IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社タダノの特許一覧 ▶ 東京重機株式会社の特許一覧

特許7420896操縦者技量評価装置及び前記操縦者技量評価装置を有するクレーン
<>
  • 特許-操縦者技量評価装置及び前記操縦者技量評価装置を有するクレーン 図1
  • 特許-操縦者技量評価装置及び前記操縦者技量評価装置を有するクレーン 図2
  • 特許-操縦者技量評価装置及び前記操縦者技量評価装置を有するクレーン 図3
  • 特許-操縦者技量評価装置及び前記操縦者技量評価装置を有するクレーン 図4
  • 特許-操縦者技量評価装置及び前記操縦者技量評価装置を有するクレーン 図5
  • 特許-操縦者技量評価装置及び前記操縦者技量評価装置を有するクレーン 図6
  • 特許-操縦者技量評価装置及び前記操縦者技量評価装置を有するクレーン 図7
  • 特許-操縦者技量評価装置及び前記操縦者技量評価装置を有するクレーン 図8
  • 特許-操縦者技量評価装置及び前記操縦者技量評価装置を有するクレーン 図9
  • 特許-操縦者技量評価装置及び前記操縦者技量評価装置を有するクレーン 図10
  • 特許-操縦者技量評価装置及び前記操縦者技量評価装置を有するクレーン 図11
  • 特許-操縦者技量評価装置及び前記操縦者技量評価装置を有するクレーン 図12
  • 特許-操縦者技量評価装置及び前記操縦者技量評価装置を有するクレーン 図13
  • 特許-操縦者技量評価装置及び前記操縦者技量評価装置を有するクレーン 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】操縦者技量評価装置及び前記操縦者技量評価装置を有するクレーン
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/22 20060101AFI20240116BHJP
   B66C 13/23 20060101ALI20240116BHJP
   B66C 15/00 20060101ALI20240116BHJP
【FI】
B66C13/22 Z
B66C13/23 Z
B66C15/00 Z
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022168390
(22)【出願日】2022-10-20
【審査請求日】2022-11-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000148759
【氏名又は名称】株式会社タダノ
(73)【特許権者】
【識別番号】515272660
【氏名又は名称】東京重機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142022
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 一晃
(74)【代理人】
【識別番号】100196623
【弁理士】
【氏名又は名称】松下 計介
(72)【発明者】
【氏名】三好 圭
(72)【発明者】
【氏名】鶴岡 卓
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼悦男
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2022/075340(WO,A1)
【文献】国際公開第2020/045577(WO,A1)
【文献】特開2015-189528(JP,A)
【文献】特開2015-151211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 13/00 - 15/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋回可能且つ起伏可能な伸縮ブームを有するクレーンを操縦者が操縦するための操作具の操作に関連する情報である操作関連情報、前記クレーンの姿勢に関連する情報である姿勢関連情報及び前記クレーンが搬送する吊り荷に関連する情報である吊り荷関連情報を記憶する記憶部と、
前記クレーンの操縦者における前記クレーンの操縦技量に関連する情報である技量関連情報を生成する、技量関連情報生成モデルを利用して、前記記憶部に記憶された前記操作関連情報、前記姿勢関連情報及び前記吊り荷関連情報に基づいて前記技量関連情報を生成し、生成した前記技量関連情報を出力する制御部と、
を有す操縦者技量評価装置であって、
前記吊り荷関連情報は、
前記クレーンに対する前記吊り荷の位置に関連する情報及び前記伸縮ブームに加わる前記吊り荷からの荷重に関連する情報を含み、
前記技量関連情報生成モデルは、
前記操作関連情報、前記姿勢関連情報及び前記吊り荷関連情報に基づいて、前記操縦者が前記クレーンを用いて前記吊り荷を接地面から吊り上げる際の前記技量関連情報である吊り上げ技量関連情報、前記操縦者が前記クレーンを用いて吊り上げた前記吊り荷を平面視で移動させる際の前記技量関連情報である移動技量関連情報及び前記操縦者が前記クレーンを用いて前記吊り荷を接地面に吊り下ろす際の前記技量関連情報である吊り下し技量関連情報のうち少なくとも一つを前記制御部が生成可能なように構成されている、
操縦者技量評価装置。
【請求項2】
請求項1に記載の操縦者技量評価装置において
前記操作関連情報は、
前記操縦者が前記クレーンを操縦している際の前記操縦者の視点に関連する情報である視点関連情報を含む、
操縦者技量評価装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の操縦者技量評価装置において
前記技量関連情報生成モデルは、
前記操縦者が前記クレーンを用いて、前記吊り荷を少なくとも第1位置から吊り上げて第2位置に吊り下すまでの工程における前記操作関連情報、前記姿勢関連情報及び前記吊り荷関連情報に基づいて、前記吊り上げ技量関連情報、前記移動技量関連情報及び前記吊り下し技量関連情報のうち少なくとも一つを前記制御部が生成可能なように構成されている、
操縦者技量評価装置。
【請求項4】
請求項1または2に記載の操縦者技量評価装置において、
前記技量関連情報生成モデルは、
前記クレーンの操縦者のうち前記クレーンを操縦する技量が閾値よりも高い熟練者の前記操作関連情報、前記姿勢関連情報及び前記吊り荷関連情報を含む教師情報によって機械学習された機械学習モデルである、
操縦者技量評価装置。
【請求項5】
請求項1または2に記載の操縦者技量評価装置において、
前記制御部は、
前記操縦者が操縦する前記クレーンの機械特性に応じた前記技量関連情報生成モデルを利用する、
操縦者技量評価装置。
【請求項6】
請求項1または2に記載の操縦者技量評価装置において、
前記記憶部は、
前記クレーンの周囲の環境に関連する情報である環境関連情報を更に記憶し、
前記技量関連情報生成モデルは、
前記操作関連情報、前記姿勢関連情報、前記吊り荷関連情報及び前記環境関連情報に基づいて、前記吊り上げ技量関連情報、前記移動技量関連情報または前記吊り下し技量関連情報のうち少なくとも一つを前記制御部が生成可能なように構成され、
前記制御部は、
前記技量関連情報生成モデルを利用して、前記記憶部に記憶された前記操作関連情報、前記姿勢関連情報、前記吊り荷関連情報及び前記環境関連情報に基づいて前記技量関連情報を生成する、
操縦者技量評価装置。
【請求項7】
請求項1または2に記載の操縦者技量評価装置を有する前記クレーン。
【請求項8】
請求項1または2に記載の操縦者技量評価装置において、
前記憶部及び前記制御部は、
通信回線を用いて複数の前記クレーンと通信可能なサーバー内に位置し、
前記記憶部は、
異なる前記操縦者によってそれぞれ操縦される複数の前記クレーンが、前記通信回線を用いて前記記憶部に対して出力する前記操作関連情報、前記姿勢関連情報及び前記吊り荷関連情報をそれぞれ記憶し、
前記制御部は、
技量関連情報生成モデルを利用して、前記記憶部が取得した複数の前記クレーン毎の前記操作関連情報、前記姿勢関連情報及び前記吊り荷関連情報に基づいて、複数の前記クレーンを操縦している前記操縦者毎の前記技量関連情報を生成する、
操縦者技量評価装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両の操縦者技量評価装置及び前記操縦者技量評価装置を有するクレーンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、移動式クレーンを用いて吊り荷を搬送する場合、前記移動式クレーンの操縦者は、前記移動式クレーンのブームを操作するための旋回用操作具、起伏用操作具、伸縮用操作具、前記吊り荷を吊り上げまたは吊り下げるためのウインチ用操作具等の複数の操作具を操作する。また、前記操縦者は、前記複数の操作具を同時に操作しつつ、作業現場の構造物等に前記吊り荷が接触しないように前記移動式クレーンを操縦しなくてはならない。更に、前記操縦者は、前記ブームの姿勢変化、速度変化等によって揺れる前記吊り荷の位置を調整する必要がある。このため、前記操縦者の前記移動式クレーンを操縦する技量が前記移動式クレーンによる前記吊り荷の搬送時間、搬送作業の内容を含む吊り荷の取り扱いに大きく影響する。例えば、前記移動式クレーンによる前記吊り荷の搬送作業に必要な技量が前記操縦者の技量を上回る場合、前記操縦者は、前記吊り荷を適切な時間内で所定の位置に搬送できない可能性が高くなる。そこで、操縦者の技量を推定し、操縦者の技量に適合した操作支援が可能な操作支援装置が知られている。例えば、特許文献1の如くである。
【0003】
特許文献1に記載のオペレータの操作支援装置は、前記オペレータの熟練度と作業難易度とを表す技量(操作技術レベル)を推定する操作技術レベル推定手段を有している。前記操作技術レベル推定手段は、前記クレーンによる搬送操作における前記吊り荷の揺れが所定値以下に減衰するまでの時間である停止時間、及び吊り荷の振れ角に基づいて算出した操作指示値と前記オペレータが実際に操作した操作レバーの操作量との差に基づいて前記オペレータの技量を推定する。前記オペレータの操作支援装置は、推定された操作技術レベルに基づいて操作レバーの適切な操作量を前記オペレータに指示する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開平11-79663号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記クレーンによる前記吊り荷の搬送作業は、地面に置かれている前記吊り荷を吊り上げる地切り工程、吊り上げた状態の前記吊り荷を搬送する搬送工程及び吊り上げている吊り荷を所定の位置に下ろす接地工程を含む。よって、前記クレーンにおける前記吊り荷の取り扱いは、前記吊り荷の揺れを所定値以下に低減させる操作技術だけでなく、前記吊り荷の地切り工程の操作技術及び前記吊り荷の接地工程の操作技術も大きく影響する。しかしながら、特許文献1に記載の操作技術レベル推定手段は、前記クレーンによる前記吊り荷の取り扱いにおいて必要な様々な操作技術のうち前記吊り荷の揺れを抑制する操作技術のみに基づいてオペレータの技量を推定している。従って、前記クレーンによる前記吊り荷の取り扱いにおいて異なる操作技術が求められる場面でのオペレータの技量を適切に評価することができない
【0006】
