(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】入力デバイスの外装部材
(51)【国際特許分類】
H04R 1/02 20060101AFI20240116BHJP
G06F 3/16 20060101ALI20240116BHJP
A63F 13/215 20140101ALI20240116BHJP
A63F 13/24 20140101ALI20240116BHJP
G06F 3/0338 20130101ALI20240116BHJP
H04R 1/40 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
H04R1/02 107
G06F3/16 610
A63F13/215
A63F13/24
G06F3/0338 411
H04R1/40 320Z
(21)【出願番号】P 2022101193
(22)【出願日】2022-06-23
(62)【分割の表示】P 2020557544の分割
【原出願日】2019-05-22
【審査請求日】2022-07-21
(31)【優先権主張番号】P 2018225449
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】310021766
【氏名又は名称】株式会社ソニー・インタラクティブエンタテインメント
(74)【代理人】
【識別番号】110000154
【氏名又は名称】弁理士法人はるか国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森田 正穂
(72)【発明者】
【氏名】蕪木 啓益
【審査官】堀 洋介
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2004/0213419(US,A1)
【文献】特表2015-506012(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0205328(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第104368149(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 1/02
H04R 1/40
G06F 3/0338
G06F 3/16
A63F 13/215
A63F 13/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力デバイスの外装部材であって、
前記入力デバイスは、
右手の指で操作する第1右操作部材が配置されている上面
と前記第1右操作部材が配置されている領域から後方に膨らんでいる右膨らみ部とを有している右被保持部と、
左手の指で操作する第1左操作部材が配置されている上面と
前記第1左操作部材が配置されている領域から後方に膨らんでいる左膨らみ部とを有している左被保持部と、
前記右被保持部と前記左被保持部との間に位置している中央部と、
前記第1右操作部材よりも後方に位置し、前記入力デバイスの左右方向での中心よりも右方に位置し、前記第1右操作部材及び前記右膨らみ部よりも前記左右方向での中心寄りに位置している第2右操作部材と、
前記第1左操作部材よりも後方に位置し、前記入力デバイスの前記左右方向での中心よりも左方に位置し、前記第1左操作部材及び前記左膨らみ部よりも前記左右方向での中心寄りに位置している第2左操作部材と、
前記中央部に設けられている第1マイクロフォンと第2マイクロフォンとを有し、
前記外装部材は、
前記中央部の外装を構成する部分に形成され、前後方向における前記中央部の中心よりも後方に位置し、前記第1マイクロフォンへの音声の伝搬を許容する第1音孔と、
前記中央部の外装を構成する前記部分に形成され、前記第2マイクロフォンへの音声の伝搬を許容する第2音孔と
、
前記入力デバイスの部品の上側を覆う上ケースと、
前記入力デバイスの部品の下側を覆う下ケースと、
前記上ケースに形成される、前記第2右操作部材を配置するための右開口と、
前記上ケースに形成される、前記第2左操作部材を配置するための左開口とを有し、
前記第1音孔が向いている方向と、前記第2音孔が向いている方向は異なって
おり、
前記第1音孔と前記第2音孔は、前記入力デバイスの平面視において前記右開口と前記左開口との間に位置し、
前記第1音孔は前記上ケースに形成され上方に向いており、前記第2音孔は前記下ケースに形成され下方に向いている
入力デバイスの外装部材。
【請求項2】
前記第1音孔は、前記中央部の外装を構成する前記部分の上下方向での中心より上方に形成され、
前記第2音孔は、前記中央部の外装を構成する前記部分の上下方向での中心より下方に形成されている
請求項1に記載される、入力デバイスの外装部材。
【請求項3】
前記中央部の外装を構成する部分の上面は、高領域と、低領域とを有し、
前記上面は、前記低領域において、前記高領域から後方に向かって下がるように斜めに形成されており、
前記第1音孔は前記低領域に形成されている
請求項1に記載される、入力デバイスの外装部材。
【請求項4】
前記第1音孔と前記第2音孔は、前後方向と上下方向とに沿った平面と交差している
請求項1に記載の入力デバイスの外装部材。
【請求項5】
前記平面は左右方向における前記外装部材の中心を通る平面である
請求項
4に記載の入力デバイスの外装部材。
【請求項6】
前記第1音孔と第2音孔は、前後方向における前記中央部の中心よりも後方に位置している
請求項
1に記載の入力デバイスの外装部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はマイクロフォンを有する入力デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
ゲーム操作に利用される入力デバイスの多くは、操作スティックや、押しボタン、十字キー(方向キー)、トリガーボタンなど複数の操作部材を有している。特許文献1は、このような操作部材を有し且つ音声入力機能を有する入力デバイスを開示している。この入力デバイスは複数のマイクロフォンで構成されるマイクロフォンアレイを有している。特許文献1では、複数のマイクロフォンから得られる音声データを利用して、ユーザの発話音声について適応ビームフォーミング処理が実行されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ユーザは入力デバイスを握っている状態で、操作部材に指を置いたり、指を伸ばして操作部材を操作する。マイクロフォンの位置によっては、入力デバイスを握る手や操作部材を操作する指がマイクロフォンによる集音の障害となり、適切な音声データの生成を阻害する可能性がある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示で提案する入力デバイスは、右手の指で操作する第1右操作部材が配置されている上面を有している右被保持部と、左手の指で操作する第1左操作部材が配置されている上面を有している左被保持部と、前記右被保持部と前記左被保持部との間に位置している中央部と、前記中央部の内部に配置され、前後方向における前記中央部の中心よりも後方に位置している第1マイクロフォンと、前記中央部の内部に配置されている第2マイクロフォンと、を有している。
