(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】極紫外線露光用ペリクル
(51)【国際特許分類】
G03F 1/62 20120101AFI20240116BHJP
【FI】
G03F1/62
(21)【出願番号】P 2022064515
(22)【出願日】2022-04-08
【審査請求日】2022-04-20
(31)【優先権主張番号】10-2021-0048288
(32)【優先日】2021-04-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】503257778
【氏名又は名称】コリア エレクトロニクス テクノロジ インスティチュート
【住所又は居所原語表記】25,Saenari-ro,Bundang-gu,Seongnam-si,Gyeonggi-do 13509 Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョン クン
(72)【発明者】
【氏名】キム,スル ギ
(72)【発明者】
【氏名】キム,ヒョン ミ
(72)【発明者】
【氏名】チョ,ジン ウ
(72)【発明者】
【氏名】ソン,キ フン
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/179199(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/175019(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2017/0227843(US,A1)
【文献】特開2018-151622(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/22-1/24、1/62-1/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持層、前記支持層の上に形成されたコア層、および、前記コア層の上に形成されたキャッピング層を含むペリクル層を含み、
前記コア層は、Mおよびαを組み合わせたM-α素材で形成され、
前記Mは、Si、Zr、Mo、Ru、Y、W、Ti、IrおよびNbのうち一つであり、前記αは、B、N、C、OおよびFのうち少なくとも2個であ
り、
前記支持層は、KOHに対する耐性を有する素材で形成され、
前記キャッピング層は、YOF、YBxNy(x+y≧1)、YOxNy(x+y≧1)、またはSiBxNy(x+y≧2)から選択される素材で形成される、
ことを特徴とする極紫外線露光用ペリクル。
【請求項2】
前記コア層の素材は、SiBxN
1-x(0<x<1)
、SiB
6
xN
1
-x(0<x<1)、YB
2
xN
1
-x(0<x<1)のいずれかである請求項
1に記載の極紫外線露光用ペリクル。
【請求項3】
前記ペリクル層は
、
前記コア層の一面または両面に形成される中間層
を含み、
前記中間層は、YOF、YBxNy(x+y≧1)、YOxNy(x+y≧1)、またはSiBxNy(x+y≧2)から選択される素材で形成される、
ことを特徴とする請求項1に記載の極紫外線露光用ペリクル。
【請求項4】
中心部に開放部が形成された基板と、
前記開放部を覆うように前記基板の上に形成され、
支持層、前記支持層の上に形成されたコア層、および、前記コア層の上に形成されたキャッピング層を含むペリクル層と、を含み、
前記コア層は、Mおよびαを組み合わせたM-α素材で形成され、
前記Mは、Si、Zr、Mo、Ru、Y、W、Ti、IrおよびNbのうち一つであり、前記αは、B、N、C、OおよびFのうち少なくとも2個であ
り、
前記支持層は、KOHに対する耐性を有する素材で形成され、
前記キャッピング層は、YOF、YBxNy(x+y≧1)、YOxNy(x+y≧1)、またはSiBxNy(x+y≧2)から選択される素材で形成される、
ことを特徴とする極紫外線露光用ペリクル。
【請求項5】
前記ペリクル層は
、
前記コア層の一面または両面に形成される中間層
を含み、
前記中間層は、YOF、YBxNy(x+y≧1)、YOxNy(x+y≧1)、またはSiBxNy(x+y≧2)から選択される素材で形成される、
ことを特徴とする請求項
4に記載の極紫外線露光用ペリクル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、露光装置に関し、より詳細には、極紫外線を用いた露光工程に使用される極紫外線露光用ペリクルに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体産業が発達し、半導体素子の集積度が向上するに伴い、電子機器が次第に小型化および軽量化している。半導体素子の集積度の向上のために、露光技術の高度化が要求されている。
【0003】
現在、光源の波長を減少させて半導体の微細なパターンを具現する方向に技術が発展している。このうち、次世代技術である極紫外線(Extreme Ultraviolet,EUV)露光技術は、一回のレジスト工程で微細パターンを具現できる技術である。
【0004】
半導体工程に使用される極紫外線露光装置は、光源(light source power)、レジスト(resist)、ペリクル(pellicle)およびマスクを含む。
ペリクルは、マスクに設置されて、露光工程中に発生する異物がマスクに付着するのを防止し、露光装置によって選択的に使用されている。
【0005】
極紫外線露光工程では、クリーンシステムが構築されていて、ペリクルが不要であるという期待が初期に存在した。しかしながら、実際露光装置の構築後に駆動過程で装置内部駆動部で発生する異物および光源の発振過程で生成されたスズ粒子と極紫外線感光剤によるマスクの汚染が発生することを確認した。
【0006】
したがって、極紫外線露光工程では、マスクの汚染を防止するために、ペリクルが必須の素材として認識されている。ペリクルを使用する場合、サイズが10,000nm未満の欠陥を無視することができる。
【0007】
このような極紫外線露光用ペリクルは、マスクをカバーするために、サイズが110×144mmであることが要求され、光源の損失による生産性の悪化を最小化するために、90%以上の極紫外線透過率が要求されている。極紫外線露光装置内部における20Gに達する物理的動きにより破損しないレベルの機械的安定性と、5nmノード(node)を基準として250W以上の熱的荷重に耐えることができる熱的安定性が要求されている。また、極紫外線環境で発生する水素ラジカルに反応しない化学的耐久性も要求されている。
【0008】
現在、ペリクル開発会社は、多結晶シリコン(p-Si)基盤またはSiN基盤の透過素材を開発中にある。これらの素材は、極紫外線用ペリクルの最も重要な条件である90%以上の透過率を満たしていない。これらの素材は、極紫外線露光環境での熱的安定性、機械的安定性、および化学的耐久性に脆弱であるという欠点を有するので、特性補完のための工程開発研究が行われている。例えばSiN基盤素材の問題点を解決するための素材として、Mo、Ru、Zrなどの物質を選別して研究を行っているが、薄い厚さに製造して形態を維持することが難しいのが現状である。
【0009】
また、最近では、250Wレベルの照射強度を超えて350W以上の極紫外線出力環境で90%以上の極紫外線透過率と、熱的、化学的および機械的に安定性を有するペリクルが要求されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】韓国公開特許第2018-0135490号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、本発明の目的は、350W以上の極紫外線出力環境で90%以上の極紫外線透過率を有する極紫外線露光用ペリクルを提供することにある。