本発明の目的は、吊り荷の取り扱いにおいて異なる技量が要求される吊り荷の地切り工程、吊り荷の搬送工程及び吊り荷の接地工程の各工程における操縦者の技量をより詳しく評価することができる操縦者技量評価装置及び前記操縦者技量評価装置を有するクレーンの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、吊り荷の取り扱いにおいて異なる技量が要求される吊り荷の地切り工程、吊り荷の搬送工程及び吊り荷の接地工程の各工程における操縦者の技量をより詳しく評価することができる操縦者技量評価装置及び前記操縦者技量評価装置を有するクレーンについて検討した。本発明者らは、鋭意検討の結果、以下のような構成に想到した。
【0008】
本発明に係る操縦者技量評価装置は、旋回可能且つ起伏可能な伸縮ブームを有するクレーンを操縦者が操縦するための操作具の操作に関連する情報である操作関連情報、前記クレーンの姿勢に関連する情報である姿勢関連情報及び前記クレーンが搬送する吊り荷に関連する情報である吊り荷関連情報を記憶する記憶部と、前記操縦者における前記クレーンを操縦する技量に関連する情報である技量関連情報を生成する、技量関連情報生成モデルを利用して、前記記憶部に記憶された前記操作関連情報、前記姿勢関連情報及び前記吊り荷関連情報に基づいて前記技量関連情報を生成し、生成した前記技量関連情報を出力する制御部と、を有する操縦者技量評価装置である。
【0009】
前記吊り荷関連情報は、前記クレーンに対する前記吊り荷の位置に関連する情報及び前記伸縮ブームに加わる前記吊り荷の重量に関連する情報を含む。前記技量関連情報生成モデルは、前記操作関連情報、前記姿勢関連情報及び前記吊り荷関連情報に基づいて、前記操縦者が前記クレーンを用いて前記吊り荷を接地面から吊り上げる際の前記技量関連情報である吊り上げ技量関連情報、前記操縦者が前記クレーンを用いて吊り上げた前記吊り荷を平面視で移動させる際の前記技量関連情報である移動技量関連情報または前記操縦者が前記クレーンを用いて前記吊り荷を接地面に吊り下ろす際の前記技量関連情報である吊り下し技量関連情報のうち少なくとも一つを前記制御部が生成可能なように構成されている。
【0010】
上述の操縦者技量評価装置は、技量関連情報生成モデルを利用して、操作関連情報、姿勢関連情報だけでなく、伸縮ブームに対する吊り荷の位置に関連する情報及び前記伸縮ブームに加わる前記吊り荷の重量に関連する情報を含む吊り荷関連情報に基づいて、前記吊り荷の状態に関する技量関連情報である吊り上げ技量関連情報、移動技量関連情報または吊り下し技量関連情報のうち少なくとも一つを生成する。つまり、前記操縦者技量評価装置は、クレーンによる前記吊り荷の取り扱いにおいて操縦者に必要な様々な技量をそれぞれ個別に評価するための技量関連情報を生成する。前記技量関連情報は、前記クレーンによる前記吊り荷の搬送作業における各工程別に前記操縦者の技量を数値化した情報である。よって、前記操縦者技量評価装置は、前記吊り荷の地切り工程から前記吊り荷の接地工程までの全工程における前記操縦者の技量を出力する。これにより、前記吊り荷の取り扱いにおいて異なる技量が要求される前記吊り荷の地切り工程、前記吊り荷の搬送工程及び前記吊り荷の接地工程の各工程における前記操縦者の技量をより詳しく評価することができる。
【0011】
また、本発明の操縦者技量評価装置は、以下の構成を含むことが好ましい。前記操作関連情報は、前記操縦者が前記クレーンを操縦している際の前記操縦者の視点に関連する情報である視点関連情報を含む。
【0012】
上述の構成では、前記操作関連情報に含まれる操縦者の視点関連情報を用いて、前記操縦者の技量を評価している。前記視点関連情報には、吊り荷の動きと操作具との操作とを連携する情報だけでなく前記操縦者の思考、感情、心理状態に関する情報が含まれている。よって、前記操縦者技量評価装置は、前記操作関連情報、前記姿勢関連情報及び前記吊り荷関連情報に基づいて、前記操縦者によるクレーンの操作具の操作についての評価だけでなく、視点関連情報に基づいてクレーンを操縦している最中の前記操縦者の心理状態を含めた技量を評価している。これにより、前記吊り荷の取り扱いにおいて異なる技量が要求される前記吊り荷の地切り工程、前記吊り荷の搬送工程及び前記吊り荷の接地工程の各工程における前記操縦者の技量をより詳しく評価することができる。
【0013】
また、操縦者技量評価装置は、以下の構成を含むことが好ましい。前記技量関連情報生成モデルは、前記操縦者が前記クレーンを用いて、前記吊り荷を少なくとも第1位置から吊り上げて第2位置において吊り下すまでの工程における前記操作関連情報、前記姿勢関連情報及び前記吊り荷関連情報に基づいて前記吊り上げ技量関連情報、前記移動技量関連情報及び前記吊り下し技量関連情報のうち少なくとも一つを生成するように構成されている。
【0014】
上述の構成では、前記操縦者技量評価装置は、吊り荷を前記第1位置から前記第2位置まで搬送するまでの間における操作関連情報、姿勢関連情報及び吊り荷関連情報に基づいて操縦者の技量を評価している。つまり、前記操縦者技量評価装置は、前記クレーンによって前記吊り荷を吊り上げてから目標位置に接地するまでの工程における前記操作関連情報、前記姿勢関連情報及び前記吊り荷関連情報のそれぞれを連続した1つの情報として前記操縦者の技量を評価している。これにより、前記吊り荷の取り扱いにおいて異なる技量が要求される前記吊り荷の地切り工程、前記吊り荷の搬送工程及び前記吊り荷の接地工程の各場面における前記操縦者の技量をより詳しく評価することができる。
【0015】
また、本発明の一実施形態に係る操縦者技量評価装置は、以下の構成を含むことが好ましい。前記技量関連情報生成モデルは、前記クレーンの操縦者のうち前記クレーンを操縦する技量が閾値よりも高い熟練者の前記操作関連情報、前記姿勢関連情報及び前記吊り荷関連情報を含む情報を教師情報として機械学習された機械学習モデルである。
【0016】
上述の構成では、前記操縦者技量評価装置は、熟練者の操作関連情報、姿勢関連情報及び吊り荷関連情報を教師情報として機械学習した技量関連情報生成モデルを利用することで、操縦者の技量を、前記熟練者を基準とする熟練度として評価することができる。これにより、前記吊り荷の取り扱いにおいて異なる技量が要求される前記吊り荷の地切り工程、前記吊り荷の搬送工程及び前記吊り荷の接地工程の各工程における前記操縦者の技量をより詳しく評価することができる。
【0017】
また、本発明の一実施形態に係る操縦者技量評価装置は、以下の構成を含むことが好ましい。前記制御部は、前記操縦者が操縦する前記クレーンの機械特性に応じた前記技量関連情報生成モデルを利用する。
【0018】
上述の構成では、前記操縦者技量評価装置は、機種毎に構造、許容搬送荷重、可動範囲等の機械特性が異なるクレーンに対応した技量関連情報生成モデルを利用して操縦者の技量を評価している。これにより、前記クレーンの機械特性の違いによって異なる技量が要求される前記吊り荷の地切り工程、前記吊り荷の搬送工程及び前記吊り荷の接地工程の各場面における前記操縦者の技量をより詳しく評価することができる。
【0019】
他の観点によれば、本発明に係る操縦者技量評価装置は、以下の構成を含むことが好ましい。前記記憶部は、前記クレーンの周囲の環境に関連する情報である環境関連情報を更に記憶する。前記技量関連情報生成モデルは、前記操作関連情報、前記姿勢関連情報、前記吊り荷関連情報及び前記環境関連情報に基づいて、前記吊り上げ技量関連情報、前記移動技量関連情報または前記吊り下し技量関連情報のうち少なくとも一つを前記制御部が生成可能なように構成される。前記制御部は、前記技量関連情報生成モデルを利用して、前記記憶部に記憶された前記操作関連情報、前記姿勢関連情報、前記吊り荷関連情報及び前記環境関連情報に基づいて前記技量関連情報を生成する。
【0020】
上述の構成では、前記操縦者技量評価装置は、クレーンの操縦時の気温、湿度、風速、雨量等を考慮した技量関連情報生成モデルを利用して操縦者の技量を評価している。これにより、前記クレーンの周囲の環境の違いによって異なる技量が要求される前記吊り荷の地切り工程、前記吊り荷の搬送工程及び前記吊り荷の接地工程の各場面における操縦者の技量を適切に評価することができる。
【0021】
他の観点によれば、本発明に係る操縦者技量評価装置は、以下の構成を含むことが好ましい。上述の操縦者技量評価装置を有する前記クレーンである。
【0022】
前記操縦者技量評価装置がクレーンに搭載されているので、操縦者が前記クレーンを用いて吊り荷を搬送している際に前記操縦者の技量を評価することができる。
【0023】
他の観点によれば、本発明に係る操縦者技量評価装置は、以下の構成を含むことが好ましい。上述の操縦者技量評価装置において、前記記憶部及び前記制御部は、通信回線を用いて複数の前記クレーンと通信可能なサーバー内に位置している。前記記憶部は、異なる前記操縦者によってそれぞれ操縦される複数の前記クレーンが、前記通信回線を用いて前記記憶部に対して出力する前記操作関連情報、前記姿勢関連情報及び前記吊り荷関連情報をそれぞれ記憶する。前記制御部は、技量関連情報生成モデルを利用して、前記記憶部が取得した複数の前記クレーン毎の前記操作関連情報、前記姿勢関連情報及び前記吊り荷関連情報に基づいて、複数の前記クレーンを操縦している前記操縦者毎の前記技量関連情報を生成する。
【0024】
前記操縦者技量評価装置は、通信回線を介して様々な場所で様々な機種のクレーンを操縦している複数の操縦者の技量を評価している。これにより、地域、所属団体、年齢、クレーンの機種、作業内容による前記操縦者のクレーンを操縦する技量の差異、傾向を把握することができる。
【0025】
本明細書で使用される専門用語は、特定の実施例のみを定義する目的で使用されるのであって、前記専門用語によって発明を制限する意図はない。
【0026】
本明細書で使用される「及び/または」は、一つまたは複数の関連して列挙された構成物のすべての組み合わせを含む。
【0027】
本明細書において、「含む、備える(including)」「含む、備える(comprising)」または「有する(having)」及びそれらの変形の使用は、記載された特徴、工程、要素、成分、及び/または、それらの等価物の存在を特定するが、ステップ、動作、要素、コンポーネント、及び/または、それらのグループのうちの1つまたは複数を含むことができる。
【0028】
本明細書において、「取り付けられた」、「接続された」、「結合された」、及び/または、それらの等価物は、広義の意味で使用され、“直接的及び間接的な”取り付け、接続及び結合の両方を包含する。さらに、「接続された」及び「結合された」は、物理的または機械的な接続または結合に限定されず、直接的または間接的な接続または結合を含むことができる。
【0029】
本明細書では、本発明に係る操縦者技量評価装置の実施形態について説明する。
【0030】
以下の説明では、本発明の完全な理解を提供するために多数の具体的な例を述べる。しかしながら、当業者は、これらの具体的な例がなくても本発明を実施できることが明らかである。
【0031】
よって、以下の開示は、本発明の例示として考慮されるべきであり、本発明を以下の図面または説明によって示される特定の実施形態に限定することを意図するものではない。
【0032】
[学習]
本明細書において、学習または機械学習とは、機械(プロセッサ)において、入力に対する出力が正解であるように、モデル(プログラム)のパラメータを調整する作業を意味する。本実施形態において、学習対象である技量関連情報生成モデルに対して、入力データと前記入力データに対する正解とが組み合わされた教師情報に基づいて学習する教師あり学習、または入力データのみを利用して正解か否かを判断する教師なし学習のうち、少なくとも教師あり学習が行われる。
【0033】
[モデル]
