(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】電極材料用のシリカ粒子及びその製造方法と適用
(51)【国際特許分類】
H01M 4/48 20100101AFI20240116BHJP
H01M 4/36 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
H01M4/48
H01M4/36 C
H01M4/36 B
(21)【出願番号】P 2021570239
(86)(22)【出願日】2019-12-19
(86)【国際出願番号】 CN2019126660
(87)【国際公開番号】W WO2021077586
(87)【国際公開日】2021-04-29
【審査請求日】2021-11-25
(31)【優先権主張番号】201911007418.4
(32)【優先日】2019-10-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】521513351
【氏名又は名称】博賽利斯(南京)有限公司
【氏名又は名称原語表記】Berzelius(Nanjing)Co.,Ltd.
【住所又は居所原語表記】Room 101, 102, 103, 104, Building 3, No.30 Fengzhan Road, Yuhuatai District Nanjing, Jiangsu 210006 CHINA
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(74)【代理人】
【識別番号】100170900
【氏名又は名称】大西 渉
(73)【特許権者】
【識別番号】523019066
【氏名又は名称】博賽利斯(合肥)有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100165803
【氏名又は名称】金子 修平
(72)【発明者】
【氏名】リ ヂゥーァ
(72)【発明者】
【氏名】ワン ツェン
(72)【発明者】
【氏名】ワン ファン
(72)【発明者】
【氏名】ヂァン フゥーァパァォ
【審査官】松嶋 秀忠
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第104022257(CN,A)
【文献】国際公開第2014/002883(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第108807861(CN,A)
【文献】特開2013-197069(JP,A)
【文献】国際公開第2012/077268(WO,A1)
【文献】特表2020-506157(JP,A)
【文献】特表2022-541967(JP,A)
【文献】特表2022-514906(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103855364(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106410158(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106025219(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第106328887(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 4/02-62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極材料用のシリカ粒子であって、
一般式がSiO
Xであるシリコン亜酸化物粒子と、炭素層とを含み、
前記式SiO
X
の中において、Xの範囲は0.5~1.5であり、
複数の前記シリコン亜酸化物粒子が前記炭素層により粘着され、かつ炭素層により粘着された複数の前記シリコン亜酸化物粒子が前記炭素層に被覆されており、
前記シリカ粒子の粒子径が、(D90-D10)/D50≦0.93であり、前記シリカ粒子の比表面積が0.3~0.8m
2/gであることを特徴とするシリカ粒子。
【請求項2】
前記炭素層はブドウ糖、ショ糖、キトサン、デンプン、クエン酸、ゼラチン、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、コールタールピッチ、石油アスファルト、フェノール樹脂、タール、ナフタレン油、アントラセン油、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレートの1種または多種の前駆体材料の組合せが炭化処理により得られたものであることを特徴とする請求項1に記載のシリカ粒子。
【請求項3】
前記シリコン亜酸化物粒子の中位径D50が0.05~20μmであり、
前記シリカ粒子に占めるシリコン亜酸化物粒子の質量比が80~99.9wt%であることを特徴とする請求項1に記載のシリカ粒子。
【請求項4】
前記シリカ粒子内部及び外表面に均一に分散している導電性添加剤をさらに含み、
前記導電性添加剤は、Super P、ケッチェンブラック、気相成長炭素繊維、アセチレン黒、導電性黒鉛、カーボンナノチューブ、グラフェンの1種または多種の組合せから選ばれるものであり、
前記シリカ粒子に占める前記導電性添加剤の質量比が0.01~10wt
%であることを特徴とする請求項1に記載のシリカ粒子。
【請求項5】
前記シリカ粒子の外表面に被覆されている単層または多層の付加炭素層をさらに含
むことを特徴とする請求項1または4に記載のシリカ粒子。
【請求項6】
前記付加炭素層は、コールタールピッチ、石油アスファルト、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレートの1種または多種の前駆体材料の組合せが炭化処理により得られたものであり、またはメタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロピレン、ブタン、ブテン、ブタジエン、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン又はフェノールのいずれか1種または多種の組合せが化学蒸着により得られたものであり、
前記シリカ粒子に占める前記付加炭素層の質量比が0.1~10wt
%であることを特徴とする請求項5に記載のシリカ粒子。
【請求項7】
前記シリカ粒子のD50が1~40μmであり
