(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】投薬安全装置及び方法
(51)【国際特許分類】
G16H 20/10 20180101AFI20240116BHJP
A61M 5/168 20060101ALI20240116BHJP
G16Y 10/60 20200101ALI20240116BHJP
G16Y 20/20 20200101ALI20240116BHJP
G16Y 40/20 20200101ALI20240116BHJP
G16Y 40/30 20200101ALI20240116BHJP
【FI】
G16H20/10
A61M5/168 500
G16Y10/60
G16Y20/20
G16Y40/20
G16Y40/30
(21)【出願番号】P 2022024674
(22)【出願日】2022-02-21
(62)【分割の表示】P 2019137279の分割
【原出願日】2014-01-23
【審査請求日】2022-03-23
(32)【優先日】2013-01-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-05-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509280394
【氏名又は名称】スミスズ メディカル エーエスディー,インコーポレイティド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【氏名又は名称】伊藤 公一
(72)【発明者】
【氏名】グラント アダムス
(72)【発明者】
【氏名】エリック ウィルコウスク
(72)【発明者】
【氏名】アリソン ブルームクイスト
【審査官】鹿谷 真紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-187411(JP,A)
【文献】特開平7-289634(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G16H 10/00-80/00
A61M 5/168
G16Y 10/60
G16Y 20/20
G16Y 40/20
G16Y 40/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
データ収集注入ポンプを
動作させるモードを移行させる
、コンピュータ実装方法であって、
前記データ収集注入ポンプによって、実際の注入に関する情報を含む動作データを収集するように、前記データ収集注入ポンプをデータ収集モードで動作させることと、
収集された前記動作データを薬剤リストと統合して薬剤ライブラリを作成することと、
更新された下位のソフト限界及び上位のソフト限界を用いて前記薬剤ライブラリを更新して、受け取った動作データのうちの所望の割合が前記更新された下位のソフト限界及び上位のソフト限界に入るように、コンプライアンスターゲットを確立することと、
前記更新された下位のソフト限界及び上位のソフト限界を含む前記薬剤ライブラリを、前記データ収集注入ポンプにアップロードすることによって、前記データ収集注入ポンプに対して、フィードバックすることと、
スマートポンプモードで前記データ収集注入ポンプを動作させること、
を含む、
データ収集注入ポンプを移行させる方法。
【請求項2】
前記データ収集注入ポンプをデータ収集モードで動作させることは、レート-ボリューム-ランモードの1つ又は複数の動作パラメータを記録することを含む、
請求項1に記載のデータ収集注入ポンプを
動作させるモードを移行させる
、コンピュータ実装方法。
【請求項3】
前記スマートポンプモードで前記データ収集注入ポンプを動作させることは、前記薬剤ライブラリに従って前記データ収集注入ポンプを動作させることを含む、
請求項1に記載のデータ収集注入ポンプを
動作させるモードを移行させる
、コンピュータ実装方法。
【請求項4】
前記薬剤ライブラリをアップロードすることによって、前記データ収集注入ポンプに対して、フィードバックすることは、前記データ収集注入ポンプからの統合された動作データを含む、
請求項1に記載のデータ収集注入ポンプを
動作させるモードを移行させる
、コンピュータ実装方法。
【請求項5】
前記薬剤ライブラリを更新することは、自動的に行われる、
請求項1に記載のデータ収集注入ポンプを
動作させるモードを移行させる
、コンピュータ実装方法。
【請求項6】
前記所望の割合は、少なくとも98%である、
請求項1に記載のデータ収集注入ポンプを
動作させるモードを移行させる
、コンピュータ実装方法。
【請求項7】
注入ポンプであって、
ポンプ圧送機構と、
レート-ボリューム-ランモードで前記注入ポンプを動作させ、
前記注入ポンプによって、実際の注入に関する情報を含む動作データを収集するように、前記注入ポンプをデータ収集モードで動作させ、
収集された前記動作データを薬剤リストと統合して薬剤ライブラリを作成し、
コンプライアンスターゲットを確立するように、下位のソフト限界及び上位のソフト限界を決定し、
収集された前記動作データのうちの所望の割合が、前記決定された下位のソフト限界及び上位のソフト限界に入るようにし、
前記決定された下位のソフト限界及び上位のソフト限界を含む前記薬剤ライブラリを、前記注入ポンプにアップロードすることによって、前記注入ポンプに対して、フィードバックし、
前記薬剤ライブラリに従って前記注入ポンプを動作させる、
ように構成されている、プロセッサと、
を備える、注入ポンプ。
【請求項8】
前記プロセッサは、更に、継続的品質改善イベントとして、前記下位のソフト限界及び前記上位のソフト限界の範囲外にある、あらゆる受け取った注入データをログ記録する、
ように構成されている、
請求項7に記載の注入ポンプ。
【請求項9】
前記プロセッサは、更に、ユーザが、変更された下位のソフト限界及び上位のソフト限界の範囲内に含まれる受け取った動作データの割合に対する、前記変更された下位のソフト限界及び上位のソフト限界の変化の効果を評価するために、前記下位のソフト限界及び上位のソフト限界を変更することを可能にする、
ように構成されている、
請求項7に記載の注入ポンプ。
【請求項10】
前記プロセッサは、更に、特定の患者集団に関して受け取った動作データにおける有害な傾向を識別することによって、前記特定の患者集団の投薬範囲を最適化する、
ように構成されている、
請求項7に記載の注入ポンプ。
【請求項11】
前記所望の割合は、少なくとも98%である、
請求項7に記載の注入ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、薬剤の安全な送達を容易化するための医療システム、装置、及び、方法に関する。特に、本開示は、医療用注入ポンプの動作のための、及び、こうしたポンプの動作時に使用される薬剤ライブラリの開発及びメンテナンスのための、システム、装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
<関連出願>
本出願は、2013年1月28日付で出願された標題「投薬安全装置及び方法(MEDICATION SAFETY DEVICES AND METHODS)」の米国特許出願公開第61/757,587号明細書と、2013年5月22日付で出願された標題「投薬安全装置及び方法(MEDICATION SAFETY DEVICES AND METHODS)」の米国特許出願公開第61/826,253号明細書との利益を主張し、これらの両方はその全体において本明細書に引例として援用されている。
【0003】
医療用注入ポンプは、患者の循環系の中に栄養剤及び薬剤のような液体を注入するために使用される。こうしたポンプは、このような流体の投与における広範囲の融通性を提供する。例えば、薬剤が循環系の中に送り込まれる速度が可変的にプログラムされることが可能であり、投与されるべき合計体積が事前設定されることが可能であり、及び、薬剤を投与するための時間が、特定の周期性における自動送達のためにスケジュール設定されることが可能である。注入ポンプを用いた注入の速度と時間と量の事前プログラミングが、手作業で行われる場合には非実用的であるか高コストであるか又は不確実である可能性がある様々な種類の治療プロトコルを可能にするが、一方、医療従事者が継続的には存在しない時に、患者に対する流体の導入を安全に調節するという問題を生じさせる。
【0004】