【0012】
本発明の他の目的は、90%以上の高い極紫外線透過率を有し、熱的安定性、機械的安定性および化学的耐久性を有する極紫外線露光用ペリクルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するために、本発明は、Mおよびαを組み合わせたM-α素材で形成されたペリクル層を含み、前記Mは、Si、Zr、Mo、Ru、Y、W、Ti、IrおよびNbのうち一つであり、前記αは、B、N、C、OおよびFのうち少なくとも2個のイン 極紫外線露光用ペリクルを提供する。
【0014】
前記MがNbであり、前記αがBおよびCである場合、前記ペリクル層は、Nb、BおよびCを全部含むように、NbBx(x≧1)、NbCx(x≧1)およびB4Cの中から複数個を選択して組合わせることができる。
【0015】
前記MがSiであり、前記αがB、NおよびCである場合、前記ペリクル層は、Si、B、NおよびCを全部含むように、SiBxNy(x+y≧2)、SiBx(x≧3)、SiC、SiNx(x≧1)およびBNの中から複数個を選択して組合わせることができる。
【0016】
前記Mは、Yであり、前記αがB、N、OおよびFである場合、前記ペリクル層は、Y、B、N、OおよびFを全部含むように、YOF、YBxNy(x+y≧1)、YOxNy(x+y≧1)、YBx(x≧2)、YN、Y2O3およびYF3の中から複数個を選択して組合わせることができる。
【0017】
前記ペリクル層は、支持層と、前記支持層上に形成されるコア層と、前記コア層上に形成されるキャッピング層と、を含み、前記支持層、前記コア層および前記キャッピング層は、それぞれMおよびαを組み合わせた素材で形成されてもよい。
【0018】
前記コア層の素材は、SiBxN1-x(0<x<1)であり、前記支持層およびキャッピング層の素材は、SiNx(x≧1)でありうる。
【0019】
前記コア層の素材は、SiB6xN1-x(0<x<1)であり、前記支持層およびキャッピング層の素材は、SiNx(x≧1)でありうる。
【0020】
前記コア層の素材は、YB2xN1-x(0<x<1)であり、前記支持層およびキャッピング層の素材は、SiNx(x≧1)でありうる。
【0021】
前記コア層の素材は、YB2xN1-x(0<x<1)であり、前記支持層およびキャッピング層の素材は、YBx(x≧2)でありうる。
【0022】
前記ペリクル層は、支持層と、前記支持層上に形成されるコア層と、前記コア層の一面または両面に形成される中間層と、前記中間層の上に形成されるキャッピング層と、を含み、前記支持層、前記コア層、前記中間層および前記キャッピング層は、それぞれMおよびαを組み合わせた素材で形成されてもよい。
【0023】
本発明は、また、中心部に開放部が形成された基板と、前記開放部を覆うように前記基板の上に形成され、Mおよびαを組み合わせたM-α素材で形成されたペリクル層と、を含み、前記Mは、Si、Zr、Mo、Ru、Y、W、Ti、IrおよびNbのうち一つであり、前記αは、B、N、C、OおよびFのうち少なくとも2個である極紫外線露光用ペリクルを提供する。
【0024】
前記ペリクル層は、前記開放部を覆うように前記基板の上に形成される支持層と、前記支持層上に形成されるコア層と、前記コア層上に形成されるキャッピング層と、を含み、前記支持層、前記コア層および前記キャッピング層は、それぞれMおよびαを組み合わせた素材で形成されてもよい。
【0025】
また、前記ペリクル層は、前記開放部を覆うように前記基板の上に形成される支持層と、前記支持層上に形成されるコア層と、前記コア層の一面または両面に形成される中間層と、前記中間層の上に形成されるキャッピング層と、を含み、前記支持層、前記コア層、前記中間層および前記キャッピング層は、それぞれMおよびαを組み合わせた素材で形成されてもよい。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、ペリクル層は、M-α素材を含むので、90%以上の高い極紫外線透過率と0.04%以下の極紫外線反射率を提供できる。
【0027】
また、本発明による極紫外線露光用ペリクルは、90%以上の高い極紫外線透過率と0.04%以下の極紫外線反射率を有し、熱的安定性、機械的安定性および化学的耐久性を提供できる。すなわちペリクル層は、高い光特性を有するSiまたは化学的耐久性と機械的安定性を有するY、機械的強度を補強できるB、光特性および耐化学性を補強できるN、C、OまたはFを含有する金属基盤化合物であるM-α素材を含むので、90%以上の高い極紫外線透過率と0.04%以下の極紫外線反射率を有し、熱的安定性、機械的安定性および化学的耐久性を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】
図1は、本発明の第1実施形態による極紫外線露光用ペリクルを示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第2実施形態による極紫外線露光用ペリクルを示す拡大図である。
【
図4】
図4は、本発明の第3実施形態による極紫外線露光用ペリクルを示す拡大図である。
【
図5】
図5は、第1実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。
【
図6】
図6は、第2実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。
【
図7】
図7は、第3実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。
【
図8】
図8は、第4実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。
【
図9】
図9は、第5実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。
【
図10】
図10は、第6実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。
【
図11】
図11は、第7実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。
【
図12】
図12は、第8実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。
【
図13】
図13は、第9実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。
【
図14】
図14は、第10実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。
【
図15】
図15は、第11実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。
【
図16】
図16は、第12実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。
【
図17】
図17は、第13実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。
【
図18】
図18は、第14実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。
【
図19】
図19は、第15実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。
