任意のメモリである。「コンピュータ記憶装置」又は「記憶装置」は、コンピュータ可読記憶媒体の他の一例である。コンピュータ記憶装置は、任意の不揮発性コンピュータ可読記憶媒体である。ある実施形態では、コンピュータ記憶装置は、コンピュータメモリであってもよく、又はその逆であってもよい。
【0073】
本明細書で使用される「プロセッサ」は、プログラム又はマシン実行可能命令又はコンピュータ実行可能コードを実行することが可能な電子コンポーネントを包含する。「プロセッサ」を構成するコンピューティング装置への言及は、複数のプロセッサ又は処理コアを含みうるものとして解釈されるべきである。プロセッサは、例えば、マルチコアプロセッサであってもよい。プロセッサは、単一のコンピュータシステム内の、又は複数のコンピュータシステム間で分散されるプロセッサの集合を指すこともできる。コンピューティング装置という語は、プロセッサ又はプロセッサを構成するそれぞれのコンピューティング装置の集合又はネットワークを指すことができると解釈されるべきである。コンピュータ実行可能コードは、複数のプロセッサによって実行されることができ、かかる複数のプロセッサは、同一のコンピューティング装置内にありえ、又は複数のコンピューティング装置に分散されていてもよい。
【0074】
コンピュータ実行可能コードは、マシン実行可能命令又はプロセッサに本発明の態様を実行させるプログラムを含むことができる。本発明の態様のための動作を実行するためのコンピュータ実行可能コードは、Java、Smalltalk、C++などのオブジェクト指向プログラミング言語及び「C」プログラミング言語又は類似のプログラミング言語などの従来の手続き型プログラミング言語を含み、マシン実行可能命令にコンパイルされた、1又は複数のプログラミング言語の任意の組み合わせで書くことができる。ある例では、コンピュータ実行可能コードは、高水準言語の形又は事前コンパイルされた形であってもよく、オンザフライでマシン実行可能命令を生成するインタプリタと共に使用されることもできる。
【0075】
コンピュータ実行可能コードは、完全にユーザのコンピュータ上で、部分的にユーザのコンピュータ上で、スタンドアロンのソフトウェアパッケージとして、部分的にユーザのコンピュータ上で且つ部分的にリモートのコンピュータ上で、又は全体的にリモートのコンピュータ又はサーバ上で、実行されることができる。後者の状況では、リモートコンピュータは、ローカルエリアネットワーク(LAN)又は広域ネットワーク(WAN)を含む任意のタイプのネットワークを介してユーザのコンピュータに接続されることができ、又は(例えば、インターネットサービスプロバイダを使用してインターネットを介して)外部コンピュータに接続されることができる。
【0076】
本発明の態様は、本発明の実施形態による方法、装置(システム)、及びコンピュータプログラム製品のフローチャート図及び/又はブロック図を参照して説明される。各ブロック又はフローチャートのブロックの一部、図、及び/又はブロック図は、適用可能な場合、コンピュータ実行可能コードの形で、コンピュータプログラム命令によって実現可能であることが理解されるであろう。相互排他的でない場合には、異なるフローチャート、説明、及び/又はブロック図におけるブロックの組み合わせを組み合わせてもよいことが更に理解される。これらのコンピュータプログラム命令は、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、又はその他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサに提供されてマシンを作ることで、コンピュータやその他のプログラム可能なデータ処理装置のプロセッサを介して実行される命令が、フローチャート及び/又はブロック図のブロック又はブロックで指定された機能/動作を実施する手段を作り出す。
【0077】
これらのコンピュータプログラム命令は、コンピュータ、他のプログラマブルデータ処理装置、又は他のデバイスに特定の方法で機能するように指示することができるコンピュータ可読媒体に記憶されることができ、その結果、コンピュータ可読媒体に記憶された命令は、フローチャート及び/又はブロック図の1又は複数のブロックで指定された機能/動作を実現する命令を含む製品を生成する。
【0078】
コンピュータプログラム命令は、コンピュータ、他のプログラマブル装置、又は他のデバイス上で一連の動作ステップを実行させてコンピュータ実現プロセスを生成するように、コンピュータ、他のプログラマブルデータ処理装置、又は他のデバイスにロードされることができ、それにより、コンピュータ又は他のプログラマブル装置上で実行される命令が、フローチャート及び/又はブロック図の1又は複数のブロックに指定される機能/動作を実現するためのプロセスを提供する。
【0079】
