(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】機械部品
(51)【国際特許分類】
C22C 38/00 20060101AFI20240116BHJP
C22C 38/18 20060101ALI20240116BHJP
C21D 1/06 20060101ALI20240116BHJP
F16C 33/62 20060101ALI20240116BHJP
F16C 33/64 20060101ALI20240116BHJP
C21D 1/18 20060101ALN20240116BHJP
C21D 9/40 20060101ALN20240116BHJP
【FI】
C22C38/00 301N
C22C38/18
C21D1/06 A
F16C33/62
F16C33/64
C21D1/18 Y
C21D9/40 A
(21)【出願番号】P 2022053519
(22)【出願日】2022-03-29
【審査請求日】2023-07-13
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】NTN株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】水田 浩平
(72)【発明者】
【氏名】藤村 直輝
(72)【発明者】
【氏名】大木 力
【審査官】川村 裕二
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-322017(JP,A)
【文献】特開2008-196033(JP,A)
【文献】特開2022-170860(JP,A)
【文献】特開2023-047716(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C22C 38/00-38/60
C21D 1/00-11/00
F16C 33/62
F16C 33/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
他の部品に接触する表面を有し、かつ焼入れ及び焼戻しが行われた鋼製の機械部品であって、
前記表面に形成されている浸窒層を備え、
前記鋼は、0.95質量パーセント以上1.10質量パーセント以下の炭素と、0.30質量パーセント未満の珪素と、0.50質量パーセント未満のマンガンと、0.0080質量パーセント未満の硫黄と、1.3質量パーセント以上1.6質量パーセント以下のクロムとを含有し、かつ残部が鉄及び不可避不純物からなり、
前記表面における平均窒素濃度は、0.10質量パーセント以上になっており、
前記表面における硬さは、850Hv以上になっており、
前記表面における残留オーステナイト量は、20体積パーセント以下になっている、機械部品。
【請求項2】
前記表面に対するX線回折により得られるマルテンサイトのX線プロファイルにおける半値幅は、7.2°以上8.0°以下であり、
前記表面に対するX線回折により得られるオーステナイトのX線プロファイルにおける{220}面を示すピーク位置は、128°以上であ
り、
前記表面に対するX線回折は、波長が2.29093×10
-10
mのCr-Kα線を用いて行われる、請求項1に記載の機械部品。
【請求項3】
前記表面におけるマルテンサイトの転位密度は、1.1×10
15m
-2以上であり、
前記表面におけるオーステナイトの転位密度は、2.5×10
14m
-2以上である、請求項1に記載の機械部品。
【請求項4】
前記表面における残留オーステナイト量、前記表面における平均窒素濃度及び前記表面におけるオーステナイトの転位密度をそれぞれA(単位:体積パーセント)、B(単位:質量パーセント)及びC(単位:m
-2)とした際、4.332+0.005×A-0.580×B-0.295×LogC≦0との関係が満たされている、請求項1に記載の機械部品。
【請求項5】
前記表面における残留オーステナイト量、前記表面における平均窒素濃度及び前記表面におけるマルテンサイトの転位密度をそれぞれA(単位:体積パーセント)、B(単位:質量パーセント)及びD(単位:m
-2)とした際に、-47.73-0.025×A-2.141×B+3.155×LogD≧0との関係が満たされている、請求項1に記載の機械部品。
【請求項6】
前記表面に4.5GPaの最大接触面圧が加わった際に前記表面に形成される圧痕の深さは、0.2μm以下である、請求項1に記載の機械部品。
【請求項7】
前記表面における静的負荷容量は、6.0GPa以上である、請求項1に記載の機械部品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機械部品に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特開2013-119930号公報(特許文献1)には、軸受部品が記載されている。特許文献1に記載の軸受部品は、表面において、他の部品と接触する。特許文献1に記載の軸受部品は、焼入れ及び焼戻しの行われた鋼製である。鋼は、0.90質量パーセント以上1.05質量パーセント以下の炭素と、0.15質量パーセント以上0.35質量パーセント以下の珪素と、0.01質量パーセント以上0.50質量パーセント以下のマンガンと、1.30質量パーセント以上1.65質量パーセント以下のクロムとを含有し、かつ残部が鉄及び不可避不純物からなる。