医療用注入ポンプは、大体積ポンプと小体積ポンプとに分類することが可能である。大体積ポンプは、典型的には、他の薬剤及び流体に比較して相対的に大きな体積で患者に対して送達されることが必要である、栄養剤のような薬剤と流体のために使用され、一方、小体積ポンプは、インシュリン、又は、オピエートのような他の薬剤を注入するために使用されることが可能である。小体積ポンプは様々な形態をとるが、シリンジポンプは、少量の流体の正確な注入を実現することが可能である幾つかのタイプのポンプの1つである。
【0005】
シリンジポンプは、典型的には、シリンジに流体連通している注入管路を通して、調節された速度で、処方された量又は投与量の流体を患者に送達するように、マイクロプロセッサの制御の下で機械的に駆動されるプレフィルド薬剤シリンジを使用する。シリンジポンプは、典型的には主ねじを回転させるモータを含む。一方、この主ねじは、シリンジのバレル内のプランジャを前方に押すプランジャ駆動装置を作動させる。したがって、プランジャを前方に押すことが、薬剤の投与量をシリンジから外方に注入管路の中に押し進め、さらに、典型的には静脈内的に、患者に注入する。シリンジポンプの例が、標題「コンピュータに対するバーコード入力を伴う注入ポンプ(Infusion Pump with Bar Code Input to Computer)」の特許文献1と、標題「シリンジポンプ迅速閉塞検出システム(Syringe Pump Rapid Occlusion Detection System)」の特許文献2と、標題「シリンジポンプのためのシリンジプロファイルの更新(Updating Syringe Profiles for a Syringe Pump)」の特許文献3とに開示されており、これらの特許文献の各々はその全体において本明細書に引例として援用されている。この開示全体で使用される場合に、術語「シリンジポンプ」は、シリンジから外方に流体を調節可能な形で押し進めるようにシリンジに対して作用する任意の装置に概ね関係することが意図されている。
【0006】
シリンジポンプは、治療薬剤、栄養剤、医薬剤、抗生物質と血液凝固剤と鎮痛剤のような薬剤、及び、他の流体を非限定的に含む、患者に対する薬剤又は流体の送達を調節するために使用される。この装置は、幾つかの経路のいずれかによって、例えば、静脈内的に、皮下的に、動脈内的に、又は、硬膜外に、患者の体の中に医薬又は流体を送り込むために使用されることが可能である。
【0007】
注入中の患者の安全性を向上させるために、シリンジポンプ製造業者は、上述の機械的手段による患者に対する流体に対する単なる送達を越えた機能性を提供することが可能である、いわゆる「スマート」ポンプを開発してきた。スマートポンプは、典型的には、ポンプから特定の患者への特定の薬剤の送達に関する、投与量、濃度、時間等の投薬プログラムパラメータに対する安全性限界に関する情報を提供し、又は、さらには安全性限界を強制することもある。したがって、こうした安全性限界に関連付けられているいわゆる「薬剤ライブラリ」を作成してメンテナンスするために、医師のより多くの作業が必要とされるだろう。こうした機能性の提供が、特定の医療行為とプロトコルと標準手順とにおいて、より重要であると見なされることがあるだろう。しかし、他の医療行為とプロトコルとにおいては、標準化、ポンプの安全性限界の対処、又は、薬剤投与レート範囲の制限に関しては、あまり多くの強調又は必要が存在しないだろう。したがって、幾つかのレベルの機能性を提供するポンプに関する必要性が満たされていない。
【0008】
ポンプに関する安全性限界及び/又は薬剤ライブラリに関する高度の機能性を典型的には必要としない状況では、医師は、通常は、スマートポンプのワークフローよりも著しく単純なワークフローに慣れている。単純なワークフローは、「レート、ボリューム、ラン(Rate,Volume,Run)」として、又は、同様の基本的な調節注入プロトコルとして、通常は定義される。反対に、より完全に調節された注入が、典型的には、適用可能な安全性限界を使用するだろうし、この安全性限界は、通常は、特定の薬剤の送達における「ハード」限界(hard limit)又は「ソフト」限界(soft limit)と呼ばれる。ハード限界は、その限界の外側にある選択された注入パラメータが、警報の発生、ポンプの動作不能、又は、ポンプがパラメータの選択又は入力を受け入れることを不可能にすることを結果的に引き起こす、限界として定義されることが多い。ハード限界は、典型的には、ヘパリンのような高リスクな薬剤に関して設定されている。しかし、ソフト限界は、警報を生じさせることがあるが、しかし、依然として注入が進行するように無視される限界として定義されることが多い。ハード限界及び/又はソフト限界がスマートポンプに関して使用される時には、情報が、ポンプ、又は、そのポンプと通信しているか又はそのポンプを制御する別のシステムに入力され、及び、この情報は、患者の体重、注入される薬剤のタイプ、及び、処方された薬剤の濃度のようなデータを含む。典型的には、薬剤ライブラリは、事前決定された濃度又は標準濃度での薬剤のリストを含み、及び、このリストは安全投薬範囲を効果的に決定する。薬剤ライブラリを伴うこうしたスマートポンプをプログラムするために、医師は、典型的には、特定の薬剤と濃度とを選択し、患者の体重を入力し、投与量及び時間のような必要とされる注入パラメータをプログラムし、及び、その次に、注入を開始するためのコマンドを入力する必要があるだろう。これらの段階は、医師のより複雑なワークフローを結果的に生じさせる。
【0009】
しかし、恐らくは、スマートポンプのワークフローに対するより深刻な問題は、患者に対してポンプを実際に使用する前に、動作パラメータを準備して設定することにある。薬剤師のような医療スタッフメンバーが、各々の薬剤に関する、及び、恐らくは各々の薬剤濃度にも関する、ハード限界とソフト限界とに関する薬剤ライブラリを開発することが必要である可能性が高いだろう。場合によっては、こうした薬剤ライブラリ又は薬剤リストは、患者に対する注入の前に定義且つ入力される必要がある数千を超える入力項目を含むだろう。薬剤ライブラリを開発してメンテナンスすることが、多数の薬剤リストと、手作業で入力される多量のデータとを必要とし、したがって、大量の時間を要する。この問題は、病院情報システム(Hospital Information System)(HIS)の一部分としての従来の薬剤ライブラリ記憶コンポーネントに対するあらゆる移行において、又は、従来の薬剤ライブラリ記憶コンポーネントからの移行において、さらに悪化させられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】米国特許第4,978,335号明細書
【文献】米国特許第8,182,461号明細書
【文献】米国特許第8,209,060号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、限界の設定と薬剤ライブラリとにおけるより高い機能性とより低い機能性との両方の必要を満たし、且つ、必要に応じてより洗練された薬剤ライブラリを作成及びメンテナンスするために低い機能性から容易に移行することが可能である、投薬安全装置及び方法を提供することが有用であり且つ有利であるだろう。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の実施態様が、新規性があり且つ発明的である投薬安全装置及び方法を提供する。
【0013】
一実施態様では、投薬安全装置が、ポンプと、このポンプと通信している薬剤ライブラリとを含むことが可能である。薬剤ライブラリは、少なくとも1つの薬剤に関連付けられている上位のハード限界及びソフト限界と下位のハード限界及びソフト限界とを有することが可能である。グラフィカルユーザインターフェースが、すくなくとも1つの薬剤に関する上位及び下位のソフト限界バーを示すバーチャートを表示することが可能である。上位及び下位のソフト限界バーは、1つの特定の実施態様では、新たな上位及び下位のソフト限界に関連した新たな位置に、グラフィカルユーザインターフェース上でタッチスクリーン式に掴んでドラッグされることが可能である。このグラフィカルユーザインターフェースとこれに関連したハードウェア及びソフトウェアは、これに応答する形で、データを再分析し、新たな上位及び下位のソフト限界に対して特定の注入を比較するように、構成可能である。したがって、様々な実施態様の特徴と利点において、ユーザインタラクティブな限界値が、シリンジポンプのための薬剤ライブラリにおいて与えられる。例えば、スライド可能な下位ソフト限界(LSL)、上位ソフト限界(USL)、下位ハード限界(LHL)、及び/又は、上位ハード限界(UHL)が、既知の従来の注入に関する限界を提示するために、薬剤ライブラリデータセット内のデータをグループ化又はグループ解除するために使用されることが可能である。したがって、医師又は審査会が、LSL、USL、LHL、及び/又は、UHLのいつかの側面に該当する許容可能又は許容不可能な注入の回数に関する限界に対する変化の効果、即ち、計算された能力指数(capability index)を容易に検査することが可能である。したがって、実施態様が、薬剤ライブラリの作成とメンテナンスに対する全体論的なアプローチを提供する。