【
図20】
図20は、第16実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。
【
図21】
図21は、第17実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。
【
図22】
図22は、第18実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。
【
図23】
図23は、第19実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。
【
図24】
図24は、第20実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。
【
図25】
図25は、第21実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。
【
図26】
図26は、第22実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。
【
図27】
図27は、第23実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。
【
図28】
図28は、第24実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。
【
図29】
図29は、第25実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。
【
図30】
図30は、第26実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。
【
図31】
図31は、第27実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。
【
図32】
図32は、第28実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。
【
図33】
図33は、第29実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。
【
図34】
図34は、第30実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。
【
図35】
図35は、第31実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。
【
図36】
図36は、第32実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。
【
図37】
図37は、第33実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。
【
図38】
図38は、第34実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。
【
図39】
図39は、第35実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。
【
図40】
図40は、第36実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
下記の説明では、本発明の実施形態を理解するのに必要な部分のみが説明され、その他の部分の説明は、本発明の要旨を不明にしない範囲で省略されることに留意しなければならない。
【0030】
以下で説明される本明細書および請求範囲に使用される用語や単語は、通常的や辞書的な意味に限定して解すべきものではなく、発明者は、自分の発明を最も最善の方法で説明するために用語の概念として適切に定義できるという原則に基づいて本発明の技術的思想に符合する意味や概念として解すべきである。したがって、本明細書に記載された実施形態と図面に示された構成は、本発明の好適な実施形態に過ぎず、本発明の技術的思想を全部表すものではないので、本出願時点においてこれらを代替できる多様な均等物と変形例がありえることを理解しなければならない。
【0031】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施形態をより詳細に説明する。
【0032】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態による極紫外線露光用ペリクルを示す断面図である。また、
図2は、
図1のA部分の拡大図である。
【0033】
図1および
図2を参照すると、第1実施形態による極紫外線露光用ペリクル100(以下「ペリクル」という)は、Mおよびαを組み合わせたM-α素材で形成されたペリクル層20を含む。ここで、Mは、Si、Zr、Mo、Ru、Y、W、Ti、IrおよびNbのうち一つである。αは、B、N、C、OおよびFのうち少なくとも2個である。
【0034】
このようなペリクル層20は、下記のように構成することができる。
【0035】
例えばMがNbであり、αがBおよびCである場合、ペリクル層20は、Nb、BおよびCを全部含むように、NbBx(x≧1)、NbCx(x≧1)およびB4Cの中から複数個を選択および組み合わせて形成できる。
【0036】
MがSiであり、αがB、NおよびCである場合、ペリクル層20は、Si、B、NおよびCを全部含むように、SiBxNy(x+y≧2)、SiBx(x≧3)、SiC、SiNx(x≧1)およびBNの中から複数個を選択および組み合わせて形成できる。
【0037】
Mは、Yであり、αがB、N、OおよびFである場合、ペリクル層20は、Y、B、N、OおよびFを全部含むように、YOF、YBxNy(x+y≧1)、YOxNy(x+y≧1)、YBx(x≧2)、YN、Y2O3およびYF3の中から複数個を選択および組み合わせて形成できる。
【0038】
このような第1実施形態によるペリクル100は、中心部に開放部13が形成された基板10と、開放部13を覆うように基板10の上に形成されるペリクル層20と、を含む。ペリクル層20は、基板10に積層されて形成される支持層27、コア層21、およびキャッピング層29を含んでもよい。
【0039】
ペリクル100は、半導体およびディスプレイ製造工程中、露光工程でマスクを異物から保護する消耗性素材である。すなわちペリクル100は、マスクの上に被覆される薄い薄膜であり、カバーの役割をする。ウェハーに転写される光は、マスクで焦点を合わせて露光を進めるので、一定の距離に離れているペリクル100に異物が混入しても、焦点が合わないため、ユーザが作ろうとするパターンのサイズに影響を及ぼさないようにして、不良パターンの形成を減らすことができる。
【0040】
これによって、ペリクル100は、露光工程中、マスクの異物から保護しつつ、不良パターンを最小化して、半導体およびディスプレイ製造工程の収率を高めることができる。また、ペリクル100の使用によってマスクの寿命を延ばすことができる。
【0041】
以下、このような本発明によるペリクル100について具体的に説明する。
【0042】
基板10は、ペリクル層20を支持し、ペリクル100を製造する過程および製造完了後にペリクル100のハンドリングおよび移送を容易に行うことができる。基板10は、シリコンなどのエッチング工程が可能な素材で形成されてもよい。例えば基板10の素材は、シリコン、酸化シリコン、窒化シリコン、金属酸化物、金属窒化物、黒鉛、非晶質炭素などがあり、当該素材が積層された構造も可能であり、これらに限定されるものではない。ここで、金属は、Cr、Al、Zr、Ti、Ta、Nb、Niなどが可能であり、これらに限定されるものではない。