【0003】
特許文献1に記載の軸受部品では、表面に対して浸窒処理が行われており、表面における窒素濃度が0.25質量パーセント以上になっている。特許文献1に記載の軸受部品では、表面における残留オーステナイト量が、6体積パーセント以上12体積パーセント以下である。特許文献1に記載の軸受部品では、高温で焼戻しが行われることにより、表面における静的負荷容量が改善されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電気自動車(BEV)に搭載されるモータ、ギアボックス、デファレンシャル等には、軸受が用いられている。また、プラグインハイブリッド自動車(PHV)、ハイブリッド自動車(HV)やエンジン自動車に搭載される電動VTC(可変バルブ機構)、電動コンプレッサ、トランスミッション、アクスル等にも、軸受が用いられている。これらの用途において軸受の静的負荷容量が向上されると、軸受の小型化ひいては周辺の機械部品の小型化が可能となる。
【0006】
燃料電池車(FCV)や水素ステーション等の水素環境下で使用される水素利用機器に搭載される軸受でも、静的負荷容量が向上されることにより軸受の小型化が可能となり、水素利用機器の効率が向上する可能性がある。しかしながら、特許文献1に記載の軸受部品では、表面における静的負荷容量に改善の余地がある。
【0007】
本発明は、上記のような従来技術の問題点に鑑みてなされたものである。より具体的には、本発明は、表面における静的負荷容量が改善された機械部品を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の機械部品は、表面を有し、かつ焼入れ及び焼戻しが行われた鋼製である。機械部品は、表面に形成されている浸窒層を備えている。鋼は、0.95質量パーセント以上1.10質量パーセント以下の炭素と、0.30質量パーセント未満の珪素と、0.50質量パーセント未満のマンガンと、0.0080質量パーセント未満の硫黄と、1.3質量パーセント以上1.6質量パーセント以下のクロムとを含有し、かつ残部が鉄及び不可避不純物からなる。表面における平均窒素濃度は、0.10質量パーセント以上になっている。表面における硬さは、850Hv以上になっている。表面における残留オーステナイト量は、20体積パーセント以下になっている。
【0009】
上記の機械部品では、表面に対するX線回折により得られるマルテンサイトのX線プロファイルにおける半値幅が、7.2°以上8.0°以下であってもよい。表面に対するX線回折により得られるオーステナイトのX線プロファイルにおける{220}面を示すピーク位置は、128°以上であってもよい。
【0010】
上記の機械部品では、表面におけるマルテンサイトの転位密度が1.1×1015m-2以上であってもよい。表面におけるオーステナイトの転位密度は、2.5×1014m-2以上であってもよい。
【0011】
上記の機械部品では、表面における残留オーステナイト量、表面における平均窒素濃度及び表面におけるオーステナイトの転位密度をそれぞれA(単位:体積パーセント)、B(単位:質量パーセント)及びC(単位:m-2)とした際、4.332+0.005×A-0.580×B-0.295×LogC≦0との関係が満たされていてもよい。
【0012】
上記の機械部品では、表面における残留オーステナイト量、表面における平均窒素濃度及び表面におけるマルテンサイトの転位密度をそれぞれA(単位:体積パーセント)、B(単位:質量パーセント)及びD(単位:m-2)とした際、-47.73-0.025×A-2.141×B+3.155×LogD≧0との関係が満たされていてもよい。
【0013】
上記の機械部品では、表面に4.5GPaの最大接触面圧が加わった際に表面に形成される圧痕の深さが、0.2μm以下であってもよい。上記の機械部品では、表面における静的負荷容量が、6.0GPa以上であってもよい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の機械部品によると、表面における静的負荷容量を改善可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図3】サンプル1からサンプル6の表面における最大接触面圧と圧痕深さをセラミック球の直径で除した値との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態の詳細を、図面を参照しながら説明する。以下の図面では、同一又は相当する部分に同一の参照符号を付し、重複する説明は繰り返さないものとする。
【0017】