、
前記シリカ粒子のタップ密度が≧0.6g/cm
3
であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載のシリカ粒子。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載のシリ
カ粒子
の電極材料への応用。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載のシリカ粒子を含むことを特徴とする負極材料。
【請求項10】
請求項9に記載の負極材料を含む極片または電池。
【請求項11】
シリコン亜酸化物粒子を炭素層の前駆体材料と混合して造粒した後、非酸化性雰囲気の中で炭化し、炭化産物を分散、ふるい分け、消磁処理するステップを含むことを特徴とする請求項1に記載のシリカ粒子の製造方法。
【請求項12】
前記シリコン亜酸化物粒子を炭素層の前駆体材料と混合して造粒するステップにおいて、導電性添加剤を添加するステップをさらに含むことを特徴とする請求項11に記載のシリカ粒子の製造方法。
【請求項13】
前記方法は、単層または多層の付加炭素層で被覆するステップをさらに含
むことを特徴とする請求項11または12に記載のシリカ粒子の製造方法。
【請求項14】
VC混合機、機械融合機、被覆釜または反応釜を含む造粒設備を利用して造粒し、あるいは、噴霧乾燥設備を含む造粒設備を利用して造粒し、
前記造粒プロセスにおいて、前記VC混合機、機械融合機、被覆釜または反応釜攪拌部材の最大直径のところの線速度が1~30m/sであり、温度が100~1050℃で、時間が0.5~10時間であり、不活性雰囲気によって保護され、
前記炭化の設備がチューブ炉、雰囲気ボックス炉、プッシャーキルン、ローラーキルン、ロータリー炉を含み、
前記炭化反応の温度が600~1200℃で、時間が0.5~24時間であり、
前記非酸化性雰囲気が、窒素、アルゴン、水素、ヘリウムの少なくとも1種の気体から供給され、
前記分散工程に採用される設備が気流粉砕機、ボールミル、ターボ式粉砕機、レイモンドミル、犂刃粉砕機、ギアディスクミルのいずれか1種を含むことを特徴とする請求項11~13のいずれか1項に記載のシリカ粒子の製造方法。
【請求項15】
前記付加炭素層を被覆する設備は機械融合機、VC混合機、高速分散機、被覆釜または反応釜のいずれか1種を含み、あるいは、
前記付加炭素層を被覆することは化学蒸着法から選ばれ、前記方法は、700℃から1050℃までの温度で、有機気体および/または蒸気の中に化学蒸着を実施するステップを含むことを特徴とする請求項13に記載のシリカ
粒子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電池分野に関し、特にリチウムイオン電極材料に用いるシリカ粒子及びその製造方法と適用に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、様々な携帯電子デバイス、電気自動車及びエネルギー貯蔵システムの急速な発展と広範な応用により、エネルギー密度が高く、サイクル寿命が長いリチウムイオン電池の需要は日増しに切実になっている。現在、商用化されているリチウムイオン電池の負極材料は主に黒鉛であるが、理論容量が低いため、リチウムイオン電池のエネルギー密度のさらなる向上が制限されている。シリコン負極材料には他の負極材料が匹敵できない高容量の利点を持っているので、ここ数年研究開発のホットスポットとなり、徐々に研究室の研究開発からビジネス応用へと発展している。しかしながら、元素シリコン負極材料は、リチウムインターカレーション・リチウムデインターカレーションのプロセス中に深刻な体積効果があり、体積変化率は約300%であり、電極材料の粉末化及び電極材料が集電体からの脱落をもたらす。また、シリコン負極材料は電池の充電と放電のプロセス中に膨張と収縮を繰り返して破裂し続けて、生成した新鮮な界面が電解液に曝されて新しいSEI膜を形成することにより、電解液を持続的に消費し、電極材料のサイクル性能を低下させた。
【0003】
既存のシリコン負極材料のクーロン効率が低く、膨張が大きく、サイクル維持率が低く、分極が大きく、製造プロセスが複雑であるため、電池中の商業化応用は困難であり、所属分野における技術難題である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的の1つは、従来技術の欠点に対して、リチウムイオン電池用の容量が高く、クーロン効率が高く、サイクル寿命が長く、膨張率が低いシリカ複合材料及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
具体的に、本発明は、電極材料に用いるシリカ粒子を提示し、この粒子の構造が緻密で、サブミクロン級以上の孔隙がなく、前記シリカ粒子は、シリコン亜酸化物粒子と炭素層とを含み、
前記シリコン亜酸化物粒子は、一般式がSiOXであり、例えば非晶質のシリコン亜酸化物粉末原料が不均化反応により得られたものであって、SiOX基体内に存在するシリコンナノ結晶粒/非晶質ナノクラスタを形成し、
複数の前記シリコン亜酸化物粒子が前記炭素層により粘着され、かつ炭素層により粘着された複数の前記シリコン亜酸化物粒子が前記炭素層により被覆されていることを特徴とする。具体的には、各シリカ粒子は、複数のシリコン亜酸化物粒子と炭素膜を複合して形成した二次粒子であり、単一のシリコン亜酸化物の一次粒子、または炭素膜を被覆したシリコン亜酸化物の一次粒子は存在しない。
【0006】
具体的には、前記炭素層材料はブドウ糖、ショ糖、キトサン、デンプン、クエン酸、ゼラチン、アルギン酸、カルボキシメチルセルロース、コールタールピッチ、石油アスファルト、フェノール樹脂、タール、ナフタレン油、アントラセン油、ポリアクリル酸、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレートの1種または多種の前駆体材料の組合せが炭化処理により得られたものである。
【0007】
具体的には、前記シリコン亜酸化物粒子において、0.5≦X≦1.5であり、好ましくは、0.8≦X≦1.2である。より好ましくは、0.9≦X≦1.1である。
【0008】
さらに、前記シリコン亜酸化物粒子のメジアン径D50は0.05~20μmであり、好ましくは、0.3~10μmである。より好ましくは、前記シリコン亜酸化物粒子のD50は3~8μmであり、D90=3.5~15μmである。
【0009】