【0006】
この入力デバイスによると、第1マイクロフォンによる集音と第2マイクロフォンによる集音とに対する、入力デバイスを握る手や操作部材を操作する指の影響を低減できる。また、この入力デバイスによると、第1マイクロフォンを通したユーザの発話音声の取得性能を向上できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1A】本開示で提案する入力デバイスの一例を示す平面図である。
【
図3A】
図1に示すII-II線での断面図である。
【
図4】入力デバイスを含むシステムのブロック図である。
【
図5】マイクロフォンの取付構造の他の例を示す断面図である。
【
図6】本開示で提案する入力デバイスの他の例を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下において、本開示で提案する入力デバイスについて説明する。本明細書では、本開示で提案する入力デバイスの一例として、
図1A等に示す入力デバイス10について説明する。本開示で提案する入力デバイスの構造は、例えば、ゲーム装置として機能する情報処理装置の操作のために利用される。
【0009】
以下の説明では、
図1AのX1及びX2で示す方向をそれぞれ右方及び左方と称し、Y1及びY2で示す方向をそれぞれ前方及び後方と称する。また、
図2のZ1及びZ2で示す方向をそれぞれ上方及び下方と称する。
【0010】
[操作部材の配置]
図1Aに示すように、入力デバイス10は、右手で保持される右被保持部10Rと、左手で保持される左被保持部10Lとを有している。右被保持部10Rの上面と左被保持部10Lの上面とに、操作部材が配置されている。例えば、右被保持部10Rの上面に、菱形の頂点に位置している4つの操作ボタン11が配置されている。左被保持部10Lの上面には、十字形状の方向キー12が配置されている。方向キー12の形状は十字形状でなくてもよい。例えば、方向キー12は円形でもよい。これらの操作部材は、右被保持部10R、10Lの前部に位置している。右被保持部10Rの前面と左被保持部10Lの前面にも、操作ボタン13と、操作ボタン13の下方に位置するトリガーボタン14(
図3A参照)とが配置されている。右被保持部10Rと左被保持部10Lのそれぞれは、上面の操作部材(入力デバイス10の例において、方向キー12及び4つの操作ボタン11)が配置された領域Raから後方に伸びている膨らみ部Gを有している。
【0011】
図1Aに示すように、入力デバイス10は、右被保持部10Rと左被保持部10Lとの間に位置している中央部10Mを有している。本明細書において、中央部10Mとは、右被保持部10Rの上面に配置されている操作部材(具体的には4つの操作ボタン11)と、左被保持部10Lの上面に配置されている操作部材(具体的には方向キー12)との間の部分である。すなわち、中央部10Mは、右被保持部10Rの4つの操作ボタン11の左端を通る直線と、左被保持部10Lの方向キー12の右端を通る直線との間の部分である。被保持部10R、10Lの膨らみ部Gは、中央部10Mの後端よりもさらに後方に伸びているが、入力デバイス10の形状はこれに限られない。すなわち、中央部10Mの後端は被保持部10R、10Lの後端に達していてもよい。
【0012】
図1Aに示すように、中央部10Mには、その上面の前部を構成する板状の操作パッド16を有している。操作パッド16は、ユーザの指が触れた位置を検知するタッチセンサを有している。また、操作パッド16は上下動可能であり、押しボタンとしても機能する。操作パッド16の下側には、操作パッド16に対する押し操作を検知するスイッチ51(
図3A参照)が配置されている。また、中央部10Mは、操作パッド16の後方に配置されている操作ボタン18を有してよい。操作ボタン18は、例えば、電源ボタンとして機能したり、初期画面を表示するためのホームボタンとして機能する。さらに中央部10Mは、左右に離れている操作ボタン19R、19Lを有している。操作ボタン19R、19Lは、例えば、種々の選択項目を表示したり、ゲーム画像を送信するなど、特定の機能を実行するためのショートカットボタンである。入力デバイス10の例では、右側の操作ボタン19Rは操作パッド16の右方に位置し、左側の操作ボタン19Lは操作パッド16の左方に位置している。
【0013】
図1Aに示すように、入力デバイス10は、左右方向で離れて配置される操作スティック17R、17Lを有している。入力デバイス10の例において、右側の操作スティック17Rは、右被保持部10Rに設けられている4つの操作ボタン11よりも後方に位置し且つ4つの操作ボタン11よりも左右方向での入力デバイス10の中心P1寄りに位置している。左側の操作スティック17Lは、左被保持部10Lに設けられている方向キー12よりも後方に位置し且つ方向キー12よりも左右方向での入力デバイス10の中心P1寄りに位置している。操作スティック17R、17Lは、操作スティック17R、17Lの半径方向に傾けたり、傾けた状態で回転させたりできる。操作スティック17R、17Lは、半径方向にスライド可能であってもよい。操作スティック17R、17Lの高さは、他の操作部材、例えば方向キー12や操作ボタン11よりも高い。
【0014】
操作スティック17R、17Lと、4つの操作ボタン11と、方向キー12は、ゲームプレイの最中において特に使用頻度が高い操作部材である。より具体的には、操作スティック17R、17Lと、4つの操作ボタン11と、方向キー12の使用頻度は、操作ボタン18や操作ボタン19R、19Lよりも高い。入力デバイス10の例では、右被保持部10Rに配置される4つの操作ボタン11が請求項の「第1右操作部材」に対応し、左被保持部10Lに配置される方向キー12が請求項の「第1左操作部材」に対応している。
図1Aに示すように、「第1右操作部材」は、右被保持部10Rの側面に沿った直線L5と交差する操作部材である。「第1左操作部材」は、左被保持部10Lの側面に沿った直線L6と交差する操作部材である。また、入力デバイス10の例では、右側の操作スティック17Rは請求項の「第2右操作部材」に対応し、左側の操作スティック17Lは請求項の「第2左操作部材」に対応している。
【0015】
操作部材の種類や配置は、入力デバイス10の例に限られない。例えば、右被保持部10Rの前部(4つの操作ボタン11の位置)に操作スティック17Rが配置されてもよい。つまり、「第1右操作部材」が操作スティック17Rであってもよい。同様に、左被保持部10Lの前部(方向キー12の位置)に操作スティック17Lが配置されてもよい。すなわち、「第1左操作部材」が操作スティック17Lであってもよい。また、入力デバイス10における操作スティック17R、17Lの位置に、操作ボタン11や方向キー12が配置されてもよい。「第2右操作部材」と「第2左操作部材」が操作ボタン11や方向キー12であってもよい。また、中央部10Mは板状の操作パッド16を有していなくてもよい。
【0016】
[マイクロフォン]
図1B及び
図3Aに示すように、入力デバイス10は、ユーザの発話音声を取得するための第1マイクロフォン21と第2マイクロフォン22とを内蔵している。マイクロフォン21、22を通して取得された音声データは、入力デバイス10と接続されているゲーム装置90(
図4参照)に送信され、例えば音声認識処理に提供される。また、マイクロフォン21、22を通して取得された音声データは、ゲーム装置90に送信され、他ユーザとのボイスチャット(音声通話)に利用されてもよい。音声認識処理やボイスチャットを可能とするために、入力デバイス10は、マイクロフォン21、22の感度について指向性を形成するビームフォーミング処理を実行する音声入出力回路27(
図4参照)を有している。音声入出力回路27については、後において説明する。
【0017】
図1B及び
図3Aに示すように、第1マイクロフォン21と第2マイクロフォン22は中央部10Mの内部に配置されている。そのため、マイクロフォン21、22の位置は右被保持部10Rの上面にある操作部材(入力デバイス10の例において4つの操作ボタン11)と左被保持部10Lの上面にある操作部材(入力デバイス10の例において方向キー12)とから離れている。入力デバイス10は、樹脂(ABS樹脂やポリカーボネートなど)で形成され入力デバイス10の外面を構成する外装部材30を有している。外装部材30は、中央部10Mの外面を構成する部分、右被保持部10Rの外面を構成する部分、及び左被保持部10Lの外面を構成する部分を有している。マイクロフォン21、22は中央部10Mを構成する部分の内側に配置されている。中央部10Mを構成する部分の外面には、第1マイクロフォン21に向けた音声の伝搬を許容する第1音孔31(
図3A参照)と、第2マイクロフォン22に向けた音声の伝搬を許容する第2音孔32(
図3A参照)とが形成されている。
【0018】
このようにマイクロフォン21、22は中央部10Mに配置され、右被保持部10R及び左被保持部10Lに配置されている操作部材から離れているので、入力デバイス10を利用したゲームプレイの最中に、第1マイクロフォン21による集音に対するユーザの指の影響や、第2マイクロフォン22による集音に対するユーザの指の影響を、低減できる。言い換えると、第1マイクロフォン21へのユーザの発話音声(目的音)の到達をユーザの指が遮ったり、第2マイクロフォン22への発話音声の到達をユーザの指が遮ることを、防ぐことができる。
【0019】
図1Aに示すように、右被保持部10Rの上面に配置されている操作部材(入力デバイス10の例において、4つの操作ボタン11)の後方の領域Rm1と、左被保持部10Lの上面に配置されている操作部材(入力デバイス10の例において、方向キー12)の後方の領域Rh1とには、マイクロフォンが配置されていない。また、入力デバイス10の例では、右被保持部10Rの上面に配置されている操作部材の前方の領域Rm2と、左被保持部10Lの上面に配置されている操作部材の前方の領域Rh2とにも、マイクロフォンが配置されていない。つまり、ビームフォーミング処理に利用されるマイクロフォン(すなわち、マイクロフォン21、22)は、ユーザの発話音声のマイクロフォンへの到達をユーザの指が遮る可能性が極めて少ない位置に配置されている。
【0020】
加えて、入力デバイス10がユーザに保持されている状態において、マイクロフォン21,22は操作ボタン18や操作パッド16よりもユーザ側に配置されている。すなわち、マイクロフォン21、22は、ユーザの発話音声のマイクロフォンへの到達がユーザの指によって遮られる可能性が少ない位置に配置されている。入力デバイス10の例では、入力デバイス10の上面に配置されている、指で操作される全ての入力手段よりも、マイクロフォン21,22はユーザ側に配置されている。
【0021】
入力デバイス10の例において、第2マイクロフォン22は第1マイクロフォン21の下方に位置している。そして、第1マイクロフォン21は上方に向いており、第2マイクロフォン22は下方に向いている。そのため、
図3Aで示すように、第1マイクロフォン21のための第1音孔31の位置と、第2マイクロフォン22のための第2音孔32の位置は上下方向において離れている。第2音孔32は第1音孔31から下方に離れている。なお、入力デバイス10の例において、音孔31、32は、外装部材30の外面に形成されている部分だけでなく、外面からマイクロフォン21、22に向かって伸びている部分(筒状部分)も含む。
【0022】
ユーザが入力デバイス10を握っているとき、発話音声の音源(ユーザの口)は、通常、入力デバイス10から斜め後方且つ上方に位置している。したがって、上下方向において離れている上述した2つの音孔31、32によると、入力デバイス10を握っている発話音声の音源(ユーザの口)から第1音孔31を経由する第1マイクロフォン21までの距離と、同音源から第2音孔32を経由する第2マイクロフォン22までの距離とを異ならせることができる。入力デバイス10の例では、ユーザの口から第2マイクロフォン22までの距離を、ユーザの口から第1マイクロフォン21までの距離より大きくできる。その結果、マイクロフォン21、22のビーム方向(マイクロフォンの感度が高い方向)を、音源であるユーザの口に向けることができ、発話音声の音声データを高い精度で得ることができる。
【0023】
なお、入力デバイス10の例とは異なり、第1音孔31の位置と第2音孔32の位置は前後方向において離れていてもよい。この場合でも、発話音声の音源から第1音孔31を経由する第1マイクロフォン21までの距離と、同音源から第2音孔32を経由する第2マイクロフォン22までの距離とを異ならせることができる。なお、マイクロフォン21、22の位置を変えなくても、音孔31、32の位置を調整することにより、音源から第1音孔31を経由する第1マイクロフォン21までの距離と、同音源から第2音孔32を経由する第2マイクロフォン22までの距離とを変えることができ、ビームフォーミング処理における指向特性を変えることができる。反対に、音孔31、32の位置を変えなくても、マイクロフォン21、22の位置を調整することにより、音源から第1音孔31を経由する第1マイクロフォン21までの距離と、同音源から第2音孔32を経由する第2マイクロフォン22までの距離とを変えることができ、ビームフォーミング処理における指向特性を変えることができる。
【0024】
さらに他の例では、2つのマイクロフォン21、22の双方が上方に向いていてもよい。そして、2つのマイクロフォン21、22の位置は前後方向と上下方向の少なくとも一方において離れていてもよい。この場合でも、入力デバイス10を握っている発話音声の音源(ユーザの口)から第1音孔31を経由する第1マイクロフォン21までの距離と、同音源から第2音孔32を経由する第2マイクロフォン22までの距離とを異ならせることができる。
【0025】
図1Bに示すように、第1マイクロフォン21と第2マイクロフォン22は、前後方向と上下方向とに沿った平面P1と交差している。すなわち、第1マイクロフォン21と第2マイクロフォン22は、左右方向に対して直交する平面P1と交差している。第1音孔31は第1マイクロフォン21の上方に形成され、第2音孔22は第2マイクロフォン22の上方に形成されている。したがって、音孔31、32も平面P1と交差している。このような音孔31、32、及びマイクロフォン21、22の配置によると、入力デバイス10の左方又は右方に音源がある環境音をビームフォーミング処理によって効果的に低減できる。
【0026】
平面P1は、ユーザが入力デバイス10を保持している状態で、発話音声の音源(ユーザの口)を通過し且つ前後方向に沿った中心を通る平面であることが望ましい。入力デバイス10の例において、平面P1は、左右の操作スティック17R、17Lの間を通る平面である。より具体的には、平面P1は左右方向での入力デバイス10の中心を通る平面である。言い換えれば、平面P1は、入力デバイス10の右側面と左側面との中間を通る平面である。さらに言い換えれば、平面P1は左右の被保持部10R、10Lの間の中間を通る平面である。第1マイクロフォン21の中心及び第1音孔31の中心は平面P1上に位置してもよいし、平面P1からずれていてもよい。同様に、第2マイクロフォン22の中心及び第2音孔32の中心は、平面P1上に位置してもよいし、平面P1からずれていてもよい。また、平面P1は、入力デバイス10の左右方向での中心からずれていてもよい。入力デバイス10は左右対称の形状でなくてもよい。この場合、平面P1は、左右方向での入力デバイス10の中心を通る平面ではないものの、左右の被保持部10R、10Lの間の中間を通るのが望ましい。こうすれば、平面P1は、ユーザが入力デバイス10を保持している状態で、発話音声の音源(ユーザの口)を通過し且つ前後方向に沿った中心を通る平面となる。
【0027】
図3Aに示すように、入力デバイス10は回路基板20を有している。回路基板20には、例えば、上述した操作パッド16に対する押し操作を検知するためのスイッチ51や、充電ケーブルを接続するためのコネクタ52などが実装される。また、回路基板20には、音声入出力回路27(
図6参照)や、制御装置26(
図6参照)などとして機能する複数の集積回路(不図示)が実装されている。
【0028】
図3Aに示すように、第1マイクロフォン21は回路基板20の上側に配置され、第2マイクロフォン22は回路基板20の下側に配置されている。このため、第2マイクロフォン22の位置は第1マイクロフォン21の位置よりも低い。入力デバイス10の例では、第1マイクロフォン21は回路基板20の上面に直接取り付けられる。また、第2マイクロフォン22は回路基板20の下面に直接取り付けられている。
【0029】
したがって、2つのマイクロフォン21、22の向いている方向は相互に異なっている。具体的には、第1マイクロフォン21は上方に向いており、第2マイクロフォン22は下方に向いている。このことによって、発話音声の音源(ユーザの口)から第2音孔32を経由する第2マイクロフォン22までの距離が、同音源から第1音孔31を経由する第1マイクロフォン21までの距離よりも大きくなる。
【0030】
また、第1マイクロフォン21が回路基板20の上側に配置され、第2マイクロフォン22が回路基板20の下側に配置される構造によると、2つのマイクロフォン21、22の位置を集約でき、マイクロフォン21、22の配置が容易となる。入力デバイス10の例では、
図1Bで示すように、回路基板20に垂直な方向で入力デバイス10を見たとき、すなわち入力デバイス10の平面視において、2つのマイクロフォン21、22は、少なくとも部分的に重なっている。一例では、第1マイクロフォン21の中心位置と第2マイクロフォン22の中心位置は一致している。これとは異なり、第2マイクロフォン22の中心位置は第1マイクロフォン21の中心位置からずれ、且つ、入力デバイス10の平面視において、第1マイクロフォン21と第2マイクロフォン22とが部分的にだけ重なっていてよい。
【0031】
図1Aで示すように、入力デバイス10の平面視において、第1マイクロフォン21は、前後方向における中央部10Mの中心L1よりも後方に位置している。第1マイクロフォン21のこの配置により、発話音声の音源(ユーザの口)と第1マイクロフォン21との距離が近くなるので、ユーザの発話音声が第1マイクロフォン21に届きやすくなる。また、第2マイクロフォン22も、入力デバイス10の平面視において、中心L1よりも後方に位置している。このことにより、発話音声の音源と第2マイクロフォン22との距離も近くなるので、発話音声が第2マイクロフォン22に届きやすくなる。その結果、マイクロフォン21、22の指向性を発話音声の音源に向けて強くできる。
【0032】
マイクロフォン21、22の向き、位置、及び取り付け構造は、入力デバイス10が有する例に限られない。第1マイクロフォン21は回路基板20から上方に離れた位置に取り付けられてもよい。例えば、第1マイクロフォン21は、回路基板20の上側に配置されているフレーム40(
図3A参照)や、外装部材30の内面に取り付けられてよい。そして、第1マイクロフォン21は電線を介して回路基板20に電気的に接続されてもよい。こうすれば、第1マイクロフォン21と第1音孔31との距離を狭めることができる。
【0033】
同様に、第2マイクロフォン22は回路基板20から下方に離れた位置に取り付けられてもよい。第2マイクロフォン22は、例えば下ケース30Lの内面に取り付けられてよい。そして、第2マイクロフォン22は電線を介して回路基板20に電気的に接続されてもよい。こうすれば、第2マイクロフォン22と第2音孔32との距離を狭めることができる。この場合、第2マイクロフォン22は下方に向いているのがよい。
【0034】
さらに他の例では、入力デバイス10は、上下方向に離れている2枚の回路基板を有してもよい。そして、上側の回路基板に第1マイクロフォン21が実装され、下側の回路基板に第2マイクロフォン22が実装されてもよい。
【0035】
さらに他の例として、入力デバイス10の平面視において、第1マイクロフォン21は第2マイクロフォン22と重なる部分を有していなくてもよい。例えば、2つのマイクロフォン21、22のうち一方のマイクロフォンは、他方のマイクロフォンに対して前方に位置してもよい。
【0036】
さらに他の例として、第1マイクロフォン21が上方に向いている一方で、第2マイクロフォン22は後方に向くように配置されてもよい。
【0037】
[マイクロフォンと操作部材との位置関係]
図1Bに示すように、第1マイクロフォン21は右側の操作スティック17Rよりも左方に位置し、左側の操作スティック17Lよりも右方に位置している。また、第1マイクロフォン21は、操作スティック17R、17Lの前端17cよりも後方に位置している。すなわち、第1マイクロフォン21は左右の操作スティック17R、17Lの間に位置している。第1マイクロフォン21のこの配置によると、操作スティック17R、17Lや操作スティック17R、17Lより前方に配置されている操作部材(入力デバイス10の例において、操作パッド16や4つの操作ボタン11)を操作しているユーザの指の、第1マイクロフォン21による集音に対する影響を低減できる。入力デバイス10の例においては、第1マイクロフォン21は、左右の操作スティック17R、17Lの中心17dよりも後方に位置している。
【0038】
上述したように、中央部10Mの上面には複数の操作部材が配置されている。第1マイクロフォン21は、中央部10Mの上面に配置されている全ての操作部材よりも後方に位置している。入力デバイス10の例においては、
図1Aに示すように、操作パッド16、操作ボタン18、及び操作ボタン19R、19Lが、中央部10Mの上面に配置されている。これらの操作部材16、18、19R、19Lのなかでは操作ボタン18が最も後方に位置している。第1マイクロフォン21は操作ボタン18の後方に位置している。
【0039】
図3Aに示すように、中央部10Mは、その内部に、スピーカー53を有している。中央部10Mは、その上面に、スピーカー53の音を外部に出すスピーカー音孔34を有している。スピーカー音孔34はスピーカー53の上方に位置している。入力デバイス10の平面視において、第1マイクロフォン21と第1音孔31は、スピーカー53とスピーカー音孔34よりも後方に位置している。
【0040】
上述したように、第2マイクロフォン22は回路基板20を挟んで第1マイクロフォン21の反対側に位置している。したがって、
図1Bで示すように、第2マイクロフォン22は、第1マイクロフォン21と同様、右側の操作スティック17Rよりも左方に位置し、左側の操作スティック17Lよりも右方に位置している。また、第2マイクロフォン22は、入力デバイス10の平面視において、操作スティック17R、17Lの中心17dよりも後方に位置している。すなわち、第2マイクロフォン22は左右の操作スティック17R、17Lの間に位置している。入力デバイス10の例においては、第1マイクロフォン21は、左右の操作スティック17R、17Lの中心17dよりも後方に位置している。
【0041】
第2マイクロフォン22も、入力デバイス10の平面視において、中央部10Mの上面に配置されている全ての操作部材よりも後方に位置している。入力デバイス10の例においては、第2マイクロフォン22は、第1マイクロフォン21と同様に、操作ボタン18よりも後方に位置している(
図1B参照)。
【0042】
入力デバイス10は、バッテリ54を有している。
図3Aで示すように、入力デバイス10の例では、中央部10Mの内部にバッテリ54が配置されている。バッテリ54は回路基板20の下側に位置している。回路基板20の下側に配置されている第2マイクロフォン22は、入力デバイス10の平面視において、バッテリ54と重ならないように配置されている。すなわち、第2マイクロフォン22は、入力デバイス10の平面視において、バッテリ54の外周縁の外側に位置している。第2マイクロフォン22のこの配置により、第2マイクロフォン22に対して鉛直方向の下側に第2音孔32を位置させることができている。入力デバイス10の例では、第2マイクロフォン22はバッテリ54の後縁54aより後方に位置している。
【0043】
[音孔の詳細]
上述したように、第1マイクロフォン21は上方に向いている。したがって、
図3Bで示すように、第1マイクロフォン21のための第1音孔31は第1マイクロフォン21の上方に位置し、中央部10Mの上面に形成されている。また、第2マイクロフォン22は下方に向いている。したがって、第2マイクロフォン22のための第2音孔32は中央部10Mの下面に形成され、第2マイクロフォン22の下方に位置している。外装部材30は、入力デバイス10の部品の上側を覆う上ケース30Uと、部品の下側を覆い且つ上ケース30Uと組み合わされる下ケース30Lとを有している。第1音孔31は上ケース30Uに形成され、第2音孔32は下ケース30Lに形成されている。
【0044】
図3Bで示すように、第1音孔31は、外装部材30の外面(中央部10Mの上面)から第1マイクロフォン21に向かって下方に伸びている筒状である。第1音孔31の下端31bは、第1マイクロフォン21に直接的に又は間接的に当たっているのがよい。入力デバイス10の例では、第1音孔31の下端31bと第1マイクロフォン21との間に、外装部材30の材料よりも剛性の低い材料(例えば、ゴムなどの弾性材料)で形成されている環状部材35が配置されている。このことによって、第1マイクロフォン21及び回路基板20に作用する応力を軽減できる。第1音孔31は環状部材35の開口を通して第1マイクロフォン21に繋がっている。
【0045】
図3Bで示されるように、第1音孔31の上端のサイズ(直径、前後方向での幅、或いは左右方向での幅)は、第1マイクロフォン21よりも小さい。第1音孔31のサイズは、第1マイクロフォン21に向かって徐々に大きくなっており、下端31bのサイズは第1マイクロフォン21のサイズに対応している。入力デバイス10の例とは異なり、第1音孔31のサイズは、第1音孔31の上端から下端31bまで一定であってもよい。
【0046】
図3Aで示すように、中央部10Mの上面は、相対的に高い高領域R1と、相対的に低い低領域R2とを有している。第1音孔31は低領域R2に形成されている。このことによって、ユーザの指が第1音孔31を塞ぐことを、効果的に防ぐことができる。入力デバイス10の例において、高領域R1は、中央部10Mの前部に形成されている。低領域R2は高領域R1の後方に形成されており、後方に向かって徐々に下がるように傾斜している。入力デバイス10の例とは異なり、低領域R2は傾斜していなくてもよい。すなわち、低領域R2と高領域R1との間に段差が形成されていてもよい。
【0047】
図2に示すように、外装部材30は、操作スティック17R、17Lの基部17bをそれぞれ覆っているベースカバー部33R、33Lを有している。ベースカバー部33R、33Lは平面視で環状であり、その内側に操作スティック17R、17Lが配置されている。第1音孔31は左右のベースカバー部33R、33Lの間に位置し、第1音孔31の位置はベースカバー部33R、33Lの上端33aよりも低い。
【0048】
図3Bで示すように、第2音孔31は、外装部材30の外面(中央部10Mの下面)から第2マイクロフォン22に向かって上方に伸びている筒状である。第2音孔32の上端32bは、第2マイクロフォン22に直接的に又は間接的に当たっているのがよい。入力デバイス10の例では、第2音孔32の上端32bと第2マイクロフォン22との間に、外装部材30の材料よりも剛性の低い材料(例えば、ゴムなどの弾性材料)で形成されている環状部材36が配置されている。このことによって、第2マイクロフォン22及び回路基板20に作用する応力を軽減できる。第2音孔32は環状部材36の開口を通して第2マイクロフォン22に繋がっている。
【0049】
入力デバイス10の例では、
図3Bで示されるように、第2音孔32の下端のサイズ(直径、前後方向での幅、或いは左右方向での幅)は、第2マイクロフォン22よりも小さい。第2音孔32のサイズは、第2マイクロフォン22に向かって徐々に大きくなっており、第2音孔32の上端32bのサイズは第2マイクロフォン22のサイズに対応している。入力デバイス10の例とは異なり、第2音孔32のサイズは、第2音孔32の下端から上端32bまで一定であってもよい。
【0050】
図3Aに示すように、中央部10Mの下面は、その後部に、後方に向かって高くなる斜面30bを有している。第2音孔32は斜面30bに形成されている。このことによって、第2音孔32の位置が、中央部10Mの下面の平らな部分30cよりも高くなる。そのため、例えばユーザが腿の上に入力デバイス10を置いた場合に第2音孔32が腿によって塞がれることを、防ぐことができる。
【0051】
[他の部品]
入力デバイス10は、端子55と、マイクロフォン21、22のスイッチ56とを有している。端子55には、例えば、マイクを有するヘッドセットや、ヘッドフォンなどが接続される。スイッチ56は、その外周部に発光部(例えば、LED)を内蔵し、入力デバイス10の動作状態を表すインジケータとしても機能してよい。
図2に示すように、入力デバイス10の例では、端子55とインジケータ56は、回路基板20の後縁に取り付けられ、左右方向で並んでいる。端子55とインジケータ56は、操作スティック17R、17Lの基部17bを覆うベースカバー部33R、33Lの間に位置している。
【0052】
スイッチ56の発光部は、例えば、音声入出力回路27(
図4参照)の動作状態に応じた色で発光する。音声入出力回路27は、その動作状態として、例えば3つの状態を有する。第1の状態は、例えば、マイクロフォン21、22を通して取得した音声データがゲーム装置90における音声認識用のデータに変換され、これがゲーム装置90に送信される状態である。第2の状態は、例えば、マイクロフォン21、22を通して取得した音声データが他ユーザとのボイスチャット(音声通話)用のデータに変換され、これがゲーム装置90に送信される状態である。第3の状態は、例えば、他ユーザとのボイスチャット(音声通話)用のデータとゲーム装置90における音声認識用のデータの双方がゲーム装置90に送信される状態である。スイッチ56の発光部が示す状態は、ここで説明する例に限られない。
【0053】
[信号処理]
入力デバイス10を含むシステム1の構成と、入力デバイス10で実行される処理について説明する。
図4で示すように、システム1は、入力デバイス10とゲーム装置90とを含んでいる。ゲーム装置90は、ゲーム専用の装置であってもよいし、ゲームプログラムを実行するパーソナルコンピュータなどの情報処理装置であってもよい。入力デバイス10とゲーム装置90は、Bluetooth(登録商標)規格などの無線通信によってデータを送受信する。入力デバイス10とゲーム装置90は、例えばUSB等の規格により有線で通信接続されることとしてもよい。ゲーム装置90には、ディスプレイ92及びスピーカー91が接続されている。
【0054】
入力デバイス10は、音声入出力回路27、制御装置26、スピーカー53(
図3A参照)、端子55(
図2参照)、マイクロフォン21、22、及び複数の操作部材を有している。複数の操作部材は、具体的には、上述した、操作ボタン11、13、14、18、19、操作パッド16、及び操作スティック17R、17Lである。以下の説明及び
図4では、これらを操作部材11~19と記載する。
【0055】
音声入出力回路27は、音声の入出力を制御するための集積回路であり、音声信号処理を実行するデジタルシグナルプロセッサを内蔵している。音声入出力回路27は、ゲーム装置90から制御装置26が受信した音声データに基づいて、端子55に接続されたヘッドフォンHd、及びスピーカー53のいずれかから音声を出力する。また、音声入出力回路27は、マイクロフォン21、22を通して得られる音声データに対して必要な音声信号処理を実行したうえで、制御装置26に出力する。
【0056】
制御装置26は、入力デバイス10の各部を制御するための集積回路である。制御装置26は、通信回路26aを有している。通信回路26aはアンテナ26bを介してゲーム装置90との間で情報を授受するための無線通信を制御する。具体的には、通信回路26aは、スピーカー53またはヘッドフォンHdから再生するための音声データを、ゲーム装置90から受信する。また、制御装置26は、マイクロフォン21、22からの音声データに対して音声信号処理を適用して得られた音声データや、操作部材11~19に対するユーザの操作内容を示すデータなどを、ゲーム装置90に対して送信する。
【0057】
スピーカー53は、ゲーム装置90から受信した音声データに基づく音声をモノラルで再生する。端子55にヘッドフォンHdが接続されているときには、音声入出力回路27はゲーム装置90から受信した音声信号に基づく音声をスピーカー53の代わりにそのヘッドフォンHdから再生させる。
【0058】
以下では、マイクロフォン21、22を通して取得した音声データをマイクロフォン音声データと称し、入力デバイス10のスピーカー53やヘッドフォンHdで再生するためにゲーム装置90から受信した音声データを再生音声データと称する。
【0059】
ゲーム装置90は、入力デバイス10から受信したマイクロフォン音声データに対して、音声認識処理を実行する。また、マイクロフォン音声データを他の場所で再生させるために、当該音声データを他のゲーム装置(情報処理装置)に送信する(音声通話)。
【0060】
図4に示すように、音声入出力回路27は、その機能として、ビームフォーミング処理部27a、エコー除去部27b、ノイズ除去部27cを有している。
【0061】
ビームフォーミング処理部27aは、指向性を有するマイクロフォン音声データを生成する。すなわち、ビームフォーミング処理部27aは、マイクロフォン21、22から得られたマイクロフォン音声データにおいて、ユーザの発話音声を表すデータ(信号)を強調したデータを生成する。ビームフォーミング処理部27aは、例えば第2マイクロフォン22から得られたマイクロフォン音声データの伝搬遅延を補償し、補償後のマイクロフォン音声データを第1マイクロフォン21から得られたマイクロフォン音声データに加算する。
【0062】
エコー除去部27bは、ビームフォーミング処理部27aによって生成されたマイクロフォン音声データに対して、エコー除去処理を実行する。これは、スピーカー53から再生される音声をマイクロフォン21、22が取得することによって生じる音響エコーを、マイクロフォン音声データから除去する処理である。エコー除去部27bは、例えば、音声入出力回路27がスピーカー53に出力する再生音声データを、ビームフォーミング処理部27aによって生成されたマイクロフォン音声データから除去する。
【0063】
ノイズ除去部27cは、エコー除去後のマイクロフォン音声データに対して、ノイズを除去するノイズ除去処理を実行する。ノイズ除去部27cは、操作部材11~19の一部又は全部に対するユーザの操作入力を利用して、ノイズ除去処理を行う。操作部材11~19に対する操作入力が行われると、操作音が発生し、その操作音がマイクロフォン音声データにノイズとして含まれてしまう。操作部材11~19の一部又は全部に対してユーザが操作入力を行った場合、制御装置26が、その操作入力があったことを示す信号を音声入出力回路27に入力する。ノイズ除去部27cは、その信号を受けて、そのタイミングで得られた音声データにノイズ(操作音)が含まれているという想定で、ノイズを除去する処理を実行する。例えば、操作部材11~19の操作がなされたときには、操作部材11~19の操作音に応じた予め設定されたフィルタ処理をマイクロフォン音声データに施す。
【0064】
[まとめ]
以上説明したように、入力デバイス10は、右手の指で操作する操作ボタン11(第1右操作部材)が配置されている上面を有している右被保持部10Rと、左手の指で操作する方向キー12(第1左操作部材)が配置されている上面を有している左被保持部10Lと、右被保持部10Rと左被保持部10Lとの間に位置している中央部10Mとを有している。また、入力デバイス10は、中央部10Mに配置されている第1マイクロフォン21と、同じく中央部10Mに配置されている第2マイクロフォン22とを有している。第1マイクロフォン21は、前後方向における中央部10Mの中心(直線L1(
図1A参照))よりも後方に位置している。
【0065】
この構造によると、2つのマイクロフォン21、22で得られる音声データを利用して、ビームフォーミング処理部27aによる処理が実行され得る。また、入力デバイス10を握っているユーザの発話音声の音源(ユーザの口)と第1マイクロフォン21との距離が近くなるので、ユーザの発話音声が第1マイクロフォン21に届きやすくなる。
【0066】
また、入力デバイス10の例では、第1音孔31の位置と第2音孔32の位置は上下方向において離れている。この配置によると、入力デバイス10を握っているユーザの口から第1音孔31を経由する第1マイクロフォン21までの距離と、ユーザの口から第2音孔32を経由する第2マイクロフォン22までの距離とを異ならせることができる。その結果、マイクロフォン21、22のビーム方向を、音源であるユーザの口に向けることができ、ユーザの発話音声を高い精度で得ることができる。第1音孔31の位置と第2音孔32の位置は、前後方向において離れていてもよい。この場合でも、ユーザの口から第1マイクロフォン21までの距離と、ユーザの口から第2マイクロフォン22までの距離とを異ならせることができる。
【0067】
なお、ゲームの実行中、ゲーム装置90に接続されているスピーカー91から音声(ゲーム音)が出力される。このスピーカー91は、ディスプレイ92とともに、ユーザの前方に配置されることがある。第1音孔31(又は、第1マイクロフォン21)の位置と第2音孔32(又は、第2マイクロフォン22)の位置が前後方向と上下方向のうち少なくとも一方の方向において離れている構造によると、ユーザの発話音声だけでなく、ユーザの前方に配置されるスピーカー91から出力される音声もマイクロフォン21、22に届き、ビームフォーミング処理部27aによる処理が施されたマイクロフォン音声データに混じる可能性がある(以下では、スピーカー91から出力される音声を「妨害音」と称する)。この場合、ゲーム装置90或いは入力デバイス10のエコー除去部27bが、ビームフォーミング処理部27aによる処理が施されたマイクロフォン音声データから、妨害音を除去する処理を実行してもよい。例えば、ゲーム装置90がスピーカー91に出力する音声データを、ビームフォーミング処理部27aによる処理が施されたマイクロフォン音声データから除去してもよい。
【0068】
[変形例]
なお、本開示で提案する入力デバイスは、上述した入力デバイス10で示す例に限られない。
【0069】
図5は、マイクロフォン21、22の取付構造の他の例を示す断面図である。この図の切断面の位置は
図3A及び
図3Bと同じである。以下では、
図3A及び
図3Bで示した入力デバイス10の構造とは異なる点を中心にして説明する。
図5において説明のない事項は、
図3A及び
図3Bで説明した構造と同じであってよい。
【0070】
図5において、第1マイクロフォン21と第2マイクロフォン22は回路基板20を挟んで反対側に配置され、回路基板20から上下方向において離れている。第1マイクロフォン21は回路基板20から上方に離れている。第2マイクロフォン22は回路基板20から下方に離れている。第1音孔31と第2音孔32の深さ(長さ)を短くでき、マイクロフォン21、22による音声の取得を効率化できる。その結果、例えば、音孔31、32のサイズ(上下方向及び左右方向での幅)を低減できる。マイクロフォン21、22と回路基板20は図示しない電線によって電気的に接続される。
【0071】
上述したように、回路基板20の上側にはフレーム40が配置されている。フレーム40は、例えば、入力デバイス10の上面に設けられている操作部材(例えば、操作ボタン11や、方向キー12)の動きを検知するためのセンサー(スイッチ)を支持する。
図5の例では、第1マイクロフォン21はフレーム40によって支持されている。フレーム40はその最後部に第1マイクロフォン21が取り付けられるマイクロフォン支持部40aを有している。第1マイクロフォン21はクッション性を有する材料で形成されているホルダー37によって保持され、ホルダー37とともにマイクロフォン支持部40aに取り付けられている。
【0072】
上述したように、回路基板20の下側にバッテリ54が配置されている。バッテリ54はバッテリホルダー49を有している。バッテリホルダー49は、例えば、回路基板20或いは外装部材30(詳細には、下ケース30L)の内面に固定される。第2マイクロフォン22はバッテリホルダー49によって支持されている。バッテリホルダー49は、その最後部に、第2マイクロフォン22が取り付けられるマイクロフォン支持部49aを有している。第2マイクロフォン22はクッション性を有する材料で形成されているホルダー38によって保持され、ホルダー38とともにマイクロフォン支持部49aに取り付けられている。
【0073】
フレーム40とバッテリホルダー49は、樹脂で成形された部品である。このように、マイクロフォン21、22は外装部材30内に配置される成形品によって支持されている。このことによって、マイクロフォン21、22の位置や姿勢について、高い自由度を確保できる。なお、マイクロフォン21、22は、フレーム40やバッテリホルダー49とは異なる部品によって支持されてもよい。
【0074】
第1マイクロフォン21は外装部材30(詳細には、上ケース30U)の内面に沿って配置されている。第1マイクロフォン21は、上ケース30Uの内面と平行であり、
図5で示す例においては上方且つ後方に斜めに向いている。第1マイクロフォン21を保持してるホルダー37は環状であり、その外周縁は上ケース30の内面に押しつけられている。これにより、第1音孔31を通過する音を効率的に第1マイクロフォン21で取得できる。第2マイクロフォン22は外装部材30(詳細には、下ケース30L)の内面に沿って配置されている。第2マイクロフォン22は下ケース30Lの内面と平行であり、
図5で示す例においては下方且つ後方に斜めに向いている。第2マイクロフォン22を保持してるホルダー38は環状であり、その外周縁は下ケース30Lの内面に押しつけられている。これにより、第2音孔32を通過する音を効率的に第2マイクロフォン22で取得できる。
【0075】
第1音孔31と第2音孔32は外装部材30の内面に対して斜めに形成されている。詳細には、外装部材30において第1マイクロフォン21が向いている部分は、後方且つ下方に延びているのに対して、第1音孔31は鉛直方向(回路基板20に直交する方向)に形成されている。また、外装部材30において第2マイクロフォン22が向いている部分は、後方且つ上方に延びているのに対して、第2音孔32は鉛直方向に形成されている。このことによって、音孔31、32を経由したマイクロフォン21、22までの距離を確保することが容易となる。
【0076】
図6は本開示で提案する入力デバイスの他の例である入力デバイス110の平面図である。以下では、入力デバイス110について、入力デバイス10とは異なる点を中心にして説明する。入力デバイス110について説明のない事項は、入力デバイス10の構造が適用されてよい。
【0077】
入力デバイス110は、第2マイクロフォン22と第2音孔32の位置に関して、上述した入力デバイス10とは異なっている。入力デバイス110においては、第2マイクロフォン22は、第1マイクロフォン21と同様に、回路基板20の上側に配置されている。そして、第2マイクロフォン22は第1マイクロフォン21より前方に位置している。第1マイクロフォン21と第2マイクロフォン22は、前後方向と上下方向とに沿った平面P1と交差している。
【0078】
第2マイクロフォン22の上方に第2音孔32が形成されている。入力デバイス110では、外装部材30は、操作パッド16の前方に位置し左右方向で伸びている最前部30gを有している。第2音孔22は最前部30gに形成されている。この場合、第2マイクロフォン22は、回路基板20の最前部に直接取り付けられてよい。他の例では、第2音孔22の近傍で外装部材30の内面に取り付けられたり、フレーム40(
図3A参照)に取り付けられてもよい。入力デバイス110のこのような構造によっても、入力デバイス110を握っているユーザの口から第1音孔31を経由する第1マイクロフォン21までの距離と、ユーザの口から第2音孔32を経由する第2マイクロフォン22までの距離とを異ならせることができる。
【0079】
入力デバイス10、110には上述した2つのマイクロフォン21、22が設けられている。マイクロフォンの数は2つ又は3つが望ましい。こうすることで、マイクロフォンの搭載によるコスト増を抑えながら、良好なビームフォーミング処理を行うことができる。3つのマイクロフォンがある場合、3番目のマイクロフォンも上述した平面P1(
図1A)上に位置してもよい。この場合、第2マイクロフォン22は
図3A等で示されるように、回路基板20の下側に位置し、3番目のマイクロフォンは、
図6で示される第2マイクロフォン22の位置に配置されてよい。
【0080】
なお、右手の指で操作される操作部材が配置されている右被保持部10Rと、左手の指で操作する操作部材が配置されている左被保持部10Lは、例えばガンコントローラのように前後方向で離れていてもよい。この場合、マイクロフォン21、22が配置される平面P1(
図1A)は、コントローラの右側面と左側面との中間を通る平面であってよい。
【0081】
また、音孔31、32は筒状でなくてもよい。すなわち、音孔31、32は外装部材30の外面を貫通するものの、マイクロフォン21、22に向かって伸びている部分を有していなくてもよい。