【0014】
一実施態様では、薬剤ライブラリの作成の方法が提供され、この方法は、複数のリストされた薬剤名称と、リストされた薬剤の各々に関する1つ又は複数の送達濃度と、リストされた薬剤の各々に関する1つ又は複数のドースレート(dose rate)とを含む、薬剤リストを受け取ることと、リストされた複数の薬剤の少なくとも1つの、少なくとも1つの注入ポンプによる注入に関する情報を含む動作データを、少なくとも1つの注入ポンプから受け取ることと、薬剤リストと動作データとを統合する(integrate)こととを含む。
【0015】
一実施態様では、投薬安全システムは、少なくとも1つの注入ポンプと、この少なくとも1つの注入ポンプに動作的に接続されている集約サーバ(aggregating server)とを備え、及び、この集約サーバは、プロセッサと記憶装置とを備え、及び、この集約サーバは、複数のリストされた薬剤名称と、リストされた薬剤の各々に関する1つ又は複数の送達濃度と、リストされた薬剤の各々の1つ又は複数のドースレートとを含む薬剤リストを受け取るように、及び、リストされた複数の薬剤の少なくとも1つの、少なくとも1つの注入ポンプによる注入に関する情報を含む動作データを、少なくとも1つの注入ポンプから受け取るように、及び、薬剤ライブラリを作成するために薬剤リストと動作データとを統合する(integrate)ように構成されている。
【0016】
一実施態様では、注入ポンプを移行させる方法が、「レート-ボリューム-ラン」モード(rate-volume-run mode)で注入ポンプを動作させることと、データ収集モードで注入ポンプを動作させることと、スマートポンプモードで注入ポンプを動作させることとを含む。
【0017】
一実施態様では、注入ポンプは、「レート-ボリューム-ラン」モードで注入ポンプを動作させ、データ収集モードで注入ポンプを動作させ、及び、スマートポンプモードで注入ポンプを動作させるように構成されている、ポンプ圧送機構とプロセッサとを備える。
【0018】
様々な実施態様の別の特徴と利点では、能力指数(capability index)が、データセット内のデータをグループ化又はグループ解除するために薬剤ライブラリデータセットに対して適用されることが可能である。例えば、プロセス能力指数が、新たな境界又は潜在的な限界を有する比較のための新たなチャートを自動的に作成することが可能である。したがって、医師又は審査会が、LSL、USL、LHL、及び/又は、UHLのいつかの側面に該当する許容可能又は許容不可能な注入の回数に関するプロセス能力指数に対する変更の効果を容易に検査することが可能である。
【0019】
様々な実施形態の別の特徴と利点では、本明細書で説明されるユーザインターフェースが、動作的に接続されているサーバ上、統合された視覚的表示装置上、又は、特定のポンプ上で提供されることが可能である。例えば、集約サーバが、1つ又は複数の「データ収集」ポンプを使用するデータ収集のために、後述するように1つ又は複数のポンプに動作的に接続されることが可能である。集約サーバは、1つ又は複数のデータ収集ポンプからデータを受け取り、且つ、薬剤ライブラリデータセット内に収容するために上記データを収集又は集約するように構成されている。この後で、薬剤ライブラリと限界バーとを表示するユーザインターフェースが、限界及び他のデータセットの操作及び分析のために集約サーバ上に表示されることが可能である。別の例では、集約サーバは、上述したようにデータを集約することが可能であるが、特定の限界及び他のデータセットの操作及び分析は、コンピュータ、タブレット、スマートフォン、PDA、又は、他の適切な装置のような、集約サーバに動作的に接続されている統合された視覚的表示装置上で行われることが可能である。別の例では、集約サーバは、上述したようにデータを集約することが可能であるが、特定の限界及び他のデータセットの操作及び分析は、集約サーバに動作的に接続されているポンプ又は他の医療装置上で行われることが可能である。実施態様においては、ポンプは、注入データを集約サーバに送信したデータ収集ポンプである。他の実施態様では、独立したポンプが集約サーバとして機能することが可能である。
【0020】
様々な実施態様の別の特徴及び利点では、動的データ管理が実現される。一実施態様では、集約され及び/又は提供されるデータが、例えば、小児科患者、老人病患者、高リスク患者、又は、低リスク患者等のような患者集団に関してフィルタリングされることが可能である。これらのデータは、集約された後に、医師、審査会、又は、他のユーザからの入力にしたがってフィルタリングされることが可能である。例えば、小児科患者に関する適切な制限が、成人患者に関する制限とは大きく異なる可能性がある。したがって、これらの患者集団に関して様々な上位及び下位の限界を提供することが用心深いだろう。同様に、高リスク成人患者に適している制限が、低リスク成人患者に適している制限とは大きく異なる可能性がある。1つの薬剤に関して適切である制限が別の薬剤に関しては(又は、異なる濃度の同一の薬剤に関しても)不適切である可能性があるので、データは、さらに、薬剤のタイプによってフィルタリングされることが可能である。したがって、そのシステムに接続されているポンプによって処置されている患者の安全性を確実なものにするために、通知される判断が行われることが可能であるように、フィルタが適切なデータセットを提供することが可能である。さらに、書類によって又は電子的にテキスト文書が審査会又は医師の調査のために提供されることが一般的である従来のアグリゲータ(aggregator)の静的報告とは違って、新たな又は変更された制限値が選択された直後に、その値が、動作的に接続されているポンプに対して自動的にプログラムされることが可能である。
【0021】
様々な実施態様の別の特徴及び利点では、集約サーバが、統計的に有意である個数のデータポイントが1つ又は複数のデータ収集ポンプによって得られ終わる時点を計算するように構成されている。当業者の理解では、サンプルからの特定のデータ母集団に関する推論を行うために、特定のサンプルサイズが必要とされる。したがって、集約サーバは、フィルタリングされているか又はフィルタリングされていない任意の特定のデータ母集団又はデータセットの必要とされる統計的に有意である個数のデータポイントを自動的に計算することが可能である。他の実施態様では、本明細書で説明するデータ操作が、さらに、非統計的に有意であるデータセットに対しても行われることが可能である。
【0022】
様々な実施態様の別の特徴及び利点では、集約サーバは、Continuous Quality Improvement(CQI)、Six Sigma、Lean Processing、及び、他の任意の適切な改善プロセス(improvement process)のような、プロセス改善のために、他の統計学的に統合されたツール又はストラテジと統合されることが可能である。例えば、一実施態様では、LSL又はUSLの範囲外のあらゆる注入が、CQIイベントとしてログ記録されることが可能である。この場合に、審査会、医師、又は、他のユーザは、より適切な実施を行うために、収集されたテータ及び/又はログ記録されたイベントに基づいて、制限を評価して調節することが可能である。他の実施態様では、記録されたCQIイベントが、ポンプの動作に関与する他の臨床医又は医師のトレーニングを容易化するために使用される。
【0023】
したがって、上述した集約と自動化されたデータ分析及び操作は、薬剤プロファイルを確立して薬剤プロファイルを制限するために必要とされる時間量を減少させる実施態様を提供する。例えば、上述の例における限界又は能力指数の操作は、薬剤と薬剤濃度と患者体重とを手作業で入力することと限界境界を手計算することよりも、著しく迅速である。したがって、本明細書の主題の実施様態を実現する病院、医師、及び、管理者によって、時間と費用とが節約されるだろう。