実施形態に係る機械部品は、例えば、転がり軸受の軌道輪である。実施形態に係る機械部品は、転がり軸受の転動体、シャフト、ボールねじ等の摺動部材であってもよい。実施形態に係る機械部品はこれらに限られるものではないが、以下においては、深溝玉軸受の内輪10を実施形態に係る機械部品の例として説明する。
【0018】
(内輪10の構成)
以下に、内輪10の構成を説明する。
【0019】
図1は、内輪10の断面図である。
図1に示されるように、内輪10は、表面を有している。より具体的には、内輪10は、表面として、幅面10aと、幅面10bと、内周面10cと、外周面10dとを有している。内輪10の中心軸を、中心軸Aとする。中心軸Aに沿う方向を、軸方向とする。軸方向に直交し、かつ中心軸Aを通る方向を、径方向とする。中心軸Aを中心とする円周に沿う方向を、周方向とする。
【0020】
幅面10a及び幅面10bは、軸方向における内輪10の端面を構成している。幅面10bは、幅面10aの反対面である。内周面10cは、周方向に沿って延在している。内周面10cは、中心軸A側を向いている。内周面10cの軸方向における一方端及び他方端は、それぞれ、幅面10a及び幅面10bに連なっている。内輪10は、内周面10cにおいて、軸(図示せず)に嵌め合わされている。
【0021】
外周面10dは、周方向に沿って延在している。外周面10dは、中心軸Aとは反対側を向いている。つまり、外周面10dは、径方向における内周面10cの反対面である。外周面10dの軸方向における一方端及び他方端は、それぞれ、幅面10a及び幅面10bに連なっている。
【0022】
外周面10dは、軌道面10daを有している。軌道面10daは、転動体と接触する外周面10dの部分である。軌道面10daは、軸方向における外周面10dの中央にある。軌道面10daは、周方向に沿って延在している。外周面10dは、軌道面10daにおいて、内周面10c側に窪んでいる。周方向に直交する断面視において、軌道面10daは、例えば部分円弧状である。
【0023】
内輪10は、焼入れ及び焼戻しの行われた鋼製である。すなわち、内輪10を構成している鋼は、マルテンサイトと、残留オーステナイトとを含んでいる。内輪10の表面(幅面10a、幅面10b、内周面10c及び外周面10d)に対しては、浸窒処理が行われている。つまり、内輪10の表面には、浸窒層11が形成されている。なお、窒素は、浸窒層11にある鋼中に固溶しており、浸窒層11中において窒化物を形成していない。
【0024】
内輪10を構成している鋼は、0.95質量パーセント以上1.10質量パーセント以下の炭素と、0.30質量パーセント未満の珪素と、0.50質量パーセント未満のマンガンと、0.0080質量パーセント未満の硫黄と、1.3質量パーセント以上1.6質量パーセント以下のクロムとを含有している。内輪10を構成している鋼の残部は、鉄及び不可避不純物からなる。なお、内輪10を構成している鋼は、珪素、マンガン及び硫黄を含有していなくてもよい。
【0025】
内輪10を構成している鋼の具体例としては、軸受鋼が挙げられる。軸受鋼の具体例としては、JIS規格に規定されているSUJ2、ASTM規格に規定されている52100、ISO規格に規定されている100Cr6及びGB規格に規定されているGCr15等が挙げられる。
【0026】
内輪10の表面における平均窒素濃度は、0.10質量パーセント以上である。内輪10の表面における平均窒素濃度は、EPMA(Electron Probe Micro Analyzer:電子線マイクロアナライザ)を用いた線分析により測定される。なお、この際、窒素濃度が明らかな標準試料を用いて、検量線が作成される。
【0027】
内輪10の表面における残留オーステナイト量は、20体積パーセント以下である。内輪10の表面における残留オーステナイト量は、X線回折法により測定される。この測定は、Cr管球型X線回折装置を用いて行われる。Cr管球型X線回折装置では、Cr-Kα線の波長が2.29093×10-10mとされ、管電圧が30kVとされ、管電流が10mAとされ、コリメータサイズが2mm×2mmとされる。
【0028】
内輪10の表面における硬さは、850Hv以上である。内輪10の表面における硬さは、JIS規格に定められているビッカース硬さ試験法にしたがって測定される。内輪10の表面における硬さが測定される際の荷重は、300gとされる。内輪10の表面における硬さは、異なる3点以上において測定され、それらの測定値の平均値が用いられる。
【0029】
内輪10の表面に対するX線回折により得られるマルテンサイトのX線プロファイルにおける半値幅は、好ましくは、7.2°以上8.0°以下である。内輪10の表面に対するX線回折により得られるオーステナイトのX線プロファイルにおける{220}面を示すピークの位置(2θ)は、好ましくは、128°以上である。内輪10の表面におけるオーステナイトの格子面間隔は、好ましくは、1.275×10-10m以下である。
【0030】