ここで使用される「ユーザインタフェース」は、ユーザ又はオペレータがコンピュータ又はコンピュータシステムと対話することを可能にするインターフェースである。「ユーザインタフェース」は、「ヒューマンインターフェースデバイス」とも呼ばれる。ユーザインタフェースは、情報又はデータをオペレータに提供し、及び/又はオペレータから情報又はデータを受信することができる。ユーザインタフェースは、オペレータからの入力をコンピュータによって受け取ることを可能にし、コンピュータからユーザに出力を提供することができる。換言すれば、ユーザインタフェースは、オペレータがコンピュータを制御し又は操作することを可能にし、インターフェースは、コンピュータがオペレータの制御又は操作の効果を示すことを可能にする。ディスプレイ又はグラフィカルユーザインタフェース上のデータ又は情報の表示は、オペレータに情報を提供する一例である。キーボード、マウス、トラックボール、タッチパッド、ポインティングスティック、グラフィックスタブレット、ジョイスティック、ゲームパッド、ウェブカメラ、ヘッドセット、ギアスティック、スティック、ステアリングホイール、ペダル、有線グローブ、ダンスパッド、リモートコントロール、及び加速度計を通じたデータの受信は、すべて、オペレータからの情報又はデータの受信を可能にするユーザインタフェース構成要素の例である。
【0080】
本明細書で使用される「ハードウェアインタフェース」は、コンピュータシステムのプロセッサが外部コンピューティング装置及び/又は機器と対話する及び/又はそれを制御することを可能にするインターフェースを含む。ハードウェアインタフェースは、プロセッサが制御信号又は命令を外部コンピューティング装置及び/又は機器に送信することを可能にし得る。ハードウェアインタフェースはまた、プロセッサが外部コンピューティング装置及び/又は装置とデータを交換することを可能にしうる。ハードウェアインタフェースの例としては、ユニバーサルシリアルバス、IEEE1394ポート、パラレルポート、IEEE1284ポート、シリアルポート、RS-232ポート、IEEE-488ポート、Bluetooth接続、ワイヤレスローカルエリアネットワーク接続、TCP/IP接続、イーサネット接続、制御電圧インターフェース、MIDIインターフェース、アナログ入力インターフェース、及びデジタル入力インターフェースが挙げられるが、これらに限定されない。
【0081】
本明細書で使用される「ディスプレイ」又は「ディスプレイ装置」は、画像又はデータを表示するように適応された出力デバイス又はユーザインタフェースを包含する。ディスプレイは、視覚的データ、聴覚データ、及び/又は触覚データを出力することができる。ディスプレイの例としては、コンピュータモニタ、テレビスクリーン、タッチスクリーン、触覚電子ディスプレイ、点字スクリーン、ブラウン管(CRT)、蓄積管、双安定ディスプレイ、電子ペーパー、ベクトルディスプレイ、フラットパネルディスプレイ、真空蛍光ディスプレイ(VF)、発光ダイオード(LED)ディスプレイ、エレクトロルミネッセンスディスプレイ(ELD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、液晶ディスプレイ(LCD)、有機発光ダイオードディスプレイ(OLED)、プロジェクタ、及びヘッドマウントディスプレイが挙げられるが、これらに限定されない。
【0082】
本発明は、図面及び前述の説明において詳細に図示され説明されてきたが、そのような図示及び説明は、説明的又は例示的であり、限定的ではないと考えられるべきである。本発明は開示された実施形態に限定されるものではない。
【0083】
開示された実施形態に対する他の変形は、図面、開示、及び添付の請求項の検討から、請求項に記載された発明を実施する際に当業者によって理解され、実施されることができる。請求項において、「含む、有する(comprising)」という語は、他の構成要素又はステップを除外するものではなく、不定冠詞「a」又は「an」は、複数性を除外するものではない。単一のプロセッサ又は他のユニットが、請求項に列挙されるいくつかの項目の機能を果たすことができる。特定の手段が相互に異なる従属請求項に記載されているという単なる事実は、これらの手段の組み合わせが有利に使用されることができないことを示すものではない。コンピュータプログラムは他のハードウェアと一緒に、又はその一部として供給される光記憶媒体又はソリッドステート媒体などの適切な媒体上に記憶/配布されことができるが、インターネット又は他の有線もしくは無線電気通信システムなどを介して、他の形態で配布されることもできる。請求項におけるいかなる参照符号も、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【符号の説明】
【0084】
100 医用システム
101 スキャンイメージングシステム
103 プロセッサ
107 メモリ
108 電源
109 バス
111 制御装置
121 ソフトウェア
125 ディスプレイ
129 ユーザインタフェース
150 AIコンポーネント
201-413 方法ステップ
700 磁気共鳴イメージングシステム
704 磁石
706 磁石のボア
708 撮像ゾーン
710 磁場勾配コイル
712 磁場勾配コイル電源
714 無線周波数コイル
715 RF増幅器
718 被検体