【0024】
一実施態様では、ポンプモード移行によってスマートポンプを確立する方法が、「レート、ボリューム、ラン(rate-volume-run)」ポンプとしての初期動作と、データ収集ポンプとしての中間動作と、薬剤ライブラリインターアクション(drug library interaction)を伴うスマートポンプとしての最終動作とを含む。実施態様では、移行プランが、医師のトレーニングと、スマートポンプ及び薬剤ライブラリの実現とを補助する。例えば、保健施設が、単純な「レート、ボリューム、ラン」ポンプを有するが、スマートポンプへの移行を望む可能性がある。実施態様によって、スマートポンプによる「レート、ボリューム、ラン」ポンプのエミュレーションが、その施設内の医師が、進化したスマートポンプの機能性を利用するか又はその機能性とインタラクションすることを試みる前に、スマートポンプの物理的設計とレイアウトとディスプレイとユーザインターフェースと入力手段とエルゴノミクス等に慣れることを可能にする。
【0025】
スマートポンプによる「レート、ボリューム、ラン」ポンプのエミュレーションに加えて、収集されたデータは、最良の処置からのケアエリア(care area)又は医師の変則性又は逸脱を発見するために、分析されることが可能である。即ち、スマートポンプは、患者に対する薬剤の送達における有益な又は有害な傾向又は実施を識別するために、様々なデータ比較方式を使用するか又は提供することが可能である。さらに、病院内の特定のデータセット全体に基づいて、例えば、集約サーバは、どれほど多くの異なる薬剤プログラム又はプロファイルが特定の患者集団の投薬範囲(dosing range)を最適化するために必要とされるかを医師に示すことが可能である。したがって、潜在的に有害な「オーバーラップ(overlap)」が最少化されるか、又は、取り除かれることさえ可能である。例えば、1つのプログラム又はプロファイルが、新生児集中治療ユニットのために最適化されることが可能であり、及び、別のプログラム又はプロファイルが、手術室又は外科手術室等のために最適化されることが可能である。さらに、したがって、「シナリオ解析」が最適化され、誤って選択されてしまったかも知れないプロファイルに特定の患者が属していないということをソフトウェアが認識することを可能にする。
【0026】
上述の概要は、各々の例示された実施態様又は本明細書の主題のあらゆる実施を説明することは意図されていない。後述する図面と詳細な説明は、これらの実施態様をさらに詳細に例示する。
【0027】
添付図面に関連した様々な実施形態の以下の詳細な説明を考察することによって、実施形態がより完全に理解されるだろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】一実施形態による、薬剤の安全送達のための薬剤ライブラリの作成及びメンテナンスのためのシステムのブロック図である。
【
図2】一実施形態による、薬剤の安全送達のための薬剤ライブラリの作成及びメンテナンスのためのシステムのブロック図である。
【
図3】一実施形態による、薬剤ライブラリを作成する方法の流れ図である。
【
図4】一実施形態による、薬剤ライブラリの構築の際に必要となる可能性がある情報の一例の説明図である。
【
図5】一実施形態による、上位のハード限界及びソフト限界と、下位のハード限界及びソフト限界とを有する、薬剤ライブラリの構築の方法の実施の一例の説明図である。
【
図6】一実施形態による、新たな上位及び下位のソフト限界が設定され終わっている、
図5の例の説明図である。
【
図7】一実施形態による、薬剤ライブラリ内の各々の薬剤に関するコンプライアンスをさらに示す、
図4の例の説明図である。
【
図8】一実施形態による、薬物ライブラリとのコンプライアンスの評価のための、特定の患者に関する注入のタイムラインの一例の説明図である。
【
図9】一実施形態による、ポンプの移行の方法の流れ図である。
【
図10】一実施形態による、薬剤ライブラリの作成及びメンテナンスのためのシステムの流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
実施形態が様々な変更と代替的な形態とに適しているが、その詳細事項が図面において例示の形で示されており、及び、詳細に説明されるだろう。しかし、その意図が、説明されている実施形態に限定されず、又は、特定の実施形態によって限定されないということを理解されたい。これとは反対に、その意図が、添付されている特許請求項によって定義されている本明細書の主題の着想と範囲とに含まれている、すべての変形物と等価物と代替物とを範囲内に含むことが意図されている。
【0030】
本明細書で具体例としてさらに詳細に説明されている装置及び方法が、グラフィカルユーザインターフェースによる薬剤ライブラリと投薬安全性ソフトウェアとのスケーリング(scaling)及び構築を実現する。この装置及び方法は、さらに、投薬安全性パラメータに準拠して行われる注入に関する有益な情報と、薬剤ライブラリの自動更新又は手動更新と、薬剤ライブラリ内の個別の薬剤を選択する能力と、その送達履歴及びコンプライアンスデータ(compliance data)の閲覧とを可能にする。この装置及び方法は、さらに、基本的な注入ポンプの使用からスマートポンプ機能への直感的で比較的容易な移行を実現する。これらの特徴と機能が、添付図面の参照を伴う形で以下の説明によって例示的に説明されている。
【0031】
図1を参照すると、薬剤の安全送達のための薬剤ライブラリの作成及びメンテナンスのためのシステムが、概ね、集約サーバ102と、集約サーバ102に動作的に接続されている1つ又は複数のポンプ104とを備える。一実施形態では、集約サーバ102は、1つ又は複数の薬剤リスト106と、アグリゲータ108と、ユーザインターフェース110とを備える。
【0032】
集約サーバ102の一実施形態では、薬剤リスト106が、個別の薬剤名称と、1つ又は複数の送達濃度と、特定の薬剤に関する1つ又は複数のドースレートとを含む。実施形態では、1つ又は複数の薬剤リスト106が、各々の固有の薬剤に関する別々のリスト、又は、すべての薬剤に関する連結リストを含むことが可能である。
【0033】
アグリゲータ108は、一実施形態では、1つ又は複数のポンプ104のためのインターフェースと、1つ又は複数のポンプ104から受け取られるデータのための記憶装置とを備える。実施形態では、アグリゲータ108は、ポンプ104から注入データを受け取るように構成されている。注入データは、送出ポンプによって行われる1つ又は複数の注入に関係付けられているあらゆるデータを含むことが可能である。
図4を参照すると、注入データの例が、薬剤名称、ポンプの場所、薬剤の量、薬剤の単位(unit)、希釈剤の量、希釈剤の単位(unit)、薬剤最大レート(medication maximum rate)、ドースレート投与量単位(dose rate dosing unit)、投与タイミング、及び、制限データ(limiting data)を含む。注入データは、さらに、患者の体重、患者の年齢、患者の性別、又は、患者のリスク特徴のような他の患者特徴のような、注入に関連した患者に関する他の全般的なデータを含むことが可能である。アグリゲータ108は、さらに、
図2に関連して説明されるように、例えば集約サーバ102の接続された記憶装置内に、未処理の形態(raw form)又は合成された形態で注入データを記憶するように構成されている。
【0034】
概して、さらに詳細に後述するように、1つ又は複数のポンプ104は注入データを集約サーバ102に送る。特に、アグリゲータ108は、送信された注入データのための受信器として機能する。その次に、アグリゲータ108は、適用可能な場合に、送信された注入データと特定の薬剤リストを組み合わせるか、又は、他の形で合成するために、薬剤リスト106とインターフェースする。例えば、アグリゲータ108によって、ヘパリンに関する薬剤リスト106が、ヘパリンに関する送信された注入データと統合されるだろう。その次に、このデータは、集約サーバ102のユーザによる更なる操作又は分析のために、ユーザインターフェース110に対してインターフェースされることが可能である。一般的に、本明細書で言及されるように、薬剤リスト106と1つ又は複数のポンプ104からのデータとの組み合わせが、「薬剤ライブラリ」を生じさせる。
【0035】