【0043】
基板10の中心部に形成された開放部13は、MEMS(Micro-Electro Mechanical Systems)のような微細加工技術を用いて形成できる。すなわち基板10の中心部を微細加工技術で除去して、開放部13を形成する。開放部13にペリクル層20が露出する。
【0044】
また、ペリクル層20は、支持層27、コア層21およびキャッピング層29を含む。
【0045】
支持層27は、基板10の開放部13を覆うように基板10の上に形成される。このような支持層27は、KOHに抵抗性を有する素材で形成され、コア層21の素材がシリコン基板10に拡散するのを防止する機能も担当する。支持層27は、CVD(chemical vapor deposition)工程で形成できるが、ALD(atomic layer deposition)、電子ビーム蒸着(e-beam evaporation)またはスパッタリング(sputtering)工程で形成して、厚さ、物性および化学組成の変更を自由に調節して、最上の透過率を有すると共に、欠点を最小化できるように形成する。支持層27は、基板10の上に1nm~10nmの厚さに形成されてもよい。
【0046】
コア層21は、支持層27の上に形成される。コア層21は、極紫外線の透過率を決定する層である。コア層21は、極紫外線に対する90%以上の透過率を有し、熱を効果的に放出してペリクル層20が過熱するのを防止する。
【0047】
また、キャッピング層29は、コア層21の極紫外線の透過率の低下を最小化しつつ、ペリクル層20に熱的安定性、機械的安定性および化学的耐久性を提供する。すなわちキャッピング層29は、コア層21の保護層であって、コア層21から発生した熱を外部に効果的に放出して熱的安定性を提供する。キャッピング層29は、コア層21の機械的強度を補完して機械的安定性を提供する。また、キャッピング層29は、水素ラジカルと酸化からコア層21を保護して化学的耐久性を提供する。
【0048】
ここで、ペリクル層20を形成する支持層27、コア層21およびキャッピング層29は、それぞれMおよびαを組み合わせた素材で形成される。
【0049】
例えばコア層21の素材は、SiBxN1-x(0<x<1)であり、支持層27およびキャッピング層29の素材は、SiNx(x≧1)でありうる。
【0050】
または、コア層21の素材は、SiB6xN1-x(0<x<1)であり、支持層27およびキャッピング層29の素材は、SiNx(x≧1)でありうる。
【0051】
または、コア層21の素材は、YB2xN1-x(0<x<1)であり、支持層27およびキャッピング層29の素材は、SiNx(x≧1)でありうる。
【0052】
従来のペリクルにおいて、高い極紫外線透過率を確保するために、キャッピング層は、5nm以下の厚さに形成する必要があった。しかしながら、第1実施形態では、キャッピング層29の素材としてMおよびαを組み合わせた素材、例えばYOF、YBxNy(x+y≧1)、YOxNy(x+y≧1)、SiBxNy(x+y≧2)、SiBx(x≧3)、SiC、SiNx(x≧1)、YBx(x≧2)、YN、Y2O3、YF3、BN、NbBx(x≧1)、NbCx(x≧1)およびB4Cから選ばれる素材を使用することによって、キャッピング層29を10nmの厚さに形成しても、90%以上の高い極紫外線透過率を有し、熱的安定性、機械的安定性および化学的耐久性を有するペリクル100を提供できる。
【0053】
このように第1実施形態によるペリクル100は、ペリクル層20がM-α素材を含むので、90%以上の高い極紫外線透過率と0.04%以下の極紫外線反射率を提供できる。
【0054】
また、第1実施形態によるペリクル100は、90%以上の高い極紫外線透過率と0.04%以下の極紫外線反射率を有し、熱的安定性、機械的安定性および化学的耐久性を提供できる。すなわちペリクル層20は、高い光特性を有するSiまたは化学的耐久性と機械的安定性を有するY、機械的強度を補強できるB、光特性および耐化学性を補強できるN、C、OまたはFを含有する金属基盤化合物であるM-α素材を含むので、90%以上の高い極紫外線透過率と0.04%以下の極紫外線反射率を有し、熱的安定性、機械的安定性および化学的耐久性を提供できる。
【0055】
このような第1実施形態によるペリクル100は、次のような製造工程で製造できる。まず、開放部13が形成されていない状態の基板10の上に支持層27、コア層21およびキャッピング層29をこの順に積層して、ペリクル層20を形成する。
【0056】
この際、支持層27、コア層21およびキャッピング層29は、それぞれCVD、ALD、電子ビーム蒸着またはスパッタリング工程で形成できる。
【0057】
また、ペリクル層20下の基板10の中心部を除去して、ペリクル層20の下面が露出する開放部13を形成することによって、第1実施形態によるペリクル100を得ることができる。すなわち支持層27下の基板10の中心部をウエットエッチングを通じて除去して、開放部13を形成する。
【0058】
[第2実施形態]
図3は、本発明の第2実施形態による極紫外線露光用ペリクルを示す拡大図である。
【0059】
図3を参照すると、第2実施形態によるペリクルは、Mおよびαを組み合わせたM-α素材で形成されたペリクル層120を含む。ここで、Mは、Si、Zr、Mo、Ru、Y、W、Ti、IrおよびNbのうち一つである。αは、B、N、C、OおよびFのうち少なくとも2個である。
【0060】
ペリクル層120は、基板10に積層されて形成される支持層27、コア層21、中間層25およびキャッピング層29を含む。中間層25は、コア層21の一面または両面に形成されてもよい。すなわち支持層27は、基板10の開放部13を覆うように基板10の上に形成される。コア層21は、支持層27の上に形成される。中間層25は、コア層21の上に形成される。また、キャッピング層29は、中間層25の上に形成される。
【0061】
第2実施形態によるペリクルは、中間層25が追加されたことを除いて、第1実施形態によるペリクル(
図1の100)と同じ構造を有する。
【0062】
ペリクル層120に含まれる中間層25も、Mおよびαを組み合わせた素材で形成される。
【0063】
従来のペリクルにおいて、高い極紫外線透過率を確保するために、中間層は、5nm以下の厚さに形成する必要があった。しかしながら、第2実施形態では、中間層25の素材としてMおよびαを組み合わせた素材、例えばYOF、YBxNy(x+y≧1)、YOxNy(x+y≧1)、SiBxNy(x+y≧2)、SiBx(x≧3)、SiC、SiNx(x≧1)、YBx(x≧2)、YN、Y2O3、YF3、BN、NbBx(x≧1)、NbCx(x≧1)およびB4Cから選ばれる素材を使用することによって、中間層25を10nmの厚さに形成しても、90%以上の高い極紫外線透過率を有し、熱的安定性、機械的安定性および化学的耐久性を有するペリクルを提供できる。
【0064】
このような第2実施形態によるペリクルは、次のような製造工程で製造できる。まず、開放部13が形成されていない状態の基板10の上に支持層27、コア層21、中間層25およびキャッピング層29をこの順に積層して、ペリクル層120を形成する。
【0065】
この際、支持層27、コア層21、中間層25およびキャッピング層29は、それぞれCVD、ALD、電子ビーム蒸着またはスパッタリング工程で形成できる。
【0066】
また、ペリクル層120下の基板10の中心部を除去して、ペリクル層120の下面が露出する開放部13を形成することによって、第2実施形態によるペリクルを得ることができる。すなわち支持層27下の基板10の中心部をウエットエッチングを通じて除去して、開放部13を形成する。