本明細書において、モデルとは、学習が行われた具体的な計算式、関数、計算方法を意味する。モデルは、入力に対する出力の関係性を表現している数式である。モデルは、入力されたデータを数式に従って変換する。モデルの作成とは、モデルの学習を行うことを意味する。モデルは、値を予測する回帰モデル、データを分類する分類モデル等が存在する。
【0034】
[ニューラルネットワークモデル]
本明細書において、ニューラルネットワークモデルとは、入力を線形変換する複数の処理単位が互いに結合した数理モデルを意味する。前記ニューラルネットワークモデルは、入力層、少なくとも1つの中間層、出力層、前記入力層と前記中間層とを連結する関数、及び前記中間層と前記出力層とを連結する関数を有する。前記入力層、前記中間層及び前記出力層は、データが入力される複数の変数である。前記ニューラルネットワークモデルは、前記入力層に入力されたデータを前記関数によって順に変換して出力する。データと前記データに対する正解との組み合わせから構成される教師データを前記入力層に入力した際に出力されるデータが教師データの正解に近づくように、前記ニューラルネットワークモデルにおける前記関数のパラメータが調整(学習)される。ニューラルネットワークモデルの学習が繰り返されることにより、入力されるデータに基づいて出力するデータと正解との誤差を減少させることができる。
【0035】
[視点]
本明細書において、視点とは、対象を見るときの視線が注がれる位置を意味する。前記操縦者の視点は、前記操縦者が前記クレーンを操作している最中に意識的に視線を注いでいる位置だけでなく、無意識的に視線を注いでいる位置を含む。
【0036】
[操作関連情報]
本明細書において、操作関連情報とは、旋回可能且つ起伏可能な伸縮ブームを有するクレーンを操縦者が操縦するための操作具の操作に関連する情報を意味する。前記操作関連情報は、例えば、前記クレーンにおける各操作具の単位時間毎の操作量、操作タイミング、操作時間に関連する情報を含む。
【0037】
[姿勢関連情報]
本明細書において、姿勢関連情報とは、前記クレーンの姿勢に関連する情報を意味する。前記姿勢関連情報は、例えば、前記クレーンの位置、前記クレーンにおける旋回台の旋回角度、前記クレーンにおける伸縮ブームの起伏角度、前記クレーンにおける伸縮ブームの長さ、前記クレーンにおけるワイヤロープの繰り出し量に関連する情報を含む。
【0038】
[吊り荷関連情報]
本明細書において、吊り荷関連情報とは、前記クレーンが搬送する吊り荷に関連する情報を意味する。前記吊り荷関連情報は、例えば、前記吊り荷の種類、前記吊り荷の重量、前記伸縮ブームに加わる前記吊り荷からの荷重、前記クレーンに対する前記吊り荷の単位時間毎の位置、前記クレーンに対する揺れ幅、前記クレーンに対する揺れの方向、前記クレーンに対する揺れの周期、前記吊り荷を接地面から吊り上げる第1位置、前記吊り荷を接地面に吊り下ろす第2位置、前記吊り荷の搬送経路に関連する情報を含む。
【0039】
[視点関連情報]
本明細書において、前記操縦者が前記クレーンを操縦している際の前記操縦者の視点に関連する情報である。視点関連情報は、前記操縦者が前記クレーンの操縦席に着座した際の前記操縦者の単位時間毎の視点の位置、前記操縦者が前記クレーンを操縦している際の前記操縦者の単位時間毎の視点の位置、前記操縦者の視点の移動方向、前記操縦者の視点の分布、前記操縦者の単位時間毎のまばたきの回数を含む。
【0040】
[環境関連情報]
本明細書において、環境関連情報とは、前記クレーンの周囲の環境に関連する情報を意味する。前記環境関連情報は、例えば、前記クレーンが設置された場所特有の条件、前記クレーンが稼働している時間、天候、季節等に関連する情報を含む。
【0041】
[技量]
本明細書において、技量とは、特定の物事を行う技術、技能、能力の度合いを意味する。よって、前記クレーン操縦者の技量とは、前記操縦者が前記クレーンを操縦する際の技術、技能、能力の度合いを意味する。技量が高い前記操縦者は、前記クレーンの操縦に関連する技術、技能、能力が優れている。前記クレーンの技量は、例えば、吊り荷の揺れの大きさ、吊り荷の搬送速度、吊り荷の安定性、吊り荷の接地精度、安全性等に関連する技術、技能、能力の度合いが含まれる。
【0042】
[吊り上げ技量関連情報]
本明細書において、吊り上げ技量関連情報とは、前記操縦者が前記クレーンを用いて前記吊り荷を第1位置から吊り上げる際の前記操縦者の技量に関連する情報を意味する。前記吊り上げ技量関連情報は、例えば、前記第1位置に接地されている前記吊り荷を所定の高さまで上方に吊り上げる前記操縦者の技量を吊り上げ技量評価指標に基づいて客観的に比較可能な数値等によって表現したものである。
【0043】
[吊り上げ技量評価指標]
本明細書において、吊り上げ技量関連情報とは、前記操縦者が前記クレーンを用いて前記吊り荷を接地面から吊り上げる際の前記操縦者の技量を客観的に評価する指標を意味する。例えば、前記吊り荷を第1位置から吊り上げる地切り工程において、前記クレーンの伸縮ブームは、ワイヤロープの巻き上げによる荷重の増大によってたわみが増大する。前記伸縮ブームの先端位置は、たわみの増大によって前記クレーン装置の作業半径方向の外方に向かって移動する。この際、前記吊り荷は、前記ワイヤロープの巻き上げによって接地面との間の摩擦力が減少する。前記吊り荷は、前記伸縮ブームの先端位置に対する前記吊り荷の位置のずれによって生じる作業半径方向の外方に引っ張られる力が前記吊り荷と前記接地面との間に発生している摩擦力よりも大きくなると作業半径方向外方に向かって移動する。
【0044】
技量が高い操縦者(熟練者)は、前記地切り工程において、前記伸縮ブームの先端位置の移動量を前記ワイヤロープの巻き上げ量と前記吊り荷の荷重情報により推定する。更に、前記操縦者は、地切り時に水平方向に前記吊り荷が動かないように、前記伸縮ブームの起伏操作によって前記伸縮ブームの先端位置を調整する。このように、前記地切り工程における前記操縦者の前記伸縮ブームの起伏操作、前記ワイヤロープの巻き上げ操作、前記吊り荷の荷重変化、前記操縦者の視点情報、地切り完了までの操作時間、操作具の操作タイミング等を評価する指標を前記吊り上げ技量評価指標とする。前記吊り上げ技量評価指標は、前記地切り工程における前記操縦者の技量を数値等に換算可能である。
【0045】
[移動技量関連情報]
本明細書において、移動技量関連情報とは、前記操縦者が前記クレーンを用いて前記吊り荷を平面視で移動させる際の前記操縦者の技量に関連する情報を意味する。移動技量関連情報は、例えば、前記第1位置の上方に吊り上げられた前記吊り荷を平面視で第2位置に移動させる前記操縦者の技量を移動技量評価指標に基づいて客観的に比較可能な数値等によって表現したものである。
【0046】
[移動技量評価指標]
本明細書において、移動技量関連情報とは、前記操縦者が前記クレーンを用いて前記吊り荷を平面視で水平方向に移動させる際の前記操縦者の技量を客観的に評価するための指標を意味する。例えば、前記吊り荷を平面視で第1位置から第2位置まで移動させる搬送工程において、前記伸縮ブームは旋回台による旋回動作によって前記吊り荷を搬送する。前記吊り荷は、前記伸縮ブームの旋回動作に伴って生じる遠心力によって、平面視で前記伸縮ブームの先端位置から旋回半径方向の外方に移動する。また、前記ワイヤロープに吊り下げられている前記吊り荷は、前記伸縮ブームの先端の旋回方向に移動よりも遅れて旋回方向に移動する。このため、前記吊り荷は、前記伸縮ブームの停止時に前記伸縮ブームの先端よりも旋回方向に移動する。
【0047】
前記技量が高い操縦者は、前記搬送工程において、前記吊り荷が前記伸縮ブームの先端よりも旋回半径方向の外方に位置している場合、前記伸縮ブームを倒伏させて、平面視で前記伸縮ブームの先端位置を前記吊り荷に近づける。また、前記操縦者は、前記搬送工程において、前記吊り荷が前記伸縮ブームの先端よりも旋回半径方向の内方に位置している場合、前記伸縮ブームを起立させて、平面視で前記伸縮ブームの先端位置を前記吊り荷に近づける。更に、前記操縦者は、前記搬送工程において、旋回動作の途中で前記吊り荷が前記伸縮ブームの先端よりも旋回方向の前方に位置し、前記第2位置で前記伸縮ブームの先端が前記吊り荷に追いつくように前記伸縮ブームの旋回速度を調整する。このように、前記搬送工程における前記操縦者の前記伸縮ブームの起伏及び旋回操作、前記伸縮ブームの先端位置に対する前記吊り荷の位置、前記吊り荷が前記第1位置から前記第2位置に移動するまでの移動時間、移動速度、操作具の操作タイミング等を評価する指標を前記移動技量評価指標とする。前記移動技量評価指標は、前記搬送工程における前記操縦者の技量を数値等に換算可能である。
【0048】
[吊り下し技量関連情報]
本明細書において、吊り下し技量関連情報とは、前記操縦者が前記クレーンを用いて前記吊り荷を第2位置に吊り下ろす際の操縦者の技量に関連する情報を意味する。吊り下し技量関連情報は、例えば、前記第2位置の上方に位置している前記吊り荷を第2位置に接地するまで下方に吊り下げる操縦者の技量を吊り下ろし評価指標に基づいて客観的に比較可能な数値等によって表現したものである。
【0049】
[吊り下し技量評価指標]
本明細書において、吊り下し技量関連情報とは、前記操縦者が前記クレーンを用いて前記吊り荷を吊り下ろして接地させる際の前記操縦者の技量を客観的に評価するための指標を意味する。例えば、前記吊り荷を第2位置に吊り下す接地工程において、前記伸縮ブームは、前記ワイヤロープの巻き下げによる荷重の減少によってたわみが減少する。前記伸縮ブームの先端位置は、たわみの減少によって前記クレーン装置の作業半径方向の内方に向かって移動する。この際、前記吊り荷は、前記ワイヤロープの巻き下げによって接地面との間の摩擦力が増大する。前記吊り荷は、前記伸縮ブームの先端位置に対する前記吊り荷の位置のずれによって生じる作業半径方向の内方に引っ張られる力が前記吊り荷と前記接地面との間に発生している摩擦力よりも小さくなるまで作業半径方向の内方に向かって移動する。
【0050】
技量が高い操縦者は、前記接地工程において、前記伸縮ブームの先端位置の移動量を前記ワイヤロープの巻き下げ量と前記吊り荷の荷重情報により推定する。更に、前記操縦者は、接地時に水平方向に前記吊り荷が動かないように、前記伸縮ブームの起伏操作によって前記伸縮ブームの先端位置を調整する。このように、前記接地工程における前記操縦者の前記伸縮ブームの起伏操作、前記ワイヤロープの巻き下げ操作、前記吊り荷の荷重変化、前記操縦者の視点情報、接地完了までの操作時間、操作具の操作タイミング等を評価する指標を前記吊り下ろし技量評価指標とする。前記吊り下ろし技量評価指標は、前記接地工程における前記操縦者の技量を数値等に換算可能である。
【0051】
[閾値]
本明細書において、閾値とは、前記操縦者が技量の高い熟練者か否かを判定するための技量の水準を意味する。前記閾値は、例えば、前記操縦者の技量を客観的に評価するための前記吊り上げ技量評価指標、前記移動技量評価指標及び前記吊り下ろし技量評価指標に基づいて評価された技量関連情報における所定の水準である。前記閾値は、前記吊り上げ技量評価指標に基づいて評価された吊り上げ技量関連情報、前記移動技量評価指標に基づいて評価された移動技量関連情報及び前記吊り下ろし技量評価指標吊り下し技量関連情報から、例えば平均値、2乗平均、標準偏差等の統計的処理によって算出した値に基づいて設定される。前記操縦者は、前記閾値よりも高い技量を有する場合、熟練者と判定される。前記閾値は、各工程または全ての工程を通じて集積された各技量関連情報に基づいて設定される。また、前記閾値は、熟練者の特徴、傾向等から工程毎の各技量関連情報に係数を付与して工程毎に重み付けを設定してよい。
【発明の効果】
【0052】