内輪10の表面に対するX線回折により得られるマルテンサイトのX線プロファイル及びオーステナイトのX線プロファイルは、Cr管球型X線回折装置を用いることにより得られる。Cr管球型X線回折装置では、Cr-Kα線の波長が2.29093×10-10mとされ、管電圧が30kVとされ、管電流が10mAとされ、コリメータサイズが2mm×2mmとされる。内輪10の表面に対するX線回折により得られるマルテンサイトのX線プロファイルは2θが142.75°以上170.8°以下の範囲内で測定され、内輪10の表面に対するX線回折により得られるオーステナイトのX線プロファイルは2θが114.75°以上142.8°以下の範囲内で測定される。
【0031】
内輪10の表面に対するX線回折により得られるマルテンサイトのX線プロファイル及びオーステナイトのX線プロファイルは、バックグラウンド処理される。内輪10の表面に対するX線回折により得られるオーステナイトのX線プロファイルにおける{220}面を示すピークの位置は、半値幅の中心位置から求められる。
【0032】
内輪10の表面におけるオーステナイトの格子面間隔は、内輪10の表面に対するX線回折により得られるオーステナイトのX線プロファイルに以下のBraggの式を適用することにより算出される。この式において、dは内輪10の表面におけるオーステナイトの格子面間隔(単位:m)であり、λはCr管球型X線回折装置で用いられるCr-Kα線の波長(単位:m)であり、θは内輪10の表面に対するX線回折により得られるオーステナイトのX線プロファイルにおける回折角(単位:°)である。
【0033】
【0034】
内輪10の表面におけるマルテンサイトの転位密度は、好ましくは、1.1×1015m-2以上である。内輪10の表面におけるオーステナイトの転位密度は、好ましくは、2.5×1014m-2以上である。
【0035】
内輪10の表面におけるマルテンサイトの転位密度及びオーステナイトの転位密度は、Co管球型X線回折装置を用いて測定される。より具体的には、第1に、内輪10の表面におけるマルテンサイト及びオーステナイトのX線プロファイルが、Co管球型X線回折装置を用いて取得される。Cо管球型X線回折装置では、Co-Kα線の波長が1.7889×10-10mとされ、管電圧が40kVとされ、管電流が50mAとされ、コリメータサイズが直径1mmとされる。内輪10の表面に対するX線回折により得られるマルテンサイト及びオーステナイトのX線プロファイルは、2θが30°以上135°以下の範囲内で測定される。
【0036】
第2に、Rietveld解析が行われた上で、内輪10の表面に対するX線回折により得られるマルテンサイト及びオーステナイトのX線プロファイルのピークの半値幅が、結晶子サイズとひずみとに分離される。第3に、この結晶子サイズ及びひずみを以下のWilliamson-Hallの式に適用することにより、内輪10の表面におけるマルテンサイトの転位密度及びオーステナイトの転位密度が得られる。この式において、ρは転位密度(単位:m-2)であり、εは上記のひずみであり、bはバーガースベクトルの長さである(b=0.25×10-9m)。
【0037】
【0038】
なお、内輪10の表面に対するX線回折により得られるマルテンサイトのX線プロファイルでは、{110}面、{200}面、{211}面及び{220}面のピークが測定対象とされる。また、内輪10の表面に対するX線回折により得られるオーステナイトのX線プロファイルでは、{111}面、{200}面、{220}面、{311}面及び{222}面のピークが測定対象とされる。上記においてRietveld解析が行われるのは、弾性率の異なるマルテンサイトの{200}面及びオーステナイトの{200}面の影響を低減するためである。
【0039】
内輪10の表面(軌道面10da)に4.5GPaの最大接触面圧が加わった際に形成される圧痕の深さは、0.2μm以下であることが好ましい。この圧痕の深さは、セラミック球を内輪10の表面にオートグラフを用いて最大接触面圧が4.5GPaとなるように接触させた後に、内輪10の表面をレーザ顕微鏡の白色干渉機能を用いて測定される。なお、この際の荷重負荷速度は3N/秒とされ、負荷荷重到達後に120秒間の荷重保持が行われる。
【0040】
内輪10の表面における静的負荷容量は、6.0GPa以上であることが好ましい。内輪10の表面における静的負荷容量の測定においては、第1に、上記と同様に、オートグラフを用いて最大接触面圧を変化させて内輪10の表面に圧痕を形成する。第2に、変化させた最大接触面圧毎に、圧痕の深さをセラミック球の直径で除した値を算出する。圧痕の深さをセラミック球の直径で除した値が1/10000となる際の最大接触面圧が、内輪10の表面における静的負荷容量である。
【0041】
内輪10の表面における残留オーステナイト量、内輪10の表面における平均窒素濃度及び内輪10の表面におけるオーステナイトの転位密度を、それぞれ、A(単位:体積パーセント)、B(単位:質量パーセント)、C(単位:m-2)とする。内輪10では、4.332+0.005×A-0.580×B-0.295×LogC≦0との関係が満たされていることが好ましい。
【0042】