ユーザインターフェース110は、概して、合成された薬剤ライブラリを閲覧し、分析し、変更するための、グラフィカルユーザインタ-フェース又は他の適切な電子表示装置を備える。例えば、ユーザインターフェース110は、集約サーバ102に動作的に接続されているコンピュータモニタ装置上で閲覧可能である。実施形態では、ユーザインターフェース110は、タブレット、スマートフォン、PDA、又は、他の適切な装置の中に一体化されることが可能である。ユーザインターフェース110とのユーザのインタラクションの例が、本明細書で説明されている。
【0036】
ポンプ104の各々は、例えば、制御可能な形で流体をそのポンプから外方に押し出して患者に送り込むためのシリンジポンプを備える。さらに、ポンプ104の一実施形態がプロセッサと記憶装置とを備えることが可能であり、一方、ポンプ104の別の実施形態は、集約サーバ102に対するポンプ104のインタラクションのために、こうしたプロセッサ及び記憶装置の機能を提供する別の装置と通信していることが可能である。実施形態では、ポンプは、治療剤、栄養剤、薬剤、抗生物質と血液凝固剤と鎮痛剤とのような薬剤、及び、他の流体を非限定的に含む薬剤又は流体の、患者に対する送達を調節するために使用される。この装置は、例えば、静脈内、皮下、動脈内、硬膜下のような、幾つかの経路のいずれかを使用して、患者の体内に薬剤又は流体を送り込むために使用されることが可能である。ポンプ104の各々は、集約サーバ102に対する通信インターフェースを備える。この通信インターフェースは任意の数の適切なプロトコルを備えることが可能であり、及び、実施形態において有線又は無線であることが可能である。ポンプ104の各々は、アグリゲータ108、集約サーバ102の他の構成要素に直接的にインターフェースすることが可能である。
【0037】
図2を参照すると、1つ又は複数の薬剤リスト106と、アグリゲータ108と、ユーザインターフェース110とが、システム200内のプロセッサ112と記憶装置114とバス116とを伴って示されている集約サーバ102によって実現されることが可能である。
【0038】
プロセッサ112は、入力としてデジタルデータを受け取る任意のプログラム可能な装置であることが可能であり、及び、命令又はアルゴリズムにしたがってその入力を処理するように構成されており、及び、結果を出力として提供する。一実施形態では、プロセッサ112は、コンピュータプログラムの命令を実行するように構成されている中央処理ユニット(CPU)であることが可能である。したがって、プロセッサ112は、基本的な数値計算動作と論理動作と入力/出力動作とを行うように構成されている。
【0039】
記憶装置114は、命令又はアルゴリズムを実行するための記憶空間を提供するだけでなく命令自体を記憶するための記憶空間も提供するために、接続されたプロセッサ112によって必要とされる揮発性記憶装置又は不揮発性記憶装置を備えることが可能である。実施形態では、揮発性記憶装置は、例えば、ランダムアクセスメモリ(RAM)、ダイナミックランダムアクセスメモリ(DRAM)、又は、スタティックランダムアクセスメモリ(SRAM)を含むことが可能である。実施形態では、不揮発性記憶装置は、例えば、リードオンリーメモリ、フラッシュメモリ、強誘電性RAM、ハードディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、磁気テープ、又は、光ディスク記憶装置を含むことが可能である。これらの実施形態が単なる具体例として示されており、本明細書の主題の範囲を限定することは意図されていないので、上述のリストは、使用可能である記憶装置のタイプを限定するものではない。
【0040】
バス116は、プロセッサ112と記憶装置114との間のデータ送信のための1つ又は複数のサブシステムを備える。したがって、バス116は、一実施形態では、プロセッサ112と記憶装置114とに動作的に接続されている。
【0041】
さらに、再び
図2を参照すると、システム200が、さらに、病院情報システム(HIS)118及びインターフェース装置120と共に図示されている。
【0042】
HIS 118は、病院の情報又は管理システムの副次的構成要素とサブシステムとのすべてを伴う、病院情報又は管理システムを備える。HIS 118は、アグリゲータ108による薬剤ライブラリへの統合のために、データを集約サーバ102に送信するように構成されることが可能である。同様に、データは、情報的な目的、報告目的、又は、患者介護目的のために、集約サーバ102からHIS 118に送信されることが可能である。こうしたデータは、上述したあらゆる種類の注入データ又は患者データであることが可能である。
【0043】
図2に示されているように、インターフェース装置120はラップトップコンピュータであるが、タブレット、スマートフォン、PDA、又は、ユーザインターフェース110の統合に関して上述した他の適切な装置であることも可能である。
【0044】
図示されているように、HIS 118とインターフェース装置120は、集約サーバ102に動作的に接続されている。この接続は、GSMネットワークプロトコル、UMTSネットワークプロトコル、CDMAネットワークプロトコル等、又は、IEEE 802.11又はWi-Fi、IEEE 802.16又はWiMAX等のような他のワイヤレスネットワークプロトコルのような、セルラー方式のネットワークを含む、任意の適切なネットワークプロトコルによって実現されることが可能である。実施形態では、この接続は、イーサネット(登録商標)標準IEEE 802.3のような有線ネットワークを経由している。実施形態では、適用可能である場合には、インターフェース装置120は、HIS 118からの入力との組合せの形で、アグリゲータ108と薬剤リスト102との集約及び合成に対するアクセスとインターフェースとによって、薬剤ライブラリの作成及び管理のために使用されることが可能である。
【0045】
図示してはいないが、別の実施形態では、HIS 118は、患者治療情報等を含む複数のHISプラットフォーム又は「データ倉庫(data warehouse)」を備えることが可能である。さらに、例えば、米国特許第6,132,416号明細書と米国特許出願公開第2006/0000480号明細書、米国特許出願公開第2006/0137696号明細書、米国特許出願公開第2010/0057488号明細書、米国特許出願公開第2011/0264462号明細書で説明されているように、患者データを収集し、選択し、特徴付けることにおいて、様々な治療及び投薬方式が有利に使用されることが可能である。
【0046】
実施形態では、
図3を参照すると、薬剤ライブラリの構築のための方法300が示されている。302では、例えば薬剤リスト106のような薬剤リストが受け取られる。実施形態では、薬剤リスト106は、例えば、HIS 118、又は、インターフェース装置120、又は、ユーザインターフェース110によって、提供されることが可能である。304では、集約サーバ102が、1つ又は複数のポンプ104から注入データ及び/又は動作データを受け取る。実施形態では、アグリゲータ108が注入データ及び/又は動作データを受け取る。このデータは、プロセッサ112の動作とバス116の動作とによって記憶装置114内に記憶されることが可能である。306では、上述したように、薬剤リスト106との組合せの形で、アグリゲータ108が、薬剤リストと、ポンプ104から受け取られた注入データとを集約して合成する。したがって、薬剤ライブラリが作成される。その次に、この薬剤ライブラリは、プロセッサ112とバス116の動作によって、記憶装置114内に記憶されることが可能であり、又は、アグリゲータ108の今後の合成によって動的に合成されることが可能である。その次に、薬剤ライブラリは、任意のポンプ104、又は、同様のデータを使用する他の医療装置に実装されることが可能である。実施形態では、ポンプ104のデータ収集と薬剤ライブラリの実装は、同一のポンプ上である。他の実施形態では、ポンプ104のデータ収集と薬剤ライブラリの実装は、互いに異なるポンプ上である。
【0047】
図4は、LHL、LSL、USL、UHLを含む薬剤ライブラリの構築に使用されることが可能な幾つかの情報の例を示す。薬剤ライブラリを構築することは、こうした安全情報を使用するポンプの実装の前に、長時間の調査及びデータ入力時間を必要とすることが多い。これとは対照的に、上述した単純な薬剤リスト、例えば、薬剤リスト106は、実施形態において、薬剤名称、濃度、及び、ドースレートのような、比較的により少ない情報を含むことが可能である。例えば、薬剤リストは、「データ収集」ポンプであるように構成されているポンプと組み合わされる時に、医療技術者が現行の慣行に基づいて薬剤ライブラリを構築することを可能にする。