具体的には、シリコン亜酸化物粒子が前記シリカ粒子に占める質量比は80~99.9wt%であり、好ましくは、90~99.5wt%である。より好ましくは、シリコン亜酸化物粒子が前記シリカ粒子に占める質量比は94~98wt%である。
【0010】
さらに、前記シリカ粒子は、前記シリカ粒子内部及び外表面に均一に分散している導電性添加剤をさらに含むようにしてもよい。
【0011】
具体的には、前記導電性添加剤はSuper P、ケッチェンブラック、気相成長炭素繊維、アセチレン黒、導電性黒鉛、カーボンナノチューブ、グラフェンの1種または多種の組合せから選ばれるものである。
【0012】
具体的には、前記導電性添加剤が前記シリカ粒子に占める質量比は0.01~10wt%であり、好ましくは、0.03~5wt%である。
【0013】
さらに、前記シリカ粒子はシリカ粒子の外表面に被覆している単層または多層の付加炭素層をさらに含み、好ましくは単層である。
【0014】
具体的には、前記付加炭素層は、コールタールピッチ、石油アスファルト、ポリビニルアルコール、エポキシ樹脂、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレートの1種または多種の前駆体材料の組合せが炭化処理により得られたものである。
【0015】
または、前記付加炭素層は、メタン、エタン、エチレン、アセチレン、プロパン、プロピレン、ブタン、ブテン、ブタジエン、ベンゼン、トルエン、キシレン、スチレン又はフェノールのいずれか1種または多種の組合せが化学蒸着により得られたものである。
【0016】
さらに、前記付加炭素層が前記シリカ粒子に占める質量比は0.1~10wt%であり、好ましくは、0.3~6wt%である。
【0017】
さらに、前記いずれかのシリカ粒子であって、前記シリカ粒子のD50は1~40μmであり、好ましくは3~20μmである。
【0018】
さらに、前記シリカ粒子の粒径分布が狭く、そのスパン値(SPAN)=(D90-D10)/D50≦1.4であり、好ましくは≦1.35である。
【0019】
好ましくは、前記シリカ粒子の比表面積は0.1~10m2/gであり、より好ましくは、0.3~6m2/gである。
【0020】
さらに、前記シリカ粒子のタップ密度≧0.6g/cm3であり、好ましくは≧0.8g/cm3である。
【0021】
より具体的に、前記いずれかのシリカ粒子であって、前記シリカ粒子は、好ましくは、D50=3.5~10μmであり、SPAN=0.9~1.35であり、比表面積が0.8~2.7m2/gである。
【0022】
より好ましくは、前記シリカ粒子はD10=3.5~5.5μmであり、D50=6.0~10μmであり、SPAN=0.9~1.2であり、比表面積が0.9~1.6m2/gであり、タップ密度が0.95~1.2g/cm3、炭素含有量が2~6.5wt%である。もっとも好ましくは、D10=4.0~5.0μmであり、D50=6.5~9μmであり、SPAN=0.9~1.1であり、比表面積が0.9~1.4m2/gであり、タップ密度が1.0~1.2g/cm3であり、炭素含有量が2.5~5.5wt%である。
【0023】
また、本発明は、前記いずれかのシリカ粒子が電極材料における適用を提示する。
【0024】
また、本発明は、前記いずれかのシリカ粒子を含む負極材料を提示する。なお、前記負極材料は、シリカ粒子と炭素基粉末材料を混合して製造されたものであり、前記炭素基粉末材料は、天然黒鉛、人造黒鉛、表面改質の天然黒鉛、硬炭、軟炭、またはメソカーボンマイクロビーズのいずれか1種または多種の任意組合せから選ばれるものである。
【0025】
また、本発明は、前記いずれかの負極材料を含む極片または電池を提示する。具体的にはリチウムイオン電池とすることができる。
【0026】
また、本発明は、前記シリカ粒子の製造方法を提示し、シリコン亜酸化物粒子と炭素層前駆体材料を混合して造粒した後、非酸化性雰囲気の中で炭化を行い、炭化産物を分散、ふるい分け、消磁処理するステップを含む。
【0027】
さらに、前記シリカ粒子の製造方法は、導電性添加剤を添加するステップをさらに含むことができ、具体的には、シリコン亜酸化物粒子と導電性添加剤、及び炭素層前駆体材料を混合して造粒した後、非酸化性雰囲気の中で炭化を行い、炭化産物を分散、ふるい分け、消磁処理をすることである。
【0028】
さらに、前記方法は、単層または多層の付加炭素層で被覆するステップをさらに含み、好ましくは単層である。
【0029】
具体的には、前記造粒の設備は、加熱と撹拌機能を同時に備えるものを選択することができ、VC混合機、機械融合機、被覆釜または反応釜を含むが、これらに限らない。具体的には、造粒プロセスにおいでは、前記VC混合機、機械融合機、被覆釜または反応釜の攪拌部材の最大直径のところの線速度が1~30m/sであり、温度が100~1050℃であり、時間が0.5~10時間であり、不活性雰囲気によって保護される。このプロセスにおいでは、炭素前駆体材料が軟化し、継続的に高速な撹拌によりシリコン亜酸化物の表面を均一にコーティングすると同時に、炭素前駆体にコーティングされた複数のシリコン亜酸化物一次粒子が互いに粘着して凝集し、一定サイズのシリコン亜酸化物/炭素前駆体複合二次粒子を形成する。前記二次粒子はVC混合機、機械融合機、被覆釜または反応釜の中で長時間かつ高頻度にせん断と、押圧と、衝突されてより緻密になり、同時に加熱条件の下で、炭素前駆体が部分的に低分子の揮発物を除去し、一部は架橋、炭素化して、二次粒子を定形させる。
【0030】
具体的には、前記造粒の設備は噴霧乾燥設備であってもよい。このとき、前記噴霧乾燥設備は、シリコン亜酸化物粒子と炭素前駆体を含むスラリーを処理する際に、設備のノズルがスラリーを小液滴に霧化し、液滴中の溶媒が、設備中の一定温度の熱空気の作用により迅速に蒸発し、旋風収集の後に、乾燥したシリコン亜酸化物/炭素前駆体複合二次粒子を得る。
【0031】
さらに、前記炭化設備はチューブ炉、雰囲気ボックス炉、プッシャーキルン、ローラーキルン、ロータリー炉を含む。
【0032】
具体的には、前記炭化反応の温度が600~1200℃であり、時間が0.5~24時間であり、
具体的には、前記非酸化性雰囲気は、窒素、アルゴン、水素、ヘリウムの少なくとも1種の気体から供給される。
【0033】
具体的には、前記分散設備は、気流粉砕機、ボールミル、ターボ式粉砕機、レイモンドミル、プラウ粉砕機、ギアディスクミルのいずれか1種を含む。
【0034】