内輪10の表面におけるマルテンサイトの転位密度を、D(単位:m-2)とする。内輪10の表面では、-47.73-0.025×A-2.141×B+3.155×LogD≧0との関係が満たされていることが好ましい。
【0043】
(内輪10の製造方法)
以下に、内輪10の製造方法を説明する。
【0044】
図2は、内輪10の製造方法を示す工程図である。
図2に示されるように、内輪10の製造方法は、準備工程S1と、浸窒処理工程S2と、焼入れ工程S3と、サブゼロ処理工程S4と、焼戻し工程S5と、後処理工程S6とを有している。
【0045】
準備工程S1では、加工対象部材が準備される。浸窒処理工程S2は、準備工程S1後に行われる。浸窒処理工程S2では、窒素源を含む雰囲気ガス中において加工対象部材をA1変態点以上の温度で保持することにより行われる。浸窒処理工程S2は、後処理工程S6後に内輪10の表面となる位置まで窒素が侵入・拡散するように行われる。焼入れ工程S3は、浸窒処理工程S2後に行われる。焼入れ工程S3では、加工対象部材が、A1変態点以上の温度で保持された後に、MS変態点以下の温度まで冷却される。
【0046】
サブゼロ処理工程S4は、焼入れ工程S3後に行われる。サブゼロ処理工程S4では、加工対象部材が、-100℃超室温以下の温度まで冷却される。これにより、焼入れ工程S3において加工対象部材を構成している鋼中に形成された残留オーステナイトの一部がマルテンサイトに変態する。サブゼロ処理工程S4に代えて、クライオ処理工程S7が行われてもよい。クライオ処理工程S7では、加工対象部材が、-100℃以下の温度まで冷却される。これにより、焼入れ工程S3において加工対象部材を構成している鋼中に形成された残留オーステナイトの一部がマルテンサイトに変態する。
【0047】
サブゼロ処理工程S4及びクライオ処理工程S7における冷媒としては、例えば、液体窒素、液体ヘリウム等が用いられる。好ましくは、サブゼロ処理工程S4及びクライオ処理工程S7は、焼入れ工程S3の終了後2時間以内に行われる。
【0048】
焼戻し工程S5は、サブゼロ処理工程S4(クライオ処理工程S7)後に行われる。焼戻し工程S5では、加工対象部材が、A1変態点未満の温度に保持される。これにより、加工対象部材を構成している鋼中のマルテンサイトの一部が分解される。焼戻し工程S5における保持温度は、例えば180℃以上220℃以下である。焼戻し工程S5における保持時間は、例えば2時間である。
【0049】
後処理工程S6は、焼戻し工程S5後に行われる。後処理工程S6では、加工対象部材の表面に対する機械加工(例えば、研削及び研磨)が行われる。以上により、
図1に示される構造の内輪10が製造される。
【0050】
(内輪10の効果)
以下に、内輪10の効果を説明する。
【0051】
特許文献1に記載されているように、軌道輪の表面における静的負荷容量を改善するために、高温(例えば230℃以上)で焼戻しを行うことが考えられる。しかしながら、この場合、焼入れにより形成されたマルテンサイトが焼戻しにより過度に分解されることにより軌道輪の表面における硬さが低下し、軌道輪の表面における静的負荷容量が不十分になってしまうことがある。
【0052】
他方で、内輪10では、窒素が浸窒層11に固溶していることにより、内輪10の表面が固溶強化されている。また、内輪10では、サブゼロ処理工程S4(クライオ処理工程S7)が行われていることにより、表面における残留オーステナイト量が減少(マルテンサイトが増加)しているとともに、表面における残留オーステナイト及びマルテンサイト中の転位密度が増加している。その結果、内輪10では、表面における硬さが、850Hv以上になっている。そのため、内輪10によると、表面における静的負荷容量が、高温での焼戻しを行う場合と比較して改善されている。
【0053】
より具体的には、内輪10の表面における残留オーステナイト量が20体積パーセント以下、内輪10の表面における平均窒素濃度が0.10質量パーセント以上、かつ内輪10の表面における硬さが850Hv以上であることにより、内輪10の表面に4.5GPaの最大接触面圧が加わった際の圧痕の深さが0.2μm以下となり、内輪10の表面における静的負荷容量が6.0GPa以上となる。
【0054】
なお、窒素はオーステナイト安定化元素であり、浸窒処理は軌道輪の表面における残留オーステナイトを富化するために行われる。そのため、浸窒処理が行われる場合、サブゼロ処理(又はクライオ処理)を行って表面における残留オーステナイト量を低減することは、通常行われない。
【0055】
(静的負荷容量及び圧痕深さの評価)
実施形態に係る機械部品の表面における静的負荷容量を評価するため、サンプル1からサンプル6が準備された。サンプル1からサンプル6の形状は、直径85mm×厚さ5mmの平板状である。サンプル1からサンプル6は、JIS規格に定められているSUJ2により形成されている。表1には、サンプル1からサンプル6に対する熱処理の詳細が示されている。
【0056】
【0057】