本発明の一実施形態によれば、前記吊り荷の取り扱いにおいて異なる技量が要求される前記吊り荷の地切り工程、前記吊り荷の搬送工程及び前記吊り荷の接地工程の各工程における操縦者の技量をより詳しく評価することができる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
図1図1は、本発明の実施形態1に係る操縦者技量評価装置の制御ブロック図である。
図2図2は、本発明の実施形態1及び2に係る操縦者技量評価装置の機械学習の工程を表す模式図である。
図3図3は、本発明の操縦者技量評価装置が評価する地切り工程、搬送工程及び接地工程を示す経路図である。
図4図4は、本発明の実施形態1に係る操縦者技量評価装置において操縦者の技量を示すレーダーチャートである。
図5図5は、本発明の実施形態1の別実施形態に係る操縦者技量評価装置の制御ブロック図である。
図6図6は、本発明の実施形態2に係る操縦者技量評価装置の制御ブロック図である。
図7図7は、本発明の実施形態2に係る操縦者技量評価装置が取得する視点関連情報を生成する視点検出装置を操縦者が装着した状態を示す模式図である。
図8図8は、本発明の実施形態2に係る操縦者技量評価装置が取得する地切り工程及び接地工程における視点関連情報である視点の合成画像である。
図9図9は、本発明の実施形態2に係る操縦者技量評価装置が取得する搬送工程における視点関連情報である視点の合成画像である。
図10図10は、本発明の実施形態3に係る操縦者技量評価装置の制御ブロック図である。
図11図11は、本発明の実施形態3に係る操縦者技量評価装置の機械学習の工程を表す模式図である。
図12図12は、本発明の実施形態4に係る操縦者技量評価装置を有するクレーンの側面図である。
図13図13は、本発明の実施形態4に係る操縦者技量評価装置を有するクレーンの制御ブロック図を示す。
図14図14は、本発明の実施形態5に係る操縦者技量評価装置の制御ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0054】
[実施形態1]
<操縦者技量評価装置の全体構成>
以下に、図1から図4を用いて、本発明の一実施形態に係る操縦者技量評価装置について説明する。図1は、本発明の実施形態1に係る操縦者技量評価装置1の制御ブロック図である。図2は、操縦者技量評価装置1、1Aの機械学習の工程を表す模式図である。図3は、各実施形態における操縦者技量評価装置1、1A、1B、1Cが技量を評価する地切り工程X1、搬送工程Y1及び接地工程X2を示す経路図である。図4は、各実施形態における操縦者技量評価装置1、1A、1B、1Cにおいて操縦者の技量を示すレーダーチャートである。
【0055】
以下の各実施形態においては、クレーンとは、旋回可能且つ起伏可能な伸縮ブームを有する。また、クレーンとしてラフテレーンクレーン(以下、単に「クレーン」と記す)であるクレーン11(図12参照)について説明を行う。しかしながら、クレーンは、オールテレーンクレーン、トラッククレーン等であればよい。また、以下の説明において、操縦者Pとは、クレーンを操縦している者をいう。
【0056】
図1に示すように、操縦者技量評価装置1は、クレーン11を操縦する操縦者Pの技量を評価する装置である。本実施形態において、操縦者技量評価装置1は、クレーン11を操縦者Pが操縦するためのクレーン装置用操作具29(図13参照)の操作に関連する情報である操作関連情報Oi、クレーン11の姿勢に関連する情報である姿勢関連情報Pi及びクレーン11が搬送する吊り荷Wに関連する情報である吊り荷関連情報Liに基づいて、操縦者Pの技量を評価する情報である吊り上げ技量関連情報Si1、移動技量関連情報Si2または吊り下し技量関連情報Si3のうち少なくとも一つを出力する。
【0057】
操縦者技量評価装置1は、例えばスマートフォン等の携帯端末に収容されている。操縦者技量評価装置1は、制御部2と、記憶部4と、通信部5と、表示部6と、を有する。
【0058】
制御部2は、操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liに基づいた操縦者Pの技量の評価に利用される技量関連情報生成モデル3を有する。制御部2には、前記クレーンから操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liが入力可能である。
【0059】
制御部2は、操縦者技量評価装置1を制御する。制御部2は、技量関連情報生成モデル3を利用して、例えば、クレーン11または外部のサーバーS1等から入力された操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liに基づいて、吊り上げ技量関連情報Si1、移動技量関連情報Si2または吊り下し技量関連情報Si3のうち少なくとも一つを作成する。
【0060】
制御部2には、技量関連情報生成モデル3、記憶部4、通信部5、表示部6を含む操縦者技量評価装置1を制御するために、種々のプログラム、データが格納されている。制御部2は、外部のサーバーS1等から入力された操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liを記憶部4に対して送信可能である。
【0061】
技量関連情報生成モデル3は、操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liに基づいた操縦者Pの技量の評価に利用される。技量関連情報生成モデル3は、学習用操縦者PLによって作成された教師データに基づいて学習された機械学習用のモデルである。
【0062】
制御部2は、クレーン11または図示しない外部のサーバーから入力された操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liを記憶部4及び表示部6に対して出力可能である。同様に、制御部2は、技量関連情報生成モデル3を利用して作成した吊り上げ技量関連情報Si1、移動技量関連情報Si2及び吊り下し技量関連情報Si3を記憶部4及び表示部6に対して出力可能である。また、制御部2は、通信部5を介して操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi、吊り荷関連情報Li、吊り上げ技量関連情報Si1、移動技量関連情報Si2及び吊り下し技量関連情報Si3を外部のサーバーS1等に対して出力可能である。
【0063】
制御部2は、記憶部4に記憶された操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi、吊り荷関連情報Li、吊り上げ技量関連情報Si1、移動技量関連情報Si2及び吊り下し技量関連情報Si3を含む各種情報を取得可能である。
【0064】
記憶部4は、クレーン11または外部のサーバーS1等から入力される操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Li、制御部2から入力される吊り上げ技量関連情報Si1、移動技量関連情報Si2及び吊り下し技量関連情報Si3等を記憶可能である。記憶部4は、操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi、吊り荷関連情報Li、吊り上げ技量関連情報Si1、移動技量関連情報Si2及び吊り下し技量関連情報Si3等を記憶するRAM、プロセッサ内部のメモリ、ハードディスク等を有する。記憶部4は、記憶した操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi、吊り荷関連情報Li、吊り上げ技量関連情報Si1、移動技量関連情報Si2及び吊り下し技量関連情報Si3等を制御部2に対して出力可能である。
【0065】
通信部5は、クレーン11(図12参照)または外部のサーバーS1等との間で各種情報を送受信する。通信部5は、制御部2が技量関連情報生成モデル3を利用して作成した吊り上げ技量関連情報Si1、移動技量関連情報Si2及び吊り下し技量関連情報Si3を外部のサーバーS1等に送信可能である。また、制御部2は、記憶部4に記憶されている操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi、吊り荷関連情報Li、吊り上げ技量関連情報Si1、移動技量関連情報Si2及び吊り下し技量関連情報Si3を外部のサーバーS1等に送信可能である。
【0066】
通信部5は、外部のサーバーS1等から操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Li、吊り上げ技量関連情報Si1、移動技量関連情報Si2及び吊り下し技量関連情報Si3を受信可能である。さらに、通信部5は、クレーン用通信装置30aを介してクレーン用制御装置30から操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liを含む各種情報を受信可能である。
【0067】
表示部6は、操縦者技量評価装置1の動作状況、制御部2が技量関連情報生成モデル3を利用して作成した吊り上げ技量関連情報Si1、移動技量関連情報Si2及び吊り下し技量関連情報Si3のうち少なくとも一つを表示する。表示部6は、例えば液晶ディスプレイから構成されている。表示部6には、制御部2または記憶部4から吊り上げ技量関連情報Si1、移動技量関連情報Si2及び吊り下し技量関連情報Si3のうち少なくとも一つが入力される。表示部6は、操縦者Pの技量関連情報を操縦者Pまたは第3者に伝達する。
【0068】
このように構成される操縦者技量評価装置1の制御部2は、技量関連情報生成モデル3を利用して操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liに基づいて操縦者Pの吊り上げ技量関連情報Si1、移動技量関連情報Si2及び吊り下し技量関連情報Si3のうち少なくとも一つを作成する。操縦者技量評価装置1は、クレーン11の操縦において異なる技術が必要となる工程毎に操縦者Pの技量を評価することができる。
【0069】
<技量関連情報生成モデル3の作成>
次に、技量関連情報生成モデル3の作成について説明する。技量関連情報生成モデル3は、操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liに基づいた操縦者Pの技量の評価に利用される機械学習用のモデルである。技量関連情報生成モデル3は、例えば、ニューラルネットワークを有する。
【0070】
図2に示すように、技量関連情報生成モデル3は、技量が閾値よりも高い熟練者である学習用操縦者PLの学習用操作関連情報OiL、学習用姿勢関連情報PiL及び学習用吊り荷関連情報LiLと学習用操縦者PLの自己申告または第三者の評価による学習用吊り上げ技量関連情報Si1L、学習用移動技量関連情報Si2L及び学習用吊り下し技量関連情報Si3Lのうち少なくとも一つとの組み合わせから構成される教師情報に基づいて学習されたモデルである。
【0071】
学習用吊り上げ技量関連情報Si1Lは、操縦者PLがクレーン11を用いて吊り荷Wを接地面から吊り上げる際の操縦者PLの技量を客観的に評価するための指標である吊り上げ技量評価指標に基づいて評価された技量の正解ラベルである。学習用移動技量関連情報Si2Lは、操縦者PLがクレーン11を用いて吊り荷Wを平面視で水平方向に移動させる際の操縦者PLの技量を客観的に評価するための指標である移動技量評価指標に基づいて評価された技量の正解ラベルである。学習用吊り下し技量関連情報Si3Lは、操縦者PLがクレーン11を用いて吊り荷Wを接地面に吊り下ろして接地させる際の操縦者PLの技量を客観的に評価するための指標である吊り下ろし評価指標に基づいて評価された技量の正解ラベルである。
