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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-01-15
(45)【発行日】2024-01-23
(54)【発明の名称】杭圧入装置
(51)【国際特許分類】
   E02D 7/20 20060101AFI20240116BHJP
【FI】
E02D7/20
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2022168415
(22)【出願日】2022-10-20
(62)【分割の表示】P 2018191372の分割
【原出願日】2018-10-10
(65)【公開番号】P2022183330
(43)【公開日】2022-12-08
【審査請求日】2022-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000141521
【氏名又は名称】株式会社技研製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100090033
【弁理士】
【氏名又は名称】荒船 博司
(72)【発明者】
【氏名】北村 精男
(72)【発明者】
【氏名】田内 宏明
(72)【発明者】
【氏名】村田 敏彦
(72)【発明者】
【氏名】青木 伸敏
(72)【発明者】
【氏名】濱口 宗大
【審査官】佐久間 友梨
(56)【参考文献】
【文献】特開昭59-422(JP,A)
【文献】特開昭58-11221(JP,A)
【文献】特開2006-161477(JP,A)
【文献】実開昭61-19041(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 7/00-13/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
既設杭から反力を取って地盤に杭を圧入し、杭圧入装置本体及びクレーン装置を備える杭圧入装置であって、
前記杭圧入装置本体は、
当該杭圧入装置本体の前後方向における前から後ろに向かって順に配列されるチャック装置、中間のクランプ装置及び後方のクランプ装置と、
該杭圧入装置本体の前後方向に長尺なサドルと、
前記サドルの前端から前方へ張り出すとともに後方へ戻るよう前後動作可能に前記サドルに支持された第1スライドフレームと、
前記第1スライドフレーム上に旋回動作可能に立設されたマストと、
前記マストに昇降可能に支持され、前記サドルの前方部に配置されたチャックフレームと、
前記第1スライドフレームの後方において、前記サドルの後端から後方へ張り出すとともに前方へ戻るよう前後動作可能に前記サドルに支持された第2スライドフレームと、
前記第2スライドフレームに昇降動作可能に支持された昇降フレームと、
を含み、
前記中間のクランプ装置及び前記後方のクランプ装置はそれぞれ、既設杭の上端部を把持可能に構成され、
前記チャック装置は、前記チャックフレームに支持され、
前記チャック装置は、圧入する杭を把持可能に構成され、
前記チャック装置は、前記マストに昇降可能に支持され、
前記中間のクランプ装置は、前記サドルの下部に配設され、
前記チャック装置と前記中間のクランプ装置との相対的な昇降動作及び前後動作が可能にされ、
前記後方のクランプ装置は、前記昇降フレームの下端に支持され、
前記中間のクランプ装置と前記後方のクランプ装置との相対的な昇降動作及び前後動作が可能にされ、
前記中間のクランプ装置及び前記後方のクランプ装置により既設杭の上端を把持した状態で、前記チャック装置が昇降することによって、前記チャック装置により把持した杭を地盤に圧入可能にされ、
地盤に圧入された杭を前記チャック装置により把持するとともに、前記後方のクランプ装置により既設杭の上端を把持した状態で、前記中間のクランプ装置を既設杭から離脱させて前後に移動可能にされ、
前記クレーン装置が前記サドルに搭載され、
前記クレーン装置の旋回軸が、前記サドルの前方中央に配置された前記チャック装置の把持中心に対して後方に配置され、
前記クレーン装置の前記旋回軸が、前記サドルの前後方向の中心線上に配置されている杭圧入装置。