【0048】
図5は、グラフィカルユーザインターフェース、又は、ユーザインターフェース110のような他の適用可能な電子表示及び入力装置(本文書全体において、集合的に[GUI」と呼称される)によって、上位ハード及びソフト限界と下位ハード及びソフト限界とを伴う薬剤ライブラリを構築する方法の実施の例を示す。
図5の右側の挿入図では、「ヘパリンの投与量履歴」のタイトルが付いたGUIのスクリーンショットのバーチャートの一例が示されている。このバーチャートの左端部分と右端部分における垂直の点線を参照すると、チャート化された注入がLSL及びUSLの組の範囲内にあるということが視覚的に明らかである。一実施形態では、医師がこの薬剤の投与をさらに制限することを望む場合には、例えば、LSLバーとUSLバーとが、
図6に示されているGUI上でこうした新たな位置にタッチスクリーン方式によってGUI上で「掴まれてドラッグされる(grabbed and dragged)」ことが可能である。タッチスクリーン装置の例が、概して、標題「マルチポイントタッチスクリーン(Multipoint Touchscreen)」の米国特許出願公開第2006/0097991号明細書と、標題「タッチ又はモーション入力に応答するグラフィカルオブジェクト(Graphical Objects that Respond to Touch or Motion Input)」の米国特許出願公開第2011/0193788号明細書とに開示されており、これらは本明細書にその全体において引例として援用されている。タッチスクリーン装置を使用する新規性があり且つ発明的である注入ポンプ技術の例が、標題「ポンプシミュレーション装置(Pump Simulation Apparatus)」の米国特許第5,485,408号明細書と、標題「医療用注入ポンプのための安全特徴(Security Features for a Medical Infusion Pump)」の米国特許出願公開第2009/0270810号明細書に開示されており、これらは本明細書にその全体において引例として援用されている。他の実施形態では、例えば、スライドバー、テキストボックス、ラジオボタン(radio button)、キー入力(keyed entry)、又は、任意の他の適切なインターフェースの具体例の使用による、上位ハード及びソフト限界と下位ハード及びソフト限界の更新のための他のグラフィカルユーザインターフェース又は非グラフィカルユーザインターフェースの実装が考察されている。
【0049】
その次に、実施形態において、GUIとその関連のハードウェア及びソフトウェアと、例えば、
図1-2を参照して、集約サーバ102とポンプ104とが、応答的に、データを再分析し、及び、
図5にチャート化されている注入が
図6にチャート化されている新たなLSL及びUSLにどのように比較されるかをそのチャート上に表示するように構成され且つ備えられている。この例では、新たなLSLが99.67%のコンプライアンス(compliance)に結果し、及び、新たなUSLが96.84%のコンプライアンスに結果し、及び、すべてのヘパリン注入の3.49%の合計が、これらの設定値に基づいたソフト限界の範囲から外れる。この分析の完了時に、新たなソフト限界が自動的に又は手動で薬剤ライブラリに入力されて、例えば、上述したように動作的に接続されている有線接続又は無線接続を経由して、関連した注入ポンプにアップロードされることが可能である。こうした方法で注入限界を調節することが注入データの比較的に迅速で且つ直感的である呈示を結果的に生じさせるということが、特に理解され認識されなければならない。このことは、一方では、薬剤ライブラリ管理者が現行の最適な又は所望の慣行に基づいて限界を迅速且つ容易に分析して変更することを可能にする。
【0050】
さらに、一実施形態では、コンプライアンスターゲット(compliance target)が、デフォルトとして割り当てられることが可能である。例えば、薬剤ライブラリを構築する時に、コンプライアンスに関するデフォルト値が98%に設定されることが可能である。このデフォルト値に基づいて、LSLとUSLとがソフトウェアによって示唆される。
【0051】
さらに、
図7を参照すると、薬剤ライブラリのコンプライアンスが、チャートの右端の縦列に示されているように直感的に表示されることが可能であり、及び、コンプライアンスは薬剤ライブラリ内の各々の薬剤に関してリストされている。実施形態では、コンプライアンス値又はコンプライアンスパーセンテージが、特定のUSL及びLSLに対する相対的な一致を表示するために、赤色、緑色、又は、他の任意の色、又は、他の強調表示方式で強調表示されることが可能である。例えば、薬剤ライブラリ内の各々の特定の薬剤のコンプライアンスをユーザに対してより適切に強調表示するために、98.2%のコンプライアンス値が緑色で示され、一方、85.0%のコンプライアンス値が赤色で示されることが可能である。したがって、例えば、薬剤設定値の一覧が、その設定値に比較した、個別の注入に関するコンプライアンスデータと共に提供されるだろう。さらに詳細に述べると、ユーザは、薬剤ライブラリ内の特定の薬剤を「クリックオン(click on)」し、「タッチオン(touch on)」し、又は、他の形で選択し、その次に、これに応答する形で、(例えば、
図6に示されているような)その特定の薬剤に関する送達履歴及びコンプライアンスデータが、GUIに通信されてそのGUI上で表示される。
【0052】
図7を参照すると、上述した基本的な又は単純な「レート、ボリューム、ラン」注入に関する情報が、さらに、薬剤ライブラリ内(例えば、
図7の下端の横列)に含まれることが可能である。実施形態では、下端の横列は、薬剤ライブラリに関する限界及び/又はコンプライアンスを使用する注入からの「レート、ボリューム、ラン」注入を表示するために、着色又は他の標識によって強調表示されることが可能である。こうした投薬安全装置及び方法を使用する保健施設の目標は、患者の安全性を確実なものにするための100%のコンプライアンス(即ち、ゼロの基本的注入)であるだろう。共に提示されるコンプライアンス注入データと非コンプライアンス(即ち、基本)注入データの両方を有することによって、医師及び薬剤ライブラリ管理者は、注入安全性限界に関する総合的なコンプライアンスを効果的に且つ容易に監視することが可能である。
【0053】
次に
図8を参照すると、薬剤ライブラリに関するコンプライアンスの評価のための、特定の患者に関する注入のGUIタイムラインの一例が示されている。緊急時又は緊急を要する状況のような特定の場合には、例えば、特定の人命救助用の薬剤の投与なしには患者が切迫した危険状態にある時のように、医師は、通常のパラメータの範囲外の、又は、他の形での許容可能なパラメータの範囲外の薬剤を投与しなければならない。こうした状況では、医師は、典型的には、基本的な「レート、ボリューム、ラン」注入の投与、又は、さらには、大量瞬時投与量の迅速な手作業の注入を用いるだろう。
図8の例に示されているように、GUIは、「ポンプ履歴」ログのようなイベントを表示することが可能であり、これによって、薬剤ライブラリの安全限界に対する非コンプライアンスの潜在的な発生の認識を増大させることが可能である。実施形態では、「レート、ボリューム、ラン」注入は、ユーザがその注入を限界及び/又は薬剤ライブラリに関するコンプライアンスを使用する注入から区別することを容易に可能にするために、赤色、緑色、又は、他の任意の色、又は、他の強調表示方式で強調表示されることが可能である。この例では、ポンプイベントがタイムライン上にプロットされる。ヘパリン注入が12/31/2011の8:17に開始され、11:38に同一のポンプが基本注入モードで始動させられ、14:21にそれがヘパリン注入に戻され、及び、18:50にレートが700単位/時間に調節された。
【0054】
本明細書の主題の個別的な実施形態に関わりなく、本明細書で具体例として説明されているか又は別の形で想定されている投薬安全装置及び方法が、使用が容易であり、且つ、投薬安全性ソフトウェア及び薬剤ライブラリ等のスケーリングと構築を容易化する、データ視覚化ツールを提供するということが、特に認識され理解されなければならない。さらに、こうした情報が上述した現行の診療データから効率的に且つ容易に導き出されることが可能であるということが、特に認識され理解されなければならない。