【0072】
なお、本実施形態において、熟練者とは、例えば、クレーン11の延べ操縦時間が所定時間を超えており、且つ自己申告または第三者の評価による学習用吊り上げ技量関連情報Si1L、学習用移動技量関連情報Si2L及び学習用吊り下し技量関連情報Si3Lの評価が閾値である一定数の操縦者Pの平均値以上の操縦者Pである。
【0073】
図2及び図3に示すように、技量関連情報生成モデル3には、学習用操縦者PLがクレーン11を用いて、吊り荷Wを少なくとも第1位置P1から第2位置P2まで搬送するまでの学習用操作関連情報OiL、学習用姿勢関連情報PiL及び学習用吊り荷関連情報LiLがそれぞれ連続した一つの情報として入力される。
【0074】
制御部2は、例えば、クレーン用制御装置30から入力された学習用操作関連情報OiL、学習用姿勢関連情報PiL及び学習用吊り荷関連情報LiLを、工程別に、吊り荷Wを第1位置P1から吊り上げるまでの範囲、吊り荷Wを第1位置P1から第2位置P2まで移動させる範囲及び吊り荷Wを第2位置P2に接地するまでの範囲に切り分ける。
【0075】
更に、制御部2は、技量関連情報生成モデル3を利用して、切り分けた各範囲の学習用操作関連情報OiL、学習用姿勢関連情報PiL及び学習用吊り荷関連情報LiLに基づいて、吊り上げ技量関連情報Si1、移動技量関連情報Si2及び吊り下し技量関連情報Si3のうち少なくとも一つを生成する。このように、制御部2は、技量関連情報生成モデル3を利用することで、学習用操作関連情報OiL、学習用姿勢関連情報PiL及び学習用吊り荷関連情報LiLを互いに関連した情報として処理可能である。
【0076】
クレーン11(図12参照)によって吊り荷Wを第1位置P1から吊り上げる地切り工程X1において、学習用操縦者PLは、吊り荷Wが接地面から離れる寸前までの巻き上げ操作具の操作及び吊り荷Wが接地面から離れる寸前に伸縮ブーム19(図12参照)のたわみ補正を行うために起伏操作具の操作を行う場合が多い。よって、メインワイヤロープ24(図12参照)の巻き上げ開始から巻き上げ終了までにおいて、制御部2は、技量関連情報生成モデル3を利用することで、所用時間、伸縮ブーム19に加わる荷重の変化に対する巻き上げ操作具及び起伏操作具の操作量、操作タイミング及び単位時間当たりの操作量等の情報を含む操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Li基づいて、吊り上げ技量評価指標に沿った学習用操縦者PLの吊り上げ技量関連情報Si1として評価することができる。
【0077】
クレーン11によって吊り荷Wを平面視で第1位置P1から第2位置P2まで移動させる搬送工程Y1において、学習用操縦者PLは、第2位置P2に吊り荷Wが先行して到達するように旋回方向における伸縮ブーム19の先端の位置と吊り荷Wの位置とを旋回操作具の操作によって調整している。更に、学習用操縦者PLは、旋回時の遠心力によって吊り荷Wが旋回中心から離れないように旋回径方向における伸縮ブーム19の先端の位置と吊り荷Wの位置とを起伏操作具の操作によって調整している。よって、第1位置P1から第2位置P2までの搬送において、制御部2は、技量関連情報生成モデル3を利用することで、所用時間、旋回操作具及び起伏操作具の操作量、操作タイミング及び単位時間当たりの操作量等の情報を含む操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Li基づいて、移動技量評価指標に沿った学習用操縦者PLの移動技量関連情報Si2として評価することができる。
【0078】
吊り荷Wを目標位置である第2位置P2に吊り下ろす接地工程X2において、学習用操縦者PLは、吊り荷Wが接地面に接触する寸前までの巻き上げ(巻き下げ)操作具の操作及び吊り荷Wが接地面に接触する寸前に伸縮ブーム19のたわみ補正を行うために起伏操作具の操作を行っている。よって、メインワイヤロープ24の巻き下げ開始から巻き下げ終了までにおいて、制御部2は、技量関連情報生成モデル3を利用することで、所用時間、伸縮ブームの荷重変化に対する巻き上げ操作具及び起伏操作具の操作量、操作タイミング及び単位時間当たりの操作量等の情報を含む操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Li基づいて、吊り下ろし評価指標に沿った学習用操縦者PLの吊り下し技量関連情報Si3として評価することができる。
【0079】
制御部2は、技量関連情報生成モデル3を利用して生成した吊り上げ技量関連情報Si1、移動技量関連情報Si2及び吊り下し技量関連情報Si3と教師情報の正解ラベルである学習用吊り上げ技量関連情報Si1L、学習用移動技量関連情報Si2L及び学習用吊り下し技量関連情報Si3Lとのそれぞれの誤差ができるだけ小さくなるように機械学習によって技量関連情報生成モデル3のパラメータを調整する。制御部2は、前記誤差が一定の範囲の収束するまで機械学習を繰り返す。制御部2は、機械学習が完了した技量関連情報生成モデル3を有している。
【0080】
図2に示すように、本実施形態において、機械学習された技量関連情報生成モデル3は、操縦者Pの操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liに基づいた吊り上げ技量関連情報Si1、移動技量関連情報Si2及び吊り下し技量関連情報Si3のうち少なくとも一つの生成に利用される。
【0081】
制御部2は、機械学習済の技量関連情報生成モデル3を利用することで、クレーン11の操作及びクレーン11の姿勢に対する吊り荷Wの振れを含む吊り荷Wの軌道に関しての技量関連情報である吊り上げ技量関連情報Si1、移動技量関連情報Si2及び吊り下し技量関連情報Si3を生成可能である。
【0082】
<操縦者技量評価装置1による技量評価>
図1に示すように、技量評価を実施する場合、クレーン用制御装置30から操縦者技量評価装置1に対して技量評価を開始する旨の信号が出力される。制御部2は、通信部5を介してクレーン用制御装置30から技量評価を開始する信号が入力されると、技量評価を開始する旨を表示部6に表示する。
【0083】
制御部2は、技量評価を開始する信号を取得してから伸縮ブーム19に加わる荷重がゼロになるまでの間の操縦者Pの操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liをそれぞれ連続した一つの情報としてクレーン用制御装置30から取得する。制御部2は、取得した操縦者Pの操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liを記憶部4に記憶させる。
【0084】
クレーン11によって吊り荷Wを第1位置P1から第2位置P2に搬送する場合、制御部2は、第1位置P1に位置する吊り荷Wを吊り上げるためにメインワイヤロープ24の巻き上げを開始してから第2位置P2に搬送された吊り荷Wを接地するためのメインワイヤロープ24の巻き下げが完了するまでの操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liを記憶部4に記憶する。
【0085】
次に、制御部2は、技量関連情報生成モデル3を利用して、互いに関連する情報である操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liに基づいて、吊り上げ技量関連情報Si1、移動技量関連情報Si2及び吊り下し技量関連情報Si3のうち少なくとも一つを生成する。
【0086】
制御部2は、技量関連情報生成モデル3を利用して、例えば、高度な技術をもつ熟練者を10点、初心者を1点とした場合における操縦者Pの技量を評価した吊り上げ技量関連情報Si1、移動技量関連情報Si2及び吊り下し技量関連情報Si3を生成する。また、制御部2は、吊り上げ技量関連情報Si1、移動技量関連情報Si2及び吊り下し技量関連情報Si3を総合的に評価した総合技量を評価してもよい。
【0087】
次に、制御部2は、吊り上げ技量関連情報Si1、移動技量関連情報Si2及び吊り下し技量関連情報Si3のうち生成した技量関連情報を記憶部4及び表示部6に対して出力する。
【0088】
記憶部4は、生成した技量関連情報を特定の操縦者Pの技量関連情報として、吊り上げ技量関連情報Si1、移動技量関連情報Si2及び吊り下し技量関連情報Si3と組み合わせて記憶する。
【0089】
図4に示すように、表示部6には、制御部2から吊り上げ技量関連情報Si1、移動技量関連情報Si2及び吊り下し技量関連情報Si3のうち生成した操縦者Pの技量関連情報T1が入力される。表示部6は、入力された技量関連情報を数値表示、レーザーチャートC等によって表示する。なお、レーザーチャートCには、熟練者の技量の平均値Ta等を表示してもよい。
【0090】
このように構成される操縦者技量評価装置1は、クレーン11による吊り荷Wの取り扱いにおいて操縦者Pに必要な様々な技量をそれぞれ個別に評価するための技量関連情報を生成する。技量関連情報は、クレーン11による吊り荷Wの搬送作業における各工程別に操縦者Pの技量を数値化した情報である。よって、操縦者技量評価装置1は、吊り荷Wの第1位置P1からの吊り上げ操作から吊り荷Wの第2位置P2への接地操作までの全工程における前記操縦者の技量をそれぞれ出力する。
【0091】
また、操縦者技量評価装置1は、クレーン11によって吊り荷Wを第1位置P1から吊り上げてから第2位置P2に接地するまでの期間における操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liをそれぞれ連続した1つの情報として操縦者Pの技量を評価している。つまり、操縦者技量評価装置1は、操縦者Pがクレーン11によって吊り荷Wを第1位置P1から第2位置P2に搬送するまでの一連の操作においてそれぞれの工程での技量を個別に評価するので、技量の評価に不要な情報を排除することができる。
【0092】
さらに、操縦者技量評価装置1は、熟練者の操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liを含む情報を機械学習のための学習用操作関連情報OiL、学習用姿勢関連情報PiL及び学習用吊り荷関連情報LiLとして機械学習した技量関連情報生成モデル3を利用することで、操縦者Pの技量を、熟練者を基準とする熟練度として評価することができる。
【0093】
これにより、吊り荷Wの取り扱いにおいて異なる技量が要求される吊り荷Wの第1位置P1からの地切り工程、第1位置P1から第2位置P2までの吊り荷Wの搬送工程及び吊り荷Wの第2位置P2への接地工程の各工程における操縦者Pの技量をより詳しく評価することができる。
【0094】
<操縦者技量評価装置1の変形例>
次に、図5を用いて操縦者技量評価装置1の変形例について説明する。図5は、実施形態1の別実施形態に係る操縦者技量評価装置1の制御ブロック図である。
【0095】
図5に示すように、操縦者技量評価装置1の制御部2は、クレーンの種類、クレーンの大きさ等に応じて複数の技量関連情報生成モデル3を有していてもよい。制御部2は、例えば、トラッククレーン用の技量関連情報生成モデル3x、吊り上げ荷重が25tのラフテレーンクレーン用の技量関連情報生成モデル3y及び吊り上げ荷重が100tのラフテレーンクレーン用の技量関連情報生成モデル3zを有している。
【0096】
技量関連情報生成モデル3xは、学習用操縦者PLがトラッククレーンを操縦した場合の学習用操作関連情報OiL、学習用姿勢関連情報PiL及び学習用吊り荷関連情報LiLと学習用操縦者PLが自己申告または第三者の評価による学習用吊り上げ技量関連情報Si1L、学習用移動技量関連情報Si2L及び学習用吊り下し技量関連情報Si3Lのうち少なくとも一つとの組み合わせから構成される教師情報に基づいて学習されたモデルである。