【0067】
このように第2実施形態によるペリクルは、ペリクル層120がM-α素材を含むので、90%以上の高い極紫外線透過率と0.04%以下の極紫外線反射率を提供できる。
【0068】
また、第2実施形態によるペリクルは、90%以上の高い極紫外線透過率と0.04%以下の極紫外線反射率を有し、熱的安定性、機械的安定性および化学的耐久性を提供できる。
【0069】
[第3実施形態]
図4は、本発明の第3実施形態による極紫外線露光用ペリクルを示す拡大図である。
【0070】
図4を参照すると、第3実施形態によるペリクルは、Mおよびαを組み合わせたM-α素材で形成されたペリクル層220を含む。ここで、Mは、Si、Zr、Mo、Ru、Y、W、Ti、IrおよびNbのうち一つである。αは、B、N、C、OおよびFのうち少なくとも2個である。
【0071】
ペリクル層220は、基板10に積層されて形成される支持層27、第1中間層23、コア層21、第2中間層25およびキャッピング層29を含む。第1および第2中間層23、25は、コア層21の両面に形成される。すなわち支持層27は、基板10の開放部13を覆うように基板10の上に形成される。第1中間層23は、支持層27の上に形成される。コア層21は、第1中間層23の上に形成される。第2中間層25は、コア層21の上に形成される。また、キャッピング層29は、第2中間層25の上に形成される。
【0072】
第3実施形態によるペリクルは、第1および第2中間層23、25が追加されたことを除いて、第1実施形態によるペリクル(
図1の100)と同じ構造を有する。
【0073】
ペリクル層220に含まれる第1および第2中間層23、25も、Mおよびαを組み合わせた素材で形成される。
【0074】
従来のペリクルにおいて、高い極紫外線透過率を確保するために、中間層は、5nm以下の厚さに形成する必要があった。しかしながら、第3実施形態では、第1および第2中間層23、25の素材としてMおよびαを組み合わせた素材、例えばYOF、YBxNy(x+y≧1)、YOxNy(x+y≧1)、SiBxNy(x+y≧2)、SiBx(x≧3)、SiC、SiNx(x≧1)、YBx(x≧2)、YN、Y2O3、YF3、BN、NbBx(x≧1)、NbCx(x≧1)およびB4Cから選ばれる素材を使用することによって、第1および第2中間層23、25を10nmの厚さに形成しても、90%以上の高い極紫外線透過率を有し、熱的安定性、機械的安定性および化学的耐久性を有するペリクルを提供できる。
【0075】
このような第3実施形態によるペリクルは、次のような製造工程で製造できる。まず、開放部13が形成されていない状態の基板10の上に支持層27、第1中間層23、コア層21、第2中間層25およびキャッピング層29をこの順に積層して、ペリクル層220を形成する。
【0076】
この際、支持層27、第1中間層23、コア層21、第2中間層25およびキャッピング層29は、それぞれCVD、ALD、電子ビーム蒸着またはスパッタリング工程で形成できる。
【0077】
また、ペリクル層220下の基板10の中心部を除去して、ペリクル層220の下面が露出する開放部13を形成することによって、第3実施形態によるペリクルを得ることができる。すなわち支持層27下の基板10の中心部をウエットエッチングを通じて除去して、開放部13を形成する。
【0078】
このように第3実施形態によるペリクルは、ペリクル層220がM-α素材を含むので、90%以上の高い極紫外線透過率と0.04%以下の極紫外線反射率を提供できる。
【0079】
また、第3実施形態によるペリクルは、90%以上の高い極紫外線透過率と0.04%以下の極紫外線反射率を有し、熱的安定性、機械的安定性および化学的耐久性を提供できる。
【0080】
[実験例]
このような本発明によるペリクルの350W以上の極紫外線出力環境での透過率と反射率を確認するために、
図5~
図40による第1~第36実験例によるペリクルに対するシミュレーションを行った。
【0081】
第1~第36実験例によるペリクルは、第1実施形態によるペリクル層を含む。すなわちペリクル層は、支持層、コア層およびキャッピング層を含む。
【0082】
支持層の厚さが5nmの場合、コア層は、0~30nm、キャッピング層は、0~10nmに厚さを変更しつつ、第1~第36実験例によるペリクルの350Wの極紫外線出力環境での透過率と反射率をシミュレーションした。
【0083】
第1~第9実験例
図5~
図13は、第1~第9実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。
【0084】
第1~第9実験例によるペリクル層は、MとしてSiを使用し、αとしてBおよびNを使用した。ここで、支持層の素材は、SiNxである。コア層の素材は、SiBxN1-x(0<x<1)である。また、キャッピング層の素材は、SiNxである。
【0085】
第1~第9実験例によるペリクルは、「SiN_SiBaNb_SiN(5nm)」で表示した。「SiN(5nm)」は、支持層を示す。「SiBaNb」は、コア層を示す。また、「SiN」は、キャッピング層を示す。
【0086】
図5を参照すると、第1実験例によるペリクルは、「SiN_SiB0.1N0.9_SiN(5nm)」で表示した。
【0087】
コア層の厚さが13nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率は、90%以上である。
【0088】
また、コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、反射率は、0.05%以下である。
【0089】
図6を参照すると、第2実験例によるペリクルは、「SiN_SiB0.2N0.8_SiN(5nm)」で表示した。
【0090】
コア層の厚さが14nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率は、90%以上である。
【0091】
また、コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、反射率は、0.05%以下である。
【0092】
図7を参照すると、第3実験例によるペリクルは、「SiN_SiB0.3N0.7_SiN(5nm)」で表示した。
【0093】
コア層の厚さが15nm未満であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率は、90%以上である。
【0094】
また、コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、反射率は、0.05%以下である。
【0095】
図8を参照すると、第4実験例によるペリクルは、「SiN_SiB0.4N0.6_SiN(5nm)」で表示した。
【0096】
コア層の厚さが15nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率は、90%以上である。
【0097】
また、コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、反射率は、0.05%以下である。
【0098】
図9を参照すると、第5実験例によるペリクルは、「SiN_SiB0.5N0.5_SiN(5nm)」で表示した。
【0099】
コア層の厚さが17nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率は、90%以上である。
【0100】