【0055】
一実施形態では、投薬安全装置及び方法が、「レート、ボリューム、ラン」ポンプからスマートポンプへの直感的な移行を実現するように構成されることが可能である。このポンプの構成は、単純な「レート、ボリューム、ラン」ポンプ、データ収集ポンプ、又は、スマートポンプであろうと、患者保護を強化すると同時に薬剤ライブラリの投与及び安全限界の管理をより容易化し且つより効率的にするために、保健施設によって調整されることが可能である。
【0056】
例えば、
図9を参照すると、ポンプ移行の方法400が、「レート、ボリューム、ラン」ポンプとしての初期動作402と、データ収集ポンプとしての中間的動作404と、薬剤ライブラリインタラクションを伴うスマートポンプとしての最終的動作406とを含む。
【0057】
幾つかの事例では、移行プランが、医師のトレーニングと、スマートポンプと薬剤ライブラリの実施とのための支援のためのものである。例えば、保健施設が、単純な「レート、ボリューム、ラン」ポンプを有するが、スマートポンプへの移行を求めている可能性がある。「レート、ボリューム、ラン」ポンプとしての動作402に関しては、実施形態がスマートポンプによる「レート、ボリューム、ラン」ポンプのエミュレーションを提供することが可能である。この特徴は、その保健施設内の医師が、進歩したスマートポンプ機能性の利用又はこの機能性とのインタラクトを試みる前に、スマートポンプの物理的設計、レイアウト、表示装置、ユーザインターフェース、入力手段、及び、エルゴノミクス等に慣れることを可能にする。所望の導入期間が完了した後に、その次に、保健施設の注入ポンプ管理者又はマネージャが、例えば、医師がこうした注入パラメータの入力及び使用にさらに容易に慣れることを可能にするために、スマートポンプ動作への移行において、薬剤の決定及び選択、薬剤リストからの薬剤濃度、及び、患者の体重を必要とするように、ポンプの動作パラメータを調節することが可能である。
【0058】
例えば、こうしたエミュレーションは、データ収集ポンプの動作中404におけるデータ収集ポンプのエミュレーションとの組合せの形であることが可能であり、及び、収集されているデータは、自動的に薬剤ライブラリの構築のために使用される。一実施形態では、データ収集ポンプの動作中404に、データ収集動作中の中間的な段階が想定される。例えば、データ収集ポンプ404は、最初に、薬剤リストを組み込まれる。その次に、データ収集ポンプ404は、アグリゲータ108による集約のために、薬剤リスト上の薬剤に関係した注入データを集約サーバ102に送信することが可能である。
【0059】
「レート、ボリューム、ラン」ポンプからスマートポンプ406への移行プロセスの最終段階として、上位及び下位のハード限界及びソフト限界が使用されることが可能であり、及び、上述したように、コンプライアンスがログ記録されて表示されることが可能である。一実施態様では、薬剤ライブラリとのインタラクションを伴うスマートポンプ406が、例えばポンプ104にダウンロードされた薬剤ライブラリと共に、又は、集約サーバ102の記憶装置114上に記憶されている薬剤ライブラリにインタラクションすることによって、ポンプを使用することを含むことが可能である。
【0060】
しかし、データ収集ポンプの中間的なエミュレーションなしに、例えば「レート、ボリューム、ラン」ポンプからスマートポンプへ直ちに移行することのような、任意の所望の移行方式を実施することを選択することが可能であり、又は、任意の選択された個別の機能又は機能グループによって任意の順序でエミュレーションが行われることが可能であるということが理解され認識されなければならない。さらに、その特定のモードが、「レート、ボリューム、ラン」ポンプ302としての動作、データ収集ポンプ304としての中間的動作、又は、薬剤ライブラリインタラクションを伴うスマートポンプ306としての最終的動作のいずれかの中から選択されることが可能である。
【0061】
特定の実施形態とは無関係に、具体例によって開示されているか又は別の形で本明細書において想定されている投薬安全装置及び方法が、ソフト限界のような薬剤ライブラリのパラメータを調節するために直感的な視覚化が使用されるということを特徴とすることが可能であるということが、認識され理解されなければならない。さらに、この装置及び方法は、基本的な注入ポンプの使用からスマートポンプへの使用の移行が、薬剤ライブラリの作成のための多量の作業なしに、又は、新たな装置及び方法の実施に伴って生じることが多い不確実性又は効率の欠如なしに、医師によって行われることが可能であるということによって特徴付けられることが可能である。
【0062】
図10を参照すると、本明細書の主題の実施形態による薬剤ライブラリの作成及びメンテナンスのためのシステムの流れ図が示されている。例えば
図9の「レート、ボリューム、ラン」ポンプ402の動作のような、最も基本的なレート-ボリューム-ラン動作の場合の図示に関しては、ステップ502とステップ504によって方法が示され、この場合に、レート及びボリュームはステップ502で設定され、及び、ポンプが504で動作させられる。「レート、ボリューム、ラン」ポンプ402のこの実施形態の具体例では、506aにおいて、図示されているようにユーザのワークフローとの組合せにおいて、薬剤リストが使用可能であるかどうかを判定するためにチェックが行われる。レート-ボリューム-ラン動作においては、薬剤リストは使用可能ではなく、及び、したがって、動作が、504におけるポンプの動作に進む。
【0063】
データ収集ポンプの実施形態、例えば、データ収集ポンプ404の実施形態では、データが、そのポンプの諸側面に関するインタラクションによって、集約サーバ102による集約のために収集されることが可能である。506aでは、薬剤リストが使用可能である場合に、508aにおいて、薬剤名称が薬剤リストから選択される。その次に、そのデータが、ポンプ装置によって集約サーバ102に送信される。
【0064】
506bでは、濃度が使用可能であるかどうかを判定するためにチェックが行われる。濃度が使用可能ではない場合には、その動作が、504におけるポンプの作動に再び進む。しかし、濃度が使用可能である場合には、薬剤濃度が508bにおいて薬剤リストから選択される。その次に、そのデータがポンプ装置によって集約サーバ102に送信される。
【0065】
506cでは、例えば体重に基づく注入に関して、患者パラメータが使用可能であるかどうかを判定するためにチェックが行われる。患者パラメータに関する動作が使用可能ではない場合には、この動作が再び、504におけるポンプの作動に進む。しかし、患者パラメータによる動作が使用可能である場合は、508cにおいて患者体重が入力される。その次に、そのデータがポンプ装置によって集約サーバ102に送信される。
【0066】
506dでは、年齢に基づく患者パラメータが使用可能であるかどうかを判定するチェックが行われる。患者の年齢に関する動作が使用可能ではない場合には、この動作が、再び、504におけるポンプの作動に進む。しかし、患者年齢による動作が使用可能である場合は、508dにおいて患者年齢が入力される。その次に、そのデータがポンプ装置によって集約サーバ102に送信される。
【0067】
506eでは、性別に基づく患者パラメータが使用可能であるかどうかを判定するチェックが行われる。患者の性別に関する動作が使用可能ではない場合には、この動作が、再び、504におけるポンプの作動に進む。しかし、患者性別に関する動作が使用可能である場合は、508eにおいて患者年齢が入力される。その次に、そのデータがポンプ装置によって集約サーバ102に送信される。データは、上述の決定点(decision point)の直後に集約サーバ102に連続的に送信されることが可能であり、又は、処理が完了してポンプが動作している後にバッチ単位で送信されることが可能である。したがって、データ収集ポンプ404の実施形態は、上述のチェックとデータ送信のどちらか一方又は組合せと、任意の他のデータ収集とを含むことが可能である。
【0068】
スマートポンプ406の動作に関して、一実施形態においては、集約サーバ102は、薬剤の使用量、濃度による薬剤使用量、薬剤投与、年齢に関する薬剤投与、及び/又は、年齢及び性別による薬剤投与、又は、他の任意の適切な薬剤又は患者データ合成を計算するように構成されている。一実施形態では、内側のデータラインで示されているように、未加工データ又は集約データが集約サーバ102からポンプに戻されることが可能である。