【0097】
同様に、技量関連情報生成モデル3yは、学習用操縦者PLが吊り上げ荷重25tのラフテレーンクレーンを操縦した際の教師情報によって学習されたモデルである。技量関連情報生成モデル3zは、学習用操縦者PLが吊り上げ荷重100tのラフテレーンクレーンを操縦した際の教師情報によって学習されたモデルである。
【0098】
制御部2は、予め入力されたクレーンの種類及び前記クレーンの大きさ、または前記クレーンの制御装置からの情報によって操縦する前記クレーンの種類及び大きさに適した技量関連情報生成モデル3に切り換える。制御部2は、例えば吊り上げ荷重25tのラフテレーンクレーンまたは吊り上げ荷重16tのラフテレーンクレーンを操縦する場合、技量関連情報生成モデル3yを選択する。
【0099】
このように構成することにより、操縦者技量評価装置1は、機種毎に構造、許容搬送荷重、可動範囲等の機械特性が異なるクレーンに対応した技量関連情報生成モデル3x、3y、3zを選択して操縦者Pの技量を評価している。これにより、前記クレーンの機械特性の違いによって異なる技量が要求される吊り荷Wの第1位置P1からの地切り工程、第1位置P1から第2位置P2までの吊り荷Wの搬送工程及び吊り荷Wの第2位置P2への接地工程の各工程における操縦者Pの技量をより詳しく評価することができる。
【0100】
[実施形態2]
<視点関連情報Viを使用した評価>
<操縦者技量評価装置1Aの全体構成>
図2図3図6から図9を用いて本発明の操縦者技量評価装置の実施形態2に係る操縦者技量評価装置1Aについて説明する。図6は、操縦者技量評価装置1Aの制御ブロック図である。図7は、操縦者技量評価装置1Aが取得する視点関連情報Viを生成する視点検出装置7を操縦者Pが装着した状態を示す模式図である。図8は、操縦者技量評価装置1Aが取得する地切り工程X1及び接地工程X2における視点Vpの合成画像Pvである。図9は、操縦者技量評価装置1Aが取得する搬送工程Y1における視点Vpの合成画像Pvである。なお、以下の各実施形態において、既に説明した実施形態と同様の点に関してはその具体的説明を省略し、相違する部分を中心に説明する。
【0101】
図6に示すように、操縦者技量評価装置1Aは、操縦者Pがクレーン11(図12参照)を操縦している際の操縦者Pの視点Vp(図8図9参照)に関連する情報である視点関連情報Viを含む操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liに基づいて、操縦者Pの技量を評価する情報である吊り上げ技量関連情報Si1、移動技量関連情報Si2または吊り下し技量関連情報Si3のうち少なくとも一つを出力する。
【0102】
制御部2は、操作関連情報Oi、視点関連情報Vi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liに基づいた操縦者Pの技量の評価に利用される技量関連情報生成モデル3Aを有する。また、制御部2は、視点検出装置7またはクレーン用制御装置30から視点関連情報Viが入力可能である。
【0103】
記憶部4は、視点検出装置7またはクレーン用制御装置30から入力される視点関連情報Viを記憶する。記憶部4は、記憶した視点関連情報Viを制御部2に対して出力可能である。
【0104】
通信部5は、視点検出装置7またはクレーン用制御装置30から視点関連情報Viを取得可能である。
【0105】
<視点検出装置>
図7に示すように、視点関連情報Viは、操縦者Pが装着している視点検出装置7によって検出される。視点検出装置7は、操縦者Pが身体に装着して使用するウェアラブル端末である。本実施形態において、視点検出装置7は、眼鏡型のウェアラブル端末として説明する。視点検出装置7は、クレーン11の操縦者Pに装着されている。視点検出装置7は、フレーム8と、視点検出用カメラ9aと、視野検出用カメラ9bと、視点検出装置用制御部10とを有する。
【0106】
眼鏡型フレームとして構成されているフレーム8には、視点検出用カメラ9aと視野検出用カメラ9bと視点検出装置用制御部10とが設けられている。視点検出用カメラ9aは、操縦者Pの両目の瞳を撮影するカメラである。視野検出用カメラ9bは、操縦者Pが視認している風景を撮影するカメラである。
【0107】
視点検出装置用制御部10は、視点検出用カメラ9aと視野検出用カメラ9bとから撮影した画像を取得可能である。視点検出装置用制御部10は、操縦者Pの瞳の位置と視点検出用カメラ9aから操縦者Pの瞳までの撮影距離とから仮想平面上の操縦者Pの視点Vpの位置を単位時間毎に算出可能である。また、視点検出装置用制御部10は、算出した操縦者Pの仮想平面上の視点Vpの位置を視野検出用カメラ9bが撮影した視野画像の座標に変換可能である。更に、視点検出装置用制御部10は、変換した視点Vpの位置を前記視野画像に合成した合成画像Pvを生成可能である。
【0108】
図6に示すように、視点検出装置用制御部10は、図示しない通信部を介して生成した合成画像Pvを視点関連情報Viとして、クレーン用通信装置30aを介してクレーン用制御装置30、または操縦者技量評価装置1の通信部5を介して制御部2に対して出力可能である。合成画像Pvには、クレーン11の操縦者Pの単位時間毎の視点Vpの位置、視点Vpの移動方向、視点Vpの分布、まばたきの回数等の情報が含まれる。
【0109】
視点関連情報Viは、操縦者Pの技量についての情報だけでなく操縦者Pの心理状態についての情報を含む。視点関連情報Viは、例えば、前記クレーンを操縦している間の操縦者Pの単位時間毎の視点Vpの位置、視点Vpの移動方向、視点Vpの分布、まばたきの回数等から、操縦者Pの技量に加えて、緊張の度合い、集中の度合い、動揺の度合い、等の心理状態に関する情報を含んでいる。
【0110】
制御部2は、視点検出装置7から合成画像Pvを操作関連情報Oiに含まれる視点関連情報Viとして取得する。制御部2は、技量関連情報生成モデル3Aを利用して入力された操作関連情報Oi、視点関連情報Vi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liに基づいて、吊り上げ技量関連情報Si1、移動技量関連情報Si2または吊り下し技量関連情報Si3のうち少なくとも一つを作成する。
【0111】
<技量関連情報生成モデル3Aの作成>
次に、技量関連情報生成モデル3Aの作成について説明する。技量関連情報生成モデル3Aは、操作関連情報Oi、視点関連情報Vi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liに基づいた操縦者Pの技量の評価に利用される機械学習用のモデルである。技量関連情報生成モデル3Aは、例えば、ニューラルネットワークを有する。
【0112】
図2に示すように、技量関連情報生成モデル3Aは、クレーン11を操縦する技量が閾値よりも高い熟練者である学習用操縦者PLの学習用操作関連情報OiL、学習用操作関連情報OiLに含まれる学習用視点関連情報ViL、学習用姿勢関連情報PiL及び学習用吊り荷関連情報LiLと学習用操縦者PLの自己申告または第三者の評価による学習用吊り上げ技量関連情報Si1L、学習用移動技量関連情報Si2L及び学習用吊り下し技量関連情報Si3Lのうち少なくとも一つとの組み合わせから構成される教師情報に基づいて学習されたモデルである。
【0113】
図2及び図3に示すように、技量関連情報生成モデル3Aには、学習用操縦者PLが前記クレーンを用いて、吊り荷Wを少なくとも第1位置P1から第2位置P2まで搬送するまでの学習用操作関連情報OiL、学習用視点関連情報ViL、学習用姿勢関連情報PiL及び学習用吊り荷関連情報LiLがそれぞれ連続した一つの入力情報として入力される。
【0114】
制御部2は、例えば、入力された学習用操作関連情報OiL、学習用視点関連情報ViL、学習用姿勢関連情報PiL及び学習用吊り荷関連情報LiLを、工程別に吊り荷Wを第1位置P1から吊り上げるまでの範囲、吊り荷Wを第1位置P1から第2位置P2まで移動させる範囲及び吊り荷Wを第2位置P2に接地するまでの範囲に切り分ける。更に、制御部2は、技量関連情報生成モデル3を利用して、切り分けた各範囲の学習用操作関連情報OiL、学習用姿勢関連情報PiL及び学習用吊り荷関連情報LiLに基づいて、操作関連情報の吊り上げ技量関連情報Si1、移動技量関連情報Si2及び吊り下し技量関連情報Si3のうち少なくとも一つを生成する。
【0115】
図8に示すように、吊り荷Wを第1位置P1から吊り上げる地切り工程X1において(図3参照)、学習用操縦者PLは、吊り荷Wが接地面から離れる寸前まで伸縮ブーム19(図12参照)に加わる荷重を表示する荷重計Mに視点Vpが集中する。また、学習用操縦者PLは、吊り荷Wが接地面から離れる寸前からブームカメラ19b(図13参照)の画像または吊り荷Wに視点Vpが集中する。すなわち、メインワイヤロープ24(図参照)の巻き上げ開始から巻き上げ終了までにおいて、学習用視点関連情報ViLは、吊り荷Wの周囲の状況、吊り荷Wの動き、伸縮ブーム19に加わる荷重及び学習用操縦者PLの心理状態を関連付けた学習用操縦者PLの技量を示す情報である。
【0116】
図9に示すように、吊り荷Wを第1位置P1から第2位置P2まで移動させる搬送工程Y1において(図3参照)、学習用操縦者PLは、吊り荷Wとブームカメラ19bの吊り荷画像Pwに視点Vpが集中する。すなわち、第1位置P1から第2位置P2までの搬送において、学習用視点関連情報ViLは、吊り荷Wの動き、吊り荷Wの周囲の状況及び学習用操縦者PLの心理状態を関連付けた学習用操縦者PLの技量を示す情報である。
【0117】
図8に示すように、吊り荷Wを第1位置P1に吊り下ろす接地工程X2において(図3参照)、学習用操縦者PLは、吊り荷Wが接地面に接触する寸前まで伸縮ブーム19に加わる荷重を表示する荷重計に視点Vpが集中する。また、学習用操縦者PLは、吊り荷Wが接地面に接触する寸前からブームカメラ19bの吊り荷画像Pwまたは吊り荷Wに視点Vpが集中する。すなわち、メインワイヤロープ24の巻き下げ開始から巻き下げ終了までにおいて、学習用視点関連情報ViLは、吊り荷Wの周囲の状況、吊り荷Wの動き、伸縮ブーム19に加わる荷重及び学習用操縦者PLの心理状態を関連付けた学習用操縦者PLの技量を示す情報である。
【0118】
このように、学習用視点関連情報ViLは、視点Vpの位置、単位回数当たりの視点滞在時間、視点Vpの分布、視点Vpの移動方向等から、学習用操縦者PLの吊り荷Wの移動に関する技量と学習用操縦者PLの心理状態とを関連付ける情報である。
【0119】
制御部2は、技量関連情報生成モデル3Aを利用して、学習用操作関連情報OiL、学習用視点関連情報ViL、学習用姿勢関連情報PiL及び学習用吊り荷関連情報LiLに基づいて生成した吊り上げ技量関連情報Si1、移動技量関連情報Si2及び吊り下し技量関連情報Si3と教師情報の正解ラベルである学習用吊り上げ技量関連情報Si1L、学習用移動技量関連情報Si2L及び学習用吊り下し技量関連情報Si3Lとの誤差ができるだけ小さくなるように機械学習によって技量関連情報生成モデル3Aのパラメータを調整する。
【0120】
機械学習された技量関連情報生成モデル3Aは、操縦者Pの操作関連情報Oi、視点関連情報Vi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liに基づいて、吊り上げ技量関連情報Si1、移動技量関連情報Si2及び吊り下し技量関連情報Si3のうち少なくとも一つの生成に利用される。
【0121】