【請求項2】
前記杭圧入装置本体及び前記クレーン装置に駆動力を供給するパワーユニットを備え、
前記パワーユニットの重心が前記チャック装置の前記把持中心に対して後方に配置される請求項1に記載の杭圧入装置
【請求項3】
前記パワーユニットが前記サドルに搭載された請求項2に記載の杭圧入装置
【請求項4】
前記パワーユニットが前記クレーン装置の前方且つ前記マストの後方に配置されている請求項3に記載の杭圧入装置。
【請求項5】
前記クレーン装置が前記パワーユニットの前方且つ前記マストの後方に配置されている請求項2または3に記載の杭圧入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭圧入装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の杭圧入装置は、特許文献1,2等にも記載されるように、反力用の既設杭からなる杭列に対して機体を固定するサドルと、このサドルに内設する前後方向のスライド機構を介して設けた昇降動作可能な杭圧入引抜用のチャックとを備える。杭圧入装置は、サドルに設けたクランプによって既設杭を把持し、この既設杭を反力手段としてチャックにより杭列の先端に杭を圧入し、延びた杭列の上に機体を移動することによって杭列を順次延設する。機体を移動する手順は、杭列の先端の圧入途中の杭の高い部位をチャックによって把持し、クランプを緩めて機体を上昇させ、サドルに設けたスライド機構によって機体を前進させ、機体を下降させてクランプを締めることにより移動が終了する。この移動後の新たな位置で圧入途中の杭の圧入をさらに続ける。これを逆動作することにより、杭の引抜きが可能となる。
【0003】
一般にチャックへの杭の投入はクレーンを使用して行われる。特許文献3では、杭圧入装置に搭載されたクレーンを使用することが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-319880号公報
【文献】特開2004-183442号公報
【文献】特開平11-200368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献3の発明にあっては、クレーンの旋回軸はサドルの側部に配置されており、杭圧入装置全体の左右の重量バランスが悪化するおそれがある。
例えば、長尺の杭や大きな杭を吊るために重量の大きいクレーンを搭載すれば、杭圧入時の杭圧入装置の自重による反力を大きくすることができるが、左右の重量バランスが悪化し、反力用の既設杭へクレーン自重と吊り荷重により傾き方向のモーメントが加わり悪影響を及ぼすおそれある。したがって、クレーンの旋回軸は反力となる杭上にあるのがこのましい。すなわち、大きく芯を振り、かつ、重量や能力の多い大型のクレーンを搭載することができないという問題がある。
杭圧入装置の重量バランスが悪化すると、杭や杭圧入装置を傾斜させるおそれがあり、杭の圧入精度や施工後の杭傾きを悪化させる。
【0006】
本発明は以上の従来技術における問題に鑑みてなされたものであって、クレーンを搭載した杭圧入装置の全体の重量バランスを良好にし、杭の圧入精度を良好に保ちつつ、クレーンの重量分により杭圧入時の反力を増加することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するための請求項1記載の発明は、既設杭から反力を取って地盤に杭を圧入し、杭圧入装置本体及びクレーン装置を備える杭圧入装置であって、
前記杭圧入装置本体は、
当該杭圧入装置本体の前後方向における前から後ろに向かって順に配列されるチャック装置、中間のクランプ装置及び後方のクランプ装置と、
該杭圧入装置本体の前後方向に長尺なサドルと、
前記サドルの前端から前方へ張り出すとともに後方へ戻るよう前後動作可能に前記サドルに支持された第1スライドフレームと、
前記第1スライドフレーム上に旋回動作可能に立設されたマストと、
前記マストに昇降可能に支持され、前記サドルの前方部に配置されたチャックフレームと、
前記第1スライドフレームの後方において、前記サドルの後端から後方へ張り出すとともに前方へ戻るよう前後動作可能に前記サドルに支持された第2スライドフレームと、