サンプル1では、熱処理として、浸窒処理工程S2、焼入れ工程S3、クライオ処理工程S7及び焼戻し工程S5が行われた。サンプル2及びサンプル3では、熱処理として、浸窒処理工程S2、焼入れ工程S3、サブゼロ処理工程S4及び焼戻し工程S5が行われた。すなわち、サンプル1からサンプル3は、実施形態に係る機械部品を模したサンプルである。サンプル1からサンプル3に対する焼戻し工程S5では、保持温度が180℃とされた。
【0058】
サンプル4では、熱処理として、浸窒処理工程S2、焼入れ工程S3及び焼戻し工程S5が行われ、サブゼロ処理工程S4(又はクライオ処理工程S7)は行われなかった。また、サンプル4に対する焼戻し工程S5では、高温での(具体的には、230℃での)焼戻しが行われた。
【0059】
サンプル5では、熱処理として、浸窒処理工程S2、焼入れ工程S3及び焼戻し工程S5が行われ、サブゼロ処理工程S4(又はクライオ処理工程S7)は行われなかった。サンプル5に対する焼戻し工程S5では、保持温度が180℃とされた。サンプル6では、熱処理として、焼入れ工程S3及び焼戻し工程S5が行われ、浸窒処理工程S2及びサブゼロ処理工程S4(又はクライオ処理工程S7)は行われなかった。サンプル5に対する焼戻し工程S5では、保持温度が180℃とされた。
【0060】
サンプル1からサンプル6に対して、表面における平均窒素濃度、表面における硬さ、表面における残留オーステナイト量、表面に4.5GPaの最大接触面圧が加わった際の圧痕の深さ及び表面における静的負荷容量の測定が行われた。
【0061】
表面における平均窒素濃度、表面における硬さ、表面における残留オーステナイト量、表面に4.5GPaの最大接触面圧が加わった際の圧痕の深さ及び表面における静的負荷容量の測定結果は、表2に示されている。
図3は、サンプル1からサンプル6の表面における最大接触面圧と圧痕深さをセラミック球の直径で除した値との関係を示すグラフである。なお、セラミック球の直径は、3/8インチ(9.525mm)とされた。
【0062】
【0063】
表面における平均窒素濃度が0.10質量パーセント以上であること、表面における硬さが850Hv以上であること及び表面における残留オーステナイト量が20体積パーセント以下であることを、それぞれ、条件1、条件2及び条件3とする。表2に示されるように、サンプル1からサンプル3では、条件1、条件2及び条件3の全てが満たされていた。他方で、サンプル4からサンプル6では、条件1、条件2及び条件3の少なくともいずれかが満たされていなかった。
【0064】
表1及び
図3に示されるように、サンプル1からサンプル3では、表面に4.5GPaの最大接触面圧が加わった際の圧痕の深さが0.2μm以下になっているとともに、表面における静的負荷容量が6.0GPa以上になっていた。他方で、サンプル4からサンプル6では、表面に4.5GPaの最大接触面圧が加わった際の圧痕の深さが0.2μm超になっているとともに、表面における静的負荷容量が6.0GPa未満になっていた。この比較から、条件1、条件2及び条件3が満たされることにより、表面における静的負荷容量が改善されることが、実験的にも明らかになった。
【0065】
サンプル1-1からサンプル1-3、サンプル2-1からサンプル2-3及びサンプル3-1からサンプル3-3は、それぞれ、サンプル1、サンプル2及びサンプル3と同様の熱処理が行われたサンプルである。サンプル4-1からサンプル4-4は、サンプル4と同様の熱処理が行われたサンプルである。これらのサンプルの鋼種及び形状は、それぞれ、SUJ2及び直径85mm×厚さ5mmの平板状である。
【0066】
【0067】
表3に示されるように、サンプル1-1からサンプル1-3、サンプル2-1からサンプル2-3及びサンプル3-1からサンプル3-3では、条件1、条件2及び条件3の全てが満たされていた。他方で、サンプル4-1からサンプル4-4では、条件1、条件2及び条件3の少なくともいずれかが満たされていなかった。
【0068】
サンプル1-1からサンプル1-3、サンプル2-1からサンプル2-3及びサンプル3-1からサンプル3-3では、表面に対するX線回折により得られるマルテンサイトのX線プロファイルにおける半値幅が7.2°以上8.0°以下であり、表面に対するX線回折により得られるオーステナイトのX線プロファイルにおける{220}面を示すピーク位置が128°以上であった。
【0069】
他方で、サンプル4-1からサンプル4-4では、表面に対するX線回折により得られるマルテンサイトのX線プロファイルにおける半値幅が7.2°未満であり、表面に対するX線回折により得られるオーステナイトのX線プロファイルにおける{220}面を示すピーク位置が128°未満であった。
【0070】
この比較から、条件1、条件2及び条件3が満たされている場合には、表面に対するX線回折により得られるマルテンサイトのX線プロファイルにおける半値幅が7.2°以上8.0°以下となるとともに、表面に対するX線回折により得られるオーステナイトのX線プロファイルにおける{220}面を示すピーク位置が128°以上となることが明らかになった。
【0071】