具体的には、前記付加炭素層で被覆する設備は、加熱と攪拌の機能を同時に備えるものを選択することができ、機械融合機、VC混合機、高速分散機、被覆釜または反応釜のいずれか1つを含むが、これらに限らない。
【0035】
さらに、前記付加炭素層で被覆する方法は化学蒸着法を選択し、前記方法は、700℃から1050℃の温度で、有機気体および/または蒸気の中に化学蒸着を実施するステップを含む。
【発明の効果】
【0036】
本発明は、従来技術と比較すると、以下のような利点を有する。
【0037】
本発明は、シリコン亜酸化物粒子を炭素層により密接に連結して集合粒子体を成し、サイズの大きい二次粒子を過大に増やさない同時に、サイズの小さい一次粒子の占有率を減らし、粒子径分布がより狭い二次粒子を得る。二次粒子の製造プロセスを備えるので、シリコン亜酸化物粒子原料の適用範囲を広め、また本発明は材料の比表面積を大幅に低減し、ひいてはリチウムイオン二次電池などの電池における材料と電解液の接触面積を低減させ、毎回の充放電プロセスに電解液が材料の表面でSEIを生成し続けることによるリチウムイオンの損失を減らし、電池のクーロン効率をより高めて、サイクル性能をより改良することができる。
【0038】
炭素層の連結と被覆は、同時に優れた電子とリチウムイオンの輸送チャネルを提供し、粒子内部のシリコン亜酸化物が電気化学反応に十分参加することを保証し、電池の分極を低下させ、倍率性能を向上させ、二次粒子内部と表面に導電性添加剤が分散している場合,材料の導電性をさらに向上させ、電池の倍率性能がより良くなる。
【0039】
シリカ複合材料の容量と膨張率がいずれもそれに混入して使用する炭素基負極よりも高いので、電池の極片を製造した後、通常のシリカ複合材料が存在するミクロ領域の表面容量はより高くなり、膨張はより大きくなる。他の方法で製造したシリカ複合材料に比べると、本発明で製造した粒子の粒子径分布が狭く、大きい粒子の割合がより少ないため、本発明の粒子で電池の極片を製造する際に、極片の表面容量と膨張分布は比較的均一であり、極片の膨張率はより小さくなる。
【0040】
また、本発明は、粒子の外表面を連続的な炭素保護層でさらに被覆し、材料の導電性を増やすと同時に複合材料の比表面積をさらに低下させ、SEIの形成を減らすことにより、クーロン効率と電池サイクル維持率を高めることに役立つ。本発明の材料の構造がより安定で膨張が小さいので、負極材料により多くのシリカ粒子を添加して、電池のエネルギー密度を高める目的を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】実施例1で製造した二次粒子の高倍走査電子顕微鏡写真である。
【
図2】実施例1で製造した二次粒子の構造図である。
【
図3】実施例2で製造した二次粒子の構造図である。
【
図4】実施例4で製造した二次粒子の構造図である。
【
図5】比較例2及び実施例6に使用されたシリコン亜酸化物原料、及び比較例1、2、実施例6で製造した二次粒子の粒子径分布図である。
【
図6】実施例6で製造した二次粒子の低倍走査電子顕微鏡写真である。
【
図7】実施例6で製造した二次粒子の高倍走査電子顕微鏡写真である。
【
図8】実施例6で製造した二次粒子を含む電池が化成後の負極横断面の電子顕微鏡写真である。
【
図9】実施例14で製造した二次粒子の高倍走査電子顕微鏡写真である。
【
図10】比較例1で製造した粒子の走査電子顕微鏡写真である。
【
図11】比較例2で製造した粒子の走査電子顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、実施例を参照しながら、本発明の具体的な実施形態をより詳細に説明することにより、本発明の態様およびその様々な利点をよりよく理解することができる。なお、以下に説明する具体的な実施形態および実施例は、説明する目的だけであって、本発明に対する限定ではない。
【0043】
実施例1
1、製造方法
1.1二次粒子の製造
シリコン亜酸化物粉末100kg(即ち、一回粒子、D10=0.60μm、D50=1.78μm、D90=3.59μm、SPAN=1.68、SiOXの一般式におけるx=1、比表面積8.9m2/g)とコールタールピッチ粉末12kgを取ってVC混合機に添加し、攪拌部材の最大直径のところの線速度が16m/sである速度で30min混合し、2つの原料を均一に混合させる。その後、回転速度を低下させ、前述の線速度を8m/sに低減させると同時に、不活性保護ガスとして窒素ガスを入れ、それから3℃/minの速度で温度を上昇させ、300℃まで昇温した後4h維持し、その後室温まで自然冷却し、シリコン亜酸化物とピッチの造粒工程を完成させる。このプロセスにおいて、VC混合機内の温度が上昇するとともに、ピッチが次第に軟化し、高速で撹拌し続けるうちに、各シリコン亜酸化物粉末の表面を均一に被覆し、同時に、ピッチに被覆されているシリコン亜酸化物一次粒子が互いに粘着して凝集し、一定サイズのシリコン亜酸化物/ピッチ複合二次粒子を形成する。上記二次粒子はVC混合機の中で長時間にわたりせん断、押圧、衝突された後でより緻密になり、同時に300℃の温度下で、ピッチは部分的に小分子揮発物を除去し、一部は架橋、炭化することができ、ひいては二次粒子を定形させる。
【0044】
上記中間品を取ってグラファイト匣鉢に入れ、ローラーキルンに置き、窒素ガスの保護性ガスを入れて3℃/minで900℃まで昇温し、4h保温し、その後室温まで自然冷却し、炭化処理を完成させる。このステップにおいて、ピッチが無酸素雰囲気の高温処理で炭化される。上記炭化物を気流粉砕処理し,粉砕気流圧力を調節することにより、炭化後に得られた複合材料の軟凝集体を微細な二次粒子粉末になるまで分散するが、同時に二次粒子の構造を破壊しない。最後にふるい分けと消磁処理を行い、最終的に負極材料に使える製品が得られる。
【0045】
図1は実施例1で製造した二次粒子の高倍走査電子顕微鏡写真であり、
図2はその構造図であり、実施例1で製造した粒子は緻密な二次粒子であり、シリコン亜酸化物一次粒子Aとそれに粘着して被覆した炭素層Bとを複合したものである。
【0046】
1.2極片の製造
上記の二次粒子9部、人造黒鉛43.5部、天然黒鉛43.5部、導電性添加剤Super P1部、多層カーボンナノチューブ0.5部、粘結剤カルボキシメチルセルロースナトリウム CMC1部、改性ポリアクリレート1.5部を取り、水性システムの下でホモジネート、塗布、乾燥、摩圧し、シリカ二次粒子を含む負極極片を得た。
【0047】
2、製品検測