前記第2スライドフレームに昇降動作可能に支持された昇降フレームと、
を含み、
前記中間のクランプ装置及び前記後方のクランプ装置はそれぞれ、既設杭の上端部を把持可能に構成され、
前記チャック装置は、前記チャックフレームに支持され、
前記チャック装置は、圧入する杭を把持可能に構成され、
前記チャック装置は、前記マストに昇降可能に支持され、
前記中間のクランプ装置は、前記サドルの下部に配設され、
前記チャック装置と前記中間のクランプ装置との相対的な昇降動作及び前後動作が可能にされ、
前記後方のクランプ装置は、前記昇降フレームの下端に支持され、
前記中間のクランプ装置と前記後方のクランプ装置との相対的な昇降動作及び前後動作が可能にされ、
前記中間のクランプ装置及び前記後方のクランプ装置により既設杭の上端を把持した状態で、前記チャック装置が昇降することによって、前記チャック装置により把持した杭を地盤に圧入可能にされ、
地盤に圧入された杭を前記チャック装置により把持するとともに、前記後方のクランプ装置により既設杭の上端を把持した状態で、前記中間のクランプ装置を既設杭から離脱させて前後に移動可能にされ、
前記クレーン装置が前記サドルに搭載され、
前記クレーン装置の旋回軸が、前記サドルの前方中央に配置された前記チャック装置の把持中心に対して後方に配置され、
前記クレーン装置の前記旋回軸及び前記チャック装置の前記把持中心が、前記サドルの前後方向の中心線上に配置されている杭圧入装置である。
【0008】
請求項2記載の発明は、前記杭圧入装置本体及び前記クレーン装置に駆動力を供給するパワーユニットを備え、前記パワーユニットの重心が前記チャック装置の前記把持中心に対して後方に配置される請求項1に記載の杭圧入装置である。
【0009】
請求項3記載の発明は、前記パワーユニットが前記サドルに搭載された請求項2に記載の杭圧入装置である。
【0010】
請求項4記載の発明は、前記パワーユニットが前記クレーン装置の前方且つ前記マストの後方に配置されている請求項3に記載の杭圧入装置である。
【0011】
請求項5記載の発明は、前記クレーン装置が前記パワーユニットの前方且つ前記マストの後方に配置されている請求項2または3に記載の杭圧入装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、クレーン(特に大型のクレーン)を搭載した杭圧入装置の全体の重量バランスを良好にし、杭の圧入精度を良好に保ちつつ、クレーンの重量分により杭圧入時の反力を増加することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の形態1に係る杭圧入装置の上面図である。
図2】本発明の形態1に係る杭圧入装置の右側面図である。
図3】本発明の形態2に係る杭圧入装置の右側面図である。
図4】本発明の形態3に係る杭圧入装置の上面図である。
図5】本発明の形態3に係る杭圧入装置の右側面図である。
図6】本発明の一実施形態に係るパワーユニットの構成図である。
図7】本発明の一実施形態に係る杭圧入装置本体の右側面図であり、全長短縮状態を示す。
図8】本発明の一実施形態に係る杭圧入装置本体の右側面図であり、全長伸長状態を示す。
図9】本発明の一実施形態に係る杭圧入装置本体のクランプ装置の左右動作シリンダの軸を含む縦断面図であり、(a)はクランプ装置が右に寄った状態を、(b)はクランプ装置が左に寄った状態を示す。
図10】本発明の一実施形態に係る杭圧入装置本体の杭圧入及び自走の過程を示す右側面図である。
図11】本発明の一実施形態に係る杭圧入装置本体の杭圧入及び自走の過程を示す右側面図である。
図12】本発明の一実施形態に係る杭圧入装置本体の杭圧入及び自走の過程を示す右側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に本発明の一実施形態につき図面を参照して説明する。以下は本発明の一実施形態であって本発明を限定するものではない。
【0018】
〔クレーンとパワーユニットの搭載〕
まず、杭圧入装置本体1へのクレーン装置7とパワーユニット8の搭載位置等に関する形態につき説明する。
(形態1)
本形態は、図1及び図2に示すようにクレーン装置7及びパワーユニット8が杭圧入装置本体1のサドル2に搭載された形態である。