また、コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが6~8nmである場合、反射率は、0.04%以下である。
【0101】
図10を参照すると、第6実験例によるペリクルは、「SiN_SiB0.6N0.4_SiN(5nm)」で表示した。
【0102】
コア層の厚さが17nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率は、90%以上である。
【0103】
また、コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが6~8nmである場合、反射率は、0.04%以下である。
【0104】
図11を参照すると、第7実験例によるペリクルは、「SiN_SiB0.7N0.3_SiN(5nm)」で表示した。
【0105】
コア層の厚さが20nm未満であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率は、90%以上である。
【0106】
また、コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが6~8nmである場合、反射率は、0.04%以下である。
【0107】
図12を参照すると、第8実験例によるペリクルは、「SiN_SiB0.8N0.2_SiN(5nm)」で表示した。
【0108】
コア層の厚さが22nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率は、90%以上である。
【0109】
また、コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが6~8nmである場合、反射率は、0.04%以下である。
【0110】
図13を参照すると、第9実験例によるペリクルは、「SiN_SiB0.9N0.1_SiN(5nm)」で表示した。
【0111】
コア層の厚さが24nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率は、90%以上である。
【0112】
また、コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが6~8nmである場合、反射率は、0.04%以下である。
【0113】
このように第1~第9実験例によれば、コア層の素材としてSiBxN1-x(0<x<1)を使用する場合、コア層の厚さが24nm以下であり、キャッピング層の厚さが6~8nmで90%以上の極紫外線透過率と0.04%以下の反射率を有するペリクルを提供できることを確認できる。
【0114】
第10~第18実験例
図14~
図22は、第10~第18実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。
【0115】
第10~第18実験例によるペリクル層は、MとしてSiを使用し、αとしてBおよびNを使用した。ここで、支持層の素材は、SiNxである。コア層の素材は、SiB6xN1-x(0<x<1)である。また、キャッピング層の素材は、SiNxである。
【0116】
第10~第18実験例によるペリクルは、「SiN_SiBaNb_SiN(5nm)」で表示した。「SiN(5nm)」は、支持層を示す。「SiBaNb」は、コア層を示す。
また、「SiN」は、キャッピング層を示す。
【0117】
図14を参照すると、第10実験例によるペリクルは、「SiN_SiB0.6N0.9_SiN(5nm)」で表示した。
【0118】
コア層の厚さが13nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率は、90%以上である。
【0119】
また、コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、反射率は、0.05%以下である。
【0120】
図15を参照すると、第11実験例によるペリクルは、「SiN_SiB1.2N0.8_SiN(5nm)」で表示した。
【0121】
コア層の厚さが15nm未満であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率は、90%以上である。
【0122】
また、コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、反射率は、0.05%以下である。
【0123】
図16を参照すると、第12実験例によるペリクルは、「SiN_SiB1.8N0.7_SiN(5nm)」で表示した。
【0124】
コア層の厚さが16nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率は、90%以上である。
【0125】
また、コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが2~4nmまたは8~10nmである場合、反射率は、0.04%以下である。
【0126】
図17を参照すると、第13実験例によるペリクルは、「SiN_SiB2.4N0.6_SiN(5nm)」で表示した。
【0127】
コア層の厚さが17nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率は、90%以上である。
【0128】
また、コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが1~4nmまたは8~10nmである場合、反射率は、0.04%以下である。
【0129】
図18を参照すると、第14実験例によるペリクルは、「SiN_SiB3.0N0.5_SiN(5nm)」で表示した。
【0130】
コア層の厚さが18nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率は、90%以上である。
【0131】
また、コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが1~4nmまたは7~10nmである場合、反射率は、0.04%以下である。
【0132】
図19を参照すると、第15実験例によるペリクルは、「SiN_SiB3.6N0.4_SiN(5nm)」で表示した。
【0133】
コア層の厚さが20nm未満であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率は、90%以上である。
【0134】
また、コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが1~4nmまたは8~10nmである場合、反射率は、0.04%以下である。
【0135】
図20を参照すると、第16実験例によるペリクルは、「SiN_SiB4.2N0.3_SiN(5nm)」で表示した。
【0136】
コア層の厚さが22nm未満であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率は、90%以上である。
【0137】
また、コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが1~4nmまたは7~10nmである場合、反射率は、0.04%以下である。
【0138】
図21を参照すると、第17実験例によるペリクルは、「SiN_SiB4.8N0.2_SiN(5nm)」で表示した。
【0139】
コア層の厚さが23nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率は、90%以上である。
【0140】