検測したところ、二次粒子の粒子径がD10=1.89μmであり、D50=4.02μmであり、D90=7.16μmであり、SPAN=1.31であり、比表面積が2.7m2/gであり、タップ密度が0.88g/cm3であり、炭素含有量が4.9wt%である。シリコン亜酸化物材料は800℃以上の熱処理を経て不均一反応を起こし:2SiO→Si+SiO2、SiOx内に均一に分散したシリコンナノ結晶粒/クラスタを形成した。X線回折パターンの結果から,Sherrer方程式を代入すると、実施例1で得られた材料のSi(111)結晶面に対応する結晶粒サイズが2.9nmであると計算できた。
【0048】
以上の検測項目に用いられた機器はそれぞれ次のとおりである。
【0049】
日立SU8010電界放出走査電子顕微鏡を用いて試料の表面形態などを観察した。
【0050】
丹東百特Bettersize2000LDレーザ粒度計を用いて材料の粒子径及び粒子径分布を測定した。
【0051】
康塔Quantachrome Nova4200e比表面積測定機を用いて材料の比表面積を測定した。
【0052】
丹東百特BT-301タップ密度計を用いて材料のタップ密度を測定した。
【0053】
elementar vario EL cube元素分析器を用いて材料中の炭素含有量を測定した。
【0054】
Rigaku MiniFlex600X線回折計を用いて材料の結晶構造を測定した。
【0055】
3、性能測定
半電池評価:上記製造したシリカ二次粒子を含む負極極片と隔膜、リチウム片、ステンレススペーサーを順次に重ねて200μLの電解液を滴下した後に密封して2016式リチウムイオン半電池を製造した。武漢市藍電電子株式会社の小(微)電流レンジ設備を用いて容量と放電効率を測定した。上記負極の半電池の初回の可逆リチウムデインターカレーション比容量が1593.3mAh/gであり、初回の充放電クーロン効率が78.6%であることを測定し得た。
【0056】
全電池評価:上記製造したシリカ二次粒子を含む負極極片は、分割、真空ベーキングを経て、対になる正極片(三元ニッケルコバルトマンガン材料、LiNi0.8Co0.1Mn0.1O2)と隔膜を一緒に巻きつけて、対応する大きさのアルミ成形ケースに入れた後、一定量の電解液を注入して密封し、化成した後シリカ二次粒子の負極を含む完全なリチウムイオン全電池が得られた。深せん市新ウィル電子有限公司の電池測定器を用いて、この全電池の0.2C下の容量、平均電圧および1C充放電速度で500回サイクルした容量維持率データを測定し、測定の電圧範囲が4.2-2.75Vである。電池の重さを量った後に、以上の電気化学データを参照して、全電池の重量エネルギー密度が301Wh/kgであり、初回のクーロン効率が84.1%であり、500回の充放電サイクル後の容量維持率が85.3%であることを計算し得た。500回サイクル後、電池をフル充電して、電池の厚さを測定し、電池のサイクル前の初期厚さと比べると、電池の膨張率が9.0%であることを得、その後、電池を不活性雰囲気において分解し、リチウムインターカレーションの負極極片の厚さを測定し、電池を組み立てる前の負極極片の厚さと比べると、負極極片の満電膨張率が29.4%であることを得た。以上の測定結果を表1にまとめて示す。
【0057】
実施例2
実施例2の工程は、実施例1と類似し、その相違点は、材料合成プロセスにおいて、シリコン亜酸化物粉末100kgとコールタールピッチ粉末12kgを取ってVC混合機に添加する以外に、ケッチェンブラック0.3kgと多層カーボンナノチューブ導電性添加剤粉末0.2kgを追加したことである。その結果,最終製品は導電性添加剤を含むシリコン亜酸化物/非晶質炭素複合二次粒子であり、その構造は、
図3に示すように、この材料はシリコン亜酸化物一次粒子A、導電性添加剤C、および両者を粘着させて一緒に被覆した炭素層Bを複合したものであり、導電性添加剤Cは二次粒子内部と外表面に均一に分散した。最終製品はD10=1.78μmであり、D50=3.89μmであり、D90=7.01μmであり、SPAN=1.34であり、比表面積が3.0m
2/gであり、タップ密度が0.84g/cm
3であり、炭素含有量が5.3wt%であり、Si(111)結晶面に対応する結晶粒のサイズが2.9nmである。
【0058】
半電池と全電池の評価方法は、実施例1と同じであり、その結果を表1にまとめて示し、導電性添加剤を添加した後、電池の性能がある程度改善されたことがわかる。
【0059】
実施例3
実施例1で製造し得た二次粒子100kgと、石油アスファルト粉末1kgを取ってVC混合機に入れ、線速度3m/sの条件で10分間機械的に混合した後、2m/sまで速度を下げ、窒素ガス保護雰囲気において、撹拌しながら設備を300℃まで昇温してから1h保持し、その後室温までゆっくり冷却した。上記アスファルト被覆の材料をアルゴン不活性雰囲気において、400℃で2h保温し、その後900℃まで昇温して4h炭化し、室温まで自然冷却した後、破砕、ふるい分けと消磁処理して、第二層非晶質炭素被覆層を有するシリコン亜酸化物/非晶質炭素複合粒子を得た。この最終製品はD10=2.13μmであり、D50=4.65μmであり、D90=7.87μmであり、SPAN=1.23であり、比表面積が2.4m2/gであり、タップ密度が0.95g/cm3であり、炭素含有量が5.8wt%であり、Si(111)結晶面に対応する結晶粒のサイズが2.9nmである。
【0060】
半電池と全電池の評価方法は、実施例1と同じであり、結果を表1にまとめて示す。
【0061】
実施例4
実施例2で製造した二次粒子100kgを取って、実施例3の二次被覆工程を用いて処理し、第二層非晶質炭素被覆層を有するシリコン亜酸化物/多層カーボンナノチューブ/ケッチェンブラック/非晶質炭素複合粒子を得た。
図4は本実施例で製造した二次粒子の構造図であり、
図4に示すように、この材料はシリコン亜酸化物一次粒子A、導電性添加剤C、及び両者を粘着して一緒に被覆した炭素層Bを複合したものであり、導電性添加剤Cが二次粒子内部に均一に分散され、二次粒子外表面にはさらに第二層の連続した炭素被覆層Dがある。この最終製品はD10=2.01μmであり、D50=4.45μmであり、D90=7.76μmであり、SPAN=1.29であり、比表面積が2.7m
2/gであり、タップ密度が0.89g/cm
3であり、炭素含有量が6.2wt%であり、Si(111)結晶面に対応する結晶粒のサイズが2.9nmである。
【0062】