クレーン装置7の旋回軸71は、サドル2の前方中央に配置されたチャック装置3の把持範囲3bに対して後方に配置されている。
すなわち、杭圧入装置本体1のサドル2の前後方向の中心線Cにチャック装置3の把持中心3aが配置された状態において、チャック装置3の把持範囲3bに対して後方にクレーン装置7の旋回軸71が配置されている。
これにより、チャック装置3により把持されて圧入される杭に対してクレーン装置7の旋回軸71の左右方向のずれが小さく収まるから、クレーン装置7を搭載することによる左右の重量バランスの崩れは抑えられる。好ましくは図示するようにクレーン装置7の旋回軸71が把持中心3aに対して後方に配置された形態を実施する。
【0019】
パワーユニット8は、杭圧入装置本体1及びクレーン装置7に駆動力を供給する装置である。
パワーユニット8の重心81も、サドル2の前方中央に配置されたチャック装置3の把持範囲3bに対して後方に配置されている。
これにより、チャック装置3により把持されて圧入される杭に対してパワーユニット8の重心81の左右方向のずれが小さく収まるから、パワーユニット8を搭載することによる左右の重量バランスの崩れは抑えられる。好ましくは図示するようにパワーユニット8の重心81が、把持中心3aに対して後方に配置された形態を実施する。
【0020】
本形態ではクレーン装置7は、マスト33より後方でサドル2に搭載されている。
パワーユニット8も同様にマスト33より後方でサドル2に搭載されており、マスト33とクレーン装置7の間に配置されている。本形態に拘わらず、クレーン装置7とパワーユニット8の配置を交換し、クレーン装置7をマスト33とパワーユニット8の間に配置してもよい。
【0021】
本形態によれば、クレーン装置7、さらにパワーユニット8を搭載した杭圧入装置の全体の重量バランスが良好であるので、杭を左右に傾斜させるおそれも少なく杭の圧入精度を良好に保つことができる。また、クレーン装置7、さらにパワーユニット8の重量分により杭圧入時の反力を増加することができる。
【0022】
(形態2)
本形態は、図3に示すようにクレーン装置7がチャックフレーム35に搭載された形態である。
上記形態1に対し、クレーン装置7及びパワーユニット8の左右方向の位置は変更せずに、チャック装置3より前方に長く延ばしたチャックフレーム35の前端部にクレーン装置7を搭載したものである。したがって本形態では、クレーン装置7がチャック装置3の前方に配置され、パワーユニット8がチャック装置3の後方に配置されている。
パワーユニット8はサドル2に搭載したままである。クレーン装置7が移動した分、パワーユニット8のサドル2における前後方向の配置の自由度が上がるため、クレーン装置7との前後重量バランスを考慮して最適な位置にパワーユニット8を配置することができる。
【0023】
鋼管杭(P1)を圧入する圧入力により杭圧入装置本体1が把持している既設鋼管杭PSを後傾させようとするモーメントM1が生じるが、チャック装置3より前方のクレーン装置7の重量によるモーメントM2により、既設鋼管杭PSに負荷されるモーメントは軽減される。
したがって、本形態によれば、クレーン装置7、さらにパワーユニット8を搭載した杭圧入装置の全体の重量バランスが良好であるので、杭を左右及び前後に傾斜させるおそれも少なく杭の圧入精度を良好に保つことができる。
また、クレーン装置7、さらにパワーユニット8の重量分により杭圧入時の反力を増加することができる。クレーン装置7及びパワーユニット8による左右及び前後の重量バランスが良好であるため、クレーン装置7及びパワーユニット8として大重量のものを採用しやすく、さらに杭圧入時の反力を増加することができる。
【0024】
(形態3)
上記形態2に対し、クレーン装置7及びパワーユニット8の左右方向の位置は変更せずに、チャック装置3より後方のマスト33にクレーン装置7を搭載した形態を実施してもよい。
マスト33にクレーン装置7を搭載する場合、クレーン装置7の旋回軸71が、サドル2の前方中央に配置されたチャック装置3の把持範囲3b(図1の71aから71bまで)に対して後方に配置された形態を実施できるほか、次に説明するようにクレーン装置7の旋回軸71が、サドル2の前方中央に配置されたチャック装置3の把持範囲3bに対して前方に配置された形態を実施できる。