また、コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが1~4nmまたは7~10nmである場合、反射率は、0.04%以下である。
【0141】
図22を参照すると、第18実験例によるペリクルは、「SiN_SiB5.4N0.1_SiN(5nm)」で表示した。
【0142】
コア層の厚さが24nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率は、90%以上である。
【0143】
また、コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが1~4nmまたは7~10nmである場合、反射率は、0.04%以下である。
【0144】
このように第10~第18実験例によれば、コア層の素材としてSiB6xN1-x(0<x<1)を使用する場合、コア層の厚さが24nm以下であり、キャッピング層の厚さが1~4nmまたは7~10nmで90%以上の極紫外線透過率と0.04%以下の反射率を有するペリクルを提供できることを確認できる。
【0145】
第19~第27実験例
図23~
図31は、第19~第27実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。
【0146】
第19~第27実験例によるペリクル層は、MとしてYを使用し、αとしてBおよびNを使用した。ここで、支持層の素材は、SiNxである。コア層の素材は、YB2xN1-x(0<x<1)である。また、キャッピング層の素材は、SiNxである。
【0147】
第19~第27実験例によるペリクルは、「SiN_YBaNb_SiN(5nm)」で表示した。「SiN(5nm)」は、支持層を示す。「YBaNb」は、コア層を示す。また、「SiN」は、キャッピング層を示す。
【0148】
図23を参照すると、第19実験例によるペリクルは、「SiN_YB0.2N0.9_SiN(5nm)」で表示した。
【0149】
コア層の厚さが14nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率は、90%以上である。
【0150】
また、コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが2~4nmまたは8~10nmである場合、反射率は、0.04%以下である。
【0151】
図24を参照すると、第20実験例によるペリクルは、「SiN_YB0.4N0.8_SiN(5nm)」で表示した。
【0152】
コア層の厚さが15nm未満であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率は、90%以上である。
【0153】
また、コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが2~4nmまたは8~10nmである場合、反射率は、0.04%以下である。
【0154】
図25を参照すると、第21実験例によるペリクルは、「SiN_YB0.6N0.7_SiN(5nm)」で表示した。
【0155】
コア層の厚さが16nm未満であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率は、90%以上である。
【0156】
また、コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが2~4nmまたは8~10nmである場合、反射率は、0.04%以下である。
【0157】
図26を参照すると、第22実験例によるペリクルは、「SiN_YB0.8N0.6_SiN(5nm)」で表示した。
【0158】
コア層の厚さが17nm未満であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率は、90%以上である。
【0159】
また、コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが2~4nmまたは8~10nmである場合、反射率は、0.04%以下である。
【0160】
図27を参照すると、第23実験例によるペリクルは、「SiN_YB1.0N0.5_SiN(5nm)」で表示した。
【0161】
コア層の厚さが17nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率は、90%以上である。
【0162】
また、コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが2~4nmまたは8~10nmである場合、反射率は、0.04%以下である。
【0163】
図28を参照すると、第24実験例によるペリクルは、「SiN_YB1.2N0.4_SiN(5nm)」で表示した。
【0164】
コア層の厚さが18nm未満であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率は、90%以上である。
【0165】
また、コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが2~4nmまたは8~10nmである場合、反射率は、0.04%以下である。
【0166】
図29を参照すると、第25実験例によるペリクルは、「SiN_YB1.4N0.3_SiN(5nm)」で表示した。
【0167】
コア層の厚さが19nm未満であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率は、90%以上である。
【0168】
また、コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが2~4nmまたは8~10nmである場合、反射率は、0.04%以下である。
【0169】
図30を参照すると、第26実験例によるペリクルは、「SiN_YB1.6N0.2_SiN(5nm)」で表示した。
【0170】
コア層の厚さが21nm未満であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率は、90%以上である。
【0171】
また、コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが2~4nmまたは8~10nmである場合、反射率は、0.04%以下である。
【0172】
図31を参照すると、第27実験例によるペリクルは、「SiN_YB1.8N0.1_SiN(5nm)」で表示した。
【0173】
コア層の厚さが23nm未満であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率は、90%以上である。
【0174】
また、コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが2~4nmまたは8~10nmである場合、反射率は、0.04%以下である。
【0175】
このように第19~第27実験例によれば、コア層の素材としてYB2xN1-x(0<x<1)を使用し、支持層およびキャッピング層の素材としてSiNxを使用する場合、コア層の厚さが23nm未満であり、キャッピング層の厚さが2~4nmまたは8~10nmで90%以上の極紫外線透過率と0.04%以下の反射率を有するペリクルを提供できることを確認できる。
【0176】
第28~第36実験例
図32~
図40は、第28~第36実験例による極紫外線露光用ペリクルの透過率と反射率を示すグラフである。
【0177】