半電池と全電池の評価方法は、実施例1と同じであり、結果を表1にまとめて示し、これにより、実施例3と同様に、複数回の被覆を行うことで、製品の性能を著しく向上させることができる。
【0063】
実施例5
ショ糖0.2kgを取って脱イオン水8kgに溶解してショ糖溶液を得、更にショ糖溶液に単層カーボンナノチューブ0.6gを含むカーボンナノチューブスラリーを添加して撹拌と分散を行い、その後攪拌しながらシリコン亜酸化物粉末2kg(実施例1と同じ)を添加し、続いて攪拌しながら超音波で1h分散し、ショ糖/単層カーボンナノチューブ/シリコン亜酸化物粒子複合スラリーを得た。前記複合スラリーを噴霧乾燥で処理し、風中温度150℃と、ノズル霧化圧力0.2Mpaで、ショ糖/単層カーボンナノチューブ/シリコン亜酸化物複合二次粒子乾燥粉末を得た。上記粉末をグラファイト匣鉢に入れ、雰囲気ボックス炉に置き、窒素ガスを不活性保護ガスとして入れて、3℃/minで900℃まで昇温し、6h保温し、室温まで自然冷却して、炭化処理を完了させた。上記炭化物をギアディスクミルで分散処理し、ギアディスクミルの回転子外縁の最大線速度が3m/sであった。上記二次粒子1kgと石油アスファルト粉末0.04kgを取って、簡単に攪拌混合してから機械融合機に添加し、回転子の外縁線速度を15m/sに制御し、0.5h融合し、処理後の製品を窒素不活性雰囲気において、400℃で2h保温し、その後900℃まで昇温して4h炭化し、室温まで自然冷却した後、破砕、ふるい分け、消磁処理して、第二層非晶質炭素被覆層を有するシリコン亜酸化物/単層カーボンナノチューブ/非晶質炭素複合粒子を得た。この最終製品はD10=1.90μmであり、D50=4.87μmであり、D90=8.62μmであり、SPAN=1.38であり、比表面積が3.7m2/gであり、タップ密度が0.82g/cm3であり、炭素含有量が約4.8wt%であり、Si(111)結晶面に対応する結晶粒のサイズが2.9nmである。
【0064】
半電池と全電池の評価方法は、実施例1と同じであり、結果を表1にまとめて示し、総合的に見ると、噴霧乾燥方式により製造された電池の性能は従来技術に比べると、ある程度向上したが、他の実施例に比べたら、その一部の指標は顕著ではない。
【0065】
実施例6
シリコン亜酸化物粉末100kg(D10=1.07μm、D50=4.68μm、D90=8.84μm、SPAN=1.66、SiOxの一般式におけるx=1、比表面積2.9m2/g)と石油アスファルト粉末5kgを取って立式被覆釜に添加し、攪拌部品の最大直径のところの線速度が7m/sである速度で1h混合し、2つの原料を均一に混合した。その後、線速度を3m/sに低減し、同時に窒素ガスを不活性保護ガスとして入れて、その後3℃/minの速度で500℃まで昇温した後、3h保持し、その後室温まで自然冷却した。上記中間品を取ってグラファイト匣鉢に入れ、ローラーキルンに置き、窒素ガス保護性ガスを入れて3℃/minで1020℃まで昇温し、2h保温して、室温まで自然冷却した。上記炭化物を犂刃で1h分散処理し、犂刃の線速度が3m/sである。最後にふるい分けと消磁処理を行い、得られた最終製品はD10=4.32μmであり、D50=7.06μmであり、D90=10.90μmであり、SPAN=0.93であり、比表面積が1.1m2/gであり、タップ密度が1.09g/cm3であり、炭素含有量が3.2wt%であり、Si(111)結晶面に対応する結晶粒のサイズは4.1nmである。
【0066】
図5は本実施例におけるシリコン亜酸化物粉末原料及びシリコン亜酸化物複合材料(即ち、二次粒子)の粒子径分布図を示す。また、
図6、
図7は本実施例で製造した二次粒子の走査電子顕微鏡写真であり、
図8は本実施例で製造した二次粒子を含むリチウムイオン電池の負極極片の横断面電子顕微鏡写真である。
図6からわかるように、本実施例で得られた粒子は、大きさが均一的な二次粒子であり、単分散の一次小粒子がない。同時に、
図7、
図8を参照してわかるように、本実施例で製造した粒子は、緻密な二次粒子である。
【0067】
半電池と全電池の評価方法は、実施例1と同じであり、結果を表1にまとめて示す。
【0068】
実施例7
シリコン亜酸化物粉末100kg(実施例6と同じ)とポリビニルアルコール粉末9kgを取って立型被覆釜に添加し、撹拌部材の最大直径のところの線速度が5m/sである速度で2h混合し、2つの原料を均一に混合した。その後、線速度を3m/sに低減し、同時に窒素ガスを不活性保護ガスとして入れてから、2℃/minの速度で300℃まで昇温して6h保持し、その後室温まで自然冷却した。上記中間品を取ってグラファイト匣鉢に入れ、ローラーキルンに置き、窒素ガス保護性ガスを入れて3℃/minで1020℃まで昇温し、2h保温して、室温まで自然冷却した。上記の炭化物を犂刃で1h分散処理し、犂刃の線速度が3m/sである。最後にふるい分けと消磁処理を行い、得られた最終製品はD10=3.97μmであり、D50=6.91μmであり、D90=10.40μmであり、SPAN=0.93であり、比表面積が1.2m2/gであり、タップ密度が1.05g/cm3であり、炭素含有量が3.0wt%であり、Si(111)結晶面に対応する結晶粒のサイズが4.1nmである。
【0069】
半電池と全電池の評価方法は、実施例1と同じであり、結果を表1にまとめて示す。
【0070】
実施例8
シリコン亜酸化物粉末100kg(D10=0.87μm、D50=3.88μm、D90=7.73μm、SPAN=1.77、SiOxの一般式におけるx=1、比表面積3.8m2/g)と石油アスファルト粉末7kgをVC混合機に添加し、攪拌部品の最大直径のところの線速度が8m/sである速度で1h混合し、2つの原料を均一に混合した。その後、線速度を4m/sに低減し、同時に窒素ガスを不活性保護ガスとして入れてから、3℃/minの速度で900℃まで昇温して1h保持し、その後室温まで自然冷却した。上記中間品を取ってグラファイト匣鉢に入れ、プッシャーキルンに置き、窒素ガス保護性ガスを入れて3℃/minで1000℃まで昇温し、3h保温して、室温まで自然冷却した。上記炭化物を犂刃で1h分散処理し、犂刃の線速度が3m/sである。最後にふるい分けと消磁処理を行い、得られた最終製品はD10=4.51μmであり、D50=7.15μmであり、D90=11.07μmであり、SPAN=0.92であり、比表面積が1.0m2/gであり、タップ密度が1.12g/cm3であり、炭素含有量が4.0wt%であり、Si(111)結晶面に対応する結晶粒のサイズが3.9nmである。
【0071】