図4及び図5に示すようにマスト33からクレーン支持ブーム部36を前方に延設する。クレーン支持ブーム部36は、マスト33に一体に形成又は固定されたものである。
図4に示すようにクレーン支持ブーム部36には、チャック装置3で把持する杭を挿通するための孔部36aがチャックフレーム35と同位置に形成されており、孔部36aに鋼管杭(P1)を挿通しチャック装置3で把持することができるようにされている。
また、クレーン支持ブーム部36の孔部36aより前方の前端部には孔部36bが形成されている。孔部36bは、クレーンを搭載、固定するためのものであり、その中心がクレーン装置7の旋回軸71に相当する(図4,5ではクレーン装置を不図示)。
さらにクレーン支持ブーム部36の外形36cは、チャックフレーム35を昇降するシリンダ装置34に干渉しない形状とされている。図5に示すように、クレーン支持ブーム部36は、チャックフレーム35の昇降ストロークの上方と通って前方に延設されている。したがって、チャックフレーム35(チャック装置3)の昇降動作に支障が無い。
以上のマスト33にクレーン装置7を搭載した形態によれば、杭圧入作業等ためのチャックフレーム35の昇降に伴ってクレーン装置7が昇降されることはなく、効率的である。
【0025】
鋼管杭(P1)を圧入する圧入力により杭圧入装置本体1が把持している既設鋼管杭PSを後傾させようとするモーメントM1が生じるが、チャック装置3より前方のクレーン装置7の重量によるモーメントM2により、既設鋼管杭PSに負荷されるモーメントは軽減される。
したがって、本形態によれば、クレーン装置7、さらにパワーユニット8を搭載した杭圧入装置の全体の重量バランスが良好であるので、杭を左右及び前後に傾斜させるおそれも少なく杭の圧入精度を良好に保つことができる。
また、クレーン装置7、さらにパワーユニット8の重量分により杭圧入時の反力を増加することができる。クレーン装置7及びパワーユニット8による左右及び前後の重量バランスが良好であるため、クレーン装置7及びパワーユニット8として大重量のものを採用しやすく、さらに杭圧入時の反力を増加することができる。
【0026】
(パワーユニットの構成)
パワーユニット8は、杭圧入装置本体1及びクレーン装置7に駆動力を供給する装置である。具体的には杭圧入装置本体1及びクレーン装置7が油圧駆動式であるため、図6に示すようにパワーユニット8は、杭圧入装置本体1を動作させる油圧装置に圧油を供給する油圧ポンプ8Aと、クレーン装置7を動作させる油圧装置に圧油を供給する油圧ポンプ8Bと、油圧ポンプ8A及び油圧ポンプ8Bを駆動するエンジン8Eとを備える。
図6に示すように油圧ポンプ8Aと油圧ポンプ8Bとを別々に備える。これにより、杭圧入装置本体1及びクレーン装置7のそれぞれの作業力を同時に維持しやすい。
図6では、油圧ポンプ8A及び油圧ポンプ8Bを駆動するエンジン8Eを共通としたが、油圧ポンプ8Aを駆動するエンジンと、油圧ポンプ8Bを駆動するエンジンとを別々に設けてもよい。
また、図1から図6ではパワーユニット8を一台としたが、油圧ポンプ8Aとこれを駆動するエンジンを搭載する一台のパワーユニットと、油圧ポンプ8Bとこれを駆動するエンジンを搭載する他の一台のパワーユニットとを杭圧入装置本体1に装備してもよい。
【0027】
〔杭圧入装置本体の概要〕
まず、杭圧入装置本体1につき図7から図11を参照して説明する。
図7図8及び図9に示すように本実施形態の杭圧入装置本体1は、既設鋼管杭PSから反力を取って地盤Gに鋼管杭(P1)を圧入する杭圧入装置であって、サドル2と、チャック装置3と、第1クランプ装置4Aと、第2クランプ装置4Bと、第3クランプ装置5とを備える。
サドル2は各部を支持する本体メインフレームに相当し前後方向に長尺に形成されている。
第1クランプ装置4A及び第2クランプ装置4Bが中間のクランプ装置に相当する。中間のクランプ装置4A,4Bはサドル2の下部に配設されている。2つの中間のクランプ装置4A,4Bは、前方側に配置される第1クランプ装置4Aと、後方側に配置される第2クランプ装置4Bとからなる。
第3クランプ装置5が後方のクランプ装置に相当する。