このことを別の観点から言えば、高温での焼戻し工程S5が行われずにサブゼロ処理工程S4又はクライオ処理工程S7が行われることにより、表面においてマルテンサイトの転位密度が高くなってX線プロファイルにおける半値幅が増加するとともに、表面においてオーステナイトの転位密度が高くなって{220}面を示すピーク位置が高角側にシフトすることが明らかになった。
【0072】
表4に示されるように、サンプル1、サンプル2及びサンプル3では、表面に対するX線回折により得られるマルテンサイトのX線プロファイルにおける半値幅が7.2°以上8.0°以下となるとともに、表面に対するX線回折により得られるオーステナイトのX線プロファイルにおける{220}面を示すピーク位置が128°以上となっていた。また、サンプル1、サンプル2及びサンプル3では、表面におけるマルテンサイトの転位密度及びオーステナイトの転位密度が、それぞれ1.1×1015m-2以上及び2.5×1014m-2以上になっていた。
【0073】
他方で、サンプル4では、表面に対するX線回折により得られるマルテンサイトのX線プロファイルにおける半値幅が7.2°未満となるとともに、表面に対するX線回折により得られるオーステナイトのX線プロファイルにおける{220}面を示すピーク位置が128°未満となっていた。また、サンプル4では、表面におけるマルテンサイトの転位密度及びオーステナイトの転位密度が、それぞれ1.1×1015m-2未満及び2.5×1014m-2未満になっていた。
【0074】
【0075】
表面に4.5GPaの最大接触面圧が加わった際の圧痕の深さと表面における残留オーステナイト量(A:単位は体積パーセント)、表面における平均窒素濃度(B:単位は質量パーセント)及び表面におけるオーステナイトの転位密度(C:単位はm-2)との関係について重回帰分析を行った。この重回帰分析の結果として、表面に4.5GPaの最大接触面圧が加わった際の圧痕の深さ(単位:μm)は、4.532+0.005×A-0.580×B-0.295×LogCとの式で推定された。この式の決定係数(R2)は、0.94である。そのため、4.332+0.005×A-0.580×B-0.295×LogC≦0との関係が満たされている場合、表面に4.5GPaの最大接触面圧が加わった際の圧痕の深さを0.2μm以下とすることができる。
【0076】
表面における静的負荷容量と表面における残留オーステナイト量(A:単位は体積パーセント)、表面における平均窒素濃度(B:単位は質量パーセント)及び表面におけるマルテンサイトの転位密度(D:単位はm-2)との関係について重回帰分析を行った。この重回帰分析の結果として、表面における静的負荷容量(単位:GPa)は、-41.73-0.025×A-2.141×B+3.155×LogDとの式で推定された。この式の決定係数(R2)は、0.94である。そのため、-47.73-0.025×A-2.141×B+3.155×LogD≧0との関係が満たされている場合、表面における静的負荷容量を6.0GPa以上とすることができる。
【0077】
(実施形態に係る機械部品の他の例)
以下に、内輪10以外の実施形態に係る機械部品の例を説明する。
【0078】
図4は、ボールねじ20の断面図である。
図4に示されるように、ボールねじ20は、ねじ軸21と、ボールナット22と、複数のボール23と、シール部材24とを有している。ボールねじ20におけるボール23の循環方式は、特に限定されない。ボールねじ20におけるボール23の循環方式は、例えば、チューブ式、リターンチューブ(パイプ)式、デフレクタ式、エンドデフレクタ式、エンドキャップ式、こま式等である。
【0079】
ねじ軸21は、外周面21aを有している。外周面21aには、ねじ溝21bが形成されている。ボールナット22は、ねじ軸21の中心軸の方向に沿って延在している穴が形成されている。この穴の内壁面が、ボールナット22の内周面22aである。内周面22aには、ねじ溝22bが形成されている。ねじ軸21は、外周面21aが内周面22aと対向するようにボールナット22に挿入されている。ボール23は、ねじ溝21bとねじ溝22bとの間に配置されている。ねじ軸21が通されるボールナット22の穴は、シール部材24により閉塞されている。シール部材24に形成されている穴にも、ねじ軸21が通されている。
【0080】
ねじ軸21、ボールナット22及びボール23は、焼入れ及び焼戻しの行われた鋼により形成されている。この鋼は、0.95質量パーセント以上1.10質量パーセント以下の炭素と、0.30質量パーセント未満の珪素と、0.50質量パーセント未満のマンガンと、0.0080質量パーセント未満の硫黄と、1.3質量パーセント以上1.6質量パーセント以下のクロムとを含有している。この鋼の残部は、鉄及び不可避不純物からなる。この鋼は、例えば、軸受鋼(JIS規格に規定されているSUJ2、ASTM規格に規定されている52100、ISO規格に規定されている100Cr6及びGB規格に規定されているGCr15等)である。
【0081】
ねじ軸21、ボールナット22及びボール23は、表面に浸窒層11(