半電池と全電池の評価方法は、実施例1と同じであり、結果を表1にまとめ示し、全電池の重量エネルギー密度が311Wh/kgとなり、サイクル維持率が90.7%となり、電池の膨張率が7.6%となり、総合的に見ると、本実施例で製造した電池が優れた性能を有する。
【0072】
実施例9
実施例9の工程ステップは実施例8と類似であるが、唯一の相違点は、造粒ステップにおいて、VC混合機における保温温度が400℃であり、保温時間が3hであった。最終製品はD10=4.26μmであり、D50=7.46μmであり、D90=11.98μmであり、SPAN=1.03であり、比表面積が1.2m2/gであり、タップ密度が1.07g/cm3であり、炭素含有量が3.9wt%であり、Si(111)結晶面に対応する結晶粒のサイズが3.9nmである。
【0073】
半電池と全電池の評価方法は、実施例1と同じであり、結果を表1にまとめて示す。
【0074】
実施例10
実施例10の工程ステップは実施例8と類似であるが、唯一の相違点は、造粒ステップにおいて、VC混合機における保温温度が150℃であり、保温時間が6hであった。最終製品はD10=4.00μmであり、D50=8.47μmであり、D90=14.10μmであり、SPAN=1.19であり、比表面積が1.4m2/gであり、タップ密度が1.02g/cm3であり、炭素含有量が3.9wt%であり、Si(111)結晶面に対応する結晶粒のサイズが3.9nmである。
【0075】
半電池と全電池の評価方法は、実施例1と同じであり、結果を表1にまとめて示す。
【0076】
実施例11
実施例11の工程ステップは実施例9と類似であり、唯一の相違点は、添加された石油アスファルト量が9kgであった。最終製品はD10=4.78μmであり、D50=8.90μmであり、D90=14.90μmであり、SPAN=1.14であり、比表面積が1.6m2/gであり、タップ密度が1.01g/cm3であり、炭素含有量が6.1wt%であり、Si(111)結晶面に対応する結晶粒のサイズが3.9nmである。
【0077】
半電池と全電池の評価方法は、実施例1と同じであり、結果を表1にまとめて示す。
【0078】
実施例12
実施例12の工程ステップは実施例9と類似であり、唯一の相違点は、添加された石油アスファルト量が3kgであった。最終製品はD10=3.78μmであり、D50=6.98μmであり、D90=10.76μmであり、SPAN=1.00であり、比表面積が1.1m2/gであり、タップ密度が1.11g/cm3であり、炭素含有量が2.7wt%であり、Si(111)結晶面に対応する結晶粒のサイズは3.9nmである。
【0079】
半電池と全電池の評価方法は、実施例1と同じであり、結果を表1にまとめて示す。
【0080】
実施例13
シリコン亜酸化物粉末2kg(D10=3.62μm、D50=7.90μm、D90=13.40μm、SPAN=1.24、SiOxの一般式におけるx=1、比表面積1.8m2/g)とコールタールピッチ粉末0.08kg、気相成長炭素繊維粉末0.01kgを機械融合機に添加し、回転子外縁の線速度が20m/sである速度で10分間混合し、3つの原料を均一に混合した。その後20m/sの線速度を維持し、180℃まで昇温してから0.5h保持し、その後室温まで自然冷却した。上記中間品を取ってグラファイト匣鉢に入れ、チューブ炉に置き、窒素ガス保護性ガスを入れて3℃/minで930℃まで昇温し、8h保温して、室温まで自然冷却した。上記炭化物をギアディスクミルで分散処理し、ギアディスクミルの回転子外縁の最大線速度が3m/sである。最後にふるい分けと消磁処理を行い、得られた最終製品はD10=5.91μmであり、D50=10.21μmであり、D90=17.60μmであり、SPAN=1.14であり、比表面積が1.1m2/gであり、タップ密度が1.10g/cm3であり、炭素含有量が3.2wt%であり、Si(111)結晶面に対応する結晶粒のサイズは3.1nmである。
【0081】
半電池と全電池の評価方法は、実施例1と同じであり、結果を表1にまとめて示す。
【0082】
実施例14
シリコン亜酸化物粉末100kg(D10=2.44μm、D50=4.55μm、D90=6.99μm、SPAN=1.00、SiOxの一般式におけるx=1、比表面積1.7m
2/g)とコールタールピッチ粉末6kgを立式被覆釜に添加し、攪拌部品の最大直径のところの線速度が6m/sである速度で1h混合し、2つの原料を均一に混合する。その後、線速度を2m/sに低減し、同時に窒素ガスを不活性保護ガスとして入れてから、3℃/minの速度で300℃まで昇温して6h保持し、その後室温まで自然に冷却した。前記の中間品を取ってグラファイト匣鉢に入れ、プッシャーキルンに置き、窒素ガス保護性ガスを入れて3℃/minで950℃まで昇温し、5h保温して、室温まで自然冷却した。上記炭化物をギアディスクミルで分散処理し、ギアディスクミルの回転子外縁の最大線速度が3m/sである。最後にふるい分けと消磁処理を行い、得られた最終製品はのD10=4.92μmであり、D50=8.32μmであり、D90=14.70μmであり、SPAN=1.18であり、比表面積が1.2m
2/gであり、タップ密度が1.07g/cm
3であり、炭素含有量が3.2wt%であり、Si(111)結晶面に対応する結晶粒のサイズは3.7nmである。
図9は実施例14で製造した二次粒子の高倍走査電子顕微鏡写真である。
【0083】
半電池と全電池の評価方法は、実施例1と同じであり、結果を表1にまとめて示す。
【0084】
実施例15
シリコン亜酸化物粉末100kg(実施例14と同じ)とコールタールピッチ粉末6kg、Super P0.5kgを取って立式被覆釜に添加し、攪拌部材の最大直径のところの線速度が6m/sである速度で1h混合し、3つの原料を均一に混合する。その後、線速度を2m/sに低減し、同時に窒素ガスを不活性保護ガスとして入れてから、3℃/minの速度で300℃まで昇温して6h保持し、その後室温まで自然冷却した。上記中間品を取ってグラファイト匣鉢に入れ、プッシャーキルンに置き、窒素ガス保護性ガスを入れて3℃/minで950℃まで昇温し、5h保温して、室温まで自然冷却した。上記炭化物をギアディスクミルで分散処理し、ギアディスクミルの回転子外縁の最大線速度が3m/sである。分散した材料2kgを取ってロータリー炉に置き、3℃/minで950℃まで昇温し、アセチレンと窒素ガスを入れて、流量をそれぞれ0.2L/minと0.3L/minとし、5h反応した後に室温まで冷却して取り出した。最後にふるい分けと消磁処理を行い、得られた最終製品はD10=5.38μmであり、D50=8.80μmであり、D90=15.60μmであり、SPAN=1.16であり、比表面積が1.8m2/gであり、タップ密度が0.99g/cm3であり、炭素含有量が5.2wt%であり、Si(111)結晶面に対応する結晶粒のサイズは3.7nmである。