杭圧入装置本体1の前後方向にチャック装置3、中間のクランプ装置4A,4B、後方のクランプ装置5が連結された構成である。前方側から、チャック装置3、第1クランプ装置4A、第2クランプ装置4B、第3クランプ装置5の順でこれらが配列する。
中間のクランプ装置4A,4B及び後方のクランプ装置5はそれぞれ、既設鋼管杭PSの上端部を把持可能に構成されている。
チャック装置3は、圧入する鋼管杭(P1)を外側から把持可能に構成されており、鋼管杭(P1)の任意の高さ位置を把持することができる。
クランプ装置4A,4B,5は既設鋼管杭PS内に挿入した複数のクランプ部材を開くことで掴む把持機構であり、チャック装置3は鋼管杭(P1)を挿入する挿入部の中心に向かって複数のチャック部材を進退させる把持機構による。双方とも従来から利用されているものである。
【0028】
サドル2からチャック装置3までの機械的構成は以下の通りである。
サドル2に第1スライドフレーム31がシリンダ装置32の駆動により前後動作可能に支持されている。第1スライドフレーム31上に旋回動作可能にマスト33が立設されている。マスト33にチャックフレーム35がシリンダ装置34の駆動により昇降動作可能に支持されている。チャックフレーム35にチャック装置3が設けられている。
【0029】
サドル2からクランプ装置までの機械的構成は以下の通りである。
サドル2に第2スライドフレーム51がシリンダ装置52の駆動により前後動作可能に支持されている。第2スライドフレーム51に昇降フレーム54がシリンダ装置53の駆動により昇降動作可能に支持されている。第3クランプ装置5は、昇降フレーム54の下端に支持されており、サドル2より後方において中間のクランプ装置4A,4Bと同じ低さに配置可能とされている。
【0030】
サドル2に前後スライダー41がシリンダ装置42の駆動により前後動作可能に支持されている。前後スライダー41に左右スライダー43がシリンダ装置44の駆動により左右動作可能に支持されている。第1クランプ装置4A、第2クランプ装置4Bは、左右スライダー43の下端に支持されている。
また第3クランプ装置5も左右動作機構に関して同様であり、昇降フレーム54に左右スライダー55がシリンダ装置56の駆動により左右動作可能に支持されており、第3クランプ装置5は、左右スライダー55に支持されている。
【0031】
以上の機械的構成により、チャック装置3と中間のクランプ装置4A,4Bとの相対的な昇降動作及び前後動作が可能にされ、中間のクランプ装置4A,4Bと後方のクランプ装置5との相対的な昇降動作及び前後動作が可能にされている。
チャック装置3は、マスト33の旋回動作により左右揺動動作が可能にされている。
したがって、チャック装置3、中間のクランプ装置4A,4B及び後方のクランプ装置5のいずれの装置も左右動作が可能にされている。
また、第1クランプ装置4Aと、第2クランプ装置4Bとの相対的な前後動作が可能にされている。
【0032】
杭圧入装置本体1は、図7及び図10(a)に示すように、中間のクランプ装置4A,4B及び後方のクランプ装置5により既設鋼管杭PSの上端を把持した状態で、チャック装置3が昇降することによって、チャック装置3により把持した鋼管杭(P1)を地盤Gに圧入することができる。
チャック装置3により鋼管杭(P1)を把持し、シリンダ装置34の駆動によりチャックフレーム35及びチャック装置3を降下させることで、チャック装置3により把持している鋼管杭(P1)を押し下げ地盤に圧入する。また、チャック装置3の回転機能により、鋼管杭(P1)をその中心軸まわりに回転させながら押し下げ地盤に回転圧入することが可能である。
鋼管杭(P1)の圧入の進行に伴い、チャック装置3を開いて鋼管杭(P1)の把持を解除し、シリンダ装置34の駆動によりチャックフレーム35及びチャック装置3を上昇させ、鋼管杭(P1)の高い位置を把持し直し、さらに圧入又は回転圧入を続行し所望の深さまで鋼管杭(P1)を地盤Gに圧入することができる。
【0033】
図11(a)の状態から図11(b)の状態への変化又は図11(b)の状態から図11(a)の状態への変化のように、地盤Gに圧入された鋼管杭(P2)をチャック装置3により把持するとともに、後方のクランプ装置5により既設鋼管杭PS3の上端を把持した状態で、中間のクランプ装置4A,4Bを既設鋼管杭PS1,PS2から離脱させて前後に移動することできる。