【0069】
一実施形態では、510を参照すると、薬剤の送達を改善するために、
図4から
図7において説明したように、ユーザインターフェース110との組合せの形で、集約データが、集約サーバ102によって表示及び分析されることが可能である。上述したように、実施形態が、薬剤ライブラリの限界及び内容の更新を含む。512において、更新された薬剤ライブラリが必要かどうかを判定するために、集約サーバ102によって、又は、例えばポンプ104上のフラグによって、チェックが行われることが可能である。その後で、一実施形態では、薬剤ライブラリの更新が、514においてポンプに送信されることが可能である。
【0070】
上述したように、HIS 118は、例えば、
図10に示されているように、集約サーバ102のデータ分析の中に統合されることが可能である。例えば、514でデータをポンプ104に送信する時に、HIS 118は同様に更新されることが可能である。同様に、HIS 118は、薬剤ライブラリ分析にデータを含めるためにそのデータを集約サーバ102に送信することが可能である。
【0071】
特定の構成要素又は動作形態には無関係に(本明細書で具体例によって説明されているか又は別の形で想定される)投薬安全装置及び方法が、有利な形で、患者に対する薬剤送達における精度を向上させ、及び、したがって安全性と効率とを増大させることが可能である。
【0072】
投薬安全装置及び方法を、添付図面と仕様とを参照して詳細に示し説明してきたが、しかし、当然であるが、この投薬安全装置及び方法に対する他の変更が可能であり、及び、こうした変更のすべてが、本明細書で説明されている新規性があり且つ発明的である装置及び方法の真の着想及び範囲に含まれることが意図されているということが理解されるべきである。したがって、様々な特徴の構成と設計とが、個別の実施形態に応じて変更又は改変されることが可能である。例えば、本明細書において具体例として説明されているか又は別の形で想定されている様々な方法段階の順序が、個別の実施形態において必要とされるように再順序付けされることが可能である。
【0073】
本明細書の主題を「シリンジポンプ」に関して説明してきたが、この主題は、さらに、例えば、特にいわゆる「大体積ポンプ」及び「携帯型」ポンプのような、実質的にあらゆる注入送達装置にも適用可能だろうということを理解し認識されたい。
【0074】
さらに、本明細書の図面の寸法決定とスケーリングとが、例示的な具体例の詳細部分を明瞭に示すために選択されているということも理解されたい。したがって、幾つかの実施形態では、様々な特徴要素の間の間隔とその方向配置とが、図示されているものから変化可能であり、及び、視覚的に異なるものであるということがあり得る。いずれにしても、寸法決定とスケーリングは、薬剤安全装置及び方法の様々な実施形態において著しく変化する可能性がある。
【0075】
さらに、一般的に、具体例によって説明されているか、又は、本明細書で想定されている新規性があり且つ発明的である投薬安全装置及び方法を提供するために、あらゆる適切な代替案が使用されることがあるということを理解されたい。
【0076】
したがって、添付されている特許請求項によって定義されることがある薬剤安全装置及び方法の真の着想と範囲とから逸脱することなしに、形態及び詳細におけるこれらの変化又は変更と他の変化と変更とが加えられることが可能である。
【0077】
当業者は、本明細書の主題が、上述したすべての個別的な実施形態に示されている特徴よりも少ない特徴を含むことがあるということを理解するだろう。本明細書に説明されている実施形態が、本明細書の主題の様々な特徴が組み合わされることがある仕方の網羅的な提示であることは意図されていない。したがって、実施形態は相互的に排他的な特徴の組合せではなく、むしろ、当業者には理解されるように、本明細書の主題は、様々な個別的な実施形態から選択される様々な個別的特徴の組合せを含むだろう。
【0078】
上記文献の引例としての援用が、本明細書の明示的な開示とは反対である主題が含まれないように限定されている。上記文献の引例としての援用が、さらに、上記文献に含まれている特許態様が本明細書に引例として援用されていないように限定されている。上記文献の引例としての援用は、その文献に示されているあらゆる定義が、本明細書に明瞭的に含まれていない限りは、本明細書において引例として援用されないように、さらに限定されている。
なお、本発明の実施形態の態様として、以下に示すものがある。
[態様1]
データ収集注入ポンプを移行させる方法であって、
前記データ収集注入ポンプによって、実際の注入に関する情報を含む動作データを収集するように、前記データ収集注入ポンプをデータ収集モードで動作させることと、
収集された前記動作データを薬剤リストと統合して薬剤ライブラリを作成することと、
更新された下位のソフト限界及び上位のソフト限界を用いて前記薬剤ライブラリを更新して、受け取った動作データのうちの所望の割合が前記更新された下位のソフト限界及び上位のソフト限界に入るように、コンプライアンスターゲットを確立することと、
前記更新された下位のソフト限界及び上位のソフト限界を含む前記薬剤ライブラリを、前記データ収集注入ポンプにアップロードすることによって、前記データ収集注入ポンプに対して、フィードバックすることと、
スマートポンプモードで前記データ収集注入ポンプを動作させること、
を含む、
データ収集注入ポンプを移行させる方法。
[態様2]
前記データ収集注入ポンプをデータ収集モードで動作させることは、レート-ボリューム-ランモードの1つ又は複数の動作パラメータを記録することを含む、
態様1に記載のデータ収集注入ポンプを移行させる方法。
[態様3]
前記スマートポンプモードで前記データ収集注入ポンプを動作させることは、前記薬剤ライブラリに従って前記データ収集注入ポンプを動作させることを含む、
態様1に記載のデータ収集注入ポンプを移行させる方法。
[態様4]
前記薬剤ライブラリをアップロードすることによって、前記データ収集注入ポンプに対して、フィードバックすることは、前記データ収集注入ポンプからの統合された動作データを含む、
態様1に記載のデータ収集注入ポンプを移行させる方法。
[態様5]
前記薬剤ライブラリを更新することは、自動的に行われる、
態様1に記載のデータ収集注入ポンプを移行させる方法。
[態様6]
前記所望の割合は、少なくとも98%である、
態様1に記載のデータ収集注入ポンプを移行させる方法。
[態様7]
注入ポンプであって、
ポンプ圧送機構と、
レート-ボリューム-ランモードで前記注入ポンプを動作させ、
前記注入ポンプによって、実際の注入に関する情報を含む動作データを収集するように、前記注入ポンプをデータ収集モードで動作させ、
収集された前記動作データを薬剤リストと統合して薬剤ライブラリを作成し、
コンプライアンスターゲットを確立するように、下位のソフト限界及び上位のソフト限界を決定し、
収集された前記動作データのうちの所望の割合が、前記決定された下位のソフト限界及び上位のソフト限界に入るようにし、
前記決定された下位のソフト限界及び上位のソフト限界を含む前記薬剤ライブラリを、前記注入ポンプにアップロードすることによって、前記注入ポンプに対して、フィードバックし、
前記薬剤ライブラリに従って前記注入ポンプを動作させる、
ように構成されている、プロセッサと、
を備える、注入ポンプ。
[態様8]
前記プロセッサは、更に、継続的品質改善イベントとして、前記下位のソフト限界及び前記上位のソフト限界の範囲外にある、あらゆる受け取った注入データをログ記録する、
ように構成されている、
態様7に記載の注入ポンプ。
[態様9]
前記プロセッサは、更に、ユーザが、変更された下位のソフト限界及び上位のソフト限界の範囲内に含まれる受け取った動作データの割合に対する、前記変更された下位のソフト限界及び上位のソフト限界の変化の効果を評価するために、前記下位のソフト限界及び上位のソフト限界を変更することを可能にする、
ように構成されている、
態様7に記載の注入ポンプ。
[態様10]
前記プロセッサは、更に、特定の患者集団に関して受け取った動作データにおける有害な傾向を識別することによって、前記特定の患者集団の投薬範囲を最適化する、
ように構成されている、
態様7に記載の注入ポンプ。
[態様11]
前記所望の割合は、少なくとも98%である、
態様7に記載の注入ポンプ。