図4中において図示せず)が形成されており、表面における平均窒素濃度が0.10質量パーセント以上になっている。ねじ軸21、ボールナット22及びボール23は、表面における硬さが、850Hv以上になっている。ねじ軸21、ボールナット22及びボール23は、表面における残留オーステナイト量が20体積パーセント以下になっている。すなわち、ねじ軸21、ボールナット22及びボール23は、実施形態に係る機械部品である。
【0082】
ボールねじ20は、ねじ軸21、ボールナット22及びボール23の表面における静的負荷容量が改善されるため、高負荷容量化が可能であるとともに、小型軽量化も可能である。ボールねじ20が小型化されることにより、周辺部品や構造部材の小型化も可能になる。
【0083】
但し、ねじ軸21、ボールナット22及びボール23のうちの少なくとも1つが、上記の鋼の組成、上記の表面における硬さ、上記の表面における窒素濃度及び上記の表面における残留オーステナイト量を満たしていればよい。このことを別の観点から言えば、ボールねじ20は、ねじ軸21、ボールナット22及びボール23の少なくともいずれかが実施形態に係る機械部品であればよい。
【0084】
ねじ軸21をその中心軸回りに回転させることにより、ねじ軸21の回転動力は、ボール23を介してボールナット22に伝達され、ボールナット22がねじ軸21の中心軸の方向に沿って移動する。すなわち、ボールねじ20は、モータ等の回転運動を直動運動に変換する装置である。ボールねじ20は、例えば、電動アクチュエータ、位置決め装置、電動ジャッキ、サーボシリンダ、電動サーボプレス機、メカニカルプレス機、電動ブレーキ装置、トランスミッション、電動パワーステアリング装置、電動射出成形機等に用いられる。
【0085】
(内輪10を用いた転がり軸受100)
図5は、転がり軸受100の断面図である。
図5に示されるように、転がり軸受100は、内輪10と、外輪30と、複数の転動体40と、保持器50とを有している。
【0086】
外輪30は、幅面30aと、幅面30bと、内周面30cと、外周面30dとを有している。幅面30a及び幅面30bは、軸方向における外輪30の端面を構成している。幅面30bは、幅面30aの反対面である。内周面30c及び外周面30dは、周方向に沿って延在している。内周面30c及び外周面30dは、それぞれ、中心軸A側及び中心軸Aとは反対側を向いている。外輪30は、外周面30dにおいてハウジング(図示せず)に嵌め合わされる。外輪30は、内周面30cが外周面10dと対向するように、内輪10の径方向における外側に配置されている。
【0087】
内周面30cは、軌道面30caを有している。軌道面30caは、転動体40と接触する内周面30cの部分である。軌道面30caは、軸方向における内周面30cの中央にある。軌道面30caは、周方向に沿って延在している。内周面30cは、軌道面30caにおいて、外周面30d側に窪んでいる。周方向に直交する断面視において、軌道面30caは、例えば部分円弧状である。軌道面30caは、軌道面10daと対向している。
【0088】
転動体40は、例えば球状である。転動体40は、軌道面10daと軌道面30caとの間に配置されている。複数の転動体40は、周方向において間隔を空けて並んでいる。保持器50は、隣り合う2つの転動体40の間の間隔が一定範囲内になるように、複数の転動体40を保持している。保持器50は、外周面10dと内周面30cとの間に配置されている。
【0089】
外輪30及び転動体40は、例えば、実施形態に係る機械部品である。すなわち、外輪30及び転動体40は、焼入れ及び焼戻しの行われた鋼により形成されており、当該鋼は0.95質量パーセント以上1.10質量パーセント以下の炭素と、0.30質量パーセント未満の珪素と、0.50質量パーセント未満のマンガンと、0.0080質量パーセント未満の硫黄と、1.3質量パーセント以上1.6質量パーセント以下のクロムとを含有し、かつ残部が鉄及び不可避不純物からなる。また、外輪30及び転動体40は、表面における平均窒素濃度、硬さ及び残留オーステナイト量がそれぞれ0.10質量パーセント以上、850Hv以上及び20体積パーセント以下になっている。但し、外輪30及び転動体40は、実施形態に係る機械部品でなくてもよい。
【0090】
今回開示された実施形態は全ての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記の実施形態ではなく特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0091】
10 内輪、10a,10b 幅面、10c 内周面、10d 外周面、10da 軌道面、11 浸窒層、20 ボールねじ、21 ねじ軸、21a 外周面、21b ねじ溝、22 ボールナット、22a 内周面、22b ねじ溝、23 ボール、24 シール部材、30 外輪、30a,30b 幅面、30c 内周面、30ca 軌道面、30d 外周面、40 転動体、50 保持器、A 中心軸、S1 準備工程、S2 浸窒処理工程、S3 焼入れ工程、S4 サブゼロ処理工程、S5 焼戻し工程、S6 後処理工程、S7 クライオ処理工程。