<操縦者技量評価装置1Aによる技量評価>
図3及び図6に示すように、吊り荷Wを第1位置P1から第2位置P2に搬送した場合、制御部2は、例えば、クレーン11が第1位置P1に位置する吊り荷Wを吊り上げるためにメインワイヤロープ24の巻き上げを開始してから第2位置P2に搬送された吊り荷Wを接地するためのメインワイヤロープ24の巻き下げが完了するまでの操作関連情報Oi、視点関連情報Vi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liを記憶部4に記憶する。
【0122】
次に、制御部2は、技量関連情報生成モデル3Aを利用して、記憶部4に記憶された操作関連情報Oi、視点関連情報Vi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liを互いに関連した情報として、吊り上げ技量関連情報Si1、移動技量関連情報Si2及び吊り下し技量関連情報Si3のうち少なくとも一つを生成する。
【0123】
これにより、操縦者技量評価装置1Aは、操作関連情報Oi、視点関連情報Vi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liに基づいて、吊り荷Wの第1位置P1からの地切り工程、第1位置P1から第2位置P2までの吊り荷Wの搬送工程及び吊り荷Wの第2位置P2への接地工程の各工程における操縦者Pの吊り荷Wの周囲の状況、吊り荷Wの動き、クレーン11の状態及び学習用操縦者PLの心理状態を関連付けて操縦者Pの技量をより詳しく評価することができる。
【0124】
[実施形態3]
<環境関連情報を使用した評価>
<操縦者技量評価装置1Bの全体構成>
図10及び図11を用いて本発明の操縦者技量評価装置の実施形態3に係る操縦者技量評価装置1Bについて説明する。図10は、操縦者技量評価装置1Bの制御ブロック図である。図11は、操縦者技量評価装置1Bの機械学習の工程を表す模式図である。
【0125】
図10に示すように、操縦者技量評価装置1Bは、操縦者Pが操縦しているクレーン11の周囲の環境に関連する情報である環境関連情報Ei、操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liに基づいて、操縦者Pの技量を評価する情報である吊り上げ技量関連情報Si1、移動技量関連情報Si2または吊り下し技量関連情報Si3のうち少なくとも一つを出力する。
【0126】
制御部2は、環境関連情報Ei、操作関連情報Oi、視点関連情報Vi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liに基づいた操縦者Pの技量の評価に利用される技量関連情報生成モデル3Bを有する。また、制御部2には、外部のサーバーS1等またはクレーン用制御装置30から環境関連情報Eiが入力可能である。
【0127】
記憶部4は、クレーン用制御装置30または外部のサーバーS1等から入力される環境関連情報Eiを記憶する。記憶部4は、記憶した環境関連情報Eiを制御部2に対して出力可能である。
【0128】
通信部5は、クレーン用制御装置30または外部のサーバーS1等から環境関連情報Eiを取得可能である。
【0129】
制御部2は、技量関連情報生成モデル3Bを利用して入力された環境関連情報Ei、操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liに基づいて、吊り上げ技量関連情報Si1、移動技量関連情報Si2または吊り下し技量関連情報Si3のうち少なくとも一つを作成する。
【0130】
<技量関連情報生成モデル3Bの作成>
次に、技量関連情報生成モデル3Bの作成について説明する。技量関連情報生成モデル3Bは、環境関連情報Ei、操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liに基づいた操縦者Pの技量の評価に利用される機械学習用のモデルである。技量関連情報生成モデル3Bは、例えば、ニューラルネットワークを有する。
【0131】
図11に示すように、技量関連情報生成モデル3Bは、学習用操縦者PLの学習用操作関連情報OiL、学習用姿勢関連情報PiL及び学習用吊り荷関連情報LiLを取得した際のクレーン11の周囲の環境に関連する情報を学習用環境関連情報EiLとして、学習用環境関連情報EiL、学習用操作関連情報OiL、学習用姿勢関連情報PiL及び学習用吊り荷関連情報LiLと、学習用操縦者PLの自己申告または第三者の評価による学習用吊り上げ技量関連情報Si1L、学習用移動技量関連情報Si2L及び学習用吊り下し技量関連情報Si3Lのうち少なくとも一つとの組み合わせから構成される教師情報に基づいて学習されたモデルである。
【0132】
制御部2は、技量関連情報生成モデル3Bを利用して、学習用環境関連情報EiL、学習用操作関連情報OiL、学習用姿勢関連情報PiL及び学習用吊り荷関連情報LiLに基づいて生成した吊り上げ技量関連情報Si1、移動技量関連情報Si2及び吊り下し技量関連情報Si3と教師情報の正解ラベルである学習用吊り上げ技量関連情報Si1L、学習用移動技量関連情報Si2L及び学習用吊り下し技量関連情報Si3Lとの誤差ができるだけ小さくなるように機械学習によって技量関連情報生成モデル3Bのパラメータを調整する。
【0133】
<操縦者技量評価装置1Bによる技量評価>
機械学習された技量関連情報生成モデル3Bは、操縦者Pの操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liに加えて、操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liを記録した際のクレーン11の環境に関連する情報である環境関連情報Eiに基づいた吊り上げ技量関連情報Si1、移動技量関連情報Si2及び吊り下し技量関連情報Si3のうち少なくとも一つの生成に利用される。
【0134】
これにより、操縦者技量評価装置1Bは、環境関連情報Ei、操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liに基づいて、吊り荷Wの第1位置P1からの吊り上げ、第1位置P1から第2位置P2までの吊り荷Wの搬送及び吊り荷Wの第2位置P2への接地の各場面における環境の影響を考慮した技量をより詳しく評価することができる。
【0135】
[実施形態4]
<操縦者技量評価装置を有するクレーン>
<クレーンの全体構成>
図12及び図13を用いて本発明の操縦者技量評価装置1、1A、1Bのいずれか一つ(以下、操縦者技量評価装置1について記載)を有するクレーン11について説明する。図12は、操縦者技量評価装置1を有するクレーン11の全体構成を示す。図13は、操縦者技量評価装置1を有するクレーン11の制御ブロック図を示す。
【0136】
図12に示すように、クレーン11は、任意の場所に移動可能な移動式クレーンである。クレーン11は、車両12、クレーン装置16、クレーン用制御装置30(図13参照)を有する。
【0137】
車両12は、クレーン装置16を搬送する走行体である。車両12は、複数の車輪13を有する。車両12は、エンジン14を動力源として走行する。車両12は、アウトリガ15を有する。
【0138】
クレーン装置16は、吊り荷Wをワイヤロープによって吊り上げる作業装置である。クレーン装置16は、旋回台17、伸縮ブーム19、メインフックブロック20、サブフックブロック21、起伏用油圧シリンダ22、メインウインチ23、メインワイヤロープ24、サブウインチ25、サブワイヤロープ26、キャビン27等を具備する。
【0139】
旋回台17は、クレーン装置16を旋回可能に構成する回転装置である。旋回台17は、円環状の軸受を介して車両12のフレーム上に設けられる。旋回台17には、アクチュエータである油圧式の旋回用油圧モータ17aを有する。旋回台17は、旋回用油圧モータ17aによって一方向と他方向とに旋回可能である。
【0140】
クレーン用GNSS受信機18(図13参照)は、全球測位衛星システム(Global Navigation Satellite System)を構成する受信機である。クレーン用GNSS受信機18は、衛星から測距電波を受信し、クレーン用GNSS受信機18の絶対座標である緯度、経度、標高、方位等を検出するものである。クレーン用GNSS受信機18は、旋回台17に設けられている。
【0141】
伸縮ブーム19は、メインワイヤロープ24およびサブワイヤロープ26を支持する可動支柱である。伸縮ブーム19は、複数のブーム部材から構成されている。伸縮ブーム19は、ベースブーム部材の基端が旋回台17の略中央に揺動可能に設けられている。伸縮ブーム19は、各ブーム部材を伸縮させるアクチュエータである伸縮用油圧シリンダ19a(図13参照)とブーム部材を起伏させる起伏用油圧シリンダ22を有する。伸縮ブーム19は、伸縮用油圧シリンダ19aによって軸方向に伸縮される。また、伸縮ブーム19は、吊り荷Wを撮影する撮像装置であるブームカメラ19b及び延長用部材であるジブ19cを有する。ブームカメラ19b(図13参照)は、伸縮ブーム19の先端部に位置している。
【0142】
メインフックブロック20とサブフックブロック21とは、吊り荷Wを吊る部品である。メインフックブロック20は、メインワイヤロープ24が巻き掛けられる複数のフックシーブと、吊り荷Wを吊るメインフック20aとを有する。サブフックブロック21は、吊り荷Wを吊るサブフック21aを有する。
【0143】
メインウインチ23は、メインワイヤロープ24の巻き上げおよび巻き下げを行う装置である。サブウインチ25は、サブワイヤロープ26の巻き上げおよび巻き下げを行う装置である。
【0144】
キャビン27は、操縦席を覆う筐体である。キャビン27は、旋回台17に搭載されている。キャビン27には、図示しない操縦席が設けられている。操縦席には、車両12を走行操作するための走行用操作具28、クレーン装置16のクレーン装置用操作具29等が設けられている(図13参照)。
【0145】
図13に示すように、操縦者技量評価装置1は、通信部5を介してクレーン用制御装置30と電気的に接続されている。操縦者技量評価装置1は、通信部5を介してクレーン用制御装置30から操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liを取得可能である。なお、操縦者技量評価装置1の制御部2は、クレーン用制御装置30と一体に構成されていてもよい。
【0146】
クレーン用制御装置30は、クレーン11の各アクチュエータを制御する。クレーン用制御装置30は、キャビン27(図12参照)内に設けられている。クレーン用制御装置30は、実体的には、CPU、ROM、RAM、HDD等がバスで接続されている。またはクレーン用制御装置30は、ワンチップのLSI等から構成される。クレーン用制御装置30は、各アクチュエータ、切換え弁等の動作を制御したり画像データを処理したりするために種々のプログラムおよびデータが格納されている。
【0147】
クレーン用制御装置30は、クレーン用通信装置30aを有している。クレーン用通信装置30aは、操縦者技量評価装置1の通信部5との間で情報を送受信可能である。
【0148】
クレーン用制御装置30は、クレーン用GNSS受信機18に接続されている。クレーン用制御装置30は、クレーン11の位置に関する情報を取得可能である。クレーン用制御装置30は、ブームカメラ19bに接続されている。クレーン用制御装置30は、ブームカメラ19bが撮影した現在の画像を単位時間毎に連続して取得可能である。クレーン用制御装置30は、走行用操作具28およびクレーン装置用操作具29に接続されている。クレーン用制御装置30は、クレーン装置用操作具29の操作により生成される操作信号に基づいて、クレーン装置16の制御信号を生成可能である。クレーン用制御装置30は、生成した制御信号を各アクチュエータに送信可能である。