第28~第36実験例によるペリクル層は、MとしてYを使用し、αとしてBおよびNを使用した。ここで、支持層の素材は、YB6である。コア層の素材は、YB2xN1-x(0<x<1)である。また、キャッピング層の素材は、YB6である。
【0178】
第28~第36実験例によるペリクルは、「YB6_YBaNb_YB6(5nm)」で表示した。「YB6(5nm)」は、支持層を示す。「YBaNb」は、コア層を示す。また、「YB6」は、キャッピング層を示す。
【0179】
図32を参照すると、第28実験例によるペリクルは、「YB6_YB0.2N0.9_YB6(5nm)」で表示した。
【0180】
コア層の厚さが18nm未満であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率は、90%以上である。
【0181】
また、コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下の一部区間において反射率は、0.04%以下である。反射率が0.04%以下の区間は、コア層およびキャッピング層の厚さグラフにおいて斜線方向に狭く6個の領域に現れることを確認できる。
【0182】
図33を参照すると、第29実験例によるペリクルは、「YB6_YB0.4N0.8_YB6(5nm)」で表示した。
【0183】
コア層の厚さが18nm未満であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率は、90%以上である。
【0184】
また、コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下の一部区間において反射率は、0.04%以下である。反射率が0.04%以下の区間は、コア層およびキャッピング層の厚さグラフにおいて斜線方向に狭く6個の領域に現れることを確認できる。
【0185】
図34を参照すると、第30実験例によるペリクルは、「YB6_YB0.6N0.7_YB6(5nm)」で表示した。
【0186】
コア層の厚さが19nm未満であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率は、90%以上である。
【0187】
また、コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下の一部区間において反射率は、0.04%以下である。反射率が0.04%以下の区間は、コア層およびキャッピング層の厚さグラフにおいて斜線方向に狭く6個の領域に現れることを確認できる。
【0188】
図35を参照すると、第31実験例によるペリクルは、「YB6_YB0.8N0.6_YB6(5nm)」で表示した。
【0189】
コア層の厚さが20nm未満であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率は、90%以上である。
【0190】
また、コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下の一部区間において反射率は、0.04%以下である。反射率が0.04%以下の区間は、コア層およびキャッピング層の厚さグラフにおいて斜線方向に狭く6個の領域に現れることを確認できる。
【0191】
図36を参照すると、第32実験例によるペリクルは、「YB6_YB1.0N0.5_YB6(5nm)」で表示した。
【0192】
コア層の厚さが21nm未満であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率は、90%以上である。
【0193】
また、コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下の一部区間において反射率は、0.04%以下である。反射率が0.04%以下の区間は、コア層およびキャッピング層の厚さグラフにおいて斜線方向に狭く6個の領域に現れることを確認できる。
【0194】
図37を参照すると、第33実験例によるペリクルは、「YB6_YB1.2N0.4_YB6(5nm)」で表示した。
【0195】
コア層の厚さが23nm未満であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率は、90%以上である。
【0196】
また、コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下の一部区間において反射率は、0.04%以下である。反射率が0.04%以下の区間は、コア層およびキャッピング層の厚さグラフにおいて斜線方向に狭く6個の領域に現れることを確認できる。
【0197】
図38を参照すると、第34実験例によるペリクルは、「YB6_YB1.4N0.3_YB6(5nm)」で表示した。
【0198】
コア層の厚さが24nm未満であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率は、90%以上である。
【0199】
また、コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下の一部区間において反射率は、0.04%以下である。反射率が0.04%以下の区間は、コア層およびキャッピング層の厚さグラフにおいて斜線方向に狭く6個の領域に現れることを確認できる。
【0200】
図39を参照すると、第35実験例によるペリクルは、「YB6_YB1.6N0.2_YB6(5nm)」で表示した。
【0201】
コア層の厚さが25nm未満であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率は、90%以上である。
【0202】
また、コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下の一部区間において反射率は、0.04%以下である。反射率が0.04%以下の区間は、コア層およびキャッピング層の厚さグラフにおいて斜線方向に狭く6個の領域に現れることを確認できる。
【0203】
図40を参照すると、第36実験例によるペリクルは、「YB6_YB1.8N0.1_YB6(5nm)」で表示した。
【0204】
コア層の厚さが27nm未満であり、キャッピング層の厚さが10nm以下である場合、透過率は、90%以上である。
【0205】
また、コア層の厚さが30nm以下であり、キャッピング層の厚さが10nm以下の一部区間において反射率は、0.04%以下である。反射率が0.04%以下の区間は、コア層およびキャッピング層の厚さグラフにおいて斜線方向に狭く6個の領域に現れることを確認できる。
【0206】
このように第28~第36実験例によれば、コア層の素材としてYB2xN1-x(0<x<1)を使用し、支持層およびキャッピング層の素材としてYB6を使用する場合、コア層の厚さが27nm未満であり、キャッピング層の厚さが10nm以下の一部の厚さにおいて90%以上の極紫外線透過率と0.04%以下の反射率を有するペリクルを提供できることを確認できる。
【0207】
なお、本明細書と図面に開示された実施形態は、理解を助けるために特定例を提示したものに過ぎず、本発明の範囲を限定しようとするものではない。ここに開示された実施形態以外にも、本発明の技術的思想に基づく他の変形例が実施可能であるということは、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者にとって自明なものである。
【符号の説明】
【0208】
10 基板
13 開放部
20、120、220 ペリクル層
21 コア層
23、25 中間層
23 第1中間層
25 第2中間層
27 支持層
29 キャッピング層
100 極紫外線露光用ペリクル