【0034】
〔杭圧入装置の杭上自走方法〕
次に、以上説明した動作機能を利用した杭圧入装置本体1の杭上自走方法につき図10から図12を参照して説明する。
図10(a)に示すように中間のクランプ装置4A,4B及び後方のクランプ装置5により既設鋼管杭PS1,PS2,PS3の上端を把持した状態で、チャック装置3により把持した鋼管杭P1を地盤Gに圧入する。この鋼管杭P1を、中間のクランプ装置4Aにより把持する先頭既設鋼管杭PS1と同レベルに押し下げ、鋼管杭P1の圧入施工を完了する。
鋼管杭P1の圧入施工完了後、シリンダ装置32(図7,8参照)およびシリンダ装置52(図7,8参照)の駆動によってマスト33を1杭ピッチ前方に移動して、図10(b)に示すように鋼管杭P2をチャック装置3に挿入してチャック装置3により把持させる。
続いて図10(c)に示すようにチャック装置3により把持した鋼管杭P2を、所定の支持力が得られるまで地盤Gに圧入する。
【0035】
次に中間部前進工程を図11(a)→図11(b)→図11(c)で示すように実行する。
すなわち、第1クランプ装置4Aから2杭ピッチ前方の鋼管杭P2をチャック装置3により把持するとともに、後方のクランプ装置5により既設鋼管杭PS3の上端を把持した状態で、中間のクランプ装置4A,4Bを既設鋼管杭PS1,PS2から離脱させて前方に移動し、1杭ピッチ前方の鋼管杭P1,PS1の上端を中間のクランプ装置4A,4Bにより把持させる。(第1クランプ装置4Aにより鋼管杭P1を把持させ、第2クランプ装置4Bにより鋼管杭PS1を把持させる。)
【0036】
次に後方部前進工程を図12(a)→図12(b)→図12(c)で示すように実行する。
すなわち、後方のクランプ装置5を既設鋼管杭PS3から離脱させて前方に移動し、上記中間部移動工程において後方のクランプ装置5により把持していた既設鋼管杭PS3より1杭ピッチ前方の既設鋼管杭PS2の上端を後方のクランプ装置5により把持させる。
以上により図12(c)に示すように杭圧入装置本体1は、図10(a)と同じ装置形態であって、1杭ピッチ前進した状態となる。この状態で、チャック装置3により把持した鋼管杭P2の圧入を続行し、既設鋼管杭と同レベルに押し下げ、鋼管杭P2の圧入施工を完了する。しがたって、以上の過程を繰り返すことで、所定の杭ピッチで新たな鋼管杭を地盤Gに圧入して鋼管による杭列を施工しつつ、同杭列上を前進することができる。
【0037】
以上の実施形態にかかわらず、上記後方のクランプ装置5及びこれをサドル2に連結する機構を省略した従来型の杭圧入装置(特許文献2参照)を適用してもよい。その場合、サドル2の下部に配置するクランプを3つに増設してもよい。
後方のクランプ装置5を有した上記杭圧入装置本体1によれば、サドル2を前後方向に長くしても安定した自走が可能であるため、上記形態1(図1図2)のようにクレーン装置7及びパワーユニット8をサドル2上に前後に並べて配置する形態を実施しやすい。
【0038】
また上記形態1,2,3のようにクレーン装置7及びパワーユニット8を杭圧入装置に搭載するので、別途クレーン装置及びパワーユニットが不要となり、独立した移動体が簡略化される。例えば、従来使用されていた杭圧入装置に後続して杭列上を自走する杭上自走式のクレーンやパワーユニットが不要となり、移動体の台数減、システム全長の短縮が図られる。
なお、以上の実施形態では鋼管杭に対応したものについて説明したが、適用する杭は鋼管杭に限定されるものではない。本発明はコンクリート杭(柱)など、モーメントが加わると折れやすい杭にも効果的である。
【符号の説明】
【0039】
1 杭圧入装置本体
2 サドル
3 チャック装置
3a 把持中心
3b 把持範囲
4A,4B,5クランプ装置
7 クレーン装置
8 パワーユニット
8A 油圧ポンプ
8B 油圧ポンプ
8E エンジン
33 マスト
35 チャックフレーム
71 旋回軸
81 重心
G 地盤
P1,P2 鋼管杭
PS 既設鋼管杭
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12