【0085】
半電池と全電池の評価方法は、実施例1と同じであり、結果を表1にまとめて示す。
【0086】
比較例1
シリコン亜酸化物ブロック(平均粒子径が約2cm)をボックス炉に置いて、アルゴン保護雰囲気を入れて、3℃/minで1000℃まで昇温し、2h高温熱処理を行い、不均化した改質のシリコン亜酸化物ブロックを得た。不均化したシリコン亜酸化物ブロックを破砕、粉砕し、得られた材料はD10=1.04μm、D50=4.61μm、D90=9.01μm、SPAN=1.73である。シリコン亜酸化物粉末2000gを取ってロータリー炉に置いて、3℃/minで900℃まで昇温し、アセチレンガスを通して、流量を0.2L/minとし、反応の全過程を通じて炉内に窒素ガス保護性雰囲気を入れ、流量を0.1L/minに制御し、10h反応して、前駆体を得た。上記前駆体を機械融合機に投入し、回転子外縁の線速度を15m/sとし、10min融合した後、混合、ふるい分け、消磁、乾燥、包装を行い、得られたシリコン亜酸化物複合材料はD10=2.05μm、D50=5.25μm、D90=9.54μm、SPAN=1.43、比表面積が5.2m2/gであり、タップ密度が0.93g/cm3であり、炭素含有量が約5.2wt%であり、Si(111)結晶面に対応する結晶粒のサイズが4.0nmである。
【0087】
図10は比較例1におけるシリコン亜酸化物複合材料の電子顕微鏡画像であり、見てわかるように、複合材料には微細粉の粒子がより多く、ほとんどは単一分散の一次粒子であり、かつ粒子の角が明確で、エッジが鋭い。
図5に示す比較例1におけるシリコン亜酸化物複合材料の粒子径分布図からわかるように、比較例1の製品の粒子径分布が実施例6より広く、小粒子の割合が高い。
図5の粒度分布曲線が重量/体積分布曲線であり、小粒子セグメント曲線の高さが高いことから、小粒子の重量/体積の割合が比較的高いことを示し、小粒子の数の比率と比表面積の比率に換算すると、桁違いの増加である。したがって、図から分かるように、比較例1は実施例6に比べて、小粒子数の割合が非常に高く、比表面積も大きくなった。
【0088】
実施例1の半電池と全電池の評価方法を参照しながら、本比較例の粒子で製造した電池の性能を評価し、結果を表1にまとめて示す。
【0089】
比較例2
シリコン亜酸化物粉末(実施例6と同じ)100kgと石油アスファルト粉末10kgをVC混合機に置いて、線速度を10m/sに調節し、0.5h混合して、前駆体1を得た。前駆体1を真空嵌合機に添加し、加熱循環熱伝導油を介して材料温度が250℃以上となるように制御し、6h嵌合して材料が粘稠状を呈し、その後材料が冷却する前に速やかにモールドマシンに移してモールド処理を行い、モールドシートの厚さを2.0~5.0mmに制御し、モールドシートが冷却した後に機械的に粉砕し、粒度の中位径を2.0~15.0μmに制御し、続いて粉砕材料を恒温などの静圧処理を行い、圧力の強度を20Mpaに制御し、温度を250℃にし、0.1hの加圧処理を実施して、前駆体2を得た。前駆体2をローラーキルンに置いて、窒素ガス保護性ガスを入れて3℃/minで1000℃まで昇温し、7h保温して、室温まで自然冷却した。その後、1h犂刃破砕し、犂刃の最大線速度が3m/sであり、その後ふるい分け、消磁、乾燥してシリコン亜酸化物粒子を得た。得られた材料はD10=3.22μmであり、D50=6.77μmであり、D90=13.36μmであり、SPAN=1.50であり、比表面積が2.2m2/gであり、タップ密度が0.99g/cm3であり、炭素含有量が約6.3wt%であり、Si(111)結晶面に対応する結晶粒のサイズが4.0nmである。
【0090】
図11は、比較例2におけるシリコン亜酸化物粒子の電子顕微鏡写真であり、見てわかるように、複合材料には微細粉の粒子がより多く、ほとんどが単一分散の一次粒子であり、一部の大、小一次粒子が複合してできた比表面積がより大きいばらばらの二次粒子が存在した。
図5の比較例2におけるシリコン亜酸化物粒子の粒子径分布図から分かるように、比較例2の製品の粒子径分布は実施例1より広く、小粒子と大粒子の割合がいずれも高い。
【0091】
実施例1の半電池と全電池の評価方法を参照しながら、本比較例の粒子で製造した電池の性能を評価し、結果を表1にまとめて示す。
【0092】
比較例3
比較例3の工程ステップは実施例8~10と類似であり、唯一の相違点は、室温でVC混合機を利用して原料を混合した後、昇温撹拌の造粒処理を行わず、直接材料を出して、後に続ける炭化、破砕、ふるい分け、消磁処理を行うことである。最終製品はD10=1.93μmであり、D50=8.68μmであり、D90=16.22μmであり、SPAN=1.65であり、比表面積が2.2m2/gであり、タップ密度が1.02g/cm3であり、炭素含有量が3.9wt%であり、Si(111)結晶面に対応する結晶粒のサイズが3.9nmである。
【0093】
半電池と全電池の評価方法は、実施例1と同じであり、結果を表1にまとめて示す。
【0094】
【0095】
従来技術では、製造工程が複雑であり、例えば、混捏、圧延や押付成形などの工程は規模化生産を実現することが困難である。そして、炭素前駆体が炭化した後、必ず隣のシリコン亜酸化物粒子に粘着と凝集し、後続きの破砕、粉砕などの工程は炭素被覆層に破壊をもたらす。従来技術で製造した材料は、粒子の径分布が広く、大きい粒子と小さい粒子の割合がいずれも高く、製造した電池は、クーロン効率、膨張率、サイクル維持率がすべて理想的ではなく、面容量、ミクロ領域の膨張分布が不均一である。本発明で製造した負極材料は、二次粒子が緻密で、粒子径分布が狭く、比表面積が小さいので、検測した結果、高容量、高クーロン効率、均一な面容量分布、低膨張、高サイクル維持率などの利点がある。以上述べたのは、本発明のより良い実施形態だけであって、本発明にいかなる形式的な制限を与えるものではなく、当業者であれば、本発明の範囲を逸脱することなく、本発明の技術的実質に基づいて、上記実施形態に対して行った任意の簡単な修正、均等な置換と改善等に関して、いずれも本発明の保護範囲内にある。