【0149】
クレーン用制御装置30は、走行用操作具28及びクレーン装置用操作具29の操作情報から操作関連情報Oiを生成可能である。また、クレーン用制御装置30は、旋回用油圧モータ17a、伸縮用油圧シリンダ19a、起伏用油圧シリンダ22、メインウインチ23及びサブウインチ25のセンサの情報等から姿勢関連情報Piを生成可能である。また、クレーン用制御装置30は、ブームカメラ19bの吊り荷画像Pw等から吊り荷関連情報Liを生成可能である。
【0150】
クレーン用制御装置30は、クレーン用通信装置30aを介して操縦者技量評価装置1の通信部5に電気的に接続されている。クレーン用制御装置30は、クレーン用通信装置30aを介して操縦者技量評価装置1に対してクレーン11の操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liを送信可能である。
【0151】
このように構成されるクレーン11は、走行用操作具28の操作によって車両12を任意の位置に移動させることができる。また、クレーン11は、クレーン装置用操作具29の操作によって、伸縮ブーム19を旋回、起伏、伸縮させることで吊り荷Wを任意の位置に搬送可能である。また、クレーン11は、クレーン装置用操作具29の操作によって、メインウインチ23等で吊り荷Wを吊り上げ及び吊り下げ可能である。また、クレーン11は、操縦者技量評価装置1によって操縦者Pの吊り上げ技量関連情報Si1、移動技量関連情報Si2及び吊り下し技量関連情報Si3の少なくとも一つを出力可能である。このように、操縦者技量評価装置1がクレーン11に搭載されているので、操縦者Pがクレーン11を用いて吊り荷Wを搬送している際に操縦者Pの技量を評価することができる。
【0152】
[実施形態5]
<サーバーが操縦者技量評価装置を有する構成>
<操縦者技量評価装置1Cの全体構成>
図14を用いて本発明の操縦者技量評価装置の実施形態3に係る操縦者技量評価装置1Cについて説明する。図14は、操縦者技量評価装置1Cの制御ブロック図である。
【0153】
図14に示すように、操縦者技量評価装置1Cは、有線及び無線の少なくとも一方から構成されるインターネット等の通信回線Lを介して複数のクレーンと通信可能なサーバー内に位置している。
【0154】
操縦者技量評価装置1Cは、例えば、複数のクレーン11A、11B、11Cからそれぞれ入力される操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liに基づいて、クレーン11Aの操縦者Pa、クレーン11Bの操縦者Pb、クレーン11Cの操縦者Pcの技量をそれぞれ評価する情報である吊り上げ技量関連情報Si1、移動技量関連情報Si2または吊り下し技量関連情報Si3のうち少なくとも一つを操縦者毎に出力する。
【0155】
制御部2は、通信回線を介して複数のクレーン11A、11B、11Cの各クレーン用制御装置30から操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liが入力可能である。
【0156】
記憶部4は、複数のクレーン11A、11B、11Cの各クレーン用制御装置30から入力される操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liを記憶可能である。記憶部4は、記憶した操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liを制御部2に対して出力可能である。
【0157】
通信部5は、通信回線Lに電気的に接続されている。通信部5は、複数のクレーン11A、11B、11Cの各クレーン用制御装置30から操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liを取得可能である。
【0158】
制御部2は、技量関連情報生成モデル3Cを利用して入力された複数のクレーン11A、11B、11Cの操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liに基づいて、複数のクレーン11A、11B、11Cの各操縦者Pa、Pb、Pcにおける吊り上げ技量関連情報Si1、移動技量関連情報Si2または吊り下し技量関連情報Si3のうち少なくとも一つを作成する。
【0159】
このように、操縦者技量評価装置1Cは、複数のクレーンから操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liを取得することで、国、地域、所属団体、年齢、クレーンの機種、作業内容による操縦者のクレーンを操縦する技量の差異、傾向を把握することができる。また、取得した複数の操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liを用いて技量関連情報生成モデル3を機械学習させることができる。これにより、吊り荷Wの取り扱いにおいて異なる技量が要求される吊り荷Wの地切り、前記吊り荷Wの搬送及び吊り荷Wの接地の各場面における操縦者Pの技量をより詳しく評価することができる。
【0160】
<他の実施形態>
上述の実施形態において、操縦者技量評価装置1、1A、1B、1Cは、操縦者Pの操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liに基づいて吊り上げ技量関連情報Si1、移動技量関連情報Si2及び吊り下し技量関連情報Si3のうち少なくとも一つを出力する。しかしながら、操縦者技量評価装置は、操縦者のクレーン操縦時間、操縦者が操縦経験のある機種等の操縦者に関連する操縦者関連情報を加えて操縦者の技量を評価してもよい。また、操縦者技量評価装置は、操縦者の心拍等の操縦者の身体に関連する操縦者身体情報を加えて操縦者の技量を評価してもよい。つまり、操縦者技量評価装置は、操縦者の操作関連情報、姿勢関連情報及び吊り荷関連情報に加えて視点関連情報等の技量評価に関連する情報を任意に組み合わせることで前記操縦者の技量を評価してもよい。
【0161】
また、上述の実施形態において、操縦者技量評価装置1、1A、1B、1Cは、操縦者Pの操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liに基づいて吊り上げ技量関連情報Si1、移動技量関連情報Si2及び吊り下し技量関連情報Si3のうち少なくとも一つを出力する。しかしながら、操縦者技量評価装置は、吊り荷の揺れの大きさ、吊り荷の回転等の特定の項目に関する技量を評価してもよい。
【0162】
また、上述の各実施形態において、技量関連情報生成モデル3、3A、3B、3C、3x、3y、3zは、ニューラルネットワークモデルによって構成されている。しかしながら、技量関連情報生成モデルは、サポートベクターマシン(SVM)、決定木、k最近傍法、単純ベイズ、ロジステック回帰、線形回帰、非線形回帰、ステップワイズ回帰等、機械学習モデルによって構成されていればよい。
【0163】
上述の実施形態において、操縦者技量評価装置1、1A、1B、1Cは、クレーン11のブームカメラ19bを撮像装置として吊り荷Wの画像を取得している。しかしながら、操縦者技量評価装置は、撮像装置としてブームカメラ19b以外のカメラを撮像装置としてもよい。操縦者技量評価装置は、例えば、撮像装置として、クレーンの車体カメラ、工事現場に設置したカメラ及びドローンに搭載したカメラ等が撮影した画像を取得してもよい。
【0164】
また、上述の各実施形態において、操縦者技量評価装置1、1A、1B、1Cは、生成した吊り上げ技量関連情報、移動技量関連情報及び吊り下し技量関連情報をデータとして図示しない外部のサーバー等に出力する構成でもよい。
【0165】
また、上述の各実施形態において、技量関連情報生成モデル3、3A、3B、3C、3x、3y、3zは、熟練者である学習用操縦者PLの学習用操作関連情報OiL、学習用姿勢関連情報PiL及び学習用吊り荷関連情報LiLを教師データとして機械学習されている。しかしながら、技量関連情報生成モデルは、熟練者でない中級者、初級者を学習用操縦者PLとした学習用操作関連情報OiL、学習用姿勢関連情報PiL及び学習用吊り荷関連情報LiLを教師情報として機械学習を実施してもよい。
【0166】
また、上述の各実施形態において、制御部2は、吊り上げ技量関連情報Si1、移動技量関連情報Si2及び吊り下し技量関連情報Si3のうち生成した技量関連情報を表示部6に対して出力する。しかしながら、制御部は、1つの生成した技量関連情報を表示するだけでなく、複数の技量関連情報を、平均、2乗平均、標準偏差等の統計学的処理を施してから表示させてもよい。
【0167】
上述の実施形態は、代表的な形態を示したに過ぎず、一実施形態の骨子を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。さらに種々なる形態で実施し得ることは勿論のことであり、本発明の範囲は、特許請求の範囲の記載によって示され、さらに特許請求の範囲に記載の均等の意味、および範囲内のすべての変更を含む。
【符号の説明】
【0168】
1、1A、1B、1C 操縦者技量評価装置
2 制御部
3、3A、3B、3C、3x、3y、3z 技量関連情報生成モデル
4 記憶部
5 通信部
6 表示部
7 視点検出装置
8 フレーム
9a 視点検出用カメラ
9b 視野検出用カメラ
10 視点検出装置用制御部
11、11A、11B、11C クレーン
12 車両
13 車輪
14 エンジン
15 アウトリガ
16 クレーン装置
17 旋回台
17a 旋回用油圧モータ
18 クレーン用GNSS受信機
19 伸縮ブーム
19a 伸縮用油圧シリンダ
19b ブームカメラ
19c ジブ
20 メインフックブロック
21 サブフックブロック
22 起伏用油圧シリンダ
23 メインウインチ
24 メインワイヤロープ
25 サブウインチ
26 サブワイヤロープ
27 キャビン
28 走行用操作具
29 クレーン装置用操作具
30 クレーン用制御装置
20a メインフック
21a サブフック
30 クレーン用制御装置
30a クレーン用通信装置
Oi 操作関連情報
Pi 姿勢関連情報
Li 吊り荷関連情報
Vi 視点関連情報
Ei 環境関連情報
Si1 吊り上げ技量関連情報
Si2 移動技量関連情報
Si3 吊り下し技量関連情報
W 吊り荷
Vp 視点
Pv 合成画像
Pw 吊り荷画像
P、Pa、Pb、Pc 操縦者
【要約】
【課題】吊り荷の取り扱いにおいて異なる技量が要求される吊り荷の地切り工程、吊り荷の搬送工程及び吊り荷の接地工程の各工程における操縦者の技量をより詳しく評価することができる操縦者技量評価装置及び前記操縦者技量評価装置を有するクレーンを提供する。
【解決手段】クレーン11を操縦者Pが操縦するための操作具の操作に関連する情報である操作関連情報Oi、クレーン11の姿勢に関連する情報である姿勢関連情報Pi及びクレーンが搬送する吊り荷に関連する情報である吊り荷関連情報Liを記憶する記憶部4と、操縦者Pにおけるクレーン11を操縦する技量に関連する情報である技量関連情報を生成する、技量関連情報生成モデル3を利用して、記憶部4に記憶された操作関連情報Oi、姿勢関連情報Pi及び吊り荷関連情報Liに基づいて技量関連情報を生成し、生成した前記技量関連情報を出力する制御部2と